JP2020159434A - 振動減衰装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】振動減衰装置における摩擦媒体を保持する部品や軸受とハウジングを連結している部品を耐摩耗性に優れたものとして摩耗粉の発生を抑制し、しかもそのような部品の剛性を可及的に下げることにより、振動減衰装置の減衰性能を充分に高めることである。【解決手段】内筒6を外筒3に対して半径方向に変位可能に支持し、空間7に充填された摩擦媒体8は、内部摩擦、摩擦媒体8と内筒6または外筒3との摩擦により振動エネルギーを散逸可能であり、内筒6は、α+β型またはα型のチタン合金からなり、表面にプライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれており、その表面は酸素濃度0.8質量%以上の酸素を固溶し、表面の硬さを550Hv以上とする。【選択図】図1

Description

この発明は、ロケットエンジンターボポンプなどの高速回転軸を支持する軸受の外側に設置し、軸の振動を抑制する振動減衰装置に関するものである。
ロケットエンジンターボポンプなどの高速回転軸では、危険速度での強制振動や自励振動などの軸振動が問題になることが多い。
軸振動を抑えるために適用されるエネルギー散逸機構であるダンパは、エネルギー散逸の方法によって粘性減衰型ダンパ、摩擦型ダンパ等の種類がある。ロケットエンジンターボポンプなど、極低温で運用される機器では、油が使用できないため粘性減衰型のダンパが適用できず、摩擦型ダンパが適用される場合がある。
摩擦型ダンパは、摩擦媒体と弾性部品から構成されており、ダンパの剛性はその弾性部品と摩擦媒体の剛性の並列ばねで表されるが、摩擦媒体の剛性を下げることは摩擦力の低下につながり、剛性と減衰が背反する関係になる。
例えば、いわゆるワイヤメッシュダンパは、内径側に軸受を嵌合し、そのフランジ部でハウジングに連結する「ソフトマウント」と、ソフトマウントをハウジングに連結するためのボルト、またそのボルトの締結部に嵌め込んだ摩擦媒体であるワイヤメッシュから構成されている。当該ダンパは、フランジでハウジングに連結する構造により、構造または形状をソフトマウントとしてダンパの剛性を下げている(特許文献1)。
また、いわゆる粒子ダンパは、内径側に軸受を嵌合した内筒、ハウジングに固定された外筒、内筒と外筒の間に充填された摩擦媒体である粒子、粒子に一定の圧力を負荷する予荷重ばねから構成されている。
当該ダンパは内筒を弾性部品とし、すなわち、周方向に間欠的に設けられたU字構造の支持部により外筒と連結された内筒の形状によってダンパの剛性を下げている(非特許文献1)。
特開平3−41211号公報
2015年10月7日開催の日本航空宇宙学会における宇宙科学技術連合講演会講演集の「ターボポンプ用粒子ダンパの開発」と題する論文
上述したように摩擦型ダンパにおけるソフトマウントや内筒等の弾性部品は、摩擦媒体を保持して軸受とハウジングを連結する役割を果たすものであり、そのような弾性部品は摩擦型ダンパの減衰性能と独立して剛性を調整できるため、摩擦型ダンパの剛性を調整するために弾性部品の形状を変更するなどして剛性を下げることができる。
しかしながら、弾性部品の形状を変更して剛性を下げる具体的な手段としては、薄いフランジにするか、またはU字構造の弾性部品の本数を減らすこと等によって、支持部の体積を小さくすることで剛性を下げることができる。
このようにすると弾性部品は、小さい体積で負荷を受けるため、応力が高くなりやすく、そのため下げられる剛性にも限度がある。
また、弾性部品を構成する材質として、チタン合金等のヤング率の低い材料を選択することによって剛性を下げることも可能であるが、そのような低剛性の材料は、耐摩耗性が充分でなく、摩擦型ダンパに適当な材質ではなかった。
また、内筒等の弾性部品は、摩擦媒体と圧接するので、耐摩耗性が悪いと弾性部品自体が摩耗し摩擦媒体の充填空間の容積が変化するか、もしくは摩耗粉の流出により軸受の機能が損なわれる場合もある。
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決し、いわゆる摩擦型ダンパと呼ばれる軸の振動減衰装置における摩擦媒体を保持する部品や軸受とハウジングを連結している部品を耐摩耗性に優れたものとして摩耗粉の発生を抑制し、しかもそのような部品の剛性を可及的に下げることにより、減衰性能を充分に高めることである。
上記の課題を解決するために、この発明は、回転機械の回転軸を支持する軸受の外径側に間隔を空けて配置され、前記回転機械のハウジングに固定可能な外筒と、前記外筒の内周面と隙間をあけて配置されて内周面で前記軸受を保持し、前記外筒に対して半径方向に変位可能な内筒と、この内筒の外周面と外筒の内周面との間に設けられた空間に充填され、摩擦により振動エネルギーを散逸可能な摩擦媒体と、を備えた振動減衰装置において、前記内筒もしくは外筒またはこれらの両方の所定部品が、α+β型またはα型のチタン合金からなり、前記所定部品の表面にプライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれており、前記所定部品の表面からの深さに応じて酸素濃度が連続的に減少する酸素拡散層を設け、前記所定部品の表面は酸素濃度0.8質量%以上の酸素を固溶し、前記所定部品の表面の硬さが550Hv以上である軸受の振動減衰装置としたものである。
この発明の振動減衰装置は、回転機械のハウジングに固定可能な外筒と、軸受を保持する内筒が、前記外筒に対して半径方向に変位可能であり、内筒の外周面と外筒の内周面との間に設けられた空間に、摩擦媒体が充填されている。
摩擦媒体は、粉粒体もしくは繊維の集合物またはワイヤーメッシュからなり、摩擦により振動エネルギーを散逸可能なものである。
そのため、軸の振動は、内筒の半径方向の変位として摩擦媒体に伝わり、摩擦媒体の振動は摩擦媒体の単体同士の摩擦、摩擦媒体と内筒との摩擦、摩擦媒体と外筒との摩擦によって、摩擦熱の発生や塑性変形を伴う摩擦エネルギーとして散逸し、外筒から回転機械のハウジングに伝わる振動エネルギーが、軸の振動エネルギーに比べて減衰する。
このように軸の振動減衰装置は、摩擦媒体の相対変位により摩擦力を発生させ、振動エネルギーを摩擦エネルギーに変換して減衰する機構を有するが、その減衰性能は発生する摩擦エネルギーによって決まる。摩擦エネルギーは摩擦力に相対変位量を乗じたもので表されるため、以下の数式(1)が成立する。
減衰性能=摩擦エネルギー=摩擦力×相対変位量 (1)
数式1において減衰性能を向上させるには、相対変位量を大きくする必要があるが、そのためには振動減衰装置の所定部品の剛性を下げる必要がある。
この発明の振動減衰装置は、内筒もしくは外筒またはこれらの両方の所定部品が、プライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれたものであり、かつ酸素硬化層を有するように、表面硬化させたチタン合金からなるので、所定部品の剛性を下げて減衰性能に優れた特性を備えており、しかも所定部品の表面には表面からの深さに応じて酸素濃度が連続的に減少する酸素拡散層を設け、表面の硬さおよび酸素濃度を所定範囲に調製したことにより、前記減衰性能の改善がなされると共に、耐摩耗性の改善された振動減衰装置にすることができる。
酸素拡散層は、チタン合金製の内筒もしくは外筒またはこれらの両方の所定部品の表面に、酸素濃度が表面からの深さに応じて連続的に減少している層であるので、密着性よくチタン合金の内部と一体化して剥離し難い状態に設けられ、チタン合金の表面の強度,硬さ,耐食性,耐摩耗性を向上させ、しかもチタン合金全体の剛性に影響を及ぼさない。
上記チタン合金は、できるだけ引張強度、クリープ強さ等を高めるために、α相の安定化元素であるアルミニウム元素(Al)をある程度(7質量%以下)まで含ませることが好ましく、例えば、アルミニウム元素(Al)が6質量%含有され、かつバナジウム(V)が4質量%含有されているTi−6Al−4Vチタン合金などを用いることが好ましい。
この発明の振動減衰装置は、内筒もしくは外筒またはこれらの両方の所定部品が、プライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれたものであり、かつ酸素硬化層を有し、表面硬化させたチタン合金からなるので、摩擦媒体を保持する部品や軸受とハウジングを連結している部品が耐摩耗性に優れて摩耗粉の発生を抑制するものとなり、しかもそのような所定部品の剛性を可及的に下げて、減衰性能を充分に高めた振動減衰装置となる利点がある。
この発明の振動減衰装置の第1実施形態を示す概略断面図 図1の振動減衰装置の内筒と外筒の関係を示す斜視図 第2実施形態を示す概略断面図 第3実施形態を示す概略断面図 実施例の試料の表面からの深さと硬さ(Hv)の関係を示す図表 実施例の試料の表面からの深さと酸素濃度の関係を示す図表 実施例の試料の表面のEBSD測定に用いた画像の図面代用写真
この発明の実施形態を以下に、添付図面に基づいて説明する。
図1に示す第1実施形態の振動減衰装置Aにおいては、回転機械の回転軸1は、転がり軸受2によって支持されている。
転がり軸受2の外径側に間隔を空けて配置されている外筒3は、回転機械のハウジング4にボルト5によって固定されており、内筒6は、外筒3の内周面と隙間をあけて配置されて内周面で転がり軸受2を嵌め入れて保持しており、この内筒6は、隙間a内で外筒3に対して半径方向に変位可能である。
内筒6の外周面と外筒3の内周面との間に設けられた空間7に充填された摩擦媒体8は、球状粒子を単位とする集合物からなるものを図中に例示しており、隣接する球状粒子同士の摩擦、摩擦媒体8と内筒6または外筒3との摩擦により振動エネルギーを散逸可能である。
図1および図2に示すように、内筒6の軸方向の一端(図中の左端)には、内筒6を外筒3に対して半径方向に変位可能に支持し、内筒6を外筒3の軸に一致させるように配置し、かつ支持する内筒支持用ばね9が周方向に等間隔で設けられている。内筒支持用ばね9は、コ字状の折り返し片端部9aが外筒3の外径部に弾性力をもって係合している。
このような内筒6は、α+β型またはα型のチタン合金からなり、その表面にプライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれており、またその表面は酸素濃度0.8質量%以上の酸素を固溶し、表面の硬さが550Hv以上である。このような材質に製造する処理工程の詳細については、後述する。
外筒3の内周面の一端には、摩擦媒体8を収容する空間7の一方の端面を形成する内向きフランジ3aが形成され、この内向きフランジ3aの内周面と、内筒6の外周面との間には、内筒6の半径方向の変位を可能にする隙間aを設けており、この隙間aは摩擦媒体の単位要素である球状粒子が漏れ出さない大きさに設定されている。
前記内筒支持用ばね9が係合する外筒3の軸方向の一端と反対側の端部の外周面には、半径方向の外径に向かって突出する固定フランジ3bが形成され、この固定フランジ3bに空間7の他方の端面を形成するリング板10がボルト5によって固定されている。
空間7のリング板10側には、シールリング11を介して固定リング12が配置されており、この固定リング12の内周面と内筒6の外周面との間には、内筒6の半径方向の変位を可能にする隙間bを球状粒子が漏れ出さない大きさに設けている。
固定リング12の空間7側には、予圧用ばね13を介して予圧リング14が軸方向に移動可能に設けられている。この予圧リング14の内周面と内筒6の外周面との間にも、内筒6の半径方向の変位を可能にする隙間cを球状粒子が漏れ出さない大きさに設けている。
球状粒子からなる摩擦媒体としては、例えば粒子直径が1mm程度の鋼球(SUS440C)やセラミック球(Si)などを用いることができ、これらは同一サイズでもよく、異なるサイズの組み合わせでもよい。
また球状粒子以外の摩擦媒体8としては、例えば空間7にシールリング11等によって封入可能な程度の粒径の粒体や紛体、もしくは繊維の集合物や繊維層を有する粒体や積層体、またはワイヤーメッシュ等のように摩擦を伴いながら弾性変形可能なもの等、加圧に応じて体積を弾性的に増減させることが可能であり、それによって振動エネルギーを減衰させることが可能な周知のダンパ要素を採用できる。
図1に示すように、第1実施形態の振動減衰装置を設置した軸に振動により軸変位が生じると、振動する軸1の加振力は、転がり軸受2を通じて図中の矢印Xに示すように内筒6を半径方向に変動させる。この内筒6の変動により内筒6と外筒3との間の空間7に充填された球状粒子からなる摩擦媒体8が流動し、球状粒子同士、球状粒子と内筒6の外周面、球状粒子と外筒3の内周面の間で摩擦が生じ、この摩擦によって振動エネルギーが散逸し、振動が減衰される。
ここで、チタン合金製の内筒6は、その低い剛性により減衰性能が優れたものでありながら、後述する浸酸処理において高硬度の酸素拡散層15を設けており、耐摩耗性に優れているので、球状粒子の集合物からなる摩擦媒体8との摩擦による耐摩耗性にも優れたものである。
図3に示す第2実施形態の振動減衰装置Bは、第1実施形態とは内筒6の形状が異なるものであり、その他の部品や機能は略同等な部品で構成されたものである。
すなわち、第2実施形態の内筒6は、円筒形状であり、第1実施形態の内筒支持用ばね(図1,2の符号9)を有していない代わりに、内筒6の固定リング12を設置する側を軸方向に延長して、回転機械のハウジング4の下部に圧接するように固定される固定端を設けており、内筒6の自由端は、半径方向(矢印X方向)に弾性的に変位可能としたものである。
また、図4に示す第3実施形態の振動減衰装置Cも、第1実施形態とは内筒6の形状が異なるものであり、その他の部品や機能は略同等な部品で構成されたものである。
すなわち、第3実施形態の内筒6は、固定リング12側の端部に半径方向の外方に広がるフランジ6aを有し、フランジ6aは、外筒3の固定フランジ3bと重ねて、回転機械のハウジング4にボルト5によって固定されている。
また、内筒6のフランジ6a側において摩擦媒体8と当接しない部分には、複数の穴を設け半径方向の剛性を低くしている。
上記のように構成された第3実施形態は、内筒6の自由端側を半径方向(矢印X方向)に弾性的に変位可能である。
上記した第2実施形態および第3実施形態の振動減衰装置においても、第1実施形態と同様に、軸受に振動によって軸変位が生じると、内筒6の変動により内筒6と外筒3との間の空間7に充填された球状粒子等からなる摩擦媒体8が流動し、球状粒子同士、球状粒子と内筒6の外周面、球状粒子と外筒3の内周面との間で摩擦が生じ、この摩擦によって振動エネルギーが散逸し、振動が減衰される。
なお、この発明の振動減衰装置が振動を減衰可能な軸受は、上記の実施形態で図示した玉軸受からなる転がり軸受2に限定されることなく、ころ軸受や滑り軸受等も含めていうものである。
また、上記第1〜3実施形態の内筒6および必要に応じて外筒3を含めて、少なくとも摩擦媒体との接触面を含む所定部品は、以下の材質のα+β型またはα型のチタン合金で形成されている。
例えば、α+β型チタン合金の例として、Ti-6Al-4VやTi-6Al-2Sn-4Zr-6Mo等を挙げることができ、またα型チタン合金の例として、Ti-5Al-2.5SnやTi-8Al-1Mo-1V等を挙げることができる。
上記のようなチタン合金製の所定部品は、複数のα結晶粒を含んでおり、α結晶粒とは、α相で構成されている結晶粒である。α結晶粒には、プライマリα結晶粒及びセカンダリα結晶粒が含まれている。プライマリα結晶粒は、プライマリα相で構成される結晶粒である。セカンダリα結晶粒は、セカンダリα相で構成される結晶粒である。
プライマリα相は、後述する溶体化処理工程、時効処理工程及び浸酸処理工程のいずれにおいてもβ相に変態することなく残存したα相である。
また、セカンダリα相は、一旦β相に変態した後に冷却される際に、マルテンサイト変態又はマッシブ変態により形成される相である。
プライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒とは、形状により識別することができる。プライマリα結晶粒は楕円形状を有しており、セカンダリα結晶粒は針状の形状を有している。
各々のα結晶粒は、結晶方位により識別される。より具体的には、あるα結晶相の結晶方位と当該α結晶相に隣接する別のα結晶相の結晶方位とのずれが15°未満である場合には、それらのα結晶相は、1つのα結晶粒とみなされる。
他方で、あるα結晶相の結晶方位と当該α結晶相に隣接する別のα結晶相の結晶方位とのずれが15°以上である場合には、それらのα結晶相は、別のα結晶粒と見做される。
結晶方位の測定(各々のα結晶粒界の特定)は、例えば、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction)法を用いて行われる。
上記測定法を用いて、この発明における振動減衰装置の所定部品の表面にあるチタン合金に含まれるα結晶粒の大きさを測定すると、第1群と、第2群とに区分され、第1群に属するα結晶粒の結晶粒径の最小値は、第2群に属するα結晶粒の結晶粒径の最大値よりも大きい。第1群に属するα結晶粒の総面積をα結晶粒の総面積で除した値は、0.7以上である。第1群に属する最も結晶粒径が小さいα結晶粒を除いた第1群に属するα結晶粒の総面積をα結晶粒の総面積で除した値は、0.7未満である。
このことを別の観点からいうと、所定部品の表面にあるチタン合金に含まれるα結晶粒は、結晶粒径が大きいものから順番に第1群に割り当てられる。そして、それまでに第1群に割り当てられたα結晶粒の総面積がα結晶粒の総面積の0.7倍をはじめて超えた段階で、第1群への割り当てを停止し、残余のα結晶粒を第2群に割り当てる。
なお、「表面にあるα結晶粒」とは、所定部品の表面と当該表面から250μmの距離にある位置との間にある領域に含まれているα結晶粒のことをいう。「表面にあるα結晶粒」は、所定部品の表面と当該表面から300μmの距離にある位置との間にある領域に含まれているα結晶粒であってもよい。
第1群に属するα結晶粒の平均粒径は、25μm以下である。第1群に属するα結晶粒の平均粒径は、好ましくは15μm以下である。第1群に属するα結晶粒の平均粒径は、各々の結晶粒の円相当径から算出することができる。
以上のようにしてEBSD法におけるチタン合金表面の観察画像から、結晶方位差15°以上を結晶粒界とみなし、前記観察画像の全領域に対し、結晶粒の面積が大きい結晶粒から降順に面積を足し合わせ、前記観察画像領域中の全結晶粒面積の70%に到達した結晶粒までの結晶粒径の平均値を求めた際の平均粒径が15μm以下の結晶粒で構成されていることが確認できる。
チタン合金は、表面において、0.8質量%以上の酸素(O)を含有している。好ましくは、チタン合金は、表面において、1.4質量%以上の酸素を含有している。さらに好ましくは、チタン合金は、表面において、1.8質量%以上の酸素を含有している。なお、チタン合金中における酸素の濃度は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)により測定される。
プライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれているチタン合金からなる所定部品を製造するには、以下のように準備工程、溶体化処理工程、時効処理工程、浸酸処理工程、後処理工程を経て行なわれる。
準備工程においては、α+β型チタン合金またはα型チタン合金製素材に対し、最終製品の寸法に近い寸法と形状にまで切削加工を行なう。
溶体化処理工程では、前記準備工程にて一定形状まで加工された部品を所定の温度と時間、常圧下で、不活性ガスを導入した炉中で加熱保持する。
溶体化処理工程では、保持工程と、冷却工程とを必須工程とする。
保持工程においては、処理対象材が炉内で所定の保持温度(以下に「第1温度」という)において、所定の時間(以下、「第1時間」という)保持される。
溶体化処理工程においては、対象材を構成するチタン合金中のα相の一部が、β相へと変態する。
前記した第1温度は、対象材を構成するチタン合金のβ単相変態点よりも低い。
β単相変態点とは、対象材を構成するチタン合金中のα相の全てがβ相へと変態する温度である。
冷却工程は、保持工程の後に行われる。
冷却工程においては、保持工程を経た対象材の冷却が行われる。これにより、保持工程においてβ相に変態したα相がセカンダリα相となる。
時効処理工程は、溶体化処理工程が行われた後にプライマリα結晶粒より微細なセカンダリα結晶粒を析出させることを目的として行われる。
時効処理工程おいては、対象材が、所定の温度(以下、「第2温度」という)において所定の時間(以下、「第2時間」という)保持された後に、冷却される。時効処理工程により、冷却工程においてα相に変態していないβ相から、微細なセカンダリα結晶粒が析出する。
第2温度は、対象材を構成するチタン合金のβ変態開始点よりも低い。β変態開始点とは、対象材を構成するチタン合金中のα相の少なくとも一部が、β相への変態を開始する温度である。
なお、加熱保持する際に、炉内は、常圧下で不活性ガスとしてアルゴン、希ガスであるヘリウムや窒素ガス等を導入する。
浸酸処理工程においては、溶体化処理工程及び時効処理工程の後、高硬度を有する酸素拡散層を形成するために浸酸処理を行なう。
浸酸処理工程は、対象材を、所定の保持温度(以下、「第3温度」という)において、所定の時間(以下、「第3時間」という)保持することにより行われる。
第3温度は、対象材を構成するチタン合金に含まれる結晶粒の粗大化を抑制する観点からβ単相変態点未満が好ましい。
浸酸処理工程は、二酸化炭素(CO)を含む雰囲気ガス中において行われる。この雰囲気ガスは、不活性ガスをさらに含んでいてもよい。不活性ガスは、例えばアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の希ガスである。不活性ガスは、窒素(N)であってもよい。雰囲気ガスの圧力は、常圧(大気圧)であることが好ましい。
上記一連の処理工程は、処理対象材の全表面に対して行なってもよく、また処理対象材の所定部位のみを浸酸処理する時には、処理対象材の一部にマスキングを施して酸素拡散層を設けてもよい。
浸酸処理の条件をより詳細に説明すれば以下の通りである。
すなわち、常圧下の炉内にアルゴンガスをベースとしたCOガスを導入し,チタン合金製の部材を炉内にて加熱保持後、冷却する。チタン合金をCOガス雰囲気下で加熱すると,チタン合金製部材の表面でCOガスがOとCに解離し、これらの元素が表面から内部に拡散浸透する。なお、炭素は、酸素と比較してチタン中での固溶限が狭いため、対象材の固溶強化に殆ど影響しない。
後処理工程として、前記の浸酸処理工程の後、対象材を特定の寸法精度に仕上げるための旋削や研磨等の機械加工を行ない、振動減衰装置の組立加工を行なう。
すなわち、浸酸処理後のチタン合金の表層部には、TiC、TiOまたはTiOからなる化合物層が形成されるが、この化合物層は、硬さは高いものの脆性的であるため、後処理工程の機械加工にて表層を除去する。また、浸酸処理後、特定の寸法精度に仕上げるため、旋削や研磨等の機械加工が実施される。
上記一連の工程によって製造された所定部品の表面の酸素濃度は、約0.8質量%以上になり、所定部品表面の硬度は約550Hv以上になる。また、所定部品表面のEBSD観察画像において、結晶方位差15°以上で粒界として規定し、EBSD画像の全領域に対し、結晶粒の面積が大きい結晶粒から降順に面積を足し合わせ、EBSD画像領域中の全結晶粒面積の70%に到達した結晶粒までの結晶粒径の平均値を求めた際の平均粒径が15μm以下の結晶粒で所定部品の所定部位の表面を構成する。
上記のようにして得られる実施形態のチタン合金製の所定部品は、溶体化及び時効処理において結晶粒微細化を行うことで、所定部品の表面にプライマリα結晶粒と微細なセカンダリα結晶粒が含まれているから、結晶粒の平均粒径が微細化されることによって高い耐疲労強度を有する。また、低い剛性でありながら、浸酸処理において高硬度の酸素拡散層15を設けることができ、耐摩耗性に優れ、しかも剛性を所要程度に積極的に低下させた内筒6および外筒3を備えた振動減衰装置になる。
ASTM B348-13 GR.5準拠のα+β型チタン合金であるTi-6Al-4Vからなる振動減衰装置(図1)の内筒等の所定部品用の素材に対し、溶体化処理工程、時効処理工程を行なった。
このときの内筒等の所定部品用素材(以下、「試料」と称する。)の外周面ビッカース硬さ(Hv)を、試料の表面から少しずつ削り取りながら深さ0.5mmまで所定深さ毎に測定し、各深さでのHvと当初表面からの深さ(mm)との関係を図5に示した。
また、上記のビッカース硬さ(Hv)の測定と同時に、酸素濃度(質量%)をEPMAによって測定し、試料表面から深さ0.5mmまでの深さ(mm)との関係を図6に示した。ここで、図5、6では、後処理工程を行っていない試料の硬さ及び酸素濃度分布を示している。
最終製品である実施例の振動減衰装置の内筒等の所定部品は、表層が、後処理工程での機械加工によって任意に設定される取り代分だけ除去されたものである。したがって、図5、6に示される試料の硬度及び酸素濃度分布において、取り代分より深い位置での硬度や酸素濃度が、実際の内筒等の所定部品表面の硬度および酸素濃度に相当する。
ここで、浸酸処理後の機械加工は、硬化層である酸素拡散層を可能な限り除去しない範囲内での取り代にて行うことが望ましく、一般的に取り代は、0.10mm未満である。参考のために、図中に記載した試料の表面から取り代0.10mmで形成される所定部品表面の硬さ及び酸素濃度は、547Hv及び0.78質量%であった。
また、試料の表面から取り代0.10mmで所定部品の表面を形成した場合のEBSD画像を図7に示した。
図7のEBSD画像からも明らかなように、測定した試料中のα結晶粒の平均粒径は、10.1μmであった。また溶体化および時効処理により析出したセカンダリα結晶粒は、EBSD画像に現れているように微細な針状の二次α相であることが確認された。
この時の平均粒径の測定条件は、結晶方位差15°以上で粒界として規定し、EBSD画像の全領域に対し、結晶粒の面積が大きい結晶粒から降順に面積を足し合わせ、EBSD画像領域中の全結晶粒面積の70%に到達した結晶粒までの結晶粒径の平均値として測定した。
以上のようにして得られた実施例の振動減衰装置の内筒等の所定部品の表面は、微細なセカンダリα結晶粒を有し、α結晶粒の平均粒径は、10.1μmと小さくなり、また浸酸処理されて表面に充分な酸素を固溶しているので、表面の硬さは約550Hv及び酸素濃度は約0.8質量%であり、軽量かつ低剛性なチタン合金製であっても所要硬さと耐摩耗性及び疲労強度を備えており、振動減衰装置の所定部品に適用できるものであることが分かる。
ロケットエンジンターボポンプやジェットエンジンなどの航空宇宙機器用の軸の振動減衰装置として適用でき、軽量化や、減衰性能および信頼性の向上が求められる用途に汎用性のあるものとして利用できる。
1 回転軸
2 転がり軸受
3 外筒
3a 内向きフランジ
3b 固定フランジ
4 ハウジング
5 ボルト
6 内筒
6a フランジ
7 空間
8 摩擦媒体
9 内筒支持用ばね
9a 折り返し片端部
10 リング板
11 シールリング
12 固定リング
13 予圧用ばね
14 予圧リング
15 酸素拡散層
A,B,C 軸の振動減衰装置
a,b,c 隙間

Claims (4)

  1. 回転機械の回転軸を支持する軸受の外径側に間隔を空けて配置され、前記回転機械のハウジングに固定可能な外筒と、
    前記外筒の内周面と隙間をあけて配置されて内周面で前記軸受を保持し、前記外筒に対して半径方向に変位可能な内筒と、
    この内筒の外周面と外筒の内周面との間に設けられた空間に充填され、摩擦により振動エネルギーを散逸可能な摩擦媒体と、を備えた振動減衰装置において、
    前記内筒もしくは外筒またはこれらの両方の所定部品が、α+β型またはα型のチタン合金からなり、前記所定部品の表面にプライマリα結晶粒とセカンダリα結晶粒が含まれており、前記所定部品の表面からの深さに応じて酸素濃度が連続的に減少する酸素拡散層を設け、前記所定部品の表面は酸素濃度0.8質量%以上の酸素を固溶し、前記所定部品の表面の硬さが550Hv以上であることを特徴とする振動減衰装置。
  2. 上記所定部品の表面が、摩擦媒体との接触面を含む表面である請求項1に記載の振動減衰装置。
  3. 上記摩擦媒体が、粉粒体もしくは繊維の集合物またはワイヤーメッシュからなる摩擦媒体である請求項1または2に記載の振動減衰装置。
  4. 上記チタン合金が、Ti−6Al−4Vチタン合金である請求項1〜3のいずれかに記載の振動減衰装置。
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