JP2020185763A - セラミックグリーンシート製造用離型フィルム - Google Patents

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【課題】セラミックグリーンシートを薄膜化させ生産量をアップさせた場合でも、離型フィルムからの粒子の脱落、離型フィルムロールの巻ズレ、巻出し帯電の防止全てを具備させることができ、付着異物またはキズ起因のセラミックグリーンシートのピンホールを抑制できる優れたセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを提供すること。【解決手段】ポリエステルフィルムを基材とし、前記基材の一方の表面上に離型塗布層を有し、かつ、もう一方の表面上に無機粒子を実質的に含有していない易滑塗布層を有し、易滑塗布層の表面自由エネルギーが25mJ/m2以上、45mJ/m2以下であるセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、セラミックグリーンシート製造用離型フィルム に関する。更に詳しくは、離型フィルムからの粒子の脱落、離型フィルムロールの巻ズレ、巻出し帯電を全て防止することができるセラミックグリーンシート製造用離型フィルムに関する。
従来、基材フィルムの離型剤層が設けられている面とは反対の面(裏面)の表面粗度を比較的粗くすることによりセラミックグリーンシート製造用離型フィルムが巻かれた状態で保管されたときにセラミックグリーンシート製造用離型フィルムの表裏が貼り付く(ブロッキング)等の不具合を解消するという技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、かかる従来技術は突起が大きいため、ピンホールや部分的な厚みばらつきが生じるという問題点があった。
そこで突起の高さを低減させるために裏面の突起を塗布層により埋めることによりセラミックグリーンシートにピンホールや部分的な厚みのばらつきが発生するのを防止しようとする技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、かかる従来技術によれば、突起密度が低い状態で、突起高さが低くなるためフィルムの滑り性が悪くなる。滑り性を向上させるために、表面自由エネルギーの低い塗布層が用いられているが、表面自由エネルギーを低くしすぎると滑り性が良好になりすぎ、巻ズレなどの問題が発生する場合があった。
突起高さの低減と突起密度を高めることを両立する方策として、粒子を含有しないPET基材に粒子を含有する易滑塗布層を設ける方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、セラミックグリーンシート生産量をアップさせた場合、易滑塗布層に含まれる粒子が徐々に脱落し工程汚染が発生する場合があった。また近年のセラミックコンデンサ生産量アップに伴い、加工速度を増加させる必要が生じており、加工速度を増加させた場合にフィルムロール巻出し時の帯電量が増加することで環境異物の付着量が増加し、セラミックグリーンシート作成時にピンホールが発生する場合もあった。
特開2003−203822号公報 特開2014−144636号公報 国際公開第2019/039264号
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、セラミックグリーンシートを薄膜化させ生産量をアップさせた場合でも、離型フィルムからの粒子の脱落、離型フィルムロールの巻ズレ、巻出し帯電を全て防止できる優れたセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを提供することにある。
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. ポリエステルフィルムを基材とし、前記基材の一方の表面上に離型塗布層を有し、かつ、もう一方の表面上に無機粒子を実質的に含有していない易滑塗布層を有し、前記易滑塗布層の表面自由エネルギーが25mJ/m2以上、45mJ/m2以下であるセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
2. 前記ポリエステルフィルム基材が無機粒子を実質的に含有していない表面層Aを有し、前記表面層A上に離型塗布層を有する上記第1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
3. 前記ポリエステルフィルム基材が無機粒子を実質的に含有していない表面層A、及び前記ポリエステルフィルム基材の表面層Aの反対側に粒子を含有する表面層Bを有し、前記表面層A上に離型塗布層を有し、前記表面層B上に無機粒子を実質的に含有していない易滑塗布層を有する上記第1または第2に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
4. 上記第1〜第3のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いるセラミックグリーンシートの製造方法。
5. 製造するセラミックグリーンシートの厚みが、0.2μm以上1.5μm以下である上記第4に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
6. 上記第4または第5に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用するセラミックコンデンサの製造方法。
本発明によれば、セラミックグリーンシートを薄膜化させ生産量をアップさせた場合でも、離型フィルムからの粒子の脱落、離型フィルムロールの巻ズレ、巻出し帯電を全て防止できる優れたセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを提供することが可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム(以下、単に離型フィルムということがある)は、基材フィルムであるポリエステルフィルムの片面に離型塗布層、もう一方の面に粒子を含まない易滑塗布層を有する離型フィルムである。
(基材フィルム)
本発明において好ましく基材として用いられるフィルムとしては、ポリエステル樹脂より構成されるフィルムであり、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選ばれる少なくとも1種を含むポリエステルフィルムが好ましい。また、前記のようなポリエステルのジカルボン酸成分、又は、ジオール成分の一部として、第三成分モノマーが共重合されたポリエステルからなるフィルムであってもよい。これらのポリエステルフィルムの中でも、物性とコストのバランスからポリエチレンテレフタレートフィルムが最も好ましい。
また、前記のポリエステルフィルムは、単層であっても複層であってもかまわない。また、本発明における所望の効果を奏する範囲内であれば、これらの各層には、必要に応じて、ポリエステル樹脂中に各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐光剤、ゲル化防止剤、有機湿潤剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
(易滑塗布層)
本発明の離型フィルムは、上記のようなポリエステル製の基材フィルムの一方の表面上に易滑塗布層を有するものである。易滑塗布層中には、少なくともバインダー樹脂が含まれていることが好ましく、実質的に無機粒子が含まれていないことが好ましい。無機粒子を含有していないことで、セラミックコンデンサ作成工程中での離型フィルムからの無機粒子の脱落が発生しないため好ましい。この「無機粒子を実質的に含有しない」とは、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に無機粒子を易滑塗布層中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、易滑塗布層中に混入する場合があるためである。
(易滑塗布層中のバインダー樹脂)
本発明における易滑塗布層を構成するバインダー樹脂としてはアクリル樹脂が含まれていることが好ましい。アクリル樹脂は、分子中に水酸基、及びカルボキシル基を有するアクリル樹脂であることが好ましい。水酸基を有する構成ユニットは、全構成ユニット100モル%中、20〜90モル%含まれていることが更に好ましい。水酸基を有する構成ユニットが20モル%以上であると、アクリル樹脂の水溶性を適度に保つことができ好ましい。一方、90モル%以下であると、得られる塗膜のガラス転移温度(Tg)が低くなりすぎず好ましい。
水酸基をアクリル樹脂に導入するには、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有するモノマーや、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのγ−ブチロラクトンやε−カプロラクトンの開環付加物等を共重合成分として用いるとよい。中でも、水溶性を阻害しない点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、これらは2種以上併用してもよい。言うまでもないが、本発明でいうアクリル樹脂とはメタクリル樹脂を含んでいる。
アクリル樹脂の水酸基価は2mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上である。アクリル樹脂の水酸基価が2mgKOH/g以上であれば、アクリル樹脂の水溶性が良好となり好ましい。
アクリル樹脂の水酸基価は250mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは230mgKOH/g以下、更に好ましくは200mgKOH/g以下である。アクリル樹脂の水酸基価が250mgKOH/g以下であれば、得られる塗膜のガラス転移温度(Tg)が低くなりすぎず好ましい。
本発明で用いるアクリル樹脂は水酸基に加えて、カルボキシル基を有する樹脂であることが好ましい。カルボキシル基を有することで、架橋剤との架橋構造を形成することと、水溶性を容易に付与することが可能となる。例として(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等のカルボキシ基を含有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基を含有するモノマーが挙げられる。
カルボキシル基を有するモノマーは、アクリル樹脂の全構成ユニット100モル%中、4モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。4モル%以上であると、易滑塗布層に架橋構造を形成すること、及び水溶性を付与することが容易となり好ましい。カルボキシル基を有するモノマーは、65モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましい。65モル%以下であると、得られる塗膜のガラス転移温度(Tg)が後述する好適範囲に対して高くなりすぎず、造膜性や、インラインコーティングにおける延伸適正が良好であり好ましい。
良好な水溶性を発現させるためには、アクリル酸やメタクリル酸の共重合によってアクリル樹脂中に導入されたカルボキシル基を中和することが好ましい。塩基性の中和剤としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール等のアミン化合物や、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機系塩基性物質等があり、このうち、中和剤の揮発のしやすさ、架橋構造の形成のしやすさのためには、中和剤としてアミン化合物を使用することが好ましい。なかでも、脱離しやすくカルボキシル基の反応性が良好となる点からアンモニアが最も好ましい。また中和率としては、30モル%〜95モル%であることが好ましく、より好ましくは40モル%〜90モル%である。中和率が30モル%以上の場合、アクリル樹脂の水溶性が十分であり、塗布液調製の際にアクリル樹脂の溶解が容易であり、乾燥後の塗膜面が白化したりするおそれがなく好ましい。一方、中和率が95モル%以下であると、水溶性が高すぎず、塗布液調製においてアルコール等の混合が容易となり好ましい。
アクリル樹脂の酸価は40mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは50mgKOH/g以上、更に好ましくは60mgKOH/g以上である。アクリル樹脂の酸価が40mgKOH/g以上であれば、オキサゾリン架橋剤もしくはカルボジイミド架橋剤との架橋点が増加するので、より架橋密度の高い強固な塗膜が得られるため好ましい。
アクリル樹脂の酸価は400mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは350mgKOH/g以下、更に好ましくは300mgKOH/g以下である。アクリル樹脂の酸価が400mgKOH/g以下であれば、得られる塗膜のガラス転移温度(Tg)が高くなりすぎず好ましい。
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は50℃以上であることが好ましく、より好ましくは55℃以上、更に好ましくは60℃以上である。アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)が50℃以上であると、易滑塗布層の硬度が適度に高くなり好ましい。
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は110℃以下であることが好ましく、より好ましくは105℃以下、更に好ましくは100℃以下である。アクリル樹脂のガラス転移温度が110℃以下であると、易滑塗布層を塗工した後の延伸工程で、塗膜にクラックが発生せず均一に延伸されるため好ましい。
Tgを上記範囲にするために共重合されるTg調整用モノマーとしては、(メタ)アクリル系モノマーや、非アクリル系ビニルモノマーが利用できる。(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、n−メチロールアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等の窒素含有アクリル系モノマー;メタクリル酸ビニル等が挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
また、非アクリル系ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン(m−メチルスチレンとp−メチルスチレンの混合物)、クロロスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、ケイ皮酸ビニル等のビニルエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニルモノマー;が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
ガラス転移温度(Tg)調整用のモノマーは、水酸基含有モノマーとカルボキシル基含有モノマーの適正量を決めてから、その残部とすることが好ましい。共重合体のTgは、下記のFoxの式で求められる。
n:各モノマーの質量分率(質量%)
Tgn:各モノマーのホモポリマーのTg(K)
Tg調整のために共重合されるモノマーとして、長鎖アルキル基など表面自由エネルギーを低下させる成分が導入されていることが好ましい。長鎖アルキル基を導入したアクリル樹脂としては、アクリル樹脂の側鎖に炭素数が8〜20程度のアルキル基を有するものが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステルを主な繰り返し単位とする重合体であり、エステル交換された部分に炭素数8〜20の長鎖アルキル基を含む共重合体も好適に使用することができる。
長鎖アルキル基を有するモノマーは、アクリル樹脂の全構成ユニット100モル%中、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましい。50モル%以下であると、表面自由エネルギーが低くなりすぎず好ましい。
長鎖アルキル基を有するモノマーは、アクリル樹脂の全構成ユニット100モル%中、3モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましい。3モル%以上であると、表面自由エネルギーが高くなりすぎず好ましい。
本発明で使用するアクリル樹脂は、公知のラジカル重合によって得ることができる。乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等、いずれも採用可能である。取り扱い性の点からは、溶液重合が好ましい。溶液重合に用いることのできる水溶性有機溶媒としては、エチレングリコールn−ブチルエーテル、イソプロパノール、エタノール、n−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−オキソラン、メチルソロソルブ、エチルソロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらは水と混合して用いてもよい。
重合開始剤としてはラジカルを発生する公知の化合物であればよいが、例えば、2,2−アゾビス−2−メチル−N−2−ヒドロキシエチルプロピオンアミド等の水溶性アゾ系重合開始剤が好ましい。重合の温度や時間等は適宜選択される。
アクリル樹脂の質量平均分子量(Mw)は、10,000〜200,000程度が好ましい。より好ましい範囲は、20,000〜150,000である。Mwが10,000以上の場合、テンター内での熱分解のおそれがなく好ましい。Mwが200,000以下であると、塗布液の粘度の著しい上昇がなく、塗工性が良好であり好ましい。
本発明における易滑塗布層のバインダーとして、アクリル樹脂以外に他のバインダー樹脂を併用してもよい。他のバインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル系樹脂(ポリビニルアルコール等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。
アクリル樹脂の易滑塗布層中の含有量としては、全固形分中、20質量%以上95質量%以下が好ましい。より好ましくは30質量%以上90質量%以下である。20質量%以上であれば、架橋成分であるカルボキシル基が少なくなりすぎず、架橋密度が低くならないため好ましい。95質量%以下であれば、架橋する対象である架橋剤の量が少なくなりすぎず、架橋密度が低くならないため好ましい。
(架橋剤)
本発明において、易滑塗布層中に架橋構造を形成させるために、易滑塗布層はオキサゾリン系架橋剤またはカルボジイミド系架橋剤から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を含有していることが好ましい。オキサゾリン系架橋剤またはカルボジイミド系架橋剤を含有させることにより、PET基材との密着性を向上させること、及びアクリル樹脂のカルボキシル基との架橋を促進させることにより易滑層の塗膜強度を向上させることができ、結果として離型フィルムロールを巻きだした時の巻出し帯電を抑制することができる。また他の架橋剤を併用してもよく、併用できる具体的な架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系、シラノール系等が挙げられる。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用することができる。
オキサゾリン基を有する架橋剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体を、必要に応じその他の重合性不飽和単量体とともに従来公知の方法(例えば溶液重合、乳化重合等)で共重合させることにより得られるオキサゾリン基を有する重合体等を挙げることができる。
オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
その他の重合性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜24個のアルキルまたはシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数2〜8個のヒドロキシアルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
その他の重合性不飽和単量体は、得られるオキサゾリン基を有する架橋剤を水溶性架橋剤として、他樹脂との相溶性、濡れ性、架橋反応効率等を向上させる観点から、親水性単量体であることが好ましい。親水性単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールのモノエステル化合物等のポリエチレングリコール鎖を有する単量体、2−アミノエチル(メタ)アクリレートおよびその塩、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、水への溶解性の高いメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールのモノエステル化合物等のポリエチレングリコール鎖を有する単量体が好ましい。
オキサゾリン基を有する架橋剤は、そのオキサゾリン基含有量が3.0〜9.0mmol/gであることが好ましい。より好ましくは4.0〜8.0mmol/gの範囲内である。4.0〜8.0mmol/gの範囲内であれば、適度な架橋構造を形成できるため好ましい。
カルボジイミド系架橋剤としては、モノカルボジイミド化合物やポリカルボジイミド化合物が挙げられる。モノカルボジイミド化合物としては、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド等を挙げることができる。ポリカルボジイミド化合物としては、従来公知の方法で製造したものを使用することができる。例えば、ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネート末端ポリカルボジイミドを合成することにより製造することができる。
ポリカルボジイミド化合物の合成原料であるジイソシアネートとしては、例えばトルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類が挙げられる。黄変の問題から、芳香族脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類、脂肪族ジイソシアネート類が好ましい。
また、上記ジイソシアネートは、モノイソシアネート等の末端イソシアネートと反応する化合物を用いて分子を適当な重合度に制御して使用しても差し支えない。このようにポリカルボジイミドの末端を封止してその重合度を制御するためのモノイソシアネートとしては、例えばフェニルイソシアネート、トルイレンイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられる。また、この他にも末端封止剤としてOH基、−NH2基、COOH基、SO3H基を有する化合物を使用することができる。
ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応は、カルボジイミド化触媒の存在下に進行する。触媒としては、例えば1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドや、これらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシドなどが挙げられ、反応性の面から3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドが好ましい。なお、上記触媒の使用量は触媒量とすることができる。
上記したモノ又はポリカルボジイミド化合物は、水性塗料への配合時に均一な分散状態に保たれることが望ましく、このために適切な乳化剤を用いて乳化加工して乳濁液として使用したり、ポリカルボジイミド化合物の分子構造内に親水性のセグメントを付加して自己乳化物の形態で、あるいは自己溶解物の形態で塗料に配合することが好ましい。
本発明で用いられるカルボジイミド系架橋剤は、水分散性、水溶性が挙げられる。他の水溶性樹脂との相溶性がよく、易滑塗布層の架橋反応効率を向上させることから、水溶性が好ましい。カルボジイミド化合物を水溶性にするためには、イソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネート末端ポリカルボジイミドを合成した後、更にイソシアネート基との反応性を有する官能基を持つ親水性部位を付加することにより製造することができる。
親水性部位としては、(1)ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩やジアルキルアミノアルキルアミンの四級アンモニウム塩など、(2)反応性ヒドロキシル基を少なくとも1個有するアルキルスルホン酸塩など、(3)アルコキシ基で末端封鎖されたポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(エチレンオキサイド)とポリ(プロピレンオキサイド)との混合物などが挙げられる。カルボジイミド化合物は上記親水性部位を導入した場合は(1)カチオン性、(2)アニオン性、(3)ノニオン性となる。なかでも、他の水溶性樹脂のイオン性に関係なく、相溶できるノニオン性が好ましい。
架橋剤の易滑塗布層中の含有量としては、全固形分中、5質量%以上80質量%以下が好ましい。より好ましくは10質量%以上70質量%以下である。5質量%以上であれば、塗布層の樹脂の架橋密度が低下しないことから好ましい。80質量%以下であれば、架橋する対象であるアクリル樹脂のカルボキシル基の量が少なくなりすぎず、架橋密度が低くならないため好ましい。
(易滑塗布層中の添加剤)
易滑塗布層に他の機能性を付与するために、塗布外観を損なわない程度の範囲で、各種の添加剤を含有させても構わない。前記添加剤としては、例えば、蛍光染料、蛍光増白剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、抑泡剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
易滑塗布層には、塗布時のレベリング性の向上、塗布液の脱泡を目的に界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などいずれのものでも構わないが、シリコーン系、アセチレングリコール系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。中でもシリコーン系界面活性剤が外観を良好にできる点で最も好ましい。
シリコーン系界面活性剤の含有量としては、全固形分中、0.1質量%以上5.0質量%以下が好ましい。より好ましくは0.3質量%以上3.0質量%以下である。0.1質量%以上であれば、易滑塗布層のコート抜けが発生せず好ましい。5.0質量%以下であれば、易滑塗布層の塗布ムラが発生しないので好ましい。
塗布方法としては、ポリエステル基材フィルム製膜時に同時に塗布する所謂インラインコーティング法、及び、ポリエステル基材フィルムを製膜後、別途コーターで塗布する所謂オフラインコーティング法のいずれも適用できるが、インラインコーティング法が効率的でより好ましい。
塗布方法として塗布液をポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する場合がある)フィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗布する。
本発明において、ポリエステルフィルム上に易滑塗布層を設ける方法としては、溶媒、粒子、樹脂を含有する塗布液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥する方法が挙げられる。溶媒として、トルエン等の有機溶剤、水、あるいは水と水溶性の有機溶剤の混合系が挙げられるが、好ましくは、環境問題の点から水単独あるいは水に水溶性の有機溶剤を混合した所謂水系の溶媒が好ましい。
易滑塗布液の固形分濃度はバインダー樹脂の種類や溶媒の種類などにもよるが、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。塗布液の固形分濃度は35質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下である。
塗布後の乾燥温度についても、バインダー樹脂の種類、溶媒の種類、架橋剤の有無、固形分濃度などにもよるが、70℃以上であることが好ましく、250℃以下であることが好ましい。
(ポリエステルフィルムの製造)
本発明において、基材フィルムとなるポリエステルフィルムは、一般的なポリエステルフィルムの製造方法に従って製造することができる。例えば、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度(Tg)以上の温度において、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後、テンターにより横方向に延伸し、熱処理を施す方法が挙げられる。また、テンター内で縦横同時に二軸延伸する方法も挙げられる。
本発明におけるポリエステルフィルム基材において、離型塗布層を塗布する面を形成する表面層Aは、実質的に無機粒子を含有しないことが好ましい。このとき、表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は、7nm以下が好ましい。Saが7nm以下であると、積層する超薄層セラミックシートの成型時にピンホールなどの発生が起こりにくく好ましい。表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は小さいほど好ましいと言えるが、0.1nm以上であって構わない。この「無機粒子を実質的に含有しない」とは、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に無機粒子をフィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
本発明におけるポリエステルフィルム基材において、易滑塗布層を塗布する面を形成する表面層Bは、粒子を含有することが好ましい。粒子としては無機粒子、有機粒子何れも好適に用いることができる。表面層Bに粒子を含有することで、易滑塗布層中に粒子が含まれない本発明においても、滑り性や耐ブロッキング性を付与することができる。
表面層Bが含有する粒子に特に限定はないが、シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることが好ましい。含有される粒子含有量は、表面層B中に粒子の合計で5000〜15000ppm含有することが好ましい。このとき、表面層Bのフィルムの領域表面平均粗さ(Sa)は、20〜40nmの範囲であることが好ましい。シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が5000ppm以上、Saが20nm以上の場合には、フィルムをロール状に巻き上げるときに、空気を均一に逃がすことができ、巻き姿が良好で平面性良好により、超薄層セラミックシートの製造に好適なものとなる。また、シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が15000ppm以下、Saが40nm以下の場合には、滑剤の凝集が生じにくく、粗大突起ができないため、超薄層のセラミックシート製造時に品質が安定し好ましい。
上記B層に含有する粒子としては、シリカ及び/又は炭酸カルシウム以外に不活性な無機粒子及び/又は耐熱性有機粒子などを用いることができるが、透明性やコストの観点からシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることがより好ましいが、他に使用できる無機粒子としては、アルミナ−シリカ複合酸化物粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などが挙げられる。また、耐熱性有機粒子としては、架橋ポリアクリル系粒子、架橋ポリスチレン粒子、ベンゾグアナミン系粒子などが挙げられる。またシリカ粒子を用いる場合、多孔質のコロイダルシリカが好ましく、炭酸カルシウム粒子を用いる場合は、ポリアクリル酸系の高分子化合物で表面処理を施した軽質炭酸カルシウムが、滑剤の脱落防止の観点から好ましい。
上記表面層Bに添加する粒子の平均粒子径は、0.1μm以上2.0μm以下が好ましく、0.5μm以上1.0μm以下が特に好ましい。粒子の平均粒子径が0.1μm以上であれば、離型塗布層の滑り性が良好であり好ましい。また、平均粒子径が2.0μm以下であれば、離型塗布層表面に粗大粒子によるピンホールが発生するおそれがなく好ましい。
上記表面層Bには素材の異なる粒子を2種類以上含有させてもよい。また、同種の粒子で平均粒径の異なるものを含有させてもよい。
本発明において、ポリエステルフィルム基材は、少なくとも実質的に粒子を含有しない表面層Aと、粒子を含有する表面層Bを有し、離型塗布層を塗布する側の層を表面層A、その反対面の無機粒子を実質的に含有しない易滑塗布層を塗布する側の表面層Bを有することが好ましいが、これら以外の芯層をC層とすると、本発明の離型フィルムの厚み方向の層構成は離型塗布層/A/B/易滑塗布層、あるいは離型塗布層/A/C/B/易滑塗布層等の積層構造が挙げられる。当然ながらC層は複数の層構成であっても構わない。表面層A及び表面層Bの厚みは、ポリエステルフィルム基材の全厚みや、表面層Bが含有する粒子の平均粒子径にもよるが、表面層Aの厚みはポリエステルフィルム基材の全厚みの少なくとも10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。表面層Bの厚みは、ポリエステルフィルム基材の全厚みの少なくとも1%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上である。
本発明において、基材フィルムとなるポリエステルフィルムは、一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであっても構わないが、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
ポリエステルフィルム基材の厚みは5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは15μm以上である。厚みは5μm以上であると、フィルムの搬送時にシワが入りにくく好ましい。
ポリエステルフィルム基材の厚みは50μm以下であることが好ましく、より好ましくは45μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下である。厚みが40μm以下であると、単位面積当たりのコストが低下するため好ましい。
インラインコートの場合は縦方向の延伸前の未延伸フィルムに塗工しても、縦方向の延伸後で横方向の延伸前の一軸延伸フィルムに塗工しても良い。縦方向の延伸前に塗工する場合にはロール延伸前に乾燥工程を設けることが好ましい。横方向の延伸前の一軸延伸フィルムに塗工する場合はテンター内でのフィルム加熱工程で乾燥工程を兼ねることが出来るので、必ずしも別途乾燥工程を設ける必要はない。なお、同時延伸する場合も同様である。
易滑塗布層の膜厚は0.001μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上であり、さらに好ましくは0.02μm以上であり、特に好ましくは0.03μm以上である。塗布層の膜厚が0.001μm以上であると、塗布膜の造膜性が維持され、均一な塗布膜が得られるため好ましい。
易滑塗布層の膜厚は2μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.8μm以下であり、特に好ましくは0.5μm以下である。塗布層の膜厚が2μm以下であると、ブロッキングが生じるおそれがなく好ましい。
後述する離型塗布層上に、塗布、成型されるセラミックグリーンシートは、塗布、成型後に離型フィルムと共にロール状に巻き取られる。このとき、セラミックグリーンシート表面に離型フィルムの易滑塗布層が接触した状態で巻き取られることとなる。セラミックグリーンシート表面に欠陥を発生させないために、易滑塗布層の外表面(ポリエステルフィルムと接していない塗布フィルム全体の易滑塗布層表面)は、適度に平坦であることが必要であり、領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上50nm以下かつ最大突起高さ(P)が60nm以上1000nm以下であることが好ましい。
易滑塗布層の外表面の領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上、最大突起高さ(P)が60nm以上であれば、易滑塗布面が平滑になりすぎず適度な滑り性が維持できるため好ましい。領域表面平均粗さ(Sa)が50nm以下、最大突起高さ(P)が1000nm以下であれば、易滑塗布面が粗くなりすぎず突起によるセラミックグリーンシートの欠陥が発生せず好ましい。
易滑塗布層の表面自由エネルギーは、45mJ/m2以下であることが好ましく、45mJ/m2未満であることがより好ましく、42mJ/m2以下であることがさらに好ましく、40mJ/m2以下であることが特に好ましく、40mJ/m2未満であることが最も好ましい。易滑塗布層の表面自由エネルギーが、45mJ/m2以下となることで、工程での環境異物が付着しにくくなり、離型面への異物付着が起こりにくくなり、セラミックグリーンシートの環境異物起因のピンホールが発生しにくくなり好ましい。
易滑塗布層の表面自由エネルギーは、25mJ/m2以上であることが好ましく、25mJ/m2を超えることがより好ましく、28mJ/m2以上であることがさらに好ましく、30mJ/m2を超えることが特に好ましく、31mJ/m2以上であることが最も好ましい。易滑塗布層の表面自由エネルギーが、25mJ/m2以上となることで、滑り性が低くなりすぎず巻ズレが発生しにくくなり好ましい。
(離型塗布層)
本発明における離型塗布層を構成する樹脂には特に限定はなく、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、各種ワックス、脂肪族オレフィンなどを用いることができ、各樹脂を単独もしくは、2種類以上併用することもできる。
本発明における離型塗布層として、例えばシリコーン樹脂とは、分子内にシリコーン構造を有する樹脂のことであり、硬化型シリコーン、シリコーングラフト樹脂、アルキル変性などの変性シリコーン樹脂などが挙げられるが、移行性などの観点から反応性の硬化シリコーン樹脂を用いることが好ましい。反応性の硬化シリコーン樹脂としては、付加反応系のもの、縮合反応系のもの、紫外線もしくは電子線硬化系のものなどを用いることができる。より好ましくは、低温で加工できる低温硬化性の付加反応系のもの、および紫外線もしくは、電子線硬化系のものがよい。これらのものを用いることで、ポリエステルフィルムへの塗工加工時に、低温で加工できる。そのため、加工時におけるポリエステルフィルムへの熱ダメージが少なく、平面性の高いポリエステルフィルムが得られ、0.2〜2.0μm厚みの超薄膜セラミックグリーンシート製造時にもピンホールなどの欠点を少なくすることができる。
付加反応系のシリコーン樹脂としては、例えば末端もしくは側鎖にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとハイドロジエンシロキサンとを、白金触媒を用いて反応させて硬化させるものが挙げられる。このとき、120℃で30秒以内に硬化できる樹脂を用いる方が、低温での加工ができ、より好ましい。例としては、東レ・ダウコーニング社製の低温付加硬化型(LTC1006L、LTC1056L、LTC300B、LTC303E、LTC310、LTC314、LTC350G、LTC450A、LTC371G、LTC750A、LTC755、LTC760Aなど)および熱UV硬化型(LTC851、BY24−510、BY24−561、BY24−562など)、信越化学社製の溶剤付加+UV硬化型(X62−5040、X62−5065、X62−5072T、KS5508など)、デュアルキュア硬化型(X62−2835、X62−2834、X62−1980など)などが挙げられる。
縮合反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端にOH基をもつポリジメチルシロキサンと末端にH基をもつポリジメチルシロキサンを、有機錫触媒を用いて縮合反応させ、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。
紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、例えば最も基本的なタイプとして通常のシリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、不飽和基を導入して光硬化させるもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これでエポキシ基を開裂させて架橋させるもの、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋するもの等が挙げられる。また、前記紫外線の代わりに電子線を用いることもできる。電子線は紫外線よりもエネルギーが強く、紫外線硬化の場合のように開始剤を用いなくても、ラジカルによる架橋反応を行うことが可能である。使用する樹脂の例としては、信越化学社製のUV硬化系シリコーン(X62−7028A/B、X62−7052、X62−7205、X62−7622、X62−7629、X62−7660など)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のUV硬化系シリコーン(TPR6502、TPR6501、TPR6500、UV9300、UV9315、XS56−A2982、UV9430など)、荒川化学社製のUV硬化系シリコーン(シリコリースUV POLY200、POLY215、POLY201、KF−UV265AMなど)が挙げられる。
上記、紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、アクリレート変性や、グリシドキシ変性されたポリジメチルシロキサンなどを用いることもできる。これら変性されたポリジメチルシロキサンを、多官能のアクリレート樹脂やエポキシ樹脂などと混合し、開始剤存在下で使用することでも良好な離型性能を出すことができる。
その他用いられる樹脂の例としては、ステアリル変性、ラウリル変性などをしたアルキド樹脂やアクリル樹脂、またはメチル化メラミンの反応などで得られるアルキド系樹脂、アクリル系樹脂なども好適である。
上記、メチル化メラミンの反応などで得られるアミノアルキド樹脂としては、日立化成社製のテスファイン303、テスファイン305、テスファイン314などが挙げられる。メチル化メラミンの反応などで得られるアミノアクリル樹脂としては、日立化成社製のテスファイン322などが挙げられる。
本発明における離型塗布層に上記樹脂を用いる場合は、1種類で使用してもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、剥離力を調整するために、軽剥離添加剤や、重剥離添加剤といった添加剤を混合することも可能である。
本発明における離型塗布層には、粒径が1μm以下の粒子などを含有することができるが、ピンホール発生の観点から粒子などの突起を形成するものは、実質的に含有しないほうが好ましい。
本発明における離型塗布層には、密着向上剤や、帯電防止剤などの添加剤などを添加してもよい。また、基材との密着性を向上させるために、離型塗布層を設ける前にポリエステルフィルム表面に、アンカーコート、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等の前処理をすることも好ましい。
本発明において、離型塗布層の厚みは、その使用目的に応じて設定すれば良く、特に限定されないが、好ましくは、硬化後の離型塗布層の厚みが0.005〜2.0μmとなる範囲がよい。離型塗布層の厚みが0.005μm以上であると、剥離性能が保たれて好ましい。また、離型塗布層の厚みが2.0μm以下であると、硬化時間が長くなり過ぎず、離型フィルムの平面性の低下によるセラミックグリーンシートの厚みムラを生じおそれがなく好ましい。また、硬化時間が長くなり過ぎないので、離型塗布層を構成する樹脂が凝集するおそれがなく、突起を形成するおそれがないため、セラミックグリーンシートのピンホール欠点が生じにくく好ましい。
本発明において、離型塗布層の形成方法は、特に限定されず、離型性の樹脂を溶解もしくは分散させた塗液を、基材のポリエステルフィルムの一方の面に塗布等により展開し、溶媒等を乾燥により除去後、加熱乾燥、熱硬化または紫外線硬化させる方法が用いられる。このとき、溶媒乾燥、熱硬化時の乾燥温度は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがもっとも好ましい。その加熱時間は、30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。180℃以下の場合、フィルムの平面性が保たれ、セラミックグリーンシートの厚みムラを引き起こすおそれが小さく好ましい。120℃以下であるとフィルムの平面性を損なうことなく加工することができ、セラミックグリーンシートの厚みムラを引き起こすおそれが更に低下するので特に好ましい。
本発明において、離型塗布層を塗布するときの塗液の表面張力は、特に限定されないが30mN/m以下であることが好ましい。表面張力を前記のようにすることで、塗工後の塗れ性が向上し、乾燥後の塗膜表面の凹凸を低減することができる。
本発明において、離型塗布層を塗布するときの塗液には、特に限定されないが、沸点が90℃以上の溶剤を添加することが好ましい。沸点が90℃以上の溶剤を添加することで、乾燥時の突沸を防ぎ、塗膜をレベリングさせることができ、乾燥後の塗膜表面の平滑性を向上させることができる。その添加量としては、塗液全体に対し、10〜80質量%程度添加することが好ましい。
上記塗液の塗布法としては、公知の任意の塗布法が適用出来、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、ワイヤーバーなどのバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、等の従来から知られている方法が利用できる。
(セラミックグリーンシートとセラミックコンデンサ)
一般に、積層セラミックコンデンサは、直方体状のセラミック素体を有する。セラミック素体の内部には、第1の内部電極と第2の内部電極とが厚み方向に沿って交互に設けられている。第1の内部電極は、セラミック素体の第1の端面に露出している。第1の端面の上には第1の外部電極が設けられている。第1の内部電極は、第1の端面において第1の外部電極と電気的に接続されている。第2の内部電極は、セラミック素体の第2の端面に露出している。第2の端面の上には第2の外部電極が設けられている。第2の内部電極は、第2の端面において第2の外部電極と電気的に接続されている。
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムは、このような積層セラミックコンデンサを製造するために用いられる。例えば、以下のようにして製造される。まず、本発明の離型フィルムをキャリアフィルムとして用い、セラミック素体を構成するためのセラミックスラリーを塗布、乾燥させる。塗布、乾燥したセラミックグリーンシートの上に、第1又は第2の内部電極を構成するための導電層を印刷する。セラミックグリーンシート、第1の内部電極を構成するための導電層が印刷されたセラミックグリーンシート及び第2の内部電極を構成するための導電層が印刷されたセラミックグリーンシートを適宜積層し、プレスすることにより、マザー積層体を得る。マザー積層体を複数に分断し、生のセラミック素体を作製する。生のセラミック素体を焼成することによりセラミック素体を得る。その後、第1及び第2の外部電極を形成することにより積層セラミックコンデンサを完成させることができる。
次に、実施例、比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は当然以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
[NMR測定]
アクリルポリオール中に導入された共重合成分の比率は、核磁気共鳴分光法(1H−N
MR、13C−NMR:Varian Unity 400、Agilent社製)を用いて確認した。測定は、合成したアクリルポリオール中の溶媒を真空乾燥機にて除去した後、乾固物を重クロロフォルムに溶解させて行った。得られたNMRスペクトルから、各基の部位に帰属される化学シフトδ(ppm)のピークを同定した。得られた各ピークの積分強度を求め、各基の部位の水素数と積分強度から、アクリルポリオールに導入された共重合成分の組成比率(mol%)を確認した。
[ガラス転移温度(Tg)の確認]
上記NMR測定で求めた共重合成分の組成比率と、前記したFoxの式から各アクリルポリオールのTgを求めた。
[延伸適性]
アクリルポリオール自体の延伸適性を評価するため、合成したアクリルポリオール(A−1)〜(A−5)を、固形分濃度が12質量%となるように、イソプロパノール30質量%と水70質量%の混合溶媒(25℃)中に投入して、アクリルポリオール単体の溶解液を調製した後、縦延伸のみを行ったポリエステルフィルムの表面に、溶解液をメイヤーバー#5で塗布した。次いで、塗布層(厚み6.5μm)を形成したフィルムサンプルを、温度60℃に設定した熱風循環オーブン中に30秒間静置した後、フィルムサンプルをオーブンから取り出してプレ乾燥を行った。次いで、サンプルを手廻し延伸装置(東洋紡エンジニアリング社製)にセットして、100℃の熱風循環オーブン中に入れ、ゆっくりと延伸操作を行った。延伸前の長さの4倍の長さになるまで延伸操作を行い、延伸装置を熱風循環オーブンから取り出した。その後、延伸後の塗膜を光学顕微鏡(倍率:200倍)にて観察し、下記の基準に従って、延伸によるクラッキングの有無を判断した。
○:クラックが全く見られない。
△:クラックがやや見られる(1本〜4本)。
×:5本以上のクラック、もしくは全面にクラックが見られる。
(酸価の測定)
サンプル約0.2gを枝付き三角フラスコ内に精秤し(A(g))、ベンジルアルコー
ル10mlを加え、窒素雰囲気下で230℃のヒーターにて15分加熱し樹脂を溶解した。室温まで放冷後、ベンジルアルコール10ml、クロロフォルム20ml、フェノールフタレイン溶液数滴を加え、0.02規定のKOH溶液にて滴定した(滴定量=B(ml)、KOH溶液の力価=p)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=C(ml))、以下の式に従って算出した。
酸価(mgKOH/g)=(B−C)×0.02×56.11×p÷A
(オキサゾリン基を有する樹脂のオキサゾリン基の定量)
オキサゾリン基を有する樹脂を凍結乾燥し、核磁気共鳴分析計(NMR)(ヴァリアン
社製「ジェミニ−200」)を用いた1H−NMR分析から、オキサゾリン基に由来する
吸収ピーク強度と、その他のモノマーに由来する吸収ピーク強度とを求め、そのピーク強
度からオキサゾリン基量(mmol/g)を算出した。
(1)領域表面平均粗さ(Sa)、最大突起高さ(P)
非接触表面形状計測システム(VertScan R550H−M100)を用いて、下記の条件で測定した値である。領域表面平均粗さ(Sa)は、5回測定の平均値を採用し、最大突起高さ(P)は5回測定の最大値を採用した。
(測定条件)
・測定モード:WAVEモード
・対物レンズ:50倍
・0.5×Tubeレンズ
・測定面積 187×139μm (Sa,P測定)
(2)耐粉落ち性
摩擦堅牢度試験機(大栄科学精器製作所製、RT−200)にグリーンシート製造用離型フィルム(3cm(フィルム幅方向)×20cm(フィルム長手方向))を易滑塗布層が上になるように取り付け、荷重ヘッド部(2cmx2cm、200g)と試料フィルムの接触部にアルミ箔(厚さ80μm、算術的平均表面粗さ0.03μm)を用い、10cmの距離を1往復2秒の速度で50往復させた。黒台紙の上に得られたフィルムをのせ、粉落ちしているか目視で確認した。
○:黒台紙上で粉落ちが確認できない。
×:黒台紙上で全体的に粉落ちが確認できる。
(3)表面自由エネルギー
25℃、50%RHの条件下で接触角計(協和界面科学株式会社製: 全自動接触角計 DM−701)を用いて離型フィルムの離型面に水(液滴量1.8μL)、ジヨードメタン(液適量0.9μL)、エチレングリコール(液適量0.9μL)の液滴を作成しその接触角を測定した。接触角は、各液を離型フィルムに滴下後10秒後の接触角を採用した。前記方法で得られた、水、ジヨードメタン、エチレングリコールの接触角データを「北崎−畑」理論より計算し離型フィルムの表面自由エネルギーの分散成分γsd、極性成分γsp、水素結合成分γshを求め、各成分を合計したものを表面自由エネルギーγsとした。本計算には、本接触角計ソフトウェア(FAMAS)内の計算ソフトを用いて行った。
(4)離型フィルムロールの巻ズレ量
各実施例および各比較例で得られたグリーンシート製造用離型フィルムを、巻取り張力150N/m、巻取りタッチロール圧力300N/m、速度200m/minの条件で、幅400mm、長さ5000mのロール状に巻き上げ、離型フィルムロールを得た。得られた離型フィルムロール端面のズレ量をデプスゲージ(ミツトヨ製、品番:547−211)を用いて計測した。
○:1mm未満
△:1mm以上、2mm未満
×:2mm以上
(5)離型フィルムロールの巻出し帯電
各実施例および各比較例で得られたグリーンシート製造用離型フィルムを、幅400mm、長さ5000mのロール状に巻き上げ、離型フィルムロールを得た。この離型フィルムロールを40℃、湿度50%以下の環境下に30日間保管した後、200m/minで巻き返す際の帯電量を春日電機社製「KSD−0103」を用いて測定した。帯電量は、巻出し直後100mmの箇所について、巻出し長さ500M毎に測定し、その平均値を算出した。
○:±3kV未満
○△:±3kV以上、5kV未満
△:±5kV以上、10kV未満
×:±10kV以上
(6)セラミックグリーンシートのピンホール評価
下記、材料からなる組成物を攪拌混合し、2.0mmのガラスビーズを分散媒とするペイントシェーカーを用いて2時間分散し、セラミックスラリーを得た。
トルエン 22.5質量%
エタノール 22.5質量%
チタン酸バリウム(富士チタン社製 HPBT−1) 50 質量%
ポリビニルブチラール(積水化学社製 エスレックBH−3) 5 質量%
次いで離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが1.0μmの厚みになるように塗布し90℃で1分乾燥後、スラリー面と易滑塗布層面を重ね合わせ、10分間、1kg/cm2の加重を掛けたあと、離型フィルムを剥離し、セラミックグリーンシートを得た。
得られたセラミックグリーンシートのフィルム幅方向の中央領域において25cm2の範囲でセラミックスラリーの塗布面の反対面から光を当て、光が透過して見えるピンホールの発生状況を観察し、下記基準で目視判定した。
○:ピンホールの発生なし
○△:ピンホールの発生ごくわずかにあり
△:ピンホールの発生わずかにあり
×:ピンホールの発生が多少あり
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(I))の調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口及び生成物取出口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用いた。TPA(テレフタル酸)を2トン/時とし、EG(エチレングリコール)をTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間、255℃で反応させた。次いで、第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成PETに対して8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウム四水塩を含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が40ppmのとなる量のTMPA(リン酸トリメチル)を含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1時間、260℃で反応させた。次いで、第2エステル化反応缶の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、高圧分散機(日本精機社製)を用いて39MPa(400kg/cm2)の圧力で平均処理回数5パスの分散処理をした平均粒径が0.9μmの多孔質コロイダルシリカ0.2質量%と、ポリアクリル酸のアンモニウム塩を炭酸カルシウムあたり1質量%付着させた平均粒径が0.6μmの合成炭酸カルシウム0.4質量%とを、それぞれ10%のEGスラリーとして添加しながら、常圧にて平均滞留時間0.5時間、260℃で反応させた。第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、95%カット径が20μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターで濾過を行ってから、限外濾過を行って水中に押出し、冷却後にチップ状にカットして、固有粘度0.60dl/gのPETチップを得た(以後、PET(I)と略す)。PETチップ中の滑剤含有量は0.6質量%であった。
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(II))の調製)
一方、上記PETチップの製造において、炭酸カルシウム、シリカ等の粒子を全く含有しない固有粘度0.62dl/gのPETチップを得た(以後、PET(II)と略す。)。
(アクリルポリオールA−1の製造)
撹拌機、還流式冷却器、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート(MMA)231質量部、ステアリルメタクリレート(SMA)130質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)100質量部、メタクリル酸(MAA)33質量部およびイソプロピルアルコール(IPA)1153質量部を仕込み、撹拌を行いながら80℃までフラスコ内を昇温した。フラスコ内を80℃に維持したまま3時間の撹拌を行い、その後、2,2−アゾビス−2―メチル−N−2−ヒドロキシエチルプロピオンアミドを0.5質量部フラスコに添加した。フラスコ内を120℃に昇温しながら窒素置換を行った後、120℃で混合物を2時間撹拌した。
次いで、120℃で1.5kPaの減圧操作を行い、未反応の原材料と溶媒を除去し、アクリルポリオールを得た。フラスコ内を大気圧に戻して室温まで冷却し、IPA水溶液(水含量50質量%)1976質量部を添加混合した。その後、撹拌しながら滴下ロートを用いて、アンモニアを加え、溶液のpHが5.5〜7.5の範囲になるまでアクリルポリオールの中和処理を行い、固形分濃度が20質量%のアクリルポリオール(A−1)を得た。アクリルポリオール(A−1)のNMR測定による組成比率、Tg、延伸適性、酸価を表1に併記した。
(アクリルポリオール(A−2)〜(A−5)の製造)
表1に示したように、MMA、SMA、HEMA、MAA、仕込み時IPA、希釈時IPA水溶液の量を変更した以外はアクリルポリオール1の製造と同様にして、固形分濃度が20質量%のアクリルポリオール(A−2)〜(A−5)を得た。アクリルポリオール(A−2)〜(A−5)のNMR測定による組成比率、ガラス転移温度(Tg)、延伸適性、酸価を表1に併記した。なお、組成比率は、MMA、SMA、HEMA、MAAを各々n1、n2、n3、n4(単位)として表した。
(ポリエステル樹脂B0−1の重合)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート194.2質量部、ジメチルイソフタレート184.5質量部、ジメチルー5−ナトリウムスルホイソフタレート14.8質量部、エチレングリコール185.1質量部、ネオペンチルグリコール185.1質量部、およびテトラ−n−ブチルチタネート0.2質量部を仕込み、160℃から220℃の温度で4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(B0−1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂(B0−1)は、淡黄色透明であった。共重合ポリエステル樹脂(B0−1)の還元粘度を測定したところ,0.60dl/gであった。DSCによるガラス転移温度(Tg)は65℃であった。
(ポリエステル水分散体B−1の製造)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂(B0−1)30質量部、エチレングリコール−n−ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水55質量部をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分30質量%の乳白色のポリエステル水分散体(B−1)を作製した。
(ポリウレタン水分散体C−1の製造)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート43.75質量部、ジメチロールブタン酸12.85質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール153.41質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分37質量%の水溶性ポリウレタン樹脂溶液C−1を調製した。得られたポリウレタン樹脂のガラス転移点温度(Tg)は−30℃であった。
(オキサゾリン系架橋剤D−1の製造)
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコに、イソプロピルアルコール460.6部を仕込み、緩やかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。そこへ予め調製しておいたメタクリル酸メチル126部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート84部からなる単量体混合物と、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(日本ヒドラジン工業株式会社製「ABN−E」)21部およびイソプロピルアルコール189部からなる開始剤溶液を、それぞれ滴下漏斗から2時間かけて滴下して反応させ、滴下終了後も引き続き5時間反応させた。反応中は窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80±1℃に保った。その後、反応液を冷却し、固形分濃度25%のオキサゾリン基を有する樹脂(D−1)を得た。得られたオキサゾリン基を有する樹脂(D−1)のオキサゾリン基量は4.3mmol/gであり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定した数平均分子量は20000であった。
(オキサゾリン系架橋剤D−2の製造)
上記オキサゾリン基を有する樹脂(D−1)の合成と同様の方法で、組成(オキサゾリン基量および分子量)の異なる固形分濃度10%のオキサゾリン基を有する樹脂(D−2)を得た。得られたオキサゾリン基を有する樹脂(D−2)のオキサゾリン基量は7.7mmol/gであり、GPCにより測定した数平均分子量は40000であった。
(カルボジイミド架橋剤E−1の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネート168質量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(M400、平均分子量400)220質量部を仕込み、120℃で1時間、撹拌し、更に4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート26質量部とカルボジイミド化触媒として3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド3.8質量部(全イソシイアネートに対し2質量%)を加え、窒素気流下185℃で更に5時間撹拌した。反応液の赤外スペクトルを測定し、波長2200〜2300cm-1の吸収が消失したことを確認した。60℃まで放冷し、イオン交換水を567質量部加え、固形分40質量%のカルボジイミド水溶性樹脂(E−1)を得た。
(シリコーン変性アクリル樹脂F−1)
シリコーン変性アクリル樹脂(東亜合成製、商品名サイマックUS450、固形分濃度30質量%)
(シリカ粒子G−1)
コロイダルシリカ(日産化学製、商品名MP2040、平均粒径200nm、固形分濃度40質量%)
(シリカ粒子G−2)
コロイダルシリカ(日産化学製、商品名MP4540M、平均粒径450nm、固形分濃度40質量%)
(離型剤溶液X−1)
熱硬化型アミノアルキド樹脂(日立化成社製 テスファイン314、固形分60質量%)100質量部と硬化触媒としてp−トルエンスルホン酸(日立化成社製、ドライヤー900、固形分50質量%)1.2質量部を、トルエン/メチルエチルケトン/ヘプタン(=3:5:2)溶液で希釈し、固形分2質量%の離型剤溶液を調製した。
(離型剤溶液X−2)
UV硬化型シリコーン樹脂(モメンティブ社製 UV9300、固形分濃度100質量%)100質量部と硬化触媒ビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート1質量部を、トルエン/メチルエチルケトン/ヘプタン(=3:5:2)溶液で希釈し、固形分2質量%の離型剤溶液を調製した。
(実施例1)
(易滑塗布液1の調整)
下記の組成の易滑塗布液1を調整した。
(易滑塗布液1)
水 47.45質量部
イソプロピルアルコール 30.00質量部
アクリルポリオール樹脂A−1(固形分濃度20質量%) 16.57質量部
オキサゾリン系架橋剤D−1(固形分濃度25質量%) 5.68質量部
界面活性剤H−1(シリコーン系、固形分濃度10質量%) 0.30質量部
(ポリエステルフィルムの製造)
PETチップを乾燥後、285℃で溶融し、別個の溶融押出し機押出機により290℃で溶融し、95%カット径が15μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターと、95%カット径が15μmのステンレススチール粒子を焼結したフィルターの2段の濾過を行って、フィードブロック内で合流して、PET(I)を表面層B(反離型面側層)、PET(II)を表面層A(離型面側層)となるように積層し、シート状に45m/分のスピードで押出(キャスティング)し、静電密着法により30℃のキャスティングドラム上に静電密着・冷却させ、未延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。層比率は各押出機の吐出量計算でPET(I)/(II)=60質量%/40質量%となるように調整した。次いで、この未延伸シートを赤外線ヒーターで加熱した後、ロール温度80℃でロール間のスピード差により縦方向に3.5倍延伸した。
次いで、易滑塗布液をバーコーターでPETフィルムの表面層Bに塗布した後、80℃で15秒間乾燥した。なお、最終延伸、乾燥後の塗布量が0.10μmになるように調整した。引続いてテンターで、150℃で幅方向に4.0倍に延伸し、フィルムの幅方向の長さを固定した状態で、230℃で0.5秒間加熱し、さらに230℃で10秒間3%の幅方向の弛緩処理を行ない、厚さ31μmのポリエステルフィルムを得た。ここで、易滑塗布層を含まないPET基材をZとする。得られたPET基材の固有粘度は0.59dl/gであった。
(離型塗布層の形成)
上記で得たインラインコーティングポリエステルフィルムに離型剤溶液X−1を易滑塗布層積層面とは反対表面に、乾燥後の厚みで0.1μmとなるようにリバースグラビアコーターにて塗布し、次いで、130℃の熱風で30秒間乾燥することで離型塗布層を形成し超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。巻き取り性等、工程通過性、ハンドリング性は特に問題なく優秀であった。ロールとして巻き取った後に、セラミックシート塗工のために再度巻きだした時の巻出し帯電も低く、環境異物の付着が抑制できセラミックコンデンサの歩留まりを落とすことなく、品質の良いセラミックコンデンサを作成することができた。
(実施例2〜8)
実施例1で使用した易滑塗布液1を易滑塗布液2〜8に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
(実施例9)
表面層A(離型面側層)、表面層B(反離型面側層)共に、粒子を含有するPET(I
)を用いた以外は実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。ここで、易滑塗布層を含まないPET基材をYとする。得られたPET基材の固有粘度は0.59dl/gであった。
(実施例10)
離型塗布層の形成を下記のように実施した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
(離型塗布層の形成)
得たポリエステルフィルムに離型剤溶液X−2を乾燥後の厚みで0.1μmとなるようにリバースグラビアコーターにて塗布し、次いで、90℃の熱風で30秒間乾燥した後、直ちに無電極ランプ(フュージョン株式会社製Hバルブ)にて紫外線照射(300mJ/cm2)を行い、離型塗布層を形成し超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
(比較例1〜3)
実施例1で使用した易滑塗布液1を易滑塗布液9〜11に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。比較的1〜3のフィルムは易滑塗布層の表面自由エネルギーが高く、巻出し帯電も高かった。そのため付着異物が増加しセラミックグリーンシートのピンホールが多く発生した。
(比較例4)
表面層A(離型面側層)、表面層B(反離型面側層)共に、粒子を含有しないPET(II)を用い、易滑塗布液1を粒子を含有する易滑塗布液12に変更した以外は、実施例1
と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。比較例4のフィルムは易滑塗布層に粒子を含んでおり、工程中で粒子の脱落が発生することで、セラミックグリーンシートにピンホールが発生した。
(比較例5)
実施例1で使用した易滑塗布液1を易滑塗布液13に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。比較的5のフィルムは易滑塗布層の表面自由エネルギーが低く、滑り性が良くなりすぎるためフィルムロールの巻ズレ量が多くなった。巻ズレ量が多くなることで搬送中のフィルムが蛇行することにより離型フィルムにキズが付き、セラミックグリーンシートのピンホールが多く発生した。
(比較例6)
離型塗布層を形成するフィルムとして、実施例9で作成したフィルムの易滑塗布層を有しない以外は、実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。比較例6のフィルムは反離型面側の表面自由エネルギーが高く、巻出し帯電も高かった。そのため付着異物が増加しセラミックグリーンシートのピンホールが多く発生した。
(比較例7)
離型塗布層を形成するフィルムとして、実施例1で作成したフィルムの易滑塗布層を有しない以外は、実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。比較例7のフィルムは反離型面側の表面自由エネルギーが高く、巻出し帯電も高かった。そのため付着異物が増加しセラミックグリーンシートのピンホールが多く発生した。
各実施例及び比較例の評価結果を表2に示す。
上記表2において、易滑塗布液中の樹脂、架橋剤、粒子、界面活性剤について、各々の組成を固形分の質量部として記載しており、易滑塗布液中に存在する樹脂、架橋剤、粒子、界面活性剤の固形分の質量部の総和が易滑塗布層の全固形分の質量部となり、樹脂、架橋剤、粒子、界面活性剤について、各々の固形分の質量部を易滑塗布層の全固形分の質量部で除して、樹脂、架橋剤、粒子、界面活性剤の易滑塗布層中の全固形文中の質量百分率を求めることができる。
本発明によれば、セラミックグリーンシートを薄膜化させ生産量をアップさせた場合でも、離型フィルムからの粒子の脱落、離型フィルムロールの巻ズレ、巻出し帯電の防止全てを具備させることができ、付着異物またはキズ起因のセラミックグリーンシートのピンホールを抑制させることができる。また、本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いることにより、極薄膜のセラミックグリーンシートが得られ、微小なセラミックコンデンサを効率的に製造することができる。

Claims (6)

  1. ポリエステルフィルムを基材とし、前記基材の一方の表面上に離型塗布層を有し、かつ、もう一方の表面上に無機粒子を実質的に含有していない易滑塗布層を有し、前記易滑塗布層の表面自由エネルギーが25mJ/m2以上、45mJ/m2以下であるセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
  2. 前記ポリエステルフィルム基材が無機粒子を実質的に含有していない表面層Aを有し、前記表面層A上に離型塗布層を有する請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
  3. 前記ポリエステルフィルム基材が無機粒子を実質的に含有していない表面層A、及び前記ポリエステルフィルム基材の表面層Aの反対側に粒子を含有する表面層Bを有し、前記表面層A上に離型塗布層を有し、前記表面層B上に無機粒子を実質的に含有していない易滑塗布層を有する請求項1または2に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いるセラミックグリーンシートの製造方法。
  5. 製造するセラミックグリーンシートの厚みが、0.2μm以上1.5μm以下である請求項4に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
  6. 請求項4または5に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用するセラミックコンデンサの製造方法。
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