JP2022165848A - 光学フィルターおよび光学センサー装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】光学センサー装置が設けられる機器の低背化に伴い、入射角度が大きくなった場合でも特定波長(例えば680nm付近)の可視光線ないし近赤外線に対する優れた透過特性と該特定波長より短い波長の可視光線に対する優れたカット特性とを両立可能な光学フィルターを提供すること。【解決手段】波長400~650nmの領域に吸収極大を有する化合物(Z)を含有する樹脂層を含む基材(i)を有し、かつ、下記要件(a)および(b)を満たす光学フィルター:(a)波長670~750nmの領域中に光線透過帯(Za)を有し、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の光線透過帯(Za)の最大透過率が60%以上である;(b)波長400~600nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の最大透過率が10%未満である。【選択図】なし

Description

本発明は、光学フィルターおよび光学センサー装置に関する。より詳しくは、特定波長の可視光線ないし近赤外線を透過し、該光線より短波長の可視光線をカットする光学フィルターおよび該光学フィルターを用いた光学センサー装置に関する。
近年、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル機器等のモバイル情報端末装置への用途として、近赤外線を用いた各種光学センサー装置の開発が進められている。情報端末装置において、光学センサー装置は様々な用途で適用が検討されており、一例としては、距離測定などの空間認識用途、モーション認識用途、虹彩認証や白目の静脈認証、顔認証などのセキュリティ用途、脈拍測定や血中酸素濃度測定などのヘルスケア用途が挙げられる。
近赤外線を用いた光学センサー装置において、センシング機能を精度よく働かせるためには不要となる波長の光、特に可視光線をカットすることが重要である。また、センシングに用いる近赤外線の波長によっては、これよりも短い波長の近赤外線をカットする(例えば、850nm付近の近赤外線をセンシングに用いる場合は可視光線に加えて780nm付近までの近赤外線をカット)ことで使用時のノイズを低減でき、光学センサー装置の特性を向上させることができる。なお、特定の波長領域の光線(例えば680nm付近の可視光線)をセンシングに用いる場合も同様に、前記特定の波長領域よりも短い波長の光線をカットすることで、光学センサー装置の特性を向上させることができる。
一方、モバイル情報端末装置は低背化が進み、光の入射窓から光学センサーまでの距離が短くなるため、従来以上に斜め方向からの入射光の割合が増加することになる。センサー精度を向上させるためには斜め方向からの入射光に対しても光学センサーに到達する光の分光特性(特に可視光線や不要な波長の近赤外線のカット特性)が変化しないことが要求されている。
可視光線をカットし、特定波長の近赤外線を透過させる手段として、ガラス基板上に高屈折率材料と低屈折率材料を交互に積層したバンドパスフィルターが開示されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、このような多層薄膜を形成した光学フィルターは、入射光の入射角度によって光学特性が大きく変化する。そのため、モバイル情報端末装置用途に用いた場合、光学センサーの検出精度が低下するという問題がある。
一方、入射角度によらず可視光線をカットできる光学フィルターとして、金属系の着色成分を有するガラス製フィルター(例えば特許文献2参照)および着色顔料を含むフィルター(例えば特許文献3参照)が知られている。これらはいずれも吸収により可視光線をカットしており入射角度による光学特性変化は小さいが、十分な光線カット特性を達成するために1.0mm程度の厚みが必要であり、近年急速に小型化・軽量化が進むモバイル情報端末用途では好適に使用できない場合があった。また、これらのフィルターで薄型化を行うと、吸収による光線カット性能が大幅に低下し、センシング時のノイズが増えてしまうといった問題がある。さらに、これらのフィルターでは、センシングに用いる光線の波長が、これまでの主流であった800nm以上ではなく680nm付近である場合に、これよりも短い波長の光線のカット特性が不十分な場合がある上、特に着色顔料を含む光学フィルターでは吸収スペクトルの傾きが緩く、光線カットと光線透過のコントラストが低くなる(センシング時のノイズが多くなる)傾向がある。
なお、本出願人は、薄型化と入射角度によらず可視光線カットと赤外線透過の高いコントラストを両立可能な光学フィルターとして、波長850nm付近の近赤外線を用いたセンシングに適した光学フィルターを提案している(特許文献4参照)が、該フィルムでは波長850nmよりも短い特定の波長(例えば680nm付近)の光線を用いたセンシングでは精密なセンシングができないという問題があった。すなわち、特許文献4のように波長700~930nmに吸収極大をもつ色素を使うとシグナル光が吸収されてしまい、十分なシグナルが得られないといった問題があった。
特開2015-184627号公報 特開平07-126036号公報 特開昭60-139757号公報 国際公開第2017/213047号
本発明は、光学センサー装置が設けられる機器の低背化に伴い、入射角度が大きくなった場合でも特定波長(例えば680nm付近)の可視光線ないし近赤外線に対する優れた透過特性と該特定波長より短い波長の可視光線に対する優れたカット特性とを両立可能な光学フィルターを提供することを課題の一つとする。
[1] 波長400~650nmの領域に吸収極大を有する化合物(Z)を含有する樹脂層を含む基材(i)を有し、かつ、下記要件(a)および(b)を満たす光学フィルター:
(a)波長670~750nmの領域中に光線透過帯(Za)を有し、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の光線透過帯(Za)の最大透過率が60%以上である;
(b)波長400~600nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の最大透過率が10%未満である。
[2] 下記要件(c)をさらに満たすことを特徴とする項[1]に記載の光学フィルター:
(c)波長610~720nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Xa)と、波長630~740nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる最も短い波長(Xb)との差の絶対値|Xb-Xa|が40nm以下である。
[3] 厚みが30~150μmの範囲であることを特徴とする項[1]または[2]に記載の光学フィルター。
[4] 前記化合物(Z)が、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、メロシアニン系化合物、シアニン系化合物、メチン系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物、ポルフィリン系化合物、トリアリールメタン系化合物、サブフタロシアニン系化合物、リレン系化合物、セミスクアリリウム系化合物、スチリル系化合物、フェナジン系化合物、ピリドメテン-ホウ素錯体系化合物、ピラジン-ホウ素錯体系化合物、ピリドンアゾ系化合物、キサンテン系化合物およびボロンジピロメテン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする項[1]~[3]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[5] 前記樹脂層が、前記化合物(Z)を2種以上含有することを特徴とする項[1]~[4]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[6] 前記樹脂層に含有される2種以上の化合物(Z)の中で、波長400~650nmの領域にある吸収極大が最も長波長側にある化合物が、スクアリリウム系化合物またはトリアリールメタン系化合物であることを特徴とする項[5]に記載の光学フィルター。
[7] 前記基材(i)の少なくとも一方の面に形成された誘電体多層膜をさらに有する項[1]~[6]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[8] 光学センサー装置用であることを特徴とする項[1]~[7]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[9] 項[1]~[8]のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する光学センサー装置。
本発明の光学フィルターは、特定波長(例えば680nm付近)の可視光線ないし近赤外線に対する優れた透過特性と該特定波長よりも短い波長の可視光線に対する優れたカット特性とを有し、斜め方向から光線が入射した際も光学特性変化が少ないため、光学センサー用途に好適に用いられる。
本発明の光学フィルターの態様例を説明する図である。 本発明の光学フィルターを構成する基材の態様例を説明する図である。 透過スペクトルを、(A)光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率、及び(B)光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率を測定する態様を説明する図である。 実施例1で作成した基材の分光透過率を示すグラフである。 実施例6で作成した光学フィルターの分光透過率を示すグラフである。 実施例7で作成した光学フィルターの分光透過率を示すグラフである。
以下、本発明に係る光学フィルターの実施形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付し又は類似の符号(数字の後にa、bなどを付しただけの符号)を付し、詳細な説明を適宜省略することがある。
本明細書中において「上」とは、支持基板の主面(固体撮像素子を配置する面)を基準とした相対的な位置を指し、支持基板の主面から離れる方向が「上」である。本図面では、紙面に向かって上方が「上」となっている。また、「上」には、物体の上に接する場合(つまり「on」の場合)と、物体の上方に位置する場合(つまり「over」の場合)とが含まれる。逆に、「下」とは、支持基板の主面を基準とした相対的な位置を指し、支持基板の主面に近づく方向が「下」である。本図面では、紙面に向かって下方が「下」となっている。
[光学フィルター]
本発明に係る光学フィルターは、波長400~650nmの領域に吸収極大を有する化合物(Z)を含有する樹脂層を含む基材(i)を有し、かつ、下記(a)および(b)の要件を満たす。なお、本発明の光学フィルターにおいて、前記基材(i)に含まれる樹脂層は、波長700~930nmの領域に吸収極大を有する化合物を含有しないことが好ましい。この点において、本発明は特許文献4の発明と明確に異なる。
要件(a);波長670~750nmの領域中に光線透過帯(Za)を有し、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の光線透過帯(Za)の最大透過率(以下「最大透過率(Td)」ともいう。)が60%以上である。
光線透過帯(Za)は、波長670~750nmの領域において、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が40%以上の波長帯域であり、かつ、下記条件(1)および(2)を満たす波長帯域のことを指す。
(1)光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が、短波長側から長波長側に向かって40%未満から40%以上になる最も短い波長(Za1)以上の長波長側に存在する。
(2)幅が5nm以上である。
光線透過帯(Za)の幅は好ましくは10nm以上、さらに好ましくは25nm以上、特に好ましくは50nm以上である。同一の光学フィルターにおいて複数の光線透過帯(Za)が存在していてもよく、そのうちの一つは前記波長(Za1)から直接連続する波長帯域であることが好ましい。光線透過帯(Za)における平均透過率は、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
光線透過帯(Za)は、前記条件(1)および(2)を満たしていれば、750nm超の波長帯域でも透過率が40%以上となっていてもよい。また、光線透過帯(Za)以上の波長領域で、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が、短波長側から長波長側に向かって40%以上から40%未満となる最も短い波長(Za2)が存在してもよい。後者であれば、光線透過帯(Za)よりも長波長側の不要な近赤外線を効率的にカットできるため、光学フィルターの特性としてより好ましい。
前記最大透過率(Td)は、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、特に好ましくは80%以上である。前記最大透過率(Td)がこの範囲にあると、センシングに必要な光線を効率よく取り込むことができ、良好なセンシング性能を達成できる。
要件(b); 波長400~600nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の最大透過率(Te)が10%未満である。
前記要件(b)における最大透過率は、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下である。前記最大透過率がこの範囲にあると、センシングに不要な可視光線を効率よくカットすることができ、ノイズが少ない優れたセンシング性能を達成できる。
本発明の光学フィルターは、下記要件(c)をさらに満たすことが好ましい。
要件(c);波長610~720nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Xa)と、波長630~740nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる最も短い波長(Xb)との差の絶対値|Xb-Xa|が40nm以下である。
前記波長(Xa)は、好ましくは610~720nm、さらに好ましくは620~710nm、特に好ましくは630~700nmである。前記波長(Xa)が前記範囲にあると、赤色光を光源に適用できるため好ましい。
前記絶対値|Xb-Xa|は、好ましくは40nm以下、より好ましくは35nm以下、さらに好ましくは30nm以下、特に好ましくは1~25nmである。前記絶対値|Xb-Xa|が前記範囲にあると、光線が斜め方向から入射した際も光学フィルターの光学特性変化が小さく、ノイズが少ない優れたセンシング性能を達成できる。このような光学フィルターは、特に情報端末装置のような低背化が要求される光学センサー用途で好適に用いることができる。
本発明の光学フィルターは、前記基材(i)の少なくとも一方の面に形成された誘電体多層膜を有していてもよく、また、誘電体多層膜を有していなくてもよい。
図1(A)~(D)に、本発明の光学フィルターの実施形態の例を示す。
図1(A)に示す光学フィルター100aは、基材102の片方の面に誘電体多層膜104を有する。誘電体多層膜104は、基材(i)の光学特性に応じて、可視域および一部の近赤外線を反射する特性を有する波長選択反射膜、可視域~光線透過帯(Za)の光線反射を抑制する反射防止膜、光線透過帯(Za)よりも長波長側の近赤外線を反射する近赤外線反射膜から適宜選択することができる。例えば、基材(i)が十分な可視光カット性能を有する場合は、可視域を反射させる誘電体多層膜(鏡のような外観となる)を用いなくても使用上問題ない場合があり、可視域の光線反射を抑制する誘電体多層膜の方が意匠上好まれる場合がある(黒色の外観を保つことができる)。また、図1(B)は、基材102の両面に誘電体多層膜104を有する光学フィルター100bを示す。このように、誘電体多層膜は基材の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合、高い強度を有し、反りやねじれが生じにくい光学フィルターを得ることができる。光学フィルターを光学センサー装置用途に適用する場合、光学フィルターの反りやねじれが小さい方が好ましいことから、誘電体多層膜を基材の両面に設けることが好ましい。
誘電体多層膜104は、垂直方向に対して5°の角度から入射された光のうち、センシングに用いる波長領域以外の光に対して反射特性を有することが好ましい。例えば、センシングに680nm付近の光を利用する場合、400~580nm付近と780~1150nm付近に反射特性を有することが好ましく、380~610nm付近と750~1200nm付近に反射特性を有することが特に好ましい。ただし、光学センサー装置の構成によってはセンシングに用いる波長領域よりも長波長側の光を別の光学フィルター(例えば、Shortwave Pass Filter など)でカットする場合があり、このような構成のセンサーに本発明の光学フィルターを適用する場合、誘電体多層膜104は必ずしもセンシングに用いる波長領域よりも長波長側の光に対する反射特性を有する必要はない。
基材102の両面に誘電体多層膜を有する形態として、例えば、図1(B)に示す(B-1)~(B-3)の形態が挙げられる 。
(B-1)は、光学フィルター(又は基材)の垂直方向に対して5°の角度から測定した場合にセンシングに用いる波長領域よりも短波長側(以下「波長領域1」ともいう。)に主に反射特性を有する第1誘電体多層膜104aを基材102の片面に設け、基材102の他方の面上に、光学フィルター(又は基材)の垂直方向に対して5°の角度から測定した場合にセンシングに用いる波長領域よりも長波長側(以下「波長領域2」ともいう。)に主に反射特性を有する第2誘電体多層膜104bを有する形態である。
(B-2)は、前記第1誘電体多層膜104aを基材102の両面に設ける形態である。
(B-3)は、光学フィルター(又は基材)の垂直方向に対して5°の角度から測定した場合に前記波長領域1のうち550nm以下の波長領域に主に反射特性を有する第3誘電体多層膜104cを基材102の片面に設け、基材102の他方の面上に光学フィルター(又は基材)の垂直方向に対して5°の角度から測定した場合に前記波長領域1のうち550nm以上の波長領域に主に反射特性を有する第4誘電体多層膜104dを有する形態である。
また、図1(C)に示す光学フィルター100cは、光学フィルター(又は基材)の垂直方向に対して5°の角度から測定した場合に可視域および一部の近赤外線、具体的にはセンシングに用いる波長領域以外に主に反射特性を有する誘電体多層膜104を基材102の片面に設け、基材102の他方の面上にセンシングに用いる波長領域の反射防止特性を有する反射防止膜106を有する形態である。基材がセンシングに用いる波長領域よりも短波長側全域(例えば、380~580nmの波長領域)に十分な吸収特性を有する場合は、光学フィルター(又は基材)の垂直方向に対して5°の角度から測定した場合に波長領域2に主に反射特性を有する第2誘電体多層膜104bを基材102の片面に設け、基材102の他方の面上にセンシングに用いる波長領域の反射防止特性を有する反射防止膜106を有する形態をとることもできる。基材に対して誘電体多層膜と反射防止膜とを組み合わせることで、センシングに用いる波長領域の透過率を高めつつセンシングに不要な光を反射することができる。
また、図1(D)に示す光学フィルター100dは、光学フィルター(又は基材)の両面に可視光領域およびセンシングに用いる波長領域の反射防止特性を有する反射防止膜106aを有する形態である。基材(i)が、センシングに用いる波長領域以外の可視光領域に十分な吸収特性を有する場合、誘電体多層膜は必ずしも可視領域に反射特性を有する必要はなく、可視光領域およびセンシングに用いる波長領域のいずれにも反射防止特性を有する誘電体多層膜を好適に使用することができる。
光学フィルターの厚みは、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、近年の情報端末の薄型化、軽量化等の流れを考慮すると薄いことが好ましい。特に、光学センサー装置用途では良好な光学特性(センシング光透過特性、不要光カット特性)と薄型化を両立することは非常に重要であり、本発明の光学フィルターを適用することで従来品では達成不可能なレベルでこれらの特性を両立することができる。
本発明の光学フィルターの厚みは、好ましくは30~150μm、より好ましくは35~140μm、さらに好ましくは40~130μm、特に好ましくは45~120μmである。
[基材]
図2(A)~(C)は、前記基材(i)の構成例を示す。基材(i)102は、波長400~650nmの領域に吸収極大を有する化合物(Z)を含有する樹脂層を含めばよく、単層であっても多層であってもよい。
以下、化合物(Z)および透明樹脂を含有する樹脂層を「透明樹脂層」ともいい、それ以外の樹脂層を単に「樹脂層」ともいう。
図2(A)は、化合物(Z)を含有する樹脂製基板(ii)108からなる単層構造の基材(i)102aを示す。この樹脂製基板(ii)が前述の透明樹脂層に相当する。図2(B)は、多層構造の基材(i)102bを示し、その態様としては、例えば、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などの支持体110上に化合物(Z)を含有する硬化性樹脂または熱可塑性樹脂からなるオーバーコート層などの透明樹脂層112が積層された構成などが挙げられる。なお、透明樹脂層112に相当する層は、支持体110の両面に設けられていてもよい。図2(C)は、化合物(Z)を含有する樹脂製基板(ii)108上に、化合物(Z)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層112が積層された基材(i)102cを示す。
ガラス支持体を有する場合、基材(i)の強度と近赤外線波長領域における透過率との観点から、ガラス支持体は吸収剤を含まない無色透明のガラス基板であることが好ましい。吸収剤として銅を含むフツリン酸塩ガラスなどでは基材強度が低下する傾向があるとともに、波長680nm付近の透過率が低下しセンシングを感度良く実施できない場合がある。
樹脂製支持体を有する場合、光学特性調整の容易性、さらに、樹脂製支持体の傷消し効果を達成できることや基材の耐傷性向上等の点から、樹脂製支持体の両面に硬化性樹脂または熱可塑性樹脂からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層され、当該樹脂層の少なくとも一方が化合物(Z)を含む形態であることが特に好ましい。
前記基材(i)としては、化合物(Z)を含有する樹脂製基板(ii)を含むことが特に好ましい。このような基材(i)を用いると薄型化と割れにくさを両立させることができ、光学センサー装置用途で好適に使用することができる。
前記基材(i)は、下記条件(i-1)~(i-3)の少なくとも一つを満たすことが望ましい。
(i-1)波長400~600nmの領域において、前記基材(i)の垂直方向から測定した最も高い透過率(Ta)は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
(i-2)波長400nm以上の領域において、前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%未満から50%以上となる最も短い波長(Xf) は、好ましくは610~740nm、より好ましくは620~730nm、さらに好ましくは630~720nm、特に好ましくは640~710nmである。
(i-3)波長670~750nmの領域において、前記基材(i)の垂直方向から測定した最も高い透過率(Tb)は好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
前記基材(i)の前記透過率(Ta)、前記波長(Xf)および前記透過率(Tb)が前記のような範囲にあれば、センシングに用いる波長領域で十分な透過率を確保した上で付近の波長領域の不要な光線を選択的に効率よくカットすることができ、センシング用光線S/N比を向上できるとともに、基材(i)上に誘電体多層膜を形成した際、光線透過帯(Za)における短波長側の光学特性の入射角依存性を低減することができる。
前記基材(i)の厚みは、基材強度と薄型化を両立できるように選択することが望ましく、好ましくは30~150μm、より好ましくは35~140μm、さらに好ましくは40~130μm、特に好ましくは45~120μmである。前記基材(i)の厚みが前記範囲にあると、該基材(i)を用いた光学フィルターを薄型化および軽量化することができ、特にモバイル機器に搭載する光学センサー装置等の様々な用途に好適に用いることができる。
<化合物(Z)>
化合物(Z)は、波長400~650nmの領域に吸収極大を有すれば特に制限されないが、溶剤可溶型の色素化合物であることが好ましく、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、メロシアニン系化合物、シアニン系化合物、メチン系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物、ポルフィリン系化合物、トリアリールメタン系化合物、サブフタロシアニン系化合物、リレン系化合物、セミスクアリリウム系化合物、スチリル系化合物、フェナジン系化合物、ピリドメテン-ホウ素錯体系化合物、ピラジン-ホウ素錯体系化合物、ピリドンアゾ系化合物、キサンテン系化合物およびボロンジピロメテン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、2種以上であることがさらに好ましい。前記透明樹脂層に含有される2種以上の化合物(Z)の中で、波長400~650nmの領域にある吸収極大が最も長波長側にある化合物は、スクアリリウム系化合物またはトリアリールメタン系化合物であることが好ましい。
化合物(Z)の吸収極大波長は400~650nmであり、好ましくは450~640nm、さらに好ましくは500~630nmである。化合物(Z)の吸収極大波長がこのような範囲にあると、センシングに有用な波長の光を透過させつつ不要な光線をカットすることができ、光線透過帯の入射角依存性を低減させることができる。
≪スクアリリウム系化合物≫
前記スクアリリウム系化合物としては特に制限されないが、極大吸収波長を前記範囲に有する化合物が好ましい。このようなスクアリリウム系化合物としては、例えば、下記式(Z1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2022165848000001
式(Z1)のR1~R5はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-C(O)Ri基、-NRgh基、-SRi基、-SO2i基、-OSO2i基または下記La~Lhのいずれかを表し、RgおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかを表し、Riは、下記La~Lhのいずれかを表し、
(La)炭素数1~12の脂肪族炭化水素基
(Lb)炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基
(Lc)炭素数3~14の脂環式炭化水素基
(Ld)炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(Le)炭素数3~14の複素環基
(Lf)炭素数1~12のアルコキシ基
(Lg)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のアシル基
(Lh)置換基Lを有してもよい炭素数2~12のアルコキシカルボニル基
置換基Lは、前記La~Leより選ばれる少なくとも1種であり、R1~R6は互いに置換基Lを介して連結してもよい。
前記R1~R5としてはそれぞれ独立に、好ましくは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、N-メチルアセチルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、tert-ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基、n-ブチルスルホニル基、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基であり、より好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、水酸基、ジメチルアミノ基、メトキシ基、エトキシ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、tert-ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基、メチルチオ基、エチルチオ基である。
≪トリアリールメタン系化合物≫
前記トリアリールメタン系化合物としては特に制限されないが、極大吸収波長を前記範囲に有する化合物が好ましい。このようなトリアリールメタン系化合物としては、例えば、下記式(Z2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2022165848000002
式(Z2)のR1~R6はそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかを表し、R7~R18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-NRgh基、-SRi基、-SO2i基、-OSO2i基または下記La~Lhのいずれかを表し、RgおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかを表し、Riは、下記La~Lhのいずれかを表し、
(La)炭素数1~12の脂肪族炭化水素基
(Lb)炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基
(Lc)炭素数3~14の脂環式炭化水素基
(Ld)炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(Le)炭素数3~14の複素環基
(Lf)炭素数1~12のアルコキシ基
(Lg)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のアシル基
(Lh)置換基Lを有してもよい炭素数2~12のアルコキシカルボニル基
置換基Lは、前記La~Leより選ばれる少なくとも1種であり、R1~R18は互いに置換基Lを介して連結してもよい。
前記R1~R6としては、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基である。
前記R7~R18としてはそれぞれ独立に、好ましくは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、N-メチルアセチルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、tert-ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基、n-ブチルスルホニル基、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基であり、より好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、水酸基、ジメチルアミノ基、メトキシ基、エトキシ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、tert-ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基、メチルチオ基、エチルチオ基である。
式(Z2)のX-は、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、硫酸水素イオン、硫酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、メチルスルホン酸イオン、トリフルオロメチルスルホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロフェニルスルホニル)イミドイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオンのいずれかを表す。
化合物(Z)の市販品としては、一般的な可視吸収染料や可視吸収顔料を挙げることができるが、可視吸収染料の方が可視光カット効率に優れる傾向にあり好ましい。化合物(Z)の市販品は、波長400~650nmの領域に吸収極大を持てば特に限定されないが、例えば、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー16、C.I.ソルベントイエロー21、C.I.ソルベントイエロー61、C.I.ソルベントイエロー81、C.I.ディスパースオレンジ3、C.I.ディスパースオレンジ11、C.I.ディスパースオレンジ35、C.I.ディスパースオレンジ37、C.I.ディスパースオレンジ47、C.I.ディスパースオレンジ61、C.I.ソルベントレッド1、C.I.ソルベントレッド2、C.I.ソルベントレッド8、C.I.ソルベントレッド12、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド23、C.I.ソルベントレッド24、C.I.ソルベントレッド27、C.I.ソルベントレッド31、C.I.ソルベントレッド83、C.I.ソルベントレッド84、C.I.ソルベントレッド121、C.I.ソルベントレッド132、C.I.ソルベントバイオレット21、C.I.ソルベントブラック3、C.I.ソルベントブラック4、C.I.ソルベントブラック21、C.I.ソルベントブラック23、C.I.ソルベントブラック27、C.I.ソルベントブラック28、C.I.ソルベントブラック31、C.I.ソルベントオレンジ7、C.I.ソルベントオレンジ9、C.I.ソルベントオレンジ37、C.I.ソルベントオレンジ40、C.I.ソルベントオレンジ45、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ソルベントレッド111、C.I.ソルベントレッド149、C.I.ソルベントレッド150、C.I.ソルベントレッド151、C.I.ソルベントレッド168、C.I.ソルベントレッド191、C.I.ソルベントレッド207、C.I.ソルベントブルー7、C.I.ソルベントブルー35、C.I.ソルベントブルー36、C.I.ソルベントブルー63、C.I.ソルベントブルー78、C.I.ソルベントブルー83、C.I.ソルベントブルー87、C.I.ソルベントブルー94、C.I.ソルベントブルー97、C.I.ソルベントグリーン3、C.I.ソルベントグリーン20、C.I.ソルベントグリーン28、C.I.ソルベントバイオレット13、C.I.ソルベントバイオレット14、C.I.ソルベントバイオレット36、C.I.ソルベントオレンジ60、C.I.ソルベントオレンジ78、C.I.ソルベントオレンジ90、C.I.ソルベントバイオレット29、C.I.ソルベントレッド135、C.I.ソルベントレッド162、C.I.ソルベントオレンジ179、C.I.ソルベントグリーン5、C.I.ソルベントオレンジ55、C.I.バットレッド15、C.I.バットオレンジ7、C.I.ソルベントオレンジ80、C.I.ソルベントイエロー93、C.I.ソルベントイエロー33、C.I.ソルベントイエロー98、C.I.ソルベントイエロー157、C.I.ソルベントブラック5、C.I.ソルベントブラック7などが挙げられる。
化合物(Z)の含有量は、前記基材(i)として、例えば、化合物(Z)を含有する透明樹脂製基板(ii)からなる基材や、樹脂製基板(ii)上に硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された基材を用いる場合には、透明樹脂100質量部に対して、好ましくは0.10~5.0質量部、より好ましくは0.25~3.5質量部、特に好ましくは0.50~2.0質量部であり、前記基材(i)として、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体に、化合物(Z)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層が積層された基材を用いる場合には、化合物(Z)を含む透明樹脂層を形成する透明樹脂100質量部に対して、好ましくは1.0~30.0質量部、より好ましくは2.0~25.0質量部、特に好ましくは3.0~20.0質量部である。化合物(Z)の含有量が前記範囲内にあると、良好な近赤外線吸収特性を達成することができる。
<透明樹脂>
樹脂製支持体やガラス支持体などに積層する透明樹脂層および前記樹脂製基板(ii)は、透明樹脂を用いて形成することができる。このような透明樹脂としては、1種単独でもよいし、2種以上でもよい。
透明樹脂としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されないが、例えば、熱安定性およびフィルムへの成形性を確保し、かつ、100℃以上の蒸着温度で行う高温蒸着により誘電体多層膜を形成しうるフィルムとするため、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110~380℃、より好ましくは115~370℃、さらに好ましくは120~360℃、特に好ましくは130~300℃である樹脂が挙げられる。前記樹脂のガラス転移温度が上記範囲にあると、樹脂製基板とした際に誘電体多層膜をより高温で蒸着形成することができ、クラック耐性や耐候性に優れた光学フィルターを得ることができる。
前記透明樹脂が化合物(Z)を含有する樹脂製基板(ii)を構成する樹脂として使用される場合、樹脂製基板(ii)のガラス転移温度と樹脂製基板(ii)に含有される樹脂のガラス転移温度との差は、好ましくは0~10℃、より好ましくは0~8℃、さらに好ましくは0~5℃である。化合物(Z)は樹脂層の可塑剤として作用する場合が有るが、化合物(Z)の種類や添加量を適切に選択することにより樹脂製基板(ii)のガラス転移温度低下を低減することができ、耐熱性やクラック耐性に優れた光学フィルターが得られる。
透明樹脂としては、当該樹脂からなる厚さ0.1mmの樹脂板を形成した場合に、この樹脂板の全光線透過率(JISK7105)が、好ましくは75~95%、さらに好ましくは78~95%、特に好ましくは80~95%となる樹脂を用いることができる。全光線透過率がこのような範囲となる樹脂を用いれば、得られる基板は光学フィルムとして良好な透明性を示す。
透明樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常15,000~350,000、好ましくは30,000~250,000であり、数平均分子量(Mn)は、通常10,000~150,000、好ましくは20,000~100,000である。
透明樹脂としては、例えば、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(アラミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂を挙げることができる。
≪市販品≫
透明樹脂の市販品としては、以下の市販品等を挙げることができる。環状(ポリ)オレフィン系樹脂の市販品としては、JSR(株)製アートン、日本ゼオン(株)製ゼオノア、三井化学(株)製APEL、ポリプラスチックス(株)製TOPASなどを挙げることができる。ポリエーテルサルホン系樹脂の市販品としては、住友化学(株)製スミカエクセルPESなどを挙げることができる。ポリイミド系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製ネオプリムLなどを挙げることができる。ポリカーボネート系樹脂の市販品としては、帝人(株)製ピュアエースなどを挙げることができる。フルオレンポリカーボネート系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製ユピゼータEP-5000などを挙げることができる。フルオレンポリエステル系樹脂の市販品としては、大阪ガスケミカル(株)製OKP4HTなどを挙げることができる。アクリル系樹脂の市販品としては、(株)日本触媒製アクリビュアなどを挙げることができる。シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂の市販品としては、新日鐵化学(株)製シルプラスなどを挙げることができる。
<その他成分>
前記基材(i)は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他成分として、さらに酸化防止剤、近紫外線吸収剤、蛍光消光剤、金属錯体系化合物等の添加剤を含有してもよい。前記その他成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
近紫外線吸収剤としては、例えばアゾメチン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,2'-ジオキシ-3,3'-ジ-t-ブチル-5,5'-ジメチルジフェニルメタン、およびテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(2,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。
なお、これら添加剤は、基材を製造する際に、樹脂などとともに混合してもよいし、樹脂を合成する際に添加してもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるものであるが、樹脂100質量部に対して、通常0.01~5.0質量部、好ましくは0.05~2.0質量部である。
<基材(i)の製造方法>
基材(i)が、樹脂製基板(ii)を含む基材である場合、該樹脂製基板(ii)は、例えば、溶融成形またはキャスト成形により形成することができ、さらに、必要により、成形後に、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤をコーティングすることで、オーバーコート層が積層された基材を製造することができる。
基材(i)が、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体上に化合物(Z)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層が積層された基材である場合、例えば、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体に化合物(Z)を含む樹脂溶液を溶融成形またはキャスト成形することで、好ましくはスピンコート、スリットコート、インクジェットなどの方法にて塗工した後に溶媒を乾燥除去し、必要に応じてさらに光照射や加熱を行うことで、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体上に透明樹脂層が形成された基材(i)を製造することができる。
≪溶融成形≫
溶融成形としては、具体的には、樹脂と化合物(Z)とを溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法、樹脂と化合物(Z)とを含有する樹脂組成物を溶融成形する方法、または、化合物(Z)、樹脂および溶剤を含む樹脂組成物から溶剤を除去して得られたペレットを溶融成形する方法などが挙げられる。溶融成形方法としては、射出成形、溶融押出成形またはブロー成形などを挙げることができる。
≪キャスト成形≫
キャスト成形としては、化合物(Z)、樹脂および溶剤を含む樹脂組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶剤を除去する方法、または化合物(Z)、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂とを含む硬化性組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶媒を除去した後、紫外線照射や加熱などの適切な手法により硬化させる方法などにより製造することもできる。
基材(i)が、化合物(Z)を含有する樹脂製基板からなる基材である場合には、該基材(i)は、キャスト成形後、成形用支持体から塗膜を剥離することにより得ることができ、また、前記基材(i)が、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体等の支持体などの上に化合物(Z)を含有する硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの透明樹脂層が積層された基材である場合には、該基材(i)は、キャスト成形後、塗膜を剥離しないことで得ることができる。
[誘電体多層膜]
誘電体多層膜としては、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層したものが挙げられる。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率が通常は1.7~2.5の材料が選択される。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛または酸化インジウム等を主成分とし、酸化チタン、酸化錫および/または酸化セリウム等を少量(例えば、主成分に対して0~10質量%)含有させたものが挙げられる。
低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率が通常は1.2~1.6の材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムが挙げられる。
高屈折率材料層と低屈折率材料層とを積層する方法については、これらの材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はない。例えば、基材上に、直接、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法またはイオンプレーティング法等により、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することができる。
高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さは、通常、1~500nmであることが好ましく、さらに好ましくは2~450nm、特に好ましくは5~400nmである 。各層の厚さがこの範囲であると、製膜時の制御が容易である他、反射・屈折の光学的特性の関係から、特定波長の遮断・透過を容易にコントロールできる傾向にある。
誘電体多層膜における高屈折率材料層と低屈折率材料層との合計の積層数は、光学フィルター全体として8~120層であることが好ましく、12~110層であることがより好ましく、16~100層であることが特に好ましい。各層の厚み、光学フィルター全体としての誘電体多層膜の厚みや合計の積層数が前記範囲にあると、十分な製造マージンを確保できる上に、光学フィルターの反りや誘電体多層膜のクラックを低減することができる。
ここで、誘電体多層膜の設計を最適化するには、例えば、光学薄膜設計ソフト(例えば、EssentialMacleod、ThinFilmCenter社製)を用い、可視領域の光線カット特性と目的とする波長領域の光線透過特性を両立できるようにパラメーターを設定すればよい。例えば、センシングに680nm付近の光線を用いる場合、基材(i)の光学特性にもよるが、波長350~580nmの垂直方向から測定した場合の目標透過率を0%、TargetToleranceの値を1、波長650~710nmの垂直方向から測定した場合の目標透過率を100%、TargetToleranceの値を0.5、波長780~1200nmの垂直方向から測定した場合の目標透過率を100%、TargetToleranceの値を0.8として、センシングに用いる波長帯以外に反射特性を持つよう設計したパラメーター設定方法や、波長400~710nmの垂直方向から測定した場合の目標透過率を100%、TargetToleranceの値を0.5、波長780~1200nmの垂直方向から測定した場合の目標透過率を100%として、可視領域~センシングに用いる波長領域に反射防止効果を有し、センシングに用いる波長帯より長波長側に反射特性を持つよう設計したパラメーター設定方法などが挙げられる。これらのパラメーターは基材(i)の光学特性に合わせて波長範囲をさらに細かく区切り、設計を最適化する光線入射角度やTargetToleranceの値を変えることもできる。また、基材(i)の両面に誘電体多層膜を有する構成の場合、両面に同じ設計の誘電体多層膜を設けることも、両面に設計が異なる誘電体多層膜を設けることもできる。両面に設計が異なる誘電体多層膜を設ける場合では、例えば、基材(i)の片面に波長350~580nm付近をカットする誘電体多層膜を設け、他方の面に波長780~1200nm付近をカットする誘電体多層膜を設ける設計方法や、片面に波長400~710nmに反射防止効果を有する誘電体多層膜を設け、他方の面に波長780~1200nm付近をカットする誘電体多層膜を設ける設計方法などを挙げることができる。
[その他の機能膜]
本発明の光学フィルターは、本発明の効果を損なわない範囲において、基材と誘電体多層膜との間、基材の誘電体多層膜が設けられた面と反対側の面、または誘電体多層膜の基材が設けられた面と反対側の面に、基材や誘電体多層膜の表面硬度の向上、耐薬品性の向上、帯電防止および傷消しなどの目的で、反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を適宜設けることができる。
本発明の光学フィルターは、前述の機能膜からなる層を1層含んでもよく、2層以上含んでもよい。本発明の光学フィルターがこのような機能膜からなる層を2層以上含む場合には、同様の層を2層以上含んでもよいし、異なる層を2層以上含んでもよい。
このような機能膜を積層する方法としては、特に制限されないが、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤などを基材または誘電体多層膜に、前記と同様に溶融成形またはキャスト成形する方法等を挙げることができる。
また、コーティング剤などを含む硬化性組成物をバーコーター等で基材または誘電体多層膜上に塗布した後、紫外線照射等により硬化することによっても製造することができる。
コーティング剤としては、紫外線(UV)/電子線(EB)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などが挙げられ、具体的には、ビニル化合物類や、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系樹脂などが挙げられる。これらのコーティング剤を含む硬化性組成物としては、ビニル系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系硬化性組成物などが挙げられる。
また、硬化性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては、公知の光重合開始剤または熱重合開始剤を用いることができ、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化性組成物中、重合開始剤の配合割合は、硬化性組成物の全量を100質量%とした場合、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%である。重合開始剤の配合割合が前記範囲にあると、硬化性組成物の硬化特性および取り扱い性に優れ、所望の硬度を有する反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を得ることができる。
さらに、硬化性組成物には溶剤として有機溶剤を加えてもよく、有機溶剤としては、公知のものを使用することができる。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。これら溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
機能膜の厚さは、好ましくは0.1~20μm、さらに好ましくは0.5~10μm、特に好ましくは0.7~5μmである。
また、基材と機能膜および/または誘電体多層膜との密着性や、機能膜と誘電体多層膜との密着性を上げる目的で、基材、機能膜または誘電体多層膜の表面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
[光学フィルターの用途]
本発明の光学フィルターは、優れた可視光カット性能とセンシングに用いる波長領域における優れた光線透過特性を有し、さらに、入射角度による光学特性変化が小さいといった特徴を有する。したがって、光学センサー装置用やカメラモジュール用の光学フィルターとして有用である。特に、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話、スピーカー、スマートスピーカー、ウェアラブルデバイス、自動車、テレビ、ゲーム機、航空機、無人航空機、エアーコンディショナー、ロボット、ロボット掃除機、愛玩用ロボット、農機、指紋認証装置、静脈認証装置、虹彩認証装置、顔認証装置、血流センサー、医療器具、生体認証装置等に搭載される光学センサー用として有用である。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、「部」は、特に断りのない限り「質量部」を意味する。また、各物性値の測定方法および物性の評価方法は以下のとおりである。
<分子量>
樹脂の分子量は、各樹脂の溶剤への溶解性等を考慮し、下記の(a)または(b)の方法にて測定を行った。
(a)ウオターズ(WATERS)社製のゲルパーミエ-ションクロマトグラフィー(GPC)装置(150C型、カラム:東ソー社製Hタイプカラム、展開溶剤:o-ジクロロベンゼン)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
(b)東ソー社製GPC装置(HLC-8220型、カラム:TSKgelα‐M、展開溶剤:THF)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
なお、後述する樹脂合成例3で合成した樹脂については、上記方法による分子量の測定ではなく、下記方法(c)による対数粘度の測定を行った。
(c)ポリイミド樹脂溶液の一部を無水メタノールに投入してポリイミド樹脂を析出させ、ろ過して未反応単量体から分離した。80℃で12時間真空乾燥して得られたポリイミド0.1gをN-メチル-2-ピロリドン20mLに溶解し、キャノン-フェンスケ粘度計を使用して30℃における対数粘度(μ)を下記式により求めた。
μ={ln(ts/t0)}/C
0:溶媒の流下時間
s:希薄高分子溶液の流下時間
C:0.5g/dL
<ガラス転移温度(Tg)>
エスアイアイ・ナノテクノロジーズ株式会社製の示差走査熱量計(DSC6200)を用いて、昇温速度:毎分20℃、窒素気流下で測定した。
<分光透過率>
光学フィルターの各波長域における透過率は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計(U-4100)を用いて測定した。
ここで、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率では、図3(A)のように光学フィルター2に対して垂直に透過した光1を分光光度計3で測定し、光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率では、図3(B)のように光学フィルター2の垂直方向に対して30°の角度で透過した光1’を分光光度計3で測定した。
<センシング性能>
特開2012-021971号公報に記載の方法で、波長680nmのInGaAlPレーザ半導体を光源とした距離測定モジュールを作成し、受光部上に各光学フィルターを設置した。測定用対象物を十分な精度で感知できた場合を「〇」、センシング精度が実用に耐えない場合を「×」と評価した。
[合成例]
下記実施例で用いた色素化合物は、一般的に知られている方法で合成した。一般的合成方法としては、例えば、特許第3366697号公報、特許第2846091号公報、特許第2864475号公報、特許第3703869号公報、特開昭60-228448号公報、特開平1-146846号公報、特開平1-228960号公報、特許第4081149号公報、特開昭63-124054号公報、「フタロシアニン-化学と機能―」(アイピーシー、1997年)、特開2007-169315号公報、特開2009-108267号公報、特開2010-241873号公報、特許第3699464号公報、特許第4740631号公報などに記載されている方法を挙げることができる。
<樹脂合成例1>
下記式(X1)で表される8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(以下「DNM」ともいう。)100部、1-ヘキセン(分子量調節剤)18部およびトルエン(開環重合反応用溶媒)300部を、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
Figure 2022165848000003
このようにして得られた開環重合体溶液1,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533を0.12部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂A」ともいう。)を得た。得られた樹脂Aは、数平均分子量(Mn)が32,000、重量平均分子量(Mw)が137,000であり、ガラス転移温度(Tg)が165℃であった。
<樹脂合成例2>
3Lの4つ口フラスコに2,6-ジフルオロベンゾニトリル35.12g(0.253mol)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン87.60g(0.250mol)、炭酸カリウム41.46g(0.300mol)、N,N-ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」ともいう。)443gおよびトルエン111gを添加した。続いて、4つ口フラスコに温度計、撹拌機、窒素導入管付き三方コック、ディーンスターク管および冷却管を取り付けた。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、得られた溶液を140℃で3時間反応させ、生成する水をディーンスターク管から随時取り除いた。水の生成が認められなくなったところで、徐々に温度を160℃まで上昇させ、そのままの温度で6時間反応させた。室温(25℃)まで冷却後、生成した塩をろ紙で除去し、ろ液をメタノールに投じて再沈殿させ、ろ別によりろ物(残渣)を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末(以下「樹脂B」ともいう。)を得た(収率95%)。得られた樹脂Bは、数平均分子量(Mn)が75,000、重量平均分子量(Mw)が188,000であり、ガラス転移温度(Tg)が285℃であった。
<樹脂合成例3>
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク管および冷却管を備えた500mLの5つ口フラスコに、窒素気流下、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン27.66g(0.08モル)および4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル7.38g(0.02モル)を入れて、γ―ブチロラクトン68.65g及びN,N-ジメチルアセトアミド17.16gに溶解させた。得られた溶液を、氷水バスを用いて5℃に冷却し、同温に保ちながら1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物22.62g(0.1モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.50g(0.005モル)を一括添加した。添加終了後、180℃に昇温し、随時留出液を留去させながら、6時間還流させた。反応終了後、内温が100℃になるまで空冷した後、N,N-ジメチルアセトアミド143.6gを加えて希釈し、攪拌しながら冷却し、固形分濃度20質量%のポリイミド樹脂溶液264.16gを得た。このポリイミド樹脂溶液の一部を1Lのメタノール中に注ぎいれてポリイミドを沈殿させた。濾別したポリイミドをメタノールで洗浄した後、100℃の真空乾燥機中で24時間乾燥させて白色粉末(以下「樹脂C」ともいう。)を得た。得られた樹脂CのIRスペクトルを測定したところ、イミド基に特有の1704cm-1、1770cm-1の吸収が見られた。樹脂Cはガラス転移温度(Tg)が310℃であり、対数粘度を測定したところ、0.87であった。
[実施例1~5、比較例1~2]
表4に記載した通りの割合で樹脂、化合物(Z)、化合物(Y)、化合物(X)及びジクロロメタンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜を更に減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦210mm、横210mmの樹脂製基板からなる基材を得た。この基材の分光透過率を測定し、前記透過率(Ta)および(Tb)ならびに前記波長(Xf)を求めた。なお、実施例1~5および比較例1~2で得られた基材そのものを、光学フィルターとしても評価したので、前記透過率(Ta)および(Tb)は、それぞれ光学フィルターの透過率(Te)および(Td)に相当する。
[実施例6、比較例3~4]
<光学フィルターの作製>
表5に記載した通りの割合で樹脂、化合物(Z)、化合物(Y)、化合物(X)及びジクロロメタンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製したこと以外は実施例1等と同様にして得られた基材の片面にイオンアシスト真空蒸着装置を用いて第一光学層として誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面にも第二光学層として同様の誘電体多層膜(I)を形成し、厚さ約0.1mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜(I)は、蒸着温度120℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計4層)。誘電体多層膜(I)において、シリカ層およびチタニア層は、基材側からチタニア層、シリカ層、チタニア層、・・・シリカ層、チタニア層、シリカ層の順で交互に積層されており、光学フィルターの最外層をシリカ層とした。
誘電体多層膜(I)の設計は、以下のようにして行った。各層の厚さと層数については、可視域の反射防止効果と近赤外域の選択的な透過・反射性能を達成できるよう基材屈折率の波長依存特性や、適用した化合物の吸収特性に合わせて光学薄膜設計ソフト(Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用いて最適化を行った。膜構成最適化の結果、実施例6、比較例3~4では、誘電体多層膜(I)は、膜厚57~150nmのシリカ層と膜厚22~195nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数4の多層蒸着膜となった。最適化を行った膜構成の一例を下記表1に示す。なお、下記表1における物理膜厚は、波長550nmにおける屈折率と光学膜厚との積として算出したものである。
Figure 2022165848000004
[実施例7~8、比較例5~6]
<光学フィルターの作製>
表5に記載した通りの割合で樹脂、化合物(Z)、化合物(Y)、化合物(X)及びジクロロメタンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にして得られた基材の片面に第一光学層として誘電体多層膜(II)を形成し、さらに基材のもう一方の面にも第二光学層として同様の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.1mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜(II)は蒸着温度120℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計18層)。誘電体多層膜(II)において、シリカ層およびチタニア層は、基材側からチタニア層、シリカ層、チタニア層、・・・シリカ層、チタニア層、シリカ層の順で交互に積層されており、光学フィルターの最外層をシリカ層とした。
誘電体多層膜(II)の設計は、以下のようにして行った。各層の厚さと層数については、可視域の反射防止効果と近赤外域の選択的な透過・反射性能を達成できるよう基材屈折率の波長依存特性や、適用した化合物の吸収特性に合わせて光学薄膜設計ソフト(Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用いて最適化を行った。最適化を行う際、本実施例においてはソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表2の通りとした。
Figure 2022165848000005
膜構成最適化の結果、実施例7~8、比較例5~6では、誘電体多層膜(II)は、膜厚76~171nmのシリカ層と膜厚85~121nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数18の多層蒸着膜となった。最適化を行った膜構成の一例を下記表3に示す。なお、下記表3における物理膜厚は、波長550nmにおける屈折率と光学膜厚との積として算出したものである。
Figure 2022165848000006
実施例1~8および比較例1~6で得られた基材および光学フィルターの垂直方向から分光透過率を測定し、各波長領域における光学特性を評価した。なお、上述したように、実施例1~5および比較例1~2で得られた基材については、基材そのものを光学フィルターとしても評価した。結果を表4および表5に示す。また、実施例1で得られた基材の分光透過率を示すグラフを図4に、実施例6で得られた光学フィルターの分光透過率を示すグラフを図5に、実施例7で得られた光学フィルターの分光透過率を示すグラフを図6に示す。
Figure 2022165848000007
Figure 2022165848000008
表4および表5における基材の構成、各種化合物などに関する記号等の内容は、下記の通りである。
<樹脂>
樹脂A:環状オレフィン系樹脂(樹脂合成例1)
樹脂B:芳香族ポリエーテル系樹脂(樹脂合成例2)
樹脂C:ポリイミド系樹脂(樹脂合成例3)
<化合物(Z)>
z-1:下記式(z-1)で表わされる化合物(z-1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長610nm)
z-2:下記式(z-2)で表わされる化合物(z-2)(ジクロロメタン中での吸収極大波長584nm)
z-3:下記式(z-3)で表わされる化合物(z-3)(ジクロロメタン中での吸収極大波長550nm)
z-4:下記式(z-4)で表わされる化合物(z-4)(ジクロロメタン中での吸収極大波長466nm)
<化合物(Y)>
y-1:下記式(y-1)で表わされる化合物(y-1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長712nm)
Figure 2022165848000009
Figure 2022165848000010
1,1’・・・光
2・・・光学フィルター
3・・・分光光度計
100・・・光学フィルター
102・・・基材
104・・・誘電体多層膜
106・・・反射防止膜
108・・・化合物(Z)を含む透明樹脂製基板
110・・・支持体
112・・・樹脂層

Claims (9)

  1. 波長400~650nmの領域に吸収極大を有する化合物(Z)を含有する樹脂層を含む基材(i)を有し、かつ、下記要件(a)および(b)を満たす光学フィルター:
    (a)波長670~750nmの領域中に光線透過帯(Za)を有し、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の光線透過帯(Za)の最大透過率が60%以上である;
    (b)波長400~600nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の最大透過率が10%未満である。
  2. 下記要件(c)をさらに満たすことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルター:
    (c)波長610~720nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Xa)と、波長630~740nmの領域において、光学フィルターの面に対して垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる最も短い波長(Xb)との差の絶対値|Xb-Xa|が40nm以下である。
  3. 厚みが30~150μmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルター。
  4. 前記化合物(Z)が、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、メロシアニン系化合物、シアニン系化合物、メチン系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物、ポルフィリン系化合物、トリアリールメタン系化合物、サブフタロシアニン系化合物、リレン系化合物、セミスクアリリウム系化合物、スチリル系化合物、フェナジン系化合物、ピリドメテン-ホウ素錯体系化合物、ピラジン-ホウ素錯体系化合物、ピリドンアゾ系化合物、キサンテン系化合物およびボロンジピロメテン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルター。
  5. 前記樹脂層が、前記化合物(Z)を2種以上含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルター。
  6. 前記樹脂層に含有される2種以上の化合物(Z)の中で、波長400~650nmの領域にある吸収極大が最も長波長側にある化合物が、スクアリリウム系化合物またはトリアリールメタン系化合物であることを特徴とする請求項5に記載の光学フィルター。
  7. 前記基材(i)の少なくとも一方の面に形成された誘電体多層膜をさらに有する請求項1~6のいずれか1項に記載の光学フィルター。
  8. 光学センサー装置用であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の光学フィルター。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する光学センサー装置。
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