JP2020147980A - 既設コンクリート舗装の補修方法およびコンクリート床版 - Google Patents

既設コンクリート舗装の補修方法およびコンクリート床版 Download PDF

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Abstract

【課題】既設PC舗装の一部をPPRC版に置き換えることを容易に短期間で実現できる補修方法を提供する。【解決手段】既設PC舗装30の一部をPPRC版1に置き換えて補修する。連結機構を介して複数枚の新設PPRC版1同士を連結することで、一枚の大きな剛性平板が形成される。すなわち、目地に係る課題は発生しない。さらに、既設PC舗装30のうち補修箇所以外と新設補修箇所との間には、特殊コンクリート床版10が介挿される。特殊コンクリート床版10は、既設PC舗装30の緊張材32を有効活用するとともに、新設PPRC版1に連結可能である。これにより、剛性平板は、既設PC舗装30と一体となる。【選択図】図8

Description

本発明は、緊張材が配設されプレストレスが導入されている既設コンクリート舗装の補修方法に関し、特にコンクリート床版により置き換える補修方法に関する。
舗装にはアスファルト舗装とコンクリート舗装がある。空港や港湾の舗装、道路のうち交差点の舗装など耐久性が求められる場合、コンクリート舗装が用いられる。コンクリート舗装には、現場打ちコンクリートによるものとコンクリート床版を敷設するものとがある。コンクリート床版は工場にて製作可能である。急速施工や品質保持の観点では、コンクリート床版が有利である。
コンクリート床版に荷重が作用すると、コンクリートに引張応力が作用し、クラック発生の原因となる。これに対し緊張材が配設されたコンクリート床版では、プレストレスを導入することによりクラック発生を抑制できる(特許文献1)。その結果、コンクリート床版の鉄筋量を減らしたり、コンクリート床版を薄くしたりできる。なお、緊張材を定着するために、原則として定着具機能が必要である。なお、プレストレスが導入されているコンクリート床版をプレキャストプレストレストRC床版(PPRC版)と呼ぶ。
ところで、コンクリート床版による舗装では、コンクリート床版同士の連結箇所に課題が発生することが多い。例えば、目地が開き目地から水が路盤へ浸透し、路盤が大量の水を含んだ状態で、大きな荷重が繰り返し作用すると、ポンピング現象により、路盤の細粒分が流出し、舗装下に空洞が生じる。コンクリート床版は支持力を失い、破損の原因となる。また、目地付近におけるコンクリート床版の微小変形が騒音の一因となるおそれもある。
これに対し、特殊な継手により、コンクリート床版同士を連結する機構が提案されている(特許文献2)。例えば、コッター式継手では、継手側面および受け金具内壁面にテーパを設け、継手を受け金具に挿入し固定することにより、連結箇所にプレストレスが導入される。この結果、コンクリート床版同士は確実に連結される。
特開2004−224633号公報 特開2001−214694号公報
ところで、既存の空港や港湾の舗装には、場所打ちのコンクリート舗装(すなわち床版ではない)であって、当該コンクリート舗装にプレストレスが導入されているものがある。これをPC舗装と呼ぶ。これらは老朽化が進み、適宜補修が必要である。
新規施工に比べ、補修工事は、現在の空港や港湾の運用を維持しながらの作業となるため、施工エリア、施工期間や使用可能な重機等の施工条件が厳しい。上述のように、コンクリート床版はこのような施工条件が厳しい場合にも適用可能である。
しかしながら、プレストレスが導入されているコンクリート床版(PPRC版)や、コンクリート床版の連結機構が先行技術として開示されているとしても、これらを如何に組み合わせるか、さらに、補修箇所以外の既設PC舗装をどのように有効活用するのか、特に、補修箇所以外の既設PC舗装と新設補修箇所の取り合いを如何にするのか、具体的な工法は定まっていない。なお、PPRC版同士の連結ではタイバーによる連結が一般的である。
したがって、既設PC舗装の補修箇所にPPRC版を用いるアイデアは想起可能ではあるが、実施工においては試行錯誤を繰り返している。その結果、PPRC版の長所を生かし切れていない。言い換えると、着想のきっかけはあったが、具現化できていなかった。
本発明は上記課題を解決するものであり、既設PC舗装の一部をPPRCに置き換える補修方法であって、容易に短期間で実現できる補修方法を提案することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は、緊張材が配設されプレストレスが導入されている既設コンクリート舗装の補修方法である。既設コンクリート舗装の補修相当箇所を特定し、周囲をカッターにより切断し、前記補修相当箇所の既設コンクリート舗装を撤去し、前記既設コンクリート舗装の残部境界部を斫り、既設緊張材を露出させ、前記露出させた既設緊張材にカプラを設置し、前記補修相当箇所のうち、前記既設コンクリート舗装の残部と隣り合う様に、緊張材が挿通可能な特殊コンクリート床版を設置し、前記特殊コンクリート床版に新設緊張材を挿通し、前記新設緊張材と既設緊張材とを前記カプラを介して連結し、前記既設コンクリート舗装の残部と前記特殊コンクリート床版の隙間にコンクリートを打設し、前記特殊コンクリート床版の開放端面側より、前記新設緊張材を緊張して定着し、新たにプレストレスを導入する。
既設コンクリート舗装と特殊コンクリート床版とがプレストレスが導入された状態で連結されることにより、特殊コンクリート床版の金具を介して新設コンクリート床版と連結可能となる。
上記発明において好ましくは、前記特殊コンクリート床版は、開放端面側端部に受け金具を有し、さらに、緊張材が配設されプレストレスが導入されている、端部に受け金具を有する新設コンクリート床版(第1)を、前記特殊コンクリート床版の受け金具と前記新設コンクリート床版の受け金具とが対向するように、設置し、前記特殊コンクリート床版の受け金具と前記新設コンクリート床版の受け金具に、コッター式継手を挿入し、前記特殊コンクリート床版と前記新設コンクリート床版とを連結するともに、連結部にプレストレスを導入する。
特殊コンクリート床版は既設コンクリート舗装とプレストレスが導入された状態で連結されるとともに、新設コンクリート床版ともプレストレスが導入された状態で連結される。言い換えると、特殊コンクリート床版を介して、既設コンクリート舗装と新設コンクリート床版とがプレストレスが導入された状態で連結可能となる。
上記発明において好ましくは、さらに、緊張材が配設されプレストレスが導入されている、端部に受け金具を有する第2新設コンクリート床版を、前記第1新設コンクリート床版の受け金具と前記第2新設コンクリート床版の受け金具とが対向するように、設置し、前記第1新設コンクリート床版の受け金具と前記第2新設コンクリートの受け金具に、コッター式継手を挿入し、前記第1新設コンクリート床版と前記第2新設コンクリート床版とを連結するともに、連結部にプレストレスを導入する。
これにより、プレストレスが導入された状態で新設コンクリート床版同士の連結ができる。新設コンクリート床版同士の連結を繰り返すことにより、補修相当箇所全面の補修が可能となる。
新設コンクリート床版同士の連結構造体は一枚の大きな剛性平板として機能する。さらに、連結構造体は、特殊コンクリート床版を介して、既設緊張材を有効活用しながら、既設コンクリート舗装に連結される。つまり、連結構造体は既設コンクリート舗装と一体となる。
特殊コンクリート床版の設置、緊張材連結、緊張をおこなった後は、新設コンクリート床版の設置と、床版連結との繰り返しであり、比較的単純な工程である。既設コンクリート舗装の一部を新設コンクリート床版に置き換えることを容易に短期間で実現できる。
なお、施工実務の観点からは、補修相当箇所を第1半面と第2半面に分割し、第1半面および第2半面において上記補修をおこない、第1半面と第2半面との間に調整版を挿入する。
上記発明において好ましくは、第N新設コンクリートの設置と連結とを繰り返し、第1補修エリアを補修する第1補修工程と、前記第1補修エリアと隣接する第2補修エリアを補修する第2補修工程と、を備え、前記第2補修工程では、前記第1補修工程で用いた前記特殊コンクリート床版の連結を解除して、転用する。
本補修方法は、拡張容易である。特殊コンクリート床版を転用することで、製作コストや搬入コストを抑制できるとともに、さらに容易に短期間で補修できる。
上記発明において好ましくは、前記特殊コンクリート床版の受け金具は、新設緊張材を定着するための定着具機能を有する。前記新設コンクリート床版の受け金具は、前記新設コンクリート床版の緊張材を定着するための定着具機能を有する。
これにより共通金具とすることで、部材数を減らすことができる。
上記課題を解決する本発明のコンクリート床版は緊張材が挿通可能である。コンクリート床版の一端面側のみに受け金具を有する。前記受け金具は、前記緊張材を定着するための定着具機能と、隣合うコンクリート床版と連結する継手を受ける継手受具機能とを有する。
特殊コンクリート床版は既設コンクリート舗装とプレストレスが導入された状態で連結されるとともに、新設コンクリート床版ともプレストレスが導入された状態で連結される。
上記課題を解決する本発明は、緊張材が配設されプレストレスが導入されている既設コンクリート舗装の補修方法である。既設コンクリート舗装の補修相当箇所を特定し、周囲をカッターにより切断し、前記補修相当箇所の既設コンクリート舗装を撤去し、前記既設コンクリート舗装の残部境界部を斫り、既設緊張材を露出させ、前記露出させた既設緊張材にカプラを設置し、前記補修相当箇所のうち、前記既設コンクリート舗装の残部と隣り合う様に、緊張材が挿通可能な特殊コンクリート床版を仮置きし、前記特殊コンクリート床版に新設緊張材を挿通し、前記新設緊張材と既設緊張材とを前記カプラを介して連結し、前記カプラが前記特殊コンクリート床版に内挿されるように、前記特殊コンクリートを前記既設コンクリート舗装の残部側に移動して設置し、前記既設コンクリート舗装の残部と前記特殊コンクリート床版の間の目地処理をおこない、前記特殊コンクリート床版の開放端面側より、前記新設緊張材を緊張して定着し、新たにプレストレスを導入する。
本発明の補修方法によれば、既設PC舗装の一部をPPRC版に置き換えることを容易に短期間で実現できる。
コンクリート床版の概略図 コンクリート床版の配筋図 連結構造体の概略図 連結機構の概略構成図 連結機構(コッター式継手)の動作説明図 特殊コンクリート床版の概略構成図 補修方法(特殊コンクリート床版連結)の施工フロー図 補修方法の施工イメージ図 補修方法(新設コンクリート床版連結)の施工フロー図 補修方法(第1補修エリア)の施工フロー図 補修方法(第2補修エリア拡張)の施工フロー図 補修方法(第2補修エリア拡張)の施工フロー図 補修方法(第2補修エリア拡張)の施工フロー図 変形例に係る補修方法の施工イメージ図 変形例に係る補修方法の施工詳細図
〜概要〜
既設PC舗装30の一部をPPRC版1に置き換えて補修する。連結機構5を介して複数枚の新設PPRC版1同士を連結することで、一枚の大きな剛性平板20が形成される。すなわち、目地に係る課題は発生しない。
既設PC舗装30のうち補修箇所以外と新設補修箇所との間には、特殊コンクリート床版10が介挿される。特殊コンクリート床版10は、既設PC舗装30の緊張材32を有効活用するとともに、新設PPRC版1に連結可能である。これにより、剛性平板20は、既設PC舗装30と一体となる。
本願補修方法は、拡張性が高い。補修対象エリアが広大であれば、複数の補修エリアに分割する。第1補修エリア施工完了後、第1補修エリアを開放し、第1補修エリアと隣接する第2補修エリアを補修する。短期施工を繰り返すことにより、全面補修が可能となる。
〜新設PPRC版〜
図1はコンクリート床版1の概略斜視図である。図2はコンクリート床版1の配筋図である。空港の駐機場、誘導路や港湾施設といった、比較的広い場所に用いられる場合、例えば、横幅が約2400ミリ、縦幅が15000ミリ、厚さ240ミリの平板である。道路用の場合、例えば、横幅が約1750ミリ、縦幅が5000ミリ、厚さ180ミリの平板である。コンクリート床版1は、航空機や港湾荷役用重機等の通行を可能にするように、20〜60N(ニュートン)/cm2の強度を有する。剛性を高めるため、鉄筋が挿入されている。
さらに緊張材2を介してプレストレスが導入されている。すなわち、コンクリート床版1は、プレキャストプレストレストRC床版(PPRC版)である。緊張材2は一般に鋼材が用いられるが、FRP等代替品を用いてもよい。緊張材2は床版長手方向および床版短手方向に配設され、ともにプレストレスが導入されていてもよい。プレストレス導入も工場にて行われるため、施工性が高い。
コンクリート床版1の端部(四辺)には、複数の金具3が設けられている。図示の例では、長辺方向20カ所、短辺方向3カ所、合計46箇所において金具3が埋設されている。金具3,3の間にて、緊張材2にはプレストレスが導入されている。金具3の定着具機能については別途後述する。
〜連結機構〜
図3は連結構造体20の概略斜視図である。コンクリート舗装版1,1が配設された状態にて、金具3,3が対向する。金具3,3と継手4とは連結機構5を構成する。
連結機構5を介して、隣り合うコンクリート床版1、1同士が確実かつ強固に連結され、連結構造体20が形成される。連結構造体20は一枚の大きな剛性平板として機能する。
図4は連結機構5の概略構成図である。図4Aは斜視図であり、図4Bは平面図であり、図4Cは断面図である。
本願金具3は、定着具機能と継手受具機能とを有することを特徴とする。図示の例では、金具3は略直方体状であり、平面開口部と、4つの側面部と、底面部とを有する。
まず、定着具機能について説明する。
金具3の側面部の一つには、緊張材2が定着している。当該側面部には孔が設けられ、緊張材2は当該孔を挿通する。緊張材2端部には定着具6が設けられ、プレストレス導入により定着具6が金具3の当該側面部に係止する。これにより、プレストレスが維持される。
定着構造として、撚線を楔でとめてもよいし、ネジきりした鋼棒に定着ナットを螺合させてもよい。
次いで、継手受具機能について説明する。
金具3,3が対向する側面部には、上下方向にスリットが設けられている。スリットを介して金具3,3の平面開口部が連続し、連続する空間が形成される。継手4は当該空間に挿入される。
継手4は当該空間に対応して平面視ダンベル形状を有する。すなわち、二つの継手端部とこれを連結する継手連結部を有する。スリットに相当する空間には継手連結部が挿入される。継手端部は対向する側面部に係止される。
継手4の2つの継手端部および金具3の底面部にはボルト穴が設けられている。ボルト穴にボルトを螺合させることにより、継手4は金具3,3内に固定され、連結機構5が形成される。
さらに、金具3,3上面開口には蓋を装着して連結機構5を被蔽する。
金具3,3の間には適切な間隔で目地が設けられている。グラウト注入により目地を形成してもよいし、樹脂製の目地材を介挿してもよい。
〜コッター式継手〜
継手をコッター式継手としてもよい。図5はコッター式継手の例である。図5Aはコッター式継手4挿入前の状態を示し、図5Bはコッター式継手4挿入およびボルトによる螺合後の状態を示す。
コッター式継手4は、二つの継手端部に上から下に向かう方向に互いに離れるようなテーパが形成されている。対向するテーパは雌の楔状を形成する。金具3,3の側面部内壁にも、上から下に向かう方向に互いに離れるようなテーパが設けられている。対向するテーパは雄の楔状を形成する。雌の楔状と雄の楔状とが対応している。
コッター式継手4を金具3,3に挿入すると、雄の楔状が雌の楔状に食い込む。これにより金具3,3間には互いに引き合うようなプレストレスが導入される。さらに、ボルトが螺合されているため、楔が抜けることはない。強固な連結機構5が形成される。
〜新設PPRC版の効果〜
連結機構5を介して複数枚の新設PPRC版1同士を連結することで、一枚の大きな剛性平板20が形成される。すなわち、目地に係る課題は発生しない。
本願金具3は、定着具機能と継手受具機能とを有することを特徴とする。共通金具とすることで、部材数を減らすことができる。構成が簡素となり、経済的である。
緊張材2は、金具3のアンカーとして機能する。連結機構5に力が作用する場合、その反力は緊張材2に伝達され、さらにコンクリート全体に伝達される。これにより、応力集中によるひび割れを抑制できる。
金具3のアンカーが不要となることで、金具3の製作コストが削減されるとともに、施工性が向上する。
〜特殊コンクリート床版〜
上述の通り、新設PPRC版1および連結構造体20は優れた効果を有する。しかしながら、これらは、新設施工および既設連結構造体の補修を前提とするものであり、そのままでは、既設PC舗装の補修に適用できない。そこで、特殊コンクリート床版10を開発し、既設PC舗装30のうち補修箇所以外と新設補修箇所との間に、特殊コンクリート床版10を介挿する。
図6は、特殊コンクリート床版10の概略構成図である。特殊コンクリート床版10は新設PPRC版1を改良したものであり、金具3等近似した構成を有する。相違点について説明する。
新設PPRC版1では、短手方向において両端面に金具3,3が対向するように設けられているのに対し、特殊コンクリート床版10では、短手方向において一端面側のみに金具3が設けられている。
なお「一端面側のみ」とは長手方向において対向するように両端面に設けられた金具3,3を除くものではない。
新設PPRC版1では、短手方向の金具3,3の間にて、緊張材2にはプレストレスが導入されているのに対し、特殊コンクリート床版10では、緊張材12の一端に定着具6が設けられは金具3内に配置されている(図4類似)が、緊張材12はシース11内を挿通し、緊張材12の他端はシース11から飛び出す様に延設されている。すなわち、特殊コンクリート床版10単体においては、緊張材12にはプレストレスが導入されていない。
なお、特殊コンクリート床版10は、既設PC舗装30と新設PPRC版1との中間的な性格を持つため、図7〜13においてハイブリッドPPRC版10と記載することもある。
シース11から飛びしている緊張材12の他端は、カプラ33を介して既設PC舗装30の既設緊張材32と連結される(図7参照)。連結された緊張材12は金具3側から緊張され、定着具6を介して金具3の側面部に緊張材2一端が定着する(図7参照)。これにより、特殊コンクリート床版10にもプレストレスが導入される。
〜補修方法〜
新設PPRC版1および特殊コンクリート床版10を用いた既設PC舗装30の補修方法について説明する。
図7は、特殊コンクリート床版10連結までの施工フロー図である。図8は施工イメージ図である。
事前準備として、既設PC舗装30のうち補修相当箇所を特定する。図示左右の境界においてコンクリートを斫り、既設の緊張材を露出させ、緊張材にデッドアンカーを取り付け、当該箇所に埋戻し用のコンクリートを打設する。その後、補修相当箇所をカッターにより切断する(ステップ1)。
補修相当箇所の既設PC舗装30を撤去し、撤去箇所の路盤を整正する(ステップ2)。既設PC舗装30の残部境界部を斫り、既設緊張材32を露出させ、露出させた既設緊張材32にカプラ33を設置する(ステップ3)。
既設PC舗装30の残部境界部と隣り合う様に特殊コンクリート床版10を設置する(ステップ4)。特殊コンクリート床版10にはあらかじめ緊張材12が挿通されているが、特殊コンクリート床版10設置後に緊張材12を挿通してもよい(ステップ5)。カプラ33を介して新設緊張材12と既設緊張材32とを連結する(ステップ6)。
既設PC舗装30の残部境界部と特殊コンクリート床版10の隙間にコンクリートを打設する(ステップ7)。例えば、超速硬コンクリートを用いれば、材齢3時間で24N/mm2の圧縮強度を期待できる。
特殊コンクリート床版10の金具3側(開放端面側)から緊張材12を緊張する。所定量緊張させ、緊張材12を定着させ、新たにプレストレスを導入する(ステップ8)。
図9は、新設コンクリート床版1を次々と連結させる施工フロー図である。
ステップ1〜8の処理により、特殊コンクリート床版10は既設PC舗装30残部に連結している(ステップ8)。
特殊コンクリート床版10の開放端面側では金具3が配設されている。特殊コンクリート床版10の金具3は、新設PPRC版1の金具3と対向することにより、継手4を受け入れ可能となる。
特殊コンクリート床版10の金具3と新設コンクリート床版1の金具3とが対向するように、新設コンクリート床版1(図示A)を設置する(ステップ9)。対向する金具3,3に継手4を挿入し、継手4と金具3,3を固定する。これにより、特殊コンクリート床版10と新設コンクリート床版1(図示A)とが確実に連結されるともに、連結機構5にもプレストレスが導入される(ステップ10)。なお、床版連結は、次の床版設置と並行して行ってもよいし、全ての床版を設置後、まとめて連結してもよい。
さらに、新設コンクリート床版1(図示A)の金具3と新設コンクリート床版1(図示B)の金具3とが対向するように、新設コンクリート床版1(図示B)を設置する(ステップ11)。対向する金具3,3に継手4を挿入し、継手4と金具3,3を固定する。これにより、新設コンクリート床版1(図示A)と新設コンクリート床版1(図示B)とが確実に連結されるともに、連結機構5にもプレストレスが導入される(ステップ12)。
図示の例では、2枚の新設コンクリート床版1の設置と連結をしているが、補修エリアの大きさに合せて新設コンクリート床版1の設置と連結をN枚繰り返せばよい。
図10は、一つの補修エリア(第1補修エリア)における補修完了までの施工フロー図である。
補修エリアを第1半面と第2半面に分ける。第1半面において、ステップ2〜12の工程をおこなう(ステップ12)。
第2半面においても、補修相当箇所の既設PC舗装30を撤去すると、既設PC舗装30の残部境界部が形成される。ステップ2〜12の工程に基づき、特殊コンクリート床版10の設置および緊張材連結、緊張材緊張、新設コンクリート床版1の設置と連結をおこなう(ステップ13)。
図示の例では、説明の便宜のため、第1半面補修完了後に第2半面補修に着手しているが、第1半面補修と第2半面補修とを平行しておこなってもよい。
第1半面と第2半面の間には、隙間が形成される。当該隙間寸法に相当する調整版(PPRC版)を当該隙間に設置し、隣り合う新設コンクリート床版1と連結する(ステップ14)。これにより、補修エリアの全面補修が完了する。
なお、調整版(PPRC版)は寸法以外、新設コンクリート床版1と同様である。寸法が同じ場合は、新設コンクリート床版1を用いてもよい。
上記補修方法による効果について説明する。
上記補修方法で述べたように、現場施工において、比較的手間を要する工程は、新設緊張材12と既設緊張材32との連結(ステップ6)、間詰めコンクリート打設(ステップ7)と、緊張材12緊張(ステップ8)のみである。
間詰めコンクリート打設において、打設量が少量であること、超速硬コンクリートによれば養生時間は数時間であることを考慮すれば、ステップ1〜8までの所要時間は5時間程度と想定される。
ステップ8以降(ステップ9〜14)の工程は、新設コンクリート床版1の設置と、床版連結との繰り返しであり、比較的単純な工程である。例えば、図10のように5枚の新設コンクリート床版1の設置および連結の所要時間は2時間程度と想定される。
準備及び片付けを含めて全所要時間は8時間程度と想定され、一回の夜間規制のみで翌朝開放できる。このように、上記補修方法では、既設PC舗装の一部をPPRC版に置き換えることを容易に短期間で実現できる。
〜補修エリア拡張〜
本願補修方法は、拡張性が高い。補修対象エリアが広大であれば、複数の補修エリアに分割し、空港や港湾の運用状況を見ながら、例えば休日夜間などに、各補修エリアごとに短期施工を繰り返すことにより、全面補修が可能となる。
第1補修エリア施工完了後、第1補修エリアを開放し、第1補修エリアと隣接する第2補修エリアを補修する例について説明する。
図11〜13は、補修エリア拡張に係る施工フロー図である。
空港や港湾の運用状況を見ながら、閉鎖できる期間を推定し、優先して補修すべき箇所を考慮して、補修エリア(第1補修エリア)の範囲を設定する(ステップ101)。
ステップ1〜14の処理により、第1補修エリア施工を完了し、第1補修エリアを開放する(ステップ102)。
空港や港湾の運用状況を見ながら、閉鎖できる期間を推定し、補修エリア(第2補修エリア)の範囲を設定する(ステップ103)。第2補修エリアは特殊コンクリート床版10を介して第1補修エリアと隣接している。
補修相当箇所をカッターにより切断するとともに、第1補修エリアで用いた特殊コンクリート床版10の連結を解除する(ステップ104)。
第2補修エリアでも、補修相当箇所の既設PC舗装30を撤去すると、既設PC舗装30の残部境界部が形成される。ステップ3〜12の工程に基づき、第1補修エリアで用いた特殊コンクリート床版10を転用し、既設PC舗装30の残部境界部と隣り合う様に設置し、緊張材を連結し、緊張材を緊張する(ステップ105)。
特殊コンクリート床版10の開放端面側では金具3が配設されている。ステップ9〜10の工程に基づき、新設コンクリート床版1を設置し、連結する(ステップ106)。
一方で、第1補修エリアで用いた特殊コンクリート床版10が移設されると、連結対象であった新設コンクリート床版1は継手4を受け入れ可能となる。ステップ11〜12の工程に基づき、新設コンクリート床版1を設置し、連結する(ステップ107)。
以降、ステップ11〜12の工程に基づき、新設コンクリート床版1を所定枚数設置し、連結する。ステップ13に基づき、調整版(PPRC版)を隙間に設置し、隣り合う新設コンクリート床版1と連結する。これにより、第2補修エリアの全面補修が完了する(ステップ108)。
上記拡張方法による効果について説明する。
上記拡張方法で述べたように、空港や港湾の運用状況に応じた柔軟な施工計画が可能である。空港や港湾の規制可能時間が短い(例えば一夜間)場合は、比較的小さな補修エリアを特定する。空港や港湾の規制可能時間が長い(例えば数日)場合は、比較的大きな補修エリアを特定する。順々に拡張することにより全面補修が可能となる。
特殊コンクリート床版10を転用することで、製作コストや搬入コストを抑制できるとともに、さらに容易に短期間で補修できる。
〜変形例〜
上記補修方法では、間詰めコンクリート打設(ステップ7)が比較的手間を要する工程であった。変形例においては、間詰めコンクリート打設(ステップ7)を省略する。以下詳述する。
補修相当箇所をカッターにより切断し、既設PC舗装30を撤去し、既設PC舗装30の残部境界部を斫り、既設緊張材32を露出させ、露出させた既設緊張材32にカプラ33を設置する(ステップ1→2→3)工程については共通である。
図14は変形例に係る施工イメージ図である。図15は変形例に係る施工詳細図(断面図)である。
既設PC舗装30の残部境界部と隣り合う様に特殊コンクリート床版10を仮置きする(ステップ4A)。具体的には本設置に備え、吊状態を維持する。安全のため治具を噛ませ、治具上に仮置きする。
特殊コンクリート床版10にはあらかじめ緊張材12が挿通されているが、特殊コンクリート床版10仮置き後に緊張材12を挿通してもよい(ステップ5)。カプラ33を介して新設緊張材12と既設緊張材32とを連結する(ステップ6)。
特殊コンクリート床版10内のシースは、カプラ33を内包可能な寸法を有する。
連結された新設緊張材12を引っ張りながら、特殊コンクリート10を既設コンクリート舗装30の残部側に移動して本設置する。このとき噛ませた治具を撤去する。既設PC舗装30の残部境界部と特殊コンクリート床版10の間を目地相当距離(10mm程度)とする(ステップ7A1)。カプラ33は特殊コンクリート床版10のシースに内挿される。
超速硬グラウトや樹脂製目地版等により、既設PC舗装30の残部境界部と特殊コンクリート床版10の間の目地処理をおこなう(ステップ7A2)。
特殊コンクリート床版10の金具3側(開放端面側)から緊張材12を緊張する。所定量緊張させ、緊張材12を定着させ、新たにプレストレスを導入する(ステップ8)。
変形例に係る補修方法では、間詰めコンクリート打設を省略できることにより、更なる短期施工が可能となる。
1 コンクリート床版
2 緊張材
3 金具(継手受金具)
4 継手
5 連結機構
6 定着具
10 特殊コンクリート床版
11 シース
12 緊張材
20 連結構造体
30 既設PC舗装
32 緊張材
33 カプラ

Claims (7)

  1. 緊張材が配設されプレストレスが導入されている既設コンクリート舗装の補修方法であって、
    既設コンクリート舗装の補修相当箇所を特定し、周囲をカッターにより切断し、
    前記補修相当箇所の既設コンクリート舗装を撤去し、前記既設コンクリート舗装の残部境界部を斫り、既設緊張材を露出させ、
    前記露出させた既設緊張材にカプラを設置し、
    前記補修相当箇所のうち、前記既設コンクリート舗装の残部と隣り合う様に、緊張材が挿通可能な特殊コンクリート床版を設置し、
    前記特殊コンクリート床版に新設緊張材を挿通し、
    前記新設緊張材と既設緊張材とを前記カプラを介して連結し、
    前記既設コンクリート舗装の残部と前記特殊コンクリート床版の隙間にコンクリートを打設し、
    前記特殊コンクリート床版の開放端面側より、前記新設緊張材を緊張して定着し、新たにプレストレスを導入する
    既設コンクリート舗装の補修方法。
  2. 前記特殊コンクリート床版は、開放端面側端部に受け金具を有し、
    さらに、緊張材が配設されプレストレスが導入されている、端部に受け金具を有する新設コンクリート床版(第1)を、前記特殊コンクリート床版の受け金具と前記新設コンクリート床版の受け金具とが対向するように、設置し、
    前記特殊コンクリート床版の受け金具と前記新設コンクリート床版の受け金具に、コッター式継手を挿入し、
    前記特殊コンクリート床版と前記新設コンクリート床版とを連結するともに、連結部にプレストレスを導入する
    請求項1記載の既設コンクリート舗装の補修方法。
  3. さらに、緊張材が配設されプレストレスが導入されている、端部に受け金具を有する第2新設コンクリート床版を、前記第1新設コンクリート床版の受け金具と前記第2新設コンクリート床版の受け金具とが対向するように、設置し、
    前記第1新設コンクリート床版の受け金具と前記第2新設コンクリートの受け金具に、コッター式継手を挿入し、
    前記第1新設コンクリート床版と前記第2新設コンクリート床版とを連結するともに、連結部にプレストレスを導入する
    請求項2記載の既設コンクリート舗装の補修方法。
  4. 請求項3記載の既設コンクリート舗装の補修方法による補修後、第N新設コンクリートの設置と連結とを繰り返し、第1補修エリアを補修する第1補修工程と、
    前記第1補修エリアと隣接する第2補修エリアを補修する第2補修工程と、
    を備え、
    前記第2補修工程では、前記第1補修工程で用いた前記特殊コンクリート床版の連結を解除して、転用する
    既設コンクリート舗装の補修方法。
  5. 前記特殊コンクリート床版の受け金具は、新設緊張材を定着するための定着具機能を有し、
    前記新設コンクリート床版の受け金具は、前記新設コンクリート床版の緊張材を定着するための定着具機能を有する
    請求項2記載の既設コンクリート舗装の補修方法。
  6. 緊張材が挿通可能なコンクリート床版であって、
    一端面側のみに受け金具を有し、
    前記受け金具は、
    前記緊張材を定着するための定着具機能と、
    隣合うコンクリート床版と連結する継手を受ける継手受具機能と
    を有するコンクリート床版。
  7. 緊張材が配設されプレストレスが導入されている既設コンクリート舗装の補修方法であって、
    既設コンクリート舗装の補修相当箇所を特定し、周囲をカッターにより切断し、
    前記補修相当箇所の既設コンクリート舗装を撤去し、前記既設コンクリート舗装の残部境界部を斫り、既設緊張材を露出させ、
    前記露出させた既設緊張材にカプラを設置し、
    前記補修相当箇所のうち、前記既設コンクリート舗装の残部と隣り合う様に、緊張材が挿通可能な特殊コンクリート床版を仮置きし、
    前記特殊コンクリート床版に新設緊張材を挿通し、
    前記新設緊張材と既設緊張材とを前記カプラを介して連結し、
    前記カプラが前記特殊コンクリート床版に内挿されるように、前記特殊コンクリートを前記既設コンクリート舗装の残部側に移動して設置し、
    前記既設コンクリート舗装の残部と前記特殊コンクリート床版の間の目地処理をおこない、
    前記特殊コンクリート床版の開放端面側より、前記新設緊張材を緊張して定着し、新たにプレストレスを導入する
    既設コンクリート舗装の補修方法。
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