JP2020156320A - 幹細胞の増殖促進剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】幹細胞を効率的に増殖促進させることができるイネ品種又は系統を見出し、生体安全性に優れた幹細胞の増殖促進剤を提供することを課題とする。【解決手段】日本型イネと印度型イネの交雑種もしくはその後代の種子、又は該種子の抽出物を有効成分として含有する、幹細胞増殖促進剤。【選択図】なし

Description

本発明は、幹細胞の増殖促進剤及び幹細胞の増殖促進方法に関する。
脊椎動物(特に哺乳動物)の組織は、傷害若しくは疾患、又は加齢等に伴い細胞・臓器の損傷が起こった場合、再生系が働き、細胞・臓器の損傷を回復しようとする。この作用に、当該組織に備わる幹細胞が大きな役割を果たしている。幹細胞は、骨髄、肝臓、膵臓、皮膚、脂肪、脳等、あらゆる臓器・組織に存在することが明らかにされ、各臓器・組織の再生及び恒常性維持を司っていることがわかってきた(非特許文献1〜4参照)。
近年、臓器・組織に存在する幹細胞が老化することが明らかになりつつある(非特許文献5参照)。具体的に幹細胞の老化とは、増殖能力や分化能力が低下することであり、臓器や組織の再生能力の低下の原因と考えられている。例えば、脳に存在する神経幹細胞や血液細胞を生み出す造血幹細胞の増殖能力は、加齢に伴い著しく低下することが報告されている(非特許文献6〜7参照)。また、皮膚や皮下脂肪組織に存在する幹細胞は、加齢により数が減少し、分化能力が低下することが報告されている(非特許文献8〜9参照)。
以上の知見から、各臓器・組織に存在する幹細胞を増殖させる技術は、組織恒常性維持、損傷組織の修復・再生、各種疾患の予防・治療・改善等、抗加齢(抗老化)の用途に極めて有効であると考えられる。
一方、コメは炭水化物、タンパク質、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維など様々な栄養素が含まれており、世界の人口の半分以上が主食としている最もポピュラーな食糧である。一般的に食するコメは、イネの種子の胚乳部分に相当する白米であるが、籾から籾殻を除いた玄米、玄米から種皮(米糠)を除いた胚芽米、玄米を発芽させた発芽玄米、また、米糠にも種々の有用物質が含まれており、生体安全性に優れた機能性材料として着目されている。例えば、米糠、発芽玄米の抽出物又は発酵物に保湿作用、美白作用、細胞賦活作用、血管内皮細胞の増殖促進作用などがあることが報告されている(特許文献1〜4)。
従来より、コメの味や多収性、イネの耐病性、耐虫性、又は冷害や高温への耐性など、生産者や消費者が望む新しい特性をもったイネを作出することを目的として、既存の品種間で交配することで得られる分離集団から選抜によって新品種を得る「交配育種法」によって品種改良が行われている。例えば、日本で一番多く生産されている品種である「コシヒカリ」は、品質、食味ともに優れた日本型イネ品種の「農林1号」と、いもち病に強い日本型イネ品種の「農林22号」を交配して新潟県農業試験場と福井県農業試験場で開発された。また、強稈でもち質も良好とされる「恵糯」は、日本型イネ品種の「初日糯」に由来する極早生もちの系統「愛知糯27号」と、日本型イネ品種の「レイメイ」に由来する強稈・耐冷性系統「ふ系102号」を交配して愛知県農業総合試験場で開発された(非特許文献10)。また、アジアでは最も古く、フィリピンに所在する国際稲研究所(IRRI)においても、多収性、耐病性、耐虫性、耐肥性、半矮性などの特性を持つ印度型品種のイネが開発されており、1970年代に、アジアの穀物の大量増産を達成させた「緑の革命」で導入された高収量品種「IR−8」を用いて、耐病性、耐肥性に優れた「IR−36」や「IR−64」(非特許文献11)などが開発されている。
コメの形や大きさはイネの品種ごとに多種多様であり、コメ1000粒当たりの重量である千粒重は、「コシヒカリ」は22グラム前後(非特許文献12)、「恵糯」は20グラム前後、酒米として知られる日本型イネ品種「山田錦」は28グラム前後、日本で育成された「IR−8」の子孫にあたる多収の印度型品種「タカナリ」は20グラム前後である(非特許文献13参照)。このように、イネ及びコメの特徴は品種ごとに異なり、日本で品種登録されているイネの数は839品種(2016年3月31日時点)存在する。
特開2015−065815号公報 特開2017−048148号公報 特開2018−002607号公報 特開2016−138046号公報
Goodell M.A.ら, Nat. Med., 1997年, Vol. 3, pp. 1337-1345 Zulewski H.ら, Diabetes, 2001年, Vol. 50, pp. 521-533 Suzuki A.ら, Hepatology, 2000年, Vol. 32, pp. 1230-1239 Zuk P.A.ら, Tissue Engineering, 2001年, Vol. 7, pp. 211-228 Beane O.S.ら, PLoS One, 2014年, Vol. 9, 12号, e115963 Molofsky A.V.ら, Nature, 2006年, Vol. 443, 7110号, pp. 448-452 Geiger H.ら, Nat. Rev. Immunol., 2013年, Vol. 13, 5号, pp. 376-389 Akamatsu H.ら,J. Dermatol., 2016年,Vol. 43, pp. 311-313 Yamada T.ら,J. Dermatol. Sci., 2010年,Vol. 58, pp. 36-42 香村 敏郎 他,愛知農総試研報,1983年, Vol.15, pp.14-23 Mackill DJら, Rice., 2018年, Vol. 11, 18号, PMCID: PMC5890005 新田 洋司 他,日本作物学会記事,2008年,Vol. 77,pp. 315-320 井辺 時雄 他,作物研究所研究報告,2004年,Vol. 5,pp.35-51
しかしながら、幹細胞の増殖促進効果のあるイネ品種又は系統は知られていない。本発明の目的は、より効率的に幹細胞を増殖促進させることができるイネ品種又は系統を見出し、生体安全性に優れた幹細胞の増殖促進剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定のイネ品種又は系統の種子又は該種子の抽出物が、幹細胞に対する優れた増殖促進効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下を包含する。
(1)日本型イネと印度型イネの交雑種もしくはその後代の種子、又は該種子の抽出物を有効成分として含有する、幹細胞増殖促進剤。
(2)前記日本型イネが、「コシヒカリ」、「恵糯」、「コシヒカリ」の変異体、「恵糯」の変異体、「コシヒカリ」の子孫系統、及び「恵糯」の子孫系統から選択されるイネである、(1)に記載の幹細胞増殖促進剤。
(3)前記印度型イネが、「IR−8」、「IR−64」、「タカナリ」、「IR−8」の変異体、「IR−64」の変異体、「タカナリ」の変異体、「IR−8」の子孫系統、「IR−64」の子孫系統、及び「タカナリ」の子孫系統から選択されるイネである、(1)に記載の幹細胞増殖促進剤。
(4)幹細胞を、(1)〜(3)のいずれかに記載の幹細胞増殖促進剤を含有する培地で培養する工程を含む、幹細胞の増殖促進方法。
(5)幹細胞を、(1)〜(3)のいずれかに記載の幹細胞増殖促進剤を含有する培地で培養する工程を含む、幹細胞の製造方法。
(6)(1)〜(3)のいずれかに記載の幹細胞増殖促進剤を含む、幹細胞増殖用組成物。
本発明によれば、幹細胞を、効率的に増殖させることができる。従って、本発明は、再生医療、再生美容、抗加齢の分野において大きく貢献できるものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、日本型イネと印度型イネの交雑種もしくはその後代の種子、又は該種子の抽出物を有効成分として含有する。
本発明に係る日本型イネと印度型イネの交雑種は、日本型イネと印度型イネを交雑させ、自殖後代に選抜して育成したイネ品種又は系統をいう。また、「後代」とは、上記の交雑種のイネを母本又は父本として用いて交雑を行った後代に由来する、又は、上記の交雑種のイネの種子又は組織に対して突然変異又は形質転換等の遺伝的変異を生じさせる処理を行った後代に由来するイネ品種又は系統をいう。
日本型イネは、具体的には、「コシヒカリ」、「恵糯」、「コシヒカリ」の変異体、「恵糯」の変異体、「コシヒカリ」の子孫系統、及び「恵糯」の子孫系統から選択される。印度型イネは、具体的には、「IR−8」、「IR−64」、「タカナリ」、「IR−8」の変異体、「IR−64」の変異体、「タカナリ」の変異体、「IR−8」の子孫系統、「IR−64」の子孫系統、及び「タカナリ」の子孫系統から選択される。ここで、「変異体」とは、「コシヒカリ」、「恵糯」、「IR−8」、「IR−64」、「タカナリ」に対して突然変異又は形質転換等の遺伝的変異を生じさせる処理を行うことによって作出されるイネ品種又は系統をいう。突然変異処理は、任意の適当な変異源を用いて行うことができる。変異原としては、特に限定されず、広く突然変異の誘発に用いられている化学的変異原及び/又は物理的変異原を用いることができる。化学的突然変異源として、例えばエチルメタンスルホン酸(EMS)、N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルニトロソ尿素(ENS)などが挙げられ、物理的変異原としては、放射線、紫外線等などが挙げられる。これらの変異原を用いた変異の誘発は公知の方法で行うことができる。また、「子孫系統」とは、「コシヒカリ」、「恵糯」、「IR−8」、「IR−64」、「タカナリ」を母本又は父本として用い、他のイネ品種又は系統との交配によって作出された、後代のイネ品種又は系統をいう。
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤に用いるイネの種子としては、上記交雑種もしくはその後代の種子であれば限定されない。イネの種子とは、植物学的には、子実に相当するイネの籾を指すが、本発明に係る幹細胞の増殖促進剤に用いるイネの種子には、玄米(籾から籾殻を除去した米)、発芽米(玄米を発芽させた米)、胚芽米(玄米から米糠を除去し、胚芽部分を残した米)、精白米(玄米から米糠と胚芽を除去し、胚乳のみにした米)、胚芽、米糠のいずれをも包含するものとし、これらを総称して以下「コメ」と表記する。また、イネの種子の抽出物は、玄米、発芽米、胚芽米、精白米、胚芽、米糠のいずれか1種又は2種以上の抽出物をいい、これらを総称して以下「コメ抽出物」と表記する。
玄米や精白米を用いる場合は、粉砕化処理を行ってもよい。粉砕化には、例えば、ボールミル、ロール式粉砕機、衝撃式粉砕機、超遠心粉砕機、気流粉砕機、せん断摩擦式粉砕機などを用いることができる。
コメ抽出物を得るための抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出方法であっても良いし、常温や冷温抽出方法であっても良い。抽出に使用する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン、スクワラン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)等が挙げられる。これらの溶媒のなかでも、水、低級アルコール、液状多価アルコール、炭化水素類が好ましく、水、エタノール、ヘキサンがより好ましい。これらの溶媒は1種でも2種以上を混合して用いても良く、例えば30〜70v/v%のエタノール水溶液を使用することもできる。また、上記抽出溶媒に酸やアルカリを添加して、pH調整した溶媒を使用することもできる。
上述の溶媒を用いて、コメを溶媒抽出に供する。溶媒に対するコメの割合は、例えば1〜50%(w/w)、好ましくは5〜25%(w/w)が挙げられる。また、抽出温度や時間は、用いる溶媒の種類によるが、例えば、10〜100℃、好ましくは30〜90℃で、30分〜24時間、好ましくは1〜10時間を例示することができる。例えば、コメの乾燥物に水を加え、95〜100℃における熱水抽出を行うことで、コメ抽出物を得ることができる。あるいは、コメの乾燥物に低級アルコール(例えば、エタノール等)、液状多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)及び/又は炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン、スクワラン等)を添加し、常温(例えば15〜35℃)で抽出を行うことで、コメ抽出物を得ることができる。
溶媒抽出後、得られた溶媒相自体をコメ抽出物とすることができる。あるいは、必要に応じて、得られた溶媒相を、濃縮、希釈、濾過、乾燥等の処理及び活性炭等による脱色、脱臭処理等に供して、得られた生成物をコメ抽出物とすることができる。さらに、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理に供し、得られた乾燥物をコメ抽出物として用いても良い。
このようにして得られたコメ又はコメ抽出物を本発明に係る幹細胞の増殖促進剤の有効成分とする。コメ又はコメ抽出物は、生体レベルで又は培養レベルで幹細胞を効率的に増殖させる作用を有するので、本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、幹細胞を効率的に増殖させるための幹細胞培養用培地添加剤、研究用試薬、医療用試薬、細胞移植剤をはじめとして、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品等への配合や応用が可能である。
本発明の幹細胞の増殖促進剤におけるコメ又はコメ抽出物の配合量は、特に限定されないが、例えば、当該薬剤全量に対し、乾燥物に換算して0.00001〜10重量%であることが好ましく、0.0001〜1重量%とすることがより好ましい。0.00001重量%未満であると効果が十分に発揮されにくい場合がある。
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤を、ヒトを含めた哺乳動物の幹細胞に適用することで、幹細胞の増殖を促進することができる。本発明に係る幹細胞の増殖促進剤を適用する幹細胞としては、本発明の目的に沿うものであれば特に限定されず、例えば骨髄、血液、皮膚(表皮、真皮、皮下組織)、脂肪、毛包、脳、神経、肝臓、膵臓、腎臓、筋肉やその他の組織に存在する体性の幹細胞;胚性の幹細胞(ES細胞);遺伝子導入等により人工的に作製された幹細胞(人工多能性幹細胞:iPS細胞)が挙げられる。ES細胞としては、例えば、着床以前の初期胚を培養することによって樹立されたES細胞、体細胞の核を核移植することによって作製された初期胚を培養することによって樹立されたES細胞、及びそれらのES細胞の染色体上の遺伝子を遺伝子工学の手法を用いて改変したES細胞が挙げられる。このようなES細胞は、例えば、自体公知の方法によって作製することができるが、所定の機関より入手でき、さらには市販品を購入することもできる。また、これらの幹細胞は、初代培養細胞、継代培養細胞又は凍結細胞のいずれであってもよい。
さらに、本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、幹細胞の分化の方向性及び分化の過程等について同等の特性を持っていれば、全ての哺乳動物由来の幹細胞に応用が可能である。例えば、本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の哺乳動物の幹細胞に対して効果を発揮することができる。
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤の幹細胞への適用は、生体外であっても生体内であってもよく、いずれの場合もその作用を発揮できる。従って、本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、その有効量を添加した幹細胞培養用培地にて幹細胞を培養することによって、あるいは、ヒトを含む哺乳動物に投与することによって、幹細胞の増殖を促進することができる。
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、有効成分であるコメ又はコメ抽出物が優れた幹細胞の増殖促進作用を有するので、皮膚、骨芽、軟骨、筋肉、神経、脂肪、肝臓などの生体内の組織又は臓器の幹細胞に作用して当該組織又は臓器の障害又は損傷を治療、改善、及び予防するのに有効である。また、幹細胞は、加齢などに伴い減少又は機能低下することから、本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、上記生体内の組織又は臓器の幹細胞の減少や機能低下に関連する疾患を治療、改善、及び予防するのに有効である。ここで、組織又は臓器の障害又は損傷、幹細胞の減少や機能低下に関連する疾患としては、例えば、皮膚関連では、シワ、タルミ、シミ、くすみ、肌荒れ、皮膚の肥厚、毛穴のひらき、ニキビ痕、創傷、瘢痕、ケロイドなどが挙げられ、薄毛や脱毛などの頭皮や毛髪の損傷も含まれる。また、骨関連では、骨粗しょう症、骨折(脊椎圧迫骨折、大腿骨頚部骨折等)など、軟骨疾患では、変形性関節症、関節リウマチ、椎間板ヘルニアなど、神経関連では、脊髄損傷、顔面神経麻痺、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、加齢に伴う記憶低下など、血液関連では、再生不良性貧血、白血病など、心血管関連では心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症など、歯科関連では歯周病、歯槽膿漏による歯槽骨損傷など、眼科関連では、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症、緑内障など、肝臓・膵臓関連では肝炎、肝硬変、糖尿病などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明はまた、幹細胞を、コメ又はコメ抽出物を含有する培地で培養する工程を含む、幹細胞の製造方法、幹細胞の増殖促進方法に関する。
本発明に係る方法において、幹細胞を培養する培地、また同時に用いる添加剤としては、特に限定はされず、幹細胞の増殖のために一般的に使用されている培地及び添加剤を用いればよい。
具体的には、幹細胞を培養する培地としては、幹細胞の生存及び増殖に必要な成分(無機塩、炭水化物、ホルモン、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、ビタミン等)を含む基本培地、例えば、Dulbecco' s Modified Eagle Medium(D−MEM)、Minimum Essential Medium(MEM)、RPMI 1640、Basal Medium Eagle(BME)、Dulbecco’s Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F−12(D−MEM/F−12)、Glasgow Minimum Essential Medium(Glasgow MEM)、ハンクス液(Hank's balanced salt solution)等が挙げられる。また、培地に、増殖因子として塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)及び/又は白血球遊走阻止因子(LIF)を添加してもよい。さらに、必要に応じて、培地は、上皮細胞増殖因子(EGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、ビタミン類、インターロイキン類、インスリン、トランスフェリン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コラーゲン、フィブロネクチン、プロゲステロン、セレナイト、B27-サプリメント、N2-サプリメント、ITS-サプリメント、抗生物質等を含有してもよい。
また、上記以外には、1〜20%の含有率で血清が培地に含まれることが好ましい。しかしながら、血清はロットの違いにより成分が異なり、その効果にバラツキがあるため、ロットチェックを行った後に使用することが好ましい。
市販品の培地としては、インビトロジェン製の間葉系幹細胞基礎培地や、三光純薬製の間葉系幹細胞基礎培地、TOYOBO社製のMF培地、Sigma社製のハンクス液(Hank’s balanced salt solution)等を用いることができる。
幹細胞の培養に用いる培養器は、幹細胞の培養が可能なものであれば特に限定されないが、例えば、フラスコ、シャーレ、ディッシュ、プレート、チャンバースライド、チューブ、トレイ、培養バッグ、ローラーボトルなどが挙げられる。
培養器は、細胞非接着性であっても接着性であってもよく、目的に応じて適宜選択される。細胞接着性の培養器は、細胞との接着性を向上させる目的で、細胞外マトリックス等による細胞支持用基質などで処理したものを用いてもよい。細胞支持用基質としては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ラミニン、フィブロネクチンなどが挙げられる。
幹細胞培養に使用される培地に対するコメ又はコメ抽出物の添加濃度は、上述の本発明に係る幹細胞の増殖促進剤におけるコメ又はコメ抽出物の配合量に準じて適宜決定することができるが、例えばコメ抽出物を用いる場合、コメの乾燥物に換算して、1〜1000μg/mL、好ましくは10〜400μg/mLの濃度が挙げられる。また、幹細胞の培養期間中、コメ又はコメ抽出物を、定期的に培地に添加してもよい。
幹細胞の培養条件は、幹細胞の培養に用いられる通常の条件に従えばよく、特別な制御は必要ではない。例えば、培養温度は、特に限定されるものではないが約30〜40℃、好ましくは36〜37℃である。COガス濃度は、例えば約1〜10%、好ましくは約2〜5%である。なお、培地の交換は2〜3日に1回行うことが好ましく、毎日行うことがより好ましい。前記培養条件は、幹細胞が生存及び増殖可能な範囲で適宜変動させて設定することもできる。
幹細胞の増殖促進は、例えば、本発明に係る幹細胞の増殖促進剤の非存在下で培養した幹細胞と比較して、本発明に係る幹細胞の増殖促進剤の存在下で培養した該幹細胞の細胞数が有意に増加されているか否かで評価することができる。細胞数の測定は、例えば、MTT法やWST法などにより、市販の細胞数測定キットを用いて行うことができる。測定の結果、培養開始時の幹細胞の細胞数と本発明の幹細胞の増殖促進剤の存在下で所定時間培養後の幹細胞の細胞数との相対比が、本発明の幹細胞の増殖促進剤の非存在下で培養した場合の同相対比(コントロール)よりも大きい場合に幹細胞の増殖を促進できたと判定することができる。
上記の本発明に係る方法により調製された幹細胞は移植材料(細胞移植剤)として用いることができる。
上記の本発明に係る幹細胞の増殖促進剤あるいは本発明に係る方法に準じて、コメ又はコメ抽出物を、単独で、あるいは培地と別々に又は培地と混合し、幹細胞の増殖促進のための試薬キットとして提供することもできる。当該キットは、必要に応じて取扱い説明書等を含むことができる。あるいは、コメ又はコメ抽出物を培地と混合し、幹細胞の増殖促進用培地として提供することもできる。
本発明に係る上記の幹細胞の増殖促進剤を生体内に投与する場合は、そのまま投与することも可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲で適当な添加物とともに化粧品、医薬部外品、医薬品、飲食品等の各種組成物に配合して提供することができる。なお、本発明の医薬品には、動物に用いる薬剤、即ち獣医薬も包含されるものとする。
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤を化粧品や医薬部外品に配合する場合は、その剤形は、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、粉末分散系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水−油二層系、又は水−油−粉末三層系等のいずれでもよい。また、当該化粧品や医薬部外品は、幹細胞の増殖促進剤とともに、皮膚外用組成物において通常使用されている各種成分、添加剤、基剤等をその種類に応じて選択し、適宜配合し、当分野で公知の手法に従って製造することができる。その形態は、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、スプレー状等のいずれであってもよい。皮膚外用組成物の配合成分としては、例えば、油脂類(オリーブ油、ヤシ油、月見草油、ホホバ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油等)、ロウ類(ラノリン、ミツロウ、カルナウバロウ等)、炭化水素類(流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、ワセリン等)、脂肪酸類(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等)、高級アルコール類(ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等)、エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、トリオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル等)、有機酸類(クエン酸、乳酸、α-ヒドロキシ酢酸、ピロリドンカルボン酸等)、糖類(マルチトール、ソルビトール、キシロビオース、N-アセチル-D-グルコサミン等)、蛋白質及び蛋白質の加水分解物、アミノ酸類及びその塩、ビタミン類、植物・動物抽出成分、種々の界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、安定化剤、防腐剤、殺菌剤、香料等が挙げられる。
化粧品や医薬部外品の種類としては、例えば、化粧水、乳液、ジェル、美容液、一般クリーム、日焼け止めクリーム、パック、マスク、洗顔料、化粧石鹸、ファンデーション、おしろい、浴用剤、ボディローション、ボディシャンプー、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、育毛剤等が挙げられる。
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤を医薬品に配合する場合は、薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物と混合し、患部に適用するのに適した製剤形態の各種製剤に製剤化することができる。薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、その剤形、用途に応じて、適宜選択した製剤用基材や担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、分散剤、湿潤化剤、緩衝剤、溶解剤又は溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、噴射剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、香料等を適宜添加し、公知の種々の方法にて経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製すればよい。本発明の医薬品を上記の各形態で提供する場合、通常当業者に用いられる製法、たとえば日本薬局方の製剤総則[2]製剤各条に示された製法等により製造することができる。
本発明の医薬品の形態としては、特に制限されるものではないが、例えば錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤、液剤、丸剤、乳剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤などの経口剤、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、座剤、軟膏剤、ローション剤、点眼剤、噴霧剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤などの非経口剤などが挙げられる。また、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよく、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤を、前記皮膚関連の損傷や疾患を治療、改善、及び予防するための医薬品として用いる場合に適した形態は外用製剤であり、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、液剤、貼付剤(パップ剤、プラスター剤)、フォーム剤、スプレー剤、噴霧剤などが挙げられる。軟膏剤は、均質な半固形状の外用製剤をいい、油脂性軟膏、乳剤性軟膏、水溶性軟膏を含む。ゲル剤は、水不溶性成分の抱水化合物を水性液に懸濁した外用製剤をいう。液剤は、液状の外用製剤をいい、ローション剤、懸濁剤、乳剤、リニメント剤等を含む。
本発明の医薬品は、上記疾患の発症を抑制する予防薬として、及び/又は、正常な状態に改善する治療薬として機能する。本発明の医薬品の有効成分は、天然物由来であるため、非常に安全性が高く副作用がないため、前述の疾患の治療、改善、及び予防用医薬として用いる場合、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物に対して広い範囲の投与量で経口的に又は非経口的に投与することができる。
本発明の化粧品、医薬品、医薬部外品における幹細胞の増殖促進剤の含有量は特に限定されないが、製剤(組成物)全重量に対して、コメ又はコメ抽出物の乾燥物に換算して、0.001〜30重量%が好ましく、0.01〜10重量%がより好ましい。上記の量があくまで例示であって、組成物の種類や形態、一般的な使用量、効能・効果などを考慮して適宜設定・調整すればよい。また、製剤化における有効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加してもよく、作業性を考えて適宜選択すればよい。
本発明に係る幹細胞の増殖促進剤は、有効成分が日本人の主食であり、食経験のあるコメであることから、飲食品に好適に配合できる。また、本発明において、飲食品とは、一般的な飲食品のほか、医薬品以外で健康の維持や増進を目的として摂取できる食品、例えば、健康食品、機能性食品、保健機能食品、又は特別用途食品を含む意味で用いられる。健康食品には、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等の名称で提供される食品を含む。保健機能食品は食品衛生法又は健康増進法により定義され、特定の保健の効果や栄養成分の機能、疾病リスクの低減などを表示できる、特定保健用食品及び栄養機能食品、ならびに科学的根拠に基づいた機能性について消費者庁長官に届け出た内容を表示できる機能性表示食品が含まれる。また特別用途食品には、特定の対象者や特定の疾患を有する患者に適する旨を表示する病者用食品、高齢者用食品、乳児用食品、妊産婦用食品等が含まれる。ここで、飲食品に付される特定の保健の効果や栄養成分の機能等の表示は、製品の容器、包装、説明書、添付文書などの表示物、製品のチラシやパンフレット、新聞や雑誌等の製品の広告などにすることができる。
飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。特に、上記の健康食品等の場合の形状としては、例えば、タブレット状、丸状、カプセル状、粉末状、顆粒状、細粒状、トローチ状、液状(シロップ状、乳状、懸濁状を含む)等が好ましい。
飲食品の種類としては、米飯類、パン類、麺類、菓子類、乳製品、水産・畜産加工食品、油脂及び油脂加工食品、調味料、各種飲料(清涼飲料、炭酸飲料、美容ドリンク、栄養飲料、果実飲料、乳飲料など)及び該飲料の濃縮原液及び調整用粉末等が挙げられるが、これらに限定はされない。これらの中でも、上記コメ又はこれを粉砕した米粉を用いて製造される米飯類、麺類、パン類、菓子類が好ましい。米粉は、前述の粉砕機を用いた常套的な製粉手段により得ることができる。米飯類とは、上記のコメを炊飯又は他の具材や調味料とともに調理したものをいい、白飯、粥、雑炊、チャーハンなどが含まれる。また、麺類としては、上記の米粉を含む麺生地から作製される麺類であればよく、例えば、うどん、そば、中華麺、スパゲッティ等が挙げられる。パン類としては、上記の米粉にその他の原料および水を加えて混合して作製した生地を焼く、揚げる、蒸す等の加熱処理をすることにより得られるパン類であればよく、例えば、食パン、ロールパン、デニッシュピザ等が挙げられる。菓子類としては、上記の米粉にその他の原料および水を加えて混合して作製した生地を焼く、揚げる、蒸す等の処理をした菓子類であればよく、例えば、ケーキ、ドーナツ、カステラ、パイ、クッキー等が挙げられる。
本発明の飲食品は、その種類に応じて通常使用される添加物を適宜配合してもよい。添加物としては、食品衛生法上許容されうる添加物であればいずれも使用できるが、例えば、ブドウ糖、ショ糖、果糖、異性化液糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料;デキストリン、デンプン等の賦形剤;結合剤、希釈剤、香料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤などが挙げられる。
本発明の飲食品が一般的な飲食品の場合は、その飲食品の通常の製造工程においてコメ又はコメ抽出物を添加する工程を含めることによって製造することができる。また健康食品の場合は、前記の医薬品の製造方法に準じればよく、例えば、タブレット状のサプリメントでは、コメ又はコメ抽出物に、賦形剤等の添加物を添加、混合し、打錠機等で圧力をかけて成形することにより製造することができる。また、必要に応じてその他の材料(例えば、ビタミンC、ビタミンB2、ビタミンB6等のビタミン類、カルシウムなどのミネラル類、食物繊維等)を添加することもできる。
本発明の飲食品におけるコメ又はコメ抽出物の配合量は、幹細胞の増殖促進効果を発揮できる量であればよいが、対象飲食品の一般的な摂取量、飲食品の形態、効能・効果、呈味性、嗜好性及びコストなどを考慮して適宜設定すればよい。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1] 日本型イネと印度型イネの交雑種の作出とコメ抽出物の製造
(1)日本型イネと印度型イネの交雑種の作出
以下に、日本型イネと印度型イネの交雑種の作出例を示す。
(作出例1)
特許文献(特開2012−210206)に記載の方法に準拠して、日本型イネ品種「コシヒカリ」の子孫系統(準同質遺伝子系統)を雌親、国際稲研究所(IRRI)で育成された印度型イネ品種「IR−64」を花粉親として交雑した雑種Fの自殖F世代から数世代にわたって選抜を繰り返すことで、極短稈で小粒の種子を有することを特徴とする粳性系統のイネを育成した。その選抜系統の1つを「14SP−004」と命名した。
(作出例2)
日本型イネ品種「恵糯」を雌親、日本型イネと印度型イネの交雑品種「ST−1」(日本育種学会、第133回春季大会にて報告された品種)を花粉親として交雑した雑種Fの自殖F世代から数世代にわたって選抜を繰り返すことで短稈穂数型を示すことを特徴とする粳性の固定系統を育成した。その選抜固定系統の1つを「MEN−006−001」と命名した。
(作出例3)
日本型イネ品種「恵糯」を雌親、日本型イネと印度型イネの交雑品種「ST−1」(日本育種学会、第133回春季大会にて報告された品種)を花粉親として交雑した雑種Fの自殖F世代から数世代にわたって選抜を繰り返すことで長稈穂重型を示すことを特徴とする糯性の固定系統を育成した。その選抜固定系統の1つを「MEN−006−009」と命名した。
(2)コメ抽出物の製造
(1)で作出したイネ系統、比較として「コシヒカリ」、「タカナリ」、「山田錦」を抽出材料として用い、以下の方法でそれらの溶媒抽出物を製造した。
(製造例1)コメの熱水抽出物の製造
コメ乾燥物10gに精製水200mLを加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して熱水抽出物を得た。
(製造例2)コメの50%エタノール抽出物の製造
コメ乾燥物10gに50%エタノール200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、50%エタノール抽出物を得た。
(製造例3)コメのエタノール抽出物の製造
コメ乾燥物10gにエタノール200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、エタノール抽出物を得た。
(製造例4)コメのヘキサン抽出物の製造
コメ乾燥物10gにヘキサン200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、ヘキサン抽出物を得た。
製造例1〜4で得られた抽出物(抽出物1〜8、比較抽出物1〜8)について、使用した抽出材料(イネ品種又は系統及び形態)、抽出溶媒、抽出物の量を下記表1に示す。
Figure 2020156320
[実施例2]コメ抽出物の幹細胞に対する増殖促進効果の評価
ヒト幹細胞培養液(TOYOBO社製)を用いて培養したヒト成体幹細胞(脂肪組織由来;DSファーマバイオメディカル社製)を、6cmディッシュに3×10個播種し、各抽出物を最終濃度が100μg/mL、200μg/mL、300μg/mLになるように添加し、3日間培養を続けた。3日間の培養後、細胞をPBS(−)にて3回洗浄した後、ラバーポリスマンにて集め、それぞれの細胞数をカウントした。
被験物質(コメ抽出物)未添加時の総細胞数をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の、被験物質添加時の細胞数の増減(%)を算出し、幹細胞増殖促進効果の評価を行った。これらの試験結果を以下の表2に示す。
Figure 2020156320
表2に示すように、コメ抽出物には、いずれも幹細胞増殖促進効果が認められた。作出例1〜3で作出した日本型イネと印度型イネの交雑種、その後代の玄米の抽出物(抽出物1、6、7、8)は、日本型イネの玄米の抽出物(比較抽出物1、6、8)や印度型イネの玄米の抽出物(比較抽出物7)より顕著な幹細胞増殖効果を有することが認められた。また、玄米の抽出物以外に、精米の抽出物と米糠の抽出物についても、作出例1〜3で作出された日本型イネと印度型イネの交雑種、その後代の抽出物は、日本型イネや印度型イネの抽出物より顕著な幹細胞増殖効果を有することが認められた。なお、上述のコントロールの値を100%とした場合、培養開始時のヒト成体幹細胞数は、23%であった。以上より、作出例1〜3で作出された日本型イネと印度型イネの交雑種のコメ抽出物の極めて優れた幹細胞増殖促進効果を明らかにした。なお、本実験例で用いた幹細胞以外に、胚性の幹細胞(ES細胞)についても同様な試験を行ったところ、顕著な幹細胞増殖促進効果が認められた。
本発明の幹細胞の増殖促進剤は、幹細胞増殖を促進できるので、当該薬剤は、再生医療、再生美容、抗加齢等の組織再生や恒常性維持の分野において有用である。

Claims (6)

  1. 日本型イネと印度型イネの交雑種もしくはその後代の種子、又は該種子の抽出物を有効成分として含有する、幹細胞増殖促進剤。
  2. 前記日本型イネが、「コシヒカリ」、「恵糯」、「コシヒカリ」の変異体、「恵糯」
    の変異体、「コシヒカリ」の子孫系統、及び「恵糯」の子孫系統から選択されるイネである、請求項1に記載の幹細胞増殖促進剤。
  3. 前記印度型イネが、「IR−8」、「IR−64」、「タカナリ」、「IR−8」の変異体、「IR−64」の変異体、「タカナリ」の変異体、「IR−8」の子孫系統、「IR−64」の子孫系統、及び「タカナリ」の子孫系統から選択されるイネである、請求項1に記載の幹細胞増殖促進剤。
  4. 幹細胞を、請求項1〜3のいずれか1項に記載の幹細胞増殖促進剤を含有する培地で培養する工程を含む、幹細胞の増殖促進方法。
  5. 幹細胞を、請求項1〜3のいずれか1項に記載の幹細胞増殖促進剤を含有する培地で培養する工程を含む、幹細胞の製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の幹細胞増殖促進剤を含む、幹細胞増殖用組成物。
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