JP2020175462A - 中空管の切断方法および切断装置 - Google Patents

中空管の切断方法および切断装置 Download PDF

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Abstract

【課題】中空管の切断を高能率で行え、切断端面の仕上げ加工が少なくてすむ切断方法を提供する。【解決手段】中空管1の切断予定位置p応力集中部を形成する第1工程と、中空管1における切断予定位置pを境にして一方を固定し、他方にねじりを加える第2工程と、を順に実行する。中空管1に応力集中部2を形成した後で、中空管1の応力集中部2を境にして一方を固定し他方をねじると、応力集中部2に応力が集中して脆性的な破壊が一気に進行する。このため、応力集中部2を入れる加工とねじ切る加工のみで中空管1の切断が行えるので、切断に要する時間が短くて済み、高能率に中空管切断が行える。また、ねじ切り加工は中空管1の円周方向へ力を加えるだけなので、中空管1の真円度が低下せず、切断端面が良好となる。【選択図】図1

Description

本発明は、中空管の切断方法および切断装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、高速切断が可能な中空管の切断方法および切断装置に関する。
特許文献1は、金属製の中空管をブレードで切断する従来技術である。
金属製の中空管をブレード(丸のこ)によって切断するに際し、バリの発生を抑制するため、切断加工中のブレードと中空管との間の相対移動速度を制御するようにしているが、切断の基本は回転するブレードによって中空管に切り込みを入れていくものである。
しかるに、ブレードによる切断では、加工時間が長いという欠点があり、加工コストの低減に限界がある。そこで、中空管のより早い切断方法が要望されている。
特許文献2は条材の切断方法であり、条材に所定のねじり角度までねじりを付与した状態を保持し、ついで条材の長手方向に直交する方向に衝撃せん断荷重を加えて切断する条材のせん断加工方法であり、せん断加工の際に生じる「だれ」および「かえり」を減少させることを目的としている。
この従来技術は、ねじりとせん断を同時に付与することで横断面内応力を分布的にし、その最大値で亀裂を発生させることに特徴がある。しかしながら、せん断を加える以上、素材に大きな負荷が加わって変形が残りやすい。この特許文献2では、条材のだれやかえりが少ないと説明しているが、それはせん断のみの加工に比べてねじりを加えると変形が小さくなるという意味である。
また、中空管にそのまま適用した場合は、せん断時の負荷でパイプの真円度が低下してしまうので、切断後の中空管がパイプ材としては使い物にならなくなる。ゆえに、特許文献2の技術は、中空管には適用できない。
特許文献3は、ビレットやバーの切断方法であり、第1段階において、ワークピースに所定のせん断面に対して直交する軸の回りのトルクを発生させ、第2段階において、ワークピースの上記せん断面に小さなトルクと実質的に直線的なせん断面を発生させるせん断方法であり、ねじりせん断と直線的せん断の混成を制御することによって切断を改善することを目的としている。
この特許文献3の従来技術も、せん断を必須としている。せん断は非常に大きな負荷がかかるため素材にも変形が残りやすい。ゆえに、特許文献3の技術は、中空管には適用できない。
上記特許文献2,3の技術の問題点をまとめる。これら従来技術の切断方法では、せん断による素材の変形は避けられないので、中実の棒材であれば適用可能であるが、内部に空洞のある中空管であれば容易に変形し、真円度を保つことは不可能である。なお、真円度の低下を防ぐためには、中子を利用する方法もあるが、中子はせん断工具の適用を阻害するので、現実性がない。
以上の理由から、特許文献2,3の従来技術は、中実の条材や棒材にしか適用することができない。
しかるに、内部に空洞のある中空管は、短く切断して種々の機械部品として利用されることが多い。とくに自動車用の鋼管部品だと短い中空管を大量に切り出す必要がある。このような大量生産を要求される管材では、切断時間を短くでき、しかも切断端面が良好で、変形に起因する後仕上げの工数が少なくなれば、産業上の利用価値が非常に高い。
特開2000−237917号公報 特開2011−16181号公報 特開昭56−45319号公報
本発明は上記事情に鑑み、中空管の切断を高能率で行え、中空管の変形がなく切断端面が良好で仕上げ加工が少なくてすむ切断方法および切断装置を提供することを目的とする。
第1発明の中空管の切断方法は、中空管の切断予定位置に応力集中部を形成する第1工程と、前記中空管における切断予定位置を境にして一方を固定し、他方にねじりを加える第2工程と、を順に実行することを特徴とする。
第2発明の中空管の切断方法は、第1発明において、前記応力集中部は、前記中空管の切断予定位置に形成される円周方向に延びる細溝であることを特徴とする。
第3発明の中空管の切断方法は、第2発明において、前記細溝は、中空管の外周面において、円周方向の一部に形成されることを特徴とする。
第4発明の中空管の切断方法は、第1発明において、前記応力集中部は、前記中空管の切断予定位置に形成される小孔であることを特徴とする。
第5発明の中空管の切断方法は、第1発明において、前記第2工程は、中空管の他方を把持する捩り工具を、該中空管の中心軸回りに回転させてねじりを加えることを特徴とする。
第6発明の中空管の切断装置は、中空管の一方を把持する固定金具と、該中空管の他方を把持する捩り工具とからなり、前記中空管の切断予定位置の外周に円周方向の細溝を形成する細溝形成手段が設けられており、前記捩り工具には中空管の他方に回転トルクを与えるトルク付与機構が設けられていることを特徴とする。
第1発明によれば、中空管を切断する位置に応力集中部を形成した後で、中空管の応力集中部を境にして一方を固定し他方をねじると、応力集中部に応力が集中して延性破壊が一気に進行する。このため、応力集中部を形成する加工とねじ切る加工のみで中空管の切断が行えるので、切断に要する時間が短くて済み、高能率に中空管切断が行える。また、ねじ切り加工は中空管の円周方向へ力を加えるだけなので、中空管の真円度が低下しない。さらに、半径方向に塑性変形しないので切断端面が良好になり後仕上げの工数が少なくてすむ。
第2発明によれば、細溝を中空管の外周面に形成しただけで、ねじりを加えたときの応力集中が発生するので、中空管の切断が短時間で行える。細溝は、中空管の肉厚方向に貫通させる必要がなく、細溝を形成するための抵抗が小さくてすみ、工具刃先の損耗を抑制できる。
第3発明によれば、細溝を中空管の外周面において円周方向の一部に形成しただけで、ねじりを加えたときの応力集中が発生するので、中空管の切断が短時間で行える。しかも、細溝の形成も容易なので、切断加工に要する時間が短くなる。
第4発明によれば、小孔を中空管の切断予定位置に形成しておくと、ねじりを加えたときの応力集中が発生するので、中空管の切断が短時間で行える。
第5発明によれば、捩り工具を中空管の中心軸回りに回転させると、中空管へトルクを加えやすく、小さな動力で中空管を切断できる。
第6発明によれば、中空管を切断する位置に細溝を形成した後で、中空管の一方を固定金具で固定し他方を捩り工具でねじると、細溝に応力が集中して破壊が一気に進行し、中空管を切断できる。
本発明に係る中空管切断方法の説明図である。 中空管1に形成した細溝2aと亀裂進行の様子を示す説明図である。 中空管1に形成した小孔2bと亀裂進行の様子を示す説明図である。 本発明に係る切断装置の概念図であって、(A)は外観図、(B)は断面図である。 固定金具10に取付けたタイプの細溝形成手段30Aの説明図である。 細溝2aの写真であって、(A)は公知のパイプカッターで形成したもの、(B)は突切り刃で形成したものである。 細溝2aを形成した実施例1における切断面の写真である。 小孔2bの写真であって、(A)は0.5mm貫通孔を示し、(B)は1mm貫通孔を示している。 小孔2bを形成した実施例6における切断面の写真である。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1および図2に基づき、本発明に係る中空管切断方法を説明する。
図1および図2において、符号1は中空管を示す。
本発明にいう中空管とは、内部に軸方向に延びる空洞がある中空の管材をいう。中空の管材であるならば、薄肉管も厚肉管も含まれる。中空管の素材は金属のほか合成樹脂なども含まれる。中空管の素材としての金属には、炭素鋼や合金鋼、鋳鉄などの鉄鋼を含む鉄系金属のほか、銅やアルミニウム、ニッケル、貴金属などの非鉄金属も含まれる。中空管の管径には原理上制限はなく、小径のものから大径のものまで、本発明を適用できる。
本発明にいう中空管には、断面が円形のものが含まれるが、完全な円形でなく多少変形した形状のものも含まれる。たとえば、多角形や円形の一部に平坦部分が形成された形状のものも、本発明の中空管に含まれる。
(I):中空管
図1の(I)に示す中空管1は、任意の長さのものの一部を示している。pは切断予定位置を示している。切断予定位置pはけがき線等で入れてもよく入れなくてもよい。中空管1の長さは任意であり、切断後の長さも任意である。
切断予定位置pを境にして、紙面左側を固定側1Aとし、紙面右側を可動側1Bとする。固定側1Aは特許請求の範囲にいう「一方」に対応し、可動側1Bは「他方」に対応する。
(II):第1工程
図1の(II)に示すように、切断予定位置pに応力集中部2を形成する。応力集中部2は、中空管1にねじりを加えたときに、応力集中が発生する起点となる凹所であればよく、たとえば、細溝2aや、小孔2bを用いることができる。これらは、いずれも亀裂の発生起点とすることができる。
(III):第2工程
図1の(III)に示すように、中空管1における応力集中部2を境にした一方、すなわち固定側1Aを、何らかの手段で固定し、他方、すなわち可動側1Bに、矢印Tで示すように捩りを加える。
中空管1の可動側1Bに捩りを加えると、応力集中部2の先端に応力が集中し、そこから延性的な破壊3が進展していく。矢印Tで指す方向に捩りを加えていくと、当初の角度から10°位までの間は塑性変形を伴いつつ、応力集中部2の先端に応力が集中する。その応力が一定限度を超えると、一気に延性破壊が生じ、中空管1の全周にわたって亀裂が進行する。なお、塑性変形が進む角度範囲10°は一例であって、応力集中部2の形状や大きさ、また中空管1の素材や肉厚によって変動する。
(IV):切断完了
図1および図2に示す(III)図の亀裂発生から(IV)図に示す亀裂の全周進展までは一気に進む。
概ね、捩り角度が0°から35°位までで中空管1の切断が完了する。もっとも、この捩り角度は、応力集中部2の形状や大きさ、また中空管1の素材や肉厚によって変動する。
(応力集中部2)
応力集中部2は、中空管に捩りを加えたときに応力が集中し、亀裂進展の起点となる凹所であればよく、応力が集中する限りどのような形状のものであってもよい。
以下に、応力集中部2の代表例として、細溝2aと小孔2bを説明する。
細溝2aは、図2に示すような、中空管1にねじりを加えたとき、応力集中して亀裂進展の起点となる溝状の凹所であればよく、長さや深さ、溝形状等にとくに制限はない。
図2の(II)で示すように、細溝2aの深さは、中空管1の肉厚より浅いものでよい。つまり、中空管1を肉厚方向に貫通する必要はない。肉厚の一部に形成されていても、ねじりを加えたとき応力集中が生ずるからである。
細溝2aの溝形状にとくに制限はない。断面形状が刃物を差し込んだような三角溝であってもよく、切削加工したような四角溝であってもよい。
また、細溝2aの大きさは小さくても足りる。溝が小さくてもねじりを加えれば応力集中が発生するからである。
細溝2aの長さは中空管1の外表面において、円周方向の一部であればよく、長く形成する必要はない。細溝2aの長さが短くても、応力集中は発生するからである。細溝2aは、円周方向において複数個所に形成してもよい。細溝2aが1本の場合も複数本の場合も総長さが長いほど切断面が良好となる。
図2に図示の細溝2aは、中空管1外周の円周方向で20〜150°の範囲の長さのものである。なお、細溝2aの角度範囲は一例であって、中空管1の材質、管径、肉厚などによって変動し、前記範囲より小さくもなり大きくもなる。よって、切断しやすい細溝2aの範囲は実験的に定めればよい。
細溝2aの形成方法に制限はない。中空管1の外周に溝が出来るなら、どのような方法を用いてもよい。たとえば、突切り刃のような刃物を押し付ける手法、公知のパイプカッターで切り溝を付ける手法、鉄ノコで引いて切り溝を付ける手法など種々の方法を制限なく用いることができる。
図6の(A)はパイプカッターで切り溝を付けたときの細溝2aの例を示し、図(B)は突切り刃を押し付けて形成した細溝2aの例を示している。
小孔2bは、図3に示すような、中空管1にねじりを加えたとき、応力集中して亀裂進展の起点となる孔状の凹所であればよい。
小孔2bの孔径は、大きくする必要はなく小さくても足りる。中空管1の管径にも依存するが、外径が3〜50mmの金属製の中空管1であれば、0.5mm〜2mm位の孔径の小孔2bであっても、ねじりを加えたときに応力集中が発生する。上記の中空管1の外径や小孔2bの孔径は一例であって、中空管1の材質、管径、肉厚などによって変動し、前記範囲より小さくもなり大きくもなる。よって、切断しやすい小孔2bの範囲は実験的に定めればよい。
小孔2bの深さは、中空管を貫通するものでもよく、中空管1の肉厚より浅いものでよい。つまり、貫通孔にする必要はない。非貫通孔でも応力集中は発生するからである。
小孔2bの孔形状は、円形が一般的であるが、多角形でもよい。ただし、円形の方が加工が容易である。
小孔2bは、中空管1の外表面において円周方向の1カ所に形成してもよく、数カ所に形成してもよい。数カ所形成する場合は、円周方向等間隔にする必要はない。
図8(A)図は、孔径0.5mmの貫通孔である小孔2bを示し、(B)図は孔径1mmの貫通孔である小孔2bを示している。
(切断方法の特徴)
本発明の切断方法では、つぎのような特徴がある。
(1)捩りによって延性破壊が始ると、応力集中部2から進行する亀裂が高速で中空管1断面に伝搬し、一気に破断が完了する。このため、切断に要する時間は非常な短時間となる。
(2)本発明による切断は延性破壊ではあるが、管軸方向に極めて狭い幅でせん断変形を受け、切断面に垂直な大きな多数のくぼみ(等軸ディンプル)が生じず、切断面に沿った小さな伸長ディンプルが形成される。このため、破断面は平滑となるのが特徴である。
(3)本発明の切断方法では、中空管1の半径方向には力が加わらず円周方向にのみ力が加わるので、円周方向の亀裂の進行方向(破断線)にゆがみが生じた場合は、多少は切断面に凹凸が生じるが、その凹凸は小さいので切断後の仕上げ加工が簡単となり工数も少なくなる。
(4)本発明のせん断は延性破壊によるものであるが、力は円周方向に加わり、従来技術における半径方向へのせん断力は加わらないので、切断面にかえりやだれの原因となる材料の倒れ込みが生じない。また、同様の理由で中空管1に対し半径方向の負荷が本来的に作用しないので真円度も低下しないという利点がある。
(切断装置)
つぎに、本発明に係る切断装置を説明する。
本発明の切断装置は、本発明に係る切断方法を実施するための装置であるので、中空管1の一方を把持する固定金具10と、中空管1の他方を把持する捩り工具20と、中空管1の切断予定位置に応力集中部2を形成する凹所形成手段30が必須の要件として設けられていればよい。なお、捩り工具20には中空管1の可動側1Bに回転トルクを与えるトルク付与機構を設けておくと、捩り作業を機械的に行うことができる。
以下、切断装置の一例を図4および図5に示す。
(固定金具10)
固定金具10としては、中空管1の固定側1Aを回転しないように固定できるのであれば、どのような手段を用いてもよい。図4に示す固定金具10は、その一例であって、2つの割り型で中空管1を挾んで中空管1を回転できないように強固に締め付けるものである。この固定金具10には静止部材に固定するためのブラケット15が適宜設けられる。
固定金具10の締め付け方は任意である。たとえば、固定金具10を構成する2つの割り型自体をボルトで締め付けてもよい。
また、ブラケット15を割り型にして、そこに固定金具10の割り型を差し込んで、ブラケット15に取付けたボルトで締め付けてもよい。
いずれにしても、固定金具10の孔内に挿入された中空管1が外周から締め付けられて、中空管1の他方に加えられた捩りによって連れ回りすることがなければよい。
なお、固定金具10の孔内周と中空管1外周との間に摩擦抵抗を高めるためのシート材などを挾みこむかコーティングしておくことも任意である。このようなシート材は摩擦抵抗を高めることができればよく、とくに材質に制限されないが、薄肉のウレタンシートを例示できる。
固定金具10は、図示のように中空管1の外周面を面で接触するものが好ましい。そうすることで、固定時の面圧を下げ、中空管1の真円度の低下を防止することができる。
なお、内面保持用の中子を中空管1に挿入してもよい。この場合、より大きい力で固定しても、中空管1の真円度の低下を防止することができる。
(捩り工具20)
捩り工具20は、中空管の可動側1Bに外挿し中空管1の可動側1Bに捩りを加えるための工具である。捩りを加えることができれば、どのような手段を用いてもよい。
図4に示す捩り工具20は、その一例であって、2つの割り型で中空管1を挾んで強固に締め付けるものである。
捩り工具20の締め付けは任意である。たとえば、捩り工具20を構成する2つの割り型自体をボルトで締め付けてもよい。
なお、捩り工具20の孔内周と中空管1外周との間に摩擦抵抗を高めるためのシート材などを挾みこむことも任意である。
捩り工具20に取付けるトルク付与機構は中空管1の可動側1Bに回転トルクを与えることができれば、どのような手段を用いてもよい。
手動のトルク付与機構であれば、捩り工具20に半径方向に延びるレバー25を取付けるような簡便なものでよい。
動力付きのトルク付与機構であれば、捩り工具20に、歯車やベルト掛け、レバーの噛み合いなどを利用した公知のトルク伝達機構を用いてモータ等の回転駆動源に連結すればよい。また、中空管1の切断が完了した後の停止や次の切断作業の開始を制御する制御部なども適宜用いるとよい。
なお、捩り工具20の孔内周と中空管1外周との間に摩擦抵抗を高めるためのシート材などを挾みこむかコーティングしておくことも任意である。このようなシート材は摩擦抵抗を高めることができればよく、とくに材質に制限されないが、薄肉のウレタンシートを例示できる。
捩り工具20は、図示のように中空管1の外周面を面で接触するものが好ましい。そうすることで、装着固定時の面圧を下げ、中空管1の真円度の低下を防止することができる。
なお、内面保持用の中子を中空管1に挿入してもよい。この場合、より大きい力で固定しても、中空管1の真円度の低下を防止することができる。ただし、だれやバリを抑制する目的として中子を使用する通常の金属管のせん断加工と異なり、あくまで連れ回りを防いてトルクを可動側1Bに伝えるものであり、切断面位置に中子を合わせる必要もない。
(凹所形成手段30)
凹所形成手段30は、中空管1の外周面に応力集中部を形成することができれば、どのような手段を用いてもよい。たとえば、応力集中部2として細溝2aを形成するには、押し付けて溝を付ける刃物や、押し引きして溝を切っていく鉄ノコなどを例示できる。また、応力集中部2として小孔2bを形成するには、孔あけ用のドリルなどを例示できる。
上記のような凹所形成手段は、固定金具10や捩り工具20と一体に取付けられたものでもよく、別体のものとして用いられるものであってもよい。
図4(B)および図5に示す凹所形成手段30の一例である細溝形成手段30Aは刃物を用い固定金具10に一体的に取付けたものである。
図示の細溝形成手段30Aは上刃31と下刃32とからなる。上刃31は、工具鋼製の四角形鋼板から、下方部分を半円形にくり抜き、半円形くり抜き部分の上縁に刃先30bを形成したものである。くり抜き部分の曲率半径は切断する中空管1の外径に合わされている。刃先30bは半径方向内側に若干量突出しており、その断面は三角形になっている。
下刃32は工具鋼製の四角形鋼板から上方部分を半円形にくり抜いたものである。くり抜き部分の曲率半径は、上刃31と同じく切断する中空管1の外径に合わされている。くり抜き部分には刃先は形成されておらず、板厚に等しい端面が円周方向に連続し、溝形成時の荷重を受けても中空管1の外周面に変形が生じないようにされている。
図5に示す上刃31と下刃32の間の円形空間に中空管1を挿入した状態で、固定金具10の上型11と下型12を締め付けると上刃31の一部である刃先30bが中空管1の外周に喰い込み、図2(II)に示すように、細溝2aが形成される。
上記図4および図5に示す切断装置を用いると、図1の(II)に示す第1工程と、(III)、(IV)に示す第2工程とを同じ装置で実行できる。
すなわち、中空管1を切断する位置pに細溝2aを形成した後で、中空管1の一方を固定金具10で固定し他方を捩り工具20でねじると、細溝2aに応力が集中して延性破壊が一気に進行し、中空管を切断できる。
つぎに本発明の中空管の切断方法の実施例を説明する。
(実施例1〜5)
(1)中空管1
材質がアルミニウム(A6063)の引き抜き管を実験対象とした。全長111mm、外径38mm、内径35mm、肉厚1.5mmである。
(2)細溝2a
細溝2aが、1カ所のものを実施例1とし、2カ所のものを実施例2とし、3カ所のものを実施例3とし、4カ所のものを実施例4とした。2カ所以上の細溝2aは円周方向等間隔に形成した。細溝2aを円周全体に形成したものを実施例5とした。なお、細溝2aを形成してないものを比較例1とした。溝深さは0.25mmと0.50mmの2種類とした。細溝2aの数、形状を表1に示す。
細溝2aの加工は公知のパイプカッターを用いて形成してもよく、図4(B)および図5に示す細溝形成手段30A(固定金具10に設けた上刃31)を用いて形成してもよい。図6の(A)は実施例1においてパイプカッターで細溝2aを形成したものの写真であり、同(B)は細溝形成手段30Aの上刃31で形成したものの写真である。
(3)捩り付与
捩り工具20に回転中心から長さ1560mmのレバーを半径方向に延びるように取付け、レバーに人力でトルクを加え、中空管1の固定側1Aを固定し可動側1Bに捩りを付与した。
(4)結果
実施例1〜5では、捩り角度が約10°位になった時点で細溝2aから亀裂が発生しはじめ、約30°〜40°まで捩ったところで、亀裂が一気に全周にわたって進行し、中空管1が切断された。
(5)表面性状
切断面を観察すると、実施例1〜5のように細溝程度の管軸方向の極狭い幅での局部的なせん断であり、だれは緩和され、かえりは分散されており、良好な表面形状が得られた。細溝2aを形成してない比較例1では、管軸方向の広い幅でねじり変形が生じることとなり、渦巻き貝のようならせん形状の損傷形態となる。
図7は、実施例1において、細溝2aの深さを0.25mmとした場合の切断面(左側が固定側、右側が捩り側)の写真である。写真に示すように良好な切断面を示している。
細溝2aの深さを0.5mmとした場合の切断面も良好な切断面となることが確認されている。
図7に示す切断面の良好な表面性状の割合を以下に示す。
「良好な表面形状」とは、だれやかえり、バリを発生させずに、脆性的に切断が進んだと考えられる切断面性状を意味する。表2で%は、良好な表面性状の切断面全体に対する割合である。
上記表にみるように、良好な表面性状は、切断面の約1/2以上を占めている。
とくに、細溝2aの深さが大きいほど、良好な表面性状の占める割合が大きく、概ね7割から9割を占めるに至っている。このように、表面性状が良好であると、切断後の仕上げ加工の工数が少なくてよくなり、生産性が向上する。
(実施例6,7)
中空管1は実施例1と同じものを用いた。小孔2bの形成箇所は円周に等間隔に2カ所のもの(実施例6)と、4カ所のもの(実施例7)を用意した、小孔2bの内径は0.5mmと1mmの2種類を用意し、外表面からの孔の深さは0.8mmと貫通(1.5mm)の2種類を用意し、合計8パターンを準備した。その組合わせを表2に示す。
捩り工具20に回転中から長さ1560mmのレバーを半径方向に延びるように取付け、レバーに人力でトルクを加え、中空管1の固定側1Aを固定し可動側1Bに捩りを付与した。
実施例6,7では、捩り角度を0°から10°位になった時点で小孔2bから亀裂が発生しはじめ、36°位まで捩ったところで、亀裂が一気に全周にわたって進行し、中空管1が切断された。
切断面の表面性状を観察すると、小孔2bを形成してない実験例では、管軸方向の広い幅でねじりせん断が生じることとなり、渦巻き貝のようならせん形状の損傷形態となる。これに対し、実施例6,7では良好な表面性状が得られた。
いずれも、良好な切断面を示しており、良好な表面性状の割合は、細溝を用いた実施例1と比べて、さほどそん色のない優れたものであった。
実施例7の小孔2bの直径Φ0.5mm、深さ0.8mmの未貫通とした場合の切断面(左側が固定側、右側が捩り側)の写真を図9に示す。実施例7でも、実施例6と同様の良好な切断面が得られた。なお、実施例7では小孔2bが4カ所ある結果、応力集中部2の円周方向総長さが実施例6より長いので、より良好な切断面となる。
(本発明の特徴)
(1)本発明によれば、中空管1を切断する位置に応力集中部2を形成した後で、中空管1の応力集中部2を境にして一方を固定し他方をねじると、応力集中部2に応力が集中して延性的な破壊が一気に進行する。
(2)このため、応力集中部2を入れる加工とねじ切る加工のみで中空管1の切断が行えるので、切断に要する時間が短くて済み、高能率に中空管の切断が行える。また、ねじ切り加工は中空管の円周方向へ力を加えるだけなので、中空管の真円度が低下しないという利点がある。
(3)また、本発明による切断は延性破壊ではあるが、切断面の表面形状が良好なので、後仕上げの工数を削減できるという利点が大きいものである。
本発明は、中空管の切断であれば、とくに制限なく広く適用することができる。
1 中空管
1A 固定側
1B 可動側
2 応力集中部
2a 細溝
2b 小孔
10 固定金具
20 捩り工具
30 凹所形成手段

Claims (6)

  1. 中空管の切断予定位置に応力集中部を形成する第1工程と、
    前記中空管における切断予定位置を境にして一方を固定し、他方にねじりを加える第2工程と、
    を順に実行する
    ことを特徴とする中空管の切断方法。
  2. 前記応力集中部は、前記中空管の切断予定位置に形成される円周方向に延びる細溝である
    ことを特徴とする請求項1記載の中空管の切断方法。
  3. 前記細溝は、中空管の外周面において、円周方向の一部に形成される
    ことを特徴とする請求項2記載の中空管の切断方法。
  4. 前記応力集中部は、前記中空管の切断予定位置に形成される小孔である
    ことを特徴とする請求項1記載の中空管の切断方法。
  5. 前記第2工程は、中空管の他方を把持する捩り工具を、該中空管の中心軸回りに回転させてねじりを加える
    ことを特徴とする請求項1記載の中空管の切断方法。
  6. 中空管の一方を把持する固定金具と、
    該中空管の他方を把持する捩り工具とからなり、
    前記中空管の切断予定位置の外周に円周方向の細溝を形成する細溝形成手段が設けられており、
    前記捩り工具には中空管の他方に回転トルクを与えるトルク付与機構が設けられている
    ことを特徴とする中空管の切断装置。
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