JP2020196934A - プラズマ処理装置 - Google Patents

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真輔 松田
Shinsuke Matsuda
真輔 松田
篤史 大澤
Atsushi Osawa
篤史 大澤
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Abstract

【課題】処理速度をさらに向上できる技術を提供する。【解決手段】プラズマ処理装置1は、送り出しローラ21と、巻き取りローラ22と、処理ローラ31と、中継ローラ32と、ガス導入部40と、少なくとも一つの誘導結合型アンテナ50とを備える。送り出しローラ21は基材90を送り出す。巻き取りローラ22は基材90を巻き取る。3以上の処理ローラ31は送り出しローラ21と巻き取りローラ22との間において基材90を搬送し、処理空間Vを囲う。中継ローラ32は処理ローラ31間において基材90を中継する。ガス導入部40は処理空間Vにガスを導入する。誘導結合型アンテナ50は処理空間V内のガスをプラズマ励起する。【選択図】図1

Description

本願は、プラズマ処理装置に関する。
従来から、ロールツーロール方式のプラズマ処理装置が提案されている(例えば特許文献1)。この特許文献1においては、プラズマ処理装置は、送り出しロールと、巻き取りロールと、搬送ロールと、一対の成膜ロールとを含んでいる。送り出しロールは、成膜対象となるフィルムを送り出し、巻き取りロールは、送り出しロールから送り出されたフィルムを巻き取る。
一対の成膜ロールおよび搬送ロールは送り出しロールと巻き取りロールとの間に設けられ、フィルムを搬送する。一対の成膜ロールは互いに対向して配置される。フィルムは、その成膜対象面が互いに対向するように成膜ロールに掛け渡される。
一対の成膜ロールの間の空間には、ガス供給管から成膜ガスが供給される。また、一対の成膜ロールはプラズマ発生用電源に接続される。プラズマ発生用電源が一対の成膜ロールに電力を供給することにより、一対の成膜ロールの間の成膜ガスがプラズマ化し、容量結合プラズマが形成される。これにより、一対の成膜ロール上のフィルムの成膜対象面に薄膜が形成される。
特許文献1の技術では、一対の成膜ロール上でフィルムに薄膜が形成されるので、単一の成膜ロール上でフィルムに薄膜を形成する場合に比して、成膜レートを倍にすることができる。
特開2014−1444号公報
しかしながら、特許文献1に記載のプラズマ処理装置においては、成膜ロールはプラズマ発生用の電極として機能するので、一対の成膜ロールが設けられる。よって、特許文献1のプラズマ処理装置では、処理速度の向上に限界がある。
そこで、本願は、処理速度をさらに向上できる技術を提供することを目的とする。
プラズマ処理装置の第1の態様は、基材を送り出す送り出しローラと、前記送り出しローラによって送り出された前記基材を巻き取る巻き取りローラと、前記送り出しローラと前記巻き取りローラとの間において前記基材を搬送し、処理空間を囲う3以上の処理ローラと、前記処理ローラ間において前記基材を中継する中継ローラと、前記処理空間にガスを導入するガス導入部と、前記処理空間の前記ガスをプラズマ励起する少なくとも一つの誘導結合型アンテナとを備える。
プラズマ処理装置の第2の態様は、第1の態様にかかるプラズマ処理装置であって、前記処理ローラの少なくとも一つの内部に設けられており、前記処理空間側に磁界を形成する少なくとも一つの磁界形成部をさらに備える。
プラズマ処理装置の第3の態様は、第2の態様にかかるプラズマ処理装置であって、前記ガス導入部は、励起ガスおよび成膜ガスを前記処理空間に導入し、前記磁界形成部は、前記処理ローラのうち少なくとも一つに設けられていない。
プラズマ処理装置の第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかるプラズマ処理装置であって、前記ガス導入部は、励起ガスを前記処理空間に吐出する励起ノズルと、前記処理ローラの少なくとも一つに対応して設けられており、対応する前記処理ローラに向かって成膜ガスを吐出する少なくとも一つの成膜ノズルとを含み、前記励起ノズルは、前記処理ローラよりも前記誘導結合型アンテナの近くに設けられ、前記成膜ノズルは、前記誘導結合型アンテナよりも、対応する前記処理ローラの近くに設けられる。
プラズマ処理装置の第5の態様は、第4の態様にかかるプラズマ処理装置であって、前記処理ローラは、第1処理ローラと、前記第1処理ローラよりも前記基材の搬送方向の下流側に設けられた第2処理ローラとを含み、前記成膜ノズルは前記第2処理ローラに対応して設けられており、前記第1処理ローラには、成膜ノズルが設けられていない。
プラズマ処理装置の第6の態様は、第4の態様にかかるプラズマ処理装置であって、前記処理ローラは第1処理ローラおよび第2処理ローラを含み、前記成膜ノズルは、前記第1処理ローラに対応する第1成膜ノズルと、前記第2処理ローラに対応する第2成膜ノズルとを含み、前記第1成膜ノズルは、前記励起ノズルの吐出口から前記第1処理ローラまでの励起ガスの直線経路上に設けられており、前記第2成膜ノズルは、前記励起ノズルの吐出口から前記第2処理ローラまでの励起ガスの直線経路を避けて設けられており、前記第1成膜ノズルの吐出口と前記第1処理ローラとの間の距離は、前記第2成膜ノズルの吐出口と前記第2処理ローラとの間の距離よりも短い。
プラズマ処理装置の第7の態様は、第4または第5の態様にかかるプラズマ処理装置であって、全ての前記成膜ノズルの各々は、前記励起ノズルの吐出口から、対応する前記処理ローラまでの直線経路を避けて設けられる。
プラズマ処理装置の第8の態様は、第4から第7のいずれか一つの態様にかかるプラズマ処理装置であって、前記成膜ノズルは複数設けられ、前記成膜ノズルの少なくとも一つは、他の少なくとも一つの成膜ノズルと異なる種類の成膜ガスを吐出する。
プラズマ処理装置の第9の態様は、第8の態様にかかるプラズマ処理装置であって、前記処理ローラの相互間を仕切る個別仕切部材をさらに備え、前記成膜ノズルは、前記個別仕切部材によって仕切られた空間内に設けられる。
プラズマ処理装置の第10の態様は、第4から第9のいずれか一つの態様にかかるプラズマ処理装置であって、前記成膜ノズルは、前記基材の搬送方向に交差する交差方向において、前記基材の幅よりも長く、前記成膜ノズルは前記交差方向に沿って並ぶ複数の吐出口を有している。
プラズマ処理装置の第11の態様は、第1から第10のいずれか一つの態様にかかるプラズマ処理装置であって、前記処理空間を囲む仕切部材をさらに備え、前記仕切部材には、前記処理ローラの外周面のうち前記基材が接触する部分と対向する貫通窓が形成されている。
プラズマ処理装置の第12の態様は、第11の態様にかかるプラズマ処理装置であって、前記仕切部材には、前記処理空間内の気体を排気する排気口が前記貫通窓とは別に形成される。
プラズマ処理装置の第13の態様は、第1から第12のいずれか一つの態様にかかるプラズマ処理装置であって、前記基材を加熱する加熱部をさらに備える。
プラズマ処理装置の第14の態様は、第1から第13のいずれか一つの態様にかかるプラズマ処理装置であって、前記誘導結合型アンテナは複数設けられており、前記誘導結合型アンテナは、前記基材の搬送方向と交差する仮想線に沿って一列に配列されている。
プラズマ処理装置の第15の態様は、第1から第14のいずれか一つの態様にかかるプラズマ処理装置であって、前記誘導結合型アンテナの巻き数は1未満である。
プラズマ処理装置の第1の態様によれば、3以上の処理ローラにおいて(つまり3箇所以上で)、基材に対するプラズマ処理が行われる。よって、処理位置が2箇所以下の場合に比して、処理速度を向上することができる。
プラズマ処理装置の第2の態様によれば、処理ローラの近傍におけるプラズマ密度を向上することができる。よって、高いプラズマ密度で基材に対してプラズマ処理を行うことができる。
プラズマ処理装置の第3の態様によれば、密度の異なる薄膜層を基材に積層することができる。
プラズマ処理装置の第4の態様によれば、第1ノズルは誘導結合型アンテナの近くに設けられ、第2ノズルは誘導結合型アンテナよりも遠くに設けられる。よって、励起ガスはプラズマ励起される一方で、成膜ガスはあまりプラズマ励起されない。したがって、成膜ガス中の不要成分はあまりプラズマ励起されずに、基材にあまり堆積しない。これにより、基材に形成される薄膜中の不要成分の含有量を低減することができる。
プラズマ処理装置の第5の態様によれば、第2処理ローラにおいて、表面改質処理を行った後に、第1処理ローラにおいて成膜処理を行うことができる。
プラズマ処理装置の第6の態様によれば、第1成膜ノズルは、励起ノズルの吐出口から第1処理ローラまでの励起ガスの直線経路上に設けられている。よって、励起ノズルの吐出口から第1処理ローラへ向かう励起ガスは第1成膜ノズルに衝突する。しかるに、第1成膜ノズルと第1処理ローラとの間の距離は長いので、当該励起ガスが第1成膜ノズルを回り込んで、第1成膜ノズルと第1処理ローラとの間の空間に流れ込むことができる。
一方で、第2成膜ノズルは、励起ノズルの吐出口から第2処理ローラまでの励起ガスの直線経路を避けて設けられている。よって、励起ノズルの吐出口から第2処理ローラへ向かう励起ガスは第2成膜ノズルに遮られることなく、第2成膜ノズルと第2処理ローラとの間の空間に流れ込むことができる。
しかも、第2成膜ノズルと第2処理ローラとの間の距離が短いので、第2成膜ノズルを誘導結合型アンテナからより遠ざかることができる。よって、第2成膜ノズルの吐出口から吐出された成膜ガスはプラズマ励起されにくい。したがって、第2処理ローラにおいて形成される薄膜中の不要成分の含有量を低減できる。
プラズマ処理装置の第7の態様によれば、励起ガスが成膜ノズルによって遮られることなく、処理ローラの近傍に流れ込むことができる。
プラズマ処理装置の第8の態様によれば、異なる種類の薄膜層を基材に積層することができる。
プラズマ処理装置の第9の態様によれば、成膜ノズルからの成膜ガスが、対応する処理ローラとは別の処理ローラの近傍に流れることを抑制できる。
プラズマ処理装置の第10の態様によれば、成膜ガスをより均一に基材に供給できる。
プラズマ処理装置の第11の態様によれば、励起ガスおよび成膜ガスが処理空間の外側に流出しにくいので、これらのガスの使用量を低減できる。
プラズマ処理装置の第12の態様によれば、効率的に仕切部材内(処理空間内)の気体を排出できる。
プラズマ処理装置の第13の態様によれば、良好な薄膜を基材に形成できる。
プラズマ処理装置の第14の態様によれば、処理ローラの各々と誘導結合型アンテナとの間の距離が略一定となるように、3以上の処理ローラを設けることができる。
プラズマ処理装置の第15の態様によれば、誘導結合型アンテナのインダクタンスの増大を抑えつつ、誘導磁場を形成することができる。
本願明細書に開示される技術に関する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
プラズマ処理装置の構成の一例を概略的に示す図である。 仕切部材の構成の一例を概略的に示す斜視図である。 誘導結合型アンテナの構成の一例を概略的に示す斜視図である。 磁界形成部の構成の一例を概略的に示す図である。 プラズマ処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。 プラズマ処理装置の一部の構成の一例を概略的に示す図である。 プラズマ処理装置の構成の他の一例を概略的に示す図である。 プラズマ処理装置の構成の他の一例を概略的に示す図である。 プラズマ処理装置によって得られた成膜後の基材90の構成の一例を概略的に示す図である。 プラズマ処理装置の構成の他の一例を概略的に示す図である。 プラズマ処理装置によって得られた成膜後の基材90の構成の一例を概略的に示す図である。 プラズマ処理装置の構成の他の一例を概略的に示す図である。
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
また、図では、適宜にXYZ直交座標が付されている。Z軸方向は鉛直方向に沿う軸であり、XY平面は水平面に沿う平面である。以下では、X軸方向の一方側を+X側とも呼び、他方側を−X側とも呼ぶ。Y軸方向およびZ軸方向についても同様である。
第1の実施の形態.
<プラズマ処理装置の構成>
図1は、プラズマ処理装置1の構成の一例を概略的に示す図である。プラズマ処理装置1はロールツーロール方式のプラズマ処理装置であり、基材90に対してプラズマ処理を行う。プラズマ処理の一例としては、表面改質処理および成膜処理等の処理を挙げることができる。プラズマ処理装置1が基材90に対して成膜処理を行う場合、プラズマ処理装置1は成膜装置とも呼ばれ得る。基材90に形成する薄膜としては、例えばシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜などの種々の膜を採用できる。
基材90は湾曲可能な帯状の基材であり、ロール状に形成することができる。基材90としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)およびPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの樹脂フィルムを採用することができる。基材90の幅(Y軸方向に沿う幅)は例えば300mm程度以上に設定され得る。
プラズマ処理装置1は、チャンバー10と、送り出しローラ21と、巻き取りローラ22と、複数の搬送ローラとしての処理ローラ31および中継ローラ32と、ガス導入部40と、誘導結合型アンテナ50と、吸引部60と、制御部70とを含む。
チャンバー10は例えば真空チャンバーである。チャンバー10は例えば略直方体の外観形状を有する。チャンバー10には排気口10aが形成されている。図1の例では、排気口10aはチャンバー10の側壁に設けられているものの、排気口10aの位置は適宜に変更され得る。
吸引部60はチャンバー10内の気体を排気口10aから吸引して、チャンバー10内の圧力を所定のプロセス圧まで減圧する。図1の例では、吸引部60は、吸引管61と、吸引バルブ62と、真空ポンプ63とを含んでいる。吸引管61の一端は排気口10aに接続されており、他端は真空ポンプ63に接続されている。真空ポンプ63は制御部70によって制御され、吸引管61を介してチャンバー10内の気体を吸引する。吸引バルブ62は吸引管61の途中に設けられている。吸引バルブ62は制御部70によって制御され、吸引管61の内部の流路の開閉を切り替える。
図1の例では、チャンバー10の内部には、送り出しローラ21、巻き取りローラ22、複数の搬送ローラ(処理ローラ31および中継ローラ32)および誘導結合型アンテナ50が設けられている。
送り出しローラ21は基材90を搬送経路に送り出す。送り出しローラ21は略円柱形状の外周面を有している。送り出しローラ21はその中心軸が水平方向(ここではY軸方向)に沿うように設けられる。また、送り出しローラ21はその中心軸のまわりで回転可能に設けられる。送り出しローラ21には、ロール状の基材90が取り付けられている。送り出しローラ21が回転することにより、基材90が送り出しローラ21から送り出される。
巻き取りローラ22は、送り出しローラ21から送り出された基材90をロール状に巻き取る。巻き取りローラ22は略円柱形状の外周面を有している。巻き取りローラ22はその中心軸が水平方向(ここではY軸方向)に沿うように設けられる。また、巻き取りローラ22はその中心軸のまわりで回転可能に設けられる。巻き取りローラ22が回転することにより、基材90が巻き取りローラ22に巻き取られる。
処理ローラ31および中継ローラ32は送り出しローラ21と巻き取りローラ22との間に設けられており、基材90の搬送に伴って回転するローラである。処理ローラ31および中継ローラ32の各々は略円柱形状の外周面を有しており、その中心軸が水平方向(ここではY軸方向)に沿うように設けられる。
図1の例では、3つの処理ローラ31および2つの中継ローラ32が設けられている。以下では、3つの処理ローラ31をそれぞれ処理ローラ31a、処理ローラ31bおよび処理ローラ31cとも呼ぶ。処理ローラ31aは基材90の搬送経路において最も上流側に位置し、処理ローラ31cは当該搬送経路において最も下流側に位置し、処理ローラ31bは当該搬送経路において処理ローラ31aと処理ローラ31cとの間に位置する。
3つの処理ローラ31はZX平面において処理空間Vを囲むように設けられている。図1の例では、処理ローラ31aおよび処理ローラ31cがX軸方向において処理空間Vを隔てて互いに対向しており、処理ローラ31bが処理空間Vに対して+Z側に位置している。平面視において(つまりZ軸方向に沿って見て)、処理ローラ31bは処理ローラ31aと処理ローラ31cとの間の中央に位置していてもよい。
中継ローラ32は基材90の搬送経路において処理ローラ31の相互間に設けられ、基材90を中継する。図1の例では、隣り合う処理ローラ31の間に対応して1つの中継ローラ32が設けられている。また中継ローラ32は、その両隣の処理ローラ31よりも処理空間Vから遠い位置に設けられている。以下では、2つの中継ローラ32をそれぞれ中継ローラ32aおよび中継ローラ32bとも呼ぶ。中継ローラ32aは基材90の搬送経路において処理ローラ31aと処理ローラ31bとの間に位置し、中継ローラ32bは当該搬送経路において処理ローラ31bと処理ローラ31cとの間に位置する。
送り出しローラ21から送り出された基材90は、処理ローラ31の各々の外周面のうち処理空間V側の領域、および、中継ローラ32の各々の外周面のうち処理空間Vとは反対側の領域に、交互に掛け渡されて、巻き取りローラ22へと巻き取られる。このような搬送経路において、基材90は処理ローラ31の各々の外周面上において処理空間Vに対向する。
図1の例では、チャンバー10内には、処理空間Vを区画するための仕切部材80が設けられている。図2は、仕切部材80の構成の一例を概略的に示す斜視図である。仕切部材80は上板81と下板82と側壁83とを有している。上板81および下板82はその厚み方向がZ軸方向に沿うように設けられている。また、上板81および下板82はZ軸方向において処理空間Vを隔てて互いに対向しており、下板82は上板81に対して−Z側に位置している。側壁83は上板81の周縁と下板82の周縁とを連結する。この仕切部材80の内部空間が処理空間Vに相当する。仕切部材80はチムニーとも呼ばれ得る。
図2の例では、仕切部材80は略直方体の外観形状を有している。つまり、上板81および下板82は略同一形状の矩形形状を有している。ここでは、仕切部材80は上板81の一辺がX軸方向に沿うように配置される。
仕切部材80には、処理ローラ31の外周面のうち基材90が接触する部分と対向する貫通窓84が形成されている。貫通窓84は仕切部材80内の処理空間Vと仕切部材80の外部空間とを繋げる。ここでは、仕切部材80には、3つの処理ローラ31に対応して3つの貫通窓84が形成されている。以下では、3つの貫通窓34をそれぞれ貫通窓84a、貫通窓84bおよび貫通窓84cとも呼ぶ。貫通窓84aは−X側の側壁83に形成され、貫通窓84bは上板81に形成され、貫通窓84cは+X側の側壁83に形成される。
各貫通窓84はY軸方向に沿って長い長尺形状を有している。ここでいう長尺形状とは、その長手方向における長さが短手方向における長さよりも長い形状をいう。貫通窓84のY軸方向における長さは、処理ローラ31よりもわずかに長い。例えば、処理ローラ31の外周面の周方向における一部は貫通窓84を介して仕切部材80の内部に位置し、残りの一部は仕切部材80の外部に位置する。基材90は、貫通窓84と対向する位置において各処理ローラ31の外周面に接触しており、当該外周面を屈曲面として略V字状に湾曲している。以下では、基材90のうち処理空間V側の主面を処理対象面と呼ぶ。
基材90が搬送されることにより、基材90の所定領域(長手方向の一部の領域)は処理ローラ31aの外周面、処理ローラ31bの外周面および処理ローラ31cの外周面をこの順に通過するので、基材90は処理空間Vを3回通過する。後に詳述するように、基材90の処理対象面は処理空間Vの通過時においてプラズマ処理を受けるので、基材90の処理対象面には、プラズマ処理が3回行われる。
図2に例示するように、仕切部材80には、貫通窓84とは別に排気口80aが形成されていてもよい。図2の例では、排気口80aは、貫通窓84が形成されていない面、具体的な一例として−Y側の側壁83に形成されている。排気口80aは側壁83を貫通する。処理空間V内の気体は貫通窓84および排気口80aから外部へと排出され、排気口10aを介してチャンバー10の外部へと排出される。排気口80aが設けられていることにより、処理空間V内の気体を効率的に排出できる。なお、貫通窓84のみで気体を十分に排出できる場合には、排気口80aは不要である。
再び図1を参照して、誘導結合型アンテナ50は処理空間Vにプラズマを発生させる。図1の例では、誘導結合型アンテナ50は処理空間Vのうち−Z側の領域において、処理ローラ31bとZ軸方向において対向する位置に設けられている。図1の例では、誘導結合型アンテナ50は処理ローラ31aおよび処理ローラ31cのいずれよりも、−Z側に設けられている。
誘導結合型アンテナ50は整合回路54を介して高周波電源53に電気的に接続されている。整合回路54は誘導結合型アンテナ50と高周波電源53との間でインピーダンスを整合させる。高周波電源53は整合回路54を介して誘導結合型アンテナ50に高周波電力を供給する。高周波電源53の出力は制御部70によって制御される。誘導結合型アンテナ50に高周波電流が流れると、誘導結合型アンテナ50の周囲(処理空間V)に誘導結合プラズマが発生する。
図3は、誘導結合型アンテナ50の構成の一例を概略的に示す斜視図である。図3では、−Z側から見た誘導結合型アンテナ50の構成が示されている。図3の例では、複数の誘導結合型アンテナ50が設けられている。これら複数の誘導結合型アンテナ50は、基材90の搬送方向に交差する交差方向(ここではY軸方向)に沿う仮想線K1上に一列に並んで設けられる。各誘導結合型アンテナ50は、例えば、金属製のパイプ状導体をU字状に曲げて形成される。各誘導結合型アンテナ50はそのU字形状の両端が仮想線K1上に並ぶように設けられる。誘導結合型アンテナ50は高温となるので、その内部に冷却水を循環させるなどして、適宜、冷却されている。
図1を参照して、各誘導結合型アンテナ50の両端は仕切部材80の下板82を貫通しており、整合回路54を介して高周波電源53に電気的に接続される。各誘導結合型アンテナ50は仕切部材80の下板82から+Z側に突出する。
また、図1および図2の例では、誘導結合型アンテナ50は保護部材51によって囲まれる。保護部材51は例えば石英(石英硝子)などの誘電体によって形成される。保護部材51はU字状の筒状形状を有しており、誘導結合型アンテナ50を囲っている。保護部材51の両端も仕切部材80の下板82を貫通する。
このように構成された誘導結合型アンテナ50は、X軸方向を巻回軸方向とし巻き数が1未満のループアンテナと見ることができる。そのため、誘導結合型アンテナ50は低インダクタンスである。このような小型のアンテナを、巻回軸方向と直交する方向に複数並べて配置することで、インダクタンスの増大を抑えつつ、プラズマ発生のための誘導磁場を広い範囲に形成することが可能である。
なお、誘導結合型アンテナ50は上述した態様に限るものではなく、例えばループ状またはコイル状の導体によって構成されてもよい。また、誘導結合型アンテナ50は必ずしも仕切部材80の内部に突出している必要はない。誘導結合型アンテナ50の+Z側の端(上端)が下板82の上面と同じ高さ位置に設けられてもよく、あるいは、当該上面よりも−Z側に設けられてもよい。また、誘導結合型アンテナ50は仕切部材80の外部に設けられてもよい。
また、図3の例では、複数の誘導結合型アンテナ50が設けられているものの、誘導結合型アンテナ50は1以上設けられれば良い。一方、複数の誘導結合型アンテナ50が設けられる場合には、誘導結合型アンテナ50の配置態様は上述に限らない。例えば複数の誘導結合型アンテナ50はX軸方向およびY軸方向をそれぞれ行方向および列方向としたマトリクス状に配置されてもよい。
再び図1を参照して、ガス導入部40は処理空間Vにガスを導入する。ここでは、ガス導入部40は励起ガスおよび成膜ガスを処理空間Vに導入する。励起ガスおよび成膜ガスとしては、基材90に形成する薄膜の種類に応じたガスが採用される。例えば、励起ガスとしては、酸素(O)ガス、亜酸化窒素(NO)ガス、アンモニア(NH)ガスおよび窒素(N)ガスの少なくともいずれかを採用することができる。成膜ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH)ガスまたは有機珪素化合物ガスを採用することができる。有機珪素化合物としては、例えば、HMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)、HMDS(ヘキサメチルジシラン)またはTEOS(テトラエトキシオルソシリケート)を採用することができる。
図1の例では、ガス導入部40は、励起ガス導入部41と、成膜ガス導入部42とを含んでいる。励起ガス導入部41は励起ガスを処理空間V内に導入する。励起ガス導入部41は、励起ノズル411と、導入管412と、導入バルブ413と、励起ガス供給源414とを含んでいる。励起ノズル411は誘導結合型アンテナ50の近傍に設けられる。より具体的には、励起ノズル411は全ての処理ローラ31よりも誘導結合型アンテナ50に近い位置に設けられる。
励起ノズル411は複数設けられてもよい。例えば図3に示すように、複数の励起ノズル411はY軸方向に沿って並んで設けられてもよい。複数の励起ノズル411は図1に例示するように、X軸方向において誘導結合型アンテナ50と隣り合う位置に設けられてもよく、あるいは、図3に例示するように、Y軸方向において誘導結合型アンテナ50と隣り合う位置に設けられてもよい。図1の例では、励起ノズル411は仕切部材80の下板82に設けられている。励起ノズル411の例えば上面には吐出口が形成されており、当該吐出口は仕切部材80の内部において+Z側に開口する。励起ノズル411は励起ガスを当該吐出口から吐出する。
励起ノズル411は導入管412を介して励起ガス供給源414に接続されている。導入バルブ413は導入管412の途中に設けられており、導入管412の内部の流路の開閉を切り替える。導入バルブ413は制御部70によって制御される。導入バルブ413は、導入管412の内部を流れる励起ガスの流量を調整可能なバルブであってもよい。導入バルブ413が開くことにより、励起ガス供給源414からの励起ガスが導入管412の内部を流れて、励起ノズル411の吐出口から処理空間V内に吐出される。
成膜ガス導入部42は成膜ガスを処理空間V内に導入する。成膜ガス導入部42は、成膜ノズル421と、導入管422と、導入バルブ423と、成膜ガス供給源424とを含んでいる。成膜ノズル421は処理空間V内に設けられる。図1の例では、成膜ノズル421は処理ローラ31に対応して設けられている。ここでは、3つの処理ローラ31が設けられているので、3つの成膜ノズル421が設けられている。以下では、3つの成膜ノズル421をそれぞれ成膜ノズル421a、成膜ノズル421bおよび成膜ノズル421cとも呼ぶ。成膜ノズル421aは処理ローラ31aに対応して設けられ、成膜ノズル421bは処理ローラ31bに対応して設けられ、成膜ノズル421cは処理ローラ31cに対応して設けられる。
図1の例では、各成膜ノズル421は誘導結合型アンテナ50よりも、対応する処理ローラ31に近い位置に設けられている。例えば、成膜ノズル421aと処理ローラ31aとの間の距離は、成膜ノズル421aと誘導結合型アンテナ50との間の距離よりも短い。同様に、成膜ノズル421bと処理ローラ31bとの間の距離は、成膜ノズル421bと誘導結合型アンテナ50との間の距離よりも短く、成膜ノズル421cと処理ローラ31cとの間の距離は、成膜ノズル421cと誘導結合型アンテナ50との間の距離よりも短い。
また、各成膜ノズル421は、他の処理ローラ31よりも、対応する処理ローラ31に近い位置に設けられている。例えば、成膜ノズル421aと処理ローラ31aとの間の距離は、成膜ノズル421aと他の処理ローラ31との間の距離よりも短い。同様に、成膜ノズル421bと処理ローラ31bとの間の距離は、成膜ノズル421bと他の処理ローラ31との間の距離よりも短く、成膜ノズル421cと処理ローラ31cとの間の距離は、成膜ノズル421cと他の処理ローラ31との間の距離よりも短い。
図1の例では、成膜ノズル421aは処理ローラ31aに対して+X側に位置しており、処理ローラ31aの中心とX軸方向において対向している。同様に、成膜ノズル421bは処理ローラ31bに対して−Z側に位置し、処理ローラ31bの中心とZ軸方向において対向しており、成膜ノズル421cは処理ローラ31cに対して−X側に位置し、処理ローラ31cの中心とX軸方向において対向している。
各成膜ノズル421は、対応する処理ローラ31と対向する吐出口を有している。各成膜ノズル421は吐出口から、対応する処理ローラ31の外周面上の基材90に向けて成膜ガスを吐出する。
成膜ノズル421は、例えば、処理ローラ31の中心軸(Y軸方向)に長いバーノズルであってもよい。基材90の搬送方向に交差する方向(ここではY軸方向)における成膜ノズル421の長さは、基材90の幅よりも長い。この成膜ノズル421には、処理ローラ31の中心軸に沿って間隔を空けて並ぶ複数の吐出口が形成される。成膜ノズル421は当該複数の吐出口から成膜ガスを吐出する。これにより、成膜ノズル421は各処理ローラ31の外周面上の基材90に対してより均一に成膜ガスを吐出できる。
各成膜ノズル421は導入管422を介して成膜ガス供給源424に接続されている。図1の例では、導入管422の一端は成膜ノズル421にそれぞれ接続され、他端は共通管を介して成膜ガス供給源424に接続されている。各導入管422の途中には導入バルブ423が設けられており、各導入管422の内部の流路の開閉を切り替える。各導入バルブ423は制御部70によって制御される。各導入バルブ423は、導入管422の内部を流れる励起ガスの流量を調整可能なバルブであってもよい。各導入バルブ423が開くことにより、成膜ガス供給源424からの成膜ガスが導入管422の内部を流れて、成膜ノズル421の吐出口から処理空間V内に吐出される。
なお、図1の例では、3つの導入管422のそれぞれに導入バルブ423が設けられているので、成膜ノズル421からの成膜ガスの吐出および停止を、成膜ノズル421ごとに切り替えることができる。しかしながら、必ずしもこれに限らない。共通管に導入バルブ423が設けられてもよい。この場合、3つの成膜ノズル421は互いに同期して、成膜ガスの吐出および停止を切り替える。
励起ガス導入部41が励起ガスを処理空間Vに導入した状態で、誘導結合型アンテナ50に高周波電力が供給されることにより、処理空間Vにおいて励起ガスがプラズマ励起されて、誘導結合プラズマが生成される。プラズマ励起により生じる活性種は、処理空間Vにおいて広がり、成膜ガス導入部42によって処理空間Vに導入された成膜ガスにエネルギーを与える。これにより、成膜ガスが解離する。解離した成膜ガス中の所定成分は、処理ローラ31上の基材90の処理対象面に堆積する。また、励起ガス中の成分も適宜に成膜ガスの所定成分と反応しつつ、処理対象面に堆積され得る。これにより、基材90の処理対象面に所定の薄膜を形成することができる。
図1の例では、処理ローラ31は略円筒形状を有しており、その内部には、磁界形成部33が設けられている。磁界形成部33は処理空間V側に磁界を形成する。具体的には、磁界形成部33は、処理ローラ31の外周面のうち処理空間Vに対向する領域の近傍に磁界を形成する。言い換えれば、磁界形成部33は処理ローラ31の外周面上の基材90の近傍に磁界を形成する。磁界形成部33は例えば回転不能に設けられてもよい。この場合、磁界形成部33は処理ローラ31の回転によらず、処理ローラ31の外周面上の基材90の近傍に磁界を形成する。
図4は、磁界形成部33の構成の一例を概略的に示す図である。図4は、処理空間V側から見た磁界形成部33の構成を示している。磁界形成部33は、磁石331と、ヨーク332とを含んでいる。ヨーク332は軟磁性体で形成されており、Y軸方向に長い板状の形状を有する。ヨーク332はその一方の主面が処理空間Vに対向するように設けられる。例えば処理ローラ31aおよび処理ローラ31c内のヨーク332はその厚み方向がX軸方向に沿うように設けられ、処理ローラ31b内のヨーク332はその厚み方向がZ軸方向に沿うように設けられる。
磁石331は例えば永久磁石である。図4の例では、磁石331として、中央磁石331aと、周囲磁石331bとが設けられている。中央磁石331aはヨーク332の処理空間V側の主面の上に設けられる。中央磁石331aはY軸方向に長い略直方体形状を有しており、その磁極面が処理空間Vに対向する。周囲磁石331bもヨーク332の処理空間V側の主面の上に設けられおり、その磁極面が処理空間Vに対向する。周囲磁石331bは環状の形状を有しており、中央磁石331aを取り囲んでいる。中央磁石331aの磁極面の極性は周囲磁石331bの磁極面の極性と相違する。
磁界形成部33によって各処理ローラ31の外周面上の基材90の近傍に磁界が形成されることにより、基材90の近傍により多くのプラズマが閉じ込められる。つまり、基材90の近傍のプラズマ密度を向上することができる。これにより、より多くのプラズマ中の活性種が成膜ガスにエネルギーを与えることができるので、より多くの成分が基材90の処理対象面に堆積する。よって、成膜速度を向上することができるとともに、薄膜の密度を向上することができる。
制御部70は、プラズマ処理装置1を統括的に制御することができる。具体的には、制御部70は送り出しローラ21、巻き取りローラ22および搬送ローラによる搬送機構、ガス導入部40、高周波電源53、および、吸引部60を制御する。
制御部70は電子回路であって、例えばデータ処理装置および記憶媒体を有していてもよい。データ処理装置は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶媒体は非一時的な記憶媒体(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)および一時的な記憶媒体(例えばRAM(Random Access Memory))を有していてもよい。非一時的な記憶媒体には、例えば制御部70が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。処理装置がこのプログラムを実行することにより、制御部70が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部70が実行する処理の一部または全部がハードウェアによって実行されてもよい。
<プラズマ処理装置1の動作の概要>
図5は、プラズマ処理装置1の動作の一例を示すフローチャートである。まずステップS1にて、制御部70は吸引部60を制御して、チャンバー10内の気体を吸引させる。これにより、チャンバー10(あるいは仕切部材80)内の圧力が所定のプロセス圧まで減圧する。次にステップS2にて、制御部70はガス導入部40を制御して、励起ガスおよび成膜ガスを処理空間V内に導入させる。次にステップS3にて、制御部70は高周波電源53を制御して、誘導結合型アンテナ50に高周波電力を供給させる。次にステップS4にて、制御部70は搬送機構を制御して、基材90を搬送させる。この搬送機構は処理中において基材90を略一定の搬送速度で搬送させる。
ここで、基材90の処理対象面における所定領域に着目する。この所定領域は基材90の長手方向の一部の領域であり、初期的には、送り出しローラ21の直後に位置する。基材90の搬送に伴って、基材90の当該所定領域は処理ローラ31aの外周面に至る。当該所定領域は処理ローラ31aの外周面上に位置する期間、つまり貫通窓84aと対向する期間においてプラズマ処理を受ける。これにより、当該所定領域に薄膜が形成される。当該所定領域が処理ローラ31aを通り過ぎると、中継ローラ32aを通過して処理ローラ31bの外周面に至る。当該所定領域は、処理ローラ31bの外周面上に位置する期間、つまり貫通窓84bと対向する期間においてもプラズマ処理を受けるので、当該所定領域には同種の薄膜が積層され、その膜厚が増加する。当該所定領域が処理ローラ31bを通り過ぎると、中継ローラ32bを通過して処理ローラ31cの外周面に至る。当該所定領域は、処理ローラ31cの外周面上に位置する期間、つまり貫通窓84cと対向する期間においてもプラズマ処理を受けるので、当該所定領域には同種の薄膜がさらに積層され、その膜厚がさらに増加する。
以上のように、プラズマ処理装置1では、3つの処理ローラ31が処理空間Vに露出するので、基材90の処理対象面は搬送経路の3箇所においてプラズマ処理(ここでは成膜処理)を受ける。したがって、処理位置が2箇所以下である場合に比して、処理対象面に形成可能な薄膜の厚みを向上することができる。あるいは、基材90の搬送速度を増加しても、所望の膜厚の薄膜を基材90の処理対象面に形成することができる。つまり、プラズマ処理装置1の処理速度を向上することができる。
また、このプラズマ処理装置1においては、誘導結合型アンテナ50が設けられている。言い換えれば、処理ローラ31はプラズマを発生させるための電極として機能する必要がない。したがって、処理ローラ31の個数をプラズマ生成とは別に決定することができ、容易にその個数を増加させることができる。例えば、処理空間Vを囲うように設けられる処理ローラ31の個数を4以上とすることにより、処理速度をさらに向上することができる。
また、上述の例では、成膜ガスを吐出する成膜ノズル421の吐出口は誘導結合型アンテナ50よりも処理ローラ31に近い位置に設けられている。つまり、成膜ノズル421の吐出口は誘導結合型アンテナ50よりも遠い位置に設けられている。よって、成膜ノズル421から吐出された成膜ガスはほとんどプラズマ励起されない。これによれば、成膜ガス中の不要成分(例えば炭素および水素)が活性化されにくいので、当該不要成分は基材90の処理対象面に堆積されにくく、薄膜中の不要成分の含有量を低減することができる。よって、高い品質で薄膜を形成することができる。
また、上述の例では、仕切部材80が設けられている。これによれば、励起ガスおよび成膜ガスが処理空間Vの外側に流出しにくいので、これらのガスの使用量を低減できる。よって、ランニングコストを低減できる。
<成膜ノズル421の位置>
図1の例では、成膜ノズル421aは、励起ノズル411の吐出口から処理ローラ31aまでの励起ガスの直線経路を避けて設けられている。当該直線経路とは、より具体的には、励起ノズル411の吐出口と処理ローラ31aの中心とを結ぶ直線である。よって、励起ノズル411の吐出口から吐出された励起ガスは成膜ノズル421aによって阻害されにくく、成膜ノズル421aと処理ローラ31aとの間の空間に流れ込みやすい。したがって、励起ガスの活性種は処理ローラ31aの外周面上の基材90の近傍において、成膜ガスに適切にエネルギーを与えることができ、適切に基材90の処理対象面に薄膜を形成できる。同様に、成膜ノズル421cは、励起ノズル411の吐出口から処理ローラ31cまでの励起ガスの直線経路を避けて設けられている。当該直線経路とは、より具体的には、励起ノズル411の吐出口と処理ローラ31cの中心とを結ぶ直線である。よって、励起ノズル411の吐出口から吐出された励起ガスは成膜ノズル421cによって阻害されにくく、成膜ノズル421cと処理ローラ31cとの間の空間に流れ込みやすい。これにより、処理ローラ31cの外周面上の基材90の処理対象面に適切に薄膜を形成できる。
これに対して、励起ノズル411が誘導結合型アンテナ50とY軸方向で並んで設けられて(図3)、成膜ノズル421bとZ軸方向において対向する場合には、成膜ノズル421bは、励起ノズル411の吐出口から処理ローラ31bまでの励起ガスの直線経路に設けられることになる。当該直線経路とは、より具体的には、励起ノズル411の吐出口と処理ローラ31bの中心とを結ぶ直線である。この場合、励起ノズル411の吐出口から吐出された励起ガスは成膜ノズル421bに衝突し、成膜ノズル421bを回り込んで、成膜ノズル421bと処理ローラ31bとの間の空間に流れ込む。しかるに、処理空間V内の圧力は小さいので、励起ガスは成膜ノズル421bを容易に回り込むと考えられる。
ところで、成膜ガスのプラズマ励起を抑制すべく、成膜ノズル421の吐出口は誘導結合型アンテナ50から遠い方が望ましく、言い換えれば、対応する処理ローラ31に近いことが望ましい。その一方で、成膜ノズル421bが処理ローラ31bに近づきすぎると、励起ガスは成膜ノズル421bを回り込みにくく、成膜ノズル421bと処理ローラ31bとの間の空間への励起ガスの流入が不十分となる可能性もある。
そこで、成膜ノズル421bと処理ローラ31bとの間の距離を、成膜ノズル421aと処理ローラ31aとの間の距離、および、成膜ノズル421cと処理ローラ31cとの間の距離の両方よりも長く設定してもよい。
これによれば、成膜ガスを成膜ノズル421bと処理ローラ31bとの間の空間に適切に供給することができる。また、成膜ノズル421aおよび成膜ノズル421cからの成膜ガスがプラズマ励起される可能性も低減できる。
<成膜ノズル421の位置>
上述のように、成膜ノズル421bが、励起ノズル411の吐出口から処理ローラ31bまでの励起ガスの直線経路に設けられる場合、励起ノズル411の吐出口からの励起ガスが成膜ノズル421bに衝突する。そこで、成膜ノズル421bも、励起ノズル411の吐出口から処理ローラ31bまでの励起ガスの直線経路を避けて設けられてもよい。
図6は、プラズマ処理装置1の一部の構成の一例を概略的に示す図である。図6では、処理ローラ31bの近傍の構成が示されている。図6の例では、成膜ノズル421bは、励起ノズル411の吐出口から処理ローラ31bまでの励起ガスの直線経路を避けて設けられている。なお、図6では、当該直線経路を模式的に二点鎖線で示すとともに、符号Lb1を付記している。
図6の例では、一対の成膜ノズル421bが設けられている。一方の成膜ノズル421bは処理空間V内において、当該直線経路に対して−X側に設けられており、他方の成膜ノズル421bは処理空間V内において、当該直線経路に対して+X側に設けられている。各成膜ノズル421bは成膜ガスを処理ローラ31b上の基材90に向けて斜めに吐出する。図6の例では、成膜ノズル421bからの成膜ガスの吐出方向が破線の矢印で示されている。
これによれば、励起ノズル411の吐出口からの励起ガスは成膜ノズル421bに遮られることなく、処理ローラ31b上の基材90へと流れる。よって、基材90の処理対象面に対してより効率的に薄膜を形成することができる。
なお、全ての成膜ノズル421が、励起ノズル411の吐出口から、対応する処理ローラ31までの励起ガスの直線経路を避けて設けられているとよい。これによれば、各処理ローラ31において、基材90の処理対象面に対して効率的に薄膜を形成することができる。
<誘導結合型アンテナの配列>
図1および図3の例では、誘導結合型アンテナ50はY軸方向に沿った一列に配列されている。これによれば、誘導結合型アンテナ50が複数列に設けられる場合に比して、複数の処理ローラ31の各々と誘導結合型アンテナ50との間の距離を略等しく設定することができる。図1の例では、ZX平面において、誘導結合型アンテナ50(具体的な一例ととして、その+Z側の端)を中心とした仮想円弧の上に、複数の処理ローラ31が設けられている。これにより、各処理ローラ31において互いに略均等に基材90に対してプラズマ処理(ここでは成膜処理)を行うことができる。
第2の実施の形態.
第1の実施の形態では、プラズマ処理装置1は全ての処理ローラ31の外周面上において、基材90に対して成膜処理を行った。しかるに、必ずしもこれに限らない。図7は、プラズマ処理装置1Aの構成の一例を概略的に示す図である。プラズマ処理装置1Aは、磁界形成部33の有無および成膜ガス導入部42の構成を除いて、プラズマ処理装置1と同様の構成を有している。
プラズマ処理装置1Aにおいては、下流側の2つの処理ローラ31bおよび処理ローラ31cの内部には、磁界形成部33が設けられているのに対して、上流側の処理ローラ31aの内部には磁界形成部33が設けられていない。よって、下流側の処理ローラ31bおよび処理ローラ31cの外周面の近傍に磁界が形成されるのに対して、処理ローラ31aの外周面の近傍には、磁界形成部33による磁界が形成されない。
また、成膜ガス導入部42は、下流側の2つの処理ローラ31bおよび処理ローラ31cのそれぞれに対応する成膜ノズル421bおよび成膜ノズル421cを含んでいるのに対して、上流側の処理ローラ31aに対応する成膜ノズル421aを含んでいない。よって、下流側の処理ローラ31bおよび処理ローラ31cの外周面の近傍に成膜ガスが供給されるのに対して、上流側の処理ローラ31aの外周面の近傍には成膜ガスが供給されない。
このプラズマ処理装置1Aの動作の一例は図5と同様である。このプラズマ処理装置1Aの動作によれば、基材90の処理対象面上の所定領域は、まず処理ローラ31aにおいてプラズマ処理を受ける。処理ローラ31aの外周面の近傍には成膜ガスが供給されないので、この処理ローラ31aにおいては、基材90の処理対象面には成膜処理が行われずに、プラズマ励起により励起ガスから生じた活性種(例えばラジカル)が作用する。つまり、基材90の処理対象面には、プラズマ表面処理(表面改質処理)が行われる。これにより、基材90の処理対象面の反応性が高まる。
基材90が搬送されて当該所定領域が処理ローラ31bの外周面に至ると、当該所定領域は処理ローラ31bにおいて成膜処理を受ける。直前の処理ローラ31aにおける表面改質処理により、当該所定領域の反応性は高まっているので、当該所定領域には高い密着性で薄膜が形成される。
基材90がさらに搬送されて当該所定領域が処理ローラ31cの外周面に至ると、当該所定領域は処理ローラ31cにおいて成膜処理を受ける。これにより、当該所定領域には、さらに薄膜が形成されて膜厚が増加する。
以上のように、プラズマ処理装置1Aによれば、搬送経路の上流側において表面改質処理を行うことができ、また、その下流側において成膜処理を行うことができる。よって、基材90と薄膜との密着性を向上することができる。
なお、上述の例では、プラズマ処理装置1Aの処理ローラ31aの内部には、磁界形成部33が設けられてない。しかしながら、処理ローラ31aの内部に磁界形成部33が設けられていてもよい。この構造でも、処理ローラ31aの外周面の近傍には成膜ガスが供給されないので、処理ローラ31aにおいて、成膜処理が行われずに、表面改質処理が行われる。
あるいは、磁界の形成および非形成を切り替えることが可能な磁界形成部33が処理ローラ31aの内部に設けられてもよい。例えば磁石331を電磁磁石によって構成することで、このような磁界形成部33を設けることができる。
この電磁磁石には、不図示の磁石用電源が接続される。制御部70は磁石用電源から磁石331に供給する電力も制御する。磁石用電源が磁石331に電流を流すことにより、磁石331は処理ローラ31aの外周面の近傍に磁界を形成し、磁石用電源が磁石331への電流の供給を遮断することにより、処理ローラ31aの外周面の近傍の磁界が消失する。
また、上述の例では、プラズマ処理装置1Aは、処理ローラ31aに対応した成膜ノズル421aを含んでいない。しかるに、プラズマ処理装置1Aは、処理ローラ31aに対応した成膜ノズル421aを含んでいてもよい。この成膜ノズル421aに対応した導入バルブ423が閉じることで、処理ローラ31aの外周面の近傍への成膜ガスの供給が停止する。
このようなプラズマ処理装置1Aによれば、制御部70は磁石用電源を制御して、処理ローラ31aの磁界形成部33に磁界を形成させつつ、導入バルブ423を開いて、処理ローラ31aの外周面の近傍に成膜ガスを供給することができる。これにより、第1の実施の形態と同様に、処理ローラ31aにおいて、基材90の処理対象面に成膜処理を行うことができる。
一方で、制御部70は磁石用電源を制御して、処理ローラ31aの磁界形成部33に磁界を形成させず、導入バルブ423を閉じることができる。これにより、第2の実施の形態のように、処理ローラ31aにおいて、基材90の処理対象面に表面改質処理を行うことができる。
つまり、このプラズマ処理装置1Aは、処理ローラ31aにおけるプラズマ処理を表面改質処理と成膜処理との間で切り替えることができる。これによれば、第1の実施の形態の機能および第2の実施の形態の機能をプラズマ処理装置1Aによって実現することができる。
なお、処理ローラ31bおよび処理ローラ31cに対応する磁界形成部33も磁界の形成および非形成を切り替え可能に構成されてもよい。これによれば、プラズマ処理装置1Aは、処理ローラ31bおよび処理ローラ31cの各々における処理を表面改質処理と成膜処理との間で切り替えることができる。
第3の実施の形態.
図8は、プラズマ処理装置1Bの構成の一例を概略的に示す図である。プラズマ処理装置1Bは磁界形成部33の有無を除いて、プラズマ処理装置1と同様の構成を有している。
プラズマ処理装置1Bにおいて、処理ローラ31aおよび処理ローラ31cの内部にはそれぞれ磁界形成部33が設けられている一方で、処理ローラ31bの内部には磁界形成部33が設けられていない。
これによれば、処理ローラ31bの外周面の近傍におけるプラズマ密度は、処理ローラ31aおよび処理ローラ31cの外周面の近傍におけるプラズマ密度のいずれよりも小さくなる。したがって、処理ローラ31bにおいては、低いプラズマ密度で基材90に対してプラズマ処理(ここでは成膜処理)が行われる。これにより、処理ローラ31bにおいては、比較的小さい密度で薄膜層が基材90の処理対象面に形成される。一方、処理ローラ31aおよび処理ローラ31cにおいては、高いプラズマ密度で基材90に対してプラズマ処理(ここでは成膜処理)が行われる。これにより、処理ローラ31aおよび処理ローラ31cにおいては、処理ローラ31bにおいて形成される薄膜層の密度よりも高い密度で、薄膜層が基材90の処理対象面に形成される。
このプラズマ処理装置1Bの動作の一例は図5と同様である。図9は、プラズマ処理装置1Bによって得られた成膜後の基材90の一例を概略的に示す図である。
このプラズマ処理装置1Bの動作によれば、基材90の処理対象面上の所定領域は、まず、磁界形成部33を内蔵する処理ローラ31aにおいて成膜処理を受ける。よって、当該所定領域には、高密度の薄膜層91aが形成される。基材90が搬送されて当該所定領域が処理ローラ31bの外周面に至ると、当該所定領域は、磁界形成部33を内蔵しない処理ローラ31bにおいて成膜処理を受ける。よって、当該所定領域の薄膜層91aの上には、低密度の薄膜層91bが形成される。基材90がさらに搬送されて当該所定領域が処理ローラ31bの外周面に至ると、当該所定領域は、磁界形成部33を内蔵する処理ローラ31cにおいて成膜処理を受ける。よって、当該所定領域の薄膜層91bの上には、高密度の薄膜層91cが形成される。
以上のように、このプラズマ処理装置1Bによれば、低密度の薄膜層91bが高密度の薄膜層91aおよび薄膜層91cによって挟まれた積層構造を有する薄膜を、基材90の処理対象面に形成することができる。低密度の薄膜層91bは高密度の薄膜層91aおよび薄膜層91cのいずれよりも柔軟性が高く、クッション層とも呼ばれ得る。
これによれば、高密度の薄膜層91aおよび薄膜層91cによって薄膜の特性(例えばバリア特性)を維持しつつ、低密度の薄膜層91bによって薄膜の柔軟性を向上することができる。したがって、基材90を曲げた際に薄膜にクラックが生じる可能性を低減することができる。
なお、上述の例では、処理ローラ31bの内部に磁界形成部33が設けられていないものの、必ずしもこれに限らない。処理ローラ31a、処理ローラ31bおよび処理ローラ31cの少なくともいずれか一つに磁界形成部33が設けられ、他の少なくともいずれか一つに磁界形成部33が設けられていなければよい。これによっても、薄膜には、密度の低い薄膜層と密度の高い薄膜層とが混在するので、薄膜の特性を維持しつつ柔軟性を向上することができる。
また、上述の例では、処理ローラ31bの内部に磁界形成部33が設けられていないものの、第2の実施の形態と同様に、磁界の形成および非形成を切り替え可能な磁界形成部33が処理ローラ31bの内部に設けられてもよい。処理ローラ31aおよび処理ローラ31cについても同様である。このようなプラズマ処理装置1Bは第1の実施の形態の機能および第3の実施の形態の機能の両方を実現することができる。
第4の実施の形態.
図10は、プラズマ処理装置1Cの構成の一例を概略的に示す図である。プラズマ処理装置1Cは個別仕切部材86の有無および成膜ガス導入部42の構成を除いて、プラズマ処理装置1と同様の構成を有している。
図10の例では、成膜ガス導入部42は3つの処理ローラ31の外周面の近傍に、互いに異なる種類の成膜ガスを導入することができる。図10の例では、成膜ガス導入部42において、成膜ノズル421aは導入管422aを介して成膜ガス供給源424aに接続されており、成膜ノズル421bは導入管422bを介して成膜ガス供給源424bに接続されており、成膜ノズル421cは導入管422cを介して成膜ガス供給源424cに接続されている。成膜ガス供給源424a、成膜ガス供給源424bおよび成膜ガス供給源424cの少なくとも一つは他の少なくとも一つと異なる種類の成膜ガスを供給する。
導入バルブ423aは導入管422aの途中に設けられており、導入管422aの内部の流路の開閉を切り替える。導入バルブ423aは制御部70によって制御される。導入バルブ423bおよび導入バルブ423cも導入バルブ423aと同様に、それぞれ導入管422bおよび導入管422cに設けられる。
成膜ガス導入部42が3つの処理ローラ31の外周面の近傍に、それぞれ成膜ガスを導入するので、基材90の処理対象面には、異なる種類の薄膜層が積層される。これにより、多層膜を基材90の処理対象面に形成することができる。
このプラズマ処理装置1Cの動作の一例は図5と同様である。図11は、プラズマ処理装置1Cによって得られた成膜後の基材90の一例を概略的に示す図である。ここでは一例として、励起ノズル411から励起ガスとして窒素ガスを吐出し、成膜ノズル421aから成膜ガスとしてHMDSを吐出し、成膜ノズル421bから成膜ガスとしてHMDSOを吐出し、成膜ノズル421cから成膜ガスとしてHMDSを吐出する。
このプラズマ処理装置1Cの動作によれば、基材90の処理対象面上の所定領域は、まず処理ローラ31aにおいて成膜処理を受ける。成膜ノズル421aは成膜ガスとしてHMDSを吐出するので、薄膜層92aとしてシリコン窒化膜(SiNx)が基材90の処理対象面の上に形成される。基材90が搬送されて当該所定領域が処理ローラ31bの外周面に至ると、当該所定領域は処理ローラ31bにおいて成膜処理を受ける。成膜ノズル421bは成膜ガスとしてHMDSOを吐出するので、薄膜層92bとしてシリコン酸窒化膜(SiOxNy)が当該所定領域の薄膜層92aの上に形成される。基材90がさらに搬送されて当該所定領域が処理ローラ31cの外周面に至ると、当該所定領域は処理ローラ31cにおいて成膜処理を受ける。成膜ノズル421cは成膜ガスとしてHMDSを吐出するので、薄膜層92cとしてシリコン窒化膜(SiNx)が当該所定領域の薄膜層92bの上に形成される。
以上のように、プラズマ処理装置1Cによれば、多層膜を基材90の処理対象面に形成することができる。
図10に例示するように、プラズマ処理装置1Cには、個別仕切部材86が設けられてもよい。個別仕切部材86は処理空間V内において、少なくとも、複数の処理ローラ31の相互間に設けられており、これらの間の空間を仕切る。複数の成膜ノズル421は、個別仕切部材86によって仕切られた空間内に設けられている。
ここでは代表的に、成膜ノズル421bが設けられる空間を仕切る個別仕切部材86について述べる。この個別仕切部材86は、例えば、成膜ノズル421bと処理ローラ31bとの間の空間を囲むように設けられる。具体的には、個別仕切部材86は仕切部材80の貫通窓84bを囲むように、仕切部材80の上板81の内周面から−Z側に突出する。つまり、個別仕切部材86は、貫通窓84bを囲む筒状(例えば角筒状)の形状を有しており、その中心軸がZ軸方向に沿うように設けられている。成膜ノズル421bはこの個別仕切部材86の内部に設けられる。つまり、個別仕切部材86の−Z側の端部は、成膜ノズル421bの吐出口よりも−Z側に位置する。
これによれば、成膜ノズル421bの吐出口から吐出された成膜ガスは+Z側に流れて処理ローラ31bの外周面上の基材90の処理対象面に至るものの、X軸方向およびY軸方向の移動は個別仕切部材86によって遮られる。よって、成膜ノズル421bから吐出された成膜ガスが、その両隣の処理ローラ31aおよび処理ローラ31cの近傍に流れることを抑制できる。
成膜ノズル421aに対応する個別仕切部材86は、成膜ノズル421aに対して+Z側に設けられている。つまり、この個別仕切部材86は処理ローラ31aと処理ローラ31bとの間に設けられている。個別仕切部材86は板状の形状を有しており、その厚み方向がZ軸方向に沿うように設けられている。図10の例では、個別仕切部材86は貫通窓84aに対して+Z側に位置しており、−X側の側壁83の内周面から+X側に突出している。個別仕切部材86はZ軸方向において成膜ノズル421aと対向している。つまり、個別仕切部材86の+X側の端部は、成膜ノズル421aの吐出口よりも+X側に位置する。
成膜ノズル421aに対応する個別仕切部材86は、貫通窓84aに対して+Y側および−Y側の両方において、−X側の側壁83の内周面から+X側に突出していてもよい。この場合、個別仕切部材86はY軸方向の両側においても成膜ノズル421aと対向する。またこの場合、個別仕切部材86はX軸方向に沿って見て、−Z側に開く略U字状の形状を有する。
これによれば、成膜ノズル421aの吐出口から吐出された成膜ガスは−X側に流れて処理ローラ31aの外周面上の基材90の処理対象面に至るものの、+Z側およびY軸方向の移動は個別仕切部材86によって遮られる。よって、成膜ノズル421aから吐出された成膜ガスが、その隣の処理ローラ31bに流れることを抑制できる。
成膜ノズル421cに対応する個別仕切部材86は、成膜ノズル421aに対する個別仕切部材86と同様であるので、繰り返しの説明を避ける。
以上のように、プラズマ処理装置1Cが個別仕切部材86を含んでいれば、各成膜ノズル421から吐出された成膜ガスが他の処理ローラ31の近傍に流れにくく、各処理ローラ31において各薄膜層を適切な組成で形成することができる。
第5の実施の形態.
図12は、プラズマ処理装置1Dの構成の一例を概略的に示す図である。プラズマ処理装置1Dは加熱部36の有無を除いて、プラズマ処理装置1と同様である。加熱部36は制御部70によって制御され、基材90を加熱する。基材90はある程度の耐熱性を有している。このような基材90としては、例えばポリイミドを採用できる。加熱部36は例えば発熱用の抵抗線を含んでいてもよい。
図12の例では、加熱部36は各処理ローラ31の内部に設けられている。例えば、加熱部36は処理ローラ31の内部において、磁界形成部33に対して処理空間Vとは反対側に設けられる。また、加熱部36は磁界形成部33と同様に回転不能に設けられる。加熱部36は処理ローラ31を加熱し、その処理ローラ31を介して基材90に熱が伝達される。基材90の温度が高まることにより、基材90の処理対象面における反応性を高めることができ、良好な薄膜を形成することができる。
図12の例では、全ての処理ローラ31の内部に加熱部36が設けられているものの、基材90の温度を維持できる環境であれば、最上流に位置する処理ローラ31aのみに設けられてもよい。あるいは、加熱部36は必ずしも処理ローラ31の内部に設ける必要はなく、中継ローラ32の内部にも設けられてもよい。あるいは、加熱部36は処理ローラ31および中継ローラ32の外部において基材90と対向する位置に設けられてもよい。具体的には、加熱部36は各処理ローラ31の直前に設けられてもよいし、あるいは、最上流の処理ローラ31aのみの直前に設けられてもよい。
なお、処理ローラ31の内部は冷却されてもよい。例えば処理ローラ31の内部に冷却液(例えば水)を循環させることにより、処理ローラ31を冷却させてもよい。
以上、実施の形態が説明されたが、このプラズマ処理装置はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。本実施の形態は、その開示の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
1,1A〜1D プラズマ処理装置
21 送り出しローラ
22 巻き取りローラ
31 処理ローラ
32 中継ローラ
33 磁界形成部
36 加熱部
40 ガス導入部
50 誘導結合型アンテナ
80 仕切部材
86 個別仕切部材
90 基材
411 励起ノズル
421,421a〜421c 成膜ノズル

Claims (15)

  1. 基材を送り出す送り出しローラと、
    前記送り出しローラによって送り出された前記基材を巻き取る巻き取りローラと、
    前記送り出しローラと前記巻き取りローラとの間において前記基材を搬送し、処理空間を囲う3以上の処理ローラと、
    前記処理ローラ間において前記基材を中継する中継ローラと、
    前記処理空間にガスを導入するガス導入部と、
    前記処理空間の前記ガスをプラズマ励起する少なくとも一つの誘導結合型アンテナと
    を備える、プラズマ処理装置。
  2. 請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、
    前記処理ローラの少なくとも一つの内部に設けられており、前記処理空間側に磁界を形成する少なくとも一つの磁界形成部をさらに備える、プラズマ処理装置。
  3. 請求項2に記載のプラズマ処理装置であって、
    前記ガス導入部は、励起ガスおよび成膜ガスを前記処理空間に導入し、
    前記磁界形成部は、前記処理ローラのうち少なくとも一つに設けられていない、プラズマ処理装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置であって、
    前記ガス導入部は、
    励起ガスを前記処理空間に吐出する励起ノズルと、
    前記処理ローラの少なくとも一つに対応して設けられており、対応する前記処理ローラに向かって成膜ガスを吐出する少なくとも一つの成膜ノズルと
    を含み、
    前記励起ノズルは、前記処理ローラよりも前記誘導結合型アンテナの近くに設けられ、
    前記成膜ノズルは、前記誘導結合型アンテナよりも、対応する前記処理ローラの近くに設けられる、プラズマ処理装置。
  5. 請求項4に記載のプラズマ処理装置であって、
    前記処理ローラは、
    第1処理ローラと、
    前記第1処理ローラよりも前記基材の搬送方向の下流側に設けられた第2処理ローラと
    を含み、
    前記成膜ノズルは前記第2処理ローラに対応して設けられており、
    前記第1処理ローラには、成膜ノズルが設けられていない、プラズマ処理装置。
  6. 請求項4に記載のプラズマ処理装置であって、
    前記処理ローラは第1処理ローラおよび第2処理ローラを含み、
    前記成膜ノズルは、
    前記第1処理ローラに対応する第1成膜ノズルと、
    前記第2処理ローラに対応する第2成膜ノズルと
    を含み、
    前記第1成膜ノズルは、前記励起ノズルの吐出口から前記第1処理ローラまでの励起ガスの直線経路上に設けられており、
    前記第2成膜ノズルは、前記励起ノズルの吐出口から前記第2処理ローラまでの励起ガスの直線経路を避けて設けられており、
    前記第1成膜ノズルの吐出口と前記第1処理ローラとの間の距離は、前記第2成膜ノズルの吐出口と前記第2処理ローラとの間の距離よりも短い、プラズマ処理装置。
  7. 請求項4または請求項5に記載のプラズマ処理装置であって、
    全ての前記成膜ノズルの各々は、前記励起ノズルの吐出口から、対応する前記処理ローラまでの直線経路を避けて設けられる、プラズマ処理装置。
  8. 請求項4から請求項7のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置であって、
    前記成膜ノズルは複数設けられ、
    前記成膜ノズルの少なくとも一つは、他の少なくとも一つの成膜ノズルと異なる種類の成膜ガスを吐出する、プラズマ処理装置。
  9. 請求項8に記載のプラズマ処理装置であって、
    前記処理ローラの相互間を仕切る個別仕切部材をさらに備え、
    前記成膜ノズルは、前記個別仕切部材によって仕切られた空間内に設けられる、プラズマ処理装置。
  10. 請求項4から請求項9のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置であって、
    前記成膜ノズルは、前記基材の搬送方向に交差する交差方向において、前記基材の幅よりも長く、
    前記成膜ノズルは前記交差方向に沿って並ぶ複数の吐出口を有している、プラズマ処理装置。
  11. 請求項1から請求項10のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置であって、
    前記処理空間を囲む仕切部材をさらに備え、
    前記仕切部材には、前記処理ローラの外周面のうち前記基材が接触する部分と対向する貫通窓が形成されている、プラズマ処理装置。
  12. 請求項11に記載のプラズマ処理装置であって、
    前記仕切部材には、前記処理空間内の気体を排気する排気口が前記貫通窓とは別に形成される、プラズマ処理装置。
  13. 請求項1から請求項12のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置であって、
    前記基材を加熱する加熱部をさらに備える、プラズマ処理装置。
  14. 請求項1から請求項13のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置であって、
    前記誘導結合型アンテナは複数設けられており、
    前記誘導結合型アンテナは、前記基材の搬送方向と交差する仮想線に沿って一列に配列されている、プラズマ処理装置。
  15. 請求項1から請求項14のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置であって、
    前記誘導結合型アンテナの巻き数は1未満である、プラズマ処理装置。
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