JP2020189966A - プロピレン系重合体の製造方法、及び分岐状プロピレン系重合体 - Google Patents

プロピレン系重合体の製造方法、及び分岐状プロピレン系重合体 Download PDF

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Abstract

【課題】成形に必要な溶融張力を保持しながら、延展性に優れるプロピレン系重合体を製造する方法を提供する。【解決手段】特定のプロピレン重合用触媒の存在下に連続的にプロピレンを重合するプロピレン系重合体の製造方法において、少なくとも水素とプロピレンとを重合反応器に連続的に導入しながらプロピレン系重合体を重合反応器から回収する工程を有し、当該回収工程において、前記水素とプロピレンとは連続的に導入する導入流量比を一定に保ち、前記プロピレン系重合体の230℃の溶融張力(MT230℃)と190℃の溶融張力(MT190℃)の比(MT190℃/MT230℃)は1.8以上、2.5以下、MT230℃は3.6g以上、15.0g以下とすることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、プロピレン系重合体の製造方法に関し、詳しくは成形に必要な溶融張力を保持しながら、延展性に優れるプロピレン系重合体の製造方法、及び当該製造方法により製造される分岐状プロピレン系重合体に関する。
近年、ポリプロピレンに分岐構造を導入することにより、比較的高い溶融張力の素材が求められるシート成形、ブロー成形、熱成形、発泡成形等への適性を高める検討が多く行われている。
最近になって、主としてメタロセン触媒を利用したマクロマー共重合法が提案されている。マクロマー共重合法による分岐状ポリプロピレンは、電子線等を照射することにより分岐構造が導入されたポリプロピレンと比べて、架橋反応に起因するゲルの発生が少ないなどの利点がある。
そのようなマクロマー共重合法としては、例えば、重合第一段階(マクロマー合成工程)で、特定の触媒と特定の重合条件により末端にビニル構造をもつプロピレンマクロマーを製造し、重合第二段階(マクロマー共重合工程)で、特定の触媒と特定の重合条件によりプロピレンとプロピレンマクロマーとの共重合を行う方法が提案されていて、得られる分岐状ポリプロピレンは、溶融強度や溶融張力が高くなることが示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
また、特定のメタロセン触媒を用いて、マクロマー合成工程とマクロマー共重合工程とを同時に行う単段重合法も提案されていて、得られる分岐状ポリプロピレンは改良された溶融強度を示すことが示されている(例えば、特許文献3参照)。
さらに、特定の2種のメタロセン化合物を含む触媒、具体的には、rac−SiMe[2−Me−4−Ph−lnd]ZrC1とrac−SiMe[2−Me−4−Ph−lnd]HfC1等のメタロセン化合物と、メチルアルミノキサン(MAO)を担持したシリカとを組み合わせた触媒を用いて、多段重合する方法が提案されていて、得られたプロピレン系重合体は比較的高い溶融張力を示すことが報告されている(特許文献4参照)。
また、特定のメタロセン化合物とイオン交換性層状珪酸塩とを含む触媒を用いる方法が考案されていて、得られるプロピレン系重合体は分子量分布が広く分岐量の多いこと、及び溶融張力がよいことが報告されている(特許文献5参照)。
さらに、特定の複数のメタロセン化合物を含む触媒を用いる方法が考案されていて、得られたプロピレン系重合体は溶融張力がよいことが報告されている(特許文献6参照)。
特表2001−525460号公報 特開平10−338717号公報 特表2002−523575号公報 特開2001−64314号公報 特開2007−154121号公報 特開2009−57542公報
従来提案、考案されているマクロマー共重合法により得られる分岐構造が導入されたプロピレン系重合体は、溶融張力は高く、シート成形、ブロー成形、熱成形、発泡成形等への適性は高められているものの、延展性が優れないという問題がある。一般に流動性を高くすると延展性は優れるようになるが、溶融張力は低下する傾向がある。そのため、延展性を優れるように流動性を高くすると、シート成形や押出成形の際に溶融張力が不十分になるという問題がある。
そこで、本発明は、成形に必要な溶融張力を保持しながら、延展性に優れるプロピレン系重合体を製造する方法、及び成形に必要な溶融張力を保持しながら、延展性に優れるプロピレン系重合体を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、従来の方法で製造する溶融張力が高い分岐状プロピレン系重合体の延展性が悪い原因が、分岐状プロピレンの構造、特に分子量分布と分岐分布にあることを見出し、従来とは異なる重合方法、重合時の水素の導入方法や溶融張力の温度依存性を制御することにより、上記の課題を解決できることを見出した。
本発明のプロピレン系重合体の製造方法は、下記の成分[A−1]、成分[A−2]、成分[B]および成分[C]を含むプロピレン重合用触媒の存在下に連続的にプロピレンを重合するプロピレン系重合体の製造方法において、
少なくとも水素とプロピレンとを重合反応器に連続的に導入しながらプロピレン系重合体を重合反応器から回収する工程を有し、当該回収工程において、前記水素とプロピレンとは連続的に導入する導入流量比を一定に保ち、
前記プロピレン系重合体の230℃の溶融張力(MT230℃)と190℃の溶融張力(MT190℃)の比(MT190℃/MT230℃)は1.8以上、2.5以下、MT230℃は3.6g以上、15.0g以下とすることを特徴とする。
成分[A−1]:70℃でプロピレン単独重合を行った場合に、末端ビニル率(Rv)が0.5以上を満たすプロピレン単独重合体を生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物。
ここで、末端ビニル率(Rv)は、下式で定義する。
Rv=(Mn/42)×[Vi]/1000
(式中、Mnは、GPCにより求める数平均分子量、[Vi]は、H−NMRにより算出する1000モノマー当りの末端ビニル基の数である。)
成分[A−2]:一般式(a2)で表されるメタロセン化合物。
[一般式(a2)中、E21およびE22は、それぞれ独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはアズレニル基を表し、それぞれ置換基を有していてもよい(但し、置換基が窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数4〜16の複素環基であることはない。)。Q21は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表し、M21は、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、X21およびY21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。]
成分[B]:成分[A−1]及び成分[A−2]と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩。
成分[C]:有機アルミニウム化合物。
本発明のプロピレン系重合体の製造方法は、前記成分[A−1]が一般式(a1)で表される化合物であることが、末端ビニル率が高いプロピレン系重合体を生成する点から好ましい。
[一般式(a1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数4〜16の複素環基を示す。R13およびR14は、それぞれ独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン若しくはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30のアリール基、または窒素、酸素若しくは硫黄を含有する炭素数6〜16の複素環基を表す。Q11は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表し、M11は、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、X11及びY11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。]
本発明のプロピレン系重合体の製造方法は、前記成分[A−2]が一般式(a3)で表される化合物であることが、末端ビニル重合体を共重合し高分子量のプロピレン系重合体を生成する点から好ましい。
[一般式(a3)中、R21およびR22は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の炭化水素基である。R23およびR24は、それぞれ独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン若しくはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30のアリール基を表す。Q21は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表し、M21は、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、X21およびY21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。]
本発明のプロピレン系重合体は、下記特性(A)〜(E)を有する、分岐状プロピレン系重合体である。
(A)プロピレン系重合体の230℃の溶融張力(MT230℃)と190℃の溶融張力(MT190℃)の比(MT190℃/MT230℃)は1.8以上、2.5以下である。
(B)プロピレン系重合体のMT230℃は3.6g以上、15.0g以下である。
(C)温度230℃、2.16kg荷重で測定するメルトフローレート(MFR)が3.0g/10分以上、13.0g/10分以下である。
(D)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が3.8以上、4.5以下である。
(E)下記測定方法で求められる最高巻取速度(MaxDraw)と前記メルトフローレート(MFR)が下記式(1’)で示される関係を満たす。
(MaxDraw)≧62×log(MFR)+7・・・式(1’)
<最高巻取速度測定方法>
メルトテンションテスターを用い、下記の条件で樹脂を紐状に押し出して、ローラーに巻き取っていった時に、巻き取り速度を4.0m/分から加速度5.4cm/sで上げていったとき、紐状物が切断する直前の巻き取り速度を、最高巻取速度(MaxDraw)とする。
キャピラリー:直径2.1mm
シリンダー径:9.6mm
シリンダー押出速度:10mm/分
温度:210℃
本発明によれば、成形に必要な溶融張力を保持しながら、延展性に優れるプロピレン系重合体を製造する方法、及び成形に必要な溶融張力を保持しながら、延展性に優れるプロピレン系重合体を提供することができる。
図1は、GPCにおけるクロマトグラムのベースラインと区間を説明する図である。 図2は、実施例と比較例のプロピレン系重合体のMFRと210℃の最高巻取速度(MaxDraw)との関係を示す図である。
本発明のプロピレン系重合体の製造方法は、下記の成分[A−1]、成分[A−2]、成分[B]および成分[C]を含むプロピレン重合用触媒の存在下に連続的にプロピレンを重合するプロピレン系重合体の製造方法において、
少なくとも水素とプロピレンとを重合反応器に連続的に導入しながらプロピレン系重合体を重合反応器から回収する工程を有し、当該回収工程において、前記水素とプロピレンとは連続的に導入する導入流量比を一定に保ち、
前記プロピレン系重合体の230℃の溶融張力(MT230℃)と190℃の溶融張力(MT190℃)の比(MT190℃/MT230℃)は1.8以上、2.5以下、MT230℃は3.6g以上、15.0g以下とすることを特徴とする。
成分[A−1]:70℃でプロピレン単独重合を行った場合に、末端ビニル率(Rv)が0.5以上を満たすプロピレン単独重合体を生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物。
ここで、末端ビニル率(Rv)は、下式で定義する。
Rv=(Mn/42)×[Vi]/1000
(式中、Mnは、GPCにより求める数平均分子量、[Vi]は、H−NMRにより算出する1000モノマー当りの末端ビニル基の数である。)
成分[A−2]:一般式(a2)で表されるメタロセン化合物。
[一般式(a2)中、E21およびE22は、それぞれ独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはアズレニル基を表し、それぞれ置換基を有していてもよい(但し、置換基が窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数4〜16の複素環基であることはない。)。Q21は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表し、M21は、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、X21およびY21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。]
成分[B]:成分[A−1]及び成分[A−2]と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩。
成分[C]:有機アルミニウム化合物。
以下、本発明のプロピレン系重合体の製造方法について、項目毎に詳細に説明する。本明細書において数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書において「wtppm」は質量ppmを意味し、「wt%」は質量%を意味し、「volppm」は体積ppmを意味する。
I.プロピレン重合用触媒の触媒成分
本発明に係るプロピレン重合用触媒は、少なくとも成分[A−1]、成分[A−2]、成分[B]および成分[C]の成分を含むことを必須とする。
1.成分[A−1]
成分[A−1]は、70℃でプロピレン単独重合を行った場合に、末端ビニル率(Rv)が0.5以上を満たすプロピレン単独重合体を生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物である。
ここで、末端ビニル率(Rv)は、下式で定義する。
Rv=(Mn/42)×[Vi]/1000
(式中、Mnは、GPCにより求めた数平均分子量、[Vi]は、H−NMRより算出する1000モノマー当りの末端ビニル基の数である。)
プロピレン重合体の末端構造について、以下に説明する。
プロピレンの重合においては、一般的にβ−水素脱離と呼ばれる連鎖移動反応が起こり、構造式(1−b)に示すプロピル−ビニリデン構造(ビニリデン構造)を末端にもつポリマーが生成する。また、水素を用いた場合には、通常水素へ連鎖移動が優先的に起こり、構造式(1−d)に示すi−ブチル構造を末端にもつポリマーが生成する。
また、特定の構造のメタロセン化合物を含む触媒を用いた場合には、β−メチル脱離と呼ばれる特殊な連鎖移動反応が起こり、構造式(1−a)に示す1−プロペニル構造(ビニル構造)を末端にもつポリマーが生成する(参照文献:Macromol.Rapid Commun.2000,21,1103−1107)。
また、β−水素脱離、β−メチル脱離の後の開始末端は、それぞれ、構造式(1−c)に示すn−プロピル構造、構造式(1−d)に示すi−ブチル構造であり、飽和炭化水素末端となる。すなわち、開始末端は、必ず飽和炭化水素末端であり、両末端に不飽和結合が現れることはない。
また、末端構造としては極稀にプロピレンが不規則挿入をした後に、β−水素脱離が生じ、構造式(1−e)に示す1−ブテニル末端が極少量生成すると考えられる。
さらに、構造式(1−f)〜構造式(1−j)に示す構造を末端に持つポリマーが生成することもある。
それぞれ構造式(1−f):i−ブテニル構造、構造式(1−g):2−ブテニル構造は極稀に異性化により生じた末端構造でありその量は、主要な末端構造である構造式(1−a)、構造式(1−b)、構造式(1−c)、構造式(1−d)の数に比べて微小である。
また構造式(1−h):内部ビニリデン構造は不飽和末端が生成後、さらに水素が脱離することでできた中間体へさらにプロピレンが挿入することによりポリマー鎖内部に生成するオレフィン構造である。
これらの末端構造のうち、構造式(1−a)及び構造式(1−e)に示す構造を末端にもつポリマーは、マクロマーになり得る。構造式(1−a)と構造式(1−e)は最末端の二つの炭素がビニル構造をとるという点で同じであり共重合可能という機能において差はない。
本発明の成分[A−1]は、プロピレンマクロマーを生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物であり、これは、末端が構造式(1−a)または構造式(1−e)となるポリマーを優先的に生成する触媒を形成するメタロセン化合物ということもできる。
本発明に係るマクロマー生成可能なメタロセン化合物は、70℃でプロピレン単独重合を行った場合に生成するプロピレン単独重合体の末端ビニル率が0.50以上を満たすプロピレン単独重合体を生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物であり、好ましくは0.65以上、より好ましくは0.75以上、理想的には1.0(すべての分子鎖の片方の末端がビニル構造)となるメタロセン化合物である。末端ビニル率がより高いプロピレン単独重合体を生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物を用いることは、より効率の高いマクロマー合成工程を行うことができる。
また、β−水素脱離の結果生成する構造式(1−b)に示すプロピル-ビニリデン構造(ビニリデン構造)を持つポリマーは、共重合できない。したがって、ビニリデン構造を多く含むようなプロピレン単独重合体を生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物を使用した場合には、分岐状のポリプロピレンを生成する効率を低下させる。
そこで、本発明に係るマクロマー生成可能なメタロセン化合物は、70℃でプロピレン単独重合を行った場合に生成するプロピレン単独重合体の末端ビニリデン率が好ましくは0.1より小さく、より好ましくは0.05未満であり、さらに好ましくは0.01未満であり、理想的には0(ビニリデン構造が実質的に存在しない)となるメタロセン化合物である。
[末端ビニル率(Rv)の評価方法]
ここで、成分[A−1]の末端ビニル率を判定するときのプロピレンの重合条件について、詳細に記す。
3Lオートクレーブ槽内をプロピレンで置換した後、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(143.4mg/mL)2.86mLを投入し、水素240mlを導入し、液化プロピレン750gを導入して70℃まで昇温する。その後、触媒を重合槽に圧送して、70℃で1時間重合を行う。最後に、未反応のプロピレンをすばやくパージし、重合を停止して、プロピレン重合体を得る。
末端ビニル率(Rv)と末端ビニリデン率(Rvd)は、H−NMRから得られる末端ビニル基の数[Vi]と、末端ビニリデン基の数[Vd]を、GPCより求めた数平均分子量(Mn)から得られる全ポリマー鎖数に対するそれぞれの末端をもつポリマー鎖の割合として、下式を用いて算出する。
Rv=(Mn/42)×[Vi]/1000
Rvd=(Mn/42)×[Vd]/1000
(但し、Mnは、GPCにより求めた数平均分子量である。)
[数平均分子量(Mn)の測定方法]
本発明において、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものをいう。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図1のように行う。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する
粘度式の[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4 α=0.7
PP:K=1.03×10−4 α=0.78
なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
装置:WATERS社製 GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN1AIR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:ο−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製試料はo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
[不飽和末端の数の測定方法]
ここで、H−NMRによる末端ビニル基の数[Vi]および末端ビニリデン基の数[Vd]の測定方法の詳細は、以下の通りである。
[試料調製と測定条件]
試料200mgをo−ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(CBr)=4/1(体積比)2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ、150℃のブロックヒーターで均一に溶解する。NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400型NMR装置を用いて行う。
不飽和末端の定量には、H−NMRを用いる。H−NMRの測定条件は試料の温度120℃、パルス角4.5°、パルス間隔2秒、積算回数512回として測定をする。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのプロトンシグナルを0.09ppmに設定し、他のプロトンによるシグナルの化学シフトはこれを基準とする。
[不飽和末端の数の算出方法]
H−NMRでは、構造式(1−a)の1−プロペニル構造のプロトンシグナルと構造式(1−e)の1−ブテニル構造のプロトンシグナルは、H−NMRスペクトルの5.08〜4.85ppmと5.86〜5.69ppmのシグナルに重なって検出される。そこで、末端ビニル基の数[Vi]は、1−プロペニル構造と1−ブテニル構造を合わせた数として、1000モノマーあたりの不飽和結合量として、H−NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式から求める。
構造式(1−a)+構造式(1−e): [Vi]=Ivi×1000/Itotal
また、末端ビニリデン基の数[Vd]は、1000モノマーあたりの不飽和結合量として、H−NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式から求める。
構造式(1−b): [Vd]=Ivd×1000/Itotal
ここで、Ivi、Ivdは、それぞれ、構造式(1−a)と構造式(1−e)、構造式(1−b)に基づくシグナルの特性値を表し、以下の式で示される量である。
Ivi=(I5.08〜4.85+I5.86〜5.69)/3、
Ivd=(I4.79〜4.65)/2、
Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI5.08〜4.85は5.08ppmと4.85ppmの間に検出したシグナルの積分強度を示す。
また、Itotalは、以下の式で示される量とする。
Itotal=IC3+Ivi+Ivd+Iibu+Ivnl+Iivd
ここで、Iibu、Ivnl、Iivdは、それぞれ構造式(1−f):i−ブテニル、構造式(1−g):2−ブテニル、構造式(1−h):内部ビニリデン構造に基づくシグナルの特性値を表し、以下の式で示される量である。
Iibu=I5.30〜5.08
Ivnl =(I5.58〜5.30)/2、
Iivd=(I4.85〜4.79)/2
IC3はプロピレンに基づくシグナルの特性値を表し、以下の式で示される量である。
IC3 = 1/6×Imain
ImainとはH−NMRスペクトルの4.00〜0.00ppmに検出されるポリマー主鎖と飽和末端のプロトンシグナルの総和である。
なお、Itotalにおいて上記以外の範囲で副生するその他のオレフィン構造、例えば構造式(1−i)内部3置換オレフィンや構造式(1−j)内部ビニレン等、に由来するピークは微小検出される可能性があるがその場合にはそれらは除いて算出する。
成分[A−1]は、70℃でプロピレン単独重合を行った場合に生成するプロピレン単独重合体の末端ビニル率が0.50以上を満たすプロピレン単独重合体を生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物であれば、特に限定されるものではなく、後述の成分[A−2]の一般式(a2)に含まれる化合物から選択することもできる。成分[A−1]として、2位に嵩高い複素環基を有し、4位に置換されてもよいアリール基または窒素、酸素もしくは硫黄を含有する複素環基等を有するビスインデン錯体を挙げることができ、非限定的な好ましい実施形態の一つとして、下記の構造を挙げることができる。
成分[A−1]は、末端ビニル率が高いプロピレン系重合体を生成する点から好ましくは、次の一般式(a1)で表されるメタロセン化合物である。
[一般式(a1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数4〜16の複素環基を示す。R13およびR14は、それぞれ独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン若しくはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30のアリール基、または窒素、酸素若しくは硫黄を含有する炭素数6〜16の複素環基を表す。Q11は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表し、M11は、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、X11及びY11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。]
上記R11およびR12の窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数4〜16の複素環基は、好ましくは2−フリル基、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基であり、さらに好ましくは、置換された2−フリル基である。
11およびR12を窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数4〜16の複素環基から選ばれる基とすることにより、末端ビニル率(Rv)を高くすることができ、なかでも、複素環基上に適当な大きさの置換基を導入することにより、複素環と遷移金属上の配位場、成長ポリマー鎖との相対的な位置関係を適切にすることにより、末端ビニル率(Rv)をより高くすることができる。
また、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、トリアルキルシリル基、が挙げられる。これらのうち、メチル基、トリメチルシリル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
さらに、R11およびR12として、特に好ましくは、5−メチル−2−フリル基である。また、R11およびR12は、互いに同一である場合が好ましい。
上記R13およびR14は、それぞれ独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン若しくはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30のアリール基、または窒素、酸素若しくは硫黄を含有する炭素数6〜16の複素環基である。
特に、R13とR14を、より嵩高くすることで、より立体規則性が高く、異種結合が少なく、末端ビニル率が高いプロピレン系重合体を得ることができる。
そこで、R13およびR14は、炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基、又はハロゲン原子を置換基として有してもよいアリール基が好ましく、そのようなR13およびR14の具体例としては、4−t−ブチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、3,5−ジt−ブチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。
また、R13およびR14としては、さらに好ましくは、炭素数6〜16になる範囲で、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基、又はハロゲン原子を置換基として有するフェニル基である。また、その置換される位置は、フェニル基上の4位が好ましい。そのようなR13およびR14の具体例としては、4−t−ブチルフェニル基、4−ビフェニリル基、4−クロロフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基である。また、R13とR14が互いに同一である場合が好ましい。
上記X11およびY11は、補助配位子であり、成分[B]と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限りX11及びY11は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。
上記Q11は、二つの五員環を結合する、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表す。上述のシリレン基、またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記Q11の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
上記一般式(a1)で表される化合物のうち、好ましい化合物として、以下に具体的に例示する。
(1)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(2)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(3)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(4)ジクロロ[1,1’−ジフェニルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(5)ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(6)ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(7)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(8)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−トリメチルシリル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(9)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−フェニル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(10)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(11)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−ベンゾフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(12)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フルフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(13)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(14)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−フルオロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(15)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリフルオロメチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(16)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−イソプロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(17)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(18)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(19)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、
(20)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−(2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル)]ハフニウム、
(21)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−(2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル)]ハフニウム、
(22)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−(2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル)]ハフニウム、
(23)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−ビフェニリル)−インデニル}]ハフニウム、
(24)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、
(25)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、
(26)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、
(27)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、
(28)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、
(29)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、
(30)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{(2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル)}ハフニウム、
(31)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、
(32)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル){2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(33)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル){2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、などを挙げることができる。
これらのうち、さらに好ましいのは、
(3)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、
(13)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(16)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−イソプロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(17)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(18)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(23)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−ビフェニリル)−インデニル}]ハフニウム、
(25)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、
である。
また、特に好ましいのは、
(13)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(16)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−イソプロピル−フェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(17)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
(18)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、
である。
2.成分[A−2]
成分[A−2]は、次の一般式(a2)で表されるメタロセン化合物である。
[一般式(a2)中、E21およびE22は、それぞれ独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはアズレニル基を表し、それぞれ置換基を有していてもよい(但し、置換基が窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数4〜16の複素環基であることはない。)。Q21は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表し、M21は、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、X21およびY21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。]
上記E21およびE22は、それぞれ独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはアズレニル基であり、それぞれ置換基を有していてもよい。但し、その置換基は、窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数4〜16の複素環基であることはない。
なかでも、置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換アズレニル基が好ましい。
当該置換基としては、炭素数1〜6の炭化水素基、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン若しくはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30のアリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、トリアルキルシリル基、等が挙げられる。
炭素数1〜6の炭化水素基としては、後述の一般式(a3)のR21およびR22における炭素数1〜6の炭化水素基と同様であって良い。また、前記ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン若しくはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30のアリール基としては、後述の一般式(a3)のR23およびR24におけるハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン若しくはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30のアリール基と同様であって良い。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられ、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられ、トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基等が挙げられる。
上記X21及びY21は、補助配位子であり、助触媒としての成分[B]と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限りX21及びY21は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。
21は、二つの五員環を結合する、炭素数1または2の炭素を介して二つの共役五員環配位子を架橋する炭素数1〜20の2価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基の何れかを表す。上述のシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記のQ21の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。
これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
さらに、上記M21は、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはハフニウムである。
成分[A−2]としては、プロピレンモノマーとプロピレンマクロマーとの共重合が可能な重合用触媒を形成する化合物が好ましい。そのような化合物は、同時にプロピレンマクロマーの生成が可能な触媒を形成する化合物である場合もありうる。
成分[A−2]は、末端ビニル率が高いプロピレン系重合体を生成する点から好ましくは、次の一般式(a3)で表されるメタロセン化合物である。
[一般式(a3)中、R21およびR22は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の炭化水素基である。R23およびR24は、それぞれ独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン若しくはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30のアリール基を表す。Q21は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表し、M21は、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、X21およびY21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。]
上記R21およびR22は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピルである。
また、上記R23およびR24は、それぞれ独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン若しくはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30の、好ましくは炭素数6〜24のアリール基である。そのようなアリール基としては、置換基を有してもよいフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基である。好ましい例としては、フェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−i−プロピルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−トリメチルシリルフェニル、4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)、4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)、1−ナフチル、2−ナフチル、4−クロロ−2−ナフチル、3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジメチル−4−t−ブチルフェニル、3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル等が挙げられる。
一般式(a3)中、Q21、M21、X21およびY21は、それぞれ一般式(a2)におけるQ21、M21、X21およびY21と同様であって良い。
上記一般式(a3)で表されるメタロセン化合物の非限定的な例として、下記のものを挙げることができる。
但し、煩雑な多数の例示を避けて代表的例示化合物のみ記載した。また、中心金属がハフニウムの化合物を記載したが、同様のジルコニウム化合物も使用可能であり、種々の配位子や架橋結合基あるいは補助配位子を任意に使用しうることは自明である。
(1)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ハフニウム、
(2)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(3)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(4)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(5)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(6)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(7)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(8)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(9)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(10)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(11)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(12)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(13)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(14)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(9−フェナントリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(15)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(16)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−n−プロピル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(17)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(18)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(19)ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(20)ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(21)ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(22)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(23)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、
(24)ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、などである。
これらの中で好ましくは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
また、特に好ましくは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
3.成分[B]
成分[B]は、成分[A−1]及び成分[A−2]と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩である。
成分[B]は単独でもよいし、二種以上を用いてもよい。好ましくイオン交換性層状珪酸塩である。
3−1.成分[A−1]及び成分[A−2]とイオン対を形成する化合物
成分[A−1]及び成分[A−2]と反応してイオン対を形成する化合物としては、アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物などを挙げることができ、アルミニウムオキシ化合物としては、具体的には次の一般式(I)〜(III)で表される化合物が挙げられる。
上記の一般式(I)、(II)、(III)において、R91、R101及びR111は、水素原子又は炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基、特に好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。また、複数のR91、R101及びR111は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、pは0〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。
一般式(I)、(II)で表される化合物は、アルミノキサンとも称される化合物であって、これらの中では、メチルアルミノキサン又はメチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。上記のアルミノキサンは、各群内及び各群間で複数種併用することも可能である。そして、上記のアルミノキサンは、公知の様々な条件下に調製することができる。
一般式(III)中、R112は、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。一般式(III)で表される化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと、一般式R112B(OH)で表されるアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。
ホウ素化合物としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどの陽イオンと、トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などの有機ホウ素化合物との錯化物、又は種々の有機ホウ素化合物、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などを挙げることができる。
3−2.イオン交換性層状珪酸塩
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に珪酸塩と略記することもある)とは、イオン結合などによって構成される層が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、層間に層間イオンを有し、且つ、含有される層間イオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。
大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出される。水中に分散/膨潤させ、沈降速度等の違いにより精製することが一般的であるが、夾雑物が完全に除去されていることは要せず、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライト等)を含んでもよい。それら夾雑物の種類、量、粒子径、結晶性、分散状態によっては純粋な珪酸塩以上に好ましいことがあり、そのような複合体も、成分[B]のイオン交換性層状珪酸塩に含まれる。
また、本発明で使用する珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
イオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1988年)等に記載される1:1型構造や2:1型構造をもつ層状珪酸塩が挙げられる。
1:1型構造とは、前記「粘土鉱物学」等に記載されているような1層の四面体シートと1層の八面体シートが組み合わさった積み重なりを基本とする構造を示す。
2:1型構造とは、2層の四面体シートが1層の八面体シートを挟み込んだ積み重なりを基本とする構造を示す。
1:1型構造を持つイオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族珪酸塩、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族珪酸塩等が挙げられる。
2:1型構造を持つイオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族珪酸塩、バーミキュライト等のバーミキュライト族珪酸塩、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族珪酸塩、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
これらの中では、主成分が2:1型構造を持つイオン交換性層状珪酸塩であるものが好ましい。より好ましくは、主成分がスメクタイト族珪酸塩であり、さらに好ましくは、主成分がモンモリロナイトである。
層間カチオン(イオン交換性層状珪酸塩の層間に含有される陽イオン)の種類としては、特に限定されないが、主成分として、リチウム、ナトリウム等の周期表第1族のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等の周期表第2族のアルカリ土類金属、あるいは鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金等の遷移金属などが、比較的容易に入手可能である点で好ましい。
前記イオン交換性層状珪酸塩は、乾燥状態で用いてもよく、液体にスラリー化した状態で用いてもよい。
また、イオン交換性層状珪酸塩の形状については、特に制限はなく、天然に産出する形状、人工的に合成した時点の形状でもよいし、また、粉砕、造粒、分級などの操作によって形状を加工したイオン交換性層状珪酸塩を用いてもよい。
このうち造粒されたイオン交換性層状珪酸塩を用いると、該イオン交換性層状珪酸塩を触媒成分として用いた場合に、良好なポリマー粒子性状を与えるため特に好ましい。
イオン交換性層状珪酸塩の処理方法は、特開2009−299046の段落0042〜0071の記載を参照することができる。
本発明に好ましく用いられる成分[B]は、化学処理されたイオン交換性層状珪酸塩であり、Al/Siの原子比として、0.01〜0.25、好ましくは0.03〜0.24のもの、さらには0.05〜0.23の範囲のものがよい。Al/Si原子比は、粘土部分の酸処理強度の指標となるものとみられる。
イオン交換性層状珪酸塩中のアルミニウム及びケイ素は、JIS法による化学分析による方法で検量線を作成し、蛍光X線で定量するという方法で測定される。
4.成分[C]
本発明に用いられる成分[C]は、有機アルミニウム化合物であり、好ましくは、下記一般式(4)で表される有機アルミニウム化合物が使用される。
(AlR3−n ・・・一般式(IV)
[上記一般式(IV)中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基又はアミノ基を表し、nは1〜3の、mは1〜2の整数を各々表す。]
有機アルミニウム化合物は、単独であるいは複数種を組み合わせて使用することができる。
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、m=1、n=3のトリアルキルアルミニウム及びアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
5.触媒の調製
本発明に好ましく用いられるオレフィン重合用触媒は、上記成分[A−1]、成分[A−2]、成分[B]及び成分[C]を含む。これらは、重合槽内または重合槽外で接触させて得ることができる。オレフィン重合用触媒はオレフィンの存在下で予備重合を行ってもよい。
成分[A−1]、成分[A−2]、成分[B]及び成分[C]の使用量は任意である。
例えば、成分[A−1]及び成分[A−2]の合計使用量は、成分[B]1gに対し、好ましくは0.1μmol〜1000μmol、より好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。
また、成分[C]の使用量は、成分[A−1]及び成分[A−2]の合計の遷移金属に対する成分[C]のアルミニウムのモル比で、好ましくは0.01〜5×10、より好ましくは0.1〜1×10の範囲である。
前記成分[A−1]、成分[A−2]、成分[B]及び成分[C]を接触させる順番は、任意であり、これらのうち2つの成分を接触させた後に残りの成分を接触させてもよいし、4つの成分を同時に接触させてもよい。これらの接触において、接触を充分に行うため、溶媒を用いてもよい。溶媒としては、脂肪族飽和炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素やこれらのハロゲン化物、また予備重合モノマーなどが例示される。脂肪族飽和炭化水素、芳香族炭化水素の例として、具体的にはヘキサン、ヘプタン、トルエン等が挙げられる。また、予備重合モノマーとしては、プロピレンを溶媒として用いることができる。
6.予備重合
オレフィン重合用触媒は、オレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合に付されることが好ましい。予備重合により触媒活性を向上させることができ、製造コストを抑えることができる。
使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン等を例示することができ、好ましくはプロピレンである。
オレフィンのフィード方法は、オレフィンを予備重合槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する導入方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせる等、任意の方法が可能である。
予備重合温度、予備重合時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。
また、予備重合量は、成分[B]に対する予備重合ポリマーの質量比が好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。
また、予備重合時に成分[C]を追加することもできる。
上記各成分の接触の際もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体、シリカ、チタニア等の無機酸化物の固体を共存させる等の方法も可能である。
予備重合後に触媒を乾燥してもよい。乾燥方法には、特に制限は無いが、減圧乾燥や加熱乾燥、乾燥ガスを流通させることによる乾燥などが例示され、これらの方法を単独で用いても良いし、2つ以上の方法を組み合わせて用いてもよい。乾燥工程において触媒を撹拌、振動、流動させてもよいし静置させてもよい。
II.プロピレン系重合体の重合方法
1.重合方法
成分[A−1]、成分[A−2]、成分[B]および成分[C]を含むプロピレン重合用触媒の存在下に連続的にプロピレンを重合する。
重合様式は、前記成分[A−1]、成分[A−2]、成分[B]及び成分[C]を含むオレフィン重合用触媒とプロピレンが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。中でも、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いる、所謂バルク重合法がよく、単段重合がよい。
例えばバルク重合の重合温度は、40℃以上がより好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は80℃以下が好ましく、更に好ましくは75℃以下である。バルク重合の重合圧力は、1.0MPa以上5.0MPa以下であることが好ましく、下限値としては1.5MPa以上がより好ましく、更に好ましくは2.0MPa以上である。また上限は4.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは3.5MPa以下である。
重合はプロピレンの単独重合でもよく、また、プロピレンモノマー以外に、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンコモノマー、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等から選ばれる一種または二種以上をコモノマーとして使用する共重合でもよい。
2.プロピレン系重合体を回収する工程
本発明の製造方法においては、少なくとも水素とプロピレンとを重合反応器に連続的に導入しながらプロピレン系重合体を重合反応器から回収する工程を有し、当該回収工程において、前記水素とプロピレンとは連続的に導入する導入流量比を一定に保つことを特徴とする。
すなわち、プロピレン系重合体を重合後、プロピレン系重合体を重合反応器から排出し始めた後でも、前記水素とプロピレンの連続的に導入する導入流量比が一定に保たれるまで、プロピレン系重合体を製造物として回収せず、前記流量比が一定に保たれてから、プロピレン系重合体を製造物として回収することを特徴とする。
[プロピレンの導入]
プロピレンを重合反応器に連続的に導入する方法としては、特に限定されないが、例えば、液化プロピレンを重合反応器上部から、ポンプを用い送入する方法が挙げられる。また補助的に、重合反応器上部からの送入量よりも少ない量の液化プロピレンを、触媒フィード配管や水素配管から分割して送入してもよい。
[水素の導入]
水素を重合反応器に連続的に導入する際、水素は、重合反応器内の気相部、液相部、又はその両方に導入することができる。本発明の製造方法では、水素は、プロピレンに対する導入流量比を一定に保ちやすい点から、液化プロピレン中に直接導入することが好ましい。この時、水素を導入する場所は、重合反応器内プロピレン液中の鉛直方向や、水平方向に対して任意の場所をとることができる。水素を導入する場所は、好ましくは、重合反応器内プロピレン液の深さHに対して、プロピレン液表面から最下部(重合反応器の底部)の方向へ、プロピレン液表面の位置を0(H)、プロピレン液最下部の位置を1(H)と表現した時に、0.5(H)〜1.0(H)の範囲にすることが、プロピレンに対する導入流量比を一定に保ちやすく、且つ、液化プロピレン中で水素と触媒を効率的に接触させる点から好ましく、更に0.6(H)〜0.8(H)の範囲にすることがより好ましい。
[水素とプロピレンの導入流量比]
本発明の製造方法においては、プロピレン系重合体を重合反応器から回収する工程において、水素とプロピレンの連続的に導入する導入流量比を一定に保つことを特徴とする。
水素導入流量と、プロピレン導入流量とが重量流速(例えば、kg/hr)で表される場合、水素とプロピレンの導入流量比(H2/C3)としては、流動性見合いで延展性に優れるプロピレン系重合体を製造する点から、3.30wtppm以上であることが好ましく、4.00wtppm以上であることがより好ましく、4.50wtppm以上がさらに好ましく、7.00wtppm以下であることが好ましく、6.50wtppm以下であることがより好ましい。
なお、水素導入流量とプロピレン導入流量とは、プロピレン系重合体を製造する規模により適宜選択されれば良く、特に限定されない。効率的に高い生産レートで目的の製品を回収できる点から、水素導入流量の平均値は、例えば0.050kg/hr以上0.130kg/hr以下であってよく、0.060kg/hr以上0.120kg/hr以下であることが好ましく、プロピレン導入流量の平均値は、例えば16.0T/hr以上24.0T/hr以下であってよく、18.0T/hr以上22.0T/hr以下であることが好ましい。
本発明で製造される分岐状プロピレン系重合体は、特定の重合触媒存在下でプロピレン系重合体を連続重合する際に、プロピレン系重合体を回収する工程において、水素とプロピレンとの連続的に導入する導入流量比を一定に保つことにより、成形に必要な溶融張力を保持しながら、延展性に優れるプロピレン系重合体を得ることができる。その詳細について以下に述べる。
プロピレンに対する水素導入流量が変動して振れ幅が大きくなってしまうと、具体的には水素導入流量が小さい時に重合したものと、大きい時に重合したものが混合してしまう。
本発明のプロピレン系重合体の製造方法では、上述のように、前記成分[A−1]、成分[A−2]、成分[B]および成分[C]を含むプロピレン重合用触媒を用いることにより、成分[A−1]から相対的に低分子量のマクロマーが生成し、高分子量成分を生成する成分[A−2]がこのマクロマーを共重合することで、相対的に高分子量のポリマーが生成する。したがって本発明で製造されるプロピレン系重合体は、非常に分子量の高い部分にまで分岐構造が導入された構造となっている。
例えば水素導入流量が小さい時に重合した重合体、すなわち水素濃度が低下してしまった時に重合した重合体は、高分子量生成錯体である成分[A−2]から生成するプロピレン系重合体が更に高分子量化して分子量分布が広がることから、1分子あたりの分岐数が多くなってしまい、超高分子量高分岐成分となる。更に相乗的にプロピレン重合活性において、成分[A−1]は、成分[A−2]より相対的に水素による活性化が大きい。反対に水素が少なくなると成分[A−1]の活性化は充分でなくなり、相対的に成分[A−2]の割合が大きくなってしまう。この結果、この超高分子量高分岐成分の量が相対的に増えてしまう。したがって、水素導入流量が変動して小さくなった時には、成分[A−2]から生成するプロピレン系重合体の高分子量化と相対的な成分[A−2]の活性化から、相乗的に超高分子量高分岐成分の分子量がさらに高くなり、また超高分子量高分岐成分の量が増えて、分子量分布の広化と分岐分布の変化がおこってしまう。更に、分子量が高く量が増加してしまった超高分子量高分岐成分は、配向結晶化をおこしやすい。そのため、上記のような超高分子量高分岐成分が多く含まれると、例えば押出成形をおこなった場合に、生成したプロピレン系重合体中で結晶化しやすい部分と結晶化しにくい部分が不均一に生じてしまう。その結果、流動性が悪化し、MaxDrawが低くなりすぎ延展性は悪化してしまう。更に、上記のような超高分子量高分岐成分が多く含まれると、押出発泡成形においては、不均一性が生じて結晶が早くできてしまった部分に、成形時の応力が集中し、その部分が不均一に延伸したり、破断したり、破泡したりしてしまう。
反対に、例えば水素導入流量が大きい時に重合した重合体、すなわち水素濃度が増大してしまった時に重合した重合体は、必要な超高分子量高分岐成分の平均分子量が低下して分子量分布が狭くなり、また、この分子量が低下した成分は1分子あたりの分岐数が減少してしまう。更に相乗的にプロピレン重合活性において、成分[A−1]は成分[A−2]より相対的に水素による活性化が大きい。そこで水素が多いと、この超高分子量高分岐成分の量が相対的に減少する分子量分布の狭化と分岐分布の変化がおこってしまう。したがって、水素導入流量が変動して大きくなった時には、成分[A−2]から生成するプロピレン系重合体の低分子量化と相対的な[A−1]の活性化から、相乗的に超高分子量高分岐成分の分子量が低くなり、その量も減少する。その結果、延展性は高くなるものの、流動性が高くなりすぎ、230℃での溶融張力が低くなりすぎてしまう。
例えば回分式重合のように、水素とプロピレンの導入が重合開始前のみであると、プロピレンに対する水素量は、経時で変動していき、上記のような問題が生じる。また、連続重合であっても、ポリマーを回収する工程は間欠的な抜き出し工程になるため、プロピレンに対する水素量が経時で変動して、上記のような問題が生じ得る。
それに対して、本発明では、特定の重合触媒存在下でプロピレン系重合体を連続重合する際に、プロピレン系重合体を回収する工程において、水素とプロピレンとの連続的に導入する導入流量比を一定に保つことにより、超高分子量高分岐成分の平均分子量、分子量分布、分岐分布、及び含有量を適切にすることが可能になり、配向結晶化が起こり難くなる。その結果本発明では、成形機内温度に近い高温時のプロピレン系重合体の溶融張力と、溶融樹脂の冷却過程の低温時の溶融張力との比を、従来と比べて小さい特定の範囲とすることができる。具体的には、プロピレン系重合体の230℃の溶融張力(MT230℃)と190℃の溶融張力(MT190℃)の比(MT190℃/MT230℃)を従来と比べて小さい特定の範囲とすることができる。その結果、本発明では、前記高温と低温の中間の温度において流動性見合いで延展性に優れるプロピレン系重合体を製造することができる。このように製造される流動性見合いで延展性に優れるプロピレン系重合体は、流動性が低めであっても優れた延展性を示すことから、本発明の製造方法は、成形に必要な溶融張力を保持しながら、延展性に優れるプロピレン系重合体を得ることができる。
なお、本発明において、水素とプロピレンの導入流量比を一定に保つとは、水素導入流量と、プロピレン導入流量とが重量流速(例えば、kg/hr)で表され、水素とプロピレンの導入流量比(H2/C3)の変動係数(標準偏差/平均値)が0.020以下となる状態を目安とすることができる。
また、水素とプロピレンの導入流量比を一定に保つことは、以下の方法で評価する。
水素導入流量、及びプロピレン導入流量を、等間隔で瞬間の流量計の指示値を有効数字3桁まで読み取り、これらを用いて、各瞬間の水素導入流量をプロピレン導入流量で割った値を水素とプロピレンの導入流量比(H2/C3)とする。前記流量計としては、例えば、熱式やコリオリ式流量計を用いることができる。また、等間隔で流量計の指示値を読み取る間隔としては、例えば、1秒〜10分であることが挙げられ、30秒〜1分であっても良い。前記等間隔で読み取られた各瞬間の導入流量比(H2/C3)の平均値と標準偏差を算出する。また、この標準偏差を平均値で除した数値として、変動係数を算出する。変動係数は、絶対値に依存しない値であり単位はない。
水素とプロピレンの導入流量比(H2/C3)の変動係数(標準偏差/平均値)は0.020以下となる状態を目安とするが、中でも、0.018以下であることが好ましく、0.016以下であることがより好ましい。
[水素濃度]
また本発明の製造方法では、単位時間の当たりプロピレン系重合体の生成量を固定した上で、水素とプロピレンの導入比を一定に保つことにより、重合反応器内の水素濃度を一定にすることが、本発明の効果の点から好ましい。
例えばバルク重合において重合反応器内の水素濃度が一定であるかどうかは、気相部の水素濃度を等間隔で測ることにより確認できる。
本発明において、例えばバルク重合における気相部の水素濃度は、50volppm以上、300volppm以下であることが、流動性見合いで延展性に優れるプロピレン系重合体を製造する点から好ましい。
またこの時、水素濃度の変動幅は変動係数が0.02以下であることが、前記MT190℃/MT230℃を前記所定の範囲にしやすく、流動性見合いで延展性に優れるプロピレン系重合体を製造する点から好ましい。
重合反応器内の気相部の水素濃度は、重合反応器内の気相部において下記の位置にあるガスを等間隔で採取して測定することが、気相部の水素濃度の変動幅を把握できる点から好ましい。重合反応器の高さ方向において、気相部と撹拌時の液相部の最上部の界面であるプロピレン液表面から重合反応器の天井部の最上部の方向へ、プロピレン液表面の位置を0(H’)、重合反応器の天井部の最上部の位置を1(H’)と表現した時に、液面付近からの気泡や液飛沫の影響を受けない為に、0.2(H’)より上の範囲に存在するガスを採取して測定することが好ましく、更に0.3(H’)より上の範囲に存在するガスを採取して測定することが好ましい。また天井部でのプロピレン凝縮による濃度変化の影響を受けないように、0.9(H’)より下の範囲に存在するガスを採取して測定することが好ましく、更に0.8(H’)より下の範囲に存在するガスを採取して測定することが好ましい。
等間隔で採取したガスについて、ガスクロマトグラフィー測定を行うことにより、水素濃度を求めることができる。等間隔で採取する間隔としては、例えば、1秒〜10分であることが挙げられ、30秒〜1分であっても良い。前記等間隔で求められる水素濃度の平均値と標準偏差を算出する。また、この標準偏差を平均値で除した数値として、変動係数を算出する。
[触媒の導入]
本発明においては、少なくとも水素とプロピレンとを重合反応器に連続的に導入する際に、触媒も連続的に導入することが好ましい。
触媒導入流量が重量流速(例えば、kg/hr)で表される場合、触媒とプロピレンの導入流量比(触媒/C3)としては、流動性見合いで延展性に優れるプロピレン系重合体を製造する点から、好ましくは10wtppm以上であり、さらに好ましくは20wtppm以上で用いることがよい。また、上限に関しては、好ましくは200wtppm以下であり、更に好ましくは100wtppm以下である。
[プロピレン系重合体の回収]
製造物としてプロピレン系重合体を回収する工程は、回収による水素やプロピレンの変動を小さくするために、連続的にスラリー液を重合反応器から排出して脱ガス槽に導入した後に未反応のプロピレンをガスとして排出した後、プロピレン系重合体の抜き出しを間欠的に行うことが好ましい。
更にその変動による影響を小さくするために、間欠的にプロピレン系重合体を脱ガス槽から抜き出す間隔は、5秒〜30秒の間隔、更に10秒〜20秒の間隔であることが、連続的に抜き出すポリマースラリーの量を変動させ難い点から好ましい。
また、製造物としてプロピレン系重合体を回収する量は、1時間当たり、6.0T〜10.0Tであること、更に7.0T〜9.0Tであることが、効率的に目的の製品の回収を行える点から好ましい。
[ポリマースラリー濃度]
例えばバルク連続重合においては、重合反応器内に導入するプロピレン導入量と、生成したポリマーと未反応のプロピレンを回収する量を調整することにより、重合反応器内に保有するポリマー量を一定(定常状態)に保つことができる。
この時、重合反応器内のプロピレン重量に対するポリマー量の割合(ポリマースラリー濃度)も一定となる。
プロピレン液中で場所によって水素濃度の微小な高低ができないように、ポリマースラリー濃度を調整することが好ましい。本発明の製造方法では、ポリマースラリー濃度は55wt%以下が好ましく、より好ましくは50wt%以下であり、さらに好ましくは45wt%以下である。
また生産性の観点から、ポリマースラリー濃度を調整することが好ましい。本発明の製造方法では、ポリマースラリー濃度は30wt%以上が好ましく、より好ましくは35wt%以上であり、さらに好ましくは40wt%以上である。
III.プロピレン系重合体
1.溶融張力
本発明では、製造されるプロピレン系重合体の230℃の溶融張力(MT230℃)と190℃の溶融張力(MT190℃)の比(MT190℃/MT230℃)は1.8以上2.5以下とする。
本発明の方法で製造される分岐状プロピレン系重合体は、制御された分岐構造(分岐量、分岐長、分岐分布)を持つために、配向結晶化が起こり難くなる。その結果本発明の方法で製造されるプロピレン系重合体では溶融物性が顕著に改良されており、プロピレン系重合体の230℃の溶融張力(MT230℃)と190℃の溶融張力(MT190℃)の比(MT190℃/MT230℃)を従来と比べて小さい特定の範囲とすることができる。その結果、本発明では、前記高温と低温の中間の温度において流動性見合いで延展性に優れるプロピレン系重合体を製造することができる。
前記溶融張力比(MT190℃/MT230℃)は、流動性見合いで延展性に優れる点から、2.5以下であることが必要であり、好ましくは2.4以下であり、より好ましくは2.3以下である。
一方で、溶融張力比(MT190℃/MT230℃)は、高温と低温の中間の温度において溶融張力に優れる点から、1.8以上が必要であり、好ましくは1.9以上であり、より好ましくは2.0以上である。
この溶融張力の温度依存性を示す溶融張力比(MT190℃/MT230℃)が1.8〜2.5の範囲を外れて大きくなると、例えば押出発泡成形で溶融樹脂がダイから押し出されて温度が冷えていく成形過程において、急激に溶融張力が増大することにより成形途中で延展性が悪化してしまう。また、結果的に成形体の外観が悪化してしまうという問題が生じる。
この溶融張力比(MT190℃/MT230℃)が2.5以下であると、流動性見合いで延展性に優れるプロピレン系重合体を製造することができる。
また、この溶融張力比(MT190℃/MT230℃)が1.8以上であると、例えば押出発泡成形で溶融樹脂がダイから押し出されて温度が冷えていく成形過程において、溶融物を固化していくときに溶融張力が増大することで気泡の独立性やシートの垂れを改善することができる。
本発明で製造されるプロピレン系重合体は、成形に必要な溶融張力を保持しながら、延展性に優れるプロピレン系重合体を得る点から、MT230℃の下限値としては、3.6g以上とし、好ましくは4.0g以上である。MT230℃の上限値としては、15.0g以下であり、好ましくは14.0g以下であり、より好ましくは13.0g以下である。
また、本発明で製造されるプロピレン系重合体は、成形に必要な溶融張力を保持しながら、延展性に優れるプロピレン系重合体を得る点から、MT190℃の下限値としては、7.2g以上が挙げられるが、好ましくは8.0g以上であり、より好ましくは9.0g以上である。MT190℃の上限値としては、37.5g以下が挙げられるが、好ましくは25.0g以下であり、より好ましくは15.0g以下である。
230℃の溶融張力(MT230℃)と190℃の溶融張力(MT190℃)の測定方法は、メルトテンションテスター(例えば、東洋精機社製キャピログラフ1B)を用い、樹脂温度230℃および190℃で、下記の条件で樹脂を紐状に押し出して、ローラーに巻き取っていった時にプーリーに検出される張力をそれぞれ溶融張力(MT230℃、MT190℃)とする。
キャピラリー:直径2.1mm
シリンダー径:9.6mm
シリンダー押出速度:10mm/分
巻き取り速度:4.0m/分
なお、巻き取り速度:4.0m/分で破断を引き起こす場合には、溶融張力は評価できず、とする。
2.流動性
本発明で製造されるプロピレン系重合体は、温度230℃、2.16kg荷重で測定するメルトフローレート(MFR)が3.0g/10分以上であることが、溶融張力が高くなりすぎない点から好ましく、13.0g/10分以下であることが、溶融張力が低くなりすぎない点から好ましい。
MFRは、溶融時の流動性を示す指標であり、重合体の平均分子量や、分子量分布、分岐構造によって変化する。
本発明で製造されるプロピレン系重合体は、温度230℃、2.16kg荷重で測定するメルトフローレート(MFR)が、より好ましくは4.0g/10分以上であり、更に好ましくは5.0g/10分以上である。一方、本発明で製造されるプロピレン系重合体は、MFRがより好ましくは12.0g/10分以下、さらに好ましくは11.0g/10分以下、よりさらに好ましくは10.0/10分以下である。
メルトフローレート(MFR)の測定方法は、JIS K6921−2の「プラスチック−ポリプロピレン(PP)成形用及び押出用材料−第2部:試験片の作り方及び性質の求め方」に準拠して、試験条件:230℃、荷重2.16kgfで測定した値である。
本発明で製造されるプロピレン系重合体は、特定の分子量分布と分岐構造を持つことで成形機内温度に近い高温時の溶融張力と、溶融樹脂の冷却過程の低温時の溶融張力との比が特定の範囲の時に、流動性と延展性が改良される。
3.分子量分布 Mw/Mn
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比[Mw/Mn]は、分子量分布の広がりを表す指標であり、この値が大きいほど分子量分布が広いことを意味する。本発明で製造されるプロピレン系重合体は、3.8以上、4.5以下であることが好ましい。
本発明で製造されるプロピレン系重合体のMw/Mnは、より好ましくは3.9以上、さらに好ましくは4.0以上である。
分子量分布 Mw/Mnは、前述の数平均分子量(Mn)と同様にして、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定することができる。
4.分岐構造 分岐分布
本発明で製造されるプロピレン系重合体は 3D−GPCによって得られるMALLSによる絶対分子量(Mabs)測定から得られる分子量分布曲線において、
数平均分子量(Mnabs)での分岐指数g’(Mnabs)が、0.95以上1.0以下であり、より好ましくは0.97以上1.0以下であり、更に好ましくは1.0であり、
重量平均分子量(Mwabs)での分岐指数g’(Mwabs)が0.90以上0.95以下であり、
z平均分子量(Mzabs)におけるg’(Mzabs)が0.80以上0.90以下であることが好ましい。
本発明の分岐状プロピレン系重合体の分岐分布は上記範囲にあることにより、溶融張力比と溶融張力を特定の範囲にでき、流動性と延展性が改良される。
[分岐指数g’の定義]
g’は、長鎖分岐構造を有するポリマーの固有粘度[η]brと同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度[η]linの比、すなわち、[η]br/[η]linによって与えられ、長鎖分岐構造が存在すると、1.0よりも小さな値をとる。
定義は、例えば「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983)に記載されており、当業者にとって公知の指標である。
g’は、例えば、下記に記すような光散乱計と粘度計を検出器に備えた3D−GPCを使用することによって、絶対分子量Mabsの関数として得ることができる。
[3D−GPCによる分岐構造’の測定方法]
本明細書において、3D−GPCとは、3つの検出器が接続されたGPC装置をいう。
かかる3つの検出器は、示差屈折計(RI)、粘度検出器(Viscometer)及び多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)である。
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社製のAlliance GPCV2000を用いる。
また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いる。
検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続する。
移動相溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼン(BASFジャパン社製酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。
流量は1mL/分で、カラムは、東ソー社製GMHHR−H(S)HTを2本直列に連結して用いる。
カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。
試料濃度は1mg/mLとし、注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。
MALLSから得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)およびViscometerから得られる固有粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行う。
参考文献:
1.Developments in polymer characterization, vol.4. Essex: Applied Science; 1984. Chapter1.
2.Polymer, 45, 6495−6505(2004)
3.Macromolecules, 33, 2424−2436(2000)
4.Macromolecules, 33, 6945−6952(2000)
[分岐指数(g’)の算出]
分岐指数g’は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる固有粘度([η]br)と、別途、線状ポリマーを測定して得られる固有粘度([η]lin)との比([η]br/[η]lin)として算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐構造が導入されると、同じ分子量の線状ポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると、固有粘度が小さくなることから、長鎖分岐構造が導入されるに従い、同じ分子量の線状ポリマーの固有粘度([η]lin)に対する分岐状ポリマーの固有粘度([η]br)の比([η]br/[η]lin)は、小さくなっていく。
したがって、分岐指数g’([η]br/[η]lin)が1.0より小さい値になる場合には、長鎖分岐構造を有することを意味する。
ここで、[η]linを得るための線状ポリマーとしては、市販のホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製ノバテックPP(登録商標)グレード名:FY6)を用いる。線状ポリマーの[η]linの対数は分子量の対数と線形の関係があることは、Mark−Houwink−Sakurada式として公知であるから、[η]linは、低分子量側や高分子量側に適宜外挿して数値を得ることができる。
また分岐指数g’([η]br/[η]lin)が計算上1.0以上になる場合には、理論上直鎖の場合の値である1.0以上の値にはならないことから1.0として扱う。
[各分子量における各分岐指数(g’)分岐分布の制御]
各平均分子量 Mnabs、Mwabs、Mzabsにおける分岐度を表す分岐指数g’(Mnabs)、g’(Mwabs)、g’(Mzabs)の値は、触媒上の複数の錯体の組成、重合温度等の重合条件、もしくは連続式といった重合様式、重合形態を選ぶことで制御することができる。本発明においては、例えば同一MFRのプロピレン系重合体を製造する場合において、水素を連続的に導入し、水素とプロピレンとの連続的に導入する導入流量比を一定に保つことにより、初期に一括で水素を加えて製造したプロピレン系重合体と比べて好ましい分岐分布のプロピレン系重合体を得ることができる。
5.溶融延展性
本発明で製造されるプロピレン系重合体は、制御された分岐構造(分岐量、分岐長、分岐分布)を持つために、溶融物性が改良される。すなわち、230℃で高い溶融張力を持ちながら、190℃と230℃の溶融張力の比が特定の範囲にすることで、溶融延展性を改善でき、流動性見合いで延展性に優れる。
溶融延展性は、以下の方法で測定する最高巻取速度(MaxDraw)によって評価することができる。
メルトテンションテスター(例えば、東洋精機社製キャピログラフ1B)を用い、下記の条件で樹脂を紐状に押し出して、ローラーに巻き取っていった時に巻き取り速度を4.0m/分から徐々に上げていったとき(加速度:5.4cm/s)、紐状物が切断する直前の巻き取り速度を、最高巻取速度(MaxDraw)とする。
キャピラリー:直径2.1mm
シリンダー径:9.6mm
シリンダー押出速度:10mm/分
温度:210℃
なお、MaxDrawが大きい方が、延展性が良いことを意味する。
本発明で製造されるプロピレン系重合体は、分岐成分や分布を制御することにより、230℃で高い溶融張力を保ったまま、210℃で大きなMaxDrawを持つことができ、溶融張力と溶融延展性のバランスが改善されている。
本発明で製造されるプロピレン系重合体において、210℃での最高巻取速度(MaxDraw)は、MT230℃が3.6g以上5.8g未満の時、70m/min以上が好ましく、より好ましくは72m/min以上であり、さらに好ましくは77m/min以上である。
本発明で製造されるプロピレン系重合体において、210℃での最高巻取速度(MaxDraw)は、MT230℃が5.8g以上7.5g未満の時、60m/min以上が好ましく、より好ましくは62m/min以上であり、さらに好ましくは64m/min以上である。
本発明で製造されるプロピレン系重合体において、210℃での最高巻取速度(MaxDraw)は、MT230℃が7.5g以上10.5g未満の時、52m/min以上が好ましく、より好ましくは54m/min以上であり、さらに好ましくは56m/min以上である。
本発明で製造されるプロピレン系重合体において、210℃での最高巻取速度(MaxDraw)は、MT230℃が10.5g以上15.0g以下の時、42m/min以上が好ましく、より好ましくは46m/min以上であり、さらに好ましくは50m/min以上である。
本発明で製造されるプロピレン系重合体は、流動性見合いで延展性に優れる。
本発明で製造されるプロピレン系重合体は、前記最高巻取速度(MaxDraw)(単位:m/min)とMFR(単位:g/10分)とが下記式(1’)で示される関係を満たすことが、耐久性の点から好ましく、下記式(1)で示される関係を満たすことがより好ましい。
(MaxDraw)≧62×log(MFR)+7 ・・・式(1’)
(MaxDraw)≧62×log(MFR)+10 ・・・式(1)
一般に流動性を高くすると延展性は優れるようになるが、溶融張力は低下し、延展性を優れるように流動性を高くすると、溶融張力が不十分になるという問題があるため、成形に必要な溶融張力と、優れた延展性を両立したプロピレン系重合体であることが望まれる。式(1)は、本発明で製造されるプロピレン系重合体が、従来のプロピレン系重合体に比べて、流動性見合いの延展性に優れることを示すものである。即ち、本発明のプロピレン系重合体と従来のものを区別するために、最高巻取速度(MaxDraw)は流動性(MFR)の増加に対して正の相関がある関数と考えて、当該関数のパラメータを設定し、本発明で製造されるプロピレン系重合体の最高巻取速度(MaxDraw)が当該関数で規定される最高巻取速度(MaxDraw)よりも流動性見合いで大きいことを示す。具体的には、実施例及び比較例データに基づき、実施例と従来技術の比較例を区別する最高巻取速度(MaxDraw)及び流動性(MFR)の値を仮定して、当該最高巻取速度(MaxDraw)と流動性(MFR)との間に成立する関係式について、最小二乗法により当該関係式のパラメータを決定したものである。
本発明で製造されるプロピレン系重合体は、特定の重合触媒存在下でプロピレン系重合体を連続重合する際に、水素とプロピレンとの連続的に導入する導入流量比を一定に保ち、前記溶融張力比(MT190℃/MT230℃)と溶融張力の値とを特定の範囲となるように選択することから、式(1’)及び式(1)を満足することができる。
本発明で製造される流動性見合いで延展性に優れるプロピレン系重合体は、流動性が低めであっても優れた延展性を示すことから、本発明の製造方法は、成形に必要な溶融張力を保持しながら、延展性に優れるプロピレン系重合体を得ることができる。
以上のようにして得られる、本発明のプロピレン系重合体は、下記特性(A)〜(E)を有する、分岐状プロピレン系重合体である。
(A)プロピレン系重合体の230℃の溶融張力(MT230℃)と190℃の溶融張力(MT190℃)の比(MT190℃/MT230℃)は1.8以上、2.5以下である。
(B)プロピレン系重合体のMT230℃は3.6g以上、15.0g以下である。
(C)温度230℃、2.16kg荷重で測定するメルトフローレート(MFR)が3.0g/10分以上、13.0g/10分以下である。
(D)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が3.8以上、4.5以下である。
(E)下記測定方法で求められる最高巻取速度(MaxDraw)と前記メルトフローレート(MFR)が下記式(1’)で示される関係を満たす。
(MaxDraw)≧62×log(MFR)+7・・・式(1’)
<最高巻取速度測定方法>
メルトテンションテスターを用い、下記の条件で樹脂を紐状に押し出して、ローラーに巻き取っていった時に、巻き取り速度を4.0m/分から加速度5.4cm/sで上げていったとき、紐状物が切断する直前の巻き取り速度を、最高巻取速度(MaxDraw)とする。
キャピラリー:直径2.1mm
シリンダー径:9.6mm
シリンダー押出速度:10mm/分
温度:210℃
本発明のプロピレン系重合体は、前記特性(A)〜(E)を有する分岐状プロピレン系重合体であるが、好ましくは、前記本発明で製造されるプロピレン系重合体で説明した特性を有するものであり、当該特性の数値範囲は前記と同様であって良い。
本発明のプロピレン系重合体は、更に特性(F)を有するものであって良い。
特性(F):3D−GPCによって得られる分子量分布曲線において、
数平均分子量(Mnabs)での分岐指数g’(Mnabs)が0.90以上、1.00以下であり、
重量平均分子量(Mwabs)での分岐指数g’(Mwabs)が0.90以上0.95以下であり、
z平均分子量(Mzabs)におけるg’(Mzabs)が0.80以上0.90以下である。
5.プロピレン系重合体の用途
本発明で製造されるプロピレン系重合体は、成形に必要な溶融張力を保持しながら、延展性に優れ、シート成形、ブロー成形、熱成形、発泡成形等に用いることができ、特にシート成形乃至押出成形に好適に用いることができる。
本発明で製造されるプロピレン系重合体は、成形機内温度に近い230℃での溶融張力(MT230℃)が所定の範囲内で大きいことから、溶融樹脂がダイから押し出されて気泡が成長していく過程において、気泡の合一を抑制して気泡の独立性を保ちやすく、一方で、前記MT190℃/MT230℃比が適切な範囲内に小さいことから、冷却過程で急激に溶融張力が増大することにより生じる成形体の外観悪化等を抑制し易く、且つ延展性に優れるため、中でも、押出発泡シート成形に好適に用いることができる。本発明で製造されるプロピレン系重合体を押出発泡シート成形に適用すると、気泡の独立性とシート表面の外観のバランスが向上した押出発泡シートを製造することが可能になる。
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
水素とプロピレンの導入流量比、及び、水素濃度の変動係数は、以下のように評価した。
[水素とプロピレンの導入流量比の変動係数]
水素導入流量、プロピレン導入流量を、60秒毎に瞬間の流量計の指示値を有効数字3桁まで読み取り、これらを用いて、各瞬間の水素導入流量をプロピレン導入流量で割った値を水素とプロピレンの導入流量比(H2/C3)とした。前記等間隔で読み取られた各瞬間の導入流量比(H2/C3)の平均値と標準偏差を算出し、標準偏差を平均値で除した数値として、変動係数を算出した。
[水素濃度の変動係数]
60秒毎に、重合反応器内の気相部にあるガスを少量連続的に取り出し、採取したガスについて、ガスクロマトグラフィー測定を行うことにより、水素濃度を求めた。
前記等間隔で測定された水素濃度の平均値と標準偏差を算出し、標準偏差を平均値で除した数値として、変動係数を算出した。
なお、その他の実施例における物性測定、分析等は、本明細書の前記記載の方法に従ったものである。
(合成例1:成分[A−1](錯体1)の調製)
(1)錯体1の合成
成分[A−1](錯体1)として、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムを、特開2009−299046の実施例13の(1)に記載の方法にしたがって合成した。
(2)末端ビニル率(Rv)の評価
(2−1)触媒の調製
(2−a)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lの3つ口フラスコに、蒸留水645.1gと98%硫酸82.6gを加え、95℃まで昇温した。
そこへ市販のモンモリロナイト(水澤化学工業社製ベンクレイKK、Al=9.78質量%、Si=31.79質量%、Mg=3.18質量%、Al/Si(モル比)=0.320、平均粒径14μm)100gを添加し、95℃で320分反応させた。320分後、蒸留水0.5Lを加えて反応を停止し、濾過することでケーキ状固体物255gを得た。
このケーキ1gには、0.31gの化学処理モンモリロナイト(中間物)が含まれていた。化学処理モンモリロナイト(中間物)の化学組成は、Al=7.68質量%、Si=36.05質量% Mg=2.13質量%、Al/Si(モル比)=0.222であった。
上記ケーキに蒸留水1545gを加えスラリー化し、40℃まで昇温した。水酸化リチウム・水和物5.734gを固体のまま加え、40℃で1時間反応させた。1時間後、反応スラリーを濾過し、1Lの蒸留水で3回洗浄し、再びケーキ状固体物を得た。
回収したケーキを乾燥したところ、化学処理モンモリロナイト80gを得た。この化学処理モンモリロナイトの化学組成は、Al=7.68質量%、Si=36.05質量%、Mg=2.13質量%、Al/Si(モル比)=0.222、Li=0.53質量%であった。
(2−b)予備重合
1Lの3つ口フラスコに、得られた化学処理モンモリロナイト20gを入れ、ヘプタン131mLを加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム50mmol(濃度143.4mg/mLのヘプタン溶液を69mL)を加えて1時間撹拌した。1時間後、ヘプタンで1/100まで洗浄し、全容量を100mLとした。
この化学処理モンモリロナイトが入ったスラリー溶液を50℃に保ち、そこへトリノルマルオクチルアルミニウム4.2mmol(濃度145.0mg/mLのヘプタン溶液を10.6mL)を加えて20分間撹拌した。
そこへ、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム0.3mmol(トルエン50mLでスラリーとしたもの)を加えて、50℃に保ちながら20分間撹拌した。
その後ヘプタン350mLを追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのち、プロピレンを10g/時の速度で導入し、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレン導入を止めて、40℃のまま1時間残重合を行った。
得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、再びヘプタンを加えてデカンテーションすることにより予備重合触媒の洗浄をおこなった。上記デカンテーションにより残った部分に、トリイソブチルアルミニウム12mmol(濃度143.4mg/mLのヘプタン溶液を16.6mL)を加えて10分間撹拌した。この固体を40℃で2時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒54.0gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.70であった。
(2−2)重合
3Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(143.4mg/mL)2.86mL、水素を240ml、液化プロピレン750gを導入した後、70℃まで昇温した。その後、上記触媒を、予備重合ポリマーを除いた質量で100mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。70℃で1時間保持した後、未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止した。そうしたところ約128g、MFR=38のプロピレン単独重合体が得られた。
(2−3)末端ビニル率
得られたプロピレン単独重合体について、本明細書中に記載の方法で、末端ビニル率(Rv)の評価をおこなったところ、
構造式(1−a)と構造式(1−e)により、[Vi]=0.61、Mn=63467であり、末端ビニル率(Rv)=0.92であった。
構造式(1−b)により、[Vd]=0.10であり、末端ビニリデン率(Rvd)=0.15であった。
(合成例2:成分[A−2](錯体2)の調製)
(1)錯体2の合成
成分[A−2](錯体2)として、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムを、特開平11―240909号公報の実施例7に記載の方法にしたがって合成した。
(2)末端ビニル率(Rv)の評価
(2−1)触媒の調製
(2−a)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
前記成分[A−1](錯体1)の末端ビニル率の評価におけるイオン交換性層状珪酸塩の化学処理と同様に行った。
(2−b)1Lの3つ口フラスコに、得られた化学処理モンモリロナイト20gを入れ、ヘプタン131mLを加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム50mmol(濃度143.4mg/mLのヘプタン溶液を69mL)を加えて1時間撹拌した。1時間後、ヘプタンで1/100まで洗浄し、全容量を100mLとした。
この化学処理モンモリロナイトが入ったスラリー溶液を50℃に保ち、そこへトリノルマルオクチルアルミニウム4.2mmol(濃度145.0mg/mLのヘプタン溶液を10.6mL)を加えて20分間撹拌した。
そこへ、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム0.3mmol(トルエン50mLでスラリーとしたもの)を加えて、50℃に保ちながら20分間撹拌した。
その後ヘプタン350mLを追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのち、プロピレンを10g/時の速度で導入し、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレン導入を止めて、40℃のまま1時間残重合を行った。
得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、再びヘプタンを加えてデカンテーションすることにより予備重合触媒の洗浄をおこなった。上記デカンテーションにより残った部分に、トリイソブチルアルミニウム12mmol(濃度143.4mg/mLのヘプタン溶液を16.6mL)を加えて10分間撹拌した。この固体を40℃で2時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒62.2gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.11であった。
(2−2)重合
3Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(143.4mg/mL)2.86mL、水素を240ml、液化プロピレン750gを導入した後、70℃まで昇温した。その後、上記触媒を、予備重合ポリマーを除いた質量で30mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。70℃で1時間保持した後、未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止した。そうしたところ約157g、MFR=1.0のプロピレン単独重合体が得られた。
(2−3)末端ビニル率
得られたプロピレン単独重合体について、本明細書中に記載の方法で、末端ビニル率(Rv)の評価をおこなったところ、
構造式(1−a)と構造式(1−e)により、[Vi]=0、Mn=148356であり、末端ビニル率(Rv)=0であった。
構造式(1−b)により、[Vd]=0.17、末端ビニリデン率(Rvd)=0.6であった。
(調製例1:プロピレン重合用触媒の調製)
(1)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
前記成分[A−1](錯体1)の末端ビニル率の評価におけるイオン交換性層状珪酸塩の化学処理と同様に行い、化学処理モンモリロナイト80gを得た。この化学処理モンモリロナイトの化学組成は、Al=7.68質量%、Si=36.05質量%、Mg=2.13質量%、Al/Si(モル比)=0.222、Li=0.53質量%であった。
(2)予備重合
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上記で得られた化学処理モンモリロナイト20gを入れ、ヘプタン(131mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム50mmol(濃度143.4mg/mLのヘプタン溶液を69mL)を加えて1時間撹拌した。1時間後、ヘプタンで1/100まで洗浄し、この化学処理モンモリロナイトが入ったスラリー溶液の全容量を100mLとし、温度を50℃に保った。
前記スラリー溶液中へ、トリイソブチルアルミニウム432μmol(濃度143.4mg/mLのヘプタン溶液を0.6mL)を加えて5分間撹拌した。別のフラスコ(容積200mL)中で、前記触媒成分[A−2]の合成例2で作製したrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム(108μmol)をトルエン(33mL)に溶解して溶液1を調製した。前記溶液1を1Lフラスコ中のスラリー溶液に加え、50℃を保って60分間撹拌した。
更に、前記スラリー溶液中へ、トリノルマルオクチルアルミニウム3528μmol(濃度145.0mg/mLのヘプタン溶液を8.9mL)を加えて10分間撹拌した。別のフラスコ(容積200mL)中で、前記触媒成分[A−1]の合成例1で作製したrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(252μmol)をトルエン(36mL)に溶解して溶液2を調製した。前記溶液2を1Lフラスコ中のスラリー溶液に加え、50℃を保って20分間撹拌した。
その後前記スラリー溶液中へ、ヘプタン321mLを追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのち、プロピレンを10g/hrの流量で導入し、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレン導入を止めて、40℃のまま1時間残重合を行った。
得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、再びヘプタンを加えてデカンテーションすることにより予備重合触媒の洗浄をおこなった。上記デカンテーションにより残った部分に、トリイソブチルアルミニウム12mmol(濃度143.4mg/mLのヘプタン溶液を16.6mL)を加えて10分間撹拌した。この固体を40℃で2時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒(予備重合触媒1)を62.0g得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.10であった。
(実施例1:プロピレン系重合体の製造)
内容積100mの撹拌式高圧反応容器(L/D=1.2)内をプロピレンで十分に置換した後、十分に精製した液化プロピレンを20T/hr、トリイソブチルアルミニウムを80kg/hrの流量で連続的に導入し、温度を70±0.1℃に保ち、槽内の液量が29.1Tに保たれるように槽内の液を連続的に抜き出した。
次いで、水素を徐々に0.080kg/hrで加えて槽内の水素濃度が安定した後に、予備重合触媒1を徐々に加えていき、さらに水素量を微調整して、最終的に水素を0.110kg/hr、予備重合触媒1を1.40g/hr(予備重合ポリマーを除いた重量で)の流量で連続的に導入している状態になったところで、重合反応器内のポリマー密度が40wt%になり、プロピレン系重合体(パウダー)を連続的に8.0T/hrで排出しはじめた。その後、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の変動係数が0.020以下となり、プロピレン系重合体のMFRが±0.5g/10分の範囲内で安定したところでプロピレン系重合体(パウダー)の回収を始めた。
回収時、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の平均値は5.50wtppmであり、標準偏差は0.048wtppm、変動係数は0.009であった。
得られたプロピレン系重合体(パウダー)をよく乾燥した後に、下記造粒条件で造粒してプロピレン系重合体のペレットを得た。造粒したペレットを用いて、MFR、Mw/Ms、分岐指数g’(Mnabs)、g’(Mwabs)、g’(Mzabs)、MT230℃、MT190℃、210℃での最高巻取速度(MaxDraw210℃)の測定をおこなった。
重合条件及び評価結果を表1に示す。
(造粒)
プロピレン系重合体のパウダー100重量部に対し、フェノ−ル系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名:IRGANOX1010、BASFジャパン株式会社製)0.125重量部、フォスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名:IRGAFOS 168、BASFジャパン株式会社製)0.125重量部を配合し、高速撹拌式混合機(商品名:ヘンシェルミキサ−)を用い室温下で3分間混合した後、二軸押出機にて溶融混練して、プロピレン系重合体のペレットを得た。なお、二軸押出機には、テクノベル社製KZW−25を用い、スクリュー回転数は400RPM、混練温度は、ホッパ下から80、160、210、230(以降、ダイス出口まで同温度)℃設定とした。
(実施例2:プロピレン系重合体の製造)
実施例1のプロピレン系重合体の重合において、最終的な水素導入流量を0.110kg/hrから0.112kg/hrに変更し、触媒量を調整しながら、重合反応器内のポリマー密度が40wt%とプロピレン系重合体(パウダー)の抜出量を8.0T/hrに保つようにした。その後、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の変動係数が0.020以下となり、プロピレン系重合体のMFRが±0.5g/10分の範囲内で安定してから6時間経過したところでパウダーの回収を始めた。
回収時、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の平均値は5.60wtppmであり、標準偏差は0.048wtppm、変動係数は0.009であった。
得られたプロピレン系重合体(パウダー)をよく乾燥した後に、前記造粒条件で造粒してプロピレン系重合体のペレットを得た。造粒したペレットを用いて、MFR、Mw/Ms、分岐指数g’(Mnabs)、g’(Mwabs)、g’(Mzabs)、MT230℃、MT190℃、210℃での最高巻取速度(MaxDraw210℃)の測定をおこなった。
重合条件及び評価結果を表1に示す。
(実施例3:プロピレン系重合体の製造)
実施例1のプロピレン系重合体の重合において、最終的な水素導入流量を0.110kg/hrから0.114kg/hrに変更し、触媒量を調整しながら、重合反応器内のポリマー密度が40wt%とプロピレン系重合体(パウダー)の抜出量を8.0T/hrに保つようにした。その後、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の変動係数が0.020以下となり、プロピレン系重合体のMFRが±0.5g/10分の範囲内で安定してから6時間経過したところでパウダーの回収を始めた。
回収時、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の平均値は5.70wtppmであり、標準偏差は0.048wtppm、変動係数は0.008であった。
得られたプロピレン系重合体(パウダー)をよく乾燥した後に、前記造粒条件で造粒してプロピレン系重合体のペレットを得た。造粒したペレットを用いて、MFR、Mw/Ms、分岐指数g’(Mnabs)、g’(Mwabs)、g’(Mzabs)、MT230℃、MT190℃、210℃での最高巻取速度(MaxDraw210℃)の測定をおこなった。
重合条件及び評価結果を表1に示す。
(実施例4:プロピレン系重合体の製造)
実施例1のプロピレン系重合体の重合において、最終的な水素導入流量を0.110kg/hrから0.116kg/hrに変更し、触媒量を調整しながら、重合反応器内のポリマー密度が40wt%とプロピレン系重合体(パウダー)の抜出量を8.0T/hrに保つようにした。その後、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の変動係数が0.020以下となり、プロピレン系重合体のMFRが±0.5g/10分の範囲内で安定してから6時間経過したところでパウダーの回収を始めた。
回収時、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の平均値は5.80wtppmであり、標準偏差は0.048wtppm、変動係数は0.008であった。
得られたプロピレン系重合体(パウダー)をよく乾燥した後に、前記造粒条件で造粒してプロピレン系重合体のペレットを得た。造粒したペレットを用いて、MFR、Mw/Ms、分岐指数g’(Mnabs)、g’(Mwabs)、g’(Mzabs)、MT230℃、MT190℃、210℃での最高巻取速度(MaxDraw210℃)の測定をおこなった。
重合条件及び評価結果を表1に示す。
(実施例5:プロピレン系重合体の製造)
実施例1のプロピレン系重合体の重合において、最終的な水素導入流量を0.110kg/hrから0.068kg/hrに変更し、触媒量を調整しながら、重合反応器内のポリマー密度が40wt%とプロピレン系重合体(パウダー)の抜出量を8.0T/hrに保つようにした。その後、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の変動係数が0.020以下となり、プロピレン系重合体のMFRが±0.5g/10分の範囲内で安定してから6時間経過したところでパウダーの回収を始めた。
回収時、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の平均値は3.40wtppmであり、標準偏差は0.048wtppm、変動係数は0.014であった。
得られたプロピレン系重合体(パウダー)をよく乾燥した後に、前記造粒条件で造粒してプロピレン重合体のペレットを得た。造粒したペレットを用いて、MFR、Mw/Ms、分岐指数g’(Mnabs)、g’(Mwabs)、g’(Mzabs)、MT230℃、MT190℃、210℃での最高巻取速度(MaxDraw210℃)の測定をおこなった。
重合条件及び評価結果を表1に示す。
(実施例6:プロピレン系重合体の製造)
実施例1のプロピレン系重合体の重合において、最終的な水素導入流量を0.110kg/hrから0.083kg/hrに変更し、触媒量を調整しながら、重合反応器内のポリマー密度が40wt%とプロピレン系重合体(パウダー)の抜出量を8.0T/hrに保つようにした。その後、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の変動係数が0.020以下となり、プロピレン系重合体のMFRが±0.5g/10分の範囲内で安定してから6時間経過したところでパウダーの回収を始めた。
回収時、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の平均値は4.41wtppmであり、標準偏差は0.048wtppm、変動係数は0.011であった。
得られたプロピレン系重合体(パウダー)をよく乾燥した後に、前記造粒条件で造粒してプロピレン重合体のペレットを得た。造粒したペレットを用いて、MFR、Mw/Ms、分岐指数g’(Mnabs)、g’(Mwabs)、g’(Mzabs)、MT230℃、MT190℃、210℃での最高巻取速度(MaxDraw210℃)の測定をおこなった。
重合条件及び評価結果を表1に示す。
(実施例7:プロピレン系重合体の製造)
実施例1のプロピレン系重合体の重合において、最終的な水素導入流量を0.110kg/hrから0.093kg/hrに変更し、触媒量を調整しながら、重合反応器内のポリマー密度が40wt%とプロピレン系重合体(パウダー)の抜出量を8.0T/hrに保つようにした。その後、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の変動係数が0.020以下となり、プロピレン系重合体のMFRが±0.5g/10分の範囲内で安定してから6時間経過したところでパウダーの回収を始めた。
回収時、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の平均値は4.94wtppmであり、標準偏差は0.048wtppm、変動係数は0.010であった。
得られたプロピレン系重合体(パウダー)をよく乾燥した後に、前記造粒条件で造粒してプロピレン重合体のペレットを得た。造粒したペレットを用いて、MFR、Mw/Ms、分岐指数g’(Mnabs)、g’(Mwabs)、g’(Mzabs)、MT230℃、MT190℃、210℃での最高巻取速度(MaxDraw210℃)の測定をおこなった。
重合条件及び評価結果を表1に示す。
(実施例8:プロピレン系重合体の製造)
実施例1のプロピレン系重合体の重合において、最終的な水素導入流量を0.110kg/hrから0.100kg/hrに変更し、触媒量を調整しながら、重合反応器内のポリマー密度が40wt%とプロピレン系重合体(パウダー)の抜出量を8.0T/hrに保つようにした。その後、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の変動係数が0.020以下となり、プロピレン系重合体のMFRが±0.5g/10分の範囲内で安定してから6時間経過したところでパウダーの回収を始めた。
回収時、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の平均値は5.00wtppmであり、標準偏差は0.048wtppm、変動係数は0.010であった。
得られたプロピレン系重合体(パウダー)をよく乾燥した後に、前記造粒条件で造粒してプロピレン重合体のペレットを得た。造粒したペレットを用いて、MFR、Mw/Ms、分岐指数g’(Mnabs)、g’(Mwabs)、g’(Mzabs)、MT230℃、MT190℃、210℃での最高巻取速度(MaxDraw210℃)の測定をおこなった。
重合条件及び評価結果を表1に示す。
(実施例9:プロピレン系重合体の製造)
実施例1のプロピレン系重合体の重合において、最終的な水素導入流量を0.110kg/hrから0.118kg/hrに変更し、触媒量を調整しながら、重合反応器内のポリマー密度が40wt%とプロピレン系重合体(パウダー)の抜出量を8.0T/hrに保つようにした。その後、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の変動係数が0.020以下となり、プロピレン系重合体のMFRが±0.5g/10分の範囲内で安定してから6時間経過したところでパウダーの回収を始めた。
回収時、連続的に導入するプロピレンに対する連続的に導入する水素の導入流量比の平均値は5.90wtppmであり、標準偏差は0.048wtppm、変動係数は0.008であった。
得られたプロピレン系重合体(パウダー)をよく乾燥した後に、前記造粒条件で造粒してプロピレン重合体のペレットを得た。造粒したペレットを用いて、MFR、Mw/Ms、分岐指数g’(Mnabs)、g’(Mwabs)、g’(Mzabs)、MT230℃、MT190℃、210℃での最高巻取速度(MaxDraw210℃)の測定をおこなった。
重合条件及び評価結果を表1に示す。
(比較例1:プロピレン系重合体の製造)
内容積200リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン45Kgを導入した。これに水素1.13g、トリイソブチルアルミニウム0.12mol(濃度50g/Lのヘプタン溶液を0.47L)を加えた後、内温を70℃まで昇温した。次いで予備重合触媒1を0.86g(予備重合ポリマーを除いた重量で)、アルゴンで圧入して重合を開始させた。内部温度は70℃に維持した。120分経過後に、エタノールを100ml圧入し、未反応のモノマーをパージし、オートクレーブ内を窒素置換することにより重合を停止した。
得られたパウダーをよく乾燥し、19.7kgのプロピレン系重合体を得た。当該プロピレン系重合体を前記造粒条件で造粒してプロピレン系重合体のペレットを得た。造粒したペレットを用いて、MFR、Mw/Ms、分岐指数g’(Mnabs)、g’(Mwabs)、g’(Mzabs)、MT230℃、MT190℃、210℃での最高巻取速度(MaxDraw210℃)の測定をおこなった。
重合条件及び評価結果を表2に示す。
(比較例2:プロピレン系重合体の製造)
添加する水素を1.14gに変更した以外は比較例1と同様に重合を行った。その結果20.9kgのプロピレン系重合体を得た。当該プロピレン系重合体を前記造粒条件で造粒してプロピレン系重合体のペレットを得た。造粒したペレットを用いて、MFR、Mw/Ms、分岐指数g’(Mnabs)、g’(Mwabs)、g’(Mzabs)、MT230℃、MT190℃、210℃での最高巻取速度(MaxDraw210℃)の測定をおこなった。
重合条件及び評価結果を表2に示す。
(比較例3:プロピレン系重合体の製造)
添加する水素を1.15gに変更した以外は比較例1と同様に重合を行った。その結果21.3kgのプロピレン系重合体を得た。当該プロピレン系重合体を前記造粒条件で造粒してプロピレン系重合体のペレットを得た。造粒したペレットを用いて、MFR、Mw/Ms、分岐指数g’(Mnabs)、g’(Mwabs)、g’(Mzabs)、MT230℃、MT190℃、210℃での最高巻取速度(MaxDraw210℃)の測定をおこなった。
重合条件及び評価結果を表2に示す。
(比較例4:プロピレン系重合体の製造)
添加する水素を1.16gに変更した以外は比較例1と同様に重合を行った。その結果21.3kgのプロピレン系重合体を得た。当該プロピレン系重合体を前記造粒条件で造粒してプロピレン系重合体のペレットを得た。造粒したペレットを用いて、MFR、Mw/Ms、分岐指数g’(Mnabs)、g’(Mwabs)、g’(Mzabs)、MT230℃、MT190℃、210℃での最高巻取速度(MaxDraw210℃)の測定をおこなった。
重合条件及び評価結果を表2に示す。
(結果のまとめ)
本発明のプロピレン系重合体の製造方法で製造した実施例1〜9のプロピレン系重合体は、水素とプロピレンの導入流量比を一定に保って重合、回収され、溶融張力比(MT190℃/MT230℃)と230℃での溶融張力とが特定の範囲内に制御されたため、成形に必要な溶融張力を保持しながら、延展性に優れるプロピレン系重合体を製造できることが明らかにされた。
一方、従来技術の製造方法で製造された比較例1〜4のプロピレン系重合体は、重合当初に水素が添加され、水素とプロピレンの量比が変動し得る重合方法で製造されたため、溶融張力比(MT190℃/MT230℃)が特定の範囲内にならず、230℃での溶融張力を特定の範囲に大きくすると延展性が悪くなり、延展性を向上させると230℃での溶融張力が小さくなって成形に必要な溶融張力を保持できないことが明らかにされた。
実施例1〜9と比較例1〜4について、MFRと最高巻取速度との関係を図2に示す。同じMFRレベルのデータを比較すると、実施例は比較例よりも大きい最高巻取速度を示す。このことから、少なくとも水素とプロピレンとを重合反応器に連続的に導入しながらプロピレン系重合体を重合反応器から回収する工程を有し、当該回収工程において、前記水素とプロピレンとは連続的に導入する導入流量比を一定に保ち、且つ、溶融張力比(MT190℃/MT230℃)を特定の範囲内にすることによって、流動性見合いの延展性が改良されていることがわかる。

Claims (4)

  1. 下記の成分[A−1]、成分[A−2]、成分[B]および成分[C]を含むプロピレン重合用触媒の存在下に連続的にプロピレンを重合するプロピレン系重合体の製造方法において、
    少なくとも水素とプロピレンとを重合反応器に連続的に導入しながらプロピレン系重合体を重合反応器から回収する工程を有し、当該回収工程において、前記水素とプロピレンとは連続的に導入する導入流量比を一定に保ち、
    前記プロピレン系重合体の230℃の溶融張力(MT230℃)と190℃の溶融張力(MT190℃)の比(MT190℃/MT230℃)は1.8以上、2.5以下、MT230℃は3.6g以上、15.0g以下とすることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法。
    成分[A−1]:70℃でプロピレン単独重合を行った場合に、末端ビニル率(Rv)が0.5以上を満たすプロピレン単独重合体を生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物。
    ここで、末端ビニル率(Rv)は、下式で定義する。
    Rv=(Mn/42)×[Vi]/1000
    (式中、Mnは、GPCにより求める数平均分子量、[Vi]は、H−NMRにより算出する1000モノマー当りの末端ビニル基の数である。)
    成分[A−2]:一般式(a2)で表されるメタロセン化合物。
    [一般式(a2)中、E21およびE22は、それぞれ独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはアズレニル基を表し、それぞれ置換基を有していてもよい(但し、置換基が窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数4〜16の複素環基であることはない。)。Q21は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表し、M21は、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、X21およびY21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。]
    成分[B]:成分[A−1]及び成分[A−2]と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩。
    成分[C]:有機アルミニウム化合物。
  2. 前記成分[A−1]が一般式(a1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
    [一般式(a1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数4〜16の複素環基を示す。R13およびR14は、それぞれ独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン若しくはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30のアリール基、または窒素、酸素若しくは硫黄を含有する炭素数6〜16の複素環基を表す。Q11は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表し、M11は、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、X11及びY11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。]
  3. 前記成分[A−2]が一般式(a3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
    [一般式(a3)中、R21およびR22は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の炭化水素基である。R23およびR24は、それぞれ独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン若しくはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜30のアリール基を表す。Q21は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表し、M21は、ジルコニウムまたはハフニウムを表し、X21およびY21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20のアルキルアミノ基を表す。]
  4. 下記特性(A)〜(E)を有する、分岐状プロピレン系重合体。
    (A)プロピレン系重合体の230℃の溶融張力(MT230℃)と190℃の溶融張力(MT190℃)の比(MT190℃/MT230℃)は1.8以上、2.5以下である。
    (B)プロピレン系重合体のMT230℃は3.6g以上、15.0g以下である。
    (C)温度230℃、2.16kg荷重で測定するメルトフローレート(MFR)が3.0g/10分以上、13.0g/10分以下である。
    (D)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が3.8以上、4.5以下である。
    (E)下記測定方法で求められる最高巻取速度(MaxDraw)と前記メルトフローレート(MFR)が下記式(1’)で示される関係を満たす。
    (MaxDraw)≧62×log(MFR)+7・・・式(1’)
    <最高巻取速度測定方法>
    メルトテンションテスターを用い、下記の条件で樹脂を紐状に押し出して、ローラーに巻き取っていった時に、巻き取り速度を4.0m/分から加速度5.4cm/sで上げていったとき、紐状物が切断する直前の巻き取り速度を、最高巻取速度(MaxDraw)とする。
    キャピラリー:直径2.1mm
    シリンダー径:9.6mm
    シリンダー押出速度:10mm/分
    温度:210℃
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