JP2020169430A - 微細繊維状セルロースの製造方法 - Google Patents

微細繊維状セルロースの製造方法 Download PDF

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【課題】本発明は、外微細繊維状セルロースを製造する際、リンオキソ酸化工程において、リンオキソ酸化剤の付与量を厳密にコントロールすることを課題とする。【解決手段】本発明は、パルプ原料にリンオキソ酸化剤を添加する工程と、前記パルプ原料を微細化する工程とを含む、微細繊維状セルロースの製造方法であって、リンオキソ酸化剤を添加する工程は、下記(A)工程もしくは(B)工程である、微細繊維状セルロースの製造方法に関する。(A)パルプ原料にリンオキソ酸化剤を含浸させた後に、パルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を除去する工程(B)パルプ原料にリンオキソ酸化剤を噴霧する工程【選択図】なし

Description

本発明は、微細繊維状セルロースの製造方法に関する。
従来、セルロース繊維は、衣料や吸収性物品、紙製品等に幅広く利用されている。セルロース繊維としては、繊維径が10μm以上50μm以下の繊維状セルロースに加えて、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。微細繊維状セルロースは、新たな素材として注目されており、その用途は多岐にわたる。例えば、微細繊維状セルロースを含むシートや樹脂複合体、増粘剤の開発が進められている。
微細繊維状セルロースは、従来のセルロース繊維を機械処理することで製造可能であるが、セルロース繊維同士は水素結合により、強く結合している。したがって、単純に機械処理を行うのみでは、微細繊維状セルロースを得るまでに膨大なエネルギーが必要となる。このため、より小さな機械処理エネルギーで微細繊維状セルロースを製造するために、機械処理と合わせて、化学処理や生物処理といった前処理を行うことが検討されている。特に、化学処理により、セルロース表面のヒドロキシ基に親水性の官能基(例えば、カルボキシ基、カチオン基、リン酸基など)を導入すると、イオン同士の電気的な反発が生じ、かつイオンが水和することで、特に水系溶媒への分散性が著しく向上する。このため、化学処理を施さない場合に比べて微細化のエネルギー効率が高くなる。
例えば、特許文献1及び2には、リン酸基や亜リン酸基といったリンオキソ酸基を有する微細繊維状セルロースが開示されている。これらの文献では、セルロース繊維にリンオキソ酸化試薬を付与し、リンオキソ酸化反応を行った後に、解繊処理を行うことで、リンオキソ酸基を有する微細繊維状セルロースを得ている。
国際公開第2014/185505号 国際公開第2018/159473号
セルロース繊維等のパルプをリンオキソ酸化する工程においては、リンオキソ酸を含むリンオキソ酸化剤をパルプに付与した後に所定時間加熱することで、パルプに含まれるセルロースにリンオキソ酸基を導入する。
本発明者らは、このような工程において、リンオキソ酸基の導入効率を高めることを目的として検討を行った。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、微細繊維状セルロースの製造工程において、リンオキソ酸化剤を添加する工程において所定の方法を採用することにより、リンオキソ酸基の導入効率が高まることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] パルプ原料にリンオキソ酸化剤を添加する工程と、パルプ原料を微細化する工程とを含む、微細繊維状セルロースの製造方法であって、
リンオキソ酸化剤を添加する工程は、下記(A)工程もしくは(B)工程である、微細繊維状セルロースの製造方法。
(A)パルプ原料にリンオキソ酸化剤を含浸させた後に、パルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を除去する工程
(B)パルプ原料にリンオキソ酸化剤を噴霧する工程
[2] リンオキソ酸化剤を添加する工程は、(A)工程である、[1]に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
[3] リンオキソ酸化剤を添加する工程では、下記式で表されるリン原子の質量の誤差が、±15%以内となる、[1]又は[2]に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
リン原子の質量の誤差(%)=(リン原子質量目標値−リン原子質量実測値)/リン原子質量目標値×100
[4] リンオキソ酸化剤は、リン酸化剤もしくは亜リン酸化剤である、[1]〜[3]のいずれかに記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
[5] リンオキソ酸化剤を添加する工程は、(A)工程であり、
(A)工程は、パルプ原料にリンオキソ酸化剤を含浸させた後に、パルプ原料を一対のロール状部材で挟むことで、パルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を除去する工程である、[1]〜[4]のいずれかに記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
[6] リンオキソ酸化剤を添加する工程は、(A)工程であり、
(A)工程は、パルプ原料にリンオキソ酸化剤を含浸させた後に、パルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を固液分離により除去する工程である、[1]〜[5]のいずれかに記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
[7] 固液分離により除去する工程は、目開き37〜5660μmのメッシュ状部材を介してパルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を吸引除去する工程である、[6]に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
[8] 固液分離により除去する工程は、通気度30〜55000のメッシュ状部材を介してパルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を吸引除去する工程である、[6]に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
[9] リンオキソ酸化剤を添加する工程は、(B)工程であり、
(B)工程では、1流体もしくは2流体ノズルを使用して、パルプ原料にリンオキソ酸化剤を噴霧する、[1]に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
本発明の製造方法によれば、微細繊維状セルロースを製造する際のリンオキソ酸化工程において、リンオキソ酸基の導入効率を高めることができる。
図1は、リンオキソ酸基を有する繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
(微細繊維状セルロースの製造方法)
本発明は、パルプ原料にリンオキソ酸化剤を添加する工程と、パルプ原料を微細化する工程とを含む、微細繊維状セルロースの製造方法に関する。本発明の微細繊維状セルロースの製造工程において、リンオキソ酸化剤を添加する工程は、下記(A)工程もしくは(B)工程である
(A)パルプ原料にリンオキソ酸化剤を含浸させた後に、パルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を除去する工程
(B)パルプ原料にリンオキソ酸化剤を噴霧する工程
本発明の微細繊維状セルロースの製造方法は、上記工程を含むため、リンオキソ酸化工程において、リンオキソ酸化剤の付与量を厳密にコントロールすることができる。これにより、リンオキソ酸化工程において、パルプに対するリンオキソ酸基の導入効率を高めることができる。中でも、微細繊維状セルロースの製造方法は、上記工程(A)を含むことが好ましく、パルプ原料にリンオキソ酸化剤を含浸させる工程に加えて、パルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を除去する工程を設けることにより、より厳密にリンオキソ酸化剤の付与量をコントロールすることができ、パルプに対するリンオキソ酸基の導入効率をより効果的に高めることができる。
なお、本明細書においては、リンオキソ酸化剤の付与量のコントロールの成否については、パルプ原料に付与されるリン原子の質量の目標値と実際にパルプに付与されたリン原子の質量の誤差を算出することで評価することができる。具体的には、下記式で表されるリン原子の質量の誤差は、±15%以内であることが好ましく、±10%以内であることがより好ましく、±7%以内であることがさらに好ましい。
リン原子の質量の誤差(%)=(リン原子質量目標値−リン原子質量実測値)/リン原子質量目標値×100
ここで、リン原子質量目標値は、パルプ原料(絶乾質量)1gあたりに付与されるリン原子質量の目標値であり、リン原子質量実測値はパルプ原料(絶乾質量)1gあたりに付与されたリン原子質量である。
リン原子質量実測値は、以下のようにして算出する。まず、リンオキソ酸化剤添加後のパルプ重量(1)を測定し、次いで、リンオキソ酸化剤添加後のパルプを絞り、回収液のリン原子濃度(2)を測定する。さらに、絞ったパルプを水洗することでリンオキソ酸化剤を完全に洗い流し、乾燥させて絶乾重量(3)を測定する。上記の(1)の重量−(3)の重量は、パルプ中に含まれていた水分の重量と、リンオキソ酸化剤の重量の合計重量(4)となる。
リン原子質量実測値=合計重量(4)×回収液のリン原子濃度(2)/絶乾重量(3)
なお、回収液のリン原子濃度(2)は呈色法を利用して測定する。具体的には、ペルオキソ二硫酸カリウム4gを100mLにメスアップし、振り混ぜて溶かす(A液)。L(+)−アスコルビン酸0.72gを10mLにメスアップし、振り混ぜて溶かす(B液)。B液10mLとモリブデン酸アンモニウム溶液50mLを混合する(C液)。適宜希釈した酸化剤50mLにA液を10mL加え、120℃で30分間処理を行う。加熱処理した溶液を方冷後25mL採取しC液2mLを加え室温で15分放置する。得られた溶液を分光光度計にて波長880nmの吸光度を測定する。検量線はリン原子濃度10ppm、25ppm、50ppm、100ppm、200ppmとなるよう調整した標準液を同様の方法で処理、測定を行うことで作製する。得られた検量線から回収液中のリン原子濃度を算出する。
本発明においては、リンオキソ酸化工程において、リンオキソ酸化剤の付与量を厳密にコントロールすることができ、その結果、リンオキソ酸化効率を高めることができる。具体的には、リンオキソ酸化工程におけるリンオキソ酸化速度を高めることができる。例えば、リンオキソ酸化剤を添加する工程を上記(A)工程として、パルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を除去する工程を設けた場合、パルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を除去する工程を設けなかった場合と比較して、リンオキソ酸化速度を高めることができる。これは、リンオキソ酸化工程におけるリンオキソ酸化速度を高めるためには、単に付与されるリンオキソ酸化剤の量を多くするのではなく、付与されるリンオキソ酸化剤の量を適切にコントロールすることが重要であることを意味している。
<リンオキソ酸化剤を添加する工程>
本発明の微細繊維状セルロースの製造方法は、パルプ原料にリンオキソ酸化剤を添加する工程を含む。なお、本明細書において、パルプ原料にリンオキソ酸化剤を添加する工程は、リンオキソ酸基導入工程ともいう。
パルプ原料としては、たとえば木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえば広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)および酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)およびケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)およびサーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえばコットンリンターおよびコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わらおよびバガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、特に限定されないが、たとえば古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中でも、入手のしやすさという観点からは、たとえば木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、木材パルプの中でも、セルロース比率が大きく解繊処理時の微細繊維状セルロースの収率が高い観点や、パルプ中のセルロースの分解が小さく軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる観点から、たとえば化学パルプがより好ましく、クラフトパルプ、サルファイトパルプがさらに好ましい。
リンオキソ酸基導入工程は、パルプ原料中のセルロースが有する水酸基と反応することで、リンオキソ酸基を導入できる化合物から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物A」ともいう)を、パルプ原料に作用させる工程である。この工程により、リンオキソ酸基導入繊維が得られることとなる。
本実施形態に係るリンオキソ酸基導入工程では、セルロースを含むパルプ原料と化合物Aの反応を、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」ともいう)の存在下で行ってもよい。一方で、化合物Bが存在しない状態において、セルロースを含むパルプ原料と化合物Aの反応を行ってもよい。
化合物Aとしては、リン原子を有し、セルロースとエステル結合を形成可能な化合物であればよく、リン酸もしくはその塩、亜リン酸もしくはその塩、脱水縮合リン酸もしくはその塩、無水リン酸(五酸化二リン)などが挙げられるが特に限定されない。リン酸としては、種々の純度のものを使用することができ、たとえば100%リン酸(正リン酸)や85%リン酸を使用することができる。亜リン酸としては、99%亜リン酸(ホスホン酸)が挙げられる。脱水縮合リン酸は、リン酸が脱水反応により2分子以上縮合したものであり、例えばピロリン酸、ポリリン酸等を挙げることができる。リン酸塩、亜リン酸塩、脱水縮合リン酸塩としては、リン酸、亜リン酸または脱水縮合リン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられ、これらは種々の中和度とすることができる。これらのうち、リン酸基の導入効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、またはリン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、またはリン酸二水素アンモニウムがより好ましい。
なお、本明細書において、化合物Aと水を含む剤をリンオキソ酸化剤と呼ぶ。化合物Aがリン酸もしくはその塩である場合、リンオキソ酸化剤は、リン酸化剤である。また、化合物Aが亜リン酸もしくはその塩である場合、リンオキソ酸化剤は、亜リン酸化剤である。本発明において用いるリンオキソ酸化剤は、リン酸化剤もしくは亜リン酸化剤であることが好ましい。なお、このようなリンオキソ酸化剤には、化合物Bがさらに含まれていることが好ましい。
パルプ原料に対する化合物Aの添加量は、特に限定されないが、たとえば化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合において、パルプ原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量が0.5質量%以上100質量%以下となることが好ましく、1質量%以上50質量%以下となることがより好ましく、2質量%以上30質量%以下となることがさらに好ましい。パルプ原料に対するリン原子の添加量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。一方で、パルプ原料に対するリン原子の添加量を上記上限値以下とすることにより、収率向上の効果とコストのバランスをとることができる。
本実施態様で使用する化合物Bは、上述のとおり尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種である。化合物Bとしては、たとえば尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、および1−エチル尿素などが挙げられる。反応の均一性を向上させる観点から、化合物Bは水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性をさらに向上させる観点からは、化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。
パルプ原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は、特に限定されないが、たとえば1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましい。
セルロースを含むパルプ原料と化合物Aの反応においては、化合物Bの他に、たとえばアミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、たとえばホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、たとえばメチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
リンオキソ酸化剤を添加する工程は、下記(A)工程もしくは(B)工程である。
(A)パルプ原料にリンオキソ酸化剤を含浸させた後に、パルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を除去する工程
(B)パルプ原料にリンオキソ酸化剤を噴霧する工程
中でも、リンオキソ酸化剤を添加する工程は、(A)工程であることが好ましい。
リンオキソ酸化剤を添加する工程が(A)工程である場合、(A)工程は、パルプ原料にリンオキソ酸化剤を含浸させた後に、パルプ原料を一対のロール状部材で挟むことで、パルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を除去する工程であることが好ましい。このような工程では、パルプ原料に過剰量のリンオキソ酸化剤を添加した後に、そのリンオキソ酸化剤の一部を除去する。具体的には、パルプ原料に過剰量のリンオキソ酸化剤を添加した後に、添加したリンオキソ酸化剤の10〜30質量%分のリンオキソ酸化剤を除去することが好ましい。これにより、リンオキソ酸化速度をより効果的に高めることができる。なお、このような工程で用いられるロール状部材の材質は特に限定されるものではないが、例えば、金属製ロールやプラスチック製ロールであることが好ましい。
(A)工程では、パルプ原料にリンオキソ酸化剤を含浸させた後に、パルプ原料を一対のロール状部材で挟むことで、パルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を除去するが、その際、パルプ原料には所定の圧力が付与されることが好ましい。例えば、ロール圧力を調整したり、圧縮エアーを付与することで、パルプ原料に圧力が付与されることが好ましい。この際の圧力は、0.05MPa以上5MPa以下が好ましく、0.1MPa以上1MPa以下がより好ましく、0.2MPa以上、0.7MPa以下がさらに好ましい。
リンオキソ酸化剤を添加する工程が(A)工程である場合、(A)工程は、パルプ原料にリンオキソ酸化剤を含浸させた後に、パルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を固液分離により除去する工程であることも好ましい。固液分離により除去する工程は、特に限定されるものではないが、例えば加圧ろ過や遠心脱水を行う工程であってもよい。また、固液分離により除去する工程では、目開き37〜5660μmのメッシュ状部材を介してパルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を吸引除去してもよく、また、通気度30〜55000のメッシュ状部材を介してパルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を吸引除去してもよい。吸引除去する際には、減圧条件とすることが好ましく、減圧条件は、−100kPa以上−1kPa以下が好ましく、−80kPa以上−2kPa以下がより好ましく、−50kPa以上−5kPa以下がさらに好ましい。
なお、リンオキソ酸化剤を添加する工程が(B)工程である場合、(B)工程では、1流体もしくは2流体ノズルを使用して、パルプ原料にリンオキソ酸化剤を噴霧することが好ましい。ここで、1流体ノズルは、液圧だけで液体を噴出させるノズルである。一方、2流体ノズルは、気体の流れにより液体を粉砕・微粒化して噴出させるノズルである。2流体ノズルを用いた場合、1流体ノズルを用いた場合よりも微粒化したリンオキソ酸化剤がパルプ原料に噴霧されることとなる。このため、(B)工程では、2流体ノズルを使用することがより好ましい。
(B)工程では、リンオキソ酸化剤を0.1L/min以上50L/min以下となるように噴霧することが好ましく、0.5L/min以上30L/min以下となるように噴霧することがより好ましく、1L/min以上20L/min以下となるように噴霧することがさらに好ましい。このような噴霧条件を採用することで、リンオキソ酸化剤の付与量を厳密にコントロールすることができ、その結果、リンオキソ酸化効率を高めることができる。
リンオキソ酸化剤を添加する工程に供されるパルプ原料は、乾燥状態であってもよく、湿潤状態であってもよい。中でも、パルプ原料は乾燥状態のパルプ原料であることが好ましい。なお、乾燥状態のパルプ原料とは、例えば、水分含有量が15質量%以下のパルプ原料を言い、水分含有量は10質量%以下であることが好ましい。パルプ原料の形態は、特に限定されないが、たとえば綿状や薄いシート状であることが好ましい。なお、化合物Aと化合物Bはパルプ原料に対して同時に添加してもよく、別々に添加してもよく、混合物として添加してもよい。
リンオキソ酸化剤を添加する工程の後には、当該パルプ原料に対して加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度としては、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リンオキソ酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。加熱処理温度は、たとえば50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱処理には、種々の熱媒体を有する機器を利用することができ、たとえば撹拌乾燥装置、回転乾燥装置、円盤乾燥装置、ロール型加熱装置、プレート型加熱装置、流動層乾燥装置、バンド型乾燥装置、ろ過乾燥装置、振動流動乾燥装置、気流乾燥装置、減圧乾燥装置、赤外線加熱装置、遠赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置、高周波乾燥装置を用いることができる。
なお、加熱の際には、ニーダー等でパルプ原料とリンオキソ酸化剤を混練又は撹拌しながら加熱する方法を採用することもできる。これにより、パルプ原料におけるリンオキソ酸化剤の濃度ムラを抑制して、パルプ原料に含まれるセルロース繊維表面へより均一にリンオキソ酸基を導入することが可能となる。これは、乾燥に伴い水分子がパルプ原料表面に移動する際、溶存するリンオキソ酸化剤が表面張力によって水分子に引き付けられ、同様にパルプ原料表面に移動してしまう(すなわち、リンオキソ酸化剤の濃度ムラを生じてしまう)ことを抑制できることに起因するものと考えられる。
また、加熱処理に用いる加熱装置は、たとえばスラリーが保持する水分、及びリンオキソ酸化剤とパルプ原料中のセルロース等が含む水酸基等との脱水縮合(リン酸エステル化)反応に伴って生じる水分、を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましい。このような加熱装置としては、例えば送風方式のオーブン等が挙げられる。装置系内の水分を常に排出することにより、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもできる。このため、軸比の高い微細繊維状セルロースを得ることが可能となる。
加熱処理の時間は、たとえばパルプ原料から実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本実施形態では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リンオキソ酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
リンオキソ酸基導入工程は、少なくとも1回行えば良いが、2回以上繰り返して行うこともできる。2回以上のリンオキソ酸基導入工程を行うことにより、パルプ原料に対して多くのリンオキソ酸基を導入することができる。
パルプ原料に対するリンオキソ酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることが一層好ましい。また、パルプ原料に対するリンオキソ酸基の導入量は、たとえばパルプ原料1g(質量)あたり5.20mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。リンオキソ酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、パルプ原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。
<洗浄工程>
本実施形態における微細繊維状セルロースの製造方法においては、必要に応じてリンオキソ酸基導入繊維に対して洗浄工程を行うことができる。洗浄工程は、たとえば水や有機溶媒によりリンオキソ酸基導入繊維を洗浄することにより行われる。また、洗浄工程は後述する各工程の後に行われてもよく、各洗浄工程において実施される洗浄回数は、特に限定されない。
<アルカリ処理工程>
微細繊維状セルロースを製造する場合、リンオキソ酸基導入工程と、後述する解繊処理工程との間に、パルプ原料に対してアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えばアルカリ溶液中に、リンオキソ酸基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されず、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。本実施形態においては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムをアルカリ化合物として用いることが好ましい。また、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水または有機溶媒のいずれであってもよい。中でも、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水、またはアルコールに例示される極性有機溶媒などを含む極性溶媒であることが好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒であることがより好ましい。アルカリ溶液としては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は、特に限定されないが、たとえば5℃以上80℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下であることがより好ましい。アルカリ処理工程におけるリンオキソ酸基導入繊維のアルカリ溶液への浸漬時間は、特に限定されないが、たとえば5分以上30分以下であることが好ましく、10分以上20分以下であることがより好ましい。アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は、特に限定されないが、たとえばリンオキソ酸基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の使用量を減らすために、リンオキソ酸基導入工程の後であってアルカリ処理工程の前に、リンオキソ酸基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄してもよい。アルカリ処理工程の後であって解繊処理工程の前には、取り扱い性を向上させる観点から、アルカリ処理を行ったリンオキソ酸基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
<酸処理工程>
微細繊維状セルロースを製造する場合、リンオキソ酸基を導入する工程と、後述する解繊処理工程の間に、パルプ原料に対して酸処理を行ってもよい。例えば、リンオキソ酸基導入工程、酸処理、アルカリ処理及び解繊処理をこの順で行ってもよい。
酸処理の方法としては、特に限定されないが、たとえば酸を含有する酸性液中にパルプ原料を浸漬する方法が挙げられる。使用する酸性液の濃度は、特に限定されないが、たとえば10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。また、使用する酸性液のpHは、特に限定されないが、たとえば0以上4以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。酸性液に含まれる酸としては、たとえば無機酸、スルホン酸、カルボン酸等を用いることができる。無機酸としては、たとえば硫酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。スルホン酸としては、たとえばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。カルボン酸としては、たとえばギ酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸等が挙げられる。これらの中でも、塩酸または硫酸を用いることが特に好ましい。
酸処理における酸溶液の温度は、特に限定されないが、たとえば5℃以上100℃以下が好ましく、20℃以上90℃以下がより好ましい。酸処理における酸溶液への浸漬時間は、特に限定されないが、たとえば5分以上120分以下が好ましく、10分以上60分以下がより好ましい。酸処理における酸溶液の使用量は、特に限定されないが、たとえばパルプ原料の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
<解繊処理>
リンオキソ酸基導入繊維を解繊処理工程で解繊処理することにより、微細繊維状セルロースが得られる。解繊処理工程においては、たとえば解繊処理装置を用いることができる。解繊処理装置は、特に限定されないが、たとえば高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなどを使用することができる。上記解繊処理装置の中でも、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミネーションのおそれが少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーを用いるのがより好ましい。
解繊処理工程においては、たとえばリンオキソ酸基導入繊維を、分散媒により希釈してスラリー状にすることが好ましい。分散媒としては、水、および極性有機溶媒などの有機溶媒から選択される1種または2種以上を使用することができる。極性有機溶媒としては、特に限定されないが、たとえばアルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、非プロトン性極性溶媒等が好ましい。アルコール類としては、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。エステル類としては、たとえば酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としてはジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。
解繊処理時の微細繊維状セルロースの固形分濃度は適宜設定できる。また、リンオキソ酸基導入繊維を分散媒に分散させて得たスラリー中には、例えば水素結合性のある尿素などのリンオキソ酸基導入繊維以外の固形分が含まれていてもよい。
上述したような解繊処理工程を経て、繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースを含む分散液(微細繊維状セルロース含有分散液)が得られる。このような分散液の微細繊維状セルロース濃度は適宜調整することができるが、微細繊維状セルロースの含有量は、分散液の全質量に対して、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.2質量%以上であることがさらに好ましい。また、微細繊維状セルロースの含有量は、分散液の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。
微細繊維状セルロース含有分散液の全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。なお、微細繊維状セルロース含有分散液の全光線透過率は100%であってもよい。微細繊維状セルロース含有分散液の全光線透過率は、微細繊維状セルロース含有分散液をイオン交換水で繊維状セルロースの含有量が0.2質量%となるように希釈した後、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)で、光路長1cmの液体用ガラスセル(藤原製作所製、MG−40、逆光路)を用いて、JIS K 7361に準拠して測定される値である。なお、ゼロ点測定は、同ガラスセルに入れたイオン交換水で行う。また、測定対象の分散液は測定前に23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置する。
微細繊維状セルロース含有分散液のヘーズは、2%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。微細繊維状セルロース含有分散液のヘーズは、たとえばJIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製、HM−150)で、光路長1cmの液体用ガラスセル(藤原製作所製、MG−40、逆光路)を用いて測定される値である。なお、ゼロ点測定は、同ガラスセルに入れたイオン交換水で行う。また、測定対象の分散液は測定前に23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置する。
微細繊維状セルロース含有分散液には、微細繊維状セルロースの他に任意成分を添加してもよい。任意成分としては、親水性高分子、親水性低分子、有機イオン等を挙げることができる。また、微細繊維状セルロース含有分散液は、任意成分として、界面活性剤、カップリング剤、無機層状化合物、無機化合物、レベリング剤、防腐剤、消泡剤、有機系粒子、潤滑剤、帯電防止剤、紫外線防御剤、染料、顔料、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、分散剤、および架橋剤から選択される一種または二種以上を添加してもよい。
<微細繊維状セルロース>
本発明の微細繊維状セルロースの製造方法で得られる微細繊維状セルロースは、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースである。微細繊維状セルロースの繊維幅は1000nm以下であればよく、100nm以下であることが好ましく、8nm以下であることがより好ましい。これにより、微細繊維状セルロースを含有する分散液やシートは高透明となる。
微細繊維状セルロースの繊維幅は、たとえば電子顕微鏡観察などにより測定することが可能である。微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば1000nm以下である。微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば2nm以上1000nm以下であることが好ましく、2nm以上100nm以下であることがより好ましく、2nm以上50nm以下であることがさらに好ましく、2nm以上10nm以下であることが特に好ましい。微細繊維状セルロースの平均繊維幅を2nm以上とすることにより、セルロース分子として水に溶解することを抑制し、微細繊維状セルロースによる強度や剛性、寸法安定性の向上という効果をより発現しやすくすることができる。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば電子顕微鏡を用いて以下のようにして測定される。まず、濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。次いで、観察対象となる繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を目視で読み取る。このようにして、少なくとも互いに重なっていない表面部分の観察画像を3組以上得る。次いで、各画像に対して、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を読み取る。これにより、少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。そして、読み取った繊維幅の平均値を、微細繊維状セルロースの平均繊維幅とする。
微細繊維状セルロースの繊維長は、特に限定されないが、たとえば0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.1μm以上800μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上600μm以下であることがさらに好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制できる。また、微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることも可能となる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、たとえばTEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造を有することは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は、たとえば30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。これにより、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
微細繊維状セルロースの軸比(繊維長/繊維幅)は、特に限定されないが、たとえば20以上10000以下であることが好ましく、50以上1000以下であることがより好ましい。軸比を上記下限値以上とすることにより、微細繊維状セルロースを含有するシートを形成しやすい。また、溶媒分散体を作製した際に十分な増粘性が得られやすい。軸比を上記上限値以下とすることにより、たとえば微細繊維状セルロースを水分散液として扱う際に、希釈等のハンドリングがしやすくなる点で好ましい。
本実施形態における繊維状セルロースは、たとえば結晶領域と非結晶領域をともに有している。特に、結晶領域と非結晶領域をともに有し、かつ軸比が高い微細繊維状セルロースは、後述する微細繊維状セルロースの製造方法により実現されるものである。
微細繊維状セルロースはリンオキソ酸基を含有する。なお、本明細書において、リンオキソ酸基には、リンオキソ酸基に由来する置換基も含まれる。
リンオキソ酸基は、たとえば下記式(1)で表される置換基である。リンオキソ酸基は、たとえばリン酸からヒドロキシ基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−PO32で表される基である。リンオキソ酸基には、リンオキソ酸基に由来する置換基も含まれ、リンオキソ酸基に由来する置換基には、リンオキソ酸基の塩、リンオキソ酸エステル基などの置換基が含まれる。なお、リンオキソ酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮合した基(たとえばピロリン酸基)としてリンオキソ酸化パルプに含まれていてもよい。また、リンオキソ酸基は、たとえば、亜リン酸基(ホスホン酸基)であってもよく、リンオキソ酸基に由来する置換基は、亜リン酸基の塩などであってもよい。
式(1)中、a、bおよびnは自然数であり、mは任意の数である(ただし、a=b×mである)。α1,α2,・・・,αnおよびα’のうちa個がO-であり、残りはR,ORのいずれかである。なお、各αnおよびα’の全てがO-であっても構わない。Rは、各々、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、不飽和−環状炭化水素基、芳香族基、またはこれらの誘導基である。また、式(1)においては、nは1であることが好ましい。
飽和−直鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、又はn−ブチル基等が挙げられるが、特に限定されない。飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロピル基、又はt−ブチル基等が挙げられるが、特に限定されない。飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−直鎖状炭化水素基としては、ビニル基、又はアリル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロペニル基、又は3−ブテニル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられるが、特に限定されない。芳香族基としては、フェニル基、又はナフチル基等が挙げられるが、特に限定されない。
また、Rにおける誘導基としては、上記各種炭化水素基の主鎖又は側鎖に対し、カルボキシ基、ヒドロキシ基、又はアミノ基などの官能基のうち、少なくとも1種類が付加又は置換した状態の官能基が挙げられるが、特に限定されない。また、Rの主鎖を構成する炭素原子数は特に限定されないが、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。Rの主鎖を構成する炭素原子数を上記範囲とすることにより、リンオキソ酸基の分子量を適切な範囲とすることができ、パルプ原料への浸透を容易にし、微細セルロース繊維の収率を高めることもできる。
βb+は有機物又は無機物からなる1価以上の陽イオンである。有機物からなる1価以上の陽イオンとしては、脂肪族アンモニウム、又は芳香族アンモニウムが挙げられ、無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、ナトリウム、カリウム、若しくはリチウム等のアルカリ金属のイオンや、カルシウム、若しくはマグネシウム等の2価金属の陽イオン、又は水素イオン等が挙げられるが、特に限定されない。これらは1種又は2種類以上を組み合わせて適用することもできる。有機物又は無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、βを含むパルプ原料を加熱した際に黄変しにくく、また工業的に利用し易いナトリウム、又はカリウムのイオンが好ましいが、特に限定されない。なお、βb+は有機オニウムイオンであってもよい。
微細繊維状セルロースに対するリンオキソ酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることが一層好ましく、1.50mmol/g以上であることがより一層好ましい。また、微細繊維状セルロースに対するリンオキソ酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり5.20mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.50mmol/g以下であることがさらに好ましく、3.00mmol/g以下であることが特に好ましい。リンオキソ酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、パルプ原料の微細化を容易とすることができ、微細繊維状セルロースの安定性を高めることが可能となる。また、リンオキソ酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの増粘剤などの種々用途において良好な特性を発揮することができる。ここで、単位mmol/gにおける分母は、リンオキソ酸基の対イオンが水素イオン(H+)であるときの微細繊維状セルロースの質量を示す。
微細繊維状セルロースに対するリンオキソ酸基の導入量は、たとえば中和滴定法により測定することができる。中和滴定法による測定では、得られた微細繊維状セルロースを含有するスラリーに、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリを加えながらpHの変化を求めることにより、導入量を測定する。
図1は、リンオキソ酸基を有する微細繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。微細繊維状セルロースに対するリンオキソ酸基の導入量は、たとえば次のように測定される。
まず、微細繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。
次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を観察し、図1の上側部に示すような滴定曲線を得る。図1の上側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットしており、図1の下側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対するpHの増分(微分値)(1/mmol)をプロットしている。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が二つ確認される。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中に含まれる微細繊維状セルロースの第1解離酸量と等しくなり、第1終点から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる微細繊維状セルロースの第2解離酸量と等しくなり、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる微細繊維状セルロースの総解離酸量と等しくなる。そして、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量を滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して得られる値が、リンオキソ酸基導入量(mmol/g)となる。なお、単にリンオキソ酸基導入量(またはリンオキソ酸基量)と言った場合は、第1解離酸量のことを表す。
なお、図1において、滴定開始から第1終点までの領域を第1領域と呼び、第1終点から第2終点までの領域を第2領域と呼ぶ。例えば、リンオキソ酸基がリン酸基の場合であって、このリン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上、リンオキソ酸基における弱酸性基量(本明細書では第2解離酸量ともいう)が低下し、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、リンオキソ酸基における強酸性基量(本明細書では第1解離酸量ともいう)は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致する。また、リンオキソ酸基が亜リン酸基の場合は、リンオキソ酸基に弱酸性基が存在しなくなるため、第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなるか、第2領域に必要としたアルカリ量はゼロとなる場合もある。この場合、滴定曲線において、pHの増分が極大となる点は一つとなる。
なお、滴定法によるリンオキソ酸基量の測定においては、水酸化ナトリウム水溶液1滴の滴下量が多すぎる場合や、滴定間隔が短すぎる場合、本来より低いリンオキソ酸基量となるなど正確な値が得られないことがある。適切な滴下量、滴定間隔としては、例えば、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を5〜30秒に10〜50μLずつ滴定するなどが望ましい。また、微細繊維状セルロース含有スラリーに溶解した二酸化炭素の影響を排除するため、例えば、滴定開始の15分前から滴定終了まで、窒素ガスなどの不活性ガスをスラリーに吹き込みながら測定するなどが望ましい。
(用途)
上述した微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース含有分散液や微細繊維状セルロース含有シートにおいては、その透明性が十分に高い。このような特性を活かす観点から微細繊維状セルロースは各種のディスプレイ装置、各種の太陽電池、等の光透過性基板の用途に適している。また、電子機器の基板、家電の部材、各種の乗り物や建物の窓材、内装材、外装材、包装用資材等の用途にも適している。さらに、糸、フィルタ、織物、緩衝材、スポンジ、研磨材などの他、シートそのものを補強材として使う用途にも適している。また、本発明の微細繊維状セルロースは、増粘剤として各種用途(例えば、食品、化粧品、セメント、塗料、インクなどへの添加物など)に使用することもできる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<リンオキソ酸化剤の製造>
リン酸二水素アンモニウム14質量%、尿素38質量%、水48質量%の比率となるようにリンオキソ酸化剤Aを調製した。
亜リン酸(ホスホン酸)11質量%、尿素40質量%、水50質量%の比率となるようにリンオキソ酸化剤Bを調製した。
(実施例1)
<リンオキソ酸エステル化反応>
針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙製のパルプ(固形分93質量%、坪量245g/m2シート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)をパルプ原料として使用した。このパルプ原料を十分量のリンオキソ酸化剤Aに含浸させた後、1対のロール状部材で挟みこみ余剰薬液を取り除いた。その後、リンオキソ酸化剤Aに含浸させたパルプ原料を送風乾燥機にて160℃で、10分間加熱することでリンオキソ酸化パルプを得た。
<洗浄・アルカリ(中和)処理工程>
次いで、得られたリンオキソ酸化パルプに対して洗浄処理を行った。洗浄処理は、リンオキソ酸化パルプ100g(絶乾質量)に対して10Lのイオン交換水を注いで得たパルプ分散液を、パルプが均一に分散するよう撹拌した後、濾過脱水する操作を繰り返すことにより行った。ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった時点で、洗浄終点とした。
次いで、洗浄後のリンオキソ酸化パルプに対して中和処理を次のようにして行った。まず、洗浄後のリンオキソ酸化パルプを10Lのイオン交換水で希釈した後、撹拌しながら1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加することにより、pHが12以上13以下のリンオキソ酸化パルプスラリーを得た。次いで、該リンオキソ酸化パルプスラリーを脱水して、中和処理が施されたリンオキソ酸化パルプを得た。次いで、中和処理後のリンオキソ酸化パルプに対して、上記洗浄処理を行った。
これにより得られたリンオキソ酸化パルプに対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1230cm-1付近にリン酸基のP=Oに基づく吸収が観察され、パルプにリン酸基が付加されていることが確認された。また、得られたリンオキソ酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。
<機械処理>
得られたリンオキソ酸化パルプにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、スターバースト)で200MPaの圧力にて6回処理し、微細繊維状セルロース含有分散液を得た。
X線回折により、この微細繊維状セルロースがセルロースI型結晶を維持していることが確認された。また、微細繊維状セルロースの繊維幅を、透過型電子顕微鏡を用いて測定したところ、3〜5nmであった。
<リンオキソ酸基の導入量の測定>
微細繊維状セルロースのリンオキソ酸基量(リンオキソ酸化パルプのリンオキソ酸基量と等しい)は、対象となる微細繊維状セルロース含有分散液にイオン交換水を添加して、含有量を0.2質量%とし、イオン交換樹脂による処理を行った後、アルカリを用いた滴定を行うことにより測定した。
イオン交換樹脂による処理は、上記微細繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社、コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った後、目開き90μmのメッシュ上に注いで樹脂とスラリーを分離することにより行った。
また、アルカリを用いた滴定は、イオン交換樹脂による処理後の微細繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を5秒に10μLずつ加えながら、スラリーが示すpHの値の変化を計測することにより行った。なお、滴定開始の15分前から窒素ガスをスラリーに吹き込みながら滴定を行った。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が二つ観測される。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ(図1)。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の第1解離酸量と等しくなる。また、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の総解離酸量と等しくなる。なお、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除した値をリンオキソ酸基量(第1解離酸量)(mmol/g)とした。また、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除した値を総解離酸量(mmol/g)とした。
<リンオキソ酸化速度の算出>
上述したリンオキソ酸基量(第1解離酸量)(mmol/g)を反応時間(10分)で除した数値をリンオキソ酸化速度(mmol/g・min)とした。
(実施例2)
パルプ原料を十分量のリンオキソ酸化剤Bに含浸させた後、1対のロール状部材で挟みこみ余剰薬液を取り除き、送風乾燥機にて160℃で、10分間加熱した以外は、実施例1の方法と同様にして微細繊維状セルロース含有分散液を得た。
(実施例3)
パルプ原料を十分量のリンオキソ酸化剤Aに含浸させた後、目開き5660μmの金属メッシュを介し余剰薬液を吸引し、取り除いた以外は、実施例1の方法と同様にして微細繊維状セルロース含有分散液を得た。
(実施例4)
パルプ原料を十分量のリンオキソ酸化剤Aに含浸させた後、目開き595μmの金属メッシュを介し余剰薬液を吸引し、取り除いた以外は、実施例1の方法と同様にして微細繊維状セルロース含有分散液を得た。
(実施例5)
パルプ原料を十分量のリンオキソ酸化剤Aに含浸させた後、目開き37μmの金属メッシュを介し余剰薬液を吸引し、取り除いた以外は、実施例1の方法と同様にして微細繊維状セルロース含有分散液を得た。
(実施例6)
パルプ原料を十分量のリンオキソ酸化剤Bに含浸させた後、目開き595μmの金属メッシュを介し余剰薬液を吸引し、取り除いた以外は、実施例1の方法と同様にして微細繊維状セルロース含有分散液を得た。
(実施例7)
パルプ原料を十分量のリンオキソ酸化剤Aに含浸させた後、通気度55000cm3/cm2/minのプラスチックメッシュを介し余剰薬液を吸引し、取り除いた以外は、実施例1の方法と同様にして微細繊維状セルロース含有分散液を得た。
(実施例8)
パルプ原料を十分量のリンオキソ酸化剤Aに含浸させた後、通気度16000cm3/cm2/minのプラスチックメッシュを介し余剰薬液を吸引し、取り除いた以外は、実施例1の方法と同様にして微細繊維状セルロース含有分散液を得た。
(実施例9)
パルプ原料を十分量のリンオキソ酸化剤Aに含浸させた後、通気度30cm3/cm2/minのプラスチックメッシュを介し余剰薬液を吸引し、取り除いた以外は、実施例1の方法と同様にして微細繊維状セルロース含有分散液を得た。
(実施例10)
パルプ原料を十分量のリンオキソ酸化剤Bに含浸させた後、通気度16000cm3/cm2/minのプラスチックメッシュを介し余剰薬液を吸引し、取り除いた以外は、実施例1の方法と同様にして微細繊維状セルロース含有分散液を得た。
(実施例11)
1流体のノズルでパルプ原料にリンオキソ酸化剤Aを噴霧した以外は、実施例1の方法と同様にして微細繊維状セルロース含有分散液を得た。
(実施例12)
2流体のノズルでパルプ原料にリンオキソ酸化剤Aを噴霧した以外は、実施例1の方法と同様にして微細繊維状セルロース含有分散液を得た。
(実施例13)
1流体のノズルでパルプ原料にリンオキソ酸化剤Bを噴霧した以外は、実施例1の方法と同様にして微細繊維状セルロース含有分散液を得た。
(比較例1)
パルプ原料を十分量のリンオキソ酸化剤Aに含浸させ、余剰薬液を取り除かなかった以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有分散液を得た。
(比較例2)
パルプ原料を十分量のリンオキソ酸化剤Bに含浸させ、余剰薬液を取り除かなかった以外は、実施例1と同様にして微細繊維状セルロース含有分散液を得た。
(誤差の算出)
パルプ原料に付与されるリン原子の質量の目標値と実際にパルプに付与されたリン原子の質量から以下の式を用いてリン原子の質量の誤差を算出した。
リン原子の質量の誤差(%)=(リン原子質量目標値−リン原子質量実測値)/リン原子質量目標値×100
ここで、リン原子質量目標値は、パルプ原料(絶乾質量)1gあたりに付与されるリン原子質量の目標値であり、リン原子質量実測値はパルプ原料(絶乾質量)1gあたりに付与されたリン原子質量である。
リン原子質量実測値は、以下のようにして算出した。まず、リンオキソ酸化剤添加後のパルプ重量(1)を測定し、次いで、リンオキソ酸化剤添加後のパルプを絞り、回収液のリン原子濃度(2)を測定した。さらに、絞ったパルプを水洗することでリンオキソ酸化剤を完全に洗い流し、乾燥させて絶乾重量(3)を測定した。上記の(1)の重量−(3)の重量は、パルプ中に含まれていた水分の重量と、リンオキソ酸化剤の重量の合計重量(4)とした。
リン原子質量実測値=合計重量(4)×回収液のリン原子濃度(2)/絶乾重量(3)
上記表からわかるように、実施例では、リンオキソ酸化工程におけるリンオキソ酸化速度が高かった。実施例のリンオキソ酸化速度は、同様のリンオキソ酸化剤を用いた比較例と比較して有意な差が見られた。

Claims (9)

  1. パルプ原料にリンオキソ酸化剤を添加する工程と、前記パルプ原料を微細化する工程とを含む、微細繊維状セルロースの製造方法であって、
    前記リンオキソ酸化剤を添加する工程は、下記(A)工程もしくは(B)工程である、微細繊維状セルロースの製造方法。
    (A)パルプ原料にリンオキソ酸化剤を含浸させた後に、パルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を除去する工程
    (B)パルプ原料にリンオキソ酸化剤を噴霧する工程
  2. 前記リンオキソ酸化剤を添加する工程は、前記(A)工程である、請求項1に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
  3. 前記リンオキソ酸化剤を添加する工程では、下記式で表されるリン原子の質量の誤差が、±15%以内となる、請求項1又は2に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
    リン原子の質量の誤差(%)=(リン原子質量目標値−リン原子質量実測値)/リン原子質量目標値×100
  4. 前記リンオキソ酸化剤は、リン酸化剤もしくは亜リン酸化剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
  5. 前記リンオキソ酸化剤を添加する工程は、前記(A)工程であり、
    前記(A)工程は、パルプ原料にリンオキソ酸化剤を含浸させた後に、パルプ原料を一対のロール状部材で挟むことで、パルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を除去する工程である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
  6. 前記リンオキソ酸化剤を添加する工程は、前記(A)工程であり、
    前記(A)工程は、パルプ原料にリンオキソ酸化剤を含浸させた後に、パルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を固液分離により除去する工程である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
  7. 前記固液分離により除去する工程は、目開き37〜5660μmのメッシュ状部材を介してパルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を吸引除去する工程である、請求項6に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
  8. 前記固液分離により除去する工程は、通気度30〜55000のメッシュ状部材を介してパルプ原料からリンオキソ酸化剤の一部を吸引除去する工程である、請求項6に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
  9. 前記リンオキソ酸化剤を添加する工程は、前記(B)工程であり、
    前記(B)工程では、1流体もしくは2流体ノズルを使用して、パルプ原料にリンオキソ酸化剤を噴霧する、請求項1に記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
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