JP2020157268A - パルス荷電装置およびその制御方法、電気集塵機 - Google Patents

パルス荷電装置およびその制御方法、電気集塵機 Download PDF

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Abstract

【課題】電気集塵機の性能の改善にある。【解決手段】電気集塵機のパルス荷電装置260において、ベース電源210は、ベース電圧を発生する。パルス電源220は、パルス電圧を発生し、ベース電圧に重畳する。荷電制御装置260は、パルス電源のパルス電圧のピーク電圧Uとパルス頻度Fを制御する。荷電制御装置260は、スパークが発生するたびに、(i)ピーク電圧Uを低下させ、次にスパークが発生するまで、ピーク電圧Uを所定時間かけて、直近のスパーク時の電圧レベルUsまで回復させ、その後、さらに上昇させる制御と、(ii)パルス頻度Fを低下させ、次にスパークが発生するまで、所定波形にしたがってパルス頻度Fを上昇させる制御と、を並行して行う。【選択図】図4

Description

本発明は、電気集塵機に関する。
火力発電プラントや製鉄プラント、各種産業用プラントには、環境保全のために、電気集塵機(EP:Electrostatic Precipitator)が導入される。電気集塵機は、粉塵を含むガスを放電極と集塵極の間に導入し、コロナ放電によって粉塵を帯電させ、これに電界を加えることにより、粉塵を分離、収集する。
電気集塵機のパルス電荷法では、ベースとなる直流電圧(ベース電圧)に、パルス電圧を重畳した波形を、電気集塵機の電極間に印加する。ベース電圧は、ベース電源によって生成され、パルス電圧はパルス電源によって生成される。
パルス荷電法では、ベース電圧と、パルス電圧と、パルスの頻度Fが独立な制御パラメータとして存在する。ベース電圧は、高すぎると高抵抗ダストで逆電離が発生し、一方、低すぎると電圧不足となるため、粉塵を含むガスの条件に応じて、最適化する必要がある。
また電気集塵機においてスパークが発生すると、電極にダメージが発生したり、回復に時間がかかるため、スパークの発生頻度は低下させることが望まれる。電気集塵機の性能は、ピーク電圧、ベース電圧が高く、またパルスの頻度が高いほど向上するところ、スパークを恐れるあまり、ピーク電圧やベース電圧を低く設定し、あるいはパルスの頻度を低くしすぎると、電気集塵機の性能が低下する。
この問題を解決するために、特許文献1には、パルス電圧Vpとパルス頻度Fを最適化制御する技術が開示される。この技術では、パルス発生時にスパークが生じた場合にはパルス電圧Vpを低下させ、ベース時(非パルス発生時)にスパークが生じた場合には、パルス頻度Fを低下させることにより、Vp−F平面の非スパーク領域の肩に収束させる。
特開平1−99659号公報 特開2001−276650号公報
特許文献1に記載の技術では、操業変動などが外乱となり、Vp−F平面で期待したような収束が見られず、あるいは収束までの時間がかかってしまい、集塵率が低下する状況が生じるケースがあった。
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、電気集塵機の性能の改善にある。
本発明のある態様は、電気集塵機のパルス荷電装置に関する。パルス荷電装置は、ベース電圧を発生するベース電源と、パルス電圧を発生しベース電圧に重畳するパルス電源と、パルス電源のパルス電圧のピーク電圧Uとパルス頻度Fを制御する荷電制御装置と、を備える。荷電制御装置は、スパークが発生するたびに、(i)ピーク電圧Uを低下させ、次にスパークが発生するまで、ピーク電圧Uを所定時間かけて、直近のスパーク時の電圧レベルUsまで回復させ、その後、さらに上昇させる制御と、(ii)パルス頻度Fを低下させ、次にスパークが発生するまで、所定波形にしたがってパルス頻度Fを上昇させる制御と、を並行して行う。
この態様によると、スパークが発生する度に、ピーク電圧とパルス頻度を両方低下させ、その後、並行して回復させることにより、Vp−F平面で安定的に収束させることができ、電気集塵機の性能を改善できる。
パルス荷電装置は、ユーザによるパルス頻度目標値Frefの設定入力を受け付けるユーザインタフェースをさらに備えてもよい。荷電制御装置は、パルス頻度Fがパルス頻度目標値Frefに収束するように、パルス頻度Fとピーク電圧Uを制御してもよい。そしてスパークが発生しない状況が持続すると、パルス頻度Fをパルス頻度目標値Frefより高い上限値に向かって上昇させるとともに、ピーク電圧Uをその上限値に向かって上昇させてもよい。
ユーザ(たとえば電気集塵機のサプライヤ)は、さまざまな電気集塵機に関する経験から、最適であろう推奨パルス頻度を決める。そして推奨パルス頻度を、パルス頻度目標値Frefとして荷電制御装置に設定する。そうすると、いかなるパルス電圧であっても、スパークが発生するときのパルス頻度Fsを、パルス頻度目標値Frefに収束させることができ、また収束に要する時間を短縮できる。スパークが発生しなくなると、パルス頻度Fとピーク電圧Uはさらに上昇することとなるため、集塵効率をさらに高めることができる。
第1の方法として、直近のスパーク時のパルス頻度をFs、所定の係数をφ(φ<1)とするとき、パルス頻度Fは、スパーク直後にφ×Fsまで低下してもよい。係数φは、パルス頻度Fを低下させる程度を規定するパラメータである。パルス頻度Fは、所定時間の第1部分において、φ×Fsを維持し、それに続く第2部分において、所定の傾きで増加してもよい。つまり第1部分の間は、パルス頻度Fが固定され、ピーク電圧Uのみが上昇することとなる。この場合、傾きをdf/dt、第2部分の長さをT2とするときに、定常状態におけるパルス頻度Fを、
Fref=df/dt×T2/(1−φ)
に収束させることができる。傾きdf/dtは、ユーザが入力するようにしてもよく、この場合、df/dtの入力値にもとづういて、パルス頻度目標値Frefを決定できる。
第2部分における所定の傾きは、パルス期間においてスパークが発生したときと、ベース期間においてスパークが発生したときとで異なってもよい。
第2の方法として、パルス荷電装置は、ユーザによるパルス頻度目標値Frefの設定入力を受け付けるユーザインタフェースをさらに備えてもよい。第2部分の長さをT2とするとき、第2部分における傾きを、(1−φ)×Fref/T2にもとづいて計算してもよい。これにより、パルス頻度Fを、ユーザが設定したパルス頻度目標値Frefに収束させることができる。
パルス頻度目標値Frefは、パルス期間においてスパークが発生したときの値と、ベース期間においてスパークが発生したときの値で個別に設定可能であってもよい。パルス期間に発生するスパークは、放電極と集塵極間の過電圧によるものである可能性が高く、ベース期間に発生するスパークは、逆電離に起因するものである可能性が高い。したがって、前者の場合はパルス頻度目標値を相対的に高く、後者の場合は相対的に低く設定することで、それぞれの運転条件下で最適なパルス頻度を実現できる。
パルス荷電装置は、ユーザによるパルス頻度目標値Frefの設定入力を受け付けるユーザインタフェースをさらに備えてもよい。直近のスパーク時のパルス頻度をFs、所定のパラメータをφ(φ<1)とするとき、パルス頻度は、スパーク直後にφ×Fsまで低下し、所定波形は、スパーク直後から所定時間の間に、パルス頻度が、(1−φ)Frefだけ増加するように規定されてもよい。
所定のパラメータをα(α<1)とするとき、ピーク電圧Uは、スパーク直後にα×Usまで低下してもよい。ピーク電圧Uは、所定時間の第3部分において、第1の傾きで上昇し、ピーク電圧Uは、所定時間の第3部分に続く第4部分において、第1の傾きより小さい第2の傾きで上昇してもよい。
直近のスパーク時のパルス頻度をFs、所定のパラメータをφ(φ<1)とするとき、パルス頻度は、スパーク直後にφ×Fsまで低下してもよい。所定時間の第1部分において、φ×Fsを維持し、それに続く第2部分において、所定の傾きで増加してもよい。所定のパラメータをα(α<1)、α2(α2>α)とするとき、ピーク電圧Uは、スパーク直後にα×Usまで低下し、第1部分の間に、α2×Usまで回復し、第2部分の間に、Usまで回復してもよい。
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、電気集塵機の性能を改善できる。
電気集塵機の全体構造を示す斜視図である。 図2(a)、(b)は、集塵極系および放電極系を示す図である。 集塵極系と放電極系の配置図である。 パルス荷電装置の例示的なシステムブロック図である。 パルス電圧Vpとベース電圧Vbおよびそれらを重畳して得られる集塵機電圧VEPを示す図である。 荷電制御装置によるピーク電圧Uの制御を説明するタイムチャートである。 荷電制御装置によるパルス頻度Fの制御を説明するタイムチャートである。 図8(a)、(b)は、パルス頻度Fsの波形図である。
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
図1は、電気集塵機100の全体構造を示す斜視図である。電気集塵機100は、本体構造110と、パルス荷電装置200を備える。
本体構造110は、電気集塵機100の本体をなす建造物であり、プラントに設置される。粉塵を含むガスは、流入口120から本体構造110の内部に導入される。流入口120から取り込まれたガスは、スプリッタ122および整流板124を通過し、流速分布が均一化された後に、集塵室(集塵部)112に導かれる。整流板槌打装置130は、整流板124に打撃を与えることにより、整流板124に付着した粉塵を払い落とす。
集塵室112の内部には、対向して設けられた放電極114と集塵極116のペアが設けられている。たとえば、放電極114は枠組みされており、それを挟み込むように、板状の集塵極116が設けられる。
本体構造110の屋上部分には、パルス荷電装置200の一部が設けられる。なおパルス荷電装置200の設置場所は、屋上には限定されない。
パルス荷電装置200は、放電極114と集塵極116の間にコロナ放電を発生させることにより、ガスに含まれる粉塵を帯電させ、これに電界を加えることにより、粉塵を分離、収集する。粉塵は集塵極116に付着し、蓄積される。集塵室112の内部で粉塵が除去された後に、クリーンなガスは、流出口150から流出する。
パルス荷電装置200は、ベース電源210、パルス電源220、整流装置232、荷電制御装置(図1に不図示)を含む。パルス電荷法では、ベースとなる直流電圧(ベース電圧)に、パルス電圧を重畳した波形を、電気集塵機の電極114,116の間に印加する。ベース電圧は、ベース電源210によって生成され、パルス電圧はパルス電源220によって生成される。
槌打装置132は、集塵極槌打モータ136によって駆動されて、集塵極116に物理的な衝撃を与える。放電極槌打モータ134は、放電極114に衝撃を与えるハンマーを駆動する。槌打装置132による衝撃により、集塵極116に付着した粉塵は集塵極116の表面から剥離し、ホッパ140へと落下し、捕集される。
以上が電気集塵機100の全体構成である。図2(a)、(b)は、集塵極系および放電極系を示す図である。図2(a)を参照する。集塵極系160は、ガス流と垂直な方向に離間して設けられる複数の集塵パネル162を備える。各集塵パネル162は、複数の集塵極116と、上部金物164、タタキ座166を含む。板状の集塵極116は、ガス流の方向に並べられ、それらの上部において、上部金物164とボルト締めされて固定され、それらの下部において、タタキ座166によって固定される。
図2(b)を参照する。放電極系170は、それぞれがガス流の方向に伸び、高さ方向に離間する複数の放電極枠172を備える。放電極枠172には穴174が設けられており、穴174に、板状ノコ刃形の放電極114が挿入され、クサビ176によって固定されている。
図3は、集塵極系160と放電極系170の配置図である。2枚の集塵パネル162に挟まれる空間に、放電極系170が挿入される。
図4は、パルス荷電装置200の例示的なシステムブロック図である。パルス荷電装置200は、主として、パルス電源220、ベース電源210、一次電源230、上位コントローラ240、タッチパネル250、荷電制御装置260を備える。パルス電源220は、パルス電圧Vpを生成する。ベース電源210は、ベース電圧Vbを生成する。パルス荷電装置200は、ベース電圧Vbにパルス電圧Vpを重畳して得られる駆動電圧(集塵機電圧VEP)を、放電極114と集塵極116に印加可能に構成される。
荷電制御装置260は、ベース電源210、パルス電源220、一次電源230の電気的状態を監視し、監視結果にもとづいて、ベース電源210のベース電圧Vbのレベル、およびパルス電源220のパルス電圧Vpのピーク電圧Uおよびパルス頻度Fを制御するとともに、ベース電源210およびパルス電源220に付随するサイリスタ212,222,224の点弧のタイミングを制御する。
図5は、パルス電圧Vpとベース電圧Vbおよびそれらを重畳して得られる集塵機電圧VEPを示す図である。ベース電圧Vbは、商用交流電圧を全波整流し、平滑化して得られる。ベース電圧Vbのリップル(山)は、交流の半波(半サイクル)毎に現れるから、商用交流電圧の周波数を50Hzとすれば、1秒に100山が含まれる。
パルス電圧Vpの頻度Fは、1秒間に含まれるパルスの個数を表し、単位はpps(パルス/秒)である。F=0[pps]はパルスが発生しないことを意味し、F=100[pps]はすべての山にパルスが重畳されることを表す。図5に示すように、必ずしも、パルスが存在する山は連続しているとは限らない。パルス頻度Fと、パルスが発生する山の位置の関係は、テーブルに格納されている。
図4に戻る。上位コントローラ240は、荷電制御装置260と有線あるいは無線で接続されている。上位コントローラ240は、荷電制御装置260に対して、運転操作入力信号を与える。また荷電制御装置260は上位コントローラ240に対して、状態監視出力信号を供給する。
タッチパネル250は、ユーザインタフェースであって、荷電制御装置260と専用ケーブルで接続される。荷電制御装置260は、タッチパネル250に荷電状態を表示することができる。またオペレータは、タッチパネル250を操作することにより、各種運転パラメータを設定することができる。パラメータのセットは、複数個保存できる。
以下、パルス荷電装置200の処理および動作を説明する。
荷電制御装置260は、スパークが発生をトリガとして、パルス電圧Vpのピーク電圧Uと、パルス電圧Vpの発生頻度(パルス頻度F)を低下させ、その後、時間とともにそれらを上昇させる動作を繰り返す。
具体的には、荷電制御装置260は、スパークが発生する度に、2つの制御(i)(ii)を並行して行う。
(i)ピーク電圧Uを低下させ、次にスパークが発生するまで、ピーク電圧Uを所定時間かけて、直近のスパーク時の電圧レベルUsまで回復させ、その後、さらに上昇させる。
(ii)パルス頻度Fを低下させ、次にスパークが発生するまで、所定波形(もしくは規則)にしたがってパルス頻度Fを上昇させる。
タッチパネル250は、ユーザによるパルス頻度目標値Frefの設定入力を受け付ける。荷電制御装置260は、パルス頻度Fがパルス頻度目標値Frefに収束するように、パルス頻度Fとピーク電圧Uを制御する。
また、スパークが発生しない状況が持続すると、パルス頻度Fをパルス頻度目標値Frefより高い上限値に向かって上昇させるとともに、ピーク電圧Uをその上限値に向かって上昇させる。
パルス頻度目標値Frefは、ユーザによってある動作条件(ガスの温度や濃度、粉塵の種類など)を前提として経験的に定められる。たとえばある条件下で試験運転を行い、最適なパルス頻度を取得する。そして得られた最適なパルス頻度を、パルス頻度目標値Frefとして荷電制御装置260に設定する。
そうすると、パルス荷電装置200が試験運転時と同じ条件で動作するときには、スパークが発生するときのパルス頻度Fsを、パルス頻度目標値Frefに収束させることができ、また収束に要する時間を短縮できる。
もし、パルス荷電装置の動作条件が、試験運転時と異なっている場合には、パルス頻度Fとピーク電圧Uをさらに上昇させて、集塵効率をさらに高めることができる。
図6は、荷電制御装置260によるピーク電圧Uの制御を説明するタイムチャートである。tはスパークが発生する時刻を、Usはスパークが発生したときのピーク電圧Uを表す。Usは、スパークが発生する度に荷電制御装置260に取り込まれる。
上述のように、ピーク電圧Uは、スパークをトリガとして低下させた後、次にスパークが発生するまで、ピーク電圧Uを所定時間τかけて、直近のスパーク時の電圧レベルUsまで回復し、その後、さらに上昇する。
所定の定数をα(α<1)とするとき、荷電制御装置260は、スパーク直後、回復処理のための期間T0を経た後に、ピーク電圧UをU’=α×Usまで低下させる。αは、ピーク電圧Uの抑制の程度を規定するパラメータである。そして、その後、所定期間τにわたり、ピーク電圧Uをスパーク時の電圧Usまで回復させる。たとえば所定期間τは、第1部分(立ち上げ時間)T1と第2部分(安定時間)T2を含む。立ち上げ時間T1において、ピーク電圧Uは、第1の傾きで、U”=α2×Usまで上昇する。なおα2は、α<α2<1を満たす定数であり、U’<U”<Usが成り立つ。立ち上げ期間T1における傾きは、
dU/dt=(α2−α)Us/T1
である。α,α2,T1は定数であるから、荷電制御装置260は、Usを取得した後に、傾きdU/dtを演算により取得できる。
安定時間T2においてピーク電圧Uは、小さな第2の傾きで、直近のスパーク時の電圧ピーク電圧Usまで緩やかに上昇する。安定時間T2における傾きは、
dU/dt=(1−α2)Us/T2
である。この傾きも荷電制御装置260によって演算される。
所定期間τの間にスパークが発生した場合、その時刻をt、そのときのピーク電圧Uの値をUsとして、同じ動作が繰り返される。
所定期間τの間のピーク電圧Uの傾きは、Usに比例することに留意されたい。
所定期間τの間にスパークが発生しなければ、それ以降の前進時間T3において、ピーク電圧Uはさらに上昇する。そしてピーク電圧Uが所定の上限値UMAXまで達すると、そこでクランプされる。
前進時間T3の間、あるいは上限値UMAXに到達した後に、スパークが発生すれば、そのときのピーク電圧Uが、新たなUsとなり、同じ動作が繰り返される。
続いてパルス頻度Fの制御を説明する。図7は、荷電制御装置260によるパルス頻度Fの制御を説明するタイムチャートである。tはスパークが発生する時刻を、Fsはスパークが発生したときのパルス頻度Fを表す。Fsは、スパークが発生する度に荷電制御装置260に取り込まれる。
上述のように、パルス頻度Fは、スパーク後に低下した後、次にスパークが発生するまで、所定波形にしたがって上昇する。
直近のスパーク時のパルス頻度をF、所定のパラメータ(定数)をφ(φ<1)とするとき、パルス頻度Fは、スパーク直後の時刻tsにφ×Fsまで低下する。そして、パルス頻度Fは、所定時間τの第1部分T1において、φ×Fsを維持し、それに続く第2部分T2において、所定の傾きdf/dtで増加する。第1部分T1、第2部分T2はそれぞれ、図6における立ち上げ時間T1、安定時間T2と一致させることができる。
なお、図6におけるピーク電圧Uの傾きはUsに比例したが、図7におけるパルス頻度Fの傾きdf/dtは、Fsには依存しない定数であることに留意されたい。
所定期間τの間にスパークが発生した場合、その時刻をt、そのときのパルス頻度FをFsとして、同じ動作が繰り返される。
所定期間τの間にスパークが発生しなければ、それ以降の前進時間T3において、パルス頻度Fsはさらに上昇する。そしてパルス頻度Fが所定の上限値FMAXまで達すると、そこでクランプされる。
以上が電気集塵機100の動作である。図6および図7の制御を繰り返すと、ピーク電圧Uとパルス頻度Fをある安定点(定常状態)に収束させることができ、収束に要する時間を従来に比べて短縮できる。定常状態では、スパークはおおよそ所定時間τごとに発生することとなる。
定常状態においてスパークが所定時間τ間隔で発生すると仮定したときの、パルス頻度Fの振る舞いについて検討する。図8(a)、(b)は、パルス頻度Fsの波形図である。図8(a)は、Fs−F’=Fs−φFs>df/dt×T2が成り立つときの波形を示す。つまりスパークが発生する度に、スパーク時のパルス頻度Fsは、減少していく。
反対に、図8(b)は、Fs−φFs<df/dt×T2が成り立つときの波形を示す。つまりスパークが発生する度に、スパーク時のパルス頻度Fsは増加していく。つまり、スパークが起きるタイミングでのパルス頻度Fsは、ある値に収束(これを収束パルス頻度Fssという)することが期待され、パルス頻度Fsは、ある値Fssに収束するようにフィードバックがかかる。
Fs−φFs=df/dt×T2が成り立つとき、パルス頻度Fsは前回の値を維持する。したがって定常状態では、
Fss−φFss=df/dt×T2
が成り立つ。したがって収束パルス頻度Fssは、以下の式で表される。
Fss=df/dt×T2/(1−φ)
つまり、収束パルス頻度Fssは、df/dt、T2、φに応じて規定することができる。言い換えればある定常状態において目標とするパルス頻度(目標パルス頻度Fref)が存在するとき、
Fref=df/dt×T2/(1−φ)
が成り立つように、傾きdf/dtを規定することができる。
df/dt=T2/(1−φ)×Fref
上述のように目標パルス頻度Frefは、タッチパネル250により設定可能である。したがって、ユーザは、電気集塵機100の定常状態における動作点を指定することができ、裏を返すと、スパーク時のパルス頻度Fsがユーザが設定した目標パルス頻度Frefに収束するようにフィードバックがかかるため、系が不安定とならず、安定点に短時間で収束させることができる。
ユーザは、経験則から、目標パルス頻度Frefを決定してもよい。具体的にはユーザは、所定の条件で電気集塵機100を運転し、最適なパルス頻度を取得する。そして得られた最適なパルス頻度を、パルス頻度目標値Frefとして荷電制御装置に設定する。そうすると、パルス荷電装置200が試験運転時と同じ条件で動作するときには、スパークが発生するときのパルス頻度Fsを、パルス頻度目標値Frefに収束させることができ、また収束に要する時間を短縮できる。
もし、パルス荷電装置200の動作条件が、試験運転時と異なっている場合には、パルス頻度Fとピーク電圧Uをさらに上昇させることができ、集塵効率をさらに高めることができる。
スパークの事象は、2つに分類することができる。ひとつは、パルス期間(主としてパルス電圧のピーク付近)において発生するスパーク(第1種スパークという)であり、もうひとつは、ベース期間中に発生するスパーク(第2種スパークという)である。
第1種スパークは、放電極と集塵極間の過電圧によるものである可能性が高く(あるいは傾向が強く)、パルス頻度Fをそれほど低下させる必要はない。一方、第2種スパークは、逆電離に起因するものである可能性が高いため、パルス頻度Fを低下させた方がよい場合が多い。そこで、第1種スパークが発生した場合と、第2種スパークが発生した場合とで、ピーク電圧Uおよびパルス頻度Fの波形を規定する上述のパラメータ(α、φ、T1,T2,df/dt、Fref)を個別に設定できるとよい。
たとえば、T1,T2は第1種スパークと第2種スパークとで共通とし、α、φおよびFrefを、第1種スパークと第2種スパークとで異なる値に設定できるようにしてもよい。たとえば、第1種スパークに関するFrefは100pps、第2種スパークに関するFrefは30pps程度に設定してもよい。
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
パルス頻度Fの制御に関して、制御波形は、実施の形態で説明したそれには限定されず、以下の変形例が考え得る。
(変形例1)
たとえばスパーク直後のパルス頻度をFsに一定にする期間T1を省略してもよい。
(変形例2)
あるいは、期間T1において、第1の傾きdf/dtでパルス頻度Fを増加させ、第2の傾きdf/dtでパルス頻度Fを増加させてもよい。
この場合、定常状態において、
Fss−φFss=df/dt×T1+df/dt×T2
が成り立つから、
Fss=(df/dt×T1+df/dt×T2)/(1−φ)
を得る。
(変形例3)
実施の形態では、ユーザが目標パルス頻度Fssを設定可能としたがその限りでなく、目標パルス頻度Fssあるいはdf/dtは、ユーザから見えないパルス荷電装置200の内部パラメータであってもよい。
(変形例4)
あるいはパルス頻度Fの制御に関してτの間に、傾きの異なる3個以上の区間を含んでもよい。
ピーク電圧Uの制御に関しても、制御波形は、実施の形態で説明したそれには限定されず、以下の変形例が考え得る。
(変形例5)
ピーク電圧Uの制御に関して、2つの区間T1とT2の傾きを一定としてもよい。あるいは傾きの異なる3個以上の区間を含んでもよい。
(変形例6)
ピーク電圧Uの制御とパルス頻度Fの制御に含まれる区間T1(T2)の長さは異なってもよい。
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
100 電気集塵機
110 本体構造
112 集塵室
114 放電極
116 集塵極
120 流入口
122 スプリッタ
124 整流板
130 整流板槌打装置
132 槌打装置
134 放電極槌打モータ
136 集塵極槌打モータ
140 ホッパ
150 流出口
160 集塵極系
162 集塵パネル
164 上部金物
166 タタキ座
170 放電極系
172 放電極枠
174 穴
176 クサビ
200 パルス荷電装置
210 ベース電源
212 ベース電源サイリスタ
220 パルス電源
222 パルス電源サイリスタ
224 高圧サイリスタ
230 一次電源
232 整流装置
240 上位コントローラ
250 タッチパネル
260 荷電制御装置

Claims (16)

  1. 電気集塵機のパルス荷電装置であって、
    ベース電圧を発生するベース電源と、
    パルス電圧を発生し、前記ベース電圧に重畳するパルス電源と、
    前記パルス電源のパルス電圧のピーク電圧Uとパルス頻度Fを制御する荷電制御装置と、
    を備え、
    前記荷電制御装置は、スパークが発生するたびに、
    (i)前記ピーク電圧Uを低下させ、次にスパークが発生するまで、前記ピーク電圧Uを所定時間かけて、直近のスパーク時の電圧レベルUsまで回復させ、その後、さらに上昇させる制御と、
    (ii)パルス頻度Fを低下させ、次にスパークが発生するまで、所定波形にしたがって前記パルス頻度Fを上昇させる制御と、
    を並行して行うことを特徴とするパルス荷電装置。
  2. ユーザによるパルス頻度目標値Frefの設定入力を受け付けるユーザインタフェースをさらに備え、
    前記荷電制御装置は、
    前記パルス頻度Fが前記パルス頻度目標値Frefに収束するように、前記パルス頻度Fと前記ピーク電圧Uを制御し、
    スパークが発生しない状況が持続すると、前記パルス頻度Fを前記パルス頻度目標値Frefより高い上限値に向かって上昇させるとともに、前記ピーク電圧Uをその上限値に向かって上昇させることを特徴とする請求項1に記載のパルス荷電装置。
  3. 直近のスパーク時の前記パルス頻度をF、所定のパラメータをφ(φ<1)とするとき、前記パルス頻度Fは、スパーク直後にφ×Fsまで低下し、
    前記パルス頻度Fは、前記所定時間の第1部分において、φ×Fsを維持し、それに続く第2部分において、所定の傾きで増加することを特徴とする請求項1に記載のパルス荷電装置。
  4. 前記第2部分における前記所定の傾きは、パルス期間において前記スパークが発生したときと、ベース期間において前記スパークが発生したときとで異なることを特徴とする請求項3に記載のパルス荷電装置。
  5. ユーザによるパルス頻度目標値Frefの設定入力を受け付けるユーザインタフェースをさらに備え、
    前記第2部分の長さをT2とするとき、前記第2部分における傾きは、(1−φ)×Fref/T2であることを特徴とする請求項3に記載のパルス荷電装置。
  6. 前記パルス頻度目標値Frefは、パルス期間において前記スパークが発生したときの値と、ベース期間において前記スパークが発生したときの値で個別に設定可能であることを特徴とする請求項5に記載のパルス荷電装置。
  7. ユーザによるパルス頻度目標値Frefを設定入力を受け付けるユーザインタフェースをさらに備え、
    直近のスパーク時の前記パルス頻度をF、所定のパラメータをφ(φ<1)とするとき、前記パルス頻度は、スパーク直後にφ×Fsまで低下し、
    前記所定波形は、前記スパーク直後から前記所定時間の間に、前記パルス頻度が、(1−φ)Frefだけ増加するように規定されることを特徴とする請求項2に記載のパルス荷電装置。
  8. 所定のパラメータをα(α<1)とするとき、前記ピーク電圧Uは、スパーク直後にα×Usまで低下し、
    前記ピーク電圧Uは、前記所定時間の第3部分において、第1の傾きで上昇し、
    前記ピーク電圧Uは、前記所定時間の前記第3部分に続く第4部分において、前記第1の傾きより小さい第2の傾きで上昇することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のパルス荷電装置。
  9. 直近のスパーク時の前記パルス頻度をF、所定のパラメータをφ(φ<1)とするとき、前記パルス頻度は、スパーク直後にφ×Fsまで低下し、
    前記所定時間の第1部分において、φ×Fsを維持し、それに続く第2部分において、所定の傾きで増加し、
    所定のパラメータをα(α<1)、α2(α2>α)とするとき、
    前記ピーク電圧Uは、スパーク直後にα×Usまで低下し、
    前記第1部分の間に、α2×Usまで回復し、
    前記第2部分の間に、Usまで回復することを特徴とする請求項1に記載のパルス荷電装置。
  10. ユーザによるパルス頻度目標値Frefの設定入力を受け付けるユーザインタフェースをさらに備え、
    前記第2部分の長さをT2とするとき、前記第2部分における前記パルス頻度Fの傾きは、(1−φ)×Fref/T2であることを特徴とする請求項9に記載のパルス荷電装置。
  11. 放電極および集塵極を含む集塵部と、
    請求項1から10のいずれかに記載のパルス荷電装置と、
    を備えることを特徴とする電気集塵機。
  12. 電気集塵機のパルス荷電装置の制御方法であって、
    ベース電圧にパルス電圧を重畳した電圧を、放電極および集塵極に印加する第1ステップと、
    スパークの発生状況に応じて、前記パルス電圧のピーク電圧Uとパルス頻度Fを制御する第2ステップと、
    を備え、
    前記第2ステップは、スパークが発生するたびに、
    (i)前記ピーク電圧Uを低下させ、次にスパークが発生するまで、前記ピーク電圧Uを所定時間かけて、直近のスパーク時の電圧レベルUsまで回復させ、その後、さらに上昇させる制御と、
    (ii)パルス頻度Fを低下させ、次にスパークが発生するまで、所定波形にしたがって前記パルス頻度Fを上昇させる制御と、
    が並行して実行されることを特徴とする制御方法。
  13. ユーザから、パルス頻度目標値Frefの設定入力を受け付けるステップをさらに備え、
    前記第2ステップは、
    前記パルス頻度Fが前記パルス頻度目標値Frefに収束するように、前記パルス頻度Fと前記ピーク電圧Uを制御し、
    スパークが発生しない状況が持続すると、前記パルス頻度Fを前記パルス頻度目標値Frefより高い上限値に向かって上昇させるとともに、前記ピーク電圧Uをその上限値に向かって上昇させることを特徴とする請求項12に記載の制御方法。
  14. スパーク時の前記パルス頻度をF、所定のパラメータをφ(φ<1)とするとき、前記パルス頻度は、スパーク直後にφ×Fsまで低下し、
    前記所定波形は、前記所定時間の第1部分において、φ×Fsを維持し、それに続く第2部分において、所定の傾きで増加することを特徴とする請求項13に記載の制御方法。
  15. ユーザから、パルス頻度目標値Frefの設定入力を受け付けるステップをさらに備え、
    前記第2部分の長さをT2とするとき、前記第2部分における傾きは、(1−φ)×Fref/T2であることを特徴とする請求項14に記載の制御方法。
  16. 所定のパラメータをα(α<1)とするとき、前記ピーク電圧Uは、α×Usまで低下し、
    前記ピーク電圧Uは、前記所定時間の第3部分において、第1の傾きで上昇し、
    前記ピーク電圧Uは、前記所定時間の前記第3部分に続く第4部分において、前記第1の傾きより小さい第2の傾きで上昇することを特徴とする請求項13から15のいずれかに記載の制御方法。
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