JP2020197216A - 排気ガス再循環システムの異常検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】排気ガス再循環システムの異常を正確に検出する。【解決手段】機関負荷と、機関回転数と、スロットル弁下流の吸気通路内の吸気圧と、機関への吸入空気量からなる少なくとも四つのパラメータをニューラルネットワークの入力パラメータとし、目標EGR率を教師データとして重みの学習が行われた学習済みニューラルネットワークが記憶されている。機関運転時に、学習済みニューラルネットワークを用いて、上述のパラメータから目標EGR率が推定され、目標EGR率の推定値と目標EGR率との差に基いて、排気ガス再循環システムの異常が検出される。【選択図】図18
Description
本発明は排気ガス再循環システムの異常検出装置に関する。
機関から排出された排気ガスをスロットル弁下流の吸気マニホルドに再循環させるための排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路を備えており、このEGR通路内にEGR弁を配置した内燃機関では、EGR弁が開弁すると圧力の高い排気ガスが吸気マニホルド内に再循環されるために、吸気マニホルドの圧力は, EGR弁が閉弁せしめられているときに比べて上昇する。従って、EGR弁の開弁時とEGR弁の閉弁時との吸気マニホルド内の圧力の変化から、EGR弁が正常に作動しているか否かを判別することができる。そこで、機関負荷および機関回転数が夫々予め定められた範囲内にありかつEGR弁が開弁している機関中負荷中速運転時にEGR弁を強制的に一定時間閉弁させ、このときの吸気マニホルド内の圧力の変化からEGR弁が正常に作動しているか否かを判別するようにした排気ガス再循環システムの異常検出装置が公知である(例えば特許文献1を参照)。
しかしながら、機関負荷および機関回転数が夫々予め定められた範囲内であったとしても機関負荷および機関回転数が異なると、吸気マニホルド内の圧力が大きく変化する。従って、上述の排気ガス再循環システムの異常検出装置におけるように、機関負荷および機関回転数が夫々予め定められた範囲内にある機関中負荷中速運転時にEGR弁を強制的に一定時間閉弁させ、このときの吸気マニホルド内の圧力の変化からEGR弁が正常に作動しているか否かを判別しても、EGR弁が正常に作動しているか否かを正確に判別するのは困難である。
そこで、本発明によれば、機関から排出された排気ガスをスロットル弁下流の吸気通路に再循環させるためのEGR通路内にEGR弁を配置し、目標EGR率が、少なくとも機関負荷および機関回転数の関数として予め記憶されており、EGR率が目標EGR率となるようにEGR弁開度が制御される排気ガス再循環システムの異常検出装置において。機関負荷と、機関回転数と、スロットル弁下流の吸気通路内の吸気圧と、機関への吸入空気量からなる少なくとも四つのパラメータをニューラルネットワークの入力パラメータとし、目標EGR率を教師データとして重みの学習が行われた学習済みニューラルネットワークが記憶されており、機関運転時に、この学習済みニューラルネットワークを用いて、上述のパラメータから目標EGR率が推定され、目標EGR率の推定値と目標EGR率との差に基づいて、排気ガス再循環システムの異常が検出される排気ガス再循環システムの異常検出装置が提供される。
本発明によれば、学習済みニューラルネットワークを用いて目標EGR率が推定され、この目標EGR率の推定値と目標EGR率との差に基づいて、排気ガス再循環システムの異常を検出することにより、排気ガス再循環システムの異常を正確に検出することが可能となる。
<内燃機関の全体構成>
図1は、排気ガス再循環システムを備えた内燃機関の全体図を示す。図1を参照すると、1は機関本体、2は各気筒の燃焼室、3は各燃焼室1内に配置された点火栓、4は各燃焼室5内に燃料、例えば、ガソリンを供給するための燃料噴射弁、5は吸気枝管、6はサージタンク、7は吸気ダクト、8は吸入空気量検出器、9はエアクリーナ、10は排気マニホルドを夫々示す。吸気ダクト7内には、アクチュエータ11により駆動されるスロットル弁12が配置される。一方、排気マニホルド10は、EGR通路13およびEGR弁14を介してサージタンク6に連結され、EGR通路13内には、EGRガスを冷却するためのEGRクーラ15が配置される。これらEGR通路13、EGR制御弁14およびEGRクーラ15により排気ガス再循環システムが構成される。
図1は、排気ガス再循環システムを備えた内燃機関の全体図を示す。図1を参照すると、1は機関本体、2は各気筒の燃焼室、3は各燃焼室1内に配置された点火栓、4は各燃焼室5内に燃料、例えば、ガソリンを供給するための燃料噴射弁、5は吸気枝管、6はサージタンク、7は吸気ダクト、8は吸入空気量検出器、9はエアクリーナ、10は排気マニホルドを夫々示す。吸気ダクト7内には、アクチュエータ11により駆動されるスロットル弁12が配置される。一方、排気マニホルド10は、EGR通路13およびEGR弁14を介してサージタンク6に連結され、EGR通路13内には、EGRガスを冷却するためのEGRクーラ15が配置される。これらEGR通路13、EGR制御弁14およびEGRクーラ15により排気ガス再循環システムが構成される。
図1に示されるように、サージタンク6内には、サージタンク6内の圧力、即ち、吸気圧を検出するための吸気圧センサ16と、サージタンク6内のガス温度、即ち、吸気温を検出するための吸気温センサ17とが取り付られている。また、エアクリーナ9内には、大気圧を検出するための大気圧センサ18が取り付られており、機関本体1には冷却水の温度を検出するための水温センサ19が取り付られている。更に、EGR弁14にはEGR弁14の開度を検出するためのEGR弁開度センサ20が取り付られている。
一方、図1において30は、機関の運転を制御するための電子制御ユニットを示している。図1に示されるように、電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続された記憶装置32、即ち、メモリ32と、CPU(マイクロプロセッサ)33と、入力ポート34および出力ポート35を具備する。入力ポート34には、吸入空気量検出器8、吸気圧センサ16、吸気温センサ17、大気圧センサ18、水温センサ19およびEGR弁開度センサ20の出力信号が、夫々対応するAD変換器36を介して入力される。
また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器36を介して入力ポート34に入力される。更に入力ポート34にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。CPU33内ではクランク角センサ42の出力信号に基づいて機関回転数が算出される。一方、出力ポート35は対応する駆動回路37を介して各点火栓3、各燃料噴射弁4、スロットル弁12のアクチュエータ11およびEGR弁14に接続される。
さて、EGR率は、燃焼室2内における燃焼に大きな影響を与え、最適なEGR率は、基本的には、機関負荷および機関回転数の関数となる。従って、通常、最適なEGR率が、目標EGR率として、少なくとも機関負荷および機関回転数の関数の形で予め記憶されており、EGR率が目標EGR率となるようにEGR弁開度が制御される。この場合、排気ガス再循環システムに異常が生じてEGR率が目標EGR率に一致しなくなると種々の問題を生じ、従って、排気ガス再循環システムに異常が生じた場合には、排気ガス再循環システムに異常が生じたことを早急に検出する必要がある。
ところで、吸気圧の変化のみから排気ガス再循環システムに異常が生じた否かを正確に判別するのはかなり困難である。一方、排気ガス再循環システムに異常が生じると、EGR率が目標EGR率と一致しなくなり、EGR率と目標EGR率との間で差を生じることになる。そこで本発明による実施例では、学習済みニューラルネットワークを用いて目標EGR率を推定し、この目標EGR率の推定値と目標EGR率との差に基づいて、排気ガス再循環システムに異常が生じた否かを正確に判別するようにしている。
<ニューラルネットワークの概要>
<ニューラルネットワークの概要>
上述したように、本発明による実施例では、ニューラルネットワークを用いて目標EGR率を推定するようにしている。そこで最初にニューラルネットワークについて簡単に説明する。図2は簡単なニューラルネットワークを示している。図2における丸印は人工ニューロンを表しており、ニューラルネットワークにおいては、この人工ニューロンは、通常、ノード又はユニットと称される(本願では、ノードと称す)。図2においてL=1は入力層、L=2および L=3は隠れ層、L=4は出力層を夫々示している。また、図2において、x1およびx2 は入力層 ( L=1) の各ノードからの出力値を示しており、y1 およびy2 は出力層 ( L=4) の各ノードからの出力値を示しており、z(2) 1、z(2) 2 およびz(2) 3 は隠れ層 ( L=2) の各ノードからの出力値を示しており、z(3) 1、z(3) 2 およびz(3) 3は隠れ層 ( L=3) の各ノードからの出力値を示している。なお、隠れ層の層数は、1個又は任意の個数とすることができ、入力層のノードの数および隠れ層のノードの数も任意の個数とすることができる。また、出力層のノードの数は1個とすることもできるし、複数個とすることもできる。この場合、本発明による実施例では、出力層のノードの数は1個とされている。
入力層の各ノードでは入力がそのまま出力される。一方、隠れ層 ( L=2) の各ノードには、入力層の各ノードの出力値x1およびx2 が入力され、隠れ層 ( L=2) の各ノードでは、夫々対応する重みwおよびバイアスbを用いて総入力値uが算出される。例えば、図2において隠れ層 ( L=2) のz(2) k(k=1,2,3)で示されるノードにおいて算出される総入力値ukは、次式のようになる。
次いで、この総入力値ukは活性化関数fにより変換され、隠れ層 ( L=2) のz(2) kで示されるノードから、出力値z(2) k(= f (uk)) として出力される。一方、隠れ層 ( L=3) の各ノード には、隠れ層 ( L=2) の各ノードの出力値z(2) 1、z(2) 2 およびz(2) 3が入力され、隠れ層 ( L=3 ) の各ノードでは、夫々対応する重みwおよびバイアスbを用いて総入力値u(Σz・w+b)が算出される。この総入力値uは同様に活性化関数により変換され、隠れ層 ( L=3 ) の各ノードから、出力値z(3) 1、z(3) 2 およびz(3) 3として出力される、この活性化関数としては、例えば、シグモイド関数σが用いられる。
一方、出力層 ( L=4) の各ノード には、隠れ層 ( L=3) の各ノードの出力値z(3) 1、z(3) 2 およびz(3) 3が入力され、出力層 の各ノードでは、夫々対応する重みwおよびバイアスbを用いて総入力値u(Σz・w+b)が算出されるか、又は、夫々対応する重みwのみを用いて総入力値u(Σz・w)が算出される。本発明による実施例では、出力層のノードでは恒等関数が用いられており、従って、出力層のノードからは、出力層のノードにおいて算出された総入力値uが、そのまま出力値yとして出力される。
<ニューラルネットワークにおける学習>
<ニューラルネットワークにおける学習>
さて、ニューラルネットワークの出力値yの正解値を示す教師データをytとすると、ニューラルネットワークにおける各重みwおよびバイアスbは、出力値yと教師データをytとの差が小さくなるように、誤差逆伝播法を用いて学習される。この誤差逆伝播法は周知であり、従って、誤差逆伝播法についてはその概要を以下に簡単に説明する。なお、バイアスbは重みwの一種なので、以下、バイアスbも含めて重みwと称する。さて、図2に示すようなニューラルネットワークにおいて、L=2,L=3又は L=4の各層のノードへの入力値u(L)における重みをw(L)で表すと、誤差関数Eの重みw(L)による微分、即ち、勾配∂E/∂w(L)は、書き換えると、次式で示されるようになる。
ここで、z(L−1)・∂w(L)= ∂u(L)であるので、(∂E/∂u(L))=δ(L)とすると、上記(1)式は、次式でもって表すことができる。
ここで、u(L)が変動すると、次の層の総入力値u(L+1)の変化を通じて誤差関数Eの変動を引き起こすので、δ(L)は、次式で表すことができる。
ここで、z(L)=f(u(L)) と表すと、上記(3)式の右辺に現れる入力値uk (L+1)は、次式で表すことができる。
ここで、上記(3)式の右辺第1項(∂E/∂u(L+1))はδ(L+1)であり、上記(3)式の右辺第2項(∂uk (L+1) /∂u(L))は、次式で表すことができる。
従って、δ(L)は、次式で示される。
即ち、δ(L+1)が求まると、δ(L)を求めることができることになる。
さて、出力層 ( L=4) のノードが一個であって、或る入力値に対して教師データytが求められており、この入力値に対する出力層からの出力値がyであった場合において、誤差関数として二乗誤差が用いられている場合には、二乗誤差Eは、E=1/2(y−yt)2で求められる。この場合、出力層(L=4)のノードでは、出力値y= f(u(L)) となり、従って、この場合には、出力層(L=4)のノードにおけるδ(L)の値は、次式で示されるようになる。
この場合、本発明による実施例では、前述したように、f(u(L)) は恒等関数であり、f’(u(Ll)) = 1となる。従って、δ(L)=y−yt となり、δ(L)が求まる。
δ(L)が求まると、上式(6)を用いて前層のδ(L−1)が求まる。このようにして順次、前層のδが求められ、これらδの値を用いて、上式(2)から、各重みwについて誤差関数Eの微分、即ち、勾配∂E/∂w(L)か求められる。勾配∂E/∂w(L)か求められると、この勾配∂E/∂w(L)を用いて、誤差関数Eの値が減少するように、重みwが更新される。即ち、重みwの学習が行われることになる。なお、図2に示されるように、出力層 ( L=4) が複数個のノードを有する場合には、各ノードからの出力値をy1、y1・・・、対応する教師データyt1、yt2・・・とすると、誤差関数Eとして、次の二乗和誤差Eが用いられる。
この場合も、出力層 ( L=4) の各ノードにおけるδ(L)の値は、δ(L)=y−ytk (k=1,2・・・n)となり、これらδ(L)の値から上式(6)を用いて前層のδ(L−1)が求まる。
<本発明による実施例>
<本発明による実施例>
最初に、図3Aおよび図3Bを参照しつつ、目標EGR率について説明する。前述したように、最適なEGR率は、基本的には、機関負荷および機関回転数の関数であり、図3Aには、この最適なEGR率が、機関負荷Lおよび機関回転数NEの関数の形で示されている。なお、図3Aにおいて実線は、等EGR率曲線を示しており、図3Aにおいて矢印で示されるように、最適なEGR率は、機関負荷が高くなるほど高くなり、機関回転数が高くなるほど高くなる。この最適なEGR率は、基本EGR率RAとして、図3Bに示されるようなマップの形で、予めメモリ32内に記憶されている。
次に、本発明について説明を行うが、最初に、本発明を実施可能な最も単純な構成を例にとって、本発明の説明を行う。即ち、本発明では、図3Bに示される基本EGR率RAが目標EGR率RAOとされ、EGR率をこの目標EGR率RAOとするのに必要なEGR弁目標開度SAが予め求められている。このEGR弁目標開度SAは、図4に示されるようなマップの形で、機関負荷Lおよび機関回転数NEの関数として、予めメモリ32内に記憶されている。更に、本発明では、EGR弁14の開度が、図4に示される機関負荷Lおよび機関回転数NEに応じたEGR弁目標開度SAとされる。このとき、EGR率は、図3Bに示される目標EGR率RAとなる。図5Aは、この場合の機能構成図を示している。即ち、本発明では、機関負荷および機関回転数に応じて、図4に示されるマップから、EGR弁目標開度SAが求められる。
さて、前述したように、排気ガス再循環システムに異常が生じてEGR率が目標EGR率RAに一致しなくなると種々の問題を生じ、従って、排気ガス再循環システムに異常が生じた場合には、排気ガス再循環システムに異常が生じたことを早急に検出する必要がある。この場合、例えば、EGR弁14或いはEGR通路13が目詰まりし、目詰まり異常を生じた場合には、EGR弁14の開度が一定であっても、EGR通路13からサージタンク6内に再循環される排気ガス量が減少し、その結果、EGR率が低下する。従って、EGR弁14の開度の変化からEGR率が低下したことを判別することができない。
これに対し、EGR通路13からサージタンク6内に再循環される排気ガス量が減少すると、サージタンク6内の圧力が低下すると共に、吸入空気量が増大する。即ち、サージタンク6内の圧力および吸入空気量が、EGR率の影響を大きく受けることになる。一方、目標EGR率RAは、機関負荷Lおよび機関回転数NEが定まると定まる。従って、機関負荷L、機関回転数NE、サージタンク6内の圧力および吸入空気量が変化すると、EGR率が、機関負荷L、機関回転数NE、サージタンク6内の圧力および吸入空気量に対応したEGR率に変化することになる。そこで、本発明では、図5Bの機能構成図に示されるように、ニューラルネットワークを用いて、機関負荷L、機関回転数NE、サージタンク6内の圧力および吸入空気量から目標EGR率の推定値を求め、この目標EGR率の推定値と目標EGR率との差に基づいて、排気ガス再循環システムの異常を検出するようにしている。
図5Aおよび図5Bは、本発明を実施可能な最も単純な構成を示しており、この構成を用いて、排気ガス再循環システムの異常を検出することが可能である。一方、図6から図8Bは、目標EGR率およびEGR弁目標開度SAを、もう少しきめ細かく設定した場合の実施例を示しており、以下、図6から図8Bに示されるように、目標EGR率およびEGR弁目標開度SAを、きめ細かく設定するようにした実施例を例にとって、本発明について説明する。
図6を参照すると、本発明による実施例では、機関負荷Lおよび機関回転数NEに基づき図3Bに示されるマップから算出された基本EGR率RAが、大気圧、吸気温および機関冷却水温により補正されると共に、機関負荷Lおよび機関回転数NEに基づき図4に示されるマップから算出されたEGR弁目標開度SAが、大気圧、吸気温および機関冷却水温により補正される。即ち、本発明による実施例では、機関負荷Lおよび機関回転数NEに基づき図3Bに示されるマップから算出された基本EGR率RAに、大気圧、吸気温および機関冷却水温に基づき算出された補正値が乗算され、乗算結果が目標EGR率RAOとされる。更に、図6に示されるように、機関負荷Lおよび機関回転数NEに基づき図4に示されるマップから算出されたEGR弁目標開度SAに、大気圧、吸気温および機関冷却水温に基づき算出された補正値が乗算され、乗算結果が最終的なEGR弁目標開度SAとされる。
図7には、基本EGR率RAに対する大気圧PAに応じた補正値KAと、基本EGR率RAに対する吸気温TMに応じた補正値KBと、基本EGR率RAに対する機関冷却水温TWに応じた補正値KCの一例が示されている。図7に示される例では、補正値KA、KB,KCは、燃焼が悪化して失火を生じないように定められている。即ち、大気圧PAが低くなるほど吸入空気中の酸素濃度が低下する。従って、大気圧PAが低下したときに目標EGR率RAが一定に維持されていると、大気圧PAが低くなるほど失火が生じ易くなる。従って、大気圧PAが低くなっても失火が生じないようにするために、図7に示されるように、大気圧PAが低くなるほど、補正値KAが低下せしめられる。なお、図7においてPAOは標準大気圧(0.1013MPa)を示しており、大気圧PAが標準大気圧PAO以上であるときには、補正値KAが1.0とされる。
一方、図7において、吸気温TMが基準温度TMO(例えば、5℃)よりも高いときには失火が生じず、従って、吸気温TMが基準温度TMOよりも高いときには、補正値KBが1.0とされる。これに対し、吸気温TMが基準温度TMOよりも低いときには、目標EGR率RAが一定に維持されていると、吸気温TMが低くなるほど失火が生じ易くなる。従って、吸気温TMが低くなっても失火が生じないようにするために、図7に示されるように、吸気温TMが低くなるほど、補正値KCが低下せしめられる。
一方、図7において、機関冷却水温TWが基準温度TWO(例えば、70℃)よりも高いときには失火が生じず、従って、機関冷却水温TWが基準温度TWOよりも高いときには、補正値KCが1.0とされる。これに対し、機関冷却水温TWが基準温度TWOよりも低いときには、目標EGR率RAが一定に維持されていると、機関冷却水温TWが低くなるほど失火が生じ易くなる。従って、機関冷却水温TWが低くなっても失火が生じないようにするために、図7に示されるように、機関冷却水温TWが低くなるほど、補正値KBが低下せしめられる。
基本EGR率RAに対する補正値KKRAは、図7に示される補正値KA、補正値KBおよび補正値KCの積(KA・KB・KC)で表される。従って、本発明による実施例では、機関負荷Lおよび機関回転数NEに基づき図3Bに示されるマップから算出された基本EGR率RAに、大気圧、吸気温および機関冷却水温に基づき算出された補正値KKRA(=KA・KB・KC)が乗算され、乗算結果が目標EGR率RAOとされる。この場合、補正値KKRA(=KA・KB・KC)は1.0以下であり、従って、目標EGR率RAOは、機関負荷Lおよび機関回転数NEに基づき図3Bに示されるマップから算出された基本EGR率RA以下となる。なお、失火が生じやすいのは機関負荷が低いときである。従って、機関負荷Lが低い予め定められた機関低負荷運転領域における基本EGR率RAのみに補正値KKRAを乗算することもできる。
ところで、このような目標EGR率RAOの低下制御は、EGR弁目標開度SAを低下させることによって行われる。本発明による実施例では、目標EGR率RAOを単位EGR率だけ低下させるのに必要なEGR弁目標開度SAの補正量KSAが予め求められており、このEGR弁目標開度SAの補正量KSAは、例えば、図8に示されるようなマップの形で、機関負荷Lおよび機関回転数NEの関数として、予めメモリ32内に記憶されている。この場合、EGR弁目標開度SAに対する補正値KKSAは、図8に示されるマップから算出された補正量KSAに、基本EGR率RAに対する補正値KKRAを乗算した値(KSA・KKRA)とされる。
従って、本発明による実施例では、図6に示されるように、機関負荷Lおよび機関回転数NEに基づき図4に示されるマップから算出されたEGR弁目標開度SAに、大気圧、吸気温および機関冷却水温に基づき算出された補正値KKSA(=KSA・KKRA)が乗算され、乗算結果が最終的なEGR弁目標開度SAとされる。
さて、本発明による実施例では、ニューラルネットワークを用いて、目標EGR率RAOの推定モデルが作成され、この目標EGR率推定モデルにより求められた目標EGR率RAOの推定値と目標EGR率RAOとの差に基づいて、排気ガス再循環システムの異常が検出される。そこで最初に、この目標EGR率推定モデルの作成に用いられるニューラルネットワークについて図9を参照しつつ説明する。図9を参照すると、このニューラルネットワーク50においても、図2に示されるニューラルネットワークと同様に、L=1は入力層、L=2および L=3は隠れ層、L=4は出力層を夫々示している。図9に示されるように、入力層 ( L=1) がn個のノードからなり、n個の入力値x1、x2・・・xn−1、xnが、入力層 ( L=1) の各ノードに入力されている。一方、図9には隠れ層 ( L=2)および隠れ層 ( L=3)が記載されているが、これら隠れ層の層数は、1個又は任意の個数とすることができ、またこれら隠れ層のノードの数も任意の個数とすることができる。なお、出力層 ( L=4) のノードの数は1個とされており、出力層のノードからの出力値がyで示されている。この場合、出力値yは、目標EGR率RAの推定値となる。
次に、図9における入力値x1、x2・・・xn−1、xnについて、図10に示される一覧表を参照しつつ説明する。さて、上述したように、EGR通路13からサージタンク6内に再循環される排気ガス量が減少すると、サージタンク6内の圧力、即ち、吸気圧が低下すると共に、吸入空気量が増大する。即ち、吸気圧および吸入空気量が、EGR率の影響を大きく受けることになる。一方、基本EGR率RAは、機関負荷Lおよび機関回転数NEが定まると定まる。従って、機関負荷L、機関回転数NE、吸気圧および吸入空気量が変化すると、EGR率が、機関負荷L、機関回転数NE、吸気圧および吸入空気量に対応したEGR率に変化することになる。
このようにEGR率は、機関負荷L、機関回転数NE、吸気圧および吸入空気量によって支配されているので、図10には、機関負荷L、機関回転数NE、吸気圧および吸入空気量が、必須の入力パラメータとして列挙されている。一方、前述したように、失火の発生を阻止するためには、大気圧、吸気温および機関冷却水温に応じて、基本EGR率RAを補正することが好ましい。これら大気圧、吸気温および機関冷却水温は必須の入力パラメータではなく、従って、図10に示されるように、これら大気圧、吸気温および機関冷却水温は、補助的な入力パラメータとして列挙されている。
本発明では、基本的には、これら必須の入力パラメータのみの値が図9における入力値x1、x2・・・xn−1、xnとされる。この場合、これら必須の入力パラメータの値に加えて、補助的な入力パラメータの値を図9における入力値x1、x2・・・xn−1、xnとすることもできる。なお、前述したように、本発明による実施例では、必須の入力パラメータの値に加えて、補助的な入力パラメータの値も図9における入力値x1、x2・・・xn−1、xnとしている。従って、以下、必須の入力パラメータの値に加えて、補助的な入力パラメータの値も図9における入力値x1、x2・・・xn−1、xnとした場合を例にとって、本発明による実施例について説明する。
図11は、入力値x1、x2・・・xn−1、xnと、教師データytとを用いて作成された訓練データセットを示している。この図11において、入力値x1、x2・・・xn−1、xnは、夫々、機関負荷L、機関回転数NE、吸気圧、吸入空気量、大気圧PA、吸気温MTおよび機関冷却水温TWを示している。この場合、機関負荷Lおよび機関回転数NEは電子制御ユニット30内において算出されており、吸気圧は吸気圧センサ16により検出されており、吸入空気量は吸入空気量検出器8により検出されており、大気圧は大気圧センサ18により検出されており、吸気温は吸気温センサ17により検出されており、機関冷却水温TWは水温センサ19により検出されている。
一方、図11における教師データytは目標EGR率RAOを示している。図11に示されるように、この訓練データセットでは、入力値x1、x2・・・xn−1、xnと教師データytとの関係を表すm個のデータが取得されている。例えば、2番目のデータ(No. 2)には、取得された入力値x12、x22・・・xm−12、xm2と教師データyt2とが列挙されており、m−1番目のデータ(No. m−1)には、取得された入力パラメータの入力値x1m−1、x2m−1・・・xn−1m−1、xnm−1と教師データytm−1が列挙されている。
本発明による実施例では、図11に示される訓練データセットを用いて、図9に示されるニューラルネットワーク50の重みの学習が行われる。そこで次に、図11に示される訓練データセットの作成方法について説明する。図12に、訓練データセットの作成方法の一例が示されている。図12を参照すると、図1に示される機関本体1が、室内圧力および室内温度を調整可能な密閉試験室21内に設置され、この密閉試験室21内には、機関冷却水の温度を任意に調整することのできる機関冷却水温調整装置が設置されている。密閉試験室21内に設置された機関本体1は、試験制御装置60により、訓練データセットを作成するための機関の運転処理が行われる。なお、図12に示される機関本体1では、EGR率を実測するために、サージタンク6内にサージタンク6内のガスのCO2濃度を検出するためのCO2濃度センサ22が追加設置されており、更にEGR通路13内にEGR通路13内の再循環排気ガスのCO2濃度を検出するためのCO2濃度センサ23が追加設置されている。
次に、これら一対のCO2濃度センサ22、23によりEGR率を実測する方法について説明する。
外気中からサージタンク6内に流入する吸入空気量をQAとし、EGR通路13からサージタンク6内に流入する再循環排気ガス量をQEとし、サージタンク6内のCO2濃度を〔CO2〕in とし, EGR通路13内のCO2濃度を〔CO2〕ex とし, 外気中のCO2濃度を〔CO2〕out とすると、外気中からサージタンク6内に流入するCO2の量とEGR通路13からサージタンク6内に流入するCO2の量との和は、サージタンク6内のCO2の量と等しくなるので、次式が成立する。
一方、EGR率は次式で表される。
上式(9)を上式(10)に代入すると、EGR率は次式で表される。
即ち、EGR率は、サージタンク6内のCO2濃度〔CO2〕in , EGR通路13内のCO2濃度〔CO2〕ex および 外気中のCO2濃度〔CO2〕out の関数となる。
外気中からサージタンク6内に流入する吸入空気量をQAとし、EGR通路13からサージタンク6内に流入する再循環排気ガス量をQEとし、サージタンク6内のCO2濃度を〔CO2〕in とし, EGR通路13内のCO2濃度を〔CO2〕ex とし, 外気中のCO2濃度を〔CO2〕out とすると、外気中からサージタンク6内に流入するCO2の量とEGR通路13からサージタンク6内に流入するCO2の量との和は、サージタンク6内のCO2の量と等しくなるので、次式が成立する。
ここでサージタンク6内のCO2濃度〔CO2〕in および EGR通路13内のCO2濃度〔CO2〕ex は、夫々、EGR弁14が開弁してEGR通路13からサージタンク6内に再循環排気ガスが流入しているときにCO2濃度センサ22および23により検出でき、外気中のCO2濃度〔CO2〕out は、EGR弁14が閉弁してEGR通路13からサージタンク6内への再循環排気ガスの流入が停止せしめられているときにCO2濃度センサ22により検出できる。本発明による実施例では、EGR弁14を開閉させつつCO2濃度センサ22および23の検出値から、サージタンク6内のCO2濃度〔CO2〕in , EGR通路13内のCO2濃度〔CO2〕ex および 外気中のCO2濃度〔CO2〕out が求められ、これらサージタンク6内のCO2濃度〔CO2〕in , EGR通路13内のCO2濃度〔CO2〕ex および 外気中のCO2濃度〔CO2〕out から、上式(11)を用いてEGR率が実測される。
さて、本発明による実施例では、試験制御装置60において、訓練データセットを作成するためのデータが取得され、更に、データを取得しているときに図4に示されるEGR弁目標開度SAのマップを作成する処理が行われる。この場合、この試験制御装置60では、機関負荷Lを表す入力値x1、機関回転数NEを表す入力値x2、吸気圧を表す入力値x3、吸入空気量を表す入力値x4、大気圧PAを表す入力値x5、吸気温MTを表す入力値x6および機関冷却水温TWを表す入力値x7を順次変化させつつ、訓練データセットを作成ためのデータが取得され、併せて、図4に示されるEGR弁目標開度SAのマップを作成する処理が行われる。
図13および図14は、試験制御装置60において実行されるEGR弁目標開度マップおよび訓練データセットを作成するためのルーチンを示している。
図13を参照すると、まず初めに、ステップ100において、機関負荷Lを表す入力値を表す入力値x1および機関回転数NEを表す入力値x2が初期値とされ、大気圧PAを表す入力値x5、吸気温MTを表す入力値x6および機関冷却水温TWを表す入力値x7が標準値、即ち、1.0とされる。次いでステップ101では、図3Bに示される基本EGR率RAが、目標EGR率RAOとされる。次いでステップ102では、実測されたEGR率が目標EGR率RAOとなるときの種々のデータが取得される。このステップ102における種々のデータの取得処理は、図15に示されるサブルーチンにおいて実行される。
図13を参照すると、まず初めに、ステップ100において、機関負荷Lを表す入力値を表す入力値x1および機関回転数NEを表す入力値x2が初期値とされ、大気圧PAを表す入力値x5、吸気温MTを表す入力値x6および機関冷却水温TWを表す入力値x7が標準値、即ち、1.0とされる。次いでステップ101では、図3Bに示される基本EGR率RAが、目標EGR率RAOとされる。次いでステップ102では、実測されたEGR率が目標EGR率RAOとなるときの種々のデータが取得される。このステップ102における種々のデータの取得処理は、図15に示されるサブルーチンにおいて実行される。
従って、ここで図15に示されるサブルーチンについて先に説明する。図15を参照すると、まず初めに、ステップ120において、目標EGR率RAOが読み込まれる。次いでステップ121では、EGR弁14が閉弁せしめられる。次いでステップ122では、一定時間経過したか否かが判別され、一定時間経過したときにはステップ123に進む。ステップ123では、CO2濃度センサ22によりサージタンク6内のCO2濃度が検出される。このときにはサージタンク6内に外気が流入しているので、このときCO2濃度センサ22によって検出されるのは、外気中のCO2濃度〔CO2〕out となる。即ち、ステップ123では、CO2濃度センサ22によって、外気中のCO2濃度〔CO2〕out が検出される。
次いでステップ124では、EGR弁14が開弁せしめられると共に、EGR弁14の開度が小さな初期値とされる。次いでステップ125では、一定時間経過したか否かが判別され、一定時間経過したときにはステップ126に進む。ステップ126では、CO2濃度センサ22によりサージタンク6内のCO2濃度〔CO2〕in が検出され、CO2濃度センサ23によりEGR通路13内のCO2濃度〔CO2〕ex が検出される。次いでステップ127では、ステップ123において検出された外気中のCO2濃度〔CO2〕outと、ステップ126において検出されたサージタンク6内のCO2濃度〔CO2〕in およびEGR通路13内のCO2濃度〔CO2〕ex に基づいて、上式(11)からEGR率が算出される。このEGR率はEGR率の実測値を示している。
次いでステップ128では、算出されたEGR率、即ち、EGR率の実測値が、目標EGR率RAOから小さな一定値αを減算した値(RAO―α)と、目標EGR率RAOに小さな一定値αを加算した値(RAO+α)との間にあるか否か、即ち、EGR率の実測値が目標EGR率RAOになったか否かが判別される。EGR率の実測値が目標EGR率RAOになっていないと判別されたときにはステップ129に進んで、EGR弁14の開度が小さな一定開度だけ増大される。次いでステップ125に戻る。次いでステップ126では、再びCO2濃度センサ22によりサージタンク6内のCO2濃度〔CO2〕in およびEGR通路13内のCO2濃度〔CO2〕ex が検出され、ステップ127では、EGR率が算出され、ステップ128では、EGR率の実測値が目標EGR率RAOになったか否かが判別される。
ステップ128において、算出されたEGR率、即ち、EGR率の実測値が目標EGR率RAOになったと判別されたときには、ステップ130に進む。ステップ130では、このときの全ての入力値x1、x2・・・xn−1、xn、即ち、機関負荷Lを表す入力値を表す入力値x1および機関回転数NEを表す入力値x2、吸気圧を表す入力値x3、吸入空気量を表す入力値x4、大気圧PAを表す入力値x5、吸気温MTを表す入力値x6および機関冷却水温TWを表す入力値x7が試験制御装置60のメモリ内に記憶され、このときの目標EGR率RAO,即ち、図3Bに示される基本EGR率RAが、教師データytとして試験制御装置60のメモリ内に記憶される。このとき試験制御装置60のメモリ内に記憶された入力値x1、x2・・・xn−1、xnおよび教師データytは、図11におけるNo.1のデータセットを構成している。
ステップ130において、入力値x1、x2・・・xn−1、xnおよび教師データytが試験制御装置60のメモリ内に記憶されると、図13のステップ103に進む。ステップ103では、このときの、即ち、EGR率の実測値が目標EGR率RAOになったときのEGR弁14の開度が、EGR弁開度センサ20により検出され、検出されたEGR弁14の開度が、EGR弁目標開度SAとして、図4に示されるマップに記憶される。従って、図4に示すマップに記憶されているEGR弁目標開度SAは、EGR率を目標EGR率RAOに一致させるのに必要なEGR弁14の開度を示していることになる。
次いでステップ104では、入力値x1と入力値x2との全ての組み合わせについて、即ち、機関負荷Lと機関回転数NEとの全ての組み合わせについて、データの取得が完了したか否かが判別される。入力値x1と入力値x2との全ての組み合わせについてデータの取得が完了していないと判別されたときには、ステップ105に進んで、入力値x1と入力値x2のいずれか一方、即ち、機関負荷Lと機関回転数NEのいずれか一方が変更される。次いでステップ101では、変更後の機関負荷Lと機関回転数NEに基づき取得された図3Bに示される基本EGR率RAが、目標EGR率RAOとされる。
次いでステップ102では、図15に示されるサブルーチンにより、EGR率の実測値が目標EGR率RAOになったときの全ての入力値x1、x2・・・xn−1、xnおよび教師データytが試験制御装置60のメモリ内に記憶される。それにより入力値x1、x2・・・xn−1、xnおよび教師データytからなる新たなデータセットが形成される。次いでステップ103では、EGR率の実測値が目標EGR率RAOになったときのEGR弁14の開度が、EGR弁目標開度SAとして、図4に示されるマップに記憶される。このようなデータの取得作用が、機関負荷Lと機関回転数NEとの全ての組み合わせについてのデータの取得が完了するまで、繰り返し行われる。
ステップ104において、入力値x1と入力値x2との全ての組み合わせについて、即ち、機関負荷Lと機関回転数NEとの全ての組み合わせについて、データの取得が完了したと判別されたときには、ステップ106に進んで、大気圧PAを表す入力値x5、吸気温MTを表す入力値x6および機関冷却水温TWを表す入力値x7が標準値、即ち、1.0でないときに、これら入力値x5、入力値x6および入力値x7を順次変更したときのデータが取得される。この場合、本発明による実施例では、入力値x5は、図7に示されるように間隔を隔てた複数個の大気圧PA1、PA2、PA3、・・・PAj、に順次変更され、入力値x6は、図7に示されるように間隔を隔てた複数個の吸気温MT1、MT2、MT3、・・・MTj、に順次変更され、入力値x7は、図7に示されるように間隔を隔てた複数個の機関冷却水温TW1、TW2、TW3、・・・ATWj、に順次変更される。
即ち、まず初めにステップ106では、全ての入力値x1、x2・・・xn−1、xnが初期値とされる。次いでステップ107では、図7に示される関係から、大気圧PAに応じた補正値KAと、吸気温TMに応じた補正値KBと、機関冷却水温TWに応じた補正値KCが算出され、これら補正値KA、補正値KB、補正値KCから、基本EGR率RAに対する補正値KKRA(=KA・KB・KC)が算出される。次いでステップ108では、図3Bに示される基本EGR率RAに補正値KKRAを乗算した値KKRA・RAが、目標EGR率RAOとされる。
次いで、ステップ109では、図15に示されるサブルーチンにより、EGR率の実測値が目標EGR率RAOになったときの全ての入力値x1、x2・・・xn−1、xnおよび教師データytが試験制御装置60のメモリ内に記憶される。それにより入力値x1、x2・・・xn−1、xnおよび教師データytからなる新たなデータセットが形成される。次いでステップ110では、入力値x1と入力値x2との全ての組み合わせについて、即ち、機関負荷Lと機関回転数NEとの全ての組み合わせについて、データの取得が完了したか否かが判別される。入力値x1と入力値x2との全ての組み合わせについてデータの取得が完了していないと判別されたときには、ステップ111に進んで、入力値x1と入力値x2のいずれか一方、即ち、機関負荷Lと機関回転数NEのいずれか一方が変更される。
次いでステップ107では、変更後の機関負荷Lと機関回転数NEに基づき補正値KKRAが算出される。このときには、いずれの入力値x5、入力値x6および入力値x7も変更されていないので、補正値KKRAは同じ値に維持される。次いでステップ108では、変更後の機関負荷Lと機関回転数NEに基づき取得された図3Bに示される基本EGR率RAに補正値KKRAを乗算した値KKRA・RAが、目標EGR率RAOとされる。ステップ109では、図15に示されるサブルーチンにより、EGR率の実測値が目標EGR率RAOになったときの全ての入力値x1、x2・・・xn−1、xnおよび教師データytが試験制御装置60のメモリ内に記憶される。それにより入力値x1、x2・・・xn−1、xnおよび教師データytからなる新たなデータセットが形成される。このようなデータの取得作用が、機関負荷Lと機関回転数NEとの全ての組み合わせについてのデータの取得が完了するまで、繰り返し行われる。
ステップ110において、入力値x1と入力値x2との全ての組み合わせについて、即ち、機関負荷Lと機関回転数NEとの全ての組み合わせについて、データの取得が完了したと判別されたときには、ステップ112に進んで、入力値x5、入力値x6および入力値x7の全ての組み合わせについて、即ち、大気圧PA、吸気温MTおよび機関冷却水温TWの全ての組み合わせについて、データの取得が完了したか否かが判別される。入力値x5、入力値x6および入力値x7の全ての組み合わせについてデータの取得が完了していないと判別されたときには、ステップ113に進んで、大気圧PA、吸気温MTおよび機関冷却水温TWのいずれか一つが変更される。次いでステップ114では、入力値x1と入力値x2が初期化される。次いで再びステップ107に戻る。
このときには、大気圧PA、吸気温MTおよび機関冷却水温TWのいずれか一つが変更されているので、ステップ107において補正値KKRAが更新される。次いでステップ108では、目標EGR率RAOが算出され、ステップ109では、図15に示されるサブルーチンにより、EGR率の実測値が目標EGR率RAOになったときの全ての入力値x1、x2・・・xn−1、xnおよび教師データytが試験制御装置60のメモリ内に記憶される。それにより入力値x1、x2・・・xn−1、xnおよび教師データytからなる新たなデータセットが形成される。このようなデータの取得作用が、機関負荷Lと機関回転数NEとの全ての組み合わせについてのデータの取得が完了するまで、繰り返し行われる。
ステップ110において、機関負荷Lと機関回転数NEとの全ての組み合わせについて、データの取得が完了したと判別されたときには、ステップ112に進み、ステップ112において、入力値x5、入力値x6および入力値x7の全ての組み合わせについて、即ち、大気圧PA、吸気温MTおよび機関冷却水温TWの全ての組み合わせについて、データの取得が完了していないと判別されたときには、ステップ113に進んで、大気圧PA、吸気温MTおよび機関冷却水温TWのいずれか一つが変更される。次いで、再び、データの取得作用が行われる。このようなデータの取得作用が、大気圧PA、吸気温MTおよび機関冷却水温TWの全ての組み合わせについてのデータの取得が完了するまで、繰り返し行われる。
このようにして、訓練データセットを作成するのに必要なデータが取得される。即ち、図11に示される訓練データセットのNo.1からNo.mの入力値x1m、x2m・・・xnm−1、xnmと教師データytm(m=1,2,3・・・m)とが、試験制御装置60のメモリ内に記憶される。それにより図11に示されるような訓練データセットが作成される。このようにして作成された訓練データセットの電子データを用いて、図9に示されるニューラルネットワーク50の重みの学習が行われる。
図12に示される例では、ニューラルネットワークの重みの学習を行うための学習装置61が設けられている。この学習装置61としてパソコンを用いることもできる。図12に示されるように、この学習装置61は、CPU(マイクロプロセッサ)62と、記憶装置63、即ち、メモリ63とを具備している。図12に示される例では、図9に示されるニューラルネットワーク50のノード数、および作成された訓練データセットの電子データが学習装置61のメモリ63に記憶され、CPU62においてニューラルネットワーク50の重みの学習が行われる。
図16は、学習装置61において行われるニューラルネットワーク50の重みの学習処理ルーチンを示す。
図16を参照すると、まず初めに、ステップ200において、学習装置61のメモリ63に記憶されているニューラルネットワーク50に対する訓練データセットの各データが読み込まれる。次いで、ステップ201において、ニューラルネットワーク50の入力層 ( L=1) のノード数、隠れ層 ( L=2)および隠れ層 ( L=3)のノード数および出力層 ( L=4) のノード数が読み込まれ、次いで、ステップ202において、これらノード数に基づき、図9に示されるようなニューラルネットワーク50が作成される。
図16を参照すると、まず初めに、ステップ200において、学習装置61のメモリ63に記憶されているニューラルネットワーク50に対する訓練データセットの各データが読み込まれる。次いで、ステップ201において、ニューラルネットワーク50の入力層 ( L=1) のノード数、隠れ層 ( L=2)および隠れ層 ( L=3)のノード数および出力層 ( L=4) のノード数が読み込まれ、次いで、ステップ202において、これらノード数に基づき、図9に示されるようなニューラルネットワーク50が作成される。
次いで、ステップ203では、ニューラルネットワーク50の重みの学習が行われる。このステップ203では、最初に、図11の1番目(No. 1)の入力値x1、x2・・・xn−1、xnがニューラルネットワーク50の入力層 ( L=1) の各ノードに入力される。このときニューラルネットワーク50の出力層からは、目標EGR率の推定値を示す出力値yが出力される。ニューラルネットワーク50の出力層から出力値yが出力されると、この出力値yと1番目(No. 1)の教師データyt1との間の二乗誤差E=1/2(y−yt1)2が算出され、この二乗誤差Eが小さくなるように、前述した誤差逆伝播法を用いて、ニューラルネットワーク50の重みの学習が行われる。
図11の1番目(No. 1)のデータに基づくニューラルネットワーク50の重みの学習が完了すると、次に、図11の2番目(No. 2)のデータに基づくニューラルネットワーク50の重みの学習が、誤差逆伝播法を用いて行われる。同様にして、図11のm番目(No. m)まで順次、ニューラルネットワーク50の重みの学習が行われる。図11の1番目(No. 1)からm番目(No. m)までの全てについてニューラルネットワーク50の重みの学習が完了すると、ステップ204に進む。
ステップ204では、例えば、図11の1番目(No. 1)からm番目(No. m)までの全てのニューラルネットワークの出力値yと教師データytとの間の二乗和誤差Eが算出され、この二乗和誤差Eが、予め設定された設定誤差以下になったか否かが判別される。二乗和誤差Eが、予め設定された設定誤差以下になっていないと判別されたときには、ステップ203に戻り、再度、図11に示される訓練データセットに基づいて、ニューラルネットワーク50の重み学習が行われる。次いで、二乗和誤差Eが、予め設定された設定誤差以下になるまで、ニューラルネットワーク50の重みの学習が続行される。ステップ204において、二乗和誤差Eが、予め設定された設定誤差以下になったと判別されたときには、ステップ205に進んで、ニューラルネットワーク50の学習済み重みが学習装置61のメモリ63内に記憶される。このようにして、目標EGR率の推定モデルが作成される。
本発明による実施例では、このようにして作成された目標EGR率の推定モデルを用いて、市販車両における排気ガス再循環システムの異常検出が行われる、そのためにこの目標EGR率の推定モデルが市販車両の電子制御ユニット30に格納される。図17は、目標EGR率の推定モデルを市販車両の電子制御ユニット30に格納するために、電子制御ユニット30において行われる電子制御ユニットへのデータ読み込みルーチンを示している。
図17を参照すると、まず初めに、ステップ300において、図9に示されるニューラルネットワーク50の入力層 ( L=1) のノード数、隠れ層 ( L=2)および隠れ層 ( L=3)のノード数および出力層 ( L=4) のノード数が電子制御ユニット30のメモリ32に読み込まれ、次いで、ステップ301において、これらノード数に基づき、図9に示されるようなニューラルネットワーク50が作成される。次いで、ステップ302において、このニューラルネットワーク50の学習済み重みが電子制御ユニット30のメモリ32に読み込まれる。それにより目標EGR率の推定モデルが市販車両の電子制御ユニット30に格納される。
図18は、市販車両の電子制御ユニット30において実行されるEGR弁目標開度を求めるための機能構成図を示している。図18を参照すると、図18には、機関負荷Lを表す入力値x1機関回転数NEを表す入力値x2、吸気圧を表す入力値x3、吸入空気量を表す入力値x4、大気圧PAを表す入力値x5、吸気温MTを表す入力値x6および機関冷却水温TWを表す入力値x7が示されている。更に図18には、5個の機能ブロックA,B,C,D、Eが示されている。
図18に示されるように、機能ブロックAでは、機関負荷(x1)および機関回転数(x2)に基づいて、図4に示されるマップから、EGR弁目標開度SAが算出される。一方、機能ブロックCでは、図3Bに示される基本EGR率RAと、図7に示される補正値KA、補正値KB、補正値KCから、目標EGR率RAO(=KKRA・RA)が算出される。機能ブロックBでは、この目標EGR率RAOと、図8に示される補正量KSAから、EGR弁目標開度SAの補正量KKSA(=KSA・RAO)が算出され、EGR弁目標開度SAにこの補正値KKSAを乗算することにより、EGR弁目標開度SAO(=SA・KKSA)が算出される。
一方、機能ブロックDでは、ニューラルネットワーク50を用いて、機関負荷(x1)、機関回転数(x2)、吸気圧(x3)、吸入空気量(x4)、大気圧(x5)、吸気温(x6)および機関冷却水温TW(x7)から、目標EGR率RAOの推定値yが算出される。機能ブロックEでは、目標EGR率RAOの推定値yが目標EGR率RAOに一致するように、EGR弁目標開度SAO(=SA・KKSA)がフィードバック補正される。
図19は、市販車両において車両走行中に行われるEGR制御ルーチンを示している。このEGR制御ルーチンは一定時間毎の割り込みによって実行される。
図19を参照すると、まず初めに、ステップ400において、機関負荷Lを表す入力値x1、機関回転数NEを表す入力値x2、吸気圧を表す入力値x3、吸入空気量を表す入力値x4、大気圧PAを表す入力値x5、吸気温MTを表す入力値x6および機関冷却水温TWを表す入力値x7が読み込まれる。次いでステップ401では、図3Bに示されるマップから基本EGR率RAが算出される。次いでステップ402では、図7に示される補正値KA、補正値KB、補正値KCから、補正値KKRA(=KA・KB・KC)が算出される。次いでステップ403では、目標EGR率RAO(=KKRA・RA)が算出される。
図19を参照すると、まず初めに、ステップ400において、機関負荷Lを表す入力値x1、機関回転数NEを表す入力値x2、吸気圧を表す入力値x3、吸入空気量を表す入力値x4、大気圧PAを表す入力値x5、吸気温MTを表す入力値x6および機関冷却水温TWを表す入力値x7が読み込まれる。次いでステップ401では、図3Bに示されるマップから基本EGR率RAが算出される。次いでステップ402では、図7に示される補正値KA、補正値KB、補正値KCから、補正値KKRA(=KA・KB・KC)が算出される。次いでステップ403では、目標EGR率RAO(=KKRA・RA)が算出される。
次いでステップ404では、図4に示されるマップからEGR弁目標開度SAが算出され、図8に示されるマップから補正値KSAが算出される。次いでステップ405では、EGR弁目標開度SAOに対する補正値KKSA(=KKRA・KSA)が算出される。次いでステップ406では、EGR弁目標開度SAO(=KKSA・SA)が算出される。次いでステップ407では、ニューラルネットワーク50の入力層の各ノードに、機関負荷Lを表す入力値x1機関回転数NEを表す入力値x2、吸気圧を表す入力値x3、吸入空気量を表す入力値x4、大気圧PAを表す入力値x5、吸気温MTを表す入力値x6および機関冷却水温TWを表す入力値x7が入力され、このときニューラルネットワーク50の出力層からは、目標EGR率RAOの推定値yが出力される。その結果、ステップ408に記載されているように目標EGR率RAOの推定値yが取得される。
次いでステップ409では、目標EGR率RAOの推定値yと目標EGR率RAOの差に定数Cを乗算した値がEGR弁目標開度SAの補正値ΔSAとされる。次いでステップ410では、ステップ406において算出されたEGR弁目標開度SAOにこの補正値ΔSAを加算することによって、最終的なEGR弁目標開度SAO+ΔSAが算出される。次いでステップ411では、EGR弁14の開度がこの最終的な目標開度SAO+ΔSAとなるように、EGR弁14の駆動命令が発せられる。即ち、ステップ409からステップ411では、目標EGR率RAOの推定値yが目標EGR率RAOに一致するように、EGR弁14の開度がフィードバック制御される。なお、図19には、比例項のみを用いたフィードバック制御の簡単な例が示されているが、このフィードバック制御としては、PID制御等、種々のフィードバック制御を用いることができる。
EGR弁14の駆動命令が発せられると、ステップ412に進んで、目標EGR率RAO、目標EGR率RAOの推定値yおよび目標EGR率RAOの推定値yが取得された時刻tを一定時間の間、電子制御ユニット30のメモリ32に記憶させる記憶処理が行われる。この記憶処理は、排気ガス再循環システムの異常検出を行うためのものであり、これらの取得データは一定時間を経過すると消去される。次に、これらの取得データを用いて、車両運転中に行われる排気ガス再循環システムの異常検出方法について図20Aから図26を参照しつつ説明する。
図20Aから図20Cには、車両運転中において、目標EGR率RAOが上昇したときの目標EGR率RAOの時間経過に伴う変化が実線で示されており、このときの目標EGR率RAOの推定値yの時間経過に伴う変化が破線で示されている。図20Aは排気ガス再循環システムが正常なときを示しており、このときには目標EGR率RAOが変化しても、目標EGR率RAOの推定値yは、図20Aに示されるように、目標EGR率RAOに追従しながら変化する。
一方、図20Bは、EGR弁14に応答遅れが生じている場合を示している。即ち、目標EGR率RAOが増大すると、EGR率を増大すべく、最終的なEGR弁目標開度SAO+ΔSAが増大し、その結果、EGR弁14にはEGR弁14の開度を増大すべき駆動命令が発せられる。しかしながら、EGR弁14に応答遅れが生じていると、EGR弁14にEGR弁14の開度を増大すべき駆動命令が発せられても、EGR弁14の開度は増大しない。従って、図20Bにおいて破線で示されるように、実際のEGR率の変化を表している目標EGR率RAOの推定値yはなかなか上昇しない。
一方、本発明による実施例では、EGR弁14の開度に対し、フィードバック制御が行われているので、目標EGR率RAOと目標EGR率RAOの推定値yとの差が大きくなると、最終的なEGR弁目標開度SAO+ΔSAが大きく増大せしめられる。その結果、実際のEGR率の変化を表している目標EGR率RAOの推定値yは、図20Bにおいて破線で示されるように、徐々に増大し、場合によっては、図20Bに示されるようにオーバーシュートした後、目標EGR率RAOとなる。このようにEGR弁14に応答遅れが生じているか否かは、目標EGR率RAOが増大したときの目標EGR率RAOと目標EGR率RAOの推定値yとのEGR率差ΔEGRからわかることになる。
ところで、目標EGR率RAOの変化量が少ないときには、EGR率差ΔEGRが小さく、従って、EGR率差ΔEGRの大きさから、EGR弁14に応答遅れが生じているか否かを判別するのは困難である。従って、EGR率差ΔEGRの大きさから、EGR弁14に応答遅れが生じているか否かを判別するには、目標EGR率RAOの変化量がある程度大きい必要がある。一方、目標EGR率RAOの変化量がある程度大きい場合でも、目標EGR率RAOがゆっくりと上昇したときには、EGR弁14に応答遅れが生じていたとしても、実際のEGR率の変化を表している目標EGR率RAOの推定値yは目標EGR率RAOに追従して変化し、大きなEGR率差ΔEGRが生じない。従って、目標EGR率RAOがゆっくりと上昇したときには、EGR率差ΔEGRの大きさから、EGR弁14に応答遅れが生じているか否かを判別するのは困難である。
一方、目標EGR率RAOが速い速度で上昇したときには、EGR弁14に応答遅れが生じている場合には、EGR率差ΔEGRが大きくなり、従って、EGR弁14に応答遅れが生じているか否かの判別が可能となる。従って、EGR率差ΔEGRの大きさから、EGR弁14に応答遅れが生じているか否かを判別するには、目標EGR率RAOの変化量がある程度大きく、かつ目標EGR率RAOの上昇速度が速い必要がある。そこで、本発明による実施例では、目標EGR率RAOの上昇速度が、図20CにおいてtXで示される一定時間の間、予め定められた上昇速度範囲内に維持されていたときに、EGR率差ΔEGRの大きさから、EGR弁14に応答遅れが生じているか否かを判別するようにしている。
ところで、EGR弁14の応答遅れが大きくなると、図20Cにおいて、目標EGR率RAOと目標EGR率RAOの推定値yとの間のハッチング領域の面積が増大し、従って、このハッチング領域の面積から、EGR弁14に応答遅れが生じているか否かの判別が可能となる。そこで本発明による実施例では、目標EGR率RAOが上昇を開始したときの時刻tsから、目標EGR率RAOと目標EGR率RAOの推定値yとのEGR率差ΔEGRが一定値以下となったときの時刻teまでのEGR率差ΔEGRの積算値が求められ、このEGR率差ΔEGRの積算値が予め設定された閾値以上のときには、EGR弁14に応答遅れが生じていると判別される。
図21は、EGR弁14に応答遅れ異常を検出するためのルーチンを示している。このルーチンは一定時間Δt毎の割り込みによって実行される。
図21を参照すると、まず初めに、ステップ500において、EGR弁14の応答遅れ異常の検出が完了したことを示す検出完了フラグ1がセットされているか否かが判別される。検出完了フラグ1がセットされていないときにはステップ501に進んで、EGR弁14の応答遅れ異常を判別すべきであることを示す判定フラグがセットされているか否かが判別される。判定フラグがセットされていないときにはステップ502に進んで、現在の目標EGR率RAOと、前回の割り込み時における目標EGR率RAOとの差、即ち、目標EGR率RAOの上昇速度ΔRAが算出される。
図21を参照すると、まず初めに、ステップ500において、EGR弁14の応答遅れ異常の検出が完了したことを示す検出完了フラグ1がセットされているか否かが判別される。検出完了フラグ1がセットされていないときにはステップ501に進んで、EGR弁14の応答遅れ異常を判別すべきであることを示す判定フラグがセットされているか否かが判別される。判定フラグがセットされていないときにはステップ502に進んで、現在の目標EGR率RAOと、前回の割り込み時における目標EGR率RAOとの差、即ち、目標EGR率RAOの上昇速度ΔRAが算出される。
次いで、ステップ503では、この目標EGR率RAOの上昇速度ΔRAが、予め設定されている下限速度RXと上限速度RYとの間にあるか否かが判別される。上昇速度ΔRAが、下限速度RXと上限速度RYとの間にあるときにはステップ504に進んで、図20Cに示される経過時間tXに割り込み時間間隔Δtが加算される。従って、この経過時間tXは、目標EGR率RAOが上昇を開始したときからの経過時間を表していることになる。次いで、ステップ505では、経過時間tXが設定時間Zを越えたか否かが判別される。経過時間tXが設定時間Zを越えていないときには、処理サイクルを終了する。
これに対し、経過時間tXが設定時間Zを越えたときには、ステップ506に進んで、判定フラグがセットされ、次いで、ステップ507では、経過時間tXから、図20Cに示される目標EGR率RAOの上昇開始時刻tsが算出される。次いで、ステップ508では、経過時間tXがクリアされる。一方、ステップ503において、上昇速度ΔRAが、下限速度RXと上限速度RYとの間にないと判別されたときには、ステップ508にジャンプする。判定フラグがセットされると、次の処理サイクルでは、ステップ501からステップ509に進む。
ステップ509では、目標EGR率RAOと目標EGR率RAOの推定値yとのEGR率差ΔEGRが算出される。次いで、ステップ510では、EGR率差ΔEGRが―αとα(αは予め設定された小さな一定値)との間にあるか否かが判別される。EGR率差ΔEGRが―αとαとの間にないときには、ステップ511に進んで、EGR率差ΔEGRが―αとαとの間にない状態が一定時間以上継続したか否かが判別される。EGR弁14に応答遅れがない場合でもある場合でも、或る時間を経過すれば、EGR率差ΔEGRは―αとαとの間となるので、EGR率差ΔEGRが―αとαとの間にない状態が一定時間以上継続したと判別されたときには、何らかの他の異常が生じていると考えられる。従って、この場合には、ステップ512に進んで、判定フラグがリセットされる。
一方、ステップ510において、EGR率差ΔEGRが―αとαとの間にあると判別されたときには、ステップ513に進んで、EGR弁14の応答遅れ異常が生じているか否かを判定するための判定処理が行われる。この判定処理が図22に示されている。図22を参照すると、ステップ520において、電子制御ユニット30のメモリ32内に記憶されている各時刻tにおける目標EGR率RAOと目標EGR率RAOの推定値yとに基づいて、目標EGR率RAOの上昇開始時刻tsから現在の時刻までの各時刻における目標EGR率RAOと目標EGR率RAOの推定値yとのEGR率差ΔEGRが算出される。この現在の時刻は、図20Cに示される場合には、teに相当する。
次いで、ステップ521では、目標EGR率RAOの上昇開始時刻tsから現在の時刻までの各時刻におけるEGR率差ΔEGRの積算値ΣΔEGRが算出される。次いで、ステップ522では、積算値ΣΔEGRが予め設定された閾値IXよりも大きいか否かが判別される。積算値ΣΔEGRが予め設定された閾値IXよりも小さいときには、図21のステップ512に進んで判定フラグがリセットされる。これに対し、積算値ΣΔEGRが予め設定された閾値IXよりも大きいときにはステップ523に進んで、異常対処が行われる。この異常対処の一例としては、例えば、警告灯が点灯される。次いで、ステップ524では、検出完了フラグ1がリセットされる。
なお、これまで、目標EGR率RAOが上昇したときのEGR率差ΔEGRから、EGR弁14の応答遅れ異常が生じているか否かを判定するようにした例について説明してきたが、目標EGR率RAOが低下したときにも、同様の方法で、EGR率差ΔEGRから、EGR弁14の応答遅れ異常が生じているか否かを判定することができる。即ち、目標EGR率RAOが上昇したときでも、目標EGR率RAOが低下したときでも、EGR弁14に応答遅れがあるときには、目標EGR率RAOと目標EGR率RAOの推定値yとのEGR率差ΔEGRが増大する。
従って、本発明による実施例では、機関運転時において、目標EGR率が変化したときに、目標EGR率の推定値と目標EGR率との差が増大したときには、EGR弁14の応答遅れが生じていると判別される。なお、この場合、本発明による実施例では、機関運転時において、目標EGR率が変化したときに、目標EGR率の推定値と目標EGR率との差の積分値が算出され、算出された積分値が予め設定された閾値よりも大きいときには、EGR弁の応答遅れが生じていると判別される。
一方、図23Aおよび図23Bには、EGR弁14或いはEGR通路13内に目詰まりが生じている場合において、目標EGR率RAOが上昇したときの目標EGR率RAOの時間経過に伴う変化が実線で示されており、このときの目標EGR率RAOの推定値yの時間経過に伴う変化が破線で示されている。なお、図23Bは、図23Aに比べて、目標EGR率RAOが大きく増大された場合を示している。
さて、目標EGR率RAOが増大すると、EGR率を増大すべく、最終的なEGR弁目標開度SAO+ΔSAが増大し、その結果、EGR弁14の開度が増大せられる。しかしながら、EGR弁14或いはEGR通路13内に目詰まりが生じていると、EGR弁14の開度が増大しても、EGR通路13からサージタンク6内に流入する再循環排気ガス量が十分に増大しないために、目標EGR率RAOの推定値yがなかなか上昇しない。
一方、本発明による実施例では、EGR弁14の開度に対し、フィードバック制御が行われているので、目標EGR率RAOと目標EGR率RAOの推定値yとの差が大きくなると、最終的なEGR弁目標開度SAO+ΔSAが大きく増大せしめられる。しかしながら、最終的なEGR弁目標開度SAO+ΔSAが大きく増大せしめられても、EGR弁14或いはEGR通路13内の目詰まり量が多い場合には、実際のEGR率の変化を表している目標EGR率RAOの推定値yは、図23Aおよび図23Bにおいて破線で示されるように、目標EGR率RAOまで増大しない。その結果、EGR弁14は全開状態となる。従って、EGR弁14或いはEGR通路13内に目詰まりが生じているか否かは、目標EGR率RAOが増大して安定したときの目標EGR率RAOと目標EGR率RAOの推定値yとのEGR率差ΔEGRからわかることになる。
なお、EGR弁14或いはEGR通路13内の目詰まり量が多い場合には、図23Aおよび図23Bからわかるように、目標EGR率RAOの上昇後の大きさに関係なく、実際のEGR率の変化を表している目標EGR率RAOの推定値yは、或る程度までしか上昇しない。従って、目標EGR率RAOの上昇後では、目標EGR率RAOと目標EGR率RAOの推定値yとのEGR率差ΔEGRは、目標EGR率RAOが高いほど大きくなる。従って、EGR弁14或いはEGR通路13内に目詰まりが生じていると判別するためのEGR率差ΔEGRに対する閾値DXは、図23Cに示されるように、目標EGR率RAOが高くなるほど大きくされる。
図24は、EGR弁14或いはEGR通路13内に目詰まりが生じている目詰まり異常を検出するためのルーチンを示している。このルーチンは一定時間毎の割り込みによって実行される。
図24を参照すると、まず初めに、ステップ600において、EGR弁14或いはEGR通路13内の目詰まり異常の検出が完了したことを示す検出完了フラグ2がセットされているか否かが判別される。検出完了フラグ2がセットされていないときにはステップ601に進んで、目標EGR率RAOが、設定値XF以上であるか否かが判別される。即ち、目標EGR率RAOが或る程度高くないと、EGR率差ΔEGRが生じないので、ステップ601では、目標EGR率RAOが、設定値XF以上であるか否かが判別される。
図24を参照すると、まず初めに、ステップ600において、EGR弁14或いはEGR通路13内の目詰まり異常の検出が完了したことを示す検出完了フラグ2がセットされているか否かが判別される。検出完了フラグ2がセットされていないときにはステップ601に進んで、目標EGR率RAOが、設定値XF以上であるか否かが判別される。即ち、目標EGR率RAOが或る程度高くないと、EGR率差ΔEGRが生じないので、ステップ601では、目標EGR率RAOが、設定値XF以上であるか否かが判別される。
次いで、ステップ602では、目標EGR率RAOが一定時間以上、変化していないか否か、即ち、目標EGR率RAOが安定しているか否かが判別される。目標EGR率RAOが一定時間以上、変化していないとき、即ち、目標EGR率RAOが安定しているときには、ステップ603に進んで、目標EGR率RAOと目標EGR率RAOの推定値yとのEGR率差ΔEGRが算出される。次いで、ステップ604では、図23Cから、目標EGR率RAOに応じた閾値DXが算出される。次いで、ステップ605では、EGR率差ΔEGRが閾値DXよりも大きいか否かが判別される。EGR率差ΔEGRが閾値DXよりも大きいときにはステップ606に進んで、異常対処が行われる。この異常対処の一例としては、例えば、警告灯が点灯される。次いで、ステップ607では、検出完了フラグ2がリセットされる。
即ち、この例では、機関運転時において、目標EGR率が安定しているときに、目標EGR率の推定値が目標EGR率よりも低くかつ目標EGR率の推定値と目標EGR率との差が閾値よりも大きいときには、EGR弁或いはEGR通路に目詰まりが生じていると判別される。
一方、図25Aおよび図25Bには、EGR弁14が完全に閉弁しない閉弁不良を生じている場合において、目標EGR率RAOが上昇したときの目標EGR率RAOの時間経過に伴う変化が実線で示されており、このときの目標EGR率RAOの推定値yの時間経過に伴う変化が破線で示されている。なお、図25Bは、図25Aに比べて、上昇前の目標EGR率RAOが低い場合を示している。
さて、図25Aおよび図25Bにおいて上昇前の目標EGR率RAOで示されるように、目標EGR率RAOが低い場合には、EGR率を低下すべく、最終的なEGR弁目標開度SAO+ΔSAが低下せしめられ、その結果、EGR弁14の開度が低下せられる。しかしながら、EGR弁14が完全に閉弁しない閉弁不良を生じている場合には、EGR弁14に閉弁指令が発せられても、EGR弁14は或る開度までしか閉弁しない。これは、EGR弁14の開度に対し、フィードバック制御が行われているときも同じである。従って、EGR弁14が閉弁不良を生じている場合には、図25Aおよび図25Bにおいて破線で示されるように、実際のEGR率の変化を表している目標EGR率RAOの推定値yは、或る程度までしか低下しない。従って、EGR弁14が閉弁不良を生じているか否かは、目標EGR率RAOが安定しているときの目標EGR率RAOと目標EGR率RAOの推定値yとのEGR率差ΔEGRからわかることになる。
なお、EGR弁14が閉弁不良を生じているときには、図25Aおよび図25Bにおいて上昇前の目標EGR率RAOおよび目標EGR率RAOの推定値yで示されるように、目標EGR率RAOの大きさに関係なく、実際のEGR率の変化を表している目標EGR率RAOの推定値yは、同じような値となる。従って、目標EGR率RAOと目標EGR率RAOの推定値yとのEGR率差ΔEGRは、目標EGR率RAOが低いほど大きくなる。従って、EGR弁14が閉弁不良を生じていると判別するためのEGR率差ΔEGRに対する閾値EXは、図25Cに示されるように、目標EGR率RAOが低くなるほど大きくされる。
図26は、EGR弁14が閉弁不良を生じている閉弁異常を検出するためのルーチンを示している。このルーチンは一定時間毎の割り込みによって実行される。
図26を参照すると、まず初めに、ステップ700において、EGR弁14の閉弁異常の検出が完了したことを示す検出完了フラグ3がセットされているか否かが判別される。検出完了フラグ3がセットされていないときにはステップ701に進んで、目標EGR率RAOが、設定値XM以下であるか否かが判別される。即ち、目標EGR率RAOが或る程度低くないと、EGR率差ΔEGRが生じないので、ステップ701では、目標EGR率RAOが、設定値XF以下であるか否かが判別される。
図26を参照すると、まず初めに、ステップ700において、EGR弁14の閉弁異常の検出が完了したことを示す検出完了フラグ3がセットされているか否かが判別される。検出完了フラグ3がセットされていないときにはステップ701に進んで、目標EGR率RAOが、設定値XM以下であるか否かが判別される。即ち、目標EGR率RAOが或る程度低くないと、EGR率差ΔEGRが生じないので、ステップ701では、目標EGR率RAOが、設定値XF以下であるか否かが判別される。
次いで、ステップ702では、目標EGR率RAOが一定時間以上、変化していないか否か、即ち、目標EGR率RAOが安定しているか否かが判別される。目標EGR率RAOが一定時間以上、変化していないとき、即ち、目標EGR率RAOが安定しているときには、ステップ703に進んで、目標EGR率RAOと目標EGR率RAOの推定値yとのEGR率差ΔEGRが算出される。次いで、ステップ704では、図25Cから、目標EGR率RAOに応じた閾値EXが算出される。次いで、ステップ705では、EGR率差ΔEGRが閾値EXよりも大きいか否かが判別される。EGR率差ΔEGRが閾値EXよりも大きいときにはステップ706に進んで、異常対処が行われる。この異常対処の一例としては、例えば、警告灯が点灯される。次いで、ステップ707では、検出完了フラグ3がリセットされる。
即ち、この例では、機関運転時において、目標EGR率が安定しているときに、目標EGR率の推定値が目標EGR率よりも高くかつ目標EGR率の推定値と目標EGR率との差が閾値よりも大きいときには、EGR弁の閉弁不良が生じていると判別される。
ところで、上述したように、本発明による実施例では、機関運転時に、EGR率が目標EGR率となるようにEGR弁開度がフィードバック制御されている。この場合、EGR弁開度をフィードバック制御しなくても、目標EGR率の推定値と目標EGR率との差に基づいて、排気ガス再循環システムの異常を検出することができる。無論、この場合、EGR弁開度をフィードバック制御した方が、排気ガス再循環システムの異常検出の精度は高くなる。
このようにEGR弁開度をフィードバック制御しなくても、目標EGR率の推定値と目標EGR率との差に基づいて、排気ガス再循環システムの異常を検出することができることを考慮すると、本発明では、機関から排出された排気ガスをスロットル弁下流の吸気通路に再循環させるためのEGR通路内にEGR弁を配置し、目標EGR率が、少なくとも機関負荷および機関回転数の関数として予め記憶されており、EGR率が目標EGR率となるようにEGR弁開度が制御される排気ガス再循環システムの異常検出装置において。機関負荷と、機関回転数と、スロットル弁下流の吸気通路内の吸気圧と、機関への吸入空気量からなる少なくとも四つのパラメータをニューラルネットワークの入力パラメータとし、目標EGR率を教師データとして重みの学習が行われた学習済みニューラルネットワークが記憶されており、機関運転時に、この学習済みニューラルネットワークを用いて、上述のパラメータから目標EGR率が推定され、目標EGR率の推定値と目標EGR率との差に基づいて、排気ガス再循環システムの異常が検出される。
この場合、本発明による実施例では、目標EGR率が、機関負荷、機関回転数、大気圧、吸気温および機関冷却水温の関数として予め記憶されており、機関負荷と、機関回転数と、スロットル弁下流の吸気通路内の吸気圧と、機関への吸入空気量と、大気圧と、吸気温と、機関冷却水温からなる七つのパラメータをニューラルネットワークの入力パラメータとし、目標EGR率を教師データとして重みの学習が行われた学習済みニューラルネットワークが記憶されており、機関運転時に、この学習済みニューラルネットワークを用いて、上述の七つのパラメータから目標EGR率が推定され、目標EGR率の推定値と目標EGR率との差に基づいて、排気ガス再循環システムの異常が検出される。
1 機関本体
6 サージタンク
8 吸入空気量検出器
10 排気マニホルド
11 スロットル弁
13 EGR通路
14 EGR弁
15 EGRクーラ
16 吸気圧センサ
17 吸気温センサ
18 大気圧センサ
19 水温センサ
30 電子制御ユニット
6 サージタンク
8 吸入空気量検出器
10 排気マニホルド
11 スロットル弁
13 EGR通路
14 EGR弁
15 EGRクーラ
16 吸気圧センサ
17 吸気温センサ
18 大気圧センサ
19 水温センサ
30 電子制御ユニット
Claims (7)
- 機関から排出された排気ガスをスロットル弁下流の吸気通路に再循環させるためのEGR通路内にEGR弁を配置し、目標EGR率が、少なくとも機関負荷および機関回転数の関数として予め記憶されており、EGR率が目標EGR率となるようにEGR弁開度が制御される排気ガス再循環システムの異常検出装置において、機関負荷と、機関回転数と、スロットル弁下流の吸気通路内の吸気圧と、機関への吸入空気量からなる少なくとも四つのパラメータをニューラルネットワークの入力パラメータとし、目標EGR率を教師データとして重みの学習が行われた学習済みニューラルネットワークが記憶されており、機関運転時に、該学習済みニューラルネットワークを用いて、上記パラメータから目標EGR率が推定され、目標EGR率の推定値と目標EGR率との差に基づいて、排気ガス再循環システムの異常が検出される排気ガス再循環システムの異常検出装置。
- 機関運転時に、EGR率が目標EGR率となるようにEGR弁開度がフィードバック制御される請求項1に記載の排気ガス再循環システムの異常検出装置。
- 目標EGR率が、機関負荷、機関回転数、大気圧、吸気温および機関冷却水温の関数として予め記憶されており、機関負荷と、機関回転数と、スロットル弁下流の吸気通路内の吸気圧と、機関への吸入空気量と、大気圧と、吸気温と、機関冷却水温からなる七つのパラメータをニューラルネットワークの入力パラメータとし、目標EGR率を教師データとして重みの学習が行われた学習済みニューラルネットワークが記憶されており、機関運転時に、該学習済みニューラルネットワークを用いて、上記七つのパラメータから目標EGR率が推定され、目標EGR率の推定値と目標EGR率との差に基づいて、排気ガス再循環システムの異常が検出される請求項1に記載の排気ガス再循環システムの異常検出装置。
- 機関運転時において、目標EGR率が変化したときに、目標EGR率の推定値と目標EGR率との差が増大したときには、EGR通路弁の応答遅れが生じていると判別される請求項1に記載の排気ガス再循環システムの異常検出装置。
- 機関運転時において、目標EGR率が変化したときに、目標EGR率の推定値と目標EGR率との差の積分値が算出され、算出された積分値が予め設定された閾値よりも大きいときには、EGR弁の応答遅れが生じていると判別される請求項4に記載の排気ガス再循環システムの異常検出装置。
- 機関運転時において、目標EGR率が安定しているときに、目標EGR率の推定値が目標EGR率よりも低くかつ目標EGR率の推定値と目標EGR率との差が閾値よりも大きいときには、EGR通路に目詰まりが生じていると判別される請求項1に記載の排気ガス再循環システムの異常検出装置。
- 機関運転時において、目標EGR率が安定しているときに、目標EGR率の推定値が目標EGR率よりも高くかつ目標EGR率の推定値と目標EGR率との差が閾値よりも大きいときには、EGR弁の閉弁不良が生じていると判別される請求項1に記載の排気ガス再循環システムの異常検出装置。
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US11459962B2 (en) * | 2020-03-02 | 2022-10-04 | Sparkcognitton, Inc. | Electronic valve control |
-
2020
- 2020-05-26 JP JP2020091608A patent/JP2020197216A/ja active Pending
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