JP2020166122A - 騒音低減構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】周辺を含む環境全体の騒音を低減することが可能となる騒音低減構造を提供する。【解決手段】本発明に係る騒音低減構造100は、スリット状開口部50を有する共鳴器10と、吸音材150と、を含む騒音低減構造100であって、前記吸音材150が前記共鳴器10より音源側に配されることを特徴とする。【選択図】 図2

Description

本発明は、受音側における騒音低減と共に、音源周辺の環境に対する配慮もなされた騒音低減構造を提供する。
これまで発明者は、長尺状スリット共鳴器を用いて建物に設けた換気用開口からの騒音伝搬を低減する方法について、例えば、特許文献1(特開2017−101530号公報)において、建物の換気用開口部からの騒音を低減する騒音低減構造として、前記換気用開口部が設けられている内装壁に、スリット状開口部を有する共鳴器を対向するように対で配することを提案した。
特開2017−101530号公報
特許文献1記載の共鳴器を用いた騒音低減法においては、スリットを有する共鳴器の断面形状によって定まる共鳴周波数に近い周波数において大きな騒音低減効果が得られるが、一方で、騒音低減効果が得られる周波数範囲が狭く、共鳴周波数から離れた周波数では殆ど効果が得られないという課題がある。このような課題は、例えば道路騒音のような幅広い周波数範囲に成分を持つ騒音を低減しようとした場合に特に顕著になる。
特許文献1記載の発明では、このような課題を解決するために、図10に関連して、スリット共鳴器と共に吸音材を組み込んだ実施形態を提案している。吸音材としてはグラスウールやポリエステル吸音材等の多孔質性吸音材が用いられることが多いが、一般に多孔質性吸音材は高周波数域で大きな吸音効果を発揮する。
そこで、スリット共鳴器を共鳴周波数が吸音材の効果の得にくい低周波数になるように設計することで、両者の補完により幅広い周波数帯域に対する騒音低減効果が期待できる。しかしながら、スリット共鳴器と吸音材を併用する場合、それらの位置関係をどのように設定すれば効果的かという指針はこれまでに示されておらず、問題であった。
この発明は、上記のような課題を解決するものであって、本発明に係る騒音低減構造は、スリット状開口部を有する共鳴器と、吸音材と、を含む騒音低減構造であって、前記吸音材が前記共鳴器より音源側に配されることを特徴とする。
また、本発明に係る騒音低減構造は、前記共鳴器が、スリット状開口部が対向するように対で配されることを特徴とする。
また、本発明に係る騒音低減構造は、前記共鳴器を複数隣接させる場合、全ての前記共鳴器より音源側に前記吸音材が配されることを特徴とする。
また、本発明に係る騒音低減構造は、前記共鳴器が、空気層を有することを特徴とする。
また、本発明に係る騒音低減構造は、前記共鳴器が、空気層を有さないことを特徴とする。
本発明に係る騒音低減構造は、吸音材が共鳴器より音源側に配されており、このような本発明に係る騒音低減構造によれば、吸音材が共鳴器より受音側に配される場合に比べて、騒音低減構造から再放射される騒音を低減することができ、周辺を含む環境全体の騒音を低減することが可能となる。
本発明の実施形態に係る騒音低減構造100に用いる共鳴器10を説明する図である。 本発明の実施形態に係る騒音低減構造100をルーバー1に適用した場合を説明する図である。 (A)吸音材150が共鳴器10より音源側に配置された構造(本発明)を示す図であり、(B)吸音材150が共鳴器10より受音側に配置された構造(比較例)を示す図である。 2次元境界要素法による解析対象の寸法を示す図である。 解析により求めた仮想面2を受音側に通過する音響エネルギを示す図である。 解析により求めた吸音材に吸収される騒音のエネルギを示す図である。 解析により求めた仮想面1を受音側に通過する音響エネルギを示す図である。 本発明の他の実施形態に係る騒音低減構造100を説明する図である。 本発明の他の実施形態に係る騒音低減構造100を説明する図である。 本発明の他の実施形態に係る騒音低減構造100を説明する図である。 本発明の他の実施形態に係る騒音低減構造100を説明する図である。 本発明に係る騒音低減構造100を扉200に適用した場合を説明する図である。 本発明に係る騒音低減構造100をダブルスキン300に適用した場合を説明する図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本発明に係る騒音低減構造100では、図1に示すような背後に密閉された空洞を持つ、スリット構造によって共鳴現象が生じる共鳴器10を利用する。図1(A)はそのような共鳴器10の斜視図である。また、図1(B)は、図1(A)の共鳴器10のスリット状開口部50の長手方向を垂直で切って見た断面図である。
図1に示すように、本発明に係る騒音低減構造100に用いる共鳴器10は、基本的に、内側の空間が中空である四角柱状の筐体40から構成されている。共鳴器10を構成する筐体40の一面には、長手状のスリット状開口部50と、このスリット状開口部50の両側に配され、共鳴器10の内側の空間に延在する隔壁部60と、を有することを特徴としている。対向する2つの隔壁部60は同様の寸法を有している。ここで、共鳴現象が生じる共鳴器10の各寸法は図1に示す記号で表す。なお、スリット状開口部50が構成されている筐体40の一面と、隔壁部60の主面とは互いに直交している。
共鳴器10の各寸法が波長に対して十分に小さい場合、スリット状開口部50における音響インピーダンス比Zは次式(1)で求めることができる。
Figure 2020166122
ただし、fは騒音の周波数、cは音速、ρは媒質(空気)密度を表す。また、Vnは、スリット状開口部50と隔壁部60とで囲まれた、図1(B)の斜線部以外の空間の体積(対向する隔壁部60の間の空間の体積)で、開口端補正を考慮して次式(2)で計算される。なお、式(2)における[ ]内の第2項が、開口端補正に関連する項である。また、図1(B)で斜線部の空間は、共鳴現象が生じる共鳴器10の空気層に相当する。
Figure 2020166122
また、Vは共鳴器10の空洞部の体積(空気層の体積)で、次式(3)で計算される。
Figure 2020166122
また、Sは、スリット状開口部50(スリット開口)の面積で、次式(4)で計算される。
Figure 2020166122
式(1)の右辺第1項のrは、共鳴現象が生じる共鳴器10の隔壁部60表面と空気の間に生じる摩擦などの音響抵抗である。隔壁部60を金属など表面が平滑な材料で構成する場合、音響抵抗rは極めて小さな値となり、次式を満足する共鳴周波数fにおいてスリット状開口部50の開口における音響インピーダンス比Zがほぼ0となる。
Figure 2020166122
このような共鳴現象を生じさせる共鳴器として機能する、2つの共鳴器10を、図2に示すように、例えば、ルーバー羽根部材3の上下の面に沿って対向配置すると、上記の周波数fにおいては対向するスリット部が音響的に“ソフト”な状態となり、音源側から伝搬してきた周波数fの騒音は音源側へ反射され受音側に伝搬しない。
図2は本発明の実施形態に係る騒音低減構造100をルーバー1に適用した場合を説明する図である。図2は騒音低減構造100を、騒音低減構造100の長手方向(或いは、スリット状開口部50の長手方向)を垂直に切って見た断面図である。ルーバー1は複数のルーバー羽根部材3からなり、ルーバー羽根部材3の間の空間が通気路(通気経路)として機能する。
なお、本実施形態においては、本発明に係る騒音低減構造100をルーバー1に適用する例で説明を行うが、音源側と受音側との間に通気路(通気経路)が存在し、かつ、音源側から受音側へ伝搬する騒音を低減したい、というニーズがあるような例において本発明は適用可能である。
図2に示すルーバー1においては、通気路(通気経路)を挟んで対向する一対の共鳴器10が設けられると共に、共鳴器10より音源側に吸音材150が配置されている。
図2に示すような本発明に係る騒音低減構造100を有するルーバー1によれば、共鳴器10の共鳴周波数において、対向した共鳴器10のスリット状開口部50における音響インピーダンス比がほぼ0となり、室外などの音源側(上流側)から入射した騒音は音源側へ反射され受音側(下流側)に伝搬することがない。
なお、本発明に係る騒音低減構造100においては、音源側(例えば、建物外の屋外側)に騒音源が存在し、騒音源からの騒音が受音側(例えば、建物内の室内側)に伝搬されることを例として説明を行う。
本発明に係る騒音低減構造100をルーバー1に適用する場合は、当該騒音低減構造100を形成する通気路(通気経路)の上下で対向する2つのルーバー羽根部材3の面(主面4、5)を、音響的に“ソフト”な状態とする。すなわち、図2に示すように、ルーバー羽根部材3の上下において、対向するように2つの共鳴器10が設けられることで、対向する主面4、5が音響的に“ソフト”な状態、すなわち、主面4、5の表面における音響インピーダンス比Zが0となり、音源側から伝搬してきた騒音は音源側へ反射され受音側へ伝搬しないようにする。
図2に示すような騒音低減構造100によれば、共鳴器10の共鳴周波数において、対向した共鳴器10のスリット状開口部50における音響インピーダンス比がほぼ0となり、屋外側(上流側)から入射した騒音は屋外側へ反射され室内側(下流側)に伝搬することがない。
なお、本発明の実施形態に示すルーバー1においては、共鳴器10はルーバー羽根部材3に埋設されるようにして設けられているが、必ずしも、このようにする必要はなく、共鳴器10は主面4、5に装着するようにしてもよい。
また、本実施形態に示すルーバー1においては、ルーバー1を構成するルーバー羽根部材3の形態は1種類のみで、この同一形態のルーバー羽根部材3を複数配列することでルーバー1を構成するようにしているが、ルーバー羽根部材3の主面4、5の表面を、共鳴器10によって音響的に“ソフト”な状態とするのであれば、このような態様に限定されるものではない。また、本実施形態に示すルーバー1では、一つの通気経路に、対向する共鳴器10が一対設けられるようにされているが、例えば2つ以上の共鳴器10が通気経路に設けられるような構成としてもよい。
ルーバー1に対して共鳴器10を設けることで、上式(5)に基づく共鳴周波数fについては騒音低減の効果は期待できるが、当該共鳴周波数から離れた周波数では殆ど効果が得られない。そこで、幅広い周波数範囲に成分を持つ騒音を低減するために、本発明に係る騒音低減構造100では、2つの共鳴器10と共に、グラスウールやポリエステル等の多孔質性の吸音材150を用いるようにしている。本発明では、2つの共鳴器10には低周波数域の騒音低減を担当させ、一方吸音材150に高周波数域の騒音低減を担当させることで、より幅広い周波数帯域に対する騒音低減効果を生じさせるようにしている。
さらに、本発明に係る騒音低減構造100においては、2つの共鳴器10と、2つの吸音材150とは、それぞれ互いに隣接させて配置することが好ましい。また、本発明に係る騒音低減構造100においては、表面が段差なく通気経路を構成するように配置されることが好ましい。すなわち、互いに隣接する共鳴器10と吸音材150とは面一で配置されることが好ましい。
また、本発明に係る騒音低減構造100においては、吸音材150は、共鳴器10より音源側に配置するようにする。なお、隣接する複数の共鳴器と、吸音材とを並べて配するような場合には、吸音材はすべての共鳴器より音源側に配置する。
以下では、吸音材150が共鳴器10より音源側に配置されることについて、理論的背景と数値解析により本発明の効果を検証した結果を述べる。
[理論的背景]
図3には、スリット状の騒音低減構造100と吸音材150を、ルーバー1に組み込んだ例を断面図として示しており、図3(A)は吸音材150が共鳴器10より音源側に配置された構造(本発明)を示す図であり、図3(B)は吸音材150が共鳴器10より受音側に配置された構造(比較例)を示す図である。
図中にはルーバー羽根部材3を3つのみ示しているが、実際には紙面上下方向に更に連続して遮音ルーバーが配置されているものとする。ここでは、隣り合うルーバー羽根部材3の間の空間は、音源側空間と受音側空間の間の空気の流通を確保するための通気経路であるとする。
この騒音低減構造を介して屋外側即ち音源側から、室内側即ち受音側へ伝搬する騒音を低減する目的で、共鳴器10を対向配置する。また、吸音材150は本発明では、上記共鳴器10より音源側に配置することを提案している。
なお、図3では、吸音材150は通気経路の片側のみに配置しているが、吸音材150は通気経路の両側に配置した場合するようにしてもよい。
ここで、音源側から通気路に入射し、受音側へ伝搬、或いは音源側へ再放射される騒音のエネルギについて考える。なお、以下では一般に知られている、騒音の周波数と通気経路長に応じて通気路を伝搬する騒音のエネルギが変化する効果については特に記述しない。
音源側から通気路へ入射する騒音のエネルギをEi、通気路を介して受音側へ伝搬する騒音のエネルギをEtとする。また、通気路から入射して音源側へ再放射する騒音のエネルギをErとする。
吸音材を配置しない場合、通気路へ入射する騒音のエネルギEiと受音側へ伝搬する騒音のエネルギEtの関係を以下の(7)式で表すことができる。
t=τ×Ei ・・・(7)
上式(7)では、τは共鳴器10を配置した部分を音源側から受音側へ騒音が伝搬する割合、即ち騒音伝達率を示す(0≦τ≦1)。共鳴器10の共鳴周波数付近ではτが極めて小さくなり、受音側へ伝搬する騒音のエネルギが大幅に低減される。また、スリット共鳴器が配置された部分で騒音が反射して再度音源側へ伝搬する割合は(1−τ)であることから、通気路の音源側から再放射する騒音のエネルギErは下式(8)の通りである。
r=(1−τ)×Ei ・・・(8)
図3(A)に示すように、吸音材150を共鳴器10の音源側に配置した場合、騒音が吸音材150を配置した部分を伝搬する際に吸音材150に吸収されるエネルギはα×Eiと表すことができる。ここで、αは吸音材150を配置した部分を騒音が伝搬する際に吸音材にエネルギが吸収される割合を示す(0≦α≦1)。言い換えれば、吸音材150を配置した部分を吸音材150に吸収されずに伝搬するエネルギの割合は(1−α)である。
この場合、吸音材150と共鳴器10が配置された部分を通過して受音側に伝搬する騒音のエネルギは、下式(9)となる。
t=(1−α)τ×Ei ・・・(9)
更に、共鳴器10が配置された部分で反射して音源側から再放射する騒音のエネルギは、
r=(1−α)2(1−τ)×Ei ・・・(10)
である。
ここで、(1−α)2は、吸音材150が配置された部分を通気路の音源側から共鳴器10が配置された部分に向けて騒音が伝搬する際と、その後共鳴器10が配置された部分で騒音が反射して吸音材150が配置された部分を音源側へ伝搬する際の、2度にわたり吸音材150にエネルギが吸収されていることを表す。
吸音材150に吸収される騒音のエネルギをEaとすると、エネルギ保存則より以下の関係式(11)が成り立ち、
i=Et+Er+Ea・・・(11)
(9)及び(10)式を代入すると下式(12)のように整理される。
a={α+(1−α)(1−τ)α}Ei・・・(12)
上式(12)の{ }内の第1項は吸音材150が配置された部分を通気路の音源側から共鳴器10が配置された部分に向けて騒音が伝搬する際に吸音材に吸収すされるエネルギを意味し、第2項はその後共鳴器10が配置された部分で騒音が反射して吸音材150が配置された部分を音源側へ伝搬する際に吸音材150に吸収されるエネルギを意味する。
一方で、図3(B)に示すようにて吸音材150を共鳴器10の受音側に配置した場合、共鳴器10と吸音材150が配置された部分を通過して受音側に伝搬する騒音のエネルギは、
t=τ(1−α)×Ei ・・・(13)
である。また、共鳴器10が配置された部分で反射して音源側から再放射する騒音のエネルギは、
r=(1−τ)×Ei ・・・(14)
である。
この場合、吸音材150に吸収される騒音のエネルギEaはエネルギ保存則より、下式(15)の通りとなる。
a=τα×Ei ・・・(15)
以上より、吸音材150を共鳴器10の音源側に配置した場合と、受音側に配置した場合を比較する。
まず、(9)式と(13)式を比較とすると、吸音材150に配置位置に関わらず、通気経路を受音側に伝搬する騒音のエネルギは変わらない。即ち、吸音材150の配置位置が異なっても隙間や通気経路を介した騒音伝搬を低減するという本来の性能は損なわれない。
次に、(12)式の右辺から(15)式の右辺を減算すると(2−α)(1−τ)α×Eiであり、0≦τ≦1及び0≦α≦1の条件より正の値となる。これは、吸音材150を共鳴器10の音源側に配置したほうが吸音材に吸収される騒音のエネルギが大きい、即ち吸音材150を共鳴器10と併用した場合により効果的に騒音のエネルギを吸収できることを示す。
更に、(10)式と(14)式を比較すると、(10)式におけるErは、(14)式におけるErより明らかに小さい。このことより、吸音材150を共鳴器10の音源側に配置したほうが、通気経路から再放射される騒音のエネルギが小さいことが明らかである。これは、当該建物とその周辺を含む環境全体として騒音を低減することが可能であることを意味する。
当該建物の周辺に同程度以上の高さの他の建物がある場合、通気路から再放射された騒音は、周辺建物の外壁面で反射したのち、再び当該建物の外壁及び通気路に入射する。周辺を含む環境全体の騒音を低減することは、屋外から当該建物の室内に伝搬する騒音を低減する観点でも有効である。
[数値解析]
解析には2次元境界要素法を用いた。
図4に示すように、解析対象は、ルーバー羽根部材が一定の間隔を空けて配列されたものであり、騒音低減構造が組み込まれたルーバー羽根部材である。2次元解析のため、図中奥行き方向には図に示す断面が無限に続く構造を想定する。
騒音低減構造が組み込まれたルーバー羽根部材は、130mm間隔で配置され、ルーバー羽根部材間の間隔、即ち通気経路の幅は約46mmである。
音源側の空間と受音側の空間は、高さ1.31mの開口で接続されており、その開口部に10個の騒音低減構造が組み込まれたルーバー羽根部材が配置される。
図4(A)には吸音材を共鳴器の音源側に配置したルーバー羽根部材、図4(B)には吸音材を共鳴器の受音側に配置したルーバー羽根部材の計算モデルを示す。共鳴器の各部寸法は、共鳴周波数が1kHz付近となるように設定されている。また、吸音材は密度32kg/m3、厚さ25mmのグラスウール相当の吸音性能を持つと想定した。
ルーバー羽根部材の音源側の面から1.5m離れた位置に点音源を配置し、図4(A)及び図4(B)中に破線で示した仮想面1及び2を音源側から受音側方向に通過する音響エネルギを解析により求めた。なお、10個のルーバー羽根部材で構成される騒音低減装置には9個の通気経路があるが、仮想面はその全ての通気経路について設定され、以下の解析結果は、9個の通気経路の仮想面1或いは仮想面2を通過する音響エネルギの総和である。
解析は1/27オクターブ毎の純音について行い、得られた仮想面を受音側方向に通過する音響エネルギを1/3オクターブバンド中心周波数を中心とした9つずつエネルギ平均することで、1/3オクターブバンドにおける解析結果とした。
図5には、仮想面2を受音側に通過する音響エネルギ、即ち上記におけるEtの計算結果を示す。吸音材を共鳴器の音源側に配置した場合と受音側に配置した場合で計算結果はほぼ同じであり、上記で述べたように、吸音材の配置位置に関わらず、通気経路を受音側に伝搬する騒音のエネルギは変わらないことが確認できる。
図6には、仮想面1を受音側に通過する音響エネルギから仮想面2を受音側に通過する音響エネルギ減算した結果、即ち上記における吸音材に吸収される騒音のエネルギEaの計算結果を示す。共鳴器の共鳴周波数を含む帯域において、吸音材を共鳴器の音源側に配置した場合、受音側に配置した場合と比較して吸音材に吸収される騒音のエネルギが大きく、上記で述べたようにより効果的に騒音のエネルギを吸収できることが確認できる。
図7には、仮想面1を受音側に通過する音響エネルギ、即ち上記におけるEi−Erの計算結果を示す。共鳴器の共鳴周波数を含む帯域において、吸音材を共鳴器の音源側に配置した場合、受音側に配置した場合と比較して仮想面1を受音側に通過する音響エネルギが大きい。ここで、二つの解析において、音源位置等の条件は同一であるため、通気経路に入射するエネルギEiは同じである。
つまりこれらの解析結果から、吸音材を共鳴器の音源側に配置した場合、受音側に配置した場合と比較して通気経路の音源側から再放射するエネルギErが小さいことが確認できる。
本発明に係る騒音低減構造100は、吸音材150が共鳴器10より音源側に配されており、このような本発明に係る騒音低減構造100によれば、吸音材150が共鳴器10より受音側に配される場合に比べて、騒音低減構造100から再放射される騒音を低減することができ、周辺を含む環境全体の騒音を低減することが可能となる。
次に本発明の他の実施形態について説明する。図8は本発明の他の実施形態に係る騒音低減構造100を説明する図である。図8は、他の実施形態に係る騒音低減構造100を、騒音低減構造100の長手方向(或いは、スリット状開口部50の長手方向)を垂直に切って見た断面図である。
他の実施形態に騒音低減構造100においては、これまで説明してきた共鳴器10にさらに仕切り板部材35を設け、共鳴器10内の空間を2つに分割した構造を有している。このような仕切り板部材35は、隔壁部60としても機能する。図8のように仕切り板部材35を設けることで、1つの共鳴器の中に、空間A及び空間Bを有する2つのスリット共鳴器を構成することができる。 なお、空間Aや空間Bなどの「空間」については、図面中にアンダーバーが付されている。
それぞれの空間に基づく共鳴器はそれぞれの共鳴周波数f1、f2においてスリット部50の音響インピーダンス比Zがほぼ0となり、図8に図示するようにこれらを、騒音低減構造100の壁面に対向配置することで複数の周波数に対して騒音低減効果を発揮する。そして、本実施形態においては、さらに吸音材150が、共鳴器10と面一で、かつ、共鳴器10より音源側に配される構成となっている。
このような他の実施形態に係る騒音低減構造100は、仕切り板部材35の位置を適宜代えることで、同じ寸法の共鳴器1を用いても様々な共鳴周波数を持つ共鳴器10が構成可能である。また、本実施形態によっても、騒音低減構造100から再放射される騒音を低減することができ、周辺を含む環境全体の騒音を低減することが可能となる、という効果を享受することができる。
次に本発明の他の実施形態について説明する。図9は本発明の他の実施形態に係る騒音低減構造100を説明する図である。図9は騒音低減構造100の長手方向(或いは、スリット状開口部50の長手方向)を垂直に切って見た断面図である。
図9の他の実施形態に係る騒音低減構造100においては、共鳴器10は空間A及び空間Cからなる2つの共鳴器が、間隔at離れた2枚の仕切り板部材35で隔てられた構成となっている。この場合、2つの共鳴器の間のスリットは、背後に空気層を持たないスリット状開口部50となる。仕切り板部材35は、この場合、隔壁部60としても機能する。
このような共鳴器10を騒音低減構造100の内壁に沿って対向配置した場合、騒音低減構造100の断面寸法及び仕切り板部材35の間隔atが半波長以下となる周波数に対して、背後に空気層を持たないスリット状開口部50は音響管(空間B)として機能する。
このとき、外殻部材20の寸法Dが音響管の管長に相当し、波長の1/4がDと等しくなる周波数ft及びその奇数倍の周波数において、音響管のスリット状開口部50の音響インピーダンス比Zが0となり騒音低減効果を発揮する。
一般に、上記のようなftはスリット共鳴器(空間A及び空間C)の共鳴周波数f1あるいはf2より高い周波数となるため、図9のようにスリット共鳴器と音響管を組み合わせた構造の共鳴器10による騒音低減構造100は、幅広い周波数に対して騒音低減効果を発揮することができる。空間A及び空間Cを形成するにあたっては、スリット共鳴器(空間A及び空間C)における隔壁部60の長さla、lcを異ならせるようにしている。
さらに、本実施形態においては、吸音材150が、共鳴器10と面一で、かつ、共鳴器10より音源側に配される構成となっている。
このような他の実施形態に係る騒音低減構造100は、音響管(空間B)を含む共鳴器10と、吸音材150とからなる構成で、幅広い周波数の騒音を低減することが可能となると共に、騒音低減構造100から再放射される騒音を低減することができ、周辺を含む環境全体の騒音を低減することが可能となる、という効果を享受することができる。
次に本発明の他の実施形態について説明する。これまで説明してきた実施形態においては、同じ寸法の共鳴器1を、互いのスリット部50が対向するようにして配置していた。これに対して、本実施形態においては、共鳴器1を騒音低減構造100における通気路の一方側にのみ設けるようにしたものである。図10はこのような騒音低減構造100を示す図であり、図10(A)は共鳴器10を「片側配置」した場合、また、図10(B)は共鳴器10を「片側並列配置」した場合をそれぞれ示している。吸音材150は、共鳴器10と面一で、かつ、いずれの共鳴器10よりも音源側に配される構成となっている。
このような「片側配置」や「片側並列配置」などの配置方法にも十分な騒音低減効果を期待することができることを数値解析によって確認している。レイアウトなどの都合上、「片側配置」や「片側並列配置」しか採用し得ない場合には、このような配置を適宜採用することもできる。
さらに、本実施形態においても、吸音材150は、いずれの共鳴器10よりも音源側に配されており、騒音低減構造100から再放射される騒音を低減することができ、周辺を含む環境全体の騒音を低減することが可能となる、という効果を享受することができる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図11は本発明の他の実施形態に係る騒音低減構造100に用いる共鳴器10を説明する図である。図11(A)はこれまで説明してきた実施形態に係る騒音低減構造100に用いる共鳴器10を示しており、図11(B)は本実施形態に係る騒音低減構造100に用いる共鳴器10を示している。本実施形態態に係る騒音低減構造100では、図11(B)で示す共鳴器10が騒音低減構造100に配されることを特徴としている。その他の構成は、これまで説明した実施形態と相違することはないので、説明を省略する。
図11(A)に示すように、これまで説明してきた実施形態に係る騒音低減構造100の共鳴器10は、スリット部50の両側に配され隔壁部60が設けられ、これらの隔壁部60は奥行き方向にlの長さを有するものであった。
これに対して、図11(B)に示す本実施形態に騒音低減構造100の共鳴器10は、スリット部50の両側の隔壁部60が省かれた構造を有している。隔壁部60が省かれているが、この代わりに、少なくともスリット部50が含まれる共鳴器10の前面の板厚がlの厚さを有するものとなっている。
前記板厚lにより、本実施形態で用いる共鳴器10においても、第1の実施形態で説明したVnが生じることとなる。これにより、隔壁部60が省かれた共鳴器10が用いられる本実施形態に係る騒音低減構造100によっても、これまで説明した騒音低減構造100と同様の効果を享受することが可能となる。
次に、本発明に係る騒音低減構造100の他の適用例を説明する。図12は本発明に係る騒音低減構造100を扉200に適用した場合を説明する図である。図12は
図12は、本発明に係る騒音低減構造100を2つ、特に、扉100上部と枠体部110との間に沿って対向配置すると共に、本発明に係る騒音低減構造100を1つ、扉100下部と床220との間に沿って設けたものである。図12(A)は扉200の正面図である。また、図12(B)は。図12(A)のX−X’の断面図である。
図12において、2枚の扉200は、枠体部210と床220とに四方を囲まれ、不図示のヒンジ構造により開閉可能に構成されている。本発明に係る騒音低減構造100として、扉200の上部において、扉200と枠体部210に、互いのスリット状開口部50が対向するように共鳴器10同士を、また、吸音材150同士を配置してそれぞれに埋設している。また、扉200の下部において、スリット状開口部50が床220に対向するようにして共鳴器10を扉200に埋設すると共に、それに隣接するように吸音材150も扉200に埋設している。ここで、吸音材150はこれまで説明したように、吸音材150は、共鳴器10と面一で、かつ、いずれの共鳴器10よりも音源側に配される構成となっている。
図12の上部側に示すような、本発明に係る騒音低減構造100を組み込んだ扉200によれば、共鳴器10の共鳴周波数において、対向した共鳴器10のスリット状開口部50における音響インピーダンス比がほぼ0となり、音源側(上流側)から入射した騒音は音源室S側へ反射され、受音側(下流側)に伝搬することがなく、さらに、騒音低減構造100から再放射される騒音を低減することができ、周辺を含む環境全体の騒音を低減することが可能となる、という効果を享受することができる。
図12の下部側の騒音低減構造100においては、床220に共鳴器10、吸音材150を設置することができないので、吸音材150の片側配置となる。共鳴器10を扉200の上部のように対向させていないが、扉200と床220との間の隙間が音波の波長に対して狭く、共鳴器10のスリット状開口部50が、対向する面である床220の面の音圧反射率が高い場合は、共鳴器10の片側設置でも原理的に同様の透過音低減効果が得られる。
なお、図12に示す実施形態では、扉200の下部において、共鳴器10を片側配置とした例を示したが、同様に、扉200の側面や上部においても共鳴器10を片側配置としてもよい。
また、図12示す実施形態では、2枚の扉200が、枠体部210と床220とで四方を囲まれる場合について説明したが、扉200が、四方枠で囲まれるような構成の場合でも本発明を適用することができる。この場合、四方枠の枠体の一部(下部)が、床220に相当するものとなる。
このような実施形態においても、吸音材150は、いずれの共鳴器10よりも音源側に配されており、騒音低減構造100から再放射される騒音を低減することができ、周辺を含む環境全体の騒音を低減することが可能となる、という効果を享受することができる。
次に、本発明に係る騒音低減構造100の他の適用例を説明する。図13は本発明に係る騒音低減構造100をダブルスキン300に適用した場合を説明する図である。図13(A)は、通気経路に本発明に係る騒音低減構造100が適用された、ダブルスキン300の斜視図であり、図13(B)は図13(A)のダブルスキン300を、通気経路の水平方向(或いは、スリット状開口部50の長手方向)を垂直に切って見た断面図である。
ダブルスキン300は、外側部材304と、この外側部材304の屋内側に所定間隔離れて設けられた内側部材305と、からなる建物の外壁部を構成するものである。外側部材304と前記内側部材305との間に形成される中空層空間が通気空間307(通気経路、ともいう)となる。
夏季においては、このようなダブルスキン300の通気空間307には、下方開口端310から空気を流入させて、不図示の上方開口端から排出することで、日射の影響を緩和したり、室内温熱環境を改善したりする。しかし一方で、当該開口端部が遮音欠損となり、開口端部が無い場合と比較して、ダブルスキン構造を有する外装壁の遮音性能は大きく低下してしまう。
そこで、このようなダブルスキン300に本発明に係る騒音低減構造100を組み込むことで、通気空間307における良好な通気性を阻害することなく、騒音低減を図るものである。
本発明に係る騒音低減構造100の2つの共鳴器10を、図13に示すように、通気空間307を挟んで、対向配置すると、共鳴器10の共鳴周波数fにおいては対向するスリット部が音響的に“ソフト”な状態となり、上流側から伝搬してきた周波数fの騒音は上流側へ反射され下流側に伝搬しない。通気空間307を挟んで、吸音材150も対向配置される。ここで、吸音材150はこれまで説明したように、吸音材150は、共鳴器10と面一で、かつ、いずれの共鳴器10よりも音源側に配される構成となっている。
図13に示すような騒音低減構造100を組み込んだダブルスキン300によれば、共鳴器10の共鳴周波数において、対向した共鳴器10のスリット状開口部50における音響インピーダンス比がほぼ0となり、建物の下方側(下層階側)から入射した騒音は、下方側へ反射され建物の上方側(上層階側)に伝搬することがない。さらに、騒音低減構造100から再放射される騒音を低減することができ、周辺を含む環境全体の騒音を低減することが可能となる、という効果を有する。
このような実施形態においても、吸音材150は、いずれの共鳴器10よりも音源側に配されており、騒音低減構造100から再放射される騒音を低減することができ、周辺を含む環境全体の騒音を低減することが可能となる、という効果を享受することができる。
以上、本発明に係る騒音低減構造は、吸音材が共鳴器より音源側に配されており、このような本発明に係る騒音低減構造によれば、吸音材が共鳴器より受音側に配される場合に比べて、騒音低減構造から再放射される騒音を低減することができ、周辺を含む環境全体の騒音を低減することが可能となる。
本発明に係る騒音低減構造によれば、吸音材を共鳴器より音源側に配置することで、より効果的に吸音材により騒音のエネルギを吸収することができる。
また、本発明に係る騒音低減構造によれば、共鳴器を配置した部分で反射して隙間や通気経路から音源側へ再放射される騒音を低減し、音源側空間を含む騒音低減構造周辺の空間全体として騒音を低減することができる。
これらの効果を、隙間や通気経路を介した騒音伝搬を低減するという本来の性能を損なうことなく実現できる。
1・・・ルーバー
3・・・ルーバー羽根部材
4、5・・・主面
10・・・共鳴器
35・・・仕切り板部材
40・・・筐体
50・・・スリット状開口部
60・・・隔壁部
100・・・騒音低減構造
105・・・内壁
110・・・内装壁
120・・・外装壁
150・・・吸音材
200・・・扉
210・・・枠体部
220・・・床
300・・・ダブルスキン
304・・・外側部材
305・・・内側部材
307・・・通気空間
310・・・下方開口端

Claims (5)

  1. スリット状開口部を有する共鳴器と、吸音材と、を含む騒音低減構造であって、
    前記吸音材が前記共鳴器より音源側に配されることを特徴とする騒音低減構造。
  2. 前記共鳴器が、スリット状開口部が対向するように対で配されることを特徴とする請求項1に記載の騒音低減構造。
  3. 前記共鳴器を複数隣接させる場合、全ての前記共鳴器より音源側に前記吸音材が配されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の騒音低減構造。
  4. 前記共鳴器が、空気層を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の騒音低減構造。
  5. 前記共鳴器が、空気層を有さないことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の騒音低減構造。
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