JP2020183378A - パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法 - Google Patents

パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーおよび/またはトリフルオロピルビン酸フルオリドを原料として、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)を良好な収率で製造可能な製造方法を提供すること。【解決手段】有機溶剤中、フッ化物存在下、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーおよびトリフルオロピルビン酸フルオリドからなる群から選ばれる少なくとも一種の合成原料と、ヘキサフルオロプロピレンオキシドと、を反応させる反応工程と、上記反応工程により得られた反応液中の副生物を分解する副生物分解工程と、上記副生物分解工程後に異性化工程と、を有する、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法に関する。
特許文献1には、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法として、トリフルオロピルビン酸フルオリドを原料とし、フッ化セシウム存在下、ジエチレングリコールジメチルエーテル溶剤中、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを反応させる方法が開示されている。
一方、特許文献2には、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとベンゾフェノンとを反応させてトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを製造することが開示されている(特許文献2)。
米国特許第3308107号明細書 英国特許第1051647号明細書
パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)から誘導されるパーフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)を重合することにより、ポリ[パーフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)]を得ることができる。ポリ[パーフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)]は、ガス分離膜用樹脂、光ファイバー用透明樹脂等として有望なポリマーである。したがって、かかる有望なポリマーの原料であるパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の新たな製造方法を提供できることは、工業的に望ましい。
そこで本発明者らは、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーやトリフルオロピルビン酸フルオリドを合成原料として、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)を製造することを検討した。この本発明者らの検討の結果、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーやトリフルオロピルビン酸フルオリドを合成原料とする製造方法では、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の収率について改善が望まれることが明らかとなった。
以上に鑑み本発明は、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーおよび/またはトリフルオロピルビン酸フルオリドを原料として、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)を良好な収率で製造可能な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の製造方法により、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーおよび/またはトリフルオロピルビン酸フルオリドを原料として、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)を良好な収率で製造することが可能であることを新たに見出した。
即ち、本発明は、以下の通りである。
[1]有機溶剤中、フッ化物存在下、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーおよびトリフルオロピルビン酸フルオリドからなる群から選ばれる少なくとも一種の合成原料と、ヘキサフルオロプロピレンオキシドと、を反応させる反応工程と、
上記反応工程により得られた反応液中の副生物を分解する副生物分解工程と、
上記副生物分解工程後に異性化工程と、
を有する、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[2]上記副生物分解工程は、上記反応液を60℃〜90℃の温度で加熱することを含む、[1]に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[3]上記副生物分解工程は、閉鎖容器内で行われる、[1]または[2]に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[4]上記閉鎖容器内の圧力を脱圧することを含む、[3]に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[5]上記反応液を、上記閉鎖容器内でこの容器内の圧力を脱圧しながら60℃〜90℃の温度で加熱することを含む、[4]に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[6]上記脱圧により上記閉鎖容器内の圧力を1.0MPa未満に制御することを含む、[4]または[5]に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[7]上記反応液を上記閉鎖容器内で60℃〜90℃の温度で加熱し次いで冷却した後に上記脱圧を行うことを一回以上含む、[4]に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[8]上記加熱時の上記閉鎖容器内の圧力は1.0MPa未満である、[7]に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[9]上記副生物分解工程は、開放容器内で行われる、[1]または[2]に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[10]上記有機溶剤は、エーテル系溶剤である、[1]〜[9]のいずれかに記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[11]上記エーテル系溶剤は、ジエチレングリコールジメチルエーテルである、[10]に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[12]上記フッ化物は、アルカリ金属フッ化物である、[1]〜[11]のいずれかに記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[13]上記アルカリ金属フッ化物は、フッ化セシウムである、[12]に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[14]上記反応工程におけるフッ化物の使用量が、上記合成原料のモノマー換算の使用量に対して0.05モル倍量〜0.4モル倍量である、[1]〜[13]のいずれかに記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[15]上記副生物分解工程および上記異性化工程の一方または両方においてフッ化物を更に添加する、[1]〜[14]のいずれかに記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[16]上記反応工程におけるフッ化物の使用量が、上記合成原料のモノマー換算の使用量に対して0.05モル倍量〜0.1モル倍量である、[15]に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[17]上記反応工程、上記副生物異性化工程および上記異性化反応工程において添加されるフッ化物の合計量は、トリフルオロピルビン酸フルオリド類のモノマー換算の使用量に対して0.1モル倍量〜0.4モル倍量である、[15]または[16]に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[18]上記反応工程において、有機溶剤中、フッ化物存在下、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーと、ヘキサフルオロプロピレンオキシドと、を反応させることを含む、[1]〜[17]のいずれかに記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[19]上記反応工程の前に、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを合成するダイマー合成工程を更に含む、[17]に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
[20]上記反応工程において、有機溶剤中、フッ化物存在下、トリフルオロピルビン酸フルオリドと、ヘキサフルオロプロピレンオキシドと、を反応させることを含む、[1]〜[17]のいずれかに記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
本発明によれば、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーおよび/またはトリフルオロピルビン酸フルオリドを原料として、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)を良好な収率で製造可能な製造方法を提供することができる。
本発明のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法(以下、単に「製造方法」とも記載する。)は、有機溶剤中、フッ化物存在下、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーおよび/またはトリフルオロピルビン酸フルオリドと、ヘキサフルオロプロピレンオキシドと、を反応させる反応工程と、上記反応工程により得られた反応液中の副生物を分解する副生物分解工程と、上記副生物分解工程後に異性化工程と、を有する。
以下、上記製造方法について、更に詳細に説明する。
[反応工程]
上記製造方法では、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)を製造するための原料として、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマー(以下、単に「ダイマー」とも記載する。)および/またはトリフルオロピルビン酸フルオリド(以下、「モノマー」とも記載する。)を使用する。本発明および本明細書において、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーおよびトリフルオロピルビン酸フルオリドからなる群から選ばれる少なくとも一種の合成原料としては、ダイマーのみを用いてもよく、モノマーのみを用いてもよく、ダイマーとモノマーとを任意の割合で混合して用いてもよい。
上記ダイマーとしては、4−フルオロ−5−オキソ−2,4−ビス(トリフルオロメチル)−1,3−ジオキソラン−2−カルボニルフルオリドを例示することができる。4−フルオロ−5−オキソ−2,4−ビス(トリフルオロメチル)−1,3−ジオキソラン−2−カルボニルフルオリドは、下記式1により示すことができる。
上記製造方法は、反応工程の前に、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを合成するダイマー合成工程を有してもよい。ダイマー合成工程で行う反応としては、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとベンゾフェノンとの密閉系での反応を例示することができる。かかるダイマー合成工程については、例えば英国特許第1051647号明細書(特許文献2)を参照できる。
また、ダイマー合成工程で行う反応としては、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとアルデヒド類との反応も例示できる。より詳細には、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとアルデヒド類を反応させ、ヘキサフルオロプロピレンオキシドへのアルデヒド類付加体を生成させ、更に反応を進めることにより、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを得ることができる。アルデヒド類付加体としては、ヘキサフルオロプロピレンオキシドへのアルデヒド類への付加する様式により、環化型および直鎖型が生成され得る。アルデヒド類付加体としては、下記アルデヒド類付加体1、2または3を挙げることができる。
(上記において、Rは、置換もしくは未置換のアルキル基またはアリール基を示す)。
ヘキサフルオロプロピレンオキシドとアルデヒド類とを反応させるダイマー合成反応では、耐圧容器に室温以下でヘキサフルオロプロピレンオキシドおよびアルデヒド類を仕込み、まず、0℃〜100℃、好ましくは0℃〜99℃、より好ましくは0℃〜90℃で0.5時間〜24時間反応させ、ヘキサフルオロプロピレンオキシドへのアルデヒド類付加体を生成させた後、次いで、100℃以上、好ましくは100℃〜200℃、より好ましくは100℃〜150℃に昇温し、5時間〜48時間反応させることが好ましい。室温とは、例えば20℃〜25℃の範囲の温度である。なお、アルデヒド類付加体を生成させる際、アルデヒドをあらかじめ耐圧容器に仕込んでおき、0℃〜100℃の温度でヘキサフルオロプロピレンオキシドを0.5時間〜24時間かけて連続的または断続的に供給して反応させてもよい。
アルデヒド類としては、具体的には例えば、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ピバルアルデヒド、1−アダマンタンカルボアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、2−エチルベンズアルデヒド、3−エチルベンズアルデヒド、4−エチルベンズアルデヒド、2−メトキシベンズアルデヒド、3−メトキシベンズアルデヒド、4−メトキシベンズアルデヒド、2−エトキシベンズアルデヒド、3−エトキシベンズアルデヒド、4−エトキシベンズアルデヒド、2−フルオロベンズアルデヒド、3−フルオロベンズアルデヒド、4−フルオロベンズアルデヒド、2−クロロベンズアルデヒド、3−クロロベンズアルデヒド、4−クロロベンズアルデヒド、2−ブロモベンズアルデヒド、3−ブロモベンズアルデヒド、4−ブロモベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、5−メトキシ−1−ナフトアルデヒド、5−クロロ−1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、5−メトキシ−2−ナフトアルデヒド、5−クロロ−2−ナフトアルデヒド等が挙げられる。好ましくは、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、2−エチルベンズアルデヒド、3−エチルベンズアルデヒド、4−エチルベンズアルデヒド、2−メトキシベンズアルデヒド、3−メトキシベンズアルデヒド、4−メトキシベンズアルデヒド、2−エトキシベンズアルデヒド、3−エトキシベンズアルデヒド、4−エトキシベンズアルデヒド等が挙げられる。トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの収率等の観点からは、芳香族アルデヒドを使用することが好ましく、電子供与基置換芳香族アルデヒドを使用することがより好ましい。アルデヒド類は、反応に供されるヘキサフルオロプロピレンオキシドに対して、0.8モル倍量〜1.2モル倍量使用することが好ましい。
ヘキサフルオロプロピレンオキシドとアルデヒド類との反応は、無溶剤下で実施可能であるが、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、アニソール、クロロベンゼン等の溶剤を一種単独または二種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。その際の溶剤の使用量は、反応に供されるヘキサフルオロプロピレンオキシドに対して、0.1質量倍量〜5.0質量倍量の範囲とすることができる。上記反応後、室温まで冷却、脱圧の後、アルデヒド類、反応により副生するジフルオロメチル化合物および/または溶剤の混合物からなる層を分離除去することにより、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを得ることができる。上記反応は、耐圧容器内で、3.5MPa以下の条件で行うことが好ましく、1.2MPa以下の条件で行うことがより好ましい。
一方、トリフルオロピルビン酸フルオリド(モノマー)は、下記式2により示される。上記製造方法は、反応工程の前に、トリフルオロピルビン酸フルオリドを合成するモノマー合成工程を有していてもよい。モノマー合成工程で行う反応としては、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとベンゾフェノンとの常圧流通系での反応を例示することができる。モノマー合成工程については、例えば米国特許第3308107号明細書(特許文献1)を参照できる。
トリフルオロピルビン酸フルオリドは、沸点が9℃〜10℃と低く、常温下では気体である。これに対し、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーは、沸点が72℃であるため常温下で液体である。工業的な取扱いの容易性の観点からは、合成原料としてはトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーが好ましい。
反応工程では、上記合成原料を、有機溶剤中、フッ化物存在下、ヘキサフルオロプロピレンオキシドと反応させる。有機溶剤としては、反応に不活性なものであれば特に限定されるものではない。有機溶剤としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤が挙げられる。有機溶媒は、一種単独で使用してもよく、二種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。有機溶剤としては、フッ化物の溶解性の観点からは、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤を一種単独または二種以上任意の割合で混合して使用することが好ましい。反応に使用する有機溶剤の量は、特に限定されないが、通常、反応に供される合成原料に対して、0.3質量倍量〜5.0質量倍量使用することができる。
反応工程に使用するフッ化物は、フッ化物であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属フッ化物、フッ化ベリリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム等のアルカリ土類金属フッ化物、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラプロピルアンモニウムフルオリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド、フェニルトリメチルアンモニウムフルオリド等の有機アンモニウムフルオリド等を挙げることができる。フッ化物は、有機溶剤への溶解性および反応活性の観点から、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラプロピルアンモニウムフルオリドおよびテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリドからなる群から選択される一種以上が好ましい。フッ化物は、一種単独または二種以上を任意の割合で混合して使用することができる。反応に使用するフッ化物の量は、合成原料(即ち、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーおよび/またはトリフルオロピルビン酸フルオリド)のモノマー換算の使用量に対して、0.025モル倍量〜0.50モル倍量の範囲とすることが好ましく、0.05モル倍量〜0.4モル倍量とすることがより好ましい。ここで、上記合成原料のモノマー換算の使用量とは、トリフルオロピルビン酸フルオリドモノマーを用いた場合はそのままの使用量を表し、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを用いた場合はダイマーであることから使用量に2を乗じて表す。反応に使用するフッ化物の量は、合成原料としてトリフルオロピルビン酸フルオリドモノマーを使用する場合は、トリフルオロピルビン酸フルオリドモノマーに対して、0.025モル倍量〜0.50モル倍量の範囲とすることができる。あまりにも少量の添加では反応が遅く、また大量の使用は経済的でないため、0.05モル倍量〜0.4モル倍量使用することが好ましい。合成原料としてトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを使用する場合は、フッ化物の量は、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーに対して、0.05モル倍量〜1.00モル倍量の範囲とすることができ、0.1モル倍量〜0.8モル倍量とすることがより好ましい。
また、フッ化物は、反応工程のみで添加してもよく、または、反応工程後に行われる後述する副生物分解工程および異性化工程のいずれか一方または両方において更に添加することもできる。後者の場合、反応工程において添加されるフッ化物の量は、上記合成原料のモノマー換算の使用量に対して、0.05モル倍量〜0.1モル倍量の範囲とすることが好ましい。上記範囲は、合成原料としてトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを用いる場合については、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーに対するフッ化物の使用量として、0.1モル倍量〜0.2モル倍量の範囲と同義である。このようにフッ化物を分割添加することにより、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の収率が向上する場合がある。
反応工程、副生物分解工程および異性化工程において添加されるフッ化物の合計量は、上記合成原料のモノマー換算の使用量に対して、0.1モル倍量〜0.4モル倍量とすることが好ましい。反応工程、副生物分解工程および異性化工程において添加されるフッ化物の合計量とは、反応工程および副生物分解工程においてフッ化物が添加される場合には、これら2つの工程において添加されるフッ化物の合計量であり、反応工程および異性化工程においてフッ化物が添加される場合には、これら2つの工程において添加されるフッ化物の合計量であり、反応工程および副生物分解工程においてフッ化物が添加される場合には、これら3つの工程において添加されるフッ化物の合計量である。
反応工程に使用するヘキサフルオロプロピレンオキシドの量は、理論的には、反応に供されるトリフルオロピルビン酸フルオリドモノマーに対して、1.00モル倍量以上とすることが好ましく、収率向上の観点からは、1.03モル倍量〜1.25モル倍量とすることが好ましい。なお、原料としてトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを使用する場合は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドの使用量は、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーに対して、2.00モル倍量以上とすることが好ましく、2.05モル倍量〜2.50モル倍量とすることがより好ましい。
反応工程では、反応に供される各種成分の添加順序は特に限定されるものではないが、合成原料、フッ化物および有機溶剤の混合物を調製し、この混合物にヘキサフルオロプロペンオキシドを添加することが好ましい。例えば、合成原料、フッ化物および有機溶剤の混合物を調製し、この混合物を−20℃〜60℃の範囲の温度に調整して、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを、0.5時間〜48時間かけて添加する。ヘキサフルオロプロピレンオキシドの添加後、反応工程での目的物であってパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)生成のための中間体であるパーフルオロ(3,5−ジメチル−2−オキソ−1,4−ジオキサン)の生成を完結させるために、上記範囲の温度に2時間〜24時間保持してもよい。反応工程は、好ましくは耐圧容器内で行うことができる。
[副生物分解工程]
上記製造方法では、反応工程後、この工程により得られた反応液の副生物を分解する副生物分解工程が行われる。反応工程での目的物としては、下記式3で表されるパーフルオロ(3,5−ジメチル−2−オキソ−1,4−ジオキサン)を例示でき、目的物はジアステレオマーの混合物として得られてもよい。
一方、反応工程では、目的物に加えて、通常、副生物も生成される。副生物としては、例えば、下記式4で表される化合物を挙げることができる。上記製造方法では、反応工程により得られた反応液を、異性化工程前に副生物分解工程に付す。このことが、異性化工程後に得られるパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の収率を高めることに寄与し得る。
副生物は、加熱により分解(熱分解)させることができる。反応工程により得られた反応液を、好ましくは60℃〜90℃の範囲の温度に加熱することにより、副生物を分解させることができる。なお反応液の加熱温度とは、特記しない限り、反応液の液温をいうものとする。加熱時間は、3時間〜48時間とすることが好ましい。本発明において、副生物分解工程では、副生物は一部またはすべてが分解され得る。副生物分解工程において、副生物は少なくとも一部が分解されればよく、すべてが分解されることは必須ではない。
副生物分解工程は、閉鎖容器内または開放容器内で行うことができる。副生物は熱分解により通常ガス化するため、分解反応の進行に伴い閉鎖容器内の圧力は上昇し得る。副生物の分解反応を良好に進行させる観点からは、閉鎖容器内で分解反応を行う場合には、閉鎖容器内の圧力を脱圧することが好ましい。一態様では、上記反応液を、閉鎖容器内で容器の圧力を脱圧しながら加熱することができる。ここで閉鎖容器内の圧力を、脱圧することにより1.0MPa未満に制御することが好ましく、0.5MPa〜0.9MPaの範囲に制御することがより好ましい。「閉鎖容器」とは、容器内の圧力制御が可能な程度に閉鎖されている容器を意味し、完全に密閉されている必要はなく、容器内から外部への通気や容器外から容器内への通気は許容される。例えば、閉鎖容器内から外部へ気体を排出することにより、閉鎖容器内の圧力を脱圧することができる。また、一態様では、上記反応液を閉鎖容器内で60℃〜90℃の温度で加熱し次いで冷却した後に容器内の圧力を脱圧することを一回行うかまたは複数回繰り返すことができる。こうして閉鎖容器内の圧力を所定圧力以下に制御することができる。所定圧力とは、1.0MPa未満であることが好ましく、0.5MPa〜0.9MPaの範囲であることがより好ましい。かかる態様では、例えば、上記反応液を60℃〜90℃の範囲の温度に加熱する際には閉鎖容器内の圧力は脱圧せず、冷却後に脱圧し、再び上記範囲の温度で脱圧せずに加熱することができる。上記冷却により、例えば上記反応液を室温に冷却することができる。
一方、「開放容器」とは、大気に開放された開口を有する容器を意味する。開放容器内で副生物分解工程を実施すれば、副生物の分解物はガス化して開放容器外に排出されるため、分解反応の進行による容器内の圧力上昇を防止または抑制しながら副生物を分解させることができる。
[異性化工程]
上記製造方法では、副生物分解工程後に異性化工程が行われる。異性化工程は、パーフルオロ(3,5−ジメチル−2−オキソ−1,4−ジオキサン)を、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)へ異性化反応させる工程である。パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)は、下記式5で表され、ジアステレオマーの混合物として得られてもよい。
異性化工程において、通常、副生物分解工程後の反応液を、100℃〜150℃で4時間〜48時間加熱することにより、異性化反応を進行させて異性化を完結させることができる。異性化工程は耐圧容器内で行うことが好ましい。異性化工程を行う容器内の圧力は、0.1MPa〜1.0MPaの範囲にすることが好ましい。異性化工程前に副生物を分解除去しておくことは、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の収率向上に寄与し得る。
異性化工程後、例えば、室温までの冷却および脱圧の後にろ過および上層の有機溶剤層の分離除去を行うことにより、目的物のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)を得ることができる。
上記製造方法により得られるパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)は、例えば、米国特許3308107号明細書に記載された気相で加熱分解する方法、またはMacromolecules 2005,38,4237−4245に記載されたカルボン酸カリウム塩に変換後、加熱分解する方法により、パーフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)へ誘導可能である。
以下、本発明を実施例により更に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。以下に記載の温度は、特記しない限り、反応液の液温である。
以下の分析では、下記機器を使用した。
19F−NMR:ブルカー社(BRUKER)製AVANCE II 400
1.トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの合成例
耐圧が8MPaの撹拌機を備えたSUS316製10Lオートクレーブに4−メトキシベンズアルデヒド(1.95kg、14.32mol)を仕込み、氷浴上で0℃に冷却の後、これにヘキサフルオロプロピレンオキシド(2.51kg、15.12mol)を添加した。
次いで、上記オートクレーブを密閉した後、攪拌しながら55℃まで加熱し3時間反応を行った後、150℃で8時間反応を行った。55℃および150℃でのオートクレーブ内の最大圧力は、それぞれ0.8MPa、0.7MPaであった。
反応終了後、室温まで冷却した後、層分離した上層および下層を分液し、粗トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを得た(淡黄色透明液体、1.92kg)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F−NMRでの定量において、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーが、1.73kg(6.01mol)生成したことを確認した(収率84%、4−メトキシベンズアルデヒド基準)。
2.パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の合成の実施例・比較例
[実施例1]
<反応工程>
耐圧が8MPaの撹拌機を備えたSUS316製500mLオートクレーブ(閉鎖容器)に、上記1.で調製したトリフルオロピルビンフルオリド酸ダイマー(140.8g、純分126.9g、0.441mol)、フッ化物としてフッ化セシウム(16.1g、0.106mol)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(99.3g、0.740mol)を仕込み、氷浴上で0℃に冷却した。ここで、フッ化物の使用量は、合成原料(トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマー)のモノマー換算の使用量に対して0.120モル倍量であり、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの使用量に対して0.240モル倍量である。上記冷却後、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(158.1g、0.952mol)を6時間かけて添加した。この間、温度を0〜10℃に保った。更に、同温度範囲で4時間保持して熟成した後、反応液の一部をサンプリングした。サンプリング液のNMR分析から、パーフルオロ(3,5−ジメチル−2−オキソ−1,4−ジオキサン)が、2種のジアステレオマーとして生成していることを確認した。
19F−NMR(neat,376MHz)
(異性体1)δ−81.63,−81.78,−82.20,−82.95,−117.24、−126.28。
(異性体2)δ−81.63,−82.20,−82.95,−94.58,−113.72、−128.51。
また、サンプリング液中には上記の他、NMRにおいて少なくとも下記シグナルを示す副生物が検出された。
19F−NMR(neat,376MHz)
δ26.88, 26.75,26.61,26.52,−75.90,−76.19,−76.59,−77.04,−77.44,−79.32,−81.07,−81.32,−81.65,−83.64,−83.92,−84.32,−84.66,−85.09,−85.51,−120.43,−120.56,−120.69,−120.92,−129.75,−129.82,−129.87,−130.33。
<副生物分解工程>
上記反応工程後、上記オートクレーブ(閉鎖容器)を80℃に加熱し、5時間加熱した。この間、圧力が0.9MPaに達した時点で容器内の気体を一部排出して脱圧しながら容器内の圧力を0.9MPa以下に保った。その後、オートクレーブを冷却、脱圧後サンプリングしNMR分析を行ったところ、上記の副生物のシグナルが消失していることが確認された。
<異性化工程>
上記副生物分解工程後、上記オートクレーブを再度120℃まで加熱し、24時間異性化反応を行った。この間のオートクレーブ内の最大圧力は0.8MPaであった。
反応終了後、室温まで冷却、分液し、粗パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)を得た(淡黄色液体、257.9g)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F−NMRでの定量において、目的物のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)は205.4g(0.663mol)生成していた(収率75%、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマー基準)。なお、得られた目的物は、2種のジアステレオマーの混合物で、その比は6/4(モル比)であった。
19F−NMR(neat,376MHz)(異性体1)δ23.63,−77.76(d,J=131.6Hz),−80.13,−81.57,−83.56(d,J=135.4Hz),−124.91。(異性体2)δ23.16,−78.45(d,J=131.6Hz),−80.37,−81.56,−84.05(d,J=139.1Hz),−123.72。
[比較例1]
実施例1と同様に反応工程を行い、その後、副生物分解工程の操作を行うことなく、実施例1と同様に異性化工程を実施した。120℃で24時間反応させた際の最大圧力は2.8MPaであった。
反応終了後、実施例1と同様の操作にて反応液を分析したところ、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)は183.2g(0.591mol)生成していた(収率67%、トリフルオロメチルピルビン酸フルオリドダイマー基準)。
[比較例2]
実施例1と同様に反応工程を行い、その後、副生物分解工程の操作を行うことなく、実施例1と同様に異性化工程を実施した。但し、異性化工程において、120℃で反応させる際に圧力が0.9MPaに達した時点で一部を脱圧しながら圧力を0.9MPa以下に保った。反応終了後、実施例1と同様の操作にて反応液を分析したところ、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)は77.7g(0.251mol)生成していた。トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマー基準の収率は28%と低かった。
[実施例2]
<ダイマー反応工程>
耐圧が8MPaの撹拌機を備えたSUS316製500mLオートクレーブ(閉鎖容器)内で、実施例1と同様に反応工程を行った。
<副生物分解工程>
上記反応工程後、上記オートクレーブ(閉鎖容器)を80℃に加熱した。容器内の圧力が0.9MPaに達した時点で一旦室温まで冷却した。その後、容器内の気体を排出して大気圧まで脱圧した後、容器を閉鎖して再度80℃まで加熱した。容器内の圧力が0.9MPaに達した時点で再度室温まで冷却し、脱圧後、再加熱を行った。即ち、一連の工程の間の最高圧力は0.9Mpaであった。80℃での加熱の合計時間が5時間に達した後、オートクレーブを冷却、脱圧後サンプリングしNMR分析を行ったところ、副生物のシグナルが消失していることが確認された。
<異性化工程>
実施例1と同様に異性化反応を行った。反応時のオートクレーブ内の最大圧力は0.8MPaであった。反応終了後、実施例1と同様の操作にて反応液を分析したところ、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)は207.3g(0.669mol)生成していた(収率76%、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマー基準)。
[実施例3]
<ダイマー反応工程>
耐圧が8MPaの撹拌機を備えたSUS316製500mLオートクレーブ(閉鎖容器)内で、実施例1と同様に反応工程を行った。
<副生物分解工程>
上記オートクレーブ上部口を二重管コンデンサに接続し、コンデンサ出口は大気開放とし、二重管の外管には冷却水を通液した。このオートクレーブ(開放容器)を70℃まで加熱し、大気圧下で12時間加熱を継続した。
<異性化工程>
副生物分解工程後にコンデンサを外してオートクレーブを閉鎖した後、実施例1と同様に異性化反応を行った。反応時のオートクレーブ内の最大圧力は0.8MPaであった。反応終了後、実施例1と同様の操作にて反応液を分析したところ、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)は191.7g(0.618mol)生成していた(収率70%、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマー基準)。
[実施例4]
トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマー(140.8g、純分126.9g、0.441mol)に代えてトリフルオロピルビン酸フルオリド(133.2g、純分127.0g、0.882mol、米国特許3308107号明細書の記載に従い合成)を用いた以外は実施例1と同様の操作にて反応工程、副生物分解工程および異性化工程を実施した。ここで、フッ化物の使用量は、上記合成原料のモノマー換算の使用量に対して、換言すればトリフルオロピルビン酸フルオリドの使用量に対して、0.120モル倍量である。異性化工程におけるオートクレーブ内の最大圧力は0.7MPaであった。反応終了後、実施例1と同様の操作にて反応液を分析したところ、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)は196.6g(0.634mol)生成していた(収率72%、トリフルオロピルビン酸フルオリド基準)。
[実施例5〜7]
実施例1と同じ装置を用い、表1に示す条件下にて実施例1と同様の操作にて反応工程、副生物分解工程および異性化工程を実施した。
ここで、各実施例におけるフッ化物の使用量は、合成原料の使用量に対して以下のとおりである。
実施例5については、フッ化物の使用量/合成原料(トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマー)のモノマー換算の使用量=0.090モル倍量、フッ化物の使用量/トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの使用量=0.181モル倍量、である。
実施例6については、フッ化物の使用量/合成原料(トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマー)のモノマー換算の使用量=0.150モル倍量、フッ化物の使用量/トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの使用量=0.299モル倍量、である。
実施例7については、フッ化物の使用量/合成原料(トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマー)のモノマー換算の使用量=0.120モル倍量、フッ化物の使用量/トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの使用量=0.240モル倍量、である。
反応終了後、実施例1と同様の操作にて反応液を分析して求めたパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の収率(トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマー基準)を表1に示す。
以上の結果を、表1(表1−1、表1−2)に示す。表1中、「HFPO」はヘキサフルオロプロピレンオキシド、「TFPVAF−D」はトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマー、「TFPVAF」はトリフルオロピルビン酸フルオリド、「DEGDME」はジエチレングリコールジメチルエーテルを示す。
表1中の結果から、実施例においてパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)が良好な収率で製造されたことが確認できる。
また、工業的観点からは異性化工程における圧力上昇を抑制できることが好ましいのに対し、副生物分解工程の操作を行うことなく異性化工程を実施した比較例1では、異性化工程において、実施例と比べて圧力が大きく上昇した。一方、副生物分解工程を行うことなく異性化工程を実施し、かつ異性化工程において脱圧を実施した比較例2では、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の収率が実施例と比べて大きく低下した。
[実施例8]
<反応工程>
フッ化物としてフッ化セシウム(12.0g、0.079mol)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(74.5g、0.555mol)を用いたこと以外、実施例1と同様に反応工程を行った。ここで、フッ化物の使用量は、合成原料(トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマー)のモノマー換算の使用量に対して0.090モル倍量、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの使用量に対して0.179モル倍量である。
<副生物分解工程>
上記反応工程後、フッ化セシウム(4.1g、0.027mol)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(24.8g、0.185mol)を更に添加した点以外、実施例1と同様に副生物分解工程を実施した。ここでのフッ化物の使用量は、合成原料(トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマー)のモノマー換算の使用量に対して、0.031モル倍量、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの使用量に対して0.061モル倍量である。
<異性化工程>
上記副生物分解工程後、実施例1と同様に、異性化反応を行った。この間のオートクレーブ内の最大圧力は0.8MPaであった。
反応終了後、室温まで冷却、分液し、粗パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)を得た(淡黄色液体、263.6g)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F−NMRでの定量において、目的物のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)は210.6g(0.679mol)生成していた(収率77%、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマー基準)。
本発明は、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造分野、更にはパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)を合成原料として得られるパーフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)の製造分野において有用である。

Claims (20)

  1. 有機溶剤中、フッ化物存在下、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーおよびトリフルオロピルビン酸フルオリドからなる群から選ばれる少なくとも一種の合成原料と、ヘキサフルオロプロピレンオキシドと、を反応させる反応工程と、
    前記反応工程により得られた反応液中の副生物を分解する副生物分解工程と、
    前記副生物分解工程後に異性化工程と、
    を有する、パーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  2. 前記副生物分解工程は、前記反応液を60℃〜90℃の温度で加熱することを含む、請求項1に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  3. 前記副生物分解工程は、閉鎖容器内で行われる、請求項1または請求項2に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  4. 前記閉鎖容器内の圧力を脱圧することを含む、請求項3に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  5. 前記反応液を、前記閉鎖容器内で該容器内の圧力を脱圧しながら60℃〜90℃の温度で加熱することを含む、請求項4に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  6. 前記脱圧により前記閉鎖容器内の圧力を1.0MPa未満に制御することを含む、請求項4または5に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  7. 前記反応液を前記閉鎖容器内で60℃〜90℃の温度で加熱し次いで冷却した後に前記脱圧を行うことを一回以上含む、請求項4に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  8. 前記加熱時の前記閉鎖容器内の圧力は1.0MPa未満である、請求項7に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  9. 前記副生物分解工程は、開放容器内で行われる、請求項1または請求項2に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  10. 前記有機溶剤は、エーテル系溶剤である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  11. 前記エーテル系溶剤は、ジエチレングリコールジメチルエーテルである、請求項10に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  12. 前記フッ化物は、アルカリ金属フッ化物である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  13. 前記アルカリ金属フッ化物は、フッ化セシウムである、請求項12に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  14. 前記反応工程におけるフッ化物の使用量が、前記合成原料のモノマー換算の使用量に対して0.05モル倍量〜0.4モル倍量である、請求項1〜13のいずれか1項に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  15. 前記副生物分解工程および前記異性化工程の一方または両方の工程においてフッ化物を更に添加する、請求項1〜14のいずれか1項に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  16. 前記反応工程におけるフッ化物の使用量が、前記合成原料のモノマー換算の使用量に対して0.05モル倍量〜0.1モル倍量である、請求項15に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  17. 前記反応工程、前記副生物異性化工程および前記異性化反応工程において添加されるフッ化物の合計量は、前記合成原料のモノマー換算の使用量に対して0.1モル倍量〜0.4モル倍量である、請求項15または16に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  18. 前記反応工程において、有機溶剤中、フッ化物存在下、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーと、ヘキサフルオロプロピレンオキシドと、を反応させることを含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  19. 前記反応工程の前に、トリフルオロメチルピルビン酸フルオリドダイマーを合成するダイマー合成工程を更に含む、請求項17に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
  20. 前記反応工程において、有機溶剤中、フッ化物存在下、トリフルオロピルビン酸フルオリドと、ヘキサフルオロプロピレンオキシドと、を反応させることを含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載のパーフルオロ(2,4−ジメチル−2−フルオロホルミル−1,3−ジオキソラン)の製造方法。
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