JP2020186722A - エンジンのピストン及びその製造方法 - Google Patents

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和男 市川
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祐介 丸谷
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晃弘 竹澤
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Abstract

【課題】重量増大を抑制しながら、エンジンの振動を低減することが可能な、エンジンのピストンを提供する。【解決手段】ピストン6は、気筒(シリンダ)2の内壁面に沿って移動するピストン本体6aと、当該ピストン本体6aとコンロッド9とを連結するピストンピン6bとを備える。ピストン本体6aは、冠面22を備えたピストンヘッド20と、ピストンヘッド20の反冠面側に各々繋がって当該ピストンヘッド20の前後方向(第1方向)に間隔を隔てて並び、かつ当該前後方向に貫通するピン孔29を各々備えた一対のピンボス部28a、28bと、を備える。ピストンヘッド20は、冠面22と各ピン孔29との間の位置において、左右方向(第2方向)に各々延在する一対の空洞部36a、36bと、当該一対の空洞部36a、36bに充填された粒子状充填材31と、を含む。【選択図】図8

Description

本発明は、エンジンのピストン及びその製造方法に関する。
レシプロエンジン(以下、エンジンと略す)では、シリンダ内を往復動するピストンとクランクシャフトとがコンロッド(コネクティングロッド)によって連結されている。ピストンは、詳しくは、シリンダの内壁面に沿って移動するピストン本体と、当該ピストン本体とコンロッドとを連結するピストンピンとからなり、コンロッドの小端部がピストンピンに連結され、コンロッドの大端部がクランクシャフトに連結されている。
このようなエンジン構造では、燃料の燃焼(膨張行程)に伴いピストンに生じる振動が、コンロッドを介してクランクシャフトに伝わり、さらにクランクシャフトの軸受部からシリンダブロック側壁面に伝わることが知られており、この振動が、当該エンジンが搭載される車両のNVH(Noise Vibration Harshness)性能を大きく左右する。そこで、近年では、ピストンピンの内部にピンダンパを配設し、これによりピストンの振動、ひいてはエンジンの振動を低減することが行われている(例えば特許文献1)。
特開2015−161322号公報
しかし、ピストンピンの内部にピンダンパを配設する従来構成によると、ピンダンパが設けられる分だけ、ピストンピンを含むピストン全体の重量増大を伴うこととなるため、エンジンの熱効率の向上を考えると未だ改善の余地がある。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、重量増大を抑制しながら、エンジンの振動を低減することが可能な、エンジンのピストンおよびその製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明は、シリンダの内壁面に沿って当該シリンダの軸方向に往復移動するピストン本体と、当該ピストン本体とコネクティングロッドとを連結するピストンピンとを備えた、エンジンのピストンであって、前記ピストン本体は、燃焼の壁面の一部を形成する冠面を備えたピストンヘッドと、前記ピストンヘッドの反冠面側に各々繋がって当該ピストンヘッドの径方向に含まれる第1方向に間隔を隔てて並び、かつ当該第1方向に貫通する前記ピストンピン用のピン孔を各々備えた一対のピンボス部と、を備え、前記ピストンヘッドは、前記軸方向における前記冠面と各ピン孔との間の位置において、前記軸方向および前記第1方向との双方に直交する第2方向に各々延在する一対の空洞部と、当該一対の空洞部に充填された粒子状充填材と、を含むものである。
このピストンの構造によると、ピストン本体の空洞部に充填された粒子状充填材の粒子同士の摩擦や、空洞部内壁面と粒子との摩擦により、燃料の燃焼(膨張行程)に伴うピストン本体の振動のエネルギーが熱エネルギーに変換される。そのため、ピストン本体からピストンピンへの振動伝達が抑制される。特に、前記空洞部は、冠面と各ピン孔との間の位置に設けられているため、冠面からピストンピンへの振動伝達が効果的に抑制される。しかも、このピストンの構造は、従来中実構造とされるピストンヘッドの一部に前記空洞部が設けられ、当該空洞部に粒子状充填材が充填された構造であるため、ピストン本体の重量増大を伴い難い。従って、このピストンによれば、重量増大を抑制しながら、エンジンの振動を低減することが可能となる。
上記ピストンにおいて、前記第2方向における前記空洞部の両端は、各々前記ピストンヘッドの外縁部に位置するのが好適である。
この構造によると、より広い範囲に亘って冠面からピストンピンへの振動伝達を抑制することが可能となる。そのため、エンジンの振動を低減する上でより有利となる。
上記各態様のピストンにおいて、前記空洞部内には、前記第1方向に沿って延びる柱部が形成されているのが好適である。
この構造によると、燃焼圧による空洞部の変形が柱部によって抑制されるため、ピストン本体の剛性を良好に確保することが可能となる。
上記各態様のピストンにおいて、前記一対の空洞部を各々第1空洞部と定義したときに、前記ピストンヘッドは、前記冠面に形成されたキャビティと、前記一対の第1空洞部の間の位置であって少なくとも前記キャビティに対応する位置に設けられた第2空洞部と、前記第2空洞部に充填された粒子状充填材と、を含むものであってもよい。
近年のエンジンでは、例えば高圧縮比の下で成層燃焼を実行すべく、ピストン本体の冠面にキャビティ(凹部)を設け、当該キャビティに向かって燃料を噴射し、着火させることが行われる場合がある。このようなエンジンでは、燃焼室(冠面)のうちキャビティの位置を中心として燃焼が拡大する。そのため、キャビティに対応する位置に、粒子状充填材が充填された第2空洞部が設けられている上記構成によると、燃焼に伴う冠面からピストンピンへの振動伝達がより効果的に抑制される。
上記各態様のピストンにおいて、前記ピストンヘッドは、その外縁に沿って周方向に延びる環状空洞部と、前記環状空洞部に充填された粒子状充填材と、を含むものであるのが好適である。
この構成によると、ピストン本体の外縁部(周縁部)において冠面からピストンピンへの振動伝達を抑制することが可能となる。そのため、エンジンの振動低減を図る上でより有利なものとなる。
上記各態様のピストンにおいて、前記粒子状充填材の粒子の形状は球状であるのが好適である。
粒子状充填材の粒子の形状は、例えば楕円形状であってもよいが、球状であれば粒子自体がより運動し易くなり、粒子同士の摩擦や粒子と空洞部内壁面との摩擦が促進される。すなわち、球状の粒子状充填材によれば、振動エネルギーがより効率良く熱エネルギーへ変換され、より高度にピストン本体からピストンピンへの振動伝達を抑制することが可能となる。
この場合、前記粒子の粒径は10μm〜100μmであるのが好適である。また、前記空洞部における粒子状充填材の充填密度は25%〜60%であるのが好適である。
粒子状充填材の粒子の粒径や空洞部における充填密度をこのような範囲内で設定することにより、後述する試験結果に示される通り、高い振動抑制効果を得ることが可能となり、ピストン本体からピストンピンへの振動伝達を高度に抑制することが可能となる。
なお、他の一局面に係る本発明は、上述した態様のピストン本体を製造する方法であって、鋳型、および前記空洞部を形成するための中子を準備する準備工程と、前記鋳型に中子をセットして当該鋳型に金属材料を注湯する注湯工程と、前記鋳型からピストン本体を取出し、さらに当該ピストン本体から前記中子を除去することにより前記空洞部を形成する製品取出工程と、前記空洞部に、前記粒子状充填材を充填する充填材充填工程と、を含むものである。
この製造方向によれば、鋳型と中子を用いた一般的な鋳造方法によって上述したピストン本体を製造することが可能となる。
また、他の一局面に係る本発明は、上述した態様のピストン本体を製造する方法であって、前記粒子状充填材が封入された充填材封入体を製造する封入体製造工程と、鋳型、および前記充填材封入体を準備し、前記鋳型に前記充填材封入体をインサート部品としてセットして当該鋳型に金属材料を注湯する注湯工程と、前記鋳型からピストン本体を取出す製品取出工程と、を含むものである。
この製造方法によれば、予め製造した充填材封入体をインサート部品とする、いわゆるインサート鋳造(成型)によって、上述したピストン本体を製造することが可能となる。
また、他の一局面に係る本発明は、上述した態様のピストン本体を製造する方法であって、造形ベース上に金属粉末を敷く工程と、造形ベース上に敷かれた金属粉末をレーザ光でスキャンすることにより金属粉末を溶融、固化させる工程と、前記造形テーブルを一定量だけ下降させる工程とをこの順番で繰り返すことにより、前記ピストン本体を前記一定量ずつ層状に一層ずつ順に造形するとともに、当該造形中に、前記空洞部に相当する箇所にレーザ光を照射することなく金属粉末をそのまま残存させることにより、当該金属粉末を前記粒子状充填材として封入した前記空洞部を当該ピストン本体の内部に設けるようにしたものである。
この製造方法によれば、金属3Dプリンタ等の金属粉末積層造形機を用いて、上述したピストン本体を製造することが可能となる。
また、他の一局面に係る本発明は、上述した態様のピストン本体を製造する方法であって、前記ピストン本体の一部であって前記冠面を含む第1部分を製造する第1部分製造工程と、前記ピストン本体のうち前記第1部分以外の部分であって、前記空洞部の少なくとも一部を形成する部分と前記一対のピストンボス部とを含む第2部分を製造する第2部分製造工程と、前記第1部分と前記第2部分とを一体化する一体化工程と、を含むものである。
このようにピストン本体を第1部分と第2部分とに分けて製造する方法によれば、第1部分と第2部分とを異なる方法で製造することが可能となる。そのため、ピストン本体の具体的な形状に応じて第1部分と第2部分との製造方法を選択することにより、上述したピストン本体を合理的にかつ効率良く製造することが可能となる。
以上説明したように、本発明によれば、重量増大を抑制しながら、エンジンの振動を低減することが可能な、エンジンのピストンおよびその製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態に係るピストンが適用されたエンジンの断面図である。 上記ピストンのピストン本体の斜視図である。 上記ピストンのピストン本体の正面図である。 上記ピストンのピストン本体の平面図である。 上記ピストンのピストン本体の側面図である。 上記ピストンのピストン本体の底面図である。 上記ピストンのピストン本体の断面図(図3のVII−VII線断面図)である。 空洞部を示す上記ピストンのピストン本体の概略図である。 空洞部を示す上記ピストンのピストン本体の平面図である。 振動減衰特性試験の結果を示す図(グラフ)である。 周波数応答解析試験の結果を示す図(グラフ)である。 粒子状充填材の粒子形状及び粒径と損失係数との関係を示す図(グラフ)である。 ピストンの製造方法(第4の製造方法)の説明図である。 粒子状充填材の粒径及び充填密度と損失係数との関係を示す図(グラフ)である。
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
[1.エンジンの構成]
図1は、本発明の実施形態に係るピストンが適用されたエンジンの断面図である。この図に示されるエンジン1は、走行用の動力源として車両に搭載される4サイクルの直列4気筒直噴エンジンである。このエンジン1は、第1〜第4の4つの気筒(シリンダ)2を内部に備えるシリンダブロック3と、気筒2を上から閉塞するようにシリンダブロック3の上面に取り付けられたシリンダヘッド4と、クランクケース5の下面に取り付けられて、前記シリンダブロック3と協働してクランク室を形成するクランクケース5と、気筒2に往復摺動可能に挿入された、本発明に係るピストン6とを有している。
ピストン6の上方には燃焼室7が画成されており、この燃焼室7には、ガソリンを主成分とする燃料が図外のインジェクタからの噴射によって供給される。そして、供給された燃料が燃焼室7で空気と混合されつつ図外の点火プラグによる着火により燃焼し、その燃焼による膨張力を受けてピストン6が上下方向に往復運動する。
ピストン6の下方には、エンジン1の出力軸であるクランク軸8が設けられている。クランク軸8は、コネクティングロッド9(以下、コンロッド9と称す)を介してピストン6と連結されており、ピストン6の往復運動(上下運動)に応じて中心軸回りに回転駆動される。詳しくは、ピストン6は、ピストン本体6aとピストンピン6bとを備えており、ピストン本体6aは、ピストンピン6bを介してコンロッド9の小端部に連結され、コンロッド9の反小端部側である大端部が、クランク軸8に連結されている。
シリンダヘッド4には、空気を燃焼室7に導入するための吸気ポート10と、燃焼室7で生成された排気ガスを導出するための排気ポート11と、吸気ポート10の燃焼室7側の開口を開閉する吸気弁12と、排気ポート11の燃焼室7側の開口を開閉する排気弁13とが設けられている。本実施形態のエンジン1のバルブ形式は、吸気2バルブ×排気2バルブの4バルブ形式である。すなわち、シリンダヘッド4には、2つの吸気ポート10と、それらの開口を各々開閉する2つの吸気弁12と、2つの排気ポート11と、それらの開口を各々開閉する2つの排気弁13とが設けられている。
吸気弁12および排気弁13は、シリンダヘッド4に配設された一対のカム軸等を含む動弁機構により、クランク軸8の回転に連動して開閉駆動される。
シリンダブロック3には、各気筒2の排気側の側壁内を気筒列方向に延びるメインギャラリ14が設けられている。このメインギャラリ14には、エンジン1に配設されたオイルポンプ(図示省略)から吐出されたオイルが流通している。メインギャラリ14の下側近傍には、このメインギャラリ14と連通するピストン冷却用のオイルジェット15が気筒2毎に設けられている。このオイルジェット15は、ピストン本体6aの下側に配置されたノズル15aを有しており、このノズル15aから後記ピストンヘッド20の下面に向けてエンジンオイル(以下、オイルと略す)を噴射する。本実施形態では、エンジン1の作動中は、オイルジェット15から常にオイルが噴射されるようになっている。
[2.ピストンの具体的構成]
図2〜図7を参照して、ピストン6の主にピストン本体6aの構造について説明する。図2〜図7は、ピストン6のピストン本体6aを各々示しており、図2は斜視図で、図3は正面図で、図4は平面図で、図5は側面図で、図6は底面図で、図7は断面図(図3のVII−VII線断面図)で各々ピストン本体6aを示している。
なお、以下のピストン本体6aの説明において、「上下方向」とは気筒2の軸方向(気筒軸方向)と同義であり、「上」が燃焼室7側、「下」がクランク室側である。また「前後方向」(本発明の「第1方向」に相当する)とはクランク軸8と平行な方向であり、「前」がエンジン1のフロント側に対応し、「後」がエンジン1のリア側に対応する。さらに「左右方向」(本発明の「第2方向」に相当する)とは、「上下方向」及び「前後方向」の双方に直交する方向であり、「左」が排気ポート11に対向する側であり、「右」が吸気ポート10に対向する側である。各図には、エンジン1のフロント側、リア側という意味においてF側、R側との標記が付され、吸気ポート10及び排気ポート11に各々対向する側であるという意味においてIN側、EX側との表記が付されている。
前記ピストン本体6aは、ピストンヘッド20と、ピストンヘッド20の外周が下方に延設されてなる一対のスカート部26a、26bとを含む。
ピストンヘッド20は円柱体からなり、燃焼室7の壁面の一部(底面)を形成する冠面22を上面に備えると共に、気筒2の内壁面と摺接する外周面24とを備える。前記冠面22は、ペントルーフ型の燃焼室7の天井面と対向する面であり、外縁部分を除くその他の領域が、当該天井面に対応するように上側(山型)に突出するように形成されている。冠面22は、その径方向の概ね中央部分に配置された椀状のキャビティ23を含む。キャビティ23は、燃焼室7の天井面に配置された図外のインジェクタからの燃料の噴射を受ける部分であって、冠面22の一部が下方に凹設された部分である。
ピストンヘッド20の外周面24には、ピストンリングが嵌め込まれるリング溝25が複数備えられている。本実施形態では、3つのリング溝25が備えられており、各リング溝25には、冠面22に近いリング溝25から順に、第1、第2のコンプレッションリング(トップリング、セカンドリング)およびオイルリング(何れも図示省略)が装着されている。コンプレッションリングは、燃焼室7で発生した燃焼ガスがクランク室側に漏洩しないようにピストン6と気筒2の内壁面との間をシールするものである。また、オイルリングは、気筒2の内壁面に付着した余分なオイルを掻き落とすものである。
一対のスカート部26a、26bのうち、一方側のスカート部26aは、ピストンヘッド20の外周面24のうちIN側(右側)に設けられ、他方側のスカート部26bは、ピストンヘッド20の外周面24のうちEX側(左側)に設けられている。これらスカート部26a、26bが気筒2の内壁面に摺接することで、ピストン6の往復運動の際の首振り揺動が抑制される。
ピストンヘッド20の下面(反冠面側の面)であってかつ前記一対のスカート部26a、26bの間の位置には、前後一対のピンボス部28a、28bが設けられている。これらピンボス部28a、28bのうち、F側(前側)のピンボス部28aは、前記一対のスカート部26a、26bの前端部同士の間に配置されており、当該ピンボス部28aは、壁部27aを介してスカート部26a、26bの前端部に繋がっている。また、R側(後側)のピンボス部28bは、一対のスカート部26a、26bの後端部同士の間に配置されており、当該ピンボス部28bは、壁部27bを介して当該スカート部26a、26bの後端部に繋がっている。つまり、ピストン本体6aの下面視において、一対のピンボス28a、28bと一対のスカート部26a、26bとは壁部27a、27bを介して環状に連続している(図6参照)。
各ピンボス部28a、28bには、前後方向に貫通するピン孔29が設けられている。各ピンボス部28a、28bのピン孔29には、これらに跨った状態でピストンピン6b(図示省略)が挿通されており、このピストンピン6bを介してピストン本体6aとコンロッド9とが連結されている。
ピストンヘッド20の内部には、空洞部30が形成され、この空洞部30に粒子状充填材31が充填されている。以下、この点について詳述する。
図8及び図9は、ピストンヘッド20の空洞部30を示しており、同図では、空洞部30を中子の状態で間接的に示している。すなわち、ピストン本体6aは後述する第1の製造方法の通り、鋳造によって製造されるものであり、空洞部30は、中子によって形成される。そこで、図8及び図9については、図示の便宜上、空洞部30を中子に代替して図示している(説明は中子ではなく空洞部30として行う)。
空洞部30は、図3〜図9に示すように、ピストンヘッド20の中心を通って左右方向(ピストン本体6aの径方向)に延在するセンタ空洞部32(本発明の「第2空洞部」に相当する)と、このセンタ空洞部32の前後両側の位置で、センタ空洞部32に沿って左右方向に延びる一対のサイド空洞部36a、36b(本発明の「第1空洞部」に相当する)と、ピストンヘッド20の外縁部に沿って周方向に延在する環状空洞部40と、を含む。センタ空洞部32の長手方向両端および一対のサイド空洞部36a、36bの各々の長手方向両端は環状空洞部40に繋がっており、従って、センタ空洞部32および一対のサイド空洞部36a、36bと環状空洞部40とは互いに連通している。
センタ空洞部32は、上下方向にやや扁平な断面長方形の空洞である。センタ空洞部32は、平面視において、その長手方向両端から中央に向かって幅が漸増する形状を有しており、中央部には、その他の部分よりも幅が狭い狭幅部32aが設けられている。
センタ空洞部32は、冠面22とほぼ一定の間隔を保ちつつ、キャビティ23の下方を左右方向に通過するように設けられている。従って、センタ空洞部32は、正面視において(F側から視たときに)、全体的に上向きに凸となるアーチ形を成し、かつキャビティ23に対応する位置、具体的には、前記狭幅部32aとその両側の部分がキャビティ23に沿って下向きに凹むように屈曲した形状を有している(図7、図8参照)。
センタ空洞部32の内部には、図7及び図8に示すように、その長手方向の複数の位置に、上下方向に延びて当該センタ空洞部32の上壁面と下壁面とを繋ぐ補強用の複数の柱部33が設けられている。複数の柱部33の一つは、センタ空洞部32の長手方向中央部、すなわち冠面22の中央部に設けられており、その他の柱部33は、センタ空洞部32の長手方向に所定間隔で一列に並ぶように設けられている。
前記一対のサイド空洞部36a、36bは、前後方向に扁平な断面長方形の空洞である。当該一対のサイド空洞部36a、36bの各々両端は、センタ空洞部32の両端の近傍位置で環状空洞部40に繋がっている。
これら一対のサイド空洞部36a、36bのうち、F側(前側)のサイド空洞部36aは、平面視において、ピストンヘッド20の径方向前側に凸となるように湾曲してキャビティ23の前方を通過する形状を有している。これより、当該F側のサイド空洞部36aは、F側(前側)のピンボス部28aのピン孔29の上方に位置するように設けられている(図6、図7参照)。一方、R側(後側)のサイド空洞部36bは、平面視において、ピストンヘッド20の径方向後側に凸となるように湾曲してキャビティ23の後方を通過する形状を有している。これより、当該R側のサイド空洞部36bは、R側(後側)のピンボス部28bのピン孔29の上方に位置するように設けられている。
各サイド空洞部36a、36bは、図7に示すように、各ピンボス部28a、28bのピン孔29のほぼ軸方向中央部、詳しくはピン孔29の上壁面における軸方向のほぼ中央部の上方に位置するように設けられている。各サイド空洞部36a、36bの長手方向において、前記ピン孔29の中心Oに対応する位置には、図3に示すように、その他の部分から下方に突出して延びる延設部37が設けられている。これによりピン孔29の近傍であってその上方位置に各サイド空洞部36a、36bの一部(延設部37)が設けられている。
なお、サイド空洞部36a(36b)の内部には、前後方向に延びて当該サイド空洞部36a(36b)の前壁面と後壁面とを繋ぐ補強用の複数の柱部38が設けられている。これら複数の柱部38は、サイド空洞部36a(36b)をF側又はR側から視たときに、当該サイド空洞部36a(36b)のうち主にキャビティ23と重なる領域に集中して設けられている。すなわち、当該サイド空洞部36a(36b)のうちキャビティ23と重なる領域における柱部38の配設密度が、その他の部分の配設密度に比べて高くなっている(図8参照)。
前記空洞部30には、上記の通り粒子状充填材31が充填されている(図7に示す)。粒子状充填材31は金属粉末であり、本実施形態では、粒径(直径)30μmの真球状のアルミニウム合金製の粒子からなる金属粉末が空洞部30に充填されている。なお、粒子状充填材31の最適な充填密度については後に詳述する。
[3.作用効果]
上述した実施形態のピストン6によると、ピストン本体6aに空洞部30が設けられて当該空洞部30に粒子状充填材31が充填されているため、燃焼室7内での燃料の燃焼時(膨張行程)に伴い発生する振動がピストン6からコンロッド9へ伝達することが効果的に抑制される。すなわち、空洞部30に充填された粒子状充填材31の粒子同士の摩擦や、空洞部30の内壁面と粒子との摩擦によって振動エネルギーが熱エネルギーに変換されるため、このエネルギー変換(制振作用)によってピストン本体6aからピストンピン6bへの振動伝達が抑制される。この場合、空洞部30のうち、サイド空洞部36a、36bは、冠面22と各ピン孔29との間の位置、すなわちピストンヘッド20のうち燃焼による振動が主にピストンピン6bに伝達される経路内に配置されるため、ピストンピン6bへの振動の伝達が効果的に抑制される。そのため、実施形態のピストン6によると、当該ピストン6からコンロッド9への振動伝達が効果的に抑制されることとなる。
しかも、上記ピストン6は、従来中実構造とされるピストン本体6a(ピストンヘッド20)の一部に空洞部30が設けられて、当該空洞部30に粒子状充填材31が充填された構造であるため、従来の一般的なピストン(ピストン本体)と比較しても構造的に重量の増大を伴い難い。従って、実施形態のピストン6によれば、重量増大を抑制しながら、燃焼に伴うピストン6からコンロッド9への振動伝達を抑制すること、ひいてはエンジン1の振動を低減することが可能となる。
特に、実施形態のピストン本体6aは、サイド空洞部36a、36bに加えて、センタ空洞部32および環状空洞部40も含むため、より広い範囲に亘って燃焼に伴う冠面22からピストンピン6bへの振動伝達を抑制することができる。具体的には、冠面22にキャビティ23が形成され、当該キャビティ23に向かって燃料が噴射される実施形態のエンジン1では、燃焼室7(冠面22)のうち、主にキャビティ23を中心として燃焼が拡大する。そのため、キャビティ23に対応する位置にセンタ空洞部32が設けれ、当該センタ空洞部32に粒子状充填材31が充填された実施形態のピストン6の構造によると、燃焼に伴いキャビティ23で発生する振動がピストンピン6bに伝達することが効果的に抑制されることとなる。従って、燃焼に伴うピストン6からコンロッド9への振動伝達をより効果的に抑制することが可能となる。
しかも、キャビティ23の近傍に位置するサイド空洞部36a、36bやセンタ空洞部32には、各々補強用の複数の柱部33、38が設けられているため、ピストン本体6aに空洞部32、36a、36bを設けながらも、ピストン本体6aの耐久性が適切に確保される、という利点もある。
詳しく説明すると、燃焼室7での燃料の燃焼時には、冠面22に全体として下向きの燃焼圧が作用するとともに、キャビティ23の内部においては、図7中に白抜き矢印で示すように、キャビティ23の内底面に下向きの燃焼圧F1が、前後の内壁面には外向きの燃焼圧F2が作用する。しかし、センタ空洞部32は、キャビティ23に対応する中央部分が狭幅とされ(狭幅部32aが設けられ)、さらにセンタ空洞部32内には、その上壁面と下壁面とを繋ぐ補強用の複数の柱部33が設けられている。この構成により、燃焼圧F1によってセンタ空洞部32が変形する(押し潰される)ことが防止される。一方、サイド空洞部36a、36bについては、当該サイド空洞部36a、36b自体が上からの燃焼圧に対して変形し難い、前後方向に扁平な断面形状(断面長方形)とされた上で、さらにサイド空洞部36a、36b内にはその前壁面と後壁面とを繋ぐ補強用の複数の柱部38が設けられている。特に、これら複数の柱部38は、サイド空洞部36a、36bのうちキャビティ23と重なる領域に集中して設けられている。この構成により、燃焼圧F2によってサイド空洞部36a、36bが変形する(押し潰される)ことが防止される。
前記センタ空洞部32や前記サイド空洞部36a、36b内には粒子状充填材31が充填されているため、燃焼圧F1、F2による当該空洞部32、36a、36bの変形は比較的生じ難いと考えられるが、実施形態のピストン6によれば、柱部33、38が設けられる等の上記構成が採用されることにより、センタ空洞部32やサイド空洞部36a、36bの変形がより高度に防止される。従って、実施形態のピストン6によれば、ピストン本体6aにセンタ空洞部32やサイド空洞部36a、36bを設けながらも、ピストン本体6aの耐久性を適切に確保することが可能となる。
なお、上記ピストン6(ピストン本体6a)によると、空洞部30に充填された粒子状充填材31の粒子同士の摩擦や、空洞部30の内壁面と粒子との摩擦によって振動エネルギーが熱エネルギーに変換されるため、このエネルギー変換(制振作用)に伴い粒子同士の焼き付きが発生することが考えられる。しかし、上記エンジン1では、オイルジェット15によりピストン6に対してオイルが噴射されるため、粒子状充填材31が間接的に冷却され、これにより粒子同士の焼き付きが抑制される。従って、このピストン6によると、前記エネルギー変換(制振作用)によるピストン6からコンロッド9への振動伝達を長期的に抑制することが可能となる。
[4.比較試験]
図10は、本発明に係るピストン6の構成による振動の減衰効果(制振効果)を検証するための、モデル(試験片)を用いた試験の結果を示している。同図に示す試験結果は、ピストン本体に見立てたアルミニウム合金(A2017)製の試験片♯1〜♯4を用い、非拘束形制振複合はりの振動減衰特性試験方法(JISK7391)に基づき、試験片♯1〜♯4を振動させてその損失係数を測定した結果を示している。
ここで、試験片♯1は、アルミニウム合金からなる中実構造の直方体状の金属体であり、試験片♯2は、試験片♯1の金属体をラティス構造としたものである。試験片♯3は、試験片♯2の金属体の空洞部分に金属粉末(アルミニウム合金製の粒子状充填材)を充填したものである。試験片♯4は、試験片♯3において金属粉末の粒子形状を最適化したもの、すなわち最も損失係数が高くなる金属粉末を充填したものであり、具体的には、上記粒子状充填材31と同様の粒径(直径)30μmのアルミニウム合金の真球状の粒子からなる金属粉末を充填したものである。なお、試験結果は、試験片♯1の損失係数を基準として、試験片♯2〜4の損失係数を相対値で示しており、損失係数が大きいほど振動の減衰効果が大きいことを示している。
図10に示す通り、金属粉末が充填された試験片♯3、♯4は、単なる中実構造の試験片♯1に比べて損失係数が200倍〜500倍程度大きくなっており、試験片♯3、♯4によると高い減衰効果が得られていると言える。これは、金属粉末の粒子同士の摩擦や、金属体の内部壁面と粒子との摩擦によって振動エネルギーが熱エネルギーへ変換され、これにより試験片♯3、♯4の振動が減衰しているものと考察できる。
図11は、上記実施形態(実施例)に係るピストン本体6aと、従来の一般的な構造を有するピストンのピストン本体(比較例)とについて周波数応答解析試験を実施した結果を示している。横軸は周波数(Hz)であり、縦軸はイナータンス(dB)の大きさを示している。なお、試験は、ピストン本体の冠面にインパルスハンマで一定の加振力(N)を与え、ピンボス部で加速度(m/s)を測定し、その測定結果に基づきイナータンス(dB)を算出することにより行った。
図11に示す通り、実施例及び比較例共に5900Hz前後でイナータンスの値が最大となるが、実施例のピストン本体は、比較例のピストン本体に比べてイナータンスの最大値が低くなっている。具体的には、7%〜9%程度低くなっている。この結果からも、粒子状充填材31が充填された上記実施形態のピストン本体6aによると、上述した振動エネルギーから熱エネルギーへの変換による制振効果によって、ピストン本体6aからピストンピン6bへの振動伝達が効果的に抑制されることが考察できる。
[5.製造方法]
次に、ピストン本体6aの製造方法について説明する。上述したピストン本体6aの製造方法としては、以下の第1〜第3の製造方法が好適である。
<第1の製造方法>
第1の製造方法は、ピストン本体6aを鋳造により製造する方法であり、最も基本的な製造方法である。この方法は、準備工程、注湯工程、製品取出工程及び充填材充填工程と、を含む。すなわち、まず、ピストン本体6aの外観を形成するための鋳型と、空洞部30を形成するための中子とを準備する(準備工程)。中子としては、空洞部30の説明で用いた図8に示すような中子を準備する。次に、中子をセットした鋳型に溶融したアルミニウム合金(溶湯)を注湯して凝固させた後(注湯工程)、鋳物、すなわちピストン本体を鋳型から取出し、さらに当該ピストン本体から中子を除去することにより空洞部を形成し(製品取出工程)、当該空洞部に、粒子状充填材、すなわちアルミニウム合金の真球状の粒子からなる金属粉末を充填する(充填材充填工程)。なお、ピストン本体には、鋳造時に前記空洞部と外部とを連通する通路が成型されるようにておき、この通路を通じて中子の除去及び粒子状充填材の充填を行う。粒子状充填材の充填後は、当該通路を金属材料(アルミニウム合金)で溶接して塞ぐ。これにより粒子状充填材31が充填された上記ピストン本体6aが完成する。
<第2の製造方法>
第2の製造方法は、ピストン本体6aを鋳造により製造する点で第1の製造方法と共通する。しかし、第2の製造方法では、粒子状充填材が封入された充填材封入体を予め製造しておき(封入体製造工程)、この充填材封入体をインサート部品としてピストン本体6aをインサート鋳造(成型)する点で第1の製造方法と相違する。すなわち、第2の製造方法は、前記封入体製造工程と、注湯工程と、製品取出工程と、を含む。
前記封入体製造工程での充填材封入体の製造は、金属粉末積層造形機(例えば、金属3Dプリンタ)を用いて行うのが好適である。具体的には、金属粉末積層造形機によって、図8に示したような中子であって内部に金属粉末(アルミニウム合金の真球状の粒子からなる粉末)が封入されたものを層状に一層ずつ順に形成して、これらの層を積み重ねる。すなわち、上下動可能な造形ベース上に前記金属粉末を敷く工程と、造形ベース上に敷かれた金属粉末をレーザ光でスキャンすることにより金属粉末を溶融、固化させる工程と、造形テーブルを一定量だけ下降させる工程とをこの順番で繰り返す。その際、前記空洞部30に相当する箇所にはレーザ光を照射することなく金属粉末をそのまま残存させる。これにより、内部に金属粉末(すなわち粒子状充填材31)が封入された前記中子と同形状の充填材封入体を製造する。
注湯工程では、ピストン本体6aの外観を形成するための鋳型と前記充填材封入体を準備し、鋳型に充填材封入体をインサート部品としてセットして当該鋳型にアルミニウム合金(溶湯)を注湯して凝固させ、製品取出工程では、充填材封入体が内包された鋳物、すなわちピストン本体を鋳型から取出す。これにより粒子状充填材31が充填された空洞部30を有する上記ピストン本体6aが完成する。
なお、封入体製造工程における充填材封入体の製造方法は、金属粉末積層造形機を用いた方法には限らない。例えば、図8に示したような中子と同形状の鋳物であってかつ中空のものを鋳造し、この鋳物に粒子状充填材、すなわちアルミニウム合金製の新球状の粒子からなる金属粉末を充填することにより、前記充填材封入体を製造するようにしてもよい。
<第3の製造方法>
第3の製造方法は、金属粉末積層造形機(例えば、金属3Dプリンタ)を用いてピストン本体6aの全体を造形する方法である。例えばピストン本体6aの下端部(冠面22とは反反対側の端部)から層状に一層ずつ順に形成して、これらの層を積み重ねる。すなわち、上下動可能な造形ベース上に前記金属粉末(アルミニウム合金の真球状の粒子からなる粉末)を敷く工程と、造形ベース上に敷かれた金属粉末をレーザ光でスキャンすることにより金属粉末を溶融、固化させる工程と、造形テーブルを一定量だけ下降させる工程とをこの順番で繰り返す。その際、前記空洞部30に相当する箇所にはレーザ光を照射することなく金属粉末をそのまま残存させる。これにより、内部に金属粉末、すなわち粒子状充填材31が封入された空洞部30を備える上記ピストン本体6aを製造することができる。この製造方法の場合には、ピストン本体6aと空洞部30に充填される粒子状充填材31とが同一材料で構成されることとなる。
<第4の製造方法>
第4の製造方法は、ピストン本体6aのうち、例えば図13中に破線で示すように、空洞部30を上下に分割するラインLに沿った2つの部分、すなわち冠面22を含む上側の第1部分P1と、それよりも下側の第2部分P2とを別個に形成し一体化する方法である。
具体的には、(A)第1部分P1と第2部分P2とを別個独立に製造した後、これら第1部分P1と第2部分P2とを溶接して一体化する方法と、(B)第2部分P2をまず製造した後、第2部分P2をインサート部品として第1部分P1をインサート鋳造(成型)する方法とがあり、何れの方法であってもよい。この場合、(A)方法における両部分P1、P2の製造、および(B)方法における第2部分P2の製造は、鋳造であってもよいし、金属粉末積層造形機(例えば、金属3Dプリンタ)を用いた造形であってもよく、ピストン本体6aの具体的な形状、構造に基づき適宜選定すればよい。例えば、比較的形状や構造が複雑な第2部分P2を金属粉末積層造形機を用いて製造し、第1部分P1を鋳造により製造するようにすれば、金属粉末積層造形機を用いた製造時間を短縮することが可能となる。そのため、ピストン本体6aを合理的に効率良く製造することができる。なお、(B)方法の場合には、第2部分P2に対する第1部分P1の密着性を高めるべく、第2部分P2のうち、第1部分P1との接合面に予めサンドブラスト等のブラスト処理(ブラスト加工)を施しておくのが好適である。
(A)方法の場合には、上述した第1の製造方法に準じて粒子状充填材を充填することができる。例えば、空洞部30と外部とを連通する通路を第2部分P2に形成しておき、この通路を通じて粒子状充填材を充填する。また、(B)方法の場合には、第3の製造方法に準じて粒子状充填材を充填することができる。すなわち、粒子状充填材が封入された充填材封入体を予め製造しておき、この充填材封入体と第2部分P2とをインサート部品として第1部分P1を鋳造することにより、粒子状充填材を充填することができる。
第4の製造方法において、ピストン本体6aを第1部分P1と第2部分P2とに分ける前記ラインLの位置は、図13に示される位置に限定されるものではない。しかし、ラインLの位置は、空洞部30の少なくとも一部とピンボス部28a、28bとを第2部分が含むようにピストン本体6aを上下に分割する位置に設定されているのが好ましい。
なお、第1部分P1を製造する工程、第2部分P2を製造する工程、および、第1部分P1と第2部分P2とを一体化する工程は、それぞれ、本発明の第1部分製造工程、第2部分製造工程および一体化工程に相当する。従って、第2部分P2をインサート部品として第1部分P1をインサート鋳造(成型)する上記(B)方法では、第1部分製造工程と一体化工程とが一つの工程で実行されると言うことができる。
[6.変形例等]
以上、本発明の実施形態に係るピストン6及びその製造方法について説明したが、上記ピストン6及びその製造方法は、本発明に係るエンジンのピストン及びその製造方法の好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成や製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような態様も採用可能である。
(1)実施形態では、ピストン本体6aの空洞部30に充填される粒子状充填材31として、粒径(直径)30μmの真球状のアルミニウム合金の粒子からなる金属粉末が充填されているが、金属粉末の粒子の形状や粒径はこれに限定されるものではない。例えば、楕円形状の粒子からなる金属粉末を適用することも可能である。
図12は、粒子状充填材31の粒子の形状及び粒径と損失係数との関係を示した図(グラフ)である。同図は、ピストン本体に見立てたアルミニウム合金(A2017)製の容器に、アルミニウム合金の金属粉末を充填した試験体を用い、非拘束形制振複合はりの振動減衰特性試験方法(JISK7391)に基づき、当該試験体を振動させてその損失係数を測定した結果を示している。試験は、真球状の粒子からなる金属粉末と、楕円形状の粒子からなる金属粉末との2種類について、各々粒子の粒径を変えて実施した。
図12に示す通り、真球状の粒子および楕円形状の粒子の何れの場合も、相対的に粒径が大きくなるほど、損失係数が相対的に大きくなる傾向がある。なお、粒径に拘わらず、真球状の粒子の方が楕円形状の粒子に比べて相対的に損失係数が大きくなる傾向があるが、これは真球状の粒子の方が楕円形状の粒子に比べて運動し易く、その分、振動エネルギーから熱エネルギーへの変換が促進され易いためと考えられる。
同図に示す通り、真球状の粒子からなる金属粉末では、粒径が10μm〜100μmの範囲で損失計数が高く、特に粒径が30μmの場合に最も損失係数が大きい。従って、真球状の粒子からなる金属粉末を粒子状充填材31として適用する場合には、粒径が10μm〜100μmの範囲の粒子、より好ましくは粒径30μm程度の粒子からなる金属粉末を粒子状充填材31として適用するのが好適と言える。
図14は、空洞部30における粒子充填材31の充填密度(%)と損失係数との関係を示した図(グラフ)である。同図は、図12の結果を得た試験と同様に、ピストン本体に見立てたアルミニウム合金(A2017)製の容器に、アルミニウム合金の金属粉末を充填した試験体を用い、非拘束形制振複合はりの振動減衰特性試験方法(JISK7391)に基づき、当該試験体を振動させてその損失係数を測定した結果を示している。試験は、真球状の粒径30μmの粒子からなる金属粉末と真球状の粒径100μmの粒子からなる金属粉末とについて、それぞれ、大小強さの異なる加振力を与えて実施した。
加振力が小さい場合には、図14中に破線で示す通り、粒径の差による損失係数への影響は比較的少なく、粒径30μm及び粒径100μmのいずれの金属粉末もほぼ充填密度50%での損失係数が最大となり、充填密度40%〜60%の範囲での損失係数がそれ以外の範囲の損失係数に比べて大きい。
一方、加振力が大きい場合には、図14中に実線で示す通り、粒径30μmの金属粉末では、加振力が小さい場合と同様にほぼ充填密度50%における損失係数が最大で、充填密度40%〜60%の範囲の損失係数がそれ以外の範囲の損失係数に比べて大きい。これに対して、粒径100μmの金属粉末では、充填密度35%においける損失係数が最大で、充填密度25%〜40%の範囲の損失係数がそれ以外の範囲の損失係数に比べて大きい。
以上のことから、真球状の粒子からなる金属粉末を粒子状充填材31として適用する場合には、空洞部30における粒子充填材31の充填密度を25%〜60%の範囲で設定するのが振動低減効果を得る上で好適と言える。
(2)実施形態では、アルミニウム合金からなる粒子状充填材31が適用されているが、粒子状充填材31の材質はアルミニウム合金に限定されるものではなく、その他の材料からなる粒子状充填材31を適用することもできる。例えば、銅などアルミニウム合金よりも熱伝導率が大きい金属材料かなる粒子状充填材31を適用することも可能であり、この場合には、振動エネルギーから熱エネルギーへの変換が促進され易くなり、より高度な振動の減衰効果が期待できる。また、セラミックからなる粒子状充填材31を適用することも可能であり、この場合には、振動の減衰効果に加えて、断熱効果を得ることが期待できる。そのため、例えばエンジンの暖機運転時やリーン燃焼運転時の熱損失を低減する上で有用なものとなる。
なお、空洞部30に充填される粒子状充填材31の粒子の材質は一種類に限定されるものではなく、材質や形状の異なる2種類以上の粒子からなる粒子状充填材31を適用することも可能である。例えばアルミニウム合金の粒子と、セラミック又は/及び銅の粒子とが混合された粒子状充填材31を適用することも可能である。
(3)実施形態では、空洞部30は、センタ空洞部32と、一対のサイド空洞部36a、36bと、環状空洞部40とを含み、これらが連通した構成であるが、空洞部30の形状はこれに限定されるものではない。例えば、センタ空洞部32と、一対のサイド空洞部36a、36bと、環状空洞部40とが互いに分離独立したものであってもよい。この場合、少なくとも一部の空洞部に充填される粒子状充填材31として、他の空洞部の粒子状充填材31とは異なる種類(材質)の粒子状充填材31が充填されるようにしてもよい。
要するに、空洞部30は、ピストン本体6aの形状等を考慮して、振動の伝達が効果的に抑制される位置に設けられていればよく、その場合に充填される粒子状充填材31の材質も、空洞部毎に最適なものを適用すればよい。
1 エンジン
2 気筒(シリンダ)
3 シリンダブロック
4 シリンダヘッド
5 クランクケース
6 ピストン
6a ピストン本体
6b ピストンピン
7 燃焼室
8 クランク軸
9 コネクティングロッド(コンロッド)
10 吸気ポート
11 排気ポート
20 ピストンヘッド
22 冠面
23 キャビティ
24 外周面
28a、28b ピンボス部
29 ピン孔
30 空洞部
31 粒子状充填材
32 センタ空洞部(第2空洞部)
36a、36b サイド空洞部(第1空洞部)
40 環状空洞部

Claims (12)

  1. シリンダの内壁面に沿って当該シリンダの軸方向に往復移動するピストン本体と、当該ピストン本体とコネクティングロッドとを連結するピストンピンとを備えた、エンジンのピストンであって、
    前記ピストン本体は、
    燃焼室の壁面の一部を形成する冠面を備えたピストンヘッドと、
    前記ピストンヘッドの反冠面側に各々繋がって当該ピストンヘッドの径方向に含まれる第1方向に間隔を隔てて並び、かつ当該第1方向に貫通する前記ピストンピン用のピン孔を各々備えた一対のピンボス部と、を備え、
    前記ピストンヘッドは、
    前記軸方向における前記冠面と各ピン孔との間の位置において、前記軸方向および前記第1方向との双方に直交する第2方向に各々延在する一対の空洞部と、
    当該一対の空洞部に充填された粒子状充填材と、を含む、ことを特徴とするエンジンのピストン。
  2. 請求項1に記載のエンジンのピストンにおいて、
    前記第2方向における前記空洞部の両端は、各々前記ピストンヘッドの外縁部に位置する、ことを特徴とするエンジンのピストン。
  3. 請求項1又は2に記載のエンジンのピストンにおいて、
    前記空洞部内には、前記第1方向に沿って延びる柱部が形成されている、ことを特徴とするエンジンのピストン。
  4. 請求項1乃至3の何れか一項に記載のエンジンのピストンにおいて、
    前記一対の空洞部を各々第1空洞部と定義したときに、
    前記ピストンヘッドは、
    前記冠面に形成されたキャビティと、
    前記一対の第1空洞部の間の位置であって少なくとも前記キャビティに対応する位置に設けられた第2空洞部と、
    前記第2空洞部に充填された粒子状充填材と、を含む、ことを特徴とするエンジンのピストン。
  5. 請求項1乃至4の何れか一項に記載のエンジンのピストンにおいて、
    前記ピストンヘッドは、
    その外縁に沿って周方向に延びる環状空洞部と、
    前記環状空洞部に充填された粒子状充填材と、を含む、ことを特徴とするエンジンのピストン。
  6. 請求項1乃至5の何れか一項に記載のエンジンのピストンにおいて、
    前記粒子状充填材の粒子の形状は球状である、ことを特徴とするエンジンのピストン。
  7. 請求項6に記載のエンジンのピストンにおいて、
    前記粒子の粒径は10μm〜100μmである、ことを特徴とするエンジンのピストン。
  8. 請求項1乃至7の何れか一項に記載のエンジンのピストンにおいて、
    前記空洞部における粒子状充填材の充填密度は25%〜60%である、ことを特徴とするエンジンのピストン。
  9. 請求項1乃至8の何れか一項に記載のピストン本体を製造する方法であって、
    鋳型、および前記空洞部を形成するための中子を準備する準備工程と、
    前記鋳型に中子をセットして当該鋳型に金属材料を注湯する注湯工程と、
    前記鋳型からピストン本体を取出し、さらに当該ピストン本体から前記中子を除去することにより前記空洞部を形成する製品取出工程と、
    前記空洞部に、前記粒子状充填材を充填する充填材充填工程と、を含む、ことを特徴とするピストンの製造方法。
  10. 請求項1乃至8の何れか一項に記載のピストン本体を製造する方法であって、
    前記粒子状充填材が封入された充填材封入体を製造する封入体製造工程と、
    鋳型、および前記充填材封入体を準備し、前記鋳型に前記充填材封入体をインサート部品としてセットして当該鋳型に金属材料を注湯する注湯工程と、
    前記鋳型からピストン本体を取出す製品取出工程と、を含む、ことを特徴とするピストンの製造方法。
  11. 請求項1乃至8の何れか一項に記載のピストン本体を製造する方法であって、
    造形ベース上に金属粉末を敷く工程と、造形ベース上に敷かれた金属粉末をレーザ光でスキャンすることにより金属粉末を溶融、固化させる工程と、前記造形テーブルを一定量だけ下降させる工程とをこの順番で繰り返すことにより、前記ピストン本体を前記一定量ずつ層状に一層ずつ順に造形するとともに、当該造形中に、前記空洞部に相当する箇所にレーザ光を照射することなく金属粉末をそのまま残存させることにより、当該金属粉末を前記粒子状充填材として封入した前記空洞部を当該ピストン本体の内部に設ける、ことを特徴とするピストンの製造方法。
  12. 請求項1乃至8の何れか一項に記載のピストン本体を製造する方法であって、
    前記ピストン本体の一部であって前記冠面を含む第1部分を製造する第1部分製造工程と、
    前記ピストン本体のうち前記第1部分以外の部分であって、前記空洞部の少なくとも一部を形成する部分と前記一対のピストンボス部とを含む第2部分を製造する第2部分製造工程と、
    前記第1部分と前記第2部分とを一体化する一体化工程と、を含む、ことを特徴とするピストンの製造方法。
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