JP2020180396A - 補強材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】強度及び柔軟性が構造用材の補強材とするに適する補強材及びその製造方法を提供する。【解決手段】補強材は、セルロース繊維からなる短冊状の成形体が捩じられてなり、セルロース繊維は、セルロースナノファイバーを30質量%以上含む。また、補強材を製造するにあたっては、セルロースナノファイバーを30質量%以上含むセルロース繊維のスラリーをプレス及び乾燥して成形体を得、この成形体を短冊状に細断し、液体で濡らしてから捩じる。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂、コンクリート等からなる構造用材の補強材、及び補強材の製造方法に関するものである。
近年、樹脂系の高強度材料に代替し得る成形体として、セルロースナノファイバーを主成分とする高強度材料(成形体)が注目されている(例えば、特許文献1参照。)。この高強度材料はセルロースナノファイバーをプレス等することで製造することができ、十分な強度を有しながら、軽量で、しかも燃焼残渣の問題が生じない等の特徴を有する。しかしながら、この従来の成形体は、十分な強度を有するものの、柔軟性に欠け、大きな負荷がかかると折れてしまうことがある。したがって、従来の成形体は、構造用材の補強材とするには適さなかった。
一方、セルロースナノファイバーを原料とし、かつ柔軟性を有する成形体としては、セルロースナノファイバーを原料とするフィルム状の繊維状生成物がある(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、セルロースナノファイバーをフィルム状にするのは煩瑣であり、コストが嵩む。したがって、構造用材の補強材とするには適さない。
特開2013−11026号公報 特許6148178号
本発明が解決しようとする主たる課題は、強度及び柔軟性が構造用材の補強材とするに適する補強材及びその製造方法を提供することにある。
セルロースナノファイバーを原料とする高強度材料(成形体)は、高い強度を有し、構造用材の補強材とするに魅力的である。しかしながら、高強度材料は、柔軟性に乏しいため、この点で、補強材とするに適さなかった。この点、セルロースナノファイバーを成形体にすることなく樹脂に混合する技術は多々存在するが、セルロースナノファイバーと構造用材の原料となる樹脂等とを予め混合しなければならないのでは、用途が大幅に制限される。また、高強度材料を製造するにあたり、セルロースナノファイバーにポリエチレングリコール(PEG)等の高分子化合物を混合し、もって高強度材料を柔軟なものにする技術も存在するが(例えば、特開2017−082387号公報)、高強度材料が樹脂を含むものであると、強度低下に繋がる可能性があり(物理的影響)、また、構造用材への化学的影響やリサイクル性の点で懸念がある。以上のような背景のもと、本発明者等は、数々の試験を行っていく中で、セルロースナノファイバーを主成分とするものであり、高強度でありながら柔軟性を有する材料、つまり補強材として使用するに適する材料は、従来から存在するように思えるが実際には存在しないことに気付いた。そこで、この気付きを前提に想到するに至ったのが、以下に示す手段である。
(請求項1に記載の手段)
セルロース繊維からなる短冊状の成形体が捩じられてなり、
前記セルロース繊維は、セルロースナノファイバーを30質量%以上含む、
ことを特徴とする補強材。
(請求項2に記載の手段)
前記セルロースナノファイバーは、平均繊維径が10〜100nmで、
前記補強材は、密度が0.95〜1.50g/cm3である、
請求項1に記載の補強材。
(請求項3に記載の手段)
前記セルロース繊維は、前記セルロースナノファイバーと共にパルプを含み、
前記セルロースナノファイバー及び前記パルプの配合質量比が40〜9900:100である、
請求項1又は請求項2に記載の補強材。
(請求項4に記載の手段)
前記パルプは、平均繊維径が10〜100μm、フリーネスが400〜750mlで、かつ前記セルロース繊維中の5〜70質量%を占める、
請求項3に記載の補強材。
(請求項5に記載の手段)
前記短冊状の成形体は、幅1〜1000mm、かつ厚さ1〜300μmである、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の補強材。
(請求項6に記載の手段)
セルロースナノファイバーを30質量%以上含むセルロース繊維のスラリーをプレス及び乾燥して成形体を得、この成形体を短冊状に細断し、液体で濡らしてから捩じる、
ことを特徴とする補強材の製造方法。
(請求項7に記載の手段)
前記プレス及び前記乾燥は前記成形体の厚さが1〜300μmになるように行い、前記細断は前記成形体の幅が1〜1000mmになるように行う、
請求項6に記載の補強材の製造方法。
(請求項8に記載の手段)
前記液体は、水又は撥水性樹脂である、
請求項6又は請求項7に記載の補強材の製造方法。
本発明によると、強度及び柔軟性が構造用材の補強材とするに適する補強材及びその製造方法になる。
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
本形態の補強材は、セルロース繊維からなる短冊状の成形体が捩じられたものである。セルロース繊維としては、例えば、セルロースナノファイバー(CNF)、パルプ、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)等を含む。セルロースナノファイバー及びミクロフィブリル化セルロースは、パルプ繊維を解繊して得ることができ、いずれも解繊繊維である。必要により、本形態の補強材には、撥水性樹脂を含ませる。本形態の補強材は、セルロース繊維のスラリーをプレス及び乾燥して成形体を得、この成形体を短冊状に細断し、液体で濡らしてから捩じることで製造することができる。以下、詳細に説明する。
(セルロースナノファイバー)
セルロースナノファイバーは、セルロース繊維の水素結合点を増やし、もって成形体の強度を向上する役割を有する。加えて、セルロースナノファイバーは、成形体の表面を平滑化する役割を有する。したがって、本形態の成形体(補強材)に撥水性樹脂を含ませる場合は、当該撥水性樹脂を含ませることと相まって液体が成形体内に浸透するのを抑制する役割を有する。この点、成形体内に液体が浸透すると、補強材の強度が低下する場合がある。
セルロースナノファイバーは、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができる。
セルロースナノファイバーの原料パルプとしては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。なお、以上の各種原料は、例えば、セルロース系パウダーなどと言われる粉砕物の状態等であってもよい。
ただし、不純物の混入を可及的に避けるために、セルロースナノファイバーの原料パルプとしては、木材パルプを使用するのが好ましい。木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
広葉樹クラフトパルプは、広葉樹晒クラフトパルプであっても、広葉樹未晒クラフトパルプであっても、広葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。同様に、針葉樹クラフトパルプは、針葉樹晒クラフトパルプであっても、針葉樹未晒クラフトパルプであっても、針葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、漂白サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
原料パルプは、解繊するに先立って化学的手法によって前処理することもできる。化学的手法による前処理としては、例えば、酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤による多糖の酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)等を例示することができる。
解繊に先立ってアルカリ処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの水酸基が一部解離し、分子がアニオン化することで分子内及び分子間水素結合が弱まり、解繊におけるセルロース繊維の分散が促進される。
アルカリ処理に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の有機アルカリ等を使用することができる。ただし、製造コストの観点からは、水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。
解繊に先立って酵素処理や酸処理、酸化処理を施すと、セルロースナノファイバーの保水度を低く、結晶化度を高くすることができ、かつ均質性を高くすることができる。この点、セルロースナノファイバーの保水度が低いと脱水し易くなり、セルロース繊維スラリーの脱水性が向上する。
原料パルプを酵素処理や酸処理、酸化処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解される。結果、微細化処理のエネルギーを低減することができ、セルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。セルロース繊維の分散性は、例えば、セルロース繊維のスラリーから成形体を製造する場合において、当該成形体の均質性に資する。ただし、前処理は、セルロースナノファイバーのアスペクト比を低下させるため、過度の前処理は避けるのが好ましい。
原料パルプの解繊は、例えば、ビーター、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、単軸混練機、多軸混練機、ニーダーリファイナー、ジェットミル等を使用して原料パルプを叩解することによって行うことができる。ただし、リファイナーやジェットミルを使用して行うのが好ましい。
原料パルプの解繊は、得られるセルロースナノファイバーの平均繊維径、平均繊維長、保水度、結晶化度、擬似粒度分布のピーク値、パルプ粘度、分散液のB型粘度が、以下に示すような所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
セルロースナノファイバーの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、好ましくは10〜100nm、より好ましくは15〜90nm、特に好ましくは20〜80nmである。セルロースナノファイバーの平均繊維径が10nmを下回ると、脱水性が悪化するおそれがある。また、成形体が緻密になり過ぎ、乾燥性が悪化するおそれがある。さらに、撥水性樹脂を含ませる形態においては、成形体が緻密になり過ぎると、撥水性樹脂がセルロース繊維間に十分に浸透しなくなるという問題もある。他方、セルロースナノファイバーの平均繊維径が100nmを上回ると、水素結合点の増加効果が得られないおそれがある。
セルロースナノファイバーの平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
セルロースナノファイバーの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01〜0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t−ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍〜30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
セルロースナノファイバーの平均繊維長(単繊維の長さ)は、好ましくは0.3〜2000μm、より好ましくは0.4〜200μm、特に好ましくは0.5〜20μmである。セルロースナノファイバーの平均繊維長が0.3μmを下回ると、成形体を製造する場合において、脱水の過程で流出する繊維の割合が多くなり、また、成形体の強度を担保することができなくなるおそれがある。他方、セルロースナノファイバーの平均繊維長が2000μmを上回ると、繊維同士が絡み易くなり、また、成形体の表面性が悪化するおそれがある。表面性の悪化は、水の浸透を抑えるという点で好ましくない。
セルロースナノファイバーの平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
セルロースナノファイバーの平均繊維長の測定方法は、平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
セルロースナノファイバーの保水度は、例えば90〜600%、好ましくは200〜500%、より好ましくは240〜460%である。セルロースナノファイバーの保水度が90%を下回ると、セルロースナノファイバーの分散性が悪化し、他の繊維、例えばパルプと均一に混合することができなくなるおそれがある。他方、セルロースナノファイバーの保水度が600%を上回ると、セルロースナノファイバー自体の保水力が高くなり、セルロース繊維スラリーの脱水性が悪化するおそれがある。
セルロースナノファイバーの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
セルロースナノファイバーの保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
セルロースナノファイバー結晶化度は、好ましくは45〜90%、より好ましくは55〜88%、特に好ましくは60〜86%である。セルロースナノファイバーの結晶化度が以上の範囲内であれば、成形体の強度を確実に担保することができる。
結晶化度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整することができる。
セルロースナノファイバーの結晶化度は、JIS K 0131に準拠して測定した値である。
セルロースナノファイバーの擬似粒度分布曲線におけるピーク値は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、セルロースナノファイバーは、繊維長及び繊維径の均一性が高く、セルロース繊維スラリーの脱水性に優れる。
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば1〜100μm、好ましくは3〜80μm、より好ましくは5〜60μmである。
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
セルロースナノファイバーのピーク値は、ISO−13320(2009)に準拠して測定した値である。より詳細には、まず、粒度分布測定装置を使用してセルロースナノファイバーの水分散液の体積基準粒度分布を調べる。次に、この分布からセルロースナノファイバーの中位径を測定する。この中位径をピーク値とする。
セルロースナノファイバーのパルプ粘度は、好ましくは1〜10cps、より好ましくは1〜9cps、特に好ましくは1〜8cpsである。パルプ粘度は、セルロースを銅エチレンジアミン液に溶解させた後の溶解液の粘度であり、パルプ粘度が大きいほどセルロースの重合度が大きいことを示している。パルプ粘度が以上の範囲内であれば、スラリーに脱水性を付与しつつ、成形体としたときの機械的物性を保持できる。
セルロースナノファイバーのパルプ粘度は、TAPPI T 230に準拠して測定した値である。
解繊して得られたセルロースナノファイバーは、必要により、他のセルロース繊維と混合するに先立って水系媒体中に分散して分散液としておくことができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましい(水溶液)。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
セルロースナノファイバーの分散液(濃度1%)のB型粘度は、好ましくは10〜4000cps、より好ましくは80〜3000cps、特に好ましくは100〜2000cpsである。分散液のB型粘度を以上の範囲内にすると、他のセルロース繊維との混合が容易になり、また、セルロース繊維スラリーの脱水性が向上する。
セルロースナノファイバーの分散液のB型粘度(固形分濃度1%)は、JIS−Z8803(2011)の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度は分散液を攪拌したときの抵抗トルクであり、高いほど攪拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する。
セルロース繊維中におけるセルロースナノファイバーの含有率は、好ましくは30〜99質量%、より好ましくは40〜95質量%、特に好ましくは50〜90質量%である。セルロースナノファイバーの含有率が30質量%を下回ると、十分な強度が得られないおそれがある。他方、セルロースナノファイバーの含有率が99質量%を超えると、補強材に加工する前のセルロースナノファイバー成形体を製造する時点で、原料となる水分散体から水を除去するためのコストが多大にかかり、結果として補強材を得るのに膨大なコストがかかるおそれがある。
(パルプ)
パルプは、セルロース繊維スラリーの脱水性を大幅に向上する役割を有する。また、パルプは、成形体の強度を向上する役割も有する。
ただし、パルプは、含有率を所定の範囲内(後述)とするのが好ましく、保水度比(セルロース繊維スラリーの保水度をセルロースナノファイバーの保水度で除した値)及びセルロース繊維スラリーの自重脱水性が所定の範囲内(後述)になるように含ませるのがより好ましい。このような限定を加えることで、セルロース繊維スラリーから成形体を製造した場合において、当該成形体の強度が担保される。なお、保水度比及び自重脱水性の詳細については、後述する。
セルロース繊維中におけるパルプの含有率は、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは5〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。パルプの含有率が1質量%を下回ると、セルロース繊維スラリーの脱水性が十分に向上しないおそれがある。他方、パルプの含有率が70質量%を上回ると、結果的にセルロースナノファイバーの含有率が減るため、成形体の強度が担保されないおそれがある。
パルプとしては、セルロースナノファイバーの原料パルプと同様のものを使用することができ、セルロースナノファイバーの原料パルプと同じものを使用するのが好ましい。パルプとしてセルロースナノファイバーの原料パルプと同じものを使用すると、セルロース繊維の親和性が向上し、結果、セルロース繊維スラリーや成形体の均質性が向上する。
また、パルプとしては、リグニンを含有するパルプを使用するのが好ましく、機械パルプを使用するのがより好ましく、BTMPを使用するのが特に好ましい。これらのパルプを使用すると、セルロース繊維スラリーの脱水性がより向上する。
パルプの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜80μm、特に好ましくは10〜60μmである。パルプの平均繊維径が以上の範囲内であれば、パルプの含有率を前述した範囲内とすることで、セルロース繊維スラリーの脱水性がより向上する。
パルプの平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、軽い解繊等によって調整することができる。
パルプの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01〜0.1質量%のパルプの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t−ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて100倍〜1000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
パルプのフリーネスは、好ましくは10〜800ml、より好ましくは350〜780ml、特に好ましくは400〜750mlである。パルプのフリーネスが800mlを上回ると、セルロース繊維スラリーの脱水性は向上できるものの、成形体とした際に表面に凹凸ができ易くなり、また、繊維が剛直になってセルロースナノファイバーと一体化せず、密度が向上しないおそれがある。他方、パルプのフリーネスが10mlを下回ると、セルロース繊維スラリーの脱水性が十分に向上しないおそれがあり、また、パルプ繊維自体の剛直性が低下し、成形体を支持する繊維として機能しなくなるおそれがある。
パルプのフリーネスは、JIS P8121−2(2012)に準拠して測定した値である。
(ミクロフィブリル化セルロース)
ミクロフィブリル化セルロースは、脱水性を担保しつつ、水素結合点を増加し、成形体の引張弾性率を向上させる役割を有する。
ミクロフィブリル化セルロースは、セルロースナノファイバーよりも平均繊維径の太い繊維を意味する。具体的には、例えば0.1〜10μm、好ましくは0.3〜5μm、より好ましくは0.5〜2μmである。
ミクロフィブリル化セルロースの平均繊維径が0.1μmを下回ると、セルロースナノファイバーであるのと変わらなくなり、強度(特に曲げ弾性率)増加効果が十分に得られなくなる。また、解繊時間が長くなり、大きなエネルギーが必要になる。さらに、セルロース繊維スラリーの脱水性が悪化する。脱水性が悪化すると、セルロース繊維スラリーから成形体を製造する場合において、成形体の乾燥に大きなエネルギーが必要になり、乾燥に大きなエネルギーをかけるとミクロフィブリル化セルロースが熱劣化して、強度が低下するおそれがある。他方、ミクロフィブリル化セルロースの平均繊維径が10μmを上回ると、分散性に劣る傾向があり、パルプやセルロースナノファイバーとの混合が困難になるおそれがある。
ミクロフィブリル化セルロースは、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができる。原料パルプとしては、セルロースナノファイバーと同じものを使用することができ、セルロースナノファイバーと同じものを使用するのが好ましい。
また、ミクロフィブリル化セルロースの原料パルプは、セルロースナノファイバーの場合と同様の方法で前処理や解繊をすることができる。ただし、解繊の程度は異なり、例えば、平均繊維径が0.1μm以上に留まる範囲で行う必要がある。以下、セルロースナノファイバーの場合と異なる点を中心に説明する。
ミクロフィブリル化セルロースの平均繊維長(単繊維の長さの平均)は、例えば0.01〜1mm、好ましくは0.03〜0.7mm、より好ましくは0.05〜0.5mmである。平均繊維長が0.01mm未満であると、繊維同士の三次元ネットワークを形成できず、補強効果が低下するおそれがある。
平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
ミクロフィブリル化セルロースの繊維長は、0.2mm以下の割合が60%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、75%以上であるのが特に好ましい。当該割合が60%未満であると、十分な補強効果を得られない可能性がある。他方、ミクロフィブリル化セルロースの繊維長は、0.2mm以下の割合の上限がなく、全て0.2mm以下であっても良い。
ミクロフィブリル化セルロースのアスペクト比は、セルロース繊維スラリーから成形体を製造する場合において、当該成形体の延性をある程度保持しつつ強度を向上させる必要がある場合においては、1〜10000であるのが好ましく、5〜5000であるのがより好ましい。
なお、アスペクト比とは、平均繊維長を平均繊維幅で除した値である。アスペクト比が大きいほどパルプ中において引っかかりが生じる箇所が多くなるため補強効果が上がるが、他方で引っかかりが多い分成形体の延性が低下するものと考えられる。
ミクロフィブリル化セルロースのフィブリル化率は、0.5%以上であるのが好ましく、1.0%以上であるのがより好ましく、1.5%以上であるのが特に好ましい。また、フィブリル化率は、10%以下であるのが好ましく、9%以下であるのがより好ましく、8%以下であるのが特に好ましい。フィブリル化率が10%を超えると、水との接触面積が広くなり過ぎるため、たとえ平均繊維幅が0.1μm以上に留まる範囲で解繊できたとしても、脱水が困難になる可能性がある。他方、フィブリル化率が0.5%未満では、フィブリル同士の水素結合が少なく、強硬な三次元ネットワークを形成することができなくなるおそれがある。
ミクロフィブリル化セルロースの結晶化度は、45%以上であるのが好ましく、55%以上であるのがより好ましく、60%以上であるのが特に好ましい。結晶化度が45%未満であると、パルプやセルロースナノファイバーとの混合性は向上するものの、繊維自体の強度が低下するため、強度を担保することができなくなるおそれがある。他方、ミクロフィブリル化セルロースの結晶化度は、90%以下であるのが好ましく、88%以下であるのがより好ましく、88%以下であるのが特に好ましい。結晶化度が90%を超えると、分子内の強固な水素結合割合が多くなり繊維自体が剛直となるため、パルプとの水素結合点が十分に増加せず、セルロース繊維スラリーから成形体を製造する場合において、当該成形体の強度が十分に向上しないおそれがある。
ミクロフィブリル化セルロースの結晶化度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、微細化処理で任意に調整可能である。
ミクロフィブリル化セルロースのパルプ粘度は、1cps以上であるのが好ましく、2cps以上であるのがより好ましい。パルプ粘度が1cps未満であると、ミクロフィブリル化セルロースの凝集を十分に抑制することができないおそれがある。
ミクロフィブリル化セルロースのフリーネスは、200cc以下が好ましく、150cc以下がより好ましく、100cc以下が特に好ましい。ミクロフィブリル化セルロースのフリーネスが200ccを超えるとミクロフィブリル化セルロースの平均繊維径が10μmを超え、強度に関する効果が十分に得られないおそれがある。
ミクロフィブリル化セルロースの保水度は、500%以下であるのが好ましく、4500%以下であるのがより好ましく、400%以下であるのが特に好ましい。ミクロフィブリル化セルロースの保水度が500%を超えると、脱水性が劣る傾向にあり、また、凝集する可能性がある。
ミクロフィブリル化セルロースの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
セルロース繊維中におけるミクロフィブリル化セルロースの含有率は、好ましくは1〜90質量%、より好ましくは5〜80質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。ミクロフィブリル化セルロースの含有率が1質量%を下回ると、十分な補強効果が得られないおそれがある。他方、ミクロフィブリル化セルロースの含有率が90質量%を超えると、相対的にパルプやセルロースナノファイバーの含有率が減ることになり、パルプやセルロースナノファイバーを含有することによる効果が得られないおそれがある。
ミクロフィブリル化セルロースの各種物性の測定方法は、特にこれに反する記載のない限り、セルロースナノファイバーやパルプの場合と同様である。
(撥水性樹脂)
撥水性樹脂とは、成形体の内部に水分が浸透するのを抑止する樹脂をいう。セルロース繊維としてセルロースナノファイバーを含む場合は、湿潤紙力剤を使用して成形体(原紙)を耐水化処理しても成形体が水に濡れると当該成形体の強度が極端に低下する。しかしながら、撥水性樹脂を使用して成形体の内部に水分が浸透するのを抑止すると、当該成形体の強度が極端に低下するおそれがなくなる。
撥水性樹脂としては、成形体原紙(撥水性樹脂を含ませる前の成形体)との親和性や成形体原紙の表面に撥水性皮膜を形成できるという観点から、撥水性を有する樹脂を、例えば、水系エマルジョンとして使用するのが好ましい。より好適には、撥水性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ロジン及びシェラックから選択されるいずれか1種以上の樹脂を使用するのが好ましく、スチレン−アクリル系樹脂及びシェラックの少なくともいずれか一方を使用するのがより好ましい。
撥水性樹脂の含有率は、1〜20質量%であるのが好ましく、2〜18質量%であるのがより好ましく、5〜15質量%であるのが特に好ましい。撥水性樹脂の含有率が1質量%を下回ると、成形体の強度低下抑止効果が得られないおそれがある。他方、撥水性樹脂の含有率が20質量%を上回っても、撥水性樹脂の存在自体によってセルロース繊維の一体性が阻害され、かえって成形体の強度が低下するおそれがある。
本形態において撥水性樹脂の含有率は、成形体の全量(絶乾質量基準)に対する撥水性樹脂の割合(質量基準)を意味する。
撥水性樹脂の含有量は、成形体を水に1時間浸漬した後の含水率が10%以下になる量とするのが好ましく、9%以下になる量とするのがより好ましく、8%以下になる量とするのが特に好ましい。ここで、上記含水率は、((成形体を水に1時間浸漬後した後の質量−成形体の絶乾質量)/成形体の絶乾重量)×100である。
(補強材の製造方法)
本形態の補強材を製造するにあたっては、セルロースナノファイバー、パルプ、ミクロフィブリル化セルロース等を含むセルロース繊維のスラリーから湿紙を形成し、この湿紙をプレス及び乾燥して成形体を得、この成形体を短冊状に細断し、液体で濡らしてから捩じる。ここで、捩じるとは、短冊状の成形体の両端をつかんで互いに逆方向にまわすことをいう。好ましくは、長さ(長手方向の長さ)10cm当たり、好ましくは5回転以上、より好ましくは7〜100回転、特に好ましくは9〜50回転まわす。
成形体(短冊状に細断する前の状態)を製造するにあたっては、まず、微細(解繊)繊維(セルロースナノファイバー、又はミクロフィブリル化セルロース及びセルロースナノファイバー)やパルプ等を所定の割合で混合し、好ましくはセルロースナノファイバー及びパルプの配合比(質量基準)が40〜9900:100となるように混合し、もってセルロース繊維のスラリーを調成する(スラリー調成工程)。微細繊維及びパルプは、それぞれを分散液の状態で混合することもできる。
微細繊維及びパルプの混合に際しては、水等の媒体を加える等して、セルロース繊維のスラリー中におけるセルロース繊維の固形分濃度を調節すると好適である。セルロース繊維の固形分濃度は、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは1〜7質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。セルロース繊維の固形分濃度が1質量%を下回ると、流動性が高く、脱水工程においてセルロース繊維が流出してしまうおそれが高くなる。他方、セルロース繊維の固形分濃度が15質量%を上回ると、流動性が著しく低下し、加工性が悪化するため、厚みのむらが発生し易くなり、均質な成形体を得ることが困難になるおそれがある。
水等の媒体(水系媒体)は、全量が水であるのが好ましい。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類や、炭素数5以下のケトン類等を使用することができる。
セルロース繊維のスラリーは、パルプの含有率を適宜調節することで、保水度比が0.50〜0.99となるようにするのが好ましく、0.55〜0.98となるようにするのがより好ましく、0.60〜0.97となるようにするのが特に好ましい。
以上に加えて、セルロース繊維のスラリーは、パルプの種類や含有率を適宜調節することで、自重脱水性が1.1〜3.0となるようにするのが好ましく、1.2〜2.0となるようにするのがより好ましく、1.3〜1.8となるようにするのが特に好ましい。
セルロース繊維スラリーの保水度比を0.50以上に、また、自重脱水性を3.0以下にすることで、成形体、及び最終的に得られる補強材の強度を担保することができる。
セルロース繊維スラリーの保水度は、以下の方法によって測定した値である。
まず、セルロース繊維のスラリー(濃度2質量%)を遠心分離機(条件:3000G、15分)によって脱水し、得られた脱水物の質量を測定する。次に、当該脱水物を完全に乾燥し、得られた乾燥物の質量を測定する。そして、保水度(%)=(脱水物の質量−乾燥物の質量)/セルロース繊維スラリーの質量×100とする。
保水度は一定の遠心力をかけた後にスラリーに残存する水量のことであり、保水度が低いほど脱水性が良好であることを示す。また、保水度比が低いほど、元々のセルロースナノファイバースラリーから保水度が減少したことを示し、脱水性が増加したことを示す。
一方、セルロース繊維スラリーの自重脱水性は、以下の方法によって測定した値である。
セルロース繊維のスラリーを吸水基材の上の金網(300メッシュ、幅10cm×長さ10cm×厚さ2mm)に塗工し、2分間放置する。そして、自重脱水性=2分間放置後の固形分濃度/塗工前の固形分濃度とする。
セルロース繊維のスラリーには、必要により、例えば、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、分散剤、消泡剤、スライムコントロール剤、防腐剤等の添加剤を添加することができる。
以上のようにして得たスラリーは、適宜、湿紙形成、脱水及び加圧(プレス)乾燥等することで成形体を得る。プレスに先立ってスラリーを脱水することで、特にセルロースナノファイバーの流出を可及的に減らすことができる。
プレスにおいて湿紙を十分にプレスすることで、成形体を高密度化することができ、また、成形体の表面性を向上させることができる。湿紙の乾燥には、例えば、ヤンキードライヤ、シリンダードライヤ、スルードライヤ、オーブン等の乾燥装置を使用することができる。
乾燥の後、例えば、マシンカレンダーやスーパーカレンダー等を使用して更に高強度化することもできる。
成形体の密度は、好ましくは0.95〜1.50g/cm3、より好ましくは1.00〜1.45g/cm3、特に好ましくは1.00〜1.40g/cm3である。成形体の密度が0.95g/cm3を下回ると、空隙が多く繊維同士の水素結合点が少ないため、水が浸透しすぎて捩る際に千切れる恐れがある。また、水素結合点の減少を原因として得られる補強材の強度が十分なものにならないおそれがある。他方、成形体の密度が1.50g/cm3を上回ると、撥水性樹脂の含有率を十分なものとすることができなくなるおそれがある。また、補強材としての性能は発揮できるものの、軽量という特性が失われるため好ましくない。さらに、空隙が少なすぎて水が浸透せず、連続的に捩る加工をする際に生産性が下がるおそれがある。なお、成形体の密度は、JIS−P−8118:1998に準拠して測定した値である。
スラリーから成形体を製造する方法としては、例えば、特開2018−62727号公報(セルロースナノファイバー成形体)に記載の方法によることができる。なお、湿紙の形成方法等について、上記したのは好適な例であり、本形態の製造方法をこれに限定する趣旨ではない。
本形態の成形体は、以上の成形体に撥水性樹脂を含ませたものであってもよい。撥水性樹脂を含ませる方法としては、特に限定されず、例えば含浸法、サイズプレス法、ゲートロール法、バーコーター法、カレンダー法、スプレー法等の各種公知の方法を適用できる。例えば、成形体に撥水性樹脂を塗工する方法(塗工形態)においては、サイズプレス、ゲートロールコータ、プレメタリングサイズプレス、カーテンコータ、スプレーコータ等のコータ(塗工機)を使用して塗布することができる。また、成形体を撥水性樹脂(溶液)に浸漬する方法(浸漬形態)においては、成形体を撥水性樹脂(溶液)で満たされたゾーンにドブ漬けにしてから乾燥させる方法等を採用することができる。
ただし、必要により、セルロース繊維のスラリーに撥水性樹脂を添加して混合する方法(混合形態)等も考えることができる。
塗工形態又は浸漬形態を採用した場合は、必要により余分な撥水性樹脂を成形体からふき取ったうえで、再度乾燥すると好適である。この乾燥は、成形体を製造する際に使用する乾燥装置と同様の装置によって行うことができる。この乾燥は、例えば、100〜200℃で0.1〜5時間行うと好適である。
(成形体)
以上のようにして得られた成形体の厚さは、好ましくは1〜300μm、より好ましくは40〜250μm、特に好ましくは80〜200μmである。成形体の厚さが1μmを下回ると、最終的に得られる補強材の強度が不十分であるとされるおそれがある。他方、成形体の厚さが300μmを上回ると、成形体が固くなり、捩って単軸状に加工する際に、所望する捩り数に捩れない等の不具合が生じるおそれがある。
成形体の引張破壊ひずみは、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、4%以下が特に好ましく、3%以下が最も好ましい。引張破壊ひずみが上記上限を超えると、ひずみが大きく用途が限られることがある。他方、成形体の引張破壊ひずみは、0%が最もよいが、例えば、1〜3%であっても許容される。なお、成形体の引張破壊ひずみは、JIS K7127:1999に準拠し、温度23℃の環境下、試験片をJIS−K6251で定める引張2号型ダンベル状とし、試験速度を10mm/分として測定した値である。
(補強材)
本形態の補強材は、以上の成形体を短冊状に細断し、液体で濡らしてから捩じることで製造することができる。
成形体の細断幅は、好ましくは1〜1000mm、より好ましくは3〜500mm、特に好ましくは5〜100mmである。裁断幅が1mmを下回ると、製造される補強材の強度が不十分であるとされるおそれがある。他方、裁断幅が1000mmを上回ると、製造される補強材の柔軟性が不十分であるとされるおそれがある。
成形体の細断は、例えば、スリッター、カッター等の細断装置を使用して行うことができる。
成形体の長手方向(幅方向に直交する方向)の長さは、所望する補強材のサイズに合わせて任意に調整することができる。例えば、連続的に成形体を加工した上でカットすることで、所望の長さの補強材を得ることができる。
細断後の成形体は、捩じるに先立って液体で濡らす必要がある。プレス及び乾燥して得られる成形体は剛度が高いため、液体で濡らすことなく捩じろうとすると、成形体が割れてしまうおそれがある。なお、通常の紙を液体で濡らしたうえで捩じると、当該紙が破けてしまう(裂けてしまう)可能性が高いが、本成形体ではそのようなおそれが低い。
成形体を濡らす液体としては、水を使用するのが好ましく、撥水性樹脂を使用するのがより好ましい。撥水性樹脂を使用した場合は、別途、成形体を撥水化する必要がなくなり、工程を削減することができる。
捩じった後の成形体は、これを完成品(補強材)とすることもできるが、必要により乾燥する。この乾燥は、例えば、100〜200℃で0.1〜5時間行うと好適である。
(母材)
本形態の補強材は、例えば下記のものが挙げられる。
(有機材料)
有機材料としては、樹脂(例えば熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂など)、ゴム(例えば天然ゴム、合成ゴムなど)に代表される、任意形状に成形加工可能なものが挙げられる。
(無機材料)
無機材料としては、セメント系材料(例えばセメント、モルタル、コンクリートなど)、セラミックス系材料(例えばガラス、粘土、アルミナ等に代表されるファインセラミックスなど)に代表される、任意形状に成形加工可能なものが挙げられる。
(複合材料)
上記の有機材料、無機材料について、繊維や粒子等と複合化したものや、化学構造が似ているもの同士を複合化したアロイ化合物などが挙げられる。
次に、本発明の実施例について説明する。
まず、原料パルプ(LBKP:水分98質量%)をリファイナーで予備叩解し、MFCのスラリー(水分散液:濃度2.5質量%)を得た。次に、このMFCスラリーを高圧ホモジナイザーで解繊(微細化)し、CNFのスラリー(水分散液:濃度2.0質量%)を得た。なお、リファイナーでの処理及び高圧ホモジナイザーでの処理は、いずれも複数回の循環処理とした。得られたCNFの物性は、平均繊維径30nm、保水度348%、結晶化度75%であった。得られたCNFのスラリーは、パルプ(LBKP:水分98質量%、平均繊維径20μm、フリーネス557ml)と固形分換算で配合質量比が400:100になるよう混合し、固形分濃度2.0質量%のスラリーを調製した。
次に、得られたスラリーから湿紙を作製し、この湿紙を加圧脱水、加圧(プレス)乾燥して厚さ100μmの成形体を得た。この成形体を得るにあたっては、特願2018−054244の方法に準拠した。加圧脱水は、25℃、2MPaで5分間行った。また、加圧乾燥は、120℃、2MPaで5間行った。得られた成形体の密度は、1.0g/m3(坪量100g/m2)であった。
得られた成形体を、幅5mm又は10mmに切り出し(細断し)、表面を水で湿らせた後、20回/10cmの割合で捩じり、105℃で1時間乾燥させることで紐状の補強材を作製した(試験例3,4)。また、市販の上質紙(坪量100g/m2)を用いて同様の方法で紙ひもを作製し、比較例とした(試験例1,2)。
得られた補強材又は紙ひもについて、引張弾性率及び引張強度を調べた。結果を、表1に示した。なお、引張弾性率及び引張強度の測定方法は、次のとおりである。
引張弾性率は、JIS K7127:1999に準拠して測定した。試験片(成形体)は、JIS−K6251で定める引張2号型ダンベル状とした。試験速度は、10mm/分とした。また、温度23℃、湿度50%の環境下で測定した。
引張強度は、JIS K7127:1999に準拠して測定した。試験片(成形体)は、JIS−K6251で定める引張2号型ダンベル状とした。試験速度は、10mm/分とした。また、温度23℃、湿度50%の環境下で測定した。
<補強材としての評価>
(エポキシ樹脂を用いた試験例)
(1)熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂(コニシ株式会社製2液常温硬化型エポキシ樹脂系接着剤)を、JIS−K6251で定める引張2号型ダンベル状と同じ形状にくり抜いた型(厚み2mm)へ、型容積の半分量を流し込み、ここに紐状の補強材(幅5mmの短冊を上記と同じ条件で紐状に加工)を、張った状態で長軸方向と平行となるように1本設置し、さらに、エポキシ樹脂を型容積の半分量を流し込んだ。流し込んだ後に、室温で3時間静置することでエポキシ樹脂を硬化させ、補強材入りエポキシ樹脂を作製した(試験例20)。
前述(1)における補強材を、短冊状のCNF成形体(幅5mm)に変えた点以外、前述の(1)と同条件とした(試験例19)。
前述(1)における補強材を、短冊状の紙(幅5mm)に変えた点以外、前述の(1)と同条件とした(試験例17)。
前述(1)における補強材を、紐状の紙(幅5mmの短冊を上記と同じ条件で紐状に加工)に変えた点以外、前述の(1)と同条件とした(試験例18)。
なお、前述(1)において、紐又は短冊状の紙や、紐又は短冊状のCNF成形体を設置しなかった(すなわち補強材無し)点以外、前述の(1)と同条件とした(試験例16)。
得られた試験例16〜20について、引張弾性率及び引張強度を調べた。結果を、表2に示した。なお、引張弾性率及び引張強度の測定方法は、次のとおりである。
引張弾性率は、JIS K7127:1999に準拠して測定した。試験片(成形体)は、JIS−K6251で定める引張2号型ダンベル状とした。試験速度は、10mm/分とした。また、温度23℃、湿度50%の環境下で測定した。
引張強度は、JIS K7127:1999に準拠して測定した。試験片(成形体)は、JIS−K6251で定める引張2号型ダンベル状とした。試験速度は、10mm/分とした。また、温度23℃、湿度50%の環境下で測定した。
(セメントを用いた試験例)
(2)セメント(トーヨーマテラン株式会社製インスタントセメント)に水を対セメント重量0.8倍添加して1分間スパチュラで撹拌して全体をなじませた後に、JIS−K6251で定める引張2号型ダンベル状と同じ形状にくり抜いた型(厚み3mm)へ、型容積の半分量を流し込み、ここに紐状の補強材(幅5mmの短冊を上記と同じ条件で紐状に加工)を、張った状態で長軸方向と平行となるように1本設置し、さらに、エポキシ樹脂を型容積の半分量を流し込んだ。流し込んだ後に、室温で3時間静置することでセメントを硬化させ、補強材入りセメントを作製した(試験例15)。
前述(2)における補強材を、短冊状のCNF成形体(幅5mm)に変えた点以外、前述の(2)と同条件とした(試験例14)。
前述(2)における補強材を、短冊状の紙(幅5mm)に変えた点以外、前述の(2)と同条件とした(試験例12)。
前述(2)における補強材を、紐状の紙(幅5mmの短冊を上記と同じ条件で紐状に加工)に変えた点以外、前述の(2)と同条件とした(試験例13)。
なお、前述(2)において、紐又は短冊状の紙や、紐又は短冊状のCNF成形体を設置しなかった(すなわち補強材無し)点以外、前述の(2)と同条件とした(試験例11)。
得られた試験例11〜15について、引張弾性率及び引張強度を調べた。結果を、表2に示した。なお、引張弾性率及び引張強度の測定方法は、次のとおりである。
引張弾性率は、JIS K7127:1999に準拠して測定した。試験片(成形体)は、JIS−K6251で定める引張2号型ダンベル状とした。試験速度は、10mm/分とした。また、温度23℃、湿度50%の環境下で測定した。
引張強度は、JIS K7127:1999に準拠して測定した。試験片(成形体)は、JIS−K6251で定める引張2号型ダンベル状とした。試験速度は、10mm/分とした。また、温度23℃、湿度50%の環境下で測定した。
Figure 2020180396
Figure 2020180396
表1から、本形態の成形体は、紙ひもと比較して1.5倍以上の引張弾性率及び引張強度を有することが分かった。
また、表2から熱硬化性樹脂に複合した場合も、セメントに複合化した場合も、紙ひも、短冊状CNF成形体、短冊状の紙と比較して、より補強性能を有することが分かった。
本発明は、樹脂、コンクリート等からなる構造用材の補強材、及び補強材の製造方法として利用可能である。構造用材の具体的な用途としては、例えば、自動車用部材、船舶部材、鉄道部材、家電用筐体、塀・外壁等の建材、プリント基板等の電子部品、模型用材料、楽器部材、ヘルメット等の保護具用部材等を例示することができる。

Claims (8)

  1. セルロース繊維からなる短冊状の成形体が捩じられてなり、
    前記セルロース繊維は、セルロースナノファイバーを30質量%以上含む、
    ことを特徴とする補強材。
  2. 前記セルロースナノファイバーは、平均繊維径が10〜100nmで、
    前記補強材は、密度が0.95〜1.50g/cm3である、
    請求項1に記載の補強材。
  3. 前記セルロース繊維は、前記セルロースナノファイバーと共にパルプを含み、
    前記セルロースナノファイバー及び前記パルプの配合質量比が40〜9900:100である、
    請求項1又は請求項2に記載の補強材。
  4. 前記パルプは、平均繊維径が10〜100μm、フリーネスが400〜750mlで、かつ前記セルロース繊維中の5〜70質量%を占める、
    請求項3に記載の補強材。
  5. 前記短冊状の成形体は、幅1〜1000mm、かつ厚さ1〜300μmである、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の補強材。
  6. セルロースナノファイバーを30質量%以上含むセルロース繊維のスラリーをプレス及び乾燥して成形体を得、この成形体を短冊状に細断し、液体で濡らしてから捩じる、
    ことを特徴とする補強材の製造方法。
  7. 前記プレス及び前記乾燥は前記成形体の厚さが1〜300μmになるように行い、前記細断は前記成形体の幅が1〜1000mmになるように行う、
    請求項6に記載の補強材の製造方法。
  8. 前記液体は、水又は撥水性樹脂である、
    請求項6又は請求項7に記載の補強材の製造方法。
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