JP2020183115A - 構造体の補修方法および構造補修成形体の製造方法 - Google Patents

構造体の補修方法および構造補修成形体の製造方法 Download PDF

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浩平 角倉
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Abstract

【課題】接着樹脂注入時における気泡の発生や樹脂先回りを防止し、FRP材における樹脂未含浸部の発生を防ぐことができ、大型既存構造物の補修にも対応可能な補修方法を提供する。【解決手段】構造体をFRP材で補修する方法であって、前記構造体に対して前記FRP材を構成する強化繊維基材を積層して、該強化繊維基材にマトリックス樹脂を注入するとともに、該マトリックス樹脂の余剰分を排出口から排出するに際し、前記強化繊維基材の前記構造体に対向する面とは反対側に複数の樹脂拡散基材を積層し、かつ、該複数の樹脂拡散基材を、前記排出口に近い側の端部が前記排出口から離れる方向に前記強化繊維基材の端部とずらして配置することを特徴とする構造体の補修方法。【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂拡散基材を使用してマトリックス樹脂を注入し構造体の表面にFRP(繊維強化プラスチック)材を積層配置する、構造体の補修方法ならびにその方法を用いる構造補修成形体の製造方法に関するものである。特に、マトリックス樹脂の流動を制御し、樹脂拡散基材内部を流動する樹脂が注入側から吸引側へと順次含浸することなく吸引側への含浸が先に生じること(先回り)を防止できる、または、FRP材における樹脂未含浸部の発生を防止できる、樹脂拡散基材の配置方法などに特徴をもつ構造体の補修方法および構造補修成形体の製造方法に関する。
既設の構造物(例えば、表面材質が鋼やFRPの構造物)の減肉などによる強度不足に対し、補修または補強によりその性能の回復や向上をはかる場合、これまではボルト接合などにより鋼板のあて板をする機械的な補修方法か、溶接や接着によって板厚みを増加させるなどの溶接・接着による補修方法が一般的な方法であった。
しかしながら、そのような機械的な補修では、増設する構造物用部材が鋼製である場合には、重量が大幅に増加するため、設計で考慮すべき作用力が増加するだけでなく、施工現場の作業性にも問題を生じることがあった。また、構造物用部材と母材(既設の構造物)との接合に用いるボルト孔による断面欠損が問題となった。さらに、溶接・接着による補修では、溶接接合部には残留応力が導入されることから、母材に負担を掛けることとなり、新たな欠陥を与える恐れがあるという問題を生じていた。
加えて、構造物が土木建築構造物ではなく船体や車両などである場合については、部品交換を容易に行うことが難しく、洋上での補修や使用を継続しながらの補修が求められるケースも多い。そのような背景から、現場での成形作業による補修施工が可能な技術が求められていた。
このような問題に対して、特許文献1には、強化繊維基材層、および注入樹脂の拡散を促進させるための樹脂拡散ネットの最適な配置方法が開示されている。これによれば、注入樹脂の未含浸部位の発生を容易に抑えられる成形が可能ということであるが、大型構造物に対する補修に適用する場合においては、強化繊維基材の積層枚数が多くなるため、FRP中に気泡や未含浸部が生じやすいという課題が残っていた。
特許文献2には、腐食欠損した既設の鋼構造物に対し、VaRTM成形を採用することにより繊維強化プラスチック(FRP)材の急速成形が可能となり、鋼構造物とFRP材とを合理的に一体化できる成形・接合技術が開示されている。しかしながら、この文献においても、FRPにおける樹脂未含浸部の発生やマトリックス樹脂の先回りを防止する手段については言及されておらず、依然として課題が残っていた。
このように、従来技術では、様々な構造物をFRP材で補修する際に、該FRP材における樹脂未含浸部の発生やマトリックス樹脂の先回りを防ぐことができる補修方法の開発が望まれていた。
特開2007−237605号公報 国際公開第2018/199032号
本発明は、従来技術の背景に鑑み、接着樹脂注入時における気泡の発生や樹脂先回りを防止し、FRP材における樹脂未含浸部の発生を防ぐことができ、大型既存構造物の補修にも対応可能な方法を提供することを目的とする。
本発明者らは前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、以下のいずれかに記載の方法を見いだした。
(1) 構造体をFRP材で補修する方法であって、前記構造体に対して前記FRP材を構成する強化繊維基材を積層して、該強化繊維基材にマトリックス樹脂を注入するとともに、該マトリックス樹脂の余剰分を排出口から排出するに際し、前記強化繊維基材の前記構造体に対向する面とは反対側に複数の樹脂拡散基材を積層し、かつ、該複数の樹脂拡散基材を、前記排出口に近い側の端部が前記排出口から離れる方向に前記強化繊維基材の端部とずらして配置することを特徴とする構造体の補修方法。
(2) 前記構造体と前記強化繊維基材との間に、前記複数の樹脂拡散基材とは別の樹脂拡散基材を配する、前記(1)に記載の構造体の補修方法。
(3) 前記マトリックス樹脂は、前記強化繊維基材の長手方向および/または幅方向の中心線上の複数箇所から注入する、前記(1)または(2)に記載の構造体の補修方法。
(4) 前記マトリックス樹脂を真空吸引により前記強化繊維基材に含浸せしめる、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の構造体の補修方法。
(5) 前記強化繊維基材を複数積層し、かつ、該複数の強化繊維基材を、前記マトリックス樹脂の排出口に近い側の端部が前記構造体に対してテーパー部を形成するようにずらして積層する、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の構造体の補修方法。
(6) 前記構造体の表面粗さRz値が20um以上である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の構造体の補修方法。
(7) 前記構造体が既存の船舶、車両、建築物・橋梁、建築部材、地下設備、高所設備、航空機、鉄道車両、高速車両、風車ブレードおよび高欄のいずれかである、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の構造体の補修方法。
(8) 前記(1)〜(7)のいずれかに記載の補修方法により前記構造体の表面にFRP材を有する構造補修成形体を得る構造補修成形体の製造方法。
本発明の補修方法によれば、マトリックス樹脂の先回りを防止して、強化繊維基材に十分な樹脂を均一に含浸せしめることができ、FRP材における樹脂未含浸部位の発生を防ぐことができる。そして大型の構造体の補修においても、かかる欠点の発生を防ぐことができ、従来技術に比べ短時間にて補修が可能となる。
本発明にかかる構造体の補修方法の一例を示す模式図である。 本発明において想定される複数の樹脂拡散基材の配置状態を示す断面図である。 本発明における、真空注入成形を用いた鋼構造体の補修方法を説明する上面図である。 本発明における、真空注入成形を用いた鋼構造体の補修方法を説明する、別の上面図である。 本発明において想定される複数の樹脂拡散基材の配置状態を示す断面図である。 本発明において想定される、強化繊維基材を複数枚から構成する場合の第1の樹脂拡散基材層と強化繊維基材との関係を示す上面図および断面図である。 本発明において想定される、排出口の吸引端面と強化繊維基材の端部との関係を示す上面図である。
以下、本発明の具体的な態様を、図面を用いて説明する。なお、本発明は図面に記載された構成に限定されるものではない。
本発明にかかる補修方法においては、例えば図1に示すように、補修対象である構造体1aに、強化繊維基材1dを積層するとともに、該強化繊維基材1dの、構造体1aに対向する面とは反対側に、第1の樹脂拡散基材層1fを積層する。構造体1aと強化繊維基材1dとの間には、プライマー層1bおよび第2の樹脂拡散基材層1cを、構造体側からこの順序で介在させ、強化繊維基材1dと第1の樹脂拡散基材層1fとの間には、ピールクロス層1eを介在させる。そして、これをバッグフィルム1gで気密に覆い、この状態で真空度を利用してマトリックス樹脂を注入し、その余剰分を、強化繊維基材の面方向端部付近に配置した排出口1kから真空吸引して排出する。真空吸引を利用して成形することにより、真空脱泡の効果も少なからず得られ、樹脂に内在する微細な気泡の排出にも寄与し、気泡の低減にもつながる。
第1の樹脂拡散基材層1fや第2の樹脂拡散基材層1cは、バッグフィルム1gで気密になる空間に注入するマトリックス樹脂を、強化繊維基材1dの実質的全面に迅速かつ均等にいきわたらせるためのものであるが、本発明においては、少なくとも第1の樹脂拡散基材層1fを複数の樹脂拡散基材から構成するとともに、それら複数の樹脂拡散基材を、マトリックス樹脂の排出口に近い側の端部(以下、排出口側の端部とも称する)が排出口から離れる方向に強化繊維基材1dの端部とずれるように配置する。
被補修体となる構造体としては、特に制限されるものではないが、例えば表面が一般金属材料や繊維強化プラスチックからなる構造体を例示できる。具体的には、例えば建築物、船舶、車両(鉄道車両含む)、航空機、地下設備、高所設備、高欄などである。中でも、腐食により減肉している凹部があることにより、健全部から強度が低下した領域を持ち、しかも補修作業を行う環境として火器を使うことが難しいような構造物は、本発明が好適に対象とすることができる。構造体表面の材質については、特に制限されるものではなく、いわゆる一般鋼材、機械構造用炭素鋼鋼材、一般構造用圧延鋼材、溶接構造用圧延鋼材、アルミニウム、アルミニウム合金、鋳物、銅、ステンレスなどの一般的な金属材料や、炭素繊維、ガラス繊維、樹脂繊維などからなる繊維強化プラスチックを例示できる。中でも鋼材の場合、補修によって形成されるFRPが表面上に密着して十分な接着強度を発現しやすい。
被補修体となる構造体の表面は、接着に好適な表面状態となるように粗くすることが好ましい。特に腐食によって減肉が発生している領域については構造体表面に錆が発生していることも多々あるが、該錆が接着性の障害となるため、適宜状況に応じて削り取り、健全な構造体部分が目視により確認できる程度まで腐食部分を剥がすことが好ましい。具体的には、表面状態を、ISO4287(1997)に準拠して測定したRz値が20um以上となるようにすることが好ましく、より好ましくはRz値が30um以上である。なお、Rz値の上限としては、200um以下であることが好ましく、150um以下であることがより好ましい。さらに、ISO8501−1に規定されている基準を用いて例示すれば、ケレン粗さ規格がST2以上であることが好ましく、Sa2以上とすることがさらに好ましい。
プライマー層1bとしては、特に制限されるものではないが、被補修体となる構造体との接着性が高く、かつマトリックス樹脂の主成分と相溶性が高く、接着強度が保持できる樹脂であればよい。具体例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アミノ樹脂などの熱硬化性樹脂や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂などである。用途等に応じ、熱硬化性樹脂に加えて、耐衝撃性向上のために、ゴム成分などの他のエラストマーを含有しても良いし、種々の機能を与えるために、他の充填材や添加剤を含有してもよい。かかる充填材や添加剤としては、例えば、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤などが挙げられる。これらの中から、成形体のマトリックス樹脂として用いられることが多く、成形体との接着性の観点からエポキシ樹脂が好ましい。
第1の樹脂拡散基材層1fは、マトリックス樹脂が流動する時に素早く一様に拡散することを補助し、強化繊維基材1d内への含浸を補助するための層として機能する。第1の樹脂拡散基材層1fは特に制限されるものではないが、マトリックス樹脂注入時に該樹脂が素早く流動することができるように、適切な空隙を有することが好ましい。そのため網目状物または不連続強化繊維シートが好ましい。
網目状物としては、網目状のフィルム、シート、発泡体などである。該フィルム、シート、発泡体の材質としては、マトリックス樹脂の流動が迅速かつ均等に行われることが確保されるのであれば特に制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または金属などを用いることができる。熱硬化性のマトリックス樹脂を用いる場合はその樹脂の硬化過程に発生する硬化熱に耐えられる耐熱性が必要である。また、作業性を確保するために、樹脂流動によって簡単に移動したり皺や折れが発生したりすることなく、組み付け時にも他の副資材による配置ずれが生じないような、適切な厚みと剛性を持つことが好ましい。
第1の樹脂拡散基材層1fを構成する熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他や、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。熱可塑性樹脂成分としては、耐熱性、耐薬品性の観点からPPSが、成形品外観、寸法安定性の観点からポリカーボネートやスチレン系樹脂が、成形品の強度や耐衝撃性の観点からポリアミドが好ましく用いられる。
第1の樹脂拡散基材層1fを構成する熱硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール(レゾール型)、ユリア・メラミン、ポリイミド等や、これらの共重合体、変性体、および、これらの少なくとも2種をブレンドした樹脂などを使用することができる。さらに耐衝撃性向上等のために、前記熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂またはその他のエラストマーもしくはゴム成分等を添加した樹脂を用いてもよい。コア層を構成する熱可塑性樹脂、および熱硬化性樹脂には、用途等に応じ、樹脂に加えて、耐衝撃性向上のために、ゴム成分などの他のエラストマーを含有しても良いし、種々の機能を与えるために、他の充填材や添加剤を含有してもよい。かかる充填材や添加剤としては、例えば、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤などが挙げられる。
本発明においては、強化繊維基材1dの上側(構造体とは反対側)に配する、この第1の樹脂拡散基材層1fを、複数の樹脂拡散基材を積層することで構成する。かかる構成により、樹脂流動に適切な空隙を形成することができる。第1の樹脂拡散基材層1fにおける複数の樹脂拡散基材の積層数は特に制限されるものではないが、好ましくは2〜10である。より好ましくは2〜7、さらに好ましくは3〜4である。積層数が少なすぎると、十分な樹脂流動を得られない。また、反対に積層数が大きいと、空隙が大きくなりすぎて樹脂が流動しにくく含浸が不足する原因となる。これをふまえ、積層数は3〜4とすることが最も好ましい。
また、未含浸部位の発生を防ぎ均一に樹脂を含浸するためには、該複数の樹脂拡散基材の配置位置を適切に調整する必要がある。すなわち、例えば図1に示すように、第1の樹脂拡散基材層1fを、マトリックス樹脂の排出口1k側の端部において、該排出口1kから離れる方向に強化繊維基材1dの端部とずらして積層する必要がある。強化繊維基材1dに対して、複数の樹脂拡散基材から構成する第1の樹脂拡散基材層1fをこのように配置することで、マトリックス樹脂の先回りを防ぎつつマトリックス樹脂を強化繊維基材1dの全面に迅速かつ均一に広げることができ、FRP材における樹脂未含浸部位の発生を防ぐことができる。
第1の樹脂拡散基材層1fを構成する複数の樹脂拡散基材は、例えば図2(a)に示すように、それらの端部を互いに揃えて配置すればよい。また、マトリックス樹脂の流動性をさらに制御するため、図2(b)〜(d)に示すように、マトリックス樹脂の排出口側の端部において互いにずれるように配置することも好ましい。中でも、マトリックス樹脂の先回りをより確実に防ぐためには、図2(b)に示すように複数の樹脂拡散基材の端部が階段状となるように配置することが好ましい。なお、図2においては省略しているが、図面左側がマトリックス樹脂の排出口側である。
そして、強化繊維基材の厚みや積層枚数、マトリックス樹脂の粘度などに応じて、第1の樹脂拡散基材層1fを構成する複数の樹脂拡散基材のずらし量を調整することも好ましい。マトリックス樹脂の含浸速度を適切に制御することが可能となる。すなわち、図1に示すように、例えば第1の樹脂拡散基材層1fを3枚の樹脂拡散基材を積層することで構成し、マトリックス樹脂排出口側において、強化繊維基材1dの端部から1枚目の樹脂拡散基材の端部までの距離をa、1枚目の樹脂拡散基材の端部から2枚目の樹脂拡散基材の端部までの距離をb、2枚目の樹脂拡散基材の端部から3枚目の樹脂拡散基材の端部までの距離をcとすると、a−b−cの値(すなわちa、b、cそれぞれの値)を調節することで、マトリックス樹脂の含浸速度を適切に制御することが可能となる。なお、樹脂拡散基材の積層数は3枚に限られず、a−b−cの値も積層枚数やその素材・形状に応じて変わる。例えば補修する構造物や減肉状態によって設定した定着長や施工面積や基材の大きさに応じて適切な値をとることが好ましい。補修面積が500mm四方以下で、定着長が100から150mmのときには、a−b−cの値が50mm以下の値となるように調整することを例示できる。一方、マトリックス樹脂の先回りをより確実に防ぐためには、図2に示すいずれの態様においても、強化繊維基材1dの端部から1枚目の樹脂拡散基材の端部までの距離が5〜100mmの範囲となるように配置することが好ましい。さらには20mm以上の値となるように配置することが好ましい。
また、マトリックス樹脂がより素早く、より均等に強化繊維基材1dに含浸するように、第1の樹脂拡散基材層1fを構成する複数の樹脂拡散基材は、図3に示すように、構造体への投影面積において強化繊維基材1dより小さいことが好ましく、マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線に交差する方向(すなわち、強化繊維基材1dの短手方向)において、両端部が強化繊維基材1dより均等に内側に配置されることも好ましい。すなわち、短手方向については、強化繊維基材1dの端辺から樹脂拡散基材の端辺までの距離Aが両端部で実質的に同じとなるように配置することも好ましい。
第1の樹脂拡散基材層1fを構成する複数の樹脂拡散基材は、当該短手方向において、図3に示すように、それら端部を互いに揃えて配置してもよい。短手方向については、樹脂拡散基材が複数積層されていても、主となる樹脂流動方向と基材繊維方向とが直交するため、長手方向への流動よりも、先回りのリスクが少ないことが想定されるからである。ただし、場合に応じて、短手側も図4に示すようにそれら端部が互いにずれるように配置することも好ましい。
次に、第2の樹脂拡散基材層1cは、強化繊維基材1dとプライマー層1bとの間に位置し、該第2の樹脂拡散基材層1cに到達したマトリックスを強化繊維基材1dの下面で面方向に流動させるとともに、強化繊維基材1dへの含浸を下面側から補助する役割をもつ。マトリックス樹脂の含浸は、基材上面から第1の樹脂拡散基材層1fを介して行うだけもよいが、このように基材下面からも第2の樹脂拡散基材層を介して行うことにより、基材への含浸と樹脂流動をより促進することができる。そして、第2の樹脂拡散基材層1cは、マトリックス樹脂が含浸することにより、複合材料化するので、強化繊維基材1dと構造体1aとの界面強度向上にも寄与する。
なお、強化繊維基材の下側(すなわち、構造体に対向する面)に配する第2の樹脂拡散基材層1cも、第1の樹脂拡散基材層1fと同様に複数の樹脂拡散基材で構成してもよいが、その場合には、該第2の樹脂拡散基材層1cをマトリックス樹脂の排出口1k側の端部において、該排出口1kから離れる方向に強化繊維基材1dの端部とずらして積層することが好ましい。
第2の樹脂拡散基材層1cを構成する樹脂拡散基材は特に制限されるものではないが、例えば、連続繊維を短繊維にカットしてシート状にした、不連続強化繊維シートから構成されることが好ましい。
不連続強化繊維シートは、例えば分散媒体に強化繊維の束を投入し、強化繊維を分散媒体中に分散させた後、分散媒体を除去して強化繊維をシート状に巻き取る工程により得られる。あるいは、不連続繊維をシート状に分散させた後、該シートに固定するため、接着樹脂を吹き付ける工程により得られる。
強化繊維としては、材質は特に制限されるものではないが、例えば、アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維などの金属繊維や、アラミド、ポリアミド、PBO、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリエチレン、などの有機繊維や、ガラス繊維、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系などの炭素繊維(黒鉛繊維を含む)、シリコンカーバイト、シリコンナイトライドなどの無機繊維が例示できる。これらの繊維には、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、添加剤の付着処理などの表面処理が施されていても良い。また、これらの繊維は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの繊維の中でも、マトリックス樹脂の流動に供する適切な空隙を保持しやすいこと、そして界面強度、現場施工性の観点から、ガラス繊維、炭素繊維が好ましい。中でも、密になりすぎることを防いでマトリックス樹脂の流動性をより確実に確保するためにはガラス繊維が特に好ましい。
第2の樹脂拡散基材層1cを構成する不連続強化繊維シートの目付けは、特に制限されるものではないが、好ましくは30〜1000g/mであり、この目付け時の厚みは40〜2000μmであることが好ましい。より好ましくは目付けが75〜600g/mであり、この目付け時の厚みは150〜1200μmであることが好ましい。不連続強化繊維シートの目付けが小さすぎると、界面空隙が不足しマトリックス樹脂が流動しにくくなる。また反対に、不連続強化繊維シートの目付けが大きすぎると、マトリックス樹脂の流動が促進されすぎて該樹脂が先回りする原因となる。
また、本発明において第2の樹脂拡散基材層1cは、強化繊維を含む網目状物でもよい。具体的には、上述したような強化繊維を含む樹脂からなる網目状のフィルム、シート、発泡体などである。該フィルム、シート、発泡体は、網目状で、かつ、表層側の強化繊維基材1dとの接着力が確保されるのであれば特に制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または金属などからなるものを用いることができる。
第2の樹脂拡散基材層1cとなるフィルム、シート、発泡体を構成する樹脂としては特に制限はなく、具体例として熱可塑性樹脂では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他や、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。熱可塑性樹脂成分としては、耐熱性、耐薬品性の観点からPPSが、成形品外観、寸法安定性の観点からポリカーボネートやスチレン系樹脂が、成形品の強度や耐衝撃性の観点からポリアミドが好ましく用いられる。
第2の樹脂拡散基材層1cを構成する熱硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール(レゾール型)、ユリア・メラミン、ポリイミド等や、これらの共重合体、変性体、および、これらの少なくとも2種をブレンドした樹脂などを使用することができる。さらに耐衝撃性向上等のために、前記熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂またはその他のエラストマーもしくはゴム成分等を添加した樹脂を用いてもよい。
第2の樹脂拡散基材層1cを構成する熱可塑性樹脂、および熱硬化性樹脂には、用途等に応じ、樹脂に加えて、耐衝撃性向上のために、ゴム成分などの他のエラストマーを含有しても良いし、種々の機能を与えるために、他の充填材や添加剤を含有してもよい。かかる充填材や添加剤としては、例えば、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤などが挙げられる。
そして、強化繊維基材1dを構成する繊維としては、連続繊維でも短繊維でも用いることができるが、連続繊維であることが好ましく、かかる連続繊維としては、例えば、アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維などの金属繊維や、アラミド、ポリアミド、PBO、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリエチレン、などの有機繊維や、ガラス繊維、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系の炭素繊維(黒鉛繊維を含む)、シリコンカーバイト、シリコンナイトライドなどの無機繊維を例示できる。これらの繊維には、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、添加剤の付着処理などの表面処理が施されていても良い。また、これらの繊維は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの繊維の中でも、成形性、重量、強度、現場施工性の観点から炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維が好ましく、とくに炭素繊維を用いるのが好ましい。炭素繊維を用いると、真空吸引を利用してマトリックス樹脂を注入、含浸せしめて得られる構造補修成形体そのものが、高い構造強度を持つことになる。
強化繊維基材1dの形態は特に制限されるものではないが、例えば一方向シートや織物などを採用できる。中でも、マトリックス樹脂の流動が良好で均一になりやすいことから、一方向連続繊維織物や連続繊維を一方向にシート状としたものが好ましい。これらの強化繊維基材は、必要に応じて複数枚積層して事前に賦形したプリフォームの形態で用いる。該基材層表面には、基材固定のためや層間強度を向上するために熱可塑性粒子を散布しても構わない。基材固定することにより、マトリックス樹脂の流動によって基材自体が移動することを防止し、繊維方向が設計荷重方向と一致しないことにより成形後に生じる意図しない強度不良を低減できる上、強化繊維基材の厚み方向のマトリックス樹脂含浸性を大きく向上できる効果も見込める。
また、強化繊維基材1dを複数枚用意してプリフォームにする時には、マトリックス樹脂の排出口側の端部において、それら強化繊維基材の基材端部を、マトリックス樹脂の流動方向に互いにずれるように間隔をあけて重ねることも好ましい。このように、複数の強化繊維基材をずらして積層・予備賦形することにより実質的なテーパー部を設けると、基材積層数が多いときに端部に発生する応力集中を避けることができる。このときのずれ(基材端部の間隔)は、施工面積や基材の大きさに応じて適切な値とすることが望ましい。例えば、補修対象となる構造体が500mm四方の大きさで定着長(強化繊維基材の構造体に対する接着長さ)が100から150mmのときには、定着長に対して約1/10の10mmから15mm程度とすることが例示できる。
本発明において、強化繊維基材の目付けは特に制限されるものではないが、好ましくは200〜1000g/mのシートであり、この目付け時の厚みは100〜1000μmとなる。目付けに関してより好ましくは200〜700g/mであり、その目付け時の厚みは100〜700μmである。目付に関してさらに好ましくは200〜600g/mであり、その目付け時の厚みは100〜600μmである。目付けに関して最も好ましくは300〜600g/mであり、その目付け時の厚みは150〜600μmである。基材の目付けが小さすぎると、力学特性を得るためには多層積層が必要となる。また、反対に基材の目付けが大きすぎると、マトリックス樹脂が含浸しづらくFRPにおいて樹脂未含浸の部位が発生する原因となる。これをふまえ、成形時の取り扱い性のバランスから、目付けは300〜600g/mとすることが最も好ましい。
本発明の補修方法において用いるマトリックス樹脂としては、真空吸引を利用してマトリックス樹脂を注入・排出する場合、粘度が低く強化繊維基材1dへの含浸が容易な熱硬化性樹脂などが好ましい。さらに既設の構造体を現場にて補修する場合、外気温の中での施工が前提となることが多く、常温硬化型の低粘度樹脂であることがより好ましい。かかる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アミノ樹脂などが挙げられる。これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。用途等に応じ、熱硬化性樹脂に加えて、耐衝撃性向上のために、ゴム成分などの他のエラストマーを含有しても良いし、種々の機能を与えるために、他の充填材や添加剤を含有してもよい。特に上記の中で、成形時の熱収縮を抑える目的や耐熱性、硬化物の力学特性の観点から、エポキシ樹脂が好ましい。高い力学特性と耐熱性が求められる用途においてエポキシ樹脂を使用する場合、効果的に真空吸引成形を可能にし、また、粘度を低下させる効果も同時に得るために、適宜主剤、硬化剤の組み合わせを選択することが好ましい。耐油脂性や耐塩素性のため、固化したマトリックス樹脂の上から保護塗装することも状況に応じて実施することが好ましい。
マトリックス樹脂の粘度としては、特に限定されるものではないが、注入時の粘度は、例えば真空吸引を利用してマトリックス樹脂を注入することと、強化繊維基材への含浸性を確保することを考慮して、低粘度であることが好ましい。さらに、本発明の補修方法を施工する場合、外気温環境下での施工になることが多い。エポキシ樹脂は一般的には5度未満では硬化が十分に進行せず硬化不良になることがあるので、施工時の気温には配慮する必要がある。具体的には、外気温5度くらいの低温において5000mPa・s未満、10〜15度くらいの低温において2000mPa・s以下の低粘度樹脂を用いることが好ましい。かかる樹脂は、常温(約23度)にて1000mPa・s以下が好ましく、600mPa・s以下がより好ましい、さらに好ましくは400mPa・s以下、最も好ましくは200mPa・s以下である。可能な限り低粘度であれば好ましい。
なお、樹脂粘度は、補修を行う場所の外気温の影響を受けてある程度上下することが考えられるが、混合する前に予め温調しておき、適切な粘度に調節した上で補修することが好ましい。また、構造体の補修に際しては、施工箇所を覆うように養生して、熱風を送り込むなどし、加熱により粘度を保持するような施工方法も好ましい。あるいは、より簡易的に温度を保持するように、断熱材をバッグフィルム上から一時的に貼り付けるなどして固定しておくことも好ましい。
以上のように各基材を配置することにより、本発明においては、樹脂未含浸部位や気泡の発生を防止・抑制しながら、短時間で樹脂を含浸させて成形することができる。そして、強化繊維基材の積層枚数が多く、成形後の板厚が10mmを超えるような厚板の強化繊維基材においても速やかに樹脂を含浸させることができ、構造補修成形体の製造時間を大幅に短縮することができる。また、本発明によれば、火器を用いず各種形状に沿って補修成形できるので、船舶、車両、建築物・橋梁、建築部材、地下設備、高所設備、航空機、鉄道車両、高速車両、風車ブレードおよび高欄などの多くの製品分野でも利用することができる。
さらに、本発明においては、上述したように強化繊維基材を複数枚から構成し、マトリックス樹脂の排出口側の端部において構造体に対してテーパー部を形成するようにずらして積層する場合にも好適である。該テーパー部上に第1の樹脂拡散基材層1fが重なると、テーパー部は強化繊維基材の厚みが他より薄い領域となっているため、強化繊維基材の厚みが十分厚い領域に比較して樹脂含浸が速くなり樹脂の先回りが懸念される。しかしながら、本発明においては、第1の樹脂拡散基材層1fを複数の樹脂拡散基材から構成するとともに、該複数の樹脂拡散基材の端部が強化繊維基材の端部とずれるように配し、前記テーパー部の端部にまでは樹脂拡散基材が重ならないように調整することで、樹脂の先回りを防止することができる。なお、重ねる位置や各基材の積層枚数、テーパー間隔(隣接する強化繊維基材の端部のずれ)などは所望する樹脂の流動速度に応じて適宜設定すればよい。
強化繊維基材1dを複数枚から構成してテーパー部を形成する場合には、第1の樹脂拡散基材層1fを構成する複数の樹脂拡散基材は、例えば図5に示すように配置すればよい。すなわち、図5(a)に示すように、それらの端部を互いに揃えて配置したり、また、マトリックス樹脂の流動性をさらに制御するため、図5(b)〜(d)に示すように、マトリックス樹脂の排出口側の端部において互いにずれるように配置すればよい。中でも、マトリックス樹脂の先回りをより確実に防ぐためには、図5(b)に示すように複数の樹脂拡散基材の端部が階段状となるように配置することが好ましい。なお、図5においては、省略しているが、図面左側がマトリックス樹脂の排出口側である。
また、前記テーパー部の、強化繊維基材の積層枚数が他の箇所より少ない箇所(例えば、最内層側に配置された強化繊維基材だけでテーパー部を構成する箇所)の上に複数の第1の樹脂拡散基材層1fを配置すると、基材樹脂が流動しすぎて先回りの原因となることも考えられる。先回りを避けるため、テーパー間隔が5〜15mm未満と小さい場合には、図6(a)に示すように、最外層側に配された強化繊維基材の上に第1の樹脂拡散基材層1fの端部が配されるようにすることが好ましい。そして、テーパー間隔が5〜15mm未満と小さく、かつ、積層数が少ない場合には、面方向におけるテーパー部の長さが短いため、最外層側に配された強化繊維基材の上に第1の樹脂拡散基材層1fの端部が配されるように配置しても、樹脂の含浸が進みにくくなるなどの問題が発生しにくいが、テーパー間隔が15mm以上ある場合や、積層数が多い場合には、テーパー部での樹脂含浸が進みにくくなる恐れがある。その場合には、図6(b)に示すように、テーパー部1d´の途中に第1の樹脂拡散基材層1fの端部が配されるようにしたり、さらには第1の樹脂拡散基材層1fを構成する複数の樹脂拡散基材をずらして配することも好ましい。その場合、強化繊維基材の全厚み1tの40〜50%の範囲の厚み(例えば厚み1/2t)を有するテーパー部のところ1d´に第1の樹脂拡散基材層1fの端部が配されるようにすることが、特に好ましい。
排出口1kの吸引端面1mを構成する材質は、吸引を促す空気の流れを確保できれば特に限られるものではない。具体例としては、工業用紙ウエス、産業用紙ワイパー、紙製ハニカム、パルプ製のライナと中芯構造(段ボール)、C型形状のアルミ型材、アルミチャンネルが挙げられる。成形体が小型であれば、工業用紙ウエス、産業用紙ワイパーを用いることが好ましい。大型である場合には、工業用紙ウエスも用いられるが、なるべく長時間吸引状態を保持できるように、アルミ型材のように目詰まりなく、長時間にわたり流動する空間を確保できるものが好ましい。
また吸引端面1mの長さや幅、さらにはそれを構成する部材の厚みについても、樹脂の流動速度に応じて適宜調整すれば良い。図6に示すように、強化繊維基材の幅方向において吸引端面の幅Wを強化繊維基材の幅と同等にすることにより、該強化繊維基材の幅方向に亘って均一に吸引することが可能となりやすい。しかし、強化繊維基材の幅と同等にすることによって吸引が強くなりすぎて、樹脂の先回りが生じるようであれば、吸引端面1mの構成部材の組織を密に、また、大きさを小さくするほど、樹脂の流れを遅くし、樹脂の先回りを抑制することができる。この場合には、成形時間が伸びることになる。このように、第1の樹脂拡散基材層で樹脂流動層を確保するとともに、吸引端面1mの大きさを調整することによって吸引状態の調整を適切に行うことで、良好な樹脂の含浸状態を得ることができる。なお、樹脂の含浸は、もちろんポンプ出力で調整してもよい。ポンプ出力の選択肢が限られる場合に、上記のような調整方法により、簡易的かつ効果的に樹脂流動を制御することができる。
さらに、吸引側における吸引端面1mと強化繊維基材1dの端部とは、図7に示すように、互いに距離をあけるように配置することが好ましい。その距離Bについては、特に制限するものではないが、例えば1〜100mmの範囲とすることが好ましい。より好ましくは10〜50mmの範囲である。吸引側における吸引端面1mと強化繊維基材1dの端部とを密着する状態にした場合、強化繊維基材1dの端部から最初に樹脂が染み出た部分と吸引端面1mと接するところから積極的に樹脂が排出される形となって、吸引側における強化繊維基材の端部での樹脂未含浸を生じる原因となり得る。また反対に、吸引側における吸引端面1mと強化繊維基材1dの端部とを必要以上に離した場合、樹脂吸引は長時間で確保することにつながり、上記した未含浸部分の発生のリスクは少ないが、副資材が全体的に大きくコスト面で無駄が生じる。
さらに本発明においては、例えば図3に示すように腐食により減肉した領域2を持つ構造体1aを、必要に応じて腐食により錆が生じている部分を削り落として表面粗度を適正な状態に処置してから、補修することも好適である。表面粗さを制御した後の補修方法としては、他の構造体を補修する場合と同様であり、例えば次のように行う。
表面粗さを制御した構造体1aの、強化繊維基材が接着される領域にプライマーを塗布し、養生してプライマーが指触硬化状態(手で触れて指紋がつかない程度)にあることを確認した後、補修対象となる減肉部分を強化繊維基材の中央にした状態で、第2の樹脂拡散基材層(図示しない)、強化繊維基材1dをこの順序で積層し、さらに、硬化後に余剰樹脂を取り除くためのピールクロス(図示しない)を、強化繊維基材系全体を覆うような大きさで一枚重ねて配置する。その上から第1の樹脂拡散基材層1fを配置する。このとき、第1の樹脂拡散基材層1fを複数の樹脂拡散基材から構成するが、マトリックス樹脂の排出側となる強化繊維基材1dの短手辺端部から1枚目の樹脂拡散基材の端部がずれるように、配置する。続けて2枚目の樹脂拡散基材を、1枚目の樹脂拡散基材の端部と2枚目の樹脂拡散基材の端部とがずれるように配置する。
仕上げに排出口と注入口のみを開口部とするように、系全体を密閉用フィルム(バッグフィルム)で覆い、密着性軟質テープでフィルムを固定したら、フィルムにしわが寄らないようにしながら、系を真空状態にする。真空状態のまま含浸樹脂を注入口から注入する。マトリックス樹脂の注入経路は、注入口となるプラスチックチューブに樹脂拡散用にらせん状の切り目が入ったチューブ(スパイラルチューブ)をつなぎ、スパイラルチューブを覆うように巻いたメッシュ布と第1の樹脂拡散基材層1fの注入側端部が重なるようにすることにより、樹脂の流動路として形成される。樹脂は例えば真空による吸引力により、スパイラルチューブから樹脂拡散基材を伝って一気に強化繊維基材の上下に拡散し、その後基材の厚み方向に徐々に含浸する。
養生して樹脂が硬化状態になったら、バッグフィルム、密着性軟質テープ、第1の樹脂拡散基材層、吸引・注入チューブなどの副資材を取り除くと補修成形が施された状態となる。
さらに、本発明においては、図4に示すように、マトリックス樹脂の注入口を強化繊維基材の中央に敷設し、基材繊維方向(マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線の方向)の両端部にマトリックス樹脂の排出口を敷設してもよい。また注入口は、強化繊維基材の幅で強化繊維基材の繊維方向と直角に直線的に広げるように敷設することも好ましい。注入口を幅方向に拡大すれば短時間で広範囲に樹脂注入が可能となる。こうすることにより、施工面積が大きいとき、積層枚数が多いときにも、効果的に樹脂を拡散することが可能となる。
注入口の個数については、中央一点に制限されるものではなく、例えば、強化繊維基材の長手方向および/または幅方向の中心線上に複数箇設けてもよい。より具体的には、強化繊維基材がマトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線の方向(またはそれに交差する方向)に長尺であるときには、該長尺な方向における中心線上に複数個の注入口を敷設したり、該長尺な方向に交差する方向における中心線上に複数個の注入口を敷設したりして、それら中心線上の複数箇所からマトリックス樹脂を注入することが好ましい。こうすることにより、樹脂拡散と含浸をより均一かつ滞りなく実施することができる。
また、注入口は、必ずしも基材繊維方向に交差する方向の中央に設ける必要はなく、補修箇所の形状や想定される樹脂流動に応じて、その位置を調節したりすることも好ましい。強化繊維基材において樹脂が含浸しにくい箇所、すなわち、例えば積層枚数が多く樹脂が含浸しにくい箇所や三次元的に強化繊維基材がL型等に折れている箇所、の場合さらに強化繊維基材の形状が直方形ではなく、面内上に複数の長方形を組み合わせたような形状や、弓状、三日月状、中央がくり抜かれた枠状の場合には、該箇所・形状の端部にそれぞれの注入口を設け、複数点で注入することが好ましい。また単純に強化繊維基材が大面積である場合にも複数点で注入する効果は大きい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、下記の実施例は本発明を制限するものではない。
[鋼材の表面粗さ測定]
ISO4287(1997)に準拠して鋼材の表面粗さを12点で測定し、その算術平均値をRz値として採用した。なお、表面粗さ測定器としては、株式会社ミツトヨ製小型表面粗さ測定機サーフテストSJ−210を用い、測定ヘッドは、表面処理の際に“Bristle Blaster”によってケレンした操作方向と平行となるように走査した。また、測定条件は、測定ストローク17.5mm、測定速度0.5mm/s、カットオフ値0.3mm、フィルタ種別ガウシアン、傾斜補正無しであった。
[マトリックス樹脂の注入評価]
マトリックス樹脂(2液混合型エポキシ樹脂)を注入口から真空吸引を利用して注入し、排出口1kに樹脂が確認されるまで注入を継続した。このときの樹脂の進行状況を、アクリル製テーブルの上面側からは直接観察して、また下面側からはビデオカメラで撮影して、確認した。強化繊維基材の上下面の一方の側のみでマトリックス樹脂が先に排出口側端部に到達した場合を、「先回り」と判断し、先回りが発生しなかった場合をA、先回りが発生した場合をFとした。また、マトリックス樹脂が排出口1kに到達するまでにかかった時間を「含浸時間」として測定し、その時間が15分未満をA、15分以上30分未満をB、30分以上60分未満をC、60分以上をFとした。
さらに、樹脂注入を終えた後、強化繊維基材の、樹脂進行方向(マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線方向)における中央部および両端部から幅10mmの短冊状サンプルを合計3つ切り出し、該サンプルの断面観察を行うことで強化繊維基材への樹脂含浸状況を確認した。3つのサンプルいずれにおいても樹脂未含浸部位が認められない場合をA、1つのサンプルで樹脂未含浸部位が認められた場合をB、2つのサンプルで樹脂未含浸部位が認められた場合をC、すべてのサンプルで樹脂未含浸部位が認められた場合をFと表記した。
[引き剥がし強度]
成形体から、ウォータージェット加工により、幅25mmの短冊状の試験片を5つ切り出し、それぞれについて、MTS社製引張り試験機 810 Material Test Systemを用いて引き剥がし強度を測定した。試験速度は1mm/minとした。5つの試験片の平均値が50kN以上の場合をA、20kN以上50kN未満をB、10kN以上20kN未満をC、10kN未満をFとした。
[樹脂粘度測定]
マトリックス樹脂注入評価における樹脂注入時の樹脂粘度を確認するため、リオン株式会社製ビスコテスタVT−06を用いて、樹脂粘度を測定した。すなわち、樹脂注入開始1分後にビスコテスタVT−06に付属の3号カップに樹脂を入れて、3号ロータを用いて実験室内にて測定した。
(実施例1)
まず、マトリックス樹脂の含浸状態を下方から観察するために、透明なアクリル製のテーブル上に離型フィルムを固定し、その上に、補修対象である構造体1aおよびプライマー層1bを除く他は、図1に示す通りに、各基材を積層した。
なお、第2の樹脂拡散基材層1cとしては、日東紡(株)製ガラスチョップドストランドマットを一層積層した。
強化繊維基材1dとしては、東レ(株)製“トレカ”(登録商標)UM46−40Pの炭素繊維一方向織物を7層積層した状態で、家庭用アイロンによって仮溶着してプリフォーム化したもの(サイズ600mm×250mm)を使用した。このとき、修復領域を覆い、定着長が100mm、7層分の基材各層のずれが10mmずつ、テーパー部1d´が60mmとなるように、カット・積層し、その上からアイロンを押しつけて、散布された熱可塑性粒子を融着させることによって、仮固定した。
ピールクロス層1eとしては、AIRTECH社製“RELEASE EASE”(登録商標)234TFP HPを用いた。
第1の樹脂拡散基材層1fとしては、網目状プラスチックシート(東京ポリマー(株)製TSX400−P)を3枚重ねて積層した。このとき、図3に示すように、マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線の方向に関して、マトリックス樹脂の排出口側となる端部において、強化繊維基材の端部から1枚目の樹脂拡散基材の端部までの距離aが50mmの距離となるように1枚目の樹脂拡散基材をずらして配置し、続けて2枚目の樹脂拡散基材は、1枚目の樹脂拡散基材の端部と2枚目の樹脂拡散基材の端部の距離bが30mmとなるように、さらに3枚目の樹脂拡散基材は、2枚目の樹脂拡散基材の端部と3枚目の樹脂拡散基材の端部の距離cが30mmとなるように、ずらして配置した。また、マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線に交差する方向に関しては、強化繊維基材の端部から樹脂拡散基材の端部までの距離Aが10mmの距離となるように配置した。
そして、これらを囲うようにして、バッグフィルム固定用の密着性軟質シールテープ(シーラントテープ)をアクリル製テーブル上へ接着した。次に、樹脂の注入口1iとなるチューブにスパイラルチューブを連結し、スパイラルチューブを包むメッシュ布を、第2の樹脂拡散基材層1cと第1の樹脂拡散基材層1fとは干渉し、強化繊維基材にまでは重ならない位置に長さを調整して配置した。樹脂の排出口1kの吸引断面1mには、フィルムを吸わないように工業用紙ウエスを配置した。各々がずれてしまわないようにポリエステルテープで固定した状態で、これら樹脂の注入口1i、排出口1kのみが口を出す状態で、バッグフィルム1gで上記積層体を包み、ポンプで吸引して真空度が−95Pa以上を1min以上維持できる状態にして、注入口1i、排出口1k、チューブをクリップした。
このようにして得られた組立体に対して上記の樹脂注入評価を行った。このとき、注入開始1分後の樹脂粘度も測定した。
次に、腐食が進んだ溶接構造用圧延鋼材SM490Aの平板(長さ450mm×幅250mm)を2枚用いて、以下のように模擬的に補修を行った。
まず、鋼材平板の補修範囲となる表面を、ディスクグラインダーおよびゴトー電機(株)製の“Bristle Blaster”(登録商標)を用いて、表面処理(ケレン:腐食した鋼材表面を削り取る作業)し、表面粗さを測定した。このようにした鋼材平板2枚を、長さ250mmの辺を互いに突き合わせ、それら2枚の鋼材上下面の、長さ250mmの辺の両端部に、前述の突き合わせ面が中心となるように当て板(長さ400mm×幅20mm)を配してボルトで固定した。なお、突き合わせ面には、コニシ(株)製化学反応型接着剤クイックメンダーを配し、さらにプライマー層1bの塗布時にコニシ(株)製E258R突き合わせ面の隙間を埋めるよう配した。
このように固定した鋼材の上に、プライマー層1bとしてコニシ(株)製E258Rを、成形投影面積に対して200g/mとなるように塗布し、指触硬化状態になるまで12時間以上養生した。そして、この鋼材の上に、図1に示す通り上記組立体と同様の基材を積層した。ただし、バッグフィルム固定用の密着性軟質シールテープは鋼材へ接着した。
この組立体に対して、注入口から真空吸引を利用してマトリックス樹脂を流し込み、24時間後に副資材部分を取り除き成形体を得た。
この成形体について、上記の引き剥がし強度の測定を行った。各評価結果を表1に示す。
(実施例2)
第1の樹脂拡散基材層を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。すなわち、マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線に交差する方向に関して、強化繊維基材の端部から樹脂拡散基材の端部までの距離Aが5mmの距離となるようにした。結果を表1に示す。
(実施例3)
第1の樹脂拡散基材層を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。すなわち、マトリックス樹脂の排出口側となる端部において、強化繊維基材の端部から1枚目の樹脂拡散基材端部までの距離aが30mmの距離となるように1枚目の樹脂拡散基材をずらして配置し、続けて2枚目の樹脂拡散基材を、1枚目の樹脂拡散基材の端部と2枚目の樹脂拡散基材の端部の距離bが20mmとなるように、さらに3枚目の樹脂拡散基材を、2枚目の樹脂拡散基材の端部と3枚目の樹脂拡散記載の端部の距離cが20mmとなるように、ずらして配置した。また、マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線に交差する方向に関しては、強化繊維基材の長手辺縁部から樹脂拡散基材の辺縁部までの距離Aが5mmの距離となるようにした。結果を表1に示す。
(実施例4)
マトリックス樹脂の注入口を以下のようにした以外は実施例1と同様にした。すなわち、マトリックス樹脂の注入を、図4に示すように強化繊維基材の中心から行った。そのため、注入口となるプラスチックチューブの軸方向に切り目を入れて三方へ開いたチューブを樹脂拡散基材上にテープで固定し、樹脂の流動路を形成した。結果を表1に示す。
(実施例5)
マトリックス樹脂の注入口を以下のようにした以外は実施例3と同様にした。すなわち、マトリックス樹脂の注入を、図4に示すように強化繊維基材の中心から行った。そのため、注入口となるプラスチックチューブの軸方向に切り目を入れて三方へ開いたチューブを樹脂拡散基材上にテープで固定し、樹脂の流動路を形成した。結果を表1に示す。
(実施例6)
以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。すなわち、強化繊維基材1dについては、7層分の基材各層のずれが5mmずつ、テーパー部1d´が30mmとなるように、カット・積層し、その上からアイロンを押しつけて、散布された熱可塑性粒子を融着させることによって、仮固定した。さらに第1の樹脂拡散基材層については、マトリックス樹脂の排出口側となる端部において、強化繊維基材の端部から1枚目の樹脂拡散基材端部までの距離aが35mmの距離となるように1枚目の樹脂拡散基材をずらして配置し、続けて2枚目の樹脂拡散基材を、1枚目の樹脂拡散基材の端部と2枚目の樹脂拡散基材の端部の距離bが20mmとなるように、さらに3枚目の樹脂拡散基材を、2枚目の樹脂拡散基材の端部と3枚目の樹脂拡散記載の端部の距離cが20mmとなるように、ずらして配置した。また、マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線に交差する方向に関しては、強化繊維基材の長手辺縁部から樹脂拡散基材の辺縁部までの距離Aが10mmの距離となるようにした。結果を表1に示す。
(実施例7)
以下のようにした以外は、実施例6と同様にした。すなわち、強化繊維基材1dについては、7層分の基材各層のずれが10mmずつ、テーパー部1d´が60mmとなるように、カット・積層し、その上からアイロンを押しつけて、散布された熱可塑性粒子を融着させることによって、仮固定した。さらに第1の樹脂拡散基材層については、マトリックス樹脂の排出口側となる端部において、強化繊維基材の端部から1枚目の樹脂拡散基材端部までの距離aが60mmの距離となるように1枚目の樹脂拡散基材をずらして配置し、続けて2枚目の樹脂拡散基材を、1枚目の樹脂拡散基材の端部と2枚目の樹脂拡散基材の端部の距離bが20mmとなるように、さらに3枚目の樹脂拡散基材を、2枚目の樹脂拡散基材の端部と3枚目の樹脂拡散記載の端部の距離cが20mmとなるように、ずらして配置した。また、マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線に交差する方向に関しては、強化繊維基材の長手辺縁部から樹脂拡散基材の辺縁部までの距離Aが10mmの距離となるようにした。結果を表1に示す。
(実施例8)
以下のようにした以外は、実施例6と同様にした。すなわち、強化繊維基材1dについては、7層分の基材各層のずれが20mmずつ、テーパー部1d´が120mmとなるように、カット・積層し、その上からアイロンを押しつけて、散布された熱可塑性粒子を融着させることによって、仮固定した。さらに第1の樹脂拡散基材層については、マトリックス樹脂の排出口側となる端部において、強化繊維基材の端部から1枚目の樹脂拡散基材端部までの距離aが70mmの距離となるように1枚目の樹脂拡散基材をずらして配置し、続けて2枚目の樹脂拡散基材を、1枚目の樹脂拡散基材の端部と2枚目の樹脂拡散基材の端部の距離bが20mmとなるように、さらに3枚目の樹脂拡散基材を、2枚目の樹脂拡散基材の端部と3枚目の樹脂拡散記載の端部の距離cが20mmとなるように、ずらして配置した。また、マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線に交差する方向に関しては、強化繊維基材の長手辺縁部から樹脂拡散基材の辺縁部までの距離Aが10mmの距離となるようにした。結果を表1に示す。
(実施例9)
以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。すなわち、強化繊維基材1dについては、積層数を5層とし、基材各層のずれはなく、0mmとなるように、カット・積層し、その上からアイロンを押しつけて、散布された熱可塑性粒子を融着させることによって、仮固定した。さらに第1の樹脂拡散基材層については、実マトリックス樹脂の排出口側となる端部において、強化繊維基材の端部から1枚目の樹脂拡散基材端部までの距離aが50mmの距離となるように1枚目の樹脂拡散基材をずらして配置し、続けて2枚目の樹脂拡散基材を、1枚目の樹脂拡散基材の端部と2枚目の樹脂拡散基材の端部の距離bが30mmとなるように、さらに3枚目の樹脂拡散基材を、2枚目の樹脂拡散基材の端部と3枚目の樹脂拡散記載の端部の距離cが30mmとなるように、ずらして配置した。また、マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線に交差する方向に関しては、強化繊維基材の長手辺縁部から樹脂拡散基材の辺縁部までの距離Aが10mmの距離となるようにした。結果を表2に示す。
(実施例10)
強化繊維基材1dについて、積層数を7層とした以外は、実施例9と同様にした。
(実施例11)
強化繊維基材1dについて、積層数を9層とした以外は、実施例9と同様にした。
(実施例12)
強化繊維基材1dについて、積層数を11層とした以外は、実施例9と同様にした。
(実施例13)
第1の樹脂拡散基材層を以下のようにした以外は、実施例10と同様にした。すなわち、マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線に交差する方向に関して、強化繊維基材の端部から樹脂拡散基材の端部までの距離Aが5mmの距離となるようにした。結果を表2に示す。
(実施例14)
第1の樹脂拡散基材層を以下のようにした以外は、実施例10と同様にした。すなわち、マトリックス樹脂の排出口側となる端部において、強化繊維基材の端部から1枚目の樹脂拡散基材端部までの距離aが30mmの距離となるように1枚目の樹脂拡散基材をずらして配置し、続けて2枚目の樹脂拡散基材を、1枚目の樹脂拡散基材の端部と2枚目の樹脂拡散基材の端部の距離bが20mmとなるように、さらに3枚目の樹脂拡散基材を、2枚目の樹脂拡散基材の端部と3枚目の樹脂拡散記載の端部の距離cが20mmとなるように、ずらして配置した。また、マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線に交差する方向に関しては、強化繊維基材の長手辺縁部から樹脂拡散基材の辺縁部までの距離Aが5mmの距離となるようにした。結果を表2に示す。
(実施例15)
マトリックス樹脂の注入口を以下のようにした以外は実施例10と同様にした。すなわち、マトリックス樹脂の注入を、図4に示すように強化繊維基材の中心から行った。そのため、注入口となるプラスチックチューブの軸方向に切り目を入れて三方へ開いたチューブを樹脂拡散基材上にテープで固定し、樹脂の流動路を形成した。結果を表2に示す。
(実施例16)
マトリックス樹脂の注入口を以下のようにした以外は実施例14と同様にした。すなわち、マトリックス樹脂の注入を、図4に示すように強化繊維基材の中心から行った。そのため、注入口となるプラスチックチューブの軸方向に切り目を入れて三方へ開いたチューブを樹脂拡散基材上にテープで固定し、樹脂の流動路を形成した。結果を表2に示す。
(比較例1)
第1の樹脂拡散基材層を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。すなわち、マトリックス樹脂の排出口側となる端部において強化繊維基材とのずれがないように、かつ、マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線に交差する方向に関しても強化繊維基材とのずれがないようにした。結果を表3に示す。
(比較例2)
第1の樹脂拡散基材層を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。すなわち、第1の樹脂拡散基材層を樹脂拡散基材1枚で構成するとともに、マトリックス樹脂の排出口側となる端部において強化繊維基材とのずれがないように、かつ、マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線に交差する方向に関しても強化繊維基材との間にずれがないようにした。結果を表3に示す。
(比較例3)
第1の樹脂拡散基材層を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。すなわち、第1の樹脂拡散基材層を樹脂拡散基材1枚で構成するとともに、マトリックス樹脂の排出口側となる端部において強化繊維基材の端部から該樹脂拡散基材縁部までの距離aが50mmの距離となるように樹脂拡散基材をずらして配置した。結果を表3に示す。
(比較例4)
第1の樹脂拡散基材層を以下のようにした以外は、実施例2と同様にした。すなわち、第1の樹脂拡散基材層を樹脂拡散基材1枚で構成するとともに、マトリックス樹脂の排出口側となる端部において強化繊維基材の端部から該樹脂拡散基材縁部までの距離aが50mmの距離となるように樹脂拡散基材をずらして配置した。結果を表3に示す。
(比較例5)
第1の樹脂拡散基材層を以下のようにした以外は、実施例6と同様にした。すなわち、マトリックス樹脂の排出口側となる端部において、強化繊維基材の端部から1枚目の樹脂拡散基材端部までの距離aが0mmの距離となるように1枚目の樹脂拡散基材をずらさず配置し、続けて2枚目の樹脂拡散基材を、1枚目の樹脂拡散基材の端部と2枚目の樹脂拡散基材の端部の距離bが20mmとなるように、さらに3枚目の樹脂拡散基材を、2枚目の樹脂拡散基材の端部と3枚目の樹脂拡散記載の端部の距離cが20mmとなるように、ずらして配置した。また、マトリックス樹脂の注入口と排出口とを結ぶ線に交差する方向に関しては、強化繊維基材の長手辺縁部から樹脂拡散基材の辺縁部までの距離Aが10mmの距離となるようにした。結果を表3に示す。
本発明により、効果的な樹脂拡散と樹脂未含浸部位の発生防止とを両立でき、かつ大型補修体の成形にも対応可能となるため、前記の現場施工性が求められる補修分野などにも制限なく利用可能であり、各種形状に沿って補修成形が可能である。例えば風車ブレード、航空機部材、高速車両部材、鉄道車両部材、建築部材、橋梁、船舶などの多くの製品分野でも利用することができる。
1a 被補修体(金属材料)
1b プライマー層
1c 第2の樹脂拡散基材層
1d 強化繊維基材
1e ピールクロス層
1f 第1の樹脂拡散基材層
1g バッグフィルム
1h 密着性軟質シールテープ
1i 注入口(スパイラルチューブ)
1j 真空ポンプ
1k 排出口
1m 排出口の吸引端面
2 腐食等による減肉部

Claims (8)

  1. 構造体をFRP材で補修する方法であって、前記構造体に対して前記FRP材を構成する強化繊維基材を積層して、該強化繊維基材にマトリックス樹脂を注入するとともに、該マトリックス樹脂の余剰分を排出口から排出するに際し、
    前記強化繊維基材の前記構造体に対向する面とは反対側に複数の樹脂拡散基材を積層し、
    かつ、該複数の樹脂拡散基材を、前記排出口に近い側の端部が前記排出口から離れる方向に前記強化繊維基材の端部とずらして配置する
    ことを特徴とする構造体の補修方法。
  2. 前記構造体と前記強化繊維基材との間に、前記複数の樹脂拡散基材とは別の樹脂拡散基材を配する、請求項1に記載の構造体の補修方法。
  3. 前記マトリックス樹脂は、前記強化繊維基材の長手方向および/または幅方向の中心線上の複数箇所から注入する、請求項1または2に記載の構造体の補修方法。
  4. 前記マトリックス樹脂を真空吸引により前記強化繊維基材に含浸せしめる、請求項1〜3のいずれかに記載の構造体の補修方法。
  5. 前記強化繊維基材を複数積層し、かつ、該複数の強化繊維基材を、前記マトリックス樹脂の排出口に近い側の端部が前記構造体に対してテーパー部を形成するようにずらして積層する、請求項1〜4のいずれかに記載の構造体の補修方法。
  6. 前記構造体の表面粗さRz値が20um以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の構造体の補修方法。
  7. 前記構造体が既存の船舶、車両、建築物・橋梁、建築部材、地下設備、高所設備、航空機、鉄道車両、高速車両、風車ブレードおよび高欄のいずれかである、請求項1〜6のいずれかに記載の構造体の補修方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の補修方法により、前記構造体の表面にFRP材を有する構造補修成形体を得る構造補修成形体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2021230343A1 (ja) * 2020-05-14 2021-11-18 学校法人金沢工業大学 フローメディア、frp成形品及びfrp成形品の製造方法

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