JP2020187030A - 放射性廃液の処理方法及び放射性廃液処理システム - Google Patents
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Abstract
Description
イオン交換樹脂は、スチレン・ジビニルベンゼンを基材としており、化学的に安定であるため、長期間安全に貯蔵することが可能である。しかしながら、その安定性のために分解処理が難しく、イオン交換樹脂を減容する場合には、通常、高温での熱分解処理が必要となる。
この特許文献1には、放射性有機廃棄物を減容するだけでなく、さらに、放射性有機廃棄物に含まれる放射性物質の濃度を低減することができる減容方法が記載されている。
特許文献1に記載された減容方法では、具体的には、有機酸水溶液によって、放射性有機廃棄物に含まれているクラッド(コバルト60等の放射性核種、酸化鉄等を含む)をコバルト60等の放射性核種と共に溶解し、有機酸塩水溶液によって、放射性有機廃棄物、例えば、廃樹脂であるイオン交換樹脂に吸着されている放射性核種(コバルト60、セシウム137等)をイオン交換樹脂から溶離させる。そして、クラッド(酸化鉄等)の溶解に用いられた有機酸水溶液に含まれる有機酸と、及び放射性核種を溶離する際に用いられた有機酸塩水溶液に含まれる有機酸塩を、それぞれオゾン等により分解する。さらに、有機酸及び有機酸塩の分解後に残留する、放射性核種を含む廃液を、乾燥粉体化し、得られた放射性核種を含む粉体を固形化剤(セメント等)により固化処理する。
この特許文献2に記載された核燃料の再処理方法は、フッ化処理工程及び溶媒抽出工程を含んでいる。フッ化処理工程では、原子炉から取り出された使用済燃料集合体に含まれる核燃料物質にフッ素を接触させ、核燃料物質に含まれるウランを、フッ素と反応させて揮発性のUF6に変換させる。核燃料物質に含まれるウランの一部もしくは大部分をUF6として揮発除去した後、残ったウラン、及びプルトニウムを、溶媒抽出工程において回収する。溶媒抽出工程は、硝酸を含む溶解液によって残留する核燃料物質を溶解する溶解工程、トリブチルリン酸(TBP)を含む抽出液を溶解された核燃料物質を含む溶解液に接触させ、溶解液に含まれるウラン及びプルトニウムを抽出液側に移行させる共除染工程、及び抽出されたウラン及びプルトニウムを含む抽出液を硝酸濃度が低い硝酸水溶液と接触させ、抽出液に含まれるウラン及びプルトニウムを硝酸水溶液側に移行させる逆抽出工程を含んでいる。
沸騰水型原子力プラントにおいては、原子炉内の冷却水を供給する原子炉冷却材浄化系の浄化系配管に設けられた浄化装置で、冷却水の浄化が行われる(特許文献3を参照)。その浄化装置の内部には、冷却水を浄化するイオン交換樹脂が存在する。
加圧水型原子力プラントにおいても、原子炉内の冷却水を浄化する原子炉冷却材浄化系が設けられ、この原子炉冷却材浄化系には、イオン交換樹脂が内部に存在する浄化装置が設けられる。
この特許文献1に記載された方法では、イオン交換樹脂によって除去されたα核種も、溶離されて有機酸水溶液及び有機酸塩水溶液のそれぞれの中に移行する。
しかしながら、特許文献4に記載された方法の場合、放射性物質を含む液の水質によっては、吸着材で放射性物質を吸着しても、十分に吸着しきれずに、吸着材を分離した後の液に放射性物質がある程度残ることがある。
そして、α核種を含む放射性廃液にpH調整剤を注入し、α核種及びpH調整剤を含む放射性廃液にα核種吸着材を供給し、α核種吸着材によってα核種を吸着することにより、放射性廃液からα核種を除去する。
これにより、放射性廃液を処理した放射性廃棄物に含まれる放射性物質を低減でき、かつ、超半減期のα核種を含む放射性廃棄物の発生量を低減することができる。
したがって、α核種吸着材のα核種除去性能を向上することができる。
(A1)α核種を含む放射性廃液を処理する方法である。
対象とするα核種を含む放射性廃液としては、例えば、放射性有機廃棄物である陽イオン交換樹脂からα核種を含む放射性核種の脱離によって発生した、α核種を含む放射性廃液、及び核燃料再処理においてウラン及びプルトニウムの回収によって発生した、α核種を含む放射性廃液、が挙げられる。また、これらの放射性廃液に限定されず、α核種を含む放射性廃液であれば、他の起源により生成した放射性廃液にも適用することが可能である。
そして、α核種を含む放射性廃液にpH調整剤を注入し、α核種及びpH調整剤を含む放射性廃液にα核種吸着材を供給し、α核種吸着材によってα核種を吸着することにより放射性廃液からα核種を除去する。
(B1)α核種を含む放射性廃液を処理する放射性廃液処理システムである。
対象とするα核種を含む放射性廃液としては、例えば、放射性有機廃棄物である陽イオン交換樹脂からα核種を含む放射性核種の脱離によって発生した、α核種を含む放射性廃液、及び核燃料再処理においてウラン及びプルトニウムの回収によって発生した、α核種を含む放射性廃液、が挙げられる。また、これらの放射性廃液に限定されず、α核種を含む放射性廃液であれば、他の起源により生成した放射性廃液にも適用することが可能である。
そして、α核種を含む放射性廃液を導く放射性廃液供給管と、その放射性廃液供給管に接続されたpH調整剤注入装置及びα核種除去装置と、吸着材注入装置を備えた放射性廃液処理システムによって達成できる。
pH調整剤注入装置は、pH調整剤を注入する。
α核種除去装置は、α核種を含む放射性廃液からα核種を除去する。
吸着材注入装置は、α核種除去装置に、α核種を吸着するα核種吸着材を注入する。
なお、α核種吸着材は、上記のフェライトや活性炭には限定されず、α核種を吸着することができる吸着材であれば、α核種吸着材として使用することができる。
そして、上述した放射性廃液の処理方法及び放射性廃液処理システムによれば、α核種を含む放射性廃液にpH調整剤を注入するため、放射性廃液のpHを調節することができ、放射性廃液のpHを、α核種吸着材の吸着性能を十分に発揮できるpHの範囲内にできる。
これにより、放射性廃液に含まれる超半減期のα核種がα核種吸着材によって除去されやすくなり、α核種を除去した後の放射性廃液に含まれるα核種が著しく低減されるため、α核種を吸着した使用済α核種吸着材の量が少なくなる。その結果、α核種を含む放射性廃棄物の発生量を低減できる。
α核種吸着材を放射性廃液に注入するので、α核種吸収材の粒子を細かくして、α核種吸収剤の比表面積を増加させることが可能になり、また、α核種吸着材が放射性廃液に浸漬される時間を制御することが可能になる。これにより、所望のα核種吸着量となる時間までα核種吸着材を放射性廃液に浸漬させるように、制御することができる。
したがって、α核種吸着材のα核種除去性能を向上して、α核種を含む放射性廃棄物の発生量をさらに低減することができる。
そして、α核種吸収材を吸収塔に充填して、吸収塔にα核種吸着材の層を形成した構成と比較しても、α核種除去性能を向上して、α核種を含む放射性廃棄物の発生量を低減することが可能になる。
実施例1の放射性廃液の処理方法を、図1〜図6を参照して説明する。
実施例1は、沸騰水型原子力プラントで発生する放射性有機廃棄物の処理に適用される、放射性廃液の処理方法である。
この第一洗浄工程S1では、還元性のある有機酸の水溶液(例えば、シュウ酸水溶液)が放射性有機廃棄物に接触され、その水溶液に含まれる有機酸によって、放射性有機廃棄物に含まれる鉄酸化物などのクラッドが溶解される。クラッドに含まれているコバルト60等の放射性核種は、クラッドの溶解によって有機酸水溶液中に移行する。
第一洗浄工程S1において有機酸を用いる理由は、有機酸の主たる構成元素が炭素、水素、酸素及び窒素であるため、第一洗浄工程S1において発生する洗浄廃液である有機酸水溶液を、例えば、オゾンを用いて酸化処理(後述の廃液分解工程S4)をしたときに、廃液中に不揮発性の残渣を生じないからである。有機酸としては、例えば、ギ酸、シュウ酸、酢酸またはクエン酸を用いることが望ましい。
この廃液分解工程(有機酸及び有機酸塩のいずれかの分解工程)S4では、過酸化水素またはオゾン等の酸化剤が有機酸水溶液中に曝気され、その酸化剤の酸化作用により有機酸が分解される。
この第二洗浄工程S2では、有機酸塩水溶液が、クラッドが溶解された放射性有機廃棄物に接触され、その水溶液に含まれる有機酸塩によって、放射性有機廃棄物に吸着されたα核種等の放射性核種が溶離される。
第二洗浄工程S2で使用される有機酸塩は、水溶液中で解離し、水素イオンよりも陽イオン交換樹脂に吸着されやすい陽イオンを生じる有機酸塩であることが望ましい。すなわち、有機酸塩は、その主たる構成元素が炭素、水素、酸素及び窒素であって、第二洗浄工程S2の終了後において洗浄廃液である有機酸塩水溶液を、例えば、オゾンを用いて酸化処理(廃液分解工程S4)をしたときに、廃液中に不揮発性の残渣を生じないものであることが望ましい。有機酸塩としては、例えば、ギ酸、シュウ酸、酢酸またはクエン酸のアンモニウム塩、バリウム塩またはセシウム塩を用いることが望ましい。なお、有機酸塩として、ギ酸ヒドラジンを用いてもよい。
アンモニウム塩は、酸化処理により、窒素ガス及び水に分解されるため、バリウム塩及びセシウム塩に比べて、放射性廃棄物の発生量を低減することができる。ギ酸、シュウ酸、酢酸またはクエン酸のアンモニウム塩、バリウム塩またはセシウム塩は、水溶液中で解離して、NH4+、Ba2+またはCs+になる。NH4+、Ba2+またはCs+は、水素イオンよりも陽イオン交換樹脂に吸着されやすい陽イオンである。
ここで、pH調整剤としては、還元剤、例えばヒドラジンを使用することができる。
pH調整剤注入工程S5により、その残留水溶液、すなわち、放射性廃液は、pHが4〜11(4以上11以下)の範囲内の、例えば、6に調節される。そして、pH調整剤である還元剤(例えば、ヒドラジン)を含む還元性の放射性廃液内で、前述したそれぞれのα核種(ウラン、プルトニウム、アメリシウム、ネプツニウム及びキュリウム等)の価数が「3」になる。
α核種の除去工程S6では、価数が「3」に制御されたα核種を含む放射性廃液に、α核種吸着材であるフェライト(Fe3O4)が供給され、このフェライトによって価数が「3」に制御されたα核種が吸着されて放射性廃液から除去される。
図5に示す「A」は、陽イオン交換樹脂に吸着されたα核種、例えば、アメリシウムを有機酸塩水溶液であるシュウ酸アンモニア水溶液により溶離させ、シュウ酸アンモニア水溶液に含まれるシュウ酸アンモニアをオゾンで分解し、溶離したアメリシウム(濃度はppbオーダー)を除去しないで(未処理の状態で)アメリシウムを含む水をそのまま排出した場合である。このため、「A」では、排出される水のウラン残留率(α核種の残留率)は100%である。
図5に示す「B」は、溶離したウランを含むシュウ酸アンモニア水溶液のシュウ酸アンモニアをオゾンで分解し、この分解で生成されるアメリシウムを含む水にフェライト(Fe3O4)を供給した場合である。フェライトを供給する前におけるその水のアメリシウム濃度に対する、そのフェライトを供給した後の水のアメリシウム濃度の割合が、アメリシウム残留率、すなわち、α核種の残留率である。フェライトを供給する前の水のアメリシウム濃度は、「A」における水のアメリシウム濃度と同じである。「B」では、ウラン残留率(α核種の残留率)は、25%となり、「A」の1/4になる。
図5に示す「C」は、溶離したアメリシウムを含むシュウ酸アンモニア水溶液のシュウ酸アンモニアをオゾンで分解し、この分解で生成されるアメリシウムを含む水に還元剤であるヒドラジンを注入してその水のpHを4〜11の範囲内の8に調節し、pHが8であるアメリシウムを含む水にフェライト(Fe3O4)を供給した場合である。「C」における、フェライトを供給する前の水のアメリシウム濃度も、「A」における水のアメリシウム濃度と同じである。「C」では、アメリシウム残留率(α核種の残留率)は、約6.7%となり、「A」の約1/15になる。
したがって、有機酸塩分解後のα核種を含む水にpH調整剤を注入してその水のpHを4〜11の範囲に調節し、pHが調節された、α核種を含む水にフェライトを供給することによって、その水に含まれるα核種を著しく除去できることが分かった。
その後、その放射性廃液に注入されたpH調整剤が還元剤であるかを判定する(pH調整剤判定工程S8)。pH調整剤が還元剤であるとき、その判定が「YES」となり、α核種除去装置から排出された、還元剤を含む放射性廃液は、触媒(例えば、貴金属)を有する分解装置に供給され、その還元剤は、分解装置内で、その触媒と分解装置に供給される酸化剤(例えば、過酸化水素)の作用によって分解される(還元剤の分解工程S9)。なお、pH調整剤として酸(例えば、希硝酸水溶液)を放射性廃液に注入した場合には、上記の判定が「No」となり、還元剤の分解工程S9が実施されない。
容器充填または固化工程S11では、濃縮処理により発生した濃縮廃液、または乾燥粉体化処理によって発生した放射性廃棄物の粉体が、容器内に充填されて保管され、またはセメント等の固形剤により容器内で固化される。
化学洗浄部10は、第一受入タンク3、化学反応槽(洗浄槽)4、洗浄液供給タンク6、有機酸槽7、有機酸塩槽8及び移送水槽9を有する。また、化学洗浄部10の前段に、高線量樹脂貯蔵タンク2が設けられ、化学洗浄部10の図中下方に、第二受入タンク11及び焼却設備(またはセメント固化設備)12が設けられている。
移送ポンプ22を設けた有機廃棄物供給管23が、高線量樹脂貯蔵タンク2及び第一受入タンク3を接続する。
化学反応槽4は、移送ポンプ24を設けた有機廃棄物移送管25によって、第一受入タンク3に接続されている。この化学反応槽4の周囲に加熱装置5が配置されている。
洗浄液供給タンク6は、移送ポンプ32を設けた洗浄液供給管33によって、化学反応槽4に接続されている。
化学反応槽4の底部に接続され、移送ポンプ34及び弁35が設けられた戻り配管36が、洗浄液供給タンク6に接続されている。
有機酸水溶液、例えば、シュウ酸水溶液が充填された有機酸槽7に接続されて弁26が設けられた配管29が、洗浄液供給タンク6に接続されている。有機酸槽7に充填されたシュウ酸水溶液は飽和水溶液であり、そのシュウ酸水溶液のシュウ酸濃度は、例えば、0.8mol/Lである。
有機酸塩水溶液、例えば、ギ酸ヒドラジン水溶液が充填された有機酸塩槽8に接続されて弁27が設けられた配管30が、弁26よりも下流で配管29に接続されている。
移送水となる水が充填された移送水槽9に接続されて弁28が設けられた配管31が、弁27よりも下流で配管30に接続されている。
弁37が設けられて化学反応槽4の底部に接続された配管38が、第二受入タンク11に接続されている。
第二受入タンク11に接続された配管が、焼却設備(またはセメント固化設備)12に接続されている。
移送ポンプ34と弁35の間で戻り配管36に接続され、弁39が設けられた廃液供給管40が、廃液分解装置13に接続されている。
移送ポンプ43及び弁44が設けられた配管45が、廃液分解装置13、α核種除去装置14に接続されている。前述した「α核種を含む放射性廃液を導く放射性廃液供給管」は、この配管45等の配管に相当する。
配管46が、α核種除去装置14、吸着材分離装置131、分解装置107、処理水回収タンク18に接続されている。
pH調整剤注入装置112は、廃液分解装置13とα核種除去装置14の間で、配管45に接続されている。
吸着材注入装置121は、α核種除去装置14に接続されている。
吸着材分離装置131では、例えば、μmオーダー以下の孔径を有する膜を用いたクロスフローフィルタ方式によって、放射性廃液をろ過して、放射性廃液からα核種を吸着したα核種吸着材を分離する。
また、吸着材分離装置131には、化学洗浄部10の戻り配管36の移送ポンプ34と弁35の間に接続された配管55が、接続されている。そして、吸着材分離装置131においてろ過して吸着材が分離されたろ過水は、配管55を通じて戻り配管36に戻る。これにより、ろ過水を循環水として循環させることができる。なお、戻り配管36と配管55との接続部よりも各配管36,55の上流側(化学反応槽4側と吸着材分離装置131側)には、図示しない弁を設けて、化学反応槽4からの水と配管55からのろ過水とを切り替えられるようにする。
分解装置107は、内部に、例えば、ルテニウムを活性炭の表面に添着した活性炭触媒を充填している。
酸化剤供給装置108は、薬液タンク109及び供給配管110を有する。薬液タンク109は、弁111を有する供給配管110によって、分解装置107に接続されている。この薬液タンク109内には、酸化剤である過酸化水素が充填される。なお、酸化剤として、過酸化水素の代わりに、オゾン、または酸素を溶解した水を用いてもよい。
移送ポンプ47を設けた配管48が、処理水回収タンク18と乾燥粉体化装置20を接続する。
乾燥粉体化装置20に接続された配管49が、固化設備21に接続されている。
なお、乾燥粉体化装置20の代わりに、放射性廃液の濃縮装置を用いてもよい。
図2に示した化学洗浄部10からの配管40が、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に接続されている。また、図2に示したα核種除去装置14及び吸着材分離装置131に接続された配管45が、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に挿入されて洗浄廃液処理槽に取り付けられている。さらに、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽には、ガス排気管83が接続されている。
オゾン供給装置80からオゾン供給管82を通じてオゾンを供給することにより、オゾン噴射管81の噴射孔から廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内の放射性廃液にオゾンが噴射される。これにより、放射性廃液中のシュウ酸、ギ酸、及びヒドラジン等が、噴射されたオゾンにより分解される。発生したガスは、ガス排気管83により排出する。処理後の水は、配管45を通じて、α核種除去装置14に送られる。
α核種除去装置14は、配管45を通して廃液分解装置13から送られる放射性廃液を収容する、廃液処理槽によって構成されている。
pH調整剤注入装置112は、還元剤注入装置17及び酸注入装置113を有する。
還元剤注入装置17は、還元剤槽17A、及び弁41が設けられた注入配管42を有する。還元剤槽17Aには、還元剤水溶液、例えば、ヒドラジン水溶液が充填される。
注入配管42は、還元剤槽17Aに接続され、さらに、廃液分解装置13と弁44(それぞれ図2を参照)の間で配管45に接続されている。
酸注入装置113は、酸槽114、及び弁115が設けられた注入配管116を有する。酸槽114には、酸水溶液、例えば、希硝酸水溶液が充填される。
注入配管116は、酸槽114に接続され、弁41の下流で注入配管42に接続されている。
また、還元剤注入装置17に接続された注入配管42及び配管45の接続点とα核種除去装置14の間の配管45の部分で、配管45にpH計49が取り付けられている。
注入配管123の他端は、α核種除去装置14に接続されている。
吸着材注入装置121から注入配管123を通して、α核種除去装置14の廃液処理槽内の放射性廃液に、吸着材を注入することができる。
また、α核種除去装置14のケーシングの外面下流部に、磁化率測定装置49Bが設置されている。
図6では、吸着材のサイズとして、粒状(粒径>100μm)と、微粉状(粒径<1μm)とを、比較している。
図6に示すように、吸着材を微粉状とした場合には、吸着材を粒状とした場合と比較して、吸着材1g当りのα核種吸着量が100倍以上に向上する。
沸騰水型原子力プラントの原子炉冷却材浄化系及び燃料プール冷却浄化系等から排出されて、高線量樹脂貯蔵タンク2に所定の長期間貯蔵された、放射性有機廃棄物は、セルロース系のろ過助材、イオン交換樹脂、等を含む。この、高線量樹脂貯蔵タンク2に貯蔵された放射性有機廃棄物は、例えば、移送水供給管によって、移送水槽から水を高線量樹脂貯蔵タンク2に供給することにより、移送し易いスラリーの状態になる。
高線量樹脂貯蔵タンク2に貯蔵されている放射性有機廃棄物には、原子炉冷却材浄化系及び燃料プール冷却浄化系等で冷却水から除去されたクラッドが含まれており、クラッドにはコバルト60等の放射性核種が含まれている。また、高線量樹脂貯蔵タンク2に貯蔵されたイオン交換樹脂には、コバルト60、セシウム137、炭素14、塩素36等のα核種以外の放射性核種のイオンが吸着されている。さらに、そのイオン交換樹脂には、前述したように、α核種(ウラン、プルトニウム、アメリシウム、ネプツニウム及びキュリウム等)が吸着されている。
その後、移送ポンプ34が駆動され、化学反応槽4内のスラリーに含まれる水が、放射性廃液(以下、「第三放射性廃液」とする)として、戻り配管36と配管40を通して、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に導かれる。このとき、弁35は閉じており、弁39は開いている。洗浄廃液処理槽に導かれた第三放射性廃液は、移送ポンプ43の駆動により、配管45を通してα核種除去装置14に導かれる。化学反応槽4内で、放射性有機廃棄物スラリーに含まれる水分はα核種を含んでいないので、洗浄廃液処理槽内の第三放射性廃液は、α核種を含んでおらず、α核種以外の放射性核種を含んでいる。
第三放射性廃液が、α核種除去装置14内を通過し、配管46に排出されて処理水回収タンク18に導かれる。その第三放射性廃液がα核種除去装置14に供給された際、α核種除去装置14内のフェライト(Fe3O4)粒子は、α核種、及びα核種以外の放射性核種を吸着しない。なお、第三放射性廃液に含まれるコロイド性の物質及び固形分は、フェライトのフィルタ効果によって除去される。第三放射性廃液がα核種を含んでいないため、pH調整剤注入工程S5におけるpH調整剤注入装置112から配管45へのpH調整剤水溶液(ヒドラジン水溶液または希硝酸水溶液)の注入が行われず、還元剤の分解工程S9における還元剤(例えば、ヒドラジン)の分解も行われない。
その後、乾燥粉体化装置20で生成された紛体は、固化設備21(または充填設備)に移送される。固化設備21では、その粉体が固化容器内に充填され、その固化容器内に固化材(例えば、セメント)が注入される。固化容器内の紛体は、固化材によって固化される(容器充填または固化工程S11)。固化された粉体が内部に存在し、密封された固化容器は、保管場所において保管される。保管されるこの固化容器内には、超半減期のα核種が存在していない。また、充填設備を用いる場合には、容器内に粉体を充填し、粉体を充填した容器を密封した後、その容器が保管場所に保管される。
化学反応槽4内でのシュウ酸水溶液によるクラッドの溶解によって生じた、シュウ酸水溶液に含まれるクラッド成分を、化学反応槽4で沈殿させる。クラッド溶解成分の沈殿によって生じた、化学反応槽4内の上澄み液であるシュウ酸水溶液のみを、移送ポンプ34の駆動により、戻り配管36を通して洗浄液供給タンク6に回収する。このとき、弁39は閉じており、弁35は開いている。洗浄液供給タンク6に回収されたシュウ酸水溶液は、化学反応槽4に供給され、化学反応槽4内でクラッドの溶解に再使用される。
第一洗浄工程S1では、放射性有機廃棄物の一部であるイオン交換樹脂が有機酸であるシュウ酸に浸漬されるため、イオン交換樹脂に吸着されている放射性核種の一部が、イオン交換樹脂から脱離される。具体的には、シュウ酸が解離して生じる水素イオン及びシュウ酸イオンが、それぞれ陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂に吸着されている放射性核種とイオン交換されるため、一部の放射性核種(α核種、及びα核種以外の放射性核種)がイオン交換樹脂から脱離される。
本実施例において、配管45に注入されるpH調整剤としては、還元剤及び酸のいずれかが用いられる。
還元剤としては、例えば、ヒドラジン、ホルムヒドラジン、ヒドラジンカルボアミド及びカルボヒドラジド等のヒドラジン誘導体及びヒドロキシルアミンのいずれかが用いられる。
酸としては、例えば、希硝酸及びシュウ酸のいずれかが用いられる。
また、本実施例では、第一放射性廃液のpHを4以上11以下の範囲内の7より大きく11以下の範囲内のpHに調節するときには、pH調整剤として、第一放射性廃液に還元剤(例えば、ヒドラジン)が注入される。
この場合、pH調整剤注入装置112において、弁41を開いて、還元剤注入装置17の還元剤槽17Aに充填された還元剤水溶液、例えば、ヒドラジン水溶液を、注入配管42を通して配管45内に注入する(pH調整剤注入工程S5)。注入されたヒドラジン水溶液は、配管45内で第一放射性廃液と混合される。
注入されたヒドラジンを含む第一放射性廃液は、α核種除去装置14に流入する。ヒドラジンの注入により、第一放射性廃液のpHが4〜11の範囲内の、例えば、8に調節される。α核種除去装置14に流入する第一放射性廃液のpHは、pH計49Aで測定される。pH計49Aの測定値に基づいて弁41の開度を制御し、第一放射性廃液のpHが8になるように、還元剤槽17Aから配管45へのヒドラジン水溶液の供給量を調節する。このとき、弁115は閉じている。α核種除去装置14に流入する前、具体的には、ヒドラジン水溶液の注入前において、第一放射性廃液のpHは、例えば、6になっている。
第一放射性廃液が還元剤であるヒドラジンを含み、このヒドラジンにより第一放射性廃液のpHが4〜11の範囲内の、例えば、8に調節されるため、第一放射性廃液に含まれる、価数が「3〜5」である各α核種(ウラン、プルトニウム、ネプツニウム及びキュリウム等)の価数が「3」に調節される。
吸着材分離装置131において、例えば、μmオーダー以下の孔径を有する膜を用いたクロスフローフィルタ方式によりろ過して、第一放射性廃液から、α核種が吸着されたフェライトを分離する(吸着材分離工程S7)。
α核種が吸着されたフェライトが分離された第一放射性廃液は、吸着材分離装置131から、配管46に排出される。
吸着材分離装置131において、膜によってろ過されたろ液は、配管55を通して戻り配管36に供給される。
第一放射性廃液に含まれるヒドラジン(還元剤)は、分解装置107内で分解される。すなわち、弁111を開いて、薬液タンク109内の過酸化水素を、供給配管110を通して分解装置107に供給する。分解装置107内で、活性炭触媒及び過酸化水素の作用により、第一放射性廃液に含まれるヒドラジンが窒素及び水に分解される(還元剤の分解工程S9)。
分解装置107から排出された、α核種及びヒドラジンを含んでいない第一放射性廃液は、配管46を通して処理水回収タンク18に導かれる。
上記した第一放射性溶液へのpH調整剤である希硝酸の注入は、後述の実施例2においても適用できる。
ただし、シュウ酸水溶液が第一放射性廃液に注入された場合には、シュウ酸が還元剤であるため、pH調整剤判定工程S8の判定が「YES」になる。α核種除去装置14から排出された、シュウ酸を含む第一放射性廃液が分解装置107に供給され、弁111が開いて、薬液タンク109内の過酸化水素が分解装置107に供給される。第一放射性廃液に含まれるシュウ酸(pH調整剤)は、分解装置107内で活性炭触媒及び注入された過酸化水素の作用によって、二酸化炭素及び水に分解される。第一放射性廃液に含まれるシュウ酸(pH調整剤)の分解によって、第一放射性廃液の量を低減できる。そのような第一放射性溶液に含まれるシュウ酸の分解は、後述の実施例2においてシュウ酸が第一放射性廃液に注入される場合にも適用できる。
ここで、第一放射性廃液に希硝酸を注入した場合には、この第一放射性廃液の粉体化により生成された粉体は硝酸成分を含んでおり、この粉体を固化容器内で溶融したガラスにより固化して生成されたガラス固化体も、硝酸成分を含んでいる。
これに対して、第一放射性廃液にpH調整剤であるシュウ酸を注入した場合には、前述のように、シュウ酸(pH調整剤)が分解されるため、生成されたガラス固化体はシュウ酸を含んでいない。
移送ポンプ32の駆動によって、40〜400g/L程度のギ酸ヒドラジン水溶液が、洗浄液供給タンク6から洗浄液供給管33を通して、放射性有機廃棄物が残留する化学反応槽4内に連続的に供給される。ギ酸ヒドラジン水溶液のギ酸ヒドラジンの濃度は、溶液1L当たりの溶質(ギ酸ヒドラジン)の質量である。化学反応槽4に供給されるギ酸ヒドラジン水溶液は、pH7程度の中性液である。洗浄液供給タンク6へのギ酸ヒドラジン水溶液の供給は、弁27を開くことによって、配管30及び配管29を通して有機酸塩槽8から行われる。弁26及び弁28は閉じている。
放射性有機廃棄物は、化学反応槽4内でギ酸ヒドラジン水溶液と接触する。化学反応槽4内では、この接触によって、放射性有機廃棄物である陽イオン交換樹脂に吸着された、α核種であるウラン、プルトニウム、アメリシウム、ネプツニウム及びキュリウム、及びα核種以外の放射性核種であるコバルト60、セシウム137、炭素14、塩素36のそれぞれのイオンが、ギ酸ヒドラジン水溶液中に溶離する(第二洗浄工程S2)。
化学反応槽4内からギ酸ヒドラジン水溶液のみを回収し、回収されたギ酸ヒドラジン水溶液は、戻り配管36を通して洗浄液供給タンク6に移送される。このとき、弁35は開いており、弁39は閉じている。洗浄液供給タンク6に移送されたギ酸ヒドラジン水溶液は、再び、化学反応槽4に供給され、陽イオン交換樹脂に吸着された各放射性核種の溶離に使用される。ギ酸ヒドラジン水溶液の代わりに、シュウ酸、酢酸及びクエン酸のいずれかのヒドラジン塩の水溶液を用いてもよい。これらの有機酸塩は、水素イオンよりも陽イオン交換樹脂に吸着されやすい陽イオンを生じる有機酸塩である。
これに対して、陽イオン交換樹脂にギ酸ヒドラジン水溶液を接触させた場合では、除染性能がDF20以上となり、シュウ酸水溶液を接触させた場合よりも、除染性能が向上した。
シュウ酸水溶液のみを用いてDF20以上の除染性能を得るためには、繰り返し、シュウ酸を添加する必要がある。
これに対して、ギ酸ヒドラジン水溶液を用いた場合には、その繰り返しが不要となり、使用する洗浄剤の量、すなわち、シュウ酸の量を低減することができる。
ここで、除染係数DFは、(除染前の計数率)/(除染後の計数率)で算出される数値である。なお、ギ酸ヒドラジンによる除染(イオン溶離)は、シュウ酸による除染(クラッド溶解)の後に行う。よって、有機酸水溶液によるクラッドの溶解のみを実施する場合には、有機酸塩水溶液を用いたイオンの溶離は行わないため、除染係数DFは、(除染前の計数率)/(クラッド溶解のみの計数率)で計算される値となる。一方、イオンの溶離も行う場合には、除染係数DFは、(除染前の計数率)/(クラッド溶解及びイオン溶離の後の計数率)で計算される値となる。
また、本実施例では、第二放射性廃液のpHを4以上11以下の範囲内の7より大きく11以下の範囲内のpHに調節するときには、pH調整剤として、第二放射性廃液に還元剤(例えば、ヒドラジン)が注入される。
α核種を含む第二放射性廃液がα核種除去装置14に供給されるので、弁41を開いて、還元剤注入装置17の還元剤槽17Aに充填された還元剤水溶液、例えば、ヒドラジン水溶液を、注入配管42を通して配管45内に注入する(pH調整剤注入工程S5)。注入されたヒドラジン水溶液は、配管45内で第二放射性廃液と混合される。
注入されたヒドラジンを含む第二放射性廃液は、α核種除去装置14に流入する。ヒドラジンの注入により、第二放射性廃液のpHが4〜11の範囲内の、例えば、8に調節される。α核種除去装置14に流入する第二放射性廃液のpHも、pH計49Aで測定される。pH計49Aの測定値に基づいて弁41の開度を制御し、第二放射性廃液のpHが8になるように、還元剤槽17Aから配管45へのヒドラジン水溶液の供給量を調節する。α核種除去装置14に流入する前において、第二放射性廃液のpHは、例えば、6になっている。
第二放射性廃液がヒドラジンを含み、このヒドラジンにより第二放射性廃液のpHが8に調節されるため、第二放射性廃液に含まれる、価数が「3〜5」である各α核種の価数が「3」に調節される。
吸着材分離装置131において、例えば、μmオーダー以下の孔径を有する膜を用いたクロスフローフィルタ方式によりろ過して、第二放射性廃液から、α核種が吸着されたフェライトを分離する(吸着材分離工程S7)。
α核種が吸着されたフェライトが分離された第二放射性廃液は、吸着材分離装置131から、配管46に排出される。
吸着材分離装置131において、膜によってろ過されたろ液は、配管55を通して戻り配管36に供給される。
第二放射性廃液に含まれるヒドラジンは、第一放射性廃液に含まれるヒドラジンと同様に、分解装置107内で分解される(還元剤の分解工程S9)。
分解装置107から排出された、α核種及びヒドラジンを含んでいない第二放射性廃液は、配管46を通して処理水回収タンク18に導かれる。
上記した第二放射性溶液へのpH調整剤である希硝酸の注入は、後述の実施例2においても適用できる。
ただし、シュウ酸水溶液が第二放射性廃液に注入された場合には、pH調整剤判定工程S8の判定が「YES」になり、α核種除去装置14から排出された、シュウ酸を含む第二放射性廃液が分解装置107に供給され、弁111が開いて、薬液タンク109内の過酸化水素が分解装置107に供給される。第二放射性廃液に含まれるシュウ酸(pH調整剤)は、分解装置107内で活性炭触媒及び注入された過酸化水素の作用によって、二酸化炭素及び水に分解される。第二放射性廃液に含まれるシュウ酸(pH調整剤)の分解によって、第二放射性廃液の量を低減できる。そのような第二放射性溶液に含まれるシュウ酸の分解は、後述の実施例2においてシュウ酸が第二放射性廃液に注入される場合にも適用できる。
ここで、第二放射性廃液に希硝酸を注入した場合には、この第二放射性廃液の粉体化により生成された粉体は硝酸成分を含んでおり、この粉体を固化容器内で溶融したガラスにより固化して生成されたガラス固化体も、硝酸成分を含んでいる。
これに対して、第二放射性廃液にpH調整剤であるシュウ酸を注入した場合には、前述のように、シュウ酸(pH調整剤)が分解されるため、生成されたガラス固化体はシュウ酸を含んでいない。
移送水の供給によって、化学反応槽4内の放射性有機廃棄物は、スラリー状になる。放射性有機廃棄物スラリーは、放射性有機廃棄物を約10wt%含んでいる。
弁37を開くことによって、化学反応槽4内の放射性有機廃棄物スラリーが、配管38を通して第二受入タンク11に導かれる。
第二受入タンク11から取り出された放射性有機廃棄物は、所定量、焼却設備12に移送され、焼却設備12で焼却される。焼却により生成された灰は、固化容器内でセメント等の固化剤により固化される。この固化体は、超半減期のα核種を含んでいないため、低レベル放射性廃棄物になる。
さらに、本実施例によれば、第二洗浄工程S2において、放射性有機廃棄物である陽イオン交換樹脂に吸着された、α核種のイオンを含む放射性核種イオンを、ギ酸ヒドラジン水溶液の陽イオン交換樹脂への接触によって陽イオン交換樹脂から脱離させることにより、放射性有機廃棄物に含まれる放射性核種の濃度を低減することができ、高線量の放射性廃棄物の量を低減することができる。特に、シュウ酸水溶液によっても陽イオン交換樹脂から脱離されずに陽イオン交換樹脂に吸着されて残っているα核種のイオンを含む放射性核種のイオンを、ギ酸ヒドラジン水溶液を放射性有機廃棄物に接触させることにより、効率良く、陽イオン交換樹脂から脱離させることができる。
特に、還元剤の注入により、α核種を含む放射性廃液のpHが4〜11の範囲に調節されることによって、α核種除去装置14はα核種を効率良く除去することができる。
この場合、所望のα核種濃度になった際に、化学洗浄部10から廃液処理部19に放射性廃液が移送され、廃液処理部19において、pH調整剤注入装置112によって放射性廃液へのpH調整剤の注入が行われる。また、吸着材注入装置121によって、放射性廃液へのα核種吸着材の注入が行われる。
上述のように、α核種濃度が所望の濃度になった際に、廃液処理部19に放射性廃液を移送することにより、α核種吸着材の吸着性能を十分に発揮させることができる。
α核種濃度を測定するためのサンプリング弁は、pH調整剤注入装置112よりも上流側の配管にとりつければ良く、上記の戻り配管36に限らず、配管40や、配管45のpH調整剤注入装置112の注入配管42との合流点よりも上流側の部分に、とりつけても良い。
α核種を含む有機酸水溶液の有機酸をオゾン等で分解して生成された第一放射性廃液、及びα核種を含む有機酸塩水溶液の有機酸塩をオゾン等で分解して生成された第二放射性廃液のそれぞれは、粉体化されて別々の固化容器(以下、「第2固化容器」と呼ぶ)内に充填され、その後、例えば、溶融されたガラスが各第2固化容器内に充填される。第一放射性廃液の、α核種を含む粉体を固化する溶融ガラスが第2固化容器内で固化された後に、この第2固化容器が密封される。第二放射性廃液の、α核種を含む粉体を固化する溶融ガラスが第2固化容器内で固化された後に、この第2固化容器が密封される。
これらの処理方法において、第一洗浄工程S1及び第二洗浄工程S2の実施の対象となる放射性有機廃棄物の量が同じであり、溶解されるクラッドの量及び脱離されるα核種の量が同じであり、発生する第一放射性廃液の量及び第二放射性廃液の量が同じであるとする。このとき、本実施例で発生する、α核種を吸着したフェライトを第1固化容器内でガラス固化することにより生成されたガラス固化体の個数は、特許文献1に記載された処理方法で発生した、第一放射性廃液の、α核種を含む粉体を第2固化容器内でガラス固化することにより生成されたガラス固化体の個数と、第二放射性廃液の、α核種を含む粉体を第2固化容器内でガラス固化することにより生成されたガラス固化体の個数の合計よりも少なくなる。すなわち、本実施例で発生する、α核種を含むガラス固化体(α核種を含む放射性廃棄物)は、特許文献1に記載された処理方法で発生する、α核種を含むガラス固化体(α核種を含む放射性廃棄物)よりも低減できる。
本発明の好適な他の実施例として、実施例2の放射性廃液の処理方法を説明する。
実施例2も、沸騰水型原子力プラントで発生する放射性有機廃棄物の処理に適用される、放射性廃液の処理方法である。
本実施例の放射性廃液の処理方法でも、実施例1で実施されていた、図1に示したS1〜S11の各工程が実施される。
化学洗浄部10Aは、第1洗浄槽50、第2洗浄槽51、有機酸槽52、移送水槽54A、有機酸塩槽53及び移送水槽54Bを有する。また、化学洗浄部10Aの前段に、移送水槽56及び高線量樹脂貯蔵タンク2が設けられ、化学洗浄部10Aの図中右方に、第二受入タンク11及び焼却設備(またはセメント固化設備)12が設けられている。
高線量樹脂貯蔵タンク2が、移送水供給管57によって、移送水槽56に連絡される。
第1洗浄槽50が、移送ポンプ22を設けた有機廃棄物供給管23によって、高線量樹脂貯蔵タンク2に連絡される。
撹拌翼58の回転軸にモータ59を取り付けて構成される撹拌装置が、第1洗浄槽50に設置される。
有機酸槽52の底部に接続された有機酸供給管60及び移送水槽54Aの底部に接続された移送水供給管61が切換え弁62に接続される。有機酸槽52にはシュウ酸水溶液が充填されており、移送水槽54Aには移送水となる水が充填されている。切換え弁62に接続された液体供給管64が第1洗浄槽50に接続され、移送ポンプ63が液体供給管64に設けられる。
撹拌翼67の回転軸にモータ68を取り付けて構成される撹拌装置が、第2洗浄槽51に設置される。
移送ポンプ65を設けた有機廃棄物移送管66が、第1洗浄槽50及び第2洗浄槽51に接続される。
有機酸塩槽53の底部に接続された有機酸塩供給管69及び移送水槽54Bの底部に接続された移送水供給管70が切換え弁71に接続される。有機酸塩槽53にはギ酸アンモニウム水溶液が充填されており、移送水槽54Bには移送水となる水が充填されている。切換え弁71に接続された液体供給管73が第2洗浄槽51に接続され、移送ポンプ72が液体供給管73に設けられる。
有機廃棄物移送管75が第2洗浄槽51に挿入され、この有機廃棄物移送管75の一端部が第2洗浄槽51の底部近くまで達している。移送ポンプ74が有機廃棄物移送管75に設けられる。有機廃棄物移送管75が、第二受入タンク11に接続される。
第二受入タンク11に接続された配管が、焼却設備(またはセメント固化設備)12に接続される。
廃液分解装置13は洗浄廃液処理槽で構成され、洗浄廃液処理槽内に配置されたオゾン噴射管81を有する。多数の噴射孔が形成されたオゾン噴射管81が、洗浄廃液処理槽内でその底部に設置されている。オゾン噴射管81は、オゾン供給管82によりオゾン供給装置80に接続される。第1洗浄槽50内に挿入されて第1洗浄槽50に取り付けられた廃液移送管77が、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に接続される。廃液移送管77には、移送ポンプ76が設けられる。第2洗浄槽51内に挿入されて第2洗浄槽51に取り付けられた廃液移送管79が、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に接続される。移送ポンプ78が廃液移送管79に設けられる。ガス排気管83が廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に接続される。移送ポンプ43が設けられた配管45が、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内に挿入されて、洗浄廃液処理槽に取り付けられる。配管45は、α核種除去装置14にも接続される。前述した「α核種を含む放射性廃液を導く放射性廃液供給管」は、この配管45等の配管に相当する。
pH調整剤注入装置112が、移送ポンプ43とα核種除去装置14の間で配管45に接続される。本実施例で用いられるpH調整剤注入装置112は、実施例1で用いられるpH調整剤注入装置112と同じ構成を有する。
配管46が、α核種除去装置14と処理水回収タンク18の間(吸着材分離装置131、分解装置107を含む)を接続する。
移送ポンプ47を設けた配管48が、処理水回収タンク18と乾燥粉体化装置20を接続する。
乾燥粉体化装置20に接続された配管49が、固化設備21に接続されている。
実施例1と同様に、沸騰水型原子力プラントの原子炉冷却材浄化系、燃料プール冷却浄化系等から発生する放射性有機廃棄物は、高線量樹脂貯蔵タンク2に長期間貯蔵保管されている。貯蔵保管されている放射性有機廃棄物には、クラッドが含まれており、さらに、前述のα核種、及びα核種以外の放射性核種が吸着されている。
高線量樹脂貯蔵タンク2内に長期間貯蔵された放射性有機廃棄物を、高線量樹脂貯蔵タンク2の外部に移送する際には、移送水槽56内の水が移送水供給管57を通して高線量樹脂貯蔵タンク2内に供給される。この水の供給によって、高線量樹脂貯蔵タンク2内の放射性有機廃棄物を、移送し易いスラリーの状態にする。
その後、移送ポンプ76が駆動され、第1洗浄槽50内のスラリーに含まれる水が、放射性廃液(以下、実施例1と同様に、「第三放射性廃液」とする)として、廃液移送管77を通して廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内に排出される。廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内に導かれた第三放射性廃液は、実施例1における第三放射性廃液と同様に、α核種除去装置14に導かれる。第1洗浄槽50内の、放射性有機廃棄物スラリーに含まれる水分はα核種を含まないので、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内の第三放射性廃液は、α核種を含んでおらず、α核種以外の放射性核種を含んでいる。
第三放射性廃液が、α核種除去装置14を通過し、処理水回収タンク18に導かれる。その第三放射性廃液がα核種除去装置14を通過する間、α核種除去装置14内のフェライト(Fe3O4)粒子は、α核種、及びα核種以外の放射性核種を吸着しない。第三放射性廃液がα核種を含んでいないため、pH調整剤注入装置112から配管45へのpH調整剤水溶液の注入が行われず、分解装置107における還元剤(例えば、ヒドラジン)の分解も行われない。第三放射性廃液に含まれるコロイド性の物質及び固形分は、フェライトのフィルタ効果によって除去される。
処理水回収タンク18内のα核種を含んでいない第三放射性廃液は、乾燥粉体化装置20で紛体化され、生成された紛体は固化設備21に移送されて固化容器内で固化される。この固化容器は、密封後に、保管場所で保管される。保管されるこの固化容器内には、超半減期のα核種が存在していない。
実施例1と同様に、第一洗浄工程S1では、放射性有機廃棄物の一部であるイオン交換樹脂がシュウ酸に浸漬されるため、シュウ酸が解離して生じる水素イオン及びシュウ酸イオンが、それぞれ、放射性有機廃棄物である陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂に吸着されている放射性核種とイオン交換されるため、一部の放射性核種(α核種、及びα核種以外の放射性核種)がイオン交換樹脂から脱離される。
オゾンの供給が停止された後、移送ポンプ43が駆動され、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内に存在する、陽イオン交換樹脂から脱離されたα核種、及びα核種以外の放射性核種のそれぞれを含む廃液、すなわち、第一放射性廃液が、配管45を通してα核種除去装置14に供給される。
本実施例においても、配管45に注入されるpH調整剤としては、還元剤及び酸のいずれかが用いられる。
還元剤及び酸としては、実施例1において挙げられた、各種の還元剤及び酸のいずれかが用いられる。
このため、pH調整剤注入装置112において、弁41を開いて、還元剤槽17A内の還元剤水溶液、例えば、ヒドラジン水溶液を、注入配管42を通して配管45内に注入する(pH調整剤注入工程S5)。第一放射性廃液のpHが、ヒドラジンの注入により、4〜11の範囲内の、例えば、8に調節され、そのヒドラジンを含む第一放射性廃液は、α核種除去装置14に流入する。pH計49Aで測定された、α核種除去装置14に流入する第一放射性廃液のpHに基づいて弁41の開度を制御し、第一放射性廃液のpH、すなわち、pH計49Aで測定されたpHが8になるように、還元剤槽17Aから配管45へのヒドラジン水溶液の供給量を調節する。α核種除去装置14に流入する前において、第一放射性廃液のpHは、例えば、6になっている。
第一放射性廃液がヒドラジンを含み、このヒドラジンにより第一放射性廃液のpHが4〜11の範囲内の、例えば、8に調節されるため、第一放射性廃液に含まれる、価数が「3〜5」である各α核種の価数が「3」に調節される。第一放射性廃液に含まれる、価数が「3」になった各α核種が、α核種除去装置14において、フェライト粒子に吸着されて除去される(α核種の除去工程S6)。第一放射性廃液に含まれるコロイド性の物質及び固形分も、フェライトのフィルタ効果によって除去される。
分解装置107から排出された、α核種及びヒドラジンを含んでいない第一放射性廃液は、配管46を通して処理水回収タンク18に導かれる。
モータ59を駆動して撹拌翼58を回転させ、第1洗浄槽50内の放射性有機廃棄物及び水を撹拌し、放射性有機廃棄物をスラリー状態にする。移送ポンプ65を駆動し、第1洗浄槽50内の放射性有機廃棄物のスラリーを、有機廃棄物移送管66を通して第2洗浄槽51に供給する。
第1洗浄槽50内の放射性有機廃棄物スラリーの移送に伴い、第1洗浄槽50内の水量が減少して第1洗浄槽50内の放射性有機廃棄物が困難になった場合には、移送ポンプ63を駆動し、移送水槽54A内の水を第1洗浄槽50内に供給する。
第1洗浄槽50内の放射性有機廃棄物の第2洗浄槽51への移送が完了したとき、移送ポンプ65が停止されて、移送ポンプ78が駆動される。
第2洗浄槽51内の水が、第三放射性廃液として、廃液移送管79を通して廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に排出される。
処理水回収タンク18内の第三放射性廃液は、乾燥粉体化装置20で紛体化され(減容工程S10)、生成された紛体は固化設備21に移送されて固化容器内で固化される(容器充填または固化工程S11)。この固化容器は、密封後に、保管場所で保管される。保管されるこの固化容器内には、超半減期のα核種が存在していない。
有機酸塩槽53内には、有機酸塩であるギ酸アンモニウムの水溶液が充填されており、このギ酸アンモニウム水溶液のギ酸アンモニウムの濃度は、例えば1.2mol/Lである。ギ酸アンモニウムは、水素イオンよりも陽イオン交換樹脂に吸着されやすい陽イオンを生じる有機酸塩である。第二洗浄工程S2では、以下の事項が実施される。
切換え弁71を操作して有機酸塩供給管69と液体供給管73を連通させ、移送ポンプ72を駆動する。有機酸塩槽53内のギ酸アンモニウム水溶液が、有機酸塩供給管69及び液体供給管73を通して第2洗浄槽51に供給される。このとき、移送水供給管70と液体供給管73が連通していないので、移送水槽54B内の水は第2洗浄槽51に供給されない。第2洗浄槽51内におけるギ酸アンモニウム水溶液の液位が設定液位に達したとき、移送ポンプ72が停止され、第2洗浄槽51へのギ酸アンモニウム水溶液の供給が停止される。
第2洗浄槽51内での放射性有機廃棄物のギ酸アンモニウム水溶液への浸漬時間である2時間が経過したとき、第二洗浄工程S2が終了する。加熱装置による第2洗浄槽51の加熱及びモータ68をそれぞれ停止した後、移送ポンプ78を駆動し、第2洗浄槽51内の放射性核種を含むギ酸アンモニウム水溶液(以下、「第二放射性廃液」とする)を、洗浄廃液として、廃液移送管79を通して廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内に供給する。第2洗浄槽51内のギ酸アンモニウム水溶液の廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽への移送が終了したとき、移送ポンプ78が停止される。
オゾンの供給が停止され、第二洗浄工程S2の後で実施された廃液分解工程S4が終了した後、移送ポンプ43が駆動され、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内に存在する、脱離されたα核種、及びα核種以外の放射性核種のそれぞれを含む廃液、すなわち、第二放射性廃液が、配管45を通してα核種除去装置14に供給される。
第二放射性廃液がヒドラジンを含み、このヒドラジンにより第二放射性廃液のpHが4〜11の範囲内の、例えば、8に調節されるため、第二放射性廃液に含まれる、価数が「3〜5」である各α核種の価数が「3」に調節される。第二放射性廃液に含まれる、価数が「3」になった各α核種が、α核種除去装置14において、フェライト粒子に吸着されて除去される(α核種の除去工程S6)。第二放射性廃液に含まれるコロイド性の物質及び固形分も、フェライトのフィルタ効果によって除去される。
分解装置107から排出された、α核種及びヒドラジンを含んでいない第二放射性廃液は、配管46を通して処理水回収タンク18に導かれる。
第二受入タンク11から取り出された放射性有機廃棄物は、所定量、焼却設備12に移送され、焼却設備12で焼却される。焼却により生成された灰は、固化容器内でセメント等の固化剤により固化される。この固化体は、超半減期のα核種を含んでいないため、低レベル放射性廃棄物になる。
本発明の好適な他の実施例である、核燃料再処理に適用される実施例3の放射性廃液の処理方法を、図8及び図9を参照して説明する。
炉心に最初に装荷された燃料集合体に含まれる燃料棒内には、核燃料物質として、ペレット状の二酸化ウランが存在する。原子力プラントの運転によって、その核燃料物質に含まれる核分裂性物質(例えば、ウラン235)の核分裂によって、核燃料物質内に、核分裂生成物であるプルトニウム、ネプツニウム及びキュリウム等のα核種が生成される。
六フッ化ウラン87は、UF6精製工程S24において、蒸留法または吸着法により精製されて不純物が除去される。六フッ化ウラン87の精製によって、ウラン燃料88が生成される。
そして、核燃料物質の溶解液(硝酸を含む)90を、共除染工程S26において、リン酸トリブチル(TBP)を含む有機相と接触させる。溶解液90に含まれるウラン及びプルトニウムが、その有機相に移行され、核分裂生成物のうち、プルトニウムを除くネプツニウム及びキュリウム等のα核種はその有機相に移行しない。
所定の精度になったウラン及びプルトニウムは、脱硝・焙焼還元工程(図示せず)に送られ、ウランとプルトニウム混合酸化物に転換される。この混合酸化物を用いて混合酸化物燃料(MOX燃料)93が生成される。
以上に述べたS21〜S28の8つの工程は、核燃料再処理に関する工程である。
なお、図9に示す構成以外の構成は、図2に示した実施例1の構成や図7に示した実施例2の構成と、同様の構成とすることができる。
放射性廃液94は、図9に示された、本実施例の放射性廃液の処理方法に用いられる放射性廃液処理システムの配管45Aに供給される。
この放射性廃液処理システムは、pH調整剤注入装置112A及び吸着材注入装置121A、α核種除去装置14を有する。
pH調整剤注入装置112Aは、還元剤注入装置17及び中和液注入装置99を有する。還元剤注入装置17は、実施例1で用いられる還元剤注入装置17と同じ構成である。中和液注入装置99は、中和液槽100、及び弁101が設けられた中和液注入配管102を有する。
中和液槽100には、中和剤水溶液、例えば、中和剤である水酸化ナトリウムを含む水酸化ナトリウム水溶液が充填される。中和液注入配管102が中和液槽100に接続される。中和液注入装置99の中和液注入配管102が、還元剤注入装置17の注入配管42と配管45Aの接続点よりも上流側で配管45Aに接続される。
なお、本実施例では、pH調整剤として還元剤及び中和剤が用いられる。
本実施例において、中和剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、またはアルカリ金属及びアルカリ土類金属のいずれかの水酸化物を用いる。
pH計49Cが、中和液注入装置99の中和液注入配管102の配管45Aの接続点と還元剤注入装置17の注入配管42と配管45Aの接続点の間で、配管45Aに取り付けられる。pH計49Aが、注入配管42と配管45Aの接続点とα核種除去装置14の間で、配管45Aに取り付けられる。配管45Aは、α核種除去装置14に連絡される。
一方、α核種を含む放射性廃液のpHを4以上11以下の範囲内の7より大きく11以下の範囲内のpHに調節するときには、まず、放射性廃液に中和剤を注入して放射性廃液のpHを7にし、その後、放射性廃液に還元剤(例えば、ヒドラジン)を注入する。
まず、弁101を開いて中和液槽100内の水酸化ナトリウム水溶液を、配管45A内を流れる、硝酸を含む放射性廃液94に注入し、放射性廃液94のpHを4以上7以下の範囲内の「7」に調節する(pH調整剤注入工程S5)。
pH計49Cは、中和液注入装置99の中和液注入配管102の配管45Aの接続点と還元剤注入装置17の注入配管42と配管45Aの接続点の間において配管45A内を流れる、水酸化ナトリウム水溶液が注入された放射性廃液94(水酸化ナトリウムを含みヒドラジンを含んでいない放射性廃液94)のpHを測定する。pH計49Cの測定値がpHの設定値、例えば、「7」になるように、弁101の開度を制御し、配管45A内を流れる放射性廃液94への水酸化ナトリウム水溶液の注入量を調節する。
放射性廃液94のpHが、水酸化ナトリウム及びヒドラジンの注入により、4〜11の範囲内の、例えば、8に調節され、水酸化ナトリウム及びヒドラジンを含む放射性廃液94は、α核種除去装置14に流入する。pH計49Aで測定された、α核種除去装置14に流入する水酸化ナトリウム及びヒドラジンを含む放射性廃液94のpHに基づいて弁41の開度を制御し、その放射性廃液94のpHが8になるように、還元剤槽17Aから配管45Aへのヒドラジン水溶液の供給量を調節する。
前述のように水酸化ナトリウム及びヒドラジンの注入により放射性廃液94のpHを約1から8に増加させた場合は、放射性廃液94のpHをヒドラジンの注入だけで約1から8に増加させた場合に比べて固化体の発生個数が著しく低減できる。
α核種除去装置14から配管46に排出された放射性廃液94に含まれるヒドラジンは、前述の実施例1及び実施例2で述べたように、分解装置107内で分解される(還元剤の分解工程S9)。そして、α核種及びヒドラジンが含まれていない放射性廃液94が、配管46により廃液回収タンク(図示せず)に導かれる。
α核種が除去された放射性廃液94の放射線量率は、著しく低下する。
乾燥粉体化装置で生成された紛体は、固化設備で、固化容器内に充填され、固化容器内で固化される(容器充填または固化工程S11)。
また、ヒドラジン水溶液が注入されないため、分解装置107内でのヒドラジンの分解(還元剤の分解工程S9)が実施されない。α核種除去装置14から排出された、pHが6で水酸化ナトリウムを含む放射性廃液94は、そのまま、分解装置107を通過し、乾燥粉体化装置で紛体化される(減容工程S10)。
特に、還元剤の注入により、α核種を含む放射性廃液のpHが4〜11の範囲内の値に調節されることによって、α核種除去装置14はα核種を効率良く除去することができる。
以下、上述した実施例に対する変形例を説明する。
α核種吸着材としては、フェライトの他に、前述した活性炭や、α核種を吸着できるその他の吸着材を使用することができる。
さらに、α核種以外の放射性核種を吸着する、他の吸着材を使用して、他の吸着材をα核種除去装置14に注入することも可能である。このような他の吸着材としては、例えば、イオン交換樹脂、キレート樹脂、活性炭、オキシン添着活性炭、ゼオライト、チタン酸、フェロシアン化物、等が挙げられる。
他の吸着材を使用する場合、他の吸着材をα核種吸着材と同じ吸着材注入装置121から注入する構成、他の吸着材用にα核種吸着材の吸着材注入装置121とは別の注入装置を設けて、別の注入装置から他の吸着材をα核種除去装置14に注入する構成、のいずれの構成とすることも可能である。別の注入装置を設けた場合には、α核種吸着材と他の吸着材とで、注入する時期を異ならせることが可能になる。
他の吸着材を使用する場合も、吸着材分離装置131において、他の吸着材を放射性廃液から分離することが可能である。
これに対して、第三放射性廃液にはα核種を含んでいないので、第三放射性廃液にはα核種吸着材を注入しないことも可能である。
なお、第三放射性廃液にはα核種以外の放射性核種を含んでいるため、上述した他の吸着材を使用する場合、第三放射性廃液にも他の吸着材を注入する。そして、例えば上述した別の注入装置を設けた場合には、第三放射性廃液に他の吸着材のみを注入することが可能になる。
吸着材分離装置131の構成は、孔を有する膜を用いたクロスフローフィルタ方式に限定されず、その他の構成も採用することが可能である。例えば、デッドエンドフィルタ方式を採用することも可能である。
また、例えば、前述した他の吸着材を使用する場合に、クロスフローフィルタ方式の吸着材分離装置を2つ直列に接続した構成にして、一方の吸着材分離装置で他の吸着材を分離し、他方の吸着材分離装置でα核種吸着材を分離することも、可能である。
これに対して、吸着材分離装置においてクロスフローフィルタ方式を採用した場合には、条件(吸着材の粒径、放射性廃液の流速や水圧、フィルタにおける差圧、等)によって、吸着材がろ過材(膜等)から離れて、ろ過後の濃縮水に流れることがある。例えば、一部の吸着材がろ過材から濃縮水に流れ、ろ過材に残る吸着材と別れることがある。
従って、放射性廃液の処理システム及び処理方法は、上記の各実施例のような吸着材分離装置において吸着材が放射性廃液から分離される構成には限定されず、吸着材を含む放射性廃液が、ろ過により濃縮され、濃縮水にも吸着材が流れる構成も含む。
吸着材が濃縮水に流れる場合には、吸着材を含む濃縮水から、水分を蒸発させて減容及び固化させる。例えば図2の放射性廃液処理システム1において、吸着材分離装置131から、吸着材を含む濃縮水が配管46へ流れる場合には、乾燥粉体化装置20において濃縮水から水分を蒸発させて、固化設備21で固化する。
また、各実施例のように吸着材分離装置131を設けて、ろ液を化学洗浄部10で再利用する構成とする代わりに、吸着材分離装置等のろ過装置は設けないで、吸着材を含む放射性廃液を乾燥して固化させる構成とすることも可能である。
Claims (20)
- α核種を含む放射性廃液を処理する放射性廃液の処理方法であって、
前記α核種を含む前記放射性廃液にpH調整剤を注入し、
前記α核種及び前記pH調整剤を含む前記放射性廃液にα核種吸着材を供給し、
前記α核種吸着材によって前記α核種を吸着することにより、前記放射性廃液から前記α核種を除去する
ことを特徴とする放射性廃液の処理方法。 - 陽イオン交換樹脂を含む放射性有機廃棄物に、有機酸塩水溶液を接触させることにより、前記陽イオン交換樹脂から前記α核種を含む放射性核種を脱離させて、前記α核種及び有機酸塩を含む前記放射性廃液を得て、
前記α核種及び前記有機酸塩を含む前記放射性廃液を酸化処理することにより、前記放射性廃液に含まれている前記有機酸塩を分解して、
前記有機酸塩を分解した後の前記α核種を含む前記放射性廃液に、前記pH調整剤を注入する
請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。 - 前記有機酸塩は、水素イオンよりも前記陽イオン交換樹脂に吸着されやすい陽イオンを含む請求項2に記載の放射性廃液の処理方法。
- 前記放射性有機廃棄物に酸化鉄が含まれる場合には、前記有機酸塩水溶液を前記放射性有機廃棄物に接触させる前に、前記放射性有機廃棄物を有機酸水溶液に接触させることにより、前記酸化鉄を溶解し、
前記有機酸水溶液を前記放射性有機廃棄物に接触させた後に、前記有機酸水溶液を酸化処理することにより、前記有機酸水溶液に含まれる有機酸を分解する
請求項2または3に記載の放射性廃液の処理方法。 - 前記有機酸塩は、シュウ酸、ギ酸、炭酸、酢酸またはクエン酸のアンモニウム塩、バリウム塩、セシウム塩またはヒドラジン塩である、請求項2ないし4のいずれか1項に記載の放射性廃液の処理方法。
- 前記α核種吸着材がフェライトである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の放射性廃液の処理方法。
- 前記α核種及び前記pH調整剤を含む前記放射性廃液のpHをpH計によって測定してから、前記α核種吸着材による前記α核種の除去を行う、請求項6に記載の放射性廃液の処理方法。
- 前記pH計によって測定された、前記α核種及び前記pH調整剤を含む前記放射性廃液のpHの値に基づいて、前記α核種及び前記pH調整剤を含む前記放射性廃液のpHが4以上11以下の範囲内のpHになるように、前記α核種を含む前記放射性廃液に注入する前記pH調整剤の注入量を調節する請求項7に記載の放射性廃液の処理方法。
- 磁化率測定装置によって、前記放射性廃液に供給された前記フェライトを検出する請求項6ないし8のいずれか1項に記載の放射性廃液の処理方法。
- 核燃料再処理においてウラン及びプルトニウムの回収によって発生した、硝酸及び前記α核種を含む前記放射性廃液から、前記α核種を除去する場合に、前記pH調整剤である還元剤を前記放射性廃液に注入する前に、他の前記pH調整剤である中和剤を前記放射性廃液に注入して前記放射性廃液を中和させる、請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
- 粒径μmオーダーに微粉化された前駆α核種吸着材を前記放射性廃液に注入する請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
- 前記放射性廃液から前記α核種を除去した後に、前記α核種を吸着した前記α核種吸着材を、前記放射性廃液から分離する請求項1ないし11のいずれか1項に記載の放射性廃液の処理方法。
- α核種を含む放射性廃液を導く放射性廃液供給管と、
前記放射性廃液供給管に接続され、pH調整剤を注入するpH調整剤注入装置と、
前記放射性廃液供給管に接続され、前記α核種を含む前記放射性廃液からα核種を除去するα核種除去装置と、
前記α核種除去装置に、前記α核種を吸着するα核種吸着材を注入する、吸着材注入装置と、
を備えた
ことを特徴とする放射性廃液処理システム。 - 放射性有機廃棄物が供給される洗浄槽と、
前記洗浄槽に接続され、有機酸塩水溶液を貯留する有機酸塩槽と、
前記洗浄槽から排出される、前記α核種を含む放射性核種を含んでいる前記有機酸塩水溶液を、酸化処理することにより、前記有機酸塩水溶液に含まれる有機酸塩を分解する廃液分解装置と、
前記廃液分解装置に接続され、前記有機酸塩の分解によって生成されて前記廃液分解装置から排出される前記α核種を含む前記放射性廃液を導く、前記放射性廃液供給管を備える請求項13に記載の放射性廃液処理システム。 - 前記pH調整剤注入装置が、中和液注入装置及び還元剤注入装置を含んでおり、
核燃料再処理においてウラン及びプルトニウムの回収によって発生して、硝酸及び前記α核種を含み前記放射性廃液供給管内を流れる前記放射性廃液に、アルカリ性の中和剤を含む中和液を注入する前記中和液注入装置が、還元剤を注入する前記還元剤注入装置と前記放射性廃液供給管の接続点よりも上流側で、前記放射性廃液供給管に接続され、
第1pH計が、前記還元剤注入装置及び前記放射性廃液供給管の接続点と前記中和液注入装置と前記放射性廃液供給管の接続点との間で、前記放射性廃液供給管に取り付けられている請求項13に記載の放射性廃液処理システム。 - 第2pH計が、前記還元剤注入装置及び前記放射性廃液供給管の接続点と前記α核種除去装置との間で、前記放射性廃液供給管に取り付けられ、
磁化率測定装置が前記α核種除去装置に設けられている請求項15に記載の放射性廃液処理システム。 - 前記放射性廃液への前記pH調整剤の注入が、所望のα核種濃度になった際に行われる請求項13に記載の放射性廃液処理システム。
- α核種濃度の測定が、pH調整剤注入装置よりも上流側の配管にとりつけられたサンプリング弁で採取した前記放射性廃液の分析によって行われる請求項17に記載の放射性廃液処理システム。
- 前記α核種吸着材を含む放射性廃液から、前記α核種吸着材を分離する吸着材分離装置をさらに備えた請求項13ないし18のいずれか1項に記載の放射性廃液処理システム。
- 前記吸着材分離装置は、μmオーダーの孔径を有する膜を用いたクロスフロー方式により前記α核種吸着材の分離を行う請求項19に記載の放射性廃液処理システム。
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