以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
実施形態では、タンデム方式といわれる二次転写機構を備える電子写真方式の画像形成装置を一例として説明する。また、一例としての画像形成装置は、コピー機能、プリント機能、ファクシミリ機能等を一つの筐体に搭載したMFP(Multifunction Peripheral/Printer/Product)である。
<実施形態に係る画像形成装置の構成>
図1は、実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す図である。画像形成装置100は、中央に中間転写ユニットを備え、中間転写ユニットは、無端ベルトである中間転写ベルト10を備える。中間転写ベルト10は、3つの支持ローラ14〜16に掛け廻され、時計廻りに回動駆動される。
また、画像形成装置100は、3つの支持ローラ14〜16のうちの第2の支持ローラ15の左方に、画像転写後に中間転写ベルト10上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニングユニット17を備える。
第1の支持ローラ14と第2の支持ローラ15との間に配置された中間転写ベルト10に対向するようにして、イエロー(Y)の作像部、マゼンタ(M)の作像部、シアン(C)の作像部、及びブラック(K)の作像部から構成される作像部20が設けられ、各色の作像部が中間転写ベルト10の移動方向に沿って配置されている。
なお、各色の作像部は、使用するトナーの色が異なる点以外は同様の構成となっている。そのため、説明及び図面では、使用するトナーの色を示す「Y」、「M」、「C」、「K」という添字は適宜省略して説明する。
作像部20は、各色の感光体ドラム40と、帯電ローラ18と、現像ユニットと、クリーニングユニットとを備え、画像形成装置100に対して脱着可能に装着されている。
また、画像形成装置100は、作像部20の上方には、光ビーム走査部21を備える。光ビーム走査部21は、各色の感光体ドラム40に、画像形成のための光ビーム(レーザ光)を照射することで、各色の感光体ドラム40に画像データに応じた静電潜像を形成することができる。
各色の感光体ドラム40の静電潜像は現像ユニットにより現像され、現像された各色のトナー像は、中間転写ベルト10上に重ね合わせされて一次転写される。これにより、中間転写ベルト10上にカラーのトナー像が形成される。トナー像は、像担持体の一例としての中間転写ベルト10に担持され、中間転写ベルト10の移動方向に沿って移動される。なお、作像部20の構成は、別途、図3を参照して詳述する。
また、画像形成装置100は、中間転写ベルト10の下方に2次転写ユニット22を備える。2次転写ユニット22は、2つのローラ23間に、無端ベルトである2次転写ベルト24を掛け渡し、中間転写ベルト10を押し上げて第3の支持ローラ16に押当てるようにして配置されている。2次転写ベルト24は、中間転写ベルト10上に形成されたトナー像を、記録媒体P上に二次転写させることができる。
さらに、画像形成装置100は、2次転写装置22の側方に、定着ユニット25を備える。定着ユニット25は、トナー像が二次転写された状態で搬送されてきた記録媒体P上のトナー像を、記録媒体Pに定着させる。定着ユニット25は、無端ベルトである定着ベルト26と、加熱ローラと、加圧ローラ27とを備え、定着ベルト26及び加圧ローラ27による熱と圧力とにより、記録媒体Pの表面に転写されたトナー像を記録媒体Pに定着させることができる。
また、画像形成装置100は、2次転写ユニット22、及び定着ユニット25の下方に、表面に画像形成された直後の記録媒体Pの裏面にも画像形成するために、記録媒体Pの表裏を反転させて送り出すシート反転ユニット28を備える。
次に、画像形成装置100において、記録媒体P上に画像が形成される一連の流れを説明する。
画像形成装置100は、操作部(図示を省略)における「コピー」のスタートボタンが押されると、原稿自動搬送部であるADF(Auto Document Feeder)400の原稿給紙台30上に原稿が載置されている場合には、ADF400に、原稿をコンタクトガラス32上に向けて搬送させる。一方、原稿給紙台30上に原稿が載置されていない場合には、コンタクトガラス32上に手置きされた原稿を読むために、第1キャリッジ33、及び第2キャリッジ34を備える画像読み取りユニット300を駆動させる。
画像読み取りユニット300において、第1キャリッジ33に含まれる光源は、コンタクトガラス32に光を照射する。原稿面からの反射光は、第1キャリッジ33に含まれる第1ミラーにより第2キャリッジ34に向けて反射され、第2キャリッジ34に含まれるミラーで反射される。そして、原稿面からの反射光は、結像レンズ35により読取りセンサであるCCD(Charge Coupled Device)36の撮像面上で結像させられる。CCD36は原稿面の像を撮像し、CCD36により撮像された画像信号に基づいてY、M、C、BKの各色の画像データが生成される。
また、画像形成装置100は、「プリント」のスタートボタンが押された時や、PC(Personal Computer)等の外部装置から画像形成の指示があった時、FAX(Facsimile)の出力指示があった時には、中間転写ベルト10の回動駆動を開始させるとともに、作像部20の各ユニットの作像準備を行う。
その後、画像形成装置100は、各色の作像プロセスを開始する。各色用の感光体ドラム40に各色の画像データに基づいて変調されたレーザが照射され、静電潜像が形成される。そして、静電潜像が現像された各色のトナー像が、中間転写ベルト10上に、一枚の画像として重ね合わされて形成される。
その後、中間転写ベルト10上のトナー画像の先端が2次転写ユニット22に進入するタイミングで、記録媒体Pの先端が2次転写ユニット22に進入するように、タイミングをはかって記録媒体Pが2次転写ユニット22に送り込まれる。そして、2次転写ユニット22により、中間転写ベルト10上のトナー像が記録媒体Pに二次転写される。トナー像が二次転写された用紙は、定着ユニット25に送り込まれ、トナー像が記録媒体Pに定着される。
ここで、二次転写位置までの記録媒体Pの給紙について説明する。記録媒体Pは、給紙テーブル200の給紙ローラ42のうちの1つが回転駆動することで、給紙ユニット43に多段に備えられた給紙トレイ44のうちの1つから繰り出される。その後、分離ローラ45で1枚だけ分離され、搬送コロユニット46に進入し、搬送ローラ47により搬送される。その後、画像形成装置100内の搬送コロユニット48に導かれ、搬送コロユニット48のレジストローラ49に突き当てられて一時停止された後、上述したように、2次転写のタイミングに合わせて2次転写ユニット22に向けて送り出される。
また、ユーザが手差しトレイ51に記録媒体Pを差し込んで給紙することもできる。ユーザが手差しトレイ51に記録媒体Pを差し込んだ場合には、画像形成装置100は、給紙ローラ50を回転駆動して手差しトレイ51上の記録媒体Pの一枚を分離して手差し給紙路53に引き込む。そして、上述したものと同様に、レジストローラ49に突き当てて一旦停止させてから、上述した2次転写のタイミングに合わせて2次転写ユニット22に送り出す。
定着ユニット25で定着されて排出された記録媒体Pは、切換爪55で排出ローラ56に案内され、排出ローラ56により排出されて、排紙トレイ57上にスタックされる。或いは、切換爪55でシート反転ユニット28に案内され、シート反転ユニット28により反転されて再び二次転写位置に導かれる。その後、記録媒体Pの裏面にも画像が形成された後、排出ローラ56により排紙トレイ57上に排出される。
一方、画像転写後の中間転写ベルト10上に残留する残留トナーは、中間転写体クリーニングユニット17で除去され、再度の画像形成に備えられる。
画像形成装置100は、このようにして、記録媒体Pにカラー画像を形成することができる。
<実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成>
次に、画像形成装置100のハードウェア構成について説明する。図2は、実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、画像形成装置100は、コントローラ910と、近距離通信回路920と、エンジン制御部930と、操作パネル940と、ネットワークI/F950とを備える。
これらのうち、コントローラ910は、コンピュータの主要部であるCPU901と、システムメモリ(MEM−P)902と、ノースブリッジ(NB)903と、サウスブリッジ(SB)904と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)906と、記憶部であるローカルメモリ(MEM−C)907と、HDDコントローラ908と、記憶部であるHD909とを備える。また、NB903とASIC906との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス921で接続した構成となっている。
これらのうち、CPU901は、画像形成装置100の全体制御を行う制御部である。NB903は、CPU901と、MEM−P902、SB904、及びAGPバス921とを接続するためのブリッジであり、MEM−P902に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCI(Peripheral Component Interconnect)マスタ及びAGPターゲットとを備える。
MEM−P902は、コントローラ910の各機能を実現させるプログラムやデータの格納用メモリであるROM902a、プログラムやデータの展開、及びメモリ印刷時の描画用メモリなどとして用いるRAM902bとからなる。
なお、RAM902bに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、CD−R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成しても良い。
SB904は、NB903とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。ASIC906は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス921、PCIバス922、HDD908およびMEM−C907をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。
このASIC906は、PCIターゲットおよびAGPマスタ、ASIC906の中核をなすアービタ(ARB)、MEM−C907を制御するメモリコントローラ、ハードウェアロジック等により画像データの回転などを行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)、並びに、スキャナ部931及びプリンタ部932との間でPCIバス922を介したデータ転送を行うPCIユニットとからなる。
なお、ASIC906には、USBのインタフェースや、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)のインタフェースを接続するようにしても良い。
MEM−C907は、コピー用画像バッファ及び符号バッファとして用いるローカルメモリである。HD909は、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。HD909は、CPU901の制御にしたがってHD909に対するデータの読出又は書込を制御する。
AGPバス921は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースであり、MEM−P902に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレータカードを高速にすることができる。
また、近距離通信回路920には、近距離通信回路920aが備わっている。近距離通信回路920は、NFC、Bluetooth(登録商標)等の通信回路である。
更に、エンジン制御部930は、スキャナ部931及びプリンタ部932によって構成されている。また、操作パネル940は、現在の設定値や選択画面等を表示させ、操作者からの入力を受け付けるタッチパネル等のパネル表示部940a、並びに、濃度の設定条件などの画像形成に関する条件の設定値を受け付けるテンキー及びコピー開始指示を受け付けるスタートキー等からなる操作パネル940bを備えている。
コントローラ910は、画像形成装置100全体の制御を行い、例えば、描画、通信、操作パネル940からの入力等を制御する。スキャナ部931又はプリンタ部932には、誤差拡散やガンマ変換などの画像処理部分が含まれている。
なお、画像形成装置100は、操作パネル940のアプリケーション切り替えキーにより、ドキュメントボックス機能、コピー機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能を順次に切り替えて選択することが可能となる。
ドキュメントボックス機能の選択時にはドキュメントボックスモードとなり、コピー機能の選択時にはコピーモードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリンタモードとなり、ファクシミリモードの選択時にはファクシミリモードとなる。
また、ネットワークI/F950は、ネットワークを利用してデータ通信をするためのインタフェースである。近距離通信回路920及びネットワークI/F950は、PCIバス922を介して、ASIC906に電気的に接続されている。
<実施形態に係る作像部の構成>
次に、画像形成装置100における作像部20の構成について、図3を用いて説明する。なお、作像部20は、図2のプリンタ部932に含まれる。
図3は、実施形態に係る画像形成装置の作像部の構成の一例を示す図であり、各色の作像部のうちの1つの構成の一例を示している。上述したように、その他の3色の作像部は、使用するトナーの色が異なる点を除き、同様の構成であるため、図示と説明を省略し、1つの作像部のみを説明する。
作像部20は、感光体ドラム40と、帯電ローラ18と、現像器29と、クリーニングブレード13と、除電器19と、一次転写ローラ62とを備える。帯電ローラ18には帯電用高圧電源181が電気的に接続され、一次転写ローラ62には転写用高圧電源621が電気的に接続されている。
像担持体の一例としての感光体ドラム40は、負帯電性の有機感光体であり、ドラム状導電性支持体上に感光層等を設けたものである。感光体ドラム40は、基層としての導電性支持体上に、絶縁層である下引き層、感光層としての電荷発生層及び電荷輸送層、保護層、すなわち表面層が順次積層されている。感光体ドラム40の導電性支持体には、体積抵抗が1010Ωcm以下の導電性材料等を用いることができる。
帯電ローラ18は、導電性芯金の外周に中抵抗の弾性層を被覆してなるローラ部材である。帯電用高圧電源181から所定の電圧が印加され、帯電ローラ18に対向する感光体ドラム40の表面を一様に帯電する。帯電ローラ18の汚れを除去するクリーニングローラを、帯電ローラ18に接触させて設けた構成としてもよい。
帯電ローラ18と感光体ドラム40との間には微小な空隙が設けられ、帯電ローラ18は感光体ドラム40に対し非接触な状態で配置されている。このような状態で感光体ドラム40を帯電させる帯電方式は、非接触帯電方式と称される。
非接触帯電方式は、帯電ローラ18と感光体ドラム40を接触させて帯電させる接触帯電方式に比べ、感光体ドラム40上に残留するトナーや潤滑剤などの異物が帯電ローラ18に付着し難いため、異物の付着による帯電ムラを抑えることができる。但し、実施形態は、非接触帯電方式に限定されるものではなく、接触帯電方式に適用しても良い。
帯電用高圧電源181は、帯電ローラ18にDC電圧(DCバイアス)とAC電圧(ACバイアス)を重畳させた帯電バイアスを印加する。なお、以下では「DCバイアスとACバイアスを重畳させた帯電バイアス」を、単に「帯電バイアス」という。
現像器29は、感光体ドラム40に対向する現像ローラ29aを有している。現像ローラ29aは、内部に固設されてローラ周面に磁極を形成するマグネットと、マグネットの周囲を回転するスリーブとを備える。マグネットによって現像ローラ29a上に複数の磁極が形成されて、現像ローラ29a上に現像剤が担持される。
クリーニングブレード13は、感光体ドラム40表面に付着する未転写トナー等の付着物を機械的に掻き取る。クリーニングブレード13は、ウレタンゴム等のゴム材料からなり略板状に形成されたブレード状部材であり、感光体ドラム40表面に所定角度かつ所定圧力で当接している。
除電器19は、トナー像が転写された後に、感光体ドラム40表面の電荷を除去する。
帯電ローラ18で一様に帯電された感光体ドラム40は、画像データに応じて光ビーム走査部21による光ビームで露光される。感光体ドラム40表面には静電潜像が形成される。現像器29は、感光体ドラム40表面に形成された静電潜像に、トナーを付着させる。これにより感光体ドラム40表面にトナー像が現像される。
転写用高圧電源621で生成された電圧が一次転写ローラ62に印加されることで、感光体ドラム40表面のトナー像は、中間転写ベルト10に転写される。中間転写ベルト10のトナー像は、二次転写ユニット22で記録媒体Pに転写され、定着ユニット25で記録媒体Pに定着される。感光体ドラム表面の残トナー等は、クリーニングブレード13で除去される。また、感光体ドラム40表面の電荷は、除電器19により除去される。
<実施形態に係る画像形成装置の機能構成>
次に、画像形成装置100の機能構成について、図4を参照して説明する。図4は、実施形態に係る画像形成装置の機能構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、画像形成装置100は、帯電部101と、帯電バイアス印加部102と、帯電バイアス制御部103とを備える。
帯電部101は、帯電ローラ18等により実現され、感光体ドラム40の表面を一様に帯電させる機能を有する。
帯電バイアス印加部102は、帯電用高圧電源181等により実現され、帯電部101に帯電DCバイアスと帯電ACバイアスを重畳させた帯電バイアスを印加する機能を有する。また、帯電バイアス印加部102は、帯電ACバイアス生成部104と、帯電DCバイアス生成部105とを備える。
帯電ACバイアス生成部104は、帯電バイアスのうちのACバイアス成分を生成し、帯電部101に印加する。より詳しくは、帯電ACバイアス生成部104は、帯電バイアス制御部103からの制御信号に応じた電圧値の帯電ACバイアスを、制御信号に応じたタイミングで生成し、帯電部101に印加することができる。
帯電DCバイアス生成部105は、帯電バイアスのうちのDCバイアス成分を生成し、帯電部101に印加する。より詳しくは、帯電DCバイアス生成部105は、帯電バイアス制御部103からの制御信号に応じた電圧値の帯電DCバイアスを、制御信号に応じたタイミングで生成し、帯電部101に印加することができる。
帯電バイアス制御部103は、帯電バイアス印加部102が帯電部101に印加する帯電バイアスの電圧値とタイミングとを制御する機能を有する。帯電バイアス制御部103は、制御信号としてのPWM(Pulse Width Modulation)信号を帯電バイアス印加部102に出力し、帯電バイアスのうちの帯電ACバイアス及び帯電DCバイアスのそれぞれの電圧値とタイミングを制御することができる。
帯電バイアス制御部103は、図2のエンジン制御部930に含まれるCPUや、ASIC、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により実現することができる。但し、これに限定されるものではなく、図2のコントローラ910のCPU901により実現しても良いし、CPUや、ASIC、FPGAを備える専用の制御基板により実現しても良い。
<比較例に係る画像形成装置の帯電バイアス印加開始処理のシーケンス>
ここで、比較例に係る帯電バイアス印加開始処理のシーケンスについて、図5を参照して説明する。図5は、実施形態の比較例に係る画像形成装置の帯電バイアス印加開始処理のシーケンスを説明する図である。
図5における上側の図は、帯電ACバイアスの印加開始処理のシーケンスを示し、下側の図は、帯電DCバイアスの印加開始処理のシーケンスを示す。時刻t0は、帯電バイアス制御部が帯電バイアス印加部に対し、制御信号によって、帯電部への帯電ACバイアスの印加を指示する時刻を示す。時刻t1は、帯電バイアス印加部が制御信号に応じて、実際に帯電ACバイアスを印加する時刻を示す。また、時刻t2は、帯電バイアス制御部が帯電バイアス印加部に対して、帯電DCバイアスの印加を指示する時刻を示す。
ここで、帯電ACバイアスを生成する電気回路の構成に起因して、図5に示すように、帯電バイアス制御部が帯電ACバイアスの印加を指示した後、実際に帯電バイアス印加部が帯電ACバイアスを印加するまでに遅延時間tdelの遅延が発生する場合がある。一方、帯電DCバイアスを生成する電気回路では、遅延はほぼ発生しない。
そのため、帯電バイアス制御部が、帯電ACバイアスの印加を指示した後、十分な時間が経過する前に、帯電DCバイアスの印加を指示すると、帯電部において帯電ACバイアスの印加が不十分な領域が生じ、これに起因した帯電不良による異常画像(裏面黒帯等)が発生する場合がある。
そのため、比較例では、図5に示すように、帯電バイアス制御部は、帯電ACバイアスの印加を指示した後、十分な猶予時間tsetが経過した後に帯電DCバイアスの印加を指示する。猶予時間tsetは一例として200msである。このように、猶予時間tsetを設けることで、遅延時間tdelが生じたり、また、遅延時間tdelにばらつきが生じたりしても、帯電バイアス印加部は、帯電DCバイアスより早いタイミングで帯電ACバイアスを帯電部101に印加することができる。
しかしながら、200ms等の猶予時間tsetを設ける必要があるため、画像形成装置が画像形成を開始してから1枚目の記録媒体Pの画像形成が終了するまでの時間であるファーストコピータイムが長くなり、ユーザに煩わしさを感じさせる場合があった。
[第1の実施形態]
<第1の実施形態に係る画像形成装置の帯電バイアス印加開始処理のシーケンス>
そこで、画像形成装置100は、図6に示すシーケンスにより、帯電部101への帯電バイアスの印加を開始する。図6は、本実施形態に係る画像形成装置の帯電バイアス印加開始処理のシーケンスの一例を説明する図である。図5と同様に、図6における上側の図は、帯電ACバイアスの印加開始処理のシーケンスを示し、下側の図は、帯電DCバイアスの印加開始処理のシーケンスを示す。
帯電バイアス制御部103は、比較例に係る時刻t0と比較して早い時刻である時刻t3に、予め定められた所定の電圧値V1より小さい電圧値V0の帯電ACバイアスの印加を指示する。
この指示に応じて、帯電バイアス印加部102が所定の電圧値V1より小さい電圧値V0の帯電ACバイアスを帯電部101に印加することを、以下ではプレ印加と称する。図6において、一点鎖線の丸61で囲った部分がプレ印加のシーケンスに該当する。
時刻t4は、帯電バイアス印加部102が、プレ印加の指示に応じて、実際に帯電部101に帯電ACバイアスがプレ印加される時刻である。また、遅延時間tdel'は、プレ印加の指示があった時刻から、帯電バイアス印加部102が実際にプレ印加する時刻までの遅延時間である。
プレ印加の電圧値V0は所定の電圧値V1より小さいため、比較例に係る遅延時間tdelに対して遅延時間tdel'は短くなる。この短縮分に応じて、帯電バイアス制御部103によるプレ印加の指示を行う時刻t3を、比較例に係る時刻t0に対して早めることができる。一例として、時刻t3は時刻t0より200ms早い時刻である。
ここで、プレ印加における「所定の電圧値V1より小さい電圧値V0」は、予め実験で適正な電圧値が定められている。また、この適正な電圧値は、感光体ドラム40に悪影響を及ばさない電圧値であり、より具体的には、帯電ACバイアスによる放電が起こらない小さな電圧値である。このようにすることで異常画像を抑制し、また、感光体ドラム40の寿命を延ばすことができる。
プレ印加の後の時刻t0に、帯電バイアス制御部103は、帯電バイアス印加部102に対して、プレ印加の電圧値V0を所定の電圧値V1に切り替える指示を行う。ここで、時刻t0は、図5の比較例で、帯電バイアス制御部が帯電バイアス印加部に対して帯電ACバイアスの印加を指示する時刻t0と同じ時刻である。
切り替え処理は、制御信号のDutyの切り替えにより行われる。一例として、制御信号のDutyを10%から50%に切り替えることで、電圧値V0を所定の電圧値V1に切り替えることができる。この切り替え処理では遅延が生じないため、指示した時刻t0とほぼ同時に、帯電バイアス印加部102から帯電部101に対して、実際に帯電ACバイアスが印加される。
時刻t2は、帯電バイアス制御部103が帯電バイアス印加部102に対して、帯電DCバイアスの印加を指示する時刻を示す。プレ印加を行うことで、電圧値V0を所定の電圧値V1に切り替える指示から時刻t2までの猶予時間tset'を、比較例に係る猶予時間tsetに対して短縮することができる。猶予時間tset'は、一例として50msである。猶予時間の短縮により、帯電バイアスの印加処理に要する時間が短縮される。
上述した例では、帯電バイアス制御部103が帯電ACバイアスの印加を指示する時刻t0は、比較例と本実施形態とで同じである。そのため、本実施形態は、比較例に対して150ms、帯電バイアスの印加開始処理を短縮できる。
帯電バイアスの印加開始処理の時間短縮に伴い、ファーストコピータイムを短くすることが可能となる。
<第1の実施形態に係る画像形成装置による帯電バイアス印加開始処理>
次に、画像形成装置100による帯電バイアス印加開始処理について、図7を参照して説明する。図7は、本実施形態に係る画像形成装置による帯電バイアス印加開始処理の一例を示すフローチャートである。
画像形成装置100が印刷ジョブを開始すると、先ず、ステップ71において、帯電バイアス制御部103は、Dutyが10%の制御信号により、帯電バイアス印加部102に対して、帯電ACバイアスの印加を指示する。つまり、帯電バイアス制御部103は、帯電バイアス印加部102に対して所定の電圧値V1より低い電圧値V0の帯電ACバイアスのプレ印加を指示する。
続いて、ステップS72において、帯電バイアス制御部103は、帯電ACバイアスのプレ印加の指示後、200msの時間が経過したか否かを判定する。
ステップS72で、200msの時間が経過していないと判定された場合(ステップS72、No)は、ステップS72の処理が再度実行される。
一方、200msの時間が経過したと判定された場合(ステップS72、Yes)は、帯電バイアス制御部103は、Dutyが50%の制御信号により、帯電バイアス印加部102に対して、帯電ACバイアスの印加を指示する。換言すると、帯電バイアス制御部103は、制御信号のDutyを10%から50%に切り替えることで、帯電バイアス印加部102が帯電部101に印加する電圧を、電圧値V0から所定の電圧値V1に切り替える。
続いて、ステップS74において、帯電バイアス制御部103は、所定の電圧値V1の帯電ACバイアスの印加の指示後、50msの時間が経過したか否かを判定する。
ステップS74で、50msの時間が経過していないと判定された場合(ステップS74、No)は、ステップS74の処理が再度実行される。
一方、50msの時間が経過したと判定された場合(ステップS74、Yes)は、ステップS75において、帯電バイアス制御部103は、制御信号により、帯電バイアス印加部102に対して帯電DCバイアスの印加を指示する。
このようにして、画像形成装置100は、帯電部101への帯電バイアスの印加を開始することができる。
<効果>
以上説明してきたように、本実施形態では、帯電バイアス制御部103は、帯電バイアス印加部102に、予め定められた所定の電圧値V1より低い電圧値V0の帯電ACバイアスを印加させた後、帯電DCバイアスを印加させる前に、所定の電圧値V1の帯電ACバイアスを印加させる。
プレ印加の電圧値V0は所定の電圧値V1より小さいため、遅延時間tdel'を比較例に係る遅延時間tdelに対して短縮することができる。また、プレ印加後に電圧値V0を所定の電圧値V1に切り替える処理では遅延が生じないため、猶予時間tset'を、比較例に係る猶予時間tsetと比較して短縮することができる。このようにして、帯電バイアスの印加開始処理に要する時間を短縮し、ファーストコピータイムを短くすることができる。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態における画像形成装置100aを、図11〜12を用いて説明する。なお、第1の実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する。
<第2の実施形態に係る画像形成装置による帯電バイアス印加開始処理>
本実施形態に係る画像形成装置100aによる帯電バイアスの印加開始処理について、図8を参照して説明する。図8は、本実施形態に係る画像形成装置による帯電バイアスの印加開始処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS81〜S85までの処理は、図7のステップS71〜S75までの処理と同じであるため、ここでは説明を省略する。
ステップS86において、帯電バイアス制御部103aは、印刷ジョブが終了したか否かを判定する。
ステップS86で、印刷ジョブが終了していないと判定された場合(ステップS86、No)、ステップS86の処理が再度実行される。
一方、ステップS86で、印刷ジョブが終了したと判定された場合(ステップS86、Yes)、ステップS87において、帯電バイアス制御部103aは、制御信号により、帯電バイアス印加部102に対して帯電DCバイアスの印加の停止を指示する。
続いて、ステップS88において、帯電バイアス制御部103aは、Dutyが10%の制御信号により、帯電バイアス印加部102に対して、帯電ACバイアスの印加を指示する。換言すると、帯電バイアス制御部103aは、制御信号のDutyを50%から10%に切り替えることで、帯電バイアス印加部102が帯電部101に印加する電圧を、所定の電圧値V1から電圧値V0に切り替える。
続いて、ステップS89において、帯電バイアス制御部103aは、次の印刷ジョブがあるか否かを判定する。
ステップS89で、次の印刷ジョブがあると判定された場合(ステップS89、Yes)、ステップS83に戻り、ステップS83以降の処理が再度実行される。
一方、ステップS89で、次の印刷ジョブがないと判定された場合(ステップS89、No)、処理は終了する。
<効果>
本実施形態では、帯電バイアス印加処理を、図8に示したシーケンスに従って実行することで、印刷ジョブ間において、帯電ACバイアスの印加を停止させることなく、プレ印加と同じ状態にすることができる。これにより、次の印刷ジョブにおいて、帯電部101に帯電ACバイアスを早いタイミングで印加させることができる。そして、次の印刷ジョブで、画像形成装置100aが画像形成を開始してから1枚目の記録媒体Pの画像形成が終了するまでの時間を短縮することができる。
以上、本発明の実施形態の例について記述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
また、実施形態は、画像形成装置の制御方法も含む。画像形成装置の制御方法は、例えば、像担持体を帯電させる帯電工程と、前記帯電工程にDCバイアスとACバイアスを重畳させた帯電バイアスを印加する帯電バイアス印加工程と、前記帯電バイアス印加工程に、予め定められた所定の電圧値より低い電圧値の前記ACバイアスを印加させた後、前記DCバイアスを印加させる前に、前記所定の電圧値の前記ACバイアスを印加させる帯電バイアス制御工程と、を含む。このような画像形成装置の制御方法により、上述した画像形成装置と同様の効果を得ることができる。