本開示の実施態様は以下のとおりである。なお、以下の記載で各構成に付与されている符号は図面に記載されている符号と対応させてあるが、本発明はこれに限定されないことはいうまでもない。また、本開示では、各流路において、液体の流入元に近い側を「上流」と称し、液体の流出先に近い側を「下流」と称する。
また、本開示における「流量」とは、単位時間あたりに流れる液体の体積をいい、たとえば「ml/min」というような単位で表される。また、下記で言及される「液量」とは、液体の体積をいい、たとえば「ml」というような単位で表される。
[送液装置]
本開示の実施態様の送液装置10は、液体の貯留部13、貯留部13と液体の供給先20とを連絡する流路31、貯留部13の下流に設けられ、供給先20に液体を供給する第1ポンプ41、第1ポンプ41の下流側の前記流路31に設けられ、液体を保留する保留槽42Aを有し、供給先20に液体を供給する第2ポンプ42、第2ポンプ42の下流側に設けられた流量計60、及び第1ポンプ41と第2ポンプ42とを制御する制御部100を有する。
この制御部100は、第1ポンプ41を制御して流路31へ液体を供給させるのと併せて、第2ポンプ42を制御して、前記第1ポンプ41から供給された液体を流路31から前記第2ポンプ42の保留槽42Aに吸引させ、又は、保留槽42Aが保留する液体を前記第2ポンプ42の下流側の流路31に送出させた状態で、流量計60が測定した流量を、第2ポンプ42が保留槽42Aに吸引した吸引流量又は保留槽42Aから送出した送出流量で補正することで、第1ポンプ41が流路31に供給する流量である第1ポンプ供給流量を算出することが可能である。
液体の供給先20とは、たとえば、検体(たとえば、生体から採取した血液、尿などの液体試料)における浮遊物や含有成分の測定に用いるフローセル20が挙げられる。液体の供給先20としてこのようなフローセル20を用いる場合、供給される液体は、たとえば検体とともにフローセル20内を流動するシース液である。もちろん、このようなフローセル20以外にも、流量を制御して液体に、測定を含む何らかの操作を施すことを意図するものであれば、本実施態様でいう液体の供給先20とすることができる。
液体の貯留部13とは、本実施態様の送液装置10において最上流に位置し、液体の供給先20に供給される液体を貯留する構造である。この液体の貯留部13としては、たとえば上記したシース液を貯留するシース液貯留部13とすることができる。この液体の貯留部13からは、後述する第1ポンプ41で流路31の下流側へ貯留する液体が送出される。
第1ポンプ41と、第2ポンプ42と、流量計60とは、流路31において上流側から下流側に向けて、換言すれば、貯留部13から供給先20に向けて、この順番に直列に接続されている。もちろん、これらの構成はこの順番に接続されていれば、その途中に他の構造(たとえば、流路31の分岐や流路31の開閉又は切替を行うバルブ)が介在していても差し支えない。
第2ポンプ42は、流量計60による流量の測定の対象となるポンプである。この第2ポンプ42としては、送出可能な液量は一定の範囲内に制限されていても、液体を送出する流量を一定に制御し、流路31から液体を吸引又は流路31に液体を送出できる方式のポンプ(たとえば、シリンジポンプやチューブポンプ)により構成されていることが望ましい。特に、シリンジポンプであることが望ましい。
また、第2ポンプ42はその内部に液体を保留可能な保留槽42Aを有し、流路31から液体を吸引してその吸引した液体を保留槽42Aに保留する。そして保留槽42Aに保留した液体を流路31に送出する。つまり第2ポンプ42は、流路31を流れる液体を流路31から保留槽42Aに吸引し、第2ポンプ42より下流側の流路に流れる液体の流量を減らす。また、保留槽42Aに保留している液体を流路31に送出することで、第2ポンプ42より下流側の流路31に流れる液体の流量を増やす。第2ポンプ42の保留槽42Aは、第2ポンプ42が吸引した液体を保留できるものであればよい。たとえば、第2ポンプ42がシリンジポンプである場合、シリンジポンプで流路31の液体を吸引すると、その液体はシリンジ内に留まり、流路31からその分の流量が除外されて、流路31の第2ポンプ42より下流側に流れる流量が減少する。そして、シリンジ内に留まった液体をシリンジのピストンを押し出して流路31に送出すると、流路31の第2ポンプ42の下流側に流れる流量が増加する。そのため、シリンジポンプのシリンジは第2ポンプ42の保留槽42Aに該当する。また、第2ポンプ42は、第1ポンプ41と流量計60との間に分岐流路を設け、その分岐流路に保留槽42Aとチューブポンプを設けた構成としてもよい。この場合、チューブポンプで流路31から液体を吸引して分岐流路から保留槽42Aに液体を吸引すると、同様にその液体は流路31から除外されて保留槽42Aに留まり、流路31の第2ポンプ42の下流側に流れる流量が減少する。そして、保留槽42Aの液体をチューブポンプで分岐流路から流路31に液体を送出すると、流路31の第2ポンプ42より下流側に流れる流量が増加する。
流量計60は、第2ポンプの定格流量を測定可能範囲に含むことが望ましく、その方式は特に限定されない。たとえば、電磁式流量計、カルマン渦式流量計、羽根車式流量計、浮き子式流量計、熱式流量計などが適宜選択できる。流路31を流れる液体の向きに関わらずに測定できる流量計が望ましい。熱式質量流量計や、赤外線や超音波を流体に照射して流量を測定する非接触型の液体流量センサが本実施態様の送液装置10には適している。ここで、測定可能な流量の範囲とは、流量計60を流れる液体の流量に応じて、流量計60の出力値が変化する流量の範囲をいう。
第1ポンプ41は、前記した液体の貯留部13から液体を吸引し、流路31の下流側、つまり供給先20側へ送出するポンプである。この第1ポンプ41としては、前記した流量計60の測定可能範囲を超える流量、又は流量計60で精密に測定可能な範囲を超える流量を送出可能なポンプが用いられる。第1ポンプ41としては、連続的に液体を送出可能な方式のポンプ(たとえば、チューブポンプ)やシリンジポンプなど適宜選択できる。この第1ポンプ41としてはチューブポンプを用いることが望ましい。
送液装置10においては、上記した貯留部13、第1ポンプ41、第2ポンプ42、流量計60及び供給先20が流路31で直列に連結されている。
制御部100は、後述するようにコンピュータのハードウェア構成を用いて送液装置10の各構成を制御するものである。制御部100は、具体的には、第1ポンプ41の駆動を制御する第1ポンプ制御手段141、第2ポンプ42の駆動を制御する第2ポンプ制御手段142、第1ポンプ制御手段141によって第1ポンプ41を駆動させて液体を流路31に供給し、かつ、第2ポンプ制御手段142によって第2ポンプ42を駆動して液体を流路31に対し吸引又は送出して、流量計60を流れる液体の流量を、測定可能範囲に含まれる流量に調整する流量調整手段160、流量調整手段160が調整した流量計60を流れる液体の流量を合成流量として測定する合成流量測定手段161、及び、合成流量測定手段161が測定した合成流量を、第2ポンプ42が流路31に対し吸引した吸引流量又は送出した送出流量のいずれかである調整流量で補正した流量を、第1ポンプ41が流路31に供給する流量である第1ポンプ供給流量として算出する第1ポンプ供給流量算出手段171として機能する。
ここで、第1ポンプ41が送出する流量は流量計60の測定可能範囲、又は、流量計60の最適な測定範囲に含まれていないので、この流量計60によっては正確な流量を測定することができない。
そこで、流量調整手段160によって、第1ポンプ制御手段141によって第1ポンプ41を駆動させて流路に液体を送出させるのと併せて、第2ポンプ制御手段142によって第2ポンプ42を駆動させて流路31に対し液体を送出又は吸引させる。
ここで、第1ポンプ41が送出する流量が流量計60の測定可能範囲を超えている場合には、第2ポンプ制御手段142によって第2ポンプ42を駆動させて流路31から液体を調整流量(すなわち、吸引流量)で吸引する。これにより流量計60に到達する液体の流量を、調整流量の分、減らすことで、流量計60に到達する液体の流量を測定可能範囲に収める。
一方、第1ポンプ41が送出する流量が流量計60の測定可能範囲に満たない場合には、第2ポンプ制御手段142によって第2ポンプ42を駆動させて流路31へ液体を調整流量(すなわち、送出流量)で送出する。これにより流量計60に到達する液体の流量を、調整流量の分、増やすことで、流量計60に到達する液体の流量を測定可能範囲に収める。このとき、流路31に送出する液体は、流路31から液体を吸引し、第2ポンプ42内又は第2ポンプが有する貯留部に貯留したものを用いてもよい。また、第2ポンプ42に、別途、液体の貯留部13を接続し、その液体を流路31に送出してもよい。
この調整流量は、第1ポンプ41が送出する流量に応じて、適宜変更してもよい。
合成流量測定手段161は、流量調整手段160によって調整された後の流量を、流量計60で合成流量として測定する。そして、第1ポンプ供給流量算出手段171は、測定されたこの合成流量を、上記の調整流量で補正することによって、第1ポンプ41が流路31に供給する流量である第1ポンプ供給流量を算出する。
具体的には、第2ポンプ42による液体の吸引流量又は送出流量として表される干渉値を、流量計60で測定された流量値に加算することで、第1ポンプ供給流量算出手段171は第1ポンプ供給流量を算出する。ここでこの干渉値とは、上記したように、第2ポンプ42による液体の吸引流量は正の値とし、かつ、第2ポンプ42による液体の送出流量は負の値として定義される数値である。
すなわち、流量を測定したい第1ポンプ41と流量計60との間に第2ポンプ42を設け、第2ポンプ42を駆動させた後の流量が流量計60で測定される。そして、流量計60で測定された数値である流量値に、第2ポンプ42の駆動による干渉値を加算することによって補正した後の値が第1ポンプ供給流量となる。
換言すると、第2ポンプ42によって流路31から液体を吸引している場合には、流量値とその吸引流量との和が、第1ポンプ供給流量となる。逆に、第2ポンプ42によって流路31に液体を送出している場合には、流量値とその第2ポンプ42の送出容量との差が、第1ポンプ供給流量となる。
なお、制御部100、具体的には第1ポンプ制御手段141は、第1ポンプ供給流量算出手段171が算出した第1ポンプ供給流量に基づき、第1ポンプ41が流路31に送出する流量を調節可能としてもよい。たとえば算出した第1ポンプ供給流量が想定していた値よりも低い場合や、供給先20の目的に応じて設定されている第1ポンプ41の流量よりも低い場合には、第1ポンプ41が送出する流量を大きくしたり、逆に高い場合には第1ポンプ41が送出する流量を小さくしたりすることとしてもよい。
なお、この第1ポンプ41が送出する流量の調節は、本実施態様の送液装置10の出荷時の性能確認として行うこととしてもよいし、その送液装置10のメンテナンス時に行うこととしてもよいし、あるいは、第1ポンプ41が駆動している任意の時点で行ってもよい。
また、制御部100、具体的には第2ポンプ制御手段142は、第1ポンプ41の流路31への液体の供給が停止した状態で流量計60が測定した第2ポンプ42が送出する流量である第2ポンプ送出流量に基づき、第2ポンプ42が送出する流量を調節可能としてもよい。たとえば、供給先20の目的に応じた第2ポンプ42の流量が設定されている場合、実際に測定された第2ポンプ送出流量に応じて、第2ポンプ42が送出する流量を高めたりあるいは低くしたりして、その設定された流量を実現するようにすることができる。
[流量測定方法]
本開示の実施態様における流量測定方法は、上記した送液装置10を用いて、第1ポンプ41を駆動して液体を流路31に供給し、かつ、第2ポンプ42を駆動して液体を流路31に対し吸引又は送出して、流量計60を流れる液体の流量を、流量計60の測定可能範囲に含まれる流量に調整する流量調整工程S200と、流量調整工程S200で調整された第2ポンプ42下流の流量を合成流量として測定する合成流量測定工程S210と、合成流量測定工程S210で測定した合成流量を、第2ポンプ42が流路31に対し吸引又は送出した流量である調整流量で補正した流量を、第1ポンプ41が流路31に供給する流量である第1ポンプ供給流量として算出する第1ポンプ供給流量算出工程S220と、を含む。
流量調整工程S200とは、第1ポンプ41を駆動して液体を流路31に供給した状態で、第2ポンプ42によって流路31から液体を吸引するか、又は、流路31へ液体を送出するかのいずれかによって、第2ポンプ42から供給先20側の流路、つまり、流量計60で現に流れている液体の流量が、流量計60の測定可能範囲に含まれるように調整する工程である。ここで、この流量調整工程S200において、第2ポンプ42によって流路31から吸引された液体の流量、又は、流路31へ送出された液体の流量を、調整流量と称する。この調整流量の意義は上述の通りである。
この調整流量は、第1ポンプ41が送出する流量に応じて、適宜変更してもよい。たとえば、第2ポンプ42によって流路31の液体を調整流量で吸引しても、流量計60に流れている液体の流量が流量計60の測定可能範囲を依然として超えている場合、その調整流量を増加させて新たな調整流量としてもよい。この新たな調整流量で第2ポンプ42を用いて流路31の液体を吸引し、流量計60を流れる流量が測定可能範囲に収める。この新たな調整流量でも流量計60を流れる流量が測定可能範囲に収まらない場合は、これを繰り返してもよい。第2ポンプ42によって流路31の液体を調整流量で送出しても、流量計60に流れている液体の流量が流量計60の測定可能範囲よりも依然として低い場合も同様に適切な調整流量に変更できる。
合成流量測定工程S210とは、流量調整工程S200を経て流量計60で測定された流量を、合成流量として測定する工程である。
第1ポンプ供給流量算出工程S220とは、合成流量測定工程S210によって測定された合成流量を、流量調整工程S200における調整流量で補正することで、第1ポンプ供給流量を算出する工程である。たとえば、第2ポンプ42によって液体が流路31から吸引される場合の調整流量を正の数として定義し、かつ、液体が流路へ送出される場合の調整流量を負の数として定義した干渉値という値を導入し、この干渉値を、合成流量に加算することでこの補正を行うことができる。
そして、たとえば、この第1ポンプ供給流量の算出値に基づき、第1ポンプ41の供給流量を調節する工程を設けることとしてもよい。これにより、第1ポンプ41によって、供給先20にとって望ましい流量で、供給先20に液体を供給できる。
なお、上記した流量調整工程S200、合成流量測定工程S210及び第1ポンプ供給流量算出工程S220の一連の流れとは別に、これらの工程を行うに先立って、第2ポンプ42を駆動して、流量計60によって第2ポンプ送出流量を測定する第2ポンプ送出流量測定工程S110を実施することとしてもよい。そうして、このときの第2ポンプ42の駆動速度と測定された第2ポンプ送出流量とから、前記した流量調整工程S200における調整流量で流路31に対し液体を吸引又は送出するための第2ポンプの駆動速度(調整流量駆動速度)を算出する調整流量駆動速度算出工程S120を実施する。そして、流量調整工程S200において、この調整流量駆動速度で第2ポンプ42を駆動させて、前記した調整流量で流路31から液体を吸引又は送出する。これにより、第2ポンプ42の駆動速度と実際に流量計60を流れる流量の関係を得ることができ、この関係から正確な調整流量を得て、正しく第1ポンプ供給流量を算出することができる。なお、本実施態様では第2ポンプ42が流路31に送出する流量の調節は、第2ポンプ42の駆動速度を調節することで行う例を用いて説明している。しかし、第2ポンプ42が流路31に送出する流量の調節は駆動速度で行うことに限定されず、適切な方法で調節できる。
なお、この流量計60で測定した第2ポンプ送出流量の測定結果に基づき、第2ポンプ42の駆動速度を調節する工程を設けることとしてもよい。これにより、第2ポンプ42によって、供給先20にとって望ましい流量で、供給先20に液体を供給できる。
上記した供給流量の測定方法は、流量計60の測定可能範囲が、第1ポンプ供給流量を含まない場合に特に適している。たとえば、第1ポンプ供給流量が、流量計60の最適な測定範囲を超えていたり、あるいは、流量計60の最適な測定範囲に満たないような場合がこれに該当する。
以下、本開示における実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の送液装置10を模式的に示している。本実施形態では、液体としてのシース液の供給先20としてのフローセル20に流入する流路31としての第1流路31、及び、フローセル20に検体(たとえば、尿)を流入させる第3流路33が接続されている。また、フローセル20から流出する流路として、廃液路36も接続されている。
[送液装置10の構成]
フローセル20は、透光性のある材質で形成されている。フローセル20には、シース液開口21Aで外部と連通するシース液流路21と、検体開口22Aで外部と連通する検体流路22と、廃液開口23Aで外部と連通する合流路23とが内部に設けられている。シース液開口21Aには、第1流路31が接続される。検体開口22Aには、第3流路33が接続される。廃液開口23Aには、廃液路36が接続される。
換言すると、第1流路31はシース液開口21Aを介して、フローセル20内の2つのシース液流路21に分岐する。一方、第3流路33は検体開口22Aを介して、フローセル内の検体流路22に至る。そして、2つのシース液流路21及び検体流路22が合流して、合流路23となり、廃液開口23Aを介して、廃液路36へ至る。
第3流路33の最上流端には、図示しない検体収容部から検体を吸引するノズル12が先端に装着されている。
流路31としての第1流路31の最上流には、液体の貯留部13として、この第1流路31に液体として供給されるシース液を貯留するタンクである、シース液貯留部13が設けられている。シース液貯留部13とフローセル20との間には、チューブポンプにより構成されている第1ポンプ41が設けられている。また、第1ポンプ41とフローセル20との間には、シリンジポンプにより構成されている第2ポンプ42が設けられている。さらに、第2ポンプ42とフローセル20との間には、非接触型液体流量センサにより構成されている流量計60が設けられている。
なお、第1流路31において、第1ポンプ41の下流側、つまり、第1ポンプ41と第2ポンプ42の間には、一方向に開閉可能なバルブである第1シース液バルブ54が設けられている。そして、この第1シース液バルブ54の上流側では、第1流路31から第2流路32が分岐している。
この第2流路32は、前記した第3流路33の途中に設けられた、三方バルブで構成される第1バルブ51を介して、第3流路33に合流している。この第2流路32の途中に、もう一つのシリンジポンプである第3ポンプ43が設けられている。さらに、第2流路32において、第3ポンプ43の上流側には、一方向に開閉可能なバルブである第2シース液バルブ55が設けられている。
なお、第3流路33において、第1バルブ51とフローセル20との間には別の三方バルブで構成される第2バルブ52が設けられている。また、第1流路31において、第2ポンプ42とフローセル20との間には、さらに別の三方バルブで構成される第3バルブ53が設けられている。これらの第2バルブ52と第3バルブ53とは、第4流路34で連絡されている。
第1流路31、第2流路32、第3流路33、第4流路34及び廃液路36はいずれも、可撓性及び柔軟性を備えた材質の管(たとえば、テフロン(登録商標)チューブ)によって構成されている。
送液装置10の機能ブロック図を図2に示す。制御部100は、この送液装置10の各部を制御するものである。制御部100は、後述するハードウェア構成によって、第1ポンプ41の駆動を制御する第1ポンプ制御手段141、及び、第2ポンプ42の駆動を制御する第2ポンプ制御手段142として機能する。また、流量計60が測定した流量値から第2ポンプ送出流量を測定する第2ポンプ送出流量測定手段152、及び、この第2ポンプ送出流量から前記した調整流量駆動速度を算出する調整流量駆動速度算出手段153としても機能する。さらに、第1ポンプ供給流量の算出の際、第1ポンプ41の流量を第2ポンプ42の前記した調整流量で調整する流量調整手段160、この調整後の流量を合成流量として流量計60で測定する合成流量測定手段161、及び、合成流量を調整流量に基づく干渉値で補正して第1ポンプ供給流量を算出する第1ポンプ供給流量算出手段171としても機能する。
制御部100は、図3のハードウェア構成に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103及びストレージ104を有する。各構成は、バス109を介して相互に通信可能に接続されている。
CPU101は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU101は、ROM102又はストレージ104からプログラムを読み出し、RAM103を作業領域としてプログラムを実行する。CPU101は、ROM102又はストレージ104に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
ROM102は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM103は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ104は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリにより構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本態様では、ROM102又はストレージ104には、測定や判定に関するプログラムや各種データが格納されている。また、ストレージ104には、測定データを保存しておくこともできる。
制御部100は、上記ハードウェア構成のうちCPU101が、前記したプログラムを実行することによって、送液装置10において図2に示すような、第1ポンプ制御手段141、第2ポンプ制御手段142、第2ポンプ送出流量測定手段152、調整流量駆動速度算出手段153、流量調整手段160、合成流量測定手段161及び第1ポンプ供給流量算出手段171として機能する。これらの機能の詳細については後述する。なお、制御部100は、他にも送液装置10の各種機能を制御する制御手段も有するが、本開示と直接関連しない部分については図示及び説明を割愛する。
[検体の分析]
図1の送液装置10における検体の分析の概要は、以下のとおりである。
まず、前記した第1シース液バルブ54及び第2シース液バルブ55並びに第1バルブ51、第2バルブ52及び第3バルブ53の流路を適宜切り替えつつ、第1ポンプ41、第2ポンプ42及び第3ポンプ43の駆動によって、シース液貯留部13から供給されたシース液で、第1流路31、第2流路32、第3流路33、第4流路34、フローセル20内の各流路及び廃液路36の全てが満たされる。
この状態で、一旦第1ポンプ41、第2ポンプ42及び第3ポンプ43の駆動が停止される。そして、第1バルブ51、第2バルブ52及び第3バルブ53の流路を切り替えて、ノズル12から第1バルブ51を経て第2バルブ52までの第3流路33と、第2バルブ52から第3バルブ53までの第4流路34と、第3バルブ53から第2ポンプ42までの第1流路31とを導通させる。この状態で、第2ポンプ42を吸引方向へ駆動させることにより、ノズル12からまず空気を吸引し、そのすぐ後に検体を吸引する。
吸引した空気の全量が第4流路34に収容した時点で、第2ポンプ42による吸引を停止させる。引き続き、第1バルブ51、第2バルブ52及び第3バルブ53の流路を切り替えて、第2ポンプ42から第3バルブ53を経てフローセル20までの第1流路31を導通させるとともに、第3ポンプ43から第1バルブ51までの第2流路32と、第1バルブ51から第2バルブ52を経てフローセル20までの第3流路33とを導通させる。これにより、第4流路34に滞留している空気が第1流路31及び第3流路33から遮断される。
この状態で、第3ポンプ43を送出方向へ駆動させて、第2流路32へシース液を送出し、これによって第3流路33に吸引されていた検体が検体開口22Aからフローセル20の検体流路22に流入する。併せて、第2ポンプ42を送出方向へ駆動させて、第1流路31へシース液を送出し、このシース液がシース液開口21Aからフローセル20のシース液流路21に流入する。
フローセル20内で、検体流路22に流入した検体と、シース液流路21に流入したシース液とは、合流路23で合流する。そして、この合流路23の近傍に設置されている図示しない測定手段としてのカメラによって、合流路23をシース液とともに流れる検体が撮影される。
合流路23で検体と混合したシース液は廃液として廃液路36から図示しない外部へ排出される。
なお、この後、第1ポンプ制御手段141は第1ポンプ41を駆動させて、第1流路31、第2流路32、第3流路33、第4流路34、フローセル20内の各流路及び廃液路36の全てをシース液80で洗浄し、次の検体の分析に備える。
[第2ポンプ送出流量の測定]
以下、図1の送液装置10の模式図、図3のブロック図、図4の流量測定状態の模式図及び図5Aのフローチャートを適宜参照しつつ、本実施形態の送液装置10において、第2ポンプ送出流量の測定について説明する。
まず、制御部100が第3バルブ53を、第2ポンプ42と第4流路34が導通するように流路を切り替え、さらに第2バルブ52を、第1バルブとフローセル20が導通するように流路を切り替える。これにより、流量計60の下流側の流路は閉状態となる。さらに、第1シース液バルブ54を開状態に、第2シース液バルブ55を閉状態にする。
この状態で、第2ポンプ42であるシリンジポンプのピストンを引き上げる。それにより、シース液貯留部13から第1流路31を介して第2ポンプ42であるシリンジポンプのシリンジ内にシース液が吸引される。
その後、制御部100が第3バルブを、第2ポンプであるシリンジポンプとシース液開口21Aが導通するように流路を切り替える。これにより、第2ポンプ42であるシリンジポンプは流量計60を介して、外部に繋がる廃液路26と導通し、第2ポンプ42の下流側の流路は開状態となる。また、第1シース液バルブ54を閉状態にする。これにより、第2ポンプ42の上流側は閉状態となる。
そして、制御部100は、第2ポンプ制御手段142(図2参照)によって、第2ポンプ駆動工程S100(図5A参照)において、第2ポンプ42であるシリンジポンプのピストンを一定の駆動速度で押し下げるように制御し、シリンジ内に吸引していたシース液を排出するそしてシリンジから排出されたシース液は、第2ポンプ送出流量で流量計60に送出される。
なお、流量計60は、検体を測定する際にフローセル20にシース液を流入させる流量を測定するために適した測定可能範囲を有するものである。
制御部100は、第2ポンプ送出流量測定手段152(図2参照)によって、第2ポンプ送出流量測定工程S110(図5A参照)において、流量計60で、上述の一定の駆動速度におけるシース液の流量を測定する。そして、その流量の測定値が、前記した検体の分析に適した流量(以下、「至適流量」と称する。)の範囲内にあるか判断する。この至適流量の範囲内になければ、制御部100はその一定の駆動速度と流量の測定値とから、至適流量を送出するために必要な駆動速度(以下、「至適流量駆動速度」と称する。)を算出する。そして、検体の分析の際には、第2ポンプ制御手段142は、その至適流量駆動速度で第2ポンプ42を駆動させて、至適流量で供給先20であるフローセル20にシース液を送出する。
なお、第2ポンプ42が送出する流量は、ピストンの駆動速度の増加に従って増加し、反対にピストンの駆動速度の減少に従って減少する。そのため、ピストンの駆動速度と流量の測定値の関係から、至適流量を得るための至適流量駆動速度を算出できる。たとえば、駆動速度と流量が比例すると想定して、至適流量を得るためのピストンの至適流量駆動速度を算出してもよい。なお、吸引又は送出する流量がポンプの駆動量と関連しているのであれば、第2ポンプ42としてはピストンを有するシリンジポンプに限らず、チューブポンプなどその他の種類のポンプを適宜選択できる。また、本実施例では、第2ポンプ42であるシリンジポンプの至適流量を得るために、シリンジポンプの駆動速度を調節している。しかし、シリンジポンプが供給先20へ送出する流量を調節する方法は、シリンジポンプの駆動速度を調節することに限定されない。適宜、シリンジポンプが供給先20へ送出する流量を調節する手段を選択できる。
同時に、制御部100は、第2ポンプ42であるシリンジポンプのピストンの駆動速度と、流量計60を用いて測定した流量の測定値を記憶する。そして、調整流量駆動速度算出手段153(図2参照)によって、調整流量駆動速度算出工程S120(図5A参照)において、上述のピストンの駆動速度と流量の測定値の関係から、後述する干渉量(FI)となる調整流量を得るためのピストンの駆動速度である調整流量駆動速度を算出する。たとえば、駆動速度と流量とが比例すると想定して、その調整流量を得るためのピストンの駆動速度を算出してもよい。これにより、より正確に調整流量駆動速度を求めることができ、後述する第1ポンプ供給流量をより正確に算出できるからである。
[第1ポンプ供給流量測定]
次に、第1ポンプ42を用いてフローセル内にシース液を送出する際の、第1ポンプ供給流量の算出について説明する。
まず、制御部100が、第1シース液バルブ54が開放するように制御し、かつ、第3バルブ53を第2ポンプ42からフローセル20までの第1流路31が導通する状態に流路を切り替えるよう制御する(図1参照)。
この状態で、流量調整工程S200(図5B参照)において、流量調整手段160(図2参照)が第1ポンプ制御手段141を制御して、その制御によって第1ポンプ41を駆動させて、図4に示すようにシース液貯留部13からシース液を下流方向へ送出させる。このときの第1ポンプ41の駆動速度は、たとえば前記したように、第1流路31、第2流路32、第3流路33、第4流路34、フローセル20内の各流路及び廃液路36を洗浄する際に必要と想定される駆動速度(以下、「必要流量駆動速度」と称する。)である。
次いで、同じく流量調整工程S200において、流量調整手段160(図2参照)が第2ポンプ制御手段142(図3参照)を制御して、その制御によって図4に示すようにあらかじめシリンジポンプのピストンを押し切っておいた第2ポンプ42を前記した調整流量駆動速度算出工程S120(図5A参照)で算出された調整流量駆動速度で作動させて、第1流路31からシース液を前記した調整流量としての所定の吸引流量(FIN)をもって第2ポンプ42内に吸引させる。つまり、流量調整工程S200において第1ポンプ41と第2ポンプ42とを併せて駆動させることで、第1ポンプ41が送出する流量と、第2ポンプが吸引する調整流量との合成流量を生成し、その合成流量が流量計60に流れる。このときの合成流量は、流量計60で測定可能な範囲内の流量である。上述のように、このときの合成流量が流量計60で測定可能な範囲の上限値を超えていた場合は、この調整流量よりも流量が大きい新たな調整流量を設定する。そしてその新たな調整流量としての吸引流量(FIN)をもって第2ポンプ42内に吸引させる。これにより、合成流量が流量計60で測定可能な範囲内に収まるようにする。合成流量が流量計60で測定可能な範囲を下回っていた場合も、適宜、調整流量を設定する。
次いで、合成流量測定工程S210(図5B参照)において、合成流量測定手段161(図2参照)が、流量計60を用いて上記した合成流量(F0)を測定する。
そして、第1ポンプ供給流量算出工程S220(図5B参照)において、第1ポンプ供給流量算出手段171(図2参照)は、前記した調整流量としての吸引流量(FIN)を干渉値(FI)として、下記式1によって第1ポンプ供給流量(F)を算出する。
F=F0+FI・・・(式1)
なお、第1ポンプ供給流量算出工程S220で算出された第1ポンプ供給流量(F)が、前記した調整流量としての吸引流量(FIN)を下回っている場合には、流量計60の位置において第1流路31内のシース液が下流側から上流側へ逆流する。この場合、流量計60が測定する第1流路31の流量値(F0)は負の数として表される。
以上により、第1ポンプ41が送出する流量が流量計60の測定可能範囲の上限値を超えている場合に、第2ポンプ42による調整流量で減殺された流量が第1流路31の合成流量として流量計60により測定される。この測定された合成流量(F0)に、調整流量である干渉値(FI=FIN)を加算することで流量値の補正が行われ、第1ポンプ41が真に送出している流量である第1ポンプ供給流量(F)が求められる。
なお、第1ポンプ供給流量(F)が、流量計60の測定可能範囲の下限値を下回る場合の算出手順について、図1の送液装置10の模式図、図3のブロック図、図6の流量測定状態の模式図及び図5のフローチャートを適宜参照しつつ説明する。
まず、制御部100が、第1シース液バルブ54が開放するように制御し、かつ、第3バルブ53を第2ポンプ42からフローセル20までの第1流路31が導通する状態に流路を切り替えるよう制御する(図1参照)。
この状態で、図5BのS200に示す段階において、第1ポンプ制御手段141(図3参照)は第1ポンプ41を駆動させて、図4に示すようにシース液貯留部13からシース液を下流方向へ送出する。
次いで、同じく図5BのS200に示す段階において、第2ポンプ制御手段142(図3参照)は、図6に示すように、あらかじめシリンジポンプのピストンを引き切っておいてシース液を吸引しておいた第2ポンプ42を送出方向に作動させて、第1流路31からシース液を前記した調整流量である送出流量(FOUT)をもって第1流路31へ送出させる。
次いで、図5BのS210に示す段階において、流量計60によって第1流路31の合成流量(F0)が測定される。
そして、図5BのS220に示す段階において、第1ポンプ供給流量算出手段171(図2参照)は、前記した調整流量としての送出流量(FOUT)に負号を付した値(−FOUT)を干渉値(FI)として、前記式1によって第1ポンプ供給流量(F)を算出する。
以上により、第1ポンプ41が送出する流量が流量計60の測定可能範囲の下限値を下回っている場合に、第2ポンプ42による調整流量で補填された流量が第1流路31の合成流量として流量計60により測定される。この測定された合成流量(F0)に、調整流量である干渉値(FI=−FOUT)を加算することで流量値の補正が行われ、第1ポンプ41が真に送出している流量である第1ポンプ供給流量(F)が求められる。
第1ポンプ供給流量については、上述のように流量計60で測定した流量値と、第2ポンプ42の駆動量に基づく干渉値との和として求められる。なお、このようにして求められた第1ポンプ41供給流量が、例えば、第1流路31、第2流路32、第3流路33、第4流路34、フローセル20内の各流路及び廃液路36をシース液で満たしたり、洗浄したりする際に適切な流量と異なっている場合、制御部100の第1ポンプ制御手段141によって第1ポンプ41の駆動量を随時変更する構成としてもよい。これにより、第1ポンプを用いて適切な流量でシース液を、第1流路31、第2流路32、第3流路33、第4流路34、フローセル20内の各流路及び廃液路36に送出することができ、適切にこれらの流路をシース液で満たすことや、洗浄することができる。
[その他]
第1ポンプ41については、上記実施形態ではチューブポンプを用いているが、実際には、連続的に液体を送出することが可能なポンプであればどのようなポンプでもよい。たとえば、シリンジポンプを用いてもよい。
第2ポンプ42については、上記実施形態ではシリンジポンプを用いているが、液体の送出及び吸引の両方が可能で、かつ、正確性及び再現性が高いポンプであればどのようなポンプを用いてもよい。
第2ポンプ42の駆動量については、あらかじめ、想定される流量がわかっているのであれば、流量計60に流れる液量が、流量計60の測定可能範囲内になるような駆動量に設定すればよい。なお、流量計60の測定結果を踏まえて、制御部100の第2ポンプ制御手段142によって第2ポンプ42の駆動量を随時変更可能な構成としてもよい。
なお、流量の単位は、上述のような単位時間あたりに流れる液体の体積ではなくとも、単位時間あたりに液体が流れる距離としてもよい。
実施例として、図4に図示したような流量測定状態によって、実際に第1ポンプ供給流量を算出した。
なお、第1ポンプ41としてチューブポンプを用い、第2ポンプ42としてシリンジポンプを用いた。また、流量計60として、流量計内を流れる液体の向きに関わらず測定可能であって、測定範囲が0〜5.5ml/minである熱式質量流量計を用いた。
そして、第2ポンプ42を一定速度で駆動し、流量を測定した。そして、その駆動量と流量の関係から、第2ポンプ42が40ml/minで第1流路31からシース液を吸引するために必要な調整流量駆動速度を、制御部100に算出させた。すなわち、第2ポンプ42の調整流量としての吸引流量(FIN)、すなわち干渉値(FI=FIN)は40ml/minとした。
そして、第1ポンプ41を駆動させて流量計60にシース液を送出するのに併せて第2ポンプ42を上記の調整流量駆動速度で駆動させたところ、流量計60により測定された合成流量(F0)は−1.073ml/min、すなわち下流側から上流側へ1.073ml/minの流量で逆流していた。この流量は熱式質量流量計の測定範囲である0〜5.5ml/minの範囲内であり、第1ポンプ41と第2ポンプ42の合成流量を測定できた。なお、この合成流量が流量計60の測定範囲を超えている場合は、上述のように、調整流量を適宜調整できる。
以上により、第1ポンプ供給流量(F)は、
F=F0+FI=−1.073+40=38.927(ml/min)
と算出された。
なお、本実施例では流量計60として、熱式質量流量計を用いているが、容積流量計やコリオリ流量計、あるいは、赤外線や超音波を流体に照射して流量を測定する非接触型の液体流量センサなど、どのような種類の流量計であってもよい。