JP2020200242A - 運動耐容能改善用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】運動耐容能を改善する新規な組成物の提供。【解決手段】本発明によれば、ホエイタンパク質およびホエイペプチドのいずれかまたは両方を少なくとも含むタンパク質源を含んでなる、運動耐容能改善用組成物が提供される。前記タンパク質源は分岐鎖アミノ酸をさらに含んでいてもよい。本発明の組成物は、脂質源、糖質、食物繊維、ビタミン類およびミネラル類をさらに含んでいてもよい。本発明の組成物は、リハビリテーションを受けている対象に投与または摂取させることができる。【選択図】なし
Description
本発明は、運動耐容能改善用組成物に関する。
心不全は心臓の機能障害による体内各臓器と四肢末梢の潅流障害に起因する息切れを主徴とし、動悸、倦怠感および運動耐容能の低下等をきたす症候群である。心不全には、急性心筋梗塞のように急激に発症する急性心不全と長期間にわたって徐々に心筋の障害が進行し顕在化してくる慢性心不全とがある。
運動耐容能とは、国際生活機能分類(ICF)によれば、身体運動負荷に耐えるために必要な、呼吸や心血管系の能力に関する機能であり、全身持久力や有酸素能力等が含まれる。また、心不全においては、運動耐容能は重症度を示す重要な指標であるとともに、強力な予後の予測因子である。運動耐容能低下を改善させるためには、運動療法を行う必要があるため、病態が安定している慢性心不全では重症度に合わせて適度な運動療法が行われる。運動耐容能を改善させることにより、日常生活における心不全症状や狭心症発作等の諸症状を軽減して生活の質(QOL)を改善することができる。これまでに、慢性心不全における運動耐容能低下の改善剤として、ヘモグロビンのアロステリック調整剤が提案されている(特許文献1)。
本発明は、運動耐容能の改善に用いるための新規組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは今般、ホエイタンパク質およびホエイペプチドを含む栄養組成物を摂取させたリハビリテーションを受けている慢性心不全の被験者を心肺運動負荷試験に供して、運動耐容能を検証したところ、運動耐容能が向上することを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]ホエイタンパク質およびホエイペプチドのいずれかまたは両方を少なくとも含むタンパク質源を含んでなる、運動耐容能改善用組成物。
[2]タンパク質源がホエイタンパク質およびホエイペプチドの両方を含む、上記[1]に記載の組成物。
[3]タンパク質源の総含有量に対する、ホエイタンパク質の含有量およびホエイペプチドの含有量の合計の比率(質量比、固形分換算)が、0.1以上である、上記[1]または[2]に記載の組成物。
[4]ホエイタンパク質の含有量に対するホエイペプチドの含有量の比率(質量比、固形分換算)が、0.01〜10である、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5]ホエイタンパク質を、1日当たり1〜100g(固形分換算)の量で対象に投与または摂取させる、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]ホエイペプチドを、1日当たり1〜100g(固形分換算)の量で対象に摂取させる、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]タンパク質源が1種以上の分岐鎖アミノ酸をさらに含む、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]タンパク質源の総含有量に対する分岐鎖アミノ酸の含有量の比率(質量比、固形分換算)が、0.01〜0.8である、上記[7]に記載の組成物。
[9]分岐鎖アミノ酸がロイシン、イソロイシンおよびバリンからなる群から選択される1種または2種以上である、上記[7]または[8]に記載の組成物。
[10]分岐鎖アミノ酸を、1日当たり0.1〜10g(固形分換算)の量で対象に摂取させる、上記[7]〜[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]脂質源をさらに含んでなる、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の組成物。
[12]糖質、食物繊維、ビタミン類およびミネラル類からなる群から選択される1種以上をさらに含んでなる、上記[1]〜[11]のいずれかに記載の組成物。
[13]食品組成物である、上記[1]〜[12]のいずれかに記載の組成物。
[14]栄養組成物である、上記[1]〜[13]のいずれかに記載の組成物。
[15]100kcal/100ml以上のカロリー密度を有する、上記[1]〜[14]のいずれかに記載の組成物。
[16]リハビリテーションを受けている対象に投与または摂取させるための、上記[1]〜[15]のいずれかに記載の組成物。
[17]心不全患者または慢性閉塞性肺疾患患者に投与または摂取させるための、上記[1]〜[16]のいずれかに記載の組成物。
[18]運動耐容能の改善により予防または改善しうる疾患または症状の予防または改善に用いるための、上記[1]〜[17]のいずれかに記載の組成物。
[1]ホエイタンパク質およびホエイペプチドのいずれかまたは両方を少なくとも含むタンパク質源を含んでなる、運動耐容能改善用組成物。
[2]タンパク質源がホエイタンパク質およびホエイペプチドの両方を含む、上記[1]に記載の組成物。
[3]タンパク質源の総含有量に対する、ホエイタンパク質の含有量およびホエイペプチドの含有量の合計の比率(質量比、固形分換算)が、0.1以上である、上記[1]または[2]に記載の組成物。
[4]ホエイタンパク質の含有量に対するホエイペプチドの含有量の比率(質量比、固形分換算)が、0.01〜10である、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5]ホエイタンパク質を、1日当たり1〜100g(固形分換算)の量で対象に投与または摂取させる、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]ホエイペプチドを、1日当たり1〜100g(固形分換算)の量で対象に摂取させる、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]タンパク質源が1種以上の分岐鎖アミノ酸をさらに含む、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]タンパク質源の総含有量に対する分岐鎖アミノ酸の含有量の比率(質量比、固形分換算)が、0.01〜0.8である、上記[7]に記載の組成物。
[9]分岐鎖アミノ酸がロイシン、イソロイシンおよびバリンからなる群から選択される1種または2種以上である、上記[7]または[8]に記載の組成物。
[10]分岐鎖アミノ酸を、1日当たり0.1〜10g(固形分換算)の量で対象に摂取させる、上記[7]〜[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]脂質源をさらに含んでなる、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の組成物。
[12]糖質、食物繊維、ビタミン類およびミネラル類からなる群から選択される1種以上をさらに含んでなる、上記[1]〜[11]のいずれかに記載の組成物。
[13]食品組成物である、上記[1]〜[12]のいずれかに記載の組成物。
[14]栄養組成物である、上記[1]〜[13]のいずれかに記載の組成物。
[15]100kcal/100ml以上のカロリー密度を有する、上記[1]〜[14]のいずれかに記載の組成物。
[16]リハビリテーションを受けている対象に投与または摂取させるための、上記[1]〜[15]のいずれかに記載の組成物。
[17]心不全患者または慢性閉塞性肺疾患患者に投与または摂取させるための、上記[1]〜[16]のいずれかに記載の組成物。
[18]運動耐容能の改善により予防または改善しうる疾患または症状の予防または改善に用いるための、上記[1]〜[17]のいずれかに記載の組成物。
本発明によれば、ホエイタンパク質およびホエイペプチドのいずれかまたは両方を少なくとも含有する運動耐容能改善用組成物が提供される。本発明の組成物に含有されるホエイタンパク質およびホエイペプチドは、人類が長年摂取してきた食品素材であることから、本発明の組成物は、副作用を懸念せずに運動耐容能の改善を図ることができる点で有利である。
本発明の組成物は、タンパク質源を含むものである。本発明の組成物におけるタンパク質源の含有量(固形分換算)は、特に限定されるものではないが、組成物100kcal当たりのその下限値を2g、3gまたは4gとすることができ、その上限値を10g、8gまたは6gとすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記含有量の範囲は、例えば、2〜10g/100kcal(好ましくは3〜8g/100kcalまたは4〜6g/100kcal)とすることができる。
本発明の組成物は、脂質源を含むものとすることができる。本発明の組成物における脂質源の含有量(固形分換算)は、特に限定されるものではないが、組成物100kcal当たりのその下限値を1gまたは2gとすることができ、その上限値を6g、5gまたは3gとすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記含有量の範囲は、例えば、1〜6g/100kcal(好ましくは2〜5g/100kcalまたは2〜3g/100kcal)とすることができる。
本発明の組成物において、タンパク質源は、ホエイタンパク質およびホエイペプチドのいずれかまたは両方を少なくとも含むものである。本発明の組成物において、タンパク質源の総含有量(g/100kcal)に対する、ホエイタンパク質の含有量(g/100kcal)およびホエイペプチドの含有量(g/100kcal)の合計の比率(質量比、固形分換算)は、特に限定されるものではないが、その下限値を0.1、0.4、0.8または0.9とすることができ、その上限値を1または0.95とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記比率の範囲は、例えば、0.1〜1(好ましくは0.9〜1)とすることができる。
本発明の組成物においてタンパク質源がホエイタンパク質およびホエイペプチドの両方を少なくとも含む場合、ホエイタンパク質の含有量(g/100kcal)に対するホエイペプチドの含有量(g/100kcal)の比率(質量比、固形分換算)は、特に限定されるものではないが、その下限値を0.01、0.1、0.3または0.5とすることができ、その上限値を10、7、5、2または1とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記比率の範囲は、例えば、0.01〜10(好ましくは0.1〜2)とすることができる。
本発明の組成物は、ホエイタンパク質の含有量(g/100kcal)に対するホエイペプチドの含有量(g/100kcal)の比率(質量比、固形分換算)を0.01〜10の範囲に設定することにより、本発明の組成物において、浸透圧を増加させるホエイペプチドの含有量が多くなり過ぎるのを防止することができる。よって、本発明の組成物において、浸透圧が高くなって、下痢等を引き起こすことを防止しつつ、運動耐容能改善作用をもたせることができる。
本発明において「ホエイ」とは、乳から脂肪、カゼイン、脂溶性ビタミン等を除去した際に残留する水溶性成分を意味し、例えば、ナチュラルチーズやレンネットカゼインを製造した際に副産物として得られるチーズホエイおよびレンネットホエイ(スイートホエイとも呼ばれる)や、発酵乳やクワルク等を製造した際に得られるカゼインホエイ、酸ホエイおよびクワルクホエイが挙げられる。
本発明における「ホエイタンパク質」は、ホエイに含まれるタンパク質成分であり、代表的な成分として、α−ラクトアルブミン(α−La)、β−ラクトグロブリン(β−Lg)、免疫グロブリンおよびラクトフェリンが挙げられる。本発明においては、上記成分の一部および全部をホエイタンパク質として用いることができる。本発明においてはまた、ホエイの原液(甘性ホエイ、酸ホエイ等)、その濃縮物、その乾燥物(ホエイ粉等)およびその凍結物をホエイタンパク質として用いることができる。本発明においてはさらに、脱塩ホエイ、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)およびホエイタンパク質精製物(WPI)をホエイタンパク質として用いることができる。
本発明における「ホエイペプチド」は、ホエイタンパク質の加水分解物および/または還元物であり、例えば、ホエイやホエイタンパク質を下記の酵素等で加水分解して製造できる。ホエイの加水分解に用いる酵素としては、例えば、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、植物起源のパパイン、バクテリアおよび菌類由来のプロテアーゼが挙げられる(Food Technol.,48:68−71,1994;Trends Food Sci.Technol.,7:120−125,1996;Food Proteins and Their Applications,pp.443−472,1997)。
ペプチド結合の加水分解は、荷電基の数および疎水性の増加、低分子量化、および分子の立体配置の修飾をもたらす(J.Dairy Sci.,76:311−320,1993)。機能的特性の変化は加水分解度に大きく依存する。ホエイタンパク質の機能性に共通してみられる最も大きな変化は溶解性の増加と粘度の低下である。加水分解度が高い場合、しばしば、加水分解物は加熱しても沈澱せず、pH3.5〜4.2で溶解性が高い。加水分解物は、また、無処置の(intact)タンパク質よりもはるかに粘度が低い。この差異はとくにタンパク質濃度が高い場合に顕著である。その他の影響は、ゲル特性の変化、熱安定性を高める、乳化および起泡性の増強、乳化および泡の安定性の低下である。
本発明の組成物において、タンパク質源は、ホエイタンパク質以外のタンパク質、ホエイペプチド以外のペプチド、および/またはアミノ酸を含むものとすることができる。本発明の組成物においてタンパク質源は、1種または2種以上の分岐鎖アミノ酸をさらに含むものとすることができる。本発明の組成物に含まれる分岐鎖アミノ酸としては、例えば、イソロイシン、ロイシンおよびバリンが挙げられ、これらのうちの1種でもよく、2種以上でもよい。
本発明の組成物において、タンパク質源の総含有量に対する分岐鎖アミノ酸の含有量の比率(質量比、固形分換算)は、特に限定されるものではないが、その下限値を0.01、0.02または0.03とすることができ、その上限値を0.8、0.5または0.3とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記比率の範囲は、例えば、0.01〜0.8(好ましくは0.03〜0.3)とすることができる。
本発明の組成物において、組成物全体の総エネルギーに対するタンパク質源のエネルギーの比率(タンパク質エネルギー比)の範囲は、例えば、0.16〜0.5(好ましくは0.2〜0.3)とすることができる。
本発明の組成物において、脂質源は、n−3系脂肪酸を含むものとすることができる。本発明の組成物におけるn−3系脂肪酸の含有量の範囲は、特に限定されるものではないが、例えば、10〜100mg/100kcal(好ましくは30〜80mg/100kcal)とすることができる。
本発明の組成物において、n−3系脂肪酸は、エイコサペンタエン酸(EPA)および/またはドコサヘキサエン酸(DHA)を含有することが好ましい。本発明の組成物において、n−3系脂肪酸がEPAを含有する場合、風味の観点からは、本発明の組成物におけるEPAの含有量の範囲は、特に限定されるものではないが、例えば、1〜100mg/100kcal(好ましくは10〜30mg/100kcal)とすることができる。本発明の組成物において、n−3系脂肪酸がDHAを含有する場合、風味の観点からは、本発明の組成物におけるDHAの含有量の範囲は、特に限定されるものではないが、例えば、1〜100mg/100kcal(好ましくは10〜50mg/100kcal)とすることができる。
本発明の組成物において、脂質源の少なくとも一部に、魚油を使用してもよい。魚油は、EPAとDHAを豊富に含有している。本発明の組成物において、脂質源に魚油を使用する場合、本発明の組成物における魚油の含有量の範囲は、特に限定されるものではないが、例えば、0.05〜0.5g/100kcal(風味の観点からは、好ましくは0.1〜0.3g/100kcal)とすることができる。
本発明の組成物において、脂質源は、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有していてもよい。中鎖脂肪酸トリグリセリドは、消化吸収が一般的な長鎖脂肪酸トリグリセリドよりも速い。本発明の組成物における中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量の範囲は、特に限定されるものではないが、例えば、0.2〜2.0g/100kcal(好ましくは0.4〜0.8g/100kcal)とすることができる。
本発明の組成物は、糖質や食物繊維等の炭水化物を含有していてもよい。本発明の組成物は、糖質として、例えばパラチノースおよび/またはデキストリンを含有することができる。本発明の組成物における、パラチノースおよび/またはデキストリン等の糖質の含有量(固形分換算)は、特に限定されるものではないが、組成物100kcal当たりのその下限値を8g、10gまたは12gとすることができ、その上限値を16gまたは14gとすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記含有量の範囲は、例えば、8〜16g/100kcal(好ましくは12〜14g/100kcal)とすることができる。運動療法を受けている対象では、糖尿病も併発している対象が少なくない。パラチノースは糖の吸収が緩やかであることから、本発明の組成物において、糖質全体の含有量に対するパラチノースの含有量の比率(質量比、固形分換算)は、特に限定されるものではないが、例えば、0.2以上(好ましくは0.5以上)とすることができる。
本発明の組成物では、食物繊維として、食後の血糖上昇を抑制する効果があり、製造時において過度な粘度を生じさせにくい難消化性デキストリンを用いることが好ましい。難消化性デキストリン等の食物繊維の含有量(固形分換算)の範囲は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5〜3.0g/100kcal(好ましくは1.0〜2.0g/100kcal)とすることができる。
本発明の組成物は、ビタミンCおよび/またはビタミンEを含有することが好ましい。ビタミンCとビタミンEは、抗酸化作用を有する。本発明の組成物におけるビタミンCの含有量(固形分換算)の範囲は、特に限定されるものではないが、例えば、1〜1000mg/100kcal(好ましくは10〜100mg/100kcal)とすることができる。本発明の組成物におけるビタミンEの含有量(固形分換算)の範囲は、特に限定されるものではないが、例えば、0.1〜100mg/100kcal(好ましくは1〜10mg/100kcal)とすることができる。
本発明の組成物は、ビタミンCとビタミンE以外のビタミン類を含むものとすることができる。本発明の組成物に含まれるビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸およびビタミンCが挙げられ、これらのうちの1種でもよく、2種以上でもよい。
本発明の組成物は、亜鉛を含有することが好ましい。本発明の組成物における亜鉛の含有量(固形分換算)の範囲は、特に限定されるものではないが、例えば、0.1〜10mg/100kcal(好ましくは0.5〜5mg/100kcal)とすることができる。
本発明の組成物は、亜鉛以外のミネラル類を含有することができる。本発明の組成物に含まれるミネラル類としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、リン、銅、マンガン、クロム、モリブデン、セレン、ヨウ素および亜鉛が挙げられ、これらのうちの1種でもよく、2種以上でもよい。
本発明の組成物におけるカリウムの含有量(固形分換算)の範囲は、特に限定されるものではないが、例えば、20〜500mg/100kcal(好ましくは20〜300mg/100kcal)とすることができる。本発明の組成物におけるナトリウムの含有量(固形分換算)の範囲は、特に限定されるものではないが、例えば、20〜500mg/100kcal(好ましくは20〜300mg/100kcal)とすることができる。本発明の組成物におけるカルシウムの含有量(固形分換算)の範囲は、特に限定されるものではないが、例えば、20〜300mg/100kcal(好ましくは20〜250mg/100kcal、より好ましくは20〜150mg/100kcal)とすることができる。本発明の組成物におけるマグネシウムの含有量(固形分換算)の範囲は、特に限定されるものではないが、例えば、5〜300mg/100kcal(好ましくは10〜200mg/100kcal、より好ましくは10〜100mg/100kcal)とすることができる。本発明の組成物において、各ミネラル類の含有量を上記の範囲とすることにより、リハビリテーション中の対象等に対して適切な量のミネラル類を補充することができる。また、本発明の組成物の製造時の適性(分散)を向上させるとともに、保存時において流動性の当該組成物の沈殿を抑制できる。
本発明の組成物は、酸性であってもよく、pHが3〜5とすることができる。pHが上記範囲内であれば、本発明の組成物が摂取または投与される対象に対して、適度な酸味を感じさせることができ、対象が継続的に摂取または投与されやすくなる。
本発明の組成物は、栄養組成物として提供することができ、高カロリーとすることができる。本発明の組成物のカロリー密度は、例えば、100kcal/100mL以上であり、好ましくは125kcal/100mL以上であり、より好ましくは150kcal/100mL以上である。
本発明の組成物は、上述の成分以外の成分を含有していてもよく、このような成分としては、例えば、水、カルニチン、有機酸、香料、果汁、安定剤が挙げられる。本発明の組成物には、例えば、後記の対象の状態等に応じた成分を必要な濃度で含有させることができる。
本発明の組成物は、運動耐容能の改善のために用いることができる。運動耐容能は、対象者がどのくらいの運動に耐えられるかの限界を指すものであり、前記の通り、国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health;ICF)によれば身体運動負荷に耐えるために必要な、呼吸や心血管系の能力に関する機能であり、全身持久力や有酸素能力等が含まれている。運動耐容能は心不全等の心疾患において低下することが知られ、NYHA(New York Heart Association)心機能分類では、日常生活での症状、つまり運動耐容能によって心機能の重症度が分類されている。心不全の病態を考えると最も全身の重症度を反映した指標であると言える(絹川 真太郎、循環制御、第38巻、第2号、113〜118頁(2017年))。また、慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患や透析患者においても、運動耐容能が低下することが知られている(桂 秀樹、日呼吸誌、4(1)、30〜35頁(2015年);河野健一等、理学療法学、第44巻、第1号、66〜71頁(2017年))。さらに、加齢に伴い運動耐容能の低下がみられることが知られている(宮脇淳、日本老年医学会雑誌、第15巻、第6号、523〜532頁(1978年))。運動耐容能の評価指標としては、例えば、無酸素性作業閾値(anaerobic threshold;AT)、最大酸素摂取量(maximal oxygen uptake;VO2 max)、最大仕事量(maximal work rate;WR max)、歩行距離が挙げられ、また、主観的評価指標としては、例えば、自覚的運動強度(ratings of perceived exertion;RPE)および呼吸困難(dyspnea)が挙げられる。無酸素性作業閾値は、無酸素性代謝閾値、無酸素性閾値または嫌気性代謝閾値運動とも呼ばれ、運動の強さを増していくとき、筋肉のエネルギー消費に必要な酸素供給が追いつかないために無酸素エネルギーも使われ、血液中の乳酸が急激に増加し始める運動の強度の値を指す。無酸素性作業閾値は、呼吸、循環および代謝の総合的運動耐容能指標として競技者の持久力測定やトレーニングに利用されるだけでなく、心不全における心機能分類の指標および治療効果判定、運動耐容能測定、運動療法およびリハビリテーションの際の運動処方作成等に利用される。このため、無酸素性作業閾値を指標として運動耐容能の程度を判定することができ、無酸素性作業閾値の増加は運動耐容能の増加、すなわち、改善を示しているといえる。また、本発明において、ある対象において無酸素性作業閾値が増加した場合(無酸素性作業閾値が好ましくは0.1mL/分/kg以上、より好ましくは0.2mL/分/kg以上、さらに好ましくは0.3mL/分/kg以上増加した場合)には、運動耐容能が改善したと判断することができる。なお、本発明において運動耐容能の改善とは、運動耐容能の増加のみならず、運動耐容能の維持を含む意味でも用いられるものとする。
運動耐容能の測定は、運動負荷試験(exercise testing)および呼気ガス分析を併用した心肺運動負荷試験(Cardiopulmonary Exercise Training、CPX試験)により実施することができる。運動負荷試験における、運動負荷装置として、例えば、トレッドミル(treadmill)および自転車エルゴメータ(cycle ergometer)が挙げられ、運動負荷様式として、例えば、一段階(一定)負荷、多段階負荷、ランプ(ramp)負荷が挙げられる。
後記実施例に示されるように、リハビリテーションを受けている慢性心不全患者にホエイタンパク質およびホエイペプチド等を少なくとも含有する食品を摂取させたところ、無酸素性作業閾値が増加することが確認された。無酸素性作業閾値の増加は運動耐容能の改善を示していることから、ホエイタンパク質およびホエイペプチド等を含有する組成物は、運動耐容能の改善に有効である。
上記の通り、ホエイタンパク質およびホエイペプチド等を少なくとも含有する食品は運動耐容能を改善することができる。従って、本発明の組成物は、運動耐容能の改善により予防または改善しうる疾患または症状の予防および/または改善に用いることができる。運動耐容能の改善により予防または改善しうる疾患または症状としては、例えば、心不全、慢性閉塞性肺疾患が挙げられる。
本発明の組成物は医薬品(例えば、医薬組成物)、医薬部外品、食品(例えば、食品組成物、栄養組成物)、飼料(例えば、飼料組成物)等の形態で提供することができ、下記の記載に従って実施することができる。
本発明の組成物は、ヒトおよび非ヒト動物に経口投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。これらの製剤は、当分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
本発明の組成物は、ヒトおよび非ヒト動物に経管投与、経鼻経管投与等の経口投与以外の体内への投与も本発明の組成物の形状に応じて可能である。例えば、本発明の組成物を、粘性を有する液状の組成物、あるいは、半固形状の組成物とすることで、咀嚼や嚥下の機能が低下し、経口摂取あるいは経口投与ができないヒトおよび非ヒト動物に対しても摂取させ、あるいは投与することができる。本発明の組成物を経口摂取以外で摂取させるか、あるいは投与することにより、摂取または投与対象の咀嚼や嚥下の機能が加齢等により低下したとしても、対象において運動耐容能の改善が期待できる。
本発明の組成物は、ヒトおよび非ヒト動物に経口摂取させることができる。本発明の組成物を経口摂取させる場合には、単離、精製または粗精製された形態のものであっても、食品あるいは食品の原料の形態であってもよい。
本発明の組成物を食品として提供する場合には、ホエイタンパク質およびホエイペプチド(場合によってはさらに分岐鎖アミノ酸および/または脂質源)を食品に含有させることができ、該食品はこれらの成分を有効量含有した食品である。本発明の組成物を食品として提供する場合にはまた、ホエイタンパク質およびホエイペプチド(場合によってはさらに分岐鎖アミノ酸および/または脂質源)を既に含んでいる食品や原料を本発明の食品として提供することができ、該食品はこれらの成分を有効量含有した食品である。ここで、上記成分を「有効量含有した」とは、個々の食品において通常喫食される量を摂取した場合に後述するような範囲で上記成分が摂取されるような含有量をいう。また「食品」とは、健康食品、機能性食品、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、特別用途食品(例えば、幼児用食品、妊産婦用食品、病者用食品)、栄養補助食品(サプリメント)を含む意味で用いられる。
「食品」の形態は特に限定されるものではなく、例えば、飲料や流動食のような液状、流動性の形態であっても、ゼリー状、ペースト状、半液体、ゲル状の形態であっても、固形、バー、粉末の形態であってもよい。本発明の組成物の使用形態が粉末の場合、噴霧乾燥、凍結乾燥等の手段を用いることにより製造することができる。
本発明の組成物を食品として提供する場合には、ホエイタンパク質およびホエイペプチド(場合によってはさらに分岐鎖アミノ酸および/または脂質源)等を配合する以外は通常の食品の製造方法に従って製造することができる。すなわち、本発明の食品は、液状、固形、粉末等の形態を問わず、上記成分を、各種食品(例えば、牛乳、清涼飲料、発酵乳、ヨーグルト、チョコレート、グミ、チーズ、パン、ビスケット、クッキー、クラッカー、ピッツァクラスト、ゼリー、アイスクリーム、高エネルギーサプリメント、高エネルギーペースト、調製粉乳、流動食、特別用途食品、病者用食品、総合栄養食品、栄養補助食品、冷凍食品、加工食品、その他の市販食品)またはその原料に添加して調製することができる。また、対象が自身で、液状、固形、粉末、ペースト等の上記成分を、水や飲食品や食事に添加して摂取することも出来る。特に本発明においては、流動食に上記成分を有効量配合することにより、運動耐容能改善機能を併せ持った食品とすることができ、このような食品は咀嚼や嚥下の機能が低下した高齢者に摂取させるか、あるいは投与することができるため有利である。
本発明の組成物をホエイタンパク質およびホエイペプチドを既に含んでいる食品や原料(特に加工原料)の形態で提供する場合には、そのような食品および原料としては、例えば、生乳、殺菌乳(牛乳等)、脱脂乳、成分調整牛乳、加工乳、乳製品(濃縮乳、粉乳、練乳、発酵乳(ヨーグルト等)、乳酸菌飲料、プロセスチーズ類、アイスクリーム類、クリーム類)および乳タンパク質濃縮物(MPC)、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質精製物(WPI)並びにそれらの濃縮物、それらの乾燥物およびそれらの凍結物等が挙げられる。
本発明の組成物の医薬品または食品としての1日当たりの摂取量あるいは投与量は、対象の病態、年齢、症状、体重、用途や、本発明の組成物が栄養の唯一の物であるか等によって異なるため、特に限定されない。運動耐容能の改善を目的とする摂取および投与の場合、成人1日当たりの各成分の摂取または投与量(固形分換算)は、特に限定されるものではないが、例示すると以下の通りである。
本発明の組成物に含まれる成分のうちホエイタンパク質のヒト1日当たりの摂取量および投与量の下限値は1g、3gまたは5gとすることができ、その上限値は100g、70g、50g、30gまたは10gとすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記摂取量および投与量の範囲は、例えば、1〜100g(好ましくは3〜70gまたは5〜30g)とすることができる。
本発明の組成物に含まれる成分のうちホエイペプチドのヒト1日当たりの摂取量および投与量の下限値は1g、3gまたは5gとすることができ、その上限値は100g、70g、50g、30gまたは10gとすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記摂取量および投与量の範囲は、例えば、1〜100g(好ましくは3〜70gまたは5〜30g)とすることができる。
本発明の組成物に含まれる成分のうち分岐鎖アミノ酸のヒト1日当たりの摂取量および投与量の下限値は0.1g、0.3g、0.5gまたは1gとすることができ、その上限値は10g、7g、5gまたは3gとすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記摂取量および投与量の範囲は、例えば、0.1〜10g(好ましくは0.3〜7gまたは1〜3g)とすることができる。
本発明の組成物に含まれる成分のうち脂質源のヒト1日当たりの摂取量および投与量の下限値は1g、3gまたは5gとすることができ、その上限値は100g、70g、50gまたは30gとすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記摂取量および投与量の範囲は、例えば、1〜100g(好ましくは3〜70gまたは5〜30g)とすることができる。
本発明の組成物の摂取または投与は、1週当たり少なくとも1回(例えば1〜3回)とすることができ、好ましくは1週当たり少なくとも5回(例えば5〜7回)である。本発明の組成物の摂取または投与はまた、1日当たり少なくとも1回とすることができ、好ましくは1日当たり2回である。摂取量および投与量並びに摂取間隔および投与間隔は、対象の担当医、薬剤師、管理栄養士、栄養士、リハビリテーション施設の職員、家族等の身近な介護者や、対象自身が決定してもよい。
本発明の組成物は、運動療法(本明細書において、「リハビリテーション」という場合がある)を受けている対象に摂取させるか、あるいは投与することができる。運動療法を受けている対象としては、特に制限はなく、例えば、心不全等の心疾患患者、慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患患者、周術期患者、腎疾患患者、透析患者、慢性期の脳卒中患者および老年症候群患者が挙げられる。また前記の通り、心不全等の心疾患において運動耐容能が低下することが知られている。従って、本発明の組成物は、運動療法を受けている対象に摂取させるか、あるいは投与することができ、また、心不全患者に摂取させるか、あるいは投与することができ、好ましくは、運動療法を受けている心不全患者に摂取させるか、あるいは投与することができる。前記の通りまた、慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患において運動耐容能が低下することが知られている。従って、本発明の組成物は、慢性閉塞性肺疾患患者に摂取させるか、あるいは投与することができ、好ましくは、運動療法を受けている慢性閉塞性肺疾患患者に摂取させるか、あるいは投与することができる。前記の通りまた、加齢に伴い運動耐容能が低下することが知られている。従って、本発明の組成物は、加齢による体力低下や息切れなどを感じている対象および高齢者に摂取させるか、あるいは投与することができ、好ましくは、運動療法を受けている前記対象および高齢者に摂取させるか、あるいは投与することができる。
本発明の組成物は、他の経口摂取できる組成物や用剤と併用することに制限はない。例えば、運動耐容能の改善が期待できる素材や組成物と併用することで、運動耐容能の改善の効果をさらに高めることができる。
本発明の組成物は、運動耐容能の改善に有効な1日分の摂取量の組成物で提供することができる。この場合、本発明の組成物は、ホエイタンパク質およびホエイペプチドの1日分の有効摂取量を摂取できるように包装されていてもよく、1日分の有効摂取量が摂取できる限り、包装形態は一包装であっても、複数包装であってもよい。包装形態で提供する場合、1日分の有効摂取量が摂取できるように摂取量に関する記載が包装になされているか、または該記載がなされた文書を一緒に提供することが望ましい。また、1日分の有効摂取量を複数包装で提供する場合には、摂取の便宜上、1日分の有効摂取量の複数包装をセットで提供することもできる。
本発明の組成物を提供するための包装形態は、一定量を規定する形態であれば特に限定されず、例えば、包装紙、袋、ソフトバッグ、紙容器、缶、ボトル、カプセル等の収容可能な容器等が挙げられる。
本発明の組成物はその効果をよりよく発揮させるために、少なくとも2週間継続的に投与または摂取させることが望ましく、投与および摂取期間は好ましくは継続的に4週間以上(例えば4〜16週間)、より好ましくは継続的に8週間以上(例えば8〜16週間)、特に好ましくは継続的に12週間以上(例えば12〜16週間)である。ここで、「継続的に」とは1週当たり少なくとも1回(例えば1〜3回)投与または摂取を続けることを意味する。本発明の組成物を包装形態で提供する場合には、継続的摂取のために一定期間(例えば、1週間)の有効摂取量をセットで提供してもよい。
本発明の食品には運動耐容能改善作用を有する旨の表示が付されてもよい。この場合、消費者に理解しやすい表示とするため、本発明の食品には、例えば、持久力の向上(または持久力の低下抑制)、身体活動の向上(または身体活動の低下抑制)、心肺機能改善(または心肺機能低下抑制)のような表示が付されてもよい。
本発明の別の面によれば、本発明の組成物をヒトまたは非ヒト動物に摂取させるか、或いは投与することを含んでなる、運動耐容能の改善方法が提供される。本発明の方法は、本発明の組成物に関する記載に従って実施することができる。
本発明のさらに別の面によれば、本発明の組成物をヒトまたは非ヒト動物に摂取させるか、或いは投与することを含んでなる、運動耐容能の改善により予防または改善しうる疾患または症状の予防または改善方法が提供される。本発明の方法は、本発明の組成物に関する記載に従って実施することができる。
本発明のさらにまた別の面によれば、運動耐容能の改善剤の製造のための、運動耐容能の改善剤としての、あるいは、運動耐容能の改善のための、ホエイタンパク質およびホエイペプチド(場合によってはさらに分岐鎖アミノ酸および/または脂質源)の使用が提供される。本発明によればまた、運動耐容能の改善により予防または改善しうる疾患または症状の予防剤または改善剤の製造のための、運動耐容能の改善により予防または改善しうる疾患または症状の予防剤または改善剤としての、あるいは、運動耐容能の改善により予防または改善しうる疾患または症状の予防または改善のための、ホエイタンパク質およびホエイペプチド(場合によってはさらに分岐鎖アミノ酸および/または脂質源)の使用が提供される。本発明の使用は、本発明の組成物に関する記載に従って実施することができる。
本発明の方法および使用はヒトを含む哺乳動物における使用であってもよく、治療的使用と非治療的使用のいずれもが意図される。本明細書において、「非治療的」とはヒトを手術、治療又は診断する行為(すなわち、ヒトに対する医療行為)を含まないことを意味し、具体的には、医師又は医師の指示を受けた者がヒトに対して手術、治療又は診断を行う方法を含まないことを意味する。
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
例1:栄養組成物摂取による運動耐容能の改善
(1)試験方法
被験者は、リハビリテーション(運動療法)実施中の慢性心不全患者20名とした。被験者を、試験食品を摂取させる摂取群(10名)と摂取させない非摂取群(10名)とに無作為に割り付けた。摂取群には、試験食品として、表1に示す配合組成を有する流動性の組成物(明治メイバランス リハサポートMini、200kcal/125mL/本、明治社製)を摂取させた。なお、摂取群に摂取させた栄養組成物には、表1に示す配合した分岐鎖アミノ酸だけでなく、ホエイペプチドおよびホエイタンパク質に由来する分岐鎖アミノ酸も含まれており、栄養組成物に含まれる分岐鎖アミノ酸の組成は表2に示される通りであった。該組成物の1日当たりの摂取量を400kcal(原則として朝食時と夕食時に各1本、間食時の摂取も可)として、12週間経口摂取させた。非摂取群には試験食品を摂取させなかった。試験開始前に被験者の年齢、身長、体重およびBMIを測定した。
(1)試験方法
被験者は、リハビリテーション(運動療法)実施中の慢性心不全患者20名とした。被験者を、試験食品を摂取させる摂取群(10名)と摂取させない非摂取群(10名)とに無作為に割り付けた。摂取群には、試験食品として、表1に示す配合組成を有する流動性の組成物(明治メイバランス リハサポートMini、200kcal/125mL/本、明治社製)を摂取させた。なお、摂取群に摂取させた栄養組成物には、表1に示す配合した分岐鎖アミノ酸だけでなく、ホエイペプチドおよびホエイタンパク質に由来する分岐鎖アミノ酸も含まれており、栄養組成物に含まれる分岐鎖アミノ酸の組成は表2に示される通りであった。該組成物の1日当たりの摂取量を400kcal(原則として朝食時と夕食時に各1本、間食時の摂取も可)として、12週間経口摂取させた。非摂取群には試験食品を摂取させなかった。試験開始前に被験者の年齢、身長、体重およびBMIを測定した。
試験開始前および試験終了時(試験開始後12週目)に呼気ガス分析を併用した心肺運動負荷試験(Cardiopulmonary Exercise Training、CPX試験)を実施し、無酸素性作業閾値(Anaerobic Threshold、単位mL/分/kg、以下「AT」ということがある)を指標として運動耐容能の変化量を評価した。具体的には、自転車エルゴメーター(Strength Ergo8、フクダ電子社製)を用いてランプ負荷試験を行った。ランプ負荷は、10watt/分で基本的に行ったが、被験者の年齢および身体状況に応じて負荷を変動させた。呼気ガス分析装置(AE−310s AEROMONITOR、ミナト医科学社製)を用いて、安静時(4分間)、ウォームアップ時(4分間)、ランプ負荷時および最高酸素摂取量(ピークVO2)までの呼気ガスを測定した。ATは、判定基準に基づきV−slope法およびタイムトレンド法により判定した。AT判定基準は、酸素摂取量(VO2)に対して二酸化炭素排泄量(VCO2)が増加し始める時点のVO2(V slope法)および二酸化炭素換気当量(VE/VCO2)が上昇せずに酸素換気当量(VE/VO2)が上昇し始める点(タイムトレンド法)を用いた。なお、運動処方強度の決定はATの1分前の運動強度(watt)とした。
(2)統計学的解析
統計学的解析は、Full−analysis−set(以下、「FAS」ということがある)解析およびPre−protocol−set(以下、「PPS」ということがある)解析を行った。被験者20名全員をFASの解析対象とした。また、全被験者について試験食品の摂取率を算出した。試験食品の摂取率は、試験期間(12週間)に試験食品を摂取する回数に対する、被験者が試験食品を摂取した回数の比率とした。摂取群において試験食品の摂取率が80%以上の被験者(8名)および非摂取群(10名)をPPSの解析対象とした。試験開始前と試験終了時のATの変化量の測定値について、対応のあるt検定を用いて前後比較を行った。また、試験開始前から試験終了時までのATの変化量については対応のないt検定を用いて摂取群と非摂取群の群間比較を行った。被験者の年齢、身長、体重およびBMIは、対応のないt検定を用いて摂取群と非摂取群の群間比較を行った。なお、数値は平均値±標準偏差(または標準誤差)で示し、有意水準は両側5%とした。
統計学的解析は、Full−analysis−set(以下、「FAS」ということがある)解析およびPre−protocol−set(以下、「PPS」ということがある)解析を行った。被験者20名全員をFASの解析対象とした。また、全被験者について試験食品の摂取率を算出した。試験食品の摂取率は、試験期間(12週間)に試験食品を摂取する回数に対する、被験者が試験食品を摂取した回数の比率とした。摂取群において試験食品の摂取率が80%以上の被験者(8名)および非摂取群(10名)をPPSの解析対象とした。試験開始前と試験終了時のATの変化量の測定値について、対応のあるt検定を用いて前後比較を行った。また、試験開始前から試験終了時までのATの変化量については対応のないt検定を用いて摂取群と非摂取群の群間比較を行った。被験者の年齢、身長、体重およびBMIは、対応のないt検定を用いて摂取群と非摂取群の群間比較を行った。なお、数値は平均値±標準偏差(または標準誤差)で示し、有意水準は両側5%とした。
表3および表4の結果から、FAS解析とPPS解析における被験者の年齢、身長、体重およびBMIについて、群間に有意な差は見られなかった。また、試験食品摂取率は、摂取群ではFAS解析において78.9±29.8%、PPS解析において92.2±7.9%であり、非摂取群では試験食品を摂取しないため、FAS解析とPPS解析ともに0.0±0.0%であった。表5および表6の結果から、ATの変化量は、FAS解析およびPPS解析ともに、摂取群では、非摂取群と比較して、より上昇する傾向が確認された(FAS解析:p=0.067、PPS解析:p=0.098)。以上の結果から、リハビリテーションを受けている慢性心不全患者における試験食品の摂取が、運動耐容能を増加させることが示された。
Claims (18)
- ホエイタンパク質およびホエイペプチドのいずれかまたは両方を少なくとも含むタンパク質源を含んでなる、運動耐容能改善用組成物。
- タンパク質源がホエイタンパク質およびホエイペプチドの両方を含む、請求項1に記載の組成物。
- タンパク質源の総含有量に対する、ホエイタンパク質の含有量およびホエイペプチドの含有量の合計の比率(質量比、固形分換算)が、0.1以上である、請求項1または2に記載の組成物。
- ホエイタンパク質の含有量に対するホエイペプチドの含有量の比率(質量比、固形分換算)が、0.01〜10である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
- ホエイタンパク質を、1日当たり1〜100g(固形分換算)の量で対象に投与または摂取させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
- ホエイペプチドを、1日当たり1〜100g(固形分換算)の量で対象に摂取させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
- タンパク質源が1種以上の分岐鎖アミノ酸をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
- タンパク質源の総含有量に対する分岐鎖アミノ酸の含有量の比率(質量比、固形分換算)が、0.01〜0.8である、請求項7に記載の組成物。
- 分岐鎖アミノ酸がロイシン、イソロイシンおよびバリンからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項7または8に記載の組成物。
- 分岐鎖アミノ酸を、1日当たり0.1〜10g(固形分換算)の量で対象に摂取させる、請求項7〜9のいずれか一項に記載の組成物。
- 脂質源をさらに含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
- 糖質、食物繊維、ビタミン類およびミネラル類からなる群から選択される1種以上をさらに含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
- 食品組成物である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
- 栄養組成物である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
- 100kcal/100ml以上のカロリー密度を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
- リハビリテーションを受けている対象に投与または摂取させるための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
- 心不全患者または慢性閉塞性肺疾患患者に投与または摂取させるための、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
- 運動耐容能の改善により予防または改善しうる疾患または症状の予防または改善に用いるための、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
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