以下、本開示の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ここで、各実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。また、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本開示に直接関係のない要素については、図示を省略する。
(第1実施形態)
まず、本開示の第1実施形態に係る、金属部材の作製方法について説明する。図1は、本実施形態に係る作製方法の作製対象となる金属部材としてのブロック10を示す斜視図である。図1(a)は、三次元造形装置1を用いて造形させるブロックを示す図である。図1(a)に示されているブロックは、ブロック10を作製する途中の段階にあるものである。そこで、以下、最終作製品であるブロック10と区別するために、図1(a)の状態にあるブロックを「中間部材10A」と表記する。図1(b)は、HIP装置40を用いて中間部材10Aに対してHIP処理が施されて作製された最終作製品としてのブロック10を示す図である。なお、本実施形態に係る各図では、鉛直方向にZ軸を取り、Z軸に垂直な水平面内において、X軸、及び、X軸に垂直なY軸を取るものとする。なお、図1では、ブロック10及び中間部材10Aは、内部の状態を明らかにするために、一部がYZ平面で切断された断面で描画されている。
本開示の作製方法は、広く各種産業用装置等の一部品として用いられる金属部材の作製に適用可能である。したがって、金属部材の材質又は形状は、様々である。本実施形態では、以下、金属部材の一例としてのブロック10が、一辺の長さがL3である立方体であるものとして説明する。
本実施形態に係る金属部材の作製方法では、まず、図1(a)に示すような中間部材10Aが三次元金属積層造形により造形される。以下、三次元金属積層造形を三次元造形と略記する。
中間部材10Aは、外殻構造体12と、内部構造体14と、中間層16とを有する。外殻構造体12は、中間部材10Aの外殻を構成する箱状体である。外殻構造体12の外形は、一辺の長さがL1である立方体状である。外殻構造体12の厚さは、XYZのすべての方向においてT1である。内部構造体14は、周囲に中間層16を介在させた状態で、外殻構造体12に内包される立方体である。内部構造体14の一辺の長さはL2である。中間層16は、外側が外殻構造体12に接し、内側が内部構造体14に接する層である。中間層16の厚さは、XYZのすべての方向においてT2である。本実施形態では、外殻構造体12の厚さT1と、中間層16の厚さT2とは、便宜上、同一の値とする。外殻構造体12及び内部構造体14は、金属粉末P(図2等参照)を以下のように加工することで形成される。一方、中間層16は、金属粉末Pそのもので構成される。
図2は、本実施形態に係る作製方法に用いられる三次元造形装置1の構成の一例を示す概略断面図である。三次元造形装置1は、金属粉末Pに電子ビームEを照射して金属粉末Pを溶融し凝固させ、凝固した金属粉末Pを積層させていくことで、三次元の物体を造形する、いわゆるパウダーベッド方式を採用した装置である。本実施形態における金属粉末Pは、例えば、Ni基耐熱合金であるCM247LC等である。金属粉末Pは、多数の粉末体により構成される。また、金属粉末Pとして、電子ビームEの照射により溶融及び凝固できるものであれば、粉末より粒径の大きい粒体を用いてもよい。
なお、金属粉末Pを溶融し凝固させる粉末層の造形処理ごとに、その造形処理の前に、さらに金属粉末Pに電子ビームEを照射して、金属粉末Pの予備加熱を行ってもよい。予備加熱は、予熱とも称され、金属粉末Pの融点未満の温度で金属粉末Pを加熱する処理である。この予備加熱により、金属粉末Pが加熱されて仮焼結され、電子ビームEの照射による金属粉末Pへの負電荷の蓄積が抑制されて、電子ビームEの照射時に金属粉末Pが飛散して舞い上がるスモーク現象を抑制することができる。
三次元造形装置1は、ビーム出射部2と、造形部3と、制御部4とを備える。
ビーム出射部2は、造形部3の金属粉末Pに対し電子ビームEを出射し、金属粉末Pを溶融させるユニットである。電子ビームEは、荷電粒子である電子の直線的な運動により形成される荷電粒子ビームである。ビーム出射部2は、電子銃部21と、収差コイル22と、フォーカスコイル23と、偏向コイル24と、コラム25とを備える。
電子銃部21は、造形部3に向けて電子ビームEを出射する。電子銃部21は、制御部4と電気的に接続され、制御部4からの制御信号を受けて作動する。
収差コイル22は、電子銃部21から出射される電子ビームEの周囲に設置され、電子ビームEの収差を補正する。収差コイル22は、制御部4と電気的に接続され、制御部4からの制御信号を受けて作動する。なお、三次元造形装置1の種類によっては、収差コイル22の設置を省略する場合もある。
フォーカスコイル23は、電子銃部21から出射される電子ビームEの周囲に設置され、電子ビームEを収束させて、電子ビームEの照射位置におけるフォーカス状態を調整する。フォーカスコイル23は、制御部4と電気的に接続され、制御部4からの制御信号を受けて作動する。
偏向コイル24は、電子銃部21から出射される電子ビームEの周囲に設置され、制御信号に応じて電子ビームEの照射位置を調整する。偏向コイル24は、電磁的にビーム偏向を行うため、機械的にビーム偏向を行う場合に比べて、電子ビームEの照射時における走査速度を高速にすることができる。また、偏向コイル24は、制御部4と電気的に接続され、制御部4からの制御信号を受けて作動する。
コラム25は、例えば筒状の筐体である。コラム25は、電子銃部21、収差コイル22、フォーカスコイル23及び偏向コイル24を収容する。
造形部3は、所望の形状に金属部材を造形するユニットである。造形部3は、チャンバ30と、ステージ31と、昇降機32と、造形タンク33と、リコータ34と、ホッパ35とを備える。
チャンバ30は、例えば箱状の筐体である。チャンバ30は、ステージ31、昇降機32、リコータ34及びホッパ35を収容する。チャンバ30は、ビーム出射部2のコラム25と連結している。チャンバ30の内部空間は、電子銃部21が配置されるコラム25の内部空間と連通している。また、チャンバ30の内部空間は、真空又はほぼ真空な状態に維持されている。
ステージ31は、中間部材10Aを支持する。ステージ31は、電子ビームEの出射方向の延長線上に位置し、例えば、主平面を水平面とする円板状の部材である。また、ステージ31は、造形タンク33内に配置され、Z方向に移動可能である。なお、ステージ31の表面上には、底板36が設置されている。金属粉末Pは、底板36上に直接的に供給される。
昇降機32は、ステージ31を昇降させる機構である。昇降機32は、制御部4と電気的に接続され、制御部4からの制御信号を受けて作動する。例えば、昇降機32は、金属部材の造形の初期においてステージ31を上部へ移動させておき、ステージ31上で金属粉末Pが溶融凝固されて積層されるごとにステージ31を降下させる。なお、昇降機32は、ステージ31を昇降できる機構であれば、いずれの機構のものを用いてもよい。
造形タンク33は、ステージ31の外形に合わせた内壁を有する筒状容器である。本実施形態の例では、ステージ31の形状は円板状であるので、造形タンク33の形状は、ステージ31の移動方向に沿った軸に対して断面形状が同心円状となる内壁を有する円筒状である。これにより、造形タンク33に供給される金属粉末Pのステージ31の下方へ漏れ落ちが抑制される。なお、金属粉末Pの漏れ落ちをより抑制するために、ステージ31の外縁部にシール材を設けてもよい。また、造形タンク33の形状は、円筒状に限定されず、断面矩形の角筒状であってもよい。
リコータ34は、ステージ31の上方に金属粉末Pを供給し、金属粉末Pの表面を均す粉末塗布機構である。リコータ34は、例えば棒状又は板状の部材である。リコータ34は、図2中の矢印で示すように、水平方向に移動することにより電子ビームEの照射領域に金属粉末Pを供給し、金属粉末Pの表面を均す。また、リコータ34は、不図示のアクチュエータ等により移動制御される。なお、金属粉末Pを均す機構として、リコータ34以外の機構を用いてもよい。
ホッパ35は、塗布前の金属粉末Pを収容する容器である。ホッパ35は、下部に、金属粉末Pを排出する排出口35aを有する。排出口35aから排出された金属粉末Pは、ステージ31上へ直接流入するか、又は、リコータ34によりステージ31上へ供給される。なお、ステージ31上に金属粉末Pを層状に供給する機構としては、リコータ34及びホッパ35以外の機構を用いてもよい。
制御部4は、三次元造形装置1の装置全体の動作等を制御するユニットである。制御部4は、例えば、CPU、ROM又はRAMを有するコンピュータを含む。制御部4は、例えば、ステージ31の昇降制御、リコータ34の作動制御、電子ビームEの出射制御、偏向コイル24の作動制御などを行う。
制御部4は、例えば、中間部材10Aの三次元CAD(Computer-Aided Design)データを用いて造形を行わせる。三次元CADデータは、予め制御部4に入力される、中間部材10Aの形状データである。制御部4は、三次元CADデータをもとに、二次元のスライスデータを生成する。スライスデータは、例えば、中間部材10Aの水平断面のデータであり、積層方向の各位置に応じた多数のデータの集合体である。制御部4は、スライスデータに基づいて、電子ビームEを金属粉末Pに対し照射する領域を決定し、その領域に応じて偏向コイル24に制御信号を出力する。これにより、中間部材10Aの形状に応じた領域に対し、電子ビームEが照射される。なお、金属粉末Pの予備加熱を行う場合も、制御部4は、ビーム出射部2の偏向コイル24に制御信号を出力し、ステージ31上の加熱領域に対し、電子ビームEを走査して照射させる。
次に、三次元造形装置1を用いた三次元造形工程について説明する。
図3は、三次元造形装置1により中間部材10Aを造形する三次元造形工程の流れを時系列で示す概略断面図である。三次元造形工程では、底板36上の金属粉末Pに電子ビームEを照射して中間部材10Aの一部の造形を繰り返し、中間部材10Aを積層状に造形する。
まず、図3(a)を参照して、粉末層Laの最下層である第1層La1における中間部材10Aの造形について説明する。三次元造形装置1は、第1層La1における粉末供給処理を行う。粉末供給処理は、底板36上に金属粉末Pを供給し、そして、供給された金属粉末Pの表面を均す処理である。具体的には、制御部4は、昇降機32に制御信号を出力してステージ31の上下位置を調節し、不図示のアクチュエータ又は機構に制御信号を出力してリコータ34を作動させる。これにより、リコータ34が水平方向に移動し、ステージ31上に金属粉末Pが供給され、金属粉末Pの表面が均される。なお、図3(a)では、説明の便宜上、第1層La1以下の各粉末層Laの厚さが、外殻構造体12の厚さT1、及び、中間層16の厚さT2と同一であるものとしている。換言すれば、図3(a)では、積層方向において内部構造体14よりも下方及び上方に位置する外殻構造体12又は中間層16が、それぞれ1層分の粉末層Laによって形成されているものとしている。しかし、本開示では、このような形態に限定されない。すなわち、積層方向において内部構造体14よりも下方及び上方に位置する外殻構造体12又は中間層16のいずれか又はすべてを、2層以上の粉末層Laにより形成するようにしてもよい。
次に、三次元造形装置1は、第1層La1における造形処理を行う。造形処理は、実際に中間部材10Aの造形を行う処理である。具体的には、制御部4は、中間部材10Aの三次元CADデータに基づいて二次元のスライスデータを生成する。制御部4は、このスライスデータに基づいて、金属粉末Pに対し電子ビームEを照射する領域を決定し、その領域に応じてビーム出射部2から電子ビームEを照射させる。1つの層Laの厚さが外殻構造体12の厚さT1に相当するので、ここでの造形処理では、中間部材10Aの一部として、外殻構造体12の底部が造形されることになる。
ここで、本実施形態では、第1層La1において、外殻構造体12の底部を造形するビーム照射の前に、予備加熱処理を行ってもよい。この場合、制御部4は、予備加熱処理としてのビーム照射を行わせることで第1層La1全体にある金属粉末Pを仮焼結させて、その後、外殻構造体12を最終形成する造形処理としてのビーム照射を行わせる。
第1層La1に関して外殻構造体12の底部が形成された後、第2層La2では、上記のような粉末供給処理から造形処理までの一連の処理を繰り返すことにより、さらに中間部材10Aの一部が造形される。1つの粉末層Laの厚さが中間層16の厚さT2に相当するので、ここでの造形処理では、中間部材10Aの一部として、外殻構造体12の側壁部の一部が造形され、かつ、中間層16の底部が形成されることになる。
ここで、第2層La2においても、外殻構造体12の側壁部の一部と中間層16の底部とを造形するビーム照射の前に、予備加熱処理を行ってもよい。この場合、制御部4は、まず、予備加熱処理としてのビーム照射を行わせることで第2層La2全体にある金属粉末Pを仮焼結させる。したがって、予備加熱処理が終了した段階では、外殻構造体12の側壁部の一部と中間層16の底部との双方が仮焼結体となる。その後、制御部4は、外殻構造体12の側壁部の一部を最終形成する造形処理としてのビーム照射を行わせる。したがって、第2層La2に対する造形処理が終了した段階では、外殻構造体12の側壁部の一部は、金属粉末Pが凝固したものとなり、一方、中間層16の底部は、仮焼結体のままとなる。
なお、三次元造形工程では、予備加熱処理を行わない場合もあり得る。この場合、中間層16は、電子ビームEが照射されない領域となり、つまり、金属粉末Pがそのまま残存する層となる。
引き続き、三次元造形装置1は、図3(b)に示すように、第3層La3以上の各層においても、それぞれ、上記のような粉末供給処理から造形処理までの一連の処理を繰り返すことにより、中間部材10Aが層状に徐々に造形されていく。なお、図3(b)では、第7層La7における中間部材10Aの造形までが描画されている。特に、第3層La3から第15層La15(図3(c)参照)までの各層では、外殻構造体12及び中間層16の各側壁部の一部に加えて、内部構造体14の一部が徐々に造形されていく。
例えば、第3層La3は、外殻構造体12の側壁部の一部、中間層16の側壁部の一部、及び、内部構造体14の底部がそれぞれ形成される領域である。この領域を造形するビーム照射の前にも、予備加熱処理を行ってもよい。この場合、制御部4は、まず、予備加熱処理としてのビーム照射を行わせることで第3層La3全体にある金属粉末Pを仮焼結させる。したがって、予備加熱処理が終了した段階では、上記領域のすべてが仮焼結体となる。その後、制御部4は、外殻構造体12の側壁部の一部を最終形成する造形処理としてのビーム照射を行わせ、連続的に、内部構造体14の底部を最終形成する造形処理としてのビーム照射を行わせる。したがって、第3層La3に対する造形処理が終了した段階では、外殻構造体12の側壁部の一部、及び内部構造体14の底部は、金属粉末Pが凝固したものとなり、一方、中間層16の側壁部の一部は、仮焼結体のままとなる。
そして、三次元造形装置1は、図3(c)に示すように、第16層La16での中間層16の上部の造形と、第17層La17での外殻構造体12の上部の造形とを行うことにより、最終的に、中間部材10Aが所望の形状に造形される。
上記の三次元造形工程は、中間部材10Aの部位ごとに分類すると、外殻構造体12を造形する第1造形工程と、内部構造体14を造形する第2造形工程との2つの造形工程を含む。つまり、本実施形態では、三次元造形装置1による三次元造形工程において、第1造形工程と第2造形工程とが並行して実施されたと考えることができる。ここで、予備加熱処理が行われる場合には、本実施形態に係る金属部材の作製方法では、最終造形処理が行われる第1造形工程及び第2造形工程の前に、予備加熱工程が含まれると考えることができる。一方、予備加熱処理が行われない場合には、本実施形態に係る金属部材の作製方法では、第1造形工程と第2造形工程との間に、中間層16を形成する中間層形成工程が含まれると考えることができる。
ここで、上記のような三次元造形工程により造形された中間部材10Aの内部、特に内部構造体14には、図1(a)に示すように、複数の割れ50,51や空孔52が生じる場合がある。特に、割れ50は、内部構造体14の内部、すなわち、一部が内部構造体14の表面に到達していない割れを示している。一方、割れ51は、一部が内部構造体14の表面に到達している割れを示している。割れ50,51や空孔52が、最終作製品であるブロック10に残存することは望ましくない。そこで、本実施形態に係る金属部材の作製方法では、三次元造形工程により造形された中間部材10Aに熱間等方圧加圧(HIP)処理を施すことで、割れ50,51や空孔52を除去する。
図4は、本実施形態に係る作製方法に用いられる熱間等方圧加圧装置(HIP装置40)の構成と、HIP装置40内に収容された中間部材10Aを示す概略図である。HIP装置40は、内部に収容されている被処理体に対してHIP処理を施す装置である。HIP装置40は、圧力容器41と、支持台42と、ヒータ43とを備える。
圧力容器41は、被処理体である中間部材10Aを収容可能とする内部空間S1を有する。内部空間S1は、密閉可能である。圧力容器41は、不図示のガス供給装置に接続されている。圧力容器41は、このガス供給装置から供給されるアルゴンガス等の不活性ガスにより、内部空間S1を不活性ガス雰囲気として所定の圧力に調整することができる。支持台42は、内部空間S1において、収容された中間部材10Aを支持する。ヒータ43は、内部空間S1を所定の温度に加熱する。
次に、HIP装置40を用いた処理工程について説明する。
三次元造形工程が終了し、三次元造形装置1から取り出された中間部材10Aは、図4に示すように、支持台42上に載置され、圧力容器41内に収容される。次に、HIP装置40は、所定の温度及び圧力下でHIP処理を開始する。このとき、処理条件として、例えば、温度を1000〜1300°Cの範囲内、また、圧力を100MPa以上に設定される。
中間部材10AにHIP処理が施されることにより、第1に、内部構造体14に発生していた割れ50,51や空孔52が除去される。ここで、比較のために、従来の金属部材の作製方法について説明する。
図9は、従来の作製方法の作製対象となる金属部材としてのブロック100を示す斜視図である。図9(a)は、三次元造形装置1を用いて造形させる中間部材100Aを示す図である。図9(b)は、HIP装置40を用いて中間部材100Aに対してHIP処理が施されて作製された最終作製品としてのブロック100を示す図である。
中間部材100Aは、図9の例では単なる立方体として造形されている。このような中間部材100Aにも、図9(a)に示すように、本実施形態における内部構造体14に生じるおそれがある割れ50,51又は空孔52と同様に、割れ150,151又は空孔152が生じる場合がある。割れ150,151は、例えば、三次元造形工程時の温度変化に起因する熱応力により生じる。空孔152は、例えば、金属粉末Pの特性により、又は、割れ150,151と同様に三次元造形工程時の温度変化に起因する熱応力により生じる。特に、この熱応力は、中間部材100Aの大きさが大きいほど、加熱部周囲の拘束が大きくなるため、加熱部近傍で生じやすい。
割れ150,151や空孔152が生じている中間部材100Aに対してHIP処理が施されると、割れ150や空孔152は、高温・高圧の不活性ガスにより除去される。ところが、一部が中間部材100Aの表面に到達している割れ151については、図9(b)に示すように、HIP処理の作用上、除去されず、最終作製品としてのブロック100に残存する。
これに対して、本実施形態では、内部構造体14は、中間層16を介在させた状態で、外殻構造体12に内包されている。つまり、内部構造体14に、一部が内部構造体14の表面に到達している割れ51が生じていたとしても、割れ51は、中間層16との境界で止まり、外殻構造体12の表面、すなわち、中間部材10Aの表面には到達しない。したがって、割れ50,51や空孔52が生じている中間部材10Aに対してHIP処理が施されると、まず、割れ50や空孔52は、従来と同様に除去される。さらに、一部が内部構造体14の表面に到達している割れ51についても、中間部材10A全体としては表面に到達しておらず、内部に生じている割れであるとみなすことができるので、図1(b)に示すように、HIP処理の作用により除去される。結果として、最終作製品としてのブロック10には、割れ50,51や空孔52が残存しづらくなる。
特に、中間層16が予備加熱処理によって形成された仮焼結体である場合には、中間層16を構成する金属粉末P同士は、拡散現象によって、互いにそれぞれの表面で部分的に結合した状態にある。ここで、部分的に結合するとは、金属粉末P同士が点接触や面接触しながら結合していることを意味する。つまり、仮焼結体である中間層16には、小さな空隙が多数分散して存在している。したがって、内部構造体14に割れ51が生じたとしても、中間層16にあるいずれかの空隙に割れ51が到達することで、割れ51の進展は止まると考えられる。また、金属粉末P同士を結合する結合力は、予備加熱処理時のビーム条件等を適宜調整することで変化する。一方、金属粉末Pのそれぞれの粒径は、通常互いに異なり、又は、異なる粒径や形状の金属粉末Pを意図的に混合させるなどして変化させることも可能である。したがって、これらの条件を、予め、内部構造体14の割れ51の進展が止まりやすい条件に適合させてもよい。
また、中間部材10AにHIP処理が施されることにより、第2に、中間層16では、金属粉末Pの焼結が行われる。中間層16を構成する金属粉末Pは、外殻構造体12及び内部構造体14を構成する金属粉末Pと同一である。そのため、中間層16の金属粉末Pの焼結が行われることで、中間層16は高密度の結合部に変質し、図1(b)に示すように、外殻構造体12と内部構造体14とに一体化する。
このように、中間部材10Aに対してHIP処理が施されることで、最終的に、割れ50,51や空孔52が残存しづらいブロック10が作製される。
次に、ブロック10に割れ50,51や空孔52をより残存しづらくするための各種条件について説明する。
まず、中間部材10Aに対してHIP処理を施すと密度が変化するため、ブロック10には縮みが生じる場合がある。そのため、最終作製品としてのブロック10の一辺の寸法が長さL3であるならば、最終的な変形量を予め考慮し、中間部材10Aの一辺の寸法である長さL1が長さL3よりも大きくなるように、スライスデータ等を生成してもよい。
また、三次元造形工程が終了した中間部材10Aにおいて、内部構造体14に相当する部位が、例えば、すべて金属粉末Pで構成されていると仮定する。この場合、本実施形態における内部構造体14が存在する中間部材10Aに比べて、内部構造体14に相当する部位の平均密度が小さくなるため、中間部材10AにHIP処理を施したときのブロック10の変形量が大きくなる。つまり、本実施形態における内部構造体14は、HIP処理後のブロック10の変形量をより小さくするために、ブロック10の全体としての平均密度を大きくする構成要素である。そこで、内部構造体14の大きさは、中間部材10Aの大きさに対して大部分を占めるように設定してもよい。
また、ある一体化した中間部材では、上記のとおり、割れや空孔の発生原因となり得る熱応力は、中間部材の大きさが大きいほど生じやすい。そこで、本実施形態における、内部構造体14に対して独立した部材である外殻構造体12の厚みT1は、内部構造体14の長さL2に比べて十分に薄くしてもよい。これにより、中間部材10Aに対してHIP処理が施されても、外殻構造体12において割れや空孔が生じづらくなる。例えば、外殻構造体12の厚みT1は、ブロック10の大きさや形状にも依存するが、1mm程度であってもよい。又は、三次元造形装置1による積層造形時の粉末層Laの数に関して、内部構造体14よりも積層方向の下方又は上方に位置する外殻構造体12を形成する粉末層Laの数は、内部構造体14を形成する粉末層Laの数よりも少なくてもよい。
また、中間層16は、内部構造体14を造形する第2造形工程で発生した熱応力の影響が外殻構造体12に及ぶことを回避し、また、内部構造体14において生じた割れ51の中間部材10Aの表面までの到達を回避する。つまり、中間層16の厚さT2は、これらの回避作用が実現される限りにおいて、内部構造体14の長さL2に比べて十分に薄くしてもよい。例えば、中間層16の厚みT2は、ブロック10の大きさや形状にも依存するが、1mm程度であってもよい。又は、三次元造形装置1による積層造形時の粉末層Laの数に関して、内部構造体14よりも積層方向の下方又は上方に位置する中間層16を形成する粉末層Laの数は、内部構造体14を形成する粉末層Laの数よりも少なくてもよい。
次に、本実施形態による効果について説明する。
まず、本実施形態に係る、金属粉末Pから形成される金属部材の作製方法は、三次元金属積層造形により金属粉末Pを加工して外殻構造体12を造形する第1造形工程を含む。また、金属部材の作製方法は、外殻構造体12との間に中間層16を介在させて、三次元金属積層造形により金属粉末Pを加工して内部構造体14を造形する第2造形工程を含む。さらに、金属部材の作製方法は、第1造形工程及び第2造形工程の後に、外殻構造体12、中間層16及び内部構造体14に熱間等方圧加圧処理を施す処理工程を含む。ここで、金属部材は、例えばブロック10である。
本実施形態に係る作製方法によれば、第2造形工程の段階で、内部構造体14において一部が内部構造体14の表面に到達する割れが生じても、処理工程前の金属部材である中間部材10Aの表面に到達しない。つまり、処理工程の前に、一般的には除去が難しいとされていた一部が金属部材の表面に到達している割れを、中間部材10Aから予めなくしておくことができる。そして、処理工程により、中間部材10Aに生じている割れや空孔を除去することができるので、結果として、割れや空孔を残存しにくくするのに有利な金属部材の作製方法を提供することができる。
また、中間部材10Aでは、外殻構造体12の内側に内部構造体14が存在するので、外殻構造体12の内側がすべて金属粉末Pで構成されている場合に比べて、中間部材10A全体の平均密度を高めることができる。したがって、中間部材10Aに対して処理工程を施した後の変形量をより小さくすることができるので、最終作製品としての金属部材の寸法精度を向上させることができる。
また、本実施形態に係る作製方法では、第1造形工程及び第2造形工程の前に、外殻構造体12、中間層16及び内部構造体14となる同一の粉末層Laごとに、予備加熱工程を含んでもよい。予備加熱工程は、三次元金属積層造形により金属粉末Pの融点未満の温度で金属粉末Pを加熱する工程である。
この場合、中間層16を構成する金属粉末Pは、外殻構造体12及び内部構造体14を構成する金属粉末Pと同一である。したがって、このような作製方法によれば、中間層16は、熱間等方圧加圧処理すなわちHIP処理を施す処理工程により高密度の結合部に変質し、外殻構造体12及び内部構造体14と一体化する。つまり、最終作製品としての金属部材では、図1(b)に示すブロック10のように、内部構造が部位ごとに明確に分かれたものとならない。そのため、本実施形態に係る作製方法で作製された金属部材は、例えば、1つの素材や材料から形成された一般的な切削加工品、鍛造加工品又は鋳造加工品等と同等に取り扱われ得る。
また、このような作製方法によれば、外殻構造体12及び内部構造体14だけでなく、中間層16に対しても、上記説明したような予備加熱処理の効果を得ることができる。特に、中間層16が予備加熱処理によって形成された仮焼結体である場合、中間層16が当初の金属粉末Pのままで構成されている場合に比べて、金属粉末P同士の間の空隙が小さくなり、充填率が向上する。このように中間層16の充填率が高いと、HIP処理前の中間部材10AからHIP処理後の最終作製品としてのブロック10への変形量が小さくなる。したがって、ブロック10の寸法精度を向上させやすくなるという利点もある。
また、本実施形態に係る作製方法では、第1造形工程と第2造形工程とは、同一の粉末層Laごとに連続し、第1造形工程と第2造形工程との間に、中間層16を形成する中間層形成工程を含んでもよい。
三次元金属積層造形により、外殻構造体12の一部と内部構造体14の一部とが同一の粉末層Laごとに連続的に造形される場合、三次元造形装置1は、例えば、中間層16を設ける位置に対して電子ビームEを照射しないものとすることができる。この場合、中間層16は、金属粉末Pで構成されてもよい。又は、中間層16は、空隙であってもよい。
このような作製方法によれば、三次元造形装置1の積層造形時の制御を、より簡易的なものとすることができる。
上記例示では、中間層形成工程として、厚さT2が1mm程度の金属粉末Pからなる中間層16を形成するものとした。しかし、本開示はこれに限られず、例えば、中間層形成工程において、制御部4が同一の粉末層で第1造形工程から第2造形工程へすぐさま造形制御を切り替えることで、中間層16を空隙すなわち微小な隙間としてもよい。このような作製方法によれば、HIP処理を施す処理工程により、外殻構造体12と内部構造体14とが直接的に一体化するので、最終的には、中間層16が金属粉末Pで構成される場合と同様の効果を奏する。
また、本実施形態に係る作製方法では、内部構造体14よりも積層方向の下方又は上方に位置する外殻構造体12を造形する粉末層Laの数は、内部構造体14を造形する粉末層Laの数よりも少なくてもよい。
このような作製方法によれば、外殻構造体12の厚みT1は、内部構造体14の長さL2に比べて薄くなるので、中間部材10Aに対してHIP処理が施されても、外殻構造体12において割れや空孔が生じづらくなる。
また、本実施形態に係る作製方法では、内部構造体14よりも積層方向の下方又は上方に位置する中間層16を造形する粉末層Laの数は、内部構造体14を造形する粉末層Laの数よりも少なくてもよい。
このような作製方法によれば、中間層16の厚みT2は、内部構造体14の長さL2に比べて薄くなるので、中間部材10Aにおける内部構造体14の長さL2を十分に大きく確保することができる。
また、本実施形態に係る金属部材の作製方法では、第2造形工程での三次元金属積層造形の造形条件は、第1造形工程での三次元金属積層造形の造形条件と異なるものとしてもよい。
例えば、第2造形工程で造形される内部構造体14は、金属部材の内側に位置する部位であり、たとえ中間部材10Aの段階で内部に割れ50,51や空孔52が生じていたとしても、その後のHIP処理により除去される。そのため、内部構造体14を造形する条件は、外殻構造体12を造形する条件と必ずしも同等とする必要はなく、外殻構造体12を造形する条件よりも厳密でなくてもよい。そこで、このように第2造形工程での造形条件と第1造形工程での造形条件とを異ならせて、一方の造形条件を他方の造形条件よりも緩やかな条件とすることで、例えば、作製時間の短縮化が可能となる。
ここで、三次元金属積層造形の造形条件としては、以下のようなものが挙げられる。まず、三次元造形装置1の熱源に関するものとして、出力、スポット径、走査速度又は走査間隔がある。ここで、熱源の出力とは、三次元造形装置1が電子ビーム方式の場合には、電流・電圧をいい、三次元造形装置1がレーザ方式の場合には、レーザ出力をいう。その他、三次元造形装置1における材料供給量、予熱温度又は雰囲気を変化させてもよい。ここで、材料供給量とは、三次元造形装置1がパウダーベッド方式の場合には、積層厚みをいい、三次元造形装置1が、後述するパウダーフィード方式の場合には、溶着量をいう。
図5は、図3(c)に対応した、中間部材10Aの他の形状を示す概略断面図である。なお、図5では、図3に示す中間部材10Aと同一構成には同一の符号を付している。
三次元造形工程の第1層La1での第1造形工程において、中間部材10Aには、底板36の一部と外殻構造体12の一部とを連通させる連通構造体12aが造形されるものとしてもよい。これにより、その後の三次元造形工程において、底板36に対して安定的に中間部材10Aを造形することができる。
また、特に本実施形態では、外殻構造体12の内側に、中間層16を介在させて内部構造体14が造形される。そこで、三次元造形工程の第3層La3での第2造形工程において、中間部材10Aには、外殻構造体12の一部と内部構造体14の一部とを連通させる連通構造体14aが造形されるものとしてもよい。これにより、その後の三次元造形工程において、外殻構造体12に対して安定的に内部構造体14を造形することができる。
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に係る、金属部材の作製方法について説明する。第1実施形態では、金属部材としてのブロック10が簡易的な形状であり、ブロック10の全体に対して第1造形工程及び第2造形工程が施される場合を例示した。これに対して、本実施形態では、金属部材が、形状がより複雑化したタービン翼60であり、タービン翼60の一部に対して第1造形工程及び第2造形工程が施される場合を例示する。
図6は、本実施形態に係る作製方法の作製対象となるタービン翼60を示す斜視図である。タービン翼60は、航空機用ジェットエンジンや産業用ガスタービンなどに用いられるタービン部品の一構成要素であり、不図示のタービンロータの外周に複数設置される。タービン翼60は、例えば、第1部位としての翼部62と、第2部位としてのダブテール部64とを含む。なお、ダブテール部は、翼根元部ともいう。翼部62は、高圧又は高温下のガスを誘導する部位である。ダブテール部64は、タービン翼60をタービンロータに固定するために、予めタービンロータに形成されている溝部に嵌合する部位である。タービン翼60の材質は、例えば、第1実施形態と同様にCM247LCであってもよい。なお、本実施形態に係る各図では、タービン翼60の延伸方向にZ軸を取り、Z軸に垂直な水平面内において、X軸、及び、X軸に垂直なY軸を取るものとして説明する。
ここで、タービン翼60の各部位について見ると、翼部62は、概略的に薄い形状を有する。一方、ダブテール部64は、概略的に厚みがある形状を有する。そこで、本実施形態では、以下のような作製方法を用いて、概略形状の異なる部位ごとに造形工程を異ならせてタービン翼60を作製する。
まず、三次元造形工程として、第1実施形態において採用した三次元造形装置1を用いて、タービン翼60の中間部材60Aを造形する。本実施形態における三次元造形工程では、第1部位としての翼部62と、第2部位としてのダブテール部64とのそれぞれの部位ごとに造形工程を変化させる。
図7は、三次元造形装置1により中間部材60Aを造形する三次元造形工程の流れを時系列で示す概略断面図である。なお、図7は、第1実施形態における説明で用いた図3に対応している。なお、図7及び以下の図8では、中間部材60Aの形状を簡略化して描画している。三次元造形工程では、タービン翼60のダブテール部64に相当する部分からタービン翼60の翼部62に相当する部分に向かって中間部材60Aを造形する。すなわち、図6に示したようにタービン翼60の延伸方向にZ軸を取るならば、三次元造形工程における積層方向は、Z方向となる。
まず、三次元造形工程では、中間部材60Aのうちダブテール部64に相当する部分が造形される。ダブテール部64は、翼部62と比較して、厚みがある形状を有する。ここで、第1実施形態で説明したとおり、三次元造形工程において割れや空孔の発生原因となり得る熱応力は、中間部材の大きさが大きいほど生じやすい。つまり、金属部材がタービン翼60である場合には、特にダブテール部64において、最終的に割れが残存するおそれがある。そこで、本実施形態では、ダブテール部64に相当する部分が、第1実施形態と同様に、第1造形工程と第2造形工程とを組み合わせた造形工程で造形される。具体的には、ダブテール部64に相当する部分が、外殻構造体65と、中間層66と、内部構造体67とを含む。これらは、第1実施形態における外殻構造体12と、中間層16と、内部構造体14とにそれぞれ対応している。ダブテール部64に相当する部分は、図7(a)〜図7(b)に示すように、第1実施形態と同様の造形工程に基づいて造形される。
引き続き、中間部材60Aのうち翼部62に相当する部分が造形される。翼部62は、ダブテール部64と比較して、薄い形状を有する。つまり、翼部62においては、三次元造形工程において割れや空孔の発生原因となり得る熱応力が生じづらい。そこで、本実施形態では、翼部62に相当する部分は、第1実施形態とは異なり、単一の造形工程である第3造形工程で造形される。
図7(c)に示すように、第3造形工程では、第8層La8までに造形されたダブテール部64に相当する部分に対して、引き続き、第9層La9及び第10層La10において、タービン翼60におけるフランジ部68に相当する部分が造形される。その後、第11層La11から最上層の第26層La26までにおいて、翼部62の本体部69に相当する部分が造形され、最終的に、中間部材60Aが所望の形状に造形される。
次に、本実施形態に係るタービン翼60の作製方法では、三次元造形工程により造形された中間部材60AにHIP処理を施す。
図8は、第1実施形態で採用したHIP装置40内に収容された中間部材60Aを示す概略図である。HIP処理は、第1実施形態における条件と同等の条件下で行われ、最終的にタービン翼60が作製される。
このように、本実施形態に係る、金属部材の作製方法では、金属部材は、第1部位と、第2部位とを含む。第1部位は、三次元金属積層造形により金属粉末Pを加工して造形する第3造形工程により造形される。第2部位は、第1造形工程及び第2造形工程により造形される。また、処理工程は、第1造形工程、第2造形工程及び第3造形工程の後に、第1部位及び第2部位に施される。ここで、金属部材は、例えばタービン翼60である。この場合、第1部位は、例えば翼部62である。また、第2部位は、例えばダブテール部64である。
本実施形態に係る作製方法によれば、三次元造形工程で造形される部位のうち、割れや空孔が生じるおそれがある部位のみ、第1実施形態と同様の工程で作製する。つまり、金属部材の全体について第1造形工程と第2造形工程とを含む造形工程を施す必要がないので、作製時間の短縮化が可能となる。
ここで、タービン翼60の形状は、図6に示すように、第1実施形態で例示したブロック10に比べて複雑である。この場合、特に第1造形工程と第2造形工程とを適用するダブテール部64における外殻構造体65、中間層66及び内部構造体67の形状についても、実際には複雑化し、一律に長さや厚み等の寸法を規定することが難しい。そこで、ダブテール部64の全体の容積に対して、外殻構造体65及び内部構造体67となる部分の容積を割合で規定してもよい。例えば、内部構造体67の容積がダブテール部64の容積に対して8割程度となるように、ダブテール部64内に内部構造体67を造形する目安としてもよい。
また、本実施形態に係る金属部材の作製方法では、第3造形工程での三次元金属積層造形の造形条件は、第1造形工程又は第2造形工程での三次元金属積層造形の造形条件の少なくともいずれかと異なるものとしてもよい。これにより、第1実施形態における場合と同様に、造形工程ごとに適宜、三次元金属積層造形の造形条件を変化させることで、作製時間の短縮化が可能となる。なお、ここでいう三次元金属積層造形の造形条件は、上記例示した造形条件と同様である。
なお、金属部材が第1部位と第2部位とを含むとは、金属部材が2つの部位を含むことに限定するものではない。金属部材がそれぞれ異なる形状の少なくとも2つ以上の部位を有するものであれば、3つ以上の部位のいずれかに対して、第1造形工程及び第2造形工程を実施することで、本実施形態を適用することができる。
また、作製方法による作成対象である金属部材として、タービン翼60を例示した。しかし、本開示は、部位ごとに異なる形状となる、あらゆる金属部材の作製に適用可能である。例えば、過給器用タービンの軸及び翼車の作製にも適用可能である。
(他の実施形態)
上記の各実施形態では、三次元造形装置1が、パウダーベッド方式のうちエネルギービームとして電子ビームを用いて造形する三次元金属積層造形装置であるものとして説明した。しかし、本開示で用いることができる三次元造形装置は、これに限定されず、パウダーベッド方式のうちエネルギービームとしてレーザを用いて造形する三次元金属積層造形装置であってもよい。レーザを用いる三次元造形装置としては、例えば、選択的レーザ溶融法(SLM:Selective laser melting)、レーザ焼結法(SLS:Selective laser sintering)を採用するものがある。なお、レーザを用いる三次元造形装置では、造形を行うチャンバ内を真空状態としなくてもよく、例えばアルゴンガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気にすればよい。また、レーザを用いる三次元造形装置では、予備加熱は省略してもよいし、行ってもよい。上記の各実施形態では、予備加熱は電子ビームEを照射することで行うこととした。すなわち、予備加熱用の熱源はエネルギービームであるとしたが、これに限定されない。例えば、ビーム出射部2とは別に輻射式ヒータ等のヒータを設け、ヒータを用いて粉末を昇温することで、予備加熱してもよい。また、上記の各実施形態では、金属粉末Pを溶融し凝固させることで金属粉末Pを固化させる方法を説明したが、かかる方法には限定されず、金属粉末Pを焼結させることで金属粉末Pを固化させるものとしてもよい。また、三次元造形装置1は、選択溶融方式であるパウダーベッド方式に限らず、例えば材料付加方式である、いわゆるパウダーフィード方式を採用するものであってもよい。
また、上記の各実施形態では、三次元金属積層造形に関する第1造形工程と第2造形工程とが、同一の粉末層Laごとに連続して実施される場合を例示した。しかし、本開示はこれに限られない。例えば、第1に、第1造形工程によって、最上層である第17層La17を除く外殻構造体12の全体が造形される。第2に、外殻構造体12とは別に、内部構造体14が造形される。このとき、第1造形工程と第2造形工程とは、それぞれ異なる三次元造形装置1を用いて造形されてもよい。そして、第3に、外殻構造体12に、中間層16を介在させながら、予め造形済みである内部構造体14を収容させた後に、外殻構造体12の第17層Laを造形することで、最終的に中間部材10Aを造形することも可能である。このように、本開示では、第1造形工程と第2造形工程とが、必ずしも同一の粉末層Laごとに連続して実施されなくてもよい場合もあり得る。
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。