JP2020158329A - Yagセラミックス及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、散乱係数の低いYAGセラミックスを提供すること。【解決手段】GOS(Grain Orientation Spread)が0°〜1°の割合が60%以上であるYAGセラミックス。KAM(Kernel Average Misorientation)が0°〜2°の割合が90%以上であることを特徴とするYAGセラミックス。【選択図】なし
Description
本発明は、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)セラミックス及びその製造方法に関する。
YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)は、イットリウムとアルミニウムの複合酸化物(Y3Al5O12)からなるガーネット構造の結晶である。従来より、1)希土類元素の内、原子番号57番のCeから原子番号70番のYbまでの元素を添加して、YAGを構成するY元素を置換固溶させるか、2)遷移金属の内、原子番号22番のTiから原子番号28番のNiまでの元素を添加して、YAGを構成するAl元素を置換固溶させることで、置換された元素が発光中心となり、強い蛍光を持つことが知られており、これを用いて蛍光体やレーザー媒質等が作られていた。また、何も添加しないYAG自体も可視光領域で透明で硬い(硬度8.5)ため、過酷環境(プラズマ等)下で使用できる窓(ウィンドウ)用材料としても利用可能である。
YAGセラミックスは今まで、作りやすい粉末形状を樹脂に埋め込んで使われたり、単結晶を育成して使われてきた。しかし、粉末は作りやすいものの、折角の発光が散乱されやすく発光効率は高くない。一方、単結晶は、散乱が少なくて発光効率は高いが、単結晶の育成には2000℃近い高温で酸化物の融液から成長させるため、高温で耐酸化性を有するが極めて高価なイリジウムを使用する必要があり、育成速度も1mm/hr程度と極めて遅くしないと、欠陥が多数発生して透過性を劣化させ、結晶自体の強度も劣化させてしまう。また、育成させた単結晶にはマイクロクラックが多数存在し、求められる形状への加工の際に、予期せぬ割れを生じてしまう問題があった。
近年、粒界に存在するポア(空隙)を極力抑制した多結晶のYAGを、一般的なセラミックスを作製するときと同様な成形焼結の手法を用いて作られるようになり、この多結晶YAGは単結晶には僅かに劣るが優れた透過特性を示すことが分かってきた。また、一般的なセラミックスと同様に粉体焼結から作られるため、単結晶の融液成長で見られる添加元素の偏析現象(育成されたインゴット中で添加元素濃度に勾配が見られる現象)がなく、添加元素の固溶限界も単結晶育成時に比べて高いことから、単結晶に劣る透過特性を打ち消す程、明るい蛍光体、発光強度の高いレーザー媒質を作製することが可能である。YAG焼結体に関する発明として、例えば、特許文献1、2が挙げられる。
Kyohei Nomura et al, "Effect of the Grain Size on Plastic Strain Analysis by EBSD for Austenitic Stainless Steels with Tensile Strain at 650℃", Journal of the society of Materials Science, Japan, Apr. 2012, Vol. 61, No. 4, pp.371-376
Shota Umezaki et al, "Quantitative Analysis of Dislocation Density in an Austenitic Steel after Plastic Deformation", J. Japan Institute of Metals and Materials, Vol 78, No. 6 (2014), pp.218-224
粉体焼結で作製したYAGセラミックスをレーザー媒質用として使用する場合、散乱係数が低いことが求められる。特に、ハイパワーレーザーにおいては、散乱係数が低いほど安定した性能を発現させることができる。このような事情に鑑み、本発明は、散乱係数の低いYAGセラミックスを提供することを課題とする。
本発明の実施形態に係るYAGセラミックスは、GOS(Grain Orientation Spread)が0°〜1°の割合が60%以上であることを要旨とする。また、本発明の実施形態に係るYAGセラミックスは、KAM(Kernel Average Misorientation)が0°〜1°の割合が90%以上であることを要旨とする。
本発明によれば、散乱係数の低いYAGセラミックスを提供することができるという優れた効果を有する。このようなYAGセラミックスは、レーザー媒質としての使用に有用であり、特にハイパワーレーザーにおいて、安定した性能を発現させることが可能となる。
後方散乱電子回折像法(EBSD)を用いて、結晶粒内の歪みを定量化する方法が知られている(非特許文献1、2など)。EBSDを用いて結晶粒内の歪みを定量化する計算手法としては、1)結晶粒内の平均方位差を定量化したGOS(Grain Orientation Spread)、2)結晶粒内において任意の測定点とその近接した測定点間の方位差を定量化したKAM(Kernel Average Misorientation)がある。
本発明者らは、これらの手法を用いてYAGセラミックスを分析したところ、YAGセラミックスを構成する結晶粒内の歪み量と散乱係数との間に相関があることを見出した。歪みが大きい(GOS値やKAM値の低角度の割合が低い)と粒内または粒子間に結晶方位差が大きく不均一な状態となって、散乱係数が大きくなることが考えられる。GOS及びKAMのどちらか一方を制御することで、ある程度散乱係数を低くすることができるが、その両方の値を一定の数値範囲になるように調整することによって、散乱係数を極めて低く維持することができ、特に、ハイパワーレーザー用として、安定的に性能を発現できることを可能にした。
本発明の実施形態に係るYAGセラミックスは、GOSが0°〜1°の割合が60%以上であることを特徴とする。一般に結晶粒内の歪み量が小さいほど、GOSにおいて低角度の割合が高くなる。本発明の実施形態では、GOSが0°〜1°の割合を60%以上とすることで、散乱係数を0.005cm−1以下まで低くすることができる。好ましくは、GOSが0°〜0.5°の割合が50%以上、より好ましくは、GOSが0°〜0.5°の割合が70%以上である。これによって、散乱係数を0.001cm−1以下、さらには、0.0005cm−1以下まで低くすることができる。
本発明の実施形態に係るYAGセラミックスは、KAMが0°〜2°の割合が90%以上であることを特徴とする。一般に結晶粒内の歪み量が小さいほど、KAMにおいて低角度の割合が高くなる。本発明の実施形態では、KAMが0°〜2°の割合を90%以上とすることで、散乱係数を0.005cm−1以下まで低くすることができる。好ましくは、KAMが0°〜1°の割合が80%以上、より好ましくは、KAMが0°〜1°の割合が90%以上である。これによって、散乱係数を0.001cm−1以下、さらには、0.0005cm−1以下まで低くすることができる。
本実施形態に係るYAGセミラックスは、粉体焼結により作製されるものであって、多結晶からなり、イットリウムとアルミニウムの複合酸化物(Y3Al5O12)からなるガーネット構造の結晶を有する。前記YAGを構成するY元素を、希土類元素の内、原子番号57番のCeから原子番号70番のYbまでの元素を添加して、置換固溶させるか、YAGを構成するAl元素を遷移金属の内、原子番号22番のTiから原子番号28番のNiまでの元素を添加して、置換固溶させてもよい。置換された元素が発光中心となって強い蛍光を有することができる。もちろん、本発明の実施形態に係るYAGセラミックスは、何も添加しないYAG自体であってもよい。
本開示における散乱係数は、添加元素による吸収がない波長の光を透過させた場合の散乱係数である。例えば、添加元素を何も導入しない場合には、波長300〜1500nmの範囲における散乱係数を計測する。例えば、Ndを添加した場合には、波長300〜1000nmにおいて光の吸収があるため、それを除く波長の散乱係数を計測する。焼結ムラ等により不透明となる場合には、測定波長領域(300〜1500nm)全域において散乱係数が低下するため、上記のように、添加元素による光の吸収がある波長領域の光損失係数を除いたものであっても、特段の問題は生じない。なお、添加元素による光の吸収波長は、例えば添加元素を導入したYAG単結晶を製作し、それに対し吸収測定を行うことによって、事前に把握することができる。
本開示において、散乱係数の測定は、以下の通りに行う。
図1に散乱光測定系の模式図を示す。光源1(ハロゲンランプ)からの光は、分光器2を通り、選ばれた特定の波長の単色光となって放出される。その光を2枚のレンズ3、4で平行光にして積分球6に入射させる。この積分球6を通り抜ける位置に光検出器(光電子増倍管)9を置き、透過光強度を観測する。その信号14はロックインアンプ10に入力される。
図1に散乱光測定系の模式図を示す。光源1(ハロゲンランプ)からの光は、分光器2を通り、選ばれた特定の波長の単色光となって放出される。その光を2枚のレンズ3、4で平行光にして積分球6に入射させる。この積分球6を通り抜ける位置に光検出器(光電子増倍管)9を置き、透過光強度を観測する。その信号14はロックインアンプ10に入力される。
一方、積分球内に透過光の進行方向と90度をなす位置に別の光検出器(光電子増倍管)8を、バッフル板7を介して設置する。この光検出器8は散乱光強度を観測する。一方、バッフル板7は散乱光が直接入り測定対象の散乱光に方向依存性があることによる強度のずれをなくす目的で挿入する。この光検出器8からの信号13もロックインアンプ10に入力されている。レンズ3、4の間にはチョッパー5が入り、一定周期(周波数f)で光をON/OFFし、その信号12は参照信号としてロックインアンプ10に入力されている。
こうすることで測定信号は周波数fで変調された状態で入力され、ロックインアンプ10によって変調成分を除去されて求めたい信号強度が得られる。一般に、自然界には1/fゆらぎと呼ばれるノイズ成分が含まれており、これは周波数fが小さくなるほどノイズが大きくなり、fが大きくなるほどノイズは小さくなる。チョッパーによる変調により大きい周波数fで測定を行うことで外界からのノイズの影響を減らし、より正確な測定を可能にするためにこうした構成を採用する。
測定対象の試料11は、積分球の中心に設置するが、その前に、まず試料を置かずに透過光強度I(T)0、背景散乱光強度I(S)0を測定する。次に表面を全面研磨した円筒形の厚さの異なる複数の試料(厚さLn(n=1,2,…))を積分球の中心11に透過光が円筒形の底面に垂直になるように置き、透過光強度I(T)n、散乱光強度I(S)nを測定する。その上で、以下の式に最小二乗法でフィッティング処理を行うことで表面散乱係数R(T)、R(S)、光損失係数A(T)、A(S)を求める。
そして、求めたA(T)、A(S)のうち、値の大きい方を光損失係数値として採用する。
そして、求めたA(T)、A(S)のうち、値の大きい方を光損失係数値として採用する。
次に、本発明の実施形態に係るYAGセミラックスの製造方法について説明する。
(原料粉について)
原料として、Y2O3粉、Al2O3粉を準備する。必要に応じて、上記添加元素を含む酸化物粉(例えば、Nd2O3粉)を準備する。これらの原料粉は、粒度分布が狭い方が好ましく、また、平均粒径0.3〜10μmのものを用いることが好ましい。原料粉の純度は4N以上が好ましいが、添加元素については添加する割合が小さい場合、その量に応じて、純度を下げてもよい。例えば、NdをYに対し1%置換させる場合には、Nd2O3原料粉に不純物が1%含まれていてもY2O3、Al2O3を合わせた場合、Nd2O3の不純物量は全体の0.01%になり4N相当になる。また、焼結助剤として、Ca、Mg、Si、Zr、Laを含む酸化物(CaO、MgO、SiO2、ZrO2、La2O3)、フッ化物(CaF2等)、炭酸塩(CaCO3)、複合酸化物(MgAl2O4等)の粉末を準備する。
(原料粉について)
原料として、Y2O3粉、Al2O3粉を準備する。必要に応じて、上記添加元素を含む酸化物粉(例えば、Nd2O3粉)を準備する。これらの原料粉は、粒度分布が狭い方が好ましく、また、平均粒径0.3〜10μmのものを用いることが好ましい。原料粉の純度は4N以上が好ましいが、添加元素については添加する割合が小さい場合、その量に応じて、純度を下げてもよい。例えば、NdをYに対し1%置換させる場合には、Nd2O3原料粉に不純物が1%含まれていてもY2O3、Al2O3を合わせた場合、Nd2O3の不純物量は全体の0.01%になり4N相当になる。また、焼結助剤として、Ca、Mg、Si、Zr、Laを含む酸化物(CaO、MgO、SiO2、ZrO2、La2O3)、フッ化物(CaF2等)、炭酸塩(CaCO3)、複合酸化物(MgAl2O4等)の粉末を準備する。
(混合について)
上記Y2O3粉、Al2O3粉と、必要に応じて、添加元素を含む酸化物粉、焼結助剤をボールミル等の混合粉砕機に投入し、溶媒として水、メディアをアルミナとした、ボールミルによって湿式混合を4〜20時間行う。この際、原料粉の凝集による混合ムラを抑えるために適当な量の分散剤を添加することが好ましい。混合時間は使用する原料粉の粒径、溶媒及びメディアの原料に対する比率、メディア径に応じて上記範囲から決められる。混合後、混合粉砕機から取り出したスラリーに対して、液状状態の焼結助剤をさらに添加してもよい。例えば、有機金属化合物(Si(OC2H5)4)、水に溶かした金属塩(Ca(C3H5O3)2やCaCl2、乳酸カルシウム水溶液)などを添加することができる。
上記Y2O3粉、Al2O3粉と、必要に応じて、添加元素を含む酸化物粉、焼結助剤をボールミル等の混合粉砕機に投入し、溶媒として水、メディアをアルミナとした、ボールミルによって湿式混合を4〜20時間行う。この際、原料粉の凝集による混合ムラを抑えるために適当な量の分散剤を添加することが好ましい。混合時間は使用する原料粉の粒径、溶媒及びメディアの原料に対する比率、メディア径に応じて上記範囲から決められる。混合後、混合粉砕機から取り出したスラリーに対して、液状状態の焼結助剤をさらに添加してもよい。例えば、有機金属化合物(Si(OC2H5)4)、水に溶かした金属塩(Ca(C3H5O3)2やCaCl2、乳酸カルシウム水溶液)などを添加することができる。
(造粒、成形について)
次に、混合後のスラリーを乾燥後、篩で強制通篩するか、スプレードライして造粒粉を作り、これを型(例えば、φ150mm×40mm)に入れて、コールドプレスを行い、その後、170〜200MPaでCIP成型を行う。通常、成形体を作る際にはポリビニルアルコールやアクリル系接着剤などがバインダとして用いられるが、焼結時にこれらの有機成分がなくなり、その部分が隙間となって焼結性を悪化させるため好ましくない。一方、乳酸アルミナは乾燥時にゲル化することで周りの粉体を結着させ、また焼結後はアルミナ成分となって残留することで隙間を少なくすることができ、後述する焼結前時点での相対密度の向上に大きく寄与し、焼結性を高めることができる。
次に、混合後のスラリーを乾燥後、篩で強制通篩するか、スプレードライして造粒粉を作り、これを型(例えば、φ150mm×40mm)に入れて、コールドプレスを行い、その後、170〜200MPaでCIP成型を行う。通常、成形体を作る際にはポリビニルアルコールやアクリル系接着剤などがバインダとして用いられるが、焼結時にこれらの有機成分がなくなり、その部分が隙間となって焼結性を悪化させるため好ましくない。一方、乳酸アルミナは乾燥時にゲル化することで周りの粉体を結着させ、また焼結後はアルミナ成分となって残留することで隙間を少なくすることができ、後述する焼結前時点での相対密度の向上に大きく寄与し、焼結性を高めることができる。
(予備加熱について)
まず、前記成形体を水分除去の目的で、大気中、100〜300℃で4〜6時間、加熱する。次に、焼結助剤、バインダ等に含まれる有機成分等の除去の目的で、大気中、800〜1000℃、1〜3時間、加熱する。いずれも余計な成分を除去する目的で加熱を行うものであるが、急激に高い温度で加熱(800〜1000℃で加熱)すると、水分の急激な膨張によって成形体が割れることがあるため、上記のように2段階で加熱することが好ましい。
まず、前記成形体を水分除去の目的で、大気中、100〜300℃で4〜6時間、加熱する。次に、焼結助剤、バインダ等に含まれる有機成分等の除去の目的で、大気中、800〜1000℃、1〜3時間、加熱する。いずれも余計な成分を除去する目的で加熱を行うものであるが、急激に高い温度で加熱(800〜1000℃で加熱)すると、水分の急激な膨張によって成形体が割れることがあるため、上記のように2段階で加熱することが好ましい。
(真空加熱焼結、HIPについて)
次に、この成形体を真空中、1700℃〜1900℃で10〜20時間、焼結する。その後、Arなどの不活性雰囲気下、100〜200MPa、1600〜1800℃で1〜4時間保持の条件でHIP(熱間静水圧加圧)を行う。
次に、この成形体を真空中、1700℃〜1900℃で10〜20時間、焼結する。その後、Arなどの不活性雰囲気下、100〜200MPa、1600〜1800℃で1〜4時間保持の条件でHIP(熱間静水圧加圧)を行う。
(大気アニールについて)
その後、上記で得られた焼結体を大気中でアニール(加熱)する。大気アニールは、保持温度まで100〜600℃/hrで昇温し、1250℃〜1600℃で保持し、その後、室温まで100℃/hrで降温する。
以上の製造方法によって、所望のGOS値、KAM値を有するYAGセラミックスを製造することができる。
その後、上記で得られた焼結体を大気中でアニール(加熱)する。大気アニールは、保持温度まで100〜600℃/hrで昇温し、1250℃〜1600℃で保持し、その後、室温まで100℃/hrで降温する。
以上の製造方法によって、所望のGOS値、KAM値を有するYAGセラミックスを製造することができる。
本開示において、評価方法は、実施例、比較例を含め、以下の通りとした。
(GOS及びKAMの測定方法)
直径2.54cmのYAGセラミックスから場所の異なる(中心部×1、半径1/2付近×2、外周部×2)5つの小片を用意した。各々の小片をイオンミリングしてEBSD用の測定試料とした。なお、イオンミリングの条件は、加速電圧4kV、アルゴンガス流量0.08sccm、試料傾斜20°、加工時間2時間として、日立ハイテクノロジー製イオンミリング装置を用いた。次に、超分解能分析操作電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製 SU―70)を用いて、後方散乱電子回折像法(EBSD)分析を行った。このとき、試料は70°傾けた試料台に設置して、加速電圧15kVにてEBSD分析を行った。各試料において結晶方位測定を行い、得られたデータをEBSD解析ソフト(TSLソリューションズ社製 OIM Analisis)を用いて、各試料のGOS及びKAMを算出し、その平均値を求めた。
(GOS及びKAMの測定方法)
直径2.54cmのYAGセラミックスから場所の異なる(中心部×1、半径1/2付近×2、外周部×2)5つの小片を用意した。各々の小片をイオンミリングしてEBSD用の測定試料とした。なお、イオンミリングの条件は、加速電圧4kV、アルゴンガス流量0.08sccm、試料傾斜20°、加工時間2時間として、日立ハイテクノロジー製イオンミリング装置を用いた。次に、超分解能分析操作電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製 SU―70)を用いて、後方散乱電子回折像法(EBSD)分析を行った。このとき、試料は70°傾けた試料台に設置して、加速電圧15kVにてEBSD分析を行った。各試料において結晶方位測定を行い、得られたデータをEBSD解析ソフト(TSLソリューションズ社製 OIM Analisis)を用いて、各試料のGOS及びKAMを算出し、その平均値を求めた。
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
(実施例1)
表1に記載する粒度分布を有するY2O3粉とAl2O3粉とを所定量秤量し、これに焼結助剤(Si(OC2H5)4)を添加したものを混合粉砕機に投入して、溶媒を水、メディアをアルミナとしたボールミルにより5時間湿式混合を行って、スラリーを得た。このスラリーにバインダとして乳酸アルミナを添加して撹拌した後、乾燥させ、その後スプレードライによって平均粒径20μmの造粒粉を得た。
表1に記載する粒度分布を有するY2O3粉とAl2O3粉とを所定量秤量し、これに焼結助剤(Si(OC2H5)4)を添加したものを混合粉砕機に投入して、溶媒を水、メディアをアルミナとしたボールミルにより5時間湿式混合を行って、スラリーを得た。このスラリーにバインダとして乳酸アルミナを添加して撹拌した後、乾燥させ、その後スプレードライによって平均粒径20μmの造粒粉を得た。
この造粒粉を型(φ150mm×40mm)に入れ、コールドプレスを行った後、176MPaでCIP成型を行った。次に、これを大気炉にて100℃で5時間加熱した後、900℃にて2時間、予備加熱した。
次に、この成形体を1800℃にて15時間、真空加熱炉にて焼成を行った後、1700℃にて2時間、147MPa、Ar雰囲気でHIPを行った。なお、真空加熱焼結時の昇温/降温速度は300℃/Hrとした。その後、大気炉で1500℃加熱することで、YAGセラミックスを作製した。
次に、この成形体を1800℃にて15時間、真空加熱炉にて焼成を行った後、1700℃にて2時間、147MPa、Ar雰囲気でHIPを行った。なお、真空加熱焼結時の昇温/降温速度は300℃/Hrとした。その後、大気炉で1500℃加熱することで、YAGセラミックスを作製した。
以上によって得られたYAGセラミックスについて、上述のEBSD分析により、GOS及びKAMを測定した結果、GOS(0°〜1°の割合)は64.7%、GOS(0°〜0.5°の割合)は46.5%、KAM(0°〜2°の割合)は92.3%、KAM(0°〜1°の割合)は77.8%であり、所望の結果が得られた。また、当該YAGセラミックスについて、散乱係数を測定した結果、波長300〜1500nmにおいて、その散乱係数は0.004cm−1であった。
以上の結果を表1に示す。
(実施例2−3、比較例1)
原料粉の粒度分布、真空加熱処理における昇温速度及び降温速度、大気アニール温度を変更した以外は、実施例1と同様の条件で、YAGセミラックスを製造した。詳細な製造条件、及び、得られたYAGセラミックスの材料特性等を表1に示す。表1に示す通り、所望のGOS値及びKAM値を有するYAGセラミックス(実施例2−3)では低い散乱係数が得られた。一方、比較例1のYAGセラミックスでは、所望のGOS値及びKAM値を満たさず、散乱係数が高くなっていることを確認した。なお、実施例2で得られたYAGセラミックスのEBSDによるGOS解析、KAM解析の結果をそれぞれ図2、図3に示す。
原料粉の粒度分布、真空加熱処理における昇温速度及び降温速度、大気アニール温度を変更した以外は、実施例1と同様の条件で、YAGセミラックスを製造した。詳細な製造条件、及び、得られたYAGセラミックスの材料特性等を表1に示す。表1に示す通り、所望のGOS値及びKAM値を有するYAGセラミックス(実施例2−3)では低い散乱係数が得られた。一方、比較例1のYAGセラミックスでは、所望のGOS値及びKAM値を満たさず、散乱係数が高くなっていることを確認した。なお、実施例2で得られたYAGセラミックスのEBSDによるGOS解析、KAM解析の結果をそれぞれ図2、図3に示す。
(比較例2)
比較例2では、塩化イットリウム水溶液と塩化アルミニウム水溶液を用いた共沈法を用いて原料粉を作製した。この原料粉を用いて、実施例1と同様の条件で、YAGセラミックスを製造した。詳細な製造条件、及び、得られたYAGセラミックスの材料特性等を表1に示す。表1に示す通り、比較例2のYAGセラミックスでは、所望のGOS値及びKAM値を満たさず、散乱係数が高くなっていることを確認した。
比較例2では、塩化イットリウム水溶液と塩化アルミニウム水溶液を用いた共沈法を用いて原料粉を作製した。この原料粉を用いて、実施例1と同様の条件で、YAGセラミックスを製造した。詳細な製造条件、及び、得られたYAGセラミックスの材料特性等を表1に示す。表1に示す通り、比較例2のYAGセラミックスでは、所望のGOS値及びKAM値を満たさず、散乱係数が高くなっていることを確認した。
本発明の実施形態に係るYAGセラミックスは、散乱係数が低いという優れた効果を有する。このようなYAGセラミックスは、蛍光体やレーザー媒質、特に、ハイパワーレーザーに有用である。
10 1at%Nd:GdVO4結晶
11 誘電体ミラー
12 誘電体ミラー
13 レーザーダイオード
14 光検出器
20 YAGセラミックス
11 誘電体ミラー
12 誘電体ミラー
13 レーザーダイオード
14 光検出器
20 YAGセラミックス
Claims (7)
- GOS(Grain Orientation Spread)が0°〜1°の割合が60%以上であるYAGセラミックス。
- GOS(Grain Orientation Spread)が0°〜0.5°の割合が50%以上であることを特徴とする請求項1記載のYAGセラミックス。
- GOS(Grain Orientation Spread)が0°〜0.5°の割合が70%以上であることを特徴とする請求項1記載のYAGセラミックス。
- KAM(Kernel Average Misorientation)が0°〜2°の割合が90%以上であることを特徴とするYAGセラミックス。
- KAM(Kernel Average Misorientation)が0°〜1°の割合が80%以上であることを特徴とする請求項4記載のYAGセラミックス。
- KAM(Kernel Average Misorientation)が0°〜1°の割合が90%以上であることを特徴とする請求項4記載のYAGセラミックス。
- 請求項1〜6のいずれか一項の記載のYAGセラミックスの製造方法であって、Y2O3粉とAl2O3粉とを混合する工程と、混合粉を成形して成形体を作製する工程と、前記成形体を予備加熱する工程と、予備加熱後に真空加熱処理する工程と、得られた焼結体をHIP処理する工程と、酸素雰囲気中でアニール処理する工程とを含むことを特徴とするYAGセラミックスの製造方法。
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