JP2020180348A - コールドスプレー用粉末および皮膜形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】摺動性および耐摩耗性が高い皮膜を形成可能なコールドスプレー用粉末、および、かかるコールドスプレー用粉末を用いる皮膜形成方法を提供すること。【解決手段】コールドスプレー法による皮膜の形成に用いられるコールドスプレー用粉末であって、平均粒径0.5μm以上100.0μm以下の金属粉末と、平均粒径3.0nm以上100.0nm以下のセラミックス粉末と、を含み、前記金属粉末に対する前記セラミックス粉末の混合比率が0.005質量%以上3.00質量%以下であることを特徴とするコールドスプレー用粉末。【選択図】図4
Description
本発明は、コールドスプレー用粉末および皮膜形成方法に関するものである。
コールドスプレー法は、金属粒子を加速させ、基材に衝突させて塑性変形を生じさせることにより、基材の表面に皮膜を形成する成膜技術である。
特許文献1には、加熱したガスを音速以上の速度に加速させ、その噴流に、金属とセラミックスの混合粉末を混合して噴出させ、基材の表面に衝突させることにより、金属粉末粒子を塑性変形させ、基材の表面にコーティング層を形成する工程を有する皮膜形成方法が開示されている。そして、この工程を繰り返すことにより、厚さ0.5mm以上の皮膜を形成し、その後、HIP処理を施すことによって、皮膜の機械的特性を制御することも開示されている。
一方、特許文献1には、金属とセラミックスの混合粉末を用いてコールドスプレー法による皮膜を形成することが開示されているものの、金属粉末とセラミックス粉末との混合比率については不明である。そして、混合比率が最適化されていない場合、皮膜に期待される摺動性および耐摩耗性が十分でないことが明らかとなってきた。
本発明の適用例に係るコールドスプレー用粉末は、コールドスプレー法による皮膜の形成に用いられるコールドスプレー用粉末であって、
平均粒径0.5μm以上100.0μm以下の金属粉末と、
平均粒径3.0nm以上100.0nm以下のセラミックス粉末と、
を含み、
前記金属粉末に対する前記セラミックス粉末の混合比率が0.005質量%以上3.00質量%以下であることを特徴とする。
平均粒径0.5μm以上100.0μm以下の金属粉末と、
平均粒径3.0nm以上100.0nm以下のセラミックス粉末と、
を含み、
前記金属粉末に対する前記セラミックス粉末の混合比率が0.005質量%以上3.00質量%以下であることを特徴とする。
以下、本発明のコールドスプレー用粉末および皮膜形成方法の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
1.皮膜形成方法
まず、実施形態に係る皮膜形成方法、すなわちコールドスプレー法による皮膜形成方法について説明する。
まず、実施形態に係る皮膜形成方法、すなわちコールドスプレー法による皮膜形成方法について説明する。
図1は、コールドスプレー法に用いるコールドスプレー装置を説明するための概念図である。図2および図3は、実施形態に係る皮膜形成方法を説明するための図である。
本実施形態に係る皮膜形成方法は、コールドスプレー用粉末1を用いて、コールドスプレー法により、被処理物9の表面に皮膜10を形成する方法である。
コールドスプレー法は、コールドスプレー用粉末1を加速させ、固相状態のまま被処理物9に衝突させることにより、コールドスプレー用粉末1の粒子に塑性変形を生じさせて皮膜10を形成する技術である。コールドスプレー用粉末1の加速には、コールドスプレー用粉末1の融点または軟化温度よりも低い温度のガスを超音速まで加速させ、その噴流にコールドスプレー用粉末1を投入する方法が用いられる。
図1に示すコールドスプレー装置100は、ガス供給源2と、粉末供給装置3と、ガス加熱部4と、スプレーガン5と、を備えている。また、ガス供給源2とスプレーガン5とが、配管61を介して接続されている。そして、配管61の途中には、粉末供給装置3が設けられている。さらに、ガス供給源2とスプレーガン5は、配管62を介しても接続されている。そして、配管62の途中には、ガス加熱部4が設けられている。
ガス供給源2は、作動ガスGを高圧で供給する。作動ガスGとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスのような不活性ガス、空気、またはこれらの混合ガス等が挙げられる。また、配管62を流れる作動ガスGの圧力は、特に限定されないが、0.5MPa以上10.0MPa以下であるのが好ましく、1.0MPa以上8.0MPa以下であるのがより好ましい。これにより、スプレーガン5において、コールドスプレー用粉末1を十分に加速させることができる。一方、配管61を流れる作動ガスGの圧力は、コールドスプレー用粉末1を搬送可能な流速を得られる圧力であれば、特に限定されない。
粉末供給装置3は、作動ガスGにコールドスプレー用粉末1を混ぜて送り出す装置である。
ガス加熱部4は、電気ヒーター等を用いて作動ガスを加熱する。作動ガスの加熱温度は、コールドスプレー用粉末1の熱による変性が生じない温度であれば、特に限定されないが、100℃以上800℃以下であるのが好ましく、200℃以上600℃以下であるのがより好ましい。
スプレーガン5は、ノズル50と、整流子52と、を有している。ノズル50は、管状をなしており、基端側に設けられ、内径が相対的に大きい大径部501と、大径部501よりも先端側に設けられ、内径が相対的に小さい小径部502と、小径部502よりも先端側に設けられ、先端に向かって内径が徐々に拡大している拡径部503と、を有している。つまり、ノズル50は、いわゆるラバールノズルになっている。整流子52は、大径部501に設けられており、大径部501を基端側と先端側とに分割している。そして、大径部501の基端側には配管62の一端が接続されている。一方、大径部501の先端側には配管61の一端が接続されている。
配管62を介して大径部501の基端側に供給された作動ガスGは、整流子52によって整流され、先端側に向かって流れる。そして、差動ガスGは、配管61を介して大径部501の先端側に供給されたコールドスプレー用粉末1とともに、小径部502に流入する。小径部502では、作動ガスGが加速されるとともに加圧される。その後、拡径部503において作動ガスGが膨張するとともに加速され、超音速に達する。そして、超音速に加速された作動ガスGは、スプレーガン5の先端から噴射され、コールドスプレー用粉末1を被処理物9の表面に衝突させる。
被処理物9に衝突したコールドスプレー用粉末1の粒子は、塑性変形し、図2に示すように膜状になって表面に付着する。このような現象が繰り返されることにより、図3に示すように、被処理物9の表面に皮膜10が形成される。
なお、スプレーガン5から噴射されるコールドスプレー用粉末1は、必ずしも超音速に達する必要はなく、音速以下であってもよい。
2.コールドスプレー用粉末
次に、実施形態に係るコールドスプレー用粉末について説明する。
図4は、実施形態に係るコールドスプレー用粉末を示す断面図である。
次に、実施形態に係るコールドスプレー用粉末について説明する。
図4は、実施形態に係るコールドスプレー用粉末を示す断面図である。
本実施形態に係るコールドスプレー用粉末1は、前述したコールドスプレー法による皮膜10の形成に用いられる粉末であり、図4に示すように、金属粉末11と、セラミックス粉末12と、を含む混合粉末である。このうち、金属粉末11の平均粒径は、0.5μm以上100.0μm以下である。また、セラミックス粉末12の平均粒径は、3.0nm以上100.0nm以下である。そして、金属粉末11に対するセラミックス粉末12の混合比率が0.005質量%以上3.00質量%以下である。
このようなコールドスプレー用粉末1は、金属粉末11の平均粒径が小さいにもかかわらず、高い流動性を有する粉末である。このため、前述したコールドスプレー装置100において、配管61を搬送されるコールドスプレー用粉末1が、配管61の内壁に付着したり、スプレーガン5の内壁に付着したりするのを抑制することができる。これにより、コールドスプレー装置100のメンテナンス性を高めることができる。
また、コールドスプレー用粉末1を用いて形成される皮膜10は、金属粉末11の平均粒径およびセラミックス粉末12の平均粒径を最適化したこと、および、金属粉末11に対するセラミックス粉末12の混合比率を最適化したことにより、皮膜10の機械的強度と、皮膜10の表面の摺動性と、を両立したものとなる。このため、皮膜10が形成された被処理物9を、例えば摺動に供される摺動部に適用することにより、長期にわたって優れた耐久性を有する摺動部を実現することができる。すなわち、皮膜10が摺動相手と摺動しても、皮膜10の優れた耐摩耗性に基づき、剥離等が抑制されるため、部品交換等のメンテナンスの頻度を減らす、摺動抵抗の増加等の不具合を抑制する、といった効果を奏する。
また、本実施形態に係る皮膜形成方法は、コールドスプレー用粉末1を用いて、コールドスプレー法により、被処理物9の表面に皮膜10を形成する方法である。
このような皮膜形成方法によれば、前述したようなコールドスプレー用粉末1を用いているため、機械的強度と表面の摺動性とを両立させた皮膜10を形成することができる。
コールドスプレー用粉末1の流動性が高くなる理由の1つとして、相対的に大径である金属粉末11の粒子同士の間に、相対的に小径であるセラミックス粉末12の粒子が介在することにより、金属粉末11の粒子同士の凝集が抑制されることがある。凝集が抑制されることにより、コールドスプレー用粉末1の流れを妨げる凝集した粒子が減少するため、コールドスプレー用粉末1の流動性を高めることができると考えられる。また、セラミックス粉末12が相対的に小径であり、かつ、混合比率が少なく抑えられていることから、セラミックス粉末12が混合されていても金属粉末11の焼結が阻害されにくい。このような理由から、最終的に得られる皮膜10の機械的強度を高めることができる。
なお、金属粉末11の平均粒径が前記下限値を下回ると、金属粉末11の粒子同士の凝集が避けられなくなるとともに、金属粉末11の製造が困難になる。一方、金属粉末11の平均粒径が前記上限値を上回ると、金属粉末11の充填性が低下するため、最終的に得られる皮膜10の密度を高めることが難しくなる。
また、セラミックス粉末12の平均粒径が前記下限値を下回ると、セラミックス粉末12の製造が困難になる。一方、セラミックス粉末12の平均粒径が前記上限値を上回ると、セラミックス粉末12が金属粉末11の膜化を阻害するおそれがある。
さらに、セラミックス粉末12の混合比率が前記下限値を下回ると、セラミックス粉末12を添加した効果が得られなくなる。一方、セラミックス粉末12の混合比率が前記上限値を上回ると、セラミックス粉末12の相対量が多くなるため、皮膜10の機械的強度が低下し、耐摩耗性が低下するおそれがある。
なお、コールドスプレー用粉末1には、金属粉末11およびセラミックス粉末12以外の添加物が添加されていてもよい。添加物としては、例えば、樹脂粉末、樹脂繊維、界面活性剤、滑剤等が挙げられる。さらに、不可避的に混入する不純物が含まれていてもよい。ただし、添加物の添加量および不純物の混入量は、合計で1.0質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下であるのがより好ましい。
また、金属粉末11の含有率は、セラミックス粉末12、添加物および不純物の残部であるが、一例として98質量%以上であるのが好ましく、99質量%以上であるのがより好ましい。これにより、最終的に得られる皮膜10は、金属粉末11由来の材料が支配的になる。このため、金属材料に由来する良好な機械的特性に基づく耐摩耗性を有する皮膜10が得られる。
また、金属粉末11の平均粒径は、特に0.5μm以上50.0μm以下であるのが好ましく、1.0μm以上30.0μm以下であるのがより好ましい。
さらに、セラミックス粉末12の平均粒径は、特に3.0nm以上15.0nm以下であるのが好ましく、5.0nm以上10.0nm以下であるのがより好ましい。
また、セラミックス粉末12の混合比率は、0.005質量%以上0.500質量%以下であるのが好ましく、0.010質量%以上0.030質量%以下であるのがより好ましい。
以上のような範囲を満たすことにより、コールドスプレー用粉末1は、特に摺動性が良好で耐摩耗性に優れた皮膜10を製造可能な粉末となる。
さらに、セラミックス粉末12の平均粒径は、金属粉末11の平均粒径を1としたとき、0.0005以上0.0100以下であるのが好ましく、0.0010以上0.0050以下であるのがより好ましい。これにより、金属粉末11とセラミックス粉末12とで平均粒径のバランスを最適化することができる。その結果、最終的に得られる皮膜10の摺動性および耐摩耗性を特に高めることができる。
なお、上述した平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用い、体積基準に基づく累積の体積が50%のときの粒径D50のことをいう。また、セラミックス粉末12の混合比率とは、金属粉末11に対するセラミックス粉末12の質量比率のことをいう。
金属粉末11の構成材料は、特に限定されず、塑性変形可能な材料であれば、いかなる材料であってもよい。一例としては、Fe、Ni、Co、Ti等の単体、またはこれらを主成分とする合金、金属間化合物等が挙げられる。
このうち、Fe系合金としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼のようなステンレス鋼、低炭素鋼、炭素鋼、耐熱鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼、Fe−Ni合金、Fe−Ni−Co合金等が挙げられる。
また、Ni系合金としては、例えば、Ni−Cr−Fe系合金、Ni−Cr−Mo系合金、Ni−Fe系合金等が挙げられる。
さらに、Co系合金としては、例えば、Co−Cr系合金、Co−Cr−Mo系合金、Co−Al−W系合金等が挙げられる。
また、Ti系合金としては、例えば、Tiと、Al、V、Nb、Zr、Ta、Mo等の金属元素との合金が挙げられ、具体的には、Ti−6Al−4V、Ti−6Al−7Nb等が挙げられる。
なお、金属粉末11は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、高速回転水流アトマイズ法のようなアトマイズ法で製造された粉末であるのが好ましく、水アトマイズ法または高速回転水流アトマイズ法で製造された粉末であるのが好ましい。これらは、平均粒径が小さな粉末であっても、低コストで製造可能であるため、金属粉末11として有用である。
また、金属粉末11は、加熱処理、プラズマ処理、オゾン処理等の各種前処理が施されたものであってもよい。
さらに、金属粉末11の体積基準に基づく累積の体積が小径側から10%のときの粒径をD10としたとき、粒径D10は、1.0μm以上10.0μm以下であるのが好ましい。また、累積の体積が小径側から90%のときの粒径をD90としたとき、粒径D90は、3.0μm以上50.0μm以下であるのが好ましい。
また、セラミックス粉末12の構成材料も、特に限定されないが、一例として、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ホウ素、酸化イットリウムのような酸化物系セラミックス、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのような非酸化物系セラミックス等が挙げられる。
このうち、セラミックス粉末12の主材料は、酸化ケイ素、窒化ホウ素または酸化アルミニウムであるのが好ましい。これらのセラミックス材料を主材料とするセラミックス粉末12は、金属粉末11の被処理物9に対する密着性および皮膜10を形成したときの機械的強度に及ぼす影響が小さく、かつ、コールドスプレー用粉末1の流動性を高める効果が大きい。また、粒径の揃ったセラミックス粉末12を低コストで製造しやすいという利点もある。
なお、酸化ケイ素は、一酸化ケイ素と二酸化ケイ素の双方を含む。また、酸化アルミニウムは、一酸化アルミニウム、二酸化アルミニウムおよび三酸化アルミニウムを含む。
また、セラミックス粉末12は、表面処理が施されていないセラミックス粒子を含んでいてもよいが、表面処理が施されているセラミックス粒子120を含むのが好ましい。これにより、セラミックス粒子120の表面を、疎水性等に改質することができる。その結果、セラミックス粒子120の表面に水分が吸着しにくくなり、セラミックス粒子120同士の凝集等を抑制することができる。そして、セラミックス粒子120同士が凝集することに伴う、コールドスプレー用粉末1の流動性の低下を抑制することができる。
図5は、表面処理が施されているセラミックス粒子120の概念を示す断面図である。
図5に示すセラミックス粒子120は、粒子本体121と、粒子本体121の表面に付与されている改質層122と、を有する。粒子本体121は、前述したセラミックス材料で構成されており、改質層122は、前述した疎水性の他、各種の特性を付与する表面修飾基を含む層である。この表面修飾基としては、例えば、ビニル基、フェニル基、アルキル基、アクリル基、メタクリル基、トリアルキルシリル基等が挙げられる。このうち、表面修飾基としては、ビニル基、フェニル基またはアルキル基が好ましく用いられ、ビニル基が特に好ましく用いられる。粒子本体121の表面にこれらの表面修飾基を付与することにより、セラミックス粒子120同士の凝集が抑制されるため、セラミックス粒子120が金属粉末11の粒子同士の間に介在し、金属粉末11の粒子同士の凝集も抑制される。その結果、金属粉末11の平均粒径が小さい場合でも、コールドスプレー用粉末1の流動性を高めることができる。
図5に示すセラミックス粒子120は、粒子本体121と、粒子本体121の表面に付与されている改質層122と、を有する。粒子本体121は、前述したセラミックス材料で構成されており、改質層122は、前述した疎水性の他、各種の特性を付与する表面修飾基を含む層である。この表面修飾基としては、例えば、ビニル基、フェニル基、アルキル基、アクリル基、メタクリル基、トリアルキルシリル基等が挙げられる。このうち、表面修飾基としては、ビニル基、フェニル基またはアルキル基が好ましく用いられ、ビニル基が特に好ましく用いられる。粒子本体121の表面にこれらの表面修飾基を付与することにより、セラミックス粒子120同士の凝集が抑制されるため、セラミックス粒子120が金属粉末11の粒子同士の間に介在し、金属粉末11の粒子同士の凝集も抑制される。その結果、金属粉末11の平均粒径が小さい場合でも、コールドスプレー用粉末1の流動性を高めることができる。
なお、アルキル基の炭素原子数は、1以上6以下であるのが好ましい。また、アルキル基は、メチル基であるのがより好ましい。同様に、トリアルキルシリル基のうち、ケイ素原子に結合している3つのアルキル基の各炭素原子数は、1以上6以下であるのが好ましい。また、トリアルキルシリル基は、トリメチルシリル基であるのがより好ましい。
また、表面修飾基を付与する方法は、セラミックスの表面を官能基で修飾する方法であれば、特に限定されない。例えば、粒子本体121を反応槽に入れ、撹拌しながら、表面修飾基を含む化合物を噴霧し、その後加熱する方法、粒子本体121を含む分散液に、表面修飾基を含む化合物を加え、加熱しながら撹拌する方法等が挙げられる。このような方法により、粒子本体121の表面に表面修飾基を含む改質層122を形成することができる。
また、セラミックス粉末12は、加熱処理、プラズマ処理、オゾン処理等の各種前処理が施されたものであってもよい。
以上、本発明のコールドスプレー用粉末および皮膜形成方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明のコールドスプレー用粉末は、前記実施形態に任意の成分が付加されたものであってもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.コールドスプレー用粉末の製造
(実施例1)
まず、水アトマイズ法により製造されたSUS630系ステンレス鋼粉末と、酸化ケイ素粉末と、を5分間混合してコールドスプレー用粉末を得た。なお、混合にはダルトン混合機を使用した。また、混合条件は、以下のとおりである。
1.コールドスプレー用粉末の製造
(実施例1)
まず、水アトマイズ法により製造されたSUS630系ステンレス鋼粉末と、酸化ケイ素粉末と、を5分間混合してコールドスプレー用粉末を得た。なお、混合にはダルトン混合機を使用した。また、混合条件は、以下のとおりである。
ステンレス鋼粉末の平均粒径 :3.75μm
ステンレス鋼粉末のかさ密度 :1.90g/cm3
ステンレス鋼粉末のタップ密度 :4.07g/cm3
ステンレス鋼粉末の混合比 :100質量部
酸化ケイ素粉末の平均粒径 :10nm
酸化ケイ素粉末の混合比(比率):0.020質量部(0.020質量%)
酸化ケイ素粉末の表面処理 :ビニル基修飾
ステンレス鋼粉末のかさ密度 :1.90g/cm3
ステンレス鋼粉末のタップ密度 :4.07g/cm3
ステンレス鋼粉末の混合比 :100質量部
酸化ケイ素粉末の平均粒径 :10nm
酸化ケイ素粉末の混合比(比率):0.020質量部(0.020質量%)
酸化ケイ素粉末の表面処理 :ビニル基修飾
(実施例2〜32)
コールドスプレー用粉末の製造条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてコールドスプレー用粉末を得た。
コールドスプレー用粉末の製造条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてコールドスプレー用粉末を得た。
なお、表1に示す「加熱」は、コールドスプレー用粉末を調製した後、ドライオーブンを用い、大気雰囲気下において200℃で50時間加熱する処理を施したことを指す。
(比較例1〜6)
酸化ケイ素粉末の添加を省略した以外は、実施例1〜6と同様にしてコールドスプレー用粉末を得た。
酸化ケイ素粉末の添加を省略した以外は、実施例1〜6と同様にしてコールドスプレー用粉末を得た。
(比較例7〜9)
コールドスプレー用粉末の製造条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてコールドスプレー用粉末を得た。
コールドスプレー用粉末の製造条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてコールドスプレー用粉末を得た。
2.コールドスプレー用粉末の評価
2.1 かさ密度
各実施例および各比較例で得られたコールドスプレー用粉末について、JIS Z 2504:2012に規定の金属粉の見掛密度測定方法により、かさ密度を測定した。
2.1 かさ密度
各実施例および各比較例で得られたコールドスプレー用粉末について、JIS Z 2504:2012に規定の金属粉の見掛密度測定方法により、かさ密度を測定した。
2.2 タップ密度
各実施例および各比較例で得られたコールドスプレー用粉末について、ホソカワミクロン株式会社製、粉体特性評価装置、パウダテスタ(登録商標)PT−Xを用いて、タップ密度を測定した。なお、タップ回数は125回とした。
各実施例および各比較例で得られたコールドスプレー用粉末について、ホソカワミクロン株式会社製、粉体特性評価装置、パウダテスタ(登録商標)PT−Xを用いて、タップ密度を測定した。なお、タップ回数は125回とした。
2.3 安息角
各実施例および各比較例で得られたコールドスプレー用粉末について、ホソカワミクロン株式会社製、粉体特性評価装置、パウダテスタ(登録商標)PT−Xを用いて、安息角を測定した。
各実施例および各比較例で得られたコールドスプレー用粉末について、ホソカワミクロン株式会社製、粉体特性評価装置、パウダテスタ(登録商標)PT−Xを用いて、安息角を測定した。
3.皮膜の評価
各実施例および各比較例で得られたコールドスプレー用粉末を用い、コールドスプレー法により皮膜を形成した。なお、被処理物として、アルミニウム基板を用いた。また、作動ガスには窒素ガスを使用し、ガス加熱部に供給する作動ガスの圧力を3MPaとした。さらに、作動ガスの加熱温度を400℃とした。
各実施例および各比較例で得られたコールドスプレー用粉末を用い、コールドスプレー法により皮膜を形成した。なお、被処理物として、アルミニウム基板を用いた。また、作動ガスには窒素ガスを使用し、ガス加熱部に供給する作動ガスの圧力を3MPaとした。さらに、作動ガスの加熱温度を400℃とした。
このようにして皮膜を形成したアルミニウム基板を「試験用ディスク」とし、使用したコールドスプレー用粉末と同じ材料で作製した「試験用ピン」を用いて、ピンオンディスク試験機による摩擦摩耗試験を行った。具体的には、JIS K 7218:1986に規定の往復摩擦摩耗試験機であるピンオンディスク試験機に、試験用ディスクおよび試験用ピンをセットした。続いて、試験用ディスクの皮膜の表面で試験用ピンを往復摺動させる試験を開始した。そして、長さ10mmを600回往復摺動させ、その後、試験用ディスクに対する試験用ピンの動摩擦係数を気温25℃で測定した。測定結果を表1に示す。なお、この評価は、摩擦摩耗試験開始前の動摩擦係数に対する摩擦摩耗試験終了後の動摩擦係数の比を求め、その比率を以下の評価基準に照らすことにより行った。
(評価基準)
A:摩擦摩耗試験終了後の動摩擦係数の比が1.10未満である
B:摩擦摩耗試験終了後の動摩擦係数の比が1.10以上1.20未満である
C:摩擦摩耗試験終了後の動摩擦係数の比が1.20以上1.30未満である
D:摩擦摩耗試験終了後の動摩擦係数の比が1.30以上1.40未満である
E:摩擦摩耗試験終了後の動摩擦係数の比が1.40以上1.50未満である
F:摩擦摩耗試験終了後の動摩擦係数の比が1.50以上である
A:摩擦摩耗試験終了後の動摩擦係数の比が1.10未満である
B:摩擦摩耗試験終了後の動摩擦係数の比が1.10以上1.20未満である
C:摩擦摩耗試験終了後の動摩擦係数の比が1.20以上1.30未満である
D:摩擦摩耗試験終了後の動摩擦係数の比が1.30以上1.40未満である
E:摩擦摩耗試験終了後の動摩擦係数の比が1.40以上1.50未満である
F:摩擦摩耗試験終了後の動摩擦係数の比が1.50以上である
表1から明らかなように、各実施例のコールドスプレー用粉末を用いて形成された皮膜は、摩擦摩耗試験終了後においても、開始前と比べて動摩擦係数の著しい増加は認められなかった。このことから、この皮膜は、耐摩耗性が良好であると認められる。
すなわち、金属粉末の平均粒径D50、セラミックス粉末の平均粒径およびセラミックス粉末の混合比をそれぞれ最適化することにより、最終的に、耐摩耗性に優れた皮膜を得ることができた。
なお、SUS630系ステンレス鋼粉末に代えて、SUS304L系ステンレス鋼粉末およびSUS316L系ステンレス鋼粉末を用いて、上記と同様の評価を行ったところ、SUS630系ステンレス鋼粉末と同様の傾向が認められた。
1…コールドスプレー用粉末、2…ガス供給源、3…粉末供給装置、4…ガス加熱部、5…スプレーガン、9…被処理物、10…皮膜、11…金属粉末、12…セラミックス粉末、50…ノズル、52…整流子、61…配管、62…配管、100…コールドスプレー装置、120…セラミックス粒子、121…粒子本体、122…改質層、501…大径部、502…小径部、503…拡径部、G…作動ガス
Claims (6)
- コールドスプレー法による皮膜の形成に用いられるコールドスプレー用粉末であって、
平均粒径0.5μm以上100.0μm以下の金属粉末と、
平均粒径3.0nm以上100.0nm以下のセラミックス粉末と、
を含み、
前記金属粉末に対する前記セラミックス粉末の混合比率が0.005質量%以上3.00質量%以下であることを特徴とするコールドスプレー用粉末。 - 前記セラミックス粉末の主材料は、酸化ケイ素、窒化ホウ素または酸化アルミニウムである請求項1に記載のコールドスプレー用粉末。
- 前記セラミックス粉末は、表面処理が施されているセラミックス粒子を含む請求項1または2に記載のコールドスプレー用粉末。
- 前記表面処理が施されているセラミックス粒子は、粒子本体と、前記粒子本体の表面に付与されているビニル基、フェニル基またはアルキル基と、を有する請求項3に記載のコールドスプレー用粉末。
- 前記金属粉末の平均粒径は、0.5μm以上50.0μm以下であり、
前記セラミックス粉末の平均粒径は、3.0nm以上15.0nm以下であり、
前記金属粉末に対する前記セラミックス粉末の混合比率は、0.005質量%以上0.500質量%以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載のコールドスプレー用粉末。 - 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のコールドスプレー用粉末を用いて、コールドスプレー法により、被処理物の表面に皮膜を形成することを特徴とする皮膜形成方法。
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