JP2020197588A - 光学フィルターおよび光学センサー装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】入射角度が大きくなった場合でも、可視光線に対する優れたカット特性を有するとともに、近赤外線領域に二つ以上の異なる透過帯域を有する光学フィルターを提供すること。【解決手段】波長700〜1000nmの領域に吸収極大を有する化合物(Z)を含有する樹脂層と、誘電体多層膜とを有し、近赤外線領域に二つ以上の異なる透過帯域を有し、かつ、可視光線を遮断する光学フィルター。【選択図】なし

Description

本発明は、光学フィルターおよび光学センサー装置に関する。より詳しくは、可視光線をカットし、二つ以上の異なる波長帯域の近赤外線を選択的に透過させる光学フィルターおよび該光学フィルターを用いた光学センサー装置に関する。
近年、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル機器等のモバイル情報端末装置への用途として、近赤外線を用いた各種光学センサー装置の開発が進められている。情報端末装置において、光学センサー装置は様々な用途で適用が検討されており、一例としては、距離測定などの空間認識用途、モーション認識用途、虹彩認証や白目の静脈認証、顔認証などのセキュリティ用途、脈拍測定や血中酸素濃度測定などのヘルスケア用途が挙げられる。
近赤外線を用いた光学センサー装置において、センシング機能を精度よく働かせるためには不要となる波長の光、特に可視光線をカットすることが重要である。また、センシングに用いる近赤外線の波長によっては、これよりも短い波長の近赤外線をカットする(例えば、800nm付近の近赤外線をセンシングに用いる場合は可視光線に加えて740nm付近までの近赤外線をカットする)ことで使用時のノイズを低減でき、光学センサー装置の特性を向上させることができる。また、センシングに二つ以上の異なる波長帯域の近赤外線を使うことで、一つの波長帯域の近赤外線を用いるセンサーよりも多くの情報を同時に取得することができ、より精密でノイズが少ないセンシング性能を達成することができる。さらに、セキュリティ用途で当該センサーを使用する場合、複数種の認証(例えば、虹彩認証と顔認証)を同時に行うこともでき、認証の高速化やデバイスの消費電力削減を達成することができる。このような用途ではセンシングに用いる波長帯域以外の近赤外線をカットすることで、さらにセンシング性能を高くすることが可能となる。
可視光線をカットし、特定波長の近赤外線を透過させる手段としては、ガラス基板上に高屈折率材料と低屈折率材料を交互に積層したバンドパスフィルターが開示されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、このような多層薄膜を形成した光学フィルターは、入射光の入射角度によって光学特性が大きく変化する。そのため、モバイル情報端末装置用途に用いた場合、光学センサーの検出精度が低下するという問題がある。
一方、入射角度によらず可視光線をカットできる光学フィルターとして、金属系の着色成分を有するガラス製フィルター(例えば特許文献2参照)、着色顔料を含むフィルター(例えば特許文献3参照)が知られている。これらはいずれも吸収により可視光線をカットしており入射角による光学特性変化は小さいが、十分な光線カット特性を達成するために1.0mm程度の厚みが必要であり、近年急速に小型化および軽量化が進むモバイル情報端末用途では好適に使用できない場合があった。
また、これらのフィルターで薄型化を行うと、吸収による光線カット性能が大幅に低下し、センシング時のノイズが増えてしまうといった問題がある。さらに、これらのフィルターでは、センシングに用いる近赤外線の波長が800nm以上である場合(不可視性の観点で現在はこのような波長が主流)、これよりも短い波長の近赤外線のカット特性が不十分な場合がある上、特に着色顔料を含む光学フィルターでは吸収スペクトルの傾きが緩く、光線カットと光線透過のコントラストが低くなる(センシング時のノイズが多くなる)傾向がある。
なお、薄型化と入射角依存低減を両立可能な赤外光透過フィルターとして、可視光吸収剤を含む基材上に近赤外線吸収剤を含む膜を具備した赤外光透過フィルターが提案されている(例えば特許文献4及び5参照)。しかしながら、いずれも単一の近赤外線透過帯域を有するか、ある波長以降の近赤外線を全て透過させるものであり、二つ以上の異なる波長帯域の近赤外線を選択的に透過させる機能はない。近年要求される高いレベルのセンシング性能を達成するためには、可視光領域を効率的に遮断した上で近赤外線領域に二つ以上の異なる透過帯域を有する光学フィルターの出現が望まれていた。
特開2015−184627号公報 特開平07−126036号公報 特開昭60−139757号公報 特許第5741283号公報 国際公開第2017/213047号
本発明は、光学センサー装置が設けられる機器の低背化に伴い、入射角度が大きくなった場合でも、可視光線に対する優れたカット特性を有するとともに、近赤外線領域に二つ以上の異なる透過帯域を有する光学フィルターを提供することを課題の一つとする。
[1] 波長700〜1000nmの領域に吸収極大を有する化合物(Z)を含有する樹脂層と、誘電体多層膜とを有し、近赤外線領域に二つ以上の異なる透過帯域を有し、かつ、可視光線を遮断する光学フィルター。
[2] さらに下記要件(a)および(b)を満たす、項[1]に記載の光学フィルター:
(a)波長380〜700nmの領域において、光学フィルターの面方向に対して垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が5%以下である;
(b)波長700〜1200nmの領域に、光線阻止帯(Za)、光線透過帯(Zb)、光線阻止帯(Zc)、光線透過帯(Zd)および光線阻止帯(Ze)を有し、それぞれの帯域の中心波長がZa<Zb<Zc<Zd<Zeである。
[3] さらに下記要件(c)を満たす、項[1]または[2]に記載の光学フィルター:
(c)前記光線透過帯(Zb)において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の透過率が15%となる、最も短波長側の波長の値をXa(nm)とし、最も長波長側の波長の値をXb(nm)としたとき、Y1=(Xa+Xb)/2で表されるY1の値が750〜950nmである。
[4] さらに下記要件(d)を満たす、項[1]〜[3]のいずれか1項に記載の光学フィルター:
(d)前記光線透過帯(Zd)において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の透過率が20%となる、最も短波長側の波長の値をXc(nm)とし、最も長波長側の波長の値をXd(nm)としたとき、Y2=(Xc+Xd)/2で表されるY2の値が900〜1200nmである。
[5] 前記化合物(Z)が、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、ピロロピロール系化合物、ヘキサフィリン系化合物、シアニン系化合物およびボロンジピロメテン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、項[1]〜[4]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[6] 前記化合物(Z)が、吸収極大波長が異なる2種以上の化合物を含む、項[1]〜[5]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[7] 前記化合物(Z)が、波長700〜850nmの領域に吸収極大を有する化合物(Z1)1種以上と、波長851〜1000nmの領域に吸収極大を有する化合物(Z2)1種以上とを含む、項[1]〜[5]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[8] 前記化合物(Z1)の中で最も吸収極大波長が長波長側のものと、前記化合物(Z2)の中で最も吸収極大波長が短波長側のものとの吸収極大波長の差が80〜240nmである、項[7]に記載の光学フィルター。
[9] 波長350〜699nmの領域に吸収極大を有する化合物(S)をさらに含有する、項[1]〜[8]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[10] 前記樹脂層を構成する樹脂が、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、項[1]〜[9]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[11] 光学センサー装置用であることを特徴とする項[1]〜[10]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[12] 項[1]〜[11]のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する光学センサー装置。
本発明の光学フィルターは、可視光線に対する優れたカット特性を有し、かつ、近赤外線領域に二つ以上の異なる透過帯域を有するとともに、斜め方向から光線が入射した際も光学特性変化が少ないため、高いレベルのセンシング性能が要求される光学センサー用途に好適に用いられる。
本発明の光学フィルターの態様例を説明する図である。 本発明の光学フィルターを構成する基材の態様例を説明する図である。 透過スペクトルを、(A)光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率、及び(B)光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率を測定する態様を説明する図である。 実施例1で作成した基材の分光透過率を示すグラフである。 実施例1で作成した光学フィルターの分光透過率を示すグラフである。 実施例2で作成した基材の分光透過率を示すグラフである。 実施例2で作成した光学フィルターの分光透過率を示すグラフである。 実施例4で作成した光学フィルターの分光透過率を示すグラフである。 実施例6で作成した基材の分光透過率を示すグラフである。 実施例6で作成した光学フィルターの分光透過率を示すグラフである。 比較例1で作成した光学フィルターの分光透過率を示すグラフである。 比較例2で作成した光学フィルターの分光透過率を示すグラフである。
以下、本発明に係る光学フィルターの実施形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付し又は類似の符号(数字の後にa、bなどを付しただけの符号)を付し、詳細な説明を適宜省略することがある。
本明細書中において「上」とは、支持基板の主面(固体撮像素子を配置する面)を基準とした相対的な位置を指し、支持基板の主面から離れる方向が「上」である。本図面では、紙面に向かって上方が「上」となっている。また、「上」には、物体の上に接する場合(つまり「on」の場合)と、物体の上方に位置する場合(つまり「over」の場合)とが含まれる。逆に、「下」とは、支持基板の主面を基準とした相対的な位置を指し、支持基板の主面に近づく方向が「下」である。本図面では、紙面に向かって下方が「下」となっている。
[光学フィルター]
本発明に係る光学フィルターは、波長700〜1000nmの領域に吸収極大を有する化合物(Z)を含有する樹脂層と、誘電体多層膜とを有し、近赤外線領域に二つ以上の異なる透過帯域を有し、かつ、可視光線を遮断することを特徴とする。
なお、本明細書における「吸収極大」とは、波長300〜1500nmの領域内で化合物が有する最も長波長側の吸収極大のことを意味する。すなわち、前記波長領域内に複数の吸収極大を有する化合物の場合、最も長波長側の吸収極大を指す。
また、前記近赤外線領域は、好ましくは700〜1500nmであり、より好ましくは720〜1400nm、特に好ましくは750〜1200nmである。前記近赤外線領域の範囲内に二つ以上の異なる透過帯域を有することにより、特に優れたセンシング性能を達成できるとともに、誘電体多層膜の設計が容易となり製造コストを低下させることができる。
本発明の光学フィルターは、下記要件(a)および(b)を満たすことが好ましい。
要件(a);波長380〜700nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が5%以下である。
前記透過率の平均値は、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下である。前記透過率の平均値がこの範囲にあると、近赤外センシングに不要な可視光線を効率よくカットすることができ、ノイズが少ない優れたセンシング性能を達成できる。
要件(b);波長700〜1200nmの領域に、光線阻止帯(Za)、光線透過帯(Zb)、光線阻止帯(Zc)、光線透過帯(Zd)および光線阻止帯(Ze)を有し、それぞれの帯域の中心波長がZa<Zb<Zc<Zd<Zeである。
<光線透過帯>
光線透過帯(Zb)および(Zd)は、波長700〜1200nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の透過率が15%以上の波長帯域であり、かつ、その幅が5nm以上である波長帯域のことを指す。
光線透過帯(Zb)の幅は、好ましくは7nm以上、より好ましくは10nm以上、特に好ましくは15nm以上である。幅の上限は特に限定されないが、光学設計のしやすさの観点から100nm以下が好ましい。前記光線透過帯(Zb)における平均透過率T(Zb)は、好ましくは18%以上、より好ましくは20%以上、特に好ましくは22%以上である。
光線透過帯(Zd)の幅は、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、特に好ましくは30nm以上である。幅の上限は特に限定されないが、光学設計のしやすさの観点から130nm以下が好ましい。前記光線透過帯(Zd)における平均透過率T(Zd)は、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは35%以上である。
<光線阻止帯>
光線阻止帯(Za)、(Zc)および(Ze)は、波長700〜1200nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の透過率が5%以下の波長帯域であり、かつ、その幅が5nm以上である波長帯域のことを指す。
光線阻止帯(Za)の幅は、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上、特に好ましくは20nm以上である。幅の上限は特に限定されないが、光学設計のしやすさの観点から130nm以下が好ましい。なお、前記光線阻止帯(Za)における透過率5%以下の波長帯域が波長700nm以上の領域から波長700nm未満の領域に連続していたとしても、前記光線阻止帯(Za)は700nmを下限とする。前記光線阻止帯(Za)における平均透過率T(Za)は、好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下である。
光線阻止帯(Zc)の幅は、好ましくは7nm以上、より好ましくは10nm以上、特に好ましくは15nm以上である。幅の上限は特に限定されないが、光学設計のしやすさの観点から100nm以下が好ましい。前記光線阻止帯(Zc)における平均透過率T(Zc)は、好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下である。
光線阻止帯(Ze)の幅は、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは80nm以上、特に好ましくは100nm以上である。幅の上限は特に限定されないが、光学設計のしやすさの観点から200nm以下が好ましい。なお、前記光線阻止帯(Ze)における透過率5%以下の波長帯域が波長1200nm以下の領域から波長1200nm超の領域に連続していたとしても、前記光線阻止帯(Ze)は1200nmを上限とする。前記光線阻止帯(Ze)における平均透過率T(Ze)は、好ましくは4%以下、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下である。
光線阻止帯(Za)、光線透過帯(Zb)、光線阻止帯(Zc)、光線透過帯(Zd)および光線阻止帯(Ze)の幅および平均透過率が上記のような場合、センシングに用いる近赤外線のみを効率的に透過させることができ、ノイズが少ない良好なセンシング性能を達成することができるため好ましい。
本発明の光学フィルターは、さらに下記要件(c)を満たすことが好ましい。
要件(c);前記光線透過帯(Zb)において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の透過率が15%となる、最も短波長側の波長の値をXa(nm)とし、最も長波長側の波長の値をXb(nm)としたとき、Y1=(Xa+Xb)/2で表されるY1の値(光線透過帯(Zb)の中心波長)が750〜950nmである。
Y1の値は、好ましくは760〜930nm、より好ましくは770〜910nm、特に好ましくは780〜890nmである。Y1の値が前記範囲内であると、よりノイズが少ないセンシングが可能となる他、比較的安価な近赤外線光源(近赤外線LEDなど)を適用できるため好ましい。
本発明の光学フィルターは、さらに下記要件(d)を満たすことが好ましい。
要件(d);前記光線透過帯(Zd)において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の透過率が20%となる、最も短波長側の波長の値をXc(nm)とし、最も長波長側の波長の値をXd(nm)としたとき、Y2=(Xc+Xd)/2で表されるY2の値(光線透過帯(Zd)の中心波長)が900〜1200nmである。
Y2の値は、好ましくは910〜1150nm、より好ましくは920〜1100nm、特に好ましくは930〜1050nmである。Y2の値が前記範囲内であると、よりノイズが少ないセンシングが可能となる他、比較的安価な近赤外線光源(近赤外線LEDなど)を適用できるため好ましい。
本発明の光学フィルターは、さらに下記要件(e)を満たすことが好ましい。
要件(e);前記光線透過帯(Zb)において、光学フィルターの面に対する垂直方向から30°の角度で測定した場合の透過率が15%となる、最も短波長側の波長の値をXa’(nm)とし、最も長波長側の波長の値をXb’(nm)としたとき、Xa’と前記要件(c)におけるXaとの差の絶対値|Xa−Xa’|、および、Xb’と前記要件(c)におけるXbとの差の絶対値|Xb−Xb’|が、いずれも15nm以下である。前記絶対値|Xa−Xa’|および|Xb−Xb’|は、いずれも好ましくは12nm以下、より好ましくは10nm以下である。これらの絶対値が前記範囲にあると、角度による光線透過帯(Zb)の分光特性の違いが限定的となり、センシング時のノイズ低減を達成できるため好ましい。
本発明の光学フィルターは、前記化合物(Z)を含有する樹脂層と、誘電体多層膜とを有するとともに、近赤外線領域に二つ以上の異なる透過帯域を有し、かつ、可視光線を遮断する特性を有するものであれば、その構成は特に限定されないが、例えば、前記化合物(Z)を含有する樹脂層を含む基材(i)と、該基材(i)の少なくとも一方の面に形成された誘電体多層膜とを有する構成が挙げられる。以下、本発明の光学フィルターの実施形態の例について、図1(A)〜(D)を参照しながら説明する。
図1(A)に示す光学フィルター100aは、基材(i)102の少なくとも一方の面に誘電体多層膜104を有する。誘電体多層膜104は、基材(i)の光学特性に応じて、可視光領域および一部の近赤外線を反射する特性を有する波長選択反射膜、光線透過帯(Zb)および(Zd)の光線反射を抑制する反射防止膜、光線透過帯(Zd)よりも長波長側の近赤外線を反射する近赤外線反射膜から適宜選択することができる。例えば、基材(i)が十分な可視光カット性能を有する場合は、可視光領域を反射させる誘電体多層膜(鏡のような外観となる)を用いなくても使用上問題ない場合があり、可視光領域の光線反射を抑制する誘電体多層膜の方が意匠上好まれる場合がある(黒色の外観を保つことができる)。また、図1(B)は、基材(i)102の両面に誘電体多層膜104を有する光学フィルター100bを示す。このように、誘電体多層膜は基材(i)の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合、高い強度を有し、反りやねじれが生じにくい光学フィルターを得ることができる。光学フィルターを光学センサー装置用途に適用する場合、光学フィルターの反りやねじれが小さい方が好ましいことから、誘電体多層膜を基材の両面に設けることが好ましい。
誘電体多層膜104は、垂直方向に対して5°の角度から入射された光のうち、光線透過帯(Zd)よりも長波長側の波長領域の光に対して反射特性を有することが好ましい。例えば、光線透過帯(Zd)の中心波長Y2が950nm付近である場合、1050〜1200nm付近に反射特性を有することが特に好ましい。
基材(i)102の両面に誘電体多層膜を有する形態として、例えば、図1(B)に示す(B−1)〜(B−3)の形態が挙げられる 。
(B−1)は、基材(i)102の一方の面に、光学フィルター(又は基材(i))の垂直方向に対して5°の角度から測定した場合に光線透過帯(Zd)よりも長波長側(以下「波長領域1」ともいう。)に主に反射特性を有する第1誘電体多層膜104aを設け、かつ、基材(i)102の他方の面に、光学フィルター(又は基材(i))の垂直方向に対して5°の角度から測定した場合に光線透過帯(Zb)よりも短波長側(以下「波長領域2」ともいう。)に主に反射特性を有する第2誘電体多層膜104bを設ける形態である。
(B−2)は、前記第1誘電体多層膜104aを基材(i)102の両面に設ける形態である。
(B−3)は、基材(i)102の一方の面に、光学フィルター(又は基材(i))の垂直方向に対して5°の角度から測定した場合に光線透過帯(Zb)と光線透過帯(Zd)の間の波長領域および前記波長領域1に主に反射特性を有する第3誘電体多層膜104cを設け、かつ、基材(i)102の他方の面に、光学フィルター(又は基材(i))の垂直方向に対して5°の角度から測定した場合に光線透過帯(Zb)と光線透過帯(Zd)の間の波長領域および前記波長領域2に主に反射特性を有する第4誘電体多層膜104dを設ける形態である。
また、図1(C)に示す光学フィルター100cは、基材(i)102の一方の面に、光学フィルター(又は基材(i))の垂直方向に対して5°の角度から測定した場合に可視光領域および一部の近赤外線、具体的には近赤外センシングに用いる波長領域以外に主に反射特性を有する誘電体多層膜104を設け、かつ、基材(i)102の他方の面に、近赤外センシングに用いる波長領域(ZbおよびZd)の反射防止特性を有する反射防止膜106を設ける形態である。基材(i)が光線透過帯(Zb)よりも短波長側全域(例えば、380〜780nmの波長領域)に十分な吸収を有する場合は、基材(i)102の一方の面に、光学フィルター(又は基材(i))の垂直方向に対して5°の角度から測定した場合に前記波長領域1に主に反射特性を有する第2誘電体多層膜104aを設け、かつ、基材(i)102の他方の面に、近赤外センシングに用いる波長領域(ZbおよびZd)の反射防止特性を有する反射防止膜106を有する形態をとることもできる。基材(i)に対して誘電体多層膜と反射防止膜とを組み合わせることで、近赤外センシングに用いる波長領域の透過率を高めつつセンシングに不要な光を反射することができる。
また、図1(D)に示す光学フィルター100dは、光学フィルター(又は基材(i))の両面に、可視光領域および近赤外センシングに用いる波長領域(ZbおよびZd)の反射防止特性を有する反射防止膜106aを有する形態である。基材(i)が、可視光領域、ならびに、光線阻止帯(Za)、(Zc)および(Ze)に十分な吸収特性を有する場合、誘電体多層膜は必ずしも可視光領域や前記波長領域1に反射特性を有する必要はなく、可視光領域および近赤外センシングに用いる波長領域のいずれにも反射防止特性を有する誘電体多層膜を好適に使用することができる。
光学フィルターの厚みは、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、近年の情報端末の薄型化、軽量化等の流れを考慮すると薄いことが好ましい。特に、光学センサー装置用途では良好な光学特性(センシング光透過特性、不要光カット特性)と薄型化を両立することは非常に重要であり、本発明の光学フィルターを適用することで従来品では達成不可能なレベルでこれらの特性を両立することができる。
本発明の光学フィルターの厚みは、好ましくは180μm以下、より好ましくは160μm以下、さらに好ましくは150μm以下、特に好ましくは120μm以下である。下限は特に制限されないが、光学フィルターの強度や取り扱いのしやすさを考慮すると、例えば20μmであることが望ましい。
[基材]
図2(A)〜(C)は、前記基材(i)の構成例を示す。基材(i)102は、波長700〜1000nmの領域に吸収極大を有する化合物(Z)を1種以上含有する樹脂層を含めばよく、単層であっても多層であってもよい。
以下、化合物(Z)を少なくとも1種と樹脂とを含有する樹脂層を「樹脂層(z)」ともいい、それ以外の樹脂層を単に「樹脂層」ともいう。
図2(A)は、化合物(Z)を含有する樹脂製基板(ii)108からなる単層構造の基材(i)102aを示す。この樹脂製基板(ii)が前述の樹脂層(z)に相当する。図2(B)は、多層構造の基材(i)102bを示し、その態様としては、例えば、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などの支持体110上に化合物(Z)を含有する硬化性樹脂または熱可塑性樹脂からなるオーバーコート層などの樹脂層(z)112が積層された構成などが挙げられる。なお、樹脂層(z)112に相当する層は、支持体110の両面に設けられていてもよい。図2(C)は、化合物(Z)を含有する樹脂製基板(ii)108上に、化合物(Z)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層(z)112が積層された基材(i)102cを示す。
ガラス支持体を有する場合、基材(i)の強度と近赤外線波長領域における透過率との観点から、ガラス支持体は吸収剤を含まない無色透明のガラス基板であることが好ましい。吸収剤として銅を含むフツリン酸塩ガラスなどでは基材強度が低下する傾向があるとともに、近赤外線波長領域の透過率が低下し近赤外センシングを感度良く実施できない場合がある。
樹脂製支持体を有する場合、光学特性調整の容易性、さらに、樹脂製支持体の傷消し効果を達成できることや基材の耐傷性向上等の点から、樹脂製支持体の両面に硬化性樹脂または熱可塑性樹脂からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層され、当該樹脂層の少なくとも一方が化合物(Z)を含む形態であることが特に好ましい。
前記基材(i)としては、化合物(Z)を含有する樹脂製基板(ii)を含むことが特に好ましい。このような基材(i)を用いると薄型化と割れにくさを両立させることができ、光学センサー装置用途で好適に使用することができる。
前記基材(i)の厚みは、基材強度と薄型化を両立できるように選択することが望ましく、好ましくは10〜180μm、より好ましくは10〜160μm、さらに好ましくは15〜150μm、特に好ましくは20〜120μmである。前記基材(i)の厚みが前記範囲にあると、該基材(i)を用いた光学フィルターを薄型化および軽量化することができ、特にモバイル機器に搭載する光学センサー装置等の様々な用途に好適に用いることができる。
<化合物(Z)>
化合物(Z)は、波長700〜1000nmの領域に吸収極大を有すれば特に制限されないが、溶剤可溶型の色素化合物であることが好ましく、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、ピロロピロール系化合物、ヘキサフィリン系化合物、シアニン系化合物、およびボロンジピロメテン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、スクアリリウム系化合物、シアニン系化合物、クロコニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、およびピロロピロール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。
本発明では、化合物(Z)として、吸収極大波長が異なる2種以上の化合物を含むことが好ましい。より具体的には、好ましくは700〜850nm、より好ましくは705〜840nm、特に好ましくは710〜830nmの領域に吸収極大波長を有する化合物(Z1)1種以上と、好ましくは851〜1000nm、より好ましくは855〜970nm、特に好ましくは860〜950nmの領域に吸収極大波長を有する化合物(Z2)1種以上とを含むことが望ましい。
また、化合物(Z)として化合物(Z1)および化合物(Z2)を含む場合は、化合物(Z1)の中で最も吸収極大波長が長波長側のものと、化合物(Z2)の中で最も吸収極大波長が短波長側のものとの吸収極大波長の差が、好ましくは80〜240nm、より好ましくは100〜220nm、特に好ましくは110〜200nmである。
化合物(Z1)および化合物(Z2)の吸収極大波長およびその差が前記範囲であると、光線透過帯(Zb)、光線阻止帯(Zc)および光線透過帯(Zd)を効率的に形成することが可能となり、優れたセンシング性能を達成できるとともに、誘電体多層膜の設計を簡素化(低コスト化)することができる。なお、化合物(Z1)および化合物(Z2)は同一の樹脂層中に含有されていても別々の樹脂層中に含有されていてもよいが、製造を簡易にするという観点から同一の樹脂層中に含有されている形態がより好ましい。
化合物(Z)は、一般的に知られている方法で合成すればよく、例えば、特開平1−228960号公報、特開2001−40234号公報、特許第3094037号公報、特許第3196383号公報等に記載されている方法などを参照して合成することができる。
化合物(Z)の含有量は、前記樹脂層(z)が、例えば、化合物(Z)を含有する樹脂製基板(ii)である場合には、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜2.0質量部、より好ましくは0.02〜1.5質量部、特に好ましくは0.03〜1.0質量部である。また、前記樹脂層(z)が、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などに積層される、化合物(Z)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層等である場合には、樹脂層(z)を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜5.0質量部、より好ましくは0.2〜4.0質量部、特に好ましくは0.3〜3.0質量部である。化合物(Z)の含有量が前記範囲内にあると、良好な近赤外線吸収特性を達成することができる。
<化合物(S)>
本発明の光学フィルターは、化合物(Z)に加えて、波長350〜699nmの領域に吸収極大を有する化合物(S)を含有することが好ましく、化合物(S)を含有する層は化合物(Z)を含有する層と同一であっても異なっていてもよい。
化合物(S)と化合物(Z)が同一の層に含まれる場合、例えば、前記樹脂製基板(ii)が化合物(S)をさらに含有する構成や、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体に、化合物(S)と化合物(Z)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層(z)が積層された構成を挙げることができる。また、化合物(S)と化合物(Z)が異なる層に含まれる場合、例えば、前記樹脂製基板(ii)に化合物(S)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された構成、化合物(S)を含有する樹脂製基板(iii)に化合物(Z)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層(z)が積層された構成、および前記樹脂製基板(ii)と前記樹脂製基板(iii)を貼り合せた構成を挙げることができる。光学特性の調整のしやすさや製造コストの観点より、前記樹脂製基板(ii)が化合物(S)をさらに含有する構成が特に好ましい。
化合物(S)は、波長350〜699nmに吸収極大を有すれば特に限定されないが、光学フィルターの耐熱性の観点から、波長350〜500nmの領域に吸収極大を有する化合物(S−a)、波長501〜600nmの領域に吸収極大を有する化合物(S−b)、および波長601〜699nmの領域に吸収極大を有する化合物(S−c)をそれぞれ1種以上含むことが好ましく、前記化合物(S−a)と前記化合物(S−b)の吸収極大波長の差が50〜140nmであり、且つ、前記化合物(S−b)と前記化合物(S−c)の吸収極大波長の差が30〜100nmであることが特に好ましい。化合物(S)が樹脂層に含まれる場合、化合物(S)は可視光領域の吸収剤として作用するとともに、樹脂層の可塑剤としても作用して樹脂層のガラス転移温度を低下させ、その結果、光学フィルターの耐熱性を低下させることがある。一方、化合物(S)が、上記の条件を満たす化合物(S−a)、化合物(S−b)および化合物(S−c)を含むと、少ない添加量で不要な可視光線を効率的にカットすることができ、樹脂層のガラス転移温度の低下を最小限で抑えることができる。
化合物(S)は、溶剤可溶型の色素化合物であることが好ましく、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、メチン系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物、ポルフィリン系化合物、トリアリールメタン系化合物、サブフタロシアニン系化合物、ペリレン系化合物、セミスクアリリウム系化合物、スチリル系化合物、フェナジン系化合物、ピリドメテン−ホウ素錯体系化合物、ピラジン−ホウ素錯体系化合物、ピリドンアゾ系化合物、キサンテン系化合物、BODIPY(ボロンジピロメテン)系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、メチン系化合物、トリアリールメタン系化合物、キサンテン系化合物、ピリドンアゾ系化合物 からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。
化合物(S)の市販品としては、一般的な可視吸収染料や可視吸収顔料を挙げることができるが、可視吸収染料の方が可視光カット効率に優れる傾向にあり好ましい。
化合物(S)の含有量は、化合物(S)を含有する層が、例えば、化合物(Z)と化合物(S)を含有する樹脂製基板(ii)、または、化合物(S)を含有する樹脂製基板(iii)である場合には、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.10〜5.0質量部、より好ましくは0.25〜3.5質量部、特に好ましくは0.50〜2.0質量部である。また、化合物(S)を含有する層が、化合物(Z)を含有する樹脂製基板(ii)またはガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体に積層される、化合物(S)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層等である場合には、化合物(S)を含む樹脂層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは1.0〜30.0質量部、より好ましくは2.0〜25.0質量部、特に好ましくは3.0〜20.0質量部である。化合物(S)の含有量が前記範囲内にあると、良好な近赤外線吸収特性を達成することができる。特に、前記基材(i)が化合物(Z)と化合物(S)を含有する樹脂製基板(ii)を含む場合、化合物(S)の含有量が前記範囲内にあると、樹脂製基板(ii)のガラス転移温度低下を抑えることができ、耐熱性に優れた光学フィルターとすることができる。
<樹脂>
樹脂製支持体、該樹脂製支持体やガラス支持体などに積層する樹脂層(z)、前記樹脂製基板(ii)および前記樹脂製基板(iii)は、樹脂を用いて形成される。このような樹脂としては、1種単独でもよいし、2種以上でもよい。
前記樹脂としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されないが、例えば、熱安定性およびフィルムへの成形性を確保し、かつ、100℃以上の蒸着温度で行う高温蒸着により誘電体多層膜を形成しうるフィルムとするため、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110〜380℃、より好ましくは115〜370℃、さらに好ましくは120〜360℃、特に好ましくは130〜300℃である樹脂が挙げられる。前記樹脂のガラス転移温度が上記範囲にあると、樹脂製基板とした際に誘電体多層膜をより高温で蒸着形成することができ、クラック耐性や耐候性に優れた光学フィルターを得ることができる。
前記樹脂が、化合物(S)および化合物(Z)を含有する樹脂製基板(ii)または化合物(S)を含有する樹脂製基板(iii)を構成する樹脂として使用される場合、樹脂製基板(ii)または樹脂製基板(iii)のガラス転移温度と、樹脂製基板(ii)または樹脂製基板(iii)に含有される樹脂のガラス転移温度との差は、好ましくは0〜10℃、より好ましくは0〜8℃、さらに好ましくは0〜5℃である。前述のように、化合物(S)は樹脂層の可塑剤として作用する場合が有るが、化合物(S)の種類や添加量を適切に選択することにより樹脂製基板(ii)または樹脂製基板(iii)のガラス転移温度低下を低減することができ、耐熱性やクラック耐性に優れた光学フィルターが得られる。
前記樹脂としては、当該樹脂からなる厚さ0.1mmの樹脂板を形成した場合に、この樹脂板の全光線透過率(JIS K7105)が、好ましくは75〜95%、さらに好ましくは78〜95%、特に好ましくは80〜95%となる樹脂を用いることができる。全光線透過率がこのような範囲となる樹脂を用いれば、得られる基板は光学フィルムとして良好な透明性を示す。
前記樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される、ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は、通常15,000〜350,000、好ましくは30,000〜250,000であり、数平均分子量(Mn)は、通常10,000〜150,000、好ましくは20,000〜100,000である。
前記樹脂としては、例えば、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(アラミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂を挙げることができる。
≪環状(ポリ)オレフィン系樹脂≫
環状(ポリ)オレフィン系樹脂としては、下記式(X0)で表される単量体および下記式(Y0)で表される単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体から得られる樹脂、および当該樹脂を水素添加することで得られる樹脂が好ましい。
式(X0)中、Rx1〜Rx4はそれぞれ独立に、下記(i')〜(ix')より選ばれる原子または基を表し、kx、mxおよびpxはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
(i')水素原子
(ii')ハロゲン原子
(iii')トリアルキルシリル基
(iv')酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有する、置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(v')置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(vi')極性基(但し、(ii')および(iv')を除く。)
(vii')Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成されたアルキリデン基(但し、前記結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表す。)
(viii')Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表す。)
(ix')Rx2とRx3とが、相互に結合して形成された単環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないRx1とRx4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表す。)
式(Y0)中、Ry1およびRy2はそれぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表すか、Ry1とRy2とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の脂環式炭化水素、芳香族炭化水素または複素環を表し、kyおよびpyはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。
≪芳香族ポリエーテル系樹脂≫
芳香族ポリエーテル系樹脂は、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。
式(1)中、R1〜R4はそれぞれ独立、炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dはそれぞれ独立に0〜4の整数を示す。
式(2)中、R1〜R4およびa〜dはそれぞれ独立に、前記式(1)中のR1〜R4およびa〜dと同義であり、Yは、単結合、−SO2−または−CO−を示し、R5およびR6はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、eおよびfはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、mは0または1を示す。但し、mが0のとき、R6はシアノ基ではない。
また、前記芳香族ポリエーテル系樹脂は、さらに下記式(3)で表される構造単位および下記式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。
式(3)中、R7およびR7はそれぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、gおよびhはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。
式(4)中、R5、R6、Y、m、eおよびfはそれぞれ独立に、前記式(2)中のR5、R6、Y、m、eおよびfと同義であり、R7、R8、Z、n、gおよびhはそれぞれ独立に、前記式(3)中のR7、R8、Z、n、gおよびhと同義である。
≪ポリイミド系樹脂≫
ポリイミド系樹脂としては、特に制限されず、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子化合物であればよく、例えば、特開2006−199945号公報や特開2008−163107号公報に記載されている方法で合成することができる。
≪フルオレンポリカーボネート系樹脂≫
フルオレンポリカーボネート系樹脂としては、特に制限されず、フルオレン部位を含むポリカーボネート樹脂であればよく、例えば、特開2008−163194号公報に記載されている方法で合成することができる。
≪フルオレンポリエステル系樹脂≫
フルオレンポリエステル系樹脂としては、特に制限されず、フルオレン部位を含むポリエステル樹脂であればよく、例えば、特開2010−285505号公報や特開2011−197450号公報に記載されている方法で合成することができる。
≪フッ素化芳香族ポリマー系樹脂≫
フッ素化芳香族ポリマー系樹脂としては、特に制限されないが、フッ素原子を少なくとも1つ有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも1つの結合を含む繰り返し単位とを含有するポリマーであることが好ましく、例えば特開2008−181121号公報に記載されている方法で合成することができる。
≪アクリル系紫外線硬化型樹脂≫
アクリル系紫外線硬化型樹脂としては、特に制限されないが、分子内に一つ以上のアクリル基もしくはメタクリル基を有する化合物と、紫外線によって分解して活性ラジカルを発生させる化合物を含有する樹脂組成物から合成されるものを挙げることができる。アクリル系紫外線硬化型樹脂は、前記基材(i)として、ガラス支持体上やベースとなる樹脂製支持体上に化合物(Z)および硬化性樹脂を含む樹脂層(z)が積層された基材や、化合物(Z)を含有する樹脂製基板(ii)上に硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材を用いる場合、該硬化性樹脂として特に好適に使用することができる。
≪市販品≫
前記樹脂の市販品としては、以下の市販品等を挙げることができる。環状(ポリ)オレフィン系樹脂の市販品としては、JSR(株)製アートン、日本ゼオン(株)製ゼオノア、三井化学(株)製APEL、ポリプラスチックス(株)製TOPASなどを挙げることができる。ポリエーテルサルホン系樹脂の市販品としては、住友化学(株)製スミカエクセルPESなどを挙げることができる。ポリイミド系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製ネオプリムLなどを挙げることができる。ポリカーボネート系樹脂の市販品としては、帝人(株)製ピュアエースなどを挙げることができる。フルオレンポリカーボネート系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製ユピゼータEP−5000などを挙げることができる。フルオレンポリエステル系樹脂の市販品としては、大阪ガスケミカル(株)製OKP4HTなどを挙げることができる。アクリル系樹脂の市販品としては、(株)日本触媒製アクリビュアなどを挙げることができる。シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂の市販品としては、新日鐵化学(株)製シルプラスなどを挙げることができる。
<その他成分>
前記基材(i)は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他成分として、さらに酸化防止剤、近紫外線吸収剤、蛍光消光剤等の添加剤を含有してもよい。前記その他成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
近紫外線吸収剤としては、例えばアゾメチン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、およびテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。
なお、これら添加剤は、基材を製造する際に、樹脂などとともに混合してもよいし、樹脂を合成する際に添加してもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるものであるが、樹脂100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部、好ましくは0.05〜2.0質量部である。
<基材の製造方法>
基材(i)が、前記樹脂製基板(ii)または(iii)を含む基材である場合、該樹脂製基板は、例えば、溶融成形またはキャスト成形により形成することができる。さらに、必要により、成形後に、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤をコーティングすることで、オーバーコート層が積層された基材を製造することができる。
基材(i)が、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体または前記樹脂製基板(iii)上に化合物(Z)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層(z)が積層された基材である場合、例えば、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体または前記樹脂製基板(iii)に化合物(Z)を含む樹脂溶液を溶融成形またはキャスト成形することで、好ましくはスピンコート、スリットコート、インクジェットなどの方法にて塗工した後に溶媒を乾燥除去し、必要に応じてさらに光照射や加熱を行うことで、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体または前記樹脂製基板(iii)上に樹脂層(z)が形成された基材を製造することができる。
≪溶融成形≫
溶融成形としては、具体的には、樹脂と化合物(Z)とを溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法、樹脂と化合物(Z)とを含有する樹脂組成物を溶融成形する方法、または、化合物(Z)、樹脂および溶剤を含む樹脂組成物から溶剤を除去して得られたペレットを溶融成形する方法などが挙げられる。溶融成形方法としては、射出成形、溶融押出成形またはブロー成形などを挙げることができる。
≪キャスト成形≫
キャスト成形としては、化合物(Z)、樹脂および溶剤を含む樹脂組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶剤を除去する方法、または化合物(Z)、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂とを含む硬化性組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶媒を除去した後、紫外線照射や加熱などの適切な手法により硬化させる方法などにより製造することもできる。
基材(i)が、化合物(Z)を含有する樹脂製基板(ii)からなる基材である場合には、該基材は、キャスト成形後、成形用支持体から塗膜を剥離することにより得ることができ、また、基材(i)が、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体等の支持体などの上に化合物(Z)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層(z)が積層された基材である場合には、該基材は、キャスト成形後、塗膜を剥離しないことで得ることができる。
[誘電体多層膜]
誘電体多層膜としては、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層したものが挙げられる。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率が通常は1.7〜2.5の材料が選択される。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛または酸化インジウム等を主成分とし、酸化チタン、酸化錫および/または酸化セリウム等を少量(例えば、主成分に対して0〜10質量%)含有させたものが挙げられる。
低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率が通常は1.2〜1.6の材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムが挙げられる。
高屈折率材料層と低屈折率材料層とを積層する方法については、これらの材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はない。例えば、基材上に、直接、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法またはイオンプレーティング法等により、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することができる。
高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さは、通常、1〜500nmであることが好ましく、さらに好ましくは2〜450nm、特に好ましくは5〜400nmである 。各層の厚さがこの範囲であると、製膜時の制御が容易である他、反射・屈折の光学的特性の関係から、特定波長の遮断および透過を容易にコントロールできる傾向にある。
誘電体多層膜における高屈折率材料層と低屈折率材料層との合計の積層数は、光学フィルター全体として8〜120層であることが好ましく、12〜110層であることがより好ましく、16〜100層であることが特に好ましい。各層の厚み、光学フィルター全体としての誘電体多層膜の厚みや合計の積層数が前記範囲にあると、十分な製造マージンを確保できる上に、光学フィルターの反りや誘電体多層膜のクラックを低減することができる。
ここで、誘電体多層膜の設計を最適化するには、例えば、光学薄膜設計ソフト(例えば、EssentialMacleod、ThinFilmCenter社製)を用い、可視光領域の光線カット特性と目的とする近赤外線透過帯(近赤外センシングに用いる波長領域)の光線透過特性を両立できるようにパラメーターを設定すればよい。例えば、近赤外センシングに820nm付近の近赤外線と950nm付近の近赤外線を用いる場合、基材(i)の光学特性にもよるが、波長350〜780nmの垂直方向から測定した場合の目標透過率を0%、TargetToleranceの値を1、波長800〜970nmの垂直方向から測定した場合の目標透過率を100%、TargetToleranceの値を0.5、波長1000〜1200nmの垂直方向から測定した場合の目標透過率を0%、TargetToleranceの値を0.8として、近赤外センシングに用いる波長帯以外に反射特性を持つよう設計したパラメーター設定方法や、波長700〜970nmの垂直方向から測定した場合の目標透過率を100%、TargetToleranceの値を0.5、波長1000〜1200nmの垂直方向から測定した場合の目標透過率を0%として、可視光領域の一部〜近赤外センシングに用いる波長帯に反射防止効果を有し、近赤外センシングに用いる波長帯より長波長側に反射特性を持つよう設計したパラメーター設定方法などが挙げられる。これらのパラメーターは基材(i)の光学特性に合わせて波長範囲をさらに細かく区切り、設計を最適化する光線入射角度やTargetToleranceの値を変えることもできる。また、基材(i)の両面に誘電体多層膜を有する構成の場合、両面に同じ設計の誘電体多層膜を設けることも、両面に設計が異なる誘電体多層膜を設けることもできる。
[その他の機能膜]
本発明の光学フィルターは、本発明の効果を損なわない範囲において、基材と誘電体多層膜との間、基材の誘電体多層膜が設けられた面と反対側の面、または誘電体多層膜の基材が設けられた面と反対側の面に、基材や誘電体多層膜の表面硬度の向上、耐薬品性の向上、帯電防止および傷消しなどの目的で、反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を適宜設けることができる。
本発明の光学フィルターは、前述の機能膜からなる層を1層含んでもよく、2層以上含んでもよい。本発明の光学フィルターがこのような機能膜からなる層を2層以上含む場合には、同様の層を2層以上含んでもよいし、異なる層を2層以上含んでもよい。
このような機能膜を積層する方法としては、特に制限されないが、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤などを基材または誘電体多層膜に、前記と同様に溶融成形またはキャスト成形する方法等を挙げることができる。
また、コーティング剤などを含む硬化性組成物をバーコーター等で基材または誘電体多層膜上に塗布した後、紫外線照射等により硬化することによっても製造することができる。
コーティング剤としては、紫外線(UV)/電子線(EB)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などが挙げられ、具体的には、ビニル化合物類や、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系樹脂などが挙げられる。これらのコーティング剤を含む硬化性組成物としては、ビニル系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系硬化性組成物などが挙げられる。
また、硬化性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては、公知の光重合開始剤または熱重合開始剤を用いることができ、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化性組成物中、重合開始剤の配合割合は、硬化性組成物の全量を100質量%とした場合、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。重合開始剤の配合割合が前記範囲にあると、硬化性組成物の硬化特性および取り扱い性に優れ、所望の硬度を有する反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を得ることができる。
さらに、硬化性組成物には溶剤として有機溶剤を加えてもよく、有機溶剤としては、公知のものを使用することができる。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。これら溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
機能膜の厚さは、好ましくは0.1〜20μm、さらに好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは0.7〜5μmである。
また、基材と機能膜および/または誘電体多層膜との密着性や、機能膜と誘電体多層膜との密着性を上げる目的で、基材、機能膜または誘電体多層膜の表面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
[光学フィルターの用途]
本発明の光学フィルターは、優れた可視光カット性能と近赤外センシングに用いる二つの以上の波長領域における光線透過特性を有するといった特徴を有する。したがって、光学センサー装置用として有用である。特に、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話、ウェアラブルデバイス、自動車、テレビ、ゲーム機、ドローン等に搭載される光学センサー用として有用である。光学センサーとしては、例えば、虹彩認証センサー、顔認証センサー、指紋認証センサー、血中酸素濃度センサーなどといった生体認証センサーや、環境光センサー、照度センサーなどが挙げられ、複数の機能を有する複合センサーとすることもできる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、「部」は、特に断りのない限り「質量部」を意味する。また、各物性値の測定方法および物性の評価方法は以下のとおりである。
<分子量>
樹脂の分子量は、各樹脂の溶剤への溶解性等を考慮し、下記の(a)または(b)の方法にて測定を行った。
(a)ウオターズ(WATERS)社製のゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー(GPC)装置(150C型、カラム:東ソー社製Hタイプカラム、展開溶剤:o−ジクロロベンゼン)を用い、標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
(b)東ソー社製GPC装置(HLC−8220型、カラム:TSKgelα‐M、展開溶剤:THF)を用い、標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
なお、後述する樹脂合成例3で合成した樹脂については、上記方法による分子量の測定ではなく、下記方法(c)による対数粘度の測定を行った。
(c)ポリイミド樹脂溶液の一部を無水メタノールに投入してポリイミド樹脂を析出させ、ろ過して未反応単量体から分離した。80℃で12時間真空乾燥して得られたポリイミド0.1gをN−メチル−2−ピロリドン20mLに溶解し、キャノン−フェンスケ粘度計を使用して30℃における対数粘度(μ)を下記式により求めた。
μ={ln(ts/t0)}/C
0:溶媒の流下時間
s:希薄高分子溶液の流下時間
C:0.5g/dL
<ガラス転移温度(Tg)>
エスアイアイ・ナノテクノロジーズ株式会社製の示差走査熱量計(DSC6200)を用いて、昇温速度:毎分20℃、窒素気流下で測定した。
<分光透過率>
光学フィルターの各波長域における透過率は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計(U−4100)を用いて測定した。
ここで、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率では、図3(A)のように光学フィルター2に対して垂直に透過した光1を分光光度計3で測定し、光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率では、図3(B)のように光学フィルター2の垂直方向に対して30°の角度で透過した光1’を分光光度計3で測定した。
[合成例]
下記実施例で用いた色素化合物 は、一般的に知られている方法で合成した。一般的合成方法としては、例えば、特許第3366697号公報、特許第2846091号公報、特許第2864475号公報、特許第3703869号公報、特開昭60−228448号公報、特開平1−146846号公報、特開平1−228960号公報、特許第4081149号公報、特開昭63−124054号公報、「フタロシアニン−化学と機能―」(アイピーシー、1997年)、特開2007−169315号公報、特開2009−108267号公報、特開2010−241873号公報、特許第3699464号公報、特許第4740631号公報などに記載されている方法を挙げることができる。
<樹脂合成例1>
下記式(X1)で表される8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下「DNM」ともいう。)100部、1−ヘキセン(分子量調節剤)18部およびトルエン(開環重合反応用溶媒)300部を、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
このようにして得られた開環重合体溶液1,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533を0.12部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂A」ともいう。)を得た。得られた樹脂Aは、数平均分子量(Mn)が32,000、質量平均分子量(Mw)が137,000であり、ガラス転移温度(Tg)が165℃であった。
<樹脂合成例2>
3Lの4つ口フラスコに2,6−ジフルオロベンゾニトリル35.12g(0.253mol)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン87.60g(0.250mol)、炭酸カリウム41.46g(0.300mol)、N,N−ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」ともいう。)443gおよびトルエン111gを添加した。続いて、4つ口フラスコに温度計、撹拌機、窒素導入管付き三方コック、ディーンスターク管および冷却管を取り付けた。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、得られた溶液を140℃で3時間反応させ、生成する水をディーンスターク管から随時取り除いた。水の生成が認められなくなったところで、徐々に温度を160℃まで上昇させ、そのままの温度で6時間反応させた。室温(25℃)まで冷却後、生成した塩をろ紙で除去し、ろ液をメタノールに投じて再沈殿させ、ろ別によりろ物(残渣)を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末(以下「樹脂B」ともいう。)を得た(収率95%)。得られた樹脂Bは、数平均分子量(Mn)が75,000、質量平均分子量(Mw)が188,000であり、ガラス転移温度(Tg)が285℃であった。
<樹脂合成例3>
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク管および冷却管を備えた500mLの5つ口フラスコに、窒素気流下、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン27.66g(0.08モル)および4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル7.38g(0.02モル)を入れて、γ―ブチロラクトン68.65g及びN,N−ジメチルアセトアミド17.16gに溶解させた。得られた溶液を、氷水バスを用いて5℃に冷却し、同温に保ちながら1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物22.62g(0.1モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.50g(0.005モル)を一括添加した。添加終了後、180℃に昇温し、随時留出液を留去させながら、6時間還流させた。反応終了後、内温が100℃になるまで空冷した後、N,N−ジメチルアセトアミド143.6gを加えて希釈し、攪拌しながら冷却し、固形分濃度20質量%のポリイミド樹脂溶液264.16gを得た。このポリイミド樹脂溶液の一部を1Lのメタノール中に注ぎいれてポリイミドを沈殿させた。濾別したポリイミドをメタノールで洗浄した後、100℃の真空乾燥機中で24時間乾燥させて白色粉末(以下「樹脂C」ともいう。)を得た。得られた樹脂CのIRスペクトルを測定したところ、イミド基に特有の1704cm-1、1770cm-1の吸収が見られた。樹脂Cはガラス転移温度(Tg)が310℃であり、対数粘度を測定したところ、0.87であった。
[実施例1]
実施例1では、樹脂製基板からなる基材を有し、波長820nm付近および波長950nm付近の近赤外線を透過させる光学フィルターを以下の手順および条件で作成した。
容器に、樹脂合成例1で得られた樹脂A 100部、化合物(Z)として下記式(a−1)で表わされる化合物(a−1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長738nm)0.28部、及び、下記式(a−2)で表わされる化合物(a−2)(ジクロロメタン中での吸収極大波長882nm)0.06部、および塩化メチレンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの樹脂製基板からなる基材を得た。この基材の分光透過率の測定結果を図4に示す。
続いて、得られた基材の片面に誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.109mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜(I)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計54層)。誘電体多層膜(II)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計24層)。誘電体多層膜(I)および(II)のいずれにおいても、シリカ層およびチタニア層は、基材側からチタニア層、シリカ層、チタニア層、・・・シリカ層、チタニア層、シリカ層の順で交互に積層されており、光学フィルターの最外層をシリカ層とした。
誘電体多層膜(I)および(II)の設計は、以下のようにして行った。
各層の厚さと層数については、可視光領域の光線カット特性と目的とする近赤外域の透過特性を達成できるよう基材屈折率の波長依存特性や、適用した化合物(Z)の吸収特性に合わせて光学薄膜設計ソフト(Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用いて最適化を行った。最適化を行う際、本実施例においてはソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表1の通りとした。
膜構成最適化の結果、実施例1では、誘電体多層膜(I)は、膜厚20〜489nmのシリカ層と膜厚12〜73nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数54の多層蒸着膜となり、誘電体多層膜(II)は、膜厚154〜519nmのシリカ層と膜厚119〜194nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数24の多層蒸着膜となった。最適化を行った膜構成の一例を表4に示す。
得られた光学フィルターの垂直方向および垂直方向に対して30°の角度から測定した分光透過率を測定し、各波長領域における光学特性を評価した。結果を図5および表9に示す。
[実施例2]
実施例2では、樹脂製基板からなる基材を有し、波長820nm付近および波長950nm付近の近赤外線を透過させる光学フィルターを以下の手順および条件で作成した。
実施例1において、化合物(Z)として、化合物(a−1)0.28部および化合物(a−2)0.06部に加えて、下記式(a−3)で表わされる化合物(a−3)(ジクロロメタン中での吸収極大波長704nm)0.15部を用いたこと、さらに、化合物(S)として下記式(s−1)で表わされる化合物(s−1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長429nm)0.40部、下記式(s−2)で表わされる化合物(s−2)(ジクロロメタン中での吸収極大波長550nm)0.40部および下記式(s−3)で表わされる化合物(s−3)(ジクロロメタン中での吸収極大波長606nm)0.40部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順および条件で化合物(Z)を含む樹脂製基板を得た。この基材の分光透過率測定結果を図6に示す。
実施例1と同様の手順で樹脂製基板からなる基材を作成した。次いで、誘電体多層膜の設計(層数および各層の厚み)が異なること以外は実施例1と同様の手順で、得られた基材の片面に誘電体多層膜(III)を形成し、さらに基材のもう一方の面に誘電体多層膜(IV) を形成し、厚さ約0.109mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜(III)および(IV)の設計は、ソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表3の通りとしたこと以外は実施例1と同様の手順で行った。最適化を行った膜構成の一例を表4に示す。
得られた光学フィルターの垂直方向および垂直方向に対して30°の角度から測定した分光透過率を測定し、各波長領域における光学特性を評価した。結果を図7および表9に示す。
[実施例3]
実施例3では、両面に樹脂層を有する樹脂製基板からなる基材を有し、波長820nm付近および波長950nm付近の近赤外線を透過させる光学フィルターを以下の手順および条件で作成した。
実施例2と同様の手順および条件で化合物(Z)および化合物(S)を含む樹脂製基板を得た。
得られた樹脂製基板の片面に、下記組成の樹脂組成物(1)をバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で2分間加熱し、溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが2.5μmとなるように、バーコーターの塗布条件を調整した。次に、コンベア式露光機を用いて露光(露光量500mJ/cm2,200mW)を行い、樹脂組成物(1)を硬化させ、樹脂製基板上に樹脂層を形成した。同様に、樹脂製基板のもう一方の面にも樹脂組成物(1)からなる樹脂層を形成し、化合物(Z)および化合物(S)を含む樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材を得た。
樹脂組成物(1):トリシクロデカンジメタノールアクリレート 60質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 40質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 5質量部、メチルエチルケトン(溶剤、固形分濃度(TSC):30%)
続いて、実施例2と同様の手順で、得られた基材の両面に誘電体多層膜を形成し、厚さ約0.109mmの光学フィルターを得た。
得られた光学フィルターの垂直方向および垂直方向に対して30°の角度から測定した分光透過率を測定し、各波長領域における光学特性を評価した。結果を表9に示す。
[実施例4]
実施例4では、化合物(Z)を含有する樹脂層(z)を片面に有するガラス基板からなる基材を有し、波長820nm付近および波長950nm付近の近赤外線を透過させる光学フィルターを以下の手順および条件で作成した。
縦60mm、横60mmの大きさにカットした透明ガラス基板「OA−10G(厚み200um)」(日本電気硝子(株)製)上に下記組成の樹脂組成物(2)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上80℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが10μmとなるように、スピンコーターの塗布条件を調整した。次に、コンベア式露光機を用いて露光(露光量500mJ/cm2,200mW)を行い、樹脂組成物(2)を硬化させ、化合物(Z)を含む樹脂層(z)を有するガラス基板からなる基材を得た。
樹脂組成物(2):トリシクロデカンジメタノールアクリレート 20質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 80質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4質量部、化合物(a−1)2.8質量部、化合物(a−2)0.6質量部、化合物(a−3)1.5質量部、化合物(s−1)4.0質量部、化合物(s−2)4.0質量部、化合物(s−3)4.0質量部、メチルエチルケトン(溶剤、TSC:35%)
続いて、誘電体多層膜の設計(層数および各層の厚み)が異なること以外は実施例2と同様の手順で得られた基材の片面に誘電体多層膜(V)を形成し、さらに基材のもう一方の面に誘電体多層膜(VI)を形成し、厚さ約0.216mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜(V)および(VI)の設計は、ソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表5の通りとしたこと以外は実施例1と同様の手順で行った。最適化を行った膜構成の一例を表6に示す。
得られた光学フィルターの垂直方向および垂直方向に対して30°の角度から測定した分光透過率を測定し、各波長領域における光学特性を評価した。結果を図8および表9に示す。
[実施例5]
実施例5では、両面に化合物(Z)を含む樹脂層(z)を有する樹脂製基板からなる基材を有し、波長820nm付近および波長950nm付近の近赤外線を透過させる光学フィルターを以下の手順および条件で作成した。
容器に、樹脂合成例1で得られた樹脂Aおよび塩化メチレンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。次いで、得られた溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂製基板を作成した。
樹脂組成物(1)の代わりに樹脂組成物(2)を用いたこと、乾燥後の厚みが5.0μmになるように製膜条件を調整したこと以外は実施例3と同様の手順で、得られた樹脂製基板の両面に樹脂層を形成し、両面に化合物(Z)を含む樹脂層(z)層を有する樹脂製基板からなる基材を得た。
続いて、実施例2と同様の手順で、得られた基材の両面に誘電体多層膜を形成し、厚さ約0.119mmの光学フィルターを得た。得られた光学フィルターの垂直方向および垂直方向に対して30°の角度から測定した分光透過率を測定し、各波長領域における光学特性を評価した。結果を表9に示す。
[実施例6]
実施例6では、樹脂製基板からなる基材を有し、波長860nm付近および波長1030nm付近の近赤外線を透過させる光学フィルターを以下の手順および条件で作成した。
実施例3において、化合物(Z)として、化合物(a−1)0.20部、化合物(a−3)0.15部、下記式(a−4)で表される化合物(a−4)(ジクロロメタン中での吸収極大波長776nm)0.10部、および下記式(a−5)で表される化合物(a−5)(ジクロロメタン中での吸収極大波長933nm)0.10部を用いたこと以外は、実施例3と同様の手順および条件で化合物(Z)および化合物(S)を含む樹脂製基板の両面に樹脂層を有する基材を得た。この基材の分光透過率の測定結果を図9に示す。
続いて、誘電体多層膜の設計(層数および各層の厚み)が異なること以外は実施例2と同様の手順で得られた基材の片面に誘電体多層膜(VII)を形成し、さらに基材のもう一方の面に誘電体多層膜(VIII)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜(VII)および(VIII)の設計は、ソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表7の通りとしたこと以外は実施例1と同様の手順で行った。最適化を行った膜構成の一例を表8に示す。
得られた光学フィルターの垂直方向および垂直方向に対して30°の角度から測定した分光透過率を測定し、各波長領域における光学特性を評価した。結果を図10および表9に示す。
[実施例7〜9]
実施例2において、樹脂を表9のように変更したこと以外は実施例2と同様にして基材および光学フィルターを作成した。得られた光学フィルターの光学特性を表9に示す。
[比較例1]
実施例1において、化合物(Z)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして基材および光学フィルターを作成した。得られた光学フィルターの光学特性を図11および表9に示す。なお、比較例1の光学フィルターは、近赤外波長領域に単一の透過帯しか有さなかったので、Za,Zb,Zc,ZdおよびZeを定めることができなかった。
[比較例2]
化合物(Z)を用いなかったこと以外は実施例2と同様にして基材および光学フィルターを作成した。得られた光学フィルターの光学特性を図12および表9に示す。なお、比較例2の光学フィルターは、近赤外波長領域に単一の透過帯しか有さなかったので、Za,Zb,Zc,ZdをZeを定めることができなかった。
表9における基材の構成、各種化合物などに関する記号等の内容は、下記の通りである。
<基材の形態>
形態(1):化合物(Z)を含む樹脂製基板からなる形態
形態(2):化合物(Z)を含む樹脂製基板の両面に樹脂層を有する形態
形態(3):ガラス基板の片方の面に化合物(Z)含む樹脂層(z)を有する形態
形態(4):樹脂製基板の両面に化合物(Z)を含む樹脂層(z)を有する形態
形態(5):化合物(Z)を含まない樹脂製基板からなる形態
形態(6):化合物(Z)を含まず化合物(S)を含む樹脂製基板の両面に樹脂層を有する形態
<樹脂>
樹脂A:環状オレフィン系樹脂(樹脂合成例1、ガラス転移温度165℃)
樹脂B:芳香族ポリエーテル系樹脂(樹脂合成例2、ガラス転移温度285℃)
樹脂C:ポリイミド系樹脂(樹脂合成例3、ガラス転移温度310℃)
樹脂D:環状オレフィン系樹脂「ゼオノア 1420R」(日本ゼオン(株)製、ガラス転移温度136℃)
<ガラス基板>
ガラス基板(1):縦60mm、横60mmの大きさにカットした透明ガラス基板「OA−10G(厚み200μm)」(日本電気硝子(株)製)
<化合物(Z)>
a−1:式(a−1)で表わされる化合物(a−1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長738nm)
a−2:式(a−2)で表わされる化合物(a−2)(ジクロロメタン中での吸収極大波長882nm)
a−3:式(a−3)で表わされる化合物(a−3)(ジクロロメタン中での吸収極大波長704nm)
a−4:式(a−4)で表わされる化合物(a−4)(ジクロロメタン中での吸収極大波長776nm)
a−5:式(a−5)で表わされる化合物(a−5)(ジクロロメタン中での吸収極大波長933nm)
<化合物(S)>
s−1:式(s−1)で表わされる化合物(s−1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長429nm)
s−2:式(s−2)で表わされる化合物(s−2)(ジクロロメタン中での吸収極大波長550nm)
s−3:式(s−3)で表わされる化合物(s−3)(ジクロロメタン中での吸収極大波長606nm)
<溶媒>
溶媒(1):塩化メチレン
溶媒(2):N,N−ジメチルアセトアミド
溶媒(3):シクロヘキサン/キシレン(質量比:7/3)
また、表9における、実施例および比較例の樹脂製基板の乾燥条件は以下の通りである。なお、減圧乾燥前に、塗膜をガラス板から剥離した。
<樹脂製基板の乾燥条件>
条件(1):20℃/8hr→減圧下100℃/8hr
条件(2):60℃/8hr→80℃/8hr→減圧下140℃/8hr
条件(3):60℃/8hr→80℃/8hr→減圧下100℃/24hr
1,1’・・・光
2・・・光学フィルター
3・・・分光光度計
100・・・光学フィルター
102・・・基材
104・・・誘電体多層膜
106・・・反射防止膜
108・・・化合物(Z)を含む樹脂製基板
110・・・支持体
112・・・樹脂層

Claims (12)

  1. 波長700〜1000nmの領域に吸収極大を有する化合物(Z)を含有する樹脂層と、誘電体多層膜とを有し、近赤外線領域に二つ以上の異なる透過帯域を有し、かつ、可視光線を遮断する光学フィルター。
  2. さらに下記要件(a)および(b)を満たす、請求項1に記載の光学フィルター:
    (a)波長380〜700nmの領域において、光学フィルターの面方向に対して垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が5%以下である;
    (b)波長700〜1200nmの領域に、光線阻止帯(Za)、光線透過帯(Zb)、光線阻止帯(Zc)、光線透過帯(Zd)および光線阻止帯(Ze)を有し、それぞれの帯域の中心波長がZa<Zb<Zc<Zd<Zeである。
  3. さらに下記要件(c)を満たす、請求項1または2に記載の光学フィルター:
    (c)前記光線透過帯(Zb)において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の透過率が15%となる、最も短波長側の波長の値をXa(nm)とし、最も長波長側の波長の値をXb(nm)としたとき、Y1=(Xa+Xb)/2で表されるY1の値が750〜950nmである。
  4. さらに下記要件(d)を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルター:
    (d)前記光線透過帯(Zd)において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の透過率が20%となる、最も短波長側の波長の値をXc(nm)とし、最も長波長側の波長の値をXd(nm)としたとき、Y2=(Xc+Xd)/2で表されるY2の値が900〜1200nmである。
  5. 前記化合物(Z)が、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、ピロロピロール系化合物、ヘキサフィリン系化合物、シアニン系化合物およびボロンジピロメテン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルター。
  6. 前記化合物(Z)が、吸収極大波長が異なる2種以上の化合物を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルター。
  7. 前記化合物(Z)が、波長700〜850nmの領域に吸収極大を有する化合物(Z1)1種以上と、波長851〜1000nmの領域に吸収極大を有する化合物(Z2)1種以上とを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルター。
  8. 前記化合物(Z1)の中で最も吸収極大波長が長波長側のものと、前記化合物(Z2)の中で最も吸収極大波長が短波長側のものとの吸収極大波長の差が80〜240nmである、請求項7に記載の光学フィルター。
  9. 波長350〜699nmの領域に吸収極大を有する化合物(S)をさらに含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学フィルター。
  10. 前記樹脂層を構成する樹脂が、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の光学フィルター。
  11. 光学センサー装置用であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルター。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する光学センサー装置。
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