JP2020189263A - ナノ粒子生成装置および生成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】レーザアブレーションで生成されたナノ粒子をレーザ照射領域から速やかに排出可能な装置を得る。【解決手段】レーザヘッド2と、溶液中に載置されるナノ粒子生成室8の内部へレーザ光Lを透過させる加圧容器7と、加圧容器7へ溶液を供給する溶液供給手段とを備え、加圧容器7は溶液をナノ粒子生成室8へ導入する供給流路10と、ナノ粒子生成室8から加圧容器7の外部へ生成された磁性体ナノ粒子と共に溶液を排出する排出流路11とを備え、溶液供給手段は、加圧手段を備え、ナノ粒子生成室8は、ターゲットの上方にレーザ透過ウィンドウ9まで予め定められた高さを有する直方体形空間と直方体形空間の下部対向位置で供給流路10と排出流路11とに連通する同一形状の供給口13と排出口14とを備え、供給口13と排出口14は、ターゲットの上面で供給口13から排出口14へ向かう溶液の直線的流れを形成する。【選択図】図1
Description
本発明は、生成直後のナノ粒子に対するレーザ光の複数回照射を回避し得るナノ粒子生成装置と該装置による生成方法に関するものである。
物質をナノメートルオーダーの粒子にしたナノ粒子は、極めて大きな比表面積や量子サイズ効果などによって、通常の大きさの場合と異なる特殊な物性を示すことから、各種技術分野での研究や利用が検討されている。
そのなかで、一般的に磁性体ナノ粒子と言われる、鉄、ネオジム磁石等の希土類磁石、規則合金などの強磁性体、あるいは酸化鉄(マグネタイト等)などのフェリ磁性体のナノ粒子は、特に高密度磁気記憶デバイスや医療関連分野等においての応用が期待されている。このような磁性体ナノ粒子は、数ナノメートル〜数十ナノメートル程度の超微小粒径の金属あるいは金属酸化物の微粒子である。一方、強磁性体以外の常磁性体、反磁性体であって一般的に非磁性体とされる物質のナノ粒子についても各分野で利用が検討されている。例えば、光学的用途や触媒、導電性インク用の導電性ナノフィラーとしての金、銀、銅等の金属ナノ粒子、また太陽電池や発光素子などの光機能デバイス、あるいは蛍光バイオマーカーとしての利用などが期待できるシリコンナノ粒子などがある。
これらのナノ粒子の生成方法には、主に、対象物質を粉砕や微細加工によってナノスケールのレベルまで微粒化するトップダウン式のものと、生成した原子や分子からナノ粒子を組み立てるボトムアップ式とがある。このボトムアップ式として、例えば、物理蒸着(PVD)法や化学蒸着(CVD)法、或いは熱プラズマ法など、様々な方法で各種ナノ粒子の生成が試みられている。しかし、PVD法やCVD法は、製造プロセスに複数の工程を要し、また熱プラズマ法は、プラズマ発生による高温領域での原料蒸発の後に蒸気を冷却して凝集させる下流の低温領域を必要とするなど、これら気相法ではプロセスだけでなく真空系や冷却系の構築など装置構成も煩雑となる。
そこで、気相法より簡便なナノ粒子生成法として、液相(液中)レーザアブレーション法が注目されている。これは、液体(溶液)中に設置したターゲット(金属プレート)の表面にパルスレーザビームを集光照射する方法である。このレーザ照射によって、ターゲット表面にプラズマが発生すると共にその構成物質が剥離、放出され、放出された物質が液中で再核生成してナノ粒子が形成される(特許文献1、2を参照。)。このような液相レーザアブレーションでは、プラズマ化、原子化された物質が周囲の液体によって直ちに再核生成されナノ粒子が形成されるため、工程が簡略化され、且つ気相の場合のように真空系、冷却系をそれぞれ設ける必要もない。
ナノ粒子の各種技術分野での応用として、現在はその実用化の研究が進められており、より小粒径のもの、例えば、粒径50nm以下の値の粒子が求められている。しかしながら、このような小粒径のナノ粒子を効率的に生成することは非常に困難である。
液中レーザアブレーションにおいては、まず、レーザ照射によるターゲット表面から放出された分子やイオン、クラスタ等の物質が、溶液に形成されたキャビテーションバブル内で結合してナノ粒子が生成される。最初のレーザ照射で生成されたナノ粒子のみであれば、小さく揃った粒径のナノ粒子が生成されていると考えられるが、現状では、様々な粒径のものが液中に混在し、生成効率も低い。
これは、主に最初に生成されたナノ粒子に対して再度、複数回のレーザ照射が行われることに起因する。即ち、生成されたナノ粒子に複数回レーザが照射されてしまうと、レーザ光が散乱して新たなナノ粒子の生成を阻害し、生成率が低減され、また、粒子同士が結合して粒径の肥大化を招いてしまうためである。また、磁性体ナノ粒子としては、粒径50nm以下の小粒径でありながら飽和磁化80emu/g 以上の高飽和磁化を有する粒子が望まれているが、急熱急冷が繰り返されることで結晶構造が非晶質化して飽和磁化が低下する問題もある。
従来のナノ粒子生成装置は、溶液を貯留した容器にターゲットを浸漬状態で載置し、容器の上部開口に形成したレーザ光導入ウィンドウから液中のターゲットにレーザ光を照射しており、またレーザ光をターゲット面上で走査させている。このような装置構成においては、生成したナノ粒子は、容器内のレーザ照射領域に比較的長い間滞留することになり、複数回のレーザ照射を受けてしまう。
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、複数回のレーザ光照射を回避して小粒径のナノ粒子を効率的に生成するため、最初にレーザアブレーションで生成されたナノ粒子をレーザ照射領域から速やかに排出することができる装置と、該装置によるナノ粒子生成方法を提供することにある。また、本発明は、小粒径で高飽和磁化を有する磁性体ナノ粒子を効率的に生成することができる装置と方法を提供することも目的とする。
上記目的を達成するため、発明者らは、レーザ光が照射されるターゲットを液中載置するナノ粒子生成室に関し、ターゲット上方空間の形状設計を種々検討した結果、生成されたナノ粒子を含む溶液の排出性を向上させて複数回のレーザ照射を回避し得る構成を見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、溶液中のターゲットにレーザ光を照射して該ターゲットの構成物質によるナノ粒子を生成させるナノ粒子生成装置であって、
前記ターゲットに向けて前記レーザ光を発生するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器からのレーザ光を前記ターゲットの表面上に集光照射させると共に走査させるレーザヘッドと、
前記溶液で満たされると共に前記ターゲットが該溶液中に載置されるナノ粒子生成室が内部に設けられ、前記ナノ粒子生成室の内部へレーザ光を透過させるレーザ透過ウィンドウを有する加圧容器と、
前記加圧容器へ前記溶液を供給する溶液供給手段と、を備え、
前記加圧容器は、前記溶液供給手段によって供給される溶液を前記ナノ粒子生成室へ導入する供給流路と、前記ナノ粒子生成室から前記加圧容器の外部へ生成されたナノ粒子と共に前記溶液を排出する排出流路と、を備え、
前記溶液供給手段は、前記溶液を予め定められた圧力値に加圧する加圧手段を備え、
前記ナノ粒子生成室は、前記ターゲットの上方に前記レーザ透過ウィンドウまで予め定められた高さを有する直方体形空間と、この直方体形空間の下部の互いに対向する位置で前記供給流路と前記排出流路とにそれぞれ連通する同一形状の供給口と排出口とを備え、これら供給口と排出口は、前記ターゲットの上面で前記供給口から前記排出口へ向かう前記溶液の直線的流れが形成されるものである。
前記ターゲットに向けて前記レーザ光を発生するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器からのレーザ光を前記ターゲットの表面上に集光照射させると共に走査させるレーザヘッドと、
前記溶液で満たされると共に前記ターゲットが該溶液中に載置されるナノ粒子生成室が内部に設けられ、前記ナノ粒子生成室の内部へレーザ光を透過させるレーザ透過ウィンドウを有する加圧容器と、
前記加圧容器へ前記溶液を供給する溶液供給手段と、を備え、
前記加圧容器は、前記溶液供給手段によって供給される溶液を前記ナノ粒子生成室へ導入する供給流路と、前記ナノ粒子生成室から前記加圧容器の外部へ生成されたナノ粒子と共に前記溶液を排出する排出流路と、を備え、
前記溶液供給手段は、前記溶液を予め定められた圧力値に加圧する加圧手段を備え、
前記ナノ粒子生成室は、前記ターゲットの上方に前記レーザ透過ウィンドウまで予め定められた高さを有する直方体形空間と、この直方体形空間の下部の互いに対向する位置で前記供給流路と前記排出流路とにそれぞれ連通する同一形状の供給口と排出口とを備え、これら供給口と排出口は、前記ターゲットの上面で前記供給口から前記排出口へ向かう前記溶液の直線的流れが形成されるものである。
以上の構成においては、溶液供給手段によって溶液を特定の圧力値に加圧してナノ粒子生成室内へ導入しながらレーザアブレーションすることができ、しかもターゲット上のナノ粒子生成室に対向する供給口と排出口とを備えることで、供給口から加圧導入された溶液が、排出口へとターゲット上の直方体形空間を形成している平行に対面する側壁内面の間を通って直線的に速やかに流される。従って、ターゲット上でレーザアブレーションによって生成されたナノ粒子は、ナノ粒子生成室内に滞留することなく、且つターゲット表面に蓄積されることも無く、直ちに回収側へ排出されるため、レーザ光の複数回の照射が回避され、レーザ光の散乱も防止される。
また、本発明では、ナノ粒子生成室内の溶液は加圧されているため、溶液中に発生するキャビテーションバブルの成長を抑制することができる。したがって、ナノ粒子生成の後に成長、肥大化したキャビテーションバブルによるレーザ光の散乱が低減され、ナノ粒子の生成効率の向上に寄与する。
なお、本発明において、ナノ粒子生成室の直方体形空間は、レーザ透過ウィンドウまで予め定められた高さを有するものである。この直方体形空間は、ターゲット表面を底面としてその上部空間が所定高さの四側壁面に囲まれて形成されるものであり、レーザ透過ウィンドウの下面が天井面となる。直方体形空間が高くなるほど、生成したナノ粒子が上昇して滞留しやすくなり、デッドボリュームが増える。この点に鑑み、高さはできるだけ低くして供給口および排出口の高さ程度にまで抑えることが理想である。一方、レーザ光のパワー密度がターゲットに近いほど高くなり、レーザ透過ウィンドウがパワー密度の高い位置にあるとレーザ光に加工されて破損するおそれがあることから、これを防ぐことのできる距離をターゲットの上方空間で確保するために必要な高さが直方体形空間に設定される。但し、同じ高さ位置でもレーザ集光角が小さいほどエネルギー密度が高くなることから、レーザ集光角をできるだけ大きく設定することでレーザ透過ウィンドウの耐熱に必要な高さ距離を抑えることができる。そして、用いるレーザ透過ウィンドウの耐熱性に応じて直方体形空間の高さを設定できることから、より耐熱性が高いものをレーザ透過ウィンドウとして選択することで直方体形空間の高さをより低く設定できる。例えばサファイヤガラスであれば、前記高さは10mm以下となる。この高さは、キャビテーションバブル内で生成された粒子が崩壊とともに飛散した際のレーザ透過ウィンドウへの粒子付着等の影響を回避するのにも十分である。
また、供給口および排出口の形状設計は、流速を上げて排出性を高めるため、溶液流れ方向に対して直交する方向の幅寸法よりも高さ寸法を小さくした横長形状とする。この場合、横長長方形状とすればよいが、そのほか横長の楕円形状でも可能である。また、これらの供給口および排出口の長手方向の幅寸法によって、供給口から排出口への直線的な高速流れの幅が決定されるが、ナノ粒子生成室内のデッドボリュームをできるだけ小さく抑える設計とすることが望ましい。即ち、直線的流れの幅が、実質的にターゲット表面上を走査するレーザ光の照射範囲の幅に一致することが最も効率的であるため、供給口及び排出口の溶液流れ方向に直交する長手方向の内幅を当該レーザ光照射範囲の幅と合致させれば良い。
また、加圧容器の下流に、排出口に連通する排出流路から排出される排出液中のナノ粒子を回収する濾過フィルタを配置することによって生成されたナノ粒子を回収できる。さらに、ナノ粒子回収後の排出液を供給容器へ戻す帰還管路を備えることによって、濾過後の溶液を供給容器に戻して再利用することができる。
なお、本発明の溶液供給手段には、溶液の供給源としての供給容器と、供給容器内の溶液中の溶存酸素を不活性ガスで置換する不活性ガス供給装置とを備えることが望ましい。これによって、加圧容器へ供給する前の溶液に、供給容器中で不活性ガスバブリングを行い、溶液中の溶存酸素を低減させておけば、レーザアブレーションによって生成されたナノ粒子の溶液による酸化を防止することができる。なお、供給容器は密閉構造とするため、溶液から抜けた酸素や水分を供給容器外に排出する機能を備えておけばよい。また、不活性ガスバブリングの脱気と脱水効率を高める撹拌機能や、溶液を加熱する加熱機能を備えてもよい。
また、磁性体ナノ粒子を生成する場合、排出流路の下流に、排出液から磁性体ナノ粒子を磁気分離して回収、選別する磁性体ナノ粒子回収機構を備えることによって、高飽和磁化を有する磁性体ナノ粒子を効率的に選別して回収することができる。
磁性体ナノ粒子用の回収機構としては、排出流路に連通し、磁性体ナノ粒子を含む排出液が通過する回収用チューブと、この回収用チューブの外周に該回収用チューブの軸方向に沿った所定領域にわたって着脱可能に装着されたリング状磁石とを備えているものが簡単な構成として好ましい。
この磁性体ナノ粒子回収機構によれば、回収用チューブ内を排出液が通過する間に、周囲の磁石の磁力によって磁性体ナノ粒子がチューブ壁面に誘導吸着されるので、排出液通過後にリング状磁石を取り外すだけでチューブ壁面に吸着されていた磁性体ナノ粒子は脱落し、チューブ下方で高飽和磁化の磁性体ナノ粒子のみを回収することができる。また、、磁性体ナノ粒子回収機構を通過した後の排出液は、その下流に配置された濾過フィルタによって、先の回収機構で回収されていないナノ粒子を濾過回収することができる。
さらに、磁性体ナノ粒子生成に適応した加圧容器として、該加圧容器の外壁面から直方体形空間の上方領域での粒子生成室の側壁内面付近まで取り外し可能に挿入される磁性ロッドをさらに備える構成とすることによって、ナノ粒子生成室内から排出されずに残っている磁性体ナノ粒子に対する複数回のレーザ照射をより効果的に回避することができる。即ち、この磁性ロッドを加圧容器に挿入して直方体形空間上方の側壁内面付近に配置すれば、直方体形空間内で生成された磁性体ナノ粒子のうち、前記直線的流れから外れてその上方領域に浮上してしまったものを、前記側壁内面上に磁性ロッドによって誘導吸着させて、レーザ光の照射範囲外へ退避させることができる。これによって、直方体形空間の上方領域に残った磁性体ナノ粒子への複数回のレーザ照射およびレーザ光の散乱を回避することができる。
上記の磁性ロッドは、レーザアブレーション工程が終了した時点で加圧容器から抜いて取り外せば、直方体形空間の上方領域の側壁内面上に吸着されていた磁性体ナノ粒子は溶液中に戻り、加圧容器外へ溶液と共に排出され、回収工程へ進むことができる。
以上の構成を備えた本発明のナノ粒子生成装置によるナノ粒子生成方法としては、まず、前記加圧容器のナノ粒子生成室内にターゲットを載置して密閉した後、前記溶液供給手段によって前記加圧容器へ溶液を供給し、前記ターゲットが載置された前記ナノ粒子生成室の空気を抜いて溶液で満たす準備工程と、
前記加圧手段によって前記溶液を10〜100MPaの圧力値に加圧しながら前記ナノ粒子生成室へ供給し、前記直方体形空間の前記供給口から前記排出口への溶液の直線的流れを形成した状態にて、前記レーザヘッドを制御して前記レーザ光発振器からのレーザ光を前記ターゲットの表面上に集光照射させると共に走査させてターゲットの構成物質によるナノ粒子を生成させるレーザアブレーション工程と、
前記ナノ粒子生成室から前記排出流路を介して前記加圧容器の外部へ排出された溶液から磁性体ナノ粒子を回収する回収工程と、を備えたものである。
前記加圧手段によって前記溶液を10〜100MPaの圧力値に加圧しながら前記ナノ粒子生成室へ供給し、前記直方体形空間の前記供給口から前記排出口への溶液の直線的流れを形成した状態にて、前記レーザヘッドを制御して前記レーザ光発振器からのレーザ光を前記ターゲットの表面上に集光照射させると共に走査させてターゲットの構成物質によるナノ粒子を生成させるレーザアブレーション工程と、
前記ナノ粒子生成室から前記排出流路を介して前記加圧容器の外部へ排出された溶液から磁性体ナノ粒子を回収する回収工程と、を備えたものである。
以上のように10〜100MPaという所定の圧力値の範囲内で溶液を加圧してナノ粒子生成室へ供給することによって、ナノ粒子生成室のターゲットの上方の直方体形空間では、長方形状の供給口から排出口へ向けて加圧された溶液が高速で直線的に流れ、レーザアブレーションによって生成されたナノ粒子はその直線的流れに伴って直ちに排出される。また、ナノ粒子生成室内の溶液は加圧されているため、レーザアブレーション工程中に発生するキャビテーションバブルの成長を抑制し、レーザ光の散乱を低減することができる。溶液を加圧する圧力値は、高いほどキャビテーションバブルを抑制することはできるが、現実的な問題としてレーザ透過ウィンドウの耐圧設計に基づいて上限を100MPaとする。また、10MPa以上であれば、キャビテーションバブルの成長(肥大化)を抑制することが可能である。
また、準備工程には、さらに不活性ガスバブリング工程を設け、加圧容器へ供給する前の溶液に対して撹拌しながら不活性ガスを供給して溶存酸素を不活性ガスで置換することによって、効率的に溶液中の溶存酸素を低減できる。この際、供給容器に設けられた排出配管等の機能によって、溶液から抜けた酸素や水分を供給容器外へ排出すればよい。
本発明に用いる溶液としては、生成されたナノ粒子の酸化を防止すると共に分散効果があるものが望まれる。例えば、予めアルコールやメルカプタン類の溶液を沸点付近まで加熱処理しておいたものが好ましい。さらに、界面活性剤と組み合わせて使用することも望ましい。溶液には、テトラエチレングリコール、エチレングリコールなどのアルコールや、1−ドデカンチオール、1−オクタンチオールなどのメルカプタン類、あるいはオレイン酸などの不飽和脂肪酸、またはアルキルナフタレインなどが使用される。これらのうち、テトラエチレングリコールおよびエチレングリコールなどのポリオールは、沸点付近まで加熱する際の化学反応によってナノ粒子の表面に分散性を付与する保護膜を形成する。また、1−ドデカンチオールおよび1−オクタンチオールは、界面活性剤と組み合わせることによって非常に高い分散効果が得られる。以上のような加熱した溶液を用いることによって、その溶液中では生成されたナノ粒子の急冷が回避され、結晶構造が維持される。従って、特に磁性体ナノ粒子を生成する場合、良好に高飽和磁化ナノ粒子が得られる。
本発明に用いるターゲットは、磁性体ナノ粒子となる構成物質を提供するものとしては、強磁性体ではあるが、着磁していないものとすることが望ましい。着磁有りのターゲットの場合、生成された磁性体ナノ粒子がターゲットに誘導付着されてしまい、これが蓄積すると、ターゲット表面へレーザ光照射を阻害する原因になる恐れがあるためである。さらに、ターゲットは表面処理を施されていないものとする。これは、表面処理成分がコンタミネーションとなることを防ぐためである。
本発明によるナノ粒子生成装置においては、ターゲット上方のナノ粒子生成室の直方体形空間で、レーザアブレーションにより生成されたナノ粒子は、ナノ粒子生成室の直方体形空間内を同一形状の供給口から排出口へ高速で直線的に流れる溶液によって、ナノ粒子生成室内に滞留することなく直ちに回収側へ排出されるため、粒径の肥大化と生成効率の低下の原因となる複数回のレーザ照射が回避されるという効果がある。また、磁性体ナノ粒子の生成の場合には、この複数回のレーザ照射の回避によって、結晶構造の非晶質化による飽和磁化の低下を防ぐ効果もある。
本発明の第1の実施形態としてのナノ粒子生成装置を図1に示す。図1(a)は装置全体を示す概略構成図であり、各要部を縦断面図で示している。図1(b)は、加圧容器の正面断面図、(c)は加圧容器のA−A断面矢視図である。
本実施形態によるナノ粒子生成装置1は、レーザ発振器3から放射されたレーザ光Lを加圧容器7内に載置されたターゲットTに向かって集光照射すると共にターゲットTの表面上を走査させるレーザヘッド2を備えている。レーザ発振器3は、冷却水循環装置(チラー)4によって温度管理されており、また制御部としてのパソコン5によるコントローラ6の操作によって制御される。
レーザヘッド2は、ガルバノスキャナ2aと集光レンズ2bとで構成されている。ガルバノスキャナ2aは、対応する各モータの回転角度制御によって、X軸、Y軸の各レーザー光反射鏡の角度調整がなされるものであり、ガルバノスキャナ2aのこれら反射鏡と集光レンズ2bを介して、レーザ発振器3から入射されたレーザ光をターゲットT上の所望位置に集光照射させ且つ走査させることができる。
ターゲットTは、加圧容器7の内部に形成されるナノ粒子生成室8内の底部に載置される。加圧容器7は、中央に凹部を有する容器下部7bに対して容器上部7aが蓋状に嵌合して覆うことによって、前記凹部の上部開口が密閉されナノ粒子生成室8が形成される。
加圧容器7には、液中レーザアブレーション用溶液としての溶液Sをナノ粒子生成室8内へ導入するための供給流路10と、ナノ粒子生成室8から溶液Sを加圧容器7の外部へ排出する排出流路11が形成されている。また、容器上部7aの上面には、レーザ光Lをナノ粒子生成室8内のターゲットTまで透過させるレーザ透過ウィンドウ9が設けられている。
なお、ナノ粒子生成室8は、円筒状の凹部から形成されているが、円筒内でターゲット上方に直方体形空間8aを形成すると共に、該直方体形空間8aにそれぞれ供給流路10と排出流路11とに連通する横長の長方形状を有する供給口13と排出口14とを対向して設けるためのカラー部材12が嵌め込まれている。即ち、カラー部材12は、前記凹部の円筒状に嵌合する外形状で内部に直方体形状の空間を備えたものである。そして下端縁の対向する位置に、直方体形状の内部空間に連通する一対の横長長方形状の切欠き部が形成されている。従って、この一対の切欠き部が供給流路10と排出流路11との開口に当接する位置でカラー部材12が前記凹部に嵌め込まれることによって、前記一対の切欠き部が供給口13と排出口14となる。
このような対向する横長長方形状の供給口13と排出口14とを備えた直方体形空間8aという構成は、レーザアブレーションにより生成されたナノ粒子を、さらにレーザ照射が複数回なされることを回避すべく速やかにナノ粒子生成室8から排出させるために、その構造を改良、検証、反映を繰り返して到達したものである。
ここで、本実施形態による上記直方体形空間8aを備えた加圧容器7における溶液流れの流体解析の結果を図2に示す。比較対象として、図3に本実施例の構造に達する前の改良途中の加圧容器47における流体解析の結果を図3の(b)、(c)に示す。なお、これら図2と図3は、水を使用した場合の解析結果を代表例として示した。レーザアブレーションに使用される各種アルコール溶液の場合も、粘度による速度の違いが若干生じるがその流れの傾向は同じである。解析時の流体条件は、共に圧力が30MPaで流量が200mL/minである。また、本実施例においては、レーザ透過ウィンドウ9を耐熱の高いサファイヤガラスとし、直方体形空間8aのターゲット表面からレーザ透過ウィンドウ9までの高さHを5mmとしたものである。また、長方形状の供給口13および排出口14の位置をターゲット表面上のレーザ光照射範囲に合わせると共に、レーザ光照射範囲の幅が3mmであるため、供給口13および排出口14の長手方向の内幅Wも3mmに合致させた。さらに、供給口13および排出口14の高さを1mmと低くしてより流速を高める寸法設計とした。
一方、比較対象である図3の加圧容器47においては、図1の加圧容器7と共通する構成部分には同じ符号を付している。いずれの加圧容器も供給流路と排出流路は口径が3mmの円管路である。また、改良前の加圧容器47は、円筒状のナノ粒子生成室8内の底部にターゲットTが載置されるものであるが、供給流路10が直接水平方向で連通されておらず、ナノ粒子生成室8の上部に嵌め込まれているレーザ透過ウィンドウ9の下方に形成された円盤状空間8bに、上向き導入孔10aを介して連通している。これは、加圧供給される溶液を上方から下方へ向かう流れを形成することで、生成粒子がレーザ光透過ウィンドウ9付近に舞い上がらないようにすることを意図した構成である。この意図的な流れによって、単なる円筒状のナノ粒子生成室内の一方から他方へ向けた溶液供給での内壁の曲面に沿った回転流れによる滞留を回避し、ナノ粒子の浮上を防止しようとした。
しかし、図3のナノ粒子生成室内における流体解析では、上方からターゲットT表面に向かった流れは、ターゲットTの表面から上昇し、縦方向の回転流れが形成されており、排出性の向上は見られなかった。これに対し、本実施例によるナノ粒子生成室8のターゲット上の直方体形空間8aにおいては、横長で高さの低い長方形状の供給口13から対向する同形状の排出口14へ向けて直線的な高速流れが形成され、溶液の排出性に大幅な改善が見られた。
以上の流体解析結果に示されたように、本実施形態における横長長方形状の対向する供給口13と排出口14を有する直方体形空間8aを備えたナノ粒子生成室8の構成によって、供給流路10からナノ粒子生成室8へ加圧して供給された溶液Sは、ターゲットT上の直方体形空間8a内で形成される供給口13から排出口14へと向かう直線的な高速流れによって、レーザアブレーションで生成されたナノ粒子をナノ粒子生成室8内に殆ど滞留させることなく速やかに回収側へ排出させることができる。なお、直方体形空間8aの高さは、レーザ透過ウィンドウの耐熱性強度が許せば、できるだけ供給口13および排出口14の高さに近づけてデッドボリュームを抑えることが望ましい。
加圧容器7の上流側には、溶液供給手段として、供給流路10に連通する供給管路30と、溶液Sが収容された溶液供給源としての供給容器16とが設置されている。そして、この供給管路30には、供給容器16から供給流路10を介してナノ粒子生成室8へ溶液Sを送り出すためポンプPを備えている。このポンプPはまた、ナノ粒子生成室8を満たす溶液Sを加圧する加圧手段として機能するものである。
また、供給容器16には、加圧容器7へ供給する前に、溶液Sに対して不活性ガスバブリングを行う不活性ガス供給装置17が設けられている。また、不活性ガスバブリング工程の間、供給容器16内の溶液Sを撹拌する撹拌手段として、供給容器16下方のホットスターラー15aと溶液S中に投入される撹拌子15bとを用いている。なお、供給容器16は密閉構造であり、溶液Sから抜かれた酸素および水分を供給容器外へ排出するための酸素・水分排出用配管33が設けられている。
加圧容器7の下流側には、排出流路11に連通するバルブ24付きの排出管路31を介して粒径50nm未満である小粒径のナノ粒子Nを回収する濾過フィルタ26が接続されている。さらに濾過フィルタ26の下流側を供給容器16に連通させる帰還管路32が設置されており、溶液Sが供給容器16を出て最終的に供給容器16へ戻る循環経路が形成されている。なお、排出管路31には、濾過フィルタ26による小粒径ナノ粒子の回収の前に粒径50nm以上の粗大粒子を除去するための粗大粒子用フィルタ25を配置することが好ましい。
本発明の第2の実施形態として、磁性体ナノ粒子を生成する際のナノ粒子生成装置40の例を図4に示す。このナノ粒子生成装置は、図1に示したナノ粒子生成装置1の構成を基本とし、磁性体ナノ粒子回収機構20をさらに備えたものである。よって、図4中、図1と共通する部分は同一符号を付した。
即ち、本実施形態においては、排出管路31の濾過フィルタ26および粗大粒子用フィルタ25の上流に、磁性体ナノ粒子回収機構20が配置されている。この磁性体ナノ粒子回収機構20は、排出管路31に接続される回収用チューブ21と、この回収用チューブ21の外周に、該回収用チューブ21の軸方向に沿った所定領域にわたって装着されたリング状磁石22とから構成されている。
リング状磁石22は、複数個を回収用チューブ21の中心軸と同軸上に配置されている。これらリング状磁石22は、回収用チューブ21外周に着脱可能な構成とする。レーザアブレーション工程後のナノ粒子生成室8から生成された磁性体ナノ粒子Mを含む溶液Sが排出されて回収用チューブ21を通過する間は装着されるものであり、その後、取り外される。
なお、磁性体ナノ粒子回収機構20を通過した溶液Sは、濾過フィルタ26によって、磁性体ナノ粒子回収機構20で回収されなかったナノ粒子Nが取り除かれ、濾過された溶液Sは帰還管路32を進んで供給容器16へ戻る。なお、濾過フィルタ26で回収されたナノ粒子Nの中に高飽和磁化の磁性体ナノ粒子が存在する可能性がある場合、これを回収・分離するための別の手段をさらに備える構成とすれば良い。
また、直方体形空間8aの高さが比較的大きくなる設計においては、その上方領域に、直線的な溶液流れから外れて浮上した磁性体ナノ粒子が滞留することがある。そこで、図5に示すように、加圧容器7を、その外壁面からナノ粒子生成室8の側壁内面付近まで一本以上の磁性ロッド19をそれぞれ挿脱可能に挿入できる構成として、該磁性ロッド19によって上方領域に浮上した磁性体ナノ粒子を側壁内面に吸着退避させても良い。この場合、下部容器に、磁性ロッド19が挿入される一つ以上の挿入孔18を穿設しておく。磁性ロッド19は、実際に挿入孔18内に挿入されるロッド部19aとロッド部19aの後端部に取り付けられた挿入孔18外の磁石19bとで構成できる。
これら磁性ロッド19は、レーザアブレーション工程中に移動してロッド部19aが挿入孔18に挿入されて直方体形空間8aの上方領域の側壁内面近くに配置されることで、上記の直方体形空間8a内で、直線的な溶液流れから外れて浮上した磁性体ナノ粒子を、直方体形空間8aの上方領域の側壁内面に吸着させてレーザ照射領域外へ退避させることができる。レーザアブレーション工程の終了時に挿入孔18からロッド部19aを加圧容器7外へ抜き出すことによって、側壁内面に吸着退避されていた磁性体ナノ粒子を解放し、磁性体ナノ粒子生成室8内に残っていた溶液Sと共に排出して回収することができる。
図4で示す構成を備えた磁性体ナノ粒子生成装置40による一連の磁性体ナノ粒子Mの生成工程の例を以下に説明する。なお、生成直後の磁性体ナノ粒子は、急冷されると非晶質になってしまうため、図4での表示は省いたが、少なくともレーザアブレーション工程中のナノ粒子生成室8内での急冷を防ぐことができるように、ナノ粒子生成室8内の温度を望ましくは200度以上に維持するための加熱手段を設けておくことが好ましい。例えば、加圧容器の下方に設置したホットプレートや、下部容器のナノ粒子生成室8周辺にヒータや加熱蒸気を流す機構を設けて加熱する構成が採用できる。また、ナノ粒子生成室8へ供給する前に溶液を加熱しておいてもよい。
まず、準備工程として、加圧容器7の容器下部7bのナノ粒子生成室8となる円筒状の凹部の底部にターゲットTを載置する。ターゲットTは、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、ガドリニウム、マンガン、或いは希土類元素を含む合金系などの着磁していない磁性体であり、ニッケルメッキ等、何ら表面処理成分が付着されていない金属プレートである。このターゲットTの設置後、容器下部7bの凹部に嵌合する円筒状の外形状で内側に筐体形状を備えたカラー部材12を該凹部に嵌め込んで、ターゲットTの上方に直方体形空間8aを形成し、対向する横長長方形状の供給口13と排出口14とを供給流路10と排出流路11に連通させる。さらにカラー部材12の上にレーザ透過ウィンドウ9を載置してから、容器下部7bに容器上部7aを被せて前記凹部開口を密閉することによって、ナノ粒子生成室8が加圧容器7の内部に固定される。
一方、供給容器16内の溶液Sに対しては、スターラー15aと撹拌子15bによって撹拌しながら不活性ガス供給装置17により不活性ガスを供給する不活性ガスバブリング工程を20分間行う。これによって、効率良く溶液Sの溶存酸素を不活性ガスで置換できる。この溶存酸素の低減により、後に生成される磁性体ナノ粒子Mの酸化が防止できる。
なお、加圧容器7へ供給する溶液Sとして、加熱処理済みのアルコール溶液を用いる場合、スターラー15aをホットスターラーとして、この準備工程にて供給容器16内のアルコール溶液を沸点付近まで加熱処理しておく。溶液Sとしてテトラエチレングリコールまたはエチレングリコールなどのポリオール溶液を用いる場合、沸点付近まで加熱する際の化学反応によって磁性体ナノ粒子の表面に分散性を付与する保護膜を形成する。あるいは、1−ドデカンチオールまたは1−オクタンチオールの溶液を用いる場合には、さらに界面活性剤を組み合わせることによって非常に高い分散効果が得られる。
以上のように、ターゲットTの設置とナノ粒子生成室8の固定、不活性ガスバブリング工程および加熱処理が終了した後、ポンプPを駆動して溶液Sを供給管路30を介して加圧容器7の供給流路10へ送り出す。このとき、排出側のバルブ24を開として、ナノ粒子生成室8から排出流路11を経てバルブ24まで溶液Sが達すると、ナノ粒子生成室8は空気が抜かれて完全に溶液Sで満たされる。
以上の準備工程の後、レーザアブレーション工程を開始する。この時、ポンプPの駆動によって溶液Sに対して加圧する加圧工程も開始とする。この加圧は、10MPa以上で100MPaを上限とする。ナノ粒子生成室8の直方体形空間8a内に溶液Sが連続的に加圧供給され、供給口13から排出口14へ向かう直線的な高速流れが形成される。
溶液Sの加圧供給状態を維持しながら、ターゲットTへのレーザ照射を行い、実際のレーザアブレーションを行う。レーザ光Lの条件は、良好に液中レーザアブレーションができるものであれば良いが、まず、ナノ秒より短いパルス幅のパルスレーザとするのが望ましい。本実施例においては、パルス周波数を10〜100kHz、好ましくは20Hzとし、パルス幅を最長50ns、好ましくは20nsとし、またパルスエネルギーを50〜1000μJ、好ましくは500μJに設定した。
またレーザ光Lの照射は、加圧容器7の上方から、加圧容器7上面のレーザ透過ウィンドウ9を通過させてナノ粒子生成室8内のターゲットT表面に集光する垂直下方向での照射とする。そしてレーザヘッド2としてのガルバノスキャナの制御によって、ターゲットT表面に集光されたレーザ光スポットを、ターゲットTの表面上に所定速度で走査させる。
以上のレーザアブレーション工程においては、ナノ粒子生成室8内で、ターゲットT表面から構成物質が放出され、磁性体ナノ粒子Mが生成されてくる。生成された磁性体ナノ粒子Mは、直線的な高速流れによって滞留することなく殆ど排出口14へ排出されていく。なお、レーザアブレーションによって溶液S中にはキャビテーションバブルも発生するが、溶液Sは加圧されているため、レーザアブレーションバブルの成長は抑制され、レーザ光の散乱を低減できる。したがって、ターゲットT上で生成した磁性体ナノ粒子Mが複数回レーザ照射されることも、レーザ光の散乱も回避されるため、粒径の肥大化やナノ粒子生成効率の低下を抑えられる。
以上のように、レーザアブレーションによって生成された磁性体ナノ粒子Mを伴って排出されてくる溶液Sは、排出液として排出流路11から排出管路31へ排出され、磁性体ナノ粒子回収機構20へ送られる。そして、回収工程として、磁性体ナノ粒子回収機構20において、回収用チューブ21を通過する間、排出液中の磁性体ナノ粒子Mが、リング状磁石22に磁力によって誘導され、回収用チューブ21の側壁面に吸着する。即ち、レーザアブレーション工程の開始と同時に、回収工程も開始されており、予め排出側の磁性体ナノ粒子回収機構20において、回収用チューブ21の外周にリング状磁石22を装着しておく。
そして磁性体ナノ粒子生成工程が所定時間経過した時点で、レーザ光Lの照射を停止し、磁性体ナノ粒子生成室8内に残った磁性体ナノ粒子を含んだ溶液Sを全て排出させ、ナノ粒子生成室8への溶液Sの加圧供給を停止することによって、レーザアブレーション工程を終了とする。
回収工程では、排出液から磁性体ナノ粒子Mが回収用チューブ21の側壁に吸着される一方、磁性体ナノ粒子Mが取り除かれた溶液Sは、まず、粗大粒子用フィルタ25によって粒径50nm以上の粗大粒子が取り除かれた後、次の濾過フィルタ26で濾過された後、帰還管路32を介して供給容器16へ戻される。濾過フィルタ26では、磁性体ナノ粒子回収機構20で回収されなかったナノ粒子Nが回収される。この中に、より粒径の小さい高飽和磁化の磁性体ナノ粒子が含まれている場合には、さらに別の磁気分離機構等の回収手段によって回収・分離すれば良い。
一方、回収用チューブ21の側壁面に磁性体ナノ粒子Mが吸着された磁性体ナノ粒子回収機構20では、回収用チューブ21の外周からリング状磁石22が取り外される。これによって、磁性体ナノ粒子Mは、回収用チューブ21の側壁面から離脱し、回収用チューブ21内を落下して、回収用チューブ21の下方の回収容器23に回収される。
また、加圧容器7においては、次回の準備工程が開始されて新たな溶液Sが供給される。したがって、前回のレーザアブレーション工程によって生成された磁性体ナノ粒子Mが回収された後、再度回収用チューブ21の外周にリング状磁石22が装着されれば、次回のレーザアブレーション工程を開始でき、レーザ光の散乱や複数照射のない磁性体ナノ粒子の生成が効率的に続けられる。
以上の実施例において回収された磁性体ナノ粒子Mは、磁性体ナノ粒子生成室からの排出性の向上によって、従来のものに比べ、生成された磁性体ナノ粒子に対する複数回のレーザ照射が回避され、粒径の均一性に寄与することができた。
なお、図5に示すように下部容器に外壁面から内部側へ挿入可能な磁性ロッド19を備えた構成の場合には、レーザアブレーション工程の開始と同時に、各磁性ロッド19のロッド部19aを対応する各挿入孔18内に挿入して、各ロッド部19aの先端を直方体形空間8aの上方領域の側壁内面付近に配置する。これによって、生成された磁性体ナノ粒子Mのうち、直線的流れから外れて直方体形空間8aの上方領域に浮上したものは、磁性ロッド19によって直方体形空間8aの上方領域の側壁内面に誘導吸着されるため、レーザ照射領域に滞留したりターゲットT表面に蓄積したりせず、レーザ光を散乱させて磁性体ナノ粒子生成を阻害することはない。
レーザアブレーション工程が所定時間経過し、レーザ光Lの照射を停止する際に、各磁性ロッド19のロッド部19aを挿入孔18から抜き出し、加圧容器7から磁性ロッド19を取り外す。これによって、直方体形空間8aの上方領域の側壁内面に吸着されていた磁性体ナノ粒子Mは、溶液S中に戻るため、ナノ粒子生成室8への溶液Sの加圧供給を停止し、磁性体ナノ粒子生成室8内に残った溶液Sを全て排出させる際に、磁性ロッド19による吸着から解放された磁性体ナノ粒子Mも共に排出され、回収工程で回収することができる。
以上のように、ナノ粒子生成装置40の加圧容器において磁性ロッド19を利用した場合には、複数回のレーザ照射を回避された磁性体ナノ粒子の回収率を向上させることに寄与すると共に、直方体形空間8a上方に浮上してしまった磁性体ナノ粒子によるレーザ照射の散乱等の悪影響も排除できる。
1,40:ナノ粒子生成装置
2:レーザヘッド
2a:ガルバノスキャナ
2b:集光レンズ
3:レーザ発振器
4:チラー
5:パソコン(制御部)
6:コントローラ
7,47:加圧容器
7a:容器上部
7b:容器下部
8:ナノ粒子生成室
8a:直方体形空間
9:レーザ透過ウィンドウ
10:供給流路
11:排出流路
12:カラー部材
13:供給口
14:排出口
15a:ホットスターラー
15b:撹拌子
16:供給容器
17:不活性ガス供給装置
18:挿入孔
19:磁性ロッド
19a:ロッド部
19b:磁石
S:溶液
P:ポンプ
L:レーザ光
N:ナノ粒子
M:磁性体ナノ粒子
20:磁性体ナノ粒子回収機構
21:回収用チューブ
22:リング状磁石
23:回収容器
24:バルブ
25:粗大粒子用フィルタ
26:濾過フィルタ
30:供給管路
31:排出管路
32:帰還管路
33:酸素・水分排出用配管
2:レーザヘッド
2a:ガルバノスキャナ
2b:集光レンズ
3:レーザ発振器
4:チラー
5:パソコン(制御部)
6:コントローラ
7,47:加圧容器
7a:容器上部
7b:容器下部
8:ナノ粒子生成室
8a:直方体形空間
9:レーザ透過ウィンドウ
10:供給流路
11:排出流路
12:カラー部材
13:供給口
14:排出口
15a:ホットスターラー
15b:撹拌子
16:供給容器
17:不活性ガス供給装置
18:挿入孔
19:磁性ロッド
19a:ロッド部
19b:磁石
S:溶液
P:ポンプ
L:レーザ光
N:ナノ粒子
M:磁性体ナノ粒子
20:磁性体ナノ粒子回収機構
21:回収用チューブ
22:リング状磁石
23:回収容器
24:バルブ
25:粗大粒子用フィルタ
26:濾過フィルタ
30:供給管路
31:排出管路
32:帰還管路
33:酸素・水分排出用配管
Claims (11)
- 溶液中のターゲットにレーザ光を照射して該ターゲットの構成物質によるナノ粒子を生成させるナノ粒子生成装置であって、
前記ターゲットに向けて前記レーザ光を発生するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器からのレーザ光を前記ターゲットの表面上に集光照射させると共に走査させるレーザヘッドと、
前記溶液で満たされると共に前記ターゲットが該溶液中に載置されるナノ粒子生成室が内部に設けられ、前記ナノ粒子生成室の内部へレーザ光を透過させるレーザ透過ウィンドウを有する加圧容器と、
前記加圧容器へ前記溶液を供給する溶液供給手段と、を備え、
前記加圧容器は、前記溶液供給手段によって供給される溶液を前記ナノ粒子生成室へ導入する供給流路と、前記ナノ粒子生成室から前記加圧容器の外部へ生成された磁性体ナノ粒子と共に前記溶液を排出する排出流路と、を備え、
前記溶液供給手段は、前記溶液を予め定められた圧力値に加圧する加圧手段を備え、
前記ナノ粒子生成室は、前記ターゲットの上方に前記レーザ透過ウィンドウまで予め定められた高さを有する直方体形空間と、この直方体形空間の下部の互いに対向する位置で前記供給流路と前記排出流路とにそれぞれ連通する同一形状の供給口と排出口とを備え、これら供給口と排出口は、前記ターゲットの上面で前記供給口から前記排出口へ向かう前記溶液の直線的流れが形成されるものであることを特徴とするナノ粒子生成装置。 - 前記供給口と排出口は、高さに対して横幅の長い長方形状を有していること特徴とする請求項1に記載のナノ粒子生成装置。
- 磁性体ナノ粒子が生成された際に、前記ナノ粒子生成室から前記排出流路を介して排出された排出液から前記磁性体ナノ粒子を磁気分離して回収、選別する磁性体ナノ粒子回収機構を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のナノ粒子生成装置。
- 前記磁性体ナノ粒子回収機構は、前記排出流路に連通し、前記磁性体ナノ粒子を含む排出液が通過する回収用チューブと、この回収用チューブの外周に該回収用チューブの軸方向に沿った所定領域にわたって着脱可能に装着されたリング状磁石と、を備えていることを特徴とする請求項3に記載のナノ粒子生成装置。
- 前記磁性体ナノ粒子回収機構を通過した後の排出液から、回収されていない磁性体ナノ粒子を回収するフィルタ手段と、をさらに備えていることを特徴とする請求項4に記載のナノ粒子生成装置。
- 前記加圧容器は、磁性体ナノ粒子を生成する際に、該加圧容器の外壁面から前記直方体形空間の上方領域で側壁内面付近まで取り外し可能に挿入され、生成された磁性体ナノ粒子を前記レーザ光の照射範囲外へ吸着誘導する磁性ロッドを一本以上備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノ粒子生成装置。
- 前記溶液供給手段は、前記溶液の供給源としての供給容器と、供給容器内の溶液中の溶存酸素を不活性ガスで置換する不活性ガス供給装置と、を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のナノ粒子生成装置。
- 前記請求項1〜7のいずれか1項に記載のナノ粒子生成装置によるナノ粒子生成方法であって、
前記加圧容器のナノ粒子生成室内にターゲットを配置して密閉した後、前記溶液供給手段によって前記加圧容器へ溶液を供給し、前記ターゲットが載置された前記ナノ粒子生成室の空気を抜いて溶液で満たす準備工程と、
前記加圧手段によって前記溶液を10〜100MPaの圧力値に加圧しながら前記ナノ粒子生成室へ供給し、前記直方体形空間の前記供給口から前記排出口への溶液の直線的流れを形成した状態にて、前記レーザヘッドを制御して前記レーザ光発振器からのレーザ光を前記ターゲットの表面上に集光照射させると共に走査させてターゲットの構成物質によるナノ粒子を生成させるレーザアブレーション工程と、
前記ナノ粒子生成室から前記排出流路を介して前記加圧容器の外部へ排出された溶液からナノ粒子を回収する回収工程と、を備えていることを特徴とするナノ粒子生成方法。 - 前記準備工程は、前記加圧容器へ供給する前の溶液に対して撹拌しながら不活性ガスを供給して溶存酸素を不活性ガスで置換する不活性ガスバブリング工程をさらに備えていることを特徴とする請求項8に記載のナノ粒子生成方法。
- 前記溶液は、予めアルコールまたはメルカプタン類の溶液を沸点付近まで加熱処理したものであることを特徴とする請求項8又は9に記載のナノ粒子生成方法。
- 前記ターゲットは、着磁しておらず且つ表面処理されていない強磁性体であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のナノ粒子生成方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019095325A JP2020189263A (ja) | 2019-05-21 | 2019-05-21 | ナノ粒子生成装置および生成方法 |
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JP (1) | JP2020189263A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114054766A (zh) * | 2021-11-17 | 2022-02-18 | 广东工业大学 | 一种多尺寸纳米金属颗粒及其制备系统、制备方法和应用 |
-
2019
- 2019-05-21 JP JP2019095325A patent/JP2020189263A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114054766A (zh) * | 2021-11-17 | 2022-02-18 | 广东工业大学 | 一种多尺寸纳米金属颗粒及其制备系统、制备方法和应用 |
CN114054766B (zh) * | 2021-11-17 | 2023-08-04 | 广东工业大学 | 一种多尺寸纳米金属颗粒及其制备系统、制备方法和应用 |
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