JP2020158188A - ホッパーおよびそれを用いた二次電池用正極活物質の焼成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】混合粉末原料の混合比のバラツキを小さくできるホッパーと二次電池用正極活物質の原料間の混合比のバラツキを小さくして製造できる焼成装置を提供する。【解決手段】複数種の粉末を混合した混合粉末原料を供給するホッパー50であって、円筒状のホッパー部51と、ホッパー部51の下端に接続された円錐状のコーン部52と、コーン部52の下端に接続された排出部53とからなり、ホッパー部51内に深さ方向に延びる仕切り板61が設置されている。焼成装置1には、ホッパー50が、供給部10において被焼成物を供給する装置として用いられている。ホッパー50に投入された混合粉末原料の水平面での不規則な移動が抑制され、複数種粉末の比重や粒径による分離が抑制され、粉末の混合比が均一に保たれる。このため、高容量の二次電池用正極活物質を容易に製造することが可能となる。【選択図】図1

Description

本発明は、ホッパーおよびそれを用いた二次電池用正極活物質の焼成装置に関するものである。
近年、携帯電話やノート型パソコン等の携帯機器の普及にともない、高いエネルギー密度を有する小型かつ軽量な二次電池の開発が強く望まれている。また、xEVと呼ばれる環境対応自動車においても、ハイブリッド車(HEV)から高容量の二次電池を必要とするプラグインハイブリッド車(PHEV)や電気自動車(BEV)への移行が進んでいる。BEVは、1回の充電での走行距離がガソリン車に比べ短く、これを改善するため二次電池の高容量化が求められている。
このような要求を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。このリチウムイオン二次電池は、負極および正極と電解液等で構成され、負極および正極の活物質は、リチウムを脱離および挿入することの可能な材料が用いられている。
リチウムイオン二次電池は、現在、研究開発が盛んに行われているところであるが、中でも、層状またはスピネル型のリチウム金属複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
これまで主に提案されている材料としては、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)や、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn)などを挙げることができる。
これらの中でも、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)は、高容量で、かつ、高出力であり、今後の環境対応自動車の二次電池の正極活物質として求められる特性を満足するものとして注目されており、急速に需要が拡大しつつある。
特許文献1には、一般式:LiNi1−x−yCo(式中、Mは、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Nb、ZrおよびMoから選ばれる少なくとも1種の元素である。bは0.95≦b≦1.03、xは0<x≦0.15、yは0<y≦0.07、x+yは≦0.16を満たす数値である。)であらわされるリチウムニッケル複合酸化物からなる非水系電解質二次電池用正極活物質が示されている。
また、特許文献2には、一般式:LiNi1−x−yCoAl(ただし、0.9≦a≦1.0、0.10≦x≦0.20、0.02≦y≦0.1)で表されるリチウムニッケル複合酸化物の粒子からなる非水系電解質二次電池用正極活物質が示されている。
特許文献1および2の正極活物質を得るには、ニッケル複合酸化物粒子とリチウム化合物粒子を混合した混合粉を焼成する必要があるが、ニッケル複合酸化物粒子とリチウム化合物粒子は、粒径および比重が異なるため、粒径分離や比重分離が生じやすい。量産工程では、混合粉を大型のホッパーに貯蔵し、そこから匣鉢等の焼成容器に混合粉を供給するのが一般的である。この大型ホッパー内でも粒径分離や比重分離が発生し、ニッケル複合酸化物粒子とリチウム化合物の混合比に分ができてしまう。その結果、混合粉を一定の混合比で匣鉢などの焼成容器に供給することが難しい。
そして、ニッケル複合酸化物とリチウム化合物の混合比がずれた場合、例えば、特許文献1に記載されているように、充放電サイクル時の電池容量の大きな低下、充電時のガスの多量発生、電極作製時のスラリーのゲル化が生じてしまう。
これを防止するため、特許文献1では、ニッケル複合水酸化物を酸化焙焼してニッケル複合酸化物にしてリチウム化合物と混合しているが、ニッケル複合水酸化物とリチウム化合物の混合物に比べると比重分離が発生しにくくなるが、前述したとおり、ニッケル複合酸化物とリチウム化合物も比重差や粒径差が大きいため、比重分離や粒径分離を生じ、ホッパー内で混合比の分布ができてしまう。
また、特許文献2では、前駆体の形骸が破壊されない程度で十分に混合することで、混合比のばらつきが抑えられることが記載されている。試験研究や小規模生産のように、混合してすぐに、しかもほとんど流動させずに焼成容器に供給する場合は、ばらつきは小さくなるが、量産設備のように大型ホッパーを用いる場合は、ホッパー内での流動などにより、比重分離や粒径分離が生じ、ニッケル複合酸化物とリチウム化合物の混合比に分布できてしまう。その結果、焼成容器によって混合比が異なる混合粉を焼成してしまい、前述したような電池容量の低下やスラリーのゲル化を生じる正極活物質が形成されてしまうことになる。
上記のようなニッケル複合酸化物とリチウム化合物に代表される二次電池用正極活物質原料を含め、あらゆる粉末原料をホッパーを用いて供給する場合、粉末原料間で混合比のばらつく原因の一つがホッパーのコーン部に形成される固化層であることを、本発明者らは突きとめた。
従来のホッパーのコーン部での固化層の形成を防止する従来技術には、特許文献3〜5がある。
特許文献3には、コーン状の剛性容器内に、同じくコーン状で軟質材製の軟性容器を設けて剛性容器と軟性容器との間に気密空隙部を形成すると共に、剛性容器に通気管を連通して、この通気管から気密空隙部に圧縮流体を供給して軟性容器を内方に自在に膨張させて閉塞状態にある粒体を崩す装置が開示されている。
また、特許文献4には、排出口近傍における内面に設けられたプレートと、プレートを振動させる振動手段とを備えた装置が開示されている。
しかし、特許文献3および4の方法では、形成された固化層を破壊するため、混合比のばらつきはある程度改善されるものの、固化層の形成を完全に防止することはできないため、十分には改善することができない。
特許文献5には、内挿コーンを貯蔵槽の底部開口の上部近傍に設け、内挿コーンに羽根を設ける方法が開示されている。この方法だと固化層が形成されることが無く、混合粉の混合比のばらつきが改善されるが、内挿コーンにより粉の流れが抑制され、粉の排出速度が遅くなってしまう。また、内挿コーンがワイヤーで吊られているため、揺れにより、ワイヤーや吊り環の摩耗粉や、内挿コーンがホッパー壁と接触して発生する粉が、混入する可能性がある。
特開2015−216105号公報 特開2017−188211号公報 特開2001−039489号公報 特開2008−222272号公報 特開平6−080189号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、あらゆる種類の混合粉末原料の混合比のバラツキを小さくできるホッパーを提供することを目的とする。
また、本発明は、二次電池用正極活物質の原料間の混合比のバラツキを小さくして製造できる二次電池用正極活物質の焼成装置を提供することを目的とする。
第1発明のホッパーは、複数種の粉末を混合した混合粉末原料を供給するホッパーであって、円筒状のホッパー部と、該ホッパー部の下端に接続された円錐状のコーン部と、該コーン部の下端に接続された排出部とからなり、前記コーン部の開き角aが、前記混合粉末原料の安息角の最大値をbとしたとき、式(1)で表わされる角度であり、a≦180−2b−10・・・式(1)、前記ホッパー部内に深さ方向に延びる仕切り板が設置されていることを特徴とする。
第2発明のホッパーは、第1発明において、前記仕切り板による前記ホッパー部内の分割数が4〜8であることを特徴とする。
第3発明の二次電池用正極活物質の焼成装置は、焼成すべき被焼成物が充填される複数のセッターと、前記各セッターに被焼成物を供給する供給部と、前記各セッターに供給された被焼成物を焼成する焼成炉と、前記各セッターを前記供給部から前記焼成炉に搬入し、前記焼成炉で焼成された焼成物を載せている各セッターを前記焼成炉から搬出する搬送部と、前記焼成物を前記各セッターから排出する排出部と、を備える二次電池用正極活物質の焼成装置において、請求項1または2記載のホッパーが、前記供給部において被焼成物を供給する装置として用いられていることを特徴とする。
第4発明の二次電池用正極活物質の焼成装置は、第3発明において、前記排出部が、前記各セッターから排出された焼成物を破砕する破砕機構を備えていることを特徴とする。
第5発明の二次電池用正極活物質の焼成装置は、第4発明において、前記破砕機構が、ロールクラッシャーであり、かつ高温の焼成物と接触するロールを冷却する冷却機構を備えていることを特徴とする。
第6発明の二次電池用正極活物質の焼成装置は、第4発明において、前記供給部、前記焼成炉、前記排出部、または前記破砕機構の少なくとも一つか、作業空間の酸素濃度を80%以上に維持される機構を備えていることを特徴とする。
第7発明の二次電池用正極活物質の焼成装置は、第2発明〜第6発明のいずれかにおいて、前記焼成物が、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及び、それ以外の元素(M)を含み、かつ、各元素の原子数比がLi:Ni:Co:M=s:(1−x−y):x:y(ただし、0.93<s<1.03、0.00≦x≦0.35、0.03≦y≦0.35、Mは1種類以上の遷移金属、アルカリ土類金属、卑金属、または、半金属)で表わされるリチウムニッケル複合酸化物であることを特徴とする。
第1発明によれば、ホッパー部の内部が仕切り板で区分されていることにより、ホッパーに投入された混合粉末原料の水平面での不規則な移動が抑制される。このため、複数種粉末の比重や粒径による分離が抑制され、ホッパー内を落下する間での複数種の粉末の混合比が均一に保たれる。
第2発明によれば、ホッパー部内の分割数が4〜8であると、粉末の降下空間を充分に確保しつつ水平面内での不規則な移動も効果的に抑制できるので、ホッパー内を落下する間での複数種の粉末の混合比が均一に保たれる。
第3発明によれば、供給部のセッターには第1発明のホッパーより混合粉末原料の混合比のバラツキが小さい状態で供給されるので、焼成された正極活物質の混合粉末原料の混合比もバラツキが小さいままであり、高容量の二次電池用正極活物質を容易に製造することが可能となる。
第4発明によれば、焼成により固まってしまった焼成物を粉砕することができるので、二次電池用正極活物質に用いるのに適当な粒度にすることができる。また、粉砕された焼成物を水洗工程に供することができるので、より均一に焼成物を水洗することができる。
第5発明によれば、一対のロール間に焼成物を供給するだけで焼成物を粉砕することができ、ロールは冷却機構で冷却されるので、過度な高温にならず、ロールに接触する焼成物の物性を変えることがない。
第6発明によれば、供給部から焼成炉を経て排出部に至る間で焼成に適した雰囲気が維持されるので混合粉末原料を充分に反応させることができ、また、焼成後の焼成物の物性の変化を抑制できるため、所望の物性の焼成物が得られる。
第7発明によれば、リチウムイオン二次電池用の正極活物質の原料であって、適正な物性を有するリチウムニッケル複合金属酸化物の焼成物を得ることができる。
本発明の一実施形態に係るホッパー50の説明図である。 (A)図はホッパー内に4分割の仕切り板61を設置した場合の平面図、(B)図はホッパー内に8分割の仕切り板61を設置した場合の平面図、(C)図はホッパー内に6分割の仕切り板61を設置した場合の平面図である。 本発明の一実施形態に係る焼成装置1の概略平面図である。 図2のIV−IV線概略断面矢視図である。 (A)は本発明のホッパー50の混合粉排出状態の概略図、(B)は比較例のホッパー100の混合粉排出状態の概略図である。 リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法の一例を示した図である。 ニッケル複合酸化物の製造方法の一例を示した図である。 焼成後のリチウムニッケル複合酸化物の処理工程の一例を示した図である。 実施例で用いた評価用二次電池を示した図である。 安息角の説明図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら、下記(1)〜(6)の順で説明する。ただし、本発明は以下説明する実施形態に限定されるものではない。図面においては、適宜、模式的に表現することや、縮尺を変更して表現することがある。
(1)ホッパー
(2)上記ホッパーを用いる焼成装置
(3)リチウムイオン二次電池用正極活物質の製法
(4)リチウムイオン二次電池用正極活物質
(5)リチウムイオン二次電池
(6)リチウムイオン二次電池の実施例
(1)ホッパー
本発明の一実施形態に係るホッパー50は複数種の粉末を混合した混合粉末原料を供給するホッパーである。
本明細書でいう複数種の粉末とは、比重や粒径、組成などの物理的性状が異なる2種以上の粉末をいい、それを混合したものを混合粉末原料という。
このような混合粉末原料の一例としてリチウム化合物とニッケルコバルト複合酸化物などの二次電池用正極活物質の焼成原料をあげることができる。このような複数種の粉末は、比重や粒径が異なることから、一定比率で混合していても、ホッパー内を流動する際に部分的にしろ混合比率が変ってくることがある。混合比が変ると混合粉末の性状が変るので、それを避け混合比率を一定に保ちたい粉末原料を供給するのに本発明のホッパーは好適である。
なお、複数種の粉末には2種に限られず、3種以上のものも含まれる。また、本発明は、比重等が変らない複数種の粉末の供給に適用することも可能である。
図1に示すホッパー50は、円筒状のホッパー部51と、ホッパー部51の下端に接続された円錐状のコーン部52と、コーン部52の下端に接続された排出部53とからなる。排出部53には混合粉末原料のホッパーからの排出を制御するバルブ54が介装されている。
そして、ホッパー部51には仕切り板61が取付けられている。
仕切り板61は、ホッパー部51内での粉末の横方向移動を抑止するものなので、垂直方向に取付けられている。仕切り板61を取付ける領域は、ホッパー部51の上下方向領域である。上下方向領域の全てである必要はないが、大部分であることが好ましい。
なお、仕切り板61の下端は、コーン部52の上端付近まで延びてもよい。
仕切り板61によるホッパー部51の分割数は4〜8とするのが好ましい。ホッパー部51内の分割数が4〜8であると、粉末の降下空間を充分に確保しつつ横方向での不規則な移動も効果的に抑制できるので、ホッパー50内を落下する間での複数種の粉末の混合比が均一に保たれる。これに対し、分割数が3以下であると粉末の横方向の不規則な移動を抑制する効果が小さくなり、分割数が9以上であると粉末と仕切り板61との摩擦による流動抵抗が大きくなるので、いずれも好ましくない。
仕切り板61の入れ方は放射状に入れるものや桝目状に入れるものなど任意であるが、図2に示すタイプを例示できる。
(A)図は、2枚の仕切り板61a,61bを直角に交差させて、ホッパー部51を4分割したものである。
(B)図は、3枚の仕切り板61a,61b,61cを45°間隔で交差させて、ホッパー部51を8分割したものである。
(C)図は、1枚の仕切り板61aと、平行な2枚の仕切り板61d,61eとを直交させてホッパー部を6分割したものである。
本発明のホッパーにおいてコーン部52の開き角aは、図1に示すように、粉末原料の安息角の最大値をbとしたとき、式(1)で表わされる角度とされる。
a≦180−2b−10・・・式(1)
開き角aとはコーン内で相対向する内壁間で内壁同士が交差する角度をいう。
すなわち、コーン部52を構成する内壁52aの水平面に対する交差角は混合粉末原料の安息角の最大値b+αである。図示の実施形態におけるαは5°である。
この場合、対角にある内壁52間のなす角度、すなわち開き角aは、(180−2b−10)となる。
開き角aは上記の場合が最大角であって、これより小さいものも含まれる。つまりコーン部52がより鋭いテーパになったものも本発明に含まれる。
安息角とは、図10に示すように、粉末pwを一定の高さから落下させて、自発的に崩れることなく安定を保つときに、形成する粉体の山の斜面と水平面とのなす角度をいう。
この安息角cは、粒子の大きさや形状、表面状態、重さ等により決まり、流動しやすい粉末の安息角cは小さく、流動しにくい粉末の安息角cは大きくなる。また、この安息角は、粉の性状によっては、幅を持つが、本発明ではその最大値bを用いる。
図1のホッパー50では、コーン部52の内壁52aが、そのホッパーで取り扱う混合粉末原料の安息角の最大値bより大きい角度で傾斜している。
このため、ホッパー50に投入した混合粉末原料pwがコーン部52の内壁52aで安息角の最大値bを越えた角度で下方に向け流れ落ちることから、混合粉末原料pwの滞留による固化層を形成することがない。
上記理由により、本発明のホッパーとしては、(A)ホッパー部51を仕切り板61で仕切り、かつ(B)コーン部52の開き角aを混合粉末原料の安息角の最大値bに基づいた、前記式(1)を満足するものとすると、要件(A),(B)の相乗効果が働くので好ましい。
つぎに、図5に基づき、本実施形態のホッパー50の利点を説明する。
図5(B)に示す従来例のホッパー100では、フレキシブルコンテナ等からホッパー100に投入された混合粉末原料pwがホッパー100内で真直ぐ流下しないで、矢印で示すように横方向外側へ流れたり、それ流れに押されてうずを巻いて垂直面で舞い上がったりすることがある。このため、混合粉末原料pwの混合比のバラツキが大きくなる。
これに対し、図5(A)に示す本発明のホッパー50では、仕切り板61によって投入された混合粉末原料の横方向外側や周方向への流動が抑制される。またそれにより、混合粉末原料が舞い上がることもない。
このため、投入された混合粉末原料pwが矢印で示すように直下方に流れていき、ホッパー50への投入前の混合比を保ってホッパー50内で流下するので、混合粉末原料pwの混合比の変化が生じにくく結果として混合比を均一に保つことができる。
さらに、図1に示す実施形態のホッパー50では、コーン部52の内壁52aの開き角aが(180−2b−10)以下なので、混合粉末原料pwの全量がコーン部52の内壁52a上を滑り落ちる。このため、コーン部52内壁面に混合粉末原料pwの固化層slができなくなり、混合粉末原料pwの一部(内壁面に近い領域の原料)に滞留が生じず、円滑に流れるので混合粉末原料pwの混合比の変化が生じにくくなる。このためさらに、混合比のバラツキを小さく抑制することができる。
上記のように、ホッパー50から排出される時点での混合比のバラツキが小さいということは、ホッパー50に投入した時点での混合比がほぼ保たれているということであるので、混合粉末原料の物理的性状を所望どおりに維持して次工程へ供給できることを意味する。
たとえば、混合粉末原料が二次電池用正極材の原料である場合、ホッパー50により供給された被焼成物を焼成装置で焼成するが、得られた焼成粉末は全て同等の電池性能を発揮することに貢献できる。
(2)焼成装置
図3および図4に基づき本発明の一実施形態に係る焼成装置1を説明する。
この焼成装置1は被焼成物(混合粉末原料は、焼成装置で焼成される段階では被焼成物と表記される)の供給に図1のホッパー50を供給部10の構成部品として用いた焼成装置である。
図3および図4に示すように、焼成装置1は、被焼成物から焼成物を焼成する焼成炉2と、被焼成物が載せられる複数のセッターSと、このセッターSに被焼成物を供給する供給部10と、焼成炉2で焼成された焼成物(被焼成物の焼成が完了したものを焼成物という)をセッターSから排出する排出部20と、セッターSを搬送する搬送部5と、を備えている。そして、前記複数のセッターSを、搬送部5によって供給部10、焼成炉2、排出部20の順で移動させることによって、連続して焼成物の焼成することができるようになっている。
以下、焼成装置1の各部の詳細を説明する。
(供給部10)
図3および図4に示すように、供給部10は、後述する供給搬送部5aにおいてセッターSが移動する径路の上方に位置するように設けられている。この供給部10は、混合粉末原料を供給するホッパー50を含んで構成されている。ホッパー50にはフレキシブルコンテナー80等から所定の混合比で混合された混合粉末原料が供給されるようになっている。
なお、ホッパー50と搬送供給部5a上にくるセッターSとの間には公知の充填機15を配置してもよい。充填機15は被焼成物のセッター5への充填性を上げる必要がある場合に設けられるが、その必要がない場合は、設けなくてよい。充填機15を設けない場合は、ホッパー50は図示の上下位置よりも低い位置に配置するとよい。
この供給部10は、ホッパー50の下方にセッターSが移動してくると、バルブ54を開閉して所定の量の混合粉末原料を排出して、セッターS内に混合粉末原料を被焼成物として供給できるようになっている。
ホッパー50のバルブ54の開閉は供給搬送部5aの作動と連動するように制御されていることが望ましい。例えば、ホッパー50の下方にセッターSが配置されると供給搬送部5aがセッターSの搬送を一時停止し、その停止信号を受けてホッパー50のバルブ54が開いて被焼成物がセッターSに供給される。そして、所定の量の被焼成物が供給器12に供給されると、ホッパー50のバルブ54が閉じるが、バルブが閉じた信号を受けて供給搬送部5aが移動するようにすることができる。
また、供給搬送部5aがセッターSの搬送を一時停止せずに、セッターSを移動させながら供給部10からセッターSに被焼成物を供給するようになっていてもよい。
(セッターS)
図3および図4において、符号Sはセッターを示している。このセッターSは、上部に開口Saを有し、内部に中空な空間Shを有する箱型に形成されたもので、匣鉢とも言われるものである。このセッターSの空間Shに被焼成物を収容した状態で、後述する焼成炉2において被焼成物から焼成物が焼成される。
このセッターSは、被焼成物が焼成される温度でもその形状を維持でき、しかも、被焼成物内の物質と反応しない素材によって形成されている。例えば、リチウム複合金属酸化物を焼成する場合であれば、リチウム複合金属酸化物の焼成温度領域である600〜900℃においてもリチウムに対する耐食性を有する素材によってセッターSが形成される。具体的には、アルミナ(Al),ムライト(3Al・2SiO),コーディライト(2MgO・2Al・5SiO),窒化ケイ素(Si),サイアロン(Si・Al),マグネシア(MgO),ジルコニア(ZrO)あるいはベリリア(BeO)などをセッターSの素材として使用できる。とくに、高純度アルミナやZrO入りアルミナであれば、リチウムに対する耐食性に優れるため好ましい。また、ムライトやコーディライトは安価で耐食性も比較的優れており、総合的に低コストなため、焼成物を量産する場合におけるセッターSの素材として適している。
なお、セッターSは、全体を上記のような素材によって形成しなくてもよい。少なくとも、セッターSにおいて被焼成物と接触する面(つまりセッターSの内面)が被焼成物内の物質と反応しない素材によって形成されていればよい。例えば、リチウム複合金属酸化物を焼成する場合であれば、金属などで形成されたセッターSの内面をアルミナやムライト等で覆ってもよい。この場合でも、セッターSの本体を形成する素材には、被焼成物から焼成物が焼成される温度においてその形状を維持できる素材を使用することが必要である。
(搬送部5)
図3および図4に示すように、焼成装置1は、前記複数のセッターSを搬送する搬送部5を備えている。この搬送部5は、供給搬送部5aと、焼成炉搬送部5bと、排出搬送部5cと、返送搬送部5dとからなる。
供給搬送部5aは、供給部10において被焼成物が供給された複数のセッターSを焼成炉2に連続して搬入するものである。
焼成炉搬送部5bは、焼成炉2内において複数のセッターSを移動させるものである。
排出搬送部5cは、焼成された焼成物が収容されている複数のセッターSを焼成炉2から連続して搬出して排出部20に供給するものである。
返送搬送部5dは、排出部20において焼成物が排出された複数のセッターSを供給部10まで搬送するものである。なお、返送搬送部5dの途中には、セッターSを清掃する設備(例えば吸引装置等)等が設けられる場合がある。
搬送部5は、供給搬送部5a、焼成炉搬送部5b、排出搬送部5cおよび返送搬送部5d(以下単に各搬送部5a〜5dという場合がある)が複数のセッターSを同じ速度で移動させるようになっていてもよいし、複数のセッターSが移動する速度がそれぞれ異なる速度にできるようになっていてもよい。もちろん各搬送部5a〜5d内でも複数のセッターSを異なる速度で移動させることができるようになっていてもよい。
各搬送部5a〜5dは、上述したように複数のセッターSを搬送できるものであればよく、その搬送機構はとくに限定されない。搬送機構として、例えば、ベルトコンベアやチェーンコンベア、ローラーコンベア等を採用することができる。そして、各搬送部5a〜5dの搬送機構は全て同じ機構としてもよいし、異なる搬送機構を採用してもよい。
図3および図4では、各搬送部5a〜5dがローラーコンベアによって形成されている一例を示している。
さらに、各搬送部5a〜5dの各部を構成する部品の素材はとくに限定されないが、リチウムによる浸食に強いアルミナやムライトなどの素材を用いるとことが好ましい。かかる素材を部品の表面に使用すれば、被焼成物から水酸化リチウム等の飛散などが生じた場合に水酸化リチウム等による損傷を防止できる。
(焼成炉2)
図3および図4において、符号2は本実施形態の焼成装置1の焼成炉を示している。この焼成炉2は、被焼成物を移動させながら焼成物に焼成する連続焼成炉である。この焼成炉2内には上述した焼成炉搬送部5bが設けられており、被焼成物を収容した複数のセッターSを移動させながら被焼成物を焼成物に焼成することができるようになっている。例えば、ローラーハースキルンやプッシャー炉、コンベア炉などの公知の連続焼成炉を本実施形態の焼成装置1の焼成炉2として使用することができる。
なお、焼成炉2自体がセッターSや被焼成物等を搬送する搬送機構を有している場合には、この搬送機構を焼成炉搬送部5bとして使用してもよい。
焼成炉2は、その内部の空間2hの温度を所定の温度に維持することができるものである。焼成炉2において、内部の空間2hの温度を所定の温度に維持する方法はとくに限定されない。例えば、電気式ヒーターやガス式ヒーター、熱媒式ヒーター等によって焼成炉2内の空間2hの温度を所定の温度以上に維持することができる。
焼成炉2が、均熱ゾーン2a、昇温ゾーン2bおよび降温ゾーン2cを有する場合には、各ゾーンでは、空間の温度は以下のように調整される。また、各ゾーンにおける焼成物の移動時間、つまり搬送部5によるセッターSを搬送する速度は以下のように調整される。
まず、均熱ゾーン2aは、被焼成物から焼成物を焼成する領域である。この均熱ゾーン2aでは、被焼成物から焼成物を焼成できる温度に空間の温度が維持される。また、均熱ゾーン2a内を各セッターSが移動する時間は、各セッターS内の被焼成物を焼成物に焼成できる時間となるように調整される。なお、上述したように、被焼成物あるいは焼成物の物性が変わらない雰囲気となるように、均熱ゾーン2aには酸素ガスが導入される。
昇温ゾーン2bは、均熱ゾーン2aにおける焼成が適切に行われるように、被焼成物の温度を所定の温度まで上昇させる領域である。昇温ゾーン2bでは、被焼成物の温度が所定の温度まで上昇するように、空間の温度や被焼成物の移動時間が調整される。具体的には、搬入される被焼成物が均熱ゾーン2aの温度に徐々に近づくように、昇温ゾーン2bでは空間の温度や被焼成物の移動時間が調整される。つまり、急激な温度上昇によって被焼成物中の物質の異常な反応等が生じないように昇温ゾーン2bは入り口から出口に向かって段々と温度が上がるよう調整される。なお、上述したように、被焼成物の物性が変わらない雰囲気となるように昇温ゾーン2bにも酸素ガスが導入される。
降温ゾーン2cは、昇温ゾーン2bとは逆に、被焼成物の温度を所定の温度まで低下させる領域である。均熱ゾーン2aにおいて焼成された焼成物がそのまま常温の空気に接すると、焼成物の温度が急激に変化して焼成物の変質や高温で大気に接触することによる比表面積などの物性変化等の問題が生じる可能性がある。そこで、焼成炉2から排出される段階において常温の空気に接しても焼成物の変質等が生じない温度となるように、降温ゾーン2cでは、焼成物の温度が徐々に低下するように空間の温度や焼成物の移動時間を調整するとともに、降温ゾーン2cの雰囲気を均熱ゾーン2aと同等のものにしておく。
例えば、水和水を除去した水酸化リチウム(LiOH)とニッケル複合水酸化物(Ni0.91Co0.04Al0.05(OH))の混合物からリチウム複合金属酸化物(LiNi0.91Co0.04Al0.05)を焼成する場合を考える。この場合であれば、リチウム複合金属酸化物が焼成される温度が730〜770℃程度であるので、焼成炉2の均熱ゾーン2aは空間が730〜770℃程度になるように設定され、均熱ゾーン2a内を各セッターSが移動する時間が2〜5時間程度となるように搬送部5の作動が調整される。また、昇温ゾーン2bは、混合物が均熱ゾーン2aに入る段階で焼成温度(730〜770℃程度)となっていることが好ましいので、昇温ゾーン2bの入り口側では300℃程度、出口側の空間が焼成温度になるように設定され、昇温ゾーン2bの出口でリチウム複合酸化物が焼成温度になるように、昇温ゾーン2b内を各セッターSが移動する時間を調整するため、搬送部5の作動が調整される。
(排出部20)
図3および図4に示すように、排出部20は、排出搬送部5cと返送搬送部5dの間に配置されている。この排出部20は、セッターS内の焼成物(被焼成物の焼成が完了したもの)を粉砕して小さい塊や粉状にする破砕機構21と、この破砕機構21に対してセッターS内の焼成物を供給する焼成物供給器(図示せず)と、を備えている。
焼成物供給器は、排出搬送部5c上を搬送されるセッターSを反転させて、セッターS内の焼成物を破砕機構21に供給するものである。この焼成物供給器は、セッターSを反転させることができるものであればよくとくに限定されない。例えば、セッターSを保持してセッターSを反転させるアームを備えた装置等を採用することができる。なお、焼成物供給器は、セッターSを反転させた後、セッターSを排出搬送部5cから返送搬送部5dに移載する機能を有していることが望ましい。
破砕機構21は、焼成物供給器から供給される焼成物を粉砕できる機能を有するものであればよく、とくに限定されない。例えば、図2および図3に示すように、所定の間隔を空けて配置された一対のロール22,22を有していれば、その一対のロール22,22間に焼成物を挟んで粉砕することができる。つまり、破砕機構21として、ロールクラッシャーを採用すれば、一対のロール間に焼成物を供給すれば、焼成物を粉砕することができる。
ロールクラッシャーのロール22,22には、ロール内部に冷却水を給排する等の冷却機構を設けておくことが好ましい。冷却機構によりロール22を冷却できれば、ロール表面が過度な高温にならず、ロールに接触する焼成物の物性を変えることがない。
ロールクラッシャーの他には、ジョークラッシャーなどを用いることができる。また、数ミリ以下の粒度まで粉砕する場合は、ピンミル、ハンマーミル、ジェットミルなどをロールクラッシャーやジョークラッシャーと併用するとよい。
さらに、破砕機構21は焼成物を粉砕して形成された塊や粉状を次工程に搬送する機能を有していてもよいし、次工程に搬送するコンベア等に塊や粉状を排出するようになっていてもよい。
粉砕機構21を備えていれば、焼成により固まってしまった焼成物を粉砕することができるので、二次電池用正極活物質に用いるのに適当な粒度にすることができる。また、粉砕された焼成物を水洗工程に供することができるので、より均一に焼成物を水洗することができる。
(焼成雰囲気維持機構)
本発明の焼成装置1では、各部の作業空間の酸素濃度を80%以上に維持する機構を備えておくことが好ましい。
1)供給部10は、ホッパー50のバルブ54内部を所定の雰囲気に維持できる機能を有していることが望ましい。例えば、ホッパー50のバルブ54内部に酸素を導入する機能を有していれば、ホッパー50のバルブ54内部の被焼成物の周囲の雰囲気を酸素濃度が80%以上にすることができる。つまり、ホッパー50のバルブ54内部を被焼成物の物性が変わらない雰囲気にできる。
また、供給部10は、バルブ54から被焼成物が供給されるセッターS(供給器12下方に配置されたセッターS)を覆うフードなどを有していてもよい。その場合、バルブ54からセッターSに供給される被焼成物やセッターS内の被焼成物も所定の雰囲気に維持できる。
2)焼成炉2は、その内部の空間2hつまり、被焼成物および焼成物の周囲を所定の雰囲気に維持する機能を有している。所定の雰囲気とは、被焼成物を焼成物に焼成する際に適した雰囲気を意味している。例えば、リチウム複合金属酸化物を焼成する場合であれば、焼成炉2内の空間2hが所定の酸素濃度(例えば80%以上)に維持された酸素雰囲気が所定の雰囲気に相当する。なお、焼成炉2内の空間2hを上述した酸素雰囲気に維持する方法には制限がない。例えば、焼成炉2内の空間2hに酸素を導入する酸素導入装置を設けて、この酸素導入装置によって空間2hに酸素ガスを導入する。すると、焼成炉2内の空間2hを所定の酸素濃度(例えば80%以上)に維持された酸素雰囲気に維持することができる。
なお、均熱ゾーン2aには焼成反応に必要な酸素濃度になるように酸素ガスが導入される。
また、降温ゾーン2cにも焼成物の物性が変わらない雰囲気となるように酸素ガスが導入される。
3)排出部20の内部、とくに破砕機構21は、焼成物を粉砕する空間、あるいは、焼成物が供給される空間を所定の雰囲気に維持できる機能を有していることが望ましい。例えば、破砕機構21の内部に酸素を導入する機能を有していれば、破砕機構21に供給された焼成物の周囲の雰囲気を酸素濃度が80%以上となるようにすることができる。つまり、破砕機構21において焼成物を破砕する間に焼成物の物性が変化することを防止できる。
4)供給部10から焼成炉2の入り口までを覆うフードなどを有していれば、供給部10から焼成炉2まで移動する間も、被焼成物の周囲を所定の雰囲気に維持できる。
すると、供給部10から焼成炉2まで移動する間に、被焼成物の物性が変化することを抑制できる。
また、焼成炉2から排出部20までを覆うフードなどを有していれば、焼成炉2から排出部20まで焼成物が移動する間も焼成物の周囲の雰囲気を所定の雰囲気に維持できる。すると、焼成炉2から排出部20まで移動する間に、焼成物の物性が変化することを抑制できる。
特許請求の範囲でいう「作業空間」とは、供給部10、焼成炉2および排出部20(破砕機構21を含む)において、被焼成物が移動していきながら必要な処理を受ける空間をいう。
(3)リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
本発明のホッパーおよび焼成装置は二次電池用正極活物質の原料の供給と焼成に好適に用いることができる。
本発明が適用される二次電池用正極活物質の原料には、とくに制限はないが、リチウムニッケル複合酸化物を含むリチウムイオン二次電池用正極活物質(以下、単に「正極活物質」ともいう。)が一例としてあげられる。
リチウムニッケル複合酸化物は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及び、それ以外の元素(M)を含み、かつ、各元素の原子数比がLi:Ni:Co:M=s:(1−x−y):x:y(ただし、0.93<s<1.03、0.00≦x≦0.35、0.03≦y≦0.35、Mは1種類以上の遷移金属、アルカリ土類金属、卑金属、または、半金属)で表される。また、上記リチウムニッケル複合酸化物(以下、単に「複合酸化物」ともいう。)は、層状構造の結晶構造を有し、一次粒子が凝集して形成された二次粒子の形態を含んでもよい。
図6は、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法の一例を示す図である。図6に示されるように、正極活物質の製造方法は、例えば、ニッケル複合酸化物と、リチウム化合物と、を含むリチウム混合物を得ること(混合工程:ステップS10)と、リチウム混合物を焼成すること(焼成工程:ステップS30)と、を含むものである。以下、各工程について説明する。
(混合工程:ステップS10)
まず、ニッケル複合酸化物と、リチウム化合物とを混合してリチウム混合物を得る(ステップS10)。製造方法は、原料としてニッケル複合酸化物を用いることにより、非常に短時間の焼成で結晶性の高いリチウムニッケル複合酸化物を生産性高く得ることができる。以下、混合工程(ステップS10)に用いる各原料について説明する。
(ニッケル複合酸化物)
ニッケル複合酸化物は、ニッケルとそれ以外の遷移金属、アルカリ土類金属、卑金属、または、半金属などを含む複合酸化物である。以降の説明ではニッケル複合酸化物の1例として、ニッケル及びコバルトを含む酸化物(以下、「ニッケルコバルト複合酸化物」ともいう。)として説明する。
ニッケルコバルト複合酸化物は、ニッケル及びコバルト以外に、他の元素Mを含んでもよい。元素Mはニッケル、コバルト以外の遷移金属、アルカリ土類金属、卑金属、または、半金属から選択される1種以上であり、例えば、マンガン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、ホウ素、ニオブ、バナジウム、チタンなどが挙げられる。
ニッケルコバルト複合酸化物は、例えば、ニッケル(Ni)と、コバルト(Co)と、元素Mとを含み、各元素の原子数比(モル比)が、Ni:Co:M=(1−x−y):x:y(0.00≦x≦0.35、0.03≦y≦0.35)で表されてもよい。なお、ニッケルコバルト複合酸化物に含まれる各元素の比率は、リチウムニッケル複合酸化物まで継承される。よって、ニッケルコバルト複合酸化物全体の組成は、得ようとするリチウムニッケル複合酸化物のリチウム以外の金属の組成と同様とすることができる。
ニッケルコバルト複合酸化物は、例えば、正極活物質の前駆体として用いられるニッケルコバルト複合水酸化物を酸化することで得ることができる。ニッケルコバルト複合酸化物を用いた場合、リチウム混合物の焼成時に発生する水蒸気の量が減少し、格段に反応が進みやすくなり、焼成時間を大幅に短縮することができる。以下、ニッケルコバルト複合酸化物の製造方法の一例について説明する。なお、ニッケルコバルト複合酸化物は、他の製造方法により得てもよい。
図7は、ニッケルコバルト複合酸化物の製造方法の一例を示した図である。例えば、ニッケルコバルト複合酸化物は、晶析(ステップS1)により得られたニッケルコバルト複合水酸化物を酸化焙焼すること(ステップS2)を備える方法により得ることができる。晶析により得られるニッケルコバルト複合水酸化物は、粒子全体で組成が均一となり、最終的に得られる正極活物質の組成も均一になる。なお、ニッケルコバルト複合酸化物は、晶析以外の方法により得てもよい。以下、ニッケルコバルト複合酸化物を製造する各工程について説明する。
(晶析工程;ステップS1)
ニッケルコバルト複合水酸化物は、ニッケルを含む塩(Ni塩)、コバルトを含む塩(Co塩)、及び、元素M含む塩を含有する水溶液に、中和剤などを供給して、晶析すること(ステップS1)で得られる。具体例としては、ニッケル塩、コバルト塩及び元素Mの塩を含有する水溶液を攪拌しながら、アンモニウムイオン供給体などの錯化剤の存在下、アルカリ水溶液を用いて中和して、晶析反応を行うことで製造することができる。晶析法により得られたニッケルコバルト複合水酸化物は、一次粒子が凝集した二次粒子で構成され、このニッケルコバルト複合水酸化物粒子を前駆体として用いて得られる正極活物質も一次粒子が凝集した二次粒子で構成されたものとなる。
上記金属塩を含有する水溶液を調整する際に用いる金属塩としては、例えば、Ni、Co及び元素Mそれぞれの硫酸塩、硝酸塩、塩化物を用いることができる。
ニッケルコバルト複合水酸化物は、ニッケル(Ni)と、コバルト(Co)と、任意に他の金属(M)とを含むことができ、各元素のモル比が、Ni:Co:M=1−x−y:x:y(0.00≦x≦0.35、0.03≦y≦0.35)で表されることが好ましい。ニッケルコバルト複合水酸化物に含まれる各元素の比率は、ニッケルコバルト複合酸化物、及びリチウムニッケル複合酸化物まで継承される。よって、ニッケルコバルト複合水酸化物全体の組成は、得ようとするリチウムニッケル複合酸化物のリチウム以外の金属の組成と同様とすることができる。
なお、晶析方法としては、特に限定されず、例えば、連続晶析法、バッチ法などを用いることができる。連続晶析法は、例えば、反応容器からオーバーフローしたニッケルコバルト複合水酸化物を連続的に回収する方法であり、組成が等しいニッケルコバルト複合水酸化物を大量にかつ簡便に作製できる。また、連続晶析法で得られたニッケルコバルト複合酸化物は、広い粒度分布を有するため、セッターへ充填したときの混合粉末原料の充填密度を向上させることができる。なお、ニッケルコバルト複合水酸物の粒径は、例えば、1μm以上50μm以下である。
バッチ法は、より均一な粒径を有し、粒度分布の狭いニッケルコバルト複合水酸物を得ることができる。バッチ法で得られたニッケルコバルト複合水酸化物は、焼成の際、より均一にリチウム化合物と反応することができる。また、バッチ法で得られたニッケルコバルト複合水酸化物は、二次電池に用いられた際にサイクル特性や出力特性を低下させる原因の一つとなる微粉の混入を減少させることができる。
(酸化焙焼:ステップS2)
次いで、ニッケルコバルト複合水酸化物を、酸化焙焼(熱処理)をすることにより、ニッケルコバルト複合酸化物を得る(ステップS2)。酸化焙焼の条件は、ニッケルコバルト複合水酸化物の大部分がニッケルコバルト複合酸化物に変換される条件であれば、特に限定されないが、例えば、酸化焙焼の温度は600℃以上800℃以下であることが好ましい。酸化焙焼の温度が600℃未満である場合、ニッケルコバルト複合水酸化物(前駆体)に水分が残留して酸化が十分に進まないことがある。一方、酸化焙焼の温度が800℃を超える場合、複合酸化物同士が結着して粗大粒子が形成されることがある。また、酸化焙焼の温度が高すぎる場合、多くのエネルギーを使用するため、コストの観点から、生産性が低下し、工業的に適当ではない。
酸化焙焼の時間は、例えば、0.5時間以上3.0時間以下であることが好ましい。酸化焙焼の時間が0.5時間未満である場合、ニッケルコバルト複合水酸化物の酸化が十分に進まないことがある。一方、酸化焙焼の時間が3.0時間を超える場合、エネルギーコストが大きくなり、生産性が低下し、工業的に適当ではない。
(リチウム化合物)
図5に戻り、ニッケル複合酸化物(図6に示すニッケルコバルト複合酸化物)と混合されるリチウム化合物を説明する。リチウム化合物としては、特に限定されず、公知のリチウム化合物を用いることができ、例えば、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸リチウム、又は、これらの混合物が用いることができる。これらの中でも、好ましくは水酸化リチウム、炭酸リチウムが用いられる。
また、リチウム化合物は、焼結の際の反応性を高め、焼成時間をより短くするという観点から、水酸化リチウムが好ましい。
水酸化リチウムとしては、水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)などの水和物、無水水酸化リチウム(LiOH)などの無水物を用いることができ、中でも、無水水酸化リチウムが好ましく、水分率が1.5%以下、かつ、トータルカーボンが1.0%以下の水酸化リチウムがより好ましい。
水分率が1.5%以下、かつ、トータルカーボンが1.0%以下の水酸化リチウムは、例えば、水酸化リチウム水和物(LiOH・HO)を熱処理して得ることができる。このような水酸化リチウムを用いた場合、焼成工程(ステップS30)における水分の発生が抑制されることにより、リチウムニッケル複合酸化物の合成反応が促進され、焼成時間を短縮することができる。
(リチウム混合物)
図6の工程図に示すニッケル複合酸化物とリチウム化合物との混合割合は、ニッケル複合酸化物中のニッケル、コバルト及びアルミニウムの合計の原子数(Me)とリチウムの原子数(Li)との比(Li/Me比)が、0.93を超え1.03未満の範囲となるように混合される。Li/Me比が0.93以下である場合、焼成工程(ステップS30)において、一部のニッケル複合酸化物が反応せずに残存して十分な電池性能が得られないことがある。一方、Li/Me比が1.03以上である場合、焼成工程(ステップS30)において、焼結が促進され、焼成物が硬くなり解砕が困難になることや、得られるリチウムニッケル複合酸化物の粒径や結晶子径が大きくなりすぎ、十分な電池性能が得られないことがある。この混合比(Li/Me比)を本発明の焼成装置1(図3〜4)に供給する前と後とで変えないようにするのが、本発明のホッパー(図1〜2)の役割である。
二次電池の構成の違い等により、要求されるLi/Me比の値は異なるため、Li/Me比の値は、上記範囲内において、その要求に応じて適宜、設定することができる。なお、Li/Me比の値は、例えば、0.95以上1.03未満であってもよく、1.0以上1.03未満であってもよく、1.0を超え1.03未満であってもよい。
また、Li/Me比は、焼成工程(ステップS30)の前後でほぼ変化しないので、リチウム混合物中のLi/Me比が、リチウムニッケル複合酸化物中でもほぼ維持される。よって、ニッケル複合酸化物とリチウム化合物との混合割合は、得ようとするリチウムニッケル複合酸化物中のLi/Me比と同じになるように、適宜調整することができる。
ニッケル複合酸化物とリチウム化合物との混合には、一般的な混合機を使用することができ、例えば、シェイカーミキサ、レーディゲミキサ、ジュリアミキサ、Vブレンダなどを用いることができる。またこの混合は、ニッケル複合酸化物の形骸が破壊されない程度で、十分に混合されればよい。混合が十分でない場合、個々の粒子間でLi/Me比がばらつき、十分な電池特性が得られない等の問題が生じる可能性がある。
上記のようにLi/Me比が適切な比率で混合されると、フレキシブルコンテナー(図3の符号80)等に充填される。そして、このフレキシブルコンテナー80から焼成工程の前に、図3に示す焼成装置1の供給部10におけるホッパー50に混合粉末原料が供給される。
さらに、ホッパー50から焼成装置1のセッターSに混合粉末原料が充填されて焼成から排出までの工程が実行される。
(焼成:ステップS30)
図6の工程図に示す焼成工程(S30)では、被焼成物を酸素雰囲気中、650℃以上1100℃以下で焼成する(焼成工程、ステップS30)。被焼成物を焼成することにより、ニッケルコバルト複合酸化物とリチウム化合物とが反応し、リチウムニッケル複合酸化物が生成される。上述した被焼成物を上記温度で焼成することにより、従来の焼成時間よりも非常に短い時間で、従来と同等以上の高い結晶性を有するリチウムニッケル複合酸化物(正極活物質)を得ることができる。
焼成条件は、被焼成物中のニッケル複合酸化物とリチウム化合物とが反応して、リチウムニッケル複合酸化物が形成される条件であれば、特に限定されないが、例えば、温度を室温から徐々に上げ、650℃以上1100℃以下の温度範囲で3時間以下保持することが好ましい。焼成温度が650℃未満である場合、リチウムの拡散が十分に行われなくなり、未反応のリチウム化合物の粒子が残ったり、リチウムニッケル複合酸化物の結晶構造が十分整わなくなったりして、得られた正極活物質を用いた二次電池が十分な電池特性を有さないことがある。一方、焼成温度が1100℃超である場合、リチウムニッケル複合酸化物粒子間で激しく焼結が生じるとともに異常粒成長を生じて、比表面積が低下することがある。また、正極活物質の比表面積が低下して、二次電池における正極の抵抗が上昇して電池容量が低下することがある。
なお、焼成温度は、被焼成物の組成や形状に応じて、適宜、調整することができる。例えば、ニッケル複合酸化物のその他の元素Mがアルミニウム(Al)でリチウム化合物が水酸化リチウムであった場合、焼成温度の範囲は700℃以上800℃であってもよく、730℃以上770℃以下であると好ましく、この温度を2〜5時間程度保持することができる。また、その他の元素がマンガンでリチウム化合物が炭酸リチウムの場合は、焼成温度の範囲は850〜1050℃程度で、この温度を6〜15時間程度保持することができる。
上記焼成温度で被焼成物を保持する時間(以下、「保持時間」ともいう。)は、高い結晶性を有するリチウムニッケル複合酸化物が形成されれば、特に限定されないが、例えば、5時間以下であり、好ましくは3時間以下であってもよい。焼成時間が短いほど、生産性が向上する。また、焼成時間の下限は、例えば2.5時間以上であってもよい。
焼成時の雰囲気は、大気雰囲気以上の酸素濃度を有する酸化性雰囲気であることが好ましく、酸素濃度が80容量%以上の雰囲気とすることがより好ましく、酸素濃度が100容量%であってもよい。すなわち、焼成時の雰囲気は、酸素気流中で行なうことが好ましい。酸素濃度が80容量%未満である場合、ニッケル複合酸化物とリチウム化合物の反応に必要な量の酸素を供給できず、リチウムニッケル複合酸化物が十分に形成されない場合がある。
焼成炉としては、特に限定されず、酸素気流中で加熱できるものであればよく、縦型炉、回転炉床炉及びローラーハースキルンなどを用いることができる。これらの中でも、設備投資とランニングコストの観点から、ローラーハースキルンを用いることが好ましい。
(リチウムニッケル複合酸化物の処理工程S40〜S60)
図8は、焼成後に得られたリチウムニッケル複合酸化物を処理する工程の一例を示す図である。同図に示すように、本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、焼成工程(ステップS30)後に得られたリチウムニッケル複合酸化物(焼成物)を解砕して解砕物(リチウムニッケル複合酸化物の粉末)を得ること(解砕工程:ステップS40)と、解砕物を水洗およびろ過すること(水洗工程:ステップS50)と、水洗されたリチウムニッケル複合酸化物を乾燥すること(乾燥工程:ステップS60)と、を含んでいる。なお、本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、上記の解砕(ステップS40)、水洗(ステップS50)、及び、乾燥工程(ステップS60)を含んでいなくともよいし、これらの3つの工程のうち、少なくとも1つの工程を含んでいてもよい。以下、各工程について説明する。
(解砕工程:ステップS40)
焼成(ステップS30)後に得られたリチウムニッケル複合酸化物(焼成物)は、さらに解砕してもよい(ステップS40)。解砕により、凝集又は軽度の焼結が生じているリチウムニッケル複合酸化物の二次粒子同士を分離し、得られる正極活物質の平均粒径や粒度分布を好適な範囲に調整することができる。また、得られる焼成物は、焼成時の焼成反応で粒子間の結合が生じるので、解砕(ステップS40)することが好ましい。なお、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギーを投入して、二次粒子自体をほとんど破壊することなく分離させて、凝集体をほぐす操作をいう。
解砕の方法としては、公知の手段を用いることができ、たとえば、ピンミルやハンマーミル、分級機能付きの解砕機などを使用することができる。なお、この際、二次粒子を破壊しないように解砕力を適切な範囲に調整することが好ましい。
(水洗工程:ステップS50)
次いで、得られた解砕物を水洗してもよい(ステップS50)。リチウムニッケル複合酸化物(解砕物)を水洗することで、リチウムニッケル複合酸化物粒子表面の余剰のリチウムや不純物が除去され、より高容量で熱安定性が高いリチウムイオン二次電池用正極活物質を得ることができる。ここで、水洗方法としては、特に限定されず、公知の技術が用いられる。
水洗方法としては、例えば、水にリチウムニッケル複合酸化物(解砕物)を投入してスラリーとし、リチウムニッケル複合酸化物の粒子表面の余剰のリチウムが十分に除去されるように、スラリーを撹拌することが好ましい。撹拌後、固液分離し、後述するように乾燥(ステップS60)して、リチウムニッケル複合酸化物を得ることができる。
スラリー濃度としては、水1質量部に対して、好ましくはリチウムニッケル複合酸化物(解砕物)を0.5〜2質量部投入することが好ましい。スラリー濃度として、水1質量部に対する解砕物の投入量が2質量部を超える場合、粘度が非常に高くなり攪拌が困難となることや、液中のアルカリが高いので平衡の関係から付着物の溶解速度が遅くなったり、剥離が起きても粉末からの分離が難しくなったりすることがある。一方、スラリー濃度として、水1質量部に対する解砕物の投入量が0.5質量部未満である場合、スラリーが希薄過ぎるためリチウムの溶出量が多く、リチウムニッケル複合酸化物(解砕物)の結晶格子中からのリチウムの脱離も起きるようになり、結晶が崩れやすくなることや、高pHの水溶液(スラリー)が大気中の炭酸ガスを吸収して、リチウムニッケル複合酸化物の表面に炭酸リチウムが再析出することがある。
水洗工程(ステップS50)に使用する洗浄液は、特に限定されず、例えば、水を用いてもよい。水を用いる場合、例えば、電気伝導率測定で10μS/cm未満の水が好ましく、1μS/cm以下の水がより好ましい。電気伝導率測定が10μS/cm未満の水を使用する場合、正極活物質への不純物の付着による電池性能の低下をより抑制することができる。
上記スラリーを固液分離する際は、リチウムニッケル複合酸化物の粒子表面に残存する付着水が少ないことが好ましい。付着水が多い場合、液中(スラリー中)に溶解したリチウムが再析出し、乾燥(ステップS60)後のリチウムニッケル複合酸化物の表面に存在するリチウム量が増加することがある。固液分離には、通常に用いられる遠心機、フィルタープレスなどが用いられる。
(乾燥工程:ステップS60)
水洗(ステップS50)後、乾燥してリチウムニッケル複合酸化物(正極活物質)を得てもよい(ステップS60)。乾燥条件は、リチウムニッケル複合酸化物中の水分の少なくとも一部が除去されれば、特に限定されない。乾燥工程(ステップS60)は、例えば、濾過(固液分離)後のリチウムニッケル複合酸化物(粉末)を、炭素および硫黄を含む化合物成分を含有しないガス雰囲気下、または真空雰囲気下に制御できる乾燥機を用いて、所定の温度で行なうことが好ましい。
乾燥の温度は、80℃以上550℃以下が好ましく、120℃以上350℃以下がより好ましい。乾燥温度が80℃以上である場合、水洗(ステップS50)後の正極活物質を素早く乾燥し、粒子表面と粒子内部とでリチウム濃度の勾配が起こることを抑制することができる。一方、乾燥温度が550℃を超える場合、若干リチウムが脱離して充電状態に近い状態になっていることが予想される。そのため、リチウムが脱離したサイトを起点にリチウムニッケル複合酸化物の表面付近の結晶構造が崩れるため、二次電池における電池特性の低下を招くおそれがある。
また、乾燥温度は、生産性および熱エネルギーコストの観点から、120℃以上350℃以下がより好ましい。
(4)正極活物質
上記した正極活物質の製造方法により、非常に短時間の焼成で、結晶性に優れるリチウムニッケル複合酸化物(正極活物質)を生産性高く得ることができる。以下、本製造方法により得られるリチウムニッケル複合酸化物(正極活物質)の特性について説明する。
(組成)
リチウムニッケル複合酸化物は、リチウム(Li)とニッケル(Ni)とコバルト(Co)と任意の元素(M)とを含み、各金属元素のモル比が、Li:Ni:Co:M=s:(1−x−y):x:y(ただし、0.93<s<1.03、0.00≦x≦0.35、0.03≦y≦0.35、Mは1種類以上の遷移金属、アルカリ土類金属、卑金属、または、半金属)で表される。
(リチウム席占有率)
リチウムニッケル複合酸化物は、例えば、X線回折パターンのリートベルト解析から得られるリチウム主体層である3aサイトのリチウム席占有率が95%以上であり、好ましくは96%以上であり、より好ましくは97%以上である。リチウム席占有率が上記範囲である場合、焼成工程(ステップS30)において、前駆体とリチウム化合物との焼結反応が十分に行われており、リチウムニッケル複合酸化物が高い結晶性を有することを示す。結晶性の高いリチウムニッケル複合酸化物を二次電池の正極活物質として用いた場合、優れた電池特性(高い電池容量等)を示す。
(溶出リチウム量)
リチウムニッケル複合酸化物は、リチウムニッケル複合酸化物を水に分散させた際に水に溶出するリチウム量(溶出リチウム量)が、リチウムニッケル複合酸化物全量に対して、例えば、0.11質量%以下であり、好ましくは0.10質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下である。なお、溶出リチウム量は、中和滴定法により測定することができる。なお、水洗工程(ステップS50)を行う場合、溶出リチウム量は、水洗(ステップS50)及び乾燥(ステップS60)後に得られたリチウムニッケル複合酸化物を用いて測定した値である。
溶出リチウムは、リチウムニッケル複合酸化物(正極活物質)の粒子表面に存在する、未反応のリチウム化合物や、結晶中に過剰に存在するリチウム等に由来すると考えられる。すなわち、溶出リチウム量は、原料に由来する未反応のリチウム化合物の残存量を示す指標の一つとして用いることができ、溶出リチウム量が少ないほど、未反応のリチウム化合物の残存量が少なく、前駆体とリチウム化合物との焼結反応が進行しているといえる。また、溶出リチウム量が少ないほど、正極合材ペーストのゲル化を抑制することができる。
なお、溶出リチウム量は、リチウムニッケル複合酸化物15gを75mlの純水に分散させた後、10分間静置させ、上澄み液10mlを50mlの純水で希釈して、水に溶出したリチウム量(溶出リチウム量)を中和滴定法により、1mol/リットルの塩酸を加えて測定することにより、算出される値である。
(初期充放電効率)
リチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として用いて作製された評価用の2032型コイン型電池CBA(図9参照)における、初期充放電効率(初期放電容量/初期充電容量)は、例えば、85%以上であり、好ましくは89%以上、より好ましくは89.5%以上である。初期充放電効率が上記範囲である場合、焼成工程(ステップS30)において、前駆体とリチウム化合物との焼結反応が十分に行われており、リチウムニッケル複合酸化物が高い結晶性を有することを示す。なお、初期放電容効率は、実施例で使用したコイン型電池CBAを製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとしてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を測定した値である。
(5)リチウムイオン二次電池
以下に説明するリチウムイオン二次電池は、正極、負極、および非水系電解質から構成されている。正極は、上述の製造方法で得られた正極活物質を用いて得られる。なお、上記以外の二次電池は、例えば、正極、負極、セパレータおよび非水系電解液を備えてもよく、正極、負極、および固体電解質を備えてもよい。また、二次電池は、公知のリチウムイオン二次電池と同様の構成要素により構成されてもよい。
以下、非水系電解液を用いた二次電池の各構成材料と、その製造方法について説明する。
(正極)
正極は、上記の正極活物質を用いて構成される。
まず、上記の正極活物質、導電材、及びバインダー(結着剤)を混合し、さらに必要に応じて活性炭や、粘度調整等の用途の溶剤を添加し、これを混錬して正極合材ペーストを作製する。なお、正極合材ペーストの構成材料は、特に限定されず、公知の正極合材ペーストと同等なものを用いてもよい。
正極合材ペースト中のそれぞれの材料の混合比は、特に限定されず、要求される二次電池の性能に応じて、適宜、調整される。材料の混合比は、公知の二次電池の正極合材ペーストと同様の範囲とすることができ、例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量を100質量部とした場合、正極活物質の含有量を60質量部以上95質量部以下とし、導電材の含有量を1質量部以上20質量部以下とし、バインダーの含有量を1質量部以上20質量部以下としてもよい。
導電剤としては、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)や、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料などを用いることができる。
バインダー(結着剤)は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
なお、必要に応じ、正極活物質、導電材、活性炭を分散させ、バインダー(結着剤)を溶解する溶剤を正極合材ペーストに添加してもよい。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の有機溶剤を用いてもよい。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加してもよい。
次いで、得られた正極合材ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させて、シート状の正極を作製する。必要に応じ、電極密度を高めるため、ロールプレス等により加圧してもよい。シート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等をして、電池の作製に供することができる。
(負極)
負極には、金属リチウムやリチウム合金等を用いてもよい。また、負極には、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを用いてもよい。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。負極結着剤としては、正極同様、PVDF等の含フッ素樹脂等を用いることができる。また、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
(セパレータ)
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
(非水系電解質)
非水系電解質としては、例えば非水系電解液を用いることができる。
非水系電解液としては、例えば支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものを用いることができる。また、非水系電解液として、イオン液体にリチウム塩が溶解したものを用いてもよい。なお、イオン液体とは、リチウムイオン以外のカチオンおよびアニオンから構成され、常温でも液体状の塩をいう。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびトリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネートや、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらにテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチルなどのリン化合物等から選ばれる1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いることもできる。
支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO、およびそれらの複合塩などを用いることができる。さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤などを含んでいてもよい。
また、非水系電解質としては、固体電解質を用いてもよい。固体電解質は、高電圧に耐えうる性質を有する。固体電解質としては、無機固体電解質、有機固体電解質が挙げられる。
無機固体電解質としては、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質等が挙げられる。
酸化物系固体電解質としては、特に限定されず、例えば酸素(O)を含有し、かつリチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものを好適に用いることができる。酸化物系固体電解質としては、例えば、リン酸リチウム(LiPO)、LiPO、LiBO、LiNbO、LiTaO、LiSiO、LiSiO−LiPO、LiSiO−LiVO、LiO−B−P、LiO−SiO、LiO−B−ZnO、Li1+XAlTi2−X(PO(0≦X≦1)、Li1+XAlGe2−X(PO(0≦X≦1)、LiTi(PO、Li3XLa2/3−XTiO(0≦X≦2/3)、LiLaTa12、LiLaZr12、LiBaLaTa12、Li3.6Si0.60.4等から選択された1種類以上を用いることができる。
硫化物系固体電解質としては、特に限定されず、例えば硫黄(S)を含有し、かつリチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものを好適に用いることができる。硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS−P、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiS−B、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−P等から選択された1種類以上を用いることができる。
有機固体電解質としては、イオン伝導性を示す高分子化合物であれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、これらの共重合体などを用いることができる。また、有機固体電解質は、支持塩(リチウム塩)を含んでいてもよい。
(電池の形状、構成)
以上の正極、負極、及び、非水系電解質で構成されるリチウムイオン二次電池の形状は、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケースに密閉して、リチウムイオン二次電池を完成させる。なお、固体電解質を採用する場合、固体電解質がセパレータを兼ねていてもよい。
(6)リチウムイオン二次電池の実施例
以下、図示のホッパー50および焼成装置1を用いて得た正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の実施例を説明する。
前記(4)の正極活物質およびこの正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池について、その性能(ペーストの安定性、初期放電容量、正極抵抗、放電容量維持率)を測定した。なお、本実施例では、複合水酸化物製造、正極活物質および二次電池の作製には、和光純薬工業株式会社製試薬特級の各試料を使用した。
(評価用二次電池の製造および評価)
以下の方法により2032型のコイン型電池CBA(図9参照)を作製し、正極活物質の電池特性の評価を行った。
(コイン型電池の作製)
正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形して正極PE(評価用電極)を作製した。その作製した正極PEを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。乾燥した正極D1、負極D3、セパレータD2、および、電解液を用いて、図8に示すコイン型電池CBAを、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
負極D3には、直径14mmの円盤状に打ち抜かれた平均粒径20μm程度の黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンが銅箔に塗布された負極シートを用い、電解液には、1MのLiPFを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。セパレータD2には膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。また、コイン型電池CBAは、ガスケットD4とウェーブワッシャーを有し、正極缶D5と負極缶D6とでコイン状の電池に組み立てられた。
(初期放電容量)
初期放電容量は、コイン型電池CBAを製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとしてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。
(溶出リチウム滴定)
得られたリチウムニッケル複合酸化物(正極活物質)15gを75mlの純水に分散させた後、10分間静置させ、上澄み液10mlを50mlの純水で希釈して、水に溶出したリチウム量(溶出リチウム量)を中和滴定法により、1mol/リットルの塩酸を加えて測定した。
(リチウム含有量)
リチウム含有量は、各金属元素を分析し、リチウムとその他の金属との比(Li/Me比)を算出した。
各金属元素の分析は、ICPを用い、分析試料は各実施例および比較例の焼成物を溶解したものを用いた。
(実施例1)
組成比がNi:Co:Al=88:9:3のニッケル複合水酸化物をロータリーキルンで酸化焙焼して得られたニッケル複合酸化物と水分率が1.5%以下でトータルカーボンが1.0%以下の水酸化リチウムを、Li/Me比が1.03になるように混合し、リチウム混合物(これが被焼成物となる)を作製した。作製したリチウム混合物の安息角の最大値は、65°であった。
このリチウム混合物を焼成装置1(図3および図4)を用いて焼成して焼成物とした。詳しくは、リチウム混合物48kgをSUS304製で、内部に4分割の仕切り板を有し、コーン部の開き角40°のホッパー50(図1)へ投入した。このホッパー50から充填機を用いて4kgずつ箱型のセッターSに充填し、焼成炉2(ローラーハースキルン)を用いて760℃で焼成し、12個の焼成物が得られた。ホッパー50の内面に20mm程度厚みの小さな固化層が形成されたが、ホッパー50に設置されたブリッジブレーカーによる加振により固化層が破壊され、リチウム混合物の全量が排出された。固化層の発生の有無と混合比のバラツキに関する評価を表1に示す。
上記12個の焼成物をそれぞれ1mm以下に解砕し、12個それぞれのリチウム含有量を分析した。また、得られた正極活物質12個とこの12個を混合均一化したものでコイン型電池作成し、初期放電容量を測定した。焼成物のLi/Me比と初期放電容量の値も表2に示す。
(実施例2)
ホッパー50のコーン部52の開き角を30°とした以外は実施例1と同様にした。ホッパー50の内に固化層は確認されず、リチウム混合物の全量を排出することができた。固化層の発生の有無と混合比のバラツキに関する評価を表1に示す。焼成物のLi/Me比と初期放電容量を表2に示す。
(実施例3)
仕切り板の下端が露出する前に、リチウム混合物を継ぎ足し、合計144kgのリチウム混合物を焼成したこと以外は実施例2と同様にした。ホッパー50の内に固化層は確認されず、リチウム混合物を自然に全量を排出することができた。固化層の発生の有無と混合比のバラツキに関する評価を表1に示す。上記焼成物は36個得られ、13個目から24個目までの12個についてLi/Me比と初期放電容量を評価した。焼成物のLi/Me比と初期放電容量を表2に示す。
(実施例4)
ニッケル複合酸化物の組成比をNi:Co:Al=91:4:5、Li/Me比を1.02、焼成温度を745℃としたこと以外は、実施例1と同様にした。作製したリチウム混合物の安息角の最大値は、63°であった。ホッパー50の内面には15mm程度の厚みの固化層が形成され、最終的にホッパー50に設置されたブリッジブレーカーによる加振により固化層が破壊され、リチウム混合物が排出された。固化層の発生の有無と混合比のバラツキに関する評価を表1に示す。焼成物のLi/Me比と初期放電容量を表2に示す。
(実施例5)
ホッパー50のコーン部52の開き角を30°とした以外は実施例4と同様にした。ホッパー50の内に固化層は確認されず、リチウム混合物を自然に全量を排出することができた。固化層の発生の有無と混合比のバラツキに関する評価を表1に示す。焼成物のLi/Me比と初期放電容量を表2に示す。
(実施例6)
仕切り板の下端が露出する前に、リチウム混合物を継ぎ足し、合計144kgのリチウム混合物を焼成したこと以外は実施例5と同様にした。ホッパー50の内に固化層は確認されず、リチウム混合物を自然に全量を排出することができた。固化層の発生の有無と混合比のバラツキに関する評価を表1に示す。上記焼成物は36個得られ、13個目から24個目までの12個についてLi/Me比と初期放電容量を評価した。焼成物のLi/Me比と初期放電容量を表2に示す。
(実施例7)
ホッパー50内を8分割にした以外は実施例4と同様にした。ホッパーの内面には15mm程度の厚みの固化層が形成され、最終的にホッパーに設置されたブリッジブレーカーによる加振により固化層が破壊され、リチウム混合物が排出された。固化層の発生の有無と混合比のバラツキに関する評価を表1に示す。焼成物のLi/Me比と初期放電容量を表2に示す。
(比較例1)
ホッパー50のコーン部52の開き角を50°とした以外は実施例1と同様にした。ホッパー50の内には150mm程度厚みの固化層が形成され、最終的に固化層がブリッジブレーカーにより破壊されリチウム混合物を全量を排出することができた。固化層の発生の有無と混合比のバラツキに関する評価を表1に示す。焼成物のLi/Me比と初期放電容量を表2に示す。
(比較例2)
ホッパー50のコーン部52の開き角を50°とした以外は実施例4と同様にした。ホッパー50の内には140mm程度厚みの固化層が形成され、最終的に固化層がブリッジブレーカーにより破壊されリチウム混合物を全量を排出することができた。固化層の発生の有無と混合比のバラツキに関する評価を表1に示す。焼成物のLi/Me比と初期放電容量を表2に示す。
(比較例3)
仕切り板を設置しなかったこと以外は実施例1と同様にした。ホッパー50の内面には20mm程度厚みの固化層が形成され、最終的にホッパーに設置されたブリッジブレーカーによる加振により固化層が破壊され、リチウム混合物の全量が排出された。固化層の発生の有無と混合比のバラツキに関する評価を表1に示す。焼成物のLi/Me比と初期放電容量を表2に示す。
(比較例4)
仕切り板を設置しなかったこと以外は実施例4と同様にした。ホッパー50の内面には15mm程度厚みの固化層が形成され、最終的にホッパーに設置されたブリッジブレーカーによる加振により固化層が破壊され、リチウム混合物の全量が排出された。固化層の発生の有無と混合比のバラツキに関する評価を表1に示す。焼成物のLi/Me比と初期放電容量を表2に示す。
Figure 2020158188
Figure 2020158188
(評価結果)
(1)焼成物のLi/Me比のバラつき
実施例1〜7は、ホッパー50内に仕切り板61が設置されており、かつホッパー50のコーン部52の開き角aがa≦180−2b−10の角度になっていることで、Li/Me比のバラツキの標準偏差が0.0019より小さく充分小さいものとなっている。
一方、比較例1および2は、仕切り板を入れていたが、コーン部52の開き角aが大きいため、厚い固化層が形成され、その結果、Li/Me比のバラツキの標準偏差が0.0033以上と大きくなっている。また、比較例3および4は、仕切り板を使用しなかったため、ホッパー50に投入した際のリチウム混合物の流動が大きく、それによって、Li/Me比のバラツキの標準偏差が0.0023以上に大きくなっている。
(2)初期放電容量
組成比が共通する実施例と比較例で対比する。
Ni:Co:Alが88:9:3である実施例1〜3と比較例1,3とを対比すると、実施例1〜3のLi/Me比の標準偏差は0.0019,0.0010,0.0005であり、比較例1の0.0035および比較例3の0.0029より小さい。
このバラツキの小さいことを反映して、実施例1〜3における初期放電容量は概ね210.0〜211.2mAh/gであり、比較例1の205.8mAh/gや比較例3の209.8mAh/gより高い容量を示している。
Ni:Co:Alが91:4:5である実施例4〜7と比較例2,4とを対比すると、Li/Me比の標準偏差は0.0008以上0.0017以下であり、比較例2の0.0033や比較例4の0.0023より小さい。
このバラツキの小さいことを反映して、実施例4〜7の初期放電容量は213.1〜213.9mAh/gであり、比較例2の209.3mAh/gや比較例4の212.6mAh/gより高い容量を示している。
本発明のホッパーは、複数種の粉末を混合した混合粉末原料の供給であれば、どのような混合粉末原料にも使用できる。したがって、本発明のホッパーは、二次電池用正極活物質の原料に限られず、またリチウムイオン二次電池用正極活物質の原料にも限られず使用できる。
本発明の焼成装置は、どのような被焼成物の焼成にも使用できる。したがって、本発明の焼成装置は二次電池用正極活物質の原料に限られず、またリチウムイオン二次電池用正極活物質の原料にも限られず使用できる。
1 焼成装置
2 焼成炉
5 搬送部
10 供給部
20 排出部
S セッター
50 ホッパー
51 ホッパー部
52 コーン部
61 仕切り板

Claims (7)

  1. 複数種の粉末を混合した混合粉末原料を供給するホッパーであって、
    円筒状のホッパー部と、
    該ホッパー部の下端に接続された円錐状のコーン部と、
    該コーン部の下端に接続された排出部とからなり、
    前記コーン部の開き角aが、前記混合粉末原料の安息角の最大値をbとしたとき、式(1)で表わされる角度であり、
    a≦180−2b−10・・・式(1)、
    前記ホッパー部内に深さ方向に延びる仕切り板が設置されている
    ことを特徴とするホッパー。
  2. 前記仕切り板による前記ホッパー部内の分割数が4〜8である
    ことを特徴とする請求項1記載のホッパー。
  3. 焼成すべき被焼成物が充填される複数のセッターと、
    前記各セッターに被焼成物を供給する供給部と、
    前記各セッターに供給された被焼成物を焼成する焼成炉と、
    前記各セッターを前記供給部から前記焼成炉に搬入し、前記焼成炉で焼成された焼成物を載せている各セッターを前記焼成炉から搬出する搬送部と、
    前記焼成物を前記各セッターから排出する排出部と、を備える二次電池用正極活物質の焼成装置において、
    請求項1または2記載のホッパーが、前記供給部において被焼成物を供給する装置として用いられている
    ことを特徴とする二次電池用正極活物質の焼成装置。
  4. 前記排出部が、
    前記各セッターから排出された焼成物を破砕する破砕機構を備えている
    ことを特徴とする請求項3記載の二次電池用正極活物質の焼成装置。
  5. 前記破砕機構が、ロールクラッシャーであり、
    かつ高温の焼成物と接触するロールを冷却する冷却機構を備えている
    ことを特徴とする請求項4記載の二次電池用正極活物質の焼成装置。
  6. 前記供給部、前記焼成炉、前記排出部、または前記破砕機構の少なくとも一つか、
    作業空間の酸素濃度を80%以上に維持される機構を備えている
    ことを特徴とする請求項4記載の二次電池用正極活物質の焼成装置。
  7. 前記焼成物が、
    リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及び、それ以外の元素(M)を含み、かつ、各元素の原子数比がLi:Ni:Co:M=s:(1−x−y):x:y(ただし、0.93<s<1.03、0.00≦x≦0.35、0.03≦y≦0.35、Mは1種類以上の遷移金属、アルカリ土類金属、卑金属、または、半金属)で表わされるリチウムニッケル複合酸化物である
    ことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の二次電池用正極活物質の焼成装置。
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