JP2020172997A - 摺動部材 - Google Patents

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周平 砂田
Shuhei Sunada
周平 砂田
壁谷 泰典
Taisuke Kabetani
泰典 壁谷
周 神谷
Shu Kamiya
周 神谷
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Abstract

【課題】固体潤滑剤の脱落を抑制できる可能性を高める技術を提供する。【解決手段】基層と、前記基層上に形成された樹脂被覆層とを備える摺動部材であって、前記樹脂被覆層は、バインダーとしての、引張強度が147MPa以上のポリアミドイミド樹脂と、固体潤滑剤と、添加剤および不可避不純物の少なくとも一方と、からなる摺動部材が構成される。【選択図】図5

Description

本発明は、樹脂被覆層を有する摺動部材に関する。
従来、裏金層と摺動層とを備える摺動部材において、合成樹脂と、合成樹脂中に分散された黒鉛とからなる摺動層を形成することが知られている。例えば、特許文献1には、黒鉛粒子の体積の合計が摺動層の5〜50体積%を占める摺動層を有する摺動部材が開示されている。また、特許文献2には、ガラス転移温度が200℃〜230℃の樹脂を含むコーティング層を有するすべり軸受が開示されている。
特開2017−88741号公報 特許第4485131号公報
特許文献1,2等に開示された従来の摺動部材においては、固体潤滑剤の樹脂被覆層からの脱落を抑制したいという要望があった。すなわち、従来の摺動部材においては、摺動部材を軸受等に利用した場合に、摺動部材と相手材との接触等によって樹脂被覆層に傷が生じ、当該傷から固体潤滑剤が脱落することがあった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、固体潤滑剤の脱落を抑制できる可能性を高める技術を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明の摺動部材は、基層と、基層上に形成された樹脂被覆層とを備える摺動部材であって、樹脂被覆層は、バインダーとしての、引張強度が147MPa以上のポリアミドイミド樹脂と、固体潤滑剤と、添加剤と不可避不純物との少なくとも一方、からなるように構成される。
引張強度が大きいポリアミドイミド樹脂をバインダーとして樹脂被覆層を構成した場合、引張強度が小さいポリアミドイミド樹脂と比較して、樹脂被覆層の表面が面荒れに強くなる。すなわち、樹脂被覆層の深さ方向に傷が生じにくくなる。樹脂被覆層の深さ方向に傷が生じると、当該傷を通じて樹脂被覆層から固体潤滑剤が脱落しやすくなる。
また、引張強度が大きいポリアミドイミド樹脂をバインダーとして樹脂被覆層を構成した場合、引張強度が小さいポリアミドイミド樹脂と比較して、固体潤滑剤を強く樹脂被覆層にバインドすることが可能になる。従って、樹脂被覆層に含まれる固体潤滑剤が樹脂被覆層から脱落しにくくなる。
引張強度が147MPa以上のポリアミドイミド樹脂をバインダーとして樹脂被覆層を構成した場合、従来の樹脂被覆層(例えば、特許文献2の0005段落に開示された引張強度70〜110MPaの樹脂)と比較して、樹脂被覆層の表面が面荒れに強く、固体潤滑剤を強く樹脂被覆層にバインドすることが可能になる。この結果、従来の樹脂被覆層と比較して、固体潤滑剤の脱落を抑制できる可能性を高めることが可能である。
本発明の実施形態にかかる摺動部材の斜視図である。 図2A,図2Bはオーバーレイの断面模式図である。 摺動試験機の模式図である。 試験前後の表面粗さを示す図である。 試験前後の表面の元素濃度を示す図である。 ストライベック線図である。
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)摺動部材の構成
(2)摺動部材の製造方法:
(3)試験結果:
(4)他の実施形態:
(1)摺動部材の構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる摺動部材1の斜視図である。摺動部材1は、裏金10とライニング11とオーバーレイ12とを含む。摺動部材1は、中空状の円筒を直径方向に2等分した半割形状の金属部材であり、断面が半円弧状となっている。2個の摺動部材1を円筒状になるように組み合わせることにより、すべり軸受Aが形成される。すべり軸受Aは内部に形成される中空部分にて円柱状の相手材2(エンジンのクランクシャフト)を軸受けする。相手材2の外径はすべり軸受Aの内径よりもわずかに小さく形成されている。相手材2の外周面と、すべり軸受Aの内周面との間に形成される隙間に液体潤滑剤である潤滑油(エンジンオイル)が供給される。その際に、すべり軸受Aの内周面上を相手材2の外周面が摺動する。
摺動部材1は、曲率中心から遠い順に、裏金10とライニング11とオーバーレイ12とが順に積層された構造を有する。従って、裏金10が摺動部材1の最外層を構成し、オーバーレイ12が摺動部材1の最内層を構成する。裏金10とライニング11とオーバーレイ12とは、それぞれ円周方向において厚みが変化せず、直径方向の厚みが一定である。例えば、裏金10の厚みは1.0mm〜2.0mmとされ、ライニング11の厚みは0.2mm〜0.4mmとされる。裏金10は、例えば鋼によって形成される。
ライニング11は、裏金10の内側に積層された層であり、基層を構成する。ライニング11は、例えばAl合金やCu合金によって形成される。オーバーレイ12の厚みは、6μmとなっている。なお、オーバーレイ12の厚みは、2〜15μmであってもよく、3〜9μmが望ましい。以下、内側とは摺動部材1の曲率中心側を意味し、外側とは摺動部材1の曲率中心と反対側を意味することとする。オーバーレイ12の内側の表面は、相手材2との摺動面を構成する。
図2Aは、オーバーレイ12の断面模式図である。オーバーレイ12は、ライニング11の内側の表面上に積層された層であり、本発明の樹脂被覆層を構成する。オーバーレイ12は、バインダーとしてのポリアミドイミド樹脂12a(グレー)と、固体潤滑剤としての二硫化モリブデン粒子12b(黒丸)と不可避不純物とからなる。
本実施形態において、オーバーレイ12における二硫化モリブデン粒子12bの総体積の体積分率は10体積%〜70体積%であり、好ましくは30体積%〜60体積%である。ポリアミドイミド樹脂12aと二硫化モリブデン粒子12bの体積比は、両者を混合する前に計測したポリアミドイミド樹脂12aと二硫化モリブデン粒子12bとの質量と、これらの比重とに基づいて算出したものである。また、二硫化モリブデン粒子12bの平均結晶粒径は0.1〜5.0μmである。なお、ここで、結晶粒径は、断面において観察される結晶粒の面積と等しい円の半径であり、平均結晶粒径は当該円の半径の平均である。平均粒径は、例えば、マイクロトラック・ベル社のMT3300IIによって測定可能である(以下同様)。
なお、他の実施形態として、添加剤が含まれている樹脂被覆層が構成されても良い。図2Bは、オーバーレイ12が、バインダーとしてのポリアミドイミド樹脂12a(グレー)と、固体潤滑剤としての二硫化モリブデン粒子12b(黒丸)と、添加剤としての硫酸バリウム粒子12c(白丸)と不可避不純物とからなる摺動部材1の模式図である。この実施形態において、硫酸バリウム粒子12cの総体積は、例えば、二硫化モリブデン粒子12bの総体積の0.35倍以上かつ0.8倍以下の総体積とすることができる。この場合、例えば、硫酸バリウム粒子12cの総体積の体積分率と、二硫化モリブデン粒子12bの総体積の体積分率との和が、オーバーレイ12の10体積%〜70体積%になる構成等を採用可能である。ここでも、総体積は、混合する前に計測した材料の質量と、各材料の比重とに基づいて算出したものである。
いずれの実施形態においても、ポリアミドイミド樹脂12aの引張強度は147MPa以上である。引張強度が147MPa以上であるポリアミドイミド樹脂12aは、従来の摺動部材に使用されていたポリアミドイミド樹脂12aの引張強度(例えば、100MPa)よりも大きい。
従って、本実施形態にかかるオーバーレイ12は、引張強度が小さいポリアミドイミド樹脂が利用された従来のオーバーレイと比較して、表面が面荒れに強くなる。この結果、すべり軸受Aが使用されることでオーバーレイ12と相手材2とが相対的に回転したとしても従来のオーバーレイと比較して、オーバーレイ12の深さ方向に傷が生じにくい。オーバーレイ12の深さ方向に傷が生じると、当該傷を通じてオーバーレイ12から固体潤滑剤である二硫化モリブデン粒子12bが脱落しやすくなるが、本実施形態にかかるオーバーレイ12であれば深さ方向の傷が生じにくいため、二硫化モリブデン粒子12bがオーバーレイ12から脱落しにくい。
また、本実施形態にかかるオーバーレイ12は、引張強度が小さいポリアミドイミド樹脂が利用された従来のオーバーレイと比較して、固体潤滑剤である二硫化モリブデン粒子12bを強くオーバーレイ12にバインドすることが可能になる。従って、オーバーレイ12に含まれる二硫化モリブデン粒子12bがオーバーレイ12から脱落しにくくなる。以上の結果、本実施形態にかかるオーバーレイ12は、従来のオーバーレイ12と比較して二硫化モリブデン粒子12bの脱落を抑制できる可能性を高めることが可能である。
なお、ポリアミドイミド樹脂12aのガラス転移温度は、288℃以上であることが好ましい。すなわち、従来の摺動部材のポリアミドイミド樹脂12aのガラス転移温度は例えば223℃であり、従来よりもガラス転移温度が高く288℃以上であれば、ポリアミドイミド樹脂12aの分子が移動しにくい状態が高温まで維持される。従って、オーバーレイ12が使用された場合における温度耐性が高くなり、二硫化モリブデン粒子12bがオーバーレイ12から脱落しにくくなる。
(2)摺動部材の製造方法:
摺動部材1は、例えば、(a)半割基材形成工程と(b)塗布前処理工程と(c)塗布工程と(d)乾燥工程と(e)焼成工程とを順に行うことによって製造可能である。むろん、摺動部材1の製造方法は前記の工程に限定されるものではない。
(a)半割基材形成工程
半割基材形成工程は、裏金10とライニング11とが接合した基材を半割状に形成する工程である。例えば、裏金10に相当する板材上においてライニング11の材料を焼結することにより、裏金10とライニング11とが接合した基材が形成されてもよい。また、裏金10とライニング11に相当する板材を圧延によって接合することにより、裏金10とライニング11とが接合した基材が形成されてもよい。さらに、プレス加工や切削加工等の機械加工を行うことにより、裏金10とライニング11とが接合した基材を半割状に加工してもよい。
(b)塗布前処理工程
塗布前処理工程は、ライニング11の表面に対するオーバーレイ12(樹脂被覆層)の密着性を向上させるための表面処理である。例えば、塗布前処理工程として、サンドブラスト等の粗面化処理を行ってもよいし、エッチングや化成処理などの化学処理を行ってもよい。なお、塗布前処理工程は、半割基材の油分を洗浄剤で脱脂した後に行うことが好ましい。
(c)塗布工程
塗布工程は、ライニング11にオーバーレイ12を塗布する工程である。塗布工程を行うにあたり、ポリアミドイミド樹脂12aに二硫化モリブデン粒子12b(実施形態によっては添加剤も)を混合した塗布液を調製する。また、二硫化モリブデン粒子12bや添加剤の分散性を高めたり、塗布液の粘度を調整したりするために、必要に応じてN−メチル−2−ピロリドンやキシレン等の溶剤を用いてもよい。
オーバーレイ12における二硫化モリブデン粒子12bの総体積の体積比が10体積%〜70体積%となるように(添加剤が含まれる場合は添加剤も含めて予定された体積分率となるように)、混合が行われる。
塗布工程は、特に限定されず、エアースプレーやエアレススプレーおよびパッド、スクリーン印刷等を利用可能である。また、圧力を加え、布や板等でライニング11の内表面に擦りつけてもよい。さらに、塗布ロールによって塗布工程が行われてもよい。例えば、ライニング11の内径よりも小径の円柱状の塗布ロールに塗布液を付着させ、ライニング11の内側表面上において塗布ロールを回転させることにより塗布工程を行うことが可能である。塗布ロールとライニング11の内側表面との間のロールギャップや塗布液の粘度を調整することにより、後述する(e)焼成工程後の膜厚が6μmとなる厚みだけ塗布液をライニング11の内側表面上に塗布してもよい。なお、塗布工程は複数回行われ、その結果、膜厚が6μmとなってもよい。
(d)乾燥工程
乾燥工程は、ポリアミドイミド樹脂12aを乾燥させる工程である。例えば、40〜120℃で5〜60分にわたって乾燥させる構成を採用可能である。
(e)焼成工程
さらに例えば150〜300℃で30〜60分にわたってポリアミドイミド樹脂12aを焼成(硬化)させたることにより、摺動部材1を製造することができる。
(3)試験結果:
以上のようにして製造した本実施形態にかかる摺動部材1を実施例とし、引張強度が相対的に小さい従来の摺動部材を比較例として摺動部材の使用を想定した試験を行った。比較例および実施例におけるポリアミドイミド樹脂の引張強度およびガラス転移温度は表1の通りである。
なお、引張強度は、種々の手法で特定されてよいが、ここでは島津製作所製のAGS−5kNG オートグラフ(JIS K7128−1 トラウザー引裂法準拠)で比較例および実施例の引張強度が測定された。すなわち、5×80×0.070mmのサンプルを、チャック間距離40mm、200mm/min、室温のパラメータで試験した場合の引張強度である。ガラス転移温度は、種々の手法で特定されてよく、例えば、TMA測定装置を用いたExtension法で比較例および実施例のガラス転移温度が測定可能である。
図3は、摺動試験機の説明図である。具体的には、図3に示すように、試験軸H(ハッチング)が貫通可能な貫通穴が形成されたコンロッドRを用意し、当該貫通穴にて試験軸Hを軸受けさせた。なお、コンロッドRの貫通穴の内周に比較例および実施例1,2のポリアミドイミド樹脂12aが利用された摺動部材Ps(黒色)を装着して試験軸Hを軸受けした。試験軸Hの直径dは45mmであり、試験軸Hの軸方向における摺動部材Psの長さLは2mmである。
また、試験軸Hの軸方向におけるコンロッドRの両外側において試験軸Hを軸受けし、試験軸Hを回転させた。さらに、図3に示すように、コンロッドRの長さ方向に荷重を作用させた。さらに、コンロッドRに装着された摺動部材Psと試験軸Hとの間には、約80℃のエンジンオイル(0W−8)を給油した。
以上のように給油が行われた状態で、比較例および実施例1,2のそれぞれについて、表2に示す回転数および荷重の組み合わせで試験を行った。
図4は、以上のような試験の試験前後における摺動部材Psの表面粗さを示す図である。これらの図において、グラフの横軸はある方向に沿った摺動部材Psの位置を示し、縦軸は深さ方向における表面の位置を示している。なお、本実施例においては、小坂研究所製のSE−3400を表面粗さの測定に使用し、測定倍率を縦5000倍、横50倍、測定長0.8mm、測定速さ0.1mmとした。グラフの一つには縦方向の深さの目安2μm、横方向の長さの目安200μmが示されているが、各グラフのスケールは同一である。
比較例および実施例1,2の全てにおいて、試験後には表面粗さが低減されているが、比較例においては、所々で表面が深くなっている部位(符号Pk)が観察され、表面に傷が生じていると考えられる。一方、実施例1および実施例2においては、比較例ほど急激な表面の位置の深さ方向への変化は観測されず、傷は生じていないと考えられる。
図5は、以上の試験の試験前後における摺動部材Psの表面をEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)で測定した場合の結果を示している。図5においては、4個のブロックで比較例と実施例1の試験前後の像を示している。すなわち、上段の2個のブロックには試験前の像が示されており、下段の2個のブロックには試験後の像が示されている。また、試験前、試験後のそれぞれにおいて、左側は比較例、右側は実施例1の像である。
これらの図において各像の下部に示すC,S,Moはそれぞれの元素の面分析結果であることを示している。なお、これらの像は、JEOL製のJXA−8100において、加速電圧を10kV、倍率を1000倍、WDを11mmとすることで撮影された。これらの面分析においては、明るいほど各元素の濃度が高いことを示している。なお、Cの像は、ポリアミドイミド樹脂12aに含有されたC成分を反映していると考えられる。
試験前の表面においては、図5の試験前における面分析で示された通り、C,S,Moのいずれもが高い濃度であり、濃度が顕著に低下している部分は観測されない。従って、試験前においては、オーバーレイ12を構成するポリアミドイミド樹脂12aの全体にわたって二硫化モリブデン粒子12bが分散した状態で存在すると考えられる。
一方、試験後の比較例の面分析においては、Cの濃度が部分的に顕著に低下している部分が観測される。そして、Cの濃度が部分的に顕著に低下している部分とその周囲においては、SおよびMoの濃度も顕著に低下している。従って、比較例においては、試験によってポリアミドイミド樹脂12aが脱落し、当該ポリアミドイミド樹脂12aが脱落した部分から固体潤滑剤である二硫化モリブデン粒子12bも脱落したと考えられる。
これに対して、試験後の実施例1の面分析においては、Cの濃度が部分的に顕著に低下している部分は観測されない。すなわち、Cの濃度が試験前後で僅かに低下している部分は散見されるものの、比較例のようにCの濃度が顕著に落ち込む部分は観測されない。従って、実施例1の表面からポリアミドイミド樹脂12aは脱落していない(または脱落していても極めて少ない)と考えられる。
SおよびMoにおいては、濃度の変化が観測されない。従って、実施例1においては、固体潤滑剤である二硫化モリブデン粒子12bがオーバーレイ12から脱落せず、維持されていると考えられる。この傾向は、比較例と実施例2とで比較しても同様である。
以上の試験結果は、引張強度が75MPa、ガラス転移温度が223℃のポリアミドイミド樹脂12aでオーバーレイ12が構成された比較例ではオーバーレイ12の強度が弱く、摺動部材Psの使用過程で固体潤滑剤が脱落することを示している。一方、引張強度が147MPa以上、ガラス転移温度が288℃以上のポリアミドイミド樹脂12aでオーバーレイ12が構成された実施例1,2ではオーバーレイ12の強度が強く、摺動部材Psの使用過程で固体潤滑剤が脱落しないことを示している。
試験においては、この結果を確認するために摩擦係数が測定された。すなわち、摺動試験機には、試験軸Hに作用するトルクを計測する図示しないトルクセンサが取り付けられており、摺動試験中に試験軸Hに作用するトルクに基づいて、摺動部材Psと試験軸Hとの間の摩擦係数が測定された。
図6は、軸受特性数と摩擦係数との関係を示すストライベック線図であり、一点鎖線によって比較例、実線によって実施例1、破線によって実施例2を示している。なお、軸受特性数はη・V/(L・P)である。なお、ここでηはエンジンオイルの粘度(Pa・S)、Vは試験軸Hの周速(m/s)(=N・π・d/60:Nは1分あたりの回転数、dは試験軸Hの直径(m))、Lは摺動部材Psの長さ(m)、Pは面圧(N/m2)(=荷重/(d・L))である。
図6に示すようなストライベック線図においては、軸受特性数の上昇とともに潤滑状態が境界潤滑から混合潤滑、混合潤滑から流体潤滑に変化していく状況を観察することができる。図6においては、境界潤滑と考えられる範囲の例を示している。
この範囲においては、摺動部材Psと試験軸Hとが接触し得るが、両者が接触している場合、固体潤滑剤による効果が顕著に表れる。すなわち、両者が接触しても、両者の間に固体潤滑剤が存在すれば、摩擦係数が低い状態にすることができる。図6においては、実施例1,2の双方ともに境界潤滑領域での摩擦係数が比較例より小さい。従って、実施例1,2においては比較例よりも固体潤滑剤が有効に機能していると言える。このような比較例と実施例1,2との差異は、実施例1,2においてはオーバーレイ12の表面に傷が生じにくく、固体潤滑剤が脱落しにくいからであると考えられる。
さらに、軸受特性数が大きい状態(例えば、2.0×10-7程度)から軸受特性数を徐々に低下させていく過程での摩擦係数を観察すると、軸受特性数の低下に伴って摩擦係数も低下する。しかし、ある軸受特性数で摩擦係数は最小値となり、その後は軸受特性数の低下に伴って摩擦係数が上昇していく。このように、摩擦係数が低下した後に上昇する理由は、流体潤滑から混合潤滑に移行し、摺動部材Psが試験軸Hに接触し始めたからであると考えられる。
図6に示された比較例と実施例1,2を比較すると、実施例1,2は、比較例よりも流体潤滑から混合潤滑に移行する軸受特性数が小さいことがわかる。従って、実施例1,2においては、比較例よりも潤滑状態が流体潤滑である範囲が広いといえる。このように、実施例1,2の方が比較例よりも流体潤滑である範囲が広い理由の一つとしては、比較例の方が実施例1,2よりも表面が粗いことが挙げられる。
すなわち、図4に示されたように、比較例においては実施例1,2よりも使用後の表面が粗いので、比較例においては実施例1,2よりも摺動部材Psの表面と試験軸Hとが接触しやすいといえる。この結果、図6に示されたように、比較例における流体潤滑の範囲が実施例1,2における流体潤滑の範囲より狭くなっていると考えられる。
(4)他の実施形態:
上述の実施形態においては、エンジンのクランクシャフトを軸受けするすべり軸受Aを構成する摺動部材1を例示したが、本発明の摺動部材1によって他の用途のすべり軸受Aを形成してもよい。例えば、本発明の摺動部材1によってトランスミッション用のギヤブシュやピストンピンブシュ・ボスブシュ等のラジアル軸受を形成してもよい。
基層は、その表面が樹脂被覆層で被覆され、摺動部材の一部を構成する層であれば良い。従って、その組成や形状等は限定されない。例えば、相手材は、上述の実施形態のような円柱軸に限定されず、平面や球面であってもよい。
樹脂被覆層は、基層上に形成されていればよい。すなわち、基層と相手材との接触が生じないように基層が被覆されていればよい。この限りにおいて、基層と相手材との間の面の全てが樹脂被覆層で被覆されていてもよいし、一部が被覆されていない構成であってもよい。
摺動部材は、樹脂被覆層と相手材との間に液体潤滑剤が介在した状態で、摺動部材と相手材との少なくとも一方が回転や往復等の運動をする状態で利用される部材であれば良い。従って、摺動部材は、上述の実施形態のようなラジアル軸受けに限定されず、スラスト軸受であってもよく、各種ワッシャであってもよいし、カーエアコンコンプレッサ用の斜板等であってもよい。
さらに、上述の実施形態において樹脂被覆層の厚さは6μmであるが、厚さは限定されない。すなわち、摺動部材の用途や相手材の材質、摺動部材と相手材との相対速度等に応じて種々の厚さとされてよい。
ポリアミドイミド樹脂は、引張強度が147MPa以上であり、バインダーとして機能すればよい。従って、この特性であればポリアミドイミド樹脂の組成は限定されず、種々の樹脂が利用されて良い。引張強度が147MPa以上のポリアミドイミド樹脂は、種々の樹脂によって実現可能であり、例えば、日立化成製のHPC−9000や、東洋紡製バイロマックス(登録商標)HR−11NN,HR16−NN等を利用可能である。
引張強度は、147MPa以上であれば良い。なお、摺動部材においては、引張強度が強ければ表面が面荒れにつよく、固体潤滑剤をバインドしやすい。このような特性は、引張強度が147MPaであることによって実現されることは確認されているが、むろん、多少の誤差は許容される。すなわち、従来のポリアミドイミド樹脂と比較して、表面が面荒れにつよく、固体潤滑剤をバインドしやすい特性であれば、引張強度は147MPaより小さい値であってもよい。このような値としては、例えば、引張強度は120MPa以上である構成が挙げられる。
引張強度の上限は限定されないが、例えば、180MPa以下のポリアミドイミド樹脂が選択されてもよい。引張強度は、各種の測定装置で測定可能であり、上述のようにJIS K7128−1に準拠した測定法であってもよいし、他の規格、例えば、ASTM D638に準拠した測定法であってもよい。
固体潤滑剤は、摺動部材の使用環境下で固体の状態であり、当該固体潤滑剤が存在することによって存在しない場合と比較して摺動部材と相手材との間の摩擦係数が小さくなる材料であれば良い。従って、上述の二硫化モリブデンに限定されず、各種の固体潤滑剤、例えば、黒鉛、窒化硼素、二硫化タングステン、PTFE(ポリテトラフルオルエチレン)、フッ化黒鉛、MCA(メラミンシアヌレート)等であってもよい。これらの固体潤滑剤は、1種類が利用されても良いし、2種類以上が利用されても良い。
添加剤は、樹脂被覆層に含まれていてもよいし含まれていなくてもよい。添加剤は、各種の用途であってよく、例えば、硫酸バリウムが添加剤として利用されると、添加剤が相手材に移着することによって相手材がコーティングされ、焼付きの発生を抑制することができる。
1…摺動部材、2…相手材、10…裏金、11…ライニング、12…オーバーレイ、12a…ポリアミドイミド樹脂、12b…二硫化モリブデン粒子、12c…硫酸バリウム粒子、70…引張強度、A…すべり軸受、H…試験軸、Ps…摺動部材、R…コンロッド

Claims (2)

  1. 基層と、前記基層上に形成された樹脂被覆層とを備える摺動部材であって、
    前記樹脂被覆層は、
    バインダーとしての、引張強度が147MPa以上のポリアミドイミド樹脂と、
    固体潤滑剤と、
    添加剤および不可避不純物の少なくとも一方と、
    からなる摺動部材。
  2. 前記ポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度は、
    288℃以上である、
    請求項1に記載の摺動部材。
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