JP2020142766A - 自動車用演算装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】深層学習を利用する機能を有する自動車用演算装置において、機能安全レベルを向上させる。【解決手段】深層学習を利用して車外環境を推定する車外環境推定部111と、車外環境推定部の推定結果を基にして、第1経路候補を算出する第1経路算出部113と、深層学習を利用せずに、所定のルールにより車外の対象物を認定する対象物認定部121と、対象物認定部121の結果を基にして、第2安全領域SA2を算出する第2安全領域算出部122と、自動車1の目標運動を決定する目標運動決定部130とを備え、目標運動決定部130は、第1経路候補が第2安全領域SA2内にあるときには、第1経路候補を自動車1が走行すべき経路として選択する一方、第1経路候補が第2安全領域SA2を逸脱しているときには、第1経路候補を自動車1が走行すべき経路としては選択しない。【選択図】図6
Description
ここに開示された技術は、自動車用演算装置に関する技術分野に属する。
昨今、ニューラルネットワークを用いた深層学習を利用して、車内外の環境認識を行う技術が自動車に対しても利用されるようになっている。
例えば、特許文献1には、車両の装備に対する乗員の状態を推定する推定装置であって、ニューラルネットワークを利用した深層学習により構築されたモデルを記憶する記憶部と、装備を含む画像を入力し、モデルを用いて乗員の状態を推定し、乗員の特定部位の骨格位置を示す第1の情報と、装備に対する乗員の状態を示す第2の情報と、を出力する処理部とを備える推定装置が開示されている。
ところで、昨今では、国家的に自動運転システムの開発が推進されている。自動運転システムでは、一般に、カメラ等により車外環境情報が取得され、取得された車外環境情報に基づいて自動車が走行すべき経路が算出される。この経路の算出においては、車外環境の認定が重要であり、この車外環境の認定において、深層学習を利用することが検討されている。
ここで、自動運転を担う演算装置における機能安全のソフトウェア設計のコンセプトとして、プログラムを構成する複数のモジュールの機能安全の適用に関し、例えば、自動車用機能安全規格(ISO 26262)では、ハザードを評価する指標としてASIL(Automotive Safety Integrity Level)が提案されている。ASILでは、ASIL−AからASIL-Dまでの各機能安全レベルに見合った設計レベルでの開発が要求されている。
これに対し、深層学習を利用した車外環境の認定及び経路の算出は、未だ発展途上の状態であり、ASIL−B程度に留まるとされている。このため、自動運転機能を有する自動車においてASIL−D程度の機能安全レベルを満たすためには、演算装置を、深層学習を利用する機能のみで構成するのでは不十分である。
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、深層学習を利用する機能を有する演算装置において、機能安全レベルを向上させることにある。
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、自動車に搭載される自動車用演算装置を対象として、車外環境の情報を取得する情報取得手段からの出力を基にして、深層学習を利用して車外環境を推定する車外環境推定部と、前記車外環境推定部の推定結果を基にして、経路候補を算出する経路算出部と、前記情報取得手段からの出力を基にして、深層学習を利用せずに、所定のルールにより車外の対象物を認定する対象物認定部と、前記対象物認定部の結果を基にして、安全領域を算出する安全領域算出部と、前記経路算出部からの出力及び前記安全領域算出部からの出力を受けて、前記自動車の目標運動を決定する目標運動決定部とを備え、前記目標運動決定部は、前記経路候補が前記安全領域内にあるときには、該経路候補を前記自動車が走行すべき経路として選択して、前記自動車が前記経路候補を通るように該自動車の目標運動を決定する一方、前記経路候補が前記安全領域を逸脱しているときには、該経路候補を前記自動車が走行すべき経路としては選択しない、という構成とした。
この構成によると、深層学習による車外環境の推定とは別に、所定のルールにより車外の対象物が認定される。ここでいう、所定のルールとは、従来より自動車等に採用されている物標等の認定方法であって、所定のルールに基づく対象物の認定機能は、ASIL−D相当の機能安全レベルである。このため、対象物認定部の結果を基にして算出される安全領域は、安全性の高い領域であるといえる。
そして、目標運動決定部は、深層学習により推定された車外環境に基づいて算出された経路候補(以下、推定経路候補という)が安全領域内にあるときには、該推定経路候補を自動車が走行すべき経路とする。これにより、自動車が安全性の高い経路を走行することができる。一方で、推定経路候補が安全領域を逸脱しているときには、該経路候補を自動車が走行すべき経路としては選択しない。このときには、例えば、所定のルールにより認定された対象物情報に基づいて安全領域を通る経路を再算出したり、自動車に運転者が搭乗している場合には該運転者に運転を任せたりすることで、自動車が安全性の高い経路を走行することができる。
したがって、深層学習を利用する機能を有する演算装置において、機能安全レベルを向上させることができる。
前記自動車用演算装置の一実施形態では、前記経路算出部は、複数の前記経路候補を算出し、前記目標運動決定部は、前記複数の経路候補のうち前記安全領域から逸脱した経路については、前記自動車が走行すべき経路としては選択しない。
この構成によると、自動車はより効果的に安全性の高い経路を走行することができる。例えば、複数の経路候補のうち一部の候補が安全領域から逸脱しており、残りの候補は安全領域内にあるときには、該残りの経路のうちの1つを、自動車が走行すべき経路として選択することで、自動車は安全性の高い経路を走行することができる。また、複数の経路候補の全てが安全領域から逸脱しているときには、前述したように、所定のルールにより認定された対象物情報に基づいて安全領域を通る経路を再算出したり、自動車に運転者が搭乗している場合には該運転者に運転を任せたりすることで、自動車が安全性の高い経路を走行することができる。
前記自動車用演算装置において、前記経路算出部は、強化学習を利用して前記経路候補を算出する、という構成でもよい。
この構成によると、例えば、安全性(例えば、障害物との衝突リスクの低さ)を強化学習のQ値として設定すれば、深層学習が適当である場合には、安全性の高い推定経路候補が算出されやすくなる。これにより、自動車はより効果的に安全性の高い経路を走行することができる。
以上説明したように、ここに開示された技術によると、深層学習を利用する機能を有する演算装置において、機能安全レベルを向上させることができる。
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本実施形態1に係る自動車用演算装置(以下、省略して演算装置100という)の構成を示す。演算装置100は、例えば、四輪の自動車1に搭載される演算装置である。自動車1は、運転者によるアクセル等の操作に応じて走行するマニュアル運転と、運転者の操作をアシストして走行するアシスト運転と、運転者の操作なしに走行する自動運転とが可能な自動車である。尚、以下の説明では、演算装置100が搭載された自動車1を他の車両と区別するために、自車両1ということがある。
図1は、本実施形態1に係る自動車用演算装置(以下、省略して演算装置100という)の構成を示す。演算装置100は、例えば、四輪の自動車1に搭載される演算装置である。自動車1は、運転者によるアクセル等の操作に応じて走行するマニュアル運転と、運転者の操作をアシストして走行するアシスト運転と、運転者の操作なしに走行する自動運転とが可能な自動車である。尚、以下の説明では、演算装置100が搭載された自動車1を他の車両と区別するために、自車両1ということがある。
演算装置100は、1つ又は複数のチップで構成されたマイクロプロセッサであって、CPUやメモリ等を有している。尚、図1においては、本実施形態に係る機能(後述する経路生成機能)を発揮するための構成を示しており、演算装置100が有する全ての機能を示しているわけではない。
図1に示すように、演算装置100は、複数のセンサ等からの出力に基づいて、自動車1の目標運動を決定して、デバイスの作動制御を行う。演算装置100に情報を出力するセンサ等は、自動車1のボディ等に設けられかつ車外環境を撮影する複数のカメラ50と、自動車1のボディ等に設けられかつ車外の物標等を検知する複数のレーダ51と、自動車1の絶対速度を検出する車速センサ52と、自動車1のアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度センサ53と、自動車1のステアリングホイールの回転角度(操舵角)を検出する操舵角センサ54と、自動車1のブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキセンサ55と、全地球測位システム(Global Positioning System:GPS)を利用して、自動車1の位置(車両位置情報)を検出する位置センサ56とを含んでいる。一方で、演算装置100が制御する対象は、エンジン10と、ブレーキ20と、ステアリング30とを含んでいる。
各カメラ50は、自動車1の周囲を水平方向に360°撮影できるようにそれぞれ配置されている。各カメラ50は、車外環境を示す光学画像を撮像して画像データを生成する。各カメラ50は、生成した画像データを演算装置100に出力する。カメラ50は、車外環境の情報を取得する情報取得手段の一例である。
各レーダ51は、カメラ50と同様に、検出範囲が自動車1の周囲を水平方向に360°広がるようにそれぞれ配置されている。レーダ51の種類が特に限定されず、例えば、ミリ波レーダや赤外線レーダを採用することができる。レーダ51は、車外環境の情報を取得する情報取得手段の一例である。
エンジン10は、動力駆動源であり、内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン)を含む。演算装置100は、自動車1を加速又は減速させる必要がある場合に、エンジン10に対してエンジン出力変更信号を出力する。エンジン10は、マニュアル運転時には、運転者のアクセルペダルの操作量等により制御されるが、アシスト運転や自動運転時には、演算装置100により算出された目標運動に基づいて制御される。尚、図示は省略しているが、エンジン10の回転軸には、エンジン10の出力により発電する発電機が連結されている。
ブレーキ20は、ここでは電動ブレーキである。演算装置100は、自動車1を減速させる必要がある場合に、ブレーキ20に対してブレーキ要求信号を出力する。ブレーキ要求信号を受けたブレーキ20は、該ブレーキ要求信号に基づいてブレーキアクチュエータ(図示省略)を作動させて、自動車1を減速させる。ブレーキ20は、マニュアル運転時には、運転者のブレーキペダルの操作量等により制御されるが、アシスト運転や自動運転時には、演算装置100により算出された目標運動に基づいて制御される。
ステアリング30は、ここではEPS(Electric Power Steering)である。演算装置100は、自動車1の進行方向を変更する必要がある場合に、ステアリング30に対して操舵方向変更信号を出力する。ステアリング30は、マニュアル運転時には、運転者のステアリングホイール(所謂ハンドル)の操作量等により制御されるが、アシスト運転や自動運転時には、演算装置100により算出された目標運動に基づいて制御される。
トランスミッション40は、有段式のトランスミッションである。演算装置100は、出力すべき駆動力に応じて、トランスミッション40に対してギヤ段変更信号を出力する。トランスミッション40は、マニュアル運転時には、運転者のシフトレバーの操作や運転者のアクセルペダルの操作量等により制御されるが、アシスト運転や自動運転時には、演算装置100により算出された目標運動に基づいて制御される。
演算装置100は、マニュアル運転時には、アクセル開度センサ52等の出力に基づく制御信号をエンジン10等に送信する。一方で、演算装置100は、アシスト運転時や自動運転時には、自動車1の走行経路を設定して、自動車1が該走行経路を走行するように、エンジン10等に制御信号を出力する。演算装置100は、アシスト運転時や自動運転時において、エンジン10等に出力する制御信号を生成するための構成として、深層学習を利用して車外環境を推定する機能を有する第1演算部110と、深層学習を用いずに所定のルールに基づいて対象物を認定する機能を有する第2演算部120と、第1及び第2演算部110,120からの出力を受けて自動車1の目標運動を決定する目標運動決定部130と、目標運動決定部130が決定した目標運動を達成する上で、最もエネルギー効率がよくなるように各種デバイス(後述のエンジン10等)の制御量を算出するエネルギーマネジメント部140とを有している。
第1演算部110は、カメラ50及びレーダ51からの出力を基にして、深層学習を利用して車外環境を推定する車外環境推定部111と、車外環境推定部111で推定された車外環境に対して、第1安全領域SA1(図3参照)を設定する第1安全領域設定部112と、車外環境推定部111の推定結果と第1安全領域設定部112で設定された第1安全領域SA1を基にして、第1経路候補を算出する第1経路算出部113とを有する。
車外環境推定部111は、カメラ50及びレーダ51からの出力を基にして、深層学習を用いた画像認識処理により車外環境を推定する。具体的には、車外環境推定部111は、カメラ50からの画像データを基に深層学習により物体識別情報を構築するとともに、該物体識別情報にレーダによる測位情報を統合して車外環境を表す3Dマップを作成する。また、該3Dマップに対して、深層学習に基づく各物体の挙動予測等を統合して環境モデルを生成する。深層学習では、多層ニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)が用いられる。多層ニューラルネットワークとして、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)がある。
第1安全領域設定部112は、車外環境推定部111により作成された3Dマップに対して第1安全領域SA1を設定する。この第1安全領域SA1は、深層学習を利用して構築されたモデルを用いて、自車両が通過可能な領域として設定される。モデルは、例えば、自動車1の車種毎に予め構築されたモデルを、運転者の過去の運転履歴等を基に再構築することで構築される。尚、第1安全領域SA1は、基本的には、道路上であって、他の車両や歩行者等の動的な障害物、及び中央分離体やセンターポールなどの静的な障害物が存在しない領域をいう。第1安全領域SA1は、緊急駐車が可能な路肩のスペースを含んでいてもよい。
第1経路算出部113は、第1安全領域設定部112で設定された第1安全領域SA1内を通るような第1経路候補を算出する。第1経路算出部113は、強化学習を利用して第1経路候補を算出する。強化学習は、一連のシミュレーションの結果(ここでは経路候補)に対して評価関数を設定し、ある目的に適ったシミュレーションには良い評価を与え、そうでない結果に対しては低い評価を与えることで、目的に適った経路候補を学習する機能である。実際の算出方法については後述する。
第2演算部120は、カメラ50及びレーダ51からの出力を基にして、深層学習を利用せずに、所定のルールにより車外の対象物を認定する対象物認定部121と、対象物認定部121の結果を基にして、第2安全領域SA2(図4参照)を算出する第2安全領域算出部122、対象物認定部121の結果と第2安全領域設定部122で設定された第2安全領域SA2を基にして、第2経路候補を算出する第2経路算出部123とを有する。
対象物認定部121は、従来より利用されている対象物認定ルールに基づいて対象物を認定する。対象物は、例えば、走行車両、駐車車両、歩行者等である。対象物認定部121は、自車両と対象物との間の相対距離や相対速度についても認定する。また、対象物認定部121は、カメラ50及びレーダ51からの出力を基にして、走行路(区画線等を含む)についても認定する。
第2安全領域設定部122は、対象物認定部121が認定した対象物との衝突を回避可能な領域として、第2安全領域SA2を設定する。この第2安全領域SA2は、例えば、対象物の周囲数mを回避不能範囲とみなす等の所定のルールに基づいて設定される。第2安全領域設定部122は、走行車両の速度や歩行者の速度を考慮して第2安全領域SA2を設定可能に構成されている。尚、第2安全領域SA2は、第1安全領域SA1と同様に、基本的には、道路上であって、他の車両や歩行者等の動的な障害物、及び中央分離体やセンターポールなどの静的な障害物が存在しない領域をいう。第2安全領域SA2は、緊急駐車が可能な路肩のスペースを含んでいてもよい。
第2経路算出部123は、第2安全領域設定部122で設定された第2安全領域SA2内を通るような第2経路候補を算出する。実際の算出方法については後述する。
目標運動決定部130は、第1及び第2演算部110,120からの出力、特に、第1及び第2安全領域SA1,SA2の情報、並びに第1経路候補及び第2経路候補の情報を受けて自動車1の目標運動を決定する。目標運動決定部130は、自動車1が走行すべき経路を設定して、該経路を自動車1が走行するように、各種デバイス(主にエンジン10、ブレーキ20、ステアリング30、トランスミッション40)への要求作動量(例えば、エンジントルクやブレーキアクチュエータの作動量等)を決定する。
エネルギーマネジメント部140は、目標運動決定部130で決定された各種デバイスへの要求量を達成する上で、最もエネルギー効率がよくなるように各種デバイス(後述のエンジン10等)の制御量を算出する。
エネルギーマネジメント部140は、例えば、目標運動決定部130で決定された要求駆動力を出力するにあたり、エンジン10の燃料消費量が最も少なくなるように、トランスミッション40の段数と、吸排気バルブ(図示省略)の開閉タイミングやインジェクタ(図示省略)の燃料噴射タイミング等を算出する。また、エネルギーマネジメント部140は、目標の制動力を出力するにあたり、エンジンブレーキが最小となるように、エンジン10に接続された前記発電機の回生発電量や冷房用コンプレッサの駆動負荷を強めることにより前記制動力を生成する。また、エネルギーマネジメント部140は、コーナリング時に自動車1にかかる転がり抵抗が最も小さくなるように、車速と舵角とを制御する。具体的には、ローリングと自動車1の前部が沈み込むピッチングとを同期して発生させてダイアゴナルロール姿勢が生じるように、制動力の発生と操舵タイミングとを調整する。ダイアゴナルロール姿勢が生じることにより、前側の旋回外輪にかかる荷重が増大して、小さな舵角で旋回でき、自動車1にかかる転がり抵抗を小さくすることができる。
次に、図2を参照しながら、第1経路候補の算出方法について説明する。図2では第1安全領域SA1については図示を省略しているが、算出される第1経路候補は第1安全領域SA1内を通る経路である。尚、第1経路候補の算出が行われるのは、自動車1の運転モードがアシスト運転か自動運転のときであり、マニュアル運転のときには第1経路候補の算出は実行されない。
まず、第1経路算出部121は、図2に示すように、走行路情報に基づいて、グリッド点設定処理を実行する。グリッド点設定処理において、ECU10は、先ず走行路5の形状(即ち、走行路5の延びる方向,走行路幅等)を特定し、走行路5上にグリッド点Gn(n=1,2,・・・N)を含むグリッド領域RWを設定する。
グリッド領域RWは、走行路5に沿って自車両1の周囲から自車両1の所定距離前方まで延びる。この距離(縦方向長さ)Lは、自車両1の現在の車速に基づいて計算される。本実施形態では、距離Lは、現在の車速(V)で所定の固定時間t(例えば、3秒)に走行すると予想される距離である(L=V×t)。しかしながら、距離Lは、所定の固定距離(例えば、100m)であってもよいし、車速(及び加速度)の関数であってもよい。また、グリッド領域RWの幅Wは、走行路5の幅に設定される。
グリッド領域RWは、走行路5の延伸方向Xと幅方向(横方向)Yとに沿ってそれぞれ延びる複数のグリッド線によって多数の矩形のグリッド区画に分割される。X方向とY方向のグリッド線の交点がグリッド点Gnである。グリッド点GnのX方向の間隔、及びY方向の間隔は、それぞれ固定値に設定される。本実施形態では、例えば、X方向のグリッド間隔は10m、Y方向のグリッド間隔は0.875mである。しかしながら、グリッド間隔を、車速等に応じて可変値としてもよい。
尚、図2では、走行路5が直線区間であって、グリッド領域RW及びグリッド区画が矩形状に設定されている。走行路が曲線区間を含む場合には、グリッド領域及びグリッド区画は矩形状に設定されてもよいし、矩形状にならなくてもよい。
次に、第1経路算出部113は、第1経路候補の計算において、外部信号に応じて、グリッド領域RW内の所定のグリッド点GTを目標到達位置PEに設定すると共に、目標到達位置PE(GT)での目標速度を設定する。外部信号は、例えば、自車両1に搭載されたナビゲーションシステム(図示省略)から送信される目的地(パーキングエリア等)への誘導指示信号である。
次に、第1経路算出部113は、経路候補演算処理を実行する。この経路候補演算処理において、第1経路算出部113は、まず複数の第1経路候補R1m(m=1,2,3・・・)を計算する経路候補計算処理を実行する。この処理は、従前のステートラティス法を用いた経路候補の計算と同様である。
経路候補の計算の概略を説明する。第1経路算出部113は、自車両1の現在位置PS(始点)からグリッド領域RW内の各グリッド点Gn(終点)までの経路候補を作成する。また、第1経路算出部113は、終点における速度情報を設定する。
始点と終点は、1又は複数のグリッド点Gnを介して、又はグリッド点Gnを介さないで、連結される。第1経路算出部113は、各第1経路候補R1mについて、グリッド点間を経路曲線パターンでフィッティングすることにより位置情報を計算し、速度変化パターンに適合するように速度変化プロファイルを計算する。速度変化パターンは、急加速(例えば、0.3G)、緩加速(例えば、0.1G)、車速維持、緩減速(例えば、−0.1G)、急加速(例えば、−0.3G)の組み合わせで生成され、グリッド毎ではなく当該第1経路候補R1mの所定長さ(例えば、50m〜100m)にわたって設定される。
さらに、第1経路算出部113は、各経路候補について、サンプリング点SPを設定し、各サンプリング点SPでの速度情報を計算する。図2には、多数の経路候補のうち、3つの第1経路候補R11,R12,R13のみが示されている。なお、本実施形態では、各第1経路候補R1mは、始点から固定時間(例えば、3秒)後の到達位置までの経路である。
次に、第1経路算出部113は、得られた第1経路候補R1mの経路コストを計算する。各第1経路候補R1mの経路コストの計算において、第1経路算出部113は、例えば、各サンプリング点SPについて、車両1の運動による慣性力Fi,障害物(ここでは、他車両3)との衝突確率Pc,及びこの衝突により乗員が受ける衝撃力Fc(又は衝突に対する反作用力)を計算し、これらの値に基づいて乗員に掛かる外力FCを計算して、第1経路候補R1m上のすべてのサンプリング点SPでの外力FC(絶対値)の合計値を、第1経路候補R1mの経路コスト(候補経路コスト)EPmとして算出することができる。
そして、第1経路算出部113は、すべての第1経路候補R1mをそれぞれの経路コスト情報とともに、目標運動決定部130に出力する。
以上のようにして、経路候補が設定される。第2経路候補も基本的には前述と同様に算出される。ただし、第2経路候補は、前記経路コストが最も小さい経路が選択されて、目標運動決定部130に出力される。
ここで、本実施形態1では、経路候補として、第1演算部110で算出される第1経路候補と第2演算部120で算出される第2経路候補とがあるが、目標運動決定部130は、基本的には、第1経路候補を採用するようにしている。これは、深層学習や強化学習を利用して設定される第1経路候補の方が、運転者の意思を反映した経路、すなわち、障害物を回避するに当たって慎重過ぎるなどの冗長さを運転者に感じさせない経路となりやすいためである。
しかしながら、深層学習を利用した車外環境の認定は、未だ発展途上の状態である。すなわち、深層学習を利用して構築された環境モデルは、環境モデルの基となった情報と類似するような範囲については正確な情報を算出することができるが、実際の車外環境等が環境モデルと大きく異なると、実際の車外環境と乖離した車外環境を推定することがある。
例えば、図3には、第1安全領域設定部112で設定される第1安全領域SA1と、第2安全領域設定部122で設定される第2安全領域SA2とを示す。第1安全領域SA1は、図3におけるハッチングをした部分であり、第2安全領域SA2は、図3におけるハッチングをした部分から点線で示す枠よりも内側を除いた部分である。図3に示すように、第1安全領域SA1では他車両3の一部まで安全領域に設定されている。これは、深層学習による画像認定において他車両3の車幅を正確に推定できなかった場合等に起こり得る。
このように、深層学習を利用した車外環境の認定では、実際の車外環境と乖離した車外環境を推定することがあるため、自動車用機能安全規格(ISO 26262)で提案されている機能安全レベル(ASIL)においては、深層学習を利用した機能はASIL−Bに相当するものとされている。このため、機能安全レベルを向上させる工夫が必要である。
そこで、本実施形態1では、演算装置100の目標運動決定部130は、第1経路候補が第2安全領域SA2内にあるときには、該第1経路候補を自動車1(自車両1)が走行すべき経路として選択して、自動車1が第1経路候補を通るように該自動車1の目標運動を決定する一方、第1経路候補が第2安全領域SA2を逸脱しているときには、該第1経路候補を自動車1が走行すべき経路としては選択しないようにしている。より具体的には、目標運動決定部130は、第1経路候補を算出する際に、経路候補として設定される複数の第1経路候補R1n(n=1,2,3・・・)の全てが第2安全領域SA2から逸脱しているときには、第2経路候補を自動車1が走行すべき経路として選択する。
例えば、図4に示すように、第1経路算出部113により、第1経路候補R11,R12,R13が設定されたとする。この3つの第1経路候補R11〜R13のうち経路R11と経路R12については、経路の一部が第2安全領域SA2を逸脱しているが、経路R13については、第2安全領域SA2内を通っている。このときには、目標運動決定部130は、第2安全領域SA2を逸脱した経路R11,R12は、自動車1が走行すべき経路としては選択せず、経路R13を自動車1が走行すべき経路として選択する。
一方で、図5に示すように、第1経路算出部113により、第1経路候補R14,R15,R16が設定されたとする。この3つの第1経路候補R14〜R16は、全て経路の一部が第2安全領域SA2を逸脱している。このときには、目標運動決定部130は、第2演算部120で算出される複数の第2経路候補のうち最も経路コストが小さい第2経路候補R2を自動車1が走行すべき経路として選択する。
対象物認定部121は、従来より存在する所定のルールに基づいて対象物の認定を行うため、対象物の大きさ等を精度良く認定できる。また、第2安全領域設定部122は、対象物の周囲数mを回避不能範囲とみなす等の所定のルールに基づいて第2安全領域SA2を設定するため、第2経路候補は、他車両3を回避する場合でも、他車両3との間に十分な距離を確保することができる経路となる。すなわち、第2演算部120の機能はASIL−D相当にすることができる。このため、目標運動決定部130が、第1経路候補を算出する際に、経路候補として設定される複数の第1経路候補R1nの全てが第2安全領域SA2から逸脱しているときには、第2経路候補を自動車1が走行すべき経路として選択することで、自動車1が安全性の高い経路を走行できるようになる。これにより、深層学習を利用する機能を有する演算装置100において、機能安全レベルを向上させることができる。
次に、自動車1の運転経路を決定する際の演算装置100の処理動作について図6のフローチャートを参照しながら説明する。尚、自動車1の運転モードは、アシスト運転又は自動運転である。
まず、ステップS1において、演算装置100は、各カメラ50、各レーダ51、及び各センサ52〜56からの情報を読み込む。
次に、演算装置100は、第1経路候補の算出と第2経路候補の算出とを並行して行う。
ステップS2では、演算装置100は、深層学習を利用して車外環境を推定する。
次のステップS3では、演算装置100は、第1安全領域SA1を設定する。
次のステップS4では、演算装置100は、強化学習を使用して第1経路候補を算出する。
一方で、ステップS5では、演算装置100は、所定のルールに基づいて対象物の認定をする。
前記ステップS6では、演算装置100は、第2安全領域SA2を設定する。
前記ステップS7では、演算装置100は、所定のルールに基づいて第2経路候補を算出する。
続く、ステップS8では、演算装置100は、目標運動決定部130に前記ステップS4及びステップS5の情報を出力して、目標運動部130において第1経路候補が第2安全領域SA2内にあるか否かを判定する。このステップS8において、複数の第1経路候補に、その全経路が第2安全領域SA2に含まれる経路があるYESのときには、ステップS9に進む一方で、複数の第1経路候補の全てが、その経路における少なくとも一部が第2安全領域SA2から逸脱するNOのときには、ステップS10に進む。
上記ステップS9では、目標運動決定部130は、第1経路候補を自動車1が走るべき経路として選択する。
一方、上記ステップS10では、目標運動決定部130は、第2経路候補を自動車1が走るべき経路として選択する。
次のステップS11では、目標運動決定部130は、自動車1の目標運動を算出する。
続くステップS12では、エネルギーマネジメント部140は、前記ステップS11で算出された目標運動を達成しかつエネルギー効率が最大となるように、目標制御量を設定する。
次のステップS13では、演算装置100は、各デバイスの制御量が前記ステップS12で算出した目標制御量となるように、各デバイスの運転制御をする。ステップS13の後はリターンする。
したがって、本実施形態1では、演算装置100は、車外環境の情報を取得する情報取得手段からの出力を基にして、深層学習を利用して車外環境を推定する車外環境推定部111と、車外環境推定部111の推定結果を基にして、第1経路候補を算出する第1経路算出部113と、情報取得手段からの出力を基にして、深層学習を利用せずに、所定のルールにより車外の対象物を認定する対象物認定部121と、対象物認定部の結果を基にして、安全領域を算出する第2安全領域算出部122と、第1経路算出部113からの出力及び第2安全領域算出部122からの出力を受けて、自動車1の目標運動を決定する目標運動決定部130とを備える。目標運動決定部130は、第1経路候補が第2安全領域SA2内にあるときには、該第1経路候補を自動車1が走行すべき経路として選択して、自動車1が第1経路候補SA1を通るように該自動車1の目標運動を決定する一方、経路候補が安全領域を逸脱しているときには、経路候補として自動車1が走行すべき経路としては選択しない。
この構成によると、これにより、深層学習を利用する機能を有する演算装置100において、機能安全レベルを向上させることができる。
(実施形態2)
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
本実施形態2では、演算装置200における第2演算部220の構成が、前記実施形態1における演算装置100とは異なる。具体的には、本実施形態2では、前記実施形態1とは異なり、第2演算部220は、第2経路算出部を含んでいない。
この構成であっても、第1演算部110で算出される第1経路候補の全てが第2安全領域SA2から逸脱しているときには、目標運動決定部130は、第1経路候補を自動車1が走行すべき経路として選択しない。本実施形態2では、目標運動決定部130が第1経路候補を選択しなかったときには、例えば、自動車1の運転モードをマニュアル運転に切り換えるなどして、自動車1が安全な経路を走行できるようにする。このとき、自動運転からマニュアル運転に切り換えるときには、ドライバにブザー等により、運転モードが変わることを報知することが望ましい。
したがって、本実施形態2でも、深層学習を利用する機能を有する演算装置200において、機能安全レベルを向上させることができる。
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
ここに開示された技術は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、前述の実施形態1及び2では、目標運動決定部130で目標運動を決定したあと、エネルギーマネジメント部140により目標運動を達成しかつエネルギー効率が最大となるように目標制御量を設定していた。これに限らず、エネルギーマネジメント部140は省略してもよい。すなわち、目標運動決定部130が目標運動を達成する目標制御量を設定してもよい。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
ここに開示された技術は、自動車に搭載される自動車用演算装置として有用である。
1 自動車
100 自動車用演算装置
111 車外環境推定部
113 第1経路候補算出部
121 対象物認定部
122 第2安全領域設定部
130 目標運動決定部
100 自動車用演算装置
111 車外環境推定部
113 第1経路候補算出部
121 対象物認定部
122 第2安全領域設定部
130 目標運動決定部
Claims (3)
- 自動車に搭載される自動車用演算装置であって、
車外環境の情報を取得する情報取得手段からの出力を基にして、深層学習を利用して車外環境を推定する車外環境推定部と、
前記車外環境推定部の推定結果を基にして、経路候補を算出する経路算出部と、
前記情報取得手段からの出力を基にして、深層学習を利用せずに、所定のルールにより車外の対象物を認定する対象物認定部と、
前記対象物認定部の結果を基にして、安全領域を算出する安全領域算出部と、
前記経路算出部からの出力及び前記安全領域算出部からの出力を受けて、前記自動車の目標運動を決定する目標運動決定部とを備え、
前記目標運動決定部は、前記経路候補が前記安全領域内にあるときには、該経路候補を前記自動車が走行すべき経路として選択して、前記自動車が前記経路候補を通るように該自動車の目標運動を決定する一方、前記経路候補が前記安全領域を逸脱しているときには、該経路候補を前記自動車が走行すべき経路としては選択しないことを特徴とする自動車用演算装置。 - 請求項1に記載の自動車用演算装置において、
前記経路算出部は、複数の前記経路候補を算出し、
前記目標運動決定部は、前記複数の経路候補のうち前記安全領域から逸脱した経路については、前記自動車が走行すべき経路としては選択しないことを特徴とする自動車用演算装置。 - 請求項1又は2に記載の自動車用演算装置において、
前記経路算出部は、強化学習を利用して前記経路候補を算出することを特徴とする自動車用演算装置。
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WO2023189680A1 (ja) * | 2022-04-01 | 2023-10-05 | 株式会社デンソー | 処理方法、運転システム、処理装置、処理プログラム |
JP7369077B2 (ja) | 2020-03-31 | 2023-10-25 | 本田技研工業株式会社 | 車両制御装置、車両制御方法、及びプログラム |
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-
2019
- 2019-03-08 JP JP2019043101A patent/JP7131440B2/ja active Active
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