JP2020152861A - エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性や圧縮強度に優れ、かつ成形時の内部発熱抑制と短時間硬化が可能な繊維強化複合材料を与えるエポキシ樹脂組成物、およびプリプレグ、繊維強化複合材料を提供すること。【解決手段】少なくとも次の構成要素[A]、[B]、[C]を含むエポキシ樹脂組成物。[A]:エポキシ樹脂[B]:特定の式で表される有機酸ヒドラジド化合物[C]:特定の式で表される芳香族アミン化合物【選択図】 なし

Description

本発明は、耐熱性や圧縮強度に優れ、かつ成形時の内部発熱抑制と短時間硬化が可能な繊維強化複合材料を製造するためのエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物が強化繊維に含浸されてなるプリプレグ、およびエポキシ樹脂組成物と強化繊維からなる繊維強化複合材料に関するものである。
近年、炭素繊維やアラミド繊維等の強化繊維を用いた繊維強化複合材料は、その高い比強度と比弾性率を利用して、航空機や自動車等の構造材料、テニスラケット、ゴルフシャフト、および釣り竿等のスポーツ・一般産業用途等に利用されてきた。
その繊維強化複合材料の製造方法には、強化繊維に未硬化のマトリックス樹脂が含浸されたシート状中間材料であるプリプレグを用い、それを複数枚積層した後、加熱硬化させる方法や、モールド中に配置した強化繊維に液状の樹脂を流し込んで中間体を得て、それを加熱硬化させるレジン・トランスファー・モールディング法等が用いられている。これらの製造方法のうち、プリプレグを用いる方法は、強化繊維の配向を厳密に制御でき、また積層構成の設計自由度が高いことから、高性能な繊維強化複合材料を得やすい利点がある。このプリプレグに用いられるマトリックス樹脂としては、耐熱性やプロセス性等の生産性の面から主に熱硬化性樹脂が用いられ、中でも樹脂と強化繊維との接着性や寸法安定性、および得られる繊維強化複合材料の強度や剛性といった力学特性の観点からエポキシ樹脂が好適に用いられる。
複数枚積層したプリプレグを加熱硬化して、厚物の繊維強化複合材料を成形する際、積層したプリプレグの内部まで熱が加わるのに時間がかかる一方、与えられた熱が蓄積して、プリプレグ内部の温度が設定温度よりも高温になることがある。これによりプリプレグ内部でエポキシ樹脂の硬化反応が進みすぎて、得られる繊維強化複合材料の引張強度や耐衝撃性が低下することがある。内部過熱を抑制するためには、成形時の昇温速度を低速にすることが有効である。しかしながら成形時の昇温速度を低速にすると、低速でない場合と比べてエポキシ樹脂の架橋構造が変化して得られる繊維強化複合材料の力学特性に影響を及ぼしたり、成形に長時間を要し成形時のエネルギーコストが高くなったりする等の欠点が顕在化する。そのため、積層したプリプレグ内部を短時間で加熱硬化しつつ、成形時の内部過熱抑制を可能とする技術が望まれていた。
繊維強化複合材料の成形時の内部過熱を抑制する技術の一つとして、特許文献1に記載があるように、ラジカル重合性の不飽和化合物をエポキシ樹脂に配合する手法や、特許文献2に記載があるように、炉内温度を制御可能な炉を含む成形装置を用いる手法が知られている。
また、エポキシ樹脂を短時間で硬化させる技術の一つとして、エポキシ樹脂組成物の硬化を促進する硬化促進剤を使用する手法が知られている。かかる硬化促進剤としては特許文献3または4に記載があるように、有機酸ヒドラジド等が知られている。
特開2016−17110号公報 特開2006−334831号公報 国際公開第WO2014/078095号 特開2007−297549号公報
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、肉厚な圧力容器を成形する際の力学特性の低下は抑制できるものの、得られる樹脂硬化物のガラス転移温度が低下することがあり、優れた硬化促進性と耐熱性の両立は達成されていなかった。
また、特許文献2に記載の手法では、得られる繊維強化複合材料の内部過熱を抑制可能であるものの、成形装置を導入するコストがかかるため、容易に実行しにくいという問題があった。
また、特許文献3、4に記載の硬化促進剤を用いると樹脂組成物の硬化時間の短縮効果は見られるものの、厚物の繊維強化複合材料を成形する際に内部過熱が生じ、得られる繊維強化複合材料の力学特性が低下することがあった。
そこで、本発明の目的は、耐熱性や圧縮強度に優れ、かつ成形時の内部発熱抑制と短時間硬化が可能な繊維強化複合材料を製造するためのエポキシ樹脂組成物、プリプレグ、および繊維強化複合材料を提供することである。
本発明は、上記課題を解決するために次の構成を有するものである。即ち、少なくとも次の構成要素[A]、[B]、[C]を含むエポキシ樹脂組成物、である。
[A]:エポキシ樹脂
[B]:式(1)または式(2)で表される有機酸ヒドラジド化合物
Figure 2020152861
Figure 2020152861
(ただし式中、YおよびZは単環または多環式芳香環構造、縮合多環式芳香環構造、芳香族複素環構造から選ばれる構造であり、置換基として炭素数4以下のアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基のいずれかを有してもよい。)
[C]:式(3)で表される芳香族アミン化合物
Figure 2020152861
(ただし式中、Xは、−NHC(=O)−、nは1〜5を表す。さらに、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれた少なくとも一つを表す。式中のXの向きはどちらでもよい。)。
また、本発明のプリプレグは、上記エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなる。
また、本発明の繊維強化複合材料は、上記プリプレグを硬化させてなり、または、上記エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物、および強化繊維を含んでなる。
本発明によれば、耐熱性や短時間硬化が可能なエポキシ樹脂組成物を得ることができる。このエポキシ樹脂組成物と強化繊維を組み合わせることによりプリプレグを得ることができ、また、このプリプレグを硬化させることにより、優れた圧縮強度を有し、成形時の内部発熱を抑制可能な繊維強化複合材料を得ることができる。
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物、プリプレグおよび繊維強化複合材料料について詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、少なくとも次の構成要素[A]、[B]、[C]を含む。
[A]:エポキシ樹脂
[B]:式(1)または式(2)で表される有機酸ヒドラジド化合物
Figure 2020152861
Figure 2020152861
(ただし式中、YおよびZは単環または多環式芳香環構造、縮合多環式芳香環構造、芳香族複素環構造から選ばれる構造であり、置換基として炭素数4以下のアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基のいずれかを有してもよい。)
[C]:式(3)で表される芳香族アミン化合物
Figure 2020152861
(ただし式中、Xは、−NHC(=O)−、nは1〜5を表す。さらに、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれた少なくとも一つを表す。式中のXの向きはどちらでもよい。)。
本発明で用いられる構成要素[A]は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂である。1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂の場合、後述する硬化剤との混合物を強化繊維に含浸させたものを加熱硬化して得られる繊維強化複合材料のガラス転移温度が十分高くなる。本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル等の臭素化エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−3−メチルフェノール等のアミノフェノール型エポキシ樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン等のジアミン型エポキシ樹脂を挙げることができる。中でも、1分子中にエポキシ基を3個以上有するエポキシ樹脂は、高いガラス転移温度や樹脂弾性率を有する硬化物を得られるため航空宇宙用途に好ましく用いられる。1分子中にエポキシ基を3個以上有するエポキシ樹脂の配合量は、高いガラス転移温度や樹脂弾性率を有する硬化物を得られる観点から、エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂総量100質量部に対して、好ましくは40〜90質量部、より好ましくは50〜75質量部であるとよい。
これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、また2種類以上を混合して用いることも可能である。エポキシ樹脂としては液状から固形のいずれの形態、結晶性、非晶性のいずれでもよい。ここで液状とは、室温以下の融点を有し、流動性をもつものである。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、耐熱性や力学特性に対して著しい低下を及ぼさない範囲であれば、例えば1分子中に1個のみのエポキシ基を有するモノエポキシ化合物等を適宜配合することができる。
構成要素[A]の市販品としては、以下に示すものが挙げられる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”825、“jER(登録商標)”828“jER(登録商標)”1001、“jER(登録商標)”1004、“jER(登録商標)”1007(以上、三菱ケミカル(株)製)、“EPICLON(登録商標)”850(DIC(株)製)、“エポトート(登録商標)”YD−128(新日鉄住金化学(株)製)等が挙げられる。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”806、“jER(登録商標)”807、jER(登録商標)”4005P、“jER(登録商標)”4007P(以上、三菱ケミカル(株)製)、“EPICLON(登録商標)”830(DIC(株)製)、“エポトート(登録商標)”YD−170、“エポトート(登録商標)”YDF―2001(以上、新日鉄住金化学(株)製)等が挙げられる。
レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、“デナコール(登録商標)”EX−201(ナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。
1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型のエポキシ樹脂の市販品としては、TETRAD−C(三菱ガス化学(株)製)が挙げられる。
ウレタン変性エポキシ樹脂の市販品としては、AER4152(旭化成エポキシ(株)製)が挙げられる。
ヒダントイン型のエポキシ樹脂市販品としては、AY238(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)が挙げられる。
ジアミノジフェニルメタン型のエポキシ樹脂の市販品としては、ELM434(住友化学(株)製)、“アラルダイト(登録商標)”MY720、“アラルダイト(登録商標)”MY721、“アラルダイト(登録商標)”MY9512、“アラルダイト(登録商標)”MY9663(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、および“エポトート(登録商標)”YH−434(新日鉄住金化学(株)製)等が挙げられる。
アミノフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、ELM120やELM100(以上、住友化学(株)製)、“jER(登録商標)”630(三菱ケミカル(株)製)、および“アラルダイト(登録商標)”MY0510、“アラルダイト(登録商標)”MY0600(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)等が挙げられる。
メタキシレンジアミン型のエポキシ樹脂の市販品としては、TETRAD−X(三菱ガス化学(株)製)が挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、DEN431やDEN438(以上、ダウケミカル社製)および“jER(登録商標)”152、“jER(登録商標)”154(以上、三菱ケミカル(株)製)等が挙げられる。
オルソクレゾールノボラック型のエポキシ樹脂の市販品としては、EOCN−1020(日本化薬(株)製)や“EPICLON(登録商標)”N−660(DIC(株)製)等が挙げられる。
トリスヒドロキシフェニルメタン型のエポキシ樹脂市販品としては、Tactix742(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)が挙げられる。
テトラフェニロールエタン型のエポキシ樹脂市販品としては、“jER(登録商標)”1031S(三菱ケミカル(株)製)が挙げられる。
ビフェニル型エポキシ樹脂の市販品としては、NC−3000(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、“EPICLON(登録商標)”HP7200(DIC(株)製)等が挙げられる。
イソシアヌレート型のエポキシ樹脂の市販品としては、“TEPIC(登録商標)”−P(日産化学工業(株)製)が挙げられる。
本発明においては、エポキシ樹脂と熱硬化性樹脂との共重合体等を含んでもよい。エポキシ樹脂と共重合させて用いられる上記の熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂組成物や化合物は、単独で用いてもよいし適宜配合して用いてもよい。
得られる繊維強化複合材料に高い圧縮強度を付与できることから、構成要素[A]は、下記式(5)で表される構造式を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂であることが好ましい。
Figure 2020152861
(ただし式中、Tは、−CH−、−O−、−CO−、−C(=O)O−、−S−、−SO−、−NHC(=O)−から選ばれる1つ、nは0〜5を表す。さらに、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれた少なくとも一つを表す。式(5)中のTが、−C(=O)O−、−NHC(=O)−である場合、その向きはどちらでもよい。)。
このようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂は、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3,4−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,4−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,3−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,2’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3,4−ジアミノジフェニルエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,4−ジアミノジフェニルエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,3−ジアミノジフェニルエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,2’−ジアミノジフェニルエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3,4−ジアミノジベンゾフェノン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,4−ジアミノベンゾフェノン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3,3’−ジアミノベンゾフェノン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,3−ジアミノベンゾフェノン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,2’−ジアミノベンゾフェノン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2−アミノフェニル−2−アミノベンゾエート、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4−アミノフェニル−2−アミノベンゾエート、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3−アミノフェニル−2−アミノベンゾエート、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3,4−ジアミノジフェニルチオエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,4−ジアミノジフェニルチオエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルチオエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,3−ジアミノジフェニルチオエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,2’−ジアミノジフェニルチオエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3,4−ジアミノジフェニルスルホン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,4−ジアミノジフェニルスルホン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,3−ジアミノジフェニルスルホン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,2’−ジアミノジフェニルスルホン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノベンズアニリド、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3,4−ジアミノベンズアニリド、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,4−ジアミノベンズアニリド、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3,3’−ジアミノベンズアニリド、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,3−ジアミノベンズアニリド、N,N,N',N'−テトラグリシジル−2,2’−ジアミノベンズアニリド、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4,3−ジアミノベンズアニリド、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4,2−ジアミノベンズアニリド、N,N,N',N'−テトラグリシジル−3,2−ジアミノベンズアニリド等が列挙される。
中でも、上記式(5)においてTが−SO−、または−NHC(=O)−であるグリシジルアミン型エポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。式(5)においてTが−SO−である場合、エポキシ樹脂組成物中の構成要素[C]や後述の構成要素[E]のエポキシ樹脂に対する相溶性が向上することがあり、得られる繊維強化複合材料において高い圧縮強度を発現させることができる。また、式(5)においてTが−NHC(=O)−である場合、構成要素[C]中の−NHC(=O)−が、分子中で周囲の水素結合性を有する官能基との間で水素結合を形成しやすく、また、かかる構造を有していると安定した共役構造をとることができるため、エポキシ樹脂骨格の分子鎖が剛直になることがある。その結果、繊維強化複合材料に高い圧縮強度を付与することができる。
本発明で用いられる構成要素[A]は、下記一般式(5−2)で示される芳香族アミン化合物と、エピクロロヒドリンを反応させることにより製造することができる。
Figure 2020152861
(ただし式中、Tは、−CH−、−O−、−CO−、−C(=O)O−、−S−、−SO−、−NHC(=O)−から選ばれる1つ、nは0〜5を表す。さらに、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれた少なくとも一つを表す。式(5−2)中のZが、−C(=O)O−、−NHC(=O)−である場合、その向きはどちらでもよい。)。
本発明で用いられる構成要素[B]は、エポキシ樹脂組成物の反応性を向上させるため、本発明のエポキシ樹脂の硬化促進剤として必須の成分である。エポキシ樹脂組成物の硬化過程において、構成要素[B]は硬化剤である構成要素[C]や構成要素[D]より低温でエポキシ樹脂との反応を開始し、その反応熱によってエポキシ樹脂組成物の温度が上昇し、硬化剤の反応が促進されるメカニズムである。また、構成要素[B]は、いわゆる潜在性を発現させる硬化促進剤として用いられる。ここで潜在性とは、樹脂組成物の混練工程や、プリプレグ等の中間基材製造工程中において、硬化反応性が著しく低く抑えられる特性である。
本発明で用いられる構成要素[B]は、構造式が上記式(1)または式(2)で表される有機酸ヒドラジド化合物である。上記式(1)のY、および式(2)のZは単環または多環式芳香環構造、縮合多環式芳香環構造、芳香族複素環構造から選ばれる構造であり、置換基として炭素数4以下のアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基のいずれかを有してもよい。
上記式(1)または式(2)で表される構造を有する有機酸ヒドラジド化合物は分子内に芳香環構造を有しているため、脂肪族ヒドラジドと比較して剛直な分子骨格であり、樹脂硬化物とした際の耐熱性に優れる。また、上記式(1)または式(2)で表される構造を有する有機酸ヒドラジド化合物は、脂肪族ヒドラジドと比較してエポキシ樹脂との反応性に優れ、エポキシ樹脂組成物とした際により高い硬化促進性が得られる。
ここで、上記式(1)のY、および式(2)のZで表される単環芳香環としては、ベンゼン環、多環式芳香環としては、ビフェニル環、トリフェニル環、縮合多環式芳香環としてはナフタレン環、アントラセン環、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したもの等が挙げられる。
また、上記式(1)のY、および式(2)のZで表される芳香族複素環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、ピリミドピリミジン環、ベンゾキノリン環、フェナントロリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンズイミダゾール環およびフェナンスロイミダゾール環等が挙げられる。
このような構成要素[B]としては、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、および、イソフタル酸ジヒドラジド等が挙げられる。中でも、エポキシ樹脂に対する相溶性が高く、高いガラス転移温度を有する硬化物が得られることから、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド、およびイソフタル酸ジヒドラジドからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物が好適に用いられる。これらの構成要素[B]は、必要に応じて2種類以上を混合して用いてもよい。
構成要素[B]は、熱安定性を向上させるため、エポキシ樹脂組成物中で非溶解な粒子状のものを使用することが好ましい。構成要素[B]が粒子状である場合、エポキシ樹脂組成物中において溶解せず分散しているため、加熱により構成要素[B]が溶解するまで硬化反応が進行しにくい。一定温度以上の高温で加熱すると、構成要素[B]は溶解し、構成要素[C]である芳香族アミン化合物と共に、構成要素[A]であるエポキシ樹脂と硬化反応を開始する。構成要素[B]の平均粒子径は、30μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。構成要素[B]の平均粒子径を30μm以下とすることで、樹脂硬化時にエポキシ樹脂組成物中に溶解しやすくなり、エポキシ樹脂の硬化反応を促進させることができる。また、構成要素[B]の平均粒子径を30μm以下にすることで、硬化促進剤の溶け残りによる樹脂硬化物の力学特性の低下を抑制することができる。
ここでいう平均粒子径とは、レーザー回折散乱法を用いた堀場製作所製LA−950を用いて測定したものである。分散媒として“アラルダイト(登録商標)”GY282(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)を用いて測定した体積換算の結果を粒度分布測定結果として採用し、得られた粒度分布の累積カーブにおける50%での粒子径(メジアン径)を平均粒子径とする。
本発明の構成要素[B]の融点は180℃以上であることが好ましい。構成要素[B]の融点が180℃以上であると、エポキシ樹脂組成物中で溶解しにくくなり、樹脂混練工程やプリプレグ製造工程中におけるエポキシ樹脂組成物のポットライフを向上させることができる。ポットライフが向上することで、樹脂組成物の粘度が増大することによる強化繊維への含浸不良やプリプレグのタック性の低下を抑制することができる。ここでいうポットライフとは、エポキシ樹脂組成物の室温〜80℃といった低温領域における粘度安定性をいう。評価方法としては、例えば、動的粘弾性測定により、80℃で2時間維持したときのエポキシ樹脂組成物の粘度変化を評価することで確認できる。また、ここでいう融点とは、示差走査熱量計(DSC)にて、室温から20℃/分の昇温速度で昇温時に生じる融解曲線のピーク温度から求めることができる。
本発明の構成要素[B]は、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂総量100質量部に対して、1〜25質量部含まれるのが好ましく、3〜15質量部含まれるのがより好ましい。配合量を1質量部以上にすることによりエポキシ樹脂組成物の硬化反応を促進する効果が得られ、25質量部以下にすることにより樹脂組成物の熱安定性や硬化物の耐熱性の低下を抑制できる。
本発明の構成要素[B]に加えて、エポキシ樹脂組成物の耐熱性と熱安定性を損ねない範囲で他の硬化促進剤を併用してもよい。他の硬化促進剤としては、例えば、カルボジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド等の脂肪族ヒドラジド、三級アミン、ルイス酸錯体、オニウム塩、イミダゾール化合物、尿素化合物等が挙げられる。これらは構成要素[B]と同様に樹脂組成物の硬化反応性を向上させる効果がある。他の硬化促進剤の配合量は、使用する種類により適宜調整する必要があるが、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂総量100質量部に対し、10質量部以下、好ましくは5質量部以下である。他の硬化促進剤の配合量をかかる範囲以下にすることで、得られる樹脂組成物の耐熱性や熱安定性の低下を抑制できる。
本発明で用いられる構成要素[C]は、エポキシ基と反応し得る活性水素を有する化合物であり、本発明のエポキシ樹脂の硬化剤として必須の成分である。ここで、活性水素とは有機化合物において窒素、酸素、硫黄と結合していて、反応性の高い水素原子のことをいい、例えば、アミノ基には活性水素が2つ存在する。繊維強化複合材料の成形時の内部過熱を抑制できることから、構成要素[C]において、上記式(3)中のXは−NHC(=O)−(アミド基)であり、その向きはどちらでもよい。式(3)のように芳香族アミン化合物の構造にアミド骨格を有することで、分子中で周囲の水素結合性を有する官能基との間で水素結合を形成するためエポキシ樹脂の骨格が剛直となりやすく、樹脂弾性率に優れた樹脂硬化物を得ることができる。また、アミド骨格を有する芳香族アミン化合物同士の間で、平面的に水素結合を形成して配列することで結晶性が高まることも、高弾性率化の一因となりえる。
また、上記式(3)中のR〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれる一つを表す。式(3)中のR〜Rは、他のエポキシ樹脂への相溶性の点から水素原子またはハロゲン原子であることが好ましい。R〜Rの構造の大きさが適切であると、エポキシ樹脂組成物の粘度が適切となり取扱性が向上したり、エポキシ樹脂組成物中の他の要素と構成要素[C]との相溶性が向上し、得られる繊維強化複合材料の力学特性が向上したりする。また、難燃性の点から、R〜RがClやBrといったハロゲン原子で置換されているものも好ましい形態である。
構成要素[C]としては、例えば、4−アミノ−N−[4−[(4−アミノベンゾイル)アミノ]フェニル]ベンズアミド、4−アミノ−N−[3−[(4−アミノベンゾイル)アミノ]フェニル]ベンズアミド、3−アミノ−N−[4−[(3−アミノベンゾイル)アミノ]フェニル]ベンズアミド、1−N,4−N−ビス(4−アミノフェニル)フェニレン−1,4−ジカルボキシアミド、1−N,3−N−ビス(4−アミノフェニル)フェニレン−1,3−ジカルボキシアミド、1−N,4−N−ビス(3−アミノフェニル)フェニレン−1,4−ジカルボキシアミドが列挙される。
1−N,4−N−ビス(4−アミノフェニル)フェニレン−1,4−ジカルボキシアミドの市販品としては、4−APTP(日本純良薬品(株)製)が挙げられる。4−アミノ−N−[4−[(4−アミノベンゾイル)アミノ]フェニル]ベンズアミドの市販品としては、4−ABPA(日本純良薬品(株)製)が挙げられる。
また、得られる樹脂硬化物に高い樹脂弾性率を付与し、得られる繊維強化複合材料に高い圧縮強度を付与する点から、構成要素[C]は、上記式(3)において、n=1〜5であることを特徴とするが、より好ましくはn=1〜3である。nが1以上であることで、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度5℃/分にて測定した硬化発熱量が350J/g以下となり、繊維強化複合材料の成形時の内部過熱を抑制でき、繊維強化複合材料の力学特性に影響を及ぼさない上、安全に成形することができる。nが5以下であることで、エポキシ樹脂に対する構成要素[C]の相溶性が損なわれず、樹脂硬化物の強度が向上したり、エポキシ樹脂組成物の粘度上昇を抑制したりでき、プリプレグ製造のプロセス性や取扱性を損なうことがない。
構成要素[C]の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の構成要素[A]のエポキシ基1当量に対する[C]の活性水素の当量比が0.4〜0.9であることが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8である。[C]の配合量をこの範囲とすることで、耐熱性および力学特性に優れた樹脂硬化物が得られ、好ましい態様である。
構成要素[C]は、エポキシ樹脂組成物中で非溶解な粒子状のものを使用することが好ましく、その平均粒子径が20μm以下であることが好ましい。構成要素[C]の平均粒子径が20μm以下である場合、エポキシ樹脂への溶解性が向上し、硬化反応が十分に進行するので、得られる樹脂硬化物および繊維強化複合材料の力学特性、耐熱性が向上しうる。
構成要素[C]は、分子量あたりの末端アミノ基の質量の割合が小さく、一分子あたりのアミノ基の活性水素当量が大きくなるため、エポキシ樹脂組成物の硬化反応時における硬化発熱量を抑制する効果を有することがある。その結果、繊維強化複合材料を成形する際の過熱による力学特性低下や、異常発熱による安全面の問題を抑制することができる。
本発明において、示差走査熱量測定(DSC)において昇温速度5℃/分にて測定した際の硬化発熱量は、350J/g以下であることが好ましく、より好ましくは330J/g以下であり、さらに好ましくは320J/g以下である。示差走査熱量測定(DSC)において昇温速度5℃/分にて測定した際の硬化発熱量が350J/g以下であると、繊維強化複合材料の成形時の内部過熱を抑制でき、繊維強化複合材料の力学特性に影響を及ぼさない上、安全に成形することができる。
本発明においては、エポキシ樹脂組成物中に構成要素[B]と構成要素[C]を共に含むことにより、短時間成形可能な高い硬化性、および繊維強化複合材料の力学特性を発現しつつ、成形時の内部過熱の抑制効果を得ることができる。この効果は、構成要素[C]以外の芳香族アミン化合物と構成要素[B]との組み合わせでは得られないものである。
本発明において、構成要素[B]と構成要素[C]の配合量は、構成要素[A]のエポキシ基1当量に対し、構成要素[B]の活性水素と構成要素の[C]の活性水素の当量比の合計が0.5〜1.2の範囲になる量であることが好ましく、より好ましくは0.6〜1.1の範囲になるように配合することである。ここで、ヒドラジドは末端の窒素原子に結合した水素原子のみがエポキシ基との反応に寄与するため、ヒドラジド基1つに対して活性水素は2つとして計算する。エポキシ基と活性水素の比率が所定の前記の範囲内である場合、耐熱性や樹脂弾性率に優れた樹脂硬化物が得られるため好ましい。
本発明においては、構成要素[D]として下記式(4)で表される芳香族アミン化合物を硬化剤として、構成要素[C]と併用してもよい。
Figure 2020152861
(ただし式中、Xは、−CH−、−O−、−CO−、−C(=O)O−、−S−、−SO−、−NHC(=O)−から選ばれる1つを表す。さらに、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれた少なくとも一つを表す。)
構成要素[C]と構成要素[D]を併用することで、構成要素[C]のエポキシ樹脂に対する相溶性が向上し、得られる樹脂硬化物の耐熱性が向上したり、得られる繊維強化複合材料において高い圧縮強度が発現したりするため、好ましい態様である。
このような芳香族アミン化合物の市販品としては、4−BAAB、4,4’−DABAN、3,4’−DABAN(以上、日本純良薬品(株)製)、セイカキュアS(和歌山精化工業(株)製)、MDA−220(三井化学(株)製)、“jERキュア(登録商標)”W(三菱ケミカル(株)製)、および3,3’−DAS(三井化学(株)製)、”Lonzacure(登録商標)”M−DEA、”Lonzacure(登録商標)”M−DIPA、”Lonzacure(登録商標)”M−MIPAおよび”Lonzacure(登録商標)”DETDA 80(以上、Lonza(株)製)等が挙げられる。
中でも、上記式(4)においてXが−SO−、または−NHC(=O)−である芳香族アミン化合物が特に好ましく用いられる。式(4)においてXが−SO−である場合、エポキシ樹脂組成物中の構成要素[C]や後述の構成要素[E]のエポキシ樹脂に対する相溶性が向上することがあり、得られる繊維強化複合材料において高い圧縮強度を発現させることができる。また、式(4)においてXが−NHC(=O)−である場合、構成要素[C]および構成要素[D]中の−NHC(=O)−が、分子中で周囲の水素結合性を有する官能基との間で水素結合を形成しやすく、また、かかる構造を有していると安定した共役構造をとることができるため、エポキシ樹脂骨格の分子鎖が剛直になることがある。その結果、繊維強化複合材料に高い圧縮強度を付与することができる。
本発明においては、構成要素[C]または構成要素[D]以外の硬化剤を併用してもよい。構成要素[C]または構成要素[D]以外の硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタンおよび三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体等が挙げられる。
また、これらの硬化剤とエポキシ樹脂、あるいはそれらの一部を予備反応させた物を組成物中に配合することもできる。この方法は、粘度調節や保存安定性向上に有効なことがある。
本発明においては、構成要素[A]のエポキシ基1当量に対する構成要素[C]の活性水素、および構成要素[D]の活性水素の当量比が、1:(0.4〜0.9):(0.1〜0.6)であることが好ましく、より好ましくは1:(0.5〜0.8):(0.2〜0.5)である。ここで、構成要素[B]と構成要素[C]の活性水素の当量比の合計が最大で1となるように配合することが好ましい。配合量をこの範囲とすることで、エポキシ樹脂組成物に対する構成要素[C]の相溶性が向上したり、繊維強化複合材料の成形時の内部過熱が抑制されたりといった効果が現れ、得られる繊維強化複合材料において高い耐熱性および力学特性を発現することができる。
本発明において、得られるプリプレグのタック性の制御、エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸する際の樹脂の流動性の制御、および得られる繊維強化複合材料に靱性を付与するために、構成要素[E]として、エポキシ樹脂組成物に可溶な熱可塑性樹脂を配合することができる。エポキシ樹脂組成物中に構成要素[E]を含むことで、エポキシ樹脂組成物または熱可塑性樹脂を単独で用いた場合と比べ、エポキシ樹脂組成物の脆さを熱可塑性樹脂の高い靱性でカバーしたり、熱可塑性樹脂の成形困難性をエポキシ樹脂組成物でカバーしたりでき、バランスのとれたベース樹脂を得ることができる。
ここで「エポキシ樹脂組成物に可溶」とは、構成要素[E]をエポキシ樹脂組成物に混合したものを加熱、または加熱撹拌することによって、均一相をなす温度領域が存在することを指す。ここで、「均一相をなす」とは、目視で分離のない状態が得られることを指す。ある温度領域で均一相をなすのであれば、その温度領域以外、例えば室温で分離が起こっても構わない。またエポキシ樹脂組成物に熱可塑性樹脂が可溶であることは、次の方法でも評価することができる。即ち、熱可塑性樹脂の粉末をエポキシ樹脂組成物に混合し、熱可塑性樹脂のガラス転移温度より低い温度で数時間、例えば2時間等温保持したときの粘度の変化を評価したときに、初期粘度に対して10%以上粘度の増加が見られる場合、熱可塑性樹脂がエポキシ樹脂組成物に可溶であると判断してよい。
このように構成要素[E]がエポキシ樹脂組成物に可溶な性質を有していれば、プリプレグを硬化させる過程で構成要素[E]が相分離を起こしても構わないが、硬化させて得られる繊維強化複合材料の耐溶剤性を高める観点からは、硬化過程で相分離をしないことがより好ましい。また、得られる繊維強化複合材料の力学特性、耐溶剤性等を向上させる観点から、構成要素[E]をあらかじめエポキシ樹脂組成物に溶解させて混合することがより好ましい。溶解させて混合することで、エポキシ樹脂組成物中に均一に分散しやすくなる。
このような構成要素[E]としては、一般に、主鎖に炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合およびカルボニル結合からなる群から選ばれる結合を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、この構成要素[E]は、部分的に架橋構造を有していても差し支えなく、結晶性を有していても非晶性であってもよい。特に、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリルおよびポリベンズイミダゾールからなる群から選ばれる少なくとも一つの樹脂が、上記のエポキシ樹脂組成物に含まれるいずれかのエポキシ樹脂に混合または溶解していることが好適である。
本発明において、構成要素[E]はエポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂総量100質量部に対して1〜40質量部含まれることが好ましく、より好ましくは1〜35質量部、さらに好ましくは2〜30質量部、最も好ましくは5〜25質量部である。構成要素[E]がエポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂総量100質量部に対して1〜40質量部含まれることで、プロセス性や取扱性に優れたプリプレグを得ることができる。
構成要素[E]の重量平均分子量は、4000〜40000g/molの範囲にあることが好ましく、より好ましくは10000〜40000g/mol、さらに好ましくは15000〜30000g/molである。構成要素[E]の平均分子量が4000〜40000g/molの範囲にある場合、プロセス性や取扱性に優れたプリプレグを得ることができる。
さらに良好な耐熱性を得るためには、成形体として用いたときに熱変形を起こしにくいという観点から、構成要素[E]のガラス転移温度が少なくとも150℃以上であり、170℃以上であることが好ましい。かかる構成要素[E]としては、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。
構成要素[E]の末端官能基としては、カチオン重合性化合物と反応できることから、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、チオール基、酸無水物等が好ましく用いられる。ヒドロキシ基を有する構成要素[D]としては、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂等を挙げることができる。
ポリカーボネートの市販品としては、“パンライト(登録商標)”K1300Y(帝人化成(株)製)等が挙げられる。
ポリスルホンの市販品としては、“UDEL(登録商標)”P−1700、“UDEL(登録商標)”P−3500(以上、SABICジャパン合同会社製)、“Virantage(登録商標)”VW−30500RP(ソルベイジャパン(株)製)等が挙げられる。
ポリエーテルイミドの市販品としては、“ウルテム(登録商標)”1000、“ウルテム(登録商標)”1010、“ウルテム(登録商標)”1040(以上、SABICジャパン合同会社製)等が挙げられる。
ポリエーテルスルホンの市販品としては、“スミカエクセル(登録商標)”PES3600P、“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P、“スミカエクセル(登録商標)”PES5200P、“スミカエクセル(登録商標)”PES7600P(以上、住友化学工業(株)製)、“Ultrason(登録商標)”E2020P SR、“Ultrason(登録商標)”E2021SR(以上、BASF社製)、“Virantage(登録商標)”VW−10200RP、“Virantage(登録商標)”VW−10700RP(以上、ソルベイジャパン(株)製)等が挙げられる。
また、構成要素[E]として、特表2004−506789号公報に記載されるようなポリエーテルスルホンとポリエーテルエーテルスルホンの共重合体オリゴマーを用いてもよい。オリゴマーとは10個から100個程度の有限個のモノマーが結合した比較的分子量が低い重合体を指す。
本発明においては、本発明のエポキシ樹脂組成物に、エポキシ樹脂組成物に不溶な熱可塑性樹脂粒子を配合することも好適である。このような熱可塑性樹脂粒子を配合することにより、得られる繊維強化複合材料の耐衝撃性が向上することがある。
エポキシ樹脂組成物に不溶な熱可塑性樹脂粒子としては、先に例示した各種の構成要素[E]と同様のものであって、エポキシ樹脂組成物に混合して用いられる熱可塑性樹脂を用いることができる。中でも、ポリアミドは最も好ましく、ポリアミドの中でも、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン66、ナイロン6/12共重合体や特開平01−104624号公報の実施例1記載のエポキシ化合物にてセミIPNされたポリアミド(セミIPNポリアミド)は特に良好なエポキシ樹脂との接着強度を与える。ここで、IPNとは相互侵入高分子網目構造体(Interpenetrating Polymer Network)の略称で、ポリマーブレンドの一種である。ブレンド成分ポリマーが橋架けポリマーであって、それぞれの異種橋架けポリマーが部分的あるいは全体的に相互に絡み合って多重網目構造を形成しているものをいう。セミIPNとは、橋架けポリマーと直鎖状ポリマーによる重網目構造が形成されたものである。セミIPN化した熱可塑性樹脂粒子は、例えば熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を共通溶媒に溶解させ、均一に混合した後、再沈等により得ることができる。エポキシ樹脂とセミIPN化したポリアミドからなる粒子を用いることにより、優れた耐熱性と耐衝撃性をプリプレグに付与することができる。このような熱可塑性樹脂粒子の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状の方が樹脂の流動特性を低下させないため粘弾性に優れ、また応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点で好ましい態様である。ポリアミド粒子の市販品としては、SP−500、SP−10、TR−1、TR−2、842P−48、842P−80(以上、東レ(株)製)、“トレパール(登録商標)”TN(東レ(株)製)、“オルガソール(登録商標)”1002D、2001UD、2001EXD、2002D、3202D、3501D,3502D、(以上、アルケマ(株)製)等を使用することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、カップリング剤や、熱硬化性樹脂粒子、あるいはシリカゲル、カーボンブラック、クレー、カーボンナノチューブ、カーボン粒子、金属粉体といった無機フィラー等を配合することができる。カーボンブラックとしては、たとえば、チャネルブラック、サーマルブラック、ファーネスブラックおよびケッチェンブラック等が挙げられる。
本発明において、エポキシ樹脂組成物に不溶な熱可塑性樹脂粒子の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の構成要素[A]100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量部であり、さらに好ましくは5〜15質量部である。熱可塑性樹脂粒子の配合量がこの範囲であると、ベース樹脂であるエポキシ樹脂組成物と混合しやすいためプリプレグのタック性とドレープ性が向上したり、得られる繊維強化複合材料の耐衝撃性が向上したりすることがある。
本発明のプリプレグは、エポキシ樹脂組成物に不溶な熱可塑性樹脂粒子に富む層、即ち、その断面を観察したときに、熱可塑性樹脂粒子が局在して存在している状態が明瞭に確認しうる層が、プリプレグの表面付近部分に形成されている構造であることが好ましい。
このような構造をとることにより、プリプレグを積層して繊維強化複合材料とした場合は、プリプレグ層、即ち繊維強化複合材料層の間で樹脂層が形成され易く、それにより、繊維強化複合材料層相互の接着性や密着性が高められ、得られる繊維強化複合材料に高度の耐衝撃性が発現されるようになる。
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、エポキシ樹脂や硬化剤の種類にもよるが、通常100〜200℃で1〜8時間加熱することによって得られる。この際、2段階以上の多段階の保持温度を設けて成形してもよい。硬化剤の種類によって適切な硬化条件を選択することで、硬化時にエポキシ樹脂から相分離して生じる相構造に起因するムラが存在しない樹脂硬化物を得ることができる。得られる樹脂硬化物は高い樹脂弾性率と耐熱性を有し、また、繊維強化複合材料とした場合であっても同様の効果や高い表面品位を発現することから好ましい。透過型電子顕微鏡による観察で、樹脂硬化物中で分離した相構造のサイズは3μm以下であることが好ましい。ここで、相分離の構造は、いわゆる海島構造や共連続構造であることが好ましい。エポキシ樹脂組成物中に、架橋粒子や無機粒子等のエポキシ樹脂に対して不溶な成分がある場合は、不溶な成分以外の成分で上記が達成されることが好ましい。
本発明で用いられる強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維および炭化ケイ素繊維等が挙げられる。これらの強化繊維を2種以上混合して用いても構わないが、より軽量で耐久性の高い成形品を得るために、炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが好ましい。特に、材料の軽量化や高強度化の要求が高い用途においては、その優れた比弾性率と比強度のため、炭素繊維が好適に用いられる。
本発明で好ましく用いられる炭素繊維は、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維を用いることが可能であるが、耐衝撃性や軽量化の観点から少なくとも230GPa以上の引張弾性率を有する炭素繊維であることが好ましい。また強度の観点からは、高い剛性および機械強度を有する複合材料が得られることから、引張強度が好ましくは4.4〜7.0GPaの炭素繊維が用いられる。また、引張伸度も重要な要素であり、1.7〜2.3%の高強度高伸度炭素繊維であることが好ましい。従って、引張弾性率が少なくとも230GPa以上であり、引張強度が少なくとも4.4GPa以上であり、引張伸度が少なくとも1.7%以上であるという特性を兼ね備えた炭素繊維が最も適している。
炭素繊維の市販品としては、引張弾性率が230GPaの“トレカ(登録商標)”T700G−24K、“トレカ(登録商標)”T300−3K、および“トレカ(登録商標)”T700S−12K(以上東レ(株)製)や294GPaの“トレカ(登録商標)”T800G−24K、“トレカ(登録商標)”T800S−24K、324GPaの“トレカ(登録商標)”T1100G−24K等が挙げられる。
炭素繊維の形態や配列については、一方向に引き揃えた長繊維や織物等から適宜選択できるが、軽量で耐久性がより高い水準にある炭素繊維強化複合材料を得るためには、炭素繊維が、一方向に引き揃えた長繊維(繊維束)や織物等連続繊維の形態であることが好ましい。ここでいう長繊維とは、繊維ストランドの平均長さが10mm以上のものをいう。
本発明で用いられる炭素繊維束は、撚糸時や樹脂組成物の含浸処理工程において炭素繊維束の損傷を起こさず、かつ炭素繊維束に樹脂組成物を充分に含浸させる観点から、単繊維繊度は0.2〜2.0dtexであることが好ましく、より好ましくは0.4〜1.8dtexである。
また、本発明で用いられる炭素繊維束は、繊維配列が蛇行せず、プリプレグ作製時あるいは成形時に樹脂含浸がしやすいという観点から、一つの繊維束中のフィラメント数が2500〜50000本の範囲であることが好ましい。フィラメント数は、より好ましくは2800〜40000本の範囲である。
本発明のプリプレグは、上述したエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂とし、強化繊維に含浸させたものである。
本発明のプリプレグは、様々な公知の方法で製造することができる。例えば、マトリックス樹脂をアセトン、メチルエチルケトンおよびメタノール等から選ばれる有機溶媒に溶解させて低粘度化し、強化繊維に含浸させるウェット法、あるいは、有機溶媒を使用せずに加熱によりマトリックス樹脂を低粘度化し、強化繊維に含浸させるホットメルト法等の方法により、プリプレグを製造することができる。
ウェット法では、マトリックス樹脂を含む液体に強化繊維を浸漬した後に引き上げ、オーブン等を用いて有機溶媒を蒸発させてプリプレグを得ることができる。
またホットメルト法では、加熱により低粘度化したマトリックス樹脂を、強化繊維に直接含浸させる方法、あるいは一旦マトリックス樹脂を離型紙等の上にコーティングした樹脂フィルム付きの離型紙シート(以降、「樹脂フィルム」と表すこともある)をまず作製し、次いで強化繊維の両側あるいは片側から樹脂フィルムを強化繊維側に重ね、加熱加圧することにより強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させる方法等を用いることができる。
本発明のプリプレグの製造方法としては、プリプレグ中に残留する有機溶媒が実質的に皆無となるため、有機溶媒を用いずにマトリックス樹脂を強化繊維に含浸させるホットメルト法が好適に用いられる。
本発明のプリプレグは、単位面積あたりの強化繊維量が70〜2000g/m2であることが好ましい。かかる強化繊維量が70〜2000g/m2の範囲内であると、プリプレグのドレープ性に優れたり、繊維強化複合材料を成形する際、所定の厚みを得るためのプリプレグ積層枚数が適度となるため作業性に優れたりする。
本発明のプリプレグ中における強化繊維の質量含有率は、好ましくは30〜90質量%であり、より好ましくは35〜85質量%であり、さらに好ましくは40〜80質量%である。プリプレグ中における強化繊維の質量含有率が30質量%以上であると、比強度と比弾性率に優れた繊維強化複合材料を得ることができたり、繊維強化複合材料を成形する際の硬化発熱量を抑制することができたりする。また、プリプレグ中における強化繊維の質量含有率が90質量%以下であると、強化繊維に十分マトリックス樹脂が含浸し、ボイドの無い繊維強化複合材料を得ることができる。
本発明の繊維強化複合材料は、上述した本発明のプリプレグを所定の形態で積層し、加熱加圧してマトリックス樹脂を硬化させる方法を一例として、製造することができる。ここで熱および圧力を付与する方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法等が挙げられる。
さらに、プリプレグを用いずに、本発明のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に直接含浸させた後、加熱硬化する方法、例えばハンド・レイアップ法、フィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法、レジン・インジェクション・モールディング法、レジン・トランスファー・モールディング法等の成形法によっても繊維強化複合材料を作製することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。また、各種特性(物性)の測定は、特に断りのない限り温度23℃、相対湿度50%の環境下で行った。
<実施例および比較例で用いた材料>
(1)構成要素[A]:エポキシ樹脂
・“アラルダイト(登録商標)”MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)エポキシ当量:113(g/eq.)
・TG3DAS(テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン(株)製)エポキシ当量:136(g/eq.)
・下記方法で合成したN,N,N',N'−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノベンズアニリド
室温下、撹拌機、温度計および冷却機を備えた2Lの4つ口フラスコに4,4’−ジアミノベンズアニリド136.4g(0.60mol)、エピクロロヒドリン666.1g(7.20mol)および水27.2g(1.5mol)を仕込み窒素パージしながら70℃で2時間反応させた。その後80℃へ昇温し、さらに24時間反応させた。反応終了後、30℃に冷却し、硫酸水素テトラブチルアンモニウム6.1g(0.02mol)を添加し、48%水酸化ナトリウム水溶液300.0g(3.60mol)を30±5℃の温度を保持するように調整しながら、30分かけて滴下し、同温度で2時間反応させた。反応液に水341g(18.9mol)およびテトラヒドロフラン341g(4.73mol)を加え、5分撹拌し、分液(油層は上層)した。得られた油層に水341g(18.9mol)を加え、再度、洗浄および分液(油層は下層)した。油層を濾過した後、減圧条件下で濃縮し、テトラヒドロフランおよびエピクロロヒドリンを除去した。得られた有機物にトルエン150g(1.63mol)を加え、再度、減圧条件化で濃縮し、トルエンを除去することで目的とするN,N,N',N'−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノベンズアニリドを含む褐色粘性固体を290g得た。エポキシ当量:140(g/eq.)
・“アラルダイト(登録商標)”MY0600(トリグリシジル−m−アミノフェノール、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)エポキシ当量:106(g/eq.)
・“EPICLON(登録商標)”830(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、DIC(株)製)エポキシ当量:172(g/eq.)。
(2)構成要素[B]:式(1)または式(2)で表される有機酸ヒドラジド化合物
・IDH−S(イソフタル酸ジヒドラジド、大塚化学(株)製)、活性水素当量:49(g/eq.)
・HNH(3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド、大塚化学(株)製)、活性水素当量:101(g/eq.)
・NDH(2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド、(株)日本ファインケム製)、活性水素当量:61(g/eq.)。
(3)構成要素[B]以外の有機酸ヒドラジド化合物
・ADH(アジピン酸ジヒドラジド、大塚化学(株)製)、活性水素当量:92(g/eq.)
・DDH−S(ドデカンジオヒドラジド、大塚化学(株)製)、活性水素当量:65(g/eq.)。
(4)構成要素[C]:式(3)で表される芳香族アミン化合物
・4−APTP(1−N,4−N−ビス(4−アミノフェニル)フェニレン−1,4−ジカルボキシアミド、日本純良薬品(株)製)アミノ基活性水素当量:87(g/eq.)
・4−ABPA(4−アミノ−N−[4−[(4−アミノベンゾイル)アミノ]フェニル]ベンズアミド、日本純良薬品(株)製)アミノ基活性水素当量:87(g/eq.)。
(5)構成要素[D]:式(4)で表される芳香族アミン化合物
・“セイカキュア(登録商標)”S(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、和歌山精化工業(株)製)アミノ基活性水素当量:62(g/eq.)
・4,4’−DABAN(4,4’−ジアミノベンズアニリド、日本純良薬品(株)製)アミノ基活性水素当量:57(g/eq.)
・4−BAAB(4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、日本純良薬品(株)製)、活性水素当量:57(g/eq.)。
(6)構成要素[E]:エポキシ樹脂組成物に可溶な熱可塑性樹脂
・“スミカエクセル(登録商標)”PES 5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学(株)社製、重量平均分子量:42000)
・“ウルテム(登録商標)”1000(ポリエーテルイミド、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製、重量平均分子量:54000)。
(7)炭素繊維
・“トレカ(登録商標)” T800S−24K(繊維数24000本、引張強度:5.9GPa、引張弾性率:294GPa、密度1.8g/cm3、東レ(株)製)。
<樹脂調製および測定方法>
(1)エポキシ樹脂組成物の調製
混錬装置中に、表1〜4に記載の組成と割合の構成要素[A]と構成要素[E]を加え、混練しつつ160℃まで昇温し、160℃で1時間混練することで、構成要素[D]を溶解させた。次いで、混練しつつ60〜70℃まで降温した後、構成要素[B]、構成要素[C]、構成要素[D]を所定量加え、さらに混練しエポキシ樹脂組成物を得た。
(2)当量比の計算
エポキシ樹脂組成物中の構成要素[A]のエポキシ基1当量に対する、構成要素[C]または構成要素[D]の活性水素の当量比は以下の計算式より求めた。
構成要素[C]または構成要素[D]の活性水素の当量比=(構成要素[C]または構成要素[D]の質量部/構成要素[C]または構成要素[D]の活性水素当量)/(構成要素[A]の質量部/構成要素[A]のエポキシ当量)。
(3)構成要素[B]または[C]の平均粒子径の測定
走査型電子顕微鏡にて粒子を1000倍に拡大して写真撮影し、無作為に粒子を選び、その粒子の外接する円の直径を粒子径とし、その粒子径の平均値(n=50)を構成要素[B]または構成要素[C]の平均粒子径とした。
(4)エポキシ樹脂組成物の硬化発熱量測定
硬化発熱量は示差走査熱量計(DSC(型番:DSC−Q2000、ティー・エイ・インスツルメント社製))により評価を行った。上記(1)の方法で調製したエポキシ樹脂組成物を、容量50μlの密閉型アルミサンプルパンに2〜5mg詰め、昇温速度5℃/分で40℃から350℃まで昇温し、100℃から300℃付近におけるDSC曲線の積分値(即ち、硬化発熱量)を求めた。混合物等で発熱ピークが複数観測される場合は、それらの合計をその組成物の硬化発熱量として採用した。
(5)エポキシ樹脂組成物のゲルタイムの測定方法
ゲルタイム測定は、Rubber Process Analyzer RPA2000(ALPHA TECHNOLOGIES社製)より得られる回転トルクの経時変化から評価した。上記(1)の方法で調製したエポキシ樹脂組成物を、昇温速度2℃/分で40℃から180℃まで昇温し、180℃で2時間加熱した。ゲルタイムは、40℃で加熱を開始した時点からトルクが1dNmを超えるまでの時間とした。
(6)構成要素[B]または[C]のエポキシ樹脂に対する相溶性
上記(1)の方法で調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ2mmの樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物を10mm×60mmのサイズにカットした試験片に剃刀の刃をあてハンマーで衝撃を加えることで破壊し、その断面で透過型電子顕微鏡(TEM、商品名:M−800形、日立製作所(株)製。以下同様。)を用いて観察した。表中、海島構造を有し島相の径が0.1〜1μmの構造周期を有するものを「○」、1μmを超え3μm以下の構造周期を有するものを「△」、3μmを超える構造周期を有するものを「×」とした。
なお、島相の径とは、海島構造における島相の大きさを示すものであり、所定の領域における数平均値である。島相が楕円形のときは、長径をとり、不定形の場合は外接する円の直径を用いた。また、島相が二層以上の円または楕円になっている場合には、最外層の円の直径または楕円の長径を用いた。なお、海島構造の場合、所定の領域内に存在する全ての島相の長径を測定し、これらの数平均値を島相の径とした。
(7)樹脂硬化物の曲げ弾性率測定
上記(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ2mmの樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物を10mm×60mmのサイズにカットし、スパン間32mmの3点曲げを測定し、JIS K7171−1994に従って、曲げ弾性率を求めた。
(8)樹脂硬化物の吸水後のガラス転移温度の測定方法
上記(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ2mmの樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物を、12.7mm×55mmのサイズにカットし、1気圧下における沸騰水中に48時間浸漬した後、SACMA SRM18R−94に従い、DMA法によりガラス転移温度を求めた。貯蔵弾性率G’曲線において、ガラス状態での接線と転移状態での接線との交点温度値をガラス転移温度とした。このとき、昇温速度5℃/分、周波数1Hzで測定した。
(9)プリプレグの作製
エポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に配列させた東レ(株)製、炭素繊維“トレカ(登録商標)”T800S−24Kに、樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、加熱加圧によりエポキシ樹脂を炭素繊維に含浸させ、炭素繊維の目付が190g/m、マトリックス樹脂の質量分率が34.5%の一方向プリプレグを得た。その際、エポキシ樹脂組成物に不溶な熱可塑性樹脂粒子を配合する場合は以下の2段含浸法を適用し、熱可塑性樹脂粒子が表層に高度に局在化したプリプレグを作製した。
まず、熱可塑性樹脂粒子を含まない1次プリプレグを作製した。表1〜4に記載の原料を用いて上記(1)の手順でエポキシ樹脂組成物を調製し、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して、通常の60質量%の目付となる30g/mの1次プリプレグ用樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に配列させた東レ(株)製、炭素繊維“トレカ(登録商標)”T800S−24Kに、この1次プリプレグ用樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね合せてヒートロールを用い、加熱加圧しながら、樹脂を炭素繊維に含浸させ、1次プリプレグを得た。
さらに、2段含浸用樹脂フィルムを作製するために、表1〜4に記載の原料に加え、エポキシ樹脂組成物に不溶な熱可塑性樹脂粒子を配合したエポキシ樹脂組成物を上記(1)の手順で調製した。この2段含浸用エポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して、通常の40質量%の目付となる20g/mの2段含浸用樹脂フィルムを作製した。これを1次プリプレグの両面から重ね合せてヒートロールを用い、加熱加圧することで、熱可塑性樹脂粒子が表層に高度に局在化したプリプレグを得た。
(10)繊維強化複合材料の0°の定義
JIS K7017(1999)に記載されているとおり、一方向繊維強化複合材料の繊維方向を軸方向とし、軸方向を0°軸と定義したときの軸直交方向を90°と定義する。
(11)繊維強化複合材料(270枚積層)成形時の最大内部温度測定
一方向プリプレグを所定の大きさにカットしたものを、一方向に計270枚積層した。積層する途中、135枚目と136枚目のプリプレグの間に、プリプレグの中央部分に位置するよう熱電対を貼り付けた。このプリプレグ積層体について真空バッグを行い、オートクレーブを用いて、昇温速度2℃/分で30℃から180℃まで昇温し、圧力6kg/cm、180℃で2時間硬化させる間の、プリプレグ積層体中心の温度をモニタリングし、最大内部温度を記録した。
(12)繊維強化複合材料の0°圧縮強度測定
一方向プリプレグを所定の大きさにカットし、一方向に6枚積層したものについて真空バッグを行い、オートクレーブを用いて、昇温速度2℃/分で30℃から180℃まで昇温し、圧力6kg/cm、180℃で2時間硬化させ、一方向繊維強化複合材料を得た。この一方向強化材をSACMA−SRM 1R−94に準拠してタブを接着した後、0°方向を試験片の長さ方向として、長さ80mm、幅15.0mmの矩形試験片を切り出した。得られた0°圧縮試験片を用いて、SACMA−SRM 1R−94に準拠し、材料万能試験機(インストロン・ジャパン(株)製、“インストロン(登録商標)”5565型P8564)を用いて、試験速度1.27mm/分で圧縮試験を実施した。
(実施例1)
混練装置で、50質量部のテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンと50質量部のビスフェノールF型エポキシ樹脂、および15質量部のポリエーテルスルホンを160℃で2時間混練し、ポリエーテルスルホンが溶解したことを目視で確認した後、70℃に冷まして、5質量部のイソフタル酸ジヒドラジド(平均粒子径13μm)と50質量部の1−N,4−N−ビス(4−アミノフェニル)フェニレン−1,4−ジカルボキシアミド(平均粒子径3μm)を配合して混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。表1に樹脂組成と割合を示す。なお、表1中の数字は各成分の質量部を表す。
得られたエポキシ樹脂組成物を用い、上記の(4)エポキシ樹脂組成物の硬化発熱量、(5)エポキシ樹脂組成物のゲルタイム、(6)エポキシ樹脂に対する相溶性を測定した。
また、(7)樹脂硬化物の曲げ弾性率測定、(8)樹脂硬化物の吸水後のガラス転移温度の測定方法に記載の方法で、曲げ弾性率および吸水後のガラス転移温度を測定した。
また、得られたエポキシ樹脂組成物から、上記(9)プリプレグの作製に記載の方法でプリプレグを得た。得られたプリプレグを用い上記の(11)繊維強化複合材料(270枚積層)成形時の最大内部温度測定、(12)繊維強化複合材料の0°圧縮強度測定に記載の方法で、繊維強化複合材料(270枚積層)成形時の最大内部温度測定、0°圧縮強度を測定した。結果を表1に示す。実施例1は、短時間硬化可能かつ厚物の繊維強化複合材料の最大内部温度を抑制する効果を示すことが分かった。
(実施例2〜29)
エポキシ樹脂と硬化剤の種類および配合量を、表1〜3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で樹脂硬化物、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料を作製し、硬化発熱量、ゲルタイム、エポキシ樹脂に対する相溶性、曲げ弾性率、吸水後のガラス転移温度、繊維強化複合材料(270枚積層)成形時の最大内部温度、0°圧縮強度を測定した。結果を表1〜3に示す。
実施例2〜4では、構成要素[A]の配合量を変えた以外は、実施例1と同様にエポキシ樹脂組成物を作製した。実施例2〜4において、構成要素[A]の配合量を変えても、短時間硬化可能かつ厚物の繊維強化複合材料の最大内部温度を抑制する効果を示した。
実施例5では、構成要素[D]を加えた以外は、実施例1と同様にエポキシ樹脂組成物を作製した。実施例5において、構成要素[D]が加わっても、短時間硬化可能かつ厚物の繊維強化複合材料の最大内部温度を抑制する効果を示し、かつ、実施例1と比較して優れた相溶性を示した。
実施例6〜8では、配合する構成要素[A]を変更した以外は、実施例5と同様にエポキシ樹脂組成物を作製した。実施例6〜8において、配合する構成要素[A]を変更しても、短時間硬化可能かつ厚物の繊維強化複合材料の最大内部温度を抑制する効果を示したが、実施例6、7のように、特定の構成要素[A]を用いたときに優れた0°圧縮強度を示した。
実施例9、10では、配合する構成要素[B]を変更した以外は、実施例5と同様にエポキシ樹脂組成物を作製した。実施例9、10において、配合する構成要素[B]を変更しても、短時間硬化可能かつ厚物の繊維強化複合材料の最大内部温度を抑制する効果を示した。
実施例11、12では、配合する構成要素[B]の平均粒子径を変更した以外は、実施例5と同様にエポキシ樹脂組成物を作製した。実施例11、12において、配合する構成要素[B]の平均粒子径を変更しても、短時間硬化可能かつ厚物の繊維強化複合材料の最大内部温度を抑制する効果を示した。
実施例13では、配合する構成要素[C]を変更した以外は、実施例5と同様にエポキシ樹脂組成物を作製した。実施例13において、配合する構成要素[C]を変更しても、短時間硬化可能かつ厚物の繊維強化複合材料の最大内部温度を抑制する効果を示した。
実施例14では、配合する構成要素[C]の平均粒子径を変更した以外は、実施例5と同様にエポキシ樹脂組成物を作製した。実施例14において、配合する構成要素[C]の平均粒子径を変更しても、短時間硬化可能かつ厚物の繊維強化複合材料の最大内部温度を抑制する効果を示した。
実施例15、16では、配合する構成要素[D]を変更した以外は、実施例5と同様にエポキシ樹脂組成物を作製した。実施例15、16において、配合する構成要素[D]を変更しても、短時間硬化可能かつ厚物の繊維強化複合材料の最大内部温度を抑制する効果を示したが、特定の構成要素[D]を用いたときに優れた0°圧縮強度を示した。
実施例17では、配合する構成要素[E]を変更した以外は、実施例5と同様にエポキシ樹脂組成物を作製した。実施例17において、配合する構成要素[E]を変更しても、短時間硬化可能かつ厚物の繊維強化複合材料の最大内部温度を抑制する効果を示した。
実施例18〜21では、構成要素[B]の配合量を変更した以外は、実施例5と同様にエポキシ樹脂組成物を作製した。実施例18〜21において、構成要素[B]の配合量を変更しても、短時間硬化可能かつ厚物の繊維強化複合材料の最大内部温度を抑制する効果を示した。
実施例22〜25では、構成要素[C]および構成要素[D]の配合量を変更した以外は、実施例5と同様にエポキシ樹脂組成物を作製した。実施例22〜25において、構成要素[C]および構成要素[D]の配合量を変更しても、短時間硬化可能かつ厚物の繊維強化複合材料の最大内部温度を抑制する効果を示したが、構成要素[A]のエポキシ基1当量に対する構成要素[C]の活性水素、および構成要素[D]の活性水素の当量比が、1:(0.4〜0.9):(0.1〜0.6)であることで、よりエポキシ樹脂に対する相溶性が向上し、かつ優れた0°圧縮強度を示すことが分かった。
実施例26〜29では、構成要素[E]の配合量を変更した以外は、実施例5と同様にエポキシ樹脂組成物を作製した。実施例26〜29において、構成要素[E]の配合量を変更しても、短時間硬化可能かつ厚物の繊維強化複合材料の最大内部温度を抑制する効果を示した。
(比較例1〜8)
エポキシ樹脂と硬化剤の種類および配合量を、表4に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で樹脂硬化物、プリプレグおよび繊維強化複合材料を作製し、硬化発熱量、ゲルタイム、エポキシ樹脂に対する相溶性、曲げ弾性率、吸水後のガラス転移温度、繊維強化複合材料(270枚積層)成形時の最大内部温度、0°圧縮強度を測定した。結果を表4に示す。
比較例1〜4では、構成要素[B]を含まない以外は、それぞれ実施例1、実施例5、実施例22、実施例23と同様にエポキシ組成物を作製した。比較例1〜4は、構成要素[B]が配合されていないため、得られるエポキシ樹脂組成物のゲルタイムが長く、短時間硬化性に劣ることが分かった。
比較例5、6では、構成要素[B]として式(1)または式(2)で表される有機酸ヒドラジド化合物でない脂肪族ヒドラジド化合物を使用したため、実施例5と比較して、樹脂硬化物の吸水後のガラス転移温度が低下した。
比較例7、8では、構成要素[C]を含まない以外は、それぞれ実施例5、実施例15と同様にエポキシ組成物を作製した。比較例7、8は、構成要素[C]が配合されていないため、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化発熱量が高く、厚物の繊維強化複合材料を成形する際に内部過熱が生じることが分かった。
Figure 2020152861
Figure 2020152861
Figure 2020152861
Figure 2020152861
本発明のエポキシ樹脂組成物により得られる繊維強化複合材料は、耐熱性や圧縮強度に優れ、かつ成形時の内部発熱抑制と短時間硬化が可能であるため、特に構造材料に好適に用いられる。例えば、航空宇宙用途では主翼、尾翼およびフロアビーム等の航空機一次構造材用途、フラップ、エルロン、カウル、フェアリングおよび内装材等の二次構造材用途、ロケットモーターケースおよび人工衛星構造材用途等に好適に用いられる。また一般産業用途では、自動車、船舶および鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブル、補強筋、および補修補強材料等の土木・建築材料用途等に好適に用いられる。さらにスポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニス、バトミントンおよびスカッシュ等のラケット用途、ホッケー等のスティック用途、およびスキーポール用途等に好適に用いられる。

Claims (17)

  1. 少なくとも次の構成要素[A]、[B]、[C]を含むエポキシ樹脂組成物。
    [A]:エポキシ樹脂
    [B]:式(1)または式(2)で表される有機酸ヒドラジド化合物
    Figure 2020152861
    Figure 2020152861
    (ただし式中、YおよびZは単環または多環式芳香環構造、縮合多環式芳香環構造、芳香族複素環構造から選ばれる構造であり、置換基として炭素数4以下のアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基のいずれかを有してもよい。)
    [C]:式(3)で表される芳香族アミン化合物
    Figure 2020152861
    (ただし式中、Xは、−NHC(=O)−、nは1〜5を表す。さらに、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれた少なくとも一つを表す。式中のXの向きはどちらでもよい。)
  2. さらに構成要素[D]を含む請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
    [D]:式(4)で表される芳香族アミン化合物
    Figure 2020152861
    (ただし式中、Xは、−CH−、−O−、−CO−、−C(=O)O−、−S−、−SO−、−NHC(=O)−から選ばれる1つを表す。さらに、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれた少なくとも一つを表す。)
  3. 構成要素[A]のエポキシ基1当量に対し、構成要素[C]と構成要素[D]の活性水素の当量比が[A]:[C]:[D]=1:(0.4〜0.9):(0.1〜0.6)である請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 構成要素[D]において、式(4)のXが−SO−、または−NHC(=O)−である請求項2または3に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 構成要素[B]が3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジドおよびイソフタル酸ジヒドラジドからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物である請求項1から4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂総量100質量部に対して、構成要素[B]を1〜25質量部含む請求項1から5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 構成要素[B]が平均粒子径30μm以下の粒子状の形態からなる請求項1から6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  8. 構成要素[C]が平均粒子径20μm以下の粒子状の形態からなる請求項1から7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  9. 示差走査熱量測定(DSC)により、昇温速度5℃/分にて測定した硬化発熱量が350J/g以下である請求項1から8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  10. 構成要素[A]が式(5)で表されるエポキシ樹脂である請求項1から9のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
    Figure 2020152861
    (ただし式中、Tは、−CH−、−O−、−CO−、−C(=O)O−、−S−、−SO−、−NHC(=O)−から選ばれる1つ、nは0〜5を表す。さらに、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれた少なくとも一つを表す。式中のTが、−C(=O)O−、−NHC(=O)−である場合、その向きはどちらでもよい。)
  11. 構成要素[A]において、式(5)のTが−SO−、または−NHC(=O)−である請求項10に記載のエポキシ樹脂組成物。
  12. さらに、構成要素[E]を含む請求項1から11のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
    [E]:エポキシ樹脂組成物に可溶な熱可塑性樹脂
  13. エポキシ樹脂総量100質量部に対して、構成要素[E]を1〜40質量部含む請求項12に記載のエポキシ樹脂組成物。
  14. さらに、エポキシ樹脂組成物に不溶な熱可塑性樹脂粒子を含む請求項1から13のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  15. 請求項1から14のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなるプリプレグ。
  16. 請求項15に記載のプリプレグを硬化させてなる繊維強化複合材料。
  17. 請求項1から14のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物、および強化繊維を含んでなる繊維強化複合材料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113651947A (zh) * 2021-07-28 2021-11-16 华南理工大学 一种本征导热环氧树脂固化物及其制备方法
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WO2022208165A1 (en) * 2021-03-31 2022-10-06 Toray Industries, Inc. Epoxy resin composition, prepreg, and fiber-reinforced composite material

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