JP2020142189A - アンモニア合成用触媒 - Google Patents

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理樹 片岡
敏勝 小島
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敏勝 小島
信彦 竹市
Nobuhiko Takeichi
信彦 竹市
厚則 亀川
Atsunori Kamegawa
厚則 亀川
通 木村
Toru Kimura
通 木村
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Abstract

【課題】より低圧下においてもアンモニア合成能に優れた触媒を提供する。【解決手段】アンモニア合成用触媒であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期表第4族〜第11族に属する遷移金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素がドープされた希土類の水素化物を含有する、アンモニア合成用触媒。【選択図】なし

Description

本発明は、アンモニア合成用触媒に関する。
アンモニアは、従来ハーバーボッシュ法により工業レベルで広く製造されている。ハーバーボッシュ法は、二重促進鉄触媒を用いて水素と窒素とを、例えば400〜600℃、20〜100MPaの高圧条件で反応させてアンモニアを得るものである。このように、ハーバーボッシュ法によれば、高温且つ高圧条件が必要となっており、設備投資及び消費電力の増大、製造工程の煩雑化等の問題を有している。
設備投資及び消費電力を低減し、製造工程を簡略化する要望のため、近年は、より低温且つ低圧でのアンモニアの合成が求められている。
ルテニウム等の活性な金属触媒を用いると、低圧条件下でも比較的低い温度での加熱で窒素と水素からのアンモニア合成反応は進行することが知られている。金属触媒を用いた場合、アンモニア合成プロセスの律速部分は、窒素の活性化、吸着及び解離と考えられ、これらのプロセスを促進するためには最低限の加熱が必要となる。しかし、アンモニア合成は発熱反応なので、加熱温度を低くして窒素の活性化から解離までを行うことが望まれている。
窒素の活性化から解離までの反応を促進する方法として、金属触媒を担持する担体として、酸化マグネシウム等の塩基性化合物を用いたり、助触媒としてアルカリ金属を有する塩基性化合物を用いたりする方法(例えば、非特許文献1参照)、エレクトライドと呼ばれる電子がアニオンのように振る舞う物質を担体として用いる方法(例えば、特許文献1参照)等が開示されている。
また、最近では、希土類の二水素化物がエレクトライドであることがわかり、アンモニア合成触媒として用いることができることが報告されている。(例えば、非特許文献2参照)。
国際公開第2012/077658号
触媒、1996年、38巻、287頁 Inorganic Chemistry, 2016, 55, 8833-8838.
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、より低圧下においてもアンモニア合成能に優れた触媒を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねてきた。その結果、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期表第4族〜第11族に属する遷移金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素がドープされた希土類の水素化物を使用することにより、上記課題を解決した触媒が得られることを見出した。本発明は、このような知見に基づきさらに研究を重ね完成されたものである。すなわち、本発明は、以下の構成を包含する。
項1.アンモニア合成用触媒であって、
アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期表第4族〜第11族に属する遷移金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素がドープされた希土類の水素化物を含有する、アンモニア合成用触媒。
項2.前記ドープされている金属元素が、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期表第4族〜第5族に属する遷移金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である、項1に記載のアンモニア合成用触媒。
項3.前記金属元素がドープされた希土類の水素化物における前記金属元素のドープ量が5〜40モル%である、項1又は2に記載のアンモニア合成用触媒。
項4.前記希土類の水素化物が、一般式(1):
RHn (1)
[式中、Rは希土類を示す。nは1.5〜3.0を示す。]
で表される、項1〜3のいずれか1項に記載のアンモニア合成用触媒。
項5.さらに、周期表第8〜10族に属する少なくとも1種の遷移金属粒子を含有する、項1〜4のいずれか1項に記載のアンモニア合成用触媒。
項6.前記遷移金属粒子が、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム及びイリジウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属粒子である、項5に記載のアンモニア合成用触媒。
項7.前記金属元素がドープされた希土類の水素化物を担体として、前記遷移金属粒子が担持されている、項5又は6に記載のアンモニア合成用触媒。
項8.前記アンモニア合成用触媒の総量を100質量%として、前記金属元素がドープされた希土類の水素化物の含有量が90〜99.9質量%である、項5〜7のいずれか1項に記載のアンモニア合成用触媒。
項9.項1〜8のいずれか1項に記載のアンモニア合成用触媒の製造方法であって、
(1)希土類の水素化物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期表第4族〜第11族に属する遷移金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む物質とをメカニカルミリング処理に供する工程
を備える、製造方法。
項10.項5〜8のいずれか1項に記載のアンモニア合成用触媒の製造方法であって、
(1)希土類の水素化物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期表第4族〜第11族に属する遷移金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む物質とをメカニカルミリング処理に供する工程、及び
(2)工程(1)で得られた金属元素がドープされた希土類の水素化物と、周期表第8〜10族に属する少なくとも1種の遷移金属粒子とを混合する工程
を備える、製造方法。
項11.アンモニアの製造方法であって、
項1〜8のいずれか1項に記載のアンモニア合成用触媒の存在下に、水素及び窒素を反応させる工程
を備える、製造方法。
本発明によれば、従来のドープされていない希土類二水素化物を用いたアンモニア合成触媒より優れた触媒を提供することができる。
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲をA〜Bで表記する場合、A以上B以下を示す。
1.アンモニア合成用触媒
本発明のアンモニア合成用触媒は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期表第4族〜第11族に属する遷移金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「ドープ金属元素」と言うこともある)がドープされた希土類の水素化物を含有する。
希土類としては、特に制限はなく、スカンジウム、イットリウム及びランタノイド(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等)が挙げられ、アンモニア合成能の観点から、イットリウム、ランタン、セリウム、ガドリニウム等が好ましい。これらの希土類は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
希土類の水素化物としては、特に制限されないが、アンモニア合成能の観点から、一般式(1):
RHn (1)
[式中、Rは希土類を示す。nは1.5〜3.0を示す。]
で表される化合物が好ましい。
一般式(1)において、nはアンモニア合成能の観点から、1.5〜3.0が好ましく、1.8〜2.8がより好ましい。
このような希土類の水素化物としては、具体的には、二水素化スカンジウム(ScH2)、二水素化イットリウム(YH2)、二水素化ランタン(LaH2)、二水素化セリウム(CeH2)、三水素化プラセオジム(PrH2)、二水素化ネオジム(NdH2)、二水素化サマリウム(SmH2)、二水素化ユウロピウム(EuH2)、二水素化ガドリニウム(GdH2)、二水素化テルビウム(TbH2)、二水素化ジスプロシウム(DyH2)、二水素化ホルミニウム(HoH2)、二水素化エルビウム(ErH2)、二水素化ツリウム(TmH2)、二水素化イッテルビウム(YbH2)、二水素化ルテチウム(LuH2)等が挙げられ、アンモニア合成能の観点から、二水素化イットリウム(YH2)、二水素化ランタン(LaH2)、二水素化セリウム(CeH2)、二水素化ガドリニウム(GdH2)等が好ましい。これらの希土類の水素化物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
また、ドープ金属元素としては、特に制限はなく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル等が挙げられる。これらのドープ金属元素は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。なかでも、アンモニア合成能の観点からは、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期表第4族〜第5族に属する遷移金属が好ましく、リチウム、バナジウム、ジルコニウム等がより好ましい。
本発明のアンモニア合成用触媒において、ドープ金属元素がドープされた希土類の水素化物におけるドープ金属元素のドープ量は元素の種類によって異なるが、アンモニア合成能の観点から、ドープ金属元素がドープされた希土類の水素化物の総量を100モル%として、5〜40モル%が好ましく、8〜35モル%がより好ましい。
本発明のアンモニア合成用触媒は、上記したドープ金属元素がドープされた希土類の水素化物の表面に担持させる金属触媒として、周期表第8〜10族に属する少なくとも1種の遷移金属粒子(以下、「遷移金属粒子」と言うこともある)を用いることができる。
このような遷移金属粒子としては、例えば、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム等の遷移金属粒子が挙げられる。これらの遷移金属粒子は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
本発明のアンモニア合成用触媒が上記のような遷移金属粒子を含んでいる場合、その形態は特に制限されないが、アンモニア合成能の観点から、ドープ金属元素がドープされた希土類の水素化物を担体として、上記した遷移金属粒子が担持されていることが好ましい。この場合、ドープ金属元素がドープされた希土類の水素化物は、例えば平均粒子径2〜20nm程度のものを採用することが好ましく、遷移金属粒子は、例えば平均粒子径2〜10nm程度のナノ粒子を使用することが好ましい。
本発明のアンモニア合成用触媒において、各成分の含有量は特に制限はなく、例えば、アンモニア合成用触媒の総量を100質量%として、ドープ金属元素がドープされた希土類の水素化物の含有量は、アンモニア合成能の観点から、90〜99.9質量%が好ましく、95〜99質量%がより好ましい。
上記のような本発明のアンモニア合成用触媒の形状としては、ガスが滞りなく通過すれば特に限定はなく、粉体状であってもよいし、粉体等を押し出し成形法や打錠成形法により円柱状、リング状、球状等の一定の形状に成形した成型体や、一定形状に成形した後に破砕した不定形体等であってもよい。
2.アンモニア合成用触媒の製造方法
本発明のアンモニア合成用触媒は、特に制限されないが、
(1)希土類の水素化物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期表第4族〜第11族に属する遷移金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む物質とをメカニカルミリング処理に供する工程
を備える方法により製造することができる。
また、本発明のアンモニア合成用触媒が上記した遷移金属粒子を含んでいる場合、工程(1)の後に、
(2)工程(1)で得られた金属元素がドープされた希土類の水素化物と、周期表第8〜10族に属する少なくとも1種の遷移金属とを混合する工程
を備えることが好ましい。
(2−1)工程(1)
工程(1)では、希土類の水素化物と、ドープ金属元素を含む物質とをメカニカルミリング処理に供し、ドープ金属元素がドープされた希土類の水素化物を得る。
希土類の水素化物とドープ金属元素は、前記したものである。
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期表第4族〜第11族に属する遷移金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む物質(以下、「ドープ金属元素を含む物質」と言うこともある)としては、ドープ金属元素をそのまま用いることもできるが、メカニカルミリング処理により希土類の水素化物と混合しやすく、且つ、ドープ金属元素を希土類の水素化物中にドープしやすくする観点からは、ドープ金属元素の水素化物を使用することが好ましい。このため、ドープ金属元素を含む物質としては、具体的には、水素化リチウム(LiH)、水素化ナトリウム(NaH)、水素化カリウム(KH)、水素化マグネシウム(MgH2)、水素化カルシウム(CaH2)、水素化ジルコニウム(ZrH2)、水素化ハフニウム(HfH2)、水素化バナジウム(VH2)、水素化ニオブ(NbH)、水素化タンタル(TaH3)等が好ましい。これらのドープ金属元素を含む物質は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
メカニカルミリング処理を施す際の希土類の水素化物とドープ金属元素を含む物質との混合比は特に制限されず、上記した本発明のアンモニア合成用触媒におけるドープ金属元素がドープされた希土類の水素化物が有する組成範囲となるように投入することができる。つまり、ドープ金属元素を含む物質の添加量は、希土類の水素化物とドープ金属元素を含む物質との総量を100モル%として、5〜40モル%が好ましく、8〜35モル%がより好ましい。
メカニカルミリング処理は、試料を、機械的エネルギーを付与しながら粉砕する方法で、投入するエネルギーによって固相反応を進行させる方法である。また、通常の高温プロセスでは困難な化学反応を進めることも可能であることが知られている(メカノケミストリー概論、東京化学同人、1978)。工程(1)においては、希土類の水素化物とドープ金属元素に対して、機械的エネルギーを付与することで、固相反応が進行し、十分且つ均一にドープ金属元素をドープした希土類の水素化物が得られる。
このようなメカニカルミリング処理としては、例えば、振動ミル、ボールミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミル等を用いる方法が挙げられ、なかでも、十分且つ均一にドープ金属元素をドープした希土類の水素化物を合成しやすい観点から、振動ミル及びボールミルが好ましい。
ボールミルを採用する場合、ボールミルの条件は、十分且つ均一にドープ金属元素をドープできるものであれば特に限定されるものではない。一般的には、回転数が大きいほど、ドープの速度は速くなり、処理時間が長いほど、原料から混合物への転化率は高くなる。この観点から、回転数及び処理時間は適宜調整することができる。また、メカニカルミリング処理を行う際には、同時に加熱することもできる。この際の加熱温度も適宜調整することができる。
(2−2)工程(2)
工程(2)では、工程(1)で得られたアルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期表第4族〜第11族に属する遷移金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素がドープされた希土類の水素化物と、周期表第8〜10族に属する少なくとも1種の遷移金属粒子とを混合する。
周期表第8〜10族に属する少なくとも1種の遷移金属粒子は、前記したものである。
工程(1)で得られたドープ金属元素がドープされた希土類の水素化物と遷移金属粒子との混合比は特に制限されず、得られる本発明のアンモニア合成用触媒と同じ組成範囲となるように調整することができる。つまり、工程(1)で得られたドープ金属元素がドープされた希土類の水素化物と遷移金属粒子との総量を100質量%として、ドープ金属元素がドープされた希土類の水素化物を90〜99.9質量%(特に95〜99質量%)、遷移金属粒子を1〜10質量%(特に2〜5質量%)含むことが好ましい。
混合方法としては、特に制限されず、工程(1)で得られたドープ金属元素がドープされた希土類の水素化物と遷移金属粒子とを均一に混合できる方法を採用することができる。例えば、手混合、メカニカルミリング処理、各成分を溶媒中で一度に分散させて混合する方法等を採用することができる。
混合時の雰囲気は特に制限はなく、例えば、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気等が採用できる。
3.アンモニアの製造方法
本発明のアンモニアの製造方法は、本発明のアンモニア合成用触媒の存在下に、水素及び窒素を反応させる工程を備える。具体的には、反応器に本発明のアンモニア合成用触媒を入れ、原料ガスである水素含有気体及び窒素含有気体を流通させることができる。この際、水素含有気体の流量は、窒素含有気体の流量と比較して、流量比で、2〜4倍、特に2.5〜3.5倍とすることが好ましい。
入手容易性、経済性、触媒耐久性等の観点から、水素含有気体として水素ガスを用い、窒素含有気体として窒素ガスを用いることが好ましい。
反応器としては、特に制限されず、様々なものを使用できるが、原料ガス導入口及び生成アンモニア含有ガス排出口を備えていることが好ましい。
原料ガス供給手段としては、反応に必要な任意のガスを反応器内に導入する方法を備えることができる。一例として、水素供給源としては、水素ガスボンベ、炭化水素をはじめとする含水素化合物を改質して得られた水素含有ガス、アルカリ水電解や水蒸気電解によって得られた水素含有ガス等を用いることができ、窒素供給源としては、窒素ガスボンベ、産業用の窒素発生装置等を用いることができる。
本発明においては、大気圧下においてもアンモニアの合成を効率よく行うことができる。一般的にアンモニア合成反応は体積減少を伴う反応なので、高圧力であるほど、反応は進みやすく、効率は上がる。また、合成後に貯蔵のため液化させることを考慮すると、ある程度加圧した条件とすることが好ましい。実際の製造のプロセスにより条件は異なると考えられるが、例えば、生成されたアンモニアガスの圧力が1MPa程度であれば、室温でも液化させることができ、ハーバーボッシュ法のような数十MPaの圧力を必要とせず、合成ができる。
また、アンモニア合成反応は、理論上、低温の方が効率よくアンモニアを生成することができるが、実際には速度論的な観点で、ある程度以上の温度が求められる。そのため反応温度は200〜400℃、特に250〜350℃とすることが好ましい。
このようにして得られたアンモニアを含むガスは、必要に応じて、アンモニアのみを公知の方法で単離及び精製することもできる。さらに、未反応の原料ガスをさらに単離及び精製し、再度原料ガスとして利用するリサイクル過程を採用することもできる。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
室温(25℃)且つ大気圧(0.1MPa)下において、二水素化イットリウム(YH2、(株)高純度化学研究所製、YYI09PB)及び水素化リチウム(LiH、富士フイルム和光純薬(株)製、12-03812)をモル比9: 1で秤量し、遊星型ボールミル(フリッチュジャパン製、P-6)にて、500rpmで20時間メカニカルミリング処理を施し、リチウムドープ二水素化イットリウムを得た(リチウムドープ量10モル%)。次いで、室温(25℃)且つ大気圧(0.1MPa)下において、得られたリチウムドープ二水素化イットリウムと、ルテニウムナノ粒子(平均粒子径5nm)とを質量比98: 2で秤量し、乳鉢を用いた手混合により混合し、リチウムドープ二水素化イットリウムを担体としてルテニウムナノ粒子が担持した実施例1のアンモニア合成用触媒を得た。
実施例2
水素化リチウム(LiH)の代わりに、二水素化バナジウム(VH2、三津和化学薬品(株)製、MIT0000904)を用いたこと以外は実施例1と同様に、実施例2のアンモニア合成用触媒を得た。
実施例3
水素化リチウム(LiH)の代わりに、二水素化バナジウム(VH2、三津和化学薬品(株)製、MIT0000904)を用いて、二水素化イットリウム(YH2)及び二水素化バナジウム(VH2)のモル比を2: 1としたこと以外は実施例1と同様に、実施例3のアンモニア合成用触媒を得た。
実施例4
水素化リチウム(LiH)の代わりに、二水素化ジルコニウム(ZrH2、三津和化学薬品(株)製)を用いたこと以外は実施例1と同様に、実施例4のアンモニア合成用触媒を得た。
実施例5
二水素化イットリウム(YH2)の代わりにランタン水素化物(LaH2.5)を用いたこと以外は実施例1と同様に、実施例5のアンモニア合成用触媒を得た。ランタン水素化物は、金属ランタン(NewMet製、KLA-1141)を300℃、0.5MPa-H2以上の水素圧下で水素化処理することで得た。
比較例1
水素化リチウム(LiH)を用いなかったこと以外は実施例1と同様に、比較例1のアンモニア合成用触媒を得た。つまり、リチウムドープされていない二水素化イットリウムを担体としてルテニウムナノ粒子が担持したものを比較例1のアンモニア合成用触媒とした。
比較例2
水素化リチウム(LiH)を用いなかったこと以外は実施例5と同様に、比較例2のアンモニア合成用触媒を得た。つまり、リチウムドープされていないランタン水素化物を担体としてルテニウムナノ粒子が担持したものを比較例2のアンモニア合成用触媒とした。
比較例3
二水素化イットリウム(YH2)の代わりに、ナノカーボン(比表面積800m2/g)を用いたこと以外は実施例1と同様に、比較例3のアンモニア合成用触媒を得た。
試験例1
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたアンモニア合成用触媒を用いて、アンモニア合成能を評価した。具体的には、触媒特性を評価する一般的な装置である固定床反応装置中に実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたアンモニア合成用触媒と希釈剤として用いた窒化ホウ素(BN)とを質量比1: 9として、ボールミルで200rpm、2時間混合したものを0.2g入れ、窒素ガス5mL/分、水素ガス15mL/分の混合ガスを流し、0.1MPa、350℃の条件下でアンモニア合成能を評価した。この結果を表1にまとめる。このように、希土類の水素化物にリチウムやジルコニウム、バナジウム等異種元素をドープすることで、アンモニア合成能を著しく向上させることができた。
Figure 2020142189

Claims (11)

  1. アンモニア合成用触媒であって、
    アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期表第4族〜第11族に属する遷移金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素がドープされた希土類の水素化物を含有する、アンモニア合成用触媒。
  2. 前記ドープされている金属元素が、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期表第4族〜第5族に属する遷移金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である、請求項1に記載のアンモニア合成用触媒。
  3. 前記金属元素がドープされた希土類の水素化物における前記金属元素のドープ量が5〜40モル%である、請求項1又は2に記載のアンモニア合成用触媒。
  4. 前記希土類の水素化物が、一般式(1):
    RHn (1)
    [式中、Rは希土類を示す。nは1.5〜3.0を示す。]
    で表される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンモニア合成用触媒。
  5. さらに、周期表第8〜10族に属する少なくとも1種の遷移金属粒子を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアンモニア合成用触媒。
  6. 前記遷移金属粒子が、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム及びイリジウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属粒子である、請求項5に記載のアンモニア合成用触媒。
  7. 前記金属元素がドープされた希土類の水素化物を担体として、前記遷移金属粒子が担持されている、請求項5又は6に記載のアンモニア合成用触媒。
  8. 前記アンモニア合成用触媒の総量を100質量%として、前記金属元素がドープされた希土類の水素化物の含有量が90〜99.9質量%である、請求項5〜7のいずれか1項に記載のアンモニア合成用触媒。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のアンモニア合成用触媒の製造方法であって、
    (1)希土類の水素化物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期表第4族〜第11族に属する遷移金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む物質とをメカニカルミリング処理に供する工程
    を備える、製造方法。
  10. 請求項5〜8のいずれか1項に記載のアンモニア合成用触媒の製造方法であって、
    (1)希土類の水素化物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期表第4族〜第11族に属する遷移金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む物質とをメカニカルミリング処理に供する工程、及び
    (2)工程(1)で得られた金属元素がドープされた希土類の水素化物と、周期表第8〜10族に属する少なくとも1種の遷移金属粒子とを混合する工程
    を備える、製造方法。
  11. アンモニアの製造方法であって、
    請求項1〜8のいずれか1項に記載のアンモニア合成用触媒の存在下に、水素及び窒素を反応させる工程
    を備える、製造方法。
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