JP2020195363A - 細胞増殖方法、細胞増殖剤および細胞増殖用培地 - Google Patents

細胞増殖方法、細胞増殖剤および細胞増殖用培地 Download PDF

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Abstract

【課題】体細胞を無血清培養できる、新規な細胞増殖方法の提供。【解決手段】歯髄由来幹細胞の培養上清を含む細胞増殖用培地に、体細胞を播種して無血清培養する、細胞増殖方法;細胞増殖剤;この細胞増殖剤を含む細胞増殖用培地。【選択図】図2

Description

本発明は、細胞増殖方法、細胞増殖剤および細胞増殖用培地に関する。
細胞培養方法として、幹細胞の培養液を用いた細胞の培養方法が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
特許文献1には、内壁にラミニンを含むコーティング層を有するマイクロ流路のコーティング層上に単一細胞を単一に播種する播種工程と、播種工程で単一細胞が単一に播種されたマイクロ流路内に培養液を循環させる循環工程と、を有する細胞培養方法が記載されている。
特許文献2には、細胞を増殖培養するための培地であって、MIGおよびI−309を含有する、細胞培養用培地が記載されている。
特開2015−186474号公報 特開2018−23343号公報 国際公開WO2005/026343号 中国特許出願公開第105861429号明細書 中国特許出願公開第107475188号明細書 中国特許出願公開第105420186号明細書 中国特許出願公開第105238749号明細書
近年、再生医療の分野では、増殖培養して得られた細胞を疾患治療の用途で用いることが望まれている。増殖培養して得られた細胞を疾患治療の用途で用いる場合、倫理性や安全性の観点から、増殖培養して得られた細胞に血清を含まないことが好ましい。そのため、体細胞を増殖培養するための細胞増殖剤として、体細胞を無血清培養できる血清代替物がより求められてきている。
しかしながら、特許文献1および2には、間葉系幹細胞の培養上清を、体細胞を無血清培養できる血清代替物の用途で用いることは明記されていなかった。
一方、ニューロスフィア法として、培養液中に神経幹細胞の培養上清を添加して神経幹細胞を分化させながら増殖させる方法が知られている。特許文献3には、培養液中の神経幹細胞の生存、増殖、またはそれら両方を促進する方法であって、ガレクチン−1を神経幹細胞内で過剰発現させるステップを含む方法が記載されている。このようなニューロスフィア法は、神経幹細胞ではない間葉系幹細胞(歯髄由来幹細胞)の培養上清への適用や、任意の体細胞を無血清培養できる血清代替物の用途で用いることへの適用を、想定していないものであった。
また、各種類の幹細胞の培養上清を用いて、各種類の幹細胞を増殖させる方法が知られている(特許文献4〜7参照)。
特許文献4には、冷凍保存後の歯髄間充織幹細胞を、歯髄間充織幹細胞を無血清DMEM/F12培地で培養して得られた培養上清に対して5倍の低温保存液を添加した培地中で培養すると、解凍後の細胞増殖が有利となることが記載されている(実施例、図1)。
特許文献5には、脂肪幹細胞に、bFGFを含む血清非含有培地を添加して培養し、24時間培養した後に培養物上清を収集したこと、この上清を75%含む細胞培地で胎児性幹細胞を培養すると、この上清を含まない培地中で培養した対照と比較して、増殖が促進されたことが記載されている(要約、実施例)。
特許文献6には、臍帯間充織幹細胞培養上清濃縮液を4〜6重量部含む、血清非含有幹細胞培養用キットが記載されている(要約、請求の範囲)。具体的には、ヒト臍帯間充織幹細胞を血清非含有培地に播種し48−72時間培養した後、培養上清を回収し、遠心等を行って作製した臍帯間充織幹細胞培養上清濃縮液を5重量部含む、血清非含有培地(SCL−M)と、血清培地(FBS)とで、ヒト臍帯間充織幹細胞を培養したところ、SCL−Mで細胞を培養した場合の方が、細胞増殖が促進されたことが記載されている(実施例5、図3)。
特許文献7には、冷凍保存後の骨髄間葉系幹細胞を、骨髄間葉系幹細胞を無血清DMEM培地で培養して得られた培養上清に対して5倍の低温保存液を添加した培地中で培養すると、解凍後の細胞増殖が有利となることが記載されている(実施例、図1、図2)。
しかし、特許文献4〜7では、各種類の幹細胞の培養上清について、体細胞を無血清培養できる血清代替物の用途として用いることは想定していなかった。また、特許文献4の実施例1には「30歳以下の人脱落および抜去の健康な歯を収集」とあり、永久歯の歯髄間充織幹細胞(間葉系幹細胞)の培養上清を使用することしか明記されていなかった。
本発明が解決しようとする課題は、体細胞を無血清培養できる、新規な細胞増殖方法および細胞増殖剤を提供することである。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、歯髄由来幹細胞の培養上清を含む細胞増殖用培地に、体細胞を播種して無血清培養することにより、上記の課題を解決できることを見出した。
具体的に、本発明および本発明の好ましい構成は、以下のとおりである。
[1] 歯髄由来幹細胞の培養上清を含む細胞増殖用培地に、体細胞を播種して無血清培養する、細胞増殖方法。
[2] 歯髄由来幹細胞の培養上清として、乳歯歯髄由来幹細胞の培養上清からなる細胞増殖剤のみを用いる、[1]に記載の細胞増殖方法。
[3] 体細胞が線維芽細胞または表皮角化細胞である、[1]または[2]に記載の細胞増殖方法。
[4] 乳歯歯髄由来幹細胞の培養上清からなり、体細胞を無血清培養できる用途である、細胞増殖剤。
[5] [4]に記載の細胞増殖剤を含む、細胞増殖用培地。
[6] 細胞増殖用培地の全体に対して細胞増殖剤を5質量%以上含む、[5]に記載の細胞増殖用培地。
本発明によって、体細胞を無血清培養できる、新規な細胞増殖方法および細胞増殖剤を提供することができる。
図1は、実施例1(SGF)および比較例1(血清なし)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を示したグラフ(12検体の平均値)である。 図2は、実施例1(SGF)および比較例2(AT)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を示したグラフ(12検体の平均値)である。 図3は、実施例1(SGF)および比較例3(UC)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を示したグラフ(9検体の平均値)である。 図4は、実施例1(SGF)および比較例4(HFDM)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を示したグラフ(6検体の平均値)である。 図5は、実施例1(SGF)および比較例5(KBM)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を示したグラフ(6検体の平均値)である。 図6は、実施例1(SGF)および比較例6(FBS)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を示したグラフ(12検体の平均値)である。 図7は、実施例101(SGF)および比較例101(血清なし)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を示したグラフである。 図8は、実施例101(SGF)および比較例102(UC)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を示したグラフである。 図9は、実施例101(SGF)および比較例103(無血清培地)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を示したグラフである。 図10は、実施例101(SGF)および比較例104(FBS)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を示したグラフである。 図11は、実施例201(SGF)および比較例201(大人歯髄)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を示したグラフである。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
[細胞増殖方法および細胞増殖剤]
本発明の細胞増殖方法は、歯髄由来幹細胞の培養上清を含む細胞増殖用培地に、体細胞を播種して無血清培養する、細胞増殖方法である。
一方、本発明の細胞増殖剤は、乳歯歯髄由来幹細胞の培養上清からなり、体細胞を無血清培養できる用途である。
以下、本発明の細胞増殖方法および細胞増殖剤の好ましい態様を説明する。
<細胞増殖用培地>
本発明の細胞増殖方法は、歯髄由来幹細胞の培養上清を含む細胞増殖用培地を用いる。
(歯髄由来幹細胞の培養上清)
細胞増殖用培地は、歯髄由来幹細胞の培養上清を含む。
歯髄由来幹細胞の培養上清は、血清を実質的に含まないことが好ましい。例えば、歯髄由来幹細胞の培養上清は、血清の含有量が1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることが特に好ましい。
−歯髄由来幹細胞−
培養上清に用いられる歯髄由来幹細胞としては、特に制限はない。脱落乳歯歯髄幹細胞(stem cells from exfoliated deciduous teeth)や、その他の方法で入手される乳歯歯髄幹細胞や、永久歯歯髄幹細胞(dental pulp stem cells;DPSC)を用いることができる。
歯髄由来の体性幹細胞は、血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インシュリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子−ベータ(TGF−β)−1および−3、TGF−a、KGF、HBEGF、SPARC、その他の成長因子、ケモカイン等の種々のサイトカインを産生し得る。また、エクソソームなどその他の多くの生理活性物質を産生し得る。
本発明では、歯髄由来幹細胞の培養上清に用いられる歯髄由来幹細胞が、多くのたんぱく質が含まれる歯髄由来幹細胞であることが特に好ましく、乳歯歯髄幹細胞を用いることが好ましい。すなわち、本発明の細胞増殖方法では、乳歯歯髄幹細胞の培養上清液(SGF)を含む細胞増殖用培地を用いることが好ましい。
本発明に用いられる歯髄由来幹細胞は、目的の処置を達成することができれば、天然のものであってもよく、遺伝子改変したものであってもよい。
本発明の細胞増殖剤や、本発明の細胞増殖方法によって無血清培養された体細胞を再生医療に用いる場合、再生医療等安全性確保法の要請から、歯髄由来幹細胞の培養上清は、歯髄由来幹細胞以外のその他の体性幹細胞を含有しない態様とする。ただし、本発明の細胞増殖剤を用いて無血清培養する細胞を再生医療以外の技術分野で用いる場合は、歯髄由来幹細胞の培養上清は、歯髄由来幹細胞以外の間葉系幹細胞やその他の体性幹細胞を含有していてもよいが、含有しないことが好ましい。歯髄由来幹細胞の培養上清は、特に、神経幹細胞を含有しないことが好ましい。
歯髄由来幹細胞以外の間葉系幹細胞としては、骨髄由来幹細胞、臍帯由来幹細胞または脂肪由来幹細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。
間葉系幹細胞以外のその他の体性幹細胞の例としては、真皮系、消化系、骨髄系、神経系等に由来する幹細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。真皮系の体性幹細胞の例としては、上皮幹細胞、毛包幹細胞等が含まれる。消化系の体性幹細胞の例としては膵臓(全般の)幹細胞、肝幹細胞等が含まれる。(間葉系幹細胞以外の)骨髄系の体性幹細胞の例としては、造血幹細胞等が含まれる。神経系の体性幹細胞の例としては、神経幹細胞、網膜幹細胞等が含まれる。
歯髄由来幹細胞の培養上清は、体性幹細胞以外の幹細胞を含有していてもよいが、含有しないことが好ましい。体性幹細胞以外の幹細胞としては、胚性幹細胞(ES細胞)、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性癌腫細胞(EC細胞)が含まれる。
−歯髄由来幹細胞の培養上清の調製方法−
歯髄由来幹細胞の培養上清の調製方法としては特に制限はなく、従来の方法を用いることができる。
歯髄由来幹細胞の培養上清は、歯髄由来幹細胞を培養して得られる培養液であり、細胞そのものを含まない。例えば歯髄由来幹細胞の培養後に細胞成分を分離除去することによって、本発明に使用可能な培養上清を得ることができる。各種処理(例えば、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩、保存等)を適宜施した培養上清を用いることにしてもよい。
歯髄由来幹細胞の培養上清を得るための歯髄由来幹細胞は、常法により選別可能であり、細胞の大きさや形態に基づいて、または接着性細胞として選別可能である。歯髄幹細胞の場合には、脱落した乳歯や永久歯から採取した歯髄細胞から、接着性細胞またはその継代細胞として選別することができる。歯髄幹細胞培養上清には、選別された幹細胞を培養して得られた培養上清を用いることができる。
なお、「歯髄由来幹細胞の培養上清」は、歯髄由来幹細胞を培養して得られる細胞そのものを含まない培養液であることが好ましい。本発明で用いる歯髄由来幹細胞の培養上清は、その一態様では全体としても細胞(細胞の種類は問わない)を含まないことが好ましい。当該態様の細胞増殖剤はこの特徴によって、歯髄由来幹細胞自体は当然のこと、歯髄由来幹細胞を含む各種組成物と明確に区別される。この態様の典型例は、歯髄由来幹細胞を含まず、歯髄由来幹細胞の培養上清のみで構成された組成物である。
本発明で用いる歯髄由来幹細胞の培養上清は、乳歯歯髄由来幹細胞および大人歯髄由来幹細胞の両方の培養上清を含んでいてもよい。本発明で用いる歯髄由来幹細胞の培養上清は、乳歯歯髄由来幹細胞の培養上清を有効成分として含むことが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことが好ましい。本発明で用いる歯髄由来幹細胞の培養上清は、乳歯歯髄由来幹細胞の培養上清のみで構成された組成物であることがより特に好ましい。
培養上清を得るための歯髄由来幹細胞の培養液には基本培地、或いは基本培地に血清等を添加したもの等を使用可能である。なお、基本培地としてはダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)の他、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)(GIBCO社等)、ハムF12培地(HamF12)(SIGMA社、GIBCO社等)、RPMI1640培地等を用いることができる。二種以上の基本培地を併用することにしてもよい。混合培地の一例として、IMDMとHamF12を等量混合した培地(例えば商品名:IMDM/HamF12(GIBCO社)として市販される)を挙げることができる。また、培地に添加可能な成分の例として、血清(ウシ胎仔血清、ヒト血清、羊血清等)、血清代替物(Knockout serum replacement(KSR)など)、ウシ血清アルブミン(BSA)、抗生物質、各種ビタミン、各種ミネラルを挙げることができる。
但し、血清を含まない「歯髄由来幹細胞の培養上清」を調製するためには、全過程を通して或いは最後または最後から数回の継代培養についは無血清培地を使用するとよい。例えば、血清を含まない培地(無血清培地)で歯髄由来幹細胞を培養することによって、血清を含まない歯髄由来幹細胞の培養上清を調製することができる。1回または複数回の継代培養を行うことにし、最後または最後から数回の継代培養を無血清培地で培養することによっても、血清を含まない歯髄由来幹細胞の培養上清を得ることができる。一方、回収した培養上清から、透析やカラムによる溶媒置換などを利用して血清を除去することによっても、血清を含まない歯髄由来幹細胞の培養上清を得ることができる。
培養上清を得るための歯髄由来幹細胞の培養には、通常用いられる条件をそのまま適用することができる。歯髄由来幹細胞の培養上清の調製方法については、幹細胞の種類に応じて幹細胞の単離および選抜工程を適宜調整する以外は、後述する細胞培養方法と同様とすればよい。歯髄由来幹細胞の種類に応じた歯髄由来幹細胞の単離および選抜は、当業者であれば適宜行うことができる。
−歯髄由来幹細胞の培養上清に含まれるその他の成分−
本発明で用いる歯髄由来幹細胞の培養上清は、歯髄由来幹細胞の培養上清の他にその他の成分を含んでいてもよいが、その他の成分を実質的に含まないことが好ましい。
(歯髄由来幹細胞の培養上清の含有量)
細胞増殖用培地は、細胞増殖用培地の全体に対して、歯髄由来幹細胞の培養上清(または本発明の細胞増殖剤)を、例えば0.1〜100質量%含むことができるが、5質量%以上含むことが好ましい。細胞増殖用培地に対して、歯髄由来幹細胞の培養上清(または本発明の細胞増殖剤)を5〜20質量%含むことがより好ましく、7〜15質量%含むことが特に好ましい。この範囲であることによって、より高い細胞増殖促進効果を得られる。凍結乾燥等をした歯髄由来幹細胞の培養上清または本発明の細胞増殖剤を用いる場合、細胞増殖用培地が、細胞増殖用培地の全体に対して、歯髄由来幹細胞の培養上清または本発明の細胞増殖剤を含む量を少なくすることができる。
(基礎培地)
細胞増殖用培地に用いることのできる基礎培地としては、特に限定されないが、通常、細胞を増殖するために用いられる成分である、アミノ酸、ビタミン類、無機塩類などを含む。基礎培地としては、例えばイーグル基本培地(MEM)、アルファイーグル基本培地(aMEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハムF12培地(HamF12)などが挙げられる。
なお、本明細書における「基礎培地」とは、細胞増殖用培地において歯髄由来幹細胞の培養上清が添加される前の培地を指し、上記のような市販の基本培地等が該当する。
(その他の成分)
細胞増殖用培地は、歯髄由来幹細胞の培養上清(特に、本発明の細胞増殖剤)や基礎培地以外にも、培養する間葉系幹細胞または体細胞の種類や目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、栄養成分、抗生物質、サイトカインなどを挙げられる。
栄養成分としては、例えば、脂肪酸等、ビタミン等を挙げることができる。
抗生物質としては、例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン等が挙げられる。
サイトカインとしては、特開2018−023343号公報の[0014]〜[0020]に記載のもの等が挙げられる。
一方、本発明で用いる細胞増殖用培地は、血清(ウシ胎仔血清、ヒト血清、羊血清等)を実質的に含まないことが好ましい。また、本発明で用いる細胞増殖用培地は、Knockout serum replacement(KSR)などの従来の血清代替物を実質的に含まないことが好ましい。例えば、本発明で用いる細胞増殖用培地は、血清および従来の血清代替物の含有量がいずれも1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることが特に好ましい。
(細胞増殖用培地の調製方法)
本発明の細胞増殖用培地の調製方法は、特に制限はない。歯髄由来幹細胞の培養上清(特に本発明の細胞増殖剤)を上記した製造方法で製造し、続けて歯髄由来幹細胞の培養上清を市販の基本培地等に添加して細胞増殖用培地を調製してもよい。あるいは、商業的に購入して入手した歯髄由来幹細胞の培養上清(特に本発明の細胞増殖剤)を、市販の基本培地等に添加して細胞増殖用培地を調製してもよい。さらには、廃棄処理されていた歯髄由来幹細胞の培養上清を含む組成物を譲り受けて(またはその組成物を適宜精製して)、市販の基本培地等に添加して細胞増殖用培地を調製してもよい。
なお、本発明の細胞増殖剤のみを、そのまま細胞増殖用培地として用いてもよい。
<体細胞>
本発明の細胞増殖方法により、無血清培養できる体細胞の動物種は特に制限されず、体細胞を使用する用途に応じて、例えば、ヒト、ラット、マウス、ブタ等を使用できる。無血清培養できる体細胞の動物種はヒトであることが好ましい。
本発明の細胞増殖方法により、無血清培養できる体細胞の種類は特に制限はなく、任意の体細胞を無血清培養できる。無血清培養できる体細胞としては、例えば、外胚葉系細胞、中胚葉系細胞、内胚葉系細胞、受精卵からこれらの細胞へ分化する過程に含まれる細胞等を挙げることができる。
外胚葉系細胞としては、例えば、ニューロン細胞、アストロサイト細胞、オリゴデンドロサイト細胞、表皮細胞等を挙げることができる。表皮細胞としては、例えば、表皮角化細胞(ケラチノサイト)などを挙げることができる。
中胚葉系細胞としては、例えば、血管細胞、造血系細胞、間葉系細胞、真皮細胞等を挙げることができる。
造血系細胞としては、例えば、造血前駆細胞、赤血球細胞、リンパ球細胞、顆粒球細胞および血小板細胞等を挙げることができる。
間葉系細胞としては、例えば、骨細胞、軟骨細胞、筋細胞、心筋細胞、腱細胞、脂肪細胞、毛乳頭細胞、歯髄細胞、線維芽細胞等を挙げることができる。
内胚葉系細胞としては、例えば、肝細胞、膵外分泌細胞、膵内分泌細胞、胆のう細胞等を挙げることができる。
本発明の細胞増殖方法を用いて再生医療や細胞療法等に用いる体細胞を培養する場合、線維芽細胞、表皮角化細胞、臍帯細胞および脂肪細胞などの体細胞などが挙げられる。
本発明の効果の観点や、より多くの細胞を採取できるという観点から、無血清培養できる体細胞が、線維芽細胞、表皮角化細胞、臍帯細胞または脂肪細胞であることがより好ましく、線維芽細胞または表皮角化細胞であることが特に好ましい。
体細胞の入手方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウス等の固体から単離することにより入手する方法、すでにクローン化された各細胞を、各種機関から入手する方法などが挙げられる。
また、本発明の細胞増殖方法を用いて体細胞を培養し、種々の疾患患者の体内へ戻す治療を行う場合は、該患者の体内から採取した体細胞を用いることが好ましい。
<細胞培養方法>
本発明の細胞増殖方法では、細胞増殖用培地に、体細胞を播種して無血清培養する。
体細胞を増殖培養する、細胞培養方法について説明する。
体細胞の培養条件等は、体細胞の種類等によって適宜好ましい条件を採用できる。
体細胞を培養する場合は、インキュベータにより例えば、温度37℃、5%COの条件下で培養することが好ましい。培養時間に関しては、コンフルエント状態になる前に継代することが好ましい。体細胞の継代数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
得られた細胞培養液、または細胞培養液から細胞のみを分離して得られる細胞画分は、例えば、細胞の種類によって種々の細胞医療等に用いることができる。
なお、本発明の細胞増殖方法を用いて体細胞を増殖培養する場合は、後述の細胞増殖用培地を調製してから体細胞を増殖培養してもよい。
<用途>
本発明で用いる細胞増殖用培地または本発明の細胞増殖剤は、体細胞を無血清培養できる血清代替物の用途として用いられる。従来の血清や従来の血清代替物と比較して、本発明で用いる細胞増殖用培地または本発明の細胞増殖剤は、大量生産しやすい、従来は酸魚廃棄物等として廃棄されていた幹細胞の培養液を利活用できる、幹細胞の培養液の廃棄コストを減らせる等の利点がある。特に歯髄由来幹細胞の培養上清が、ヒト歯髄由来間葉系幹細胞の培養上清である場合は、本発明の細胞増殖方法を用いて増殖させた体細胞をヒトに対して適用する場合に、免疫学上などの観点での安全性が高く、倫理性の問題も少ないという利点もある。歯髄由来幹細胞の培養上清が、種々の疾患患者からの歯髄由来幹細胞の培養上清である場合は、本発明の細胞増殖方法を用いて増殖させた体細胞をその患者に対して適用する際により安全性が高まり、倫理性の問題も少なくなるであろう。
本発明の細胞増殖方法は、体細胞を分化させずに増殖培養することが好ましい。本発明の細胞増殖方法は、従来のニューロスフィア法などの細胞を分化させて増殖させる方法とは異なり、細胞を分化させずに増殖培養できる。
本発明の細胞増殖剤や、本発明の細胞増殖方法で用いられるSGFなどの歯髄由来幹細胞の培養上清は、歯髄由来幹細胞の培養上清を含むため、修復医療の用途にも用いられる。特にSGFを含む液は、修復医療の用途に好ましく用いられる。ここで、幹細胞移植を前提とした再生医療において、幹細胞は再生の主役ではなく、幹細胞の産生する液性成分が自己の幹細胞とともに臓器を修復させる、ということが知られている。従来の幹細胞移植に伴うがん化、規格化、投与法、保存性、培養法などの困難な問題が解決され、SGFなどの歯髄由来幹細胞の培養上清によって修復医療が可能となる。幹細胞移植と比較すると、SGFなどの歯髄由来幹細胞の培養上清を用いた修復では細胞を移植しないために腫瘍化などが起こりにくく、より安全と言えるだろう。また、SGFは一定に規格化した品質のものを使用できる利点がある。大量生産や効率的な投与方法を選択することができるので、低コストで幅広い疾患への利用ができる。SGFなどの投与方法は、点滴、局所投与、点鼻薬などであり、非常に侵襲が少なく、副作用はほとんど確認されない。局所投与の方法としては、皮膚表面に電圧(電気パルス)をかけることにより細胞膜に一時的に微細な穴をあけ、通常のケアでは届かない真皮層まで有効成分を浸透させられるエレクトロポレーションが好ましい。SGFなどの投与により効果や病気発症リスクの軽減が期待できる疾患としては、糖尿病、肝臓病、腎臓病、アトピー、リウマチ(関節痛)、ED(勃起不全)、高血圧による血管内皮細胞障害、変形性膝関節症、脳梗塞後遺症などの梗塞系疾患が挙げられる。さらに、しわ・たるみの改善・防止/創傷治癒/ホワイトニング/発毛・増毛/抗酸化など、アンチエイジングが期待できる。投与されたSGFなどは体内を循環し、痛んだ組織を見つけると、ホーミング効果により、幹細胞自身が活性化し修復再生する。さらに脳下垂体を刺激し、ホルモンバランスを健全化して新陳代謝のサイクルが元通りに代謝亢進する。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
<歯髄由来幹細胞の培養上清の調製>
DMEM/HamF12混合培地の代わりにDMEM培地を用い、その他は特許第6296622号の実施例6に記載の方法に準じて、乳歯歯髄幹細胞の培養上清を調製した。初代培養ではウシ胎仔血清(FBS)を添加して培養し、継代培養では初代培養液を用いて培養した継代培養液の上清をFBSが含まれないように分取し、乳歯歯髄幹細胞の培養上清を調製として用いた。なお、DMEMはダルベッコ改変イーグル培地であり、F12はハムF12培地である。
得られた乳歯歯髄幹細胞の培養上清液を、SGFとした。
<培養上清を用いた線維芽細胞の培養>
DMEM培地と、培地全体に対して10質量%となる量のSGFを細胞増殖剤として含む、10質量%SGF培地を調製した。
増殖培養させる体細胞として、ヒト正常線維芽細胞(HDF)を用いた。ヒト正常線維芽細胞を6ウェルプレートへ1ウェルあたり1×10cellsとなるように10質量%SGF培地に播種した。3日後と5日後と7日後に吸光度を測定できるように複数の検体を播種した。培養液は各ウェルあたり3mlとなるように調製した。
加湿、常圧下、37℃、5%COの条件でヒト正常線維芽細胞を培養した。
<細胞増殖の定量評価(細胞増殖能試験)>
Premix WST−1 Cell Proliferation Assay System(タカラバイオ株式会社製)を用いて、以下の手順で行った発色測定により、細胞増殖の定量評価をした。
細胞培養期間終了後、Premix WST−1を1ウェルあたり300μlずつ加え、加湿、常圧下、37℃、5%COの条件で1時間インキュベートして、反応液を得た。
96ウェルプレートへ反応液を100μl移し、マイクロプレートリーダー(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、製品名Multiskan FC)を用いて、バックグラウンドコントロールとサンプルの波長450nmにおける吸光度を測定した。
[比較例1]:血清なし
コントロール群として、10質量%SGF培地の代わりに、DMEM培地(血清無)を用いた以外は実施例1と同様にして、ヒト歯髄由来幹細胞の培養および評価を行った(各12検体)。
実施例1(SGF)および比較例1(血清なし)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を図1に示した。なお、各図のD3、D5およびD7は、それぞれ培養日数(細胞培養期間)が培養開始から3日後、5日後および7日後の培養液を用いて発色測定を行った場合における、反応液の吸光度のデータであることを表す。
図1より、血清なしとSGFは危険率1%以下で有意差があり、SGFの方が体細胞の増殖促進効果が見られた。
[比較例2]:脂肪由来幹細胞の培養上清(AT)
乳歯歯髄幹細胞の代わりに、ヒト脂肪由来幹細胞を用いた以外は実施例1に準じて、脂肪由来幹細胞の培養上清を調製した。DMEM培地と、培地全体に対して10質量%となる量の脂肪由来幹細胞の培養上清とを含む、10質量%AT培地を調製した。
10質量%SGF培地の代わりに、10質量%AT培地を用いた以外は実施例1と同様にして、ヒト正常線維芽細胞の培養および評価を行った(各12検体)。
実施例1(SGF)および比較例2(AT)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を図2に示した。図2より、ATとSGFは危険率1%以下で有意差があり、SGFの方が体細胞の増殖促進効果が見られた。
[比較例3]:臍帯由来幹細胞の培養上清(UC)
乳歯歯髄幹細胞の代わりに、ヒト臍帯由来幹細胞を用いた以外は実施例1に準じて、臍帯由来幹細胞の培養上清を調製した。DMEM培地と、培地全体に対して10質量%となる量の臍帯由来幹細胞の培養上清とを含む、10質量%UC培地を調製した。
10質量%SGF培地の代わりに、10質量%UC培地を用いた以外は実施例1と同様にして、ヒト正常線維芽細胞の培養および評価を行った(各9検体)。
実施例1(SGF)および比較例3(UC)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を図3に示した。図3より、UCとSGFは危険率1%以下で有意差があり、SGFの方が体細胞の増殖促進効果が見られた。
[比較例4]:HFDM培地
10質量%SGF培地の代わりに、市販のHFDM−1培地((株)機能性ペプチド研究所製)を用いた以外は実施例1と同様にして、ヒト正常線維芽細胞の培養および評価を行った(各6検体)。
実施例1(SGF)および比較例4(HFDM)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を図4に示した。図4より、HFDMとSGFは有意差がなかった。
[比較例5]:KBM培地
10質量%SGF培地の代わりに、市販のKBM Fibro Assist培地(コージンバイオ株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、ヒト正常線維芽細胞の培養および評価を行った(各6検体)。
実施例1(SGF)および比較例5(KBM)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を図5に示した。図5より、KBMとSGFは有意差がなかった。
[比較例6]:ウシ胎仔血清(FBS)を含む培地
DMEM培地と、培地全体に対して10質量%となる量のウシ胎仔血清(FBS)を含む、10質量%FBS培地を調製した。
10質量%SGF培地の代わりに、10質量%FBS培地を用いた以外は実施例1と同様にして、ヒト正常線維芽細胞の培養および評価を行った(各12検体)。
実施例1(SGF)および比較例6(FBS)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を図6に示した。図6より、FBSとSGFは有意差がなかった。
[線維芽細胞の培養結果のまとめ]
図1〜図3より、本発明によれば、ヒト歯髄由来幹細胞の培養上清を添加した培地(SGF)では、血清なしのコントロールの比較例1の培地、脂肪由来幹細胞の培養上清を添加した比較例2の培地(AT)、臍帯由来幹細胞の培養上清を添加した比較例3の培地(UC)と比較して有意に体細胞の増殖促進効果が見られた。
図4〜図6より、本発明によれば、ヒト歯髄由来幹細胞の培養上清を添加した培地(SGF)では、市販の培地を用いた比較例4の培地(HFDM)および比較例5の培地(KBM)、ならびにFBSを添加した比較例6の培地と遜色の無い程度の体細胞の増殖促進効果が見られた。
これらのことから、ヒト歯髄由来幹細胞の培養上清は、体細胞を無血清培養できる血清代替物の用途として用いられることがわかった。
[実施例101]:歯髄由来幹細胞の培養上清を用いた表皮角化細胞の培養
増殖培養させる体細胞として、ヒト表皮角化細胞(ケラチノサイト)を用いた以外は実施例1と同様にして、ヒト表皮角化細胞の培養および評価を行った。
[比較例101]:血清なし培地を用いた表皮角化細胞の培養
増殖培養させる体細胞として、ヒト表皮角化細胞(ケラチノサイト)を用いた以外は比較例1と同様にして、血清なし培地を用いたヒト表皮角化細胞の培養および評価を行った。
実施例101(SGF)および比較例101(血清なし)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を図7に示した。図7より、表皮角化細胞の培養を行う場合も、血清なしとSGFは危険率1%以下で有意差ありだった。
[比較例102]:臍帯由来幹細胞の培養上清(UC)を含む培地を用いた表皮角化細胞の培養
増殖培養させる体細胞として、ヒト表皮角化細胞(ケラチノサイト)を用いた以外は比較例3と同様にして、臍帯由来幹細胞の培養上清(UC)を含む培地を用いたヒト表皮角化細胞の培養および評価を行った。
実施例101(SGF)および比較例102(UC)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を図8に示した。図8より、表皮角化細胞の培養を行う場合も、UCとSGFは危険率1%以下で有意差ありだった。
[比較例103]:市販の無血清培地を用いた表皮角化細胞の培養
10質量%SGF培地の代わりに、市販の無血清培地であるKeratinocyte Growth Medium 2 Kit(タカラバイオ株式会社製)を用いた以外は実施例101と同様にして、ヒト表皮角化細胞の培養および評価を行った。
実施例101(SGF)および比較例103(無血清培地)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を図9に示した。図9より、市販の無血清培地とSGFは有意差がなかった。
[比較例104]:ウシ胎仔血清(FBS)を含む培地を用いた表皮角化細胞の培養
増殖培養させる体細胞として、ヒト表皮角化細胞(ケラチノサイト)を用いた以外は比較例6と同様にして、10質量%FBS培地を用いたヒト表皮角化細胞の培養および評価を行った。
実施例101(SGF)および比較例104(FBS)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を図10に示した。図10より、表皮角化細胞の培養を行う場合も、FBSとSGFは有意差がなかった。
[表皮角化細胞の培養結果のまとめ]
図7および図8より、本発明によれば、ヒト歯髄由来幹細胞の培養上清を添加した培地(SGF)では、血清なしのコントロールの比較例101の培地、臍帯由来幹細胞の培養上清を添加した比較例102の培地(UC)と比較して有意に体細胞の増殖促進効果が見られた。
図9および図10より、本発明によれば、ヒト歯髄由来幹細胞の培養上清を添加した培地(SGF)では、市販の培地を用いた比較例103の培地(無血清培地)、およびFBSを添加した比較例104の培地と遜色の無い程度の体細胞の増殖促進効果が見られた。
これらのことから、ヒト歯髄由来幹細胞の培養上清は、体細胞を無血清培養できる血清代替物の用途として用いられることがわかった。
[実施例201]
<乳歯歯髄幹細胞の培養上清を用いた乳歯歯髄幹細胞の増殖培養>
DMEM培地と、培地全体に対して10質量%となる量のSGFを細胞増殖剤として含む、10質量%SGF培地を調製した。
増殖培養させる体細胞として、実施例1と同様の線維芽細胞を用いて、線維芽細胞の培養および評価を行った(各3検体)。
[比較例201]
<永久歯歯髄幹細胞の培養上清を用いた乳歯歯髄幹細胞の増殖培養>
中国特許出願公開第105861429号明細書の実施例と同様に、大人の人脱落および抜去の健康な歯を収集して、大人の永久歯歯髄幹細胞(dental pulp stem cells;大人歯髄幹細胞)を調製した。
乳歯歯髄幹細胞の代わりに、大人の永久歯歯髄幹細胞を用いた以外は実施例1に準じて、大人の永久歯歯髄幹細胞の培養上清を調製した。DMEM培地と、培地全体に対して10質量%となる量の大人歯髄幹細胞の培養上清とを含む、10質量%の大人の永久歯歯髄幹細胞培地を調製した。
10質量%SGF培地の代わりに、10質量%大人歯髄培地を用いた以外は実施例201と同様にして、線維芽細胞の培養および評価を行った(各3検体)。
実施例201(SGF)および比較例201(大人歯髄)の細胞増殖の定量評価で得られた結果を図11に示した。図11より、乳歯歯髄幹細胞由来であるSGFを用いた方が、大人歯髄幹細胞を用いるよりも培養日数7日目の体細胞の増殖促進効果が顕著に見られた。
このことから、乳歯歯髄由来幹細胞の培養上清は、大人の永久歯歯髄幹細胞と比較して、体細胞を無血清培養する場合に体細胞の増殖促進効果が顕著であることがわかった。

Claims (6)

  1. 歯髄由来幹細胞の培養上清を含む細胞増殖用培地に、体細胞を播種して無血清培養する、細胞増殖方法。
  2. 前記歯髄由来幹細胞の培養上清として、乳歯歯髄由来幹細胞の培養上清からなる細胞増殖剤のみを用いる、請求項1に記載の細胞増殖方法。
  3. 前記体細胞が線維芽細胞または表皮角化細胞である、請求項1または2に記載の細胞増殖方法。
  4. 乳歯歯髄由来幹細胞の培養上清からなり、
    体細胞を無血清培養できる用途である、細胞増殖剤。
  5. 請求項4に記載の細胞増殖剤を含む、細胞増殖用培地。
  6. 前記細胞増殖用培地の全体に対して前記細胞増殖剤を5質量%以上含む、請求項5に記載の細胞増殖用培地。
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