以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、充電システムの全体構成を概略的に示す図である。図1を参照して、充電システム9は、あるユーザの車両1と、充電器3と、充電器3から延びる充電ケーブル4とを含む。
車両1は、たとえば、電池であるバッテリ11(図2参照)が搭載された電気自動車である。車両1は、車両1と充電器3とが充電ケーブル4により電気的に接続された状態において、充電器3から供給される電力によりバッテリ11を充電する。なお、車両1は、プラグインハイブリッド車または外部充電可能な燃料電池自動車であってもよい。
充電器3は、車両1のバッテリ11に充電電力を供給する供給手段の具体化例であって、たとえば公共の充電スタンド(充電スポットまたは充電ステーションとも呼ばれる)に設置されている。充電器3は、指定された電力指令値Pに従って、商用電源から供給される交流電源(たとえば3相200Vの電源)を直流電力に変換し、その直流電力(充電電力)を車両1に供給する。電力指令値Pは、充電器3から車両1に供給される充電電力に相当する。充電器3は、電力指令値Pが示す充電電力が車両1に供給されるように制御する。
充電器3に対する電力指令値Pは、車両1がバッテリ11の電池状態に基づいて決定する。より具体的には、車両1のECU(Electronic Control Unit)10(図2参照)が、電力指令値Pを決定する。充電器3は、ECU10が決定した電力指令値Pに従って、当該電力指令値Pに対応する充電電力を車両1に供給する。バッテリ11の電池状態は、バッテリ11の温度およびバッテリ11のSOC(State Of Charge)である。
図2は、充電システム9の構成をより詳細に示す図である。図1および図2を参照して、車両1は、バッテリ11と、監視ユニット111と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)121と、パワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)122と、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)123と、動力伝達ギア124と、駆動輪125と、ECU10とを備える。
バッテリ11は、再充電可能な蓄電装置であり、リチウムイオン二次電池またはニッケル水素電池などの二次電池を含んで構成されている。バッテリ11は、車両1の走行駆動力を生成するための電力をPCU122へ供給する。また、バッテリ11は、モータジェネレータ123の回生制動により発電された電力により充電されたり、充電器3からの供給電力により充電されたりする。なお、バッテリ11に代えて、電気二重層キャパシタ等のキャパシタを採用してもよい。
監視ユニット111は、バッテリ11の状態を監視する。いずれも図示しないが、監視ユニット111は、電圧センサと、電流センサと、温度センサとを含む。電圧センサは、バッテリ11の電圧Vbを検出する。電流センサは、バッテリ11に入出力される電流Ibを検出する。温度センサは、バッテリ11の温度を検出する。各センサは、その検出結果をECU10に出力する。ECU10は、各センサによる検出結果に基づいて、バッテリ11のSOCを算出することができる。
SMR121は、バッテリ11とPCU122との間に電気的に接続されている。SMR121の閉成/開放は、ECU10からの指令に応じて制御される。
PCU122は、ECU10からの指令に従って、バッテリ11とモータジェネレータ123との間で電力変換を行なう電力変換装置である。PCU122は、バッテリ11から電力を受けてモータジェネレータ123を駆動するインバータと、インバータに供給される直流電圧のレベルを調整するコンバータ(いずれも図示せず)等とを含んで構成されている。
モータジェネレータ123は、交流電動機である。モータジェネレータ123は、PCU122に含まれるインバータによって駆動され、駆動軸を回転させる。モータジェネレータ123が出力するトルクが動力伝達ギア124を介して駆動輪125に伝達され、それにより車両1が走行する。また、モータジェネレータ123は、車両の制動時には駆動輪125の回転力を受けて発電する。モータジェネレータ123によって発電された電力は、PCU122を通じてバッテリ11に充電される。
車両1は、充電リレー131と、電力線PL,GLと、インレット135とをさらに備える。
充電器3は、制御装置30と電力供給部31とを含む。充電ケーブル4は、電力線42と通信線43と、コネクタ41とを含む。
バッテリ11の充電時には、充電ケーブル4のコネクタ41が車両1のインレット135に連結される。そして、充電器3からの電力が充電ケーブル4内の電力線42を通じて車両1に供給され、電力線PL,GLを通じて充電リレー131へと伝送される。
充電リレー131およびSMR121は、バッテリ11とインレット135との間に電気的に接続されている。充電リレー131が閉成され、かつ、SMR121が閉成されると、インレット135とバッテリ11との間での電力伝送が可能な状態となる。
ECU10は、車両1と充電器3とが充電ケーブル4により接続された状態において、充電ケーブル4内の通信線43を介して充電器3の制御装置30と双方向に通信が可能である。
ECU10は、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリ102と、各種信号を入出力するための入出力ポート(図示せず)と等を含んで構成されている。ECU10は、車両1が所望の状態となるように車両1内の各機器(SMR121、PCU122、および充電リレー131など)を制御する。
また、ECU10は、電力指令値のスケジュールP(t)を決定する「演算装置」に具体化例であって、各センサによる検出結果に基づいて算出したバッテリ11の電池状態に基づいて、電力指令値のスケジュールP(t)を決定する。ここで、電力指令値のスケジュールP(t)とは、電力指令値Pの時間変化を意味する。
ECU10は、決定した電力指令値のスケジュールP(t)に従って、通信線43を介して充電器3の制御装置30に電力指令値Pを出力する。充電器3の制御装置30は、車両1のECU10から送られる電力指令値Pに従って、電力指令値Pに対応する充電電力Wが車両1に供給されるように電力供給部31を制御する。
<ECUの機能構成>
図3は、電力指令値のスケジュールP(t)を決定するためのECUの機能構成の一例を示す図である。図3を参照して、ECU10は、取得モジュール12と、予測モジュール14と、決定モジュール16とを備える。これらの各機能は、メモリ102に予めインストールされたプログラムをCPU101が実行することで実現される機能である。ただしこれに限られず、これら各機能の全部または一部は、専用のハードウェア(電子回路)によって具現化されてもよい。
取得モジュール12は、バッテリ11の電池状態を取得する。具体的には、取得モジュール12は、監視ユニット111が備える各センサによる検出結果として、バッテリ11に流れる電流、バッテリ11の電圧、およびバッテリ11の温度を取得する。また、取得モジュール12は、取得したバッテリ11に流れる電流、バッテリ11の電圧に基づいて、バッテリ11のSOCを算出する。また、取得モジュール12は、算出したバッテリ11のSOC、およびバッテリ11の温度に基づいて、計測時におけるバッテリ11の充電電力制限値Win(0)を算出する。ここで、Win(0)とは、監視ユニット111が備える各センサによる検出結果(実測値)に基づいて算出した充電電力制限値Winを意味する。
バッテリ11に流れる電流、バッテリ11の電圧、バッテリ11の温度、およびバッテリ11のSOCは、バッテリ11の「電池状態」の具体化例である。なお、充電電力制限値Win(0)をバッテリ11の「電池状態」に含めてもよい。
予測モジュール14は、取得モジュール12が取得した計測時におけるバッテリ11の充電電力制限値Win(0)を始点として、予め指定された電力指令値Pに従って充電器3から充電電力Wが供給された場合に、バッテリ11の充電電力制限値の時間変化Win(t)を算出する。すなわち、予測モジュール14は、バッテリ11が予め定められた電力指令値Pに従って充電された場合に、当該バッテリ11の充電電力制限値Winがどのように変化するかを予測する。
充電電力制限値Winの演算方法については、詳細に記述しないものの、バッテリ11の温度、およびバッテリ11のSOCをパラメータとして算出される。たとえば、リチウムイオン電池においては、ハイレート劣化が生じない充電電力が充電電力制限値Winの最大値として設定される。具体的には、バッテリ11のSOCが大きくなると、充電電力制限値Winが小さくなるよう設定され、バッテリ11のSOCが小さくなると、充電電力制限値Winが大きくなるよう設定され得る。
バッテリ11のSOCは、バッテリ11に供給される充電電力Wに応じて経時的に変化する。すなわち、バッテリ11のSOCは、取得モジュール12が取得したバッテリ11のSOCを初期値として、電力指令値Pおよび時間tを変数とした関数で表すことができる。
また、バッテリ11の温度は、取得モジュール12が取得したバッテリ11の温度(実測値)を初期値とし、時間tを変数とした関数で表すことができる。
すなわち、バッテリ11の充電電力制限値の時間変化Win(t)は指定される電力指令値Pに応じて変化し、電力指令値Pと取得モジュール12が取得したバッテリ11の電池状態に基づいて演算することができる。
ただしこれに限られず、バッテリ11の劣化度合いを考慮したパラメータを充電電力制限値Winの演算に含めてもよい。これにより、より精度の高い充電電力制限値Winを得ることが可能となる。
ここで、「予め指定された電力指令値P」は、経時変化しないものであってもよく、また、経時変化するものであってもよい。
予測モジュール14は、「予め指定された電力指令値P」を複数設定し、電力指令値Pごとに充電電力制限値の時間変化Win(t)を求めても良い。すなわち、予測モジュール14は、充電電力制限値の時間変化Win(t)を複数求めても良い。
決定モジュール16は、予測モジュール14が算出した充電電力制限値の時間変化Win(t)に基づいて、各時間における電力指令値Pに対応する充電電力Wが充電電力制限値Winを超えないとともに、バッテリ11の充電を早く完了させることができるように、各時間における電力指令値Pを決定する。すなわち、決定モジュール16は、電力指令値のスケジュールP(t)を決定する。決定された電力指令値のスケジュールP(t)は、充電器3に対して出力される。充電器3の制御装置30は、電力指令値のスケジュールP(t)に従って、電力供給部31を制御する。
ただし、これに限らず、ECU10が電力指令値のスケジュールP(t)に従って電力指令値Pを充電器3に出力する構成であってもよい。
決定モジュール16は、充電電力制限値の時間変化Win(t)を算出する際に設定された電力指令値Pを補正することで電力指令値のスケジュールP(t)を決定してもよい。
決定モジュール16は、一の充電電力制限値の時間変化Win(t)に対して、複数の電力指令値のスケジュールP(t)を設定し、設定した複数の電力指令値のスケジュールP(t)の中から電力指令値のスケジュールP(t)を決定してもよい。
予測モジュール14が充電電力制限値の時間変化Win(t)を複数求めた場合、決定モジュール16は、充電電力制限値の時間変化Win(t)ごとに電力指令値のスケジュールP(t)を求め、求めた複数の電力指令値のスケジュールP(t)の中から電力指令値のスケジュールP(t)を決定してもよい。
以下では、ECU10が電力指令値のスケジュールP(t)を決定する方法の具体的な実施の形態について説明する。
<実施の形態1>
図4および図5を参照して、実施の形態1にかかる、電力指令値のスケジュールP(t)を決定するための演算方法を説明する。図4は、実施の形態1にかかる、ECUが実行する処理を示すフローチャートである。図5は、実施の形態1にかかる処理を説明するための図である。
以下では、「ステップ」は、単に「S」と記す。実施の形態1において、図4に示した処理は、予め定められた充電開始条件が成立した場合に開始されるものとする。
図4を参照して、車両1のECU10は、予め定められた電力指令値Pが複数設定される(S102)。設定される電力指令値Pは、バッテリ11の電池状態に基づいて設定されてもよい。実施の形態1においては、設定される電力指令値Pは時間変化しない。
図5に示す例では、電力指令値Pとして、P1,P2,またはP3が設定されたものとする。図5に示したW1は、電力指令値P1に従って電力供給部31が制御された場合に出力される充電電力を示す。W2は、電力指令値P2に従って電力供給部31が制御された場合に出力される充電電力を示す。W3は、電力指令値P3に従って電力供給部31が制御された場合に出力される充電電力を示す。
車両1のECU10は、バッテリ11の状態および設定された電力指令値Pに基づいて、充電電力制限値の時間変化Win(t)を算出する(S104)。図5に示す例では、W1に対応する充電電力制限値の時間変化をWin1(t)で示し、W2に対応する充電電力制限値の時間変化をWin2(t)で示し、W3に対応する充電電力制限値の時間変化をWin3(t)で示している。
すなわち、Win1(t)は、電力指令値P1が出力され続けた場合に充電電力制限値Winがどのように変化するかを示した予測値に相当する。
車両1のECU10は、充電電力制限値Winを守り、バッテリ11の充電が早く終わる電力指令値のスケジュールP(t)を決定する(S108)。
すなわち、車両1のECU10は、設定した各電力指令値P1,P2,P3の中で、各時間における電力指令値Pに対応する充電電力Wが充電電力制限値Winを超えない電力指令値Pを特定し、特定した電力指令値Pの中から、バッテリ11の充電を最も早く完了させることができる電力指令値Pを特定する。車両1のECU10は、特定した電力指令値Pに対応する充電電力が供給され続けるように電力指令値のスケジュールP(t)を決定する。
図5に示す例では、時間あたりに出力される充電電力の関係は、W3>W2>W1であるから、電力指令値のスケジュールP(t)がP3に設定されると、バッテリ11の充電が最も早く終わる。一方、電力指令値のスケジュールP(t)がP3に設定された場合、タイミングt1において、充電電力制限値Win3(t1)が充電電力W3以下となってしまう。すなわち、電力指令値のスケジュールP(t)がP3に設定された場合には、あるタイミング(図5に示す例ではt1)で充電電力制限値Winを超えてしまうこととなる。
よって、図5に示す例では、充電電力制限値Winを超えない電力指令値Pであって、バッテリ11の充電が早く終わる電力指令値Pとして電力指令値P2が選択され、電力指令値のスケジュールP(t)=P2に決定される。すなわち、複数の電力指令値Pのうち、充電電力制限値Winを超えない電力指令値Pであって、最も電力が大きい値である電力指令値P2が選択され、電力指令値のスケジュールP(t)=P2に決定される。
以上のように、実施の形態1においては、「予め指定された電力指令値P」が複数設定され、電力指令値Pごとに充電電力制限値の時間変化Win(t)が算出される。算出された各充電電力制限値の時間変化Win(t)と、設定された電力指令値Pとを比較することで、充電電力が制限値Winを超えないとともに、早く充電が完了する電力指令値のスケジュールP(t)が決定される。
言い換えると、実施の形態1において、車両1のECU10は、電力指令値のスケジュールP(t)の候補を複数設定し、設定された電力指令値のスケジュールP(t)ごとに、当該スケジュールP(t)に従って充電電力が供給された場合の充電電力制限値の時間変化Win(t)を算出しているともいえる。車両1のECU10は、設定した電力指令値のスケジュールP(t)の中から、充電電力制限値Winを超えず、かつ、早く充電が完了する電力指令値のスケジュールP(t)を特定することで、電力指令値のスケジュールP(t)を決定する。
実施の形態1において、設定される電力指令値Pは経時変化しないものとしたが、設定される電力指令値Pは、予め定められていればよく、経時変化するものであってもよい。
<実施の形態2>
図6および図7を参照して、実施の形態2にかかる、電力指令値のスケジュールP(t)を決定するための演算方法を説明する。図6は、実施の形態2にかかる、ECUが実行する処理を示すフローチャートである。図7は、実施の形態2にかかる処理を説明するための図である。図6に示した処理は、予め定められた充電開始条件が成立した場合に開始されるものとする。
図4と図6とを参照して、実施の形態2にかかるECU10の処理は、実施の形態1にかかるECU10の処理と比較して、S104’の処理をさらに備え、S106の処理の代わりにS106’の処理を備える点で異なる。S104’とその後のS106’の処理について説明する。
図6を参照して、車両1のECU10は、S102において設定された各電力指令値P1,P2,P3を、S104において算出された充電電力制限値Winで制限する(S104’)。これにより、S104において設定された各電力指令値P1,P2,P3のうち、補正の必要な電力指令値Pが補正される。
より具体的には、車両1のECU10は、設定された電力指令値Pに対応する充電電力が充電電力制限値Winを超えてしまう場合に、当該充電電力が充電電力制限値Win以下となるように、電力指令値Pを補正する。
図7に示す例では、電力指令値P3に対応する充電電力W3で充電がされ続けた場合に、タイミングt1で充電電力W3が充電電力制限値Win3(t1)を超えてしまうこととなる。車両1のECU10は、タイミングt1以降は、充電電力制限値Win3(t)を超えないように充電電力制限値Win3(t1)に沿って充電電力Wが供給されるように充電電力W3が補正される。図7の下図において、実線W’3は、補正後の充電電力である。ECU10は、W’3となるように電力指令値P3を補正し、電力指令値P’3を得る。
車両1のECU10は、補正後の電力指令値P’3を含め、設定された各電力指令値P1,P2,P’3のうち、バッテリ11の充電が早く終わる電力指令値PをスケジュールP(t)に決定する(S106’)。図7に示す例では、スケジュールとして、バッテリ11の充電が早く終わる電力指令値Pとして充電電力W’3となるように電力指令値のスケジュールP(t)が決定される。すなわち、複数の電力指令値Pのうち、充電電力制限値Winを超えない電力指令値Pであって、最も電力が大きい値である補正後の電力指令値P’3が選択され、電力指令値のスケジュールP(t)が決定される。
以上のように、実施の形態2においては、「予め指定された電力指令値P」が複数設定され、電力指令値Pごとに充電電力制限値の時間変化Win(t)が算出される。算出された充電電力制限値の時間変化Win(t)に基づいて、充電電力制限値Winを超えないように、充電電力制限値の時間変化Win(t)を算出する際に設定された電力指令値Pが補正される。補正された電力指令値P’および補正されなかった電力指令値Pに基づき、早く充電が完了する電力指令値のスケジュールP(t)が決定される。
言い換えると、実施の形態2において、車両1のECU10は、電力指令値のスケジュールP(t)の候補を複数設定し、設定された電力指令値のスケジュールP(t)ごとに、当該スケジュールP(t)に従って充電電力が供給された場合の充電電力制限値の時間変化Win(t)を算出しているともいえる。車両1のECU10は、設定した電力指令値のスケジュールP(t)の中で、充電電力制限値Winを超えてしまうスケジュールについては、さらに算出した充電電力制限値の時間変化Win(t)に基づいて補正する。そして、車両1のECU10は、補正後のスケジュールおよび補正しなかったスケジュールの中から、早く充電が完了する電力指令値のスケジュールP(t)を特定することで、電力指令値のスケジュールP(t)を決定する。
実施の形態2において、設定される電力指令値Pは経時変化しないものとしたが、設定される電力指令値Pは、予め定められていればよく、経時変化するものであってもよい。
また、補正方法は、充電電力制限値Winを超えないように補正すればよく、充電電力制限値の時間変化Win(t)に沿って補正しなくともよい。たとえば、図7に示す例において、タイミングt1よりも所定期間前のタイミングt1−Δtから補正されてもよい。また、タイミングt1以降、W’3=Win3(t)としたが、W’3=Win3(t)−ΔWとなるように補正してもよい。このように、予測値に対してマージンを設けて補正することで、充電電力制限値Winを確実に超えないスケジュールを設定することができる。
<実施の形態3>
図8および図9を参照して、実施の形態3にかかる、電力指令値のスケジュールP(t)を決定するための演算方法を説明する。図8は、実施の形態3にかかる、ECUが実行する処理を示すフローチャートである。図9は、実施の形態3にかかる処理を説明するための図である。また、図8に示した処理は、予め定められた充電開始条件が成立した場合に開始されるものとする。
図8を参照して、車両1のECU10は、電力指令値Pを最大上限電力に設定する(S202)。最大上限電力は、図8の処理を開始した時点における充電電力制限値Winを超えない電力であって、たとえば、バッテリ11の電池状態と充電器3の性能とに基づいて算出されてもよいし、予め定められていてもよい。充電器3は、設定された電力指令値Paに対応する充電電力Waを車両1に向けて送る。
車両1のECU10は、現在設定されている電力指令値Paで継続して充電がされた場合の充電電力制限値の時間変化Win(a)(t)を算出する(S204)。これにより、たとえば、図9に示す充電電力制限値の時間変化Win(a)(t)が得られる。
車両1のECU10は、電力指令値Paに対応する充電電力をWaとすると、充電電力Waが、所定期間(t1)経過後の充電電力制限値Win(a)(t1)以下であるかを判定する(S206)。
車両1のECU10は、電力指令値Paに対応する充電電力Waが、所定期間(t1)経過後の充電電力制限値Win(a)(t1)以下であると判定したときは(S206においてYES)、電力指令値Paを変更することなく、充電が終えたか否かを判定する(S208)。具体的には、車両1のECU10は、バッテリ11のSOCが、目標SOC(たとえば100%)に達した場合に、充電が終えたと判定する。
車両1のECU10は、充電を終えたと判定したときは(S208においてYES)、処理を終了する。
車両1のECU10は、充電を終えていないと判定したときは(S208においてNo)、再度充電電力制限値の時間変化Win(a)(t)を算出し(S204)、充電電力Waが所定期間(t1)経過後の充電電力制限値Win(a)(t1)以下であるかを判定する(S206)。再度充電電力制限値の時間変化Win(a)(t)を算出したタイミングでは、前回計測したタイミングよりも時間が経過している。
このように、S206でNOと判定されるまで、すなわち、車両1のECU10は、充電電力Waが所定期間(t1)経過後の充電電力制限値Win(a)(t1)を超えてしまうまで、電力指令値Paのスケジュールを変更することなく、充電を継続する。
車両1のECU10は、充電電力Waが所定期間(t1)経過後の充電電力制限値Win(a)(t1)を超えると判定したときは(S206においてNO)、S212およびS214の処理を実行して、電力指令値Paのスケジュールを再設定する。たとえば、図9に示す例では、充電を開始してからtn経過したタイミングで、充電電力Waが所定期間(t1)経過後の充電電力制限値Win(a)(t1)を超えると判定されたものとする。
車両1のECU10は、電力指令値Pを複数設定する(S212)。図9に示す例では、電力指令値P1,P2,P3が設定されたものとする。図9に示す実線W1は、電力指令値P1に対応する充電電力を示す。同様に、一点鎖線W2は、電力指令値P2に対応する充電電力を示す。二点鎖線W3は、電力指令値P3に対応する充電電力を示す。
車両1のECU10は、充電電力が充電電力制限値Winを超えず、かつ、充電が早く終わる電力指令値のスケジュールP(t)を、充電電力制限値の時間変化Win(a)(t)と、設定した電力指令値P1,P2,P3に基づいて決定し、設定する(S214)。
実施の形態3においては、現状設定されている電力指令値Paに基づいて算出された充電電力制限値の時間変化Win(a)(t)を基準とする充電電力制限値の時間変化(予測値)として、電力指令値のスケジュールP(t)が決定される。
図9に示す例では、充電電力W1,W2,W3を比較すると、供給される電力量は、W1が最も高く,次いでW2,W3となる。そのため、充電電力W1に対応する電力指令値P1に従って制御された場合、もっとも早く充電が完了する。しかし、電力指令値P1に従って制御された場合、充電電力制限値の時間変化Win(a)(t)と充電電力W1とを比較した場合に、充電電力制限値Winを充電電力W1が超えてしまう虞がある。
よって、図9に示す例では、充電電力W2となるように電力指令値のスケジュールP(t)が決定される。
車両1のECU10は、新たに設定された電力指令値のスケジュールP(t)に従って充電を行いつつ、S204〜S208の処理を繰り返し、S206において、NOと判定した場合に、再度電力指令値のスケジュールP(t)を決定して設定する。具体的には、S204において充電電力W2で充電を行った場合における充電電力制限値の時間変化Win(t)が新たに算出され、続くS206において充電電力W2と所定期間(t1)経過後の充電電力制限値Win(t1)の比較が行われる。そして、S206で、充電電力W2>充電電力制限値Win(t1)と判定されるまで、充電電力W2による充電が実行され、S206でNOと判定される(充電電力W2>充電電力制限値Win(t1))と、S212、S214へ進んで、再度電力指令値のスケジュールP(t)が決定され設定される。
車両1のECU10は、満充電となるまで、これらの処理を繰り返す。
以上のように、実施の形態3においては、所定期間経過後の充電電力と充電電力制限値Winとの関係を予測し、充電電力が充電電力制限値Winを超えてしまう場合に、電力指令値のスケジュールP(t)が再演算される。再演算の方法として、新たに設定された電力指令値のスケジュールP(t)に基づいて予測される充電電力制限値の時間変化Win(t)を基準として、各時間における充電電力が基準となる充電電力制限値Winを超えないように電力指令値のスケジュールP(t)が再設定される。
<実施の形態4>
図10および図11を参照して、実施の形態4にかかる、電力指令値のスケジュールP(t)を決定するための演算方法を説明する。実施の形態4においては、実施の形態3と比較して、電力指令値のスケジュールP(t)を再決定する方法が異なる。以下、電力指令値のスケジュールP(t)を再決定する方法を中心に説明する。
図10は、実施の形態4にかかる、ECUが実行する処理を示すフローチャートである。図11は、実施の形態4にかかる処理を説明するための図である。図10に示した処理は、予め定められた充電開始条件が成立した場合に開始されるものとする。
図8と図10とを参照して、実施の形態4にかかる電力指令値のスケジュールP(t)を決定するための演算方法と、実施の形態3にかかる方法とを比較すると、S212およびS214の処理に替えて、S222〜S228の処理が実行される点で異なる。以下では、S222〜S228の処理について説明する。
図10を参照して、車両1のECU10は、電力指令値Pを複数設定する(S222)。図11に示す例では、電力指令値P1−1,P1−2,P2−1,P2−2が設定されたものとする。図11に示す実線W1−1は、電力指令値P1−1に対応する充電電力を示す。同様に、一点鎖線W1−2は、電力指令値P1−2に対応する充電電力を示す。二点鎖線W2−1は、電力指令値P2−1に対応する充電電力を示す。破線W2−2は、電力指令値P2−2に対応する充電電力を示す。電力指令値P1−1,P1−2,P2−1,P2−2は、設定されている電力指令値のスケジュールP(t)に基づいて算出された充電電力制限値の時間変化Win(a)(t1)に基づいて設定されてもよい。
車両1のECU10は、設定された電力指令値Pに基づいて、充電電力制限値の時間変化Win(t)を算出する(S224)。図11に示す例では、電力指令値P1−1,P1−2が設定されたときと、電力指令値P2−1,P2−2が設定されたときとで分けて、充電電力制限値の時間変化Win(t)を示している。
また、図11に示す例では、電力指令値P1−1に対応する充電電力W1−1でバッテリ11が充電された場合の充電電力制限値の時間変化Win(t)は、Win(1−1)(t)で示される。電力指令値P1−2に対応する充電電力W1−2でバッテリ11が充電された場合の充電電力制限値の時間変化Win(t)は、Win(1−2)(t)で示される。電力指令値P2−1に対応する充電電力W2−1でバッテリ11が充電された場合の充電電力制限値の時間変化Win(t)は、Win(2−1)(t)で示される。電力指令値P2−2に対応する充電電力W2−2でバッテリ11が充電された場合の充電電力制限値の時間変化Win(t)は、Win(2−2)(t)で示される。
車両1のECU10は、S222において設定された各電力指令値P1−1,P1−2,P2−1,P2−2を、S224において算出された充電電力制限値Winで制限する(S226)。
図11に示す例では、実線W1−1で示した充電電力が太線W’1−1で示した充電電力となるように、電力指令値P1−1が制限される。また、二点鎖線W2−1で示した充電電力が太線W’2−1で示した充電電力となるように、電力指令値P2−1が制限される。図11には、制限後の電力指令値をP’1−1,P’2−1と表現して示す。
車両1のECU10は、充電が早く終わる電力指令値PをスケジュールP(t)に決定し、設定する(S228)。具体的には、車両1のECU10は、W’1−1,W1−2,W’2−1,W2−2を比較し、最も早く充電が早く終わる充電電力のスケジュールを決定する。具体的には、図11において、充電電力W’1−1,W1−2,W’2−1,W2−2により囲まれた面積に相当する電力量が最も多く、充電完了の目標SOCに達する時間が最も短い充電電力を選択し、充電電力のスケジュールP(t)を設定する。車両1のECU10は、決定した充電電力のスケジュールを実現するための電力指令値のスケジュールP(t)に決定し、設定する。
以上のように、実施の形態4においては、所定期間経過後の充電電力と充電電力制限値Winとの関係を予測し、充電電力が充電電力制限値Winを超えてしまう場合に、電力指令値のスケジュールP(t)が再演算される。再演算の方法として、「予め指定された電力指令値P」が複数設定され、電力指令値Pごとに充電電力制限値の時間変化Win(t)が算出される。算出された充電電力制限値の時間変化Win(t)に基づいて、充電電力制限値Winを超えないように、充電電力制限値の時間変化Win(t)を算出する際に設定された電力指令値Pが補正される。補正された電力指令値P’および補正されなかった電力指令値Pに基づき、早く充電が完了する電力指令値のスケジュールP(t)が決定される。
また、「予め指定された電力指令値P」が、電力指令値Pが、設定中の電力指令値のスケジュールP(t)に基づいて予測される充電電力制限値の時間変化Win(t)を基準に設定される。
言い換えると、実施の形態4において、車両1のECU10は、電力指令値のスケジュールP(t)の候補を複数設定し、設定された電力指令値のスケジュールP(t)ごとに、当該スケジュールP(t)に従って充電電力が供給された場合の充電電力制限値の時間変化Win(t)を算出しているともいえる。車両1のECU10は、設定した電力指令値のスケジュールP(t)の中で、充電電力制限値Winを超えてしまうスケジュールについては、さらに算出した充電電力制限値の時間変化Win(t)に基づいて補正する。そして、車両1のECU10は、補正後のスケジュールおよび補正しなかったスケジュールの中から、早く充電が完了する電力指令値のスケジュールP(t)を特定することで、電力指令値のスケジュールP(t)を決定する。
補正方法は、実施の形態2と同様、予測値に対してマージンを設けて補正してもよい。
<変形例>
上記実施の形態1〜4において、車両1が電力指令値のスケジュールP(t)を決定する演算装置を備えるものとした。ただしこれに限られず、演算装置は、充電器3、または、車両1および充電器3のうちの少なくとも一方と通信可能なサーバ等の情報処理装置に搭載されていてもよい。また、ECU10を演算装置としたが、複数のプロセッサによって上記演算を実現してもよい。
また、上記実施の形態1〜4に示した方法のうちのいずれかの方法を、ユーザが選択できるように構成されていてもよい。
また、上記実施の形態1〜4において、充電ケーブル4を介して電力が供給される充電器3を例に挙げたが、これに限られず、非接触で充電電力を供給する充電器であってもよい。
また、上記実施の形態1〜4において、複数の電力指令値を設定する際に、3または4つ設定するものとしたが、たとえば、2以上または、5以上設定してもよい。たとえば、0〜150Aまで、10A刻みで電力指令値を設定してもよい。また、0A〜Win(0)まで、10A刻みで電力指令値を設定してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および変形例において説明された発明は、可能な限り、単独でも、組み合わせても、実施することが意図される。