本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
当該図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更したり、誇張したりして示している場合がある。本明細書等において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む範囲であることを意味する。本明細書等において、「フィルム」、「シート」、「板」等の用語は、呼称の相違に基づいて相互に区別されない。例えば、「板」は、「シート」、「フィルム」と一般に呼ばれ得るような部材をも含む概念である。
〔被加工基板〕
図1は、本実施形態に係る被加工基板の第1態様の概略構成を示す切断端面図であり、図2は、本実施形態に係る被加工基板の第2態様の概略構成を示す切断端面図であり、図3は、本実施形態に係る被加工基板の第3態様の概略構成を示す切断端面図である。
本実施形態に係る被加工基板1は、第1面2A及び当該第1面2Aに対向する第2面2Bを有する基部2と、基部2の第1面2Aに形成されている機能性膜3と、機能性膜3を被覆するようにして形成されている保護膜4とを備える。
本実施形態における被加工基板1は、少なくとも第1面2A側に供給されたインプリント樹脂に対し、凹凸パターンを有するインプリントモールドを用いたインプリント処理を行い、当該凹凸パターンに対応する転写パターンを形成するために使用されるベースとなる基板である。
当該被加工基板1は、基部2の第1面2Aや機能性膜3のエッチングにより凹凸構造が形成されるものであってもよいし、第1面2Aや機能性膜3がエッチングされずに当該機能性膜3が上記転写パターンの下地としての役割を果たすものであってもよい。
基部2の第1面2Aに対するエッチングにより当該第1面2Aに凹凸構造が形成される場合において、被転写基板1は、例えば、インプリントモールド20(図8参照)、マイクロレンズアレイ30等の光学部材(図11参照)を形成するためのマイクロレンズアレイ用モールド60(図12参照)、基部41から立設する複数の針部42を有する針状物部材40(図9参照)等を製造するための基板として用いられ得る。
機能性膜3に対するエッチングにより当該機能性膜3に凹凸構造が形成される場合において、被転写基板1は、例えば、ステッパ露光、コンタクト露光、プロキシミティ露光、プロジェクション露光等の光転写に用いられるフォトマスク50(図10参照)等を製造するための基板として用いられ得る。
機能性膜3が転写パターンの下地としての役割を果たす場合において、被転写基板1は、例えば、樹脂製のレンズ層33を有するマイクロレンズアレイ30(図11参照)、交換可能な樹脂製の凹凸パターン層73を有する再生可能インプリントモールド70(図14参照)等を製造するために用いられ得る。
基部2としては、例えば、石英ガラス基板、ソーダガラス基板、蛍石基板、フッ化カルシウム基板、フッ化マグネシウム基板、バリウムホウケイ酸ガラス、アミノホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス等の無アルカリガラス基板等のガラス基板、ポリカーボネート基板、ポリプロピレン基板、ポリエチレン基板、ポリメチルメタクリレート基板、ポリエチレンテレフタレート基板等の樹脂基板、少なくとも一部分に金属がドープされた上記基板、これらのうちから任意に選択された2以上の基板を積層してなる積層基板等の透明基板;ステンレス基板、チタン基板、ニッケル基板、ニオブ合金基板、タンタル基板、ジルコニウム基板、コバルト基板、クロム基板、モリブデン基板、タングステン基板、アルミニウム基板等の金属基板;シリコン基板、窒化ガリウム基板等の半導体基板等を用いることができる。なお、本実施形態において「透明」とは、被加工基板1から作製され得る物品の用途に応じた所定の波長の光を透過可能であることを意味する。例えば、被加工基板1がインプリントモールド20(図8参照)を製造するための透明基板である場合(図2,3参照)、「透明」とは、波長150nm〜400nmの光線の透過率が60%以上であることを意味し、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
基部2の平面視形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、略円形状、略矩形状等が挙げられる。例えば、被加工基板1がインプリントモールド20(図8参照)を製造するための基板であって(図2,3参照)、基部2が光インプリント用として一般的に用いられている石英ガラス基板からなるものである場合、通常、基部2の平面視形状は略矩形状である。
基部2の大きさ(平面視における大きさ)も特に限定されるものではないが、基部2が上記石英ガラス基板からなる場合、例えば、基部2の大きさは152mm×152mm程度である。基部2の厚さは、被加工基板1から製造され得る物品の用途、それに応じた強度、取り扱い適性等を考慮して適宜設定され得るものであるが、例えば、300μm〜10mm程度の範囲であればよい。
機能性膜3は、酸化され得る材料により構成される膜であって、被加工基板1の用途(被加工基板1を用いて製造される物品)に応じて所定の機能を発揮し得る膜である。ここで「酸化」とは、大気中(酸素の存在する雰囲気中)に放置することによって酸化物が形成される(酸素が結合する)こと(自然酸化)のみならず、自然酸化されにくいものの酸化剤等によって強制的に酸化物が形成される(酸素が結合する)ことをも意味し、当該酸化には、機能性膜3の表面に酸化物を堆積させて酸化膜を形成することは含まれない。
被加工基板1がインプリントモールド20(図8参照)、マイクロレンズアレイ用モールド(図12参照)、針状物部材40(図9参照)等を製造するために用いられる基板、すなわち最終的に第1面2Aがエッチングされる基板である場合、機能性膜3としては、基部2の第1面2Aをエッチングするためのマスクとして機能し得るハードマスク層等であればよい。
被加工基板1がフォトマスク50(図10参照)等を製造するために用いられる基板、すなわち最終的に機能性膜3がエッチングされる基板である場合、機能性膜3としては、フォトマスク50の遮光部52Aを構成する遮光膜や位相シフト膜等であればよい。
被加工基板1が、基部71(2)の第1面71A(2A)側に設けられてなるインプリント樹脂からなる凹凸パターン層73を剥離し、新たな凹凸パターン層を形成することで再生可能なインプリントモールド70(図14参照)を製造するために用いられる基板である場合、機能性膜3としては、凹凸パターン層73を容易に剥離可能とするための剥離層72等であればよい。
被加工基板1が、保護膜4が剥離されて露出した機能性膜3上にインプリントモールド10(図5(A)〜(D)参照)を用いたインプリント処理により凹凸パターン13を転写して転写パターンを形成するために用いられる基板である場合、機能性膜3としては、導電性膜であってもよい。インプリントモールド10のパターン形成面に形成されている凹凸パターン13に粗密がある場合、パターン密度の大きい領域(凹凸パターン13が密に存在する領域)は、パターン密度の小さい領域(凹凸パターン13が粗である領域)に比して帯電し易く、その結果として転写パターンに欠陥を生じさせやすい。被加工基板1が、機能性膜3として導電膜を有することで、転写パターンを介して導電性膜に向かって放電することができ、転写パターンに欠陥を生じさせにくくすることができる。
被加工基板1が、マイクロレンズアレイ30(図11参照)等の光学部材を製造するために用いられる基板である場合、機能性膜3としては、反射防止膜、反射膜、拡散膜、接着層等であってもよい。
機能性膜3を構成する材料は、機能性膜3が発揮する機能等に応じて適宜設定され得るものであり、自然酸化され得る材料である限りにおいて特に制限されない。機能性膜3が上記ハードマスク層である場合、機能性膜3を構成する材料としては、例えば、クロム、チタン、タンタル、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム等の金属、珪素、ゲルマニウム等の半金属、及びこれらの金属又は半金属を含むもの(例えば、上記金属の酸化物、窒化物、ケイ化物等;上記半金属の酸化物、窒化物等;上記金属を含む合金等)が挙げられる。
機能性膜3が上記遮光膜である場合、機能性膜3を構成する材料としては、例えば、クロム、タングステン、モリブデン、タンタル、アルミニウム、ニッケル、チタン、すず、亜鉛等の金属、珪素、ゲルマニウム等の半金属、及びこれらの金属又は半金属を含むもの(例えば、上記金属の酸化物、窒化物、ケイ化物等;上記半金属の酸化物、窒化物等;上記金属を含む合金等)等が挙げられる。
機能性膜3が上記剥離層である場合、機能性膜3を構成する材料としては、例えば、基部2を構成する材料よりも熱膨張率の大きい又はガラス転移点の異なる樹脂材料(例えば、エポキシ系、アクリル系等)等が挙げられる。
機能性膜3が上記導電性膜である場合、機能性膜3を構成する材料としては、例えば、クロム、タングステン、モリブデン、タンタル、すず、亜鉛、アルミニウム、銅、銀、白金、金等の金属、珪素等の半金属、及びこれらの金属又は半金属を含むもの(例えば、上記金属の酸化物、窒化物、ケイ化物等;上記半金属の酸化物、窒化物等;上記金属を含む合金等)等が挙げられる。
機能性膜3が上記反射防止膜としての光吸収膜である場合、機能性膜3を構成する材料としては、例えば、紫外線を吸収する作用を有する二酸化ジルコニウム、酸化セリウム等の無機材料、トリアジン化合物、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の有機材料のうちの1種、又はこれらの2種以上の組み合わせからなるもの、酸化亜鉛、酸化チタン等の微粒子をバインダ樹脂中に含有させたもの等が挙げられる。
機能性膜3が上記反射防止膜としての低反射膜である場合、機能性膜3としては、例えば、基部2を構成する材料よりも屈折率の小さい材料により構成される膜、低屈折率薄膜と高屈折率薄膜とを交互に少なくとも1層ずつ積層してなる積層膜であって、膜厚を被吸収光の1/4波長の倍数としたもの等が挙げられる。このような積層膜としては、例えば、フッ化マグネシウム(低屈折率(1.38)薄膜)と酸化ケイ素(高屈折率(1.52)薄膜)との組み合わせ、酸化アルミニウム(低屈折率(1.65)薄膜)と酸化チタン(高屈折率(2.25)薄膜)との組み合わせ等を挙げることができる。
機能性膜3が上記反射膜である場合、機能性膜3を構成する材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、銀、クロム、白金等の金属、これらの金属の合金、酸化物、窒化物等、上記材料のうちから選択される2種以上の屈折率の異なる材料の薄膜が積層されてなる多層薄膜等が挙げられる。このような多層薄膜においては、例えば、酸化ケイ素のように照射光を透過する材料が含まれていてもよい。
機能性膜3の膜厚は、被加工基板1の用途(被加工基板1を用いて製造される物品の種類)等に応じて適宜設定され得るものであって、特に限定されるものではない。機能性膜3が上記ハードマスク層である場合、基部2を構成する材料と機能性膜3を構成する材料とのエッチング選択比等に応じて適宜設定されればよく、例えば、基部2が石英ガラス基板であって、機能性膜3がハードマスク層としてのクロムを含む金属膜である場合、機能性膜3の膜厚は、0.5nm〜200nm程度に設定され得る。
保護膜4は、機能性膜3を保護可能な膜である。ここで、「機能性膜3を保護する」とは、機能性膜3の組成、特に機能性膜3の表面の組成を化学的に変化させない(機能性膜3の表面において化学的に反応させない)ことを意味し、例えば、機能性膜3の酸化(機能性膜3の表面に酸素が結合すること)を防止すること等が挙げられる。
保護膜4は、容易に剥離可能な材料により構成されているのが好ましく、被加工基板1に対するインプリント処理の前処理として洗浄処理が施される場合において、当該洗浄処理により剥離可能な材料であるのがより好ましい。後述するように、本実施形態に係る被加工基板1を用いたインプリント方法において、保護膜4を剥離除去し、露出した機能性膜3上に供給されたインプリント樹脂6にインプリントモールド10を接触させて転写パターン7を形成し得る(図5,6参照)。そのため、保護膜4が容易に剥離可能であることで、インプリント方法を容易に実施することができる。
保護膜4を構成する材料としては、例えば、ポジ型又はネガ型の有機レジスト材料(例えば、アクリル系、エポキシ系、ノボラック系等);ポリアニリンスルホン酸等の導電性ポリマーからなる帯電防止剤(例えば、AquaSAVE(三菱ケミカル社製)等);潤滑油等のオイル材料等が挙げられる。また、保護膜4の構成材料として、上記有機レジスト材料等に酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等)や酸化防止機能を有する材料(例えば、アモルファス炭素構造を含む粒子(例えばナノダイヤモンド等)等)を含有させてなるもの等を用いてもよい。
保護膜4の膜厚は、機能性膜3を保護可能な程度の厚さである限りにおいて特に制限されるものではない。保護膜4がレジスト材料である場合、保護膜4の膜厚は、例えば、0.5nm〜100nm程度であればよい。
保護膜4の表面(機能性膜3上における表面)は、平坦性を有しているのが好ましい。例えば、保護膜4上にインプリント処理がなされる等、保護膜4を剥離することなく被加工基板1が利用される場合、保護膜4の表面が平坦性を有していることで、当該保護膜4を平坦化膜として利用することができる。
本実施形態に係る被加工基板1は、第1面2Aから突出する凸構造部5を有する基部2を備えていてもよい(図2、図3参照)。この場合において、機能性膜3は、例えば、凸構造部5の上面に設けられていればよく、保護膜4は、凸構造部5の上面に設けられた機能性膜3を被覆するように設けられていてもよいし(図2参照)、機能性膜3及び第1面2Aの全面を被覆するようにして設けられていてもよいし(図3参照)、基部2の側面の少なくとも一部や、側面と第2面B側とをさらに被覆するように設けられていてもよい(図示せず)。図2及び図3に示す構成を有する被加工基板1は、凸構造部5の上面に凹凸パターン22が形成されてなるインプリントモールド20(図8参照)を製造するための基板として好適に用いられ得る。
基部2の第1面2Aから突出する凸構造部5は、平面視において基部2の略中央に設けられていればよい。凸構造部5の平面視における形状は、略矩形状である。凸構造部5の大きさは、被加工基板1を用いて製造されるインプリントモールド20において要求される大きさであればよく、例えば、30mm×25mm程度に設定される。
凸構造部5の突出高さ(基部2の第1面2Aと凸構造部5の上面との間の基部2厚み方向に沿った長さ)は、本実施形態に係る被加工基板1が凸構造部5を備える目的を果たし得る限り、特に制限されるものではなく、例えば、10μm〜100μm程度に設定され得る。凸構造部5の上面には、凹凸パターン22(図8参照)が形成される予定のパターン領域が設定されている。
基部2の第2面2Bには、所定の大きさの窪み部(図示省略)が形成されていてもよい。窪み部が形成されていることで、本実施形態に係る被加工基板1から作製されるインプリントモールド20(図8参照)を用いたインプリント処理時、特にインプリント樹脂との接触時やインプリントモールドの剥離時に、基部2の第2面2Bが吸着チャック等で保持された状態で窪み部に圧力を印加することにより、窪み部により形成された基部2における厚みの薄い部分(薄板部)のみを湾曲させることができる。その結果、凸構造部5の上面とインプリント樹脂とを接触させるときに、凸構造部5の上面に形成されている凹凸パターン22とインプリント樹脂との間に気体が挟みこまれてしまうのを抑制することができ、また、インプリント樹脂に凹凸パターン22が転写されてなる転写パターンからインプリントモールド20を容易に剥離することができる。
窪み部の平面視形状は、略円形状であるのが好ましい。略円形状であることで、インプリント処理時、特に凸構造部5の上面とインプリント樹脂とを接触させるときやインプリント樹脂からインプリントモールド20を剥離するときに、インプリントモールド20の薄板部や、凸構造部5の上面を、その面内において実質的に均一に湾曲させることができる。
窪み部の平面視における大きさは、窪み部を基部2の第1面2A側に投影した投影領域内に、凸構造部5が包摂される程度の大きさである限り、特に制限されるものではない。当該投影領域が凸構造部5を包摂不可能な大きさであると、インプリントモールド20の凸構造部5の上面の全面を効果的に湾曲させることができないおそれがある。
〔被加工基板の製造方法〕
上述した構成を有する被加工基板1を製造する方法について説明する。図4は、本実施形態に係る被加工基板の製造方法の各工程を切断端面にて示す工程フロー図である。
まず、第1面2A及びそれに対向する第2面2Bを有する基部2を準備し(図4(A)参照)、当該基部2の第1面2A上に機能性膜3を形成する(図4(B)参照)。機能性膜3を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、機能性膜3を構成する材料に応じた成膜方法であるスパッタリング、CVD、PVD等が挙げられる。
次に、基部2の機能性膜3を被覆するようにして保護膜4を形成する(図4(C)参照)。保護膜4を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、スピンコート法、ダイコート法、ディップコーティング法、気相成膜法等を用いて保護膜4の構成材料の塗膜を形成し、当該塗膜を硬化させる方法等が挙げられる。なお、保護膜4は、当該保護膜4の構成材料を含むフィルムを機能性膜3上に貼付することにより形成されてもよい。このようにして被加工基板1が製造され得る。
〔インプリント方法〕
本実施形態に係る被加工基板1を用いたインプリント方法について説明する。図5は、本実施形態におけるインプリント方法の各工程を切断端面にて示す工程フロー図である。
まず、本実施形態に係る被加工基板1と、被加工基板1の基部2の第1面2A側に形成する転写パターン7(図5(D)参照)に対応する凹凸構造13を有するインプリントモールド10とを準備する(図5(A)参照)。
本実施形態において、インプリントモールド10は、第1面11A及び当該第1面11Aに対向する第2面11Bを有する基部11と、基部11の第1面11Aから突出する凸構造部12と、凸構造部12の上面に形成されている凹凸構造13と、基部11の第2面11Bに形成されている窪み部14とを備える(図5(A)参照)。なお、凸構造部12及び窪み部14は、設けられていなくてもよい。
基部11としては、インプリントモールド用基板として一般的なもの、例えば、石英ガラス基板、ソーダガラス基板、蛍石基板、フッ化カルシウム基板、フッ化マグネシウム基板、バリウムホウケイ酸ガラス、アミノホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス等の無アルカリガラス基板等のガラス基板、ポリカーボネート基板、ポリプロピレン基板、ポリエチレン基板、ポリメチルメタクリレート基板、ポリエチレンテレフタレート基板等の樹脂基板、少なくとも一部分に金属がドープされた上記基板、これらのうちから任意に選択された2以上の基板を積層してなる積層基板等の透明基板等であればよい。
基部11の平面視形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、略矩形状等が挙げられる。基部11が光インプリント用として一般的に用いられている石英ガラス基板からなるものである場合、通常、基部11の平面視形状は略矩形状である。
基部11の大きさ(平面視における大きさ)も特に限定されるものではないが、基部11が上記石英ガラス基板からなる場合、例えば、基部11の大きさは152mm×152mm程度である。また、基部11の厚さは、強度、取り扱い適性等を考慮し、例えば、300μm〜10mm程度の範囲で適宜設定され得る。
凸構造部12は、平面視において基部2の略中央に設けられていればよい。凸構造部12の平面視における形状は、略矩形状である。凸構造部12の大きさは、被加工基板1を用いて製造される製品等において要求される大きさであればよく、例えば、30mm×25mm程度に設定される。
凸構造部12の突出高さ(基部11の第1面11Aと凸構造部12の上面との間の基部11厚み方向に沿った長さ)は、特に制限されるものではなく、例えば、10μm〜100μm程度に設定され得る。凸構造部12の上面には、パターン領域が設定され、パターン領域内に凹凸構造13が形成されている。
凹凸構造13の形状、寸法等は、本実施形態におけるインプリントモールド10を用いた被加工基板1に対するインプリント処理により製造される製品等にて要求される形状、寸法等に応じて適宜設定され得る。例えば、凹凸構造13の形状としては、ラインアンドスペース状、ピラー状、ホール状、格子状等が挙げられる。また、凹凸構造13の寸法は、例えば、10nm〜200nm程度、好適には10nm〜100nm程度に設定され得る。凹凸構造13のアスペクト比(寸法に対する高さの比)は、例えば、0.5〜6程度、好適には1〜3程度に設定され得る。パターン形成面内において、凹凸構造13のパターン密度(凹凸構造13の部分とそれ以外の部分との平面視における面積割合)は略均一であってもよいし、分布(パターン密度の大きい部分及び小さい部分)を有していてもよい。凹凸構造13の寸法が微細になったり(例えば、30nm以下程度)、アスペクト比が大きくなったり(例えば、1.5以上程度)すると、一般に、離型にかかる応力が大きくなる傾向にある。また、パターン密度が分布を有していると、その分布の境界において、一般に、離型にかかる応力が大きく変化する。本実施形態においては、被転写基板1の機能性膜3の酸化が防止されていることで、インプリント樹脂6に含まれる離型剤がインプリントモールド10の表面に対する親和性を発揮し、当該表面との界面に十分に行き渡る。そのため、本実施形態によれば、離型にかかる応力が相対的に小さくなり、パターン形成面内における離型にかかる応力の変化量も相対的に小さくなり、転写パターンに欠陥が発生するのを防止することができる。
基部11の第2面11Bには、所定の大きさの窪み部14が形成されている。窪み部14が形成されていることで、インプリント処理時、特にインプリント樹脂との接触時やインプリントモールド10の離型時に、基部11の第2面11Bが吸着チャック等で保持された状態で窪み部14に圧力を印加して、窪み部14上の基部11における厚みの薄い部分(薄板部)のみを湾曲させることができる。その結果、凸構造部12の上面とインプリント樹脂6とを接触させるときに、凸構造部12の上面に形成されている凹凸構造13とインプリント樹脂6との間に気体が挟みこまれてしまうのを抑制することができ、また、インプリント樹脂6に凹凸構造13が転写されてなる転写パターンからインプリントモールド10を容易に離型することができる。
窪み部14の平面視形状は、略円形状であるのが好ましい。略円形状であることで、インプリント処理時、特に凸構造部12の上面とインプリント樹脂6とを接触させるときやインプリント樹脂からインプリントモールド10を剥離するときに、インプリントモールド10の薄板部や、凸構造部12の上面を、その面内において実質的に均一に湾曲させることができる。
窪み部14の平面視における大きさは、窪み部14を基部11の第1面11A側に投影した投影領域内に、凸構造部12が包摂される程度の大きさである限り、特に制限されるものではない。当該投影領域が凸構造部12を包摂不可能な大きさであると、インプリントモールド10の凸構造部12の上面の全面を効果的に湾曲させることができないおそれがある。
次に、被加工基板1の基部2の第1面2A側にインプリント樹脂6の液滴を滴下(供給)する(図5(B)、図6、図7参照)。インプリント樹脂6は、被加工基板1から保護膜4を剥離除去して露出した機能性膜3上に供給されてもよいし(図5(B)参照)、被加工基板1の保護膜4上に供給されてもよいし(図6参照)、被加工基板1の保護膜4を剥離除去して露出した機能性膜3上又は保護膜4上に、機能性膜3とは別個の機能性膜8(例えば、ハードマスク層、平坦化層、密着層等)を形成し、当該機能性膜8上に供給されてもよい(図7(A)、図7(B)参照)。被加工基板1から保護膜4を剥離除去する方法としては、特に限定されるものではなく、保護膜4を構成する材料に応じた剥離除去方法であればよい。例えば、保護膜4を構成する材料がレジスト材料である場合、当該レジスト材料を溶解除去可能なレジスト剥離液を用いる方法であってもよいし、保護膜4をエッチングして除去する方法であってもよい。保護膜4上に機能性膜8を形成する方法としては(図7参照)、例えば、機能性膜8を構成する材料のスパッタリング、CVD、PVD等が挙げられる。保護膜4を剥離除去して露出した機能性膜3上にインプリント樹脂6を供給する場合(図5(B)参照)や、機能性膜3又は保護膜4上に形成された機能性膜8上にインプリント樹脂6を供給する場合(図7(A)、図7(B)参照)には、機能性膜3,8が酸化されないように、速やかにインプリント樹脂6を供給することで、機能性膜3が酸化されることなくインプリント処理を進行させることができる。また、保護膜4上にインプリント樹脂6を供給することで(図6参照)、機能性膜3が酸化されることなくインプリント処理を進行させることができる。なお、保護膜4上にインプリント樹脂6を供給する場合には、保護膜4がインプリント樹脂6との密着性をより向上させる機能を有するのが好ましい。
本実施形態におけるインプリント方法にて、使用されるインプリント樹脂6は、離型剤を含有する。インプリント樹脂6に含まれる離型剤としては、例えば、フッ素アルキル末端の疎水部分と極性基を有する親水性部分とから構成されるもの等が挙げられる。
続いて、被加工基板1の基部2の第1面2A側に供給されたインプリント樹脂6の液滴にインプリントモールド10の凹凸構造12を接触させることで、インプリント樹脂6をインプリントモールド10と被加工基板1との間に濡れ広がらせながら凹凸構造13に充填させ、その状態でインプリント樹脂6を硬化させる(図5(C)参照)。インプリント樹脂6を硬化させる方法は、インプリント樹脂6の硬化タイプに応じて適宜選択され得る。
最後に、硬化したインプリント樹脂6からインプリントモールド10を引き離すことで、転写パターン7を形成する(図5(D)参照)。本実施形態において、インプリント樹脂6に離型剤が含まれているが、機能性膜3の酸化が防止されていることで、インプリント樹脂6に含まれる離型剤の機能性膜3の表面に対する親和性が抑制され、インプリントモールド10の表面に対する親和性が発揮される。その結果、インプリントモールド10の表面との界面に十分に行き渡るため、離型にかかる応力が小さくなり、転写パターンに欠陥が発生するのを防止することができる。
〔被加工基板から製造される製品〕
図8は、本実施形態に係る被加工基板1から製造されるインプリントモールドの概略構成を示す切断端面図である。本実施形態におけるインプリントモールド20は、凸構造部5を有する被加工基板1(図2及び図3参照)における当該凸構造部5の上面に形成されてなる凹凸パターン22を有する(図8参照)。
凹凸パターン22の形状、寸法等は、本実施形態におけるインプリントモールド22を用いて製造される製品等にて要求される形状、寸法等に応じて適宜設定され得る。例えば、凹凸パターン22の形状としては、ラインアンドスペース状、ピラー状、ホール状、格子状等が挙げられる。また、凹凸パターン22の寸法は、例えば、10nm〜200nm程度に設定され得る。
本実施形態におけるインプリントモールド20は、本実施形態に係る被加工基板1の機能性膜3としてのハードマスク層のエッチングにより形成されたハードマスクパターンをマスクとして凸構造部5にエッチング処理を施し、凹凸パターン22を形成することで作製され得る。なお、本実施形態におけるインプリントモールド20は、凸構造部5を有しない被加工基板1(図1参照)から製造されるものであってもよく、その場合においては、当然に凸構造部5を有さず、基部2の第1面2Aに凹凸パターン22が形成されている。
図9は、本実施形態に係る被加工基板1から製造される針状物部材40の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。本実施形態における針状物部材40は、第1面41A及び当該第1面41Aに対向する第2面41Bを有する平板状の基部41と、基部41の面内方向に沿って一体的に突出形成されてなる複数の針部42とを備える。なお、「一体的に突出形成された」とは、基部41と針部42とが同一材質により構成されており、かつ基部41と針部42とが一度も分離された状態で存在したことがない状態、すなわち一枚の被加工基板1に対するエッチングにより基部41及び針部42が一体に作製されたことを意味する。
本実施形態における針状物部材40は、本実施形態に係る被加工基板1の機能性膜3としてのハードマスク層をパターニングして形成したハードマスク層をマスクとし、例えば、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、コバルト合金、クロム合金、モリブデン合金、タングステン合金等の金属により構成される基部2にエッチング処理を施すことで作製され得る。
図10は、本実施形態に係る被加工基板1から製造されるフォトマスクの概略構成を示す切断端面図である。本実施形態におけるフォトマスク50は、第1面51A及び第1面51Aに対向する第2面51Bを有する基部51と、基部51の第1面51A上に形成されている遮光部52A及び開口部52Bを有する遮光パターン52とを備える。
本実施形態におけるフォトマスク50は、本実施形態に係る被加工基板1の機能性膜3としての遮光層にエッチング処理を施し、遮光部52A及び開口部52Bを有する遮光パターン52を形成することで作製され得る。
図11は、本実施形態に係る被加工基板1から製造されるマイクロレンズアレイであり、図12は、本実施形態に係る被加工基板1から製造される、図11に示すマイクロレンズアレイを製造するために用いられるモールドである。
図11に示すように、本実施形態におけるマイクロレンズアレイ30は、第1面31A及び第1面31Aに対向する第2面31Bを有する基部31と、基部31の第1面31A上に設けられてなる機能層32と、機能層32上に設けられてなる樹脂製のレンズ層33とを有する。レンズ層33は、行列状(基部31の第1面31Aの面内における一方向及びそれに直交する方向)に並列する複数の凸部331を有する。
各凸部331は、基部31の厚み方向上方に向けて湾曲する表面34を有し、この表面34は、例えば当該厚み方向下方側から入射した光を、集光、拡散、反射及び/又は回折させる役割を果たす。機能層32は、マイクロレンズアレイ30の用途等に応じて、例えば、反射防止膜、反射膜、拡散膜等であってもよいし、レンズ層33を基部31の第1面31Aに接着させるための接着層等であってもよい。
本実施形態におけるマイクロレンズアレイ30は、本実施形態に係る被加工基板1の機能性膜3としての反射防止膜、反射膜、拡散膜、接着層等の上にインプリント樹脂を供給し、レンズ層33の各凸部331に対応する凹凸パターン62を有するマイクロレンズアレイ用モールド60を用いたインプリント処理により、当該レンズ層33を形成することで作製され得る。
本実施形態におけるマイクロレンズアレイ用モールド60は、第1面61A及び第1面61Aに対向する第2面61Bを有する基部61と、基部61の第1面61Aに形成されている凹凸パターン62とを有する(図12参照)。凹凸パターン62は、マイクロレンズアレイ30のレンズ層33の各凸部331に対応する凹レンズ形状を有している。
本実施形態におけるマイクロレンズアレイ用モールド60は、本実施形態に係る被加工基板1における機能性膜3としてのハードマスク層上にレジストパターン81を形成し(図13(A)参照)、当該レジストパターン81をマスクとしてドライエッチングしてハードマスクパターン82を形成し(図13(B)参照)、ハードマスクパターン82をマスクとして基部2にウェットエッチング処理を施し(図13(C)参照)、凹凸パターン62を形成することで作製され得る。
レジストパターン81は、当該レジストパターン81に対応する凹凸構造を有するインプリントモールドを用いたインプリント処理により形成されてもよいし、電子線リソグラフィ等により形成されてもよい。レジストパターン81が電子線リソグラフィにより形成される場合、レジストパターン81を構成するレジスト材料として、通常、化学増幅型レジストが用いられる。機能性膜3としてのハードマスク層が酸化され、その表面に酸素が存在すると、化学増幅型レジストとハードマスク層との接触部位において酸失活(酸触媒の失活)が生じ、レジストプロファイル(レジストパターンの断面形状)が悪化してしまう。レジストプロファイルの悪化したレジストパターンをマスクとしてハードマスク層のドライエッチングを行うと、ハードマスクパターンの形状が劣化し、その結果、マイクロレンズアレイ用モールドの凹凸パターンの形状にバラツキが生じてしまう。本実施形態に係る被加工基板1を用いることで、機能性膜3としてのハードマスク層の酸化が防止されているため、化学増幅型レジストにおける酸失活が生じるのを防止することができ、実質的に均一な形状の凹凸パターン62を有するマイクロレンズアレイ用モールド60を製造することができる。
図14は、本実施形態に係る被加工基板1から製造されるインプリントモールドの概略構成を示す切断端面図である。本実施形態におけるインプリントモールド70は、第1面71A及び当該第1面71Aに対向する第2面71Bを有する基部71と、基部71の第1面71A上に設けられてなる剥離層72と、剥離層72上に設けられてなる樹脂製の凹凸パターン層73とを有する(図14参照)。
本実施形態におけるインプリントモールド70において、凹凸パターン層73に欠損等が生じた場合、剥離層72を介して設けられている凹凸パターン層73を剥離し、露出した剥離層72上に新たな凹凸パターン層を形成することで、インプリントモールド70を再生することができる。
本実施形態におけるインプリントモールド70は、本実施形態に係る被加工基板1の機能性膜3としての剥離層上にインプリント樹脂を供給し、凹凸パターン層73に対応する凹凸パターンを有するインプリントモールドを用いたインプリント処理により凹凸パターン層73を形成することで作製され得る。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。