JP2020186787A - 流体制御弁 - Google Patents
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Abstract
Description
薬液用の流体制御弁は、弁座または弁体にゴム等の弾性体を用いる場合がある。よって、弁座または弁体に用いられる弾性体と制御流体との適合性が非常に重要であり、適合しない流体を誤って流すと、弾性体が物性変化を起こすおそれがある。また、制御流体が弾性体に適合するものであっても、装置洗浄を行う場合などに一時的に流す洗浄用の流体が、弾性体に適合しない場合もあり、この場合も弾性体が物性変化を起こすおそれがある。
ここで、物性変化とは、例えば、弾性体としてゴムを用いた場合、ゴムが流体に曝されることで引き起こされる墨汁現象による腐食や、膨潤による肥大化を指す。墨汁現象を引き起こすと、弾性体が腐食し、閉弁時に弁体と弁座の間で漏れが発生するおそれがある。または、膨潤を引き起こすと、弁座または弁体が肥大化することで、開弁時の弁体と弁座との距離が縮小し、流体の流量が制御値未満となる流量不足が発生するおそれがある。
特に、医用分析装置に用いられる流体制御弁で、上記のような不具合が生じると、分注工程において液だれを発生させるなど、検体・試薬の採取ミスや希釈原因となり、分析結果に与える影響が大きいため、流体に曝されることにより生じる弾性体の物性変化に起因した流体制御の異常を検知可能な流体制御弁が望まれていた。しかし、特許文献1に開示されるセンサ付き流体制御弁は、ウォータハンマ現象に基づいて漏れの有無を検知することに特化されたものであり、上記のような弁体または弁座を構成する弾性体の物性変化を検出できるものではなかった。
(1)弁体が弁座に当接離間することで流体の流量制御を行う流体制御弁において、弁体または弁座のいずれかが弾性体からなること、弁体が弁座に当接する際の衝撃力に起因して生じる振動を検知する振動センサを備えること、振動センサで検知した振動が所定の閾値以下であるときに、流量制御の異常が生じていると判断する判定部を備えること、振動が所定の閾値以下となるのは、弾性体からなる弁体または弁座が流体に曝されることにより生じる弾性体の物性変化に起因するものであること、を特徴とする。
(1)に記載の流体制御弁によれば、弾性体からなる弁座または弁体が流体に曝され、弾性体が物性変化することで生じる流体制御の異常を検知することが可能である。
流体制御弁1は、医用分析装置に用いられ、図3に示すように、薬液供給源30と、分注ピペット31の間に置かれている。
また、流体制御弁1は、図1,図2に示すように、アクチュエータ部11と弁部12とからなる。アクチュエータ部11は、円柱状の外観を有し、内部にコイルボビン113を有する。コイルボビン113は外周に凹部113aを備え、凹部113aには励磁コイル114が巻回されている。コイルボビン113の中空部113bには、円筒状のガイド部材118が、図1中の下側から挿通されており、さらにガイド部材118の中空部118aには、固定鉄心111と可動鉄心112が挿通されている。
流路ブロック体121の図1中の上面中央には、弁室121aが穿設されており、弁室121aは、入力流路121cと出力流路121dとに連通している。また、弁室121aの底面には、弁体119が当接または離間する弁座121bが形成されている。
一方、励磁コイル114に通電すると、可動鉄心112が固定鉄心111に引きつけられるため、図2に示すように、弁体119が弁座121bから離間し、入力流路121cと出力流路121dとが、弁室121aを介して連通される。
振動センサ15は、流路ブロック体121の底面に接着剤により固定されており、弁体119が弁座121bに当接する際の衝撃力に起因して流体制御弁1に生じる振動を検知する。なお、センサ配置空間13aには樹脂を流し込み、振動センサ15をポッティングするものとしてもよい。
次に、流体制御弁1の作用効果について説明する。
流体制御弁1の弁体119はゴムからなっており、当該ゴムに適合しない制御流体や洗浄流体を流体制御弁1に流すと、ゴムが物性変化をするおそれがある。ここで、物性変化とは、ゴムが流体に曝されることで引き起こされる墨汁現象による腐食や、膨潤による肥大化を指す。
墨汁現象が発生する事例として考えられるのは、弁体119のゴムが、ニトリルゴム(NBR)である場合である。NBRはカーボンブラックを含んでおり、NBRに適合しない制御流体や洗浄用の流体(例えば次亜塩素酸ナトリウム)に、弁体119が曝された場合、NBRに含まれるカーボンブラックが溶け出すことがある。これが墨汁現象である。墨汁現象によりNBRが腐食すると、閉弁時に 弁体119と弁座121bの間のシールが不十分となり、弁体119と弁座121bとの間において、流体の漏れが発生するおそれがある。
図4は、流体制御弁1の弁体119の初期状態(物性変化していない状態)における振動V11と時間の関係を示す。なお、振動V11とは、振動センサ15が、検出した振動を電気信号に変換し出力した電圧値である。
図5、図6および図7は、弁体119を次亜塩素酸ナトリウムに浸漬し、故意に物性変化させた状態における振動V12,13,14と時間の関係を示す。振動V12,13,14が、振動センサ15が出力した電圧値であることは、図4と同様である。弁体119を次亜塩素酸ナトリウムに浸漬した時間は、図5が2週間、図6が4週間、図7が8週間である。
なお、上記で説明した閾値X1は、製品、また使用条件により、任意に設定される。
膨潤が発生する事例として考えられるのは、弁体119のゴムが、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)である場合である。EPDMに適合しない制御流体(例えば作動油)に、弁体119が曝された場合、弁体119が膨潤し、肥大化するおそれがある。弁体119が膨潤し、肥大化すると、開弁時の弁体119と弁座121bとの距離が縮小し、流体の流れを阻害するため、流体の流量が制御値未満となる流量不足が発生するおそれがある。
図8は、流体制御弁1の弁体119の初期状態(物性変化していない状態)における振動V15と時間の関係を示す。なお、振動V15とは、振動センサ15が、検出した振動を電気信号に変換し出力した電圧値である。
図9、図10および図11は、弁体119を作動油に浸漬し、故意に物性変化させた状態における振動V16,17,18と時間の関係を示す。振動V16,17,18が、振動センサ15が出力した電圧値であることは、図8と同様である。弁体119が作動油に浸漬されることによって膨潤し、肥大化しているため、開弁時の弁体119と弁座121bとの距離が縮小している。そして、図9が縮小前の距離の30%縮小した状態、図10が縮小前の距離の40%縮小した状態、図11が縮小前の距離の50%縮小した状態を表している。
なお、上記で説明した閾値X2は、製品、また使用条件により、任意に設定される。
(1)弁体119が弁座121bに当接離間することで流体の流量制御を行う流体制御弁1において、弁体119が弾性体(ゴム)からなること、弁体119が弁座121bに当接する際の衝撃力に起因して生じる振動を検知する振動センサ15を備えること、振動センサ15で検知した振動が所定の閾値X1,X2以下であるときに、流量制御の異常が生じていると判断する判定部17を備えること、振動が所定の閾値X1,X2以下となるのは、弾性体(ゴム)からなる弁体119が流体に曝されることにより生じる弾性体(ゴム)の物性変化に起因するものであること、を特徴とするので、弾性体(ゴム)からなる弁体119が流体に曝され、弾性体(ゴム)が物性変化することで生じる流体制御の異常を検知することが可能である。
そのような中、出願人は実験により、弁体119が物性変化すると、弁体119が弁座121bに当接する際の衝撃力が、物性変化した弾性体に吸収され、これに伴って流体制御弁1に生じる振動が弱くなることを発見した。さらに、当該振動を監視することで、弾性体(ゴム)からなる弁体119が物性変化しているか否かを監視可能であり、振動が所定の閾値X1,X2以下となる場合、弾性体(ゴム)の物性変化に起因した流体制御の異常が生じていることを発見した。
以上に説明した第1の実施形態に係る流体制御弁1おいては、弁体119がゴムからなることとしているが、第2の実施形態として、図12に示す流体制御弁2のように、弁座18がゴムからなるものとしても良い。
可動鉄心212は、流体制御弁1のようにゴムからなる弁体119を有しておらず、底面が弁座18との当接面212aとなり、弁体としての役割を果たす。そして、環状の弁座18は、流路ブロック体221の穿設された弁室221aの底面に設けられた弁座取付溝221eに圧入固定されている。
墨汁現象によりNBRが腐食すると、閉弁時に 当接面212aと弁座18の間のシールが不十分となり、当接面212aと弁座18との間において、流体の漏れが発生するおそれがある。
(1)弁体(当接面212a)が弁座18に当接離間することで流体の流量制御を行う流体制御弁2において、弁座18が弾性体(ゴム)からなること、弁体(当接面212a)が弁座18に当接する際の衝撃力に起因して生じる振動を検知する振動センサ15を備えること、振動センサ15で検知した振動が所定の閾値X1,X2以下であるときに、流量制御の異常が生じていると判断する判定部17を備えること、振動が所定の閾値X1,X2以下となるのは、弾性体(ゴム)からなる弁座18が流体に曝されることにより生じる弾性体(ゴム)の物性変化に起因するものであること、を特徴とするので、弾性体(ゴム)からなる弁座18が流体に曝され、弾性体(ゴム)が物性変化することで生じる流体制御の異常を検知することが可能である。
例えば、流体制御弁1,2は電磁弁であるが、エアで駆動するパイロット弁等の他の形式の流体制御弁でも良い。
また、第1および第2の実施形態における振動センサ15は、加速度センサを用いるものとしているが、その他形式のセンサであっても良い。
さらにまた、第1および第2の実施形態における振動センサ15は、流路ブロック体121,221の底面に固定されているが、振動を検知できる位置であれば良く、例えば、カバー116の外周面に取り付けられるものとしても良い。
15 振動センサ
17 判定部
121b 弁座
119 弁体
X1,X2 閾値
Claims (5)
- 弁体が弁座に当接離間することで流体の流量制御を行う流体制御弁において、
前記弁体または前記弁座のいずれかが弾性体からなること、
前記弁体が前記弁座に当接する際の衝撃力に起因して生じる振動を検知する振動センサを備えること、
前記振動センサで検知した前記振動が所定の閾値以下であるときに、前記流量制御の異常が生じていると判断する判定部を備えること、
前記振動が前記所定の閾値以下となるのは、前記弾性体からなる前記弁体または前記弁座が前記流体に曝されることにより生じる前記弾性体の物性変化に起因するものであること、
を特徴とする流体制御弁。 - 請求項1に記載の流体制御弁において、
前記弾性体は、カーボンブラックを含有していること、
前記物性変化には、少なくとも前記弾性体の墨汁現象に起因した腐食が含まれること、
前記流量制御の異常には、少なくとも、前記腐食を原因とする前記弁体と前記弁座との間に生じる前記流体の漏れが含まれること、
を特徴とする流体制御弁。 - 請求項1に記載の流体制御弁において、
前記物性変化には、少なくとも前記弾性体の膨潤が含まれること、
前記流量制御の異常には、前記膨潤に起因した前記流体制御弁の開弁時の前記弁体と前記弁座との距離の縮小を原因として、前記流体の流量が制御値未満となる流量不足が含まれること、
を特徴とする流体制御弁。 - 請求項1乃至3のいずれか1つに記載の流体制御弁において、
前記判定部は、前記振動センサで検知した前記振動が所定の閾値を超える値であって、所定の安全値以下であるときに、前記流量制御の異常が生じるおそれがあると判断すること、
を特徴とする流体制御弁。 - 請求項1乃至4のいずれか1つに記載の流体制御弁において、
前記弁体が前記弁座に当接する方向と、前記振動センサが検出可能な振動の方向と、が略同一であること、
を特徴とする流体制御弁。
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