JP2020203884A - アジスロマイシンを含む製剤の品質管理 - Google Patents

アジスロマイシンを含む製剤の品質管理 Download PDF

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林 加奈子
Kanako Hayashi
加奈子 林
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【課題】アジスロマイシンを含む製剤の品質の管理のための規格を設定する方法を提供すること。【解決手段】本開示の方法は、1)該製剤のpHの規格値の下限と上限をそれぞれ5.9と6.7に設定するか、または該製剤のpHの規格値の範囲を5.9〜6.7の任意の範囲に設定する工程と、2)該製剤の所定の有効期間の該アジスロマイシンの類縁物質Xおよび類縁物質Yの量のそれぞれの規格値を5%以下の任意の値以下に設定する工程と、を含む。【選択図】なし

Description

本開示は、アジスロマイシンを含む製剤の品質の管理のための規格を設定する方法に関する。
アジスロマイシンはマクロライド抗菌剤であり、アジスロマイシンを含む製剤は、眼感染症治療薬として有用であり、感染症予防薬として利用されている。
本発明者らは、鋭意検討の結果、アジスロマイシンを含む製剤におけるアジスロマイシンの複数種類の分解物を低値に抑えるための条件を備える点眼剤およびその調製技術を提案する。
したがって、本開示は、以下の項目を提供する。
<品質管理規格設定>
(項目1A)
アジスロマイシンを含む製剤の品質の管理のための規格を設定する方法であって、該方法は、
1)該製剤のpHの規格値の下限と上限をそれぞれ5.9と6.7に設定するか、または該製剤のpHの規格値の範囲を5.9〜6.7の任意の範囲に設定する工程と、
2)該製剤の所定の有効期間の該アジスロマイシンの類縁物質Xおよび類縁物質Yの量のそれぞれの規格値を5%以下の任意の値以下に設定する工程と、
を含み、
該類縁物質Xは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.23の化合物であり、
該類縁物質Yは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.56の化合物である、方法。
(項目2A)
前記製剤は、ポリカルボフィル、カルボポール(Carbopol)TM、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖類ゲル、ゲルライト(Gelrite)TM、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される添加物を含む、項目1Aに記載の方法。
(項目3A)
前記製剤が、約1w/w%のアジスロマイシンを含む点眼剤である、項目1Aまたは2Aに記載の方法。
(項目4A)
前記製剤が、開封後少なくとも1週間室温で保存される、項目1A〜3Aのいずれか一項に記載の方法。
(項目5A)
前記製剤が、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.53 粘度測定法に記載の第2法により測定された場合、約500〜約5000mPa・sの粘度を有する、項目1A〜6Aのいずれか一項に記載の方法。
(項目6A)
前記工程2)の規格値は、前記製剤を保存し、該保存中および/または保存後の1または複数の時点で、該製剤のpH測定および該製剤中の前記類縁物質Xおよび前記類縁物質Yの量を測定することによって得られた値に基づいて設定される、項目1A〜5Aのいずれか一項に記載の方法。
(項目7A)
アジスロマイシンを含む製剤の承認申請書類を調製する方法をコンピュータに実装するプログラムであって、
該製剤は約1w/w%のアジスロマイシンを含む点眼剤であり、
該方法は、
1)該製剤のpHに対する安定性の試験結果またはその同等物に基づいて、該製剤のpHの規格値の下限と上限をそれぞれ5.9と6.7に設定するか、または該製剤のpHの規格値の範囲を5.9〜6.7の任意の範囲に設定するようにコンピュータに指令する工程と、
2)該製剤の安定性試験の結果またはその同等物に基づいて、該製剤の所定の有効期間の該アジスロマイシンの類縁物質Xおよび類縁物質Yの量のそれぞれの規格値を5%以下の任意の値以下に設定するようコンピュータに指令する工程と、
を含み、該類縁物質Xおよび該類縁物質Yは項目1Aに記載のとおりである、
プログラム。
(項目8A)
前記安定性試験は、長期安定性試験および/または加速試験を含む、項目7Aに記載のプログラム。
<出荷時規格>
(項目1B)
アジスロマイシンを含む製剤の出荷時の品質を検査する方法であって、該方法は、
1)該製剤の出荷時のpHを測定し、該pHが5.9〜6.7のものを適合と判定する工程と、
2)該製剤の出荷時の該アジスロマイシンの類縁物質の量を測定し、該アジスロマイシンの類縁物質Xおよび類縁物質Yのそれぞれが2%以下の任意の値以下のものを適合と判定する工程と、
を含み、
該類縁物質Xは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.23の化合物であり、
該類縁物質Yは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.56の化合物である、方法。
(項目2B)
アジスロマイシンを含む製剤は、36カ月後の類縁物質Xおよび類縁物質Yの値が5%以下である、項目1Bに記載の方法。
(項目3B)
前記製剤は、ポリカルボフィル、カルボポール(Carbopol)TM、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖類ゲル、ゲルライト(Gelrite)TM、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される添加物を含む、項目1Bまたは2Bに記載の方法。
(項目4B)
前記製剤が、約1w/w%のアジスロマイシンを含む点眼剤である、項目1B〜3Bのいずれか一項に記載の方法。
(項目5B)
前記製剤は、5℃±3℃で保存されるものである、項目1B〜4Bのいずれか一項に記載の方法。
(項目6B)
前記製剤が、開封後少なくとも1週間室温で保存される、項目1B〜5Bのいずれか一項に記載の方法。
(項目7B)
前記製剤は、細菌性結膜炎、眼瞼炎、麦粒腫、および涙嚢炎からなる群より選択される少なくとも1つの疾患の治療または予防剤である、項目1B〜6Bのいずれか一項に記載の方法。
(項目8B)
アジスロマイシンを含む製剤の出荷試験を制御する方法をコンピュータに実装するプログラムであって、
該製剤は約1w/w%のアジスロマイシンを含む点眼剤であり、
該方法は、
1)該製剤の出荷時のpHを測定し、該pHの範囲が5.9〜6.7の任意の範囲のものを適合と判定するようコンピュータに指令する工程と、
2)該製剤の出荷時の該アジスロマイシンの純度試験を実施し、類縁物質Xおよび類縁物質Yのそれぞれが5%以下の任意の値以下のものを適合と判定するようコンピュータに指令する工程と、
を含み、該類縁物質Xおよび類縁物質Yは項目1Bに記載のとおりである、
プログラム。
<製造方法>
(項目1C)
アジスロマイシンを含む製剤を製造する方法であって、
1)該製剤の出荷時のpHの規格値の範囲を5.9〜6.7の任意の範囲に設定する工程と、
2)該製剤の出荷時の該アジスロマイシンの類縁物質Xおよび類縁物質Yの量のそれぞれの規格値を2%以下の任意の値以下に設定する工程と、
3)該製剤が工程1)および工程2)の規格値となるように該製剤を調製する工程と、
4)該製剤のpH測定および該製剤中の該類縁物質Xおよび該類縁物質Yの量を測定する工程と
を含み、
該類縁物質Xは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.23の化合物であり、
該類縁物質Yは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.56の化合物である、方法。
(項目2C)
アジスロマイシンを含む製剤を製造する方法であって、
1)該製剤のpHが5.9〜6.7の範囲となるように調整する工程と、
2)該製剤中の類縁物質Xおよび類縁物質Yのそれぞれが5%以下の任意の値以下となるように該製剤を調製する工程と、
を含む、方法。
(項目3C)
前記製剤のpHの範囲は、所定の有効期間の前記製剤のpHが5.9〜6.7の範囲であることが保証される値であり、および/または該製剤の出荷時の該類縁物質Xおよび類縁物質Yのそれぞれの量が、所定の有効期間の該類縁物質XおよびYの値が5%以下の任意の値以下であることが保証される値である、項目1Cまたは2Cに記載の方法。
(項目4C)
前記製剤は、ポリカルボフィル、カルボポール(Carbopol)TM、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖類ゲル、ゲルライト(Gelrite)TM、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される添加物を含む、項目1C〜3Cのいずれか一項に記載の方法。
(項目5C)
前記製剤が、約1w/w%のアジスロマイシンを含む点眼剤である、項目1C〜4Cのいずれか一項に記載の方法。
(項目6C)
前記製剤が、開封後少なくとも1週間室温で保存される、項目1C〜5Cのいずれか一項に記載の方法。
(項目7C)
前記工程2)の規格値は、前記製剤を保存し、該保存中および/または保存後の1または複数の時点で、該製剤のpH測定および該製剤中の前記類縁物質Xおよび前記類縁物質Yの量を測定することによって得られた値に基づいて設定される、項目1C、または2C〜9Cのいずれか一項に記載の方法。
<システム>
(項目1D)
項目1A〜6Aおよび項目1B〜6Bのいずれか一項に記載の方法を実施するためのシステムであって、該システムは、
1)前記製剤のpHを測定する手段と、
2)前記製剤中の前記アジスロマイシンの類縁物質Xおよび類縁物質Yの量を測定するための手段と
を備える、システム。
(項目2D)
前記pHを測定する手段が、ガラス電極および参照電極からなる検出部と、検出された起電力を増幅する増幅部と、測定結果を表示する指示部とを含むpH計である、項目1Dに記載のシステム。
(項目3D)
前記類縁物質Xおよび類縁物質Yの量を測定するための手段が、移動相送液用ポンプ、試料導入装置、カラム、検出器および記録装置からなる液体クロマトグラフィー装置である、項目1Dまたは2Dに記載のシステム。
(項目4D)
粘度を測定するための手段をさらに備える、請求項1D〜3Dのいずれか一項に記載のシステム。
本開示において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本開示のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
本開示によれば、アジスロマイシンの複数種類の類縁物質(分解物)をバランスよく低値に抑えることが可能であり、点眼剤として長期に安定な製剤が提供され得る。
図1は、1w/w%アジスロマイシン点眼剤の苛酷試験における類縁物質Xの増加量の経時的変化のグラフを示す。 図2は、1w/w%アジスロマイシン点眼剤の苛酷試験における類縁物質Yの増加量の経時的変化のグラフを示す。 図3は、長期保存試験12カ月のデータに基づいて類縁物質Xの量の推定モデルのグラフを示す。 図4は、長期保存試験12カ月のデータに基づいて類縁物質Yの量の推定モデルのグラフを示す。
以下、本開示を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。本明細書において、「約」とは、後に続く値の±10%を意味する。
(定義)
本明細書では「アジスロマイシン」とは、アザリド類(azalides)(または、アゾリド類(azolides))に分類されるマクロライド系抗生物質の既知サブクラス(アザリド系抗生物質ともいわれる。)に属する抗生物質であり、一般名称:N−メチル−11−アザ−10−デオキソ−10−ジヒドロエリスロマイシンと表示される(以下においてRおよびRが水素のものに該当する。)。
アジスロマイシンは、静菌または殺菌活性を示すことが知られている。アジスロマイシンは従来は経口用抗生物質として使用されており、ファイザー社よりジスロマックスTM(Zithromax)なる商品名で世界中に販売されている。アジスロマイシンは、一般にin vitroではエリスロマイシンより有効な広いスペクトルの抗生物質である。アジスロマイシンは米国特許第4,474,768号および第4,517,359号(各米国特許の全内容をここに参考として援用する)に開示された化合物であって、最も好ましいアザリド系抗生物質である。具体的には、アジスロマイシンの水和物形態が本発明での使用に特に考えられるが、他の形態も好適である。通常、眼の組織における感染(症)を治療または予防するのに有効な量で用いられる。アジスロマイシンは、経口投与などで利用されていたが、近時眼への局所適用も報告される(例えば、特許4904621号参照)。
本明細書で使用される場合、「類縁物質(アナログ)」とは、医薬品の製造中の副生成物、中間生成物、保管中の分解物等であり、親化合物(例えば、アジスロマイシン)と類似した構造を有する化合物を指す。
本明細書で使用される場合、「相対保持時間」とは、液体クロマトグラフィーを用いた測定方法において、アジスロマイシンの保持時間に対する特定の類縁物質の保持時間の比を指す。
本明細書において使用される場合、「感度係数」とは、特定波長(例えば、波長207nm)におけるアジスロマイシンの吸収強度に対する特定の類縁物質の吸収強度の比を指す。
本明細書において使用される場合、「粘度」とは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.53 粘度測定法に記載の第2法によって測定される粘度を指す。
本明細書において使用される場合、「pH」とは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.54 pH測定法に記載の方法によって測定されるpHを指す。
本明細書において使用される場合、「所定の有効期間」とは、2〜8℃の貯蔵における、製造後少なくとも12カ月、少なくとも24カ月、または少なくとも36カ月の期間を指す。本有効期間は、短期的に2〜8℃の貯蔵条件を逸脱する場合も許容する。
(アジスロマイシンの眼科適用)
本明細書において、アジスロマイシンが対象とし得る疾患、障害または症状は、眼疾患、眼障害または眼の症状があげられる。アジスロマイシンが治療し得る疾患、障害または症状は、眼瞼炎、眼瞼結膜炎、マイボーム腺炎、急性もしくは慢性麦粒腫、霰粒腫、涙嚢炎、涙腺炎、および酒さ性座瘡を含む眼瞼の症状;結膜炎、新生児眼炎、およびトラコーマを含む結膜の症状;角膜潰瘍、表在性角膜炎および角膜実質炎、角結膜炎、異物を含む角膜の症状;ならびに眼内炎、感染性ブドウ膜炎があげられるがこれらに限定されない。
本明細書において、1つの典型的な実施形態では、効能効果としては、<適応菌種>として、アジスロマイシンに感受性のブドウ球菌属菌、レンサ球菌属菌、肺炎球菌、コリネパクテリウム属菌、インフルエンザ菌、アクネ菌の少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ、あるいはすべて、<適応症>として、結膜炎、眼険炎、麦粒腫、涙嚢炎のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、3つ、4つすべて等を挙げることができる。適応菌種としては、上記に加えてあるいはその代わりに、淋菌、モラクセラ・カタラーリスを含んでいてもよい。
1つの実施形態では、用法用量としては、<結膜炎>に対して、通常、成人及び7歳以上の小児には、1回1滴、1日2回2日間、その後、1日1回5日間点眼する、と記載してもよく、<眼険炎、麦粒腫、涙嚢炎>に対しては、通常、成人には、1回1滴、1日2回2日間、その後、1日1回12日間点眼する、と記載してもよい。適用条件としての対応を行うため、医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すると記載してもよい。
アジスロマイシンは、多様な細菌により引き起こされる眼感染症の治療または予防に使用することができ、それらの細菌としては下記の1または2以上が挙げられるが、それらに限定されない。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) および表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)を含むブドウ球菌属菌(Staphylococcus);肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)および化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)ならびにC、FおよびG群のレンサ球菌およびビリダンス群(Viridans group)のレンサ球菌を含むレンサ球菌属菌(Streptococcus);バイオタイプIII (H. aegyptius, エジプトヘモフィルス) を含むインフルエンザ菌(Haemophilus influenza);軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi);モラクセラ・カタラリス(Moraxella catarrhalis)およびモラクセラ・ラクナータ(Moraxella lacunata)を含むモラクセラ属菌(Moraxella);淋菌(Neisseria ganorrhoae)および髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)を含むナイセリア属(Neisseria);トラコーマクラジミア(Chlamydia trachomatis)、オウム病クラジミア(Chlamydia psittaci)およびクラジミア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)を含むクラジミア属(Chlamydia)、エンテロコッカス属菌(Enterococcus)バチルス属菌(Bacillus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、大腸菌(Escherichia coli)、またはアクネ菌(Propionibacterium acnes)を含むプロピオニバクテリウム属菌(Propionibacterium)。好ましくは、ブドウ球菌属菌、レンサ球菌属菌、肺炎球菌、コリネパクテリウム属菌、インフルエンザ菌、アクネ菌の少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ、あるいはすべて、である。
1つの典型的な実施形態では、アジスロマイシンは、細菌性結膜炎、眼瞼炎、麦粒腫、および涙嚢炎のすくなくとも1つ、2つ、3つまたは4つすべての治療および/または予防に使用されることができる。
アジスロマイシンは、通常は眼科に許容される担体とともにアジスロマイシンを含む眼科に許容される組成物として、眼の外表面に適用される。「眼科に許容される担体」なる用語は広義の意味で使用され、アジスロマイシンを含有および放出することができ、眼と適合性のある任意の材料または組成物を包含する。典型的には、眼科に許容される担体は水または水性の溶液もしくは懸濁液であるが、軟膏の製造に使用されるような油類、および眼用インサート剤に使用されるようなポリマーマトリックスも包含する。眼科用組成物中に存在するアジスロマイシンの濃度は、剤形、放出速度、投与計画ならびに感染の部位および種類に依存する。一般的に言って、濃度は流体組成物(粘度のある組成物を含む)の場合で約0.01〜2w/w%、より典型的には0.1〜1w/w%の範囲である。典型的には、アジスロマイシンは、アジスロマイシン換算で1w/w%で使用される。
アジスロマイシンを含む眼科用組成物は下記の1または2以上の成分を含有しうる:界面活性剤、追加の薬剤を含む補助薬(佐剤)、緩衝剤、酸化防止剤、張性(浸透圧)調整剤、保存剤、増粘剤もしくは粘度調整剤など。処方組成物における添加剤は、塩化ナトリウム、EDTA(エデト酸二ナトリウム)、ならびに/またはBAK(塩化ベンザルコニウム)、ソルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジンおよび過ホウ酸ナトリウムを含有することが望ましいこともある。
アジスロマイシンを含む水性眼科用組成物(溶液剤または懸濁液剤)は、生理学的または眼科学的に有害な成分を有していない水を使用する。典型的には精製水または脱イオン水を使用する。pHは、任意の生理学的および眼科学的に許容されたpH調整用の酸、塩基または緩衝剤を添加して、約5.0〜8.5、好ましくは5.9〜6.7の範囲内に調整する。酸の例としては、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、塩酸などの酸が挙げられ、塩基の例としては、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、トロメタミン、THAM(トリスヒドロキシメチルアミノ−メタン)などが挙げられる。塩および緩衝剤としては、クエン酸/デキストロース、重炭酸ナトリウム、塩化アンモニウムおよび前述の酸と塩基との混合物が挙げられる。
水性眼科用組成物の浸透圧(π)は一般に約10ミリオスモル(mOsM)から約400mOsM、より好ましくは260〜340mOsMの範囲である。必要なら、適当な量の生理学的および眼科学的に許容される塩または賦形剤を用いて浸透圧を調整できる。塩化ナトリウムが生理学的流体に近似させるのに好適である。カリウム、アンモニウムなどのカチオンと、塩素、クエン酸、アスコルビン酸、ホウ酸、リン酸、重炭酸、硫酸、チオ硫酸、重硫酸などのアニオンとからなる塩、例えば、硫酸水素ナトリウム、硫酸アンモニウムなど、の1種もしくは2種以上の塩を、塩化ナトリウムに加えてまたは塩化ナトリウムに代えて、等量で使用して上記範囲内の浸透圧を得ることもできる。また、マンニトール、デキストロース、ソルビトール、グルコースなどの糖を使用して浸透圧を調整することもできる。
1つの典型的な剤形は水性ポリマー懸濁液である。この場合、アジスロマイシンまたはポリマー懸濁剤の少なくとも一方が、上述したような特性を有する水性媒質中に懸濁している。典型的には、アジスロマイシンが懸濁状態となるが、アジスロマイシンが溶液状態(水溶性)であるか、両方が溶液状態と懸濁状態とをとり、各相において一般に5w/w%以上の顕著な量(弱〜中水溶性で、比較的高い合計濃度)とすることも可能である。ポリマー懸濁剤は、好ましくは懸濁状態(即ち、水不溶性および/または水膨潤性)であるが、水溶性懸濁剤もアジスロマイシンの懸濁液と一緒に使用するのに適している。懸濁剤は、懸濁液に安定性を付与して、眼表面での剤形の滞留時間を増大させる作用を果たす。これはまた、より長い放出時間とより均一な放出曲線の両面で薬剤の持効性(徐放性)を高めることができる。
アジスロマイシン製剤で使用され得るポリマー懸濁剤の例としては、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖類ゲル、ゲルライト(Gelrite)TM、ヒドロキシプロピル・メチルセルロースのようなセルロース系ポリマー、およびアクリル酸のポリマーもしくはコポリマーのようなカルボキシ含有ポリマー、ならびに高分子粘滑剤が挙げられる。好ましいポリマー懸濁剤は、水膨潤性で水不溶性のポリマー、特に架橋カルボキシ含有ポリマーである。
アジスロマイシン製剤で使用され得る架橋カルボキシ含有ポリマーは、一般に本技術分野では周知である。好適態様にあっては、かかるポリマーは、存在するモノマーの合計重量に基づくw/w%(重量%)で少なくとも約90%、好ましくは約95%〜約99.9%の1種もしくは2種以上のカルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーから製造したもの(本明細書ではカルボキシ−ビニルポリマーと称する場合もある)でよい。アクリル酸が好ましいカルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーであるが、他の不飽和で重合性のカルボキシル基含有モノマー、例えば、メタクリル酸、エタクリル酸、β−メチルアクリル酸(クロトン酸)、cis−α−メチルクロトン酸(アンゲリカ酸)、trans−α−メチルクロトン酸(チグリン酸)、α−ブチルクロトン酸、α−フェニルアクリル酸、α−ベンジルアクリル酸、α−シクロヘキシルアクリル酸、β−フェニルアクリル酸(ケイ皮酸)、クマリン酸(o−ヒドロキシケイ皮酸)、ウンベル酸(p−ヒドロキシクマリン酸)などを、アクリル酸に加えて、またはアクリル酸に代えて使用することができ、したがって、ポリマーはホモポリマーまたはコポリマーのいずれかあるいはその両方で提供される。
このようなポリマーは多官能性架橋剤、好ましくは二官能性架橋剤により架橋させたものでよい。架橋剤の量は、不溶性ポリマー粒子を形成するのに十分であるが、アザリド系抗生物質の徐放性を不当に妨げるほどには多くない量とすべきである。典型的にはポリマーは軽度にしか架橋させない。好ましくは、架橋剤は存在するモノマーの合計重量に基づいて約0.01w/w%〜約5w/w%、好ましくは約0.1w/w%〜約5.0w/w%、より好ましくは約0.2w/w%〜約1w/w%の量で含有させる。このような架橋剤として挙げられるのは、ジビニルグリコール、2,3−ジヒドロキシヘキサ−1,5−ジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン、N,N−ジアリルアクリルアミド、N,N−ジアリルメタクリルアミドなどの非ポリアルケニルポリエーテル型の二官能性架橋用モノマーである。また、1分子あたり2以上のアルケニルエーテル基、好ましくは末端にHC=C<基を持つアルケニルエーテル基、を含有するポリアルケニルポリエーテル型架橋剤も挙げられる。この種のポリアルケニルポリエーテル型架橋剤は、少なくとも3個のヒドロキシル基を持つ炭素数4以上の多価アルコールを臭化アリル等のハロゲン化アルケニルによりエーテル化することによって製造され、例えばポリアリルスクロース、ポリアリルペンタエリスリトールなどがある。例えば、Brownの米国特許第2,798,053号(その全内容をここに参考として援用)を参照。分子量約400〜約8,000ジオレフィン性非親水性多量体(macromeric)架橋剤、例えば、ジオールおよびポリオール類の不溶性ジおよびポリアクリレートおよびメタクリレート、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールもしくはポリシロキサンジオールから誘導されたイソシアネート末端プレポリマーとヒドロキシアルキルアクリレートもしくはメタクリレートとのジイソシアネート−ヒドロキシアルキルアクリレートもしくはメタクリレート反応生成物なども、架橋剤として使用することができる。例えば、Muellerらの米国特許第4,192,827号および第4,136,250号(その全内容を本明細書中で参考として援用する。)を参照。
アジスロマイシン製剤を局所供給するのに使用する組成物は、公知または容易に入手できる材料から公知の方法を適用して当業者が過度の実験を行わずに調製することができる。本発明で使用するアザリド系抗生物質は市販されているか、または公知の反応方法により当業者が容易に得ることができる。具体的には、アザリド系抗生物質は、ストレプトマイセス・エリスレウス(Streptomyces erythreus)の1菌株の培養中に生成する天然化合物である、エリスロマイシンAから合成することができる。ただし、アザリド系抗生物質をエリスロマイシンから実際に合成する必要はない。アザリド系抗生物質は、本技術分野で公知の慣用方法により、選択した剤形内で他の成分と混合することができる。
アジスロマイシンを含む組成物は、ヒトまたはヒト以外の動物の眼に局所適用される。動物としては、牛、羊、馬、豚、山羊、兎、犬、猫その他の哺乳動物が挙げられる。組成物は点眼液、軟膏、粘稠溶液もしくはゲル、リボンまたは固体として適用することができる。組成物は、制限されないが、眼の前側、上瞼の下側、下瞼の上側および盲管内部に局所適用することができる。適用は眼の感染症の治療または予防として行うことができる。
本明細書に記載した%は、濃度を表す場合は、特にそうではないと記載していない場合全てw/w%(重量%)を意味する。
(好ましい実施形態)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本開示の例示であり、本開示の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本開示の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。これらの実施形態について、当業者は適宜、任意の実施形態を組み合わせ得る。
(品質管理のための規格設定)
一態様において、本開示は、アジスロマイシンを含む製剤の品質の管理のための規格を設定する方法であって、該方法は、1)該製剤のpHの規格値の下限と上限をそれぞれ5.9と6.7に設定するか、または該製剤のpHの規格値の範囲を5.9〜6.7の任意の範囲に設定する工程と、2)該製剤の所定の有効期間の類縁物質Xおよび類縁物質Yの量のそれぞれの規格値を5%以下の任意の値(例えば、5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%)以下に設定する工程と、を含み、該類縁物質Xは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.23±0.03の化合物であり、該類縁物質Yは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.56±0.03の化合物である、方法を提供する。
いくつかの実施形態において、測定方法の具体例は以下のとおりである。
(測定方法)
検体約1.0gを精密に量り、2mLの移動相を加えて撹拌する。さらに、移動相を加えて正確に10mLとする。この液を孔径0.45μm以下のメンブランフィルターでろ過する。初めのろ液1mLを除き、次のろ液を試料溶液とする。別に、アジスロマイシン標準物質約21mgを精密に量り、移動相を加えて溶かし、正確に20mLとし、標準溶液とした。試料溶液および標準溶液100μLにつき、次の条件で液体クロマトグラフィー<2.01>により試験を行い、試料溶液中の個々の類縁物質のピーク面積および標準溶液中のアジスロマイシンのピーク面積を自動積分法により測定する。次の式により、個々の類縁物質の量を求める。
類縁物質Xの量および類縁物質Yの量(対表示率%)=WSd/W×A/A×5/100×P/RF
Sd:脱水物換算したアジスロマイシン標準物質の採取量(mg)=W×[100−アジスロマイシン標準物質の水分含量(%)]/100
:アジスロマイシン標準物質の採取量(mg)
:検体の採取量(g)
:測定波長207nmにおける試料溶液中の個々の類縁物質のピーク面積
:測定波長207nmにおける標準溶液中のアジスロマイシンのピーク面積
P:脱水物換算したアジスロマイシン標準物質の純度(%)
P=換算した脱水物1mg当たりのアジスロマイシン標準物質の力価(μg)/1000×100
RF:測定波長207nmにおけるアジスロマイシンに対する類縁物質X又は類縁物質Yの感度係数(類縁物質X:0.72、類縁物質Y:1.41)
HPLC条件)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:207nm)
カラム:内径4.6mm、長さ250mmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリコーンポリマー被覆シリカゲルを充填する。
カラム温度:25℃付近の一定温度
移動相:メタノール/pH6.5の15mmol/Lラウリル硫酸ナトリウム・18.75mmol/Lリン酸塩緩衝液混液(4:1)
移動相の送液:移動相を25分間送液して測定する。連続測定する場合は流路及びカラムを洗浄する。
流量:アジスロマイシンの保持時間が約14分になるように調整する。
いくつかの実施形態において、アジスロマイシンを含む製剤は、ポリカルボフィル、カルボポール(Carbopol)TM、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖類ゲル、ゲルライト(Gelrite)TM、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース等からなる群より選択される添加物を含み得る。
いくつかの実施形態において、アジスロマイシンを含む製剤は、約1w/w%のアジスロマイシンを含む点眼剤であり得る。
いくつかの実施形態において、アジスロマイシンを含む製剤は、細菌性結膜炎、眼瞼炎、麦粒腫、および涙嚢炎からなる群より選択される少なくとも1つの疾患の治療または予防剤であり得る。
いくつかの実施形態において、アジスロマイシンを含む製剤は、開封後少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも2ヶ月室温で保存され得る。
いくつかの実施形態において、アジスロマイシンを含む製剤の粘度は、約500〜約5000mPa・sの粘度を有し得る。その他、粘度の上限としては、4000mPa・s、3500mPa・s、3000mPa・s、2500mPa・s、2000mPa・sが選択され得、粘度の下限としては、600mPa・s、700mPa・s、800mPa・s、900mPa・s、1000mPa・s、1100mPa・s、1200mPa・s、1300mPa・s、1400mPa・s、1500mPa・sが選択され得るがこれらに限定されず、これらの特定の値の中間の値(例えば、明示された値から、10mPa・s×n(nは正の整数)刻みで増減した値を採用することができる。)。典型的には、粘度は、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.53 粘度測定法に記載の第2法により測定され得る。特定の実施形態において、粘度は、コーンプレート型粘度計により測定され得る。
いくつかの実施形態において、工程2)の規格値は、アジスロマイシンを含む製剤を保存し、保存中および/または保存後の1または複数の時点で、製剤のpH測定および製剤中の類縁物質Xおよび類縁物質Yの量を測定することによって得られた値に基づいて設定され得る。
いくつかの実施形態において、所定の有効期間の類縁物質Xおよび類縁物質Yの量のそれぞれの規格値は、医薬品の承認申請時に必要な「規格及び試験方法」の中の規格値(承認規格)であり、具体的には、有効期間である36カ月間2〜8℃で保存(貯蔵)される製剤において類縁物質Xおよび類縁物質Yの量のそれぞれの規格値は、5%以下の任意の値(例えば、5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%以下)に設定され得る。
いくつかの実施形態において、具体的には、アジスロマイシンを含む製剤は、アジスロマイシン水和物(一水和物又は二水和物)、マンニトール、塩化ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム水和物、エデト酸ナトリウム、ポリカルボフィル、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ベンザルコニウム塩化物、水酸化ナトリウムを含む、pH5.9〜6.7の水性点眼剤である。該製剤は、36カ月間2〜8℃で保存される。
該製剤のpHの規格値を設定することによって、所定の有効期間における類縁物質Xおよび類縁物質Yの量の量をバランスよく低値に抑えることが可能となる。加えて、有効期間の36カ月間(2〜8℃で保存)における類縁物質Xおよび類縁物質Yの量のそれぞれの規格値を5%以下であることが保証され、高品質である製剤を安定的に提供が可能となる。
さらなる態様において、本開示は、アジスロマイシンを含む製剤の承認申請書類を調製する方法をコンピュータに実装するプログラムであって、該製剤は開封後少なくとも1週間保存されることを前提とし、該製剤は約1w/w%のアジスロマイシンを含む点眼剤であり、該方法は、1)該製剤の種々のpHに対する安定性の試験結果またはその同等物に基づいて、該製剤のpHの規格値の下限と上限をそれぞれ5.9と6.7に設定するか、または該製剤のpHの規格値の範囲を5.9〜6.7の任意の範囲に設定するようにコンピュータに指令する工程と、2)該製剤の安定性試験の結果またはその同等物に基づいて、該製剤の所定の有効期間の該アジスロマイシンの類縁物質Xおよび類縁物質Yの量のそれぞれの規格値を5%以下の任意の値(例えば、5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%)以下に設定するようコンピュータに指令する工程と、を含み、該類縁物質Xおよび該類縁物質Yは上記(品質管理のための規格設定)のとおりである、プログラムを提供する。
いくつかの実施形態において、安定性試験は、長期安定性試験および/または加速試験および/または苛酷試験を含み得る。長期安定性試験、加速試験および苛酷試験は当該分野において公知の技法を用いることができ、当業者は本明細書の開示を参照して適宜パラメータを調整することができる。これらの安定性試験において、製剤は、加速試験及び苛酷試験(温度)において、経時的な類縁物質の増加及びアジスロマイシン含量の低下を観察することができる。繰り返し使用時の安定性については、繰り返しの使用時を想定した安定性試験により、品質の明確な変化は認められないことを確認することができる。以上より、製剤の有効期間は、ポリプロピレン製容器に充てんし、シュリンクラベル包装した上で、紙箱に入れて冷蔵保存するとき、24カ月と設定することができる。
(出荷時規格)
別の態様において、本開示は、アジスロマイシンを含む製剤の出荷時の品質を検査する方法であって、該方法は、1)該製剤の出荷時のpHを測定し、該pHが5.9〜6.7のものを適合と判定する工程と、2)該製剤の出荷時の類縁物質の量を測定し、類縁物質Xおよび類縁物質Yのそれぞれが2%以下の任意の値(例えば、2.0%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%)以下のものを適合と判定する工程と、を含み、該類縁物質Xは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.23±0.03の化合物であり、該類縁物質Yは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.56±0.03の化合物である、方法を提供する。測定方法および製剤は、上記(品質管理のための規格設定)のとおりである。
いくつかの実施形態において、測定方法の具体例は以下のとおりである。
検体約1.0gを精密に量り、2mLの移動相を加えて撹拌する。さらに、移動相を加えて正確に10mLとする。この液を孔径0.45μm以下のメンブランフィルターでろ過する。初めのろ液1mLを除き、次のろ液を試料溶液とする。別に、アジスロマイシン標準物質約21mgを精密に量り、移動相を加えて溶かし、正確に20mLとし、標準溶液とした。試料溶液および標準溶液100μLにつき、次の条件で液体クロマトグラフィー<2.01>により試験を行い、試料溶液中の個々の類縁物質のピーク面積および標準溶液中のアジスロマイシンのピーク面積を自動積分法により測定する。次の式により、個々の類縁物質の量を求める。
類縁物質Xの量および類縁物質Yの量(対表示率%)=WSd/W×A/A×5/100×P/RF
Sd:脱水物換算したアジスロマイシン標準物質の採取量(mg)=W×[100−アジスロマイシン標準物質の水分含量(%)]/100
:アジスロマイシン標準物質の採取量(mg)
:検体の採取量(g)
:測定波長207nmにおける試料溶液中の個々の類縁物質のピーク面積
:測定波長207nmにおける標準溶液中のアジスロマイシンのピーク面積
P:脱水物換算したアジスロマイシン標準物質の純度(%)
P=換算した脱水物1mg当たりのアジスロマイシン標準物質の力価(μg)/1000×100
RF:測定波長207nmにおけるアジスロマイシンに対する類縁物質X又は類縁物質Yの感度係数(類縁物質X:0.72、類縁物質Y:1.41)
HPLC条件)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:例えば210nm)
カラム:内径4.6mm、長さ250mmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリコーンポリマー被覆シリカゲルを充填する。
カラム温度:25℃付近の一定温度
移動相:メタノール/pH6.5の15mmol/Lラウリル硫酸ナトリウム・18.75mmol/Lリン酸塩緩衝液混液(4:1)
移動相の送液:移動相を25分間送液して測定する。連続測定する場合は流路及びカラムを洗浄する。
流量:アジスロマイシンの保持時間が約14分になるように調整する。該類縁物質Xは、上記測定方法において、アジスロマイシンの保持時間に対して相対保持時間約0.23の化合物であり、該類縁物質Yは、上記測定方法において、アジスロマイシンの保持時間に対して相対保持時間約0.56の化合物である。
いくつかの実施形態において、アジスロマイシンを含む製剤の出荷時のpHが5.9〜6.7の範囲内であり、類縁物質Xおよび類縁物質Yのそれぞれの量が、2%以下の任意の値(例えば、2.0%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%)であるものを適合と判定することによって、所定の有効期間、具体的には36カ月間(2〜8℃保存)の医薬品の類縁物質XおよびYの値が5%以下の任意の値(例えば、5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%)以下であることが保証され、高品質である製剤を安定的に提供が可能となる。
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、アジスロマイシンの出荷時の粘度を測定し、粘度が約500〜約5000mPa・sのものを適合とすることをさらに含み得る。アジスロマイシンを含む製剤の出荷時の粘度は、所定の有効期間の製剤の粘度が約500〜約5000mPa・sの範囲内であることが保証される値であり、そのような値としては、上限については、例えば、約5000、約4500、約4000、約3500、約3000、約2500、約2000、約1500Pa・sが挙げられ、下限については、例えば、約600、約700、約800、約900、約1000、約1100、約1200mPa・sが挙げられるがこれらに限定されず、これらの特定の値の中間の値(例えば、明示された値から、10mPa・s×n(nは正の整数)刻みで増減した値を採用することができる。
さらなる態様において、本開示は、アジスロマイシンを含む製剤の出荷試験を制御する方法をコンピュータに実装するプログラムであって、該製剤は開封後少なくとも1週間保存されることを前提とし、該製剤は約1w/w%のアジスロマイシンを含む点眼剤であり、該方法は、1)該製剤の出荷時のpHを測定し、該pHの範囲が5.9〜6.7の任意の範囲のものを適合と判定するようコンピュータに指令する工程と、2)該製剤の出荷時の類縁物質Xの量および類縁物質Yの量を測定し、類縁物質Xおよび類縁物質Yのそれぞれが5%以下の任意の値(例えば、5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%)以下のものを適合と判定するようコンピュータに指令する工程と、を含み、該類縁物質Xは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.23±0.03の化合物であり、該類縁物質Yは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.56±0.03の化合物である、プログラムを提供する。測定方法および製剤は、上記(品質管理のための規格設定)のとおりである。
(製造方法)
別の態様において、本開示は、アジスロマイシンを含む製剤を製造する方法であって、1)該製剤の出荷時のpHの規格値の範囲を5.9〜6.7の任意の範囲に設定する工程と、2)該製剤の出荷時の類縁物質Xおよび類縁物質Yの量のそれぞれの規格値を2%以下の任意の値(例えば、2.0%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%)以下に設定する工程と、3)該製剤が工程1)および工程2)の規格値となるように該製剤を調製する工程と、4)該製剤のpH測定および該製剤中の該類縁物質Xおよび該類縁物質Yの量を測定する工程とを含み、該類縁物質Xは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.23±0.03の化合物であり、該類縁物質Yは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.56±0.03の化合物である、方法を提供する。測定方法および製剤は、上記(品質管理のための規格設定)のとおりである。
さらなる態様において、本開示は、アジスロマイシンを含む製剤を製造する方法であって、1)該製剤のpHが5.9〜6.7の範囲となるように調整する工程と、2)該製剤中の類縁物質Xおよび類縁物質Yのそれぞれが5%以下の任意の値(例えば、5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%)以下となるように該製剤を調製する工程と、を含む、方法を提供する。製剤は、上記(品質管理のための規格設定)のとおりである。
いくつかの実施形態において、アジスロマイシンを含む製剤は、約1w/w%のアジスロマイシンを含む点眼剤であり、具体的には、主薬としてアジスロマイシン一水和物又は二水和物、および添加剤としてマンニトール、塩化ナトリウム、クエン酸、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、エデト酸ナトリウム、ポリカルボフィル、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ベンザルコニウム塩化物、水酸化ナトリウム、溶剤として精製水を含有する点眼剤であり得る。約1重量%のアジスロマイシンを含む点眼液は、典型的には、任意の量の主薬、添加剤、及び溶剤を、必要に応じて撹拌した状態において、任意の順序で添加し、得られた水溶液を点眼容器に充填することによって製造される。
いくつかの実施形態において、アジスロマイシンを含む製剤のpHの範囲は、所定の有効期間の製剤のpHが5.9〜6.7の範囲であることが保証される値であり、および/または製剤の出荷時の類縁物質Xおよび類縁物質Yのそれぞれの量が、所定の有効期間の医薬品の類縁物質XおよびYの値が2%以下の任意の値(例えば、2.0%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%)以下であることが保証される値であり得る。所定の有効期間の製剤のpHが5.9〜6.7の範囲であることが保証される値としては、上限については、例えば、6.6、6.5、6.4、6.3が挙げられ、下限については、6.0、6.1、6.2、6.3が挙げられる。
いくつかの実施形態において、工程2)の規格値は、アジスロマイシンを含む製剤を保存し、保存中および/または保存後の1または複数の時点で、製剤のpH測定および製剤中の類縁物質Xおよび類縁物質Yの量を測定することによって得られた値に基づいて設定され得る。
(システム)
別の態様において、本開示は、上記本開示の方法を実施するためのシステムであって、該システムは、1)前記製剤のpHを測定する手段と、2)前記製剤中の前記アジスロマイシンの類縁物質Xおよび類縁物質Yの量を測定するための手段とを備える、システムを提供する。
いくつかの実施形態において、pHを測定する手段が、ガラス電極および参照電極からなる検出部と、検出された起電力を増幅する増幅部と、測定結果を表示する指示部とを含むpH計であり得る。
いくつかの実施形態において、類縁物質Xおよび類縁物質Yの量を測定するための手段が、移動相送液用ポンプ、試料導入装置、カラム、検出器および記録装置からなる液体クロマトグラフィー装置であり得る。
いくつかの実施形態において、本開示のシステムは、さらに粘度を測定する手段をさらに含み得る。粘度の測定手段としては、コーンプレート型粘度計が挙げられるが、これに限定されない。
別の局面において、上記開示の中から、品質の管理のための規格を設定する方法、出荷時の品質を検査する方法、又は製造する方法を任意に組み合わせて設定され得る。
本明細書に記載のアジスロマイシンを含む製剤は、工場で製造後に、出荷時の規格を満たすか否かが判定される。出荷時の規格を満たす製剤は、工場から輸送され、直接又は複数箇所を経て、処方箋薬局等へ届けられる。当該製剤は、出荷前、輸送中、処方箋薬局等にて、所定の貯蔵方法(2℃〜8℃)にて保管されるが、輸送時や取り扱い中等には、一時的に2℃〜8℃から逸脱した温度条件に置かれることもある。当該製剤はその後、医師の処方箋に基づき処方され、対象患者の手に渡る。対象患者は医師の指示に従って、当該製剤を開封し、所定の用法用量で使用する。また、開封後は室温保存される。
医薬品の承認申請の際には、当該医薬品の有効期間内に一定の品質を確保する(すなわち、患者の手に渡った際の医薬品の品質を確保する)ための判定基準として、承認申請時に規格を設定することが必要とされる。また当該医薬品が有効期間を通して承認された判定基準に適合することを保証するための判定基準として、出荷時の規格が設定される。
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下、実施例に基づいて本開示をより具体的に説明する。
(実施例1:熱劣化検体の測定)
(アジスロマイシン点眼剤の調製)
アジスロマイシン点眼剤を、以下の処方を常法により調製し、点眼容器(ボトル:ポリエチレン、ノズル:ポリエチレン、キャップ:ポリプロピレン)に充填した。
(熱劣化させた検体の調製)
アジスロマイシン点眼剤を40℃75%RH(相対湿度)で4週間保存し、熱劣化させた検体を調製した。
(測定方法)
検体約1.0gを精密に量り、2mLの移動相を加えて撹拌した。さらに、移動相を加えて正確に10mLとした。この液を孔径0.45μm以下のメンブランフィルターでろ過した。初めのろ液1mLを除き、次のろ液を試料溶液とした。別に、アジスロマイシン標準物質約21mgを精密に量り、移動相を加えて溶かし、正確に20mLとし、標準溶液とした。試料溶液および標準溶液100μLにつき、次の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行い、試料溶液中の個々の類縁物質のピーク面積および標準溶液中のアジスロマイシンのピーク面積を自動積分法により測定した。次の式により、個々の類縁物質の量を求めた。
類縁物質Xの量および類縁物質Yの量(対表示率%)=WSd/W×A/A×5/100×P/RF
Sd:脱水物換算したアジスロマイシン標準物質の採取量(mg)=W×[100−アジスロマイシン標準物質の水分含量(%)]/100
:アジスロマイシン標準物質の採取量(mg)
:検体の採取量(g)
:測定波長207nmにおける試料溶液中の個々の類縁物質のピーク面積
:測定波長207nmにおける標準溶液中のアジスロマイシンのピーク面積
P:脱水物換算したアジスロマイシン標準物質の純度(%)
P=換算した脱水物1mg当たりのアジスロマイシン標準物質の力価(μg)/1000×100
RF:測定波長207nmにおけるアジスロマイシンに対する類縁物質X又は類縁物質Yの感度係数(類縁物質X:0.72、類縁物質Y:1.41)
(試験条件)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:207nm)
カラム:内径4.6mm、長さ250mmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリコーンポリマー被覆シリカゲルを充填した。
カラム温度:25℃付近の一定温度
移動相:メタノール/pH6.5の15mmol/Lラウリル硫酸ナトリウム・18.75mmol/Lリン酸塩緩衝液混液(4:1)
移動相の送液:移動相を25分間送液して測定した。連続測定する場合は流路及びカラムを洗浄した。
流量:アジスロマイシンの保持時間が約14分になるように調整した。
(標準物質)
アジスロマイシン標準物質は日本薬局方アジスロマイシン水和物に適合するもの(ただし、換算した脱水物1mg当たり980μg(力価)以上を含む。)を使用した。
(結果)
波長207nmのクロマトグラムの評価した結果、アジスロマイシン、類縁物質Xおよび類縁物質Yのピークが確認された。アジスロマイシン、類縁物質Xおよび類縁物質Yの保持時間は、それぞれ13.920分、3.196分、7.829分であった。また、各類縁物質のアジスロマイシンに対する相対保持時間を表2に示した。
(実施例2:種々のpHのアジスロマイシンを含む製剤における類縁物質量への影響)
実施例1に準じて種々のpH(5.79、5.99、6.16、6.31、6.40、6.52、6.77)のアジスロマイシン点眼剤(検体A〜G)を調製し、これらを所定の条件下にて保存した(苛酷試験)。保存開始から1週間、2週間、4週間、31日、5週間および6週間の時点で、実施例1の測定方法に従って類縁物質Xおよび類縁物質Yの量を測定した。保存条件は、40℃±2℃、75%RH±5%RH、横倒し保管である。
(結果)
類縁物質Xおよび類縁物質Yの量を測定した結果を表3〜9に、製剤pHと類縁物質Xおよび類縁物質Yの増加量の関係性をそれぞれ表10および表11に示した。また、各製剤の各類縁物質増加量の経時的推移を示したグラフを図1および図2に示した。その結果、製剤pHの上昇に伴い類縁物質Xが増加し、製剤pHの低下に伴い類縁物質Yが増加した。特に、類縁物質Xは、pH6.77の場合に、著しく増加し、類縁物質Yは、pH5.79の場合に、著しく増加した。したがって、アジスロマイシンを含む製剤のpHは、上限が6.7であり、下限が5.9であることが好ましい。
(実施例3:類縁物質の量の規格設定)
本製剤3ロット(ロット番号K001、K002およびK003のpHは、それぞれpH6.33、6.00および6.59)の長期保存試験の開始時から12カ月までの測定結果を表12〜14に示した。類縁物質Xおよび類縁物質Yは開始時から検出され、経時的に増加する傾向が認められた。これらの類縁物質については、長期保存試験12カ月(5℃±3℃、なりゆき湿度)の結果から統計解析により算出した予測値を用いて、規格を設定した。また、輸送時や取り扱い中等における貯蔵方法からの短期的な温度逸脱を想定し、加速試験(25℃±2℃、60%RH±5%RH)の1カ月の結果から得られた変化量を考慮した上で、規格を設定した。
(類縁物質Xについての規格設定)
本製剤3ロットの長期保存試験12カ月までの結果を用いて、統計解析を実施した。長期保存試験12カ月までの結果に基づいて類縁物質Xの量を推定したモデルを図3に示し、36カ月の予測値および95%信頼区間の上限値を表15に示した。その結果、各ロットの予測値の95%信頼区間の上限値は、0.98%、0.56%および1.59%となった。さらに輸送時や取り扱い中等における貯蔵方法からの短期的な温度逸脱を想定し、加速試験の1カ月の結果から得られた変化量を考慮し、36カ月有効期間における類縁物質Xの量の規格(承認規格)を5.0%以下の任意の値以下(例えば、5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%以下)に設定した。点眼剤の出荷時において、類縁物質Xの量が2.0%以下の任意の値以下(例えば、2.0%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%)であれば、36カ月後の類縁物質Xの量を5.0%以下に抑えられることがわかる。
(類縁物質Yの規格設定について)
本製剤の3ロットの長期保存試験12カ月までの結果を用いて、統計解析を実施した。長期保存試験12カ月までの結果に基づいて類縁物質Yの量を推定したモデルを図4に示し、36カ月の予測値および95%信頼区間の上限値を表16に示した。その結果、各ロットの予測値の95%信頼区間の上限値は、1.15%、2.55%および0.64%となった。さらに輸送時や取り扱い中等における貯蔵方法からの短期的な温度逸脱を想定し、加速試験の1ヶ月の結果から得られた変化量を考慮し、36カ月有効期間における類縁物質Yの量の規格(承認規格)を5.0%以下の任意の値以下(例えば、5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%以下)に設定した。点眼剤の出荷時において、類縁物質Yの量が2.0%以下の任意の値以下(例えば、2.0%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%)であれば、36カ月後の類縁物質Yの量を5.0%以下に抑えられることがわかる。
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は2019年6月13日出願された特願2019−110393号に対して優先権主張を伴うものであり、その内容は、本願においてその全体が参考として援用される。
アジスロマイシンを含む製剤の品質を管理するための規格を設定する技術が提供される。この技術は、製薬等の分野において利用可能である。

Claims (14)

  1. アジスロマイシンを含む製剤の品質の管理のための規格を設定する方法であって、該方法は、
    1)該製剤のpHの規格値の下限と上限をそれぞれ5.9と6.7に設定するか、または該製剤のpHの規格値の範囲を5.9〜6.7の任意の範囲に設定する工程と、
    2)該製剤の所定の有効期間の該アジスロマイシンの類縁物質Xおよび類縁物質Yの量のそれぞれの規格値を5%以下の任意の値以下に設定する工程と、
    を含み、
    該類縁物質Xは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.23の化合物であり、
    該類縁物質Yは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.56の化合物である、方法。
  2. 前記製剤は、ポリカルボフィル、カルボポール(Carbopol)TM、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖類ゲル、ゲルライト(Gelrite)TM、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される添加物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記製剤が、約1w/w%のアジスロマイシンを含む点眼剤である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記製剤が、開封後少なくとも1週間室温で保存される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記製剤が、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.53 粘度測定法に記載の第2法により測定された場合、約500〜約5000mPa・sの粘度を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記工程2)の規格値は、前記製剤を保存し、該保存中および/または保存後の1または複数の時点で、該製剤のpH測定および該製剤中の前記類縁物質Xおよび前記類縁物質Yの量を測定することによって得られた値に基づいて設定される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. アジスロマイシンを含む製剤の承認申請書類を調製する方法をコンピュータに実装するプログラムであって、
    該製剤は約1w/w%のアジスロマイシンを含む点眼剤であり、
    該方法は、
    1)該製剤のpHに対する安定性の試験結果またはその同等物に基づいて、該製剤のpHの規格値の下限と上限をそれぞれ5.9と6.7に設定するか、または該製剤のpHの規格値の範囲を5.9〜6.7の任意の範囲に設定するようにコンピュータに指令する工程と、
    2)該製剤の安定性試験の結果またはその同等物に基づいて、該製剤の所定の有効期間の該アジスロマイシンの類縁物質Xおよび類縁物質Yの量のそれぞれの規格値を5%以下の任意の値以下に設定するようコンピュータに指令する工程と、
    を含み、
    該類縁物質Xは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.23の化合物であり、
    該類縁物質Yは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.56の化合物である、
    プログラム。
  8. 前記安定性試験は、長期安定性試験および/または加速試験を含む、請求項7に記載のプログラム。
  9. アジスロマイシンを含む製剤の出荷時の品質を検査する方法であって、該方法は、
    1)該製剤の出荷時のpHを測定し、該pHが5.9〜6.7のものを適合と判定する工程と、
    2)該製剤の出荷時の該アジスロマイシンの類縁物質の量を測定し、該アジスロマイシンの類縁物質Xおよび類縁物質Yのそれぞれが2%以下の任意の値以下のものを適合と判定する工程と、
    を含み、
    該類縁物質Xは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.23の化合物であり、
    該類縁物質Yは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.56の化合物である、方法。
  10. アジスロマイシンを含む製剤を製造する方法であって、
    1)該製剤の出荷時のpHの規格値の範囲を5.9〜6.7の任意の範囲に設定する工程と、
    2)該製剤の出荷時の該アジスロマイシンの類縁物質Xおよび類縁物質Yの量のそれぞれの規格値を2%以下の任意の値以下に設定する工程と、
    3)該製剤が工程1)および工程2)の規格値となるように該製剤を調製する工程と、
    4)該製剤のpH測定および該製剤中の該類縁物質Xおよび該類縁物質Yの量を測定する工程と
    を含み、
    該類縁物質Xは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.23の化合物であり、
    該類縁物質Yは、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.01 液体クロマトグラフィーに記載の測定方法において、アジスロマイシンの保持時間が約14分である場合に、相対保持時間約0.56の化合物である、方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法を実施するためのシステムであって、該システムは、
    1)前記製剤のpHを測定する手段と、
    2)前記製剤中の前記アジスロマイシンの類縁物質Xおよび類縁物質Yの量を測定するための手段と
    を備える、システム。
  12. 前記pHを測定する手段が、ガラス電極および参照電極からなる検出部と、検出された起電力を増幅する増幅部と、測定結果を表示する指示部とを含むpH計である、請求項11に記載のシステム。
  13. 前記類縁物質Xおよび類縁物質Yの量を測定するための手段が、移動相送液用ポンプ、試料導入装置、カラム、検出器および記録装置からなる液体クロマトグラフィー装置である、請求項11または12に記載のシステム。
  14. 粘度を測定するための手段をさらに備える、請求項11〜13のいずれか一項に記載のシステム。
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