JP2020142388A - 高圧タンクの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】クラックの発生を抑えて、タンク表層の剥離を防止することである。【解決手段】円筒部(17)を有するライナ(11)の軸方向に強化繊維束(35)の巻き付け位置を往復移動しながら、フープ巻きによってライナの円筒部に強化繊維束を巻き重ねてフープ層を形成する高圧タンクの製造方法であり、強化繊維束の巻き始め位置(35a)からフープ巻きを開始して、強化繊維束の巻き付け位置を円筒部に対して軸方向に少なくとも1往復させた後に巻き始め位置を越えてフープ巻きを継続し、当該巻き始め位置を越えてフープ巻きされる強化繊維束の長さが、フープ巻き終了後に強化繊維束の巻き終わり位置(35b)を起点にして張力が低下する長さ以上である構成にした。【選択図】図3

Description

本発明は、高圧タンクの製造方法に関する。
高圧タンクとして、ガス等の高圧流体が充填されるライナを強化繊維によって外側から補強したものが知られている。高圧タンクの製造方法では、いわゆるフィラメントワインディング工法(以下、FW工法)によって、樹脂含浸された帯状の強化繊維束がライナの外面に巻き付けられる。FW工法では、ライナの回転軸に略直交する巻き付け角度でライナに強化繊維束を巻き付けるフープ巻きが実施される。このようなFW工法において、強化繊維束の巻き付け位置をライナの軸方向に移動させながらフープ巻きして、軸方向において強化繊維束の巻き始め位置と巻き終わり位置を同じ位置にするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−72494号公報
通常のフープ巻きでは、強化繊維束の巻き終わり位置付近の張力が低下する。特許文献1に記載のフープ巻きでは、ライナの軸方向において強化繊維束の巻き始め位置と巻き終わり位置が同じであるため、強化繊維束の巻き終わり位置付近の張力が低下して緩んだ部位によって、強化繊維束の巻き始め位置付近が押え込まれている。このため、フープ巻き終了後に強化繊維束の巻き始め位置付近にボイドが残り易くなり、ボイドを起点にしたクラックによってタンク表層が部分的に剥離するおそれがあった。
本発明では、クラックの発生を抑えて、タンク表層の剥離を防止することができる高圧タンクの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る高圧タンクの製造方法は、円筒部を有するライナの軸方向に強化繊維束の巻き付け位置を往復移動しながら、フープ巻きによって前記円筒部に強化繊維束を巻き重ねてフープ層を形成する高圧タンクの製造方法であって、前記強化繊維束の巻き始め位置からフープ巻きを開始して、前記強化繊維束の巻き付け位置を前記円筒部に対して軸方向に少なくとも1往復させた後に前記巻き始め位置を越えてフープ巻きを継続し、当該巻き始め位置を越えてフープ巻きされる前記強化繊維束の長さが、フープ巻き終了後に前記強化繊維束の巻き終わり位置を起点にして張力が低下する長さ以上であることを特徴とする。
本発明によれば、強化繊維束の巻き付け位置が円筒部に対して軸方向に少なくとも1往復されてフープ巻きされた後、強化繊維束の巻き始め位置を越えて十分な長さの強化繊維束が継続してフープ巻きされる。強化繊維束の巻き終わり位置から十分に離間した部位によって強化繊維束の巻き始め位置付近が押え込まれるため、フープ巻き終了後に強化繊維束の巻き終わり位置付近の張力が低下しても、巻き始め位置付近に対する押え込みが緩むことがない。よって、強化繊維束の巻き始め位置付近にボイドが残り難くなって、ボイドを起点としたクラックの発生を抑えて、タンク表層の剥離を防止することができる。
高圧タンクの模式断面図である。 保護層に発生するクラックの説明図である。 本実施形態に係る高圧タンクの製造方法の説明図であり、(A)はアイクチの移動軌跡を示す図、(B)はフープ層の模式図、(C)はアイクチの移動位置と張力の関係図をそれぞれ示している。 巻き付け後の放置時間と低張力部位の幅との関係を示すグラフである。 比較例に係る高圧タンクの製造方法の説明図であり、(A)はアイクチの移動軌跡を示す図、(B)はフープ層の模式図、(C)はアイクチの移動位置と張力の関係図をそれぞれ示している。 高圧タンクのクラックの評価の説明図であり、(A)がクラックの測定位置を示し、(B)が測定結果を示している。
以下、本実施形態について説明する。図1は、高圧タンクの模式断面図である。図2は、保護層に発生するクラックの説明図である。なお、以下では、高圧タンクとして車載用の燃料電池システムにおいて燃料電池に水素等の燃料ガスを貯蔵する燃料タンクを例示して説明するが、高圧タンクは燃料電池システム以外の任意の用途で使用されてもよい。
[高圧タンクについて]
図1に示すように、高圧タンク10は、タンクの基材となるライナ11の外面を補強層12によって被覆し、さらに補強層12の外面を保護層13によって被覆して形成されている。高圧タンク10は、筒状の胴体部14の両端から一対のドーム部15、16が半球状に膨出しており、各ドーム部15、16の頂点箇所には一対の口金21、26が設けられている。一方の口金21には貫通孔24が形成されており、貫通孔24に取り付けられたバルブ(不図示)によってタンク内のガスの放出及び流入が行われている。他方の口金26は貫通しておらず、口金26によってタンク内が封止されている。
ライナ11は、燃料ガスの貯留空間20を持つように中空形状に形成されている。ライナ11は、円筒部17と、円筒部17の軸方向外側に向かって縮径するように円筒部17から膨出した一対の側端部18、19とを有している。ライナ11の樹脂材料としては、例えば、ポリアミド、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエチレン等の樹脂を用いることができる。ライナ11には、燃料ガスとして水素ガスの他に、例えば、CNG(圧縮天然ガス)等の各種圧縮ガス、LNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)等の各種液化ガス、その他の各種加圧物質が充填されてもよい。
補強層12は、炭素繊維を強化繊維とした炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)から成り、未硬化樹脂が含浸された帯状の炭素繊維束がライナ11の外面に巻き付けられることで形成される。保護層13は、ガラス繊維を強化繊維としたガラス繊維強化樹脂(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)から成り、未硬化樹脂が含浸された帯状のガラス繊維束が補強層12の外面に巻き付けられることで形成される。補強層12によって高圧タンク10の耐圧性が向上され、保護層13によって高圧タンク10の耐衝撃性が向上されている。
補強層12及び保護層13は、強化繊維束35(図2(A)参照)のフープ巻きと強化繊維束35のヘリカル巻きを適宜組み合わせることで形成されている。なお、フープ巻きは、ライナ11の回転軸CXに略直交する巻き付け角度で、ライナ11に対して強化繊維束35を巻き付ける巻き付け態様である。ヘリカル巻きは、ライナ11の回転軸CXに斜めに交差する巻き付け角度で、ライナ11に対して強化繊維束35を巻き付ける巻き付け態様である。強化繊維としては、炭素繊維及びガラス繊維に変えてアラミド繊維等が採用されてもよい。また、未硬化樹脂としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が採用されてもよい。
一方の口金21は、アルミニウム又はアルミニウム合金等の金属によって形成されている。一方の口金21は、本体となる筒状部22の外周にフランジ部23が形成され、筒状部22の一部をドーム部15から突出させるようにライナ11に取り付けられている。筒状部22の内側の貫通孔24には、貯留空間20に対する燃料ガスを充填及び排出するバルブ(不図示)が取り付けられている。他方の口金26は、アルミニウム又はアルミニウム合金等の金属によって形成されている。他方の口金26は、一方の口金21と略同様な外形に形成されているが、一方の口金26とは筒状部27の内側が閉塞されている点で相違している。
ここで、本発明者が本発明に至った経緯について説明する。
[クラックの発生について]
図2(A)に示すように、保護層13は、補強層12(図1参照)の外面に強化繊維束35をヘリカル巻きして形成されたヘリカル層30と、ヘリカル層30の外面に強化繊維束35をフープ巻きして形成されたフープ層31と、フープ層31の外面を覆う樹脂層32とを有している。フープ層31は、強化繊維束35の巻き付け位置をライナ11(図1参照)の軸方向に往復移動しながら、ヘリカル層30の外面に強化繊維束35が巻き重ねられることによって形成される。このとき、矢印F1に示すように、内側の第1フープ層31aの強化繊維束35が外側の第2フープ層31bの強化繊維束35によって押え込まれることでボイド41(図2(B)参照)の発生が抑えられている。
しかしながら、図2(B)に示すように、第2フープ層31bの強化繊維束35によって第1フープ層31aの強化繊維束35が強く押え込まれるとは限らない。強化繊維束35がライナ11に巻き付けられる巻き付け速度の低下や強化繊維束35の切断によって、強化繊維束35の巻き終わり位置35b付近の張力が低下する。これによって、巻き終わり位置35b付近に低張力部位36が生じる。矢印F2に示すように、低張力部位36だけで第1フープ層31aの強化繊維束35の巻き始め位置35a付近が押え込まれると、ヘリカル層30とフープ層31の界面にボイド41が発生し易くなる。このため、ボイド41に応力が集中して、ボイド41を起点として保護層13にクラック44aが発生する場合がある。
強化繊維束35の低張力部位36の緩みを抑えるために、低張力部位36を同じ位置に重ね巻きした場合には保護層13の表面に凸部42が形成される。このため、保護層13の表面には凸部42の周縁46に応力が集中して、凸部42の周縁46を起点にして保護層13にクラック44bが発生する場合がある。さらに、ヘリカル層30の外面に所定の巻き付けピッチで強化繊維束35が巻き付けられているが、巻き付けピッチが大きいと隣り合う強化繊維束35の間に隙間43が生じる。このため、隙間43に応力が集中して、隙間43を起点にして保護層13にクラック44cが発生する場合がある。
このように、強化繊維束35の巻き付け方によって、保護層13に対して局所的な応力が生じてクラック44a−44cが増加する場合がある。クラック44a−44cから水分が進入すると、繊維と樹脂の界面の劣化が促進されて保護層13の強度が低下する。この結果、高圧タンク10の圧力の昇降が繰り返されたときに、保護層13の疲労によって繊維が破断して保護層13の捲れ現象が生じるという問題がある。ここでは、ガラス繊維強化樹脂の保護層13を一例として説明しているが、高圧タンク10の保護層13が炭素繊維強化樹脂によって形成されている場合においても同様な捲れ現象が生じると考えられる。
そこで、本実施形態の高圧タンク10の製造方法では、ライナ11の円筒部17(図3(A)参照)に対して第1、第2フープ層31a、31bを形成した後にフープ巻きを継続して第3フープ層31cを部分的に形成している。この第3フープ層31cの形成時にフープ巻きされる強化繊維束35の長さを十分に確保することで、第3フープ層31cに低張力部位36を位置付けて、低張力部位36だけで第1フープ層31aを押え込まずにボイド41の発生を抑えている。さらに、低張力部位36を重ね巻きしないことで凸部42(図2(B)参照)を形成せず、隣り合う強化繊維束35のピッチを狭めることで隙間43の発生を抑えている。
以下、図3から図5を参照して、高圧タンクの製造方法について説明する。図3は、本実施形態に係る高圧タンクの製造方法の説明図であり、(A)はアイクチの移動軌跡を示す図、(B)はフープ層の模式図、(C)はアイクチの移動位置と張力の関係図をそれぞれ示している。図4は、巻き付け後の放置時間と低張力部位の幅との関係を示すグラフである。図5は、比較例に係る高圧タンクの製造方法の説明図であり、(A)はアイクチの移動軌跡を示す図、(B)はフープ層の模式図、(C)はアイクチの移動位置と張力の関係図をそれぞれ示している。
[本実施形態に係る高圧タンクの製造方法について]
図3(A)及び図3(B)に示すように、フープ巻きでは、強化繊維束35を繰り出すアイクチ45がライナ11の軸方向に往復移動され、アイクチ45から繰り出された強化繊維束35がライナ11の円筒部17に巻き取られることでフープ層31が形成される。アイクチ45の移動軌跡上には、強化繊維束35の巻き付けが開始される開始位置Aと、円筒部17の両端において強化繊維束35の巻き付け動作が折り返される折り返し位置B、Cと、強化繊維束35の巻き付けが終了する終了位置Dとが設定されている。終了位置Dは、開始位置Aよりも折り返し位置B側に設定されている。
この場合、開始位置Aから折り返し位置Bにアイクチ45が移動されながら、ヘリカル層30の外面に強化繊維束35が巻き付けられて第1フープ層31aが途中まで形成される。折り返し位置Bにおいてアイクチ45の移動方向が逆転して、折り返し位置Bから開始位置Aにアイクチが移動されながら、第1フープ層31aの外面に強化繊維束35が巻き付けられて第2フープ層31bが途中まで形成される。続けて、開始位置Aから折り返し位置Cにアイクチ45が移動されながら、ヘリカル層30の外面に強化繊維束35が巻き付けられて第1フープ層31aが最後まで形成される。
折り返し位置Cにおいてアイクチ45の移動方向が逆転して、折り返し位置Cから開始位置Aにアイクチ45が移動されながら、第1フープ層31aの外面に強化繊維束35が巻き付けられて第2フープ層31bが最後まで形成される。続けて、開始位置Aを越えて終了位置Dまでアイクチ45が移動されながら、第2フープ層31bの外面に強化繊維束35が巻き付けられて第3フープ層31cが部分的に形成される。そして、アイクチ45が終了位置Dまで移動して強化繊維束35が巻き付け終わると、フープ巻きが終了したとして強化繊維束35が切断される。
このとき、第2フープ層31bの強化繊維束35によって第1フープ層31aの強化繊維束35が押え込まれている。フープ巻きの終了時に強化繊維束35の巻き付け速度の低下によって強化繊維束35の張力が低下するが、アイクチ45の終了位置Dが開始位置Aから折り返し位置B側に十分に離れて設定されている。第2フープ層31bの形成時には強化繊維束35の巻き付け速度が低下せず、第3フープ層31cの形成時に強化繊維束35の巻き付け速度が低下して張力が低下する。強化繊維束35の低張力部位36が第3フープ層31cに位置するため、第2フープ層31bの強化繊維束35によって第1フープ層31aの強化繊維束35が全体的に強く押え込まれている。
図3(C)では、実線W1によってアイクチ45の移動位置が示されており、実線W2によって強化繊維束35の張力の変化が示されている。実線W1の傾きは、強化繊維束35の巻き付け速度を示しており、アイクチ45が開始位置Aから折り返し位置B、Cを介して開始位置Aに戻るまでの間は強化繊維束35の巻き付け速度が低下していない。このため、強化繊維束35の巻き付け速度の低下に起因した張力低下が発生せず、強化繊維束35の張力が140[N]−150[N]に維持された状態でヘリカル層30に対するフープ巻きが継続されている。
さらに、アイクチ45が開始位置Aを越えて終了位置Dに向かう途中で、強化繊維束35の巻き付け速度が低下して強化繊維束35の張力が低下し始める。この時点で、既にライナ11の円筒部17(図3(A)参照)に第1、第2フープ層31a、31b(図3B参照)が形成されており、さらに第2フープ層31b上に第3フープ層31c(図3B参照)が途中まで形成されている。強化繊維束35の巻き付け速度が低下して、強化繊維束35の張力が低下する前に第2フープ層31bが形成されているため、矢印F1(図3(B)参照)に示すように第2フープ層31bの強化繊維束35による第1フープ層31aの強化繊維束35に対する押え込みが緩むことがない。
また、張力をかけてフープ巻きを実施しても、強化繊維束35の切断後に時間の経過と共に、強化繊維束35の巻き終わり位置35bを起点にして巻き始め位置35a側に向かって徐々に張力が低下し始める。このため、ライナ11の軸方向における第3フープ層31cの長さは、強化繊維束35の切断後に巻き終わり位置35bを起点にして強化繊維束35の切断前よりも張力低下が生じる長さ以上確保されている。これにより、強化繊維束35の切断後の第2フープ層31bの強化繊維束35の張力低下が防止されて、第2フープ層31bの強化繊維束35による第1フープ層31aの強化繊維束35に対する押え込みが緩むことが防止される。なお、フープ巻き終了後に強化繊維束35の巻き終わり位置35bを起点にして張力低下が生じる長さは、過去データ等から実験的、経験的又は理論的に求められた値が使用される。
例えば、強化繊維束35としてエポキシ樹脂を含浸させたガラス繊維束を使用した場合、ガラス繊維束の巻き付け後の放置時間と低張力部位36の幅は図4に示すような比例関係を有している。図4に示す例では、強化繊維束35の切断時から24時間の経過時に、ライナ11の軸方向において第3フープ層31cの強化繊維束35の巻き終わり位置35bから少なくとも70[mm]の長さの範囲の張力が低下して低張力部位36になっている。すなわち、フープ巻き終了後の24時間以内にエポキシ樹脂を含浸させたガラス繊維束の巻き終わり位置35bを起点にして張力が生じる長さは70[mm]である。このため、24時間以内に次工程において処理が実施される場合であれば、ライナ11の軸方向において第3フープ層31cの長さは70[mm]以上確保されることが好ましい。ここでは、切断によって強化繊維束35の張力が低下する長さがライナ11の軸方向の長さによって示されているが、強化繊維束35の巻き付け長によって示されてもよい。
このように、本実施形態に係る高圧タンク10の製造方法では、巻き付け速度の低下による強化繊維束35の張力低下だけでなく、切断後の強化繊維束35の張力低下が考慮されている。すなわち、強化繊維束35の巻き始め位置35aからフープ巻きを開始して、強化繊維束35の巻き付け位置を円筒部17に対して軸方向に1往復させてフープ巻きした後に、巻き付け速度を落とすことなく巻き始め位置35aを越えてフープ巻きを継続する。さらに、この巻き始め位置35aを越えてフープ巻きされる強化繊維束35の長さが、フープ巻き終了後に強化繊維束35の巻き終わり位置35bを起点にして張力が低下する長さ以上になっている。これにより、フープ巻き時のボイド41(図2(B)参照)の発生が抑えられている。
また、強化繊維束35の巻き終わり形状がフラット形状になっており、保護層13の表面に凸部42(図2(B)参照)が形成されない。さらに、隣り合う強化繊維束35のピッチが、強化繊維束35の最小幅寸法と同じ大きさであり、隣り合う強化繊維束35の隙間43(図2(B)参照)の発生が抑えられている。なお、最小幅寸法とは強化繊維束35の公称幅寸法に対してバラツキが生じる幅寸法のうち最小の幅寸法である。よって、保護層13の表面に凸部42が形成されず、保護層13内のボイド41及び隙間43の発生が抑えられることで、ボイド41、凸部42、隙間43に起因した保護層13のクラック44a−44c(図2(B)参照)が減少して保護層13の強度が向上される。
[比較例に係る高圧タンクの製造方法について]
一方で、図5(A)及び図5(B)の比較例に示すように、アイクチ45の移動軌跡上に強化繊維束35の巻き付けが開始される開始位置Aと、円筒部17の両端において強化繊維束35の巻き付け動作が折り返される折り返し位置B、Cとが設定されている。比較例においては、開始位置Aは強化繊維束35の巻き付けが終了される終了位置にもなっている。この場合、開始位置Aから折り返し位置B、Cを通って再び開始位置Aにアイクチ45が移動する間に、ヘリカル層30の外面に強化繊維束35が巻き付けられて第1、第2フープ層31a、31bが形成される。
アイクチ45が開始位置Aに戻ると、開始位置Aにおいて強化繊維束35が重ね巻きされて強化繊維束35の巻き終わり形状が凸形状に形成される。開始位置Aでの強化繊維束35の重ね巻きが終わると、フープ巻きが終了したとして強化繊維束35が切断される。このとき、アイクチ45が開始位置Aに戻る前から強化繊維束35の巻き付け速度が低下し始めており、巻き付け速度の低下によって強化繊維束35の張力が低下する。強化繊維束35の巻き終わり位置35b付近が低張力部位36であるため、第1フープ層31aの強化繊維束35の巻き始め位置35a付近が低張力部位36に押え込まれている。
図5(C)では、実線W3によってアイクチ45の移動位置が示されており、実線W4によって強化繊維束35の張力の変化が示されている。実線W3の傾きは、強化繊維束35の巻き付け速度を示しており、アイクチ45が開始位置Aから折り返し位置Bを介して折り返し位置Cに移動するまでの間は強化繊維束35の巻き付け速度が低下していない。このため、強化繊維束35の巻き付け速度の低下に起因した張力低下が発生せず、強化繊維束35の張力が140[N]−150[N]に維持された状態でヘリカル層30に対するフープ巻きが継続されている。
さらに、アイクチ45が折り返し位置Cから開始位置Aに向かう途中で、強化繊維束35の巻き付け速度が低下して強化繊維束35の張力が低下し始める。この時点で、ライナ11の円筒部17には第1フープ層31aが形成されており、さらに第1フープ層31a上に第2フープ層31bが途中まで形成されている。すなわち、第2フープ層31bが形成し終わる前に、強化繊維束35の巻き付け速度が低下して強化繊維束35の張力が低下している。このため、矢印F2(図5(B)参照)に示すように、第2フープ層31bの強化繊維束35の低張力部位36によって第1フープ層31aの強化繊維束35が十分に押え込まれない部位が発生する。
また、強化繊維束35の切断後には、時間の経過と共に強化繊維束35の巻き終わり位置35bを起点にして巻き始め位置35a側に向かって張力が低下している(図4参照)。このように、比較例においては、巻き付け速度の低下に起因した強化繊維束35の張力低下だけでなく、切断後の強化繊維束35の張力低下についても考慮されていない。よって、強化繊維束35の低張力部位36によって第1フープ層31aの強化繊維束35の巻き始め位置35a付近が押え込まれ、巻き始め位置35a付近にボイド41が発生し易くなっている。
上記したように、強化繊維束35の巻き付け終了時に、アイクチ45が開始位置Aに位置付けられたまま低張力部位36が重ね巻きされて、強化繊維束35の巻き終わり形状が凸形状に形成されている。さらに、隣り合う強化繊維束35のピッチが、強化繊維束35の公称幅寸法と同じ大きさであり、隣り合う強化繊維束35に隙間43(図2(B)参照)が発生する。よって、保護層13の表面に凸部42(図2(B)参照)が形成され、保護層13内にボイド41及び隙間43が生じ易いため、ボイド41、凸部42、隙間43に起因した保護層13のクラック44a−44c(図2(B)参照)が増加して保護層13の強度が悪化する。
以上のように、本実施形態の高圧タンク10の製造方法では、強化繊維束35の巻き付け位置が円筒部17に対して軸方向に1往復されてフープ巻きされた後に、さらに巻き始め位置を越えて十分な長さの強化繊維束35が継続してフープ巻きされている。強化繊維束35の巻き終わり位置35bから十分に離間した部位によって強化繊維束35の巻き始め位置35a付近が押え込まれるため、フープ巻き終了後に強化繊維束35の巻き終わり位置35b付近の張力が低下しても、巻き始め位置35a付近に対する押え込みが緩むことがない。よって、強化繊維束35の巻き始め位置35a付近にボイド41が残り難くなっている。また、上記したように、保護層13には凸部42が形成されず、隣り合う強化繊維束35の間の隙間43の発生が抑えられている。よって、保護層13内のクラック44a−44cを減らして保護層13の剥離を防止することができる。
[クラックの評価]
続いて、図6を参照して、本実施形態及び比較例に係る製造方法によって製造した高圧タンクのクラックの評価について説明する。図6は、高圧タンクのクラックの評価の説明図であり、(A)がクラックの測定位置を示し、(B)が測定結果を示している。なお、図6(B)では、左側のデータ系列が比較例に係る製造方法によって製造した高圧タンクのクラック数、右側のデータ系列が本実施形態に係る製造方法によって製造した高圧タンクのクラック数を示している。
本発明者は、本実施形態及び比較例に係る製造方法によって製造した高圧タンクをそれぞれ用意し、各高圧タンクに対して圧力の昇降を繰り返して、保護層の疲労によるクラックの発生を確認した。また、本実施形態及び比較例に係る高圧タンクの製造方法のフープ巻きを以下の条件で実施した。なお、フープ巻きの終了動作に入る前の強化繊維束の平均張力を150[N]とした。
<本実施形態に係る高圧タンクの製造方法>
フープ巻き開始位置:ライナの一端から軸方向内側に396[mm]
フープ巻き終了位置:ライナの一端から軸方向内側に250[mm]
強化繊維束の幅寸法:5±2[mm]
強化繊維束の巻き付けピッチ:3[mm]
強化繊維束の巻き終わり形状:フラット形状
<比較例に係る高圧タンクの製造方法>
フープ巻き開始位置:ライナの一端から軸方向内側に396[mm]
フープ巻き終了位置:ライナの一端から軸方向内側に396[mm]
強化繊維束の幅寸法:5±2[mm]
強化繊維束の巻き付けピッチ:5[mm]
強化繊維束の巻き終わり形状:凸形状
また、図6(A)に示すように、高圧タンクの軸方向に測定位置a−wを設定し、各測定位置a−wのクラック数を測定した。この結果、図6(B)に示すような測定結果が得られた。本実施形態に係る高圧タンクの製造方法は、フープ巻き開始位置は測定位置fであり、フープ巻き終了位置は測定位置cである。測定位置fの右側のデータ系列に示すようにフープ巻き開始位置のクラック数は2、測定位置cの右側のデータ系列に示すようにフープ巻き終了位置のクラック数は6であった。一方、比較例に係る高圧タンクの製造方法は、フープ巻き開始位置及び終了位置は共に測定位置fであり、測定位置fの左側のデータ系列に示すようにフープ巻き終了位置のクラック数は10であった。このように、本実施形態に係る高圧タンクの製造方法では、フープ巻き開始位置及び終了位置のクラック数が減少することが確認された。なお、各フープ巻き終了位置のボイド数を確認したところ、本実施形態に係る製造方法によって製造した高圧タンクのフープ巻き終了位置のボイド数は5個、比較例に係る製造方法によって製造した高圧タンクのフープ巻き終了位置のボイド数は12個であった。
さらに、ライナ11の各測定位置a−wにおいて、右側のデータ系列に示すクラック数が、左側のデータ系列に示すクラック数よりも少ない。本実施形態に係る製造方法によって製造した高圧タンクのクラック数は、比較例に係る製造方法によって製造した高圧タンクのクラック数よりも全体的に減少することが確認された。これは、本実施形態に係る製造方法によって製造した高圧タンクの巻き付けピッチが、比較例に係る製造方法によって製造した高圧タンクの巻き付けピッチよりも狭く、隣り合う強化繊維束の間の隙間が減少したからだと考えられる。以上のように、本実施形態に係る高圧タンクの製造方法によれば、比較例に係る高圧タンクの製造方法に比べて、クラック数を減らして高圧タンクの強度を向上できることが確認された。
なお、本実施形態では、強化繊維束35の巻き付け位置を円筒部17に対して軸方向に1往復させてフープ巻きした後に、強化繊維束35の巻き始め位置35aを越えてフープ巻きが継続される構成にしたが、この構成に限定されない。強化繊維束35の巻き付け位置を円筒部17に対して軸方向に少なくとも1往復させてフープ巻きした後に、強化繊維束35の巻き始め位置35aを越えてフープ巻きが継続される構成であればよい。例えば、強化繊維束35の巻き付け位置を円筒部17の軸方向に2往復させてフープ巻きしてもよい。
また、本実施形態では、隣り合う強化繊維束35のピッチが、強化繊維束35の最小幅寸法と同じ大きさである構成にしたが、この構成に限定されない。本実施形態に係る高圧タンクの製造方法では、少なくともボイドに起因したクラックを減少できればよく、隣り合う強化繊維束35のピッチが、強化繊維束35の公称幅寸法と同じ大きさでもよい。
また、本実施形態では、強化繊維束が帯状に形成されたが、この構成に限定されない。強化繊維束は、未硬化樹脂が含浸された複数の強化繊維が繊維方向を揃えて纏められていればよい。
また、本実施形態について説明したが、他の実施形態として実施形態および変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。さらに、本開示の技術は本実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩または派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方によって実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
10:高圧タンク、11:ライナ、13:保護層、17:円筒部、31:フープ層、35:強化繊維束、35a:巻き始め位置、35b:巻き終わり位置、CX:回転軸

Claims (1)

  1. 円筒部を有するライナの軸方向に強化繊維束の巻き付け位置を往復移動しながら、フープ巻きによって前記円筒部に強化繊維束を巻き重ねてフープ層を形成する高圧タンクの製造方法であって、
    前記強化繊維束の巻き始め位置からフープ巻きを開始して、前記強化繊維束の巻き付け位置を前記円筒部に対して軸方向に少なくとも1往復させた後に前記巻き始め位置を越えてフープ巻きを継続し、当該巻き始め位置を越えてフープ巻きされる前記強化繊維束の長さが、フープ巻き終了後に前記強化繊維束の巻き終わり位置を起点にして張力が低下する長さ以上であることを特徴とする高圧タンクの製造方法。
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