JP2020189140A - 基板用コーティング - Google Patents

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Abstract

【課題】親水性コーティングを有する表面を有する、医療用デバイス等の基材、及び親水性コーティングの形成方法の提供。【解決手段】成分A及びB、並びに任意選択の成分C及びDの架橋コポリマーを含む親水性コーティングを有する表面を有する基材であって、成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性モノマーを含み、成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、成分Cが、存在する場合には、1つ以上のアルケン又はアルキン基を各々含む1種以上の有益な化学物質を含み、並びに成分Dが、チオール、アルケン及びアルキン基から独立に選択される2つ以上の官能基を各々含む1種以上の低分子量架橋剤を含み、1種以上の有益な化学物質を含む成分Eを任意選択的に含み、並びに親水性コーティングが、基材の表面に共有結合している基材。【選択図】図1

Description

本発明は、医療用デバイス、分析用デバイス、分離用デバイス、並びにメンブレン及びファブリックを含む他の産業用物品等の基材用の親水性コーティング、並びに係るコーティングの製造方法に関する。
カテーテル、ガイドワイヤー、リトラクタブルシース及びステント等の医療用デバイスは、一般的にデバイスの物理的性能の増大及び寿命の伸長を意図する表面コーティングを有する。特に興味深いのは、被覆デバイスに潤滑性も付与し得る親水性コーティングである。
潤滑性は、“滑りやすさ”又は“滑らかさ”の特性を記述する。潤滑性コーティングは、体内デバイスに対して特に有用であり、その潤滑性は、デバイスが体内に導入されそして動かされる際に摩擦力の低減をもたらし、その結果患者の安心を高め、また炎症及び組織損傷を低減させる。潤滑性コーティングは組成の点で異なるが、インビボの水性環境においての使用に関しては、係るコーティングは、通常親水性かつ可溶性である。摩擦の低減だけでなく、親水性コーティングはタンパク質付着に耐性がある傾向もあり、その結果それらは血栓症の低減又は除去をもたらす可能性を有する。親水性コーティング材料の例としては、米国特許第4642267号明細書及び米国特許第6461311号明細書に記載のように、ポリビニルピロリドン、ポリ(エチレンオキシド)及びポリウレタンをベースとするコーティングが挙げられる。
インビボでの使用に供する親水性、潤滑性コーティングの製造は、種々の困難を提示するだろう。係るコーティングは、しばしば有機溶媒を用いて調製され、その余剰量は、除去されて現在のガイダンス及び慣例に従う毒性の限界を下回る必要がある。コートされた医療用デバイスは、コーティングを化学的に及び/若しくは物理的に改変すること、又はデバイスから剥離することなく、殺菌処理に耐えることもできなければならない。
親水性コーティングを形成するための1つのアプローチは、基材の表面に必要な付着をもたらす担持ポリマーのネットワーク内に、機能的親水性ポリマーを物理的に捕捉することである。これらのコーティングは、しばしば相互侵入網目(IPNs)と呼ばれ、また一般的には、コーティング(この場合において親水性)に所望の特性を付与する第一の機能性ポリマー、及び架橋高分子網目を形成するために化学的に架橋している担持ポリマーからなる。国際公開第2008/130604号は、アクリル酸等のイオン性モノマーをポリエチレングリコール等の親水性高分子網目にちりばめること、次いで、水を吸って膨張した際に高い圧縮強度及び潤滑性のコーティングを形成するといわれているIPNを形成するために、イオン性モノマーを重合することにより形成するIPNを開示する。
しかし、化学的にコーティングに結合することではなく、IPN内に捕捉した親水性ポリマーを有することの不利は、親水性ポリマーがIPNの外に徐々にマイグレートする場合があることである。このため、コーティングは徐々に親水性を失うであろう。しかし、より重大なことには、体内のデバイスのコーティングからの係る粒状物の放出は、患者に対して健康上のリスクを課す場合がある。従って、多くの医療用デバイスに関して、粒状化の最小化は重要である。粒状化はIPNsに対してのみの懸念ではない―全てのポリマーコーティングが、表面上で、インビボで放出され得る粒状物を形成する可能性があることに留意されたい。
コーティングの表面由来の粒状物/凝集体のインビボでの放出(粒状化として知られる)は、デザイン及びコーティングの製造、層間剥離を介したコーティングそれ自体の除去又は基材からの分離において難しさを与える場合がある一方で、上述した健康上のリスク及びコーティングの耐久性の観点両方の問題の可能性もある。
耐久性を考慮すると、コーティングはコーティングの基材の段階的な浸食、及び/又は基材の表面からコーティングが分離されることのいずれかにより、基材から除去される可能性がある。従って、コーティングの耐久性を向上させるための1つの方法は、コーティングと基材の表面との間の結合を強化することである。これは、とりわけ、コーティングと表面との間のより良好な接着を達成するために、表面を処理してプライマーでコートすることにより実現することができる。
理想的なプライマーは、任意の基材に普遍的に適用することができるものである。この点において、アルカリ性のpHに緩衝化したドーパミンの希薄水溶液中における基材の単純浸漬が、基材上にポリドーパミン薄膜の自発的な堆積をもたらすという発見以来、プライマーとしてのポリドーパミンの使用は、多くの注目を集めてきた。Messersmithら(Science、2007、318、第426‐430頁)は、ポリドーパミンコーティングを、金属、金属酸化物、セラミックス、合成ポリマー及び広範な他の親水性及び疎水性の材料を包含する事実上の任意のタイプの基材表面上に形成することができることを示した。ポリドーパミンコーティングに対するアミン官能性ポリエチレングリコール(“PEG‐NH2”)の付着を開示する国際公開第2011/005258号に示されているように、ポリドーパミンコーティングを、表面に対する合成ポリマー又は生体分子の結合に関するプラットフォームとして用いることにより、生体膜形成の防止のための親水性外層を提供してきた。
親水性の、及び好ましくは潤滑性のコーティングは、有利には、修飾することにより抗凝固剤等の薬理活性を有する化学物質を包含し、コーティングに対して更に有益な特性を付与することができる。米国特許出願公開第2003/0135195号明細書は、脂肪族ポリウレタンコロイドポリマー、(メタクリル酸N‐ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチル共重合体)‐PVPの水希釈物及びデンドリマーの混合物から形成した高度に潤滑性、親水性のコーティングを有するカテーテル等の医療用デバイスを教示する。文献は、デンドリマー、水、N‐メチル‐2‐ピロリドン及びトリエチルアミンの混合物中の(メタクリル酸N‐ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチル共重合体)‐PVP及び活性薬剤(例えばヘパリン)の溶液中の脂肪族ポリウレタンポリマーのコロイド分散液中にデバイスを浸すことにより、デバイスにコーティングを適用することができることを教示する。文献は、デンドリマー内のボイド中にヘパリンを含むことができること、及び組み込まれたヘパリンが、所定の速度にて親水性ポリマー材料から溶出するであろうことも教示する。
国際公開第2004/020012号(Surmodics)は、医療用デバイスを含むデリバリーデバイスの表面の静摩擦を増加させるために用いられるコーティング組成物を開示する。例として、ポリエーテルモノマー成分は、ただ一つのアルケン基を含み、かつ、架橋することができないメトキシポリ(エチレングリコール)メタクリレートを有するものとみなされる。
要約すると、表面、特に体内中に挿入されるデバイスの表面用の親水性コーティングの改善に対する必要性が依然として存在する。好ましくは、係るコーティングは潤滑性であり、耐久性があり、非毒性であり、低粒状化性であり、殺菌可能であり、生体適合性があり、及び表面に容易に適用される。
1つの側面において、本発明は、成分A及びB、並びに任意選択の成分C及びDの架橋コポリマーを含む親水性コーティングを有する表面を有する基材であって、
成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各含む1種以上の親水性ポリマーを含み、
成分Cが、存在する場合には、1つ以上のアルケン又はアルキン基を各々含む1種以上の有益な化学物質を含み、並びに
成分Dが、存在する場合には、チオール、アルケン及びアルキン基から独立に選択される2つ以上の官能基を各々含む1種以上の低分子量架橋剤を含み、
架橋コポリマーが、成分A、B及びC(存在する場合には)のアルケン及び/又はアルキン基、並びに成分D(存在する場合には)の官能基が関与するラジカル重合により形成し、
親水性コーティングが、1種以上の有益な化学物質を含む成分Eを任意選択的に含み、成分Eが成分A、B、C(存在する場合には)及びD(存在する場合には)とコポリマーを形成せず、
並びに親水性コーティングが、基材の表面に共有結合している
基材を提供する。
例において説明するように、少なくとも幾つかの実施態様において、本発明のコーティングは、高度に潤滑性かつ耐久性があり、一方で非毒性でもあり、殺菌及びエージングに対して安定であり、生体適合性があり、及び低粒状化性であり、及び表面独立手法において必要とされる基材の表面に容易に適用もされることが見出された。
図1は本発明の実施態様を示し、基材の表面と親水性コーティングとの間の共有結合は、基材の表面上で表面結合のラジカルの反応を介して形成される。 図2は本発明の実施態様を示し、ラジカルが液相中で形成され、また重合が液相中及び基材の表面上で開始され、成分A及びBの共有結合した親水性コーティングが生成する。 図3は、ポリドーパミンに関して提案された種々の構造を示す。 図4は、本発明の実施態様の略図を示す。 図5は、方法A又は方法Bを用いて前処理したスライドガラス上のポリドーパミン下塗りコーティングの接触角測定を示す(例1a参照)。 図6は、濃度の関数としてベンゾフェノンの紫外吸光度を示す(例2参照)。 図7は、例3.3に準拠して調製した親水性コーティングのFTIR分析を示す。 図8は、例3.3.15に準拠して調製した親水性コーティングに関する15サイクルに亘る潤滑性値を示す。 図9は、例3.3.19に準拠して調製した親水性コーティングに関する15サイクルに亘る潤滑性値を示す。 図10は、例3.5に準拠して調製した親水性コーティングに関する15サイクルに亘る潤滑性値を示す。 図11は、例3.6に準拠して調製した親水性コーティングに関する15サイクルに亘る潤滑性値を示す。 図12は、ベンゾフェノン及びチオキサントンに関する紫外/可視吸収の重ね合わせた概略スペクトルを示す。
基材
本発明の方法を用いて、任意の基材は本発明の親水性コーティングでコートされる可能性があるが、係るコーティングは医療用デバイス、分析用デバイス、分離用デバイス、又はメンブレン及びファブリックを含む他の産業用物品に対して特に有用である。
本特許出願の目的に関して、用語“医療用デバイス”は、体内の又は体外のデバイスに言及するが、より一般的には体内の医療用デバイスに言及する。
従って、1つの実施態様において、基材は医療用デバイスである。別の実施態様において、基材は体内の医療用デバイスである。更なる実施態様において、基材は体外の医療用デバイスである。
パーマネント又はテンポラリーの体内の医療用デバイスであることができる体内の医療用デバイスの例としては、二股ステント、バルーン拡張型ステント、自己拡張型ステントを包含するステント、二股ステントグラフトを包含するステントグラフト、血管グラフト、二股グラフトを包含するグラフト、拡張器、血管閉塞器、塞栓フィルター、塞栓除去デバイス、人工血管、血管内在性モニタリングデバイス、人工心臓弁、ペースメーカー電極、ガイドワイヤー、心臓リード、心肺バイパスサーキット、カニューレ、プラグ、ドラッグデリバリーデバイス、バルーン、組織パッチデバイス、血液ポンプ、パッチ、心臓リード、持続輸液ライン、動脈ライン、持続的なくも膜下への注入用デバイス、栄養チューブ、CNSシャント(例えば、脳室胸膜シャント、VAシャント、又はVPシャント)、脳室腹膜シャント、脳室心房シャント、門脈体循環シャント及び腹水用シャントが挙げられる。
パーマネント又はテンポラリーであることができる体内の医療用デバイスの更なる例は、カテーテルである。カテーテルの例としては、中心静脈カテーテル、抹消静脈カテーテル、血液透析カテーテル、例えば心臓中又は抹消静脈及び動脈中においての血管造影法、血管形成術、又は超音波連鎖に有用な埋め込み式静脈カテーテル、挿入型静脈カテーテル、冠状動脈カテーテルを包含する被覆カテーテル、肝動脈注入カテーテル、CVC(中心静脈カテーテル)、抹消静脈カテーテル、抹消挿入型中心静脈カテーテル(PICライン)、フローダイレクトバルーンが先端についた肺動脈カテーテル、完全静脈栄養カテーテル、在宅持続カテーテル(例えば、在宅持続腸カテーテル及び在宅持続尿生殖器カテーテル)、腹膜透析カテーテル、CPBカテーテル(心肺バイパス)、尿路カテーテル及びマイクロカテーテル(例えば、頭蓋内用のアプリケーション)等のカテーテルが挙げられるが、限定されることはない。
医療用デバイスとしては、ステント、閉塞器、弁、等の血管内のデバイスデリバリーシステム、分光の又はイメージングの機能、プレースメントワイヤー、カテーテル又はシースを含む診断用カテーテルが挙げられる。
特定の実施態様において、基材は、二股ステント、バルーン拡張型ステント及び自己拡張型ステントを包含するステント、二股ステントグラフトを包含するステントグラフト、血管グラフト及び二股グラフトを包含するグラフト、拡張器、血管閉塞器、塞栓フィルター、塞栓除去デバイス、マイクロカテーテル、中心静脈カテーテル、抹消静脈カテーテル及び血液透析カテーテルを包含するカテーテル、人工血管、リトラクタブルシースを包含するシース、血管内在性モニタリングデバイス、人工心臓弁、ペースメーカー電極、ガイドワイヤー、カーディアックリード、心肺バイパスサーキット、カニューレ、プラグ、ドラッグデリバリーデバイス、バルーン、組織パッチデバイス及び血液ポンプからなる群より選択される医療用デバイスである。
体外の医療用デバイスの例は、体外血液処理デバイス、及び輸血用デバイス等の埋め込み式でないデバイスである。デバイスは、とりわけ、神経の、抹消の、心臓の、整形外科の(orthopedal)、皮膚の及び婦人科のアプリケーションを有してよい。
別の実施態様において、上述のステントは、心臓の、抹消の又は神経のアプリケーションにおいて使用することができる。別の実施態様において、前記ステントグラフトは、心臓の、抹消の又は神経のアプリケーションにおいて使用することができる。
別の実施態様において、上述のシースは、挿入診断用及び治療用シース、大口径及び標準口径血管内デリバリーシース、止血制御あり及びなし並びにステアリングあり及びなしの動脈イントロデューサーシース、マイクロイントロデューサーシース、透析アクセスシース、ガイドシース、並びに経皮的シースであることができ、全ては頸動脈、腎臓、前腕、経中隔、小児科の及びマイクロアプリケーションへのアクセスのためであってよい。
別の実施態様において、前記医療用デバイスは、神経、抹消、心臓、整形外科、皮膚又は婦人科のアプリケーションに使用することができる。
分析用デバイスは、例えば、クロマトグラフィー又は免疫アッセイ、活性の化学種又は触媒等の分析的プロセスの実施のための固体支持体であることができる。係るデバイスの例としては、スライド、ビーズ、ウェルプレート及びメンブレンが挙げられる。分離用デバイスは、例えばタンパク質精製、アフィニティークロマトグラフィー又はイオン交換等の分離プロセスを実施するための固体支持体であることができる。係るデバイスの例としては、フィルター及びカラムが挙げられる。
コートされるべき表面は、基材の表面全体、又は基材の表面の一部のみであることができる。ある種の基材は、いずれか又は両方がコートされることのできる外部表面及び内部表面を有してよい。例えば、人工血管等のチューブ状の基材は、外部表面から独立してコートすることのできる内部表面、又は内腔を有する。内部及び外部の表面を含む表面は、内部表面のみのコートを必要とする場合がある。逆に、外部表面のみがコーティングを必要とする場合がある。本発明の方法を用いて、例えば基材の外部及び内部の表面に異なるコーティングを適用することが可能である。
実施形態の1つにおいて、基材の表面の最大で99%まで、例えば最大で95%、90%、75%、50%又は25%までが、親水性コーティングでコートされる。1つの実施態様において、基材の外部及び内部の表面の両方がコートされる。別の実施態様において、基材の外部表面のみがコートされる。1つの実施態様において、コートされるべき基材は形状においてチューブ状であり、外部表面から独立にコートすることができる内部表面または内腔を有する。基材の表面は、多孔性又は非多孔性であることができる。
別の実施態様において、基材の表面の一部は、基材の表面の組成を調製することにより、選択的にコートすることができる。例えば、引き抜き可能な水素を含む基材の表面はコートすることができるが、引き抜き可能な水素原子を含まない基材の表面の部分は、この発明内において、親水性コーティングでコートされないであろう。
本発明内において有用な基材材料
基材は、とりわけ金属又は合成の若しくは天然に存在する、有機若しくは無機のポリマー又はセラミック材料を含んでよく、またこれから形成されてよい。
従って、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルブロックアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテル、シリコーン、ポリカーボネート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ゴム、シリコーンゴム、ポリヒドロキシ酸、ポリアリルアミン、ポリアリルアルコール、ポリアクリルアミド、及びポリアクリル酸、スチレン系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、及びこれらのコポリマー、これらの誘導体及びこれらの混合物等の合成の又は天然に存在する、有機又は無機のポリマー又は材料から形成することができる。これらの分類の幾つかは、熱硬化性ポリマーとしても熱可塑性ポリマーとしても入手可能である。本開示では、用語“コポリマー”は、2つ以上のモノマー、例えば2、3、4、5その他諸々から形成される任意のポリマーに言及して用いられるものとする。ポリ(D,L‐ラクチド)及びポリグリコリド及びこれらのコポリマー等の生体吸収性材料もまた有用である。有用なポリアミドとしては、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン9、ナイロン6/9及びナイロン6/6が挙げられるが、限定されることはない。係る材料の幾つかのコポリマーの例としては、ペンシルベニア州フィラデルフィアのElf Atochem North AmericaからPEBAX(登録商標)の商品名で入手できるポリエーテル-ブロック-アミドが挙げられる。別の好適なコポリマーは、ポリエーテルエステルアミドである。好適なポリエステルコポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート、ポリエステルエーテル及びデラウェア州ウィルミントンのDupontからHYTREL.RTMの商品名で入手できるもの等のポリエステルエラストマーコポリマーが挙げられる。スチレン末端ブロック、及びブタジエン、イソプレン、エチレン/ブチレン、エチレン/プロペン等から形成される中間ブロックを有するコポリマーのようなブロックコポリマーエラストマーを、本開示で用いてよい。他のスチレン系ブロックコポリマーとしては、アクリロニトリル‐スチレン及びアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレンブロックコポリマーが挙げられる。また、ブロックコポリマーであって、ブロックコポリマーが、ポリエステル又はポリアミドのハードセグメント及びポリエーテルのソフトセグメントで構成されている特定のブロックコポリマー熱可塑性エラストマーであるブロックコポリマーを、本開示で用いてもよい。他の有用な基材は、ポリスチレン、ポリ(メチル)メタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ塩化ビニル等の塩素含有ポリマー、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、フェノール樹脂、アミノエポキシ樹脂、ポリエステル、シリコーン、セルロースベースプラスチック、及びゴム状プラスチックである。
これらの材料の組み合わせは、架橋あり及びなしで用いることができる。
ポリマー基材は、任意選択的にフィラー及び/又は着色剤とブレンドしてよい。従って、好適な基材としては、着色された高分子材料等の着色材料が挙げられる。
1つの実施態様において、前記生体適合性材料は、PEBAX(登録商標)等のポリエーテルブロックコポリマーである。
フッ素ポリマー等のフッ素化ポリマー、例えば延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロカーボンコポリマー(例えば、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル(TFE/PAVE)コポリマー)、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)とのコポリマー、及びポリマー鎖間の架橋あり及びなしでの上記の組み合わせ、延伸ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリグリコール酸、ポリエステル、ポリアミド、エラストマー及びその混合物、ブレンド及びコポリマー又はこれらの誘導体は有用である可能性がある。
他の好適な基材としては、絹及びウール、アガロース及びアルギネート等のタンパク質が挙げられる。また、ある種の金属及びセラミックスも本発明に係る基材として用いてよい。好適な金属としては、生体適合性金属、チタン、ステンレス鋼、高窒素ステンレス鋼、金、銀、ロジウム、亜鉛、白金、ルビジウム、銅、及びマグネシウム、及びこれらの混合物が挙げられるが、限定されることはない。好適な合金としては、L‐605、MP35N、エルジロイ等のコバルト‐クロム合金、ニッケル‐チタン(ニチノール等の)合金、タンタル、及びNb‐1%Zr等のニオブ合金等が挙げられる。セラミック基材としては、シリコーン酸化物、アルミニウム酸化物、アルミナ、シリカ、ハイドロキシアパタイト、ガラス、カルシウム酸化物、ポリシラノール、及びリン酸化物を挙げてよく、しかし限定されることはない。
1つの実施態様において、前記生体適合性金属は、ニチノール等のニッケル‐チタン合金である。
親水性コーティング
本発明の親水性コーティングは、以下に記載のように、成分A及びB、並びに任意選択の成分C、D及びEを含む。
成分A
成分Aは、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、また好適にはこれからなる。成分Aのアルケン及び/又はアルキン基は、ラジカル重合反応に関与してコポリマーを形成する。好適には、成分Aは1つ以上アルケン基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、またより好適にはこれからなる。
アルケン及び/又はアルキン基内の炭素原子は、C2〜C16の限度内で含まれるべきであることに留意されたい。用語“親水性モノマー”は、当業者に周知であり、また水に対して親和性があり、及び水及び極性溶媒中に可溶である傾向のあるモノマーを広く包含する。極性溶媒としては、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等)、テトラヒドロフラン、DMF、DMSO、酢酸エチル及びジオキサン、及び上述の溶媒の全ての水溶液が挙げられるが、限定されることはない。
1つの実施態様において、成分Aは、1つのアルケン基又は1つのアルキン基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、また好適にはこれからなる。別の実施態様において、成分Aは1つのアルケン基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、また好適にはこれからなる。アルケン及び/又はアルキン基は、末端基又は非末端基であることができる。
成分Aは典型的に、重合して良好な構造の安定性及び耐久性を有するポリマーを形成するであろう構造モノマーの役割を果たす。従って、成分A、B並びに任意選択のC及び/又はDのコポリマー中の成分Aの比率が高いほど、コポリマーは予想されるよりも大きい耐久性である場合がある。しかし、成分Aの比率が高すぎると、得られるコポリマー及びコーティングは柔軟性を失う可能性がある。
モノマーの親水性の性質は、それが有する官能基(アルケン又はアルキン以外の)に由来する可能性がある。係る官能基は、末端又はペンダント位にあってよく、又は分子内結合を形成することができる。本開示では、用語“官能基を含む親水性モノマー”は、モノマーの構成に不可欠であり得る(すなわちモノマー内リンカー)官能基及び/又はペンダント又は末端官能基を含む親水性モノマーを意味すると解されたい。従って、1つの実施態様において、1つ以上の成分Aはアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、また好適にはこれからなり、また基の1つ以上は、エステル、エーテル、カルボキシル、ヒドロキシル、チオール、スルホン酸、サルフェート、アミノ、アミド、ホスフェート、ケト及びアルデヒド基から選択される。アルケン及び/又はアルキン基と同様に、追加の基もC2〜C16の限度内で含まれるのがよいことに留意されたい。官能基は、中性又は荷電であることができる。例えば、アミノ基は中性であることができ、又はプロトン化又は別の置換により第四級アンモニウム化合物を形成することができる。同様に、カルボキシル基及びホスフェート基は、脱プロトン化形態で存在することができ、従って、陰性に変化することができる。ベタイン又はホスホリルコリン部分を有する両性イオン性親水性モノマー等の両性イオン性親水性モノマーもまた企図される。別の実施態様において、成分Aは1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基、更に1つ以上のカルボキシル基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、また好適にはこれからなる。更なる実施態様において、成分Aは1つのアルケン基及び1つのカルボキシル基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、また好適にはこれからなる。
親水性モノマーは、直鎖、環状又は分岐であることができる。1つの実施態様において、成分Aは1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC2〜C16、C2〜C15、C2〜C14、C2〜C13、C2〜C12、C2〜C11、C2〜C10、C2〜C9、C2〜C8、C2〜C7、C2〜C6、C2〜C5、C2〜C4、C2〜C3、C3〜C16、C3〜C15、C3〜C14、C3〜C13、C3〜C12、C3〜C11、C3〜C10、C3〜C9、C3〜C8、C3〜C7、C3〜C6、C3〜C5、C3〜C4、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、又はC16親水性モノマーを含み、また好適にはこれからなる。1つの実施態様において、成分Aの親水性モノマーは1つ以上のアルケン基を各々含む。別の実施態様において、成分Aの親水性モノマーは1つ以上のアルキン基を各々含む。好ましくは、成分Aの親水性モノマーはアルケン基を含む。
1つの実施態様において、成分Aは、1つ以上のアルケン及び又はアルキン基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、また好適にはこれからなり、前記1種以上の親水性モノマーのMwは、40〜500Da、例えば40〜100Da、40〜90Da又は70〜90Daである。
好適には、成分Aはただ一つのアルケン基又はアルキン基を含む。従って、成分A、B及び任意選択のC及び/又はDのコポリマー内で架橋は形成しないであろう。
実施態様において、成分Aはカルボキシレート基を含む。
成分Aの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルアルコール、アリルアルコール、ビニルアミン、アリルアミン、ポリエチレングリコールアクリレート、オリゴエチレングリコールアクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、アクリルアミド、メタクリルアミド、N‐ビニルピロリドン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、4‐スチレンスルホネートが挙げられるが、限定されることはない。1つの実施態様において、成分Aはアクリル酸である。別の実施態様において、成分Aはメタクリル酸である。更なる実施態様において、成分Aはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を含み、また好適にはこれからなる。
2〜C9親水性モノマーの例を以下に示す。また、以下の荷電親水性ポリマーの塩も本発明内で有用である。
2親水性モノマーの例
Figure 2020189140
3親水性モノマーの例
Figure 2020189140
4親水性モノマーの例
Figure 2020189140
5親水性モノマーの例
Figure 2020189140
6親水性モノマーの例
Figure 2020189140
7親水性モノマーの例
Figure 2020189140
8親水性モノマーの例
Figure 2020189140
9親水性モノマーの例
Figure 2020189140
成分B
成分Bは、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなる。成分Bのアルケン及び/又はアルキン基は、ラジカル重合反応に関与してコポリマーを形成する。実施態様において、成分Bは2つ以上のアルケン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなる。
用語“親水性ポリマー”は、当業者に周知であり、また水に対して親和性があり、そして水及び極性溶媒中に可溶である傾向のポリマーを広く包含する。極性溶媒としては、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等)、テトラヒドロフラン、DMF、DMSO、酢酸エチル及びジオキサン、及び上述の溶媒の全ての水溶液が挙げられるが、限定されることはない。
成分Bは、親水性の性質を有する。また典型的に成分A、B並びに任意選択のC及び/又はDのコポリマーに潤滑性を付与するであろう。従って、成分A、B並びに任意選択のC及び/又はDのコポリマー中の成分Bの比率が高いほど、コーティングは予想されるよりも大きく潤滑性であるだろう。
1つの実施態様において、成分Bは、2つのアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなる。別の実施態様において、成分Bは、2つのアルケン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなる。
1つの実施態様において、成分Bは、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなり、前記アルケン及び/又はアルキン基は、末端アルケン及び/又はアルキン基である。成分Bは独立にアルケン又はアルキン基を含んでよく、またアルケン官能化及びアルキン官能化の両方であることができることに留意されたい。従って、“2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を含む”親水性ポリマーは、1つのアルケン基及び1つのアルキン基を含む親水性ポリマーを含めることを意図する。
2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む親水性ポリマーは、アルケン又はアルキン基を有するプリフォームド親水性ポリマーを官能化することにより形成することができる。係るプリフォームドポリマーは、適切な反応基、例えば、ヒドロキシル、アミノ、チオール、アジド、オキシラン、アルコキシアミン及び/又はカルボキシル基を有していなければならない。係る反応基は、親水性ポリマーの末端に、親水性ポリマーの主鎖に沿って、又は両方の位置にあることができる。次いで、反応基を有するプリフォームドポリマーは、カルボン酸、活性化エステル又は酸塩化物、アミン又はアルコール等の相補的な反応基を有するアルケン又はアルキン官能化物質と反応させることができる。
1つの実施態様において、成分Bは、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また好ましくはこれからなり、親水性ポリマーは、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、ポリ‐N‐ビニルピロリドン、ポリ‐N‐ビニルピロリドン誘導体、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル誘導体(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、ポリプロピレングリコール(PPG)又はポリプロピレングリコール(PPG)誘導体)、ポリグリシドール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸誘導体、シリコーン、シリコーン誘導体、多糖類、多糖類誘導体、ポリスルホベタイン、ポリスルホベタイン誘導体、ポリカルボキシベタイン、ポリカルボキシベタイン誘導体、ポリHEMA等のポリアルコール、アルギネート等のポリ酸、デキストラン、アガロース、ポリ‐リジン、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸誘導体、ポリメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミド誘導体、ポリスルホン、ポリスルホン誘導体、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリスチレン誘導体、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン誘導体、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン誘導体、ポリオキサゾリン、ポリオキサゾリン誘導体、ポリアミン及びポリアミン誘導体からなる群より独立に選択される。上述したポリマーのブロックポリマーも有用であり、例えば、ポリ(ビニルアルコール‐コ‐エチレン)、ポリ(エチレングリコール‐コ‐プロピレングリコール)、ポリ(酢酸ビニル‐コ‐ビニルアルコール)、ポリ(テトラフルオロエチレン‐コ‐ビニルアルコール)、ポリ(アクリロニトリル‐コ‐アクリルアミド)、ポリ(アクリロニトリル‐コ‐アクリル酸‐コ‐アクリルアミド)である。
別の実施態様において、成分Bは2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなり、親水性ポリマーは、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、ポリ‐N‐ビニルピロリドン、ポリ‐N‐ビニルピロリドン誘導体、ポリエーテル誘導体(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、ポリプロピレングリコール(PPG)又はポリプロピレングリコール(PPG)誘導体、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアルコール誘導体からなる群より独立に選択される。
親水性ポリマーは、誘導体、例えば“ポリアミン誘導体”であるといわれる場合、これはアルケン誘導体又はアルキン誘導体を包含することを意図しない‐これは、付加的な誘導体化に言及する。従って、“ポリアミン誘導体”は、例えばチオール、ヒドロキシル又はアジド基で官能化されたポリアミンを包含してよく、次いで、アルケン及び/又はアルキン基を含むように修飾してよい。
更なる実施態様において、成分Bは2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなり、親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、ポリプロピレングリコール(PPG)及びポリプロピレングリコール(PPG)誘導体からなる群より独立に選択される。これらのコポリマー(例えば、エチレングリコール及びプロピレングリコールのコポリマー)、これらのターポリマー、及びこれらの混合物も企図される。
1つの実施態様において、成分Bは、2つのアルケン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなる。別の実施態様において、成分Bは、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のポリエーテル親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、ポリプロピレングリコール(PPG)又はポリプロピレングリコール(PPG)誘導体)を含み、また好適にはこれからなる。好ましい実施態様において、成分Bは、2つのアルケン基を各々含む1種以上のPEGポリマーを含み、また好適にはこれからなる。別の実施態様において、成分Bは、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなり、前記アルケン及び/又はアルキン基は、末端アルケン及び/又はアルキン基である。
成分Bが、ポリエーテル親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなる場合、概してポリマーは、その末端基を介してアルケン及び/又はアルキン官能化されるであろう。ポリエーテルポリマーはほとんどの場合、ヒドロキシル基で終端化する。しかし、他の末端基はアミノ及びチオールを包含するが、限定されることはない。これらの基のいずれかは、必要とされるアルケン及び/又はアルキン官能基で官能化することができる。アルケン官能基を導入するための適切な試薬は、脱離基(例えば、ハロゲン)、アルケン官能化カルボン酸、酸塩化物及び活性化エステル、又はアクリレート化合物を包含するアルケン官能化試薬を包含する。アルキン官能基を導入するための適切な試薬は、脱離基(例えば、ハロゲン)、アルキン官能化カルボン酸、酸塩化物及び活性化エステルを包含するアルキン官能化試薬を包含する。従って、ポリエーテルポリマーは、エーテル、チオエーテル、アミン、エステル、チオエステル、アミド及びカルバメート結合を包含するが、限定されることはない少なくとも2つの結合を介して、独立にアルケン又はアルキン官能化することができる。成分Bにおいて用いられる結合を変えることにより、得られるコポリマーの性質を変えることができる。1つの実施態様において、結合はエステル結合である(例えば、以下の構造式(I)参照)。別の実施態様において、結合は、アミド結合である(例えば、以下の構造式(II)参照)。成分Bは、生分解性又は生物学的安定性のいずれかであることができる。
当業者は、二官能性ポリマー(ジヒドロキシルPEG等)のテクニカルグレードは、対応する一官能性(例えば、モノヒドロキシル)ポリマーを少量含む場合があり、アルケン又はアルキン基で官能化された際にモノアルケン又はモノアルキン官能化ポリマーを形成するであろうことを理解するであろう。従って、成分Bは2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーからなるとして規定する。しかし、小(機能的に重要でない)量のモノアルケン又はモノアルキン官能化親水性ポリマーは許容されるであろう。またこれは成分Bの定義内に包含される。
1つの実施態様において、成分Bは2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のポリエチレングリコール(PEG)ポリマーを含み、また好適にはこれからなる。好ましくは、各々のPEGポリマーは2つのアルケン基を含む。PEGは、直鎖状で一般式H‐[O‐CH2‐CH2n‐OHを有するポリエーテル化合物である。ハイパーブランチを包含するブランチ型及びデンドリック型も企図され、また当分野において一般的に知られている。典型的には、ブランチポリマーは中心のブランチコア部分を有し、また線状ポリマー鎖の大部分は、中心のブランチコアに結合する。PEGは、ブランチ形態において一般的に使用され、グリセロール、グリセロールオリゴマー、ペンタエリスリトール及びソルビトール等の種々のポリオールに対するエチレンオキシドの添加により調製することができる。中心のブランチ部分は、リジン等の幾つかのアミノ酸から誘導することもできる。ブランチポリ(エチレングリコール)は、R(‐PEG‐OH)m(式中、Rは、グリセロール、グリセロールオリゴマー、又はペンタエリスリトール等のコア部分から誘導され、またmは腕の数を表す)として一般式で表すことができる。米国特許第5932462号明細書、米国特許第5643575号明細書、米国特許第5229490号明細書、米国特許第4289872号明細書、米国出願公開第2003/0143596号明細書、国際公開第96/21469号、及び国際公開第93/21259号に記載されるようなマルチアームPEG分子も使用してよい。
成分Bは、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のポリエチレングリコール(PEG)ポリマーを含み、また好適にはこれからなる場合、好適にはPEGポリマーはジアクリレート官能化PEGポリマーである。
1つの実施態様において、1種以上のジアクリレート官能化PEGポリマーは、構造式(I)のものである。
Figure 2020189140
(式中、nは10〜50000、例えば15〜5000、例えば100〜400、好適には150〜260である。)
別の実施態様において、1種以上のジアクリレート官能化PEGポリマーは、構造式(II)のものである。
Figure 2020189140
(式中、nは10〜50000、例えば15〜5000、例えば100〜400、好適には150〜260である。)
成分Bが、2つ以上のアルケン又はアルキン基を各々含む1種以上のPEGポリマーを含み、また好適にはこれからなる場合、PEGポリマーはの平均分子量は、例えば、600〜2000000Da、60000〜2000000Da、40000〜2000000Da、400000〜1600000Da、800〜1200000Da、600〜40000Da、600〜20000Da、4000〜16000Da、又は8000〜12000Daである。
1つの実施態様において、成分Bは、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなり、各々の親水性ポリマーの分子量は、独立に600〜40000Da、600〜20000Da、4000〜16000Da又は8000〜12000Daである。
成分Bは、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む2種以上(例えば、2種)の異なる親水性ポリマーからなってよい。例えば成分Bは、分子量が各々異なる2種の異なるポリエーテルポリマーからなってよい。従って、1つの実施態様において、成分Bは、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む2種の異なる親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなる。別の実施態様において、成分Bは、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む2種の異なるポリエーテルポリマーを含み、また好適にはこれからなる。更なる実施態様において、成分Bは、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む2種の異なる分子量のPEGポリマーを含み、また好適にはこれからなる。1つの実施態様において、成分Bは、2つのアルケン基を含む第一のPEGポリマー(平均分子量は600〜40000Da、600〜20000Da、4000〜16000Da又は8000〜12000Daである)、及び2つのアルケン基を含む第二のPEGポリマー(前記第二のPEGポリマーの平均分子量は、60000〜2000000Da、40000〜2000000Da、400000〜1600000Da又は800000〜1200000Daである)を含み、また好適にはこれからなる。
好適には、第二の、より高い平均分子量のPEGポリマーは、第一の、より低い平均分子量のそれより低い質量%(質量%)で存在するであろう。例えば、成分Bが2種の異なる分子量のPEGポリマーを含み、また好適にはこれからなる場合、成分Bの少なくとも99%(質量基準で)はより低い平均分子量のPEGポリマー、例えば少なくとも98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91 %、90%、85%または80%(質量基準で)であろう。大いにより高い分子量のPEGポリマーの添加は、最終的な親水性コーティングの潤滑性を増加させる効果を有する傾向がある。しかし、より高い分子量のPEGポリマーの比率を高くしすぎると、成分A、B並びに任意選択的にC及び/又はDのコポリマー内の架橋の量が減少し、これは、親水性コーティングの耐久性に影響を与える場合がある。
成分C
成分Cは、本発明の親水性コーティングにおいて任意選択の成分である。存在する場合には、成分Cは、1つ以上のアルケン又はアルキン基を(好適には1つのアルケン又はアルキン基)各々含む1種以上の有益な化学物質を含み、また好適にはこれからなる。成分Cのアルケン又はアルキン基は、ラジカル重合反応に関与してコポリマーを形成する。
用語“有益な化学物質”は、本発明の親水性コーティング中に含まれる際に特定の所望の効果を付与する任意の化学物質を包含する。有益な化学物質の例としては、薬理活性を有する化学物質、導電剤、潤滑剤又は接着剤が挙げられる。例えば、有益な化学物質は、薬理活性を有する化学物質、導電剤又は接着剤であってよい。本開示での“薬理活性を有する化学物質”とは、用語“薬剤”と互換的に用いられる生物応答を誘導する化学物質である。
薬理活性を有する化学物質の例としては、抗血栓薬、止血剤、血管新生阻害剤、血管新生剤、抗菌剤、抗増殖剤、増殖剤及び抗炎症薬が挙げられるが、限定されることはない。
薬理活性を有する化学物質
抗血栓剤
抗血栓剤を用いることにより、体内に医療用デバイスを挿入する際に起こり得る血液の凝固の重大な悪影響を予防し又は軽減する場合がある。抗血栓剤の例としては、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ヒルジン、エプチフィバチド、チロフィバン、ウロキナーゼ、D‐Phe‐Pro‐Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、HSP20を模倣するAZX100細胞ペプチド(キャップストーン セラピューティクス社、米国)、トロンビン阻害剤、血小板受容体アンタゴニスト、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤(クロピドグレル及びアブシキシマブ)及び抗血小板ペプチド、クマジン(ワルファリンのような4‐ヒドロキシクマリン類のビタミンKアンタゴニスト)、アルガトロバン、トロンボモジュリン及び抗凝固タンパク質が挙げられる。抗血栓剤としては、アピラーゼ等の酵素を挙げてもよい。係る基材は、荷電(例えばアニオン性)又は非荷電であってよい。他の例は、グリコサミノグリカン、デルマタン二硫酸塩、デルマタン二硫酸塩類縁体、及びこれらの誘導体である。
用語“ヘパリン”は、ヘパリン分子、ヘパリン分子又はヘパリン誘導体のフラグメントを指す。ヘパリン誘導体は、ヘパリンの任意の機能的又は構造的変化物であることが可能である。代表的な変化物としては、ヘパリンナトリウム(例えばヘプサル又はプラリン)、ヘパリンカリウム(例えばクラリン)、ヘパリンリチウム、ヘパリンカルシウム(例えばカルシパリン)、マグネシウムヘパリン(例えばクテパリン)、及び低分子量ヘパリン(例えば、酸化的解重合又は脱アミノ化切断により調製される、例えばアルデパリンナトリウムまたはダルテパリン)等のヘパリンのアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩が挙げられる。他の例としてはヘパラン硫酸、ヘパリノイド、ヘパリンベースの化合物及び疎水性の対イオンを有するヘパリンが挙げられる。他の所望の抗凝固性物としては第Xa因子のアンチトロンビン介在の阻害に関与する“フォンダパリヌクス”組成物(例えばグラクソスミスクラインのアリクストラ)と呼ばれる合成ヘパリン組成物が挙げられる。ヘパリンの付加的な誘導体としては、例えば穏やかな亜硝酸分解(米国特許第4613665号明細書)、又は過ヨウ素酸酸化(米国特許第6653457号明細書)及びヘパリン部分の生物活性が実質的に保持される当分野で知られる他の修飾反応によって修飾されたヘパリン及びヘパリン部分が挙げられる。
止血剤
止血剤を用いることにより、血液の大量損失を防ぐために、出血、大出血、又は血管若しくは体部位を流れる血液を止める場合がある。これらは、血小板の凝集及び血栓の形成を引き起こす場合があり、また、これらの使用により外科的処置において出血を止める場合がある。止血剤の例は、フィブリンシーラント(sealents)、トロンビンあり及びなしの可吸性止血剤、トロンビンの溶液、コラーゲン、微繊維性コラーゲン、ゼラチン、ゼラチンスポンジ、再生酸化セルロース、骨ろう、グルコサミン含有ポリマー、キトサン、植物抽出物、ミネラル、rFVIIa及び抗線維素溶解剤である。
血管新生阻害剤
血管新生阻害剤は、腫瘍の血管新生を阻害し、また血管内皮細胞を標的とする。血管新生阻害剤の例は、スニチニブ、ベバシズマブ、イトラコナゾール、スラミン、及びテトラチオモリブデートである。
血管新生剤
血管新生剤を、細胞増殖が望まれる用途において用いることができる。血管新生剤の例としては、成長因子及びRGDタンパク質が挙げられる。
抗菌剤
抗菌剤は、いずれかが病原菌の殺滅又は増殖を遅らせる薬剤、化学薬品、又は他の薬物に関する一般的な用語である。抗菌剤の中には、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、及び抗寄生虫(antiparisitic)薬がある。抗菌剤の例としては、ジアミジン、ヨウ素及びヨードフォア、ペルオキシゲン、フェノール類、ビスフェノール類、ハロフェノール、ビグアニド、銀化合物、トリクロサン、クロルヘキシジン、トリクロカルバン、ヘキサクロロフェン、ジブロモプロパミジン、クロロキシレノール、フェノール及びクレゾール又はこれらの組み合わせ並びにこれらの塩及び組み合わせ、抗生物質、エリスロマイシン又はバンコマイシン;ドーパミン、メシル酸ブロモクリプチン、メシル酸ペルゴリド又は別のドーパミンアゴニスト;又は別の放射線治療薬;放射線不透過性物質として機能するヨウ素含有化合物、バリウム含有化合物、金、タンタル、白金、タングステン又は他の重金属;ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外マトリックス成分、細胞成分又は他の生物学的薬剤;カプトプリル、エナラプリル、又は他のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬;アスコルビン酸、ニトロフラゾン、塩化ベンザルコニウム、例えば、リファンピン、ゲンタマイシン セファロスポリン系、アミノグリコシド系、ニトロフラントイン及びミノサイクリン、サリチル酸、アルファトコフェロール、スーパーオキシドジスムターゼ、デフェロキサミン(deferoxyamine)、21‐アミノステロイド(ラサロイド)等の抗生物質、又は別のフリーラジカル捕捉剤、鉄キレート剤若しくは酸化防止剤;アンジオペプチン;14C‐、3H‐、131I‐、32P、若しくは36S‐放射性標識型、又は上記のいずれかの他の放射性標識型;又はこれらの任意の混合物からなる群より選択される化合物が挙げられる。他の例は、細胞毒性薬、細胞増殖抑制薬及び細胞増殖因子;血管拡張剤;内因性血管作用メカニズムを妨げる化学物質;モノクロナール抗体等の白血球動員の阻害剤;サイトカイン;ホルモン又はこれらの組み合わせである。
増殖剤
増殖剤は、細胞増殖を刺激し、また例としては成長因子、転写活性化因子、及び翻訳プロモーター等の血管細胞成長プロモーターである。
抗増殖剤
抗増殖剤は、成長因子阻害剤、成長因子受容体アンタゴニスト、転写リプレッサー、翻訳リプレッサー、複製阻害剤、阻害抗体、抗成長因子抗体、成長因子と細胞毒からなる二官能分子、抗体と細胞毒から成る二官能分子等の血管細胞成長阻害剤;蛋白キナーゼ及びチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、チルホスチン、ゲニステイン、キノキサリン);プロスタサイクリン類似体、コレステロール低下薬、アンジオポエチン等の細胞の拡大の防止又は遅延のために用いられる薬物である。また、化学物質を含むことは、特に平滑筋細胞において、デバイスが体内に挿入される際の細胞増殖の低減又は防止により再狭窄を防止する。係る化学物質の例としては、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、パクリタキセル及びシロリムス等の抗増殖剤が挙げられるが、限定されることはない。他の例は、シロスタゾール、エベロリムス、ジクマロール、ゾタロリムス、カルベジロール並びに例えばパクリタキセル及びこれらの類縁体等の主要なタキサンドメイン結合薬、エポチロン、ディスコデルモリド、ドセタキセル、例えばアブラキサンRTM(アブラキサンはABRAXIS BIOSCIENCE、LLCの登録商標である)等のパクリタキセルタンパク質結合粒子、適切なシクロデキストリン(又はシクロデキストリン様分子)、ラパマイシン及びこれらの類縁体と複合したパクリタキセル、適切なシクロデキストリン(又はシクロデキストリン様分子)と複合したラパマイシン(又はラパマイシン類縁体)、SiRNA、17ベータ‐エストラジオール、適切なシクロデキストリンと複合した17ベータ‐エストラジオール、ジクマロール、適切なシクロデキストリン、ベータ‐ラパコン及びこれらの類縁体と複合したジクマロール、5‐フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞の増殖をブロックすることのできるモノクロナール抗体、並びにチミジンキナーゼ阻害剤等の抗腫瘍薬並びに抗有糸分裂薬(anti−miotic);リドカイン、ブビバカイン並びにロピバカイン等の麻酔薬である。
抗炎症薬
抗炎症薬は、炎症を低減させる薬剤である。多くのステロイド、具体的にはグルココルチコイドは、グルココルチコイド受容体に結合することにより炎症又は腫れを低減させる。これらの薬剤は、しばしばコルチコステロイドと呼ばれる。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素を阻害することにより活性である。NSAIDsの幾つかの一般的な例は、アスピリン、イブプロフェン、及びナプロキセンであるが、限定されることはない。他の特定のCOX‐阻害剤もまた企図されるだろう。抗炎症薬の例は、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン等のステロイド、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン及びメサラミン、シロリムス及びエベロリムス(及び関係する類縁体)である。
本発明において用いてよい薬理活性を有する具体的な化学物質としては、ヘパリン、ヘパリン誘導体、トロンビン、コラーゲン、イトラコナゾール、スラミン、RGDタンパク質、銀化合物、トリクロサン、クロルヘキシジン、成長因子、パクリタキセル、シロリムス、エベロリムス、デキサメタゾン及びステロイドが挙げられるが限定されることはない。
接着剤
接着剤は、表面のタック又は粘性を増大させるために用いられる化合物である。これらは、高分子量化合物又は低分子量化合物であることができる。タック性のある表面は、接着を可能にし、またコーティングの引き剥がしをはるかに困難にする。接着剤としては、不十分に硬化した系、エポキシド含有系、タッキファイヤー及びこれらのフォームが挙げられるが、限定されることはない。多くのバイオポリマー‐タンパク質、炭水化物、糖タンパク質、及びムコ多糖‐を用いることにより、接着に寄与するヒドロゲルを形成してよい。
潤滑剤
潤滑材は、導入される場合に本発明の親水性を増大させることができる化合物である。親水性化学物質の例は、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、ポリ‐N‐ビニルピロリドン、ポリ‐N‐ビニルピロリドン誘導体、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル誘導体(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、ポリプロピレングリコール(PPG)又はポリプロピレングリコール(PPG)誘導体)、ポリグリシドール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸誘導体、シリコーン、シリコーン誘導体、多糖類、多糖類誘導体、ポリスルホベタイン、ポリスルホベタイン誘導体、ポリカルボキシベタイン、ポリカルボキシベタイン誘導体、ポリHEMA等のポリアルコール、アルギネート等のポリ酸、デキストラン、アガロース、ポリ‐リジン、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸誘導体、ポリメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミド誘導体、ポリスルホン、ポリスルホン誘導体、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリスチレン誘導体、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン誘導体、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン誘導体、ポリオキサゾリン、ポリオキサゾリン誘導体、ポリアミン及びポリアミン誘導体からなる群より独立に選択される親水性ポリマーである。上述したポリマーのブロックポリマーも有用であり、例えば、ポリ(ビニルアルコール‐コ‐エチレン)、ポリ(エチレングリコール‐コ‐プロピレングリコール)、ポリ(酢酸ビニル‐コ‐ビニルアルコール)、ポリ(テトラフルオロエチレン‐コ‐ビニルアルコール)、ポリ(アクリロニトリル‐コ‐アクリルアミド)、ポリ(アクリロニトリル‐コ‐アクリル酸‐コ‐アクリルアミド)である。
導電剤
導電材を本発明のコーティングに組み込むことにより、電極等のデバイスに関して導電性の表面を提供することができる。導電剤の例としては、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリピロール(PPY)、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリアニリン、ポリチオフェン(PT)、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(p‐フェニレンサルファイド)、ポリアセチレン(PAC)、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)又はこれらの誘導体が挙げられる。
成分Cの分子量範囲
1つの実施態様において、成分Cの分子量は2000000Da以下である。別の実施態様において、成分Cの分子量は100000Da〜1500000Daである。
1つの実施態様において、成分Cの分子量は、例えば100000Da以下、例えば50000Da以下(例えば50-3000Da)、例えば25000Da以下(例えば9000‐20000Da、例えば9000‐11000Da)、例えば1000Da以下(例えば150‐600Da)である。
別の実施態様において、成分Cは、分子量が40000Da〜80000Daであるタンパク質である。別の実施態様において、成分Cは、分子量が1000Da〜30000Daであるポリマー導電剤である。
1つの実施態様において、成分Cは存在し、また1つ以上(例えば1つ)のアルケン又はアルキン基、好適には1つ以上(例えば1つ)のアルケン基を含むヘパリン又はヘパリン誘導体を含み、また好適にはこれからなる。上述したヘパリン又はヘパリン誘導体は、アルケン又はアルキン基を含む任意の適した方法により修飾することができる。例6に末端メタクリレート化ヘパリンの具体的な合成を記載する。例5.7は、コポリマー内に組み入れた前記ヘパリンを含む本発明のコーティングをいかに調製し得るかを説明する。
成分D
成分Dは、本発明の親水性コーティングにおいて、任意選択の成分である。存在する場合には、成分Dはチオール、アルケン及びアルキン基から独立に選択される2つ以上の官能基を各々含む1種以上の低分子量架橋剤を含み、また好適にはこれからなる。Dの官能基は、ラジカル重合反応に関与してコポリマーを形成する。例えば、成分Dは2つ以上のチオール基、例えば2つのチオール基を各々含む1種以上の低分子量架橋剤を含み、また好適にはこれからなる。チオール基は、チオール‐エン/イン反応経由のラジカル重合反応に関与して架橋コポリマーを形成する。
任意選択の成分Dの存在は、コポリマーの構造的な安定性、従ってコーティングの構造的な安定性を向上させる傾向がある場合がある。任意選択の成分Dの存在は、コーティングの耐久性を向上させる傾向がある場合がある。
低分子量架橋剤(低分子量PEGsが挙げられる)は、典型的には分子量が1000Da未満、例えば600Da未満、例えば100〜1000Da、例えば100〜600Daであるだろう。
1つの実施態様において、架橋剤はビスフェノールAプロポキシレートジアクリレート、1,3‐ブタンジオールジアクリレート、1,4‐ブタンジオールジアクリレート、1,3‐ブタンジオールジメタクリレート、1,4‐ブタンジオールジメタクリレート、N,N’‐(1,2‐ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ジウレタンジメタクリレート、N,N’‐エチレンビス(アクリルアミド)、グリセロール1,3‐ジグリセロレートジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールプロポキシレート(1PO/OH)トリアクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジメタクリレート、1,6‐ヘキサンジオールエトキシレートジアクリレート、1,6‐ヘキサンジイルビス[オキシ(2‐ヒドロキシ‐3,1‐プロパンジイル)]ビスアクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートビス[6‐(アクリロイルオキシ)ヘキサノエート]、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジメタクリレート、1,3,5‐トリアクリロイルヘキサヒドロ‐1,3,5‐トリアジン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート又はトリス[2‐(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートであってよいが、限定されることはない。アクリレート化又はメタクリレート化低分子量PEGsもまた有用である。
別の実施態様において、架橋剤はN,N’‐メチレンビスアクリルアミド、3‐(アクリロイルオキシ)‐2‐ヒドロキシプロピルメタクリレート又はビス[2‐(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェートであってよいが、限定されることはない。低分子量PEG由来の誘導体化アクリルアミド及びメタクリルアミドもまた有用である。
別の実施態様において、架橋剤は、2,4,6‐トリアリルオキシ‐1,3,5‐トリアジン、1,3,5‐トリアリル‐1,3,5‐トリアジン‐2,4,6(1H,3H,5H)‐トリオン、トリメチロールプロパンアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテルペンタエリスリトールアリルエーテル、ジアリルカーボネート、ジアリルマレエート及びコハク酸ジアリル等のポリアリルであってよいが、限定されることはない。アリル官能化低分子量PEGsもまた有用である。
別の実施態様において、架橋剤は、ヘキサ(エチレングリコール)ジチオール、1,2‐エタンジチオール、1,3‐プロパンジチオール、2,3‐ジメルカプト‐1‐プロパノール及び1,3,5‐トリアジン‐2,4,6‐トリチオール等の多官能性チオール化PEGであってよいが、限定されることはない。
別の実施態様において、架橋剤は、1,6‐ヘプタジイン、3‐(アリルオキシ)1‐‐プロピン、プロパルギルエーテル及び2‐メチル‐1‐ブテン‐3‐インであってよいが、限定されることはない。アルキン官能化低分子量PEGもまた有用である。
好ましい実施態様において、架橋剤は、アルケン及び/又はチオール及び/又はアルキン及び/又は官能化低分子量PEGであってよいが、限定されることはない。
成分Dを含むチオールを、有利には、重合反応の酸素阻害に対する系の感度を低減するために含んでよい。
成分E
成分Eは、存在する場合には、1つ以上の有益な化学物質を含み、また好適にはこれからなり、成分Eは、成分A、B、C(存在する場合には)及びD(存在する場合には)とコポリマーを形成しない。成分Eの存在は、それを含む親水性コーティングの性質を変化させる傾向があるであろう。
1つの実施態様において、成分Eは、コポリマーと共有結合している。この実施態様は、成分Eのコーティングからのいかなる溶出も避けたい場合に特に好適である。
1つの実施態様において、成分Eは、コポリマーと共有結合しない。例えば、成分Eはコポリマーとイオン的に結合する。または、成分Eは、化学的に又はイオン的にコポリマーと結合することなく、コポリマー内に捕捉されることができる。例えば、成分Eは、成分Eを含む溶液を有する基材の表面上に予め形成されたコポリマーの膨潤に関わるプロセスによりコポリマー中に吸収されることができる。成分Eは、コポリマー内のボイド中に、それが膨潤するように吸収されるであろう。
従って、ある種の実施態様において、成分Eは徐々に親水性コーティングから溶出する場合がある。これは、成分Eが薬剤である場合に特に有用であり、薬剤の全身投与及び 局所投与が有利である。長時間をかける分配及び溶出は、制御される場合がある。
成分Eは、(少なくとも)1つのサブコンポーネントがコポリマーと共有結合し、かつ、(少なくとも)1つのサブコンポーネントがコポリマーと共有結合しない、サブコンポーネントの混合物であることができる。
有用な化学物質としては、見出し“成分C”のセクションに記載したものが挙げられる。有用な化学物質は、官能化又は非官能化であってよい‐例えばそれらを、それがコポリマーに共有結合されるべき場合に官能化することができる。
成分Eとしての付加的な有用な化学物質としては、水と接触する際に親水性コーティングの導電性を補助するであろう塩が挙げられる。係る塩は、リチウム、ナトリウム又はカリウムの塩化物であることができるが、限定されることはない。金及び銀等の金属もまた導電剤として用いてよい。
従って、例えば、重合反応に続く反応において、基材上のコーティングとして既に形成された成分A及びB(並びに任意選択の他の成分C及びD)のコポリマーと、成分Eは反応することができる。
例えば、成分Aがアクリル酸、かつ成分Bがジアクリレート官能化PEGポリマーであった場合、結果として得られる成分A及びBのコポリマーは、ペンダントカルボン酸基を有するだろう。コポリマーの表面上のそのカルボン酸基は、次いで、好適には官能化された成分E(例えば、カルボジイミド及びアミン官能化の成分E等のカップリング剤を用いて)と反応する可能性がある。または、成分Eはチオール基で官能化することができ、次いでチオール‐エン又はチオール‐イン反応を経由して紫外線照射下において成分A及びB並びに任意選択のC及び/又はDのコポリマーの表面上の残留アルケン又はアルキン基に結合することができる。
成分Eは、アミド結合を形成するカルボジイミドの化学的性質、アミン結合を形成する還元的アミノ化反応、トリアゾール結合を形成するアジド‐アルキン反応及びチオエーテル結合を形成するチオール‐アルケン/イン反応を用いてコーティングに対する成分Eの共有結合により導入することができる。
上述の方法は単なる例示であり、また当業者は任意の好適なカップリング技術をコポリマーに共有結合する成分Eに適用することができる。実施態様のこの側面において、成分Eは、基材上のポリマーのコーティングの外表面上に主に存在する傾向があるだろう。別の側面において、成分Eをコーティング全体に分散させることができる。
1つの実施態様において、成分Eは存在し、また基材上のコーティングとしてコポリマーに端点又は単一点又は多点で共有結合することのできるヘパリン又はヘパリン誘導体を含み、また好適にはこれからなり、又は含む。別の実施態様において、成分Eは存在し、また基材上のコーティングとしてコポリマーとイオン的に結合することのできるポリエチレンイミン等のポリアミンに端点又は単一点又は多点で共有結合することのできるヘパリン又はヘパリン誘導体を含み、また好適にはこれからなり、又は含む。上述したヘパリン又はヘパリン誘導体を、コーティングに対する結合を促進する任意の適切な方法により修飾することができる。例5.2〜5.4及び例5.8に、本発明のコポリマーに対してヘパリンがいかに結合し得るかを記載する。
親水性コーティングに関する実施態様のバリエーション
1つの実施態様において、成分Cが存在し、かつ、成分Dは存在しない。1つの実施態様において、成分Dが存在し、かつ、成分Cは存在しない。1つの実施態様において、成分C及びDは存在しない。1つの実施態様において、成分C及びDは存在する。
1つの実施態様において、成分Eは存在する。1つの実施態様において、成分Eは存在しない。
親水性コーティングの他の側面
成分A及び成分Bの相対比は、その親水性を保持しつつ、コーティングが構造的な完全性を有するようなものでなければならない。例えば、成分Aの相対比が成分Bの比率と比較して高すぎる場合、コーティングの柔軟性はより低くなり、また十分でない親水性である可能性がある。反対に、成分Bの相対比が成分Aの比率と比較して高すぎる場合、結果としてコーティングは層間剥離に耐えるのに十分な構造の完全性を有さない場合がある。成分Cが存在する場合、成分A、B及びC及び任意選択のDの相対比は、コーティングが成分Cと結合する有益な性質を呈するが、依然として親水性であり、かつ、構造的に安定であるようなものでなければならない。
例示的な(制限されない)成分の比を、以下の表A及びBに示す。
Figure 2020189140
Figure 2020189140
上述した比は、重合が起こる前の重合溶液中に存在する成分A、B、C及びD(必要に応じて)の質量比に言及する。得られるコーティング中に存在する成分A、B、C及びD(又は少なくとも成分A、B、C、及びD由来のコポリマーの相対比)は、コーティングが形成される前の重合溶液中の個々の成分の質量比に実質的に同等であることを合理的に期待してよい。化合物A、B、C及びDのコポリマーとEの反応又は結合に関与する任意の後ステップにおいて、重合溶液中の成分A、B、C及びDの比に対して、Eに関わる比は溶液中のEの質量比に言及する。
基材上の親水性コーティングの乾燥厚みは、重合溶液中の成分A、B並びに任意選択のC及びDの量を限定することにより、及び/又は重合時間を限定することにより、及び/又は存在する場合には、Eの組み込みの条件の適切な変更により制御することができる。好適には、親水性コーティングは、乾燥時の厚みが少なくとも100μm、例えば少なくとも50μm、25μm、10μm、5μm、1μm、0.5μm又は0.1μmである。1つの実施態様において、コポリマーのコーティングの厚みは、0.1〜5μm、例えば0.1〜2.5μm又は0.5〜2.5μmである。
重合溶液に使用した溶媒の量は変化させることができ、それは、潤滑性、耐久性及び粒状化に関するコーティング特性に影響し、また当業者によって変えることのできるパラメーターである。当業者は、このパラメーターを最適化することができる。アクリル酸(例えば)に対するPEGの所定の比が、ある種のポリマー溶液濃度において乏しいコーティング特性をもたらす場合、それは典型的には、濃度が変更されれば良好なコーティング特性を示す場合がある。溶媒の例示的な量を、例において示す。
親水性コーティングの形成方法
本発明は、基材の表面に共有結合する親水性コーティングの形成方法であって、前記方法が、
(a)表面と、成分A及びB、任意選択の成分C、任意選択の成分D及びラジカル開始剤を含む混合物とを接触させるステップであって、
成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、また好適にはこれからなり、
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなり、
成分Cが、存在する場合には、1つ以上(例えば1つ)のアルケン又はアルキン基を各々含む1種以上の有益な化学物質を含み、また好適にはこれからなり、並びに
成分Dが、存在する場合には、チオール、アルケン、及びアルキン基から独立に選択される2つ以上の官能基を各々含む1種以上の低分子量架橋剤を含み、また好適にはこれからなるステップ、
並びに
(b)成分A、成分B、並びに任意選択の成分C及びDの架橋コポリマーを形成するために、成分A、B及びC(存在する場合には)のアルケン及び/又はアルキン基並びに成分D(存在する場合には)の官能基が関与するラジカル重合を開始するステップであって、前記コポリマーが表面に共有結合するステップ、並びに
(c)任意選択的に、1種以上の有益な化学物質を含み、好適にはこれからなる成分Eを親水性コーティング中に組み込むステップであって、成分Eが成分A、B、C(存在する場合には)及びD(存在する場合には)とコポリマーを形成しないステップ
を含む方法を提供する。
本発明は、上述した方法により得ることのできる親水性コーティングを有する基材も提供する。
本発明は、前述の方法により得ることのできるデバイスも提供する。
上述の及び本開示の本発明の全ての側面は、本発明の基材及び本発明の方法に等しく言及することに留意されたい。
本発明の親水性コーティングは、基材の表面と、成分A及びB並びに任意選択の成分C及びD、並びにラジカル開始剤を含む溶液(本開示では重合溶液と呼ばれる)との接触により形成することができる。好適には、反応溶媒はアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、又はイソプロパノール)、THF又はDMF、又は上記の溶媒のいずれかの水溶液等の極性溶媒である。従って、1つの実施態様において、重合溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、THF又はDMFから選択される。別の実施態様において、溶媒は、エタノール、プロパノール又はイソプロパノール、又はこれらの水溶液から選択される。別の実施態様において、溶媒はエタノールである。更なる実施態様において、溶媒は水それ自体である。従って、本発明のコーティングは、残留溶媒を記載するUSPチャプターにクラス1として列記される有機溶媒の使用を避けて、クラス3又はクラス2の溶媒を用いて調製することができる。好適には、本発明のコーティングは、クラス3の溶媒を単独で用いて調製することができ、その結果クラス2及びクラス1として列記される有機溶媒の使用を避け、そしてその結果最終的な親水性コーティングから残留溶媒の痕跡を除去するための更なる精製ステップに対する必要を回避する。
本発明の方法は、基材の表面に共有結合する親水性コーティングの形成をもたらす。共有結合は、基材の表面上の基と、成分A、B及びC(存在する場合には)上のアルケン及び/又はアルキン基との、並びに成分D(存在する場合には)の官能基との間の反応を介して達成される。
本発明の親水性コーティングが、成分A、B並びに任意選択のC及びDのフリーラジカル重合(本開示ではラジカル重合と呼ばれる)により形成することにより、表面に対して共有結合するコポリマーが形成する。実施態様において、ラジカル重合は、時々“Norrish タイプII”又は“タイプII”ラジカル開始剤と呼ばれるフリーラジカル開始剤(本開示ではラジカル開始剤と呼ばれる)を用いて、(基材の表面それ自体又は引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの表面下塗りコーティングであることができる)引き抜き可能な水素原子を含む表面から水素原子を引き抜くことにより開始される。別の実施態様において、ラジカル重合はバルクにおけるラジカルの生成により開始される(バルク中及び表面において、ラジカルは重合可能な基と反応する)。係るプロセスに関する開始剤は、熱的開始剤及び/又はラジカル開始剤である。これらのラジカル開始剤は、時々“Norrish タイプI”又は“タイプI”ラジカル開始剤と呼ばれる。
フリーラジカル開始剤(“ラジカル開始剤”)は、容易に再配列/分解してフリーラジカル種(開始種)を形成する。これは、成分A、B並びに(任意選択の)C及びD(実施態様(i))と、又は基材の表面上の反応基(実施態様(ii))と、次々に反応して更なるラジカル種を形成する。これらの2つのステップは、開始と総称される。フリーラジカル重合反応において、開始種により生成されるフリーラジカル種は、成分A、B並びに(任意選択の)C及びDの付加連鎖反応において、更に反応する。
光開始剤は、紫外又は可視光に曝露された際に、フリーラジカルが生成する化合物である。ラジカル形成のメカニズムに基づいて、光開始剤は一般的に2つのクラスに分類される。タイプIの光開始剤は、照射下において単分子の結合開裂を受けてフリーラジカルを生成する。タイプIIの光開始剤は、二分子反応を受け、光開始剤の励起状態が、第二の分子(共開始剤、通常Hドナー)と相互作用することにより、水素引き抜きメカニズムを介してフリーラジカルを生成する。続く重合は、通常、共開始剤から生じたラジカルにより開始される。紫外光開始剤は、タイプI及びタイプIIの両方が入手可能である。しかし、可視光の光開始剤は、ほとんど例外なく光開始剤のクラスのタイプIIに属する。
好適な紫外光開始剤としては、ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α‐ジアルコキシアセトフェノン、α‐ヒドロキシアルキルフェノン、α‐アミノアルキルフェノン及びアシルホスフィンオキシドが挙げられる。以下のセクションの見出し“表面から水素原子を引き抜くことのできるラジカル開始剤”におけるより詳細な議論を参照のこと。
コートされるべき表面が重合溶液と接触すると、重合は用いられる特定の開始剤に関する任意の適切な手段により開始される。例えば、ラジカル開始剤が光開始剤である場合、重合溶液の紫外光への曝露により重合が開始される。紫外光を用いて重合を開始する場合、任意の好適な紫外光源を用いることができ、例えば、UV‐A及び/又はUV‐B及び/又はUV‐C放射線を供給するFusion UVランプ又はOriel UVランプである。熱的開始剤を用いる場合、熱はオーブン又は発熱体等の任意の適切な手段により供給することができる。光開始剤を用いて重合を開始する場合、好ましくは反応は室温にて進める。
硬化不良をもたらす場合がある酸素阻害の問題を回避するために、イナートの硬化条件を用いてよい。
1つの実施態様において、重合は不活性の雰囲気下(例えばアルゴン雰囲気下での重合、例えば窒素雰囲気下での重合)で行う。
別の実施態様において、重合キネティクスを増加させ、及び硬化を改善させるために、重合に先立って重合溶液を不活性ガスでパージしてよい。重合溶液は、例えばアルゴンガス又は窒素ガスでパージしてよい。
実施態様(i)
第一の実施態様において、基材の表面と親水性コーティングとの間の共有結合は、親水性コーティングの成分を有する基材の表面上に表面結合のラジカルの反応を介して形成される。また、表面結合のラジカルは、基材の表面からの水素原子の引き抜きを介して生成される。
図1に示すように本実施態様において、表面と接触する液相中のラジカル開始剤が、基材の表面から水素原子を引き抜いて表面結合のラジカルを形成する際、重合は開始される。表面結合のラジカルは、成分A、B並びにC及びD(存在する場合には、また係る反応が可能であれば‐図1においては成分A及びBのみを示す)の少なくとも1つと反応して表面にコポリマーを共有結合させる。コポリマーは、全ての成分A、B並びにC及びD(存在する場合には)を介して(又は成分A若しくは成分B若しくは成分C若しくは成分D(存在する場合には)のいずれかとして既に存在していたコポリマーの成分を少なくとも介して)表面に共有結合することができる。成分の各々の相対的な量は、成分A及び/若しくは成分B並びに/又は成分C及び/若しくは成分D(存在する場合には)を介する共有結合の比率をある程度決定するであろう。しかし、優先的に表面結合のラジカルと反応する成分は、成分のアルケン及び/又はアルキン官能基の反応性によって決まる成分の相対的な反応性によっても決定される。成分A及びB((存在し、また係る反応ができる場合には)並びにC及びD)の比率が等しかったとき、次いで、最も活性のアルケン又はアルキン基を有する成分は、表面結合のラジカルと優先的に反応することが予期されるだろう。
好適には、成分A、B、C及びD(存在し、また反応できる場合には)のアルケン及び/又はアルキン基は、実質的に同等の速度にて表面結合のラジカルと反応するであろう。従って、成分A、B、C及びD(存在し、また反応できる場合には)により、又は成分A若しくは成分B若しくは成分C若しくは成分D(存在し、また反応できる場合には)のいずれかとして既に存在していたコポリマーの成分を少なくとも介することにより表面に結合したコポリマーの比率は、重合溶液中に存在する各成分の比率と直接的に関係する。例えば、成分Aがアクリル酸、及び成分Bがジアクリレート官能化PEGである場合、各成分のアルケン基は、本質的に同等の速度にて表面結合のラジカルと反応し、またコポリマーは、成分AとB両方を介して表面に結合するであろう。
従って1つの実施態様において、本発明は基材の表面に共有結合する親水性コーティングの形成方法であって、基材が、引き抜き可能な水素原子を含む表面を有し、前記方法が、
(a)表面と、成分A及びB、任意選択の成分C、任意選択の成分D及び表面から水素原子を引き抜いて表面結合のラジカルを生成できるラジカル開始剤を含む混合物とを接触させるステップであって、
成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、また好適にはこれからなり、
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなり、
成分Cが、存在する場合には、1つ以上(例えば1つ)のアルケン又はアルキン基を各々含む1種以上の有益な化学物質を含み、また好適にはこれからなり、並びに
成分Dが、存在する場合には、チオール、アルケン、及びアルキン基から独立に選択される2つ以上の官能基を各々含む1種以上の低分子量架橋剤を含み、また好適にはこれからなるステップ、
並びに
(b)成分A、成分B、並びに任意選択の成分C及びDの架橋コポリマーを形成するために、成分A、B及びC(存在する場合には)のアルケン及び/又はアルキン基並びに成分D(存在する場合には)の官能基が関与するラジカル重合を開始するステップであって、前記コポリマーが表面結合のラジカルの反応を介して表面に共有結合するステップ、並びに
(c)任意選択的に、1種以上の有益な化学物質を含み、また好適にはこれからなる成分Eを親水性コーティング中に組み込むステップであって、成分Eが成分A、B、C(存在する場合には)及びD(存在する場合には)とコポリマーを形成しないステップ
を含む方法を提供する。
上述したように、本実施態様において引き抜き可能な水素原子を含む表面を有する基材が要求される。
“引き抜き可能な水素原子”は、励起状態にあるものにより引き抜かれる又は除去されることのできる共有結合の水素原子として定義され、またその結果水素原子に元々共有結合していた原子においてフリーラジカルが生成する(少なくとも最初に)。引き抜き可能な水素原子は、通常、引き抜く際に安定化ラジカルに遅れて脱離する。ラジカルの安定性は、ラジカルを含む原子の性質(例えばそのハイブリダイゼーション)、ラジカルに近接する原子の性質(例えばラジカルの非局在化を可能にするであろう不飽和)及び更なる反応からラジカル中心を妨げる場合がある立体障害が挙げられる多くの要因に依存する。
引き抜き可能な水素原子を含む表面を有する基材は、引き抜き可能な水素原子を含む材料を意味する“引き抜き可能な水素原子を含む固有の表面”を有する場合があり、基材の表面はその材料で作られている(任意のコーティングプロセスに先立って)。
従って、1つの実施態様において、基材それ自体の表面は、(本開示では)引き抜き可能な水素原子を含む。引き抜き可能な水素原子を含む固有の表面を有する基材は、引き抜き可能な水素原子を有する基材の材料から形成される(又は表面の少なくとも一部がこれから形成される)。引き抜き可能な水素原子を有するように修飾されてよい、及び/又は引き抜き可能な水素原子を含む固有の表面を有するであろう基材の材料の例としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルブロックアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテル、シリコーン、ポリカーボネート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ゴム、シリコーンゴム、ポリヒドロキシ酸、ポリアリルアミン、ポリアリルアルコール、ポリアクリルアミド、及びポリアクリル酸、スチレン系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン及びこれらのコポリマー、これらの誘導体及びこれらの混合物が挙げられるが限定されることはない。これらのクラスの幾つかは、熱硬化性及び熱可塑性のポリマーとしてどちらも入手可能である。本開示では、用語“コポリマー”は、2つ以上のモノマー、例えば2、3、4、5その他諸々から形成される任意のポリマーに言及して用いられるものである。ポリ(D,L‐ラクチド)及びポリグリコリド及びこれらのコポリマー等の生体吸収性材料もまた有用である。有用なポリアミドとしては、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン9、ナイロン6/9及びナイロン6/6が挙げられるが、限定されることはない。係る材料の幾つかのコポリマーの例としては、PEBAX(登録商標)の商品名でペンシルベニア州フィラデルフィアのElf Atochem North Americaから入手できるポリエーテル‐ブロック‐アミドが挙げられる。別の好適なコポリマーは、ポリエーテルエステルアミドである。好適なポリエステルコポリマーとしては、例えば、HYTREL.RTMの商品名でデラウェア州ウィルミントンのDuPontから入手可能なもの等のポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート、ポリエステルエーテル及びポリエステルエラストマーコポリマーが挙げられる。スチレン末端ブロック、及びブタジエン、イソプレン、エチレン/ブチレン、エチレン/プロピレン等から形成されるミッドブロックを有するそのコポリマー等のブロックコポリマーエラストマーを、本開示において用いてよい。他のスチレン系ブロックコポリマーとしては、アクリロニトリル‐スチレン及びアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレンブロックコポリマーが挙げられる。また、ブロックコポリマーであって、ポリエステル又はポリアミドのハードセグメント及びポリエーテルのソフトセグメントで作られたブロックコポリマーである特定のブロックコポリマー熱可塑性エラストマーを、本開示において用いてもよい。他の有用な基材は、ポリスチレン、ポリ(メチル)メタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ塩化ビニル等の塩素含有ポリマー、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、フェノール樹脂、アミノエポキシ樹脂、ポリエステル、シリコーン、セルロースベースプラスチック及びゴム状プラスチックである。
これらの材料の組み合わせは、架橋あり及びなしで用いることができる。
ポリマー基材は、任意選択的にフィラー及び又は着色剤とブレンドしてよい。従って、好適な基材としては、着色された高分子材料等の色素性材料が挙げられる。
1つの実施態様において、引き抜き可能な水素原子を有する前記生体適合性材料は、PEBAX(登録商標)等のポリエーテルブロックアミドである。
別の実施態様において、材料は、絹又はウール、アガロース又はアルギネート等のタンパク質である。また、引き抜き可能な水素原子を有するように修飾することのできる、ある種の金属及びセラミックスも本発明に係る基材として用いてよい。好適な金属としては、生体適合性金属、チタン、ステンレス鋼、高窒素ステンレス鋼、金、銀、ロジウム、亜鉛、白金、ルビジウム、銅、及びマグネシウム、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、限定されることはない。好適な合金としては、L‐605、MP35N、エルジロイ等のコバルト‐クロム合金、ニッケル‐チタン合金(ニチノール等の)、タンタル、及びNb‐1%Zr等のニオブ合金等が挙げられる。セラミック基材としては、シリコーン酸化物、アルミニウム酸化物、アルミナ、シリカ、ハイドロキシアパタイト、ガラス、カルシウム酸化物、ポリシラノール、及びリン酸化物を挙げてよいが、限定されることはない。
1つの実施態様において、前記生体適合性金属は、ニチノール等のニッケル‐チタン合金である。
別の実施態様において、引き抜き可能な水素原子を有するように修飾されてよい、及び/又は引き抜き可能な水素原子を含む固有の表面を有するであろう基材としてはフッ素ポリマー等のフッ素化ポリマーが挙げられるが、限定されることはなく、例えば延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロカーボンコポリマー、例えば、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル(TFE/PAVE)コポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)のコポリマー、及びポリマー鎖間の架橋あり及びなしでの上記の組み合わせ、延伸ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリグリコール酸、ポリエステル、ポリアミド、エラストマー及びその混合物、これらのブレンド及びコポリマー又は誘導体が有用である場合がある。
または、基材は引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの表面コーティングでコートすることができる。従って、別の実施態様において、基材の表面は引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの表面コーティングである。引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの表面コーティングは、“引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの表面下塗りコーティング”又は“(引き抜き可能な水素原子を含むポ特定のポリマー)の表面下塗りコーティング”としても本開示では言及され、本発明の親水性コーティングが引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの表面コーティング上に適用されることを示す。引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの適用は、より均一に適用された成分A、B並びに任意選択のC及びDのコポリマーの後塗りコーティングをもたらす場合がある。十分な接着性を有する均一なコーティングは、規制の観点から望ましく、特定のコーティングの均一性は、性能仕様に適合するために要求されるだろう。また、層間剥離及び粒状化を防止すべく、下塗り層と基材との間の強い接着も規制の観点から望まれる。
本実施態様において、好適には、コートされるべき基材は、引き抜き可能な水素原子を含む固有の表面を有していない、又は引き抜き可能な水素原子の量が不十分であり、従って、ポリマーの表面下塗りコーティングが、要求される引き抜き可能な水素原子を含む表面を提供する。しかし、引き抜き可能な水素原子を含む固有の表面を有する基材は、引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの表面下塗りコーティングも有してよい。従って、更なる実施態様において、引き抜き可能な水素原子を含む表面を有する基材は、引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの表面下塗りコーティングでコートされる。これは、表面上の引き抜き可能な水素原子のより均一な分布を提供する更なる利点を有する。
本実施態様の少なくとも幾つかの側面において、親水性コーティングの適用は独立した基材である、すなわち、基材の少なくとも一部を引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの表面コーティングでコートすることができ、次いで(原理的には)基材の一部が親水性コーティングを有して提供することができる。従って、本実施態様においては、基材の表面上の引き抜き可能な水素原子の量又はタイプを、親水性コーティングの適用に先立って評価する必要はない‐ポリマーの表面コーティングは、要求される引き抜き可能な水素原子を提供する。
引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの表面下塗りコーティングを有する基材は、好適には重合条件下、適切なモノマーを基材の表面に施すことにより作製される。引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの例としては、カテコール官能基及び/又はキノンの官能基及び/又はセミキノン官能基を含むポリマーが挙げられる。1つの実施態様において、引き抜き可能な水素原子を含むポリマーは、カテコール官能基を含むポリマー、キノン官能基を含むポリマー及びセミキノン官能基を含むポリマーからなる群より選択される。
1つの実施態様において、引き抜き可能な水素原子を含むポリマーは、カテコール官能基を含む。前記カテコール官能基を構造式(III)に示す。
Figure 2020189140
(式中、Ra、Rb、Rc及びRdの少なくとも1つはポリマーに結合しており、またRa、Rb、Rc又はRdは好適にはHのままである。)
1つの実施態様において、引き抜き可能な水素原子を含むポリマーは、セミキノン官能基を含む。前記セミキノン官能基を構造式(IVa)又は構造式(IVb)に示す。
Figure 2020189140
(式中、Ra、Rb、Rc及びRdの少なくとも1つはポリマーに結合しており、またRa、Rb、Rc又はRdは好適にはHのままである。)
1つの実施態様において、引き抜き可能な水素原子を含むポリマーは、キノン官能基を含む。前記キノン官能基を構造式(Va)又は構造式(Vb)に示す。
Figure 2020189140
(式中、Ra、Rb、Rc及びRdの少なくとも1つはポリマーに結合しており、またRa、Rb、Rc又はRdは好適にはHのままである。)
1つの実施態様において、引き抜き可能な水素原子を含むポリマーは、カテコール官能基の構造式(III)並びに/又はセミキノン官能基の構造式(IVa)及び/若しくは構造式(IVb)並びに/又はキノン官能基の構造式(Va)及び/若しくは(Vb)である。
ポリドーパミン
1つの実施態様において、引き抜き可能な水素原子を含むポリマーは、ポリドーパミンである。ポリドーパミンは、カテコール官能基を含むポリマーの例である。別の実施態様において、引き抜き可能な水素原子を含むポリマーは、ポリドーパミンを含む。本発明の背景において議論したように、ポリドーパミンは、モノマードーパミンの重合により形成される。ポリドーパミンの正確な構造は、よく解明されてはいない。また、図3に示すように多くの構造が提案されてきた。
ドーパミンの重合は酸化的条件下で起こり、また空気(すなわち酸素)に対するわずかな曝露が重合の開始にとって十分である。ドーパミンの最初の酸化がカテコール部分で起こることは一般的に知られており、次いで、ドーパミンの別の部分と反応する、又は分子間環化(ペンダント第一級アミンを介して)を受けて窒素含有ビシクルを形成することができる。ポリドーパミンの構造Aは(国際公開第2010/006196号に記載のように)、5,6‐ジヒドロキシ‐3H‐インドール単位の繰り返しからなり、4及び7位で架橋するポリドーパミンを示唆する。構造B(Zhaoら、Polym. Chem.、2010、1、第1430〜1433頁に記載のように)は、類似のポリマーであるが、5,6‐ジヒドロキシ‐3H‐インドール単位が1つおきに5,6‐ジヒドロキシインドリン単位で置換されているポリマーを示唆する。構造Cは、先と同様に構造Aに類似しているが、5,6‐ジヒドロキシ‐3H‐インドール単位が1つおきに非環化ドーパミン分子で置換されているポリドーパミンに関する別の可能な構造として本発明者らにより提案されている。ポリドーパミンのこの構造は、従って第一級アミン官能基を含む。構造D(Kangら、Langmuir、2009、25、第9656〜9659頁に記載)も本発明者らによって提案されており、また窒素五員環においてのドーパミン分子間の結合及びカテコール環の間の結合を示唆する。この構造は、キノン環及びカテコール環がポリマー構造中に存在することも示唆する。最後に、構造E(Dreyerら、Langmuir、2012、28、第6428〜6435頁に記載)は、ポリドーパミンは共有結合していないが、代わりに5,6‐ジヒドロキシインドリン及びそのジオン誘導体を主成分とする、モノマーの超分子集合体である全く異なる構造を示す。
本発明の文脈において、ポリドーパミンの構造の表現は、本発明の方法及びコーティングの奏効にとって重要でなく、また上記の議論は背景の参照を単に包含することに留意されたい。
1つの側面において、本発明は、第一のコーティング及び第二のコーティングを有する基材であって、第一のコーティングはポリドーパミンの表面下塗りコーティングであり、また、第二のコーティングは成分A及びB、並びに任意選択の成分C及びDの架橋コポリマーを含む親水性コーティングであって、
成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、また好適にはこれからなり、
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなり、
成分Cが、存在する場合には、1つ以上(例えば1つ)のアルケン又はアルキン基を各々含む1種以上の有益な化学物質を含み、また好適にはこれからなり、並びに
成分Dが、存在する場合には、チオール、アルケン及びアルキン基から独立に選択される2つ以上の官能基を各々含む1種以上の低分子量架橋剤を含み、また好適にはこれからなり、
架橋コポリマーが、成分A、B及びC(存在する場合には)のアルケン及び/又はアルキン基、並びに成分D(存在する場合には)の官能基が関与するラジカル重合により形成し、
親水性コーティングが、1種以上の有益な化学物質を含み、また好適にはこれからなる成分Eを任意選択的に含み、成分Eが成分A、B、C、(存在する場合には)及びD(存在する場合には)とコポリマーを形成しない第二のコーティングであり、
並びに第二のコーティングが、第一のコーティングに共有結合している基材を提供する。
“第一のコーティング及び第二のコーティング・・・を有する基材”は、“第一のコーティング及び第二のコーティング・・・からなる基材”を意味するととってはならない(‐1種以上の更なるコーティングを第一のコーティングの適用に先立って基材に適用することができ、及び/又は1種以上の更なるコーティングを第二のコーティングの適用後に基材に適用することができる)ことに概して留意されたい。例えば、上記本発明の側面において、基材とポリドーパミンの表面下塗りコーティングとの間の1種以上の更なるコーティングが可能であり、及び/又は第二(親水性)コーティングの上に1種以上の更なるコーティングを適用することができる。
本開示で言及する“ポリドーパミン”は、好適にはドーパミン及び/又はドーパミン類縁体の重合により形成される。好ましくは、ポリドーパミンはドーパミンの重合により形成される。ドーパミン類縁体としては、ドーパミンと同一又は類似の生化学的経路を有する分子、及びチロシンの酸化誘導体を包含する、構造においてドーパミンに類似するものが挙げられる。1つの実施態様において、ドーパミン類縁体は構造式(II)の化合物である(式中、R1〜R9の1つ以上はHではない)。
Figure 2020189140
別の実施態様において、ドーパミンの類縁体は構造式(II)の化合物である(式中、R1〜R9はH、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルキニル、‐OH、‐CO2H、‐C(O)C1〜C8アルキル、‐C(O)C2〜C8アルケニル、‐C(O)C2〜C8アルキニルからなる群より独立に選択される)。好適には、構造式(II)の化合物は、少なくとも1つの引き抜き可能な水素原子を含む。
天然のドーパミン類縁体としては、以下が挙げられる。
Figure 2020189140
ポリドーパミンコーティングの調製方法
上述したように、空気(すなわち酸素)に曝露されたアルカリ性水溶液中のドーパミンは、付加的な反応なしで重合してポリドーパミンを形成するであろう。しかし、重合速度はドーパミン含有溶液に対する酸化剤の添加により増加させることができる。好適な酸化剤としては、過硫酸アンモニウム及び過硫酸ナトリウムが挙げられるが、限定されることはない。従って、1つの実施態様において、ポリドーパミンの表面コーティングは、基材の表面と、酸化剤及びドーパミン及び/又はドーパミン類縁体を含む混合物との接触により形成される。
ドーパミンの重合はまた、恐らく脱プロトン化及び酸化に対するカテコールヒドロキシ基の活性化のために、アルカリ性水溶液中においてより速く観察されてきた。しかし、例1.8に示されるように、本発明者らは有利には酸化剤の使用が、妥当な時間枠内で、中性又は酸性のpHにおいて、制御された方法において進行するドーパミンの重合を可能にすることを見出した。好適な酸化剤としては、過硫酸アンモニウム及び過硫酸ナトリウムが挙げられる。
従って、1つの実施態様において、ポリドーパミンの表面コーティングは、pH4〜10、例えばpH7において、基材の表面と、酸化剤及びドーパミン及び/又はドーパミン類縁体を含む混合物との接触により形成される。別の実施態様において、ポリドーパミンの表面コーティングは、pH<7例えばpH4〜7において形成される。更なる実施態様において、ポリドーパミンの表面コーティングは、pH5〜6.9例えば5.5〜6.5において形成される。ドーパミン及び/又はドーパミン類縁体の溶液のpHは、HCl又はNaOH等の任意の適切な酸又は塩基を各々用いて調節することができる。
従来技術の基本的な条件よりも酸性又は中性条件下における、ポリドーパミンの表面コーティングを有する基材のコーティングは、有利には、塩基にセンシティブな基材を本発明の親水性コーティングでコートすることを可能にする。しかし、本発明者らは、酸性又は中性条件(すなわちpH<7)下においてのドーパミン(又はドーパミン類縁体)の重合が、バルク中及びポリドーパミンのコーティングの表面上で形成されるポリドーパミンの粒子又は凝集体の沈殿を大いに低減させる更なる利点を有することを見出した。
例に記載の結果に基づいて、発明者らは、粒状化がかなりの程度起こる前に、適切な厚みのコーティングに達するためのドーパミンの適当な重合時間を可能にするためには、pH6程度の値が最適であったと結論付けた。より酸性pHにおいての重合反応はより遅いが、本発明者らは、重合の所定の時間の間、反応はより遅いキネティクスのために高度に制御され、並びにポリドーパミンの粒子及び凝集体の沈殿を最小化できることを観察した。本発明の背景において議論したように、コーティングの表面上の粒状化は、ある種の適用において問題である可能性がある。更に、例において議論するように、またWeiら、Polym. Chem.、2010、1、第1430〜1433頁により見出されたことを確認すると、酸化条件下、酸性pHにおいてのより遅い重合は、より速いアルカリ性条件下においての重合について観察されるものと少なくとも同程度に均一であるコーティングを作り出す。酸化条件下、酸性pHにおいて調製されるコーティングはより再現性が高いため、ポリドーパミンの粒状化が起こるプロセス時間が延長される。これは、製造の観点から利点である。
例1.9に示されるように、また例1aにおいて議論されるように、酸化剤の量は重合速度に影響し、また粒状化の量にも影響する可能性がある。例において、溶液中のドーパミンの量は1g/L〜5g/Lであり、また溶液中のAPSの量は0.6g/L〜3g/Lである。1つの実施態様において、許容可能な反応速度のために、1g/Lのドーパミン及び0.6g/LのAPSを用いると、粒状化はより低くなるように思われる。重合速度は、ドーパミン及び/又はAPSの濃度を増加させることにより増加する場合がある。ドーパミン又は類縁体の濃度は、典型的には0.5〜10g/Lであってよく、またAPSの濃度は典型的には0.1〜5g/Lであってよい。当業者は、重合反応のキネティクスを最適化するために、ドーパミンの濃度及び溶液中の酸化剤の濃度を調節することができる。
ドーパミンの重合は、水溶液中又は水とメタノール、エタノール、プロパノール及び/又はイソプロパノールとの混合物等の水性/有機混合物中において実施することができる。
溶液のpHは、バッファーで制御することができる(‐例えば、http://www.sigmaaldrich.com/life‐science/core‐bioreagents/biological‐buffers/learning‐center/buffer‐reference‐center.html.を参照のこと)。
例1及び1aにおいて議論するように、MESバッファーが好適であることが見出された。他の可能なバッファーとしては、ACES、PIPES、MOPSO、ビス‐トリスプロパン、BES、MOPS、TES、及びHEPESが挙げられる。
ポリドーパミンコーティングを形成するために必要とされる時間は、用いられる具体的な反応条件に応じて変化するであろう。例えば、酸化剤の添加は重合の速度を上げる場合があり、又は中性若しくは酸性pHの使用を可能にする場合がある。ポリドーパミンコーティングは、好ましくは効率的な製造にふさわしい時間の間に形成される。例えば、所望のポリドーパミン被覆を、24時間、12時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間又は30分間の範囲内で形成することができる。一般的原理として、重合時間が長いほど、形成するポリドーパミンのコーティングはより厚くなる。しかし、重合のある期間の後に、ポリドーパミンは上述した種々の問題を引き起こす粒状形で溶液から沈殿するであろう。従って、ドーパミンの最適な重合時間は、ポリドーパミンの十分な被覆を得るために十分な長さであるが、溶液中に形成し得る粒状化ポリドーパミンの制御を不能とするほどの長さではない。好適には、重合時間は24時間を超えない、例えば、最大で12時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間又は30分間である。
好適には、ポリドーパミンコーティングの厚みは5〜100nmであり、例えば、10〜50nmである。
好ましくは、ポリドーパミンコーティングは、室温にて形成されるが、重合はより高い/より低い温度にて実施することができる。
種々の基材上におけるポリドーパミンコーティングの詳細な形成方法を例1.1〜1.13に示し、また最適化された手順を例1.11に示す。
電荷(電圧)を用いてポリドーパミンを形成する可能な代替のアプローチは、Kangら、Angewandte Chemie、2012、vol.124、第1〜5頁に記載されている。
表面から水素原子を引き抜くことのできるラジカル開始剤
実施態様によれば、成分A、B並びに任意選択のC及びDの重合は、基材の表面から水素原子を引き抜いて、表面結合のラジカルを生成するラジカル開始剤により開始される。表面結合のラジカルは、水素原子が引き抜かれた表面に結合し、又はその範囲に留まるラジカルである。表面結合のラジカルは、次いで、成分A、B並びに任意選択のC及びDの少なくとも1つと反応して表面に共有結合する関連成分のコポリマーを形成する。
好ましくは、ラジカル開始剤は、重合反応の前又は後のいずれでも引き抜き可能な水素原子を含む表面に共有結合しない。
ベンゾフェノン以外のベンゾフェノンベースの好適なタイプIIの光開始剤としては、ベンゾフェノン‐3,3’‐4,4’‐テトラカルボン酸二無水物、4‐ベンゾイルビフェニル、4,4’‐ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’‐ビス[2‐(1‐プロペニル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4‐(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’‐ジヒドロキシベンゾフェノン、4‐(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、3,4‐ジメチルベンゾフェノン、3‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ヒドロキシベンゾフェノン、2‐メチルベンゾフェノン、3‐メチルベンゾフェノン、4‐メチルベンゾフェノン、メチルベンゾイルホルメート及びミヒラーケトンが挙げられるが、限定されることはない。他の好適なベンゾフェノンは、IGM樹脂からブランド名Omnipolで入手できる。上記の基材は、本開示では時々ベンゾフェノン誘導体と呼ばれる。
キサントンベースの好適なタイプIIの光開始剤としては、9‐キサンテノン、1‐ヒドロキシ‐3,7‐ジメトキシキサントン、1‐ヒドロキシ‐3,5‐ジメトキシキサントン、1‐ヒドロキシ‐3,5,6,7‐テトラメトキシキサントン、1‐ヒドロキシ‐3,5,6,7,8‐ペンタメトキシキサントン、1‐ヒドロキシ‐3,7,8‐トリメトキシキサントン及び2‐ベンゾイルキサントンが挙げられるが、限定されることはない。
チオキサントンベースの好適なタイプIIの光開始剤としては、1‐クロロ‐4‐プロポキシ‐9H‐チオキサンテン‐9‐オン、2‐クロロチオキサンテン‐9‐オン、2,4‐ジエチル‐9H‐チオキサンテン‐9‐オン、イソプロピル‐9H‐チオキサンテン‐9‐オン、10‐メチルフェノチアジン及びチオキサンテン‐9‐オンが挙げられるが、限定されることはない。他の好適なチオキサントンは、IGM樹脂からOmnipolのブランド名で入手できる。上記の基材は、本開示では時々チオキサントン誘導体と呼ばれる。
好適である場合がある種々の他の光開始剤としては、アントラキノン‐2‐スルホン酸ナトリウム塩一水和物、2‐tert‐ブチルアントラキノン、カンファーキノン、ジフェニル(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、9,10‐フェナントレンキノン及びフェニルビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドが挙げられるが、限定されることはない。
好適である場合があるカチオン性光開始剤としては、ビス(4‐tert‐ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ‐1‐ブタンスルホネート、ビス(4‐tert‐ブチルフェニル)ヨードニウムp‐トルエンスルホネート、ビス(4‐tert‐ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート、BOC‐メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフレート、(4‐ブロモフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(tert‐ブトキシカルボニルメトキシナフチル)‐ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4‐tert‐ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウム9,10‐ジメトキシアントラセン‐2‐スルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムニトレート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ‐1‐ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp‐トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、(4‐フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4‐メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、2‐(4‐メトキシスチリル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐1,3,5‐トリアジン、(4‐メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4‐メチルチオフェニル)メチルフェニルスルホニウムトリフレート、1‐ナフチルジフェニルスルホニウムトリフレート、(4‐フェノキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4‐フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、プロピレンカーボネート中に50質量%混合したトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩、プロピレンカーボネート中に50%混合したトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ‐1‐ブタンサホネート(butanesufonate)、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリス(4‐tert‐ブチルフェニル)スルホニウムパーフルオロ‐1‐ブタンスルホネート及びトリス(4‐tert‐ブチルフェニル)スルホニウムトリフレートが挙げられるが、限定されることはない。
1つの実施態様において、ラジカル開始剤は、ベンゾフェノン及びこれらの誘導体並びにキサントン及びこれらの誘導体からなる群より選択される。
ベンゾフェノン
1つの実施態様において、開始剤はベンゾフェノンである。ベンゾフェノンはタイプIIの光開始剤であり、また水素引き抜き/プロトン移動の高い量子効率のために、特にアミンと広く用いられている。ベンゾフェノンを用いる光開始重合の代表的な反応スキームを以下のスキーム1に示す。
Figure 2020189140
スキーム1に示すように、紫外光に曝露された際、ベンゾフェノンのトリプレット励起状態が形成され、別の分子(共開始剤)から水素を引き抜いてケチルラジカル([Ph2‐OH])及び共開始剤ラジカル(R)を形成することができる。立体障害及び不対電子の非局在化のために、通常、ケチルラジカルはビニル(すなわち不飽和)モノマーに対して全く反応しない。従って、通常、共開始剤ラジカルが重合を開始するであろう。本発明の文脈において、R‐Hは引き抜き可能な水素原子を含む表面を有する基材を表す。従って、トリプレット励起状態のベンゾフェノンは、前記表面から水素原子を引き抜いて、基材の表面上に表面結合のラジカルを形成する。これらの表面結合のラジカルは、次いで、成分A、B並びに任意選択的にC及び/又はD(スキーム1の“モノマー”)の少なくとも1つと反応して基材(スキーム1の“ポリマー”)の表面に共有結合する成分A、B並びに任意選択的にC及び/又はDのコポリマーを形成する。スキーム1に示されるラジカル開始剤としてのベンゾフェノンの説明は、他のラジカル開始剤に同様に適用できる。好ましくは、ラジカル開始剤はタイプIIの開始剤である。
本発明の方法において、水素原子をコートされるべき基材の表面から引き抜くことにより、表面結合のラジカルが生成する。このラジカルは、次いで成分A、B、C(存在する場合には)及びD(存在する場合には)の少なくとも1つと反応して表面とコーティングとの間に共有結合点を形成する。このことから、重合溶液中に存在するラジカル開始剤の量は、表面とコーティング全体との間の共有結合の量に影響を及ぼす可能性があり、またその結果として、最終的な親水性コーティングの耐久性及び潤滑性に影響を及ぼす可能性がある。
例2に記載のように、エタノール中のベンゾフェノンの種々の濃度の吸光度を測定する実験を実施した。例2において詳細に議論されているように、本発明者らは、ベンゾフェノンがその水素引き抜き特性を効果的に発揮するために、ベンゾフェノンの濃度は好ましくは少なくとも1mmol/Lであることを見出した。濃度は、溶液中において評価した。硬化前の、溶媒の蒸発後の表面におけるベンゾフェノンの実際の濃度は、1mmol/Lより高いと思われる。
しかし、重合溶液中のベンゾフェノンの量の相互作用的な増加は、最終的な親水性コーティングの特性を連続的に向上させるであろうとは限らない。ベンゾフェノンは、その2つの芳香環のために極めて親水性であり、また水への乏しい溶解度を示す。ベンゾフェノンの濃度が高すぎると、これは、基材の表面に共有結合するベンジドロールをもたらす中間ベンゾフェノンラジカルと表面結合のラジカルとの反応を包含するラジカル‐ラジカル終端等の副反応をもたらすであろう。これは、最終的なコーティングの表面上の疎水性領域の原因となり、その親水性(吸水するためのその能力の減少を介して)及びその潤滑性を減少させる。高濃度のベンゾフェノンの使用の更なる不利益は、低分子量の溶出可能物の量が増加することである。従って、重合混合物中のベンゾフェノンの上限は、好適には約0.5〜5質量%である。1つの実施態様において、ベンゾフェノンの濃度は0.1〜100mMである。
図4に概略的に示される本発明の本実施態様の側面
ラジカル開始剤の組み合わせ
ラジカル重合は、1つ以上のラジカル開始剤の使用によって重合を開始することにより増大する場合がある。1つの実施態様において、ステップ(a)のラジカル開始剤は、2種以上のラジカル開始剤の混合物、特に2種以上の紫外光開始剤である。1つの実施態様において、ステップ(a)のラジカル開始剤は、ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α‐ジアルコキシアセトフェノン、α‐ヒドロキシアルキルフェノン、α‐アミノアルキルフェノン及びアシルホスフィンオキシドからなる群より選択される2種以上の紫外光開始剤の混合物である。1つの実施態様において、ステップ(a)のラジカル開始剤は、ベンゾフェノン及び/又はこれらの誘導体並びにチオキサントン及び/又はこれらの誘導体の混合物である。好適には、ステップ(a)のラジカル開始剤はベンゾフェノン及びチオキサントンの混合物である。
各紫外光開始剤は、特定の波長の紫外照射を吸収し、結果的に紫外照射のある波長は吸収されないであろう。ラジカル開始剤の効率は、第一の紫外開始剤が吸収しないであろう波長の紫外照射を吸収するであろう第二の紫外光開始剤の添加により向上させることができる。これは、ベンゾフェノン及びチオキサントンについて図12に示され、いかにこれらの2つの光開始剤がこの点において相補的であるかを示す。
ベンゾフェノンはベンゾフェノンの誘導体との組み合わせで用いてよく、例えば、放射線スペクトルのより平らな範囲を有する組み合わせを提供する。
本実施態様(i)に係る本発明のコーティングでコートした基材を、例に記載の方法に準拠して作製した。
実施態様(ii)
第二の実施態様において、液相中において表面と接触して形成したフリーラジカルにより開始したプロセスにおいて、基材の表面上の反応基は、成分A及びB並びに任意選択の成分C及びDの少なくとも1つと反応して表面にコポリマーを共有結合させる。
図2に示されるように、本実施態様において、重合は基材の表面上の重合可能な官能基と、成分A、B及びC(存在する場合には)上のアルケン及び/又はアルキン基、並びに成分D(存在する場合には)の官能基との間で開始され、基材の表面に共有結合する成分A、B並びに任意選択のC及び/又はDのコポリマーをもたらす(図2には基材の表面上のアルケン基、並びに成分A及びBのみを示す)。実際には、基材の表面上の重合可能な官能基は、コポリマーの共有結合のためのアンカー基として作用する。基材の表面上の好適な官能基としては、アルケン、アルキン及びチオール基が挙げられる。
従って、別の実施態様において、本発明は基材の表面に共有結合する親水性コーティングの形成方法であって、基材が重合可能な官能基を含む表面を有し、前記方法が、
(a)表面と、成分A及びB、任意選択の成分C、任意選択の成分D及びラジカル開始剤を含む液相混合物とを接触させるステップであって、前記ラジカル開始剤が、液相中においてラジカルを生成することができ、
成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、また好適にはこれからなり、
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また好適にはこれからなり、
成分Cが、存在する場合には、1つ以上(例えば1つ)のアルケン又はアルキン基を各々含む1種以上の有益な化学物質を含み、また好適にはこれからなり、並びに
成分Dが、存在する場合には、チオール、アルケン、及びアルキン基から独立に選択される2つ以上の官能基を各々含む1種以上の低分子量架橋剤を含み、また好適にはこれからなるステップ、
並びに
(b)成分A、成分B、並びに任意選択の成分C及びDの架橋コポリマーを形成するために、成分A、B及びC(存在する場合には)のアルケン及び/又はアルキン基、基材の表面の重合可能な官能基、及び成分D(存在する場合には)の官能基が関与するラジカル重合を開始するステップであって、前記コポリマーが表面に共有結合するステップ、並びに
(c)任意選択的に、1種以上の有益な化学物質を含み、また好適にはこれからなる成分Eを親水性コーティング中に組み込むステップであって、成分Eが成分A、B、C(存在する場合には)及びD(存在する場合には)とコポリマーを形成しないステップ
を含む方法を提供する。
上記で議論したように、表面における引き抜き可能な水素原子に対する必要は、表面がコポリマーの共有結合のためのアンカー基として作用することのできる基を含む場合は回避される。例えば、表面は重合反応に関与することのできるアルケン及び/又はアルキン又はチオール基を含むことができる。実施態様において、表面はポリドーパミン表面であり、ポリドーパミンは、アルケン及び/又はアルキン基又はチオール基で官能化される。係るポリドーパミン表面は、少なくともある割合のアルケン及び/又はアルキン又はチオール基官能化ドーパミン(又は類縁体)を含むドーパミン及びドーパミン類縁体の重合により作製することができる。好適には、合成のドーパミン類縁体は、ドーパミンの第一級アミン官能化により形成される。
この種のドーパミン類縁体の例を以下に示す。
Figure 2020189140
係るドーパミン類縁体は、実施態様(ii)に関して上記したポリドーパミンコーティングの調製方法を用いて重合することができる。
液相中においてラジカルを生成することのできるラジカル開始剤
液相中においてラジカルを生成することのできるラジカル開始剤としては、光開始剤(タイプI及びタイプIIのラジカル開始剤)並びに熱的開始剤が挙げられる。
タイプIのラジカル開始剤の例としては、ベンジル、ベンゾイン及びアセトフェノンベースの光開始剤が挙げられる。
ベンジル及びベンゾインベースの光開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、4,4’‐ジメトキシベンゾイン及び4,4’‐ジメチルベンジルが挙げられるが、限定されることはない。
アセトフェノンベースの光開始剤としては、2‐ベンジル‐2‐(ジメチルアミノ)‐4’‐モルホリノブチロフェノン、3,6‐ビス(2‐メチル‐2‐モルホリノプロピオニル)‐9‐オクチルカルバゾ−ル、4’‐tert‐ブチル‐2’,6’‐ジメチルアセトフェノン、2,2‐ジエトキシアセトフェノン、2,2‐ジメトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、ジフェニル(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2‐ヒドロキシ‐2‐メチルプロピオフェノン、4’‐エトキシアセトフェノン、3’‐ヒドロキシアセトフェノン、4’‐ヒドロキシアセトフェノン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2‐ヒドロキシ‐4’‐(2‐ヒドロキシエトキシ)‐2‐メチルプロピオフェノン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチルプロピオフェノン、2‐メチル‐4’‐(メチルチオ)‐2‐モルホリノプロピオフェノン及び4’‐フェノキシアセトフェノンが挙げられるが、限定されることはない。
熱的開始剤を用いて、成分A及びB並びに任意選択のC及びDのラジカル重合を開始してもよい。熱的開始剤は、加熱すると均等開裂して重合プロセスを開始させるフリーラジカルを生成する。理想的には、熱的開始剤は室温において比較的安定であるのがよいが、重合温度においては、反応速度の維持を確保するために、十分に速く分解するのがよい。光開始剤よりも、熱的開始剤の使用がコートされるべき基材によっては好ましい場合がある。チューブ等の基材は、可視又は紫外光に曝露することが困難である又は実際に不可能であるといっていい内表面を有する。熱は、基材の全ての部分に対してむらなく分配することができるため、熱的開始剤を用いることはこの状況においてより実用的であろう。
熱的開始剤の例としては、tert‐アミルペルオキシベンゾエート、4,4‐アゾビス(4‐シアノバレリアン酸)、1,1’‐アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’‐アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾイルペルオキシド2、2,2‐ビス(tert‐ブチルペルオキシ)ブタン、1,1‐ビス(tert‐ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5‐ビス(tert‐ブチルペルオキシ)‐2,5‐ジメチルヘキサン、2,5‐ビス(tert‐ブチルペルオキシ)‐2,5‐ジメチル‐3‐ヘキシン、ビス(1‐(tert‐ブチルペルオキシ)‐1‐メチルエチル)ベンゼン、1,1‐ビス(tert‐ブチルペルオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、tert‐ブチルヒドロペルオキシド、tert‐ブチルペルアセテート、tert‐ブチルペルオキシド、tert‐ブチルペルオキシベンゾエート;tert‐ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4‐ペンタンジオンペルオキシド、過酢酸及び過硫酸カリウムが挙げられる。
他の実施態様
更なる実施態様において、基材の表面と親水性コーティングとの間の共有結合は、実施態様(i)及び(ii)両方を包含する重合(例えば基材の表面が引き抜き可能な水素原子及び活性の官能基両方を含む場合)を介して形成される。
実施態様(i)及び(ii)両方において、成分A、B並びに任意選択的にC及びDの重合により形成されるコポリマーは、ランダムコポリマーであり、ポリマー鎖中の特定点において成分の与えられたタイプを発見する可能性は、重合溶液中におけるその成分のモル分率に等しい。
1つの実施態様において、基材の表面は、引き抜き可能な水素原子、及び重合溶液中において成分の反応基と反応することのできる反応基の両方を含む。本実施態様において、ラジカル開始剤の選択は、基材の表面に対する親水性コーティングの共有結合につながる開始経路を決定づけるであろう。従って、タイプIIの開始剤を選択する場合、実施態様(i)に記載のように共有結合が形成されるであろう。タイプI又は熱的開始剤を選択する場合、実施態様(ii)に記載のように共有結合が形成されるであろう。タイプIIの開始剤及びタイプI又は熱的開始剤の両方を選択する場合、実施態様(i)及び(ii)に記載のプロセスの混合を介して、共有結合が形成されるであろう。
本発明の好ましい側面によれば、ポリドーパミンの第一の下塗りコーティング層及び成分A及びBの架橋コポリマーを含む第二の親水性コーティング層を有する表面を有する基材であって、
成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基(例えば、成分Aはアクリル酸、メタクリル酸及びこれらの混合物から選択される)を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基(例えば、成分Bは上記で定義した構造式(I)及び(II)の化合物から選択される)を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、
架橋コポリマーが、成分A及びBのアルケン及び/又はアルキン基が関与するラジカル重合により形成され、
並びに、第二の親水性コーティング層が、ポリドーパミンの第一の下塗りコーティング層に共有結合する基材が提供される。前記共有結合は、好適には親水性コーティングの成分を有するドーパミン上の表面結合のラジカル(表面結合のラジカルは、ドーパミンからの水素原子の引き抜きを介して生成する)の反応を介して達成される。
本発明の好ましい側面によれば、基材の表面に共有結合する親水性コーティングの形成方法であって、前記方法が、
(a)ドーパミンの重合が起こり得るような(例えば酸化剤の存在下で)条件下で、コーティングとドーパミンとを接触させることにより基材上のポリドーパミンの第一の下塗りコーティング層を作製するステップ、
(b)ドーパミンで下塗りされた基材と、成分A及びB並びにラジカル開始剤を含む混合物とを接触させるステップであって、
成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基(例えば、成分Aはアクリル酸、メタクリル酸及びこれらの混合物から選択される)を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、並びに
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基(例えば、成分Bは上記で定義した構造式(I)及び(II)の化合物から選択される)を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、
並びに
(c)成分A及び成分Bの架橋コポリマーを形成するために、成分A及びBのアルケン及び/又はアルキン基が関与するラジカル重合を開始させるステップであって、前記コポリマーがポリドーパミンの第一の下塗りコーティング層に共有結合するステップ
を含む方法が提供される。
本発明の方法の更なる側面
引き抜き可能な水素原子を含むポリマーに対する接着性、又は有益な化学物質を任意選択的に含むコーティングに対する接着性を向上させるために、コーティングに先立って、基材の表面を洗浄又は前処理することができる。表面の前洗浄又は前処理は、いずれかのコーティングの均一性も向上させる場合がある。
好適な洗浄剤又は前処理剤としては、エタノール又はイソプロパノール(IPA)のような溶媒、アルコール及び水酸化物化合物(例えば水酸化ナトリウム)の水溶液の混合物を含む溶液等の高pHの溶液、水酸化ナトリウム溶液等、テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)を含む溶液、塩基性ピラニア(アンモニア及び過酸化水素)、酸性ピラニア(硫酸及び過酸化水素の混合物)、並びに硫酸及び過マンガン酸カリウム又は種々のペルオキソ硫酸又はペルオキソ二硫酸溶液(また、アンモニウム、ナトリウム、及びカリウムの塩、例えば過硫酸アンモニウム)又はこれらの組み合わせを包含する他の酸化剤が挙げられる。
2つの具体的な前処理方法‐方法A及び方法B‐を、基本手順に記載する。方法Aは、コートされるべき基材をIPA処理することを含み、一方で方法Bにおいては、基材をIPAで処理し、次いでAPSの溶液で処理する。例1aにおいて議論するように、前処理方法Bは、方法Aが用いられた場合よりもポリドーパミンのより均一なコーティングを作製した。従って、1つの実施態様において、ポリドーパミンの表面コーティングの形成に先立って、基材の表面を酸化剤で前処理する。別の実施態様において、ポリドーパミンの表面コーティングの形成に先立って、基材の表面をIPA及び酸化剤で処理する。更なる実施態様において、ポリドーパミンの表面コーティングの形成に先立って、コートされるべき表面をIPA及び過硫酸アンモニウムで前処理する。
引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの表面下塗りコーティングで基材をコートする際、下塗りステップ間の基材のアライメントは、基材の表面上で観察される粒状化の量に影響を与える可能性がある。引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの表面下塗りコーティングがポリドーパミンである場合、本発明者らは、下塗りの間に基材の水平なアライメントが、堆積(堆積作用を介して)及びバルク溶液中で形成されたポリドーパミンの粒子/凝集体の接着をもたらすであろうことを観察した。大規模なすすぎは、悪影響を与えるとして知られる粒子/凝集体を除去するために必要である。基材の垂直なアライメントは、バルク溶液中で形成したポリドーパミンの粒子/凝集体の接着を最小化するための下塗りステップにおいて好ましい。より少ない数の凝集体/粒子が下塗りした基材上に存在するであろうから、垂直なアライメントの方法は同様の大規模なすすぎを必要としない。
親水性コーティングの性質
コーティングの潤滑性を、基本手順及び例3bに記載の潤滑性試験を用いて測定することができる。
実施態様において、親水性コーティングは潤滑であり、潤滑性試験を用いると、例えばコーティングの潤滑性は<100g、例えば<50g例えば<15gである。
より一般的には、潤滑性試験を用いると、コーティングの潤滑性は<200gである場合がある。コーティングが潤滑性以外の性質(例えば有益な化学物質が薬理効果のある化学物質である場合)を付与する有益な化学物質を含む場合、許容できる潤滑性は、より高い値であることができる。
コーティングの耐久性を、基本手順及び例3bに記載の耐久性試験を用いて測定することができる。1つの実施態様において、耐久性試験を用いると、コーティングの耐久性は<50g、例えば<25g、例えば<15gである。
例によって説明するように、本発明のコーティングは、PEBAX及びステンレス鋼シャフトに適用され、また全てが良好な耐久性及び潤滑性を有することがわかった。
理論により結合することを望むことなしに、本発明者らは、本発明のコーティングの良好な耐久性は、モノマー成分A及びB並びに任意選択的にC及びDのコポリマーと、基材の表面との間の共有結合の結果であると考えている。実施態様において、前記共有結合は、(基材の表面上の)表面結合のラジカルと、モノマー成分A及びB並びに任意選択的にC及びDとの反応により形成する。
1つの実施態様において、コーティングはヘパリンを含み、またヘパリンの密度は、ヘパリン密度評価試験において>0.1μg/cm2、例えば>0.5μg/cm2である。1つの実施態様において、コーティングは抗血栓薬であり、また血液接触評価試験において残留血小板は>70%の値を維持している。
別の実施態様において、コーティングは抗菌剤を含み、また阻止帯の測定の際、最大で15日間抗菌効果を示す。
更なる実施態様において、ISO10993‐5に準拠して測定されるように、コーティングは生体適合性である。
本発明に係る親水性コーティングは、少なくとも幾つかの実施態様において、以下の1つ以上の利点を有することが期待される。
粒状化に対する感受性がより低いこと。例えば粒状化試験に準拠して測定する、
高い耐久性。例えば耐久性試験を用いて測定する、
良好なコーティング均一性を有すること。例えば染色法及び外観検査を用いて測定する、
高い潤滑性。例えば潤滑性試験又はウェットグローブ試験を用いて測定する、
成分C及び/又はEが存在し、かつ、ヘパリン等の抗凝固剤である場合、良好な抗血栓性。例えば血液接触評価試験を用いて測定する、
成分C及び/又はEが存在し、かつ、抗菌剤である場合、良好な抗菌活性。例えば阻止帯試験を用いて測定する、
殺菌に対し安定であること、
良好な生体適合性及び低細胞毒性。例えばISO10993‐5に準拠して測定する。
本発明に係る方法は、少なくとも幾つかの実施態様において、以下の1つ以上の利点を有することが期待される。
USPチャプターに記載の残留溶媒にクラス3及びクラス2溶媒として列記される溶媒以外の有機溶媒に対する必要(特にクラス3として列記された溶媒以外の有機溶媒の必要を除外すること)及び係る残留有機溶媒の除去のために必要とされる余分な反応ステップを除外すること、
コーティングが多くの異なる基材の表面に適用可能であるような広範な適用性。
定義及び略語
‘C1〜C8アルキル’は、炭素数1〜8の直鎖又は分岐の脂肪族炭素鎖を指し、例えばメチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、イソブチル、t‐ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチル並びにメチレン、エチレン等の対応するアルキレン基である。
‘C2〜C8アルケン’は、炭素数2〜8かつ少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を含む直鎖又は分岐の脂肪族炭素鎖を指す。
‘C2〜C8アルキン’は、炭素数2〜8かつ少なくとも1つの炭素‐炭素三重結合を含む直鎖又は分岐の脂肪族炭素鎖を指す。
AA アクリル酸
APS 過硫酸アンモニウム
BP ベンゾフェノン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
d.i. 脱イオン
dura. 耐久性
EDC 1‐エチル‐3‐[3‐ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩
EO エチレンオキシド
EtOAc 酢酸エチル
FTIR フーリエ変換赤外分光
HEMA 2‐ヒドロキシエチルメタクリレート
IPA イソプロパノール
lubr. 潤滑性
分 分
MES 2‐(N‐モルホリノ)エタンスルホン酸
NHS N‐ヒドロキシスクシンイミド
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PEG ポリエチレングリコール
RH 相対湿度
TEA トリエチルアミン
TASSF 試験の定常状態の力の平均
THF テトラヒドロフラン
tris トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
QCM 石英結晶マイクロバランス

基本手順
化学品
ドーパミン塩酸塩(ドーパミン)、ベンゾフェノン、エタノール96%、イソプロパノール、クロルヘキシジン、トリエチルアミン、塩化アクリロイル、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、塩酸37%、ピリジン、メタクリル酸無水物、ヘパリンナトリウム塩、N‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐N’‐エチルカルボジイミド塩酸塩、2‐アミノエチルメタクリレート塩酸塩、テトラヒドロフラン、2‐(N‐モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩、リン酸緩衝生理食塩水、炭酸銀、アクリル酸及びジヒドロキシル官能化PEGバリアント(4kDa、8kDa及び20kDa)を、Sigma‐Aldrichから購入し、また認められたように使用した。分子量が10kDaであるポリエチレングリコール(ジアクリレート化PEG)をCreative PEG Worksから購入し、また認められたように使用した。分子量8kDaのジアクリレート化PEGを例7に準拠して合成した。トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及び過硫酸アンモニウムをVWRから購入し、また認められたように使用した。ポリエチレンイミンをBASFから購入した。
材料
PVCチューブ(i.d.3mm)はAction Technologyから購入した。
PEBAXシャフト(BaSO4充填の、未充填の、着色の、非着色の)はArkemaから購入した。
スライドガラスはVWRから購入した。
QCM金結晶はQ‐Senseから購入した。
評価方法
各方法により評価したパラメーターを、丸括弧中に与える。
潤滑性試験(潤滑性)
潤滑性試験はHarland FTS5000フリクションテスターで実施する。別段の記述がない限り、試験の前に、全てのシャフトを37°Cに設定したd.i.ウォーターバス中に1分間浸漬して水を吸収させる。潤滑性は、試験の定常状態の力の平均(TASSF)として与えられる。これは、サイクル1〜15の間のサイクルフォースの平均をとることにより算出される。プルフリクション試験のパラメーターは、サイクル=15、ストローク長=1〜5cm(例中で変化)、速度=0.8cm/s、加速度=0.2秒、力=300g及びポーズ=0秒である。例3b及び表2を参照のこと。
ウェットグローブ試験(潤滑性)
ウェットグローブ試験は、潤滑性を試験する代替の方法である。潤滑性コーティング(潤滑性試験において<100g)は、水中に浸漬した後にウェットグローブを用いると滑りやすく感じる。
耐久性試験(耐久性)
耐久性は、潤滑性試験を実施する際に、サイクル13、14及び15の平均の力をとり、またこの値とサイクル3、4及び5の力の平均で得られる値との差をとることにより算出される。デュロメーターが60であるシリコーンゴムパッドを例に関して用いる。例3b及び表2を参照のこと。
サンプルの外観検査(ポリドーパミン下塗りの均一性及び被覆)
サンプルの外観検査を、ポリドーパミン下塗り層の均一性、すなわち表面の被覆を評価するために実施した。例3aを参照のこと。
溶液の外観検査(ポリドーパミン下塗りキネティクス及び粒子の沈殿)
重合溶液の外観検査を、下塗り溶液の色の変化、すなわち下塗りキネティクスを評価するために実施した。外観検査を用いて重合溶液中における粒子の形成も評価した。例3aを参照のこと。
粒状化試験(溶液中における粒状化)
患者が医療用デバイスの展開中に曝される可能性のある粒状化を評価するモデル方法は、シミュレートされた展開系でシミュレートされた使用試験を実施することである。係るシステムおいて、血流を通って移動するようにデザインされたデバイスは、患者の血管系を通ってデバイスがいかに移動するであろうかを模倣するガラス又はプラスチックの静脈のいずれかからなる蛇行した経路に適用される。発明者らは、典型的なカテーテル長に亘る臨床的使用の代表例である種々の角度を含めた。
実験後、フィルター処理した脱イオン水を蛇行した経路を通して流すことにより、サンプルから粒子を集める。捕集媒体中の粒子は、Accusizer Particle Sizer(780/SIS PSS NICOMP、 Santa Barbara、米国カリフォルニア州)により、United States Pharmacopeia(USP)monograph 788に記載の試験方法に準拠して小体積の注入物に関して分析することができる。試験した単位中に存在する粒子の平均数が10μm以上の容器当たり6000を超えない、及び25μm以上の容器当たり600を超えない場合、調製品は試験に適合する(“可”とする)、例3b及び表2を参照のこと。
捕集媒体中の粒子は、外観検査により分析してもよい。この場合において、粒子を含む蛇行した経路からの溶液のフラクションは、フィルターメンブレン上にろ過され、次いで顕微鏡検査法を用いて粒子の外観検査をする。ろ紙は、セクションに分けられる。目に見える粒子の注意深いカウントを1つ以上の代表的なセクション内で実施し、またそのセクション由来の粒子をセクションの総数に乗じることにより、粒子の総量を評価する。
USP基準に適合しない(すなわち表2に“可”と示されていない)調製液は、コートされるべき基材の表面上の粒状化の量が留意事項ではない(例えばコーティングに関する粒状化のレベルが規制審査に支配されないある種の非医療用基材又はデバイス又は医療用デバイス)用途においては依然として有用性を有する可能性があることに留意されたい。
UATR‐FTIR分光法(コーティングの組成)
コーティングのFTIR分析をPerkin Elmer UATR 100Sで実施した。各サンプルを3*16回スキャンし、そして加工して各コーティングの平均スペクトルを出した。サンプルは、比較可能なデータを得るために、1775cm-1〜1700cm-1で規格化した。例3a及び図7を参照のこと。
エネルギー分散型X線分光を伴う走査電子顕微鏡法(SEM‐EDS)(表面の粒状化及び元素組成)
適切なポリドーパミン下塗りサンプルのSEM像を、Hitachi TM3000 table top SEMを用いて捕えた。表面元素の定量化は、BrukerのEDS Quantax70を用いて実施した。例1aを参照のこと。
接触角の評価(コーティングの被覆)
静的水接触角測定を、First Ten Angstrom により製造されたFTA200装置で実施した。D.i.水(液滴サイズはおよそ10μl)を注射器を用いてサンプル上に滴下する。次いで高解像度カメラを使用して液滴の画像を捕える。静的接触角(液体/固体及び液体/空気界面間の角度)を画像解析プログラムを用いて評価する。例1aを参照のこと。
染色法(コーティングの均一性)
コートされた基材は、2分間溶液中に浸漬し、次いで大規模な水洗浄によりトルイジンブルー染色溶液(200mg/L、水中)を施すことができる。青色又は紫色が、正味の負電荷(例えばポリアクリル酸又はヘパリン官能基)を含むコーティングの表面上で観察される。例3aを参照のこと。
コートされた基材は、2分間溶液中に浸漬し、次いで大規模な水洗浄により酸性のポンソーS染色溶液(200mg/L、水中)を施すことができる。赤色が、正味の正電荷(例えば第四級窒素官能基)を有するコーティングの表面上で観察される。例5aを参照のこと。
テープ試験(乾燥状態の接着性)
接着テープタイプ(Sellotape Diamond Ultra Clear)をピース上に10秒間強く押し付け、そして引き剥がした。テープに接着したコーティング材料、及び基材上に残っているコーティング材料の度合を比較して、本発明の種々のコーティング間の相対的な接着性を評価することができる。例1aを参照のこと。
消散モニタリング石英結晶マイクロバランス(QCM‐D)(プライマーの厚み)
消散モニタリング石英結晶マイクロバランス法(QCM‐D)を用いてポリドーパミン下塗り層の厚みを評価する。プライマーの厚みは、金で被覆された結晶(QSX301、Q‐Sense)上でモニターする。例1aを参照のこと。
深さ方向分析を含むX線光電子分光法(XPS)(プライマー及びコーティングの組成)
X線光電子分光法(XPS又はESCA)は、固対材料の非破壊の化学分析を提供する最も広く用いられている表面のキャラクタリゼーション法である。サンプルを、サンプル表面の上端1〜10nmから放出されるべき光電子を発生させる単一エネルギーのX線で照射する。電子エネルギー分析は、光電子の結合エネルギーを評価する。水素及びヘリウムを除く全ての元素の定性的及び定量的な分析が可能であり、検出限界は約0.1〜0.2アトミックパーセントである。分析のスポットサイズは10μm〜1.4mmの範囲である。元素及び化学状態のマッピングを用いて性状の表面イメージを作製することも可能である。深さ方向分析は、角度依存測定を用いて表面の上端10nm以内の非破壊分析、又はイオンエッチング等の破壊分析を用いてコーティング深さ全幅について得ることが可能である。
阻止帯(ZOI)(抗菌機能の溶出)
コートされたサンプルを、バクテリアを植菌した寒天プレートを用いてコートされたサンプルが特定のバクテリアの成長に影響を与えるか否かを試験する阻止帯(ZOI)試験において評価した。バクテリアが、特定のサンプルの影響を受けやすい場合、クリアな領域はサンプルを取り囲み、そこではバクテリアは成長することができない(阻止帯と呼ばれる)。例5.6及び例5aを参照のこと。
表面阻止(溶出しない抗菌機能)
ZOI試験からのコートされたサンプルをバッファーで穏やかにすすぐ。次いで、サンプルを新たな寒天プレート(バクテリアの植菌なし)上に置き、そして付着したバクテリアの成長を評価する。バクテリアが表面コーティング中の成分の影響を受けやすい場合、コロニーがない又はコロニーの少ない量が観察される。
ヘパリン密度評価試験(定量的なヘパリンの接着性)
表面固定化ヘパリンの定量化は、基本的にSmith R.L. and Gilkerson E(1979)、Anal Biochem 98、第478〜480頁に記載のように実施することができる。例5.2〜5.4及び例5aを参照のこと。
ドキソルビシン染色(薬剤取り込み/溶出)
コーティングを含む薬剤は薬剤の溶液中にコーティングを浸すことにより調製できる。ドキソルビシンに浸す場合、コーティングの赤い着色は、ドキソルビシンがうまくコーティング中に取り込まれることを示す。コーティングを2MのNaCl溶液に曝すことにより、薬剤を放出することができる。赤色の減少したレベルは、ドキソルビシンがコーティングから溶出したことを示す。蛍光もまた、ドキソルビシンの取り込み及びそれに続く放出を検出するために用いてよい。例5.5及び例5aを参照のこと。
血液接触評価試験(血小板損失)
血液接触評価は、抗血栓性を評価するためにヘパリンで修飾したサンプル上で実施した。第一に、カテーテルを0.15M生理食塩水溶液で15分間洗浄して全ての緩く結合したヘパリンを洗い流し、そして安定したコーティング残渣を確実にした。洗浄したコーティングを、全血を包含するヘパリン化ファルコンチューブに入れ、そして20rpmにセットしたロッキングチューブローラー上に置いて回転させた(代表的な手順に関してExperimental Medicine and Biology、2013、735、第257〜270頁のEkdahl K.N.、Advancesを参照のこと)。手を加えていない血液及びチューブから採取した血液からの血小板を、細胞計数器中でカウントして血小板の損失を測定した。血小板の多大な損失は、コーティングの性能不足を示す。例5.2〜5.4及び例5aを参照のこと。
生体適合性評価(細胞毒性)
本発明の方法を用いて作製されたBaSO4充填PEBAXを全表面積が30cm2となるように適切な長さにカットする。同様のプロセスをリファレンスとしてネイティブのBaSO4充填PEBAXシャフトで実施する。ISO10993に記載のMinimal Essential Medium(MEM)溶出試験を用いてコーティングを評価する。例3bを参照のこと。
前処理方法
方法A:IPAでのすすぎ
基材をIPAで5分間すすいだ。基材をd.i.H2Oですすぎ、そして室温にて乾燥させた。
方法B:IPA及びAPSでのすすぎ
基材をIPAで5分間すすぎ、次いでAPS(50g/L)(d.i.H2O中)溶液を用いて10分間すすいだ。基材をH2O中ですすぎ、そして室温にて乾燥させた。
例1:基材上の引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの表面下塗りコーティングの形成
続く例において、ポリドーパミンの表面下塗りコーティングを種々の基材上に形成した。QCM結晶及びPVCチューブ基材を、重合溶液に浸漬した場合は水平に並べた。他の全ての基材は、垂直に並べた。ポリドーパミンコーティングの均一性、接着性及び他の特性を次いで分析した。結果を例1aにまとめる。
例1.1 前処理方法Aを用いたpH8におけるPEBAXシャフト上のポリドーパミンの表面下塗りコーティングの作製
方法Aに準拠してPEBAXシャフトを前処理した。前処理したシャフトは、トリスバッファー(1.21g/L)及びAPS(0.6g/L)のd.i.水溶液に浸漬し、またHCl(1M)を用いてpHを8.0に調節した。ドーパミン(1g/L)を溶液に添加し、そして重合を各々15、30、60又は120分間進行させるようにした。ポリドーパミン下塗りシャフトをEtOHを用いてすすぎ、そして室温にて乾燥させた後に分析した。
例1.2 前処理方法Bを用いたpH8におけるPEBAXシャフト上のポリドーパミンの表面下塗りコーティングの作製
方法Bに準拠してPEBAXシャフトを前処理した。前処理したシャフトは、トリスバッファー(1.21g/L)及びAPS(0.6g/L)のd.i.水溶液に浸漬し、またHCl(1M)を用いてpHを8.0に調節した。ドーパミン(1g/L)を溶液に添加し、そして重合をそれぞれ15、30、60又は120分間進行させるようにした。ポリドーパミン下塗りコートシャフトをEtOHを用いてすすぎ、そして室温にて乾燥させた後に分析した。
例1.3 前処理方法Aを用いたpH8におけるスライドガラス上のポリドーパミンの表面下塗りコーティングの作製
方法Aに準拠してスライドガラスを前処理した。前処理したスライドガラスは、トリスバッファー(1.21g/L)及びAPS(0.6g/L)のd.i.水溶液に浸漬し、またHCl(1M)を用いてpHを8.0に調節した。ドーパミン(1g/L)を溶液に添加し、そして重合を各々15、30、60又は120分間進行させるようにした。ポリドーパミン下塗りスライドガラスをEtOHを用いてすすぎ、そして室温にて乾燥させた後に分析した。
例1.4 前処理方法Bを用いたpH8におけるスライドガラス上のポリドーパミンの表面下塗りコーティングの作製
方法Bに準拠してスライドガラスを前処理した。前処理したスライドガラスは、トリスバッファー(1.21g/L)及びAPS(0.6g/L)のd.i.水溶液に浸漬し、またHCl(1M)を用いてpHを8.0に調節した。ドーパミン(1g/L)を溶液に添加し、そして重合を各々15、30、60又は120分間進行させるようにした。ポリドーパミン下塗りスライドガラスをEtOHを用いてすすぎ、そして室温にて乾燥させた後に分析した。
例1.5 前処理方法Aを用いたpH8におけるPVCチューブ上のポリドーパミンの表面下塗りコーティングの作製
方法Aに準拠してPVCチューブを前処理した。前処理したPVCチューブは、トリスバッファー(1.21g/L)及びAPS(0.6g/L)のd.i.水溶液に浸漬し、またHCl(1M)を用いてpHを8.0に調節した。ドーパミン(1g/L)を溶液に添加し、そして重合を各々15、30、60又は120分間進行させるようにした。ポリドーパミン下塗りPVCチューブは、EtOHをチューブに通して100mL/分の速度で循環させることによりすすぎ、そして室温にて乾燥させた後に分析した。
例1.6 前処理方法Bを用いたpH8におけるPVCチューブ上のポリドーパミンの表面下塗りコーティングの作製
方法Bに準拠してPVCチューブを前処理した。前処理したPVCチューブは、トリスバッファー(1.21g/L)及びAPS(0.6g/L)のd.i.水溶液に浸漬し、またHCl(1M)を用いてpHを8.0に調節した。ドーパミン(1g/L)を溶液に添加し、そして重合を各々15、30、60又は120分間進行させるようにした。ポリドーパミン下塗りPVCチューブは、EtOHをチューブに通して100mL/分の速度で循環させることによりすすぎ、そして室温にて乾燥させた後に分析した。
例1.7 前処理なしのpH8における(QCM)金結晶上のポリドーパミンの表面下塗りコーティングの作製
QCM金結晶を、APS(0.6g/L)を含むpH8.0のトリスバッファー(1.21g/L)のd.i.水溶液に浸漬し、次いでドーパミン(1g/L)を添加、そして重合を120分間進行させるようにした。
例1.8 前処理方法Bを用いたpH7、6、5及び4におけるBaSO4充填PEBAXシャフト上のポリドーパミンの表面下塗りコーティングの作製
方法Bに準拠してBaSO4充填PEBAXシャフトを前処理した。トリス(1.21g/L)をd.i.水に添加し、次いでAPS(0.6g/L)を添加した。溶液は、4つの別個のビーカーに分けて注いだ。HCL(1M)を用いて各ビーカーのpHを7、6、5又は4に調節し、次いで前処理したBaSO4充填PEBAXシャフトを溶液中に浸漬し、次いでドーパミン(1g/L)を添加した。4つの溶液の色の変化を長い時間をかけてモニターした。
例1.9 前処理方法Bを用いたpH6におけるBaSO4充填PEBAXシャフト上のポリドーパミンの表面下塗りコーティングの作製
方法Bに準拠してBaSO4充填PEBAXシャフトを前処理した。トリス(1.21g/L)並びに種々の量のドーパミン及びAPSを含む4つのd.i.水溶液を以下のように作製した。
Figure 2020189140
溶液をpH6に調節し、次いで前処理したBaSO4充填PEBAXシャフトを溶液中に浸漬し、次いで適切な量のドーパミンを添加した。色の変化及び粒状化について、各溶液を視覚的に分析した。
例1.10 前処理方法Bを用いたpH6.9におけるBaSO4充填PEBAXシャフト上のポリドーパミンの表面下塗りコーティングの作製
方法Bに準拠してBaSO4充填PEBAXシャフトを前処理した。前処理したシャフトは、トリスバッファー(1.21g/L)及びAPS(0.6g/L)のd.i.水溶液に浸漬し、またHCl(1M)を用いてpHを6.9に調節した。ドーパミン(1g/L)を溶液に添加し、そして重合を4時間進行させるようにした。重合の間、溶液のpHが徐々に減少することを観察し、従ってNaOHを、中性又は若干酸性のpHを維持するために十分な量で連続して添加した。ポリドーパミン下塗りコートシャフトをEtOHを用いてすすぎ、そして室温にて乾燥させた後に分析した。
例1.11 前処理方法Bを用いたMESバッファー中においてのpH6におけるBaSO4充填PEBAXシャフト上のポリドーパミンの表面下塗りコーティングの作製
方法Bに準拠してBaSO4充填PEBAXシャフトを前処理した。前処理したシャフトは、MESバッファー(9.76g/L)及びNaCl(8.76g/L)のd.i.水溶液に浸漬し、またHCl(1M)を用いてpHを6.0に調節した。ドーパミン(1g/L)を溶液に添加し、そして5時間後にシャフトを溶液から引き出した。ポリドーパミンコートシャフトをEtOHを用いてすすぎ、そして室温にて乾燥させた後に分析した。バルクにおいての重合は24時間進行させるようにした。
例1.12 前処理方法Bを用いたIPA及び水の混合物中においてのpH6.0におけるステンレス鋼片上のポリドーパミンの表面下塗りコーティングの作製
MES(4.88g/L)及びNaCl(4.38g/L)をd.i.水に溶解し、pHを6.0にし、次いでIPAの添加により体積を2倍にした。混合物を2分間撹拌した後にドーパミン(0.5g/L)を添加した。方法Bに準拠して前処理したステンレス鋼片を水/IPAバッファー溶液中に浸漬し、反応を4時間進行させるようにした。その後、ステンレス鋼片をEtOHですすぎ、そして室温にて乾燥させた後に分析した。
例1.13 前処理方法Bを用いたIPA及び水の混合物中においてのpH6におけるチタン片上のポリドーパミンの表面下塗りコーティングの作製
MES(4.88g/L)及びNaCl(4.38g/L)をd.i.水に溶解し、pHを6.0にし、次いでIPAの添加により体積を2倍にした。混合物を2分間撹拌した後にドーパミン(0.5g/L)を添加した。方法Bに準拠して前処理したチタン片を水/IPAバッファー溶液中に浸漬し、反応を4時間進行させるようにした。その後、チタン片をEtOHですすぎ、そして室温にて乾燥させた後に分析した。
例1.14 IPA及び水の混合物中におけるPTFE片上の水素引き抜きのためのポリドーパミンプライマーの作製
PTFEは、例1.12に記載の手順を基本的に用いてポリドーパミンで下塗りしてよい。
例1a:例1.1〜1.13のポリドーパミン下塗りコーティングの評価
ポリドーパミンコーティングのコーティング均一性は、外観検査及び/又は接触角測定により評価した。並びに接着性は、基本手順のセクションに記載の手順を用いてテープ試験を用いて評価した。重合溶液中に観察される沈殿の量は、視覚的に又はSEM‐EDS法で評価した。全ての場合において、重合反応は溶液から基材を取り出すことにより停止させた。
溶液及び基材の外観検査
全ての溶液は、ドーパミンの添加の前には、当初は無色であった。ドーパミンが添加されると、色の変化が観察された。これは、ドーパミンの重合が起こり、ポリドーパミンが形成したことを示す。概して、無色→黄色→橙色→茶色の色の変化が重合の進行として観察された。
例1.1〜1.13の全てについて、重合が起きてポリドーパミンが形成したことを示す色の変化が観察された。無色→黄色→橙色→茶色の重合溶液の色の変化の速度の視覚的観察を用いて種々の反応条件下における重合速度を比較した(すなわち下塗りキネティクスを評価する)。更に、重合反応の後に基材の表面上において得られた茶色のトーンは、ポリドーパミンの下塗りコーティングの量及び/又は均一性を示した。基材のより小さい茶色のトーンは、より薄いポリドーパミンコーティングを示し、またより強い茶色のトーンはより厚いポリドーパミンコーティングを示す。発明者らの経験において、よりダークな色はより大きい沈殿と関連する。
重合に対するpHの影響
例1.8において、重合速度に対する溶液のpHの影響は、pH7、6、5及び4の4種の溶液の外観検査により評価した。最も大きい色の変化(すなわちその酸化状態におけるドーパミンの最も速い変換)は、pHを7とした溶液が入ったビーカーで観察された。pH4の溶液が入ったビーカーは、その色は最も小さく変化し、また最も遅い反応キネティクスを示した。pH7のビーカー中の溶液は、1時間後に無色から橙色へとシフトしたが、pH4のビーカー中の溶液は、1時間後に若干黄色がかった。pH5及びpH6の溶液の色は、pH4溶液と比べてより橙色であったが、pH7の溶液よりは程度が低かった。6時間溶液を放置すると、全てのpHの溶液が橙色にシフトし、pH7の溶液が最も強かった。
重合における緩衝の効果
例1.10において、ドーパミンの重合の間、溶液のpHが減少することが観察された。減少したpHを相殺するために、NaOHを添加して重合プロセス中pHを一定に維持した。ポリドーパミン粒子/凝集体の形成がないことが重合の終わりに観察された。例1.10に準拠して下塗りしたシャフトは、外観検査で示されるように均一であった。
例1.11に記載のように、MESバッファーをドーパミン溶液に添加した場合、NaOHの添加なしで重合中の溶液のpHが維持された。これは、MESバッファーの緩衝の効果を示す。ドーパミン溶液の外観検査は、連続した重合が起きたことを示した。重合の終わりにポリドーパミンの粒子/凝集体の形成は見られなかった。外観検査に基づいて、シャフトはポリドーパミンで均一に下塗りされていた。
重合における溶媒混合物の評価
例1.12及び1.13において、ステンレス鋼片及びチタン片は水及びIPAの混合溶媒を用いてポリドーパミンで下塗りされた。重合キネティクスは、溶液の外観検査試験を用いる測定のように、IPAの添加により著しく影響を受けるものではなかった。外観検査に基づいて、ポリドーパミン下塗り片は均一な被覆を示した。
ポリドーパミンコーティングの接着性の評価
例1.1〜1.4に準拠して下塗りしたPEBAXシャフト及びスライドガラスに、基本手順に記載のようにテープ試験を実施した。接着テープを下塗り基材に適用し、次いで90°の角度での引き剥がしを用いてそれを除去した。接着テープを除去すると、全てのサンプルがうまくいき、そして層間剥離又は基材に対する乏しい接着性の観点で、視覚的に否定的な効果がないことを示すことがわかった。
ポリドーパミンコーティングの厚みの評価
金でコートされた石英結晶マイクロバランスをQSense QCM‐D中にマウントし、次いで例1.7に準拠して金表面を下塗りした。基本手順に記載のように、乾いていない状態の下塗り厚みを長時間モニターしながら、下塗り溶液が結晶の上方を通過するようにした。40分後、ポリドーパミン層の厚みは増加しないことがわかり、ポリドーパミンの最終的な乾いていない状態の厚みは約20nmであった。ポリドーパミンコート金結晶は、デシケーター中において終夜乾燥させ、そして再度厚みを測定した(乾燥厚み)。乾燥厚みは算出された約20nmの乾いていない状態の厚みと一致することがわかった。
ポリドーパミンコーティングの化学的組成及び厚みの評価
ポリドーパミンコーティングの化学的組成及び厚みは、XPS深さ方向分析法を用いて評価してよい。
粒状化の評価
例1.11に準拠して(pH6にて作製された)ポリドーパミンコートPEBAXシャフトを作製する間、ポリドーパミン溶液から粒子を捕捉するろ紙が、5時間後及び24時間後に集められた。SEM‐EDS及び外観検査法により、24時間後に形成したポリドーパミン粒子の量及びサイズが5時間後のものより若干大きいことがわかった。5時間サンプルの場合において、目に見える粒子はろ紙上に見ることはできず、ろ紙繊維中の着色したドーパミン溶液の吸収によるろ紙の繊維の若干の色の変化のみを見ることができた。
種々のサンプルにおける粒状化の範囲の評価の経験から、本発明者らは、粒状化の程度は、重合の程度がより大きい程(より大きい色の変化から明らかとなる)増加すると結論付けた。
重合における酸化剤(APS)及びドーパミンの影響
例1.9において(表1参照)、下塗り溶液(pH6)中のドーパミン及びAPSの量の影響を評価した。番号1とラベルされた溶液はドーパミン1g/L及びAPS0.6g/Lを含み、番号2とラベルされた溶液はドーパミン1g/L及びAPS3g/Lを含み、番号3とラベルされた溶液はドーパミン5g/L、及びAPS0.6g/Lを含み、番号4とラベルされた溶液はドーパミン5g/L及びAPS3g/Lを含む。番号4の溶液は、最も高いドーパミン及びAPSの濃度のために、最も早くその色が変化し、また6時間後ダークな茶色になった。更に、ドーパミン濃度を一定に維持した場合、より多量のAPSを有する溶液(番号1→番号2及び番号3→番号4)でより速い色の変化が観察されたことがわかった。これは、反応キネティクスを酸化剤(APS)の添加により増すことができることを示す。APS濃度を一定に維持した場合、より多量のドーパミンを有する溶液(番号1→番号3及び番号2→番号4)でより速い色の変化が観察されたこともわかった。しかし、速い重合キネティクスは、バルク溶液中におけるポリドーパミンのより大きい沈殿をもたらす場合がある。従って、重合キネティクスの制御は、所望の特性を有する最終生成物を得ることを確実にするために重要である。当業者は、このパラメーターを最適化することができる。番号1〜4の溶液中に浸漬した基材は、ポリドーパミンプライマーの均一な被覆を示したが、下塗り層の厚みが4種の溶液によって異なっていたため、下塗りした基材の色が強さにおいて異なっていた。所定の重合時間において、粒子/凝集体の形成が少なく制御された系は、反応キネティクスを下げた場合に(すなわち溶液中のドーパミンの量及び/又はAPSの量を減少させる)得られる場合がある。番号1の溶液は、最も許容できる、粒状化の明らかに低い速度を有する反応速度を与えると考えられる(色の変化の程度に基づく)。
前処理方法A及びBの比較
例1.3及び例1.4に準拠して作製したポリドーパミンコーティングを有するスライドガラスは、基本手順における接触角測定手順概要を用いて分析した。例1.3(前処理方法A)及び例1.4(前処理方法B)の結果を図5に示す。完全なポリドーパミン被覆を有する表面は、約50°の接触角を有するであろう(Leeら、Science、2007、318、426)。方法AとBとの接触角を比較すると、方法Bを用いて前処理したスライドガラスと比較した場合に、前処理方法Aの後に、若干低い静的接触角が観察されたことは明らかであり、これは前処理方法Bの後に、スライドガラスの表面上のポリドーパミンのより完全な被覆が得られたことを示す。更に、方法Bを用いて前処理したスライドガラスは、ドーパミン重合の120分後に類似の静的接触角に達した方法Aを用いて前処理したスライドガラスと比較して、ドーパミン重合の15分後に安定した静的接触角に達した。これは、ポリドーパミンのより良好な全体の被覆への到達を示すと共に、方法Bを用いて前処理したスライドガラスがより速くコーティングに到達したことも示す。下塗りしていないスライドガラスの接触角を、図5中のリファレンスデータ点として示す。ポリドーパミン下塗りスライドガラス(前処理方法A又は方法Bのいずれかを用いて)が、表面を下塗りしない場合と比べて、下塗り被覆を証明するより高い接触角を示す表面を有することは明らかである。
例2‐本発明の親水性コーティングの形成において用いられるベンゾフェノンの量の評価
ベンゾフェノンを種々の濃度にてEtOH中に溶解させた(1.0E-11mol/L〜1mol/L)。ベンゾフェノンの紫外吸光度は、濃度の関数としてモニターした。また結果を図6に示す。吸収が、1.0E-3mol/L(1mmol/L)を超えるベンゾフェノンの濃度においてのみ発現するとみられることは、図6より明らかである。従って、本発明内においては、ベンゾフェノンがその水素を引き抜くことができる性質を示すことにより、反応して成分A、B及びC(存在する場合には)及びD(存在する場合には)のコポリマーを表面に共有結合させる表面結合のラジカルを形成するために、ベンゾフェノンの濃度は少なくとも1mmol/L及び好ましくは1〜100mMであるべきであると考えられる。
例3:ポリドーパミン下塗り基材上の親水性コーティングの形成
以下の例において、例1に準拠して調製したポリドーパミンの下塗りコーティングでコートした基材は、本発明の方法を施すことにより本発明の親水性コーティングを形成した。各々の場合において、成分Aはアクリル酸であり、成分Bはジアクリレート化PEGポリマーであり、及びラジカル開始剤はベンゾフェノンであった(ラジカル開始剤はポリドーパミンの表面から水素原子を引き抜くことができる)。用いられた溶媒はエタノールであり、また各々の場合においてラジカル重合はUV光により開始した。得られた親水性コーティングを分析した。また結果を例3a及び3bにまとめる。
例3.1 ベンゾフェノン(1質量%)及び低強度ランプを用いたポリドーパミン下塗りPEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
構造式(I)の8kDaのジアクリレート化PEGポリマー(30mg〜1050mg、調製に関しては例7を参照のこと)、アクリル酸(300mg)(質量比は0.1:1〜3.5:1)、エタノール(2mL〜6mL)中のベンゾフェノン(1質量%)の種々の溶液を調整した。例1.2に準拠して作製したPEBAXシャフトを、次いで溶液中に手作業で浸し、その後、取り出しそして365nm B‐100AP UVランプ(UVPより提供)を用いて10分間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約15mW/cm2と記録された。
例3.2 ベンゾフェノン(1質量%)及び中強度ランプを用いたポリドーパミン下塗りPEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
構造式(I)の10kDaのジアクリレート化PEG(各々450mg及び1350mg)、アクリル酸(各々300mg及び1800mg)(質量比は各々1.5:1及び0.75:1)、及びエタノール(各々10.5mL及び29mL)中のベンゾフェノン(1質量%)を含む2種の溶液を調整した。例1.2に準拠して作製したPEBAXシャフトを、次いでいずれかの溶液中に浸した(滞留時間5秒)後取り出し(引き出し速度は各々5cm/秒及び2.5cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて75秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。コートされたシャフトは、評価に先立って37°CのPBS溶液中において10分間膨潤させるようにした。
例3.3 ベンゾフェノン(3質量%)及び中強度ランプを用いたポリドーパミン下塗りPEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
構造式(I)の10kDaのジアクリレート化PEG(360mg〜9.0g)、アクリル酸(3.6g)(質量比は0.1:1〜2.5:1)、及びエタノール(24mL、36mL、42mL又は48mL)中のベンゾフェノン(3質量%)からなる試薬を調整した。例1.10に準拠して作製したPEBAXシャフトを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後取り出し(引き出し速度は5〜15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例3.4 ベンゾフェノン(1質量%)及び高強度ランプを用いたポリドーパミン下塗りBaSO4充填PEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
構造式(I)の8kDaのジアクリレート化PEG(75mg〜1.2g、調製に関しては例7を参照のこと)、アクリル酸(300mg)(質量比は0.25:1〜4:1)、及びエタノール(2mL〜16mL)中のベンゾフェノン(1質量%)からなる試薬を調整した。例1.2に準拠して作製したBaSO4充填PEBAXシャフトを、手作業で溶液中に浸した後に取り出し、そしてFusionランプを用いて6秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約200mW/cm2と記録された。コートされたシャフトは、評価に先立って37°Cにセットしたウォーターバス中において10分間膨潤させるようにした。
例3.5 ベンゾフェノン(1質量%)及び高強度ランプを用いたポリドーパミン下塗りBaSO4充填PEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
構造式(I)の8kDaのジアクリレート化PEG(450mg、調製に関しては例7を参照のこと)、アクリル酸(300mg)(質量比は1:5.1)、及びエタノール(6mL)中のベンゾフェノン(1質量%)からなる試薬、並びに8kDaのジアクリレート化PEG(900mg)、アクリル酸(300mg)(質量比は3:1)、及びエタノール(10mL)中のベンゾフェノン(1質量%)からなる試薬を調整した。例1.2に準拠して作製したBaSO4充填PEBAXシャフトを、手作業で溶液中に浸した後に取り出し、そしてFusionランプを用いて6秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約200mW/cm2と記録された。コートされたシャフトは、評価に先立って37°Cにセットしたウォーターバス中において10分間膨潤させるようにした。
例3.6 本発明の親水性コーティングの殺菌及びエージング処理
例3.5に準拠して作製した親水性コーティングを有するBaSO4充填PEBAXシャフトは、EO殺菌(医療用デバイスに関して用いられる標準的な殺菌プロセス)し、次いで気候室(RH=75%、55°C)中において46日のエージングを施した。コートされたシャフトは、評価に先立って37°Cにセットしたウォーターバス中において10分間膨潤させるようにした。
例3.7 ベンゾフェノン(1質量%)及び低強度ランプを用いたポリドーパミン下塗りステンレス鋼シャフト上の親水性コーティングの形成
30分間ドーパミンを重合する例1.2に準拠してステンレス鋼シャフトを作製した。構造式(I)の8kDaのジアクリレート化PEGポリマー(300mg、調製に関しては例7を参照のこと)、アクリル酸(100mg)(質量比は3:1)、エタノール(2mL)中のベンゾフェノン(1質量%)の溶液を調整し、次いで溶液中にステンレス鋼シャフト手作業で浸し、その後、365nm B‐100AP UVランプ(UVPより提供)を用いて30分間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約15mW/cm2と記録された。
例3a:本発明の親水性コーティングの表面被覆及び組成の評価
表面被覆
例3の任意の手順に準拠して調製した親水性コーティングを、染色試験に準拠してトルイジンブルーで染色した。例の全てに関して、親水性コーティングが均一に染色したことが観察され、負電荷基がPEBAXシャフトの表面上に存在することを確認した(すなわち親水性コーティングの良好な表面被覆)。
コーティングの組成
例3.3に準拠して調製した親水性コーティングは、FTIR法を用いて分析した。またスペクトルを図7に示す。エーテル(C‐O、約1100cm-1)、カルボニル(C=O、約1730cm-1)、及びメチレン(C‐H、3000〜2800cm-1)と帰属される注目すべきピークを明確に可視化できることがわかった。また、基材と関連するN‐H(3400〜3200cm-1)及びアミド(NC=O、約1640cm-1)由来のシグナルもまた可視化できたが、これらのピークはPEG成分の増加に伴いコーティングがより厚くなるため、消失する傾向があった。溶液中におけるPEG:AAの質量比は、その対応するコーティングのFTIRピークと関連している。より明確には、本発明内のコーティングのFTIR分析は、本発明内のコーティングの調製のために用いられる未知の溶液のPEG:AAの質量比を評価するために用いることができる。
例3b:本発明の親水性コーティングの物理特性の評価
例3.1〜3.7に準拠して調製した本発明の親水性コーティングは、基本手順に記載の方法を用いて評価した。
結果を以下の表2にまとめる。
Figure 2020189140
潤滑性及び耐久性
コーティングの潤滑性及び耐久性を基本手順に記載の潤滑性試験及び耐久性試験を用いて評価した。例3aの表2は、概して、合理的に期待されるように、アクリレート官能化PEGに対してアクリル酸の比率が増加すると、コーティングの耐久性は増加するが、その潤滑性は減少する。反対に、アクリル酸に対してアクリレート官能化PEGの比率が増加すると、製造されたコーティングは潤滑性であるが、耐久性ではない。例えば例3.3.19(PEG:AA 1.5:1)及び3.3.15(PEG:AA 0.25:1)は、PEGの比率(アクリル酸に対して)が6倍に減少した場合、コーティングの潤滑性は減少し(より高い潤滑性値により示唆される)、コーティングの耐久性は増加する(より低い耐久性値により示唆される)ことを示す。しかし、耐久性値は<15gが良好なようである。例3.3.15及び3.3.19に関して、15サイクルを超える潤滑性及び耐久性を、図8及び9に各々示す。
アクリル酸に対するアクリレート官能化PEGの最適比は、2.5:1〜0.5:1(質量比)の範囲内であることがわかった。適切な希釈溶液から調製した場合、この範囲を外れる比のコーティングについての潤滑性及び耐久性が、所望の性質を有するコーティングを作り出す場合もある。
本発明者らが驚くことに、潤滑性試験の順次的なサイクルの後に、コーティングが潤滑性において増加することが実際に見出された。これは、表2の例3.3.15(図8参照)に第一サイクルにおける潤滑性値が19.7及び第15サイクルにおいては14.9g(より低い潤滑性(g)値はより潤滑なコーティングを示す)と示され、これからコーティングの潤滑性が増加したことは明らかである。
紫外ランプの強度
本発明者らは、本発明内のコーティングは、紫外ランプ強度試験に関わらず調製されるであろうことを示した。強度は、15mW(低強度)から200mW(高強度)に変化させて使用した。
溶媒の量
成分A及びB、並びに任意選択的にC及びDの濃度は、溶媒の種々の量の添加によって、重合溶液において変化させてよい。概して、溶媒の量における最適条件は、良好な耐久性と共に潤滑性コーティングを生み出すであろう。最適な希釈から外れると、コポリマーは層間剥離(高濃度)のため、又は不十分なコーティング厚み(低濃度)のためにすり減る場合がある。
粒状化
コーティングの表面粒状化は、基本手順に記載の粒状化試験を用いて評価した。試験した例の全て(例3.3.5は別として)は、USP788試験に合格し、コーティングが、証明された許容可能な粒状化のレベルを有したことを示した。例3.3.5に関して、より高い粒状化値は、溶液の比較的低い体積においてのPEGの高い比率からすれば驚くには当たらない。
殺菌及びエージング
図10は、例3.5に関して15サイクルを超える潤滑性及び耐久性を示し、また図11は、例3.6に関して15サイクルを超える潤滑性を示す(例3.5のサンプルは殺菌し、またエージングした)。図10及び11(及び表2の値)間の潤滑性及び耐久性の値を比較すると、殺菌及びエージングプロセスは親水性コーティングの潤滑性及び耐久性に、たとえあったとしてもほとんど効果がないことは明らかである。
生体適合性
例3.2に準拠して作製した親水性コーティングを有するPEBAXシャフトは、細胞毒性試験において評価した。シャフトは、総表面積が30cm2/サンプルとなるようピースにカットした。カットしたシャフトは、ISO10993パート5に準拠して、minimal essential medium(MEM)溶出試験に供した。全ての試験したサンプルは、MEM溶出試験において非毒性であることがわかった。
例4‐構造式(II)のジアクリレート化PEG、ベンゾフェノン及びチオキサントンに基づく本発明の親水性コーティングの形成
例4.1 ベンゾフェノン(3質量%)及び中強度ランプを用いた下塗りPEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
構造式(II)の10kDaのジアクリレート化PEG(3.6g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2:1)、及びエタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)からなる試薬を調整した。例1.11に準拠して作製したPEBAXシャフトを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例4.2 ベンゾフェノン(3質量%)及びチオキサントン(1.5質量%)並びに中強度ランプを用いた下塗りPEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
構造式(II)の10kDaのジアクリレート化PEG(3.6g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2:1)、エタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)及びチオキサントン(1.5質量%)からなる試薬を調整した。例1.11に準拠して作製したPEBAXシャフトを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例4.3 ベンゾフェノン(3質量%)及び中強度ランプを用いた下塗りPEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
構造式(II)の10kDaのジアクリレート化PEG(4.5g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2.5:1)、及びエタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)からなる試薬を調整した。例1.11に準拠して作製したPEBAXシャフトを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例4.4 ベンゾフェノン(3質量%)及びチオキサントン(1.5質量%)並びに中強度ランプを用いた下塗りPEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
構造式(II)の10kDaのジアクリレート化PEG(4.5g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2.5:1)、エタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)及びチオキサントン(1.5質量%)からなる試薬を調整した。例1.11に準拠して作製したPEBAXシャフトを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例4.5 ベンゾフェノン(3質量%)及び中強度ランプを用いた下塗りなしのPEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
10kDaのジアクリレート化PEG(3.6g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2:1)、及びエタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)からなる試薬を調整した。例1.11に準拠して作製したPEBAXシャフトを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例4.6 ベンゾフェノン(3質量%)及び中強度ランプを用いた下塗りなしのPEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
構造式(II)の10kDaのジアクリレート化PEG(3.6g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2:1)、及びエタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)からなる試薬を調整した。例1.11に準拠して作製したPEBAXシャフトを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例4.7 ベンゾフェノン(3質量%)及びチオキサントン(1.5質量%)並びに中強度ランプを用いた下塗りなしのPEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
構造式(II)の10kDaのジアクリレート化PEG(3.6g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2:1)、エタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)及びチオキサントン(1.5質量%)からなる試薬を調整した。例1.11に準拠して作製したPEBAXシャフトを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例4.8 ベンゾフェノン(3質量%)及び中強度ランプを用いた下塗りなしのPEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
10kDaのジアクリレート化PEG(4.5g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2.5:1)、及びエタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)からなる試薬を調整した。例1.11に準拠して作製したPEBAXシャフトを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例4.9 ベンゾフェノン(3質量%)及び中強度ランプを用いた下塗りなしのPEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
構造式(II)の10kDaのジアクリレート化PEG(4.5g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2.5:1)、及びエタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)からなる試薬を調整した。例1.11に準拠して作製したPEBAXシャフトを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例4.10 ベンゾフェノン(3質量%)及びチオキサントン(1.5質量%)並びに中強度ランプを用いた下塗りなしのPEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
構造式(II)の10kDaのジアクリレート化PEG(4.5g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2.5:1)、エタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)及びチオキサントン(1.5質量%)からなる試薬を調整した。例1.11に準拠して作製したPEBAXシャフトを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例4.11 ベンゾフェノン(3質量%)及び中強度ランプを用いた下塗りした着色PEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
構造式(II)の10kDaのジアクリレート化PEG(3.6g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2:1)、及びエタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)からなる試薬を調整した。例1.11に準拠して作製した黄色着色PEBAXシャフトを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例4.12 ベンゾフェノン(3質量%)及びチオキサントン(1.5質量%)並びに中強度ランプを用いた下塗りした着色PEBAXシャフト上の親水性コーティングの形成
構造式(II)の10kDaのジアクリレート化PEG(3.6g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2:1)、エタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)及びチオキサントン(1.5質量%)からなる試薬を調整した。例1.11に準拠して作製した黄色着色PEBAXシャフトを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例4a:構造式(II)のジアクリレート化PRG、ベンゾフェノン及びチオキサントン上に基づく本発明の親水性コーティングの表面被覆及び組成の評価
表面被覆
例4の手順のいずれかに準拠して調製した親水性コーティングを、染色試験に準拠してトルイジンブルーで染色した。例の全てに関して、親水性コーティングが均一に染色したことが観察され、負電荷基がPEBAXシャフトの表面上に存在することを確認した(すなわち親水性コーティングの良好な表面被覆)。
例4b:構造式(II)のジアクリレート化PRG、ベンゾフェノン及びチオキサントン上に基づく本発明の親水性コーティングの物理特性の評価
例4.1〜4.12に準拠して調製した本発明の親水性コーティングは、基本手順に記載の方法を用いて評価した。
結果を以下の表3にまとめる。
Figure 2020189140
潤滑性及び耐久性
コーティングの潤滑性及び耐久性を基本手順に記載の潤滑性試験及び耐久性試験を用いて評価した。例4bの表3は、構造式(II)に係るジアクリレート化PEGが、構造式(I)に係るジアクリレート化PEGと同等またはより低い潤滑性及び耐久性の値を与えることを示す。概して、耐久性値はゼロに近く、又は試験したサンプルに関してゼロ未満が得られた。耐久性及び潤滑性の値は<15gが良好なようである。
チオキサントンの効果
更に、コーティングの硬化においてベンゾフェノンを補助する場合がある第二の開始剤(チオキサントン)の導入は、明確に潤滑性値(より良好な潤滑性)の減少を示す(例えば例4.2に比較して例4.1及び例4.10に比較して例4.9)。この現象は、下塗り基材及び引き抜き可能な水素原子を含む固有の表面を有する基材の両方で観察された。チオキサントンの有益な効果は、着色基材の硬化の際にも見ることができた。例4.11及び例4.12は、チオキサントンを導入すると、いかに潤滑性及び耐久性の値が減少するかを示す。潤滑性は、29.2gから4.3gに向上し、また耐久性は5.6gから0.4gに向上する。
例5‐有益な化学物質を含む親水性コーティングの形成
以下の例において、有益な化学物質を含む親水性コーティングは、ポリドーパミンの表面下塗りコーティングを有する既にコートされた基材上に形成した。
例5.1 血栓性コーティングの形成
例3.3.18に準拠して作製した親水性コーティング(PEG:AAの比が1:1、3質量%BP、42mLのEtOH;55mW/cm2にて90秒間硬化)を水中のポリエチレンイミンの溶液(0.010質量%/L、pH6)に約1分間浸し、次いで水中で大規模にすすいだ。
例5.2 天然のヘパリンを用いた抗血栓性コーティングの形成
例3.3.14に準拠して作製した親水性コーティングをポリエチレンイミンを含む溶液(0.01質量%/L、pH6)50mLに10分間浸した後に、流水(d.i.水)を用いてすすいだ。天然のヘパリンの接着は、基本的に米国特許出願公開第2012/231043号明細書(参照によりその全体において本開示に組み込まれる)の例2.11のように実施した。コーティングはその後d.i.水を用いて大規模にすすがれ、次いでボレート‐ホスフェートバッファー洗浄液(pH8)ですすがれた。
例5.3 共役ヘパリン‐ポリエチレンイミンを用いた抗血栓性コーティングの形成
抗血栓性コーティングは、米国特許出願公開第2012/231043号明細書(参照によりその全体において本開示に組み込まれる)の例3.3からの共役ヘパリン‐ポリエチレンイミンを用いることにより、及び上記の例5.2に記載の手順を用いることにより基本的に調整してよい。係るコーティングは、抗血栓性を示すことが見込まれる。
例5.4 ヘパリンの末端付着を用いた抗血栓性コーティングの形成
例3.3.14に準拠して作製した親水性コーティングをポリエチレンイミンを含む溶液(0.01質量%/L、pH7)50mLに10分間浸した後に、流水(d.i.水)を用いてすすいだ。プラスに帯電したコーティングは、その後基本的に米国特許第4613665号明細書(参照によりその全体において本開示に組み込まれる)の例2に記載のように調製したアルデヒド官能化ヘパリン(325mg)及びNaCl(29.2g)を含む水溶液(1L)に浸漬し、また約5分間反応させるようにし、その後NaCNBH3(2、5質量%溶液(d.i.水中)5mL)を添加し、次いで約1時間追加で反応させた。イオン的に結合したヘパリンは、ボレート‐ホスフェートバッファー溶液(pH8)を用いて大規模にすすいで除去した。
例5.5 ドキソルビシン溶出コーティングの形成
例3.3.18に準拠して調製したコーティングは、ドキソルビシンの水溶液(1mg/25mL、水中)中に2分間入れ、次いで水を用いて薬剤が担持されたコーティングを慎重にすすぎ、コーティングの外観検査に先立って余剰を除去した。基本手順ドキソルビシン染色(薬剤取り込み/溶出)に記載のように、コーティングの赤色への着色はドキソルビシンがコーティング中にうまく取り込まれたことを示す。
例5.6 抗菌性コーティングの形成
例3.3.18に準拠して調製したコーティングをEtOH(96%)中の炭酸銀及びクロルヘキシジンの溶液に30秒間浸すようにした。クロルヘキシジン及び炭酸銀の取り込みは、SEM‐EDS法を用いてコーティング成分を評価することにより確認した。
例5.7 メタクリレート化ヘパリンを用いた抗血栓性コーティングの形成
抗血栓性コーティングは、例6からのメタクリレート化ヘパリンの添加を伴う例3.3に係る手順を用いることにより調製してよい。係るコーティングは、抗血栓性を示すことが見込まれる。
例5.8 メタクリレート化ヘパリンを用いた抗血栓性コーティングの形成
抗血栓性コーティングは、例5.1に係る手順を用いること、次いで例6からのメタクリレート化ヘパリン及びベンゾフェノンを添加‐混合することにより調製してよい。メタクリレート化ヘパリンは、紫外照射すると、コーティングに共有結合するであろう。係るコーティングは、抗血栓性を示すことが見込まれる。
例5a‐有益な化学物質を含む親水性コーティングの評価
血栓形成剤を含むコーティング
例5.1に準拠して調製したポリエチレンイミンコーティングを主に表面被覆の観点で評価した。コーティングはポンソーSを用いてよく染色され、表面上の正味の正電荷の存在を示した。コートされたシャフトは、健常ボランティアから提供された全血を包含する試験管中にそれを入れることによりその血栓形成能も評価し、血栓形成性コーティングを施していない全血のコントロールと比較した場合、凝固時間において著しい減少をもたらした。凝固時間は、およそ40%減少した(コントロールに関して11分後に形成した中程度の血栓と比較して、完全な血栓まで7分)。この実験を一度繰り返してコーティングの血栓形成性を確認した。
抗血栓剤として天然のヘパリンを含むコーティング
例5.2に準拠して調製したコーティングをその抗血栓性に関して評価した。ヘパリン化したシャフトをヘパリンのその表面密度について分析した。このヘパリン密度は、1.4μg/cm2と測定された。コーティングを含むヘパリンを健常ドナーから提供された全血に施し、次いで血栓の形成の可能性をモニターした。コートされたシャフトを全血を包含するFalconチューブ中に入れ、そしてロッカーチューブローラー上に20分間置き、次いで血液中の血小板の残りの量をカウントした。20分後、血栓は形成されなかったことがわかったが、残留血小板の量において、減少が検出されたことがわかった(血小板損失=約25%)。
抗血栓剤として末端接着したヘパリンを含むコーティング
例5.4に準拠して調製したコーティングをその抗血栓性に関して評価した。ヘパリン化したシャフトをヘパリンのその表面密度について分析した。このヘパリン密度は、2.6μg/cm2と測定された。コーティングを含むヘパリンを健常ドナーから提供された全血に施し、次いで血栓の形成の可能性をモニターした。コートされたシャフトを全血を包含するFalconチューブ中に入れ、そしてロッカーチューブローラー上に20分間置き、次いで血液中の血小板の残りの量をカウントした。20分後、血栓は形成されなかったことがわかったが、残留血小板の量において、減少が検出されたことがわかった(血小板損失=約25%)。
有益な化学物質としてドキソルビシンを含むコーティング
例5.5に準拠して調製したコーティングをその薬剤溶出特性に関して評価した。コーティングに担持されたドキソルビシンを2MのNaCl溶液に曝して薬剤の放出を促し、次いで更なる外観検査に先立って真空中で乾燥させた。赤色のレベルの低減は、ドキソルビシンがコーティングから溶出したことを示した。
有益な化学物質として抗菌剤を含むコーティング
例5.6に準拠して調製したコーティングを黄色ブドウ球菌バクテリアに対するその抗菌活性に関して評価した。コーティングの2つのレプリケートを黄色ブドウ球菌バクテリアに施し、次いで長時間阻害域をモニターした。2つのレプリケートは、各々7及び15日に亘って抗菌効果を示した。コートされていないPEBAXシャフト、ポリドーパミン下塗りPEBAXシャフト及び例3.3.18に準拠して(PEG:AAの比が1:1、3質量%BP、42mLのEtOH)コートされたシャフトをコントロールとして用いた。1日より長い抗菌特性を示したコントロールはなかった。
例5.6に準拠して調製したコーティングは、緑膿菌バクテリアに対するその抗菌活性に関しても評価した。コーティングの2つのレプリケートを緑膿菌バクテリアに施し、次いで長時間阻害域をモニターした。2つのレプリケートは、各々3及び4日に亘って抗菌効果を示した。コートされていないPEBAXシャフト、ポリドーパミン下塗りPEBAXシャフト及び例3.3.18に準拠して(PEG:AAの比が1:1、3質量%BP、42mLのEtOH)コートされたシャフトをコントロールとして用いた。1日より長い抗菌特性を示したコントロールはなかった。
例6‐末端メタクリレート化ヘパリンの合成
基本的に米国特許第4613665号明細書(参照によりその全体において本開示に組み込まれる)の例2に記載のように調製したアルデヒド官能化ヘパリン(5.00g)を、勢いよく撹拌することにより15mLのアセテートバッファー(pH5)に溶解させた。2‐アミノエチルメタクリレート塩酸塩(250mg)、次いで10mLの2.5%のシアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液(d.i.水中)をヘパリン溶液に添加した。反応のスキームをスキーム2に示す。溶液は室温にて終夜撹拌し、その後透析バッグ(MWCO1000Da)に移送し、そして1MのNaCl水溶液3Lに対して1時間透析した。1時間後、1MのNaCl溶液を新しい溶液で置換し、そして透析をさらに1時間続けた。精製シーケンスのステップの終わりには、NaCl溶液をd.i.水で置換し、そして終夜透析を続けた。修正後のヘパリンの比活性度は、>100IU/mgと評価された。
Figure 2020189140
例7‐構造式(I)の8kDaジアクリレート化PEGポリマーの合成
ジヒドロキシル官能化PEG(8kDa、20g)をTHF(50mL)、TEA(3.5mL)及びピリジン(15mL)に溶解させた。塩化アクリロイル(1.1g)を溶液に滴下した。反応スキームをスキーム3に示す。反応は4時間進行させるようにし、その後沈殿した塩をろ過し、そして1Lのジエチルエーテル中に溶液を投下した。沈殿物(ベージュ/白色粉末)は、真空化において終夜乾燥させた。アクリル末端基の導入は、FTIR法を用いて確認した。FTIRは、PEG鎖中へのカルボニル基(エステル)の組み込みを示す1720cm-1付近に吸収を示した。
Figure 2020189140
例8‐引き抜き可能な水素原子を含む表面下塗りコーティングあり及びなしの金属基材上の親水性コーティングの形成
例8.1 ベンゾフェノン(3質量%)及び中強度ランプを用いたポリドーパミン下塗りニチノールロッド上の親水性コーティングの形成
構造式(I)の10kDaのジアクリレート化PEG(3.6g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2:1)、及びエタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)からなる試薬を調整した。例1.11に準拠して作製したニチノールロッドを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例8.2 ベンゾフェノン(3質量%)及び中強度ランプを用いた下塗りなしのニチノールロッド上の親水性コーティングの形成
構造式(I)の10kDaのジアクリレート化PEG(3.6g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2:1)、及びエタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)からなる試薬を調整した。前処理方法Bに準拠して作製したニチノールロッドを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例8.3 ベンゾフェノン(3質量%)及び中強度ランプを用いたポリドーパミン下塗りニチノールロッド上の親水性コーティングの形成
構造式(I)の10kDaのジアクリレート化PEG(4.5g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2.5:1)、及びエタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)からなる試薬を調整した。例1.11に準拠して作製したニチノールロッドを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例8.4 ベンゾフェノン(3質量%)及び中強度ランプを用いた下塗りなしのニチノールロッド上の親水性コーティングの形成
構造式(I)の10kDaのジアクリレート化PEG(4.5g)、アクリル酸(1.8g)(質量比は2.5:1)、及びエタノール(24mL)中のベンゾフェノン(3質量%)からなる試薬を調整した。前処理方法Bに準拠して作製したニチノールロッドを、次いで溶液中に浸した(滞留時間5秒)後に取り出し(引き出し速度15cm/秒)、そしてRDX UV硬化システム(240〜400nm)(Harland Medicalより提供)を用いて90秒間硬化した。強度は、センサー及びラジオメーターを用いて約55mW/cm2と記録された。
例8a:本発明の親水性コーティングの表面被覆及び組成の評価
表面被覆
例3の手順のいずれかに準拠して調製した親水性コーティングを、染色試験に準拠してトルイジンブルーで染色した。例の全てに関して、親水性コーティングが均一に染色したことが観察され、負電荷基がPEBAXシャフトの表面上に存在することを確認した(すなわち親水性コーティングの良好な表面被覆)。
例8b:引き抜き可能な水素原子を含む表面下塗りコーティングあり及びなしの金属基材上の親水性コーティングの耐久性の評価
例8.1〜8.4に準拠して調製した本発明の親水性コーティングは、基本手順に記載の方法を用いて評価した。
結果を以下の表4にまとめる。
Figure 2020189140
耐久性
コーティングの耐久性を基本手順に記載の耐久性試験を用いて評価した。ニチノールは引き抜き可能な水素原子を含む固有の表面を有さない金属基材である。例8bの表4は、下塗りなしのニチノール基材は、概して同一基材の下塗り類似物と比較して、より高い耐久性値(すなわちより乏しい耐久特性)を示す(例えば例8.3例を8.4と比較する)。例8.3は、試験を実施する際に、コーティングがより潤滑になることを示す。これは、例8.4の場合には当てはまらない。この場合、コーティングは試験を実施する際に潤滑性が小さくなっている。
明細書及び以下の請求の範囲を通して、文脈が別段の要求をしない限り、語‘含む(comprise)’及び‘含む(comprises)’及び‘含む(comprising)’等のバリエーションは、規定の整数、ステップ、整数の群又はステップの群の包含を意味するが、任意のその他の整数、ステップ、整数の群又はステップの群の排除は意味しないと解されよう。
本発明は、好ましい及びより好ましい群並びに好適な及びより好適な群並びに上記に列挙した群の実施態様の全ての組み合わせを包含する。
本発明は、好ましい及びより好ましい群並びに好適な及びより好適な群並びに上記に列挙した群の実施態様の全ての組み合わせを包含する。
以下、本発明の実施形態を列記する。
[1]
成分A及びB、並びに任意選択の成分C及びDの架橋コポリマーを含む親水性コーティングを有する表面を有する基材であって、成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC 2 〜C 16 親水性モノマーを含み、
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、
成分Cが、存在する場合には、1つ以上のアルケン又はアルキン基を各々含む1種以上の有益な化学物質を含み、並びに
成分Dが、存在する場合には、チオール、アルケン及びアルキン基から独立に選択される2つ以上の官能基を各々含む1種以上の低分子量架橋剤を含み、
架橋コポリマーが、成分A、B及びC(存在する場合には)のアルケン及び/又はアルキン基並びに成分D(存在する場合には)の官能基が関与するラジカル重合により形成し、
親水性コーティングが、1種以上の有益な化学物質を含む成分Eを任意選択的に含み、成分Eが成分A、B、C(存在する場合には)及びD(存在する場合には)とコポリマーを形成せず、
並びに親水性コーティングが、基材の表面に共有結合している基材。
[2]
基材の表面と親水性コーティングとの間の共有結合が、親水性コーティングの成分と基材の表面上の表面結合のラジカルの反応を介して形成し、及び表面結合のラジカルが、基材の表面からの水素原子の引き抜きを介して生成する、上記態様1に記載の基材。
[3]
親水性コーティングが共有結合するポリドーパミンの第一の表面下塗りコーティングを有する、上記態様1又は2に記載の基材。
[4]
成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC 2 〜C 16 親水性モノマーを含み、また1つ以上の基が、エステル、エーテル、カルボキシル、ヒドロキシル、チオール、スルホン酸、サルフェート、アミノ、アミド、ホスフェート、ケト及びアルデヒド基から選択される、上記態様1〜3のいずれかに記載の基材。
[5]
成分Aが、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を含む、上記態様4に記載の基材。
[6]
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、親水性ポリマーが、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、ポリ‐N‐ビニルピロリドン、ポリ‐N‐ビニルピロリドン誘導体、ポリエーテル誘導体(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、ポリプロピレングリコール(PPG)、またはポリプロピレングリコール(PPG)誘導体)、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアルコール誘導体からなる群より独立に選択される、上記態様1〜5のいずれかに記載の基材。
[7]
成分Bが、2つのアルケン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含む、上記態様1〜6のいずれかに記載の基材。
[8]
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のポリエーテル親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、ポリプロピレングリコール(PPG)、またはポリプロピレングリコール(PPG)誘導体)を含む、上記態様6に記載の基材。
[9]
成分Bが、2つのアルケン基を各々含む1種以上のPEGポリマーを含む、上記態様8に記載の基材。
[10]
成分Bが、1種以上のジアクリレート官能化PEGポリマーを含む、上記態様9に記載の基材。
[11]
1種以上のジアクリレート官能化PEGポリマーが、構造式(I)
Figure 2020189140
(式中、nは10〜50000、例えば15〜5000、例えば100〜400、例えば150〜260である。)である、上記態様10に記載の基材。
[12]
1種以上のジアクリレート官能化PEGポリマーが、構造式(II)
Figure 2020189140
(式中、nは10〜50000、例えば15〜5000、例えば100〜400、好適には150〜260である。)である、上記態様10に記載の基材。
[13]
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、前記アルケン及び/又はアルキン基が、末端アルケン及び/又はアルキン基である、上記態様1〜10のいずれかに記載の基材。
[14]
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、並びに各親水性ポリマーの分子量が、独立に600〜40000Da、例えば4000〜16000Daである、上記態様1〜13のいずれかに記載の基材。
[15]
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む2種の異なる親水性ポリマーを含む、上記態様1〜14のいずれかに記載の基材。
[16]
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む2種の異なる分子量のPEGポリマーを含む、上記態様15に記載の基材。
[17]
成分Cが、1つのアルケン又はアルキン基を各々含む1種以上の有益な化学物質を含む、上記態様1〜16のいずれかに記載の基材。
[18]
成分Cの前記有益な化学物質が、薬理活性を有する化学物質、導電剤又は接着剤である、上記態様1〜17のいずれかに記載の基材。
[19]
薬理活性を有する化学物質が、抗血栓薬、血管新生阻害剤、抗増殖剤又は抗菌剤である、上記態様18に記載の基材。
[20]
成分Cの分子量が、100000Da以下、例えば50000Da以下、例えば25000Da以下である、上記態様1〜19のいずれかに記載の基材。
[21]
成分Cの分子量が、9000Da〜20000Da、例えば9000Da〜11000Daである、上記態様20に記載の基材。
[22]
成分Cが、ヘパリンである、上記態様1〜21のいずれかに記載の基材。
[23]
成分Dが、2つ以上のチオール基を各々含む1種以上の低分子量の架橋剤を含む、上記態様1〜22のいずれかに記載の基材。
[24]
成分Eの前記有益な化学物質が、薬理活性を有する化学物質、導電剤又は接着剤である、上記態様1〜23のいずれかに記載の基材。
[25]
薬理活性を有する化学物質が、抗血栓薬、血管新生阻害剤、抗増殖剤又は抗菌剤である、上記態様24に記載の基材。
[26]
成分Cが存在し、かつ、成分Dは存在しない、上記態様1〜25のいずれかに記載の基材。
[27]
成分Dが存在し、かつ、成分Cは存在しない、上記態様1〜25のいずれかに記載の基材。
[28]
成分C及びDが存在しない、上記態様1〜25のいずれかに記載の基材。
[29]
成分C及びDが存在する、上記態様1〜25のいずれかに記載の基材。
[30]
成分Eが存在し、かつ、コポリマーに共有結合している、上記態様1〜29のいずれかに記載の基材。
[31]
成分Eが存在し、かつ、コポリマーに共有結合していない、上記態様29に記載の基材。
[32]
成分Eが存在しない、上記態様1〜29のいずれかに記載の基材。
[33]
親水性コーティングが潤滑性であり、また潤滑性試験を用いた潤滑性が<100g、例えば<50g、例えば<15gである、上記態様1〜32のいずれかに記載の基材。
[34]
親水性コーティングの耐久性試験を用いた耐久性が、<50g、例えば<25g、例えば<15gである、上記態様33に記載の基材。
[35]
成分Bの成分Aに対する質量比が、2.5:1〜0.5:1である、上記態様1〜34のいずれかに記載の基材。
[36]
基材が、医療用デバイスである、上記態様1〜35のいずれかに記載の基材。
[37]
医療用デバイスが、二股ステント、バルーン拡張型ステント及び自己拡張型ステントを包含するステント、二股ステントグラフトを包含するステントグラフト、血管グラフト及び二股グラフトを包含するグラフト、拡張器、血管閉塞器、塞栓フィルター、塞栓除去デバイス、マイクロカテーテル、中心静脈カテーテル、抹消静脈カテーテル及び血液透析カテーテルを包含するカテーテル、人工血管、リトラクタブルシースを包含するシース、血管内在性モニタリングデバイス、人工心臓弁、ペースメーカー電極、ガイドワイヤー、カーディアックリード、心肺バイパスサーキット、カニューレ、プラグ、ドラッグデリバリーデバイス、バルーン、組織パッチデバイス及び血液ポンプからなる群より選択される、上記態様36に記載の基材。
[38]
基材の表面に共有結合する親水性コーティングの形成方法であって、前記方法が、
(a)表面と、成分A及びB、任意選択の成分C、任意選択の成分D及びラジカル開始剤を含む混合物とを接触させるステップであって、
成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC 2 〜C 16 親水性モノマーを含み、
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、
成分Cが、存在する場合には、1つ以上のアルケン又はアルキン基を各々含む1種以上の有益な化学物質を含み、並びに
成分Dが、存在する場合には、チオール、アルケン、及びアルキン基から独立に選択される2つ以上の官能基を各々含む1種以上の低分子量架橋剤を含むステップ;
並びに
(b)成分A、成分B、並びに任意選択のC及びDの架橋コポリマーを形成するために、成分A、B及びC(存在する場合には)のアルケン及び/又はアルキン基並びに成分D(存在する場合には)の官能基が関与するラジカル重合を開始するステップであって、前記コポリマーが表面に共有結合するステップ、並びに
(c)任意選択的に、1種以上の有益な化学物質を含む成分Eを親水性コーティング中に組み込むステップであって、成分Eが成分A、B、C(存在する場合には)及びD(存在する場合には)とコポリマーを形成しないステップ
を含む方法。
[39]
基材が、引き抜き可能な水素原子を含む表面を有する基材である、上記態様38に記載の方法。
[40]
基材の表面と接触する液相中のラジカル開始剤が、表面から水素原子を引き抜いて表面結合のラジカルを形成し、前記表面結合のラジカルが、成分A及びB並びに任意選択のC及びDの少なくとも1つと反応して表面にコポリマーを共有結合させる、上記態様39に記載の方法。
[41]
液相中において表面と接触して形成したフリーラジカルにより開始されたプロセスにおいて、基材の表面上の反応基が、成分A及びB並びに任意選択のC及びDの少なくとも1つと反応して表面にコポリマーを共有結合させる、上記態様39に記載の方法。
[42]
成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC 2 〜C 16 親水性モノマーを含み、また1つ以上の基が、エステル、エーテル、カルボキシル、ヒドロキシル、チオール、スルホン酸、サルフェート、アミノ、アミド、ホスフェート、ケト及びアルデヒド基から選択される、上記態様38〜40のいずれかに記載の方法。
[43]
成分Aが、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を含む、上記態様42に記載の方法。
[44]
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、親水性ポリマーが、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、ポリ‐N‐ビニルピロリドン、ポリ‐N‐ビニルピロリドン誘導体、ポリエーテル誘導体(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、ポリプロピレングリコール(PPG)、またはポリプロピレングリコール(PPG)誘導体)、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアルコール誘導体からなる群より独立に選択される、上記態様38〜43のいずれかに記載の方法。
[45]
成分Bが、2つのアルケン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含む、上記態様38〜44のいずれかに記載の方法。
[46]
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のポリエーテル親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、ポリプロピレングリコール(PPG)、又はポリプロピレングリコール(PPG)誘導体)を含む、上記態様45に記載の方法。
[47]
成分Bが、2つのアルケン基を各々含む1種以上のPEGポリマーを含む、上記態様46に記載の方法。
[48]
成分Bが、1種以上のジアクリレート官能化PEGポリマーを含む、上記態様47に記載の方法。
[49]
1種以上のジアクリレート官能化PEGポリマーが、構造式(I):
Figure 2020189140
(式中、nは10〜50000、例えば15〜5000、例えば100〜400、例えば150〜260である)である、上記態様48に記載の方法。
[50]
1種以上のジアクリレート官能化PEGポリマーが、構造式(II):
Figure 2020189140
(式中、nは10〜50000、例えば15〜5000、例えば100〜400、好適には150〜260である)である、上記態様48に記載の方法。
[51]
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、前記アルケン/及び又はアルキン基が、末端アルケン及び/又はアルキン基である、上記態様38〜50のいずれかに記載の方法。
[52]
成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また各親水性ポリマーの分子量が、独立に600〜40000Da、例えば4000〜16000Daである、上記態様38〜51のいずれかに記載の方法。
[53]
成分Cの前記有益な化学物質が、薬理活性を有する化学物質、導電剤又は接着剤である、上記態様38〜52のいずれかに記載の方法。
[54]
薬理活性を有する化学物質が、抗血栓薬、血管新生阻害剤、抗増殖剤又は抗菌剤である、上記態様53に記載の方法。
[55]
成分Cの分子量が、100000Da以下、例えば50000Da以下、例えば25000Da以下である、上記態様38〜54のいずれかに記載の方法。
[56]
成分Cの分子量が、9000Da〜20000Da、例えば9000Da〜11000Daである、上記態様55に記載の方法。
[57]
成分Cがヘパリンである、上記態様38〜56のいずれかに記載の方法。
[58]
成分Dが、2つ以上のチオール基を各々含む1種以上の低分子量架橋剤を含む、上記態様38〜57のいずれかに記載の方法。
[59]
成分Eの前記有益な化学物質が、薬理活性を有する化学物質、導電剤又は接着剤である、上記態様38〜58のいずれかに記載の方法。
[60]
薬理活性を有する化学物質が、抗血栓薬、血管新生阻害剤、抗増殖剤又は抗菌剤である、上記態様59に記載の方法。
[61]
成分Cが存在し、かつ、成分Dは存在しない、上記態様38〜60のいずれかに記載の方法。
[62]
成分Dが存在し、かつ、成分Cは存在しない、上記態様38〜61のいずれかに記載の方法。
[63]
成分C及びDが存在しない、上記態様38〜61のいずれかに記載の方法。
[64]
成分C及びDが存在する、上記態様38〜61のいずれかに記載の方法。
[65]
成分Eがコポリマーに共有結合するステップ(c)を含む上記態様38〜64のいずれかに記載の方法。
[66]
成分Eがコポリマーに共有結合しないステップ(c)を含む上記態様38〜64のいずれかに記載の方法。
[67]
ステップ(c)を含まない、上記態様38〜64のいずれかに記載の方法。
[68]
成分Bの成分Aに対する質量比が、2.5:1〜0.5:1である、上記態様38〜67のいずれかに記載の方法。
[69]
親水性コーティングが潤滑性であり、また潤滑性試験を用いた潤滑性が<100g、例えば<50g、例えば<15gである、上記態様38〜68のいずれかに記載の方法。
[70]
親水性コーティングの耐久性試験を用いた耐久性が、<50g、例えば<25g、例えば<15gである、上記態様38〜69のいずれかに記載の方法。
[71]
引き抜き可能な水素原子を含む基材の表面が、引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの表面下塗りコーティングである、上記態様38〜70のいずれかに記載の方法。
[72]
引き抜き可能な水素原子を含むポリマーが、カテコール官能基及び/又はキノン官能基及び/又はセミキノン官能基を含むポリマーである、上記態様71に記載の方法。
[73]
引き抜き可能な水素原子を含むポリマーが、ポリドーパミンである、上記態様71または72に記載の方法。
[74]
ポリドーパミンの表面コーティングが、基材の表面と、酸化剤及びドーパミン及び/又はドーパミン類縁体を含む混合物と接触させることにより形成する、上記態様73に記載の方法。
[75]
ポリドーパミンの表面コーティングが、pH4〜7にて形成される、上記態様73又は74に記載の方法。
[76]
ポリドーパミンの表面コーティングが、pH5.5〜6.5にて形成される、上記態様75に記載の方法。
[77]
ポリドーパミンの表面コーティングが、水と有機アルコール(例えば水とIPAの混合物)の混合物である溶媒の存在下において形成される、上記態様73〜76のいずれかに記載の方法。
[78]
ポリドーパミンの表面コーティングの形成に先立って、コートされるべき表面が酸化剤で前処理されている、上記態様73〜77のいずれかに記載の方法。
[79]
ステップ(a)のラジカル開始剤が、ベンゾフェノン及びこれらの誘導体並びにキサントン及びこれらの誘導体からなる群より選択される、上記態様38〜78のいずれかに記載の方法。
[80]
前記ラジカル開始剤が、ベンゾフェノンである、上記態様79に記載の方法。
[81]
ステップ(a)のラジカル開始剤が、ベンゾフェノン及び/又はこれらの誘導体並びにチオキサントン及び/又はこれらの誘導体の混合物である、上記態様38〜78のいずれかに記載の方法。
[82]
ステップ(a)のラジカル開始剤が、ベンゾフェノン及びチオキサントンの混合物である、上記態様81に記載の方法。
[83]
ステップ(b)のラジカル重合が、紫外光に対する光開始剤を含むステップ(a)の混合物の曝露により開始される、上記態様38〜82のいずれかに記載の方法。
[84]
基材が、医療用デバイスである、上記態様38〜83のいずれかに記載の方法。
[85]
医療用デバイスが、二股ステント、バルーン拡張型ステント及び自己拡張型ステントを包含するステント、二股ステントグラフトを包含するステントグラフト、血管グラフト及び二股グラフトを包含するグラフト、拡張器、血管閉塞器、塞栓フィルター、塞栓除去デバイス、マイクロカテーテル、中心静脈カテーテル、抹消静脈カテーテル及び血液透析カテーテルを包含するカテーテル、人工血管、リトラクタブル シースを包含するシース、血管内在性モニタリングデバイス、人工心臓弁、ペースメーカー電極、ガイドワイヤー、カーディアックリード、心肺バイパスサーキット、カニューレ、プラグ、ドラッグデリバリーデバイス、バルーン、組織パッチデバイス及び血液ポンプからなる群より選択される、上記態様84に記載の方法。
[86]
上記態様38〜84のいずれかに記載の方法に従って得られた親水性コーティングを有する基材。

Claims (86)

  1. 成分A及びB、並びに任意選択の成分C及びDの架橋コポリマーを含む親水性コーティングを有する表面を有する基材であって、成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、
    成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、
    成分Cが、存在する場合には、1つ以上のアルケン又はアルキン基を各々含む1種以上の有益な化学物質を含み、並びに
    成分Dが、存在する場合には、チオール、アルケン及びアルキン基から独立に選択される2つ以上の官能基を各々含む1種以上の低分子量架橋剤を含み、
    架橋コポリマーが、成分A、B及びC(存在する場合には)のアルケン及び/又はアルキン基並びに成分D(存在する場合には)の官能基が関与するラジカル重合により形成し、
    親水性コーティングが、1種以上の有益な化学物質を含む成分Eを任意選択的に含み、成分Eが成分A、B、C(存在する場合には)及びD(存在する場合には)とコポリマーを形成せず、
    並びに親水性コーティングが、基材の表面に共有結合している基材。
  2. 基材の表面と親水性コーティングとの間の共有結合が、親水性コーティングの成分を有する基材の表面上の表面結合のラジカルの反応を介して形成し、及び表面結合のラジカルが、基材の表面からの水素原子の引き抜きを介して生成する、請求項1に記載の基材。
  3. 親水性コーティングが共有結合するポリドーパミンの第一の表面下塗りコーティングを有する、請求項1又は2に記載の基材。
  4. 成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、また1つ以上の基が、エステル、エーテル、カルボキシル、ヒドロキシル、チオール、スルホン酸、サルフェート、アミノ、アミド、ホスフェート、ケト及びアルデヒド基から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の基材。
  5. 成分Aが、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を含む、請求項4に記載の基材。
  6. 成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、親水性ポリマーが、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、ポリ‐N‐ビニルピロリドン、ポリ‐N‐ビニルピロリドン誘導体、ポリエーテル誘導体(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、ポリプロピレングリコール(PPG)、またはポリプロピレングリコール(PPG)誘導体)、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアルコール誘導体からなる群より独立に選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の基材。
  7. 成分Bが、2つのアルケン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の基材。
  8. 成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のポリエーテル親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、ポリプロピレングリコール(PPG)、またはポリプロピレングリコール(PPG)誘導体)を含む、請求項6に記載の基材。
  9. 成分Bが、2つのアルケン基を各々含む1種以上のPEGポリマーを含む、請求項8に記載の基材。
  10. 成分Bが、1種以上のジアクリレート官能化PEGポリマーを含む、請求項9に記載の基材。
  11. 1種以上のジアクリレート官能化PEGポリマーが、構造式(I)
    Figure 2020189140
    (式中、nは10〜50000、例えば15〜5000、例えば100〜400、例えば150〜260である。)である、請求項10に記載の基材。
  12. 1種以上のジアクリレート官能化PEGポリマーが、構造式(II)
    Figure 2020189140
    (式中、nは10〜50000、例えば15〜5000、例えば100〜400、好適には150〜260である。)である、請求項10に記載の基材。
  13. 成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、前記アルケン及び/又はアルキン基が、末端アルケン及び/又はアルキン基である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の基材。
  14. 成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、並びに各親水性ポリマーの分子量が、独立に600〜40000Da、例えば4000〜16000Daである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の基材。
  15. 成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む2種の異なる親水性ポリマーを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の基材。
  16. 成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む2種の異なる分子量のPEGポリマーを含む、請求項15に記載の基材。
  17. 成分Cが、1つのアルケン又はアルキン基を各々含む1種以上の有益な化学物質を含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の基材。
  18. 成分Cの前記有益な化学物質が、薬理活性を有する化学物質、導電剤又は接着剤である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の基材。
  19. 薬理活性を有する化学物質が、抗血栓薬、血管新生阻害剤、抗増殖剤又は抗菌剤である、請求項18に記載の基材。
  20. 成分Cの分子量が、100000Da以下、例えば50000Da以下、例えば25000Da以下である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の基材。
  21. 成分Cの分子量が、9000Da〜20000Da、例えば9000Da〜11000Daである、請求項20に記載の基材。
  22. 成分Cが、ヘパリンである、請求項1〜21のいずれか1項に記載の基材。
  23. 成分Dが、2つ以上のチオール基を各々含む1種以上の低分子量の架橋剤を含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の基材。
  24. 成分Eの前記有益な化学物質が、薬理活性を有する化学物質、導電剤又は接着剤である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の基材。
  25. 薬理活性を有する化学物質が、抗血栓薬、血管新生阻害剤、抗増殖剤又は抗菌剤である、請求項24に記載の基材。
  26. 成分Cが存在し、かつ、成分Dは存在しない、請求項1〜25のいずれか1項に記載の基材。
  27. 成分Dが存在し、かつ、成分Cは存在しない、請求項1〜25のいずれか1項に記載の基材。
  28. 成分C及びDが存在しない、請求項1〜25のいずれか1項に記載の基材。
  29. 成分C及びDが存在する、請求項1〜25のいずれか1項に記載の基材。
  30. 成分Eが存在し、かつ、コポリマーに共有結合している、請求項1〜29のいずれか1項に記載の基材。
  31. 成分Eが存在し、かつ、コポリマーに共有結合していない、請求項29に記載の基材。
  32. 成分Eが存在しない、請求項1〜29のいずれか1項に記載の基材。
  33. 親水性コーティングが潤滑性であり、また潤滑性試験を用いた潤滑性が<100g、例えば<50g、例えば<15gである、請求項1〜32のいずれか1項に記載の基材。
  34. 親水性コーティングの耐久性試験を用いた耐久性が、<50g、例えば<25g、例えば<15gである、請求項33に記載の基材。
  35. 成分Bの成分Aに対する質量比が、2.5:1〜0.5:1である、請求項1〜34のいずれか1項に記載の基材。
  36. 基材が、医療用デバイスである、請求項1〜35のいずれか1項に記載の基材。
  37. 医療用デバイスが、二股ステント、バルーン拡張型ステント及び自己拡張型ステントを包含するステント、二股ステントグラフトを包含するステントグラフト、血管グラフト及び二股グラフトを包含するグラフト、拡張器、血管閉塞器、塞栓フィルター、塞栓除去デバイス、マイクロカテーテル、中心静脈カテーテル、抹消静脈カテーテル及び血液透析カテーテルを包含するカテーテル、人工血管、リトラクタブルシースを包含するシース、血管内在性モニタリングデバイス、人工心臓弁、ペースメーカー電極、ガイドワイヤー、カーディアックリード、心肺バイパスサーキット、カニューレ、プラグ、ドラッグデリバリーデバイス、バルーン、組織パッチデバイス及び血液ポンプからなる群より選択される、請求項36に記載の基材。
  38. 基材の表面に共有結合する親水性コーティングの形成方法であって、前記方法が、
    (a)表面と、成分A及びB、任意選択の成分C、任意選択の成分D及びラジカル開始剤を含む混合物とを接触させるステップであって、
    成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、
    成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、
    成分Cが、存在する場合には、1つ以上のアルケン又はアルキン基を各々含む1種以上の有益な化学物質を含み、並びに
    成分Dが、存在する場合には、チオール、アルケン、及びアルキン基から独立に選択される2つ以上の官能基を各々含む1種以上の低分子量架橋剤を含むステップ;
    並びに
    (b)成分A、成分B、並びに任意選択のC及びDの架橋コポリマーを形成するために、成分A、B及びC(存在する場合には)のアルケン及び/又はアルキン基並びに成分D(存在する場合には)の官能基が関与するラジカル重合を開始するステップであって、前記コポリマーが表面に共有結合するステップ、並びに
    (c)任意選択的に、1種以上の有益な化学物質を含む成分Eを親水性コーティング中に組み込むステップであって、成分Eが成分A、B、C(存在する場合には)及びD(存在する場合には)とコポリマーを形成しないステップ
    を含む方法。
  39. 基材が、引き抜き可能な水素原子を含む表面を有する基材である、請求項38に記載の方法。
  40. 液相中のラジカル開始剤が、基材の表面と接触して表面から水素原子を引き抜いて、表面にコポリマーを共有結合させるための成分A及びB並びに任意選択のC及びDの少なくとも1つと反応する表面結合のラジカルを形成する、請求項39に記載の方法。
  41. 基材の表面上の反応基が、表面と接触して液相中で形成したフリーラジカルにより開始されたプロセスにおいて、表面にコポリマーを共有結合させるための成分A及びB並びに任意選択のC及びDの少なくとも1つと反応する、請求項39に記載の方法。
  42. 成分Aが、1つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のC2〜C16親水性モノマーを含み、また1つ以上の基が、エステル、エーテル、カルボキシル、ヒドロキシル、チオール、スルホン酸、サルフェート、アミノ、アミド、ホスフェート、ケト及びアルデヒド基から選択される、請求項38〜40に記載の方法。
  43. 成分Aが、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を含む、請求項42に記載の方法。
  44. 成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、親水性ポリマーが、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、ポリ‐N‐ビニルピロリドン、ポリ‐N‐ビニルピロリドン誘導体、ポリエーテル誘導体(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、ポリプロピレングリコール(PPG)、またはポリプロピレングリコール(PPG)誘導体)、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアルコール誘導体からなる群より独立に選択される、請求項38〜43のいずれか1項に記載の方法。
  45. 成分Bが、2つのアルケン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含む、請求項38〜44のいずれか1項に記載の方法。
  46. 成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上のポリエーテル親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体、ポリプロピレングリコール(PPG)、又はポリプロピレングリコール(PPG)誘導体)を含む、請求項45に記載の方法。
  47. 成分Bが、2つのアルケン基を各々含む1種以上のPEGポリマーを含む、請求項46に記載の方法。
  48. 成分Bが、1種以上のジアクリレート官能化PEGポリマーを含む、請求項47に記載の方法。
  49. 1種以上のジアクリレート官能化PEGポリマーが、構造式(I):
    Figure 2020189140
    (式中、nは10〜50000、例えば15〜5000、例えば100〜400、例えば150〜260である)である、請求項48に記載の方法。
  50. 1種以上のジアクリレート官能化PEGポリマーが、構造式(II):
    Figure 2020189140
    (式中、nは10〜50000、例えば15〜5000、例えば100〜400、好適には150〜260である)である、請求項48に記載の方法。
  51. 成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、前記アルケン/及び又はアルキン基が、末端アルケン及び/又はアルキン基である、請求項38〜50のいずれか1項に記載の方法。
  52. 成分Bが、2つ以上のアルケン及び/又はアルキン基を各々含む1種以上の親水性ポリマーを含み、また各親水性ポリマーの分子量が、独立に600〜40000Da、例えば4000〜16000Daである、請求項38〜51のいずれか1項に記載の方法。
  53. 成分Cの前記有益な化学物質が、薬理活性を有する化学物質、導電剤又は接着剤である、請求項38〜52のいずれか1項に記載の方法。
  54. 薬理活性を有する化学物質が、抗血栓薬、血管新生阻害剤、抗増殖剤又は抗菌剤である、請求項53に記載の方法。
  55. 成分Cの分子量が、100000Da以下、例えば50000Da以下、例えば25000Da以下である、請求項38〜54のいずれか1項に記載の方法。
  56. 成分Cの分子量が、9000Da〜20000Da、例えば9000Da〜11000Daである、請求項55に記載の方法。
  57. 成分Cがヘパリンである、請求項38〜56のいずれか1項に記載の方法。
  58. 成分Dが、2つ以上のチオール基を各々含む1種以上の低分子量架橋剤である、請求項38〜57のいずれか1項に記載の方法。
  59. 成分Eの前記有益な化学物質が、薬理活性を有する化学物質、導電剤又は接着剤である、請求項38〜58のいずれか1項に記載の方法。
  60. 薬理活性を有する化学物質が、抗血栓薬、血管新生阻害剤、抗増殖剤又は抗菌剤である、請求項59に記載の方法。
  61. 成分Cが存在し、かつ、成分Dは存在しない、請求項38〜60のいずれか1項に記載の方法。
  62. 成分Dが存在し、かつ、成分Cは存在しない、請求項38〜61のいずれか1項に記載の方法。
  63. 成分C及びDが存在しない、請求項38〜61のいずれか1項に記載の方法。
  64. 成分C及びDが存在する、請求項38〜61のいずれか1項に記載の方法。
  65. 成分Eがコポリマーに共有結合するステップ(c)を含む請求項38〜64のいずれか1項に記載の方法。
  66. 成分Eがコポリマーに共有結合しないステップ(c)を含む請求項38〜64のいずれか1項に記載の方法。
  67. ステップ(c)を含まない、請求項38〜64のいずれか1項に記載の方法。
  68. 成分Bの成分Aに対する質量比が、2.5:1〜0.5:1である、請求項38〜67のいずれか1項に記載の方法。
  69. 親水性コーティングが潤滑性であり、また潤滑性試験を用いた潤滑性が<100g、例えば<50g、例えば<15gである、請求項38〜68のいずれか1項に記載の方法。
  70. 親水性コーティングの耐久性試験を用いた耐久性が、<50g、例えば<25g、例えば<15gである、請求項38〜69のいずれか1項に記載の方法。
  71. 引き抜き可能な水素原子を含む基材の表面が、引き抜き可能な水素原子を含むポリマーの表面下塗りコーティングである、請求項38〜70のいずれか1項に記載の方法。
  72. 引き抜き可能な水素原子を含むポリマーが、カテコール官能基及び/又はキノン官能基及び/又はセミキノン官能基を含むポリマーである、請求項71に記載の方法。
  73. 引き抜き可能な水素原子を含むポリマーが、ポリドーパミンである、請求項71または72に記載の方法。
  74. ポリドーパミンの表面コーティングが、基材の表面と、酸化剤及びドーパミン及び/又はドーパミン類縁体を含む混合物と接触させることにより形成する、請求項73に記載の方法。
  75. ポリドーパミンの表面コーティングが、pH4〜7にて形成される、請求項73又は74に記載の方法。
  76. ポリドーパミンの表面コーティングが、pH5.5〜6.5にて形成される、請求項75に記載の方法。
  77. ポリドーパミンの表面コーティングが、水と有機アルコール(例えば水とIPAの混合物)の混合物である溶媒の存在下において形成される、請求項73〜76のいずれか1項に記載の方法。
  78. ポリドーパミンの表面コーティングの形成に先立って、コートされるべき表面が酸化剤で前処理されている、請求項73〜77のいずれか1項に記載の方法。
  79. ステップ(a)のラジカル開始剤が、ベンゾフェノン及びこれらの誘導体並びにキサントン及びこれらの誘導体からなる群より選択される、請求項38〜78のいずれか1項に記載の方法。
  80. 前記ラジカル開始剤が、ベンゾフェノンである、請求項79に記載の方法。
  81. ステップ(a)のラジカル開始剤が、ベンゾフェノン及び/又はこれらの誘導体並びにチオキサントン及び/又はこれらの誘導体の混合物である、請求項38〜78のいずれか1項に記載の方法。
  82. ステップ(a)のラジカル開始剤が、ベンゾフェノン及びチオキサントンの混合物である、請求項81に記載の方法。
  83. ステップ(b)のラジカル重合が、紫外光に対する光開始剤を含むステップ(a)の混合物の曝露により開始される、請求項38〜82のいずれか1項に記載の方法。
  84. 基材が、医療用デバイスである、請求項38〜83のいずれか1項に記載の方法。
  85. 医療用デバイスが、二股ステント、バルーン拡張型ステント及び自己拡張型ステントを包含するステント、二股ステントグラフトを包含するステントグラフト、血管グラフト及び二股グラフトを包含するグラフト、拡張器、血管閉塞器、塞栓フィルター、塞栓除去デバイス、マイクロカテーテル、中心静脈カテーテル、抹消静脈カテーテル及び血液透析カテーテルを包含するカテーテル、人工血管、リトラクタブル シースを包含するシース、血管内在性モニタリングデバイス、人工心臓弁、ペースメーカー電極、ガイドワイヤー、カーディアックリード、心肺バイパスサーキット、カニューレ、プラグ、ドラッグデリバリーデバイス、バルーン、組織パッチデバイス及び血液ポンプからなる群より選択される、請求項84に記載の方法。
  86. 請求項38〜84のいずれか1項に記載の方法に従って得られた親水性コーティングを有する基材。
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