本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜は、ゴルフボールの最外層に位置する最外層塗膜が、基材樹脂と多孔質フィラーとを含有し、前記基材樹脂は、(A)ポリイソシアネート組成物と、(B)ポリオール成分としてウレタンポリオールを含有するポリオール組成物とを反応させてなるポリウレタンを含有し、前記多孔質フィラーは、構成成分としてSiO2を50質量%以上含有するものであり、前記最外層塗膜は、動的粘弾性装置により下記条件にて測定した損失正接(tanδ)のピーク温度が、−40℃〜40℃であることを特徴とする。
<測定条件>
測定モード:引張り
測定温度:−100℃〜150℃
昇温速度:4℃/分
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.1%
(多孔質フィラー)
まず、本発明のゴルフボールの最外層塗膜が含有する多孔質フィラーについて説明する。前記多孔質フィラーは、多数の細孔を有する。前記多孔質フィラーが有する細孔の形状は特に限定されない。前記多孔質フィラーが有する細孔の孔径は特に限定されないが、0.1nm〜500nmが好ましい。前記多孔質フィラーは、その種類によって細孔の孔径が異なるが、例えば、ゼオライト系は0.1nm〜2nm、珪藻土は約300nmである。
前記多孔質フィラーは構成成分としてSiO2を50質量%以上含有する。多孔質フィラーのSiO2の含有率が50質量%以上であれば、塗膜の撥水性が向上し、水に濡れた状況での打撃におけるスピン性能が向上する。前記多孔質フィラーの構成成分中のSiO2の含有率は、55質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、100質量%以下、95質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下である。なお、SiO2の含有率は、蛍光X線分析によりSi元素を定量し、SiO2成分として換算した。
前記多孔質フィラーとしては、珪藻土、ゼオライト、及び、パーライトよりなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。珪藻土は、プランクトンの一種である珪藻の遺骸が海底や湖底に体積し化石化した泥土である。珪藻土は、シリカを主成分とし、各粒子には微細気孔が多数存在する。パーライトは、黒曜石、真珠岩、松脂岩などのガラス質火山石を高熱処理することにより、火山石に含まれる水分が蒸発してできる多孔質体である。ゼオライトは、結晶性多孔質アルミノケイ酸塩である。ゼオライトの構造としては、例えば、A型、フェリエライト、ZSM−5、モルデナイト、ベータ、X型、または、Y型などを挙げることができる。なお、ゼオライトには、多孔質シリカライトも含まれる。前記多孔質フィラーは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記多孔質フィラーの体積平均粒子径は、0.5μm以上が好ましく、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは2.0μm以上であり、30μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。前記多孔質フィラーの体積平均粒子径が0.5μm以上であれば排水効果が高く、ウェット条件におけるスピン性がより向上し、30μm以下であれば外観が良好となり、かつ、汚れの付着を低減することができる。
前記多孔質フィラーの嵩密度は、特に限定されないが、0.2g/cm3以上が好ましく、より好ましくは0.3g/cm3以上であり、1.0g/cm3以下が好ましく、より好ましくは0.9g/cm3以下、さらに好ましくは0.8g/cm3以下である。
前記最外層塗膜中の多孔質フィラーの含有量は、最外層塗膜の基材樹脂100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上であり、200質量部以下が好ましく、より好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは120質量部以下である。前記多孔質フィラーの含有量が、3質量部以上であれば排水効果が高く、ウェット条件におけるスピン性がより向上し、200質量部以下であれば外観が良好となり、かつ、汚れの付着を低減することができる。
(ポリウレタン)
本発明のゴルフボールの最外層塗膜の基材樹脂は、(A)ポリイソシアネート組成物と、(B)ポリオール成分としてウレタンポリオールを含有するポリオール組成物とを反応させてなるポリウレタンを含有する。前記最外層塗膜の基材樹脂中のポリウレタンの含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。前記最外層塗膜の基材樹脂がポリウレタンのみからなることが最も好ましい。
((A)ポリイソシアネート組成物)
前記(A)ポリイソシアネート組成物のポリイソシアネート成分としては、例えば、イソシアネート基を少なくとも2つ有する化合物を挙げることができる。前記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などの脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネート;およびこれらのポリイソシアネートの誘導体が挙げられる。本発明では、前記ポリイソシアネートとして、2種以上のポリイソシアネートを使用してもよい。
前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、ジイソシアネートと多価アルコールとを反応させて得られるアダクト変性体;ジイソシアネートのイソシアヌレート変性体;ビュレット変性体;アロハネート変性体などが挙げられ、遊離ジイソシアネートが除去されているものがより好ましい。
前記アダクト変性体とは、ジイソシアネートと多価アルコールとを反応させて得られるポリイソシアネートである。前記多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの低分子量トリオールが好ましい。前記アダクト変性体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとを反応させて得られるトリイソシアネート(下記式(1));ヘキサメチレンジイソシアネートとグリセリンとを反応させて得られるトリイソシアネート(下記式(2))が好ましい。
前記イソシアヌレート変性体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、または、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体が挙げられ、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(下記式(3))、または、イソホロンジイソシアネートの3量体が好ましい。
前記ビュレット変性体としては、例えば、ジイソシアネートが三量化されたビュレット変性体が挙げられ、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(下記式(4))が好ましい。
前記アロハネート変性体とは、例えば、ジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させて形成されるウレタン結合にさらにジイソシアネートが反応して得られるトリイソシアネートである。
前記ポリイソシアネート成分としては、アダクト変性体またはイソシアヌレート変性体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体またはイソシアヌレート変性体(好ましくは3量体)、あるいは、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(好ましくは3量体)がより好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体またはイソシアヌレート変性体、あるいは、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を用いる場合、ポリイソシアネート成分中のヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体またはイソシアヌレート変性体、あるいは、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体の含有率は、20質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。ポリイソシアネート成分として、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体またはイソシアヌレート変性体、あるいは、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体のみを用いることも好ましい。
また、前記ポリイソシアネート成分は、アダクト変性体とイソシアヌレート変性体とを併用することも好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体(好ましくは3量体)とヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(好ましくは3量体)とを、あるいは、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体(好ましくは3量体)とイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(好ましくは3量体)とを併用することがより好ましい。この場合、アダクト変性体とイソシアヌレート変性体との質量比(アダクト変性体/イソシアヌレート変性体)は、0.1以上が好ましく、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上である。前記質量比が0.1以上であれば動摩擦係数が大きくなり、芝を噛んだ条件でのアプローチショットのスピン速度がより増大する。
また、前記ポリイソシアネート成分としては、イソシアヌレート変性体のみを用いることも好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(好ましくは3量体)、または、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(好ましくは3量体)がより好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(好ましくは3量体)とイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(好ましくは3量体)とを併用することがさらに好ましい。併用する場合、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体とイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体との質量比(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体/イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体)は、0.2以上が好ましく、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.4以上であり、9.0以下が好ましく、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下である。前記質量比が上記範囲であれば、動摩擦係数が大きくなり、芝を噛んだ条件でのアプローチショットのスピン速度がより増大する。
また、ポリイソシアネート成分として、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を用いる場合、ポリイソシアネート成分中のヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体の合計含有率は、70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。ポリイソシアネート成分として、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体のみを用いることも好ましい。
ポリイソシアネート成分として、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体およびイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を用いる場合、ポリイソシアネート成分中のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体およびイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体の合計含有率は、70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。ポリイソシアネート成分として、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体およびイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体のみを用いることも好ましい。
ポリイソシアネート成分としてヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体およびイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を用いる場合、ポリイソシアネート成分中のヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体およびイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体の合計含有率は、70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。ポリイソシアネート成分として、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体およびイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体のみを用いることも好ましい。
前記ポリイソシアネート成分のイソシアネート基量(NCO%)は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましく、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。なお、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基量(NCO%)は、100×[ポリイソシアネート中のイソシアネート基のモル数×42(NCOの分子量)]/ポリイソシアネートの総質量(g)で表わすことができる。
前記ポリイソシアネート成分の具体例としては、DIC社製バーノック(登録商標)D−800、バーノックDN−950、バーノックDN−955、住化バイエルウレタン社製デスモジュール(登録商標)N75MPA/X、デスモジュールN3300、デスモジュールN3390、デスモジュールL75(C)、スミジュール(登録商標)E21−1、東ソー社製コロネート(登録商標)HX、コロネートHK、コロネートHL、コロネートEH、旭化成ケミカルズ社製デュラネート(登録商標)24A−100、デュラネート21S−75E、デュラネートTPA−100、デュラネートTKA−100、デュラネート24A−90CX、デュラネートE402−80B、デグサ社製VESTANAT(登録商標) T1890などを挙げることができる。
((B)ポリオール組成物)
前記ポリオール組成物は、ウレタンポリオールを含有する。ウレタンポリオールを使用することで、得られる塗膜が柔らかくなり、スピン性能が向上する。前記ウレタンポリオールとは、分子内にウレタン結合を複数有し、一分子中にヒドロキシ基を2以上有する化合物である。ウレタンポリオールとしては、例えば、第1ポリオール成分と第1ポリイソシアネート成分とを、第1ポリオール成分のヒドロキシ基が第1ポリイソシアネート成分のイソシアネート基に対して過剰になるような条件で反応させて得られるウレタンプレポリマーを挙げることができる。
前記ウレタンポリオールは、構成成分として、ポリエーテルジオールを含有することが好ましい。前記ウレタンポリオールを構成し得るポリエーテルジオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどが挙げられ、これらの中でもポリオキシテトラメチレングリコールが好ましい。
前記ポリエーテルジオールの数平均分子量は、400以上が好ましく、より好ましくは500以上、さらに好ましくは600以上であり、3000以下が好ましく、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下、特に好ましくは800未満である。ポリエーテルジオールの数平均分子量が400以上であれば、塗膜の打撃耐久性が向上し、3000以下であれば塗膜の耐汚染性が向上する。なお、平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして有機溶媒系GPC用カラム(例えば、昭和電工社製「Shodex(登録商標) KFシリーズ」など)を用いて測定すればよい。
前記ウレタンポリオールは、第1ポリオール成分として、前記ポリエーテルジオール以外の分子量が500未満の低分子量ポリオールを含有してもよい。前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。前記低分子量ポリオールは、単独で、あるいは、2種以上を混合して使用しても良い。
前記ウレタンポリオールは、第一ポリオール成分として、トリオール成分とジオール成分とを含有するものが好ましい。前記トリオール成分としては、トリメチロールプロパンが好ましい。前記トリオール成分とジオール成分の混合比率(トリオール成分/ジオール成分)は、OH基のモル比で、1.0以上が好ましく、1.2以上がより好ましく、2.6以下が好ましく、2.4以下がより好ましい。
前記ウレタンポリオールを構成し得る第1ポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2以上有するものであれば特に限定されず、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などの脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ウレタンポリオールは、前記ポリエーテルジオールの含有率が、20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。前記ポリエーテルジオールは、塗膜においてソフトセグメントを形成する。よって、前記ポリエーテルジオールの含有率が、20質量%以上であれば、得られるゴルフボールのスピン性能がより向上する。
前記ウレタンポリオールは、重量平均分子量が、5000以上が好ましく、より好ましくは5300以上、さらに好ましくは5500以上であり、20000以下が好ましく、より好ましくは18000以下、さらに好ましくは16000以下である。ウレタンポリオールの重量平均分子量が上記範囲内であれば、得られるゴルフボールのスピン性能がより向上する。
前記ウレタンポリオールの水酸基価は、10mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは15mgKOH/g以上、さらに好ましくは20mgKOH/g以上であり、200mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは190mgKOH/g以下、さらに好ましくは180mgKOH/g以下である。
前記ポリオール組成物は、ポリオール成分として、前記ウレタンポリオール以外のポリオール化合物を含有してもよい。前記ポリオール化合物としては、分子量が500未満の低分子量ポリオールや平均分子量が500以上の高分子量ポリオールを挙げることができる。前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。前記高分子量のポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)などのポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などの縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)などのラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネートポリオール;および、アクリルポリオールなどが挙げられる。前記他のポリオール化合物は、単独で、あるいは、2種以上を混合して使用しても良い。
前記ポリオール組成物が含有するポリオール成分中の前記ウレタンポリオールの含有率は、60質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。前記ポリオール組成物は、ポリオール成分として、前記ウレタンポリオールのみを含有することも好ましい。
前記ポリオール組成物が含有するポリオール成分の水酸基価は、10mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは15mgKOH/g以上、さらに好ましくは20mgKOH/g以上であり、400mgKOH/g以下が好ましく、好ましくは300mgKOH/g以下、より好ましくは200mgKOH/g以下、さらに好ましくは170mgKOH/g以下であり、特に好ましくは160mgKOH/g以下である。ポリオール成分の水酸基価が上記範囲内であれば、ゴルフボール本体への塗膜の密着性が向上する。なお、本発明において、水酸基価は、JIS K 1557−1に準じて、例えば、アセチル化法によって測定することができる。
前記(A)ポリイソシアネート組成物と(B)ポリオール組成物とは、(B)ポリオール組成物が有するヒドロキシ基(OH基)と(A)ポリイソシアネート組成物が有するイソシアネート基(NCO基)のモル比(NCO基/OH基)が、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.1以上がさらに好ましい。前記モル比(NCO基/OH基)が、0.1以上であれば、十分に硬化反応が進行する。また、前記モル比(NCO基/OH基)が大きくなりすぎると、イソシアネート基量が過剰となり、得られる塗膜が硬く脆くなる上に、外観も悪くなる。そのため、前記モル比(NCO基/OH基)は、2.0以下が好ましく、1.7以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。なお、塗料中のイソシアネート基量が過剰になると得られる塗膜の外観が悪くなる理由は、イソシアネート基量が過剰になると、空気中の水分とイソシアネート基との反応が多くなり、炭酸ガスが多量に発生するためと考えられる。
前記(A)ポリイソシアネート組成物および(B)ポリオール組成物は、溶媒を含有してもよい。前記溶媒としては、水、有機溶剤のいずれでもよいが、有機溶媒が好ましい。前記有機溶媒としては、トルエン、イソプロピルアルコール、キシレン、メチルエチルケトン、メチルエチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルベンゼン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソブチルアルコール、酢酸エチルなどを挙げることができる。なお、溶媒は、(A)ポリイソシアネート組成物および(B)ポリオール組成物のいずれに配合してもよいが、均一に硬化反応をさせる観点から、ポリオール組成物およびポリイソシアネート組成物のそれぞれに配合することが好ましい。
前記(A)ポリイソシアネート組成物および(B)ポリオール組成物は、硬化反応触媒を含有してもよい。前記触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどのモノアミン類;N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミンなどのポリアミン類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、トリエチレンジアミンなどの環状ジアミン類;ジブチルチンジラウリレート、ジブチルチンジアセテートなどの錫系触媒などが挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジブチルチンジラウリレート、ジブチルチンジアセテートなどの錫系触媒が好ましく、特に、ジブチルチンジラウリレートが好適に使用される。
前記(A)ポリイソシアネート組成物および(B)ポリオール組成物は、さらに必要に応じて、フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤、スリップ剤、粘度調整剤などの、一般にゴルフボール用塗料に含有され得る添加剤を含有してもよい。
前記最外層塗膜は、(A)ポリイソシアネート組成物と(B)ポリオール組成物とを含有する塗料組成物から形成されることが好ましい。前記塗料組成物としては、(B)ポリオール組成物を主剤とし、(A)ポリイソシアネート組成物を硬化剤とするいわゆる二液硬化型ウレタン塗料を例示することができる。
本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜を有する。塗膜が多層構造の場合、最も外側に位置する最外層塗膜が、多孔質フィラーを含有する。塗膜が単層の場合、単層の塗膜が最外層塗膜であり、単層の最外層塗膜が多孔質フィラーを含有する。
本発明のゴルフボールの最外層塗膜の厚さは、5μm以上が好ましく、より好ましくは7μm以上であり、40μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。前記最外層塗膜の厚さが、上記範囲内であれば外観が良好であり、ゴルフボールの耐擦過傷性が優れ、かつ、アプローチ性能が良好となる。
本発明のゴルフボールの塗膜が多層構造を有する場合は、塗膜全体の厚さは、5μm以上が好ましく、より好ましくは7μm以上、さらに好ましくは9μm以上であり、50μm以下が好ましく、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。前記厚さが5μm以上であればアプローチショットでのスピン速度が増加し、50μm以下であればドライバーショットでのスピン速度を抑えることができる。
前記多孔質フィラーを含有する最外層塗膜の厚さ(T:μm)と前記多孔質フィラーの体積平均粒子径(d:μm)との比(d/T)は、0.01以上が好ましく、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上であり、2.0以下が好ましく、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下である。比(d/T)が0.01以上であれば排水効果が高く、ウェット条件におけるスピン性がより向上し、2.0以下であれば外観が良好となり、かつ、汚れの付着を低減することができる。
前記多孔質フィラーは、粒子の全体が最外層塗膜内部に存在していてもよいし、粒子の一部が最外層塗膜表面に露出していてもよい。なお、多孔質フィラーは、粒子の全体が最外層塗膜内部に存在する、すなわち、最外層塗膜表面に露出していないことが好ましい。
(最外層塗膜の物性)
前記最外層塗膜の損失正接(tanδ)のピーク温度は、−40℃以上が好ましく、より好ましくは−30℃以上、さらに好ましくは−20℃以上であり、40℃以下が好ましく、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。損失正接(tanδ)のピーク温度が、−40℃以上であれば塗膜の粘着性が低く、汚れにくくなり、40℃以下であれば塗膜の動摩擦係数が大きくなり、芝を噛んだ条件でのアプローチショットのスピン速度が増加する。
前記最外層塗膜の24℃における貯蔵弾性率(E’)は、10MPa以上が好ましく、より好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上であり、100MPa以下が好ましく、より好ましくは80MPa以下、さらに好ましくは60MPa以下である。貯蔵弾性率(E’)が10MPa以上であれば塗膜の粘着性が低く、汚れにくくなり、100MPa以下であれば塗膜の動摩擦係数が大きくなり、芝を噛んだ条件でのアプローチショットのスピン速度が増加する。
前記最外層塗膜の24℃における損失弾性率(E”)は、0.1MPa以上が好ましく、より好ましくは0.5MPa以上、さらに好ましくは1.0MPa以上であり、80MPa以下が好ましく、より好ましくは65MPa以下、さらに好ましくは50MPa以下である。損失弾性率(E”)が0.1MPa以上であれば塗膜の粘着性が低く、汚れにくくなり、80MPa以下であれば塗膜の動摩擦係数が大きくなり、芝を噛んだ条件でのアプローチショットのスピン速度が増加する。
本発明のゴルフボールの最外層塗膜表面の水滑落角は50°未満が好ましく、45°以下がより好ましく、40°以下がさらに好ましい。水滑落角が50°未満であれば雨天時飛行中の排水効果が高くなる。水滑落角の下限は特に限定されないが、通常10°以上である。滑落角とは、水平な固体表面上に静止液体が存在する際に、この固体試料を徐々に傾けたとき、液体が下方に滑り出す傾斜角である。
本発明のゴルフボールの最外層塗膜表面の付着エネルギーは10mJ/m2未満が好ましく、より好ましくは9mJ/m2以下、さらに好ましくは8mJ/m2以下である。前記付着エネルギーが10mJ/m2未満であれば雨天時飛行中の排水効果が高くなる。前記付着エネルギーの下限は特に限定されないが、通常4mJ/m2である。
本発明のゴルフボールの最外層塗膜の動摩擦係数は、0.60以上が好ましく、より好ましくは0.63以上、さらに好ましくは0.70以上、特に好ましくは0.80以上であり、1.2以下が好ましく、より好ましくは1.1以下、さらに好ましくは1.0以下である。動摩擦係数が0.60未満では、芝を噛んだ条件でのアプローチショットのスピン速度が少なくなり、1.2超では塗膜の粘着性が強く、汚れが付きやすくなる。
前記最外層塗膜の10%モジュラスは、1kgf/cm2(0.10MPa)以上が好ましく、より好ましくは3kgf/cm2(0.29MPa)以上、さらに好ましくは5kgf/cm2(0.49MPa)以上であり、50kgf/cm2(4.9MPa)以下が好ましく、より好ましくは40kgf/cm2(3.9MPa)以下、さらに好ましくは30kgf/cm2(2.9MPa)以下である。前記最外層塗膜の10%モジュラスが1kgf/cm2以上であれば塗膜の粘着性が低く、汚れにくくなり、50kgf/cm2以下であれば塗膜の動摩擦係数が大きくなり、芝を噛んだ条件でのアプローチショットのスピン速度が増加する。
前記最外層塗膜の損失正接、貯蔵弾性率、損失弾性率、水滑落角、付着エネルギー、動摩擦係数および厚さの測定方法は、後述する。
前記塗膜が多層構造である場合、最外層塗膜以外の塗膜を構成する基材樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、これらの中でもウレタン樹脂が好ましい。前記最外層塗膜以外の塗膜は、最外層塗膜と同様の塗料から形成してもよいし、他の塗料から形成してもよい。
(塗膜の形成)
前記塗膜は、ゴルフボール本体表面に塗料組成物を塗布することで形成できる。塗料組成物の塗布方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができ、例えば、スプレー塗装、静電塗装などを挙げることができる。
エアーガンを用いたスプレー塗装の場合には、(A)ポリイソシアネート組成物と(B)ポリオール組成物とをそれぞれのポンプで供給して、エアーガン直前に配置されたラインミキサーで連続的に混合し、得られた混合物をスプレー塗装してもよいし、混合比制御機構を備えたエアースプレーシステムを用いて、(A)ポリイソシアネート組成物と(B)ポリオール組成物とを別々にスプレー塗装してもよい。塗装は、1回でスプレー塗布しても良いし、複数回重ね塗りをしても良い。
ゴルフボール本体に塗布された塗料組成物は、例えば、30℃〜70℃の温度で1時間〜24時間乾燥することにより塗膜を形成することができる。
(ゴルフボール本体)
本発明のゴルフボールは、ゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体表面に設けられた少なくとも一層の塗膜とを有するゴルフボールであれば、特に限定されない。ゴルフボール本体の構造は、特に限定されず、ワンピースゴルフボール、ツーピースゴルフボール、スリーピースゴルフボール以上のマルチピースゴルフボール、あるいは、糸巻きゴルフボールであってもよい。いずれの場合であっても、本発明を好適に適用できる。
(コア)
前記ワンピースゴルフボール本体、ならびに、糸巻きゴルフボール、ツーピースゴルフボールおよびマルチピースゴルフボールに用いられるコアについて説明する。
前記ワンピースゴルフボール本体およびコアには、公知のゴム組成物(以下、単に「コア用ゴム組成物」という場合がある)を用いることができ、例えば、基材ゴム、共架橋剤および架橋開始剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
前記基材ゴムとしては、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。前記共架橋剤としては、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩が好ましく、アクリル酸の金属塩またはメタクリル酸の金属塩がより好ましい。金属塩の金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムが好ましく、より好ましくは亜鉛である。共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して20質量部以上50質量部以下が好ましい。前記共架橋剤として炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸を使用する場合、金属化合物(例えば、酸化マグネシウム)を配合することが好ましい。架橋開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、3質量部以下が好ましく、より好ましくは2質量部以下である。
また、前記コア用ゴム組成物は、さらに、有機硫黄化合物を含有してもよい。前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類(例えば、ジフェニルジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド)、チオフェノール類、チオナフトール類(例えば、2−チオナフトール)を好適に使用することができる。有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。前記コア用ゴム組成物は、さらにカルボン酸および/またはその塩を含有してもよい。カルボン酸および/またはその塩としては、炭素数が1〜30のカルボン酸および/またはその塩が好ましい。前記カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸(安息香酸など)のいずれも使用できる。カルボン酸および/またはその塩の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上、40質量部以下である。
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤、有機硫黄化合物に加えて、さらに、酸化亜鉛や硫酸バリウムなどの重量調整剤、老化防止剤、色粉などを適宜配合することができる。前記コア用ゴム組成物の加熱プレス成型条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130℃〜200℃で10分間〜60分間加熱するか、あるいは130℃〜150℃で20分間〜40分間加熱した後、160℃〜180℃で5分間〜15分間と2段階加熱することが好ましい。
(カバー)
前記ゴルフボール本体は、コアと前記コアを被覆するカバーとを有するものが好ましい。この場合、前記カバーの硬度は、ショアD硬度で、60以下が好ましく、55以下がより好ましく、50以下がさらに好ましく、45以下が特に好ましい。カバーの硬度がショアD硬度で60以下であれば、スピン速度が一層高くなるからである。前記カバー硬度の下限は、特に限定されないが、ショアD硬度で、10が好ましく、15がより好ましく、20がさらに好ましい。カバー硬度は、カバーを形成するカバー用組成物をシート状に成形して測定したスラブ硬度である。
前記カバーの厚さは、0.1mm以上が好ましく、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上であり、1.0mm以下が好ましく、より好ましくは0.9mm以下、さらに好ましくは0.8mm以下である。前記カバーの厚さが0.1mm以上であれば、ゴルフボールの打球感がより良好となり、1.0mm以下であればゴルフボールの反発性を維持することができる。
前記カバーを構成する樹脂成分としては、特に限定されるものではなく、例えば、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などの各種樹脂、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱ケミカル(株)から商品名「テファブロック」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーや熱可塑性ポリエステル系エラストマーなどを挙げることができる。前記カバー材料は、単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
これらの中でもカバーを構成する樹脂成分としては、ポリウレタン、アイオノマー樹脂が好ましく、特にポリウレタンが好ましい。前記カバーを構成する樹脂成分が、ポリウレタンを含有する場合、樹脂成分中のポリウレタンの含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。前記カバーを構成する樹脂成分にアイオノマー樹脂を使用する場合、樹脂成分中のアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
前記ポリウレタンは、いわゆる熱可塑性ポリウレタンや熱硬化性ポリウレタンのいずれの態様であってもよい。熱可塑性ポリウレタンとは、加熱により可塑性を示すポリウレタンであり、一般に、ある程度高分子量化された直鎖構造を有するポリウレタンを意味する。一方、熱硬化性ポリウレタン(二液硬化型ポリウレタン)は、カバーを成形する際に、低分子量のウレタンプレポリマーと硬化剤(鎖長延長剤)とを反応させて高分子量化することにより得られるポリウレタンである。熱硬化性ポリウレタンには、使用するプレポリマーや硬化剤(鎖長延長剤)の官能基の数を制御することによって、直鎖構造のポリウレタンや3次元架橋構造を有するポリウレタンが含まれる。前記ポリウレタンとしては、熱可塑性エラストマーが好ましい。
前記カバーは、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
カバー用組成物を用いてカバーを成形する態様は、特に限定されないが、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する態様、あるいは、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する態様(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)を挙げることができる。カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、マークを形成することもできる。
カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
前記ゴルフボールが、スリーピース、フォーピースゴルフボール、ファイブピースゴルフボールなどのマルチピースゴルフボールである場合には、コアと最外層カバーとの間に設ける中間層としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂;スチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ゴム組成物の硬化物などが挙げられる。ここで、アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものが挙げられる。前記中間層には、さらに、硫酸バリウム、タングステンなどの比重調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。なお、中間層は、ゴルフボールの構成に応じて、内側カバー層や、外層コアと称される場合がある。
前記ゴルフボールの直径は、40mm〜45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は、42.67mm以上が好ましい。空気抵抗の観点から、直径は44mm以下が好ましく、42.80mm以下がより好ましい。ゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上が好ましく、45.00g以上がより好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が好ましい。
前記ゴルフボールは、直径40mm〜45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.2mm以上であり、4.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.5mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール1が示された一部切り欠き断面図である。図2は、図1のゴルフボールの一部が示された模式的拡大図である。ゴルフボール1は、球状コア2と、球状コア2を被覆するカバー3と、このカバー3の表面に設けられた塗膜4を有する。塗膜4は、ゴルフボールの最も外側に位置する最外層塗膜である。前記カバー3の表面には、多数のディンプル31が形成されている。このカバー3の表面のうち、ディンプル31以外の部分は、ランド32である。前記塗膜4は、単層構造である。この塗膜4は、基材樹脂と構成成分としてSiO2を50質量%以上含有する多孔質フィラー5を含有する。図2では、前記多孔質フィラー5は、塗膜4の内部に存在し、塗膜表面には露出していないが、これらの多孔質フィラー5は塗膜表面に露出していてもよい。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)圧縮変形量(mm)
コアに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にコアが縮む量)を測定した。
(2)コア硬度(ショアC硬度)
コアの表面部において測定した硬度をコア表面硬度とした。また、コアを半球状に切断し、切断面の中心において測定した硬度をコア中心硬度とした。硬度は、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて測定した。検出器は、「Shore C」を用いた。
(3)スラブ硬度(ショアD硬度)
樹脂組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように3枚以上重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「Shore D」を用いた。
(4)塗膜の膜厚(μm)
ゴルフボールを半球状に切断し、半球上の塗膜断面をマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−1000)を用いて観察し、塗膜の膜厚を求めた。
膜厚の測定箇所について図3、4を参照して説明する。図3はゴルフボールの断面の模式図である。図3に示すように、ゴルフボール断面において、ボール中心といずれかのディンプルの底とを通る直線A、この直線Aと直交する直線B、直線Aとのなす角が45°である直線Cを作成し、これらの直線と塗膜表面との交点をそれぞれポールP、赤道部E、肩部Sとする。
図4はディンプル31の底Deおよびゴルフボール1の中心を通過する断面の模式図である。ディンプルの底Deとは、ディンプル31の最も深い箇所である。エッジEdは、ディンプル31の両側に共通の接線Tが画かれたときの、ディンプル31と接線Tとの接点である。斜面における測定箇所Yは、ディンプルの底DeとエッジEdとを結ぶ直線の中点から、ディンプル31に向けて垂線を下ろした際、該垂線とディンプルの斜面とが交わる点である。ランドにおける測定箇所Xは、隣接するディンプルのエッジ間の中点である。なお、隣接ディンプル同士が接している等ランド部が存在しないものや、ランド部が極めて狭く膜厚を測定することが困難な場合は、ディンプルの底、エッジ、斜面を測定点とする。
測定では、まず6個のボールについて、ポールPの存在するディンプルと、赤道部Eおよび肩部Sの近傍のディンプルの3カ所から試験片を作製する。次に、各試験片(ディンプル)において、ディンプルの底De、エッジEd、斜面Y、ランドXにおける塗膜の厚みを測定する。最後に、ボール6個についての測定値から平均値を求め、その平均値を塗膜の膜厚とした。
(5)滑落角
ゴルフボール表面、および、塗膜を形成したシートについて、滑落角を測定した。
測定試料用のシートは、カバー用組成物から形成したスラブ上に、塗膜を形成して作製した。具体的には、カバー用組成物のペレットを、厚さ2mmの金型内へ十分に充填し、170℃、5分間圧縮成型し、冷却後金型からスラブを取り出した。このスラブ表面をサンドブラストによる表面処理を行なった。その後、エアーガン方式によるスプレー塗装にて、乾燥後の塗膜が所望の厚さになる様に塗料を塗布した。
滑落角は、滑落接触角計(協和界面科学社製、DMo−501SA)を用いて測定した。測定条件は下記の通りとした。ゴルフボールの測定では、最も直径が大きいディンプルの中心に水を滴下した。
測定方法 : 滑落法
解析方法 : 真円フィッティング法(区間60dot)
視野 : WIDE1
水液量 : 19±1μL(使用針 ステンレス製針15G)
滑落条件 : 0〜90°(毎秒2.0°連続傾斜)
滑落、移動判定距離 : 3dot以上移動した時の傾斜角度
また、下記式を用いて、ゴルフボールの測定値から付着エネルギー(mJ/m2)を算出した。なお、rは接触半径、wは液滴質量、gは重力加速度、αは滑落角である。
付着エネルギー=(w×g×sinα)/(2×π×r)
(6)損失正接(tan δ)
塗膜の貯蔵弾性率E’(Pa)、損失弾性率E”(Pa)および損失正接(tan δ)を以下の条件で測定した。
装置:動的粘弾性測定装置(ユービーエム社製、Rheogel−E4000)
測定サンプル:ポリイソシアネート組成物およびポリオール組成物を配合した塗料を40℃で4時間乾燥及び硬化をさせて、厚み0.11−0.14mmの塗膜フィルムを作製した。この塗膜フィルムから、幅4mm、クランプ間距離20mmになるように試料片を切り出した。
測定モード:引張
測定温度:−100℃〜150℃
昇温速度:4℃/分
測定データ取り込み間隔:4℃
加振周波数:10Hz
測定歪み:0.1%
(7)塗膜の10%モジュラス
塗膜の引張特性は、JIS K7161(2014)に準じて測定した。具体的には、ポリイソシアネート組成物およびポリオール組成物を配合した塗料を40℃で4時間乾燥及び硬化をさせて塗膜(厚さ0.05mm)を作製した。この塗膜を、JIS K7127(1999)で規定された試験片タイプ2(平行部の幅10mm、標線間距離50mm)に打ち抜いて試験片を作製した。この試験片について、精密万能試験機(島津製作所製、オートグラフ(登録商標))を用いて引張試験を行った。試験条件は、つかみ具間距離100mm、引張速度50mm/min、試験温度23℃とした。そして、10%ひずみ時の引張応力(10%モジュラス)を記録した。
(8)ドライ条件およびウェット条件でのスピン速度
ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、サンドウェッジ(クリーブランドゴルフ社製、商品名「CG15フォージドウェッジ」、ロフト角:58°)を取り付け、ヘッドスピード16m/sで、ゴルフボールを打撃し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってスピン速度(rpm)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて10回ずつ行い、その平均値をスピン速度とした。ウェット条件では、クラブフェースとゴルフボールを水で濡らした状態で試験を行った時のスピン速度である。なお、各ゴルフボールのスピン性能は、ゴルフボールNo.7のスピン速度を100として、指数化した値で示した。
(9)芝を噛んだ条件でのスピン速度
ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、サンドウェッジ(クリーブランドゴルフ社製、商品名「CG15フォードウェッジ」、ロフト角:58°)を取り付け、ヘッドスピード16m/sで、ゴルフボールを打撃し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってスピン速度(rpm)を測定した。なお、測定対象となるゴルフボールには、野芝の葉(長さ約3cm)を2枚貼付け、打撃時にクラブフェースとゴルフボールとの間に野芝が位置するように打撃した。測定は、各ゴルフボールについて10回ずつ行い、その平均値をスピン速度とした。なお、各ゴルフボールのスピン性能は、ゴルフボールNo.7のスピン速度を100として、指数化した値で示した。
(10)動摩擦係数
ゴルフボールの動摩擦係数を以下の条件で測定した。なお、下記の条件では、荷重が小さく、かつ、移動速度も遅いため、最外層塗膜の動摩擦係数が測定できる。
・試験機;トライボマスター TL201TS(トライボリティー社製)
・測定サンプル;ゴルフボール
・フェース板;ステンレス鋼(日新製鋼社製、HT1770(寸法:50mm×150mm×厚さ2mm))でフェース面の算術平均粗さRa:2.9μm、最大高さの平均値Ry:21.7μmのものを用いた。
・フェース板の作製方法:前記ステンレス鋼に対して、エアーブラスト処理して得た。研削材として、アルミナ粉末(#60)とSTEEL BALL(Ervin industries社製、ES300)とを1:1で混合させたものを使用し、ブラスト条件は、フェース板とノズルとの距離10cm、ノズル直前の圧力4〜6kg/cm2とした。
・RaおよびRyの測定方法:表面粗さ測定機(ミツトヨ社製、SJ−301)を用いて、JIS B 0601−1994に準拠した方法で測定した。Ra、Ryはそれぞれ測定点6点の平均値である。またカットオフ値λcは2.5mmであった。
・温度;23℃
・ボール移動速度;2mm/s
・荷重;1.96N(200gf)
・測定方法;ボールをチャックで固定し、200gfの荷重をかけた状態で平板上を一定の速度で移動し動摩擦力を測定した。
・測定項目;動摩擦(2−10mm区間の平均値)
[ゴルフボール本体の製造]
1.球状コアの作製
表1に示す配合のゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で150℃、19分間加熱プレスすることにより直径39.7mmの球状コアを得た。なお、ボール質量が45.6gとなるように、硫酸バリウムの量を調整した。
ポリブタジエンゴム:JSR(株)製、「BR730(ハイシスポリブタジエン)」
アクリル酸亜鉛:日本蒸溜工業社製、「ZN−DA90S」
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド:川口化学工業社製
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D」
安息香酸:Emerald Kalama Chemical 社製
2.中間層用組成物およびカバー用組成物の調製
表2、表3に示した配合の材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状の中間層用組成物およびカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。
ハイミラン(登録商標)AM7329:三井・デュポン・ポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミラン1555:三井・デュポン・ポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
エラストラン(登録商標)NY80A:BASFジャパン社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
3.中間層の成形
上記で得た中間層用組成物を、前述のようにして得た球状コア上に直接射出成形することにより、前記球状コアを被覆する中間層(厚さ:1.0mm)を形成した。
4.補強層の作製
二液硬化型エポキシ樹脂を基材樹脂とする補強層用組成物(神東塗料社製、商品名「ポリン(登録商標)750LE」)を調製した。主剤は、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂を30質量部と、溶剤を70質量部含有する。硬化剤は、変性ポリアミドアミンを40質量部、二酸化チタンを5質量部、溶剤を55質量部含有する。主剤と硬化剤との質量比は、1/1とした。この補強層用組成物を中間層の表面にエアガンで塗布し、23℃雰囲気下で12時間保持して、補強層を形成した。補強層の厚みは、7μmであった。
5.カバーの成形
ペレット状のカバー用組成物をハーフシェル成形用金型の下型の凹部ごとに1つずつ投入し、加圧してハーフシェルを成形した。補強層を形成した球体を2枚のハーフシェルで同心円状に被覆した。この球体およびハーフシェルを、キャビティ面に多数のピンプルを備えたファイナル金型に投入した。圧縮成形によりカバー(厚さ:0.5mm)を成形し、ゴルフボール本体を得た。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状のディンプルが多数形成された。
6.ウレタンポリオールの調製
第1ポリオール成分として、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、トリメチロールプロパン(TMP)を溶剤(トルエン、メチルエチルケトン)に溶解した。ここに、触媒としてジブチル錫ラウレートを主剤全体に対して0.1質量%となるように添加した。このポリオール溶液を80℃に保持しながら第1ポリイソシアネート成分としてのイソホロンジイソシアネート(IPDI)を滴下混合した。滴下後は、イソシアネートがなくなるまで撹拌を続け、その後常温で冷却し、ウレタンポリオール(固形分:30質量%)を調製した。得られたウレタンポリオールの組成等を表4に示した。
7.塗膜の形成
表5、表6に示した材料を配合して、塗料組成物No.1〜No.15を調製した。前記で得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、スプレーガンで塗料を塗布し、40℃のオーブンで24時間塗料を乾燥させ、直径42.7mm、質量45.6gのゴルフボールを得た。
塗装は、プロングを備えた回転体にゴルフボール本体を載置し、回転体を300rpmで回転させ、ゴルフボール本体からエアーガンを吹き付け距離(7cm)だけ離間させて上下方向に移動させながら行った。重ね塗りの各回のインターバルを1.0秒とした。エアーガンの吹付条件は、重ね塗り;2回、吹付エアー圧;0.15MPa、圧送タンクエアー圧;0.10MPa、1回の塗布時間;1秒、雰囲気温度;20℃〜27℃、雰囲気湿度;65%以下の条件で塗装とした。得られたゴルフボールのスピン性能について評価した結果を併せて表5、表6に示した。
表5、表6で用いた原料は、以下の通りである。
ポリイソシアネート組成物
HDIアダクト変性体:ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体(旭化成ケミカルズ社製、デュラネート(登録商標)E402−80B(NCO含有率:7.3%))
HDIビュレット変性体:ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット変性体(旭化成ケミカルズ社製、デュラネート(登録商標)21S−75E(NCO含有率:15.5%))
HDIイソシアヌレート変性体:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(旭化成ケミカルズ社製、デュラネートTKA−100(NCO含有率:21.7%))
IPDIイソシアヌレート変性体:イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(デグサ社製、VESTANAT(登録商標) T1890(NCO含有率:12.0%))
フィラー
珪藻土:昭和化学社製、「ラヂオライトF」(体積平均粒子径:7μm、嵩密度:0.40g/cm3)
ゼオライト:ユニオン昭和社製、「モレキュラーシーブ 13X POWDER」(体積中位径:8.7μm、嵩密度:0.5g/cm3)
タルク:日本タルク社製、「P8」(体積平均粒子径:3.3μm、嵩密度:0.12g/cm3)
表5、表6から明らかなように、最外層塗膜が、基材樹脂と多孔質フィラーとを含有し、前記基材樹脂は、(A)ポリイソシアネート組成物と、(B)ポリオール成分としてウレタンポリオールを含有するポリオール組成物とを反応させてなるポリウレタンを含有し、前記多孔質フィラーは、構成成分としてSiO2を50質量%以上含有するものであり、前記最外層塗膜は、動的粘弾性装置により所定条件にて測定した損失正接(tanδ)のピーク温度が、−40℃〜40℃である本発明のゴルフボールは、ウエット条件でのアプローチショットのスピン性能および芝を噛んだ条件でのアプローチショットのスピン性能に優れる。