JP2020188455A - 超低雑音極低温マイクロ波増幅 - Google Patents

超低雑音極低温マイクロ波増幅 Download PDF

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Abstract

【課題】雑音温度が極めて低いメーザー増幅器を提供する。【解決手段】複数の核スピンおよび電子スピンに基づくエネルギー準位を有する不純物を有する常磁性体を含むマイクロ波増幅器と、ポンプ信号を受信する入力部と、マイクロ波増幅器によって増幅される入力信号を受信し、入力信号はポンプ信号よりも低い電力を有する、入力部と、を有し、ポンプ信号は、複数の核スピンおよび電子スピンに基づくエネルギー準位のうちの少なくとも1つのエネルギー準位に対応する励起状態への反転分布を生じさせ、少なくとも1つのエネルギー準位への反転分布が、入力信号を増幅させることによって、増幅信号を生成する。【選択図】図7

Description

本発明は、電子信号増幅の分野に関し、特に超低雑音極低温マイクロ波増幅に関する。
本節において開示されるアプローチは、遂行可能なアプローチであるが、必ずしも先に考案または遂行されたアプローチではない。したがって、特段の記述が無い限り、本節において開示される何れのアプローチも、単に本節に含まれているという理由によって先行技術としてはならない。
マイクロ波周波数の量子レベルの信号は、極低温下での動作を必要とする。例えば、当該環境下における熱雑音のエネルギーkTは、マイクロ波周波数の単一量子(マイクロ波光子)のエネルギーhωよりも遥かに小さくなければならないため、例えば、10から100ミリケルビンまで変化する温度が求められる。ここで、kは、ボルツマン定数(=1.38×10−23J/K=1.38×10−23kgs−2−1)であり、hは、換算プランク定数(=1.05×10−34kgs−1)である。したがって、5GHzのマイクロ波の場合、対応する温度は、hω/k≒250mKである。量子レベルでのマイクロ波信号のエネルギーは小さいため、ミリケルビンの環境にてマイクロ波信号を増幅、とりわけ低雑音で増幅することは、極めて難しい。しかしながら、量子コンピューティング技術やそのアプリケーションの場合は必須ではないかもしれないが、そのように増幅することは極めて重要である。
類似の参照符号がすべての図面を通じて対応する部位を指す、特定の実施形態の図面において:
図1(a)は、1つ以上の実施形態における透過測定における「量子DUT」(被測定物)のための例示的な量子マイクロ波増幅システムを説明するブロック図である。図1(b)は、1つ以上の実施形態における反射測定のための例示的な量子マイクロ波増幅システムを説明するブロック図である。
図2は、ミリケルビンの温度における量子ベースの信号のためのジョセフソンパラメトリック増幅器(JPA)を備え、3〜4Kおよび常温でのさらなる増幅を行う一実施形態におけるマイクロ波増幅システムを説明するブロック図である。
図3(a)/(b)/(c)は、1つ以上の実施形態におけるメーザー動作の一例を説明する図である。
図4(a)/(b)は、1つ以上の実施形態におけるポンプ信号による3準位メーザー動作の一例を説明する図である。
図5(a)は、一実施形態における「P1センター」、すなわちダイヤモンド中の窒素不純物の結晶学上の概略図を説明する図である。
図5(b)は、一実施形態における結晶学上の[001]軸に平行な定磁場Bに対する各々の状態のエネルギー準位を説明するエネルギー準位図である。
図6(a)/(b)は、1つ以上の実施形態における各々の核スピンのP1センターの固定磁場での遷移周波数に対するダイヤモンドメーザーの交差緩和を通じた反転のプロセスを説明する図である。
図7は、一実施形態におけるマイクロ波増幅のための量子システム700を説明するブロック図である。
図8は、一実施形態におけるマイクロ波共振器を説明する写真である。
図9は、一実施形態におけるマイクロ波量子増幅システム700のゲインの一例を説明する図である。
図10は、一実施形態におけるマイクロ波増幅のための量子システム1000を説明するブロック図である。
図11は、一実施形態におけるマイクロ波量子増幅システム1000の結果の信号のゲインスペクトルを説明する図である。
図12は、一実施形態における不純物を含む常磁性体におけるマイクロ波増幅のプロセスを説明するフロー図である。
図13は、一実施形態におけるマイクロ波量子情報および技術へのメーザー増幅器の適用例を説明するブロック図である。
図14は、一実施形態における進行波メーザー増幅器を説明する図である。
以下の説明においては、解説にあたり、さまざまな実施形態を十分に理解するための多数の具体的な詳細を記載している。しかしながら、いくつかの実施形態がこれらの具体的な詳細を伴わずに実行されることは明白である。他の例では、実施形態を不必要に曖昧にすることを避けるため、構造や装置をブロック図の形態で説明している。
<総括>
ミリケルビンの環境にてマイクロ波信号を増幅するための量子技術をベースとした技術を説明する。当該信号は、量子ベースの情報(量子ビット)を運ぶ信号、磁気共鳴、またはマイクロ波周波数の任意の他の信号を含むことができる。本明細書において開示されるアプローチを用いることによって、先行技術よりも大きなダイナミックレンジで、かつ、量子力学上の揺らぎに起因する低雑音以外の他の如何なる雑音を伴うことなく、マイクロ波信号は増幅される。
マイクロ波信号の増幅は、マイクロ波共振器に配置され、または導波路に埋め込まれた固体結晶中の不純物のスピンに基づいて生じる。これらのアプローチは、ジョセフソンパラメトリック増幅器(JPA)の量子技術および応用に関する利点を維持するが、遥かに大きなダイナミックレンジを有する。加えて、提案される増幅技術は磁場を受けて機能するが、これもJPAは欠いている。冷凍機においてマイクロ波周波数で機能する、および超伝導または半導体の量子ビット、量子ドット、機械共振器、またはスピンで動作する、すべての量子デバイスが、これらの技術を用いることができる。
<量子信号の雑音の概要>
一実施形態において、システムの信号雑音比、および、これによる性能は、第1の増幅器から付加される雑音によって決定される。このような雑音は、信号周波数ωでの当該雑音のパワースペクトル密度S(ω)によって特性付けることができる。増幅器のFigure-of-Merit(FOM:性能指標)として、この雑音レベルは、雑音温度と呼ばれる温度の次元T[=S(ω)/k]でしばしば表される。したがって、雑音は、環境の温度に依存し得る。
雑音温度Tを有する増幅器によって付加される雑音光子の数は、数(1)によって表される。例えば、低雑音低温マイクロ波増幅器の1つは、高電子移動度トランジスタ(HEMT)増幅器であり、その典型的な雑音温度は約3〜5Kであり、すなわち10個を超える雑音光子を付加する。Tの下限は、量子力学的不確実性に起因する零点エネルギー揺らぎhω/2によって与えられる。
したがって、量子DUTのマイクロ波の測定結果に係る信号雑音比を最大化するために、第1の増幅器は、零点エネルギー揺らぎにできる限り近い雑音温度、すなわちTN0=hω/2kを有することが望ましい。
図1(a)/(b)は、1つ以上の実施形態におけるミリケルビンの温度にて動作するジョセフソンパラメトリック増幅器(JPA)を備えるシステムを説明するブロック図である。ジョセフソンパラメトリック増幅器(JPA)120は、ジョセフソン接合(超電導トンネル接合)が埋め込まれた超電導回路に基づく。このような増幅器は、ジョセフソン接合の非線形性を利用し、ミリケルビンの温度の範囲において、マイクロ波信号のエネルギーよりも遥かに低い温度、すなわちT≪hω/kで動作する。増幅器は概してn=0.5〜1個の雑音光子を付加することから、JPAはより良好な性能を有する。システム100(a)/(b)は、希釈冷凍機の内部においてミリケルビンでのサンプル(複数可)を含むマイクロ波共振器110をさらに含むことができる。
図1(a)は、一実施形態における透過測定のための量子システムの一例を説明するブロック図であり、図1(b)は、一実施形態における反射測定のための量子システムの一例を説明するブロック図である。プローブマイクロ波信号151が、量子DUT110へと送信され、システム100(a)における透過信号153aまたはシステム100(b)における反射信号153bが、信号(信号155)を増幅するJPA120へと届けられる。図1(b)に示すように、JPA120は、反射機能も果たすことができる。いずれの場合も、増幅信号155は、常温の熱雑音と比べて依然として小さい。したがって、一実施形態において、より高温域の状態ではさらに増幅される(図2も参照)。
図2は、ミリケルビンの温度における量子ベースの信号のためのジョセフソンパラメトリック増幅器(JPA)を備え、3〜4Kおよび常温でのさらなる増幅を行う、一実施形態におけるシステムを説明するブロック図である。このような実施形態においては、一例として、システム100(a)/(b)のJPAによって生成された信号155が、システム200の低温HEMT増幅器215によって通常3〜4K(210)で一度増幅され、増幅器220によって常温でもう一度さらに増幅され、増幅信号250が生成される。信号250は、一例として、受信回路230によって、通常、ホモダインまたはヘテロダイン検波によって検出される。
システム200は、量子ベースの信号を増幅することができるが、システム200は、ダイナミックレンジが限られているという問題がある。これは、JPA120(およびJPA全般)のダイナミックレンジが限られているためであり、すなわち入力飽和電力が極めて低いためである。例えば、JPA120は、約−100dBm(0.1ピコワット)の最大入力電力を有し得る。このようなJPA120を使用すると、システム200は、理論的には20個の量子ビット(キュービット)だけを同時に読み取るように制限されるが、実際には、5個の量子ビットまでさらに減少する。
マイクロ波信号を増幅させるための別のアプローチは、固体中のスピンによるメーザー(「誘導放出によるマイクロ波増幅」)である。図3(a)/(b)/(c)は、1つ以上の実施形態におけるメーザー動作の一例を説明する図である。図3(a)において、一実施形態における平衡状態にある量子力学的エネルギー準位システムを含むメーザー動作が示されている。低エネルギー準位および高エネルギー準位は、それぞれ基底状態|g>(310a)および励起状態|e>(320b)であり、両者のエネルギーの隔たりはhωである。ここでは、hω≫kTと想定される。
図3(b)において、高(エネルギー)準位320bの方が低(エネルギー)準位310bよりも多く分布した反転分布が図示されている。量子力学的エネルギー準位の分布が反転すると(図3(b))、図3(c)に示すように、誘導放出によって増幅が生じる。したがって、図3(c)は、一実施形態における(量子)放射355の誘導放出による信号350の増幅を示している。
メーザーによるアプローチにおける課題は、量子力学的システムをどのように反転分布した状態にまで励起させるかにある。この課題に取りかかるために、本明細書において開示される技術には、少なくとも3つの準位を含む複数のエネルギー準位を有するシステムが用いられる。
図4(a)/(b)は、一実施形態におけるポンプ信号による3準位メーザー動作の一例を説明する図である。このような実施形態においては、もう1つの準位|f>(430aおよび430b)を利用して反転が為される。図4(a)において、hω’のエネルギーを有する高強度のポンプ信号450によって、基底状態|g>(410a)から、第1の励起状態|e>(420a/b)よりも上のエネルギー準位の第3の準位|f>(430a/b)まで励起する。その後、当該状態|f>(430b)から第2の準位|e>(420b)へと遷移し、基底状態|g>(410b)からhωエネルギーが高い状態420bでの反転分布が生成される。
このような実施形態において、状態|e>(420b)と状態|f>(430b)との間においては遷移が高確率で起こると仮定している。したがって、状態|f>(430a)における分布は、直ちに状態|e>(420b)へと緩和する。緩和した結果として、状態|g>(410b)と状態|e>(420b)との間の遷移に係る分布を、状態|g>(410a)と状態|f>(430a)との間の遷移を「ポンピング」することによって、反転させることができる。この3準位メーザーの仕組みは、ルビー(クロムがドープされたサファイヤ)等の複数のエネルギー準位を備える常磁性体において実現することができる。
メーザー増幅器の雑音性能は、T≪hω/kのような極低温で動作し、かつ、スピン緩和速度がポンピング速度よりも低い場合に限り、量子力学上の下限TN0=hω/2kに到達し得る。
前者は昨今、希釈冷凍機のマイクロ波周波数での量子情報および技術の応用において、常に当てはまる。後者もまた、より高温での支配的な緩和メカニズムであるスピン格子緩和の経路が閉ざされ、結果として極めて遅い緩和(通常は数分、場合によっては数時間である)となるミリケルビンの温度において当てはまる。
<不純物の結晶ベースのメーザーの概要>
一実施形態において、メーザーシステムは、不純物を含む結晶を用いて動作される。図5(a)は、一実施形態における「ダイヤモンド中のP1センター」、すなわちダイヤモンド中の窒素不純物の結晶学上の概略図を説明する図である。P1センターは、ダイヤモンド中の安定した不純物中心の1つの例である。
一実施形態において、ダイヤモンドの結晶をミリケルビンの温度に置くことによって、当該不純物は量子基底状態にて完全に偏極したスピンを生成する。このような常磁性体の緩和プロセスは、スピン格子緩和であり、高温でのメーザー増幅の際に大きな雑音を付加し得る。しかしながら、ミリケルビンの温度での緩和プロセスは極めて長く、数時間に達することもある。したがって、生じる雑音は無視できる。
一実施形態において、量子システムは、信号周波数よりも高い周波数を用いるのではなく、信号周波数よりも低い周波数を有するポンピングマイクロ波周波数を用いる。信号周波数よりも低いポンピングマイクロ波周波数を用いるにも関わらず、当該システムは、反転分布を生成し続ける。
信号周波数よりも低いポンピング周波数で反転するための1つの技術は、ダイヤモンド中のP1センターを用いることである(図5(a))。本明細書において開示されるアプローチでは、不純物としてP1センターおよび常磁性体としてのダイヤモンドが用いられるが、本明細書において開示される技術は、P1センターおよび/またはダイヤモンドには限定されない。同様の結果を達成するために、本明細書において開示される技術において、他の不純物および常磁性体が用いられてもよい。
一実施形態において、不純物構造においては、誘導放出のために複数のエネルギー準位が導入される。当該エネルギー準位は、P1センターの電子スピンおよび核スピンの配列ペアに基づくことができる。不純物が想定し得る3つの核スピンおよび2つの電子スピンを有している場合、誘導放出のためのシステムには計6つの異なるエネルギー準位が導入される。
図5(b)は、一実施形態における結晶学上の[001]軸に平行な定磁場Bに対する各々の状態のエネルギー準位を説明するエネルギー準位図である。エネルギー準位は、電子スピンと核スピンとの間の超微細相互作用によって生じる。このような実施形態において、図5(a)のP1センターは、2分の1の電子スピン(m=±1/2)および1の核スピン(m=−1,0,+1)を有し、図5(b)に示すように、電子スピン共鳴遷移(−1/2←→+1/2)は3つに分かれ、各々が核スピンの状態の1つに相当する。したがって、合わせて6つのエネルギー準位が存在する。図5(b)において、m=+1/2に相当する3つの状態は、512、514、516として標記され、m=−1/2に相当する他の3つの状態は、522、524、526と標記される。図5(b)の右側のパネルにおいて、図5(b)の左側のパネルの502および504の拡大図が示されている。
P1センターの例において、3つの遷移(各々、526と516との間、524と514との間、および522と512との間)の周波数は、図5(b)において線516と線514との間、線512と線514との間、線522と線524との間、および線524と線526との間の距離によって示されるように、等間隔である。したがって、中央の遷移(524と514との間のm=0の)における2つのスピンをフリップさせるために必要なエネルギーは、両側の遷移(526と516との間、および522と512との間)における各々の1つのスピンを同時にフリップさせるためのエネルギーと同じである。このプロセスは、本明細書において「交差緩和」と称され、その一例が図6(a)に示されている。
図6(a)/(b)は、一実施形態における固定磁場の下でのダイヤモンドメーザーの交差緩和を通じた反転のプロセスを説明する図である。反転分布は、中央の遷移(図5(b)の524と514との間)をポンピングすることによって、実現され得る。マイクロ波ポンプによって、状態524から状態514へと分布が移行する。交差緩和のプロセスによって、状態514から状態524へと分布が戻ると同時に、状態526および522から上準位の状態516および512へと分布が各々移行する。加えて、当該3つの上準位の状態512、514、516の各々からの分布が、スピン格子緩和によって、対応する下準位の状態522、524、526へと緩和する。
一実施形態において、両側の2つの遷移の間(図6における526と516との間、および522と512との間)に緩和速度の非対称が存在すると仮定する。さらに、交差緩和に要する時間は、各々の遷移のスピン格子緩和の時間よりも短いと仮定する。そして、いずれの条件も実際に満たされていることが実験的に確認されている。
このような状況において、反転分布は、上準位512または516のいずれかにおいて成立すると考えられる。例えば、右側の遷移(512から526まで)の緩和速度が左側の遷移(516から526まで)の緩和速度よりも遥かに速い場合、図6(b)に示すように、左側の遷移における分布が上準位の状態516にて継続してポンプされる。
上述の緩和条件は、ダイヤモンド中のP1センターに関して、窒素−空孔(NV)センター等の別の種類の欠陥中心が存在するところで見出される。NVセンターは、電子スピン1を有する。100mTを超える静磁場において、NVセンターの共振周波数は、P1センターの共振周波数に近くなる。ダイヤモンドの結晶を用いる技術の場合には、NVセンターは、当該結晶の体積全体に渡って約2ppmの密度で分布する。P1センターとNVセンターは、スピンフリップフロップ遷移および他の高位の交差緩和プロセスを経て、エネルギーを交換し得る。P1センターとN−Vセンターのスピン間の相互作用により、状態512におけるP1センターの緩和が加速され、状態516の分布が増加し、最終的には、状態526と516との間の遷移において反転分布を引き起こす。
<システムの概要>
図7は、一実施形態におけるマイクロ波増幅のためのマイクロ波量子増幅システム700を説明するブロック図である。マイクロ波量子増幅システム700は、約10mKのベース温度を有する希釈冷凍機702を含む。ダイヤモンドの結晶720は、銅エンクロージャ716内のループギャップマイクロ波共振器718(その一例が図8に示されている)に配置される。一実施形態において、ループギャップマイクロ波共振器718は、希釈冷凍機702の10mKのプレートに熱的に接触している。定磁場Bが、超伝導コイルによって生成され、ダイヤモンド720へと、その結晶上の軸に沿って印加される。
一実施形態において、一連の減衰710および712を有する同軸ケーブルを介して、プローブマイクロ波入力信号752を共振器718へと送信することによって、透過スペクトルが測定される。減衰器710および712は、各々、3または4Kならびに100mKの温域において、マイクロ波同軸ケーブルを通って室温からもたらされる熱雑音を抑制する。
一実施形態において、マイクロ波共振器718から生じるマイクロ波信号は、(連続した)極低温アイソレータ722、および高帯域雑音とポンプ信号750の残部のすべてとをフィルターで除去するローパスフィルタ724を通過する。その後、信号は、3〜4Kにて高電子移動度トランジスタ(HEMT)低温増幅器726によってさらに増幅されてもよく、また、室温での別の増幅器、すなわち増幅器730がさらに続いてもよい。一実施形態において、極低温アイソレータ722は、HEMT増幅器から発生した雑音信号が共振器718へと戻ることを防止するように機能する。
メーザーベースでの増幅を行うために、一実施形態において、磁場Bは、中央のスピンの遷移(「m=0」、図5の524と514との間、および図6も参照)がマイクロ波共振器718の周波数に一致するような大きさに調整される。例示的な約189ミリテスラの磁場Bが、図9の結果に当てはまるが、磁場Bのこの値は、共振器718の動作周波数によって変化し得る。ポンプ信号750は、例えば、共振器718への共振器周波数において、数マイクロワットの電力で、P1センターの中央のスピンの遷移(524と514との間)を強くポンプすることによって、図5および図6にて説明されている不純物の反転分布を生成する。
一実施形態において、メーザー増幅器のゲインを決定するために、磁場Bが約186ミリテスラに変更され、低磁場の遷移(m=+1、図5の516と526との間)の周波数が共振器718の周波数ωに一致する(ただし、以下にさらに説明するように、定磁場Bの変更は必須ではない)。増幅された信号754は、図2および図7において同様に説明するように、入力信号752として弱いプローブマイクロ波信号(数フェムトワット)を送信することによって、室温にて測定される。図9は、一実施形態における量子システム700のゲインの一例を説明する図である。図9に示すように、30dBを超えるゲインが計測され、例示的な帯域幅は、数100kHzくらいの狭さである。
図10は、他の実施形態としてのマイクロ波増幅のための量子システム1000を説明するブロック図である。マイクロ波の遷移を用いる量子システム700とは異なり、マイクロ波の反射係数は、システム1000(図1のシステム100(b)も参照)において、マイクロ波共振器718の前にサーキュレータ1002およびアイソレータ1004を配置して、信号1056等の出力信号を低温のHEMT増幅器726および後続の測定系統へと送ることによって、計測される。当該他の実施形態は、反射ベースの測定を開示しているが、当該実施形態を、透過測定に向けて変更してもよい。
システム100には、高強度のポンプ信号1050による、測定結果を歪める虞のあるすべての望ましくない影響を抑制するために、キャンセルライン1070も組み込まれる。このために、ポンプのためのマイクロ波信号1050は、方向性結合器1006によって2つに分割され、一方はポンプライン1072に用いられ、他方はキャンセルライン1070に用いられる。分割されたポンプ信号は、各温域706、704、および702を通って、希釈冷凍機の内部へと別々に送られる。キャンセル信号は、冷凍機702内の10mKにて、共振器718から出てサーキュレータ1002およびアイソレータ1010を通過した、反射されたポンプ信号と、方向性結合器1008によって結合される。キャンセル信号の位相および振幅は、位相シフタ1012および可変減衰器1014によって、反射されたポンプ信号1050に対して180度シフトされ、かつ同じ振幅を有するようにそれぞれ調整され、これにより共振器718から反射されて方向性結合器1008に進入する高強度のポンプ信号1050が打ち消される。
一実施形態において、(磁場)Bは、高エネルギーのスピンの遷移(m=+1、516と526との間)がマイクロ波共振器718の周波数(この例では、ω=6.385GHz)と一致するように固定される。この例において、一例として、共振器718とは共鳴しないが中央のスピンの遷移(m=0、514と524との間)と共鳴する、ω=6.293GHzの周波数にて、数マイクロワットの電力を有する高強度のマイクロ波信号1050を送信することによって、スピンがポンプされる。
システム1000は、(マイクロ波共振器718の周波数)ωを横切って弱いマイクロ波信号1052(概ね<−100dBm)を送信し、同じ周波数で反射信号を測定することによって、測定され得る。システム1000の結果の信号1054は、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)によって分析される。
図11は、一実施形態におけるシステム1000の結果の信号1052のゲインスペクトルを説明する図である。このような実施形態において、最大ゲインは、約100kHzの帯域幅で約37dBであることが計測された。ゲイン・プロファイルは、(共振器)718の共振器周波数ωの値および静磁場Bを調整することによって、広い周波数範囲に亘って調整可能であり得る。
<機能の概要>
図12は、一実施形態における不純物を含む常磁性体における量子マイクロ波増幅のプロセスを説明するフロー図である。ステップ1205において、磁場が常磁性体へと結晶上の軸に沿って印加される。ステップ1210において、磁場が印加されることにより、核スピンおよび電子スピンに複数のエネルギー準位が生じ、分布する。核スピンおよび電子スピンの各々の組み合わせが、固有のエネルギー準位に対応する。一実施形態において、固有の電子スピンの取り得るエネルギー準位は、等間隔である。
ステップ1215において、ポンプ信号を受信し、ステップ1220において、ポンプ信号を、不純物を含む常磁性体へと送信する。ポンプ信号は、不純物の初期の基底状態とは異なる電子スピンの状態に対応する初期の励起状態へと分布を遷移させる、追加のエネルギーを与える。ステップ1225において、図6Bに示す交差緩和またはスピン格子緩和によって、常磁性スピンシステムは、異なる核スピンの状態または異なる電子スピンの状態に対応し得る励起状態へと遷移する。一実施形態において、当該新たな励起状態のエネルギー準位は、印加される静磁場Bおよびポンプ信号の強度(電力/周波数、図5を参照)によって決定される。
ステップ1230において、増幅すべき入力マイクロ波信号がシステムに到達する。次いで、当該信号は、ステップ1235において、メーザー増幅器の常磁性体を通って送られることにより、ステップ1240において、図3および図4の実施形態にて示すように、メーザー増幅器によって増幅される。得られる信号は、ステップ1245においてメーザー増幅器の出力として送信され、および/または4K(または、同様の温度)におけるHEMT等の非極低温環境の増幅器ならびに室温における付加的な増幅器によってさらに増幅され得る。
一実施形態において、1つ以上のローパスフィルタおよび減衰器を用いて、熱雑音を低減することができる。これに代えて、あるいはこれに加えて、ステップ1250において、キャンセル信号を、位相を(180度)シフトさせ、および振幅をメーザー増幅器から得られるポンプ信号の振幅と同じに可変減衰器によって調整することによって、生成することができる。キャンセル信号は、ステップ1255において、増幅された入力信号におけるポンプ信号の残部を打ち消すために用いられる。ステップ1245において得られた出力信号の雑音は低減されている。
<量子システムの雑音性能>
本発明のメーザー増幅器の雑音温度は、他の技術を使用して特性評価される。第1の技術を用いて、磁場Bが、中央のP1センターのスピンの遷移(m=0、514と524との間、図5および図6を参照)が例えば約189ミリテスラ(この値は、共振器周波数に応じて実験ごとに変化し得る)であるマイクロ波共振器718の周波数に一致するように、固定される。一例として、中央のP1センターのスピンの遷移を、共振器周波数(ω=5.384GHz)にて数マイクロワットの電力を有する高強度のマイクロ波信号を送信することによってポンプすることができる。次いで、磁場Bは、低磁場の遷移(m=+1)周波数が共振器周波数ωに一致する約186ミリテスラ(同様に、この値も、共振器周波数に応じて実験ごとに変化し得る)に変更される。スペクトルアナライザを用いて、システムの雑音のパワースペクトル密度を測定することができる(次の段落も参照)。
雑音温度の別の特性評価技術を用いて、(磁場)Bは、高エネルギーのスピンの遷移(m=+1、516および526)がマイクロ波共振器の周波数と一致するように固定され、中央のスピンの遷移(m=0、514および524)は、一例として、数マイクロワットの電力を有する高強度のマイクロ波信号を送信することによって、ポンプされる。一実施形態においては、プローブマイクロ波信号を共振器へと送信する代わりに、共振器周波数における雑音のパワースペクトルが、スペクトラムアナライザを用いて測定される。結果として生じる総計の雑音温度T+Tbathは、約0.6Kになると推定される。これは、共振器内の熱光子雑音TbathがTN0に等しい真空雑音と同じくらい低いと仮定すると、本明細書において開示されるメーザー増幅器の雑音温度が、(6GHzのマイクロ波の場合)TN0≒hω/2k=0.15Kに極めて近い約0.4Kであることを示唆している。生成された雑音温度は量子限界よりもわずかに高い、これは、システム700および1000の減衰およびフィルタリングが不十分なことによって熱光子雑音Tbathが0.3K以上に増加し、それによってトータルの雑音温度を増加させるのに寄与する可能性がある。
メーザー増幅器のダイナミックレンジを評価することができる。一実施形態において、プローブマイクロ波信号の電力を変更することによって、ゲインの電力依存性が測定される。飽和電力は、少なくとも約0.1ナノワットになると推定され、これは最新式のJPAの0.1ピコワットという値よりも3桁以上大きい。当該飽和は、低温HEMT増幅器の飽和に起因することが確認された。これは、本発明のメーザー増幅器の実際の飽和電力が遥かに大きいことを意味する。
<量子情報入力ベースのシステムの概要>
図13は、一実施形態におけるマイクロ波量子情報科学および技術へのメーザー増幅器の適用例を説明するブロック図である。図13において、量子DUT1310における量子ビットの状態等の量子情報を含む量子DUT1310から得られるマイクロ波信号(信号1356として参照される)が、サーキュレータ1302を通ってメーザー増幅器1320へと送信される。したがって、信号1356は、メーザー増幅器1320を通って増幅される。当該増幅された信号は、図2と同様にして、より高温域の状態においてHEMT増幅器によってさらに増幅され、必要に応じて、その後に室温にて別の増幅器(その例は図2、図7、および図10に示されている)によって増幅され、受信回路によって測定される。
ポンプのためのマイクロ波信号1350は、別の専用のマイクロ波ラインを介し、1308等の結合器または合波器を通って、メーザー増幅器1320へと別々に送り込まれ得る。この高強度のポンプ信号は、上述の図8における技術と同様の技術を用いてキャンセルされ得る。これに代えて、あるいはこれに加えて、高強度のポンプ信号1350の残部は、より高温域の状態において散逸し得る。例えば、高強度のポンプ信号1350の残部は、最も低温の温域(10〜100mK)と3〜4KのHEMTとの間に配置されたマイクロ波ダイプレクサによって別のマイクロ波ラインへと導かれ得る。
マイクロ波増幅器の帯域幅は、ゲイン−帯域幅の積G1/2・Bで表すことができ、ここでGは電力ゲインであり、Bは増幅器の帯域幅である。例えば、本発明において実証された例示的なメーザー増幅器は、約5〜15MHzのゲイン−帯域幅を有し得る。例示的なJPA(ジョセフソンパラメトリック増幅器)のゲイン−帯域幅の範囲は、10MHzから10GHzを超えるまでである。
<進行波増幅器>
一実施形態において、メーザー増幅器は、ゲイン−帯域幅を改善するためのひと続きのメーザー増幅器を含む。図7に示すように、マイクロ波共振器に常磁性結晶を配置する代わりに、常磁性結晶の上部に、伝送線(導波路)のパターンが直接的に形成される。伝送線は、例えば、ストリップラインやコプレーナ導波路のような様々な種類の伝送線であってもよい。このように配置することによって、「進行波」メーザー増幅器が形成される。図14は、一実施形態における進行波メーザー増幅器を説明する概略図である。
進行波メーザー(増幅器)は、ルビー結晶の上部に伝送線を有してもよい。このようなデバイスが、約500MHz以上のゲイン−帯域幅の積を有し得る。
一実施形態において、マイクロ波伝送線は、増幅器内部の抵抗損失を抑制し、ゲインのさらなる改善をもたらす、Nb、NbTi、TiN、またはNbTiN等の無損失超伝導材料である。さらに、このような進行波メーザー増幅器をミリケルビンの温度にて動作させると、最低のエネルギー準位におけるスピンの偏極が1桁を超えて向上する。このような環境は、(図3および図4に示すように)増幅プロセスに寄与する有効なスピンの数を増加させ、ゲインのさらなる改善をもたらす。
一実施形態において、磁場勾配を常磁性メーザー結晶に印加することによって、進行ガイドメーザー増幅器の帯域幅をさらに拡大することができる。このような勾配を設けることにより、電子スピン共鳴遷移周波数を結晶全体に亘って不均一にし、すなわち遷移の線幅を拡大させ、これによりメーザー増幅器の帯域幅の拡大を促進することができ、これは図13に示す例等の量子技術へ応用するのに有益である。
マイクロ波信号を増幅させるための別のアプローチは、固体中のスピンによるメーザー(「誘導放出によるマイクロ波増幅」)である。図3(a)/(b)/(c)は、1つ以上の実施形態におけるメーザー動作の一例を説明する図である。図3(a)において、一実施形態における平衡状態にある量子力学的エネルギー準位システムを含むメーザー動作が示されている。低エネルギー準位および高エネルギー準位は、それぞれ基底状態|g>(310a)および励起状態|e>(320)であり、両者のエネルギーの隔たりはhωである。ここでは、hω≫kTと想定される。
図4(a)/(b)は、一実施形態におけるポンプ信号による3準位メーザー動作の一例を説明する図である。このような実施形態においては、もう1つの準位|f>(430aおよび430b)を利用して反転が為される。図4(a)において、hω’のエネルギーを有する高強度のポンプ信号450によって、基底状態|g>(410a/b)から、第1の励起状態|e>(420a/b)よりも上のエネルギー準位の第3の準位|f>(430a/b)まで励起する。その後、当該状態|f>(430a/b)から第2の準位|e>(420a/b)へと遷移し、基底状態|g>(410a/b)からhωエネルギーが高い状態|e>(420a/での反転分布が生成される。
このような実施形態において、状態|e>(420b)と状態|f>(430b)との間においては遷移が高確率で起こると仮定している。したがって、状態|f>(430)における分布は、直ちに状態|e>(420b)へと緩和する。緩和した結果として、状態|g>(410b)と状態|e>(420b)との間の遷移に係る分布を、状態|g>(410a)と状態|f>(430a)との間の遷移を「ポンピング」することによって、反転させることができる。この3準位メーザーの仕組みは、ルビー(クロムがドープされたサファイヤ)等の複数のエネルギー準位を備える常磁性体において実現することができる。
上述の緩和条件は、ダイヤモンド中のP1センターに関して、窒素−空孔(NV)センター等の別の種類の欠陥中心が存在するところで見出される。NVセンターは、電子スピン1を有する。100mTを超える静磁場において、NVセンターの共振周波数は、P1センターの共振周波数に近くなる。ダイヤモンドの結晶を用いる技術の場合には、NVセンターは、当該結晶の体積全体に渡って約2ppmの密度で分布する。P1センターとNVセンターは、スピンフリップフロップ遷移および他の高位の交差緩和プロセスを経て、エネルギーを交換し得る。P1センターとNVセンターのスピン間の相互作用により、状態512におけるP1センターの緩和が加速され、状態516の分布が増加し、最終的には、状態526と516との間の遷移において反転分布を引き起こす。
一実施形態において、一連の減衰710および712を有する同軸ケーブルを介して、プローブマイクロ波入力信号752を共振器718へと送信することによって、透過スペクトルが測定される。減衰器710および712は、各々、3または4Kならびに100mKの温域において、マイクロ波同軸ケーブルを通って室温からもたらされる熱雑音を抑制する。
システム100には、高強度のポンプ信号1050による、測定結果を歪める虞のあるすべての望ましくない影響を抑制するために、キャンセルライン1070も組み込まれる。このために、ポンプのためのマイクロ波信号1050は、方向性結合器1006によって2つに分割され、一方はポンプライン1072に用いられ、他方はキャンセルライン1070に用いられる。分割されたポンプ信号は、各温域706、704、および702を通って、希釈冷凍機の内部へと別々に送られる。キャンセル信号は、冷凍機702内の10mKにて、共振器718から出てサーキュレータ1002およびアイソレータ1010を通過した、反射されたポンプ信号と、方向性結合器1008によって結合される。キャンセル信号の位相および振幅は、位相シフタ1012および可変減衰器1014によって、反射されたポンプ信号1050に対して180度シフトされ、かつ同じ振幅を有するようにそれぞれ調整され、これにより共振器718から反射されて方向性結合器1008に進入する高強度のポンプ信号1050が打ち消される。
一実施形態において、磁場勾配を常磁性メーザー結晶に印加することによって、進行波メーザー増幅器の帯域幅をさらに拡大することができる。このような勾配を設けることにより、電子スピン共鳴遷移周波数を結晶全体に亘って不均一にし、すなわち遷移の線幅を拡大させ、これによりメーザー増幅器の帯域幅の拡大を促進することができ、これは図13に示す例等の量子技術へ応用するのに有益である。

Claims (20)

  1. マイクロ波増幅システムであって、
    不純物を含む常磁性体を有し、前記不純物は、前記不純物に関する複数の核スピンおよび電子スピンに基づくエネルギー準位を有する、マイクロ波増幅器と、
    ポンプ信号を受信する入力部と、
    前記マイクロ波増幅器によって増幅される入力信号を受信し、前記入力信号は前記ポンプ信号よりも低い電力を有する、入力部と、
    を有し、
    前記ポンプ信号は、前記複数の核スピンおよび電子スピンに基づくエネルギー準位のうちの少なくとも1つのエネルギー準位に対応する励起状態への反転分布を生じさせ、
    前記少なくとも1つのエネルギー準位への反転分布が、前記入力信号を増幅させることによって、増幅信号を生成するシステム。
  2. 請求項1に記載のシステムであって、前記不純物を有する前記常磁性体は、希釈冷凍機に結合されるマイクロ波共振器に配置されるシステム。
  3. 請求項1に記載のシステムであって、前記マイクロ波増幅器は、メーザーマイクロ波増幅器であるシステム。
  4. 請求項1に記載のシステムであって、前記常磁性体はダイヤモンドの結晶であり、前記不純物は前記ダイヤモンドの結晶内の窒素不純物であるシステム。
  5. 請求項1に記載のシステムであって、磁場が前記常磁性体に印加されることによって、前記不純物の不純物の分布の励起状態が生成されるシステム。
  6. 請求項1に記載のシステムであって、各々の固有の励起状態は、前記不純物の核スピンおよび電子スピンの固有の組み合わせに対応するシステム。
  7. 請求項1に記載のシステムであって、複数のエネルギー準位のうちの、同じ電子スピンに対応するが核スピンが異なるエネルギー準位は、等間隔であるシステム。
  8. 請求項1に記載のシステムであって、前記ポンプ信号は、前記不純物の初期の基底状態
    の初期の励起状態への初期の反転分布を生じさせ、前記初期の励起状態は、少なくとも前記不純物の電子スピンの差によって、前記初期の基底状態とは異なるシステム。
  9. 請求項8に記載のシステムであって、前記反転分布は、前記初期の励起状態の前記励起状態への交差緩和によって生じ、前記励起状態は、少なくとも前記不純物の核スピンの差によって、前記初期の励起状態とは異なるシステム。
  10. 請求項1に記載のシステムであって、前記入力信号の増幅は、前記励起状態から前記励起状態の基底状態への前記反転分布の緩和によるエネルギーの放出を通じて実行されるシステム。
  11. 請求項1に記載のシステムであって、前記ポンプ信号は、前記入力信号よりも低い周波数を有するシステム。
  12. 請求項1に記載のシステムであって、
    前記ポンプ信号を受信し、前記ポンプ信号の位相をずらした信号、すなわちキャンセル信号を生成する位相シフタと、
    前記キャンセル信号を前記増幅信号と併合することで、前記増幅信号に関して前記ポンプ信号の少なくとも一部をキャンセルする方向性結合器と、
    をさらに有するシステム。
  13. 請求項1に記載のシステムであって、前記マイクロ波増幅器は、前記入力部に結合される伝送線を有し、前記伝送線は、前記入力信号を、前記不純物を含む前記常磁性体の複数の不純物を介して導くシステム。
  14. 方法であって、
    マイクロ波増幅器の第1の入力部において、ポンプ信号を受信することと、
    マイクロ波増幅器の第2の入力部において、前記ポンプ信号よりも低い電力を有する増幅すべき入力信号を受信することと、
    前記ポンプ信号を前記マイクロ波増幅器の常磁性体へと伝送して、少なくとも1つのエネルギー準位に対応する前記常磁性体における励起状態への反転分布を生じさせることと、
    を有し、
    前記少なくとも1つのエネルギー準位は、前記常磁性体における不純物の存在によって生成され、前記不純物は、1つ以上の核スピン状態および1つ以上の電子スピン状態を有し、
    前記1つ以上の核スピン状態および前記1つ以上の電子スピン状態の各々の固有の組み合わせが、前記少なくとも1つのエネルギー準位を含む複数のエネルギー準位に対応し、
    前記励起状態の前記マイクロ波増幅器の前記常磁性体を介して前記入力信号を伝送することと、
    前記励起状態の前記常磁性体の通過に少なくとも部分的に基づき、前記入力信号を前記少なくとも1つのエネルギー準位に基づいて増幅することによって、増幅信号を生成することと、
    を有する方法。
  15. 請求項14に記載の方法であって、
    磁場を前記常磁性体に印加することによって、前記複数のエネルギー準位を生じさせること
    をさらに有する方法。
  16. 請求項14に記載の方法であって、
    前記ポンプ信号によって前記不純物の初期の基底状態を初期の励起状態へと変換すること
    をさらに有し、
    前記初期の励起状態は、少なくとも前記不純物の電子スピンの差によって、前記初期の基底状態とは異なる方法。
  17. 請求項16に記載の方法であって、
    前記初期の励起状態の前記励起状態への交差緩和によって前記反転分布を生じさせること
    をさらに有し、
    前記励起状態は、少なくとも前記不純物の核スピンの差によって、前記初期の励起状態とは異なる方法。
  18. 請求項14に記載の方法であって、
    前記励起状態から前記励起状態の基底状態への前記反転分布の緩和によるエネルギーの放出を通じて前記入力信号を増幅させること
    をさらに有する方法。
  19. 請求項14に記載の方法であって、
    前記ポンプ信号は、前記入力信号よりも低い周波数を有する方法。
  20. 請求項14に記載の方法であって、
    前記ポンプ信号の位相をずらすことによって、前記ポンプ信号の位相をずらした信号、すなわちキャンセル信号を生成することと、
    前記キャンセル信号を前記増幅信号と併合することによって、前記増幅信号に関して前記ポンプ信号の少なくとも一部をキャンセルすることと、
    をさらに有する方法。
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