JP2020200492A - マグネシウム合金およびマグネシウム合金を用いた鋳造構造部材 - Google Patents

マグネシウム合金およびマグネシウム合金を用いた鋳造構造部材 Download PDF

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Abstract

【課題】軽量性と熱伝導性を両立しつつ、難燃性や加工性などでも適当であるマグネシウム合金およびマグネシウム合金を用いた鋳造構造部材を提供する。【解決手段】本発明のマグネシウム合金は、全体に対して、0.25mass%〜1.0mass%のカルシウムと、全体に対して、2.5mass%〜3.5mass%のアルミニウムと、全体に対して、1.0mass%〜1.75mass%の添加元素と、マンガンと、残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなり、前記添加元素は、ランタンおよびセリウムを含む。【選択図】図4

Description

本発明は、マグネシウム合金およびマグネシウム合金を用いた鋳造構造部材に関する。
電子機器や精密機器、自動車や航空機などの輸送機器、製造機械など、様々な機器や装置において筐体や各種部品などを構成するために種々の金属素材が用いられる。このような様々な機器や装置の筐体や各種部品などは、鉄やアルミなどの単一金属素材で形成されるだけでなく、様々な合金素材が用いられることが多くなってきている。
電子機器や精密機器は、作業性や持ち運び容易性などの観点から、軽量化を必要としている。軽量でありながら、十分な耐久性や強度を必要としている。このような観点から、電子機器や精密機器の筐体や各種部品など(部材)を構成する素材として、軽量性のある合金素材が使われるようになってきている。
特に、輸送機器は、燃費向上や輸送性能向上のために軽量化が求められている。輸送機器の軽量化が図られれば、輸送機器の走行性能や飛行性能が高まる。さらには、輸送機器の軽量化が図られれば、燃費性能が向上するからである。もちろん、軽量化に伴うメリットはほかにも多々ある。
当然に、輸送機器においては、十分な耐久性や強度も必要である。このような観点から、軽量性のある合金素材が用いられるようになってきている。あるいは、軽量性のある合金素材の必要性が高まっている。このような合金素材においても、ダイキャストなどの鋳造による成型工程に適した合金素材が求められるようになっている。
これは、製造機械などにおいても同様である。多くの機器や装置は、作業の容易性、運搬の容易性、低燃費性、エコロジー性などを必要としており、これを実現する基準の一つとして、軽量化が求められている。この軽量化を実現するために、軽量性のある合金素材が用いられている。あるいは開発されている。
一方で、これらの機器や装置においては、高い熱伝導性も求められている。
電子機器や精密機器は、半導体素子などによる電気的処理を実行する。この電気的処理による動作によって、電子機器や精密機器の内部が発熱する。この発熱により生じた熱は、電子機器や精密機器の動作、性能維持、耐久性などにおいて、好ましくない。このため、この熱を、素早くかつ適切に外部に放出する必要がある。
また、輸送機器においても、内燃機関や駆動機関を含むことで、動作中に熱が発生する。この熱が高すぎたり溜まりすぎたりすることは、動作機能や性能維持において、好ましくない。もちろん、熱が大きくなりすぎることで、輸送機器の強度や耐久性に悪影響が出ることもある。
同様に製造機械などの機器や装置においても、その動作中に熱が発生することを防止できない。この熱による機能や性能への影響や、耐久性への影響が懸念される。
このため、これらの機器や装置の部材を構成する合金素材としては、熱伝導率の高さが求められる。熱伝導率が高ければ、内部で発生した熱を部材や筺体を通じて伝導させて、外部に放出することが容易となるからである。機器や装置が動作中である限り、熱は発生し続ける。このとき、熱伝導率が高い素材で筐体や部材が構成されていれば、この熱が効率よく伝導されて、外部に放出されることが継続される。この継続によって、機器や装置の性能低下などを防止できる。
このように、輸送機器をはじめとした様々な機器の装置や筐体を構成する構造部材(構造体に用いられる部材、部品、部材などを含む)においては、軽量性が求められている。この軽量性に加えて、高い熱伝導率が求められている。加えて、ダイキャストなどの鋳造加工における加工性が高いことも求められる。また、構造部材などに用いられることから、機械的強度が十分であることも好ましい。また、当然ながら、熱の発生が考えられる機器(上述のように輸送機器など)に用いられることから、難燃性が高いことも必要である。
このような熱伝導率と軽量性を両立できる合金素材として、アルミニウム系合金が使用されることがある。
しかしながら、アルミニウムは軽量であるが、軽量性としてまだまだ不十分であることもある。加えて、塑性加工性や機械的強度などの点で不十分な場合がある。このような観点から、アルミニウムよりも軽い元素であるマグネシウムが注目されている。
マグネシウムの室温における密度は、1.7g/cm3であり、この密度は鉄の密度の約1/4であり、アルミニウムの密度の約2/3である。また、マグネシウムは、比強度、比剛性、切削性、耐くぼみ性、振動吸収性等の性質が優れていることも知られている。
この軽量性の特性により、マグネシウム系合金についての技術が、いくつか提案されている(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。
特開2010−116620号公報 特許5146767号公報 特表2018−521123号公報 特表2011−509350号公報
特許文献1は、全体を100質量%としたときに、2〜6%のAlと、組成比(Ca/Al)が0.5〜1.5のCaと、0.1〜0.7%のMnと、1〜6%のSrと、残部がMgと不可避不純物および/または改質元素とからなる。これにより、常温特性の他、耐クリープ性や熱伝導率などの高温特性にも優れるMg合金を開示する。
特許文献1は、軽量であるマグネシウムを素材として、難燃性を高めるためにカルシウムを添加するマグネシウム合金を開示する。このとき、耐食性を向上させるために、特許文献1のマグネシウム合金は、アルミニウムを添加している。
しかしながら、アルミニウムの添加により熱伝導性や機械的強度を下げてしまう問題が生じる。このため、特許文献1に開示されるマグネシウム合金は、熱伝導性や機械的強度において不十分である問題がある。
特許文献2は、全体を100質量%としたときに、0.5質量%以上10質量%以下の銅(Cu)と、0.01質量%以上3質量%以下のカルシウム(Ca)と、
を含み、残部がマグネシウム(Mg)と不可避不純物とからなることを特徴とする鋳造用マグネシウム合金を、開示する。
特許文献2も特許文献1と同じようにマグネシウム合金の難燃性を高めるために、カルシウムを添加している。同様に、耐食性を向上させるために、アルミニウムを添加している。
しかしながら、特許文献2も特許文献1と同様の問題を有する。
特許文献3は、2.6〜5.5重量%のアルミニウム(Al)、2.7〜3.5重量%のランタン(La)、0.1〜1.6重量%のセリウム(Ce)、0.14〜0.50重量%のマンガン(Mn)、0.0003〜0.0020重量%のベリリウム(Be)、及び場合により最大0.35重量%の亜鉛(Zn)、最大0.40重量%のスズ(Sn)、最大0.20重量%のネオジム(Nd)、及び最大0.10重量%のプラセオジム(Pr)を含み、残余がマグネシウム及び不可避的な不純物であるマグネシウム系合金を開示する。
特許文献3に開示されるマグネシウム合金は、耐食性を高めるためにアルミニウムを添加している。ここで、アルミニウムの添加による熱伝導性や機械的強度の低下に対応するために、特許文献3のマグネシウム合金は、ランタン(La)やセリウム(Ce)を添加している。
しかしながら、特許文献3に開示されるマグネシウム合金は、ランタンやセリウムを多く添加している。このため、鋳造などでの構造部材などへの成型時において、凝固温度範囲が小さくなり高い精度での成型が困難となる問題がある。すなわち、鋳造加工による加工性が悪い問題がある。また、難燃性が不十分である問題もある。このため、特許文献3に開示されるマグネシウム合金が輸送機器などの機器に用いられる場合には、発熱などへの対応が不十分となる問題がある。このため、発熱問題のある機器には適用が困難である問題がある。
特許文献4は、マグネシウム系合金であって、重量で、2〜5% 希土類元素(この合金は希土類元素としてランタンおよびセリウムを含有し、ランタン含量はセリウム含量よりも大きい);0.2〜0.8% 亜鉛;0〜0.15% アルミニウム;0〜0.5% イットリウムまたはガドリニウム;0〜0.2% ジルコニウム;0〜0.3% マンガン;0〜0.1% カルシウム;0〜25ppm ベリリウムからなり、偶発的な不純物を除いて残りはマグネシウムである、マグネシウム系合金を開示する。
特許文献4は、難燃性を考慮してカルシウムを添加している。しかしながら、カルシウムの添加量は少なく、難燃性を実現するのに不十分である問題がある。同様に、耐食性を高めるためにアルミニウムを添加しているが、これも微量であって、耐食性の向上が不十分である問題がある。これに対して、機械的強度を確保するために、ランタンやセリウムを添加している。しかしながら、ランタンやセリウムの添加量が大きい。このため、鋳造などでの構造部材などへの成型時において、凝固温度範囲が小さくなり高い精度での成型が困難となる問題がある。すなわち、鋳造加工による加工性が悪い問題がある。
また、ランタンやセリウムなどの添加量が多いことで、コストが増加する問題もある。
すなわち、特許文献4は、難燃性、耐食性、加工性、機械的強度などにおいて、バランスが悪い問題を有している。
以上のように、従来技術のマグネシウム合金は、難燃性、耐食性、加工性、機械的強度のいずれかが不十分である問題を有していた。結果として、鋳造加工に適さず、機器への適用も不充分となる問題があった。結果として、既存で流通しているアルミニウム合金などの代替としては不十分である問題を有していた。
本発明は、軽量性と熱伝導性を両立しつつ、難燃性や加工性などでも適当であるマグネシウム合金およびマグネシウム合金を用いた鋳造構造部材を提供することを目的とする。
上記課題に鑑み、本発明のマグネシウム合金は、全体に対して、0.25mass%〜1.0mass%のカルシウムと、
全体に対して、2.5mass%〜3.5mass%のアルミニウムと、
全体に対して、1.0mass%〜1.75mass%の添加元素と、
マンガンと、
残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなり、
前記添加元素は、ランタンおよびセリウムを含む。
本発明のマグネシウム合金は、従来の汎用のアルミニウム合金にそん色のない熱伝導率を有する。加えて、アルミニウム合金よりも軽量性において優れている。マグネシウムそのものの元素密度が低いことで、本発明のマグネシウム合金の軽量化が実現されるからである。
また、本発明のマグネシウム合金は、耐食性や耐熱性も高く、輸送機器をはじめとする機器の構造部材に適用が容易であるメリットがある。また、ダイキャストなどの鋳造加工における加工性も高いことで、様々な形状や大きさの構造部材への適用が可能となる。結果として、種々の機器への適用範囲が広まり、普及が進みやすくなる。
結果として、量産効果やこれに伴うコスト低減などにもつながる可能性がある。
本発明の実施の形態におけるマグネシウム合金の製造工程のフローチャートである。 本発明の実施の形態における溶融工程を示す模式図である。 本発明の実施の形態における組成比率を変化させた場合の、熱伝導率のレベルを示すグラフである。 マグネシウム合金の熱伝導率などの実験結果を示す表である。 本発明のマグネシウム合金の引張強度を測定する方法を示す模式図である。 本発明のマグネシウム合金の実際の製作例である実施例1〜実施例7の熱伝導率の測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例5〜7についての引張強度および伸びの実験結果を示す表である。 本発明の実施例5〜7についての引張強度および伸びの実験結果を示すグラフである。
本発明の第1の発明に係るマグネシウム合金は、全体に対して、0.25mass%〜1.0mass%のカルシウムと、
全体に対して、2.5mass%〜3.5mass%のアルミニウムと、
全体に対して、1.0mass%〜1.75mass%の添加元素と、
マンガンと、
残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなり、
前記添加元素は、ランタンおよびセリウムを含む。
この構成により、軽量性に難燃性および高い熱伝導率をバランスよく実現できるマグネシウム合金を実現できる。
本発明の第2の発明に係るマグネシウム合金では、第1の発明に加えて、前記カルシウムは、全体に対して、0.5mass%〜1.0mass%である。
この構成により、より高い熱伝導率を実現できる。
本発明の第3の発明に係るマグネシウム合金では、第1または第2の発明に加えて、前記添加元素は、全体に対して、1.25mass%〜1.75mass%である。
この構成により、より高い熱伝導率を実現できる。
本発明の第4の発明に係るマグネシウム合金では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、前記アルミニウムは、全体に対して、2.5mass%〜3.0mass%である。
この構成により、より高い熱伝導率を実現できる。
本発明の第5の発明に係るマグネシウム合金では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、前記マンガンは、全体に対して、0mass%〜0.5mass%である。
この構成により、より高い熱伝導率を実現できる。
本発明の第6の発明に係るマグネシウム合金は、全体に対して、略0.75mass%のカルシウムと、
全体に対して、略3.0mass%のアルミニウムと、
全体に対して、略1.5mass%の添加元素と、
全体に対して、略0.2mass%のマンガンと、
残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなり、
前記添加元素は、ランタンおよびセリウムを含む。
この構成により、軽量性に難燃性および高い熱伝導率をバランスよく実現できるマグネシウム合金を実現できる。
本発明の第7の発明に係るマグネシウム合金では、全体に対して、略0.75mass%のカルシウムと、
全体に対して、略2.5mass%のアルミニウムと、
全体に対して、略1.5mass%の添加元素と、
全体に対して、略0.2mass%のマンガンと、
残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなり、
前記添加元素は、ランタンおよびセリウムを含む。
この構成により、軽量性に難燃性および高い熱伝導率をバランスよく実現できるマグネシウム合金を実現できる。
本発明の第8の発明に係るマグネシウム合金では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、さらに、追加元素群を含み、
前記追加元素群は、ケイ素(Si)、ベリリウム(Be)、ジルコニウム(Zr)、すず(Sn)、リチウム(Li)、銀(Ag)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ネオジウム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、ストロンチウム(Sr)、ジスプロシウム(Dy)の少なくとも一つ以上の組み合わせである。
この構成により、更なるバリエーションが図られる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
(参考技術の説明)
現在、すでに実用化されているアルミニウム合金ADC12が存在する。このアルミニウム合金は、軽量であると共に熱伝導性に優れている。熱伝導性に優れていることで、電子機器や輸送機器などの種々の機器や装置の筐体、部材、部品に使用されても、熱を排出しやすいとのメリットを有する。
このような既存のアルミニウム合金は、熱伝導率が90W/m・K以上である。
熱伝導率が90W/m・K以上であることで、このアルミニウム合金は、電子機器や輸送機器などの発熱しやすい機器や装置でも、熱を伝導しやすい。熱を伝導しやすければ、発熱部位の熱を外部に排出しやすくなる。排出しやすければ、機器や装置が使用される中で生じる熱の問題を解消しやすい。
既存のアルミニウム合金は、90W/m・K以上の熱伝導率を有することで、このような熱の問題解消を実現している。このとき、上述のアルミニウム合金ADC12の熱伝導率が、90W/m・K以上を目安としている。
この点から、本発明のマグネシウム合金は、熱伝導率を90W/m・K以上を基準とすることが適当である。ここで、ADC12とのアルミニウム合金は、次の通りの組成を有する。9.6〜12.0mass%のケイ素、1.5〜3.5mass%の銅、0.3mass%以下のマグネシウム、1.0mass%以下の亜鉛、1.3mass%以下の鉄、0.5mass%以下のマンガン、0.5mass%以下のニッケル、0.2mass%以下のすず、0.2mass%以下の鉛、0.3mass%以下のチタン、残部がアルミニウムである。これは、JIS H 5302で規定されている。
日本ダイカスト協会による開示では、ADC12のアルミニウム合金の熱伝導率は、96W/m・K以上となっている。これを考慮して、既存のアルミニウム合金に置き換えを目指す本発明のマグネシウム合金の熱伝導率が、90W/m・K以上であればよいことが分かる。
(マグネシウム合金)
本発明のマグネシウム合金は、次の組成を有する。
全体に対して、0.25mass%〜1.0mass%のカルシウムと、
全体に対して、2.5mass%〜3.5mass%のアルミニウムと、
全体に対して、1.0mass%〜1.75mass%の添加元素と、
マンガンと、
残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなり、
添加元素は、ランタンおよびセリウムを含む。
マグネシウム合金は、上述の通り、含む組成として、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、マンガン、添加元素である。ここで、添加元素として、ランタンとセリウムを含む。このとき、原料の由来、製造工程などにおいて不可避に混じってしまう不可避混合物が、マグネシウム合金に含まれることは除外しない。
加えて、マグネシウム合金の特性や性質、および発明の意図を阻害しない成分が添加されることを除外しない。例えば、上述した成分以外の成分が添加されるが、本発明でのマグネシウム合金の性質や意図を阻害しない場合がある。マグネシウム合金としての熱伝導率などを阻害しない場合である。
カルシウム(以下、必要に応じて「Ca」という)の組成比率は、全体に対して、0.25mass%〜1.0mass%である。アルミニウム(以下、必要に応じて「Al」という)の組成比率は、全体に対して、2.5mass%〜3.5mass%である。ランタン(以下、必要に応じて「La」という)およびセリウム(以下、必要に応じて「Ce」という)を含む添加元素は、全体に対して、1.0mass%〜1.75mass%である。これにマンガン(以下、必要に応じて「Mn」という)を、含んでおり、残部がマグネシウムであるのが、本発明のマグネシウム合金である。
なお、後述する通り、マンガンの組成比率は、全体に対して0mass%〜0.5mass%であればよい。
マグネシウム合金は、これらの組成比率に応じたそれぞれの組成によって製造される。
図1は、本発明の実施の形態におけるマグネシウム合金の製造工程のフローチャートである。
図1のフローチャートに示される通り、マグネシウム合金は、秤量工程ST1、溶融工程ST2、固化工程ST3、成型工程ST4を経て、製造される。もちろん、図1では、製造工程における主だった工程を示しており、他の工程が追加されてマグネシウム合金が製造されても問題ない。
秤量工程ST1では、上述したような組成比率になるように、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、添加元素、マンガンが秤量される。不可避混合物は、原料である亜鉛などの純度などによって含まれうるし、秤量工程ST1などにおいて混合してしまうことで含まれうる。
溶融工程ST2では、秤量されたそれぞれの原料が溶融容器にて溶融される。図2は、本発明の実施の形態における溶融工程を示す模式図である。秤量された原料である、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、添加元素、マンガンが溶融容器100に投入される。溶融容器100に投入されたこれらの原料は、加熱によって溶融される。
溶融工程ST2を経て得られる溶融金属が、冷却によって固化される。これが固化工程ST3である。固化工程ST3にて冷却により固化されることで、固化した合金が得られる。
次いで、必要に応じて成型工程ST4(例えば、固化工程ST3の後で行われてもよいし、固化工程ST3と並行して成型工程ST4が行われてもよい)が、実施される。この成型工程ST4を経て、例えばインゴット形状などのマグネシウム合金が製造される。
もちろん、成型工程ST4の後で、追加的な工程が実施されてもよい。
このようにして製造されたマグネシウム合金は、主原料がマグネシウムであることで、軽量性が高い。原子番号の通り、同じ組成比率であれば、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金よりも軽量である。また、この組成比率を有するマグネシウム合金は、高い熱伝導率を有する。
このマグネシウム合金の熱伝導率は、後述する実験結果から明らかなとおり、90W/m・K以上である。熱伝導率が90W/m・K以上であることで、参考技術で説明したアルミニウム合金に代替して、様々な機器や装置の筐体、部材、部品に使用することができる。このマグネシウム合金は、アルミニウム合金よりも軽量であって、同等以上の熱伝導率を有する。このため、軽量化のためにアルミニウム合金が使用されていた分野において、このマグネシウム合金を代替使用することができる。
この代替使用の結果、より軽量化を図ることができる。従来はアルミニウム合金が使用されていた分野において、より軽量であるマグネシウム合金が使用されることにより、機器や装置の軽量化が図られる。電子機器であれば、モバイル性が高くなるメリットがあり、輸送機器であれば、燃費向上などのメリットがある。
加えて、既存に使用されているアルミニウム合金と同等90W/m・K以上の熱伝導率を有する。このため、発熱の問題を解消しなければならない電子機器や輸送機器においても、好適にマグネシウム合金が使用できる。
既述した通り、この90W/m・K以上の熱伝導率は、既存に使用されているアルミニウム合金の熱伝導率を基準としたものであり、この基準を満たしていることで、アルミニウム合金の代替品としての使用が可能である。
ここで、本発明のマグネシウム合金は、カルシウムを含有することで、耐熱性を向上させている。加えて、熱伝導率も向上させている。しかしながら、カルシウムの添加によって、これら耐熱性と熱伝導率が向上するが、機械的特性が低下することがある。アルミニウムの添加によって、機械的特性や耐久性が上がる。しかしながら、アルミニウムの添加は、熱伝導率の向上の妨げとなるデメリットを有する。これに対応して、ランタンとセリウムを含む添加元素が備わることで、アルミニウムの添加によって低下する可能性のある熱伝導率を向上させることができる。
このように、本発明のマグネシウム合金は、耐熱性、熱伝導率に耐久性などの機械的強度のそれぞれをバランスよく実現する組成と組成比率を備えている。このような組成と組成比率を備えていることで、本発明のマグネシウム合金は、耐熱性、熱伝導性、機械的強度のそれぞれをバランスよく実現しつつ、加えて、マグネシムのもつ軽量性をも実現している。
このようなマグネシウム合金は、従来はアルミニウム合金や他の合金が使用されていた分野への置き換えに適している。
また、上述したマグネシウム合金の組成および組成比率を前提として、より細かく特定されたマグネシウム合金のバリエーションについて説明する。
(マグネシウム合金1)
マグネシウム合金1として、カルシウムが全体に対して0.5mass%〜1.0mass%であることも好適である。他の組成については、上述したマグネシウム合金に含まれる。
このようにカルシウムの組成比率をより特定した範囲とすることで、得られるマグネシウム合金1の熱伝導率が高まる。熱伝導率がより高まることで、耐熱性を必要とする様々な部品や構造部品において、好適に使用できる。熱伝導率が高ければ、使用される部品や構造部品において発熱を受ける場合でも、熱伝導率が高いことで、この熱を早期に逃がして、熱による悪影響を受けにくくすることができるからである。
図3は、本発明の実施の形態における組成比率を変化させた場合の、熱伝導率のレベルを示すグラフである。図3の左側は、マグネシウム合金において、アルミニウムの含有量を3.0mass%に固定してカルシウムと添加元素(図中においては、Mm(ミッシュメタル)として表記)を、上述したマグネシウム合金の範囲で変化させた場合の、マグネシウム合金の熱伝導率のレベルを示したグラフである。
図3の右側は、マグネシウム合金において、添加元素の含有量を1.5mass%に固定して、カルシウムとアルミニウムの組成範囲を変化させた場合のマグネシウム合金の熱伝導率のレベルを示したグラフである。図3のグラフにおいて四角の印は、熱伝導率が90W/m・K以上を示しており、丸の印は、熱伝導率が92.5W/m・K以上を示しており、二重丸の印は、熱伝導率が、95.0W/m・K以上を示している。すなわち、熱伝導率のレベルを示している。二重丸がレベルが最も高い状態である。
図3の左側において、カルシウムが0.5mass%〜1.0mass%である場合においては、熱伝導率が丸印か二重丸の印のいずれかとなっており、熱伝導率がより高いことが示されている。図3の右側でも、同様の傾向がある。
この点から、他の組成比率にもよるが、カルシウムが0.5mass%〜1.0mass%であることは、より高い熱伝導率を実現できることが分かる。この点で、カルシウムが全体に対して、0.5mass%〜1.0mass%であるマグネシウム合金1は、本発明のマグネシウム合金に含まれるものであって、より熱伝導率を高めることができる。
(マグネシウム合金2)
マグネシウム合金2は、ランタンとセリウムを含む添加元素が、全体に対して1.25mass%〜1.75mass%である。他の組成については、上述したマグネシウム合金に含まれる。
添加元素が、上述の通り全体に対して1.25mass%〜1.75mass%に特定されることで、マグネシウム合金2は、その熱伝導率をより高めることができる。上述した本発明のマグネシウム合金は、添加元素は、全体に対して1.0mass%〜1.75mass%の比率を有する。マグネシウム合金2は、この範囲をより特定した範囲であって、このマグネシウム合金に含まれる範囲である。
このように、添加元素を全体に対して1.25mass%〜1.75mass%とすることで、図3の左側に示すように、熱伝導率のレベルが高まる。他の組成元素の変化にもよるが、添加元素の組成比率が全体に対して1.25mass%〜1.75mass%であることで、熱伝導率の高まる傾向が見て取れる。
図3の右側は、この中央値である添加元素が1.5mass%の場合を示している。この場合には、他の組成の含有量によって異なってくるが、熱伝導率が高い傾向であることも示している。このように、添加元素を全体に対して1.25mass%〜1.75mass%と特定したマグネシウム合金2は、熱伝導率のレベルを上げることができる。
(マグネシウム合金3)
マグネシウム合金3は、アルミニウムが全体に対して2.5mass%〜3.0mass%であるように、本発明のマグネシウム合金の組成比率の中で特定されたものである。アルミニウムの含有量が、より特定されている。
マグネシウム合金3は、アルミニウムの組成比率を、より細かく特定していることで、熱伝導率を更に高めることができる。図3の右側のグラフにおいては、アルミニウムが全体に対して2.5mass%〜3.0mass%であることで、熱伝導率のレベルが高い。他の組成の含有量によっても変化するが、アルミニウムが3.5mass%である場合よりも、熱伝導率が高くなる傾向がある。このため、アルミニウムが全体に対して2.5mass%〜3.0mass%であるマグネシウム合金3は、本発明のマグネシウム合金に含まれる中で、より高い熱伝導率を実現できる。
もちろん、マグネシウム合金1〜3でなくても、本発明のマグネシウム合金は、目的とするレベルの熱伝導率を有する。しかしながら、マグネシウム合金1〜3のように組成の一部の組成比率をより特定することも、熱伝導率をより高めたマグネシウム合金の実現にとって好適である。
(マンガン)
マンガンは、全体に対して、0mass%〜0.5mass%であることが好適である。マンガンそのものは、マグネシウム合金の特性に悪影響を及ぼさない。一方で、機械的強度を向上させたり、製造上の容易性が上がったりするなどの観点から含有させることも適当である。
一方で、マンガンの含有量が多すぎることも好ましくない。
このため、マンガンの含有量は、全体に対して、0mass%〜0.5mass%であることが好適である。
(マグネシウム合金4)
マグネシウム合金4は、
全体に対して、略0.75mass%のカルシウムと、
全体に対して、略3.0mass%のアルミニウムと、
全体に対して、略1.5mass%の添加元素と、
全体に対して、略0.2mass%のマンガンと、
残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなり、
添加元素は、ランタンおよびセリウムを含む組成を有する。
マグネシウム合金4は、本発明のマグネシウム合金に含まれる組成であって、構成するカルシウム、アルミニウム、添加元素、マンガンを特定した組成比率としたものである。
マグネシウム合金4は、後述するように(後述する実施例6)、その電気伝導率は24.2(IACS%)、熱伝導率は93W/mKである。電気伝導率は熱伝導率と密接な相関関係がある。マグネシウム合金4の電気伝導率と熱伝導率を総合的に勘案すると、マグネシウム合金4は、本発明のマグネシウム合金に含まれる組成比率において、好適な性能を発揮できることが分かる。本発明のマグネシウム合金に含まれる中でも、高いメリットを生じさせる組成比率のマグネシウム合金4は、従来のアルミニウム合金などから好適に代替できる。
(マグネシウム合金5)
マグネシウム合金5は、
全体に対して、略0.75mass%のカルシウムと、
全体に対して、略2.5mass%のアルミニウムと、
全体に対して、略1.5mass%の添加元素と、
全体に対して、略0.2mass%のマンガンと、
残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなり、
前記添加元素は、ランタンおよびセリウムを含む組成を有する。
マグネシウム合金5は、本発明のマグネシウム合金に含まれる組成であって、構成するカルシウム、アルミニウム、添加元素、マンガンを特定した組成比率としたものである。
マグネシウム合金4は、後述するように(後述する実施例7)、その電気伝導率は24.9(IACS%)、熱伝導率は98W/mKである。電気伝導率は熱伝導率と密接な相関関係がある。マグネシウム合金4の電気伝導率と熱伝導率を総合的に勘案すると、マグネシウム合金5は、本発明のマグネシウム合金に含まれる組成比率において、好適な性能を発揮できることが分かる。本発明のマグネシウム合金に含まれる中でも、高いメリットを生じさせる組成比率のマグネシウム合金5は、従来のアルミニウム合金などから好適に代替できる。
以上のような組成を有するマグネシウム合金の熱伝導率は、90W/m・K以上である。熱伝導率が90W/m・K以上であることで、参考技術で説明したアルミニウム合金に代替して、様々な機器や装置の筐体、部材、部品に使用することができる。このマグネシウム合金1は、アルミニウム合金よりも軽量であって、同等以上の熱伝導率を有する。このため、軽量化のためにアルミニウム合金が使用されていた分野において、このマグネシウム合金を代替使用することができる。
この代替使用の結果、より軽量化を図ることができる。従来はアルミニウム合金が使用されていた分野において、より軽量であるマグネシウム合金が使用されることにより、機器や装置の軽量化が図られる。電子機器であれば、モバイル性が高くなるメリットがあり、輸送機器であれば、燃費向上などのメリットがある。
加えて、既存に使用されているアルミニウム合金と同等の90W/m・K以上の熱伝導率を有する。このため、発熱の問題を解消しなければならない電子機器や輸送機器においても、好適にマグネシウム合金が使用できる。
(使用態様)
上述したマグネシウム合金1〜4は、電子機器の筐体、部材、構造材、部品などの用途に使用される。例えば、ノートブック型パソコンやタブレット端末の筐体であったり、内部の構造材だったりに使用される。あるいは、携帯端末の部品や部材に使用される。
また、輸送機器の構造材や部品に使用される。例えば、輸送機器の車軸、ねじなどの部品、シャーシなどの構造材の一部などに使用される。これらは、いずれも熱の問題と軽量化の問題を解決する必要があるからである。
電子機器や輸送機器以外であっても、精密機器や工場などで使用される種々の装置の筐体、部品、部材、構造材などに使用される。これらにおいても、排熱効率を維持しつつも、軽量化することが求められるからである。
(マグネシウム合金を用いた鋳造構造部材)
上述したマグネシウム合金を用いた鋳造構造部材も、マグネシウム合金の用途である。マグネシウム合金を鋳造した上で成型して、様々な構造部材に適用する場合である。
この鋳造構造部材として、自動車、二輪車、航空機、船舶、鉄道車両のいずれかにおける、内燃機関、伝達機関、ピストン、シャフト、コンロッド、カバー部、シリンダー、シリンダーブロック、アーム、ナックル、ピラー、ホイール、コンプレッサー筐体、ステアリング、内部筺体、エンジンマウント、オイルパン、ギア、ギアケース、ナット、ねじ、ボルトおよびLED照明装置のヒートシンクの少なくとも一つが含まれる。
また、電気自動車などに使用される熱伝導が必要となる部品にも好適に使用される。例えば、インバータケース、コンバータケース、水冷装置、ウォータージャケット、ヒートパイプなどに使用される。
マグネシウム合金が、これらの用途の鋳造構造部材に用いられることで、発熱などによる問題が生じても、高い熱伝導率でこれを排出できる。この結果、発熱が生じえる分野においても好適に使用できる。また、これらの用途に、マグネシウム合金の鋳造構造部材が使用されることで、軽量化を更に図ることができ、低燃費、低エネルギーなどを実現できる。
(追加元素群)
上述した本発明のマグネシウム合金(マグネシウム合金1、2などを含む)は、更に追加元素群を含むことも好適である。
追加元素群としては、ケイ素(Si)、ベリリウム(Be)、ジルコニウム(Zr)、すず(Sn)、リチウム(Li)、銀(Ag)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ネオジウム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、ストロンチウム(Sr)、ジスプロシウム(Dy)の少なくとも一つ以上の組み合わせである。
これらの追加元素が含まれても、熱伝導率や軽量性といった本発明の目的を阻害することはない。一方で、機械的強度の向上などのプラスアルファが図れることもあり、これらの追加元素が添加されることのメリットもありえる。あるいは、製造工程で使用される原料の組成によっては、これらの追加元素が含まれることになったり、製造工程の都合で含まれることになったりすることもある。
また、他の理由で、これらの追加元素が含まれることになることもある。
これらの追加元素が含まれる場合でも、それが微量であれば、本発明のマグネシウム合金の熱伝導率などの主たる機能に影響を与えない。このため、これらの追加元素が含まれる場合でも、本発明のマグネシウム合金に含まれる。
また、これらの追加元素が添加されることで、追加元素によっては、上述の通り機械的強度や耐久性の向上などが実現できる。このため、必要に応じて、追加元素のいずれかが添加されることも好適である。
添加される微量の追加元素は、全体に対して総量が1.0mass%以下である。このため、上述した追加元素のいずれか一つあるいは、2つ以上の組み合わせが添加されてもよい。
(実験結果の説明)
発明者は、本発明のマグネシウム合金についての実験を行った。この実験を通じて、本発明を確認した。
(実験1:熱伝導率の測定)
発明者は、マグネシウム合金について、熱伝導率を測定した。カルシウム、アルミニウム、添加元素、マンガンおよび残部のマグネシウムであるマグネシウム合金を製造した。この際に、それぞれの組成を変えてマグネシウム合金を製造して、それぞれのマグネシウム合金の熱伝導率を測定した。この測定を通じて、最初の基準である90W/m・K以上の熱伝導率となる組成範囲を確認した。
図4は、マグネシウム合金の熱伝導率などの実験結果を示す表である。図4の表は、カルシウム、アルミニウム、添加元素、マンガンおよび残部のマグネシウムの組成比率を変化させていきながら、熱伝導率を測定したものである。このとき、熱伝導率と相関関係を有する電気伝導率を測定した上で、熱伝導率を測定した。加えて引張強度についても図4の表に示している。
電気伝導率については、HOCKING社製のAutoSigma3000を用いて、製造したマグネシウム合金のサンプルに電気端子を取り付けて測定した。熱伝導率については、NETASCH社製の熱定数測定システムのLFA447を用いて測定した。
ここで、電気伝導率と熱伝導率とは相関関係にある。このため、図4での実験では、電気伝導率と熱伝導率とを測定している。電気伝導率の測定は、上述の通りである。熱伝導率の測定としては、上述した機器を用いて次のように測定した。
(熱伝導率の測定方法)
測定機器名:熱定数測定装置
(メーカー、型番:NETZSCH社、LFA447)
測定条件 :測定温度=20℃
:測定サンプルサイズ=φ10×2mm厚
測定定数 :熱拡散率、比熱、熱伝導率
サンプルに熱源を加えて、熱拡散率と比熱を測定して、これらから熱伝導率を算出する。
引張強度については、マグネシウム合金の試験片を所定の形状とした上で、引張強度を測定する装置を用いて測定した。図5は、本発明のマグネシウム合金の引張強度を測定する方法を示す模式図である。図5に示される形状の試験片を作成して、株式会社東京試験機製の300kN万能試験機をもちいて試験片を引っ張る。このとき、試験片の耐久状態(試験片の破断時の圧力)を確認して、引張強度を測定した。
(引張強度の測定方法)
測定機器名:300kN万能試験機
(メーカー、型番:東京試験機社、AY−300P)
測定条件 :測定温度=20℃
:試験片平行部=直径6mm、長さ45mm
(電気伝導率の実験結果)
図4の表の左上から順に電気伝導率および熱伝導率の測定結果を説明する。図4の表および後述する図6のグラフに記載のある数字は、実施例のそれぞれを示している。
(実施例1)
実施例1のマグネシウム合金は、全体に対して3.0mass%のアルミニウム、0.75mass%のカルシウム、1.0mass%の添加元素、0.2mass%のマンガン、残部のマグネシウムを含む。この実施例1のマグネシウム合金についての、実験結果は次の通りである。
電気伝導率:21.8(IACS%)
熱伝導率:94W/mK
実施例1のマグネシウム合金は、既述した通りの組成と組成比率に含まれるマグネシウム合金である。特に、上述したマグネシウム合金1に対応するマグネシウム合金である。この実施例1のマグネシウム合金は、熱伝導率が基準とする90W/mKを超えており、実施例1の実験結果からも、本発明のマグネシウム合金の組成と組成比率が、目標となる熱伝導率を有することが確認された。
(実施例2)
実施例2のマグネシウム合金は、全体に対して3.0mass%のアルミニウム、0.75mass%のカルシウム、1.25mass%の添加元素、0.2mass%のマンガン、残部のマグネシウムを含む。この実施例2のマグネシウム合金についての、実験結果は次の通りである。
電気伝導率:22.6(IACS%)
熱伝導率:96W/mK
実施例2のマグネシウム合金は、既述した通りの組成と組成比率に含まれるマグネシウム合金である。特に、上述したマグネシウム合金2に対応するマグネシウム合金である。この実施例2のマグネシウム合金は、熱伝導率が基準とする90W/mKを超えており、実施例2の実験結果からも、本発明のマグネシウム合金の組成と組成比率が、目標となる熱伝導率を有することが確認された。
(実施例3)
実施例3のマグネシウム合金は、全体に対して3.0mass%のアルミニウム、0.25mass%のカルシウム、1.5mass%の添加元素、0.2mass%のマンガン、残部のマグネシウムを含む。この実施例3のマグネシウム合金についての、実験結果は次の通りである。
電気伝導率:21.9(IACS%)
熱伝導率:90W/mK
実施例3のマグネシウム合金は、既述した通りの組成と組成比率に含まれるマグネシウム合金である。この実施例3のマグネシウム合金は、熱伝導率が基準とする90W/mKを超えており、実施例3の実験結果からも、本発明のマグネシウム合金の組成と組成比率が、目標となる熱伝導率を有することが確認された。
(実施例4)
実施例4のマグネシウム合金は、全体に対して3.0mass%のアルミニウム、0.5mass%のカルシウム、1.5mass%の添加元素、0.2mass%のマンガン、残部のマグネシウムを含む。この実施例4のマグネシウム合金についての、実験結果は次の通りである。
電気伝導率:22.6(IACS%)
熱伝導率:97W/mK
実施例4のマグネシウム合金は、既述した通りの組成と組成比率に含まれるマグネシウム合金である。特に、上述したマグネシウム合金3に対応するマグネシウム合金である。この実施例2のマグネシウム合金は、熱伝導率が基準とする90W/mKを超えており、実施例4の実験結果からも、本発明のマグネシウム合金の組成と組成比率が、目標となる熱伝導率を有することが確認された。
(実施例5)
実施例5のマグネシウム合金は、全体に対して3.5mass%のアルミニウム、0.75mass%のカルシウム、1.5mass%の添加元素、0.2mass%のマンガン、残部のマグネシウムを含む。この実施例5のマグネシウム合金についての、実験結果は次の通りである。
電気伝導率:22.0(IACS%)
熱伝導率:90W/mK
実施例5のマグネシウム合金は、既述した通りの組成と組成比率に含まれるマグネシウム合金である。この実施例5のマグネシウム合金は、熱伝導率が基準とする90W/mKを超えており、実施例5の実験結果からも、本発明のマグネシウム合金の組成と組成比率が、目標となる熱伝導率を有することが確認された。
(実施例6)
実施例6のマグネシウム合金は、全体に対して3.0mass%のアルミニウム、0.75mass%のカルシウム、1.5mass%の添加元素、0.2mass%のマンガン、残部のマグネシウムを含む。この実施例6のマグネシウム合金についての、実験結果は次の通りである。ここで実施例6は、上述したマグネシウム合金4に相当する。
電気伝導率:24.2(IACS%)
熱伝導率:93W/mK
実施例6のマグネシウム合金は、既述した通りの組成と組成比率に含まれるマグネシウム合金である。この実施例6のマグネシウム合金は、熱伝導率が基準とする90W/mKを超えており、実施例6の実験結果からも、本発明のマグネシウム合金の組成と組成比率が、目標となる熱伝導率を有することが確認された。
(実施例7)
実施例7のマグネシウム合金は、全体に対して2.5mass%のアルミニウム、0.75mass%のカルシウム、1.5mass%の添加元素、0.2mass%のマンガン、残部のマグネシウムを含む。この実施例7のマグネシウム合金についての、実験結果は次の通りである。ここで、実施例7は、上述したマグネシウム合金5に相当する。
電気伝導率:24.9(IACS%)
熱伝導率:98W/mK
実施例7のマグネシウム合金は、既述した通りの組成と組成比率に含まれるマグネシウム合金である。この実施例7のマグネシウム合金は、熱伝導率が基準とする90W/mKを超えており、実施例7の実験結果からも、本発明のマグネシウム合金の組成と組成比率が、目標となる熱伝導率を有することが確認された。
また、ランタンおよびセリウムを含む添加元素が含有されていることにより、アルミニウムの含有による熱伝導率の低下を解消して、熱伝導率を十分なレベルに引き上げていることが分かる。
図6は、本発明のマグネシウム合金の実際の製作例である実施例1〜実施例7の熱伝導率の測定結果を示すグラフである。上述した、図4で説明した実施例1〜実施例7の熱伝導率の結果をグラフ化したものを、図6は示している。
図6のグラフから明らかなとおり、実施例1〜7のいずれも、基準とする熱伝導率である90W/mK以上である。このため、既述した組成と組成比率を有するマグネシウム合金(マグネシウム合金1、2なども含む)は、十分な熱伝導率を有することが実験からも確認された。加えて、マグネシウムを主成分とすることで、軽量化が実現できる。これにより、軽量化に加えて、発熱対応をしなければならない分野にも様々に適用できる。
(引張強度の確認)
また、実施例5〜7については、製作したマグネシウム合金の引張強度を測定した。図7は、本発明の実施例5〜7についての引張強度および伸びの実験結果を示す表である。図8は、本発明の実施例5〜7についての引張強度および伸びの実験結果を示すグラフである。
引張強度の測定方法は上述した通りである。
実施例5の引張強度は、228.7MPaであり、伸びは7.8%である。
実施例6の引張強度は、225.8MPaであり、伸びは9.4%である。
実施例7の引張強度は、215.7MPaであり、伸びは、5.8%である。
いずれも、十分な引張強度と伸びを有している。このレベルの引張強度や伸びを有していることで、成型加工などにおける延性が十分にある。延性が十分にあることで、様々な形状に成型加工することが容易となりつつ、耐久性も十分となる。
この結果、本発明のマグネシウム合金を用いた鋳造構造部材も、製造における容易性や精度が高まる。
なお、実施の形態で説明されたマグネシウム合金は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
100 溶融容器

Claims (11)

  1. 全体に対して、0.25mass%〜1.0mass%のカルシウムと、
    全体に対して、2.5mass%〜3.5mass%のアルミニウムと、
    全体に対して、1.0mass%〜1.75mass%の添加元素と、
    マンガンと、
    残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなり、
    前記添加元素は、ランタンおよびセリウムを含む、マグネシウム合金。
  2. 前記カルシウムは、全体に対して、0.5mass%〜1.0mass%である、請求項1記載のマグネシウム合金。
  3. 前記添加元素は、全体に対して、1.25mass%〜1.75mass%である、請求項1または2記載のマグネシウム合金。
  4. 前記アルミニウムは、全体に対して、2.5mass%〜3.0mass%である、請求項1から3のいずれか記載のマグネシウム合金。
  5. 前記マンガンは、全体に対して、0mass%〜0.5mass%である、請求項1から4のいずれか記載のマグネシウム合金。
  6. 全体に対して、略0.75mass%のカルシウムと、
    全体に対して、略3.0mass%のアルミニウムと、
    全体に対して、略1.5mass%の添加元素と、
    全体に対して、略0.2mass%のマンガンと、
    残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなり、
    前記添加元素は、ランタンおよびセリウムを含む、マグネシウム合金。
  7. 全体に対して、略0.75mass%のカルシウムと、
    全体に対して、略2.5mass%のアルミニウムと、
    全体に対して、略1.5mass%の添加元素と、
    全体に対して、略0.2mass%のマンガンと、
    残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなり、
    前記添加元素は、ランタンおよびセリウムを含む、マグネシウム合金。
  8. さらに、追加元素群を含み、
    前記追加元素群は、ケイ素(Si)、ベリリウム(Be)、ジルコニウム(Zr)、すず(Sn)、リチウム(Li)、銀(Ag)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ネオジウム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、ストロンチウム(Sr)、ジスプロシウム(Dy)の少なくとも一つ以上の組み合わせである、請求項1から7のいずれか記載のマグネシウム合金。
  9. 前記マグネシウム合金の熱伝導率が、90W/m・K以上である、請求項1から8のいずれか記載のマグネシウム合金。
  10. 請求項1から9のいずれか記載の、マグネシウム合金を用いた鋳造構造部材。
  11. 前記鋳造構造部材は、自動車、二輪車、航空機、船舶、鉄道車両のいずれかにおける、
    内燃機関、伝達機関、ピストン、シャフト、コンロッド、カバー部、シリンダー、シリンダーブロック、アーム、ナックル、ピラー、ホイール、コンプレッサー筐体、ステアリング、内部筺体、エンジンマウント、オイルパン、ギア、ギアケース、ナット、ねじ、ボルトおよびLED照明装置のヒートシンクの少なくとも一つを含む、請求項11記載のマグネシウム合金を用いた鋳造構造部材。
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