JP2020200296A - 角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤 - Google Patents

角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤 Download PDF

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Abstract

【課題】進行性の角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤を提供する。【解決手段】進行性の角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤は、4-フルオロ-5-{[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル}イソキノリンを有する。リパスジル塩酸塩水和物点眼液を2回/日で数日間使用した場合において、レーザー虹彩切開術の後に発生する角膜内皮障害の症状が緩和される。リパスジル塩酸塩水和物点眼液を2回/日で数日間使用した場合において、Fuchs角膜内皮ジストロフィの症状が緩和される。【選択図】図1

Description

本発明は、進行性の角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤に関する。
緑内障は視神経に障害が起こり視野が狭くなる疾患であり、先天緑内障、続発緑内障、原発緑内障の3タイプに分けられる。先天緑内障は生まれつき隅角に発育不全があり、房水の排出が妨げられるために起こる緑内障である。続発緑内障は炎症やけが等明らかな原因により起こる緑内障で、ぶどう膜炎や眼のけが等眼に原因があるものの他、糖尿病による出血、他の病気の治療で使うステロイドホルモンの長期使用等によっても発症する。原発緑内障は原因がはっきりしないものの総称で、中高年の人に多くみられ、緑内障の中でも最も多いタイプである。
緑内障の治療方法は、薬物で眼圧を制御できない時や閉塞隅角緑内障患者が急性緑内障発作を起こした場合には、レーザー治療法や手術療法が行われるが、薬物療法が第一選択として用いられる。緑内障の薬物療法にはRhoキナーゼ阻害剤(ROCK阻害薬)の1種であるリパスジル(Ripasudil)が使用されることがある(非特許文献1)。リパスジルは、プロテインキナーゼの1種であり低分子量G蛋白質であるRhoと結合するセリン・スレオニン蛋白リン酸化酵素である。ミオシンホスファターゼを阻害しリン酸化したミオシン軽鎖の脱リン酸化を抑制するとされている。リパスジルはこのRhoキナーゼのアイソフォームのヒトROCK-1及びROCK-2を選択的に阻害し、線維柱帯やシュレム管等の流出経路からの房水流出を促進させると考えられている(非特許文献2)。
水疱性角膜症とは、角膜内皮細胞数の機能低下により角膜内に水がたまり、本来は透明である角膜が白く濁った状態である。角膜は、組織学的には5層から成り、一番内側に位置している組織が角膜内皮である。角膜内皮はデスメ膜という基底膜とともに、角膜実質組織と前房水との境に位置する。生体内では増殖しない組織で、損傷を受けると周辺部の細胞が拡大して損傷を補い、内皮細胞は障害されると細胞数は減少し増加することはない。細胞密度は、正常で2500-3000個/mm2である。内皮細胞の機能は、角膜の含水率を一定に維持することである。内皮細胞のポンプ機能とバリア機能が角膜の厚みを一定に調節している。一般的に、角膜内皮細胞密度が、400個/mm2以下になると、ポンプ機能とバリア機能が低下し、角膜内に水がたまり、角膜が厚くなる(非特許文献3)。
水疱性角膜症を代表とする角膜内皮障害に対する現在の主な治療法はドナー角膜を用いた角膜移植術であるが、この手術の長期的な臨床結果は不十分である。また、角膜移植後の視力は、角膜不正乱視が誘導されることに起因して十分ではない。角膜移植患者の約60%以上は角膜内皮機能不全(水疱性角膜症)である。水疱性角膜症の主な原因は白内障手術、緑内障手術、硝子体網膜手術、またはレーザー虹彩切開術等の眼科手術に起因する角膜内皮障害、角膜外傷、偽落屑症候群、及びフックス角膜内皮ジストロフィである(非特許文献4)。
Tanihara H, Inoue T, Yamamoto T, Kuwayama Y, Abe H, Suganami H, Araie M, JAMA Ophthalmol, 133, 755-761(2015). Kaneko Y, Ohta M, Isobe T, Nakamura Y, Mizuno K, J Ophthalmol. 7079645(2017). Morishige N, Takagi Y, Chikama T, et al. Three-dimensional analysis of collagen lamellae in the anterior stroma of the human cornea visualized by second harmonic generation imaging microscopy. Invest Ophthalmol Vis Sci;52:911-915(2011). Boimer C, Lee K, Sharpen L, et al. Evolving surgical techniques of and indications for corneal transplantation in Ontario from 2000 to 2009. Can J Ophthalmol;46:360-366(2011).
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、進行性の角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤を提供することを目的とする。
本発明にかかる進行性の角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤は、4-フルオロ-5-{[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル}イソキノリン(以下、リパスジルともいう。)を有することを特徴とする。
本発明によれば、進行性の角膜内皮障害を的確に予防及び/又は治療することができる。
リパスジル塩酸塩水和物点眼液を2回/日で43日間使用した場合において、レーザー虹彩切開術の後に発生する角膜内皮障害の症状が緩和されたことを示す写真図である。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液を2回/日で45日間使用した場合において、レーザー虹彩切開術の後に発生する角膜内皮障害の症状が緩和されたことを示す写真図である。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液を2回/日で45日間使用した場合において、レーザー虹彩切開術の後に発生する角膜内皮障害の症状が緩和されたことを示す写真図である。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液を2回/日で69日間使用した場合において、Fuchs角膜内皮ジストロフィの症状が緩和されたことを示す写真図である。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液を2回/日で47日間使用した場合において、Fuchs角膜内皮ジストロフィの症状が緩和されたことを示す写真図である。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液を2回/日で49日間使用した場合において、Fuchs角膜内皮ジストロフィの症状が緩和されたことを示す写真図である。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液を2回/日で49日間使用した場合において、Fuchs角膜内皮ジストロフィの症状が緩和されたことを示す写真図である。 リパスジル塩酸塩水和物点眼液を2回/日で14日間使用した場合において、Fuchs角膜内皮ジストロフィの症状が緩和されたことを示す写真図である。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
本発明者は、次式で表される4-フルオロ-5-{[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル}イソキノリンについての作用を検討してきた。
本発明は、リパスジル若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とすることを特徴とする、進行性の角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤である。
眼内では水晶体の後方より房水と呼ばれる水が常時産生し、瞳孔を通過して虹彩の周辺にある排水管(シュレム管)より眼外に排出される。この房水の循環が阻害されると眼内の圧が上昇し、眼痛、頭痛をともなう急性緑内障発作を生じて失明にいたる危険性がある。緑内障に対してのレーザー虹彩切開術は虹彩に孔をあけて房水の流れるバイパスを作製し、急性緑内障の解消あるいは予防をする手術である。しかしながら緑内障に対してのレーザー虹彩切開術を受けた患者の一部で、角膜内皮細胞の大幅な減少が起こり、水疱性角膜症を発症することが知られている。レーザー虹彩切開の施術後すぐにこの症状が起こるわけではなく、施術から数年〜十年後くらいに角膜内皮細胞が減少し始める進行性の角膜内皮障害である。日本における水疱性角膜症の症例のうち2割強がレーザー虹彩切開だという報告もある。施術後に数年もたってから発症するメカニズムについても諸説あるものの明確に解明されていない。
本発明者は、リパスジルの0.4%点眼剤を、緑内障に対してのレーザー虹彩切開術の後に発生する進行性の角膜内皮障害の症状を有する患者に数週間反復点眼投与(2回/日)した投与群において、投与していない群と比較して角膜厚が減少し浮腫が改善したことを新知見として見出しかかる事実に基づいて本発明を完成させた。
本発明は、リパスジル若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とすることを特徴とする、緑内障に対してのレーザー虹彩切開術の後に発生する角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤である。
Fuchs(フックス)角膜内皮ジストロフィは、原発性に角膜内皮が障害され、進行性に内皮細胞数の減少をきたす疾患である。正常人でも角膜内皮は老化とともに漸減していくが、フックス症では内皮細胞数の異常減少とともに細胞の形態異常も伴い、進行すると水疱性角膜症となり視力は手動弁ないし光覚弁にまで低下する。優性遺伝性疾患といわれており、COL8A2遺伝子、SLC4A11遺伝子、TCF4遺伝子等のいつくかの遺伝子において遺伝子変異が報告されている。両眼性に角膜浮腫による混濁が進行し、最終的には水疱性角膜症に至り、手動弁ないし光覚弁にまで視力が低下する。また、角膜浮腫に伴い角膜上皮びらんを生じやすくなり、眼痛をくりかえす。角膜内皮面の滴状角膜とよばれる所見が特徴的であり、滴状角膜そのものによって視機能が低下する可能性も見出されている。
Fuchs(フックス)角膜内皮ジストロフィの治療法としては角膜移植以外に有効な治療法はないとされており、角膜移植を行うことで病的な角膜内皮細胞を健常な角膜内皮細胞に置き換え、角膜内皮細胞の最も重要な機能であるポンプ機能を正常化させることで角膜浮腫を消滅せしめる。
本発明者は、リパスジルの0.4%点眼剤を、角膜内皮ジストロフィの症状を有する患者に数週間反復点眼投与(2回/日)した投与群において、投与していない群と比較して角膜厚が減少し浮腫が改善したことを新知見として見出しかかる事実に基づいて本発明を完成させた。
本発明は、リパスジル若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とすることを特徴とする、角膜内皮ジストロフィの予防及び/又は治療のための薬剤である。
本明細書において進行性の角膜内皮障害とは、角膜内皮の急性障害を包含せず、原発性あるいは続発性の角膜内細胞の障害が進行していく状態を規定する。
本明細書において、リパスジルの塩としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、臭化水素酸等の無機酸の塩、又は酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸等の有機酸との塩が挙げられ、特に塩酸塩が好ましい。
リパスジル又はその塩は、未溶媒和型のみならず水和物又は溶媒和物としても存在することができる。水和物が好ましいが、本発明においては、全ての結晶型及び水和若しくは溶媒和物を含むものである。特に好ましいリパスジルの塩は、リパスジル一塩酸塩二水和物である。
本明細書において「予防」には疾患の発症を抑えること及び遅延させることが含まれ、疾患になる前の予防だけでなく、治療後の疾患の再発に対する予防も含まれる。一方、「治療」には、症状を治癒すること、症状を改善すること及び症状の進行を抑えることが含まれる。
リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の製剤を調製する場合、公知の方法に準じて調製することができる。例えば点眼剤は、等張化剤、緩衝剤、界面活性剤、防腐剤等を必要に応じて使用して、調製することができる。
本発明にかかる薬剤のpHは特に限定されないが、4〜9が好ましく、4.5〜8.5がより好ましく、5〜8がさらにより好ましく、5.5〜7.5が特に好ましい。
本発明の薬剤は、眼科用製剤として用いるのが好ましく、かかる眼科用製剤は、水性点眼剤、非水性点眼剤、懸濁性点眼剤、乳濁性点眼剤、眼軟膏等のいずれでもよい。このような製剤は、投与形態に適した組成物として、必要に応じて薬学的に許容される担体、例えば点眼剤の場合は点眼薬に許容される担体、例えば等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、溶解補助剤、粘稠化剤等を配合し、当業者に公知の(製剤)方法により製造できる。
本発明の有効成分は、点眼投与においても有効性を有しており、点眼薬とすることができる。本発明の点眼薬は、本発明の有効成分であるリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、及び点眼薬に許容される担体を含有するものである。
点眼剤を調製する場合、例えば、所望な上記成分を滅菌精製水、生理食塩水等の水性溶剤、又は綿実油、大豆油、ゴマ油、落花生油等の植物油等の非水性溶剤に溶解又は懸濁させ、所定の浸透圧に調整し、濾過滅菌等の滅菌処理を施すことにより行うことができる。なお、眼軟膏剤を調製する場合は、前記各種の成分の他に、軟膏基剤を含むことができる。前記軟膏基剤としては、特に限定されないが、ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレン等の油性基剤;油相と水相とを界面活性剤等により乳化させた乳剤性基剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等からなる水溶性基剤等が好ましく挙げられる。
リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を後発白内障、前嚢収縮等の白内障術後合併症の予防及び/又は治療のために用いる場合、その投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状、投与形態及び投与回数等によって異なるが、通常は成人に対して、(S)-(-)-1-(4-フルオロ-5-イソキノリンスルホニル)-2-メチル-1,4-ホモピペラジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物として、1日0.025〜10000μg、好ましくは0.025〜2000μg、より好ましくは0.1〜2000μg、さらに0.025〜200μgの範囲が挙げられる。
また、投与回数は、特に限定されないが、1回又は数回に分けて投与するのが好ましく、液体点眼剤の場合は、1回に1〜数滴点眼すればよい。
本発明にかかる薬剤は、さらに他の薬効成分を含んでいても良い。このような薬効成分としては、例えば、ブナゾシン塩酸塩などのブナゾシン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα1受容体遮断薬;ブリモニジン酒石酸塩などのブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、アプラクロニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα2受容体作動薬;チモロールマレイン酸塩などのチモロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ベタキソロール塩酸塩などのベタキソロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、レボブノロール塩酸塩などのレボブノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ベフノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メチプラノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むβ遮断薬;アセタゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ジクロルフェナミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メタゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む炭酸脱水酵素阻害剤;トラボプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ビマトプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ラタノプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むプロスタグランジン類;エピネフリン、エピネフリンホウ酸塩、エピネフリン塩酸塩などのエピネフリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む交感神経作動薬;ピロカルピン、ピロカルピン塩酸塩、ピロカルピン硝酸塩などのピロカルピン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、カルバコール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む副交感神経作動薬;ロメリジン塩酸塩などのロメリジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むカルシウム拮抗薬;デメカリウム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、エコチオフェート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、フィゾスチグミン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むコリンエステラーゼ阻害剤などが挙げられる。
本発明にかかる薬剤は眼科用剤であり、眼科用剤は好ましくは点眼剤である。本発明にかかる薬剤は、保存安定性、携帯性等の観点から、容器に収容されるのが好ましい。「容器」は、本発明にかかる薬剤を直接的に収容する包装体である。容器は「密閉容器」、「気密容器」、「密封容器」のいずれをも包含する。容器の形態は適宜選択、設定すればよい。容器の材質は特に限定されず、例えば、ガラス、プラスチック、金属等が挙げられる。加工性、スクイズ性や耐久性の観点から、プラスチック製であるのが好ましい。プラスチック製容器の樹脂としては、熱可塑性樹脂であるのが好ましく、例えば、低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレンを含む)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレナフタレート)等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。
(1)緑内障に対してのレーザー虹彩切開術の後に発生する角膜内皮障害の症状緩和
(1-1)瞳孔ブロックを解除し前後房の圧差を解消して隅角を開大する目的で患者X1の右眼に対してレーザー虹彩切開術を行った。
術前準備として、(a)虹彩が伸展・緊張し、穿孔が容易になるように、術前1時間前に1〜2% ピロカルピンを点眼した。(b)術後一過性眼圧上昇の予防のため、術1時間前と術直後にアプラクロニジンを点眼した。(c)角膜浮腫があるときには炭酸脱水酵素阻害薬や高張浸透圧薬を投与し角膜が透明化してから施行した。(d)点眼麻酔下で施行した。コンタクトレンズは、虹彩切開用のAbraham コンタクトレンズを使用した。アルゴンレーザーによる熱凝固レーザー虹彩切開術を行った。第1段階(穿孔予定部位の周囲に照射し虹彩を伸展する)では、スポットサイズ:200〜500μm、パワー:200mW、時間:0.2秒であった。第2段階(穿孔照射)では、スポットサイズ:50μm、パワー:1000mW、時間:0.02秒であった。さらに照射を加え瞳孔ブロックを解消するに十分な大きさ(100〜200μm)になるよう穿孔創を拡大した。
施術から12年後、患者X1の角膜内皮細胞が減少し、角膜が混濁して水疱性角膜症となった。最菲薄部角膜厚を測定すると547μmであった。この時からグラナテック(登録商標、リパスジル塩酸塩水和物点眼液)を2回/日で43日間使用した。43日間使用した後に最菲薄部角膜厚を測定すると534μmであった(図1)。角膜厚が減少しており浮腫が改善されていることが判明した。
(1-2)患者X2の左眼に対しても、緑内障発作の予防目的でレーザー虹彩切開術を行った。
施術から17年後、患者X2の左眼の角膜内皮細胞が減少し、角膜が混濁して水疱性角膜症となった。最菲薄部角膜厚を測定すると479μmであった。この時からグラナテック(リパスジル塩酸塩水和物点眼液)を2回/日で45日間使用した。45日間使用した後に最菲薄部角膜厚を測定すると463μmであった(図2)。角膜厚が減少しており浮腫が改善されていることが判明した。
(1-3)患者X1と同様に患者X3の右眼に対しても、瞳孔ブロックを解除し前後房の圧差を解消して隅角を開大する目的でレーザー虹彩切開術を行った。
施術から17年後、角膜内皮細胞が減少し、角膜が混濁して水疱性角膜症となった。最菲薄部角膜厚を測定すると504μmであった。この時からグラナテック(リパスジル塩酸塩水和物点眼液)を2回/日で45日間使用した。45日間使用した後に最菲薄部角膜厚を測定すると490μmであった(図3)。角膜厚が減少しており浮腫が改善されていることが判明した。
(2)Fuchs角膜内皮ジストロフィの症状緩和
(2-1)患者Y1は69歳女性であり、主訴は左眼の視力低下であった。初診時所見は視力は右眼1.0(1.2)、左眼0.3(0.6)、眼圧は右眼15mmHg、左眼14mmHgであった。細隙灯顕微鏡検査では両眼ともフルオレセインで染色される点状表層角膜症がみられた。角膜実質には軽度の浮腫による混濁がみられ、角膜内皮面には反帰光線で観察されるdark spotが散在性にみられた。前房内に細胞やflare等の炎症所見はみられなかった。中間透光体には両眼ともに核・皮質白内障がみられた。スペキュラマイクロスコープで、角膜内皮細胞密度は右眼1,959cells/mm2,左眼692cells/mm2であり、角膜厚は右眼609μmであった。初診時の所見よりFuchs' 角膜内皮ジストロフィと診断した。グラナテック(リパスジル塩酸塩水和物点眼液)を2回/日で69日間使用した。69日間使用した後に最菲薄部角膜厚を測定すると575μmであった(図4)。角膜厚が減少しており浮腫が改善されていることが判明した。
(2-2)患者Y2は70歳女性であり、主訴は左眼の視力低下であった。初診時所見は視力は右眼1.0(1.2)、左眼0.01(0.02)、眼圧は右眼15mmHg、左眼17mmHgであった。デスメ膜の隆起による無細胞領域が認められ、角膜内皮細胞密度は右眼1067cells/mm2,左眼656cells/mm2であり、角膜厚は左眼693μmであった。初診時の所見よりFuchs' 角膜内皮ジストロフィと診断した。グラナテック(リパスジル塩酸塩水和物点眼液)を2回/日で47日間使用した。47日間使用した後に最菲薄部角膜厚を測定すると680μmであった(図5)。角膜厚が減少しており浮腫が改善されていることが判明した。
(2-3)患者Y3は70歳女性であり、主訴は両眼の視力低下であった。初診時所見は視力は右眼0.1(0.8)、左眼0.1(0.8)、眼圧は右眼14mmHg、左眼14mmHgであった。デスメ膜の隆起による無細胞領域が認められ、角膜内皮細胞密度は右眼1069cells/mm2,左眼997cells/mm2であり、角膜厚は右眼557μmであった。初診時の所見よりFuchs' 角膜内皮ジストロフィと診断した。グラナテック(リパスジル塩酸塩水和物点眼液)を2回/日で49日間使用した。49日間使用した後に最菲薄部角膜厚を測定すると546μmであった(図6)。角膜厚が減少しており浮腫が改善されていることが判明し、矯正視力も1.0に改善した。
(2-4)患者Y4の左眼は初診時、角膜厚は568μmであった。初診時の所見よりFuchs' 角膜内皮ジストロフィと診断した。グラナテック(リパスジル塩酸塩水和物点眼液)を2回/日で49日間使用した。49日間使用した後に最菲薄部角膜厚を測定すると550μmであった(図7)。角膜厚が減少しており浮腫が改善されていることが判明し、矯正視力も0.8から1.0に改善した。
(2-5)患者Y5の右眼は初診時、角膜厚は571μmであった。初診時の所見よりFuchs' 角膜内皮ジストロフィと診断した。グラナテック(リパスジル塩酸塩水和物点眼液)を2回/日で14日間使用した。14日間使用した後に最菲薄部角膜厚を測定すると550μmであった(図8)。角膜厚が減少しており浮腫が改善されていることが判明した。
レーザー虹彩切開術の後に発生する角膜内皮障害の症状緩和に利用できる。

Claims (8)

  1. 下記リパスジル若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とすることを特徴とする、進行性の角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤。
  2. 前記進行性の角膜内皮障害は、緑内障に対してのレーザー虹彩切開術の後に発生する角膜内皮障害であることを特徴とする請求項1記載の進行性の角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤。
  3. 前記進行性の角膜内皮障害は、角膜内皮ジストロフィであることを特徴とする請求項1記載の進行性の角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤。
  4. 前記リパスジルが、リパスジル一塩酸塩二水和物である請求項1乃至3の何れか1項に記載の進行性の角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤。
  5. α1受容体遮断薬、α2受容体作動薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、交感神経作動薬、副交感神経作動薬、カルシウム拮抗剤及びコリンエステラーゼ阻害剤よりなる群から選ばれる1種以上を有する請求項1乃至4の何れか1項に記載の進行性の角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤。
  6. pHが5.5〜7.5である請求項1乃至5の何れか1項に記載の進行性の角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤。
  7. 前記リパスジルの塩は、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸又は臭化水素酸である無機酸の塩である請求項1乃至6の何れか1項に記載の進行性の角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤。
  8. 前記リパスジルの塩は、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸又はカンファースルホン酸である有機酸の塩である請求項1乃至6の何れか1項に記載の進行性の角膜内皮障害の予防及び/又は治療のための薬剤。
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