JP2020140889A - 非水系リチウム型蓄電素子用正極 - Google Patents

非水系リチウム型蓄電素子用正極 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、非水系リチウム型蓄電素子のリチウムドープ工程におけるリチウム含有炭酸塩の高い分解性を有し、さらにエネルギー密度、入出力特性及び耐久性を向上させることができる蓄電素子用正極電極及びその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】活物質、炭酸塩、助剤、及びバインダーを含む正極活物質層が正極集電体の片面又は両面上に配置された正極電極において、正極活物質層の表面積10cm×10cm当たりに平均粒径100μm〜2mmの凝集物が100個以下である。【選択図】なし

Description

本発明は非水系リチウム蓄電素子用正極に関する。
近年、地球環境の保全及び省資源を目指すエネルギーの有効利用の観点から、風力発電の電力平滑化システム又は深夜電力貯蔵システム、太陽光発電技術に基づく家庭用分散型蓄電システム、電気自動車用の蓄電システム等が注目を集めている。
これらの蓄電システムに用いられる電池の第一の要求事項は、エネルギー密度が高いことである。このような要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン二次電池の開発が精力的に進められている。
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)又は燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時には蓄電システムにおける高出力放電特性が要求されている。現在、高出力蓄電デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素電池等が開発されている。
電気二重層キャパシタのうち、電極に活性炭を用いたものは、0.5〜1kW/L程度の出力特性を有する。この電気二重層キャパシタは、耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)も高く、上記高出力が要求される分野で最適のデバイスと考えられてきた。しかしながら、そのエネルギー密度は1〜5Wh/L程度に過ぎない。そのため、更なるエネルギー密度の向上が必要である。
他方、現在ハイブリッド電気自動車で採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を有し、かつ160Wh/L程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度及び出力をより一層高めるとともに、耐久性(特に、高温における安定性)を高めるための研究が精力的に進められている。
また、リチウムイオン二次電池(非水系リチウム型蓄電素子の一種)においても、高出力化に向けての研究が進められている。例えば、放電深度(蓄電素子の放電容量の何%を放電した状態かを示す値)50%において3kW/Lを超える高出力が得られるリチウムイオン二次電池が開発されている。しかしながら、そのエネルギー密度は100Wh/L以下であり、リチウムイオン二次電池の最大の特徴である高エネルギー密度を敢えて抑制した設計となっている。また、その耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)については、電気二重層キャパシタに比べ劣る。そのため、実用的な耐久性を持たせるためには、放電深度が0〜100%の範囲よりも狭い範囲での使用となる。実際に使用できる容量は更に小さくなるから、耐久性をより一層向上させるための研究が精力的に進められている。
上述のように、高エネルギー密度、高出力特性、及び耐久性を兼ね備えた蓄電素子の実用化が強く求められている。しかしながら、上述した既存の蓄電素子には、それぞれ一長一短がある。そのため、これらの技術的要求を充足する新たな蓄電素子が求められている。その有力な候補として、リチウムイオンキャパシタと呼ばれる蓄電素子が注目され、開発が盛んに行われている。
上記のように、高エネルギー密度、高出力特性、及び高耐久性を兼ね備えた蓄電素子の実用化が強く求められている。しかしながら、上述した既存の蓄電素子には、それぞれ一長一短があるため、これらの技術的要求を充足する新たな蓄電素子が求められている。その有力な候補として、リチウムイオンキャパシタと呼ばれる蓄電素子が注目され、開発が盛んに行われている。
リチウムイオンキャパシタは、リチウム塩を含む非水系電解液を使用する蓄電素子(以下、「非水系リチウム蓄電素子」ともいう。)の一種であって、正極においては約3V以上で電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着及び脱着による非ファラデー反応、負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵及び放出によるファラデー反応によって、充放電を行う蓄電素子である。
上記の蓄電素子に一般的に用いられる電極材料とその特徴をまとめると、一般的に、電極に活性炭等の材料を用い、活性炭表面のイオンの吸着及び脱離(非ファラデー反応)により充放電を行う場合は、高出力かつ高耐久性が得られるが、エネルギー密度が低くなる(例えば1倍とする。)。他方、電極に酸化物又は炭素材料を用い、ファラデー反応により充放電を行う場合は、エネルギー密度が高くなる(例えば、活性炭を用いた非ファラデー反応の10倍とする。)が、耐久性及び出力特性に課題がある。
これらの電極材料の組合せとして、電気二重層キャパシタは、正極及び負極に活性炭(エネルギー密度1倍)を用い、正負極共に非ファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、したがって高出力かつ高耐久性を有するが、エネルギー密度が低い(正極1倍×負極1倍=1)という特徴がある。
リチウムイオン二次電池は、正極にリチウム遷移金属酸化物(エネルギー密度10倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正負極共にファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、したがって高エネルギー密度(正極10倍×負極10倍=100)を有するが、出力特性及び耐久性に課題がある。更に、ハイブリッド電気自動車等で要求される高耐久性を満足させるためには放電深度を制限しなければならず、リチウムイオン二次電池では、そのエネルギーの10〜50%しか使用できない。
リチウムイオンキャパシタは、正極に活性炭(エネルギー密度1倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正極では非ファラデー反応、負極ではファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、したがって、電気二重層キャパシタ及びリチウムイオン二次電池の特徴を兼ね備えた非対称キャパシタである。リチウムイオンキャパシタは高出力かつ高耐久性でありながら、高エネルギー密度(正極1倍×負極10倍=10)を有し、リチウムイオン二次電池の様に放電深度を制限する必要がないことが特徴である。
リチウムイオン二次電池は、初充電の際に負極にて非水系電解液の分解等に伴う被膜が形成する。これにより、正極から放出されたリチウムイオンの一部が負極で失活し、この不可逆容量によりエネルギー密度が低下する。近年では、人造黒鉛や天然黒鉛をベースとした不可逆容量の少ない負極活物質の開発が精力的に行われ、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度は向上している。しかしながら、入出力特性や高負荷充放電サイクル耐久性を向上できる高活性な負極活物質は、不可逆容量が大きく、リチウムイオン二次電池の特徴である高いエネルギー密度を維持しながら、入出力特性や高負荷充放電サイクル耐久性を向上させることは困難であった。
リチウムイオンキャパシタは、負極に予めリチウムをプレドープすることにより、優れた入出力特性と高いエネルギー密度との両立を実現している。このプレドープ方法としては、様々な方法が提案されている。これまでに多く実施されている負極活物質にリチウムイオンを供給する方法は、負極活物質層の表面に金属リチウムを貼り付け、非水電解液を注入することである。この金属リチウムを用いるプレドープ方法として、具体的には、例えば以下のような方法が提案されている。
特許文献1には、負極の活物質層に金属リチウム箔を圧着し、プレドープする方法が提案されている。しかしながら、工業的に生産されている金属リチウム箔は、通常30μm以上の厚さがある。金属リチウムの理論容量(3.86Ah/g)から厚さ30μm以上の金属リチウム箔の容量を計算すると、単位面積当たり61.9Ah/m2以上のリチウムを含むことになる。そのため、負極に対して適切な量のリチウムイオンをプレドープするためには、厚さが100μm以上という過度に厚い負極を用いなければならず、負極が厚膜化することでエネルギー密度が低下する。このような過度に厚い負極の使用を避けるため、金属リチウム箔をストライプ状に貼り付ける方法が考えられる。しかしながら、この方法によると、負極中のリチウムイオンのドープ状態に斑が発生し、入出力特性が低下してしまう。すなわち、金属リチウム箔を使用するプレドープ方法では高いエネルギー密度と入出特性を兼ね備えるリチウムイオンキャパシタを実現することは困難であった。
最近では、金属リチウムを使用せずにリチウム化合物を使用してプレドープする方法も提案されている。特許文献2には、リチウム化合物を用いて負極にプレドープする方法が開示されている。
なお、本明細書において、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出され、BJH法は非特許文献1において提唱されており、かつMP法は、「t−プロット法」(非特許文献2)を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、非特許文献3において示される。
特開2006−286218号公報 国際公開第2017/126687号
E.P.Barrett,L.G.Joyner and P.Halenda,J.Am.Chem.Soc.,73,373(1951) B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965) R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45(1968)
特許文献2に示されるとおり、リチウム化合物を含む正極前駆体を備える非水系リチウム型蓄電素子は、リチウムドープ工程を施すことにより、リチウム化合物が分解して負極にリチウムイオンを供給することができる。このため、非水系リチウム型蓄電素子の一種であるリチウムイオン二次電池においては、リチウム化合物の分解により負極の不可逆容量を補填できるため、高活性な負極活物質と組み合わせることで、リチウムイオン二次電池特有の高いエネルギー密度を維持しながら、入出力特性と耐久性が向上することが期待される。また、非水系リチウム型蓄電素子の一種であるリチウムイオンキャパシタにおいては、金属リチウム箔を使用することなく、リチウム化合物の分解により負極にリチウムイオンをプレドープできるため、負極を薄膜化でき、さらに負極電位を十分に低電位化することで作動電圧を高くすることができる。これにより、エネルギー密度が向上すると同時に、入出力特性と耐久性が向上することが期待される。
特許文献2に記述されるような非水系リチウム型蓄電素子では、リチウムドープ工程で分解されずに残存したリチウム化合物によって入出力特性と耐久性が低減されることを見出したが、その解決策としては、リチウムドープ工程における高い分解性を有するリチウム化合物の選定及び平均粒子径サイズの限定のみであった。
したがって、本発明は、非水系リチウム型蓄電素子のリチウムドープ工程におけるリチウム含有炭酸塩の高い分解性を有し、さらにエネルギー密度、入出力特性及び耐久性を向上させることができる蓄電素子用正極電極及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、正極形成用塗工液の分散性、二次凝集物の大きさ及び数などを特定することによって、上記課題が解決されることを見出した。すなわち、本発明は、以下のとおりのものである:
[1]
正極活物質、炭酸塩、助剤、及びバインダーを含む正極活物質層が正極集電体の片面又は両面上に配置された正極電極であって、前記正極活物質層の表面の面積10cm×10cm当たりに、平均粒径100μm超2mm以下の凝集物が100個以下である正極電極。
[2]
前記正極電極の断面に含まれる前記凝集物が、1cmの断面積中1個以下である、項目1に記載の正極電極。
[3]
前記凝集物に含有される前記炭酸塩の割合が、前記凝集物の質量全体に対して30質量%以上である、項目1又は2に記載の正極電極。
[4]
前記炭酸塩の平均粒子径をX1とするとき、0.1μm≦X1≦50.0μmであり、前記正極活物質の平均粒子径をY1とするとき、2.0μm≦Y1≦20.0μmであり、かつ前記正極電極中に含まれる前記炭酸塩の量が、1質量%以上50質量以下である、項目1〜3のいずれか1項に記載の正極電極。
[5]
前記炭酸塩は、炭酸リチウムである、項目1〜4のいずれか1項に記載の正極電極。
[6]
以下の工程:
前記正極活物質40〜80質量%、
前記炭酸塩10〜35質量%、
分散剤1〜3質量%、
前記助剤2〜6質量%、及び
前記バインダー7〜16質量%、
をドライ混合してドライ混合物を得るドライ混合工程;
溶媒の割合が75質量%〜85質量%となるように前記溶媒を前記ドライ混合物に添加して引き続き混合して、正極電極前駆体塗工液を得る溶媒添加・混合工程;並びに
前記正極電極前駆体塗工液を正極集電体上に塗布した後、加熱乾燥する塗布・乾燥工程;
を含む、項目1〜5のいずれか1項に記載の正極電極の製造方法。
[7]
前記ドライ混合工程後、前記溶媒添加・混合工程を少なくとも2回繰り返す、項目6に記載の正極電極の製造方法。
[8]
前記ドライ混合工程後、前記溶媒添加・混合工程を少なくとも5回繰り返し、前記溶媒の添加量について、
一回目は前記溶媒の割合が96質量%〜97質量%となるように前記溶媒を添加した後、混合し、
二回目は前記溶媒の割合が93質量%〜95質量%となるように前記溶媒を添加した後、混合し、
三回目は前記溶媒の割合が90質量%〜92質量%となるように前記溶媒を添加した後、混合し、
四回目は前記溶媒の割合が86質量%〜89質量%となるように前記溶媒を添加した後、混合し、かつ
五回目は前記溶媒の割合が75質量%〜85質量%となるように前記溶媒を添加した後、混合する、
項目6又は7に記載の正極電極の製造方法。
[9]
正極活物質、炭酸塩、分散剤、助剤、バインダー、及び溶媒を含み、かつ前記溶媒の含有割合が75質量%〜85質量%である正極電極前駆体塗工液。
[10]
前記溶媒が、水、N−メチル−2ピロリドン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、リン酸トリメチル、アルコール、アセトン、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、及びシクロヘキサンから成る群から選ばれる少なくとも1種である、項目9に記載の正極電極前駆体塗工液。
[11]
前記分散剤が、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアセタールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、項目9又は10に記載の正極電極前駆体塗工液。
本発明は、非水系リチウム型蓄電素子のリチウムドープ工程における高い分解性を有する炭酸塩含有正極を用いて、高いエネルギー密度、高い入出力特性、及び高い耐久性、例えば高負荷充放電サイクル耐久性を兼ね備える非水系リチウム型蓄電素子を提供することができる。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本実施形態の各数値範囲における上限値及び下限値は任意に組み合わせて任意の数値範囲を構成することができる。
一般に、非水系リチウム蓄電素子は、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを主な構成要素とする。電解液としては、アルカリ金属イオンを含む有機溶媒(以下、「非水系電解液」ともいう。)を用いる。
<正極前駆体と正極>
本実施形態における正極前駆体は、正極集電体と、その上に配置された、より詳細には、その片面又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有する。本実施形態に係る正極活物質層は、正極活物質と、炭酸塩と、助剤と、バインダーとを含み、所望により分散剤を含有することができる。後述のように、本実施形態では、蓄電素子組み立て工程内で、負極にアルカリ金属イオンをプレドープすることが好ましく、そのプレドープ方法としては、アルカリ金属化合物を含む正極前駆体、負極、セパレータ、外装体、及び非水系電解液を用いて蓄電素子を組み立てた後に、正極前駆体と負極との間に電圧を印加することが好ましい。アルカリ金属化合物は、正極前駆体中にいかなる態様で含まれていてもよく、例えばアルカリ金属炭酸塩として含まれてよい。例えば、アルカリ金属化合物は、正極集電体と正極活物質層との間に存在してよく、正極活物質層の表面上に存在してよい。アルカリ金属化合物は正極前駆体の正極集電体上に形成された正極活物質層に含有されることが好ましい。本明細書では、アルカリ金属ドープ工程前における正極を「正極前駆体」、アルカリ金属ドープ工程後における正極を「正極」と定義する。
[正極活物質層]
正極活物質層は、炭素材料を含む正極活物質、炭酸塩、助剤(フィラー)、及びバインダーを含有することが好ましく、これら以外に、必要に応じて、分散剤、pH調整剤等の任意成分を含んでいてもよい。本実施形態に係る正極活物質層の表面の面積10cm×10cm当たりに、平均粒径100μm超2mm以下の凝集物が100個以下で観察される。言い換えると、正極活物質層の表面に存在する凝集物の割合が、1個/cm以下である。非水系リチウム型蓄電素子のリチウムドープ工程時に炭酸塩の分解性が高く、かつ蓄電素子の高エネルギー密度、高入出力特性及び高耐久性を両立させることができる正極前駆体又は正極の構造が、1個/cm以下の正極活物質層表面上の凝集物割合により特定される。正極活物質層表面上の凝集物割合は、好ましくは、0.20〜0.90個/cmである。なお、凝集物の詳細については、後述する。また、正極活物質層は、正極前駆体の正極活物質層中または正極活物質層表面に、アルカリ金属化合物が含有されることが好ましい。
[正極活物質]
正極活物質は、炭素材料を含むことが好ましい。この炭素材料としては、カーボンナノチューブ、導電性高分子、又は多孔性の炭素材料を使用することが好ましく、より好ましくは活性炭である。正極活物質には1種類以上の炭素材料を混合して使用してもよい。炭素材料の他に、正極活物質としてリチウム遷移金属酸化物を混合して使用してもよい。リチウム遷移金属酸化物としては、リチウムイオン電池で使用される既知の材料を使用することができる。正極活物質には1種類以上のリチウム遷移金属酸化物を混合して使用してもよい。
活性炭を正極活物質として用いる場合、活性炭の種類及びその原料には特に制限はないが、高い入出力特性と、高いエネルギー密度とを両立させるために、活性炭の細孔を最適に制御することが好ましい。具体的には、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、
(1)高い入出力特性のためには、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下である活性炭(以下、活性炭1ともいう。)が好ましく、また、
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V1≦2.5、及び0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下である活性炭(以下、活性炭2ともいう。)が好ましい。
本実施形態における活物質のBET比表面積及びメソ孔量、マイクロ孔量、平均細孔径は、それぞれ以下の方法によって求められる値である。試料を200℃で一昼夜真空乾燥し、窒素を吸着質として吸脱着の等温線の測定を行なう。ここで得られる吸着側の等温線を用いて、BET比表面積はBET多点法又はBET1点法により、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出される。
BJH法は一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法で、Barrett,Joyner, Halendaらにより提唱されたものである(非特許文献1)。
また、MP法とは、「t−プロット法」(非特許文献2)を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、R.S.Mikhail,Brunauer,Bodorにより考案された方法である(非特許文献3)。
また、平均細孔径とは、液体窒素温度下で、各相対圧力下における窒素ガスの各平衡吸着量を測定して得られる、試料の質量当たりの全細孔容積を上記BET比表面積で除して求めたものを指す。
尚、上記のV1が上限値でV2が下限値である場合のほか、それぞれの上限値と下限値の組み合わせるは任意である。
以下、前記(1)活性炭1及び前記(2)活性炭2について、個別に順次説明する。
(活性炭1)
活性炭1のメソ孔量V1は、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくする点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましい。V1は、正極の嵩密度の低下を抑える点から、0.8cc/g以下であることが好ましい。V1は、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、更に好ましくは0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
活性炭1のマイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cc/g以上であることが好ましい。V2は、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという点から、1.0cc/g以下であることが好ましい。V2は、より好ましくは0.6cc/g以上1.0cc/g以下、更に好ましくは0.8cc/g以上1.0cc/g以下である。
マイクロ孔量V2に対するメソ孔量V1の比(V1/V2)は、0.3≦V1/V2≦0.9の範囲であることが好ましい。すなわち、高容量を維持しながら出力特性の低下を抑えることができる程度に、マイクロ孔量に対するメソ孔量の割合を大きくするという点から、V1/V2が0.3以上であることが好ましい。一方で、高出力特性を維持しながら容量の低下を抑えることができる程度に、メソ孔量に対するマイクロ孔量の割合を大きくするという点から、V1/V2は0.9以下であることが好ましい。より好ましいV1/V2の範囲は0.4≦V1/V2≦0.7、更に好ましいV1/V2の範囲は0.55≦V1/V2≦0.7である。
活性炭1の平均細孔径は、得られる蓄電素子の出力を最大にする点から、17Å以上であることが好ましく、18Å以上であることがより好ましく、20Å以上であることが最も好ましい。また容量を最大にする点から、活性炭1の平均細孔径は25Å以下であることが好ましい。
活性炭1のBET比表面積は、1,500m/g以上3,000m/g以下であることが好ましく、1,500m/g以上2,500m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が1,500m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が3,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つために結着剤を多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
前記のような特徴を有する活性炭1は、例えば、以下に説明する原料及び処理方法を用いて得ることができる。
本実施形態では、活性炭1の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではない。例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他の合成木材、合成パルプ等、及びこれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、量産対応及びコストの観点から、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
これらの原料を前記活性炭1とするための炭化及び賦活の方式としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の既知の方式を採用できる。
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガス等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400〜700℃(好ましくは450〜600℃)程度において、30分〜10時間程度に亘って焼成する方法が挙げられる。
上記で説明された炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法が好ましく用いられる。これらのうち、賦活ガスとして、水蒸気又は二酸化炭素を使用する方法が好ましい。
この賦活方法では、賦活ガスを0.5〜3.0kg/h(好ましくは0.7〜2.0kg/h)の割合で供給しながら、得られた炭化物を3〜12時間(好ましくは5〜11時間、更に好ましくは6〜10時間)掛けて800〜1,000℃まで昇温して賦活するのが好ましい。
更に、上記で説明された炭化物の賦活処理に先立ち、予め炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、炭素材料を水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で焼成してガス賦活する方法が、好ましく採用できる。
上記で説明された炭化方法における焼成温度及び焼成時間と、賦活方法における賦活ガス供給量、昇温速度及び最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、本実施形態において使用できる活性炭1を製造することができる。
活性炭1の平均粒子径(本明細書では、平均粒子径Y1と呼ばれることもある)は、2〜20μmであることが好ましい。平均粒子径が2μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。なお、平均粒子径が小さいと耐久性が低いという欠点を招来する場合があるが、平均粒子径が2μm以上であればそのような欠点が生じ難い。一方で、平均粒子径が20μm以下であると、高速充放電には適合し易くなる傾向がある。活性炭1の平均粒子径は、より好ましくは2〜15μmであり、更に好ましくは3〜10μmである。
(活性炭2)
活性炭2のメソ孔量V1は、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする観点から、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。V1は、蓄電素子の容量の低下を抑える観点から、2.5cc/g以下であることが好ましい。V1は、より好ましくは1.00cc/g以上2.0cc/g以下、さらに好ましくは、1.2cc/g以上1.8cc/g以下である。
活性炭2のマイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。V2は、活性炭の電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという観点から、3.0cc/g以下であることが好ましい。V2は、より好ましくは1.0cc/gより大きく2.5cc/g以下、更に好ましくは1.5cc/g以上2.5cc/g以下である。
上述したメソ孔量及びマイクロ孔量を有する活性炭2は、従来の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ用として使用されていた活性炭よりもBET比表面積が高いものである。活性炭2のBET比表面積の具体的な値は、2,300m/g以上4,000m/g以下であることが好ましく、3,000m/g以上4,000m/g以下であることがより好ましく、3,200m/g以上3,800m/g以下であることがさらに好ましい。BET比表面積が2,300m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、BET比表面積が4,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つために結着剤を多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
前記のような特徴を有する活性炭2は、例えば以下に説明するような原料及び処理方法を用いて得ることができる。
活性炭2の原料として用いられる炭素質材料としては、通常活性炭原料として用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻等の植物系原料;石油ピッチ、コークス等の化石系原料;フェノール樹脂、フラン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられる。これらの原料の中でも、フェノール樹脂、及びフラン樹脂は、高比表面積の活性炭を作製するのに適しており特に好ましい。
これらの原料を炭化する方式、或いは賦活処理時の加熱方法としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の公知の方式が挙げられる。加熱時の雰囲気は窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分として他のガスとの混合したガスが用いられる。炭化温度は400〜700℃程度で0.5〜10時間程度焼成する方法が一般的である。
炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法、及びアルカリ金属化合物と混合した後に加熱処理を行うアルカリ金属賦活法があるが、高比表面積の活性炭を作製するにはアルカリ金属賦活法が好ましい。
この賦活方法では、炭化物とKOH、NaOH等のアルカリ金属化合物との質量比が1:1以上(アルカリ金属化合物の量が、炭化物の量と同じかこれよりも多い量)となるように混合した後に、不活性ガス雰囲気下で600〜900℃の範囲において、0.5〜5時間加熱を行い、その後アルカリ金属化合物を酸及び水により洗浄除去し、更に乾燥を行う。
マイクロ孔量を大きくし、メソ孔量を大きくしないためには、賦活する際に炭化物の量を多めにしてKOHと混合するとよい。マイクロ孔量及びメソ孔量の双方を大きくするためには、KOHの量を多めに使用するとよい。また、主としてメソ孔量を大きくするためには、アルカリ賦活処理を行った後に水蒸気賦活を行うことが好ましい。
活性炭2の平均粒子径(本明細書では、平均粒子径Y1と呼ばれることもある)は2μm以上20μm以下であることが好ましい。より好ましくは3μm以上10μm以下である。
(活性炭の使用)
活性炭1及び2は、それぞれ、1種の活性炭であってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって前記した各々の特性値を混合物全体として示すものであってもよい。
前記の活性炭1及び2は、これらのうちのいずれか一方を選択して使用してもよいし、両者を混合して使用してもよい。
正極活物質は、活性炭1及び2以外の材料(例えば、上記で説明された特定のV1及び/若しくはV2を有さない活性炭、又は活性炭以外の材料(例えば、導電性高分子等))を含んでもよい。例示の態様において、正極活物質層中の活性炭1の含有量、活性炭2の含有量、又は活性炭1及び2の合計含有量、つまり正極活物質層中の炭素材料の質量割合をA1とするとき、また、正極前駆体中に導電性フィラー、結着剤、分散剤等が含まれる場合には、炭素材料とこれらの材料の合計量をA1とするとき、A1が15質量%以上65質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは20質量%以上50質量%以下である。A1が15質量%以上であれば、電気伝導度の高い炭素材料とアルカリ金属化合物の接触面積が増えるため、プレドープ工程においてアルカリ金属化合物の酸化反応が促進し、短時間でプレドープをすることができる。A1が65質量%以下であれば、正極活物質層の嵩密度が高まり高容量化できる。
(リチウム遷移金属酸化物)
リチウム遷移金属酸化物は、リチウムを吸蔵及び放出可能な遷移金属酸化物を含む。正極活物質として用いられる遷移金属酸化物には、特に制限はない。遷移金属酸化物としては、例えば、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、バナジウム、及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物が挙げられる。遷移金属酸化物として具体的には、下記式:
LiCoO{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
LiNiO{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
LiNi(1−y){式中、Mは、Co、Mn、Al、Fe、Mg、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、xは0≦x≦1を満たし、かつyは0.05<y<0.97を満たす。}、
LiNi1/3Co1/3Mn1/3{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
LiMnO{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
α−LiFeO{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
LiVO{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
LiCrO{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
LiFePO{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
LiMnPO{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
Li(PO{式中、zは0≦z≦3を満たす。}、
LiMn{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
LiMn(2−y){式中、Mは、Co、Mn、Al、Fe、Mg、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、xは0≦x≦1を満たし、かつyは0.05<y<0.97を満たす。}、
LiNiCoAl(1−a−b){式中、xは0≦x≦1を満たし、かつa及びbは0.05<a<0.97と0.05<b<0.97を満たす。}、
LiNiCoMn(1−c−d){式中、xは0≦x≦1を満たし、かつc及びdは0.05<c<0.97と0.05<d<0.97を満たす。}
で表される化合物等が挙げられる。これらの中でも、高容量、低抵抗、サイクル特性、アルカリ金属化合物の分解、及びプレドープ時の正極活物質の欠落の抑制の観点から、上記式LiNiCoAl(1−a−b)、LiNiCoMn(1−c−d)、LiCoO、LiMn、LiFePO、LiMnPO、又はLi(POで表される化合物が好ましい。
本実施形態では、正極活物質とは異なるアルカリ金属化合物が正極前駆体に含まれていれば、プレドープにてアルカリ金属化合物がアルカリ金属のドーパント源となり、負極にプレドープができるため、遷移金属化合物に予めリチウムイオンが含まれていなくても(すなわち上記式においてx=0、又はz=0であっても)、非水系リチウム蓄電素子として電気化学的な充放電をすることができる。
(炭酸塩)
本実施形態に係る炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから成る群から選ばれる少なくとも1つの炭酸塩が、正極前駆体中で分解して陽イオンを放出し、負極で還元することでプレドープすることが可能であり、単位重量当たりの容量が高いという観点から好適に用いられ、炭酸リチウムがより好適に用いられる。
正極前駆体の正極活物質層に含まれる炭酸塩の質量割合が、10質量%以上50質量%以下であるように正極前駆体を作製することが好ましい。この質量割合が10質量%以上であれば負極に十分な量のアルカリ金属イオンをプレドープすることができ、非水系リチウム蓄電素子の容量が高まる。他方、この質量割合が50質量%以下であれば、正極前駆体中の電子伝導を高めることができるので、炭酸塩の分解を効率よく行うことができる。
また、プレドープの達成を示す1つの指標として、正極中には、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから成る群から選ばれる少なくとも1つの炭酸塩が、好ましくは1質量%以上10質量%以下、より好ましくは1.5質量%以上9.5質量%以下含まれる。炭酸塩の微粒子化には様々な方法を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、リングミル、ジェットミル、ロッドミル等の粉砕機を使用することができる。
上記炭酸塩の定量は、ICP−AES、原子吸光分析法、蛍光X線分析法、中性子放射化分析法、ICP−MS等により算出できる。
本実施形態において、炭酸塩の平均粒子径(X1)は0.1μm以上50μm以下であることが好ましい。平均粒子径(X1)が0.1μm以上50μm以下であれば正極前駆体中での分散性が変わらず、分解反応は同程度の効率で進行する。また、炭酸塩の平均粒子径(X1)が、上記で説明された炭素材料の平均粒子径より小さいことは必須ではない。上記で説明された正極活物質(例えば、活性炭1、活性炭2など)の平均粒子径をY1とするとき、X1≦Y1であることが好ましい。正極前駆体中における炭酸塩の平均粒子径の測定方法については特に限定されないが、正極断面のSEM画像、及びSEM−EDX画像から算出することができる。正極断面の形成方法については、正極上部からArビームを照射し、試料直上に設置した遮蔽板の端部に沿って平滑な断面を作製するBIB加工を用いることができる。このようにして形成された正極断面に含まれる凝集物は、非水系リチウム型蓄電素子のリチウムドープ工程時に炭酸塩の分解性を高め、かつ蓄電素子のエネルギー密度、入出力特性及び耐久性を両立させるという観点から、1cmの断面積中1個以下、又は1cmの断面積中0個であることが好ましい。
(正極活物質層のその他の成分)
正極前駆体の正極活物質層には、正極活物質及び炭酸塩の他に、導電性フィラーなどの助剤、及びバインダーを含み、さらに必要に応じて、分散剤、pH調整剤等の任意成分を含んでいてもよい。
助剤は、例えば導電性フィラーなどを含むことができる。導電性フィラーとしては、正極活物質よりも導電性の高い導電性炭素質材料を挙げることができる。このような導電性フィラーとしては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、鱗片状黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン、これらの混合物等が好ましい。正極前駆体の正極活物質層における導電性フィラーの混合量は、正極活物質100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、1〜15質量部の範囲がより好ましい。導電性フィラーは高入力の観点からは混合する方が好ましい。しかしながら、混合量が20質量部よりも多くなると、正極活物質層における正極活物質の含有割合が少なくなるために、正極活物質層体積当たりのエネルギー密度が低下するので好ましくない。
バインダーとしては、特に制限されるものではないが、例えばPVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ素ゴム、アクリル共重合体等を用いることができる。バインダーの使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上27質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上25質量部以下である。バインダーの使用量が正極活物質100質量部に対して1質量部以上であれば、十分な電極強度が発現される。一方で、バインダーの使用量が正極活物質100質量部に対して30質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
分散剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアセタールから成る群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。分散剤の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上10質量部以下である。分散剤の使用量が正極活物質100質量部に対して10質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
塗工液の溶媒に水を使用する場合には、アルカリ金属化合物を加えることで塗工液がアルカリ性になることもあるため、必要に応じてpH調整剤を塗工液に添加してもよい。pH調整剤としては、特に制限されるものではないが、例えばフッ化水素、塩化水素、臭化水素等のハロゲン化水素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸等のハロゲンオキソ酸、蟻酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、二酸化炭素等の酸を用いることができる。
[正極集電体]
本実施形態に係る正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こらない材料であれば特に制限はないが、金属箔が好ましい。本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子における正極集電体としては、アルミニウム箔がより好ましい。
金属箔は凹凸又は貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
後述されるプレドープ処理の観点からは、無孔状のアルミニウム箔が更に好ましく、アルミニウム箔の表面が粗面化されていることが特に好ましい。
正極集電体の厚みは、正極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
また前記金属箔の表面に、例えば黒鉛、鱗片状黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、気相成長炭素繊維等の導電性材料を含むアンカー層を設けることが好ましい。アンカー層を設けることで正極集電体と正極活物質層間の電気伝導が向上し、低抵抗化できる。アンカー層の厚みは、正極集電体の片面当たり0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。
[正極前駆体の製造]
本実施形態において、非水系リチウム蓄電素子の正極となる正極前駆体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質及び炭酸塩、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を正極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより正極前駆体を得ることが出来る。さらに得られた正極前駆体にプレスを施して、正極活物質層の膜厚又は嵩密度を調整してもよい。代替的には、溶剤を使用せずに、正極活物質及びアルカリ金属化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて正極集電体に貼り付ける方法、又は得られた混合物を正極集電体上に加熱プレスして正極活物質層を形成する方法も可能である。
(正極前駆体塗工液の調製)
正極前駆体塗工液の調製は正極活物質を含む各種材料粉末の一部若しくは全部をドライブレンドし、次いで水又は有機溶媒、及び/又はそれらにバインダー、分散剤若しくはpH調整剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質を追加して調製してもよい。また、水又は有機溶媒にバインダー、分散剤若しくはpH調整剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質の中に、正極活物質を含む各種材料粉末を追加して調製してもよい。ドライブレンド法として、例えばボールミル等を使用して正極活物質及びアルカリ金属化合物、並びに必要に応じて導電性フィラーなどの助剤を予備混合して、導電性の低いアルカリ金属化合物に導電材をコーティングさせる予備混合をしてもよい。これにより、後述のプレドープ工程において正極前駆体でアルカリ金属化合物が分解し易くなる。
正極前駆体塗工液の調製は、好適には多軸分散機、プラネタリーミキサー、薄膜旋回型高速ミキサー等の分散機等を用いることが出来る。より好適には固形分を徐々に下げて分散させる方法である。良好な分散状態の塗工液を得るためには、分散時の固形分(撹拌工程数)を5段階以上に分けて、周速、分散時間を調整して分散させることが好ましい。例えば、正極前駆体塗工液の調製方法は、以下の工程を含むことができる:
(i)活物質40〜80質量%、炭酸塩10〜35質量%、助剤2〜6質量%、バインダー7〜16質量%、及び分散剤1〜3質量%を混合して互いが均一に混ざるようドライ(乾式)混合して、ドライ混合物を得るドライ混合工程;並びに
(ii)引続き、ドライ混合物に溶媒を多段階に分けて添加し混合作業を行う溶媒添加・混合工程。
また、炭酸塩の分散性、事後的なプレドープ工程時の炭酸塩の分解性などの観点から、溶媒添加・混合工程(ii)は、多段階で行われることが好ましく、より好ましくは、少なくとも2回(二段混合)、少なくとも3回(三段混合)、少なくとも4回(四段混合)、又は少なくとも5回(五段混合)繰り返される。
(1)二段混合の場合
二段混合する場合は、ドライ混合工程後、溶媒を、最終的に溶媒の割合が75〜85質量%になるように、例えば最終的に固形分割合が15質量%〜25質量%になるように、二回に分けてドライ混合物と混合する。
最初は、溶媒の割合が90〜95質量%になるように、例えば固形分割合が5質量%〜10質量%となるように、溶媒をドライ混合物へ添加した後、分散機で混合する。引き続き、溶媒の割合が75〜85質量%になるように、例えば固形分割合が15質量%〜25質量%となるように、溶媒をドライ混合物へ添加した後、一回目と同様の条件で分散機で混合する。
(2)三段混合の場合
三段混合する場合、ドライ混合工程後、溶媒を、最終的に溶媒の割合が75〜85質量%になるように、例えば最終的に固形分割合が15質量%〜25質量%となるように、三回に分けてドライ混合物と混合する。
一回目は、溶媒の割合が93〜97質量%になるように、例えば固形分割合が3質量%〜7質量%となるように、溶媒をドライ混合物へ添加した後、分散機で混合する。二回目は、溶媒の割合が86〜92質量%になるように、例えば固形分割合が8質量%〜14質量%となるように、溶媒をドライ混合物へ添加した後、一回目と同様の条件で分散機で混合する。三回目は、溶媒の割合が75〜85質量%になるように、例えば固形分割合が15質量%〜25質量%となるように、溶媒をドライ混合物へ添加した後、一回目と同様の条件で分散機で混合する。
(3)四段混合の場合
四段混合する場合、ドライ混合工程後、溶媒を、最終的に溶媒の割合が75〜85質量%になるように、例えば最終的に固形分割合が15質量%〜25質量%となるように、四回に分けてドライ混合物と混合する。
一回目は、溶媒の割合が95〜97質量%になるように、例えば固形分割合が3質量%〜5質量%となるように、溶媒をドライ混合物へ添加した後、分散機で混合する。二回目は、溶媒の割合が91〜94質量%になるように、例えば固形分割合が6質量%〜9質量%となるように、溶媒をドライ混合物へ添加した後、一回目と同様の条件で分散機で混合する。三回目は、溶媒の割合が86〜90質量%になるように、例えば固形分割合が10質量%〜14質量%となるように溶媒をドライ混合物へ添加した後、一回目と同様の条件で分散機で混合する。四回目は、溶媒の割合が75〜85質量%になるように、例えば固形分割合が15質量%〜25質量%となるように溶媒をドライ混合物へ添加した後、一回目と同様の条件で分散機で混合する。
(4)五段混合の場合
五段混合する場合、ドライ混合工程後、溶媒を、最終的に溶媒の割合が75〜85質量%になるように、例えば固形分割合が15質量%〜25質量%となるように、五回に分けてドライ混合物と混合する。
一回目は、溶媒の割合が96〜97質量%になるように、例えば固形分割合が3質量%〜4質量%となるように、溶媒をドライ混合物へ添加した後、分散機で混合する。二回目は、溶媒の割合が93〜95質量%になるように、例えば固形分割合が5質量%〜7質量%となるように、溶媒をドライ混合物へ添加した後、一回目と同様の条件で分散機で混合する。三回目は、溶媒の割合が90〜92質量%になるように、例えば固形分割合が8質量%〜10質量%となるように、溶媒をドライ混合物へ添加した後、一回目と同様の条件で分散機で混合する。四回目は、溶媒の割合が86〜89質量%になるように、例えば固形分割合が11質量%〜14質量%となるように、溶媒をドライ混合物へ添加した後、一回目と同様の条件で分散機で混合する。五回目は、溶媒の割合が75〜85質量%になるように、例えば固形分割合が15質量%〜25質量%となるように、溶媒をドライ混合物へ添加した後、一回目と同様の条件で分散機で混合する。
以上のように二段から五段に亘る混合の場合について説明したが、いずれの混合方法の場合でも、固形分割合は、一回目に対して二回目、二回目に対して三回目、三回目に対して四回目、四回目に対して五回目が、同じ量か、又は多くなるように、溶媒を混合系へ添加することが望ましい。回数が少ない段階で混合時にシェアを掛けることで均一分散が達成され、得られる塗工液又は正極前駆体中の凝集物の発生が抑制されると推定している。
尚、本明細書における凝集物とは、平均粒径が100μm超かつ2mm以下であるものをいう。塗工液を用いて得られる正極前駆体を含む蓄電素子のエネルギー密度、入出力特性及び耐久性の観点から、凝集物に含有される炭酸塩の含有割合が凝集物の質量に対して30質量%以上であることが好ましい。凝集物中の炭酸塩の含有割合は、100質量%以下、又は99質量%であることができる。
また、工程(ii)の最後に、薄膜旋回型高速ミキサーを使用して塗工液をさらに分散させてもよい。これにより凝集物の少ない塗工液を得られる。
用いる溶媒は、単独であっても混合であってもよく、水、N−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、リン酸トリメチル、アルコール、アセトン、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、及びシクロヘキサンから成る群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
上記製造条件においてはドライ混合を最初に実施する条件を記載したが、最初から溶媒を含有成分と混合しても構わない。これは、PVDFなどのバインダーを先に溶媒へ入れることで分散時の塗工液粘度を高めることができ、粉体材料の分散がし易くなるためである。
この分散方式により、炭酸塩の平均粒子径が炭素材料の平均粒子径より小さくなくても、炭酸塩の分解反応は同程度の効率で進行し、正極活物質層の電子伝導を高め、電極体又は蓄電素子の低抵抗化に寄与することができる。さらに同じ炭酸塩を使用した際に、分散強度を高めることでより分解効率を高め、電極の低抵抗化に寄与することができる。
塗工液の分散度は、粒ゲージで測定した粒度が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。分散度の上限としては、より好ましくは粒度が80μm以下、さらに好ましくは粒度が60μm以下である。粒度が0.1μm未満では、正極活物質を含む各種材料粉末の粒径以下のサイズとなり、塗工液作製時に材料を破砕していることになり、好ましくない。また、粒度が100μm以下であれば、塗工液吐出時の詰まり又は塗膜のスジ発生等がなく、安定に塗工ができる。また粒度が100μm以上になると、炭酸塩が分解せず負極電位が上昇してしまうため炭酸塩の分解反応は低下し、正極活物質層の電子伝導を下げ、電極体又は蓄電素子の抵抗増加に寄与することとなる。
正極前駆体の塗工液の粘度(ηb)は、1,000mPa・s以上20,000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは1,500mPa・s以上10,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,700mPa・s以上5,000mPa・s以下である。粘度(ηb)が1,000mPa・s以上であれば、塗膜形成時の液ダレが抑制され、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。また、粘度が20,000mPa・s以下であれば、塗工機を用いた際の塗工液の流路における圧力損失が少なく安定に塗工でき、また所望の塗膜厚み以下に制御できる。
また、塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、1.1以上が好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。TI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
正極前駆体の製造方法は、ドライ混合工程(i)及び溶媒添加・混合工程(ii)に加えて、(iii)正極電極前駆体塗工液を正極集電体上に塗布した後、加熱乾燥して塗膜を形成する塗布・乾燥工程を含むことができる。正極前駆体の塗膜の形成には、特に制限されるものではないが、好適にはダイコーター又はコンマコーター、ナイフコーター、グラビア塗工機等の塗工機を用いることができる。塗膜は単層塗工で形成してもよいし、多層塗工して形成してもよい。多層塗工の場合には、塗膜各層内の炭酸塩の含有量が異なるように塗工液組成を調整してもよい。正極集電体に塗膜を塗工する際、多条塗工してもよいし、間欠塗工してもよいし、多条間欠塗工してもよい。また、正極集電体の片面に塗工、乾燥し、その後もう一方の面に塗工、乾燥する逐次塗工を行ってもよいし、正極集電体の両面に同時に塗工液を塗工、乾燥する両面同時塗工を行ってもよい。正極集電体の両面に塗工液を塗工する際、表面と裏面との炭素材料、リチウム遷移金属酸化物、炭酸塩のそれぞれの比率は10%以下であることが好ましい。例えば、正極集電体の表面の炭素材料の質量比A1(表)と裏面のA1(裏)の比A1(表)/A1(裏)が0.9以上1.1以下である。また、正極集電体の表面と裏面の正極活物質層の厚みの比は10%以下であることが好ましい。表面と裏面の質量比、及び膜厚比が1.0に近いほど、一方の面に充放電の負荷が集中することないために高負荷充放電サイクル特性が向上する。
正極前駆体の塗膜の乾燥は、好ましくは熱風乾燥、赤外線(IR)乾燥等の乾燥方法を用いて、より好ましくは遠赤外線、近赤外線、又は80℃以上の熱風で行なわれる。塗膜の乾燥は、単一の温度で乾燥させてもよいし、多段的に温度を変えて乾燥させてもよい。また、複数の乾燥方法を組み合わせて乾燥させてもよい。乾燥温度は、25℃以上200℃以下であることが好ましい。より好ましくは40℃以上180℃以下、さらに好ましくは50℃以上160℃以下である。乾燥温度が25℃以上であれば、塗膜中の溶媒を十分に揮発させることが出来る。他方、200℃以下であれば、急激な溶媒の揮発による塗膜のヒビ割れ又はマイグレーションによるバインダーの偏在、正極集電体又は正極活物質層の酸化を抑制できる。
乾燥後の正極前駆体に含まれる水分は、正極活物質層の質量を100%として0.1%以上10%以下であることが好ましい。水分が0.1%以上であれば、過剰な乾燥によるバインダーの劣化を抑え、低抵抗化できる。水分が10%以下であれば、非水系リチウム蓄電素子におけるアルカリ金属イオンの失活を抑え、高容量化できる。
塗工液の調整にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた場合、乾燥後の正極前駆体におけるNMPの含有量は、正極活物質層の質量を100%として0.1%以上10%以下であることが好ましい。NMPが0.1%以上であれば、過剰な乾燥によるバインダーの劣化を抑え、低抵抗化できる。NMPが10%以下であれば、非水系リチウム蓄電素子の自己放電特性を改善することができる。
正極前駆体に含まれる水分は、例えばカールフィッシャー滴定法(JIS 0068(2001)「化学製品の水分測定方法」)により測定することができる。
また、正極前駆体に含まれるNMPは、25℃環境下、正極活物質層の50〜100倍の質量のエタノールに正極前駆体を24時間含侵させてNMPを抽出し、その後GC/MSを測定し、予め作成した検量線に基づいて定量することができる。
正極前駆体のプレスには、好適には油圧プレス機、真空プレス機等のプレス機を用いることができる。正極活物質層の膜厚、嵩密度及び電極強度は、後述するプレス圧力、プレスロール間の隙間、プレス部の表面温度により調整できる。プレス圧力は0.5kN/cm以上20kN/cm以下が好ましく、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。他方、プレス圧力が20kN/cm以下であれば、正極前駆体に撓み又はシワが生じることがなく、所望の正極活物質層膜厚又は嵩密度に調整できる。また、プレスロール同士の隙間は所望の正極活物質層の膜厚又は嵩密度となるように乾燥後の正極前駆体膜厚に応じて任意の値を設定できる。さらに、プレス速度は正極前駆体に撓み又はシワが生じない任意の速度に設定できる。また、プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要により加熱してもよい。加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、使用するバインダーの融点マイナス60℃以上が好ましく、より好ましくはバインダーの融点マイナス45℃以上、さらに好ましくはバインダーの融点マイナス30℃以上である。他方、加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、使用するバインダーの融点プラス50℃以下が好ましく、より好ましくはバインダー融点プラス30℃以下、さらに好ましくはバインダーの融点プラス20℃以下である。例えば、バインダーにPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、90℃以上200℃以下に加温することが好ましく、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下に加熱することである。また、バインダーにスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、40℃以上150℃以下に加温することが好ましく、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下に加温することである。
バインダーの融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温したときに、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
また、プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
正極前駆体を多条塗工した場合には、プレスの前にスリットすることが好ましい。多条塗工された正極前駆体をスリットせずにプレスした場合、正極活物質層が塗布されていない集電体部分に応力が掛かり、皺ができてしまう。また、プレス後に再度、正極前駆体をスリットすることもできる。
本実施形態に係る正極活物質層の厚みは、正極集電体の片面当たり10μm以上200μm以下であることが好ましい。正極活物質層の厚さは、より好ましくは片面当たり20μm以上100μm以下であり、更に好ましくは30μm以上80μm以下である。この厚さが10μm以上であれば、十分な充放電容量を発現することができる。他方、この厚さが200μm以下であれば、電極内のイオン拡散抵抗を低く維持することができる。そのため、十分な出力特性が得られるとともに、セル体積を縮小することができ、従ってエネルギー密度を高めることができる。なお、集電体が貫通孔又は凹凸を有する場合における正極活物質層の厚さとは、集電体の貫通孔又は凹凸を有していない部分の片面当たりの厚さの平均値をいう。
<負極>
負極は、負極集電体と、その片面又は両面に存在する負極活物質層とを有する。
[負極活物質層]
負極活物質層は、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含み、これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、バインダー、分散剤等の任意成分を含んでよい。
[負極活物質]
負極活物質は、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能な物質を用いることができる。具体的には、炭素材料、チタン酸化物、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金、ケイ素化合物、錫及び錫化合物等が例示される。好ましくは負極活物質の総量に対する炭素材料の含有率が50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。炭素材料の含有率が100質量%であることができるが、他の材料の併用による効果を良好に得る観点から、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下でもよい。炭素材料の含有率の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素材料;易黒鉛化性炭素材料;カーボンブラック;カーボンナノ粒子;活性炭;人造黒鉛;天然黒鉛;黒鉛化メソフェーズカーボン小球体;黒鉛ウイスカ;ポリアセン系物質等のアモルファス炭素質材料;石油系のピッチ、石炭系のピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、合成樹脂(例えばフェノール樹脂等)等の炭素前駆体を熱処理して得られる炭素質材料;フルフリルアルコール樹脂又はノボラック樹脂の熱分解物;フラーレン;カーボンナノフォーン;及びこれらの複合炭素材料を挙げることができる。
複合炭素材料のBET比表面積は、100m/g以上350m/g以下であることが好ましく、より好ましくは150m/g以上300m/g以下である。BET比表面積が100m/g以上であれば、アルカリ金属イオンのプレドープ量を十分大きくできるため、負極活物質層を薄膜化することができる。また、BET比表面積が350m/g以下であれば、負極活物質層の塗工性に優れる。
複合炭素材料は、リチウム金属を対極に用いて、測定温度25℃において、電流値0.5mA/cmで電圧値が0.01Vになるまで定電流充電を行った後、電流値が0.01mA/cmになるまで定電圧充電を行った時の初回の充電容量が、前記複合炭素材料単位質量当たり300mAh/g以上1,600mAh/g以下であることが好ましく、より好ましくは、400mAh/g以上1,500mAh/g以下であり、更に好ましくは、500mAh/g以上1,450mAh/g以下である。初回の充電容量が300mAh/g以上であれば、アルカリ金属イオンのプレドープ量を十分大きくできるため、負極活物質層を薄膜化した場合であっても、高い出力特性を有することができる。また、初回の充電容量が1,600mAh/g以下であれば、前記複合炭素材料にアルカリ金属イオンをドープ・脱ドープさせる際の前記複合炭素材料の膨潤・収縮が小さくなり、負極の強度が保たれる。
上述した負極活物質は、良好な内部抵抗値を得る観点から、下記の条件(1)及び(2)を満たす複合多孔質材料であることが特に好ましい。
(1)前述のBJH法で算出されたメソ孔量(直径が2nm以上50nm以下である細孔の量)Vm1(cc/g)が、0.01≦Vm1<0.10の条件を満たす。
(2)前述のMP法で算出されたマイクロ孔量(直径が2nm未満である細孔の量)Vm2(cc/g)が、0.01≦Vm2<0.30の条件を満たす。
負極活物質は粒子状であることが好ましい。
前記ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金及びケイ素化合物、並びに錫及び錫化合物の粒子径は、0.1μm以上30μm以下であることが好ましい。この粒子径が0.1μm以上であれば、電解液との接触面積が増えるために非水系リチウム蓄電素子の抵抗を下げることができる。また、この粒子径が30μm以下であれば、充放電に伴う負極へのアルカリ金属イオンのドープ・脱ドープに起因する負極の膨潤・収縮が小さくなり、負極の強度が保たれる。
前記ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金及びケイ素化合物、並びに錫及び錫化合物は、分級機内臓のジェットミル、撹拌型ボールミル等を用いて粉砕することにより、微粒子化することができる。粉砕機は遠心力分級機を備えており、窒素、アルゴン等の不活性ガス環境下で粉砕された微粒子はサイクロン又は集塵機で捕集することができる。
負極前駆体の負極活物質層における負極活物質の含有割合は、負極活物質層の全質量を位基準として、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
(負極活物質層のその他の成分)
本実施形態に係る負極活物質層は、必要に応じて、負極活物質の他に、バインダー、導電性フィラー、分散剤等の任意成分を含んでよい。
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、ラテックス、アクリル重合体等を使用することができる。負極活物質層におけるバインダーの使用量は、負極活物質100質量部に対して、3〜25質量部が好ましく、5〜20質量部の範囲がより好ましい。バインダーの使用量が負極活物質100質量部に対して3質量部未満の場合、負極(前駆体)における集電体と負極活物質層との間に十分な密着性を確保することができず、集電体と活物質層間との界面抵抗が上昇する。一方、バインダーの使用量が負極活物質100質量部に対して25質量部より大きい場合には、負極(前駆体)の活物質表面をバインダーが過剰に覆ってしまい、活物質細孔内のイオンの拡散抵抗が上昇する。
上記導電性フィラーは、負極活物質よりも導電性の高い導電性炭素質材料から成ることが好ましい。このような導電性フィラーとしては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、これらの混合物等が好ましい。負極活物質層における導電性フィラーの混合量は、負極活物質100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、1〜15質量部の範囲がより好ましい。導電性フィラーは、高入力の観点からは負極活物質層に混合した方が好ましいが、混合量が20質量部よりも多くなると、負極活物質層における負極活物質の含有量が少なくなるために、体積当たりのエネルギー密度が低下するので好ましくない。
[負極集電体]
本実施形態に係る負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こらない金属箔であることが好ましい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子における負極集電体としては、銅箔が好ましい。金属箔は凹凸又は貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
負極集電体の厚みは、負極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmである。
[負極の製造]
負極は、負極集電体の片面上又は両面上に負極活物質層を有して成る。典型的な態様において負極活物質層は負極集電体に固着している。
負極は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、負極活物質を含む各種材料を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を負極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより負極を得ることができる。さらに得られた負極にプレスを施して、負極活物質層の膜厚又は嵩密度を調整してもよい。
負極活物質層の厚さは、好ましくは片面当たり10μm以上70μm以下であり、より好ましくは20μm以上60μm以下である。この厚さが10μm以上であれば、良好な充放電容量を発現することができる。他方、この厚さが70μm以下であれば、セル体積を縮小することができるから、エネルギー密度を高めることができる。集電体に孔がある場合には、負極の活物質層の厚さとは、それぞれ、集電体の孔を有していない部分の片面当たりの厚さの平均値をいう。
また、本発明の正極電極と組み合わせる負極は、固形分(質量%)/材料真密度(g/cc)で表される真密度(cc/g)と、1/電極嵩密度(g/cc)で表される実体積(cc/g)とから算出される空孔率(%)=(1−真密度/実体積)*100が、50%以上であることが好ましい。
<セパレータ>
正極前駆体及び負極は、セパレータを介して積層又は捲回され、正極前駆体、負極及びセパレータを有する電極積層体が形成される。
セパレータとしては、リチウムイオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、又は電気二重層キャパシタで用いられるセルロース製の不織紙等を用いることができる。これらのセパレータの片面または両面に、有機または無機の微粒子からなる膜が積層されていてもよい。また、セパレータの内部に有機または無機の微粒子が含まれていてもよい。
セパレータの厚みは5μm以上35μm以下が好ましい。5μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、35μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
また、有機または無機の微粒子からなる膜の厚みは、1μm以上10μm以下が好ましい。1μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、10μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
<外装体>
外装体としては、金属缶、ラミネートフィルム等を使用できる。金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。金属缶は、例えば、角形、丸型、円筒型などの形態でよい。ラミネートフィルムとしては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内装樹脂フィルムから成る3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内装樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン等が好適に使用できる。
<電解液>
本実施形態における電解液は非水系電解液である。すなわち、この電解液は、非水溶媒を含む。非水系電解液は、非水系電解液の総量を基準として、0.5mol/L以上のアルカリ金属塩を含有する。すなわち、非水系電解液は、アルカリ金属塩を電解質として含む。非水系電解液に含まれる非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等に代表される環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等に代表される鎖状カーボネートが挙げられる。
上記のような非水溶媒に溶解するアルカリ金属イオンを含む電解質塩としては、例えば、MをLi、Na、K、Rb又はCsとして、MFSI、MBF、MPF、MClO等を用いることができる。プレドープ工程時に集電体のアルミニウム箔と反応し、炭素材料の表面にアルミニウム原子及び酸素原子からなる誘電体層を形成するという観点から、MClOが好適に用いられ、LiClOがより好適に用いられる。本実施形態における非水系電解液には少なくとも1種以上のアルカリ金属イオンを含有していればよく、2種以上のアルカリ金属塩を含有していてもよいし、アルカリ金属塩及びベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩から選ばれるアルカリ土類金属塩を含有していてもよい。非水系電解液中に2種以上のアルカリ金属塩を含有する場合、ストークス半径の異なる陽イオンが非水電解液中に存在することで低温下での粘度上昇を抑制することができるため、非水系リチウム蓄電素子の低温特性が向上する。非水電解液中に上記アルカリ金属イオン以外のアルカリ土類金属イオンを含有する場合、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオンが2価の陽イオンであるために非水系リチウム蓄電素子を高容量化することができる。
上記2種以上のアルカリ金属塩を非水系電解液中に含有させる方法、又はアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を非水系電解液中に含有させる方法は特に限定されないが、非水系電解液中に予め2種以上のアルカリ金属イオンからなるアルカリ金属塩を溶解することもできるし、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を溶解することもできる。また、正極前駆体中に、下記式におけるMをNa、K、Rb、及びCsから選ばれる1種以上として、
CO等の炭酸塩、
O等の酸化物、
MOH等の水酸化物、
MFやMCl等のハロゲン化物、
RCOOM(式中、RはH、アルキル基、又はアリール基である)等のカルボン酸塩、及び/又は
BeCO、MgCO、CaCO、SrCO、又はBaCOから選ばれるアルカリ土類金属炭酸塩、並びにアルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属カルボン酸塩を1種以上含有させ、後述のプレドープ工程にて分解する方法等が挙げられる。
電解液における電解質塩濃度は、0.5〜2.0mol/Lの範囲が好ましい。0.5mol/L以上の電解質塩濃度では、アニオンが十分に存在し、非水系リチウム蓄電素子の容量が維持される。一方で、2.0mol/L以下の電解質塩濃度では、塩が電解液中で十分に溶解し、電解液の適切な粘度及び伝導度が保たれる。
非水系電解液中に2種以上のアルカリ金属塩を含有する場合、又はアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を含有する場合、これらの塩濃度の合計値が0.5mol/L以上であることが好ましく、0.5〜2.0mol/Lの範囲であることがより好ましい。
本実施形態において、非水系電解液に含まれる水分量は、1ppm以上、500ppm以下である。水分量が1ppm以上であれば、正極前駆体中のアルカリ金属化合物が僅かに溶解できるため、プレドープを温和な条件で行うことができるために高容量化、及び低抵抗化できる。水分量が500ppm以下であれば、炭素材料の表面に形成されたアルミニウム原子及び酸素原子からなる誘電体層と水分との分解反応が抑制されるため、低電圧高温保存特性が優れる。電解液中の水分量は上述のカールフィッシャー法で測定できる。
<非水系リチウム蓄電素子の製造方法>
[組立工程 電極体の作製]
一実施形態の組立工程では、例えば、枚葉の形状にカットした正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層して成る積層体に、正極端子及び負極端子を接続して、電極積層体を作製する。別の実施形態では、正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層及び捲回した捲回体に正極端子及び負極端子を接続して、電極捲回体を作製してもよい。電極捲回体の形状は円筒型であっても、扁平型であってもよい。
正極端子及び負極端子の接続の方法は特に限定されないが、抵抗溶接、超音波溶接などの方法を用いることができる。
端子を接続した電極体(電極積層体、又は電極捲回体)を乾燥することで残存溶媒を除去することが好ましい。乾燥方法は限定されないが、真空乾燥などにより乾燥することができる。残存溶媒は、正極活物質層または負極活物質層の合計質量当たり、1.5質量%以下であることが好ましい。残存溶媒が1.5質量%より多いと、系内に溶媒が残存し、自己放電特性を悪化させるため好ましくない。
乾燥した電極体は、好ましくは露点−40℃以下のドライ環境下にて、金属缶又はラミネートフィルムに代表される外装体の中に収納し、非水系電解液を注液するための開口部を1方だけ残して封止することが好ましい。露点が−40℃より高いと、電極体に水分が付着してしまい、系内に水が残存し、自己放電特性を悪化させるため好ましくない。外装体の封止方法は特に限定されないが、ヒートシール、インパルスシールなどの方法を用いることができる。
[注液、含浸、封止工程]
組立工程後に、外装体の中に収納された電極体に、非水系電解液を注液する。注液後に、更に含浸を行い、正極、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に浸すことが望ましい。正極、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部に電解液が浸っていない状態では、後述するアルカリ金属ドープ工程において、アルカリ金属ドープが不均一に進むため、得られる非水系リチウム蓄電素子の抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。含浸の方法としては、特に制限されないが、例えば、注液後の電極体を、外装体が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸後に、外装体が開口した状態の電極体を減圧しながら封止することで密閉することができる。
[アルカリ金属ドープ工程]
アルカリ金属ドープ工程では、正極前駆体と負極との間に電圧を印加して、正極前駆体中のアルカリ金属化合物を分解してアルカリ金属イオンを放出し、負極でアルカリ金属イオンを還元することにより負極活物質層にアルカリ金属イオンをプレドープすることが好ましい。アルカリ金属ドープ工程において、正極前駆体中のアルカリ金属化合物の酸化分解に伴い、CO2等のガスが発生する。そのため、電圧を印加する際には、発生したガスを外装体の外部に放出する手段を講ずることが好ましい。この手段としては、例えば、外装体の一部を開口させた状態で電圧を印加する方法;外装体の一部に予めガス抜き弁、ガス透過フィルム等の適宜のガス放出手段を設置した状態で電圧を印加する方法;等を挙げることができる。
[エージング工程]
アルカリ金属ドープ工程後に、電極体にエージングを行うことが好ましい。エージング工程では、電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にアルカリ金属イオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば高温環境下で電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
[ガス抜き工程]
エージング工程後に、更にガス抜きを行い、電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られる非水系リチウム蓄電素子の抵抗が上昇してしまう。
ガス抜きの方法としては、特に制限されないが、例えば、外装体を開口した状態で電極積層体を減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。ガス抜き後、外装体をシールすることにより外装体を密閉し、非水系リチウム蓄電素子を作製することができる。
<非水系リチウム蓄電素子の特性評価>
[静電容量]
本明細書では、容量Qa(mAh)とは、以下の方法によって得られる値である。
先ず、非水系リチウム蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、2Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行う。その後、2.0Vまで2Cの電流値で定電流放電を施した際の容量をQa(mAh)とする。
ここで電流の放電レート(「Cレート」とも呼ばれる)とは、放電容量に対する放電時の電流の相対的な比率であり、一般に、上限電圧から下限電圧まで定電流放電を行う際、1時間で放電が完了する電流値のことを1Cという。本明細書では、上限電圧4.0Vから下限電圧2.0Vまで定電流放電を行う際に1時間で放電が完了する電流値のことを1Cとする。
[内部抵抗]
本明細書では、内部抵抗Ra(mΩ)とは、以下の方法によって得られる値である:
先ず、非水系リチウム蓄電素子を25℃に設定した恒温槽内で、20Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行う。続いて、サンプリング間隔を0.05秒とし、20Cの電流値で2.0Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得る。この放電カーブにおいて、放電時間1秒及び2秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとしたときに、降下電圧ΔE=4.0−EoからRa=ΔE/(20Cの電流値)として算出される値である。
[入出力試験]
本明細書では、入出力試験後の容量維持率(入力維持率C(%)、出力維持率D(%))は、以下の方法によって測定する:先ず、入力試験は非水系リチウム蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、2.0Vから4.0Vに到達するまで2C電流値で定電流充電する。この充電容量を初期容量Caとし、2C電流値で2.0Vまで放電した後、充電電流値を変えて、たとえば300C電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電する。このときの充電容量をCbとする。Cb/Caを入力維持率とする。
次に、出力試験は非水系リチウム蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、4.0Vから2.0Vに到達するまで2C電流値で定電流放電する。この放電容量を初期容量Daとし、2C電流値で4.0Vまで充電した後、放電電流値を変えて、たとえば300C電流値で2.0Vに到達するまで定電流放電する。このときの放電容量をDbとする。Db/Daを出力維持率とする。
[剥離強度]
正極活物質層の剥離強度は既知の方法で測定することができ、例えば、JIS Z0237(2009)「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠した剥離試験を用いるか、または、後述する実施例で用いた試験方法を用いてよい。
剥離強度を測定する正極については、非水系リチウム蓄電素子をアルゴンボックス中で解体し、得られた正極をエチルメチルカーボネート(EMC)等の溶媒で2回洗浄し、25℃環境下で24時間減圧乾燥させた後に得られるサンプルを用いる。
本実施形態に係る正極活物質層の正極集電体に対する剥離強度は、0.01N/cm以上2.00N/cm以下である。剥離強度が0.01N/cm以上であれば、プレドープ工程におけるガス発生による正極活物質層の欠落を抑制し、微短絡を抑制することができる。剥離強度が2.00N/cm以下であれば、正極活物質層内に過剰なバインダー等が存在しないことを意味するため、電解液の拡散性が向上して低抵抗化できる。微短絡の抑制と低抵抗化の両立という観点から、剥離強度は、好ましくは0.02N/cm以上1.96N/cm以下、より好ましくは0.03N/cm以上1.90N/cm以下である。
<正極活物質層中の炭素材料、リチウム遷移金属酸化物、アルカリ金属化合物の定量>
正極活物質層中に含まれる炭素材料の質量割合A1、リチウム遷移金属酸化物の質量割合A2、及びアルカリ金属化合物の質量割合A3の定量の方法は特に限定されないが、例えば下記の方法により定量することができる。
測定する正極前駆体の面積は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から5cm以上200cm以下であることが好ましく、より好ましくは25cm以上150cm以下である。面積が5cm以上あれば測定の再現性が確保される。面積が200cm以下であればサンプルの取扱い性に優れる。
まず、正極前駆体を上記面積に切断し、真空乾燥する。真空乾燥の条件としては、例えば、温度:100〜200℃、圧力:0〜10kPa、時間:5〜20時間の範囲で正極前駆体中の残存水分量が1質量%以下になる条件が好ましい。水分の残存量については、カールフィッシャー法により定量することができる。
真空乾燥後に得られた正極前駆体について、重量(M0)を測定する。続いて、正極前駆体の重量の100〜150倍の蒸留水に3日間以上浸漬させ、アルカリ金属化合物を水中に溶出させる。浸漬の間、蒸留水が揮発しないよう容器に蓋をすることが好ましい。3日間以上浸漬させた後、蒸留水から正極前駆体を取り出し、上記と同様に真空乾燥する。得られた正極前駆体の重量(M1)を測定する。続いて、スパチュラ、ブラシ、刷毛等を用いて正極集電体の片面、または両面に塗布された正極活物質層を取り除く。残った正極集電体の重量(M2)を測定し、以下の(1)式でアルカリ金属化合物の質量割合A3を算出する。
A3=(M0−M1)/(M0−M2)×100 (1)式
続いて、A1、A2を算出するため、上記アルカリ金属化合物を取り除いて得られた正極活物質層について、以下の条件にてTG曲線を測定する。
・試料パン:白金
・ガス:大気雰囲気下、又は圧縮空気
・昇温速度:0.5℃/min以下
・温度範囲:25℃〜500℃以上リチウム遷移金属酸化物の融点マイナス50℃の温度以下
得られるTG曲線の25℃の質量をM3とし、500℃以上の温度にて質量減少速度がM3×0.01/min以下となった最初の温度における質量をM4とする。
炭素材料は、酸素含有雰囲気(例えば、大気雰囲気)下では500℃以下の温度で加熱することですべて酸化・燃焼する。他方、リチウム遷移金属酸化物は酸素含有雰囲気下でもリチウム遷移金属酸化物の融点マイナス50℃の温度までは質量減少することがない。
そのため、正極活物質層におけるリチウム遷移金属酸化物の含有量A2は以下の(2)式で算出できる。
A2=(M4/M3)×{1−(M0−M1)/(M0−M2)}×100 (2)式
また、正極活物質層における炭素材料の含有量A1は以下の(3)式で算出できる。
A1={(M3−M4)/M3}×{1−(M0−M1)/(M0−M2)}×100 (3)式
なお、複数のアルカリ金属化合物が正極活物質層に含まれる場合;アルカリ金属化合物の他に、下記式におけるMをNa、K、Rb、及びCsから選ばれる1種以上として、MO等の酸化物、MOH等の水酸化物、MFやMCl等のハロゲン化物、M(CO等の蓚酸塩、RCOOM(式中、RはH、アルキル基、又はアリール基である)等のカルボン酸塩を含む場合;並びに正極活物質層が、BeCO、MgCO、CaCO、SrCO、及びBaCOから選ばれるアルカリ土類金属炭酸塩、又はアルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属シュウ酸塩、若しくはアルカリ土類金属カルボン酸塩を含む場合には、これらの総量をアルカリ金属化合物量として算出する。
正極活物質層中に導電材、バインダー、増粘剤等が含まれる場合、炭素材料とこれらの材料の合計量をA1として算出する。
<電極中のアルカリ金属の同定方法>
正極中に含まれるアルカリ金属化合物の同定方法は特に限定されないが、例えば下記の方法により同定することができる。アルカリ金属化合物の同定には、以下に記載する複数の解析手法を組み合わせて同定することが好ましい。
解析手法にてアルカリ金属化合物を同定できなかった場合、その他の解析手法として、7Li−固体NMR、XRD(X線回折)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)、AES(オージェ電子分光)、TPD/MS(加熱発生ガス質量分析)、DSC(示差走査熱量分析)等を用いることにより、アルカリ金属化合物を同定することもできる。
[顕微ラマン分光]
アルカリ金属炭酸塩及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極前駆体表面の炭酸イオンのラマンイメージングにより判別できる。測定条件の例として、励起光を532nm、励起光強度を1%、対物レンズの長作動を50倍、回折格子を1800gr/mm、マッピング方式を点走査(スリット65mm、ビニング5pix)、1mmステップ、1点当たりの露光時間を3秒、積算回数を1回、ノイズフィルター有りの条件にて測定することができる。測定したラマンスペクトルについて、1071〜1104cm−1の範囲で直線のベースラインを設定し、ベースラインより正の値を炭酸イオンのピークとして面積を算出し、頻度を積算するが、この時にノイズ成分をガウス型関数で近似した炭酸イオンピーク面積に対する頻度を炭酸イオンの頻度分布から差し引く。
[X線光電分光法(XPS)]
XPSにより電子状態を解析することによりアルカリ金属化合物の結合状態を判別することができる。測定条件の例として、X線源を単色化AlKα、X線ビーム径を100μmφ(25W、15kV)、パスエネルギーをナロースキャン:58.70eV、帯電中和を有り、スイープ数をナロースキャン:10回(炭素、酸素)20回(フッ素)30回(リン)40回(リチウム元素)50回(ケイ素)、エネルギーステップをナロースキャン:0.25eVの条件にて測定できる。XPSの測定前に正極の表面をスパッタリングにてクリーニングすることが好ましい。スパッタリングの条件として例えば、加速電圧1.0kV、2mm×2mmの範囲を1分間(SiO換算で1.25nm/min)の条件にて正極の表面をクリーニングすることができる。
得られたXPSスペクトルについて、
Li1sの結合エネルギー50〜54eVのピークをLiOまたはLi−C結合;
55〜60eVのピークをLiF、LiCO、LiPO(式中、x、y、及びzは、それぞれ1〜6の整数である);
C1sの結合エネルギー285eVのピークをC−C結合、286eVのピークをC−O結合、288eVのピークをCOO、290〜292eVのピークをCO 2−、C−F結合;
O1sの結合エネルギー527〜530eVのピークをO2−(LiO)、531〜532eVのピークをCO、CO、OH、PO(式中、xは1〜4の整数である)、SiO(式中、xは1〜4の整数である)、533eVのピークをC−O、SiO(式中、xは1〜4の整数である);
F1sの結合エネルギー685eVのピークをLiF、687eVのピークをC−F結合、LiPO(式中、x、y、及びzは、それぞれ1〜6の整数である)、PF6−
P2pの結合エネルギーについて、133eVのピークをPO(式中、xは1〜4の整数である)、134〜136eVのピークをPF(式中、xは1〜6の整数である);
Si2pの結合エネルギー99eVのピークをSi、シリサイド、101〜107eVのピークをSi(式中、x及びyは、それぞれ任意の整数である)
として帰属することができる。
得られたスペクトルについて、ピークが重なる場合には、ガウス関数又はローレンツ関数を仮定してピーク分離し、スペクトルを帰属することが好ましい。得られた電子状態の測定結果及び存在元素比の結果から、存在するアルカリ金属化合物を同定することができる。
[イオンクロマトグラフィー]
正極前駆体を蒸留水で洗浄し、洗浄した後の水をイオンクロマトグラフィーで解析することにより、水中に溶出した炭酸イオンを同定することができる。使用するカラムとしては、イオン交換型、イオン排除型、及び逆相イオン対型を使用することができる。検出器としては、電気伝導度検出器、紫外可視吸光光度検出器、電気化学検出器等を使用することができ、検出器の前にサプレッサーを設置するサプレッサー方式、またはサプレッサーを配置せずに電気伝導度の低い溶液を溶離液に用いるノンサプレッサー方式を用いることができる。また、質量分析計又は荷電化粒子検出器を検出器として組み合わせて、測定を行なうこともできる。
サンプルの保持時間は、使用するカラム、溶離液等の条件が決まれば、イオン種成分毎に一定であり、またピークのレスポンスの大きさはイオン種毎に異なるが、イオン種の濃度に比例する。トレーサビリティーが確保された既知濃度の標準液を予め測定しておくことでイオン種成分の定性と定量が可能となる。
<アルカリ金属元素の定量方法 ICP−MS>
測定試料について、濃硝酸、濃塩酸、王水等の強酸を用いて酸分解し、得られた溶液を2%〜3%の酸濃度になるように純水で希釈する。酸分解については、試料を適宜加熱、加圧することもできる。得られた希釈液をICP−MSにより解析するが、この際に内部標準として既知量の元素を加えておくことが好ましい。測定対象のアルカリ金属元素が測定上限濃度以上になる場合には、希釈液の酸濃度を維持したまま更に希釈することが好ましい。得られた測定結果に対し、化学分析用の標準液を用いて予め作成した検量線に基づいて、各元素を定量することができる。
<非水系リチウム蓄電素子の用途>
本実施形態に係る複数個の非水系リチウム蓄電素子を直列又は並列に接続することにより蓄電モジュールを作製することができる。また、本実施形態の非水系リチウム蓄電素子及び蓄電モジュールは、高い入出力特性と高温での安全性とを両立することができるので、電力回生アシストシステム、電力負荷平準化システム、無停電電源システム、非接触給電システム、エナジーハーベストシステム、蓄電システム(例えば、自然エネルギー蓄電システム)、電動パワーステアリングシステム、非常用電源システム、インホイールモーターシステム、アイドリングストップシステム、急速充電システム、スマートグリッドシステム等に使用されることができる。
蓄電システムは太陽光発電又は風力発電等の自然発電に、電力負荷平準化システムはマイクログリッド等に、無停電電源システムは工場の生産設備等に、それぞれ好適に利用される。非接触給電システムにおいて、非水系リチウム蓄電素子は、マイクロ波送電又は電界共鳴等の電圧変動の平準化及びエネルギーの蓄電のために、エナジーハーベストシステムにおいて、非水系リチウム蓄電素子は、振動発電等で発電した電力を使用するために、それぞれ好適に利用される。
蓄電システムにおいては、セルスタックとして、複数個の非水系リチウム蓄電素子が直列又は並列に接続されるか、又は非水系リチウム蓄電素子と、鉛電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池又は燃料電池とが直列又は並列に接続される。
また、本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子は、高い入出力特性と高温での安全性とを両立することができるので、例えば、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、電動バイク等の乗り物に搭載されることができる。上記で説明された電力回生アシストシステム、電動パワーステアリングシステム、非常用電源システム、インホイールモーターシステム、アイドリングストップシステム、又はこれらの組み合わせが、乗り物に好適に搭載される。
以下、実施例及び比較例を示して本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
<実施例1>
<正極活物質の調製>
破砕されたヤシ殻炭化物を小型炭化炉内へ入れ、窒素雰囲気下、500℃で3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、予熱炉で加温した水蒸気を1kg/hで賦活炉内へ導入し、900℃まで8時間掛けて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた賦活された活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りし、115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭1を得た。
島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて、活性炭1の平均粒子径を測定した結果、5.5μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて、活性炭1の細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が2360m/g、メソ孔量(V1)が0.52cc/g、マイクロ孔量(V2)が0.88cc/g、V1/V2=0.59であった。
<正極前駆体の製造>
活性炭1を正極活物質として用いて正極前駆体を製造した。
活性炭1を58.0質量%、平均粒径0.2μmの炭酸リチウムを24.0質量%、ケッチェンブラックを4.0質量%、及びPVP(ポリビニルピロリドン)を2.0質量%、粉末状態でプラネタリーミキサーにてドライブレンドし、そこにPVDF(ポリフッ化ビニリデン)溶液を添加し、固形分を徐々に下げながら分散させる。最終的にPVDFは12.0質量%になるように添加し、固形分の質量割合が22.0%になるようにNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を混合溶液へ添加して、正極塗工液を得る。溶媒の添加及び混合は、撹拌工程数5回、及びMAX周速220mm/sの条件下で実施した。
5回の攪拌工程のうち、一回目は溶媒の割合が40質量%となるように溶媒を添加した後、分散機で混合する。二回目は溶媒の割合が55質量%となるように溶媒を添加した後、一回目と同様の条件で分散機で混合する。三回目は溶媒の割合が65質量%となるように溶媒を添加した後、一回目と同様の条件で分散機で混合する。四回目は溶媒の割合が72質量%となるように溶媒を添加した後、一回目と同様の条件で分散機で混合する。五回目は溶媒の割合が78質量%となるように溶媒を添加した後、一回目と同様の条件で分散機で混合する。
得られた正極塗工液の粘度(ηb)及びTI値を東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。その結果、粘度(ηb)は2,316mPa・s、TI値は5.5であった。
東レエンジニアリング社製の両面ダイコーターを用いて、厚さ15μmのアルミニウム箔の片面に正極塗工液を塗工速度10cm/sの条件で塗工し、ホットプレートで温度を60℃、10minで一次乾燥し、120℃の恒温槽で30min乾燥して正極前駆体1を得た。得られた正極前駆体1を、ロールプレス機を用いてギャップ0μm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスした。正極前駆体1の全厚を、小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、正極前駆体1の任意の3か所で測定した。得られた測定結果より、正極前駆体1の正極活物質層の片面当たり膜厚は60μmであった。
<負極の製造>
平均粒子径4.5μmの天然黒鉛を84質量部、アセチレンブラックを10質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を6質量部、並びに固形分の質量割合が24.5%になるようにNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を混合し、その混合物をPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス(登録商標)」を用いて、周速17m/sの条件で分散して負極塗工液を得た。
得られた負極塗工液の粘度(ηb)及びTI値を東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。その結果、粘度(ηb)は2,440mPa・s、TI値は4.1であった。
東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚さ10μmの電解銅箔の両面に負極塗工液を塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度120℃で乾燥して負極1を得た。ロールプレス機を用いて圧力5kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスした。プレスされた負極1の全厚を、小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、負極1の任意の10か所で測定した。得られた測定結果より、負極1の負極活物質層の膜厚は片面当たり30μmであった。
<電解液の調製>
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC):ジメチルカーボネート(DMC)=33:22:44(体積比)の混合溶媒を用い、LiPF6とLiFSIとの濃度比が3:1であり、合計1.2mol/Lの濃度となるように電解質塩を溶解した。続けて、混合溶媒へ蒸留水を10ppmの濃度になるように添加し、非水系電解液1を得た。
<非水系リチウム蓄電素子の作製>
得られた正極前駆体1を、正極活物質層が3.0cm×5.0cm(15cm)の大きさになるように1枚切り出した。続いて負極1を、負極活物質層が3.1cm×5.1cm(15.8cm)の大きさになるよう1枚切り出した。また、3.3cm×5.3cm(17.5cm)のポリエチレン製のセパレータ(旭化成株式会社製、厚み15μm)を1枚用意した。これらについて、正極前駆体1、セパレータ、負極1の順に、セパレータを挟んで正極活物質層と負極活物質層とが対向するように積層し、電極積層体を得た。得られた電極積層体に正極端子及び負極端子を超音波溶接し、アルミラミネート包材で形成された容器に入れ、電極端子部を含む3辺をヒートシールによりシールした。
アルミラミネート包材の中に収納された電極積層体に、大気圧下、温度25℃、露点−40℃以下のドライエアー環境下にて、非水系電解液1を約5g注入した。続いて、電極積層体及び非水系電解液1を収納しているアルミラミネート包材を減圧チャンバーの中に入れ、大気圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、5分間静置した。その後、チャンバー内の包材を大気圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す工程を4回繰り返した後、15分間静置した。以上の工程により、非水系電解液1を電極積層体に含浸させた。その後、非水系電解液1を含浸させた電極積層体を減圧シール機に入れ、−95kPaに減圧した状態で、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止して、電極体を得た。
[アルカリ金属ドープ工程]
封止後に得られた電極体を、温度40℃、露点−40℃以下のドライボックス内に入れた。アルミラミネート包材の余剰部を切断して開封し、電流値50mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を3時間継続する手法により初期充電を行い、負極にアルカリ金属ドープを行った。アルカリ金属ドープ終了後、富士インパルス社製のヒートシール機(FA−300)を用いてアルミラミネートを封止した。
[エージング工程]
アルカリ金属ドープ後の電極体をドライボックスから取り出し、60℃環境下、50mAで電圧4.0Vに到達するまで定電流放電を行った後、4.0Vでの定電流放電を16時間行った。
[ガス抜き工程]
エージング後の電極体について、温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下でアルミラミネート包材の一部を開封した。続いて、減圧チャンバーの中に電極積層体を入れ、ダイヤフラムポンプを用いて大気圧から−80kPaまで3分間掛けて減圧した後、3分間掛けて大気圧に戻す工程を合計3回繰り返した。その後、減圧シール機に電極体を入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止し、非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<非水系リチウム蓄電素子の評価>
[静電容量Qaの測定]
得られた非水系リチウム蓄電素子の内の1個について、25℃に設定した恒温槽内で、上述の方法により静電容量Qaを測定した。
[内部抵抗Raの測定]
非水系リチウム蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、上述の方法により内部抵抗Raを算出した。
[入出力試験]
得られた非水系リチウム蓄電素子の1個について、上述の方法により入出力試験を行い、入力維持率C、出力維持率Dを算出した。
[正極の剥離強度測定]
上記アルゴンボックス中でEMC洗浄後に得られた正極について、25mm×100mmの大きさに切り出した。幅24mmのセロテープ(登録商標、ニチバン製 CT405AP−24)を100mmの長さに切り取り、正極活物質層に貼り付けた。テンシロン(株式会社エーアンドデイ製 STB−1225S)を用い、下部クリップジョウ側に正極集電体の未塗工部、上部クリップジョウ側にセロテープ(登録商標)の端部を挟み、以下の条件で剥離強度を測定した。セロテープ(登録商標)を正極活物質層に貼り付けてから、3分以内に剥離強度の測定を開始した。
・環境温度:25℃
・サンプル幅:25mm
・ストローク:100mm
・速度:50mm/min
・データ取得:25〜65mmの積分平均荷重
測定を合計3個のサンプルで行い、その平均値を正極の剥離強度とした。
<正極前駆体の観察>
[凝集物の観察]
(電極表面上の凝集物の観察)
観察サンプルの調製条件、観察装置、及び観察条件を以下に示す。
調製条件:剃刀を用いてサンプルを必要サイズにカットした。
観察装置、条件:光学顕微鏡 Leica製、
SEM 日立製−加速電圧1kV(二次電子)、
EDX Thermo Fisher Scientific製−加速電圧10kV
(電極断面上の凝集物の観察)
断面形成条件、観察装置、及び観察条件を以下に示す。
断面形成条件:剃刀を用いて断面加工し、断面には導電処理を行った
観察装置、条件:光学顕微鏡 Leica製、
SEM 日立製−加速電圧1kV(二次電子)、
EDX Thermo Fisher Scientific製−加速電圧10kV
[正極中のアルカリ金属化合物の定量]
上記アルゴンボックス中でEMC洗浄後に得られた正極について、上述の方法に従い、正極中のアルカリ金属化合物を定量した。
<実施例2〜6、比較例1〜3>
表1に示される正極前駆体の作製条件に従って、蓄電素子を作製し、各種の評価を行った結果を示す。
Figure 2020140889
表1中の「FM分散」及び「分散強度」の意味は、以下のとおりである。
・「FM分散」: FMミキサーによる分散の有無。
・「分散強度」: 2:工数減(周速220mm/s、工程数3)
3:周速低減(周速140mm/s、工程数5)
5:基準(周速220mm/s、工程数5)
7:周速増加(周速440mm/s、工程数5)
8:周速増加、工数贈(周速440mm/s、工程数6)
9:FM分散追加(周速220mm/s、工程数5、FM分散有)
また、表1中の「判定」基準は以下のとおりである。
○:電極の表面又は断面の凝集物のサイズと電池特性とが、目標値(Qaは5mAh以上、Raは0.15mΩ以下、Cは65%以上、及びDは80%以上)を達成した。
×:電極の表面又は断面の凝集物のサイズと電池特性とが、上記目標値を達成できなかった。
表1に示されるとおり、実施例1〜6において得られた正極電極及びその作製方法により、電極中の凝集物が減少し、各セル特性が向上した。
本発明の非水系リチウム蓄電素子は、例えば、複数個の非水系リチウム蓄電素子を直列、又は並列に接続して蓄電モジュールを作ることができる。本発明非水系リチウム蓄電素子及び前記蓄電モジュールは、さまざまな蓄電システム、例えば:高負荷充放電サイクル特性が求められる自動車のハイブリット駆動システムの電力回生システム;太陽光発電や風力発電等の自然発電やマイクログリッド等における電力負荷平準化システム;工場の生産設備等における無停電電源システム;マイクロ波送電や電解共鳴等の電圧変動の平準化及びエネルギーの蓄電を目的とした非接触給電システム;及び振動発電等で発電した電力の利用を目的としたエナジーハーベストシステム;車両用電源としての電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、電動バイク、インホイールモーターシステム、電動パワーステアリングシステム;短時間で充電を行うために大電流で充電を行う急速充電システムに好適に利用できる。
本発明の非水系リチウム蓄電素子は、例えば、リチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン二次電池として適用したときに、本発明の効果が最大限に発揮されるため好ましい。

Claims (11)

  1. 正極活物質、炭酸塩、助剤、及びバインダーを含む正極活物質層が正極集電体の片面又は両面上に配置された正極電極であって、前記正極活物質層の表面の面積10cm×10cm当たりに平均粒径100μm超2mm以下の凝集物が100個以下である正極電極。
  2. 前記正極電極の断面に含まれる前記凝集物が、1cmの断面積中1個以下である、請求項1に記載の正極電極。
  3. 前記凝集物に含有される前記炭酸塩の割合が、前記凝集物の質量全体に対して30質量%以上である、請求項1又は2に記載の正極電極。
  4. 前記炭酸塩の平均粒子径をX1とするとき、0.1μm≦X1≦50.0μmであり、前記正極活物質の平均粒子径をY1とするとき、2.0μm≦Y1≦20.0μmであり、かつ前記正極電極中に含まれる前記炭酸塩の量が、1質量%以上50質量以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の正極電極。
  5. 前記炭酸塩は、炭酸リチウムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の正極電極。
  6. 以下の工程:
    前記正極活物質40〜80質量%、
    前記炭酸塩10〜35質量%、
    分散剤1〜3質量%、
    前記助剤2〜6質量%、及び
    前記バインダー7〜16質量%、
    をドライ混合してドライ混合物を得るドライ混合工程;
    溶媒の割合が75質量%〜85質量%となるように前記溶媒を前記ドライ混合物に添加して引き続き混合して、正極電極前駆体塗工液を得る溶媒添加・混合工程;並びに
    前記正極電極前駆体塗工液を正極集電体上に塗布した後、加熱乾燥する塗布・乾燥工程;
    を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の正極電極の製造方法。
  7. 前記ドライ混合工程後、前記溶媒添加・混合工程を少なくとも2回繰り返す、請求項6に記載の正極電極の製造方法。
  8. 前記ドライ混合工程後、前記溶媒添加・混合工程を少なくとも5回繰り返し、前記溶媒の添加量について、
    一回目は前記溶媒の割合が96質量%〜97質量%となるように前記溶媒を添加した後、混合し、
    二回目は前記溶媒の割合が93質量%〜95質量%となるように前記溶媒を添加した後、混合し、
    三回目は前記溶媒の割合が90質量%〜92質量%となるように前記溶媒を添加した後、混合し、
    四回目は前記溶媒の割合が86質量%〜89質量%となるように前記溶媒を添加した後、混合し、かつ
    五回目は前記溶媒の割合が75質量%〜85質量%となるように前記溶媒を添加した後、混合する、
    請求項6又は7に記載の正極電極の製造方法。
  9. 正極活物質、炭酸塩、分散剤、助剤、バインダー、及び溶媒を含み、かつ前記溶媒の含有割合が75質量%〜85質量%である正極電極前駆体塗工液。
  10. 前記溶媒が、水、N−メチル−2ピロリドン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、リン酸トリメチル、アルコール、アセトン、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、及びシクロヘキサンから成る群から選ばれる少なくとも1種である、請求項9に記載の正極電極前駆体塗工液。
  11. 前記分散剤が、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアセタールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項9又は10に記載の正極電極前駆体塗工液。
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