JP2020147507A - シトリン欠損症治療剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】新たなシトリン欠損症治療剤を提供する。【解決手段】有効成分として、(1)オルニチン又はその塩、並びに(2)アスパラギン酸、アラニン、若しくはグルタミン酸のうち1以上、又はこれらの塩を含有する。【選択図】図1

Description

本発明は、シトリン欠損症治療剤に関する。
シトリン欠損症は、ミトコンドリア内膜に存在するトランスポーターであるシトリンの欠損を引き起こす遺伝子疾患である。シトリン欠損症のために生じる症状としては、高シトルリン血症、高アンモニア血症、細胞質内又は血中のNADH代謝関連物質の蓄積、などがあげられる。また、これらの症状のために、シトリン欠損症患者には、失見当識、異常行動、意識障害、黄疸、胆汁うっ滞、脂肪肝、及びエネルギー不足(細胞質内NADH過剰に伴う糖質忌避が原因と考えられている)が生じやすい。また、これらの症状のために、シトリン欠損症患者には、肝障害及び肝性脳症などの疾患が生じやすいことも知られている。一方で、シトリン欠損症の治療として肝移植を行った場合、患者の血液生化学所見が正常化し、これらの症状も消失することが知られている。
低タンパク質食などの通常の高アンモニア血症への対処法は、シトリン欠損症の症状を増悪させることが知られている(非特許文献1)。シトリン欠損症の治療剤としては、アルギニン製剤(アルギU(登録商標))、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)製剤(非特許文献2)、及びピルビン酸製剤(特許文献1)などを使うことが検討されている。
特許第4912574号公報
Fukushima, K. et al. Intern. Med. 49, 243-247 (2010). Saheki, T. et al. Mol. Genet. Metab. 107, 322-329 (2012).
公知のシトリン欠損症治療剤は全ての患者に対して有効ではない。本発明は、新たなシトリン欠損症治療剤を提供し、シトリン欠損症治療における選択肢を増やすことを目的とする。
本願発明者らは、驚くべきことに、体内での代謝によりシトルリンへと変化してしまうオルニチンを、特定のアミノ酸と組み合わせて投与することにより、シトリン欠損症の症状を抑えられることを発見し、この発見に基づいて本願発明を完成させた。
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明のシトリン欠損症治療剤は以下の構成を備える。すなわち、
有効成分として、
(1)オルニチン又はその塩、並びに
(2)アスパラギン酸、アラニン、若しくはグルタミン酸のうち1以上、又はこれらの塩
を含有することを特徴とする。
新たなシトリン欠損症治療剤を提供できる。
各種アミノ酸を経腸投与した際の血中アンモニア濃度及び血中シトルリン濃度の変化を示す図。 肝灌流実験において、オルニチンに加えてアラニン又はアスパラギン酸を灌流した際の、尿素合成速度及びL/P比の変化を示す図。 各種アミノ酸を経腸投与した際の門脈と動脈におけるアラニン濃度差を示す図。
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
本発明の一実施形態に係るシトリン欠損症治療剤は、有効成分として、(1)オルニチン又はその塩、並びに(2)アスパラギン酸、アラニン、若しくはグルタミン酸のうち1以上、又はこれらの塩を含有する。
シトリン欠損症治療剤とは、シトリン欠損症患者に対して、シトリン欠損症のために生じる症状を緩和又は抑制する薬剤のことを指す。例えば、シトリン欠損症治療剤は、シトリン欠損症のために生じる高シトルリン血症又は高アンモニア血症の治療剤、すなわち血中シトルリン濃度の低下剤又は血中アンモニア濃度の低下剤であってもよい。また、シトリン欠損症治療剤は、シトリン欠損症のために生じる細胞質内NADHの低下剤であってもよい。
また、シトリン欠損症患者において、患者の血液生化学所見を正常に近づけることにより、様々な症状を予防又は消失させられることが知られている。したがって、シトリン欠損症治療剤は、失見当識、異常行動、意識障害、黄疸、胆汁うっ滞、脂肪肝、エネルギー不足、肝障害、又は肝性脳症の治療剤又は予防剤であってもよい。
オルニチン、アスパラギン酸、アラニン、及びグルタミン酸は、それぞれアミノ酸である。それぞれのアミノ酸は、単体であってもよいし、塩になっていてもよい。アミノ酸の塩は、任意の薬学的に許容できる塩でありうる。例えば、アミノ酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、塩酸塩、又は炭酸塩などであってもよい。また、アミノ酸の塩は、塩基性アミノ酸と酸性アミノ酸との塩であってもよい。一実施形態において、シトリン欠損症治療剤は、オルニチン又はその塩と、アスパラギン酸又はその塩との組み合わせとして、オルニチンアスパラギン酸塩を含有している。
シトリン欠損症治療剤は、上記のアミノ酸を、ペプチド又はタンパク質の形で含有していてもよい。すなわち、一実施形態に係るシトリン欠損症治療剤は、(1)オルニチン、並びに(2)アスパラギン酸、アラニン、若しくはグルタミン酸のうち1以上を構成要素として含む、ペプチド又はタンパク質を含有している。
一実施形態において、シトリン欠損症治療剤に含まれる、(1)オルニチン又はその塩の重量(遊離のアミノ酸(オルニチン)の重量として計算される、以下同じ)は、10%以上であり、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは40%以上である。また、一実施形態において、シトリン欠損症治療剤に含まれる、(2)アスパラギン酸、アラニン、若しくはグルタミン酸のうち1以上の重量(アスパラギン酸、アラニン、及びグルタミン酸の総重量であり、遊離のアミノ酸(アスパラギン酸、アラニン、及びグルタミン酸)の重量として計算される、以下同じ)は、10%以上であり、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは40%以上である。このようにアミノ酸の含有量を高めることにより、投与時の負担を低減しながら、より有効な治療効果を得ることができる。
治療効果を向上させる観点から、一実施形態において、シトリン欠損症治療剤に含まれる、(1)オルニチン又はその塩の重量と(2)アスパラギン酸、アラニン、若しくはグルタミン酸のうち1以上の重量との比((1):(2))は、2:8以上であり、好ましくは3:7以上であり、より好ましくは4:6以上であり、一方で8:2以下であり、好ましくは7:3以下であり、より好ましくは6:4以下である。
治療効果を向上させる観点から、一実施形態において、シトリン欠損症治療剤に含まれる、(1)オルニチン又はその塩と(2)アスパラギン酸、アラニン、若しくはグルタミン酸のうち1以上(アスパラギン酸、アラニン、及びグルタミン酸の総量)とのモル比((1):(2))は、2:8以上であり、好ましくは3:7以上であり、より好ましくは4:6以上であり、一方で8:2以下であり、好ましくは7:3以下であり、より好ましくは6:4以下である。
一実施形態において、シトリン欠損症治療剤に含まれる、(1)オルニチン又はその塩と(2)アスパラギン酸、アラニン、若しくはグルタミン酸のうち1以上(アスパラギン酸、アラニン、及びグルタミン酸の総量)とのモル比((1):(2))は、5:5である。例えば、シトリン欠損症治療剤は、オルニチンとアスパラギン酸との等モル比の塩である、オルニチンアスパラギン酸塩を含有していてもよい。このようなシトリン欠損症治療剤は、特に有効性が高いことが確認された。
一実施形態において、シトリン欠損症治療剤が含有する、オルニチン、アスパラギン酸、アラニン、及びグルタミン酸以外のアミノ酸の量は少ない。例えば、一実施形態において、シトリン欠損症治療剤が含有するオルニチン、アスパラギン酸、アラニン、及びグルタミン酸の総重量は、シトリン欠損症治療剤が含有するアミノ酸の総量の50%以上であり、好ましくは70%以上であり、より好ましくは90%以上であり、特に好ましくは100%である。一実施形態に係るシトリン欠損症治療剤は、(1)オルニチン又はその塩、並びに(2)アスパラギン酸、アラニン、若しくはグルタミン酸のうち1以上、又はこれらの塩からなり、例えば、オルニチンアスパラギン酸塩であってもよい。
別の実施形態において、シトリン欠損症治療剤が含有する特定のアミノ酸の量は少ない。例えば、一実施形態において、シトリン欠損症治療剤が含有するグリシンの重量は、オルニチン、アスパラギン酸、アラニン、及びグルタミン酸の総重量の10%以下であり、好ましくは1%以下であり、より好ましくは0.1%以下である。後述するようにグリシンは血中アンモニア濃度を増加させる傾向が確認されているため、このようなシトリン欠損症治療剤の効果は高いことが期待される。
シトリン欠損症治療剤は、上記のアミノ酸の他に、補助剤又は担体などの成分をさらに含有していてもよい。補助剤の例としては、賦形剤、添加剤、被覆剤、及び甘味剤などが挙げられる。また、シトリン欠損症治療剤の剤型は特に限定されない。例えば、シトリン欠損症治療剤は、粉剤、錠剤、カプセル剤、又は懸濁液などであってもよい。
上記のとおり、本発明の一実施形態に係るシトリン欠損症治療剤は、シトリン欠損症の治療のために用いられる。本発明の一実施形態に係る治療方法は、シトリン欠損症の患者を治療する方法であって、上記のシトリン欠損症治療剤を患者に投与する工程を含む。このような治療方法により、患者における、シトリン欠損症のために生じる症状を緩和又は抑制することができる。
患者は特に特定されない。患者は、例えばヒトであってもよいし、その他の哺乳類であってもよい。また、患者は成人患者であってもよいし、小児患者であってもよい。
シトリン欠損症治療剤の投与量は、患者の年齢、症状及び剤形などに応じて適宜選択することができる。一実施形態において、シトリン欠損症治療剤の投与量は、1日あたり2g以上であり、好ましくは4g以上であり、より好ましくは6g以上である。また、一実施形態において、投与量は1日あたり40g以上であり、好ましくは30g以下である。
また、一実施形態においてシトリン欠損症治療剤は、1日あたり1g以上、好ましくは2g以上、より好ましくは3g以上のオルニチンが投与されるように、患者に対して投与される。一方、一実施形態においてシトリン欠損症治療剤は、1日あたり20g以下、好ましくは15g以下のオルニチンが投与されるように、患者に対して投与される。
さらに、一実施形態においてシトリン欠損症治療剤は、投与されるアスパラギン酸、アラニン、及びグルタミン酸のうち1以上の重量(アスパラギン酸、アラニン、及びグルタミン酸の総重量)が、1日あたり1g以上、好ましくは2g以上、より好ましくは3g以上となるように、患者に対して投与される。一方、一実施形態においてシトリン欠損症治療剤は、投与されるアスパラギン酸、アラニン、及びグルタミン酸のうち1以上の重量が、1日あたり20g以下、好ましくは15g以下となるように、患者に対して投与される。
上記の投与量によれば、投与時の負担を低減しながら、より有効な治療効果を得ることができる。
また、シトリン欠損症治療剤は、適切な投与経路により投与することができ、例えば経口投与、経腸投与、又は注射(例えば、肝動脈内投与又は門脈内投与のような、肝臓周辺への注射)などを用いることができる。投与回数及び投与時期についても、患者の年齢、症状及び剤形などに応じて適宜選択することができる。例えば、シトリン欠損症治療剤は、毎日投与してもよいし、隔日投与してもよい。一実施形態において、シトリン欠損症治療剤は毎日2〜4回投与される。
(実験動物及び試薬)
動物実験は大学の倫理委員会による承認の下で、またARRIVEガイドラインに沿って行われた。野生型(Wt)マウス、及びシトリン/グリセロール−3−リン酸脱水素酵素ダブルノックアウト(Double-KO)マウスは、C57BL/6とコンジェニックであった。マウスは、Saheki, T. et al. J. Biol. Chem. 282, 25041-25052 (2007).に記載の方法で育種した。簡単に説明すると、Wtマウス及びシトリンノックアウト(Ctrn-KO)マウスはヘテロ接合性Ctrn-KOマウス(Ctrn+/-/mGPD+/+)の交配によって得られ、グリセロール−3−リン酸脱水素酵素ノックアウト(mGPD-KO)マウス及びDouble-KOマウスはヘテロ接合性Ctrn-KO/ホモ接合性mGPD-KOマウス(Ctrn+/-/mGPD-/-)の交配によって得られた。イヤーパンチから得られたDNAのジェノタイピングが、Saheki, T. et al. Mol. Genet. Metab. 120, 306-316 (2017).に記載されているように、Ctrn-KOマウス(Sinasac, D. S. et al. Mol. Cell. Biol. 24, 527-536 (2004).)及びmGPD-KOマウス(Eto, K. et al. Science 283, 981-985 (1999).)のターゲット変異それぞれについての手順を用いて行われた。なお、ヒトとマウスとの間の肝グリセロリン酸シャトル活性の種族差のために、Double-KOマウスは、Citrin-KOマウスよりも、シトリン欠損症のマウスモデルとして表現型の面でより適している。
実験には60日齢から160日齢のマウスが用いられた。マウスは、水とCE2飼料(日本クレア株式会社製)に自由にアクセスできる状態で飼育した。
以下の各実験において、L−アルギニンとしてはL−アルギニン塩酸塩を、L−オルニチンとしてはL−オルニチン塩酸塩を、L−アスパラギン酸としてはL−アスパラギン酸ナトリウムを、L−グルタミン酸としてはL−グルタミン酸水素ナトリウムを、L−乳酸としてはL−乳酸ナトリウムを、ピルビン酸としてはピルビン酸ナトリウムを、それぞれ使用し、塩化アンモニウム、L−アラニン、グリシン、及びショ糖も含めて、使用したものは和光純薬株式会社製又はナカライテスク社製のものであった。さらに、L−オルニチンL−アスパラギン酸塩は、東京化学工業株式会社製のものを用いた。また、中鎖脂肪酸トリグリセリドは、キッセイ薬品工業株式会社製のものを用いた。
[実施例1:アンモニア濃度及びシトルリン濃度に対するアミノ酸の作用]
シトリン欠損症のモデルであるマウスに対して各種アミノ酸を投与することにより、血中アンモニア濃度及び血漿シトルリン濃度を検討した。
本発明者らの予備検討により、Double-KOマウスに対してショ糖又はグリシンを投与すると血中アンモニア濃度が増加すること、ショ糖とグリシンとの双方を投与すると血中アンモニア濃度がさらに増加することが確認されていた。そこで、ショ糖(Suc)とグリシン(Gly)との双方が投与されたDouble-KOマウスに対して、各種アミノ酸などをさらに投与することによる、血中アンモニア濃度及び血漿シトルリン濃度の変化を検討した。
具体的には、WtマウスまたはDouble-KOマウスに対し、胃ゾンデを用いて20ml/kg体重の薬剤溶液を投与した。薬剤溶液としては、生理食塩水(Saline)、1Mグリシン水溶液(Gly)、20%ショ糖水溶液(Suc)、20%ショ糖+1Mグリシン水溶液(Suc+Gly)、及び20%ショ糖+1Mグリシン+0.5M各種アミノ酸(10 mmol/kg体重)水溶液を用いた。アミノ酸としては、L−アラニン(Ala)、L−グルタミン酸(Glu)、L−アスパラギン酸(Asp)、L−アルギニン(Arg)、又はL−オルニチン(Orn)を用いた。また、アミノ酸の代わりに、0.5Mピルビン酸(Pyr)、又は5%中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)(1 g/kg体重)も用いた。さらに、アミノ酸として、L−オルニチンとL−アスパラギン酸の組み合わせ(Orn+Asp)(各10 mmol/kg体重)、又はL−オルニチンとL−アラニンの組み合わせ(Orn+Ala)(各10 mmol/kg体重)も用いた。
投与から1時間後に、午前10時から11時の間においてマウスをサクリファイスした。血液サンプルは、ソムノペンチルを用いた麻酔下で、心臓から採取した。血中アンモニア濃度は、アンモニア−テストワコー(和光純薬株式会社製)を用いて決定した。
実験結果を図1(A)(B)に示す。図1(A)に示すように、ピルビン酸(Pyr)、MCT、L−アラニン(Ala)、L−グルタミン酸(Glu)、L−アスパラギン酸(Asp)、L−アルギニン(Arg)、及びL−オルニチン(Orn)のそれぞれを、ショ糖+グリシンに加えて投与したところ、血中アンモニア濃度が減少することは確認されたものの、なお血中アンモニア濃度はWtマウス(Saline投与)よりもかなり高く、血中アンモニア濃度の減少作用は十分ではないことが確認された。一方で、図1(B)に示すように、特にアルギニン又はオルニチンを追加投与すると、各種アミノ酸を追加投与していないDouble-KOマウス(Suc+Gly)と比較して、有意に血漿シトルリン濃度が上昇してしまうことが確認された。
そこで、図1(A)に示すように、L−オルニチンとL−アスパラギン酸の組み合わせを投与したところ、L−オルニチンに対して、L−アスパラギン酸又はL−アラニンを追加することにより、血中アンモニア濃度が低下することが確認された。とりわけ、L−オルニチンとL−アスパラギン酸の組み合わせを投与することにより、血中アンモニア濃度は大きく低下し、Wtマウス(Saline投与)と同等のレベルにまでなった。また、L−オルニチンとL−アラニンの組み合わせを投与した際も、同様の結果が得られた。
また、図1(B)に示すように、L−オルニチンとL−アスパラギン酸の組み合わせを投与したところ、L−オルニチンに対して、L−アスパラギン酸又はL−アラニンを追加することにより、血漿シトルリン濃度の上昇を有意に抑制できることが確認された(*: P<0.05、***: P<0.001)。すなわち、L−オルニチンとL−アスパラギン酸の組み合わせを投与することにより、アミノ酸が追加投与されていないDouble-KOマウス(Suc+Gly)と比較して、血漿シトルリン濃度が低下していることが確認された。また、L−オルニチンとL−アラニンとの組み合わせによっても、血漿シトルリン濃度はDouble-KOマウス(Suc+Gly)に近いレベルとなった。
次に、L−オルニチン及びL−アラニンの投与量と、血中アンモニア濃度との関係について検討した。具体的には、薬剤溶液が、20%ショ糖+1Mグリシンに加えて、L−オルニチンL−アスパラギン酸塩(図中のOrn+Asp#(NaClを含まない))を、0.125M(2.5 mmol/kg体重)、0.25M(5 mmol/kg体重)、又は0.5M(10 mmol/kg体重)含んでいたことを除き、同様の実験を行った。
結果を図1(C)に示す。図1(C)に示されるように、用量依存的に血中アンモニア濃度が低下することが確認され、0.125Mを含むそれぞれの用量において、アミノ酸が追加投与されていないDouble-KOマウス(Suc+Gly)と比較して、血中アンモニア濃度が有意に低下していることが確認された(*: P<0.05、***: P<0.001)。ここで驚くべきことに、図1(A)に示すようにL−オルニチン塩酸塩(10 mmol/kg体重)とL−アスパラギン酸ナトリウム(10 mmol/kg体重)とをそれぞれ投与した場合と比較して、同量のL−オルニチンL−アスパラギン酸塩(10 mmol/kg体重)を投与した場合には血中アンモニア濃度の低下幅が大きくなり、Wtマウス(Saline投与)よりも低くなることが確認された。なお、上記の通り、L−オルニチンL−アスパラギン酸塩は、L−オルニチン塩酸塩とL−アスパラギン酸ナトリウムとの組み合わせと比較して、NaClを含まないことに留意すべきである。また、マウス用量からヒト等価用量を算出するための換算係数として12.3を用いると、マウスにおけるL−オルニチンの投与量2.5 mmol/kg体重(330 mg/kg体重)は、ヒトにおける0.27 mg/kg体重の投与量(体重60 kgに対して1.6 g)に相当する。
これらの結果は、L−オルニチンと、L−アスパラギン酸又はL−アラニンとの組み合わせが、シトリン欠損症における血中アンモニア濃度を顕著に低下できること、例えば、食事などによる血中アンモニア濃度の上昇を抑えられることを示す。また、この結果は、このような組み合わせが、血漿シトルリン濃度を低下できること、又は少なくともL−オルニチンの作用による血漿シトルリン濃度の上昇を抑えられることを示す。さらに、これらの結果は、L−オルニチンL−アスパラギン酸塩が、シトリン欠損症患者に対する格別の血中アンモニア濃度低下作用を有していることを示す。
[実施例2:アスパラギン酸及びアラニンの作用メカニズムの検討]
アラニン及びアスパラギン酸の作用メカニズムを検討するために、肝灌流実験により用いて尿素生成速度及び乳酸/ピルビン酸比(L/P比)を測定した。L/P比は、細胞質NADH/NAD比を示す指標として知られており、L/P比が大きくなることは細胞質内のNADHが増加していることを示す。
肝灌流実験は、Moriyama, M. et al. Hepatol. 44, 930-938 (2006).に記載の方法に従って行った。各実験においては、外因性物質の不存在下で30分間肝臓の灌流を行ってから、薬剤の投与を行った。肝臓を通った後の灌流液は所定時刻において収集された。
具体的には、Wtマウス、Ctrn-KOマウス、mGPD-KOマウス、及びDouble-KOマウスのそれぞれにおいて、L−乳酸(2 mM)、ピルビン酸(0.2 mM)、及び塩化アンモニウム(2 mM)を灌流しながら、さらにL−オルニチン(2 mM)を灌流し、その後さらにL−アラニン(2 mM)又はL−アスパラギン酸(2 mM)を灌流した。その結果を図2(A)〜(D)に示す。
図2(A)(C)に示すように、L−乳酸(2 mM)、ピルビン酸(0.2 mM)、及び塩化アンモニウム(2 mM)を灌流すると、Wtマウスでは尿素生成速度が増加する一方で、L/P比はあまり増えなかったが、Double-KOマウスでは尿素生成速度はあまり増加せず、一方でL/P比が大きく増加した(ともに、Wtマウスとの有意差が確認された)。
図2(A)(C)に示すように、Double-KOマウスにおいて、L−オルニチンの灌流を開始しても、尿素の生成速度はほとんど増加せず、L/P比は次第に増加する傾向が見られたが、さらにL−アラニンを追加することにより、尿素生成速度は有意に増加し、L/P比は有意に減少した。一方で、図2(B)(D)に示すように、さらにL−アスパラギン酸を追加しても、尿素生成速度はほとんど変化せず、L/P比もほとんど変化しなかった。
このように、肝灌流実験においてはL−アスパラギン酸の有効性が確認できず、L−アスパラギン酸を経腸投与した実施例1と相反する結果が得られた。そもそも、本願発明者らにとって実施例1の結果は驚くべきものであった。なぜなら、吸収されたアスパラギン酸は静脈側肝細胞(perivenous hepatocyte)に輸送されるものの、血中アンモニア濃度などに関係する尿素サイクル酵素は門脈側肝細胞(periportal heptatocyte)に存在するためである(Stoll, B. et al. Hepatology 13, 247-253 (1991).)。
本願発明者らは、L−アスパラギン酸は小腸でL−アラニンに変換され、門脈を通って肝臓に運ばれることが、経腸投与されたL−アスパラギン酸が有効であった理由であると考えている(Neame, K. D. et al. J. Physiol. (Lond.) 135, 442-450 (1957). Parsons, D. S. et al. J. Physiol. (Lond.) 239, 677-694 (1974). Windmueller, H. G. et al. Arch. biochem. Biophys. 175, 670-676 (1976).)。
確認のために、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−オルニチン、又はグリシンをマウス(ここではmGPD-KOマウスが用いられた)に経腸投与してから1時間後の、門脈内でのアラニン血漿濃度と、腹部大動脈内でのアラニン血漿濃度との差が測定された。本実験は実施例1と同様に行われた。なお、血液サンプルは、ソムノペンチルを用いた麻酔下で、門脈及び腹部大動脈から同時に採取された。結果を図3に示す。
図3に示す通り、L−アスパラギン酸又はL−グルタミン酸を経腸投与することにより、対照(Saline)と比較して、アラニン濃度差が有意に大きくなったことが確認された。これは、L−アスパラギン酸又はL−グルタミン酸の経腸投与により、門脈を介して肝臓に供給されるアラニンの量が増加することを示す。なお、グリシンを経腸投与しても、アラニン濃度の増加の有意性は確認できなかった。図3の結果は、L−グルタミン酸がL−アスパラギン酸と同様の効果を有すること、すなわちL−オルニチンとL−グルタミン酸の組み合わせが、シトリン欠損症の治療効果を有することを示している。
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明のシトリン欠損症治療剤は以下の構成を備える。すなわち、
有効成分としてL−オルニチンL−アスパラギン酸塩を含有することを特徴とする。

Claims (5)

  1. 有効成分として、
    (1)オルニチン又はその塩、並びに
    (2)アスパラギン酸、アラニン、若しくはグルタミン酸のうち1以上、又はこれらの塩
    を含有することを特徴とする、シトリン欠損症治療剤。
  2. 前記有効成分が、L−オルニチンL−アスパラギン酸塩であることを特徴とする、請求項1に記載のシトリン欠損症治療剤。
  3. オルニチン、アスパラギン酸、アラニン、及びグルタミン酸の総重量が、アミノ酸の総量の50%以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシトリン欠損症治療剤。
  4. オルニチンの投与量が1日あたり1g以上となり、かつアスパラギン酸、アラニン、及びグルタミン酸のうち1以上の合計の投与量が1日あたり1g以上となる量で、シトリン欠損症患者に投与されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のシトリン欠損症治療剤。
  5. シトリン欠損症患者において血中アンモニア濃度を低下させる用途で用いられることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のシトリン欠損症治療剤。
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