JP2020180071A - 抗皮膚老化外用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】光による皮膚老化、具体的にはシワ又はたるみ等を、効率的に抑制する抗皮膚老化組成物の提供。【解決手段】米糠油(好ましくは米糠油内包リポソーム)を含み、活性酸素産生抑制用及び/又はマトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)産生抑制用を有する抗皮膚老化外用組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、抗皮膚老化外用組成物等に関する。
近年、特に美容分野において、抗皮膚老化効果を奏する外用組成物の需要はますます高まってきている。中でも皮膚のシワ又はたるみの抑制への関心は非常に高い。
皮膚においてシワやたるみが形成される一因として、光(紫外線、特にUVA)の皮膚照射が挙げられる。光の中でも紫外線(特にUVA)は真皮まで到達し、活性酸素種(ROS)の生成を介して組織を傷害し、皮膚老化(例えば、表皮の肥厚、深く大きなシワの形成やたるみ)を引き起こすと考えられている(非特許文献1)。そのため、皮膚において抗酸化効果を奏する成分は、ROSの生成を抑制することにより、皮膚老化を抑制することが期待される。
また、皮膚光老化には、真皮弾性繊維や膠原繊維の分解及び減少が関与している。そして、真皮構成成分の分解には、マトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix Metalloproteinase:MMP)が関与しており、特にMMP−1、MMP−2、及びMMP−9等は、基底膜を構成するIV型コラーゲンや、真皮を構成するエラスチン、I型コラーゲン、及びIII型コラーゲンを分解することが知られている。このMMP−2やMMP−9が真皮コラーゲンや基底膜を分解し、皮膚構造が保持できなくなることで皮膚は大きく陥没し、深いシワの形成に至る。特に、MMP−2やMMP−9はUV照射やROS暴露によりケラチノサイトや線維芽細胞から誘導されるとも考えられている(非特許文献1)。また、MMP−1は自然老化皮膚及び光老化皮膚のいずれでも活性が高く、特に光老化皮膚において活性がより高いという報告もある(非特許文献2)。よって、ROSの生成を抑制する成分のなかでも、MMPの誘導をも抑制できる成分が、特に抗皮膚老化に効果的であると期待される。
特開2007−246436号公報
四国医誌 63巻5, 6号 219〜223 December20,2007 Chung JH, Seo JY, Choi HR, et al: Modulation of skin collagen metabolism in aged and photoaged human skin in vivo. J Invest Dermatol 117; 1218-1224: 2001
本発明は、効率的に抗皮膚老化効果を得るための手法を提供することを課題とする。
本発明者らは、米糠油が、ROS生成抑制効果のみならずMMP誘導抑制効果をも奏し得る優れた抗皮膚老化素材であることを見出し、さらには、米糠油をリポソームに内包して用いることで、より優れた抗皮膚老化効果を得ることができる可能性を見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
米糠油内包リポソームを含む、抗皮膚老化外用組成物。
項2.
皮膚老化が、シワ又はたるみである、項1に記載の組成物。
項3.
皮膚老化が、光による皮膚老化である、項1又は2に記載の組成物。
項4.
リポソームに内包される米糠油の、当該組成物に対する含有量が、0.005質量%以上1質量%未満である、項1〜3のいずれかに記載の組成物。
項5.
化粧品組成物である、項1〜4のいずれかに記載の組成物。
本発明により、優れた抗皮膚老化効果が奏される外用組成物が提供される。
米糠油について、線維芽細胞に紫外線(UVA)を照射した際に発生する活性酸素種(ROS)の産生に対する効果を評価した結果を示す。 米糠油について、線維芽細胞に紫外線(UVA)を照射した際のMMP−1の産生に対する効果を評価した結果を示す。 γ−オリザノールにより、抗酸化遺伝子(Nrf2、Nqo1、HO−1、及びSOD1)の発現量がどのように変化するかをリアルタイムPCRで解析した結果を示す。 γ−オリザノール内包リポソーム及び米糠油内包リポソームにより、抗酸化遺伝子(Nrf2及びNqo1)の発現量がどのように変化するかをリアルタイムPCRで解析した結果を示す。
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。
本発明に包含される抗皮膚老化組成物は、米糠油を含む外用組成物(好ましくは米糠油内包リポソームを含む外用組成物)である。以下当該組成物を、本発明の抗皮膚老化外用組成物と呼ぶことがある。
リポソームは、リン脂質を主体とした脂質を十分量の水で水和することにより形成される二分子膜を有する脂質小胞体である。リポソームは脂質分子膜層の数に基づいて分類され、具体的には、多重膜リポソーム(MLV)と一枚膜リポソーム(ULV)に分類される。また、一枚膜リポソームは、脂質小胞体の大きさに応じて更に分類されることがあり、具体的には、大きさの小さいほうから順に、SUV(small unilamellar vesicle)、LUV(large unilamellar vesicle)、GUV(giant unilamellar vesicle)に分類される。本発明において、リポソームは、これらのいずれであってもよい。好ましいのはMLVである。本発明では、リポソームの大きさは、特に制限はされないが、平均粒子径として、例えば、30〜1000nmが好ましく、30〜600nmがより好ましく、50〜300nmがさらに好ましい。
米糠油としては、米糠から得られる油であれば特に制限はされない。米糠油の製造には、溶媒(例えばn−ヘキサン)により米糠から抽出する方法(溶媒抽出法)や、米糠を圧搾法により圧搾処理する方法(圧搾法)等を用いることができる。本発明には、溶媒抽出米糠油、及び圧搾米糠油のいずれも用いることができ、特に圧搾米糠油を用いることが好ましい。圧搾処理の方法は公知であり、例えば加熱焙煎処理され100〜115℃程度になった米糠を低温連続圧搾機(例えば(株)テクノシグマ社より販売されているミラクルチャンバー)により圧搾する方法が挙げられる。本発明ではこれに限られず公知の圧搾方法を適用できる。圧搾の程度は、特に限定はされないが、圧搾後の脱脂米糠中の脂質が5〜15重量%、好ましくは5〜14重量%、より好ましくは5〜12重量%となる程度である。
また、米糠油は、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えばつや姫こめ油、こめ油白絞油、コメーユ(以上、三和油脂)、ライストリエノール、ライステロールエステル、米サラダ油(以上、築野食品)、コメヌカ油、オリザオイル(以上、オリザ油化)などが挙げられる。
また、米糠油にはγ−オリザノールが含まれることが知られている。通常、米糠油には0.1〜3質量%程度のγ−オリザノールが含まれている。本発明に用いる米糠油にはγ−オリザノールが0.1〜3質量%程度含まれることが好ましく、0.2〜2.5質量%程度含まれることがより好ましく、0.3〜2質量%程度含まれることがさらに好ましく、0.5〜1.5質量%程度含まれることがよりさらに好ましい。
米糠油内包リポソームを含む外用組成物において、リポソームに内包される米糠油量も特に制限はされないが、例えばリポソーム膜成分(好ましくはリポソームに含まれるリン脂質)10質量部に対して、0.4〜6質量部、1〜5質量部程度、又は2〜4質量部程度が例示される。
また、本発明の抗皮膚老化外用組成物において、米糠油は、当該組成物中に、例えば0.005質量%以上1質量%未満、0.01〜0.8質量%程度、0.02〜0.5質量%程度、又は0.05〜0.3質量%程度含まれることが好ましい。また例えば、米糠油が、0.005〜0.05質量%程度含まれることも好ましく、特に、γ−オリザノールがリポソームに内包されていない状態で含まれる場合には、0.005〜0.05質量%程度含まれることが好ましい。当該範囲の上限は、0.01、0.02、0.03、又は0.04質量%であってもよい。
また、当該組成物が米糠油内包リポソームを含む外用組成物である場合には、リポソームに内包される米糠油の、当該組成物に対する含有量が、例えば0.005質量%以上1質量%未満、0.01〜0.8質量%程度、0.02〜0.5質量%程度、又は0.05〜0.3質量%程度であることが好ましい。また、当該組成物に含まれる米糠油のうち、例えば、80質量%〜100質量%、90質量%〜100質量%、又は実質的に100質量%が、米糠油内包リポソームに含まれることが好ましい。なお当該組成物に含まれる米糠油のうち、実質的に100質量%が、米糠油内包リポソームに含まれるとは、リポソームに全ての米糠油を内包させるよう組成物を製造した場合において、不可避的にリポソーム外にも米糠油が存在する場合をも包含することを意味する。
米糠油をリポソームに包含させる方法としては、公知の方法又は公知の方法から容易に想到できる方法を用いることができ、通常は水溶液中にリポソームが分散している状態、すなわちリポソーム懸濁液として得ることができる。リポソーム懸濁液の製造方法は特に限定されないが、例えば、次の方法が挙げられる。(1)リン脂質、リポソームに内包する成分(オリザノールを含む;以下同じ)、及び必要に応じてその他酸化防止剤などを均質に混合した後、水和し、リポソームを形成させる方法(当該水和は、好ましくはpH調整剤、多価アルコール、糖類などを含む水溶液で行う)。(2)リン脂質、リポソームに内包する成分、及び必要に応じてその他酸化防止剤などをアルコール、多価アルコールなどに溶解し、pH調整剤、多価アルコール、糖類などを含む水溶液で水和し、リポソームを調製する方法。(3)超音波、フレンチプレスやホモジナイザーを用いて、リン脂質、リポソームに内包する成分、及び必要に応じてその他酸化防止剤などを水中で複合化させ、リポソームを調製する方法。(4)エタノールにリン脂質、リポソームに内包する成分、及び必要に応じてその他酸化防止剤などを混合溶解し、このエタノール溶液を塩化カリウム水溶液に添加した後にエタノールを除去しリポソームを調製する方法。米糠油は、そのまま使用してもよいし、少量の溶媒(例えば水又は水系溶媒)に予め溶解させた後に使用することができる。
使用するリン脂質としては、特に制限されないが、大豆レシチン、ナタネレシチン、コーンレシチン、綿実油レシチン、ひまわりレシチン、卵黄レシチン、卵白レシチン、ピーナッツレシチンなどが例示される。レシチンはホスファチジルコリン又は1,2−ジアシルグリセロール 3−ホスホコリンとも称され、一般的に、グリセロールの1位及び2位に脂肪酸が結合している。本発明では、例えば、1位及び2位の両方又は片方に炭素数12〜24の不飽和脂肪酸が結合しているレシチンを使用することが好ましく、1位に炭素数12〜24の飽和脂肪酸、2位に炭素数12〜24の不飽和脂肪酸が結合しているレシチンを使用することがより好ましい。ここで、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸は直鎖状及び分枝状のいずれでもよい。また、レシチンに代えて又は加えて、レシチン誘導体を用いることもできる。レシチン誘導体としては、水素添加レシチンや、前記例示のレシチン中のリン脂質にポリエチレングリコール、アミノグリカン類等を導入した化合物が例示できる。このうち、大豆レシチン、卵黄レシチン、水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチンが好ましく、特に大豆レシチン、卵黄レシチンが好ましい。また、レシチン中に存在するリン脂質(例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン等)の純度を高めた精製レシチンも好ましく使用することができる。これらレシチン又はレシチン誘導体は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で使用するレシチンは、例えばSLP−PC35(ホスファチジルコリン(以下PCと略することがある)含量35%)、SLP−PC70(PC含量70%)、(SLP−ホワイトリゾ(リゾレシチン)(以上、辻製油(株)社製);卵黄レシチンLPL−20S、20W(リゾリン脂質含量約20%)、卵黄レシチンPL−30S(ホスファチジルコリン含量約30%)(以上、キューピー(株)社製);大豆レシチン、卵黄レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、グリセロホスホコリン(以上、Hホススタイン社製);Lecigran(粉末レシチン)、Metarin(分画レシチン)、Lecimulthin(粉末リゾレシチン)(以上、Cargill社製);レシオンP(リン脂質含量90%以上)、レシオンLP−1(レシチン含量約70%)、レシマール(酵素分解レシチン、リン脂質含量50%)(以上、理研ビタミン社製);ニチユPS25(ホスファチジルセリン含量約25%)、ニチユPS50(ホスファチジルセリン含量約50%);、サンレシチンA−1(酵素分解大豆レシチン、レシチン含量約30%)などから商業的に入手することもできる。
本発明の抗皮膚老化外用組成物は、皮膚老化の中でも、特に皮膚のシワ又はたるみに効果的であり、これらの抑制のために好ましく用いることができる。また、加齢による皮膚老化抑制のためにも用いることもできるが、特に光による皮膚老化抑制のために好ましく用いることができる。光の中でも、紫外線(特にUVA)の照射による皮膚老化を抑制するために好ましく用いることができる。
また、本発明の抗皮膚老化外用組成物は、活性酸素(ROS)産生抑制用及び/又はマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)産生抑制用として好ましく用いることができる。MMP産生抑制効果は、MMPの中でもMMP−1、MMP−2、MMP−9に対して好ましく発揮され得る。
本発明の抗皮膚老化外用組成物が、米糠油内包リポソームを含む外用組成物である場合には、MMP−2、MMP−9に対して特に好ましく発揮され得る。また、本発明の抗皮膚老化外用組成物が、リポソーム非内包米糠油を含む外用組成物である場合には、MMP−1に対して特に好ましく発揮され得る。
例えば、米糠油に他成分を加えて本発明の抗皮膚老化外用組成物として用いることができる。また例えば、本発明の抗皮膚老化外用組成物として、上記リポソーム懸濁液をそのまま用いることもできるし、これに他成分をさらに加えて用いることもできる。
他成分として、例えば、高分子、蛋白質及びその加水分解物、ムコ多糖類などを配合することができる。高分子としては、例えばカルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウムなどが例示できるが、これらに限定されるものでもない。カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムが好ましく、特にカルボキシビニルポリマーが好ましい。これら高分子等は1種または2種以上を組み合わせて使用できる。高分子の配合量は特に限定しないが、0.001〜20%、好ましくは 0.005〜10%、特に好ましくは 0.01〜5%である。蛋白質及びその加水分解物としては、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、カゼイン、それらの加水分解物、加水分解物の塩、加水分解物のエステル、あるいは酵素処理されたものが挙げられるが、特にコラーゲンが好ましい。蛋白質及びその加水分解物の配合量は特に限定しないが、0.001〜5%、好ましくは0.01〜1%である。ムコ多糖としては、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ムコイチン硫酸、ヘパリンとその誘導体、及びそれらの塩類などが挙げられるが、特にコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸及びこれらのナトリウム塩が好ましい。ムコ多糖の配合量は特に限定しないが、 0.0005〜5%、好ましくは0.001〜1%である。
また、この他にも、本発明の効果を損なわない範囲において、通常外用組成物に用いられる公知の成分を配合する(リポソーム分散液の連続相に含ませる)こともできる。このような成分としては、保湿剤、水溶性高分子、油成分、着色剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、防腐剤、pH調整剤、清涼剤、香料、紫外線吸収・散乱剤、抗酸化剤、薬効成分などが例示できる。
また、本発明の抗皮膚老化外用組成物が米糠油内包リポソームを含む場合、リポソームの調製において、本発明の効果を損なわない範囲で、通常リポソームに含ませ得る成分を用いることもできる。例えば、アスコルビン酸などの抗酸化剤、乳酸、クエン酸などの有機酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミンなどの脂質、キトサン、フコイダン、ヒアルロン酸などの天然高分子、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマーなどの合成高分子、トレハロース、ラクチュロース、マルチトールなどの糖質、グリセリンなどのポリオール等が例示される。
本発明の外用組成物は、特に皮膚に適用する組成物として用いることが好ましい。外用組成物としては、例えば医薬組成物、医薬部外品組成物、及び化粧品組成物が例示される。剤形としては、特に限定するものではないが、フェイスパック、ペースト、軟膏、クリーム、ジェル、ローション、乳液、美容液、化粧水、スプレー剤などが挙げられる。
本発明の抗皮膚老化外用組成物の適用対象は特に限定されないが、好ましくは抗皮膚老化(特にシワ又はたるみの抑制)を望むヒトである。
本発明の抗皮膚老化外用組成物は、上記の通り、抗酸化遺伝子発現亢進により活性酸素(ROS)を抑制(特に減少)する効果、及び/又は、MMP(Matrix Metalloproteinase)を抑制する効果、を奏することにより、抗皮膚老化を発揮する。よって、本発明は、米糠油(好ましくは米糠油内包リポソーム)を含む抗酸化遺伝子発現亢進用外用組成物、及び、米糠油(好ましくは米糠油内包リポソーム)を含むMMP抑制用外用組成物、をも包含する。
抗酸化遺伝子としては、例えばNrf2(NFE2 related factor 2)、Nqo1(NAD(P)H quinone oxidoreductase 1)、HO−1(heme oxygenase−1)、及びSOD1(Superoxide dismutase 1)等が挙げられる。Nrf2、Nqo1、HO−1、及びSOD1からなる群より選択される少なくとも1種の抗酸化遺伝子であることが好ましく、特にNrf2遺伝子及び/又はNqo1遺伝子であることが好ましい。
また、抑制されるMMPとしては、特にMMP−1、MMP−2、及びMMP−9が好ましく挙げられる。
なお、Nrf2は、活性酸素等よって活性化され、高等動物における酸化ストレス適応反応を統一的に制御する転写因子である。Nrf2は、親電子性物質の解毒化酵素であるGSTやNqo1などの異物代謝酵素、グルタチオン合成酵素などの遺伝子発現を増強して、親電子性物質を解毒化する。ヘムオキシゲナーゼ1(HO−1)は酸化ストレスを始めとする種々の急性ストレスにより誘導されることが知られており、Nrf2標的遺伝子の1つでもある。スーパーオキシドディスムターゼ(Superoxide dismutase,SOD)は、細胞内に発生した活性酸素を分解する酵素であって、哺乳動物には3種のSODが存在しており、SOD1は細胞質に存在する。
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、以下、特に断らない限り、組成物における含有成分割合を示す%は質量%(w/w%)を表す。CO濃度の%はv/v%である。また、細胞、培地及び培地関連試薬については、全て市販品を購入して用いた。
紫外線照射による活性酸素産生に対する効果の検討
米糠油について、線維芽細胞に紫外線(UVA)を照射した際に発生する活性酸素種(以下ROS)の産生に対する効果を評価した。
<使用材料>
・53歳女性由来ヒト皮膚線維芽細胞(以下HDF53)
・HDF53用培地:Minimum Essential Medium Eagle (Sigma Aldrich, M4655)に10%FBSおよび1%抗生物質(GibcoTM, 15240062)を添加して調製した。以下MEM(+)ともいう。
・PBS (Sigma Aldrich, D8537)
・HBSS (Sigma Aldrich, H8264)
・DCFH−DA(Sigma Aldrich)
なお、DCFH−DAプローブは細胞内に散在して、細胞内エステラーゼにより脱アセチル化し、非蛍光型 2’,7’−Dichlorodihydrofluorescein (DCFH)になり、更にROSにより素早く酸化され、強く蛍光する2’,7’−Dichlorodihydrofluorescein (DCF)に変化する。これにより、細胞内のROS量を蛍光強度により測定することができる。
・Premix WST−1 Cell Proliferation Assay System (TaKaRa Bio, MK400)(以下WST−1)
なお、WST−1は、細胞生存能力を発色測定により定量するための試薬である。生細胞中のミトコンドリア脱水素酵素によるテトラゾリウム塩(WST−1)のホルマザン色素への変換を基本としており、生細胞数が増加すれば、サンプル中のミトコンドリア脱水素酵素の全体の活性が増加することになり、この酵素活性の増加が、ホルマザン色素の生成増加を導くため、ホルマザン色素と培地中の代謝活性のある細胞の数とは直線的な相関を示すことになる。
<実験操作>
48穴ウェルプレートにHDF53を1.2×10cells/wellで播種し、コンフルエントになるまで37℃ CO5%インキュベーター内で3日間培養(使用培地:MEM(+))した。3日後、MEM(+)を除去してHBSSで1回洗浄し、新しいHBSSを各ウェルに300μlずつ添加した。上記のHDF53に、UVAを6000mJ/cm 照射した。HBSSを吸引除去し、新しいPBSで1回洗浄した。米糠油(三和油脂製「つや姫こめ油」又は築野食品製)を100μg/ml含むMEM(+)を各ウェルに500μlずつ添加した。各ウェルに 5mM DCFH−DA (Di(Acetoxymethyl Ester) (6−Carboxy−2’,7’−Dichlorodihydrofluorescein Diacetate))を3μlずつ添加した(最終濃度30μM)。37℃、CO5%インキュベーター内で30分間培養した。培地を吸引除去し、PBSで1回洗浄した。新しいPBSを各ウェルに300μlずつ添加した。GEMINI XPS(Molecular Devices)で、Ex 488nm/Em 530nmの波長で蛍光強度を測定した。その後、PBSを吸引除去して10倍希釈したWST−1を含むMEM(+)を各ウェルに500μlずつ添加し、37℃、CO5%インキュベーター内で2時間培養した。xMark Microplate Spectrophotometer(BIO RAD)で450nmの吸光度を測定した。当該実験は、N=3で実施した。また、米糠油を含まないMEM(+)をコントロールとした。
測定した蛍光強度を図1に示す。ただし、図1に示す蛍光強度は、GEMINI XPSで測定した蛍光強度を、細胞生存率で割り補正した値である。細胞生存率は、WST−1を用いた検討において、xMarkで測定した各ウェルの吸光度を、UVA未照射コントロールの吸光度の平均値で割ることにより、算出した。なお、UVA未照射コントロールでの生存率を「1」とした。なお、図1において、+はp<0.1、*はp<0.05、**はp<0.01(いずれもT−testによる)を示す。
紫外線照射によるMMP−1産生に対する効果の検討
米糠油について、線維芽細胞に紫外線(UVA)を照射した際のMMP−1の産生に対する効果を評価した。
<使用材料>
・53歳女性由来ヒト皮膚線維芽細胞(以下HDF53)
・HDF53用培地:Minimum Essential Medium Eagle (Sigma Aldrich, M4655)に10%FBSおよび1%抗生物質(GibcoTM, 15240062)を添加して調製した。以下MEM(+)ともいう。
・PBS (Sigma Aldrich, D8537)
・HBSS (Sigma Aldrich, H8264)
・Premix WST−1 Cell Proliferation Assay System (TaKaRa Bio, MK400)(以下WST−1)
・Human Total MMP−1 (R&D systems, DY901B)*MMP−1検出用ELISAキット
・DuoSet Ancillary Reagent Kit2 (R&D systems, DY008)
<実験操作>
48穴ウェルプレートにHDF53を1.2×10cells/wellで播種し、コンフルエントになるまで37℃ CO5%インキュベーター内で3日間培養(使用培地:MEM(+))した。3日後、MEM(+)を除去してHBSSで1回洗浄し、新しいHBSSを各ウェルに200μlずつ添加した。上記のHDF53に、UVAを8000mJ/cm 照射した。HBSSを吸引除去し、PBSで1回洗浄した。米糠油(三和油脂製「つや姫こめ油」又は築野食品製)を50μg/ml含むMEM(+)を各ウェルに500μlずつ添加し、37℃ CO5%インキュベーター内で72時間培養した。72時間後、培地を回収して12000rpmで1分間遠心分離し、上清を回収して使用するまで−30℃で保管した。また、各ウェルの残った培地を吸引除去し、新しいPBSで1回洗浄した。10倍希釈したWST−1を含むMEM(+)を、各ウェルに300μlずつ添加し、37℃ CO5%インキュベーター内で2時間培養した。培養後、xMark Microplate Spectrophotometer(BIO RAD)で450nmの吸光度を測定した。また、遠心分離して得た培地上清中のMMP−1の濃度測定を、ELISAキット付属のプロトコールに従って行った。ELISAの測定において、吸光度はxMark Microplate Spectrophotometer(BIO RAD)で450nmの吸光度を測定した。
当該実験は、N=3で実施した。また、米糠油を含まないMEM(+)をコントロールとした。
測定したMMP−1の濃度を図2に示す。ただし、図2に示す濃度は、ELISAの測定において、xMarkで測定した吸光度を、細胞生存率で割り補正した値である。細胞生存率は、WST−1を用いた検討において、xMarkで測定した各ウェルの吸光度を、UVA未照射コントロールの吸光度の平均値で割ることにより、算出した。なお、UVA未照射コントロールでの生存率を「1」とした。なお、図2において、*はp<0.05、**はp<0.01(いずれもT−testによる)を示す。
抗酸化遺伝子発現の検討
NHEK細胞(正常ヒト表皮角化細胞;新生児由来)を用いて、米糠油に含まれる抗酸化成分であるγ−オリザノールにより抗酸化遺伝子の発現が変化するかを検討した。また、γ−オリザノール内包リポソーム及び米糠油内包リポソームにより、抗酸化遺伝子の発現が変化するかを検討した。なお、細胞、培地及び培地関連試薬については、全て市販品を購入して用いた(倉敷紡績株式会社又はシグマアルドリッチ)。
<増殖培地調製方法>
37℃に恒温化したHuMedia−KB2培地 500mLに同じく恒温化したインスリン 0.5ml、hEGF 0.5ml、ハイドロコ−チゾル 0.5ml、BPE(ウシ脳下垂体抽出液)2ml、ゲンタマイシン/アンフォテリシンB 0.5ml(抗菌剤)を加えた。これを緩やかに混合した後、4℃に保存した。
<凍結NHEK細胞の解凍及び培地交換方法>
凍結NHEK細胞の入ったアンプル2本を37℃の恒温槽で解凍した。解凍後、予め15mlチューブに分注した4℃のHumedia−KG2培地 6mlに細胞溶液を混合した。予め37℃に恒温化したHumedia−KG2培地 39mlを13mlずつ3つのフラスコに移した。混合した細胞溶液を接着細胞培養フラスコ(SUMILON 250mL)に2mlずつ移し、細胞が均一になるように混合させてから、しばらく静置した。37℃、5%COインキュベーターで培養した。翌日以降、細胞密度が80%コンフルエントになるまで1日1回培地交換を行なった。
<NHEK細胞の継代培養方法>
増殖培地を吸引し、37℃に恒温化したHEPES緩衝液を5mL加え、軽く細胞層を洗浄した。HEPES緩衝液を吸引し、0.25%トリプシン溶液を2mL加え、37℃、5%COインキュベーターで3分静置した。その後、フラスコ底面に接着している細胞をはがした(フラスコの縁を軽く叩き、細胞をはがす)。そこに37℃に恒温化したトリプシン中和液を4mL加えてトリプシン酵素の反応を停止させた。細胞懸濁液を50mlファルコンに回収し、遠心した(RT、1,000rpm、5min)。上清を吸引し、Humedia−KG2培地10mlに混合した後、血球計算盤で細胞数を計測した。その後、接着細胞24wellプレートに培地量950μL、細胞数が1.33×10個になるよう蒔いた。翌日、培地交換を行なった。
<試料添加方法>
増殖培地を吸引し、PBS 1mlで洗浄した後、Humedia−KB2培地 1mlに混合した試料(γ−オリザノール又はBSA)を添加し、24時間培養した。なお、γ−オリザノールは、培地中のγ−オリザノール終濃度が10μg/ml、50μg/ml、又は100μg/ml、となるように添加した。BSAは、終濃度約0.14%となるように添加した。γ−オリザノールは、オリザ油化株式会社から購入して用いた。
<細胞回収方法>
Humedia−KB2培地を吸引し、PBS 1mlで洗浄した。PBSを吸引し、RLT(細胞溶解液) 350μlを加え、プレートシェイカーで3min振盪した。24wellプレートの周りをビニールテープで覆い、−80℃へ保存した。
<cDNAの作製>
−80℃から24wellプレートを取り出し、恒温槽で解凍した。70% EtOH 350μlを加え、プレートシェイカーで3分振盪した。Total RNAサンプルはRNeasy Mini Kit(キアゲン社)を用いて抽出した。NANODROP 2000 Spectrophotometer(Thermo SCIENTIFIC)でRNA濃度を測定し、PrimeScript RT reagent Kit(タカラバイオ社)を用いて、約500ngのTotal RNAからcDNAを作製した。
<リアルタイムPCR>
Primix Ex Taq(タカラバイオ社)10μlにプライマー、ROX DyeIIとRNA Free水を加え、18μlの混液を調製し、2μl(約50ng)のcDNAサンプルを加えて、Real−Time PCR測定サンプルを各プライマーごとに調製した。内在性コントロールとしてβ−actin、又はGAPDH、ターゲット抗酸化遺伝子としてNrf2、Nqo1、HO−1、及びSOD1を選択した。Real−Time PCR Standard7500(Applied Biosystems)により、ターゲット遺伝子の発現解析(相対定量)を行なった。検量線法による解析結果を図3に示す。また、図3の結果は内在性コントロールとしてβ−actinを用いて解析した結果である。なお、図3は、BSA添加培地での遺伝子発現量を1としたときの各培地における遺伝子発現量比を示す。また、図3において、+、*、**、***は、それぞれ、コントロール(BSA添加)と比較して有意差が有ることを示す(+:P<0.1、*:P<0.05、**:P<0.01、***:P<0.001)
なお、PCRに用いた各プライマーの塩基配列は次の通りである。(F:はフォワードプライマーを、R:はリバースプライマーを示す。)
β−actin
F:TTGTTACAGGAAGTCCCTTGCC
R:ATGCTATCACCTCCCCTGTGTG
GAPDH
F:GCACCGTCAAGGCTGAGAAC
R:TGGTGAAGACGCCAGTGGA
Nrf2
F:CTTGGCCTCAGTGATTCTGAAGTG
R:CCTGAGATGGTGACAAGGGTTGTA
Nqo1
F:GGATTGGACCGAGCTGGAA
R:AATTGCAGTGAAGATGAAGGCAAC
HO−1
F:AAGACTGCGTTCCTGCTCAAC
R:AAAGCCCTACAGCAACTGTCG
SOD1
F:AGTGCAGGGCATCATCAATTTC
R:CCATGCAGGCCTTCAGTCAG
<リポソームの調製>
表1に示す組成(合計100%)となるよう原料を混合し、これを高圧乳化機(スターバーストミニHJP−25001:(株)スギノマシン社製)で200Mpa、5パスの条件で処理し、リポソーム懸濁液(γ−オリザノール内包リポソームを含有する)を調製した。また、γ−オリザノールはオリザ油化株式会社から購入して用いた。レシチンは大豆レシチンを日油株式会社から購入して用いた。米糠油は「つや姫こめ油」を三和油脂株式会社から購入して用いた。また作成したリポソームは透過型電子顕微鏡 HT7700(HITACHI)にて存在を確認した。
以下の検討には、得られたリポソーム懸濁液(0.5%γオリザノール内包リポソーム懸濁液、1%米糠油内包リポソーム懸濁液、及び空リポソーム懸濁液)を用いた。なお、1%米糠油リポソーム懸濁液をイオン交換水で10倍希釈し、0.1%米糠油内包リポソーム懸濁液を調製して、これも以下の検討に用いた。
<細胞の3次元培養>
3次元(3D)皮膚モデル作製用ツールであるEpiderm 200Xキット及びEPI−100MM培地(いずれもクラボウ社)を用いて、3次元皮膚モデルを作製した。具体的には、Epiderm 200Xキットを用いて、次の手順で作製した。接着細胞24wellプレートに予め37℃に恒温化したEPI−100MM 500μlを加えた。3次元皮膚モデルの入ったインサートカップを接着細胞24well プレートに泡が入らないよう移した。37℃、5%COインキュベーターで2〜3時間培養して、3D皮膚モデルを作製した。
<遺伝子発現検討>
3D皮膚モデル上部に試料(0.5%γオリザノール内包リポソーム懸濁液、1%米糠油内包リポソーム懸濁液、0.1%米糠油内包リポソーム懸濁液、又は空リポソーム懸濁液)を40μl添加し、24時間培養した。その後、培地を吸引し、3D皮膚モデル上部を組織が崩れないよう注意しながらPBSで3回洗浄した。メスでインサートカップから3D皮膚モデルとメンブレンを切り出し、その後3D皮膚モデルからメンブレンを剥がした。細胞ストック用チューブに3D皮膚モデルを入れ、液体窒素で凍結し−80℃で保存した。その後、上述した方法と同様にしてRNAを抽出してcDNAを作製しリアルタイムPCRを行って遺伝子(Nrf2及びNqo1)発現を解析した。Ct法による解析結果を図4に示す。また、図4の結果は内在性コントロールとしてGAPDHを用いて解析した結果である。なお、図4において、+、*は、それぞれ、コントロール(空リポソーム)と比較して有意差が有ることを示す(+:P<0.1、*:P<0.05)。
<マイクロアレイ解析>
上記のようにして調製した3D皮膚モデル細胞のRNAを用いて、DNAマイクロアレイ解析を行い、MPP−2遺伝子、MPP−9遺伝子、及びMMP−10遺伝子の発現を検討した。DNAマイクロアレイとしてはDNAチップジェノパール皮膚チップ(三菱ケミカル株式会社)を用いた。基準サンプル(すなわち、空リポソームを添加して培養した3D皮膚モデル細胞のRNA)の補正値を1としたときの、各試料を添加して培養した3D皮膚モデル細胞のRNAの発現量を表2に示す。表2の数値の右肩の*はコントロール(空リポソーム)に比して有意差があることを示す(P<0.05)。

Claims (8)

  1. 米糠油を含む、抗皮膚老化外用組成物。
  2. 活性酸素産生抑制用及び/又はマトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)産生抑制用である、請求項1に記載の組成物。
  3. 米糠油内包リポソームを含む、抗皮膚老化外用組成物。
  4. マトリックスメタロプロテアーゼ−2(MMP−2)産生抑制用及び/又はマトリックスメタロプロテアーゼ−9(MMP−9)産生抑制用である、請求項3に記載の組成物。
  5. リポソームに内包される米糠油の、当該組成物に対する含有量が、0.005質量%以上1質量%未満である、請求項3又は4に記載の組成物。
  6. 皮膚老化が、シワ又はたるみである、請求項1又は3に記載の組成物。
  7. 皮膚老化が、光による皮膚老化である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
  8. 化粧品組成物である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
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