JP2020154531A - 電動アクチュエータおよびねじれ角計算方法 - Google Patents

電動アクチュエータおよびねじれ角計算方法 Download PDF

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Abstract

【課題】弁体のねじれ角を容易に計算する電動アクチュエータを提供する。【解決手段】電動アクチュエータは10、弁体22を回動するための出力軸16と、動力伝達部14を介して出力軸を回動するモータ13と、モータを駆動制御することにより弁体の開度を制御する制御回路19と、出力軸に取り付けられて、電源遮断時に自己の復帰力で出力軸を所定の開度位置まで戻すリターンスプリング15とを備え、制御回路は、所定の計測タイミングにおける出力軸の出力軸トルクに基づいて、弁体のねじれ角を計算する計算処理部19Bを有する。【選択図】図1

Description

本発明は、スプリングリターン形の電動アクチュエータに関し、特に、電動アクチュエータで制御する弁体のねじれ角を計算するためのねじれ角計算技術に関する。
バルブやダンパーなどの操作端を電動で開閉制御する電動アクチュエータの1つとして、出力軸に取り付けたリターンスプリングの復帰力で電源供給遮断時に出力軸を所定の回動位置まで戻す、いわゆるスプリングリターン形の電動アクチュエータがある(例えば、特許文献1など参照)。
この電動アクチュエータは、通電時、動力伝達部を介してモータで出力軸を回動させて操作端の開度を調整すると同時にリターンスプリングを巻き上げ、モータのディテントトルクで回動位置を保持している。これにより、その後に外部からの電源供給が遮断された場合、モータの電動クラッチへの電源供給が停止されてクラッチ断となって、モータのディテントトルクが非常に小さくなるため、リターンスプリングの復帰力により全閉位置や全開位置などの所定の回動位置まで、出力軸が強制的に戻されることになる。
特開平10−164878号公報 特開2015−125038号公報 特開2015−114188号公報
通常、電動アクチュエータと電動アクチュエータから制御する操作端の弁体とは、電動アクチュエータ側の出力軸、弁体側の弁軸、および出力軸と弁軸とを連結するための継手からなる、一連の連結軸を介して連結されている。この連結軸の軸長はある程度の長さを持つため、弁体に対して負荷がかかっている場合には連結軸がねじれて、連結軸の両端間で回動角度の差、すなわちねじれ角が生じる。このような弁体のねじれ角は、連結軸のうち電動アクチュエータ側の上端で検出した出力側開度と、連結軸のうち弁体側の下端に連結されている弁体の弁側開度との間で開度誤差となって現れることになる。このため、出力側開度に基づき流量制御を行った場合、流量誤差が生じる原因となる。
連結軸を構成する出力軸、継手、弁軸や弁体は、耐食性を有する材料からなり、長期間にわたり十分な耐久性を持つと考えられる。このため、実際に発生するねじれ角は無視できる程度の微細な量であり、一般的な流量制御の場合には誤差の範囲内に収まる程度である。
一方、電動アクチュエータや操作端には保証期間が設定されていて、保証期間の満了に応じて新たなものに交換する必要がある。しかし、実際には保証期間を超えて長期間にわたり使用される場合もある。
このような保証期間を超えて長期にわたり使用した場合、出力軸、継手、弁軸や弁体が劣化して変形、故障、経年変化などにより設計当初の性能が得られない場合も考えられる。このような場合、ねじれ角が無視できない程度まで大きくなり、高精度な流量制御を行う場合には、流量誤差となって現れることになる。また、弁体が劣化してねじれ角が大きくなると、電動アクチュエータから弁体を精度よく開閉制御できなくなったり、電源供給遮断時、リターンスプリングの復帰力により、出力軸を全閉位置や全開位置などの所定の回動位置まで確実に戻せなくなったりする可能性がある。このため、弁体の劣化状態を把握しておくことが重要となる。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、電動アクチュエータで制御する弁体のねじれ角を容易に計算できるねじれ角計算技術を提供することを目的としている。
このような目的を達成するために、本発明にかかる電動アクチュエータは、弁体を回動するための出力軸と、動力伝達部を介して前記出力軸を回動するモータと、前記モータを駆動制御することにより前記弁体の開度を制御する制御回路と、前記出力軸に取り付けられて、電源遮断時に自己の復帰力で前記出力軸を所定の開度位置まで戻すリターンスプリングとを備え、前記制御回路は、所定の計測タイミングにおける前記出力軸の出力軸トルクに基づいて、前記弁体のねじれ角を計算する計算処理部を有している。
また、本発明にかかる上記電動アクチュエータの一構成例は、前記出力軸のうち、前記動力伝達部と前記リターンスプリングとの間の前記出力軸の出力軸トルクを検出するトルクセンサをさらに備えている。
また、本発明にかかる上記電動アクチュエータの一構成例は、前記計算処理部が、前記計測タイミングに前記トルクセンサで検出された出力軸トルクに基づいて、前記計測タイミングに前記弁体で生じた弁体トルクを計算し、得られた前記弁体トルクに基づいて前記ねじれ角を計算するようにしたものである。
また、本発明にかかる上記電動アクチュエータの一構成例は、前記計算処理部が、前記出力軸トルクと前記リターンスプリングのスプリングトルクとに基づいて、前記弁体トルクを計算するようにしたものである。
また、本発明にかかる上記電動アクチュエータの一構成例は、前記出力軸のうち、前記リターンスプリングと前記弁体との間の前記出力軸の出力軸トルクを検出するトルクセンサをさらに備えている。
また、本発明にかかる上記電動アクチュエータの一構成例は、前記計算処理部が、前記計測タイミングに前記トルクセンサで検出された出力軸トルクを、前記計測タイミングに前記弁体で生じた弁体トルクとして計算し、得られた前記弁体トルクに基づいて前記ねじれ角を計算するようにしたものである。
また、本発明にかかる上記電動アクチュエータの一構成例は、前記計算処理部が、前記電動アクチュエータと前記弁体とを連結する一連の連結軸のうち前記トルクセンサから前記弁体までの軸長をLとし、前記弁体トルクをTvとし、前記弁体の横弾性係数および断面二次極モーメントをGおよびIpとした場合、前記ねじれ角Δθnを後述の式で計算するようにしたものである。
また、本発明にかかる上記電動アクチュエータの一構成例は、前記出力軸の回動角度を出力側開度として検出する出力側角度センサをさらに備え、前記制御回路は、前記計算処理部で計算した前記ねじれ角に基づいて、前記出力側角度センサで検出した前記出力側開度を補正するようにしたものである。
また、本発明にかかる上記電動アクチュエータの一構成例は、前記出力軸の回動角度を出力側開度として検出する出力側角度センサと、前記弁体の回動角度を弁側開度として検出する弁側角度センサとをさらに備え、前記制御回路は、前記出力側開度と前記弁側開度との差分からなる開度偏差と、前記計算処理部で計算した前記ねじれ角との開度誤差を計算するようにしたものである。
また、本発明にかかるねじれ角計算方法は、弁体を回動するための出力軸と、動力伝達部を介して前記出力軸を回動するモータと、前記モータを駆動制御することにより前記弁体の開度を制御する制御回路と、前記出力軸に取り付けられて、電源遮断時に自己の復帰力で前記出力軸を所定の開度位置まで戻すリターンスプリングとを備える電動アクチュエータで用いられるねじれ角計算方法であって、前記制御回路が、所定の計測タイミングにおける前記出力軸の出力軸トルクを取得する第1のステップと、前記出力軸トルクに基づいて、前記弁体の劣化指標として、前記弁体のねじれ角を計算する第2のステップとを備えている。
本発明によれば、弁体や連結軸の劣化指標として、弁体のねじれ角を容易に計算できるため、当初の設計値からの乖離幅に応じて、弁体の劣化状態を容易に把握することができる。したがって、乖離幅が大きくなって劣化が進んだ場合には、故障発生する前に適切な対応をとることができ、極めて効果的な予知保全を実現することが可能となる。これにより、保証期間を超える長期使用を想定した場合でも、一定の信頼性を提供することが可能となる。また、ねじれ角の経時変化を、計算処理部や上位装置でモニタすることにより、弁体や連結軸の劣化時期すなわち交換時期を予測でき、操作端の予知保全に極めて有用である。
図1は、第1の実施の形態にかかる電動アクチュエータの構成を示すブロック図である。 図2は、トルクセンサ(歪みゲージ)を示す説明図である。 図3は、流量制御処理を示すフローチャートである。 図4は、出力側センサ出力値と出力側開度との関係を示すグラフである。 図5は、第1の実施の形態にかかるねじれ角計算処理を示すフローチャートである。 図6は、第1の実施の形態にかかるねじれ角計算処理動作を示す説明図である。 図7は、劣化指標処理を示すフローチャートである。 図8は、開度誤差処理を示すフローチャートである。 図9は、第2の実施の形態にかかる電動アクチュエータの構成を示すブロック図である。 図10は、第2の実施の形態にかかるねじれ角計算処理を示すフローチャートである。 図11は、第2の実施の形態にかかるねじれ角計算処理動作を示す説明図である。
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる電動アクチュエータ10について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる電動アクチュエータの構成を示すブロック図である。
この電動アクチュエータ10は、例えば、空調システム等の設備において、配管を流れる冷温水の流量を制御する流量制御バルブや、空気の風量を調整する風量調整ダンパーなどの弁体を電動制御する装置である。以下では、図1に示すように、流量制御バルブの弁本体20に電動アクチュエータ10を取り付けた場合を例として説明するが、これに限定されるものではなく、風量調整ダンパーなど、電動制御可能な弁体を有する他の機器に取り付けた場合にも、同様にして適用可能である。
[弁本体]
弁本体20は、流体が流れる流路21が内部に形成された金属管からなり、流路21の途中には流体の流量を制御するための弁体22が回動自在に取り付けられている。弁体22には、弁本体20の外部へ一端が導出された弁軸26が結合されており、この弁軸26の回動操作により弁体22が回動し、流路21の断面積、すなわち弁開度が変化して、流体の流量が制御される。
流路21の内壁23のうち、弁体22の一次側(流体上流側)には圧力センサS1が配置されており、弁体22の二次側(流体下流側)には圧力センサS2が配置されている。これら圧力センサS1,S2は、それぞれ流路21の一次側圧力P1および二次側圧力P2を検出し、得られた検出結果を示す圧力検出信号を電動アクチュエータ10へ出力する。これら一次側圧力P1および二次側圧力P2と、弁開度に相当する出力側開度θaからなる開度現在値θとに基づいて流路21を流れる流体の流量が計測される。
[電動アクチュエータ]
電動アクチュエータ10は、ヨーク31を介して弁本体20の本体上面24に取り付けられており、継手30を介して弁軸26と接続されている出力軸16を回動制御することにより、弁体22の弁開度を制御して、流体の流量制御を行う機能を有している。
電動アクチュエータ10には、主な構成として、設定回路11、モータ駆動回路12、モータ13、動力伝達部14、リターンスプリング15、出力軸16、出力側角度センサ17A、トルクセンサ17T、記憶回路18、および制御回路19が設けられている。
設定回路11は、上位装置(図示せず)から受信した流量目標信号などの設定信号に含まれる、流量目標値Qrefなどの設定値を取得し、制御回路19へ出力する機能を有している。
モータ駆動回路12は、制御回路19から出力されたモータ制御信号に基づいて、モータ13を駆動する機能を有している。
モータ13は、DCモータ、ACモータ、ステッピングモータなどの制御用モータからなり、モータ駆動回路12からの駆動信号により、指定された方向へ指定された角度分だけシャフト13Aを回転させる機能と、外部からの電動アクチュエータ10に対する電源供給の有無に応じてディテントトルクの発生有無を切り替えるためのクラッチ機能とを有している。
動力伝達部14は、歯数の異なる複数の歯車が噛合されたギヤボックスなどの動力伝達機構からなり、モータ13のシャフト13Aの回転速度を減速して出力軸16を回動させる機能を有している。
これにより、制御回路19から出力されたモータ制御信号に基づいて、モータ駆動回路12から駆動信号がモータ13に出力される。また、この駆動信号に応じてモータ13のシャフト13Aが回転し、その回転出力が動力伝達部14で減速されて出力軸16を回動させ、継手30および弁軸26を介して弁体22が所定の回動角度すなわち弁開度まで回動することになる。
リターンスプリング15は、一般的なコイルバネからなり、出力軸16に取り付けられて、電源遮断時に動力伝達部14でモータ13のシャフト13Aから解放された出力軸16を、自己の復帰力で所定の開度位置まで戻すスプリングである。
出力軸16は、電動アクチュエータ10から弁本体20の弁体22を回動するための軸であり、一端が動力伝達部14に連結され、他端がリターンスプリング15、継手30および弁軸26を介して弁体22と連結されている。
出力側角度センサ17Aは、動力伝達部14または出力軸16に取り付けられて、出力軸16の回動角度を検出し、回動角度に応じた出力側センサ出力値Saを制御回路19へ出力する角度センサである。
以下では、出力側角度センサ17Aとして、例えば円形差動トランス型角度センサ(特許文献2)や磁気抵抗型角度センサ(特許文献3)を用いた場合を例として説明する。本発明は、これら特許文献2および特許文献3に記載されたすべての内容を含むものとする。なお、出力側角度センサ17Aは、これに限定されるものではなく、ポテンショメータ、インクリメンタルエンコーダ、アブソリュートエンコーダなど、回転角度が計測できるセンサを出力側角度センサ17Aとして用いてもよい。
トルクセンサ17Tは、出力軸16に取り付けられて、出力軸16の出力軸トルクを検出し、その出力軸トルクに応じたトルクセンサ出力値Voを電動アクチュエータ10へ出力するセンサである。本実施の形態では、トルクセンサ17Tが、出力軸16のうち、動力伝達部14とリターンスプリング15との間の出力軸16に取り付けられており、動力伝達部14とリターンスプリング15との間の出力軸16の出力軸トルクToを検出する場合を例として説明する。
トルクセンサ17Tの具体例の1つとして歪みゲージがある。図2は、トルクセンサ(歪みゲージ)を示す説明図である。図2に示すように、歪みゲージ40は、樹脂などの薄い電気絶縁物からなるベース41に、折り返しパターンでパターン形成された金属箔などの抵抗体Rからなるゲージ42と、抵抗体Rの端部のそれぞれに電気的に接続された2本のリード43とからなる。
歪みゲージ40からなるトルクセンサ17Tは、出力軸16の表面に接着剤で接着されており、出力軸16の出力軸トルクToに応じて出力軸16が歪むと、その歪んだ分だけベース41も伸縮するため、結果としてゲージ42の抵抗体Rの抵抗値が変化する。
抵抗値の変化率と歪み量は比例関係にあるため、抵抗体Rの抵抗値を検出すれば歪み量を計算でき、これにより出力軸トルクToを検出できる。抵抗体Rの抵抗値は、一般的なホイートストーンブリッジ回路45を用いて電圧に変換でき、これを制御回路19で検出すればよい。ホイートストーンブリッジ回路45は、制御回路19内に設けてもよく、制御回路19とトルクセンサ17Tとの間に設けてもよい。一定の入力電圧Vinをホイートストーンブリッジ回路45に入力しておけば、抵抗体Rの抵抗値の変化に応じて出力電圧すなわちトルクセンサ出力値Voが変化する。
なお、トルクセンサ17Tについては、歪みゲージ40を用いた方式に限定されるものではない。例えば、トルク検出部位の両側に設けた歯車やシリンダーの位相差(ねじれ)の大きさに基づいてトルクを検出する方式など、他の方式に基づく公知のトルクセンサを用いてもよい。
記憶回路18は、不揮発性の半導体メモリからなり、流量現在値Qの計算に用いる弁体22に固有の流量係数Cvを特定するための特性テーブルなど、流量制御や劣化指標計算に用いる各種の処理データを記憶する機能を有している。この特性テーブルには、流路21の一次側圧力P1および二次側圧力P2の差圧ΔP=P1−P2と弁体22の開度現在値θとの組み合わせごとに、弁体22に固有の流量係数Cvが予め登録されている。これら特性テーブルの各データは、形状や材質などの弁体22の特徴に基づいて別途計算されたものである。
制御回路19は、CPUとその周辺回路を有し、CPUとプログラムとを協働させることにより、流量制御や劣化指標計算のための処理を実行する各種の処理部を実現する機能を有している。
制御回路19は、主な処理部として、開度制御部19Aと計算処理部19Bとを備えている。
開度制御部19Aは、圧力センサS1,S2から出力された圧力検出信号が示す一次側圧力P1および二次側圧力P2と開度現在値θとに基づいて、流路21を流れる流体の流量現在値Qを計算する機能と、この流量現在値Qと流量目標値Qrefとの流量偏差ΔQに基づいて、所定のモータ制御信号をモータ駆動回路12へ出力してモータ13を駆動制御することにより、弁体22の弁開度を調整して流量現在値Qを制御する機能と、任意の制御開度に出力軸16を回動する機能とを有している。
計算処理部19Bは、所定の計測タイミングにおける出力軸16の出力軸トルクToaに基づいて、弁体22の劣化指標として、弁体22のねじれ角Δθnを計算する機能と、得られたねじれ角Δθnと予め設定されている正常範囲Eとに基づいて、弁体22の劣化状態を判定する機能とを有している。
本発明において、電動アクチュエータ10側の出力軸16、弁体22側の弁軸26、および出力軸16と弁軸26とを連結するための継手30からなる、一連の連結構造を連結軸という。また、連結軸のうち電動アクチュエータ10側の上端で検出される出力側開度θaと、連結軸のうち弁体22側の下端で検出される弁側開度θvとの差異は、弁体22のねじれ角Δθnと同等となる。
以下では、計測タイミングにおける制御開度がθxであり、その時の出力側開度がθaであるものとする。計測タイミングについては、予め設定した一定周期に同期したタイミングや、電動アクチュエータ10や操作端の延べ使用期間が予め離散的に設定した期間長に到達したタイミングなど、時間に基づき特定してもよい。このほか、出力軸16が所定の開度まで回動されたタイミングなど、出力軸16の開度に基づき特定してもよい。また、計測タイミングにおいて、出力軸16は回動中であってもよく、一時停止して一定開度に保持されている状態であってもよい。
また、計算処理部19Bは、計測タイミングにトルクセンサ17Tにより検出された、動力伝達部14とリターンスプリング15との間の出力軸16の出力軸トルクToaに基づいて、計測タイミングに弁体22で生じた弁体トルクTvを計算する機能と、得られた弁体トルクTvに基づいてねじれ角Δθnを計算する機能と、出力軸トルクToaとリターンスプリング15のスプリングトルクTsとに基づいて、弁体トルクTvを計算する機能とを有している。
具体的には、計算処理部19Bは、電動アクチュエータ10と弁体22とを連結する一連の連結軸のうちトルクセンサ17Tから弁体22までの軸長をLとし、弁体トルクをTvとし、弁体22の横弾性係数および断面二次極モーメントをGおよびIpとした場合、ねじれ角Δθnを後述する式(5)で計算する機能を有している。
また、計算処理部19Bは、計算して得られたねじれ角Δθnに基づいて、出力側角度センサ17Aで検出した出力側開度θaを補正し、補正後出力側開度θ’aを計算する機能を有している。
また、計算処理部19Bは、弁本体20の外側である本体上面24または本体底面25に、弁体22付近の弁軸26の回動角度を検出する弁側角度センサが取り付けられている場合、弁側角度センサから弁側開度θvを取得し、出力側開度θaと弁側開度θvとの差分である開度偏差Δθavを計算する機能と、得られた開度偏差Δθavと補正後出力側開度θ’aとの開度誤差Δθeを計算する機能と、開度誤差Δθeと予め設定されている正常範囲eとに基づいて、弁側角度センサの劣化状態を判定する機能とを有している。
本発明において、制御開度は、開度制御部19Aが開度制御に用いる目標値であり、出力側開度は、出力側角度センサ17Aで検出された出力軸16の回動角度を示す検出値であるものとする。なお、開度は全閉状態と全開状態との間を百分率で表した値であり、回動角度は開度を角度で表した値であるが、両者は一意に対応するものであり、本発明において、制御開度、出力側開度、あるいは弁側開度を、単に回動角度という場合もある。
[流量制御動作]
次に、図3を参照して、出力側角度センサ17Aで検出した出力側開度θaを用いた、本実施の形態にかかる電動アクチュエータ10の流量制御動作について説明する。図3は、流量制御処理を示すフローチャートである。
制御回路19は、流路21を流れる流体の流量を制御する場合、図3の流量制御処理を実行する。
図3の流量制御処理の開始時において、設定回路11には、予め流量目標値Qrefが設定されているものとする。また、記憶回路18には、弁体22に関する特性テーブルが予め登録されているものとする。
また、制御回路19内の記憶部(図示せず)には、出力側角度センサ17Aの出力側センサ出力値Saと弁体22の弁開度との対応関係の基準となる出力側出力基準値Sbが予め設定されているものとする。
図4は、出力側センサ出力値と出力側開度との関係を示すグラフである。出力側角度センサ17Aとして用いられる、円形差動トランス型角度センサおよび磁気抵抗型角度センサは、出力軸16の中間位置角度すなわち50%開度を中心として、全閉方向および全開方向に対称となる出力側センサ出力値Saを出力する構造を有している。したがって、図4に示すように、出力側センサ出力値Saと、出力側開度θaとの関係は線形比例するとともに、全閉および全開を示す電圧値は、50%開度を示す電圧値=0vを中心として、等しい電圧幅Sbだけ離れた電圧値−Sb,Sbとなる。
まず、開度制御部19Aは、出力側角度センサ17Aから出力側センサ出力値Saを取得し(ステップS100)、予め設定されている出力側出力基準値Sbに基づいて、Saから開度現在値θ(出力側開度θa)=50×(1+Sa/Sb)[%]を計算する(ステップS101)。
なお、弁体22のねじれ角Δθnを考慮して流量制御する場合、制御回路19の内部メモリ(図示せず)または記憶回路18から、後述するねじれ角計算処理で得られた出力側開度θaにおける補正後出力側開度θ’aを取得して、開度現在値θとして用いればよい。この際、出力側開度θaにおける補正後出力側開度θ’aが保存されていない場合、例えば出力側開度θaに近しい他の開度における、保存されている補正後出力側開度を補間処理することにより、出力側開度θaにおける補正後出力側開度θ’aを計算してもよい。
次に、開度制御部19Aは、圧力センサS1,S2から出力された圧力検出信号が示す一次側圧力P1および二次側圧力P2を取得し(ステップS102)、これらP1,P2の差圧ΔP=P1−P2を計算する(ステップS103)。
続いて、開度制御部19Aは、差圧ΔPと開度現在値θに対応する流量係数Cvを記憶回路18の特性テーブルから取得し(ステップS104)、流量係数Cvと差圧ΔPに基づいて、流路21を流れる流体の流量現在値Qを計算する(ステップS105)。この際、流路21の口径などによって定まる定数をAとした場合、流量現在値Qは、Q=A・Cv・(ΔP)1/2で求められる。
この後、開度制御部19Aは、QとQrefの流量偏差ΔQ=Q−Qrefを計算し(ステップS106)、ΔQとゼロとを比較する(ステップS107)。
ここで、ΔQがゼロと等しくΔQ=0である場合(ステップS107:ΔQ=0)、開度制御部19Aは、弁開度を変更することはないが、流量目標値Qrefが変更にならなくても、管路の状態により流量現在値Qが変化するため、ステップS100に戻る。
一方、ΔQがゼロより小さくΔQ<0である場合(ステップS107:ΔQ<0)、開度制御部19Aは、所定のモータ制御信号をモータ駆動回路12へ出力することにより、モータ13をΔQに相当する弁開度分だけ開方向に駆動し(ステップS108)、ステップS100に戻る。
また、ΔQがゼロより大きくΔQ>0である場合(ステップS107:ΔQ>0)、開度制御部19Aは、所定のモータ制御信号をモータ駆動回路12へ出力することにより、モータ13をΔQに相当する弁開度分だけ閉方向に駆動し(ステップS109)、ステップS100に戻る。
以上では、図3を参照して、出力側角度センサ17Aで検出した出力側開度θaを用いた流量制御動作について説明したが、弁本体20の外側である本体上面24または本体底面25に、弁体22付近の弁軸26の回動角度を検出する弁側角度センサが取り付けられている場合、弁側開度θvに代えて弁側角度センサで検出した弁側開度θvを用いて、流量制御動作を実行してもよい。
具体的には、図3のステップS100−S101において、弁側角度センサから弁側センサ出力値Svを取得し(ステップS100)、予め設定されている弁側出力基準値Ssに基づいて、Svから開度現在値θ(弁側開度θv)=50×(1+Sv/Ss)[%]を計算する(ステップS101)。なお、制御回路19内の記憶部(図示せず)には、弁側角度センサの弁側センサ出力値Svと弁体22の弁開度との対応関係の基準となる弁側出力基準値Ssが予め設定されているものとする。
弁側出力基準値Ssは、出力側出力基準値Sbに代えて用いられるものである。弁側角度センサとして、円形差動トランス型角度センサや磁気抵抗型角度センサを用いた場合、前述した図4と同様に、弁側センサ出力値Svと弁側開度θvとの関係は線形比例するとともに、全閉および全開を示す電圧値は、50%開度を示す電圧値=0vを中心として、等しい電圧幅Svだけ離れた電圧値−Sv,Svとなる。
この際、弁側角度センサに取り付けられた温度センサで検出された検出温度Txに基づいて、弁側角度センサの開度現在値θ(弁側開度θv)が温度補正される。なお、開度現在値θの温度補正は、本実施の形態において必須ではなく、弁側角度センサのセンサ出力が周囲温度の影響を受けない場合には、温度補正を省くこともできる。
図3におけるこのほかのステップについては、前述と同様であり、ここでの説明は省略する。
[ねじれ角計算処理動作]
次に、図5および図6を参照して、本実施の形態にかかる電動アクチュエータ10のねじれ角計算処理動作について説明する。図5は、第1の実施の形態にかかるねじれ角計算処理を示すフローチャートである。図6は、第1の実施の形態にかかるねじれ角計算処理動作を示す説明図である。
制御回路19は、弁体22のねじれ角Δθnを計算する際、図5のねじれ角計算処理を実行する。
まず、計算処理部19Bは、計測タイミングが到来するまで待機する(ステップS150:NO)。計測タイミングが到来した場合(ステップS150:YES)、計算処理部19Bは、出力側角度センサ17Aの出力側センサ出力値Saから得られた出力側開度θaを取得するとともに(ステップS151)、計測タイミングにトルクセンサ17Tで検出されたトルクセンサ出力値Voに基づいて、出力側開度θaにおける出力軸トルクToaを取得する(ステップS152)。
この際、計測タイミングにおいて、出力軸16は回動中であってもよく、あるいは、任意の一定開度で保持されている状態であってもよい。したがって、ねじれ角計算処理動作と並行して実行している動作、例えば流量制御動作により、計測タイミングに出力軸16が回動されている場合、ねじれ角計算処理動作で出力軸16を一時的に保持する必要はない。なお、計測タイミングにおいて、弁側角度センサ17Vの弁側センサ出力値Svから得られた弁側開度θvを取得し、以下のねじれ角計算処理において、出力側開度θaの代わりに弁側開度θvを用いてもよい。
続いて、計算処理部19Bは、得られた出力側開度θaと出力軸トルクToaとに基づいて、弁体22にかかる弁体トルクTvを計算し(ステップS153)、得られた弁体トルクTvに基づいて、出力側開度θaにおける弁体22のねじれ角Δθnを計算し(ステップS154)、得られたねじれ角Δθnを制御回路19の内部メモリ(図示せず)または記憶回路18に保存する(ステップS155)。
また、計算処理部19Bは、得られたねじれ角Δθnに基づいて、出力側開度θaを補正した補正後出力側開度θ’aを計算し(ステップS156)、得られた補正後出力側開度θ’aを上記内部メモリまたは記憶回路18に保存し(ステップS157)、一連のねじれ角計算処理を終了する。
通常、出力軸16が回動している場合、あるいは、出力軸16を任意の一定開度で保持した場合、モータ13、動力伝達部14、リターンスプリング15、および弁体22に発生するそれぞれのトルクは、互いにつり合った状態にあり、これらトルクの総和はゼロとなる。図6に示すように、例えば、任意の出力側開度θaにおけるモータ13のモータトルクをTmとし、リターンスプリング15のスプリングトルクをTsとし、動力伝達部14における動力伝達トルクをTdとし、弁体22の弁体トルクをTvとした場合、任意の制御開度θxにおけるこれらトルクのつり合いは、次の式(1)で表される。
Figure 2020154531
一方、動力伝達部14とリターンスプリング15との間の出力軸16の出力軸トルクToa、モータ13のモータトルクTmおよび動力伝達部14の動力伝達トルクTdは、トルクのつり合いで見れば、次の式(2)に示すようになる。
Figure 2020154531
また、リターンスプリング15のばね定数をkとした場合、出力側開度θaで発生するスプリングトルクTsは、次の式(3)で表される。
Figure 2020154531
したがって、これら式(1)〜式(3)に基づけば、弁体トルクTvは、次の式(4)に示すようになる。このため、出力側開度θaと出力軸トルクToaとを検出すれば、弁体トルクTvが得られることになる。
Figure 2020154531
また、弁体22に対して負荷がかかっている場合、出力軸16、継手30、弁軸26からなる一連の連結軸に対してねじれ角Δθnが生じる。連結軸のうちトルクセンサ17Tから弁体22までの軸長をLとし、弁体トルクをTvとし、弁体22の横弾性係数および断面二次極モーメントをGおよびIpとした場合、ねじれ角Δθnは次の式(5)で表される。
Figure 2020154531
この際、連結軸のうち弁体22の上端までのねじれ角Δθnを求める場合、軸長Lとしてリターンスプリング15から弁体22上端までの長さL1を用いればよい。また、連結軸のうち弁体22の下端までのねじれ角Δθnを求める場合、軸長Lとしてリターンスプリング15から弁体22下端までの長さL2を用いればよい。
このようにして得られたねじれ角Δθnは、出力側開度θaと弁側開度θvとの偏差と見なせるため、次の式(6)に示すように、出力側開度θaにねじれ角Δθnを加算することにより、弁側開度θvに相当する補正後出力側開度θ’aを得ることができる。
Figure 2020154531
[劣化指標処理動作]
次に、図7を参照して、本実施の形態にかかる電動アクチュエータ10の劣化指標処理動作について説明する。図7は、劣化指標処理を示すフローチャートである。
保証期間を超えて長期にわたり使用した場合、連結軸を構成する出力軸16、継手30、弁軸26や弁体22が劣化して変形、故障、経年変化などにより設計当初の性能が得られない場合も考えられる。このような場合、ねじれ角Δθnが無視できない程度まで大きくなるため、ねじれ角Δθnは、弁体22や連結軸に関する劣化状態の判定に用いる劣化指標となる。
制御回路19は、弁体22や連結軸の劣化状態を判定する際、図5のねじれ角計算処理を実行後、図7の劣化指標処理を実行する。
まず、計算処理部19Bは、制御回路19の内部メモリまたは記憶回路18からねじれ角Δθnを取得して(ステップS160)、得られたねじれ角Δθnと予め設定されているねじれ角Δθnの正常範囲Eとを比較し(ステップS161)、ねじれ角Δθnが正常範囲E内である場合には(ステップS161:YES)、弁体22や連結軸の劣化状態は正常であると判定し(ステップS162)、一連の劣化指標処理を終了する。正常範囲Eについては、弁体22や連結軸の設計時に算出した、ねじれ角Δθnの初期値と許容範囲とに基づいて決定すればよい。
一方、ねじれ角Δθnが正常範囲E外である場合には(ステップS161:NO)、弁体22や連結軸の劣化状態は異常であると判定し(ステップS163)、一連の劣化指標処理を終了する。得られた劣化状態判定結果については、計算処理部19BがLCDやLEDを用いた表示部(図示せず)でアラーム表示してもよく、データ通信により上位装置へ通知してもよい。
この際、計算処理部19Bが、ねじれ角Δθnの経時変化を定期的に計算し、データ通信により上位装置へ順次通知してもよい。さらには、計算処理部19Bが、計算したねじれ角Δθnを記憶回路18に時系列データとして順次保存しておき、この時系列データから生成した近似関数に基づき将来のねじれ角Δθnの推定値Δθ’nを推定し、推定値Δθ’nが正常範囲Eから離脱する時期を注意点として予測するようにしてもよい。これにより、連結軸を構成する出力軸16、継手30、弁軸26や弁体22の劣化時期すなわち交換時期を予測することができる。
[開度誤差処理動作]
次に、図8を参照して、本実施の形態にかかる電動アクチュエータ10の開度誤差処理動作について説明する。図8は、開度誤差処理を示すフローチャートである。
弁本体20の外側である本体上面24または本体底面25に、弁体22付近の弁軸26の回動角度を検出する弁側角度センサが取り付けられている場合、弁体22の弁側開度θvを弁側角度センサで直接検出することができ、流量制御の開度現在値θとして用いれば高い精度で流量制御を行うことができる。
一般に、弁側角度センサは、弁本体20の外側である本体上面24または本体底面25に取り付けられるため、周囲環境や弁本体20の流路21を流れる流体の影響を受けやすい。このような影響により弁側角度センサに異常が発生した場合、出力側角度センサ17Aで検出した出力側開度θaと弁側開度θvとの開度偏差Δθavが、通常の範囲のねじれ角Δθnを超えることになる。図8の開度誤差処理は、開度偏差Δθavとねじれ角Δθnとの差分である開度誤差Δθeに基づいて、弁側角度センサの劣化状態を判定するようにしたものである。
制御回路19は、弁側角度センサの劣化状態を判定する際、図5のねじれ角計算処理を実行後、図8の開度誤差処理を実行する。
まず、計算処理部19Bは、出力側角度センサ17Aから出力側開度θaを取得するとともに(ステップS170)、弁側角度センサから弁側開度θvを取得し(ステップS171)、次の式(7)に基づいて、出力側開度θaと弁側開度θvとの開度偏差Δθavを計算する(ステップS172)。
Figure 2020154531
次に、計算処理部19Bは、制御回路19の内部メモリまたは記憶回路18からねじれ角Δθnを取得して(ステップS173)、次の式(8)に基づいて、開度偏差Δθavと得られたねじれ角Δθnとの開度誤差Δθeを計算する(ステップS174)。
Figure 2020154531
続いて、計算処理部19Bは、開度誤差Δθeを予め設定されている開度誤差Δθeの正常範囲eと比較し(ステップS175)、開度誤差Δθeが正常範囲e内である場合には(ステップS175:YES)、弁側角度センサの劣化状態は正常であると判定し(ステップS176)、一連の開度誤差処理を終了する。正常範囲Eについては、弁体22や連結軸の設計時に算出した、ねじれ角Δθnの初期値と許容範囲とに基づいて決定すればよい。
一方、開度誤差Δθeが正常範囲e外である場合には(ステップS175:NO)、弁側角度センサの劣化状態は異常であると判定し(ステップS177)、一連の開度誤差処理を終了する。得られた劣化状態判定結果については、計算処理部19BがLCDやLEDを用いた表示部(図示せず)でアラーム表示してもよく、データ通信により上位装置へ通知してもよい。
この際、計算処理部19Bが、開度誤差Δθeの経時変化を定期的に計算し、データ通信により上位装置へ順次通知してもよい。さらには、計算処理部19Bが、計算した開度誤差Δθeを記憶回路18に時系列データとして順次保存しておき、この時系列データから生成した近似関数に基づき将来の開度誤差Δθeの推定値Δθ’eを推定し、推定値Δθ’eが正常範囲eから離脱する時期を注意点として予測するようにしてもよい。これにより、連結軸を構成する出力軸16、継手30、弁軸26や弁体22の劣化時期すなわち交換時期を予測することができる。
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、計算処理部19Bが、所定の計測タイミングにおける出力軸16の出力軸トルクToaに基づいて、弁体22のねじれ角Δθnを計算するようにしたものである。
電動アクチュエータで制御する操作端を、保証期間を超えて長期にわたり使用した場合、弁体22が劣化して変形、故障、経年変化などにより設計当初の性能が得られない場合も考えられる。このような場合、電動アクチュエータ10から弁体22を精度よく開閉制御できなくなったり、電源供給遮断時、リターンスプリング15の復帰力により、出力軸16を全閉位置や全開位置などの所定の回動位置まで確実に戻せなくなったりする可能性がある。このため、弁体22の劣化状態を把握しておくことが重要となる。
本実施の形態によれば、弁体22や連結軸の劣化指標として、弁体22のねじれ角Δθnを容易に計算できるため、当初の設計値からの乖離幅に応じて、弁体22や連結軸の劣化状態を容易に把握することができる。したがって、乖離幅が大きくなって劣化が進んだ場合には、故障発生する前に適切な対応をとることができ、極めて効果的な予知保全を実現することが可能となる。
これにより、保証期間を超える長期使用を想定した場合でも、一定の信頼性を提供することが可能となる。また、ねじれ角Δθnの経時変化を、計算処理部19Bや上位装置でモニタすることにより、弁体22や連結軸の劣化時期すなわち交換時期を予測でき、操作端の予知保全に極めて有用である。
また、本実施の形態において、出力軸16のうち、動力伝達部14とリターンスプリング15との間の出力軸16の出力軸トルクToaを検出するトルクセンサ17Tをさらに備え、計算処理部19Bで、計測タイミングにトルクセンサ17Tで検出された出力軸トルクToaに基づいて、計測タイミングに弁体22で生じた弁体トルクTvを計算し、得られた弁体トルクTvに基づいてねじれ角Δθnを計算するようにしてもよい。この際、出力軸トルクToaとリターンスプリング15のスプリングトルクTsとに基づいて、弁体トルクTvを計算するようにしてもよい。
具体的には、計算処理部19Bで、電動アクチュエータ10と弁体22とを連結する一連の連結軸のうちトルクセンサ17Tから弁体22までの軸長をLとし、弁体トルクをTvとし、弁体22の横弾性係数および断面二次極モーメントをGおよびIpとした場合、ねじれ角Δθnを前述した式(5)で計算するようにしてもよい。
これにより、電動アクチュエータ10の既存構成にトルクセンサ17Tを加えるだけでねじれ角Δθnを容易に計算でき、回路規模さらには製品コストの大幅な増大を必要とすることなく、電動アクチュエータ10の信頼性を高めることが可能となる。また、トルクセンサ17Tを電動アクチュエータ10の内部に実装でき、トルクセンサ17Tの劣化を低減できるとともに、電動アクチュエータ10と弁本体20との全体の小型化や、トルクセンサ17Tと制御回路19との間の配線を短縮できるため、耐ノイズ性の向上に貢献できる。
また、本実施の形態では、トルクセンサ17Tを電動アクチュエータ10の内部に実装する例について説明したが、リターンスプリング15が電動アクチュエータ10の外部に実装されている場合は、トルクセンサ17Tを電動アクチュエータ10の外部に実装してもよい。これにより、既設の電動アクチュエータ10の外部に後付でトルクセンサ17Tを実装でき、電動アクチュエータ10の小型化や初期投資の抑制、および予知保全の向上に貢献できる。
また、ねじれ角計算処理動作の所要時間は、トルクセンサ17Tで出力軸トルクToaを検出するという、極めて短い時間で済むため、アプリケーションによっては、通常の運転動作中であってもねじれ角計算処理動作を行うことができる。したがって、ねじれ角計算処理動作を定期的に実行することにより、弁体22の劣化状態の変化をいち早く検出でき、迅速な対応をとることが可能となる。
また、本実施の形態において、出力軸16の回動角度を出力側開度θaとして検出する出力側角度センサ17Aをさらに備え、制御回路19の開度制御部19Aが、計算処理部19Bで計算したねじれ角Δθnに基づいて、出力側角度センサ17Aで検出した出力側開度θaを補正するようにしてもよい。
これにより、補正した出力側開度θaとして弁体22付近で検出した弁側開度θvとほぼ同じ開度が得られるため、補正した出力側開度θaすなわち補正後出力側開度θ’aを、流量制御における開度現在値θとして用いることができる。具体的には、前述した図3のステップ101において、ねじれ角Δθnを計算し、出力側角度センサ17Aで検出した出力側開度θaをねじれ角Δθnで補正し、得られた補正後出力側開度θ’aを開度現在値θとして用いればよい。このため、出力側開度θaを開度現在値θとして用いる場合と比較して、弁側角度センサを必要とすることなく、極めて高い精度で流量制御を行うことが可能となる。
また、本実施の形態において、出力軸16の回動角度を出力側開度θaとして検出する出力側角度センサ17Aと、弁体22の回動角度を弁側開度θvとして検出する弁側角度センサとをさらに備え、制御回路19の計算処理部19Bが、出力側開度θaと弁側開度θvとの差分からなる開度偏差Δθavと、計算したねじれ角Δθnとの開度誤差Δθeを計算するようにしてもよい。
これにより、弁側角度センサの劣化指標として、開度誤差Δθeを容易に計算できるため、当初の設計値からの乖離幅に応じて、弁側角度センサの劣化状態を容易に把握することができる。したがって、乖離幅が大きくなって劣化が進んだ場合には、故障発生する前に適切な対応をとることができ、極めて効果的な予知保全を実現することが可能となる。
また、保証期間を超える長期使用を想定した場合でも、一定の信頼性を提供することが可能となる。また、開度誤差Δθeの経時変化を、計算処理部19Bや上位装置でモニタすることにより、弁側角度センサの劣化時期すなわち交換時期を予測でき、操作端の予知保全に極めて有用である。
[第2の実施の形態]
次に、図9を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる電動アクチュエータ10について説明する。図9は、第2の実施の形態にかかる電動アクチュエータの構成を示すブロック図である。
第1の実施の形態では、トルクセンサ17Tを、電動アクチュエータ10の内部の出力軸16のうち、動力伝達部14とリターンスプリング15との間の出力軸16に取り付けた場合を例として説明したがこれに限定されるものではない。本実施の形態では、電動アクチュエータ10の内部の出力軸16のうち、リターンスプリング15と弁体22、より具体的には継手30との間の出力軸16に取り付けた場合を例として説明する。
本実施の形態において、トルクセンサ17Tは、出力軸16のうち、リターンスプリング15と弁体22との間の出力軸16の出力軸トルクTobを検出する機能を有している。
また、計算処理部19Bは、計測タイミングにトルクセンサ17Tで検出された出力軸トルクTobそのものを、計測タイミングに弁体22で生じた弁体トルクTvとして計算する機能と、得られた弁体トルクTvに基づいてねじれ角Δθnを計算する機能を有している。
なお、本実施の形態にかかる電動アクチュエータ10のその他の構成、および流量制御動作、劣化指標処理動作、開度誤差処理動作については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
[ねじれ角計算処理動作]
次に、図10および図11を参照して、本実施の形態にかかる電動アクチュエータ10のねじれ角計算処理動作について説明する。図10は、第2の実施の形態にかかるねじれ角計算処理を示すフローチャートである。図11は、第2の実施の形態にかかるねじれ角計算処理動作を示す説明図である。
制御回路19は、弁体22のねじれ角Δθnを計算する際、図10のねじれ角計算処理を実行する。
まず、計算処理部19Bは、計測タイミングが到来するまで待機する(ステップS200:NO)。計測タイミングが到来した場合(ステップS200:YES)、計算処理部19Bは、出力側角度センサ17Aの出力側センサ出力値Saから得られた出力側開度θaを取得するとともに(ステップS201)、計測タイミングにトルクセンサ17Tで検出されたトルクセンサ出力値Voに基づいて、出力側開度θaにおける出力軸トルクTobを取得する(ステップS202)。
この際、計測タイミングにおいて、出力軸16は回動中であってもよく、あるいは、任意の一定開度で保持されている状態であってもよい。したがって、ねじれ角計算処理動作と並行して実行している動作、例えば流量制御動作により、計測タイミングに出力軸16が回動されている場合、ねじれ角計算処理動作で出力軸16を一時的に保持する必要はない。なお、計測タイミングにおいて、弁側角度センサ17Vの弁側センサ出力値Svから得られた弁側開度θvを取得し、以下のねじれ角計算処理において、出力側開度θaの代わりに弁側開度θvを用いてもよい。
続いて、計算処理部19Bは、得られた出力軸トルクTobそのものを、弁体22にかかる弁体トルクTvとして計算し(ステップS203)、得られた弁体トルクTvに基づいて、出力側開度θaにおける弁体22のねじれ角Δθnを計算し(ステップS204)、得られたねじれ角Δθnを制御回路19の内部メモリ(図示せず)または記憶回路18に保存する(ステップS205)。
また、計算処理部19Bは、得られたねじれ角Δθnに基づいて、出力側開度θaを補正した補正後出力側開度θ’aを計算し(ステップS206)、得られた補正後出力側開度θ’aを上記内部メモリまたは記憶回路18に保存し(ステップS207)、一連のねじれ角計算処理を終了する。
通常、出力軸16が回動している場合、あるいは、出力軸16を任意の一定開度で保持した場合、モータ13、動力伝達部14、リターンスプリング15、および弁体22に発生するそれぞれのトルクは、互いにつり合った状態にあり、これらトルクの総和はゼロとなる。図11に示すように、例えば、任意の出力側開度θaにおけるモータ13のモータトルクをTmとし、リターンスプリング15のスプリングトルクをTsとし、動力伝達部14における動力伝達トルクをTdとし、弁体22の弁体トルクをTvとした場合、任意の制御開度θxにおけるこれらトルクのつり合いは、前述の式(1)で表される。
一方、弁体22の弁体トルクTvおよびリターンスプリング15と弁体22との間の出力軸16の出力軸トルクTobは、トルクのつり合いで見れば、次の式(9)に示すようになる。
Figure 2020154531
したがって、式(9)で得られた弁体トルクTvを前述の式(5)に代入すれば、ねじれ角Δθnを求めることができる。
このようにして得られたねじれ角Δθnは、出力側開度θaと弁側開度θvとの偏差と見なせるため、前述の式(6)に示すように、出力側開度θaにねじれ角Δθnを加算することにより、弁側開度θvに相当する補正後出力側開度θ’aを得ることができる。
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、出力軸16のうち、リターンスプリング15と弁体22との間の出力軸16の出力軸トルクTobを検出するトルクセンサ17Tをさらに備え、計算処理部19Bで、計測タイミングにトルクセンサ17Tで検出された出力軸トルクTobに基づいて、計測タイミングに弁体22で生じた弁体トルクTvを計算し、得られた弁体トルクTvに基づいてねじれ角Δθnを計算するようにしたものである。
これにより、第1の実施の形態と同様に、弁体22や連結軸の劣化指標として、弁体22のねじれ角Δθnを容易に計算できるため、当初の設計値からの乖離幅に応じて、弁体22の劣化状態を容易に把握することができる。したがって、乖離幅が大きくなって劣化が進んだ場合には、故障発生する前に適切な対応をとることができ、極めて効果的な予知保全を実現することが可能となる。
これにより、保証期間を超える長期使用を想定した場合でも、一定の信頼性を提供することが可能となる。また、ねじれ角Δθnの経時変化を、計算処理部19Bや上位装置でモニタすることにより、弁体22や連結軸の劣化時期すなわち交換時期を予測でき、操作端の予知保全に極めて有用である。
また、電動アクチュエータ10の既存構成にトルクセンサ17Tを加えるだけでねじれ角Δθnを容易に計算でき、回路規模さらには製品コストの大幅な増大を必要とすることなく、電動アクチュエータ10の信頼性を高めることが可能となる。また、トルクセンサ17Tを電動アクチュエータ10の内部に実装でき、トルクセンサ17Tの劣化を低減できるとともに、電動アクチュエータ10と弁本体20との全体の小型化や、トルクセンサ17Tと制御回路19との間の配線を短縮できるため、耐ノイズ性の向上に貢献できる。
また、本実施の形態では、トルクセンサ17Tを電動アクチュエータ10の内部に実装する例について説明したが、トルクセンサ17Tを電動アクチュエータ10の外部に実装してもよい。これにより、既設の電動アクチュエータ10の外部に後付でトルクセンサ17Tを実装でき、電動アクチュエータ10の小型化や初期投資の抑制、および予知保全の向上に貢献できる。
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
10…電動アクチュエータ、11…設定回路、12…モータ駆動回路、13…モータ、13A…シャフト、14…動力伝達部、15…リターンスプリング、16…出力軸、17A…出力側角度センサ、17T…トルクセンサ、18…記憶回路、19…制御回路、19A…開度制御部、19B…計算処理部、20…弁本体、21…流路、22…弁体、23…内壁、24…本体上面、25…本体底面、26…弁軸、30…継手、31…ヨーク、40…歪みゲージ、41…ベース、42…ゲージ、43…リード、45…ホイートストーンブリッジ回路、R…抵抗体、S1,S2…圧力センサ、Qref…流量目標値、Q…流量現在値、ΔQ…流量偏差、Sa…出力側センサ出力値、Sb…出力側出力基準値、Sv…弁側センサ出力値、Ss…弁側出力基準値、Tx…検出温度、P1…一次側圧力、P2…二次側圧力、ΔP…差圧、Vo…トルクセンサ出力値、θx…制御開度、θa…出力側開度、θv…弁側開度、Tm…モータトルク、Td…動力伝達トルク、Ts…スプリングトルク、Tv…弁体トルク、To,Toa,Tob…出力軸トルク、Δθn…ねじれ角、L…軸長、G…横弾性係数、Ip…断面二次極モーメント、θ’a…補正後出力側開度、Δθav…開度偏差、Δθe…開度誤差。

Claims (10)

  1. 弁体を回動するための出力軸と、
    動力伝達部を介して前記出力軸を回動するモータと、
    前記モータを駆動制御することにより前記弁体の開度を制御する制御回路と、
    前記出力軸に取り付けられて、電源遮断時に自己の復帰力で前記出力軸を所定の開度位置まで戻すリターンスプリングとを備え、
    前記制御回路は、
    所定の計測タイミングにおける前記出力軸の出力軸トルクに基づいて、前記弁体のねじれ角を計算する計算処理部を有する
    ことを特徴とする電動アクチュエータ。
  2. 請求項1に記載の電動アクチュエータにおいて、
    前記出力軸のうち、前記動力伝達部と前記リターンスプリングとの間の前記出力軸の出力軸トルクを検出するトルクセンサをさらに備えることを特徴とする電動アクチュエータ。
  3. 請求項2に記載の電動アクチュエータにおいて、
    前記計算処理部は、前記計測タイミングに前記トルクセンサで検出された出力軸トルクに基づいて、前記計測タイミングに前記弁体で生じた弁体トルクを計算し、得られた前記弁体トルクに基づいて前記ねじれ角を計算することを特徴とする電動アクチュエータ。
  4. 請求項3に記載の電動アクチュエータにおいて、
    前記計算処理部は、前記出力軸トルクと前記リターンスプリングのスプリングトルクとに基づいて、前記弁体トルクを計算することを特徴とする電動アクチュエータ。
  5. 請求項1に記載の電動アクチュエータにおいて、
    前記出力軸のうち、前記リターンスプリングと前記弁体との間の前記出力軸の出力軸トルクを検出するトルクセンサをさらに備えることを特徴とする電動アクチュエータ。
  6. 請求項5に記載の電動アクチュエータにおいて、
    前記計算処理部は、前記計測タイミングに前記トルクセンサで検出された出力軸トルクを、前記計測タイミングに前記弁体で生じた弁体トルクとして計算し、得られた前記弁体トルクに基づいて前記ねじれ角を計算することを特徴とする電動アクチュエータ。
  7. 請求項4または請求項6に記載の電動アクチュエータにおいて、
    前記計算処理部は、前記電動アクチュエータと前記弁体とを連結する一連の連結軸のうち前記トルクセンサから前記弁体までの軸長をLとし、前記弁体トルクをTvとし、前記弁体の横弾性係数および断面二次極モーメントをGおよびIpとした場合、前記ねじれ角Δθnを次の式で計算することを特徴とする電動アクチュエータ。
    Figure 2020154531
  8. 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の電動アクチュエータにおいて、
    前記出力軸の回動角度を出力側開度として検出する出力側角度センサをさらに備え、
    前記制御回路は、前記計算処理部で計算した前記ねじれ角に基づいて、前記出力側角度センサで検出した前記出力側開度を補正することを特徴とする電動アクチュエータ。
  9. 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の電動アクチュエータにおいて、
    前記出力軸の回動角度を出力側開度として検出する出力側角度センサと、
    前記弁体の回動角度を弁側開度として検出する弁側角度センサとをさらに備え、
    前記制御回路は、前記出力側開度と前記弁側開度との差分からなる開度偏差と、前記計算処理部で計算した前記ねじれ角との開度誤差を計算することを特徴とする電動アクチュエータ。
  10. 弁体を回動するための出力軸と、動力伝達部を介して前記出力軸を回動するモータと、前記モータを駆動制御することにより前記弁体の開度を制御する制御回路と、前記出力軸に取り付けられて、電源遮断時に自己の復帰力で前記出力軸を所定の開度位置まで戻すリターンスプリングとを備える電動アクチュエータで用いられるねじれ角計算方法であって、
    前記制御回路が、
    所定の計測タイミングにおける前記出力軸の出力軸トルクを取得する第1のステップと、
    前記出力軸トルクに基づいて、前記弁体の劣化指標として、前記弁体のねじれ角を計算する第2のステップとを備える
    ことを特徴とするねじれ角計算方法。
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