JP2020204005A - 紫外線吸収剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】リグニンを利用し、環境や人体に与える負荷が低く、紫外線吸収能に優れ、性状を安定させることができる、紫外線吸収剤を提供する。【解決手段】低変性リグニンを有効成分とする、紫外線吸収剤であって、前記低変性リグニンに対してアルカリニトロベンゼン酸化反応を行うことで生成する芳香族化合物の含有量が、植物原料中の総リグニン質量に対して15%以上である、紫外線吸収剤。【選択図】なし

Description

本発明は、紫外線吸収剤、紫外線吸収剤組成物、及び紫外線吸収用高分子材料に関する。
太陽などから降り注ぐ紫外線から樹脂や高分子素材を保護することは、樹脂や高分子素材の劣化を防ぐために重要である。また、紫外線は人体にも有害であるため、サングラスやサンスクリーン剤等で人体を保護することも肝要である。そのため、紫外線吸収剤の需要は高まっている。
一般な紫外線吸収剤は、トリアゾールなどの化合物から構成される。しかしトリアゾール化合物は、有害性が懸念される物質でもある。また、世界的な化学物質規制強化に従い、天然物など環境にやさしい素材から紫外線吸収剤を調製することが望まれている。
木材の90%以上は細胞壁成分で構成され、細胞壁は主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンから構成されている。前記主成分のうちリグニンは、木材中に通常20〜30%程度存在し、細胞膜同士を接着して中間層を構成する。また木材中のリグニンの一部は、細胞膜にも存在する。
リグニンは、ヒドロキシフェニルプロパンを基本単位とし、縮合して生成した高分子化合物である。リグニンはπ共役が連なっており、芳香族の主鎖構造と有機ラジカルとなり得るフェノール性水酸基を有する。そのためリグニンは、紫外線吸収能を有すると期待される。
しかし、木材中のリグニンは、セルロース、ヘミセルロースなどの他の成分と互いに複雑に結合している。そのため、これらの成分を分離し、リグニンを単離、回収することは容易ではない。
例えば、木材からリグニンを単離する方法としては、炭水化物を溶かしリグニンを不溶解残渣として分離する方法や、リグニンを溶解して分離する方法が一般的である。しかしこれらの方法は、強アルカリや強酸などの薬剤の使用や、高温煮沸などを行うため、環境に対する負荷が大きく、単離したリグニンの利用の妨げとなっている。さらに、このような条件で抽出処理を行うと、植物に存在するリグニン(プロトリグニン)が著しく変性する。さらに、分離方法や分離条件によってリグニンの性状に差異が生じるため、一定の性質のリグニンを単離することは困難である。そのため、従来の方法による単離したリグニンの用途は非常に限定されている。
このような問題の解決のため、例えば、マイクロ波増感触媒を用いて抽出されたリグニン誘導体からなる紫外線吸収剤が提案されている(特許文献1参照)。しかし、高温でマイクロ波照射を行い、抽出時に強酸や強アルカリなどの有害薬品を使用するため変性し、リグニンの性状が安定せず、かつ環境負荷も大きい。よってマイクロ波増感触媒を用いて抽出されたリグニン誘導体からなる紫外線吸収剤は、産業展開が難しい。さらに、リグニン誘導体からなる紫外線吸収剤と、樹脂などの他成分とを混合する場合も、有機溶媒や化学薬品を用いるプロセスを要するため、環境負荷が大きい(非特許文献1参照)。
特開2011−84493号公報
Green Chem., 2016, vol. 18, p. 1175-1200
前述のように、本来各種植物中に存在するリグニンは、紫外線吸収剤としての利用の可能性が期待されている。しかし、従来の方法で単離したリグニンは、著しく変性して性状が安定せず、かつ環境負荷も大きいため、その要求に十分応えることができなかった。
そこで本発明は、リグニンを利用し、環境や人体に与える負荷が低く、紫外線吸収能に優れ、性状を安定させることができる、紫外線吸収剤の提供を課題とする。
さらに本発明は、紫外線吸収能に優れ、性状が安定した、紫外線吸収剤組成物及び紫外線吸収用高分子材料の提供を課題とする。
本発明者は上記課題に鑑み、環境や人体に与える負荷が低く、紫外線吸収能に優れ、かつ性状を安定させることができるリグニンについて検討を重ねた。その結果、同時酵素糖化粉砕法などにより得られた、特定の性質を有する低変性リグニンは、紫外線吸収能に優れ、性状を安定させることができ、環境や人体に与える負荷が低い紫外線吸収剤の提供が可能となることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
本発明の上記課題は、下記の手段により解決された。
(1)低変性リグニンを有効成分とする、紫外線吸収剤であって、前記低変性リグニンに対してアルカリニトロベンゼン酸化反応を行うことで生成する芳香族化合物の含有量が、植物原料中の総リグニン質量に対して15%以上である、紫外線吸収剤。
(2)前記低変性リグニンの粒径が20〜1000nmである、前記(1)項に記載の紫外線吸収剤。
(3)セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを含有する植物原料をセルロース及びヘミセルロースの糖化酵素の存在下に湿式粉砕して粉砕物を得、該粉砕物を、糖類を含む液状成分と、リグニンを含む含溶媒固形成分とに固液分離し、得られた含溶媒固形成分が前記低変性リグニンである、前記(1)又は(2)項に記載の紫外線吸収剤。
(4)前記紫外線吸収剤が水分散液である、前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の紫外線吸収剤。
(5)低変性リグニンと、高分子物質を含有する、紫外線吸収剤組成物であって、前記低変性リグニンに対してアルカリニトロベンゼン酸化反応を行うことで生成する芳香族化合物の含有量が、植物原料中の総リグニン質量に対して15%以上である、紫外線吸収剤組成物。
(6)紫外線吸収組成物の総量に対する低変性リグニンの含有量が、0.2質量%以上50質量%以下である、前記(5)項に記載の紫外線吸収剤組成物。
(7)前記低変性リグニンの粒径が20〜1000nmである、前記(5)又は(6)項に記載の紫外線吸収剤組成物。
(8)前記高分子物質が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、及びポリビニルアルコール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子物質である、前記(5)〜(7)のいずれか1項に記載の紫外線吸収剤組成物。
(9)前記紫外線吸収剤組成物が水分散液である、前記(5)〜(8)のいずれか1項記載の紫外線吸収剤組成物。
(10)低変性リグニンと、高分子物質を含有する、紫外線吸収用高分子材料であって、前記低変性リグニンに対してアルカリニトロベンゼン酸化反応を行うことで生成する芳香族化合物の含有量が、植物原料中の総リグニン質量に対して15%以上である、紫外線吸収用高分子材料。
(11)高分子材料の総量に対する低変性リグニンの含有量が、0.2質量%以上50質量%以下である、前記(10)項に記載の紫外線吸収用高分子材料。
(12)前記低変性リグニンの粒径が20〜1000nmである、前記(10)又は(11)項に記載の紫外線吸収用高分子材料。
(13)前記高分子物質が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、及びポリビニルアルコール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子物質である、前記(10)〜(12)のいずれか1項に記載の紫外線吸収用高分子材料。
低変性リグニンを有効成分とする本発明の紫外線吸収剤は、紫外線吸収性と性状の安定性に優れる。また、本発明の紫外線吸収剤は、有害性が懸念される、トリアゾール化合物等を使用しないので、環境や人体に与える負荷が小さい。
また、本発明の紫外線吸収剤組成物及び高分子材料は、紫外線吸収能を有しているので、プラスチック、容器、塗料、塗膜、繊維、建材などの高分子成形品、紫外線に弱い内容物を保護するフィルタ、包装材料、容器、塗料、塗膜、インク、繊維、建材、記録媒体、画像表示装置、太陽電池カバーなどとして用いることができる。また、本発明の紫外線吸収剤組成物及び高分子材料は化粧品用途に用いることができる。
実施例3及び6で作製した複合膜、並びに比較例1で作製したポリビニルアルコール膜の外観写真である。 実施例3で作製した複合膜及び比較例1で作製したポリビニルアルコール膜について測定した紫外可視吸収スペクトルから算出した、200〜800nmでの透過度を示すグラフである。 実施例3及び比較例2で作製した複合膜について測定した紫外可視吸収スペクトルから算出した、200〜800nmでの透過度を示すグラフである。 図4(a)は、実施例3で作製した複合膜の断面を撮像した、透過型電子顕微鏡写真である。図4(b)は、実施例6で作製した複合膜の断面を撮像した、透過型電子顕微鏡写真である。図4(c)は、四酸化オスミウムで染色した、比較例2で作製した複合膜の外観写真である。
本発明の紫外線吸収剤は、後述する性質を有する低変性リグニンを有効成分とする。また、本発明の紫外線吸収剤組成物及び紫外線吸収用高分子材料は、低変性リグニンと、高分子物質を含有する。
以下、本発明の紫外線吸収剤、紫外線吸収剤組成物及び紫外線吸収用高分子材料について好ましい態様に基づいて説明する。しかし本発明は、これらに制限するものではない。
リグニンは、植物の細胞壁や細胞膜に存在する高分子化合物である。リグニンは、ヒドロキシフェニルプロパンを基本単位として構成される。リグニンは、針葉樹、広葉樹、イネ科植物などの植物種により、その構成単位である置換芳香族物質の種類や組成を異にする。本発明で用いるリグニンは、いずれの植物から得られたものであってもよい。
本発明で用いるリグニンは、ヒドロキシフェニルプロパンを基本単位とし、縮合して生成した高分子化合物である、低変性リグニンである。ここで、本発明における「低変性リグニン」とは、本発明で用いる有効成分の性質を規定するものであって、アルカリニトロベンゼン酸化反応により得られる芳香族化合物の含有量(以下、「ニトロベンゼン酸化分解率」ともいう)が、植物原料中の総リグニン質量に対して15%以上であるリグニンを意味する。ニトロベンゼン酸化分解率は酸化分解で得られる芳香族化合物の質量の植物原料中の総リグニン質量に対する比で定義される。リグニンのアルカリニトロベンゼン酸化反応により得られる芳香族化合物は、例えばバニリン、バニリン酸、シリンガアルデヒド、シリンガ酸が挙げられる。これらのうち、本発明における「芳香族化合物」は好ましくは、バニリン、バニリン酸、及びシリンガアルデヒドを指す。なお、植物原料中の総リグニン質量の定量方法は、飛松 裕基、生存圏研究、13、10-18(2017)などの文献に記載されており、これに従い植物原料中の総リグニン質量を定量することができる。
アルカリニトロベンゼン酸化反応は、1939年にドイツのフロイデンベルグが提案した分解方法であり、針葉樹リグニンから20〜28%、広葉樹リグニンからは多くて50%程度の単量体芳香族化合物成分を生成する分解方法である。予め水酸化ナトリウムなどの試薬によりアルカリ性にした水溶液中に木粉もしくはリグニンを添加し、そこにニトロベンゼンをリグニンの0.1〜2.0倍量相当添加し、オートクレーブにて100〜200℃の任意の温度で1〜3時間攪拌しながら加熱する分解法である。アルカリニトロベンゼン酸化分解で得られるバニリン、バニリン酸ないしシリンガアルデヒドなどの芳香族化合物の質量より、ニトロベンゼン酸化分解率を算出する。
本発明で用いる低変性リグニンが針葉樹由来である場合は、ニトロベンゼン酸化分解率は、18%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、22%以上がさらに好ましく、25%以上がさらに好ましく、27%以上が特に好ましい。本発明で用いる低変性リグニンが広葉樹由来である場合は、ニトロベンゼン酸化分解率は、18%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、22%以上がさらに好ましく、25%以上がさらに好ましく、27%以上がさらに好ましく、30%以上がさらに好ましく、35%以上がさらに好ましく、40%以上がさらに好ましく、45%がさらに好ましく、50%以上が特に好ましい。また、リグニンのアルカリニトロベンゼン酸化反応により生成する芳香族化合物としては、バニリン、バニリン酸、シリンガアルデヒド等が挙げられる。
なお本発明において、アルカリニトロベンゼン酸化反応は、J. Amer. Chem. Soc., 1944, vol. 66, p. 32-37を参照して行う。
本発明で用いるリグニンの調製方法は、前述の低変性リグニンが得られる限り特に制限されないが、植物系原料の細胞壁に含まれるセルロース及びヘミセルロースを糖化酵素で糖化して得られる固形成分から得ることができる。具体的には、特開2011−92151号公報、Green Chem., 2016, vol. 18, p. 5962-5966、J. Mater. Chem. A, 2018, vol. 6, p. 837-839に記載の方法(同時酵素糖化粉砕法)を参照することができる。
例えば、セルラーゼやヘミセルラーゼなどの糖化酵素の存在下で植物原料を水又は緩衝液中で湿式粉砕機を用いて粉砕し、液状成分と固形成分とを含有する粉砕物を得る。そして、得られた粉砕物を固液分離し、糖類、オリゴ糖及び多糖類を含む液状成分と低変性リグニンを含む固形成分とに分離することで、本発明で用いる低変性リグニンを調製することができる。この方法によれば、未変性のリグニン(プロトリグニン)と性質の近い低変性リグニンを得ることができる。この方法は、石油由来有害薬品など毒性の高い薬品等を使用することなく低変性リグニンを得ることができるため、好ましい。さらに、このようにして得られた低変性リグニンはそのまま、熱混錬や溶媒溶融により高分子材料と複合できる。また、リグニンの抽出工程において加熱処理や酸若しくはアルカリによる高分子鎖の切断を経た場合、多糖類やリグニンが分解し、フェノール性低分子(例えば、バニリン、シリンガアルデヒドなどの変性物)や、フラン化合物(例えば、5-ヒドロキシメチルフラール、フルフラールなど)など、毒性を示す副産物として生成する。これに対して、同時酵素糖化粉砕法ではこのような副産物は生成しないので、環境や人体に負担の少ない紫外線吸収剤の製造に好適に用いることができる。
本発明で用いるリグニンの調製方法について、具体的に説明する。しかし本発明はこれに制限するものではない。
同時酵素糖化粉砕に用いる植物系原料は、湿式粉砕の前に、予め5mm以下に粗粉砕しておくのが好ましい。粗粉砕は、カッターミル、チッパー、ロータリーカッター等の公知の粉砕機を用い得る。
糖化酵素は、植物系原料の細胞壁に含まれるセルロースやヘミセルロース等を糖化する酵素であり、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼを挙げることができる。本発明においては、セルラーゼ及びヘミセルラーゼを組み合わせて用いることが好ましい。湿式粉砕時に用いられる糖化酵素の量は特に限定されず、用いる植物原料の量等に応じて適宜設定することができる。
セルラーゼは、β-1,4-グルカンのグルコシド結合を加水分解する酵素である。セルラーゼは、セルロースの分子内部から切断するエンドグルカナーゼ及びセルロースの還元末端もしくは非還元末端から分解しセロビオースを遊離するエキソグルカナーゼ、さらにはセロビオースのグルコシド結合を切断しグルコースへと変換するβ-グルコシダーゼを含む。
また、ヘミセルラーゼは、植物体の細胞壁を構成する多糖類のうちセルロース、ペクチン以外の多糖類を分解する酵素である。ペクチナーゼは、ペクチンを分解する触媒機能を持つポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼなどの酵素を含む。
湿式粉砕の際、糖化酵素の他に、例えば、タンパク質分解酵素等の酵素を併せて用いてもよい。
湿式粉砕は、粉砕対象物を液体中に懸濁させたスラリー状態で粉砕するものであり、例えばボールミルやビーズミルを用いることができる。
湿式粉砕に用いる液体としては、糖化酵素を失活させることなく粉砕対象物をスラリー状態で保持できるものであれば制限はない。好適には水、およびアルコール等の有機溶媒が挙げられる。
湿式粉砕する条件は、媒体pH2.0〜11.0、媒体と粉砕対象物の質量比1:1〜100:1、粉砕機のビーズ径0.1〜20mm、ビーズ周速0.3〜50m/sec、スラリー流速0.1〜10L/min、ベッセル内温度0〜100℃程度の範囲内で適宜選択し得、経時的に粉砕物の粒度及びスラリー粘度を測定しながら、たとえば好ましくは平均粒度1μm以下となった時点で終了し得る。
湿式粉砕終了後、得られた粉砕物を遠心分離等の固液分離手段により、糖類を含む液状成分と低変性リグニンを含む固形成分とに固液分離される。得られた液状成分に溶出した糖類の量をたとえばソモギーネルソン法など公知の方法により測定し、糖化度が十分でない場合は必要に応じて固形成分に緩衝液と酵素を添加し、任意の温度で攪拌することによりさらに糖化を促進してもよい。
固液分離により得られる固形成分は、水で洗浄し、乾燥させることにより低変性リグニンを得ることができる。得られる低変性リグニンは、既存の抽出法によって得られるリグニンと比較して、β-エーテル結合が良好に保持され、縮合型の炭素-炭素結合が少ない。そのため、アルカリ性ニトロベンゼン酸化のような物理化学的リグニン分解反応を行うことにより良好に低分子化され、バニリン、バニリン酸、シリンガアルデヒド、シリンガ酸などの芳香族化合物単量体を高効率に得ることができる。
また本発明で用いるリグニンは、粒径が数十〜数百ナノメートルのナノ粒子状であることが好ましい。ナノ粒子状のリグニンは、樹脂などの高分子物質に良好に分散することができる。また、ナノ粒子状のリグニンを用いることで、透明性を損なわずに紫外線吸収用高分子材料を作製することができる。さらに、紫外線吸収剤組成物において、リグニンと樹脂などの高分子物質との界面表面積が大きくなり、高分子材料に対して紫外線保護効果を高めることができる。
本発明においてリグニンの粒径は、20〜1000nmが好ましく、40〜200nmがより好ましい。
本発明の紫外線吸収剤及び紫外線吸収剤組成物の形態に特に制限はないが、分散液であることが好ましい。本発明においては、低変性リグニンを水に分散させた水分散液であることが好ましい。水分散液とすることで、他成分との複合において、有機溶媒フリーのプロセスを可能とする。さらに、低変性リグニンの水分散液を乾燥させることで、透明膜を作製することもできる。よって、複合媒体である他成分の成膜性を損なわない。
リグニンは、芳香族化合物残基の骨格内で、フェノール性水酸基のパラ位のビニル基が電子共役を失っているため、紫外線発色団を有すると言われている(Green Chem., 2016, vol. 18, p. 1175-1200;高部圭司著 (2013) 『リグニン利用の最新動向』坂志郎監修, 第2章『バイオマス細胞でのリグニン分布と構造の多様性』など参照)。低変性リグニンについても、この紫外線発色団が、低変性リグニンを配合した高分子材料に紫外線吸収性を与えると推察される。
植物原料からリグニンを抽出する際にリグニンが変性すると、チオール基、スルホン酸基、メチル基などの官能基やエーテル結合などがリグニン骨格に導入される。全リグニン骨格に対する、変性したリグニン骨格の割合が増加すると、ランダムな縮合反応が生じやすくなり、溶媒分散性、成膜性、リグニン自体の色、他成分との混和性、分子量など、リグニン自体の性状が変化し、リグニンの性状の安定性に欠ける。
これに対して本発明では、低変性リグニンを有効成分とすることで、溶媒分散性、成膜性、リグニン自体の色、他成分との混和性、分子量などの性状が安定した、紫外線吸収剤、紫外線吸収剤組成物及び紫外線吸収用高分子材料を提供できる。
本発明の紫外線吸収剤の有効成分である低変性リグニンは紫外線吸収能を有するため、様々な用途に利用することができる。
例えば、紫外光に感受性の有機材料、特にヒトならびに動物の皮膚および毛髪を、紫外線照射の損傷作用から防御することができ、化粧用調製品、医薬製剤、獣医薬製剤などの紫外線吸収剤組成物に配合することができる。
あるいは、低変性リグニンと高分子物質を含有する組成物を常法に従い成形し、紫外線吸収用高分子材料を得ることもできる。紫外線吸収用高分子材料の具体例として、ガラス代替品とその表面コーティング材、住居、施設、輸送機器などの窓ガラス、採光ガラスおよび光源保護ガラス用のコーティング材、住居、施設、輸送機器などの内外装材および内外装用塗料、蛍光灯、水銀灯などの紫外線を発する光源用部材、精密機械、電子電気機器用部材、各種ディスプレイから発生する電磁波などの遮断用材、食品、化学品、薬品などの容器または包装材、農工業用シートまたはフィルム材、印刷物、染色物、染顔料などの退色防止剤、日焼け止めクリーム、シャンプー、リンス、整髪料などの化粧品、スポーツウェア、ストッキング、帽子などの衣料用繊維製品および繊維、カーテン、絨毯、壁紙などの家庭用内装品、プラスチックレンズ、コンタクトレンズ、義眼などの医療用器具、光学フィルタ、プリズム、鏡、写真材料などの光学用品、テープ、インクなどの文房具、標示板、標示器などとその表面コーティング材が挙げられる。本発明の高分子材料の形状としては、平膜状、粉状、球状粒子、破砕粒子、塊状連続体、繊維状、管状、中空糸状、粒状、板状、多孔質状などのいずれの形状であってもよい。
本発明の紫外線吸収剤組成物及び紫外線吸収用高分子材料に用いられる高分子物質は、用途に応じて適宜選択でき、特に制限するものではない。本発明で用いる高分子物質は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、及びポリビニルアルコール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子物質が好ましい。なお、本発明で用いる高分子物質は、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。
また、本発明の紫外線吸収剤組成物及び紫外線吸収用高分子材料には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、加工安定剤、老化防止剤、相溶化剤、白色顔料、着色剤、蛍光増白剤などの任意の添加剤を適宜含有してもよい。
本発明の紫外線吸収剤組成物及び紫外線吸収用高分子材料に含まれる低変性リグニンの量に特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができる。UVA領域(315〜400nm)及びUVB領域(290〜315nm)の紫外線を完全に吸収させるには、紫外線吸収組成物ないし高分子材料の総量に対して、低変性リグニンの含有量が50質量%以下であることが好ましい。また、UVA領域及びUVB領域の紫外線の大部分を吸収し、かつ紫外線吸収剤組成物及び紫外線吸収用高分子材料の透明性を確保するには、紫外線吸収組成物ないし高分子材料の総量に対する低変性リグニンの含有量は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。また、低変性リグニンの含有量の下限値も適宜設定することができ、紫外線吸収組成物ないし高分子材料の総量に対する低変性リグニンの含有量は、0.2質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が特に好ましい。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<低変性リグニンの調製>
スギをカッターミル又はジェットミルにより0.02〜5mm程度の大きさに粉砕し、植物粉を得た。得られた植物粉500gを100mMリン酸緩衝液(pH=4〜6)4.5Lに一晩浸し、湿式粉砕装置LMZ4(商品名、アシザワ・ファインテック社製)に緩衝液とともに投入した。デュポンジェネンコア社製のセルラーゼ・ヘミセルラーゼ混合液(OptimashXL及びOptimashBGそれぞれ50mL)をさらに添加し、50℃に保ちながら、ジルコニア金属製の0.5mm径のビーズを用いて湿式粉砕を行った。
前記湿式粉砕において適宜植物粉の平均粒度を測定し、平均粒度が10μmとなった時点で、前記ビーズをジルコニア金属製の0.1mm径のビーズに交換した。
上記湿式粉砕は、合計4時間行った。湿式粉砕を進めるにつれ、植物粉懸濁液の粘度は減少した。懸濁液中粒子の平均一次粒径は30〜40nmであった。
粉砕終了後、遠心分離により上清と残渣とを分離し、上清中の糖をソモギーネルソン法により定量した。残渣を水で洗浄した後、残渣に再度セルラーゼ・ヘミセルラーゼ混合液及びリン酸緩衝液1Lを添加し、50℃で12時間攪拌することにより糖化反応を行った。反応終了後、遠心分離により上清と残渣に分離し、残渣としてリグニン(低変性リグニン)を得た。得られた上清について、同様に糖量を定量した。
得られた上清中の糖の合計量は原料植物粉の総多糖量の約83%であった。すなわち、植物粉に含まれるセルロース・ヘミセルロースの約83%は分解され、糖として上清に溶出していることが確認された。
<ニトロベンゼン酸化分解率の測定>
前記低変性リグニンを風乾して得た粉末100mg、1N NaOH溶液7mL、及びニトロベンゼン0.4mLを10mL容のステンレスオートクレーブに投入し、170℃で攪拌しながら2.5時間反応させた。反応終了後、内部標準としてp-ヒドロキシ安息香酸15mgを添加した。等量のジエチルエーテルで3回抽出し、ニトロベンゼンと副反応物であるアニリン及びアゾベンゼンを除去した。残った水層に塩酸を添加してpH1.0に調製し、再度等量のジエチルエーテルで3回抽出した。得られた抽出液を減圧下で乾燥し、低変性リグニンから生成した芳香族化合物を得た。得られた芳香族化合物を、10%アセトニトリルを含む10mMリン酸溶液に溶解し、高速液体クロマトグラフィーにより、生成した芳香族化合物の定性及び定量を行った。
その結果、芳香族化合物としてバニリンが20.926mg、バニリン酸が1.72mg、シリンガアルデヒドが1.87mg得られ、用いた低変性リグニンから24.5%の割合で単量体成分の芳香族化合物が得られた。すなわち低変性リグニンのニトロベンゼン酸化分解率は、24.5%であった。
一方、従来のサルファイト蒸解法およびアルカリソーダ蒸解法(原口隆英他、「木材の化学」、1985年、文永堂出版参照)で得られるサルファイトリグニン及びクラフトリグニンについて同様にニトロベンゼン酸化分解率を測定した。その結果、ニトロベンゼン分解率は7〜11%であった。また、スギ木粉についても同様にニトロベンゼン酸化分解率を測定した結果、約27%であった。
よって、前記方法により調製した低変性リグニンは、処理されていない未変性のリグニンの状態(性質)に近いことが確認された。
<低変性リグニン超純水分散液の調製>
前記方法で得られた低変性リグニンについて、緩衝剤や酵素などの不純物を除去するため、以下の工程で洗浄した。
低変性リグニンを含む残渣について、21,000×g、90分の条件の遠心分離処理により1〜2回上清の除去と超純水への分散を繰り返し、低変性リグニン超純水分散液を得た。低変性リグニン超純水分散液は7〜10質量パーセントで冷蔵状態にて半年間は沈降を起こさない均一な分散液であった。
<実施例1>
ポリビニルアルコール(PVA、ナカライテスク社製、数平均分子量3,000)を超純水に分散した。低変性リグニンの配合量が1質量%となるように、ポリビニルアルコールの分散液と低変性リグニン超純水分散液とを混合した。キャスティングナイフを用いて、常温でPET(ポリエチレンテレフタレート)シート上で得られた混合液を延伸した。この際キャスティングナイフのクリアランスは0.6 mmであった。延伸した分散液を室温で乾燥し、膜厚26μmの複合膜を作製した。
<実施例2>
低変性リグニンの配合量を3質量%とした以外は実施例1と同様にして、膜厚32μmの複合膜を作製した。
<実施例3>
低変性リグニンの配合量を5質量%とした以外は実施例1と同様にして、膜厚70μmの複合膜を作製した。
<実施例4>
低変性リグニンの配合量を10質量%とした以外は実施例1と同様にして、膜厚34μmの複合膜を作製した。
<実施例5>
低変性リグニンの配合量を20質量%とした以外は実施例1と同様にして、膜厚34μmの複合膜を作製した。
<実施例6>
低変性リグニンの配合量を50質量%とした以外は実施例1と同様にして、膜厚50μmの複合膜を作製した。
<比較例1>
低変性リグニンを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、膜厚39μmのPVA膜を作製した。
<比較例2>
ポリビニルアルコール(PVA、ナカライテスク社製、数平均分子量3,000)を超純水に分散した。水に懸濁した市販のクラフトリグニン(Sigma-Aldrich社製)の配合量が5質量%となるように、ポリビニルアルコールの分散液とクラフトリグニン超純水懸濁液とを混合した。キャスティングナイフを用いて、常温でPET(ポリエチレンテレフタレート)シート上で得られた混合液を延伸した。この際キャスティングナイフのクリアランスは0.6 mmであった。延伸した混合液を室温で乾燥し、クラフトリグニンが不均一に分散した膜厚24μmの複合膜を作製した。
なお、前述の方法と同様の方法によりクラフトリグニンのニトロベンゼン酸化分解率を測定した。その結果、クラフトリグニンのニトロベンゼン酸化分解率は13.2%であった。
<試験例 低変性リグニンの紫外線吸収剤としての機能評価>
(1)PVA膜の透明性
実施例3及び6で作製した複合膜、並びに比較例1で作製したPVA膜を、国立研究開発法人産業技術総合研究所のロゴマークが記載された台紙にのせ、デジタルカメラで撮影した。その写真を図1に示す。
図1に示すように、比較例1で作製したPVA膜は透明なので、PVA膜を乗せた台紙に記載された国立研究開発法人産業技術総合研究所のロゴマークがはっきりと視認できる。そして、低変性リグニンを配合した複合膜については、低変性リグニンの配合量の増加につれ、リグニン由来の茶色の着色はあったが、50重量%で低変性リグニンを配合した実施例6の複合膜においても、台紙に記載されたロゴマークの視認性は保たれた。
以上の結果から、低変性リグニンをPVAに配合しても、透明なPVA複合膜が得られることが示唆される。
(2)紫外可視吸収スペクトル測定、並びにUVA透過率、UVB透過率及び全光線透過率の算出
実施例3及び比較例2で得られた複合膜、並びに比較例1で得られたPVA膜について、日立ハイテクノロジーズ製紫外可視吸光度計U-2910を用いて、ランベルト・ペールの法則に従い透過度を測定した。実施例3で得られた複合膜及び比較例1で得られたPVA膜の透過度を図2に示し、実施例3及び比較例2で得られた複合膜の透過度を図3に示す。
図2に示すように、比較例1のPVA膜と比較して、低変性リグニンを含有する実施例3の複合膜では、紫外光領域にあたる400nm以下の光透過率の大幅な減少が確認された。さらに、図3に示すように、比較例2で得られた複合膜は全光線透過率が低く、400nm以下の光透過率は減少したが、400nm〜700nmの可視光領域の光透過率も著しく損なわれた。よって、比較例2の複合膜の作製に用いたクラフトリグニンは、紫外線吸収剤としての利用が困難と見込まれた。
さらに、実施例1〜6及び比較例2で作製した複合膜、並びに比較例1で作製したPVA膜について、太陽から地表に降り注ぎ人体に有害とされるUVA領域(315〜400nm)及びUVB領域(290〜315nm)の透過率(UVA透過率及びUVB透過率)をそれぞれ評価した。UVA透過率は、315〜400nmの範囲内の透過度を波長5nmごとに測定した値をT波長として、下記の通りに算出した。UVB透過率は、290〜315nmの範囲内の透過度を波長5nmごとに測定した値をT波長として、下記の通りに算出した。
UVA透過率=(T315+T320+T325+T330+T335+T340+T345+T350+T355+T360+T365+T370+T375+T380+T385+T390+T395+T400)/18
UVB透過率=(T290+T295+T300+T305+T310+T315)/6
さらに、実施例1〜6及び比較例2で作製した複合膜、並びに比較例1で作製したPVA膜の全光線透過率を、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH5000により測定した。
その結果を表1に示す。
表1に示すように、比較例1のPVA膜は、紫外線を80%以上透過する。また、比較例2の複合膜は前述のように、UVA透過率及びUVB透過率はいずれも減少したが、全光線透過率も低いため、紫外線吸収剤としての利用が困難である。
これに対して、低変性リグニンの含有率の増加に伴い、UVA透過率及びUVB透過率が共に減少した(実施例1〜6)。これは低変性リグニンが紫外線吸収剤として作用していることを意味する。特に、低変性リグニンの含有率が5質量%の複合膜では、UVA透過度が9%以下、UVB透過度が0%となり、UVA透過率及びUVB透過率の減少が顕著であった。
一方、全光線透過率については、低変性リグニンを1〜20質量%含む複合膜(実施例1〜5)において、リグニンを含有しないPVA膜(比較例1)に比べて、10%以上の全光線透過率の減少は確認されず、複合膜の透明性が確保された。この結果は、低変性リグニンが紫外線を選択的に効率よく吸収することを示唆する。
低変性リグニンを50質量%含有した複合膜(実施例6)は、リグニンを含有しないPVA膜(比較例1)に比して33%低い全光線透過率を示した。このため、透明性を確保しつつ高い紫外線吸収機能を担保するには、リグニンの配合量が5〜20質量%に設定することが好ましいと言える。
<複合膜中における低変性リグニン分散性評価>
実施例3、実施例6及び比較例2で得られた複合膜中におけるリグニンの分散状態について、透過型電子顕微鏡により評価した。
実施例3及び6で得られた複合膜に含まれる低変性リグニンを、四酸化オスミウムを用いて染色し、ウルトラミクロトーム(LEICA ULTRACUT UCT)にて薄片化し、透過型電子顕微鏡JEM-2100Fにて加速電圧200kVで観察した。その結果を図4(a)及び(b)に示す。比較例2で得られた複合膜については、四酸化オスミウムで染色した後の外観写真を図4(c)に示す。
図4(a)及び(b)に示す通り、低変性リグニンがナノサイズで分散しているのが確認された。ナノサイズでのリグニン分散が、複合膜の透明性を担保しながらも、低変性リグニン由来の紫外線吸収性を複合膜にもたらしていると考えられる。
これに対して、比較例2の市販のクラフトリグニンを配合したPVA膜においては、クラフトリグニンが溶媒に分散せず、混合段階で沈殿を起こした。その結果、図4(c)に示すように、クラフトリグニンの懸濁液を使用して成膜を試みても目視できるサイズのクラフトリグニンの粒子が確認された。
以上のように、本発明の紫外線吸収剤で有効成分とする低変性リグニンは、紫外線吸収能を有する。よって、本発明によれば、紫外線吸収能に優れた紫外線吸収剤を提供することができる。
なお、低変性リグニンは、石油系溶媒や強酸、強アルカリなどの有毒な薬品を用いることなく、温和な条件で調製することができる。よって、環境や人体に大きな影響(負荷)を与えることなく、本発明の紫外線吸収剤に用いることができ、紫外線吸収剤組成物及び紫外線吸収用高分子材料を提供できる。さらに本発明によれば、トリアゾールを例とした有害性が懸念される薬品を用いずとも、紫外線吸収剤組成物及び紫外線吸収用高分子材料に優れた紫外線吸収性を付与することができる。

Claims (13)

  1. 低変性リグニンを有効成分とする、紫外線吸収剤であって、前記低変性リグニンに対してアルカリニトロベンゼン酸化反応を行うことで生成する芳香族化合物の含有量が、植物原料中の総リグニン質量に対して15%以上である、紫外線吸収剤。
  2. 前記低変性リグニンの粒径が20〜1000nmである、請求項1に記載の紫外線吸収剤。
  3. セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを含有する植物原料をセルロース及びヘミセルロースの糖化酵素の存在下に湿式粉砕して粉砕物を得、該粉砕物を、糖類を含む液状成分と、リグニンを含む含溶媒固形成分とに固液分離し、得られた含溶媒固形成分が前記低変性リグニンである、請求項1又は2に記載の紫外線吸収剤。
  4. 前記紫外線吸収剤が水分散液である、請求項1〜3のいずれか1項記載の紫外線吸収剤。
  5. 低変性リグニンと、高分子物質を含有する、紫外線吸収剤組成物であって、前記低変性リグニンに対してアルカリニトロベンゼン酸化反応を行うことで生成する芳香族化合物の含有量が、植物原料中の総リグニン質量に対して15%以上である、紫外線吸収剤組成物。
  6. 紫外線吸収組成物の総量に対する低変性リグニンの含有量が、0.2質量%以上50質量%以下である、請求項5に記載の紫外線吸収剤組成物。
  7. 前記低変性リグニンの粒径が20〜1000nmである、請求項5又は6に記載の紫外線吸収剤組成物。
  8. 前記高分子物質が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、及びポリビニルアルコール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子物質である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の紫外線吸収剤組成物。
  9. 前記紫外線吸収剤組成物が水分散液である、請求項5〜8のいずれか1項記載の紫外線吸収剤組成物。
  10. 低変性リグニンと、高分子物質を含有する、紫外線吸収用高分子材料であって、前記低変性リグニンに対してアルカリニトロベンゼン酸化反応を行うことで生成する芳香族化合物の含有量が、植物原料中の総リグニン質量に対して15%以上である、紫外線吸収用高分子材料。
  11. 高分子材料の総量に対する低変性リグニンの含有量が、0.2質量%以上50質量%以下である、請求項10に記載の紫外線吸収用高分子材料。
  12. 前記低変性リグニンの粒径が20〜1000nmである、請求項10又は11に記載の紫外線吸収用高分子材料。
  13. 前記高分子物質が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、及びポリビニルアルコール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子物質である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の紫外線吸収用高分子材料。




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