JP2020152609A - グラファイト状窒化炭素の製造方法ならびに新規なグラファイト状窒化炭素 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】メラミンと尿素とを混合した混合物を原料とし、反応容器の容積に対する該原料の占有体積率が0.5〜50.0体積%となるように該原料を該反応容器に入れ、尿素ならびにメラミンの分解ガスと未分解の尿素ならびにメラミンとが接触した状態で加熱してグラファイト状窒化炭素を得る、グラファイト状窒化炭素の製造方法を提供する。また、比表面積が8.5〜100m2/gであり、結晶子サイズが2.5〜5.5nmである、グラファイト状窒化炭素を提供する。
【選択図】図3
Description
本発明のグラファイト状窒化炭素(g−C3N4、以下、単に窒化炭素という場合がある)の製造方法では、メラミンと尿素とを混合した混合物を原料とし、反応容器の容積に対する該原料の占有体積率が0.5〜50.0体積%となるように該原料を該反応容器に入れ、尿素ならびにメラミンの分解ガスと未分解の尿素ならびにメラミンとが接触した状態で加熱してグラファイト状窒化炭素を得る。
(1)上記反応容器に蓋をした状態で加熱しても良く、
(2)上記反応容器に冷却器をつけてガスを逃げない状態にして加熱しても良く、
その他、尿素ならびにメラミンの分解ガスが反応系内に残留した焼成雰囲気中で加熱できればよい。
本発明のグラファイト状窒化炭素は、比表面積が8.5〜100m2/gであり、結晶子サイズ(結晶子径)が2.5〜5.5nmである。本発明のグラファイト状窒化炭素は、上記本発明のグラファイト状窒化炭素の製造方法により製造できる。上記比表面積は、好ましくは8.5〜80m2/gであり、より好ましくは、15〜80m2/gであり、さらに好ましくは、25〜80m2/gであり、特に好ましくは31〜75m2/gである。また、上記結晶子サイズは、好ましくは3.0〜5.5nmであり、さらに好ましくは3.5〜5.0nmである。また、本発明のグラファイト状窒化炭素は、好ましくは硬度が高い。硬度は、引っ掻き硬度試験において、好ましくはF以上である。
上記比表面積、結晶子サイズならびに引っ掻き硬度は、実施例に記載の方法により測定できる。
グラファイト状窒化炭素の合成に際し、メラミン単独原料を使用するメラミン単独系では、グラファイト状窒化炭素の合成の主体となるのはメラミンであり、この場合には、結晶子サイズが大きいグラファイト状窒化炭素の層状シートが凝集し、結晶性は高いものの低表面積となると考えられる。一方、尿素単独原料を使用する尿素単独系では、グラファイト状窒化炭素の合成の主体となるのは尿素であり、この場合には、尿素が次々に分解してしまうため、結晶子サイズは小さく、表面積は高いが結晶性の低いグラファイト状窒化炭素が得られると考えられる。
これらに対し、メラミンと尿素とを混合した混合物を原料とし、反応容器の容積に対する該原料の占有体積率が0.5〜50.0体積%となるように該原料を該反応容器に入れ、尿素ならびにメラミンの分解ガスと未分解の尿素ならびにメラミンとが接触した状態で加熱して合成する、本発明のグラファイト状窒化炭素の製造方法では、グラファイト状窒化炭素の合成の主体となるのはメラミンであり、このため、得られるグラファイト状窒化炭素は層状シートとなって結晶子サイズが大きく、結晶性は高くなるが、尿素が分解(あるいは昇華)していくことにより、メラミンから合成される上記グラファイト状窒化炭素の層状シートの凝集が阻害され、グラファイト状窒化炭素の比表面積が高くなるというメカニズムが考えられる。
Air気流中下とN2気流中下の条件においてメラミンのTg測定を行った。結果を図1に示す。図1に示すように、メラミンは550℃になる前にすべて焼失(分解)してしまいg−C3N4は取得できなかった。
尿素(東京化成社製)、メラミン(東京化成社製)、該尿素と該メラミンの等モル混合物の3種の各密度を以下のようにして測定した。
各試薬をメスシリンダーに5ml、10ml、20mlの体積分入れ、それぞれ重量を測定した。この結果を表1に示す。
尿素とメラミンの等モル混合物について、下表2で示す量をそれぞれ量りとったのち、メノウ乳鉢で混合した。混合したものをアルミナるつぼに入れて蓋をし、550℃まで2℃/min昇温、4h保持で焼成した。焼成炉でそのまま放冷したものを取り出し、焼成体の重量を測定した。得られた焼成体のXRD(X線回折)を測定した結果、g−C3N4が合成されていることを確認した。
上記アルミナるつぼは、アズワン社製の100mlのるつぼを用いた。そのうち3つにイオン交換水を入れ容器が一杯になったところの質量の平均値で、るつぼの体積を算出した。この結果、るつぼの体積は136.20mlであった。以下の実施例、比較例においても同じるつぼを使用した。
メラミンと尿素をそれぞれ単独で、下表3に示す種々の仕込み量でアルミナるつぼに仕込み、実施例1と同様に焼成体を調製した。得られた焼成体のXRDを測定した結果、g−C3N4が合成されていることを確認した。
各原料の仕込み量と収率(質量基準)の関係を、メラミンについて●印で、尿素について○印で、それぞれ図2にプロットして示す。
また、図3に示すように、反応容器に対する原料占有体積率を高くすることにより、メラミン換算収率が向上した。
メラミン5gに対して尿素の添加量を下表4に示すように種々変更した以外は、実施例1と同様にして焼成体を調製した。得られた焼成体のXRDを測定した結果、g−C3N4が合成されていることを確認した。各尿素添加量におけるメラミン換算収率を表4に示す。また、尿素添加量とメラミン換算収率の関係を図4に示す。図4に示すように、メラミンに対して尿素を加えることにより、メラミン単独の場合(横線で示す)に対して、メラミン換算の収率が向上した。
マイクロトラック・ベル製 BELSORP−MR6を用いてBET比表面積の測定を行った。結果を表4に示す。また、図5に、尿素添加量と、得られたg−C3N4の比表面積の関係を示す。
尿素のみを25g仕込んだ他は実施例5と同様にして、焼成体を調製した。得られた焼成体の比表面積を実施例5と同様にして測定した結果、95.02m2/gであった。この結果を図5に×印で示す。
なお、この焼成体の収率は、非常に低いものであった。
メラミン5gに対して尿素の添加量を下表5に示すように種々変更した以外は、実施例1と同様にして焼成体を調製した。得られた焼成体のXRDを測定した結果、g−C3N4が合成されていることを確認した。得られたg−C3N4について、下記の方法で結晶子サイズを測定した。
リガク社製SmartLab(X線源:CuKα(0.154nm))を用いて粉末X線回折測定を行い、最大強度を示すピークの半値幅から下記のシェラー式を用いて算出した。結果を表5ならびに図6に示す。
結晶子径(nm) = Kλ/βcosθ
ここで、Kはシェラー定数(0.94を用いた)、λは測定X線波長、βは半値幅(rad)、θはブラッグ角(回折角2θの半分;deg)である。
島津製作所製UV−1650PCにて、石英セルを用いて測定を行った。測定溶液は、引っ掻き硬度試験に用いたものと同じくクロロホルムとポリカーボネートを7:1で混合した溶液に各粉末が0.5wt%になるよう混ぜた試料を、それぞれ3日間静置させた。その後それらの上澄みを分取して、クロロホルムで10倍に希釈した溶液を用いて吸光度測定を行った。結果を図7に示す。表6に示した値は、ピーク波長における吸光度である。吸光度が高いということは、溶液に粉末を混ぜてしばらく静置させても試料が沈降せず溶媒中に漂ったままになっていることを表し、溶媒分散性が高いことを表している。溶媒分散性が高いと、均一に溶媒に混ぜやすいなどの利点が挙げられる。
JIS K5600−5−4に準じて、安田精機製作所製の電動式鉛筆硬度試験器を用いて測定を行った。試験試料には、クロロホルムとポリカーボネート(ユーピロン HL−4000)を7:1で混合した溶液に各粉末試料がポリカーボネートに対して1wt%になるよう投入して作成した溶液をスピンコート(500rpm 60秒)でポリカーボネート板上に塗布し、150℃で30min加熱したものを使用した。荷重は750gであり、鉛筆の角度は45度とした。傷のつき具合は目視にて確認した。結果を表6に示す。
BRUKER社製Dimension Iconを用いて、測定を行った。測定サンプルは以下のように調整した。メノウ乳鉢で細かく粉砕したグラファイト状窒化炭素をエタノールに分散させた後、1時間ほど静置させて上澄み液を分取した。分取した上澄み液をマイカ基板上に滴下して、減圧乾燥することで、マイカ基板上にグラファイト状窒化炭素を析出させた。測定は、下地のポイントを0に設定し、それよりも深いポイントはマイナスで暗く、高いポイントは明るく表示される。
メラミン単独原料を使用して得られたグラファイト状窒化炭素から作成した試料のAFM像を図8,9に、メラミン5gと尿素15gの割合で混合し合成した試料を使用して得られたグラファイト状窒化炭素から作成した試料のAFM像を図10,11に、尿素単独原料を使用して得られたグラファイト状窒化炭素から作成した試料のAFM像を図12,13に示す。
図8〜13に示すように、メラミン5gと尿素15gの割合で混合し合成することで得られたグラファイト状窒化炭素は、メラミン単独原料を用いて得られたグラファイト状窒化炭素と同じような傾向を示した。尿素単独原料を用いて得られたグラファイト状窒化炭素では、異なる傾向が見られた。
Claims (4)
- メラミンと尿素とを混合した混合物を原料とし、反応容器の容積に対する該原料の占有体積率が0.5〜50.0体積%となるように該原料を該反応容器に入れ、尿素ならびにメラミンの分解ガスと未分解の尿素ならびにメラミンとが接触した状態で加熱してグラファイト状窒化炭素を得る、グラファイト状窒化炭素の製造方法。
- 得られたグラファイト状窒化炭素の比表面積が8.5〜100m2/gである、請求項1に記載のグラファイト状窒化炭素の製造方法。
- 前記メラミン100質量%に対し、前記尿素の混合割合が2〜500質量%である、請求項1又は2に記載のグラファイト状窒化炭素の製造方法。
- 比表面積が8.5〜100m2/gであり、結晶子サイズが2.5〜5.5nmである、グラファイト状窒化炭素。
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