JP2019029420A - 正極スラリー - Google Patents
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Abstract
Description
[1]
活性炭を含む正極活物質と、前記正極活物質以外のアルカリ金属炭酸塩と、結着剤と、溶媒とを含有するスラリーであって、
前記スラリーの全質量を基準として、前記溶媒を除く全固形成分の質量比をWT質量%とするとき、10≦WT≦50であり、
前記スラリーの前記全固形成分の全質量を基準として、前記アルカリ金属炭酸塩の質量比をWA質量%とするとき、5≦WA≦50であり、かつ
容器中で撹拌後7日間静置した状態における前記スラリーの全体積を高さ方向で3分割した際の、最上層液及び最下層液の粘度をそれぞれηU(mPa・s)及びηL(mPa・s)とするとき、0.50≦ηU/ηL≦1.00であるスラリー。
[2]
前記容器中で撹拌後7日間静置した状態における前記スラリーの全体積を高さ方向で3分割した際の、最上層液及び最下層液の密度をそれぞれρU(g/mL)及びρL(g/mL)とするとき、0.60≦ρU/ρL≦1.00である、[1]に記載のスラリー。
[3]
前記アルカリ金属炭酸塩の平均粒子径をX1とするとき、0.1μm≦X1≦10μmであり、前記正極活物質の平均粒子径をY1とするとき、2μm≦Y1≦20μmである、[1]又は[2]に記載のスラリー。
[4]
前記アルカリ金属炭酸塩の平均粒子径X1及び前記正極活物質の平均粒子径Y1において、X1<Y1である、[3]に記載のスラリー。
[5]
前記アルカリ金属炭酸塩が、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、及び炭酸セシウムから成る群から選ばれる1種以上である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のスラリー。
[6]
前記アルカリ金属炭酸塩において、炭酸リチウムが10質量%以上含まれる、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のスラリー。
[7]
前記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のスラリー。
[8]
前記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量V1(cc/g)が0.8<V1≦2.5を満たし、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量V2(cc/g)が0.8<V2≦3.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のスラリー。
[9]
前記結着剤はフッ素含有物を含み、前記結着剤の重量平均分子量が500,000以上1,800,000以下である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載のスラリー。
[10]
前記フッ素含有物はポリフッ化ビニリデンを含む、[9]に記載のスラリー。
[11]
前記結着剤はゴム系高分子を含む、[1]〜[10]のいずれか一項に記載のスラリー。
[12]
前記結着剤はアクリル系重合体を含む、[1]〜[11]のいずれか一項に記載のスラリー。
[13]
前記溶媒において、N−メチルピロリドンが50質量%以上含まれる、[1]〜[12]のいずれか一項に記載のスラリー。
[14]
前記溶媒において、水が50質量%以上含まれる、[1]〜[12]のいずれか一項に記載のスラリー。
[15]
非水系ハイブリッドキャパシタの正極の製造用である、[1]〜[14]のいずれか一項に記載のスラリー。
非水系ハイブリッドキャパシタは、一般に、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを主な構成要素として有する。電解液としては、アルカリ金属塩等の電解質を溶解させた有機溶媒(以下「非水系電解液」という。)を用いる。
本実施形態の正極スラリーには正極活物質以外のアルカリ金属炭酸塩が含まれており、加工された正極前駆体にも、アルカリ金属炭酸塩が含有される。本実施形態では非水系ハイブリッドキャパシタを組み立てる際に、負極にアルカリ金属イオンをプレドープすることが好ましい。プレドープ方法としては、アルカリ金属炭酸塩を含む正極前駆体と、負極と、セパレータと、非水系電解液とを用いて非水系ハイブリッドキャパシタを組み立てた後に、正極前駆体と負極との間に電圧を印加することが好ましい。
本実施形態における正極スラリーは、活性炭を含む正極活物質と、正極活物質以外のアルカリ金属炭酸塩と、結着剤と、溶媒とを含有する。正極スラリーの全質量を基準として、上記溶媒を除く全固形成分の質量比をWT%とするとき、WTは、10≦WT≦50であり、正極スラリーの全固形成分の全質量を基準として、アルカリ金属炭酸塩の質量比をWA質量%とするとき、WAは、5≦WA≦50である。正極スラリーを容器中で撹拌後7日間静置した状態における正極スラリーの全体積を高さ方向で3分割した際の、最上層液及び最下層液の粘度をそれぞれηU、ηL(mPa・s)とするとき、0.50≦ηU/ηL≦1.00である。負極へのプレドープを短時間かつ均一に行い、高エネルギー密度かつ高入出力であり、高温耐久性にも優れた非水系ハイブリッドキャパシタ用の正極スラリーの構成が、WT、WA及びηU/ηLの全ての数値範囲により特定される。
本実施形態に係る正極活物質は活性炭を含む。正極活物質としては、活性炭を単独で使用してよく、1種類以上の活性炭以外の炭素材料を混合して使用してよく、又は炭素材料以外の材料(例えばアルカリ金属と遷移金属との複合酸化物等)を含んよい。活性炭以外の炭素材料としては、カーボンナノチューブ、導電性高分子、及び多孔性の炭素材料等が挙げられる。
(1)高い入出力特性を得るためには、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下である活性炭(以下「活性炭1」ともいう。)が好ましく、また、
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V1≦2.5、及び0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下である活性炭(以下「活性炭2」ともいう。)が好ましい。
活性炭1のメソ孔量V1は、非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだときの入出力特性を大きくする観点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましい。一方で、正極の嵩密度の低下を抑える観点から、0.8cc/g以下であることが好ましい。上記V1は、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、更に好ましくは0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
活性炭2のメソ孔量V1は、非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだときの入出力特性を大きくする観点から、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。V1は、非水系ハイブリッドキャパシタの容量の低下を抑える観点から、2.5cc/g以下であることが好ましい。上記V1は、より好ましくは1.0cc/g以上2.0cc/g以下、さらに好ましくは、1.2cc/g以上1.8cc/g以下である。
正極活物質に使用される活性炭としは、活性炭1及び2は、それぞれ、1種の活性炭であってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって上記した各々の特性値を混合物全体として示すものであってもよい。
本実施形態の正極スラリーは、正極活物質以外のアルカリ金属炭酸塩を含む。正極スラリーを用いて、アルカリ金属炭酸塩を含む正極前駆体が作製できる。本実施形態において、非水系ハイブリッドキャパシタを組み立てる際に、負極にアルカリ金属イオンをプレドープすることが好ましい。プレドープ方法としては、アルカリ金属炭酸塩を含む正極前駆体と、負極と、セパレータと、非水系電解液とを用いて非水系ハイブリッドキャパシタを組み立てた後に、正極前駆体と負極との間に電圧を印加することが好ましい。
本実施形態の正極スラリーにおいて、上記アルカリ金属炭酸塩の平均粒子径をX1とするとき、0.1μm≦X1≦10μmであることが好ましい。X1の下限としては、0.3μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましく、X1の上限としては、5μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましい。上記X1の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
本実施形態の正極スラリーは結着剤を含む。結着剤の種類としては、特に制限されず、例えばフッ素含有物、ゴム系高分子、ポリイミド等が挙げられるが、正極スラリーは、結着剤としてフッ素含有物及び/又はゴム系高分子を含むことが好ましい。正極スラリーに含まれる結着剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の正極スラリーの結着剤としてフッ素含有物を含む場合、上記フッ素含有物としては、耐酸化性と高剥離強度の観点から、好ましくは、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が挙げられ、正極前駆体の薄膜化が容易であり、非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだときの高入出力の観点から、より好ましくはPVdF(ポリフッ化ビニリデン)である。
本実施形態の正極スラリーの結着剤としてゴム系高分子を含む場合、上記ゴム系高分子としては、ジエン系重合体、アクリル系重合体、フッ素ゴム等が挙げられるが、正極活物質との結着性が高く、電極の強度又は柔軟性に優れる観点から、ジエン系重合体、又はアクリル系重合体が好ましい。それらの中でも、重合体の主鎖中に不飽和結合を含まず、電気化学的安定性が高いという観点から、アクリル系重合体がより好ましい。アクリル系重合体としては、特に限定されないが、アクリル酸エステル及び/若しくはメタクリル酸エステルの重合体、又はこれらと共重合可能な単量体との共重合体であることが好ましい。
本実施形態の正極スラリーは溶媒を含む。溶媒の種類としては、特に限定されず、有機溶剤系媒体及び/又は水系媒体が用いられ、結着剤の種類にも応じて使い分けられる。
本実施形態の正極スラリーの溶媒として有機溶剤系媒体を含む場合、正極スラリー中の溶媒の全質量を基準として、N−メチルピロリドン(NMP)が50質量%以上含まれることが好ましく、70質量%以上含まれることがより好ましく、90質量%以上含まれることが更に好ましく、95質量%以上含むことがより更に好ましい。
溶媒として有機溶剤系媒体を含む場合、NMP以外の液状媒体を含有してもよい。NMP以外の液状媒体としては、例えばアミド化合物、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、ラクトン、環状又は鎖状カーボネートなどを挙げることができ、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが例示される。
本実施形態の正極スラリーの溶媒として水系媒体を含む場合、正極スラリー中の溶媒の全質量を基準として、水が50質量%以上含まれることが好ましく、70質量%以上含まれることがより好ましく、90質量%以上含まれることが更に好ましく、95質量%以上含むことがより更に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。水が50質量%以上であれば、正極スラリー中の固形分が沈降し難い。正極スラリーの溶媒として用いる水は、イオン交換樹脂又は逆浸透膜浄水システムで処理された、イオン交換水又は超純水などが好ましい。
本実施形態における正極スラリーは、必要に応じて、正極活物質、アルカリ金属炭酸塩、結着剤及び溶媒の他に、導電性フィラー、分散安定剤、pH調整剤等の任意成分を含んでいてもよい。
導電性フィラーとしては、特に制限されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、これらの混合物等を用いることができる。正極スラリーにおける導電性フィラーの使用量は、正極活物質100質量%に対して、好ましくは0質量%超30質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上15質量%以下である。導電性フィラーは、アルカリ金属炭酸塩と接触させることでプレドープ時の酸化分解を促進し、さらに高入出力特性の観点から、正極スラリーは導電性フィラーを含有することが好ましい。導電性フィラーの使用量が30質量%以下であれば、正極活物質の含有割合が多くなるために、非水系ハイブリッドキャパシタの体積当たりのエネルギー密度を確保することができる。
分散安定剤としては、特に制限されず、PVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、セルロース誘導体等を用いることができ、溶媒の種類に応じて使い分けられる。セルロース誘導体としては、セルロース系ポリマー、又はセルロース系ポリマーのアンモニウム塩若しくはアルカリ金属塩などの塩類が挙げられ、好ましくはカルボキシメチルセルロースが用いられる。分散安定剤の使用量は、正極活物質100質量%に対して、好ましくは、0質量%超又は0.1質量%以上、10質量%以下である。分散安定剤の使用量が10質量%以下であれば、正極スラリー中の固形分が沈降せずに分散安定性に優れ、かつ正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
本実施形態における正極スラリーは上述のようにアルカリ性を示すことがあるが、結着剤の分子量低下だけでなく、正極前駆体を作製した際に正極スラリーが強アルカリ性を示す条件下では、正極集電体の腐食が促進し、非水系ハイブリッドキャパシタの低寿命化を招くことが考えられる。従って、正極スラリーがアルカリ性を示す場合には、pH調整剤を添加することが好ましい。pH調整剤の種類は特に限定されないが、強酸又は弱酸のいずれも使用することができる。また、強酸又は弱酸は、無機酸であっても有機酸でも構わない。
本実施形態において、非水系ハイブリッドキャパシタ用の正極スラリーは、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極スラリーの製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質、アルカリ金属炭酸塩、及び結着剤、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を、溶媒中に分散又は溶解して正極スラリーを調製する。
本実施形態に係る正極前駆体は、非水系ハイブリッドキャパシタの所望の構成に応じて、単に、プレドープ前の電極、プレドープ前の片側電極、ハーフセル、塗工電極、乾燥電極等と呼ばれることがある。
本実施形態における正極スラリーを、例えば、正極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより、正極集電体の片面又は両面に正極活物質層を有する正極前駆体を作製することができる。
上記正極前駆体に含まれる正極活物質層は、上記正極スラリーの溶媒を除く全固形分により構成される。すなわち、正極活物質層は、活性炭を含む正極活物質と、正極活物質以外のアルカリ金属炭酸塩と、結着剤を含み、その他に導電性フィラー、分散安定剤、pH調整剤等の任意成分を含んでいてもよい。
本実施形態における正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こり難い材料であれば特に制限されず、金属箔が好ましい。正極集電体としての金属箔は、アルミニウム箔が特に好ましい。
その中でも、正極集電体は貫通孔を持たない金属箔が好ましい。貫通孔を持たない方が、製造コストが安価であり、薄膜化が容易であるため高エネルギー密度化にも寄与でき、集電抵抗も低くできるため高入出力特性が得られる。
本実施形態において、非水系ハイブリッドキャパシタ用の正極前駆体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、上記正極スラリーを正極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより正極前駆体を得ることができる。得られた正極前駆体をプレスして、正極活物質層の厚み又は嵩密度を調整してもよい。
負極は、一般的に、負極集電体と、前記負極集電体の片面又は両面に存在する負極活物質層と、を有する。
負極活物質層は、アルカリ金属イオンを吸蔵及び放出できる負極活物質を含むことが好ましい。負極活物質層は、負極活物質以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
上記負極活物質としては、アルカリ金属イオンを吸蔵及び放出することが可能な物質を用いることができる。負極活物質としては、具体的には、炭素材料、チタン酸化物、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金、ケイ素化合物、錫及び錫化合物等が例示される。負極活物質の総質量に対する炭素材料の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、又は100質量%であってもよい。他の材料との併用による効果を良好に得る観点から、炭素材料の含有率は、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であってもよい。上記炭素材料の含有率の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
負極活物質層は、必要に応じて、負極活物質の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こり難い金属箔であることが好ましい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。非水系ハイブリッドキャパシタにおける負極集電体としては、銅箔が好ましい。
その中でも、負極集電体は貫通孔を持たない金属箔が好ましい。貫通孔を持たない方が、製造コストが安価であり、薄膜化が容易であるため高エネルギー密度化にも寄与でき、集電抵抗も低くできるため高入出力特性が得られる。
負極は、負極集電体の片面上又は両面上に負極活物質層を有して成る。典型的な態様において負極活物質層は負極集電体に固着している。
正極前駆体及び負極は、セパレータを介して積層され、又は積層及び捲回され、正極前駆体、セパレータ、及び負極を有する電極積層体又は電極捲回体を形成することができる。
外装体としては、金属缶、ラミネートフィルム等を使用できる。金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。ラミネートフィルムとしては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内層樹脂フィルムから構成される3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。内層樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン等が好適に使用できる。
非水系ハイブリッドキャパシタに用いる電解液は非水系電解液が好ましい。すなわち、電解液は、非水溶媒を含む。上記非水系電解液は、上記非水系電解液の総量を基準として、0.5mol/L以上のアルカリ金属塩を含有する。すなわち、非水系電解液は、アルカリ金属塩を電解質として含む。非水系電解液に含まれる非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等に代表される環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等に代表される鎖状カーボネートが挙げられる。
<組立>
典型的には、枚葉の形状にカットした正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層して電極積層体を得て、電極積層体に正極端子および負極端子を接続する。あるいは、正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層及び捲回して電極捲回体を得て、電極捲回体に正極端子及び負極端子を接続する。電極捲回体の形状は円筒型であっても、扁平型であってもよい。
組立の後に、外装体の中に収納された電極積層体または電極捲回体に、非水系電解液を注液する。注液した後に、正極前駆体、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に含浸することが望ましい。正極前駆体、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部に電解液が浸っていない状態では、後述するプレドープにおいて、ドープが不均一に進むため、得られる非水系ハイブリッドキャパシタの抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。上記含浸の方法としては、特に制限されず、例えば、注液後の非水系ハイブリッドキャパシタを、外装体が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸後には、外装体が開口した状態の非水系ハイブリッドキャパシタを減圧しながら封止することで密閉する。
好ましいプレドープ方法としては、上記正極前駆体と負極との間に電圧を印加して、正極前駆体中のアルカリ金属炭酸塩を分解してアルカリ金属イオンを放出し、負極でアルカリ金属イオンを還元することにより負極活物質層にアルカリ金属イオンをプレドープする方法が挙げられる。
プレドープの終了後に、非水系ハイブリッドキャパシタにエージングを行うことが好ましい。エージングにおいて電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にアルカリ金蔵イオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
エージングの終了後に、更にガス抜きを行い、電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られる非水系ハイブリッドキャパシタの抵抗が上昇してしまう。
(静電容量)
本明細書では、静電容量F(F)とは、以下の方法によって得られる値である。
先ず、非水系ハイブリッドキャパシタと対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、2Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行う。その後、2.2Vまで2Cの電流値で定電流放電を施した際の容量をQとする。ここで得られたQを用いて、F=Q/(3.8−2.2)により算出される値をいう。
本明細書では、内部抵抗Ra(Ω)とは、以下の方法によって得られる値である。
先ず、非水系ハイブリッドキャパシタを25℃に設定した恒温槽内で、20Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行う。続いて、20Cの電流値で2.2Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得る。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をVoとしたときに、降下電圧ΔV=3.8−Vo、及びRa=ΔV/(20Cの電流値)により算出される値である。
本明細書では、電力量E(Wh)とは、以下の方法によって得られる値である。
先に述べた方法で算出された静電容量F(F)を用いて、
F×(3.82−2.22)/2/3600により算出される値をいう。
蓄電素子の体積V(L)は、電極積層体又は電極捲回体のうち、正極活物質層および負極活物質層が積重された領域が、外装体によって収納された部分の体積を指す。
本明細書では、高温保存試験時のガス発生量、及び高温保存試験後の常温内部抵抗上昇率は、以下の方法によって測定する:
先ず、非水系ハイブリッドキャパシタと対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、100Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を10分間行う。その後、セルを60℃環境下に保存し、2週間毎に60℃環境下から取り出し、前述の充電工程にてセル電圧を4.0Vに充電した後、再びセルを60℃環境下で保存する。この工程を繰り返し行い、保存開始前のセル体積Va、保存試験3か月後のセル体積Vbをアルキメデス法によって測定する。Vb−Vaをセル電圧4.0V及び環境温度60℃において3か月間保存した際に発生するガス量とする。
上記高温保存試験後のセルに対して、上記常温内部抵抗と同様の測定方法を用いて得られる抵抗値を高温保存試験後の常温内部抵抗Rbとしたとき、高温保存試験開始前の常温内部抵抗Raに対する高温保存試験後の常温内部抵抗上昇率はRb/Raにより算出される。
<BET比表面積及びメソ孔量、マイクロ孔量、平均細孔径>
本実施形態におけるBET比表面積及びメソ孔量、マイクロ孔量、及び平均細孔径は、それぞれ以下の方法によって求められる値である。試料を200℃で一昼夜真空乾燥し、窒素を吸着質として吸脱着の等温線の測定を行なう。ここで得られる吸着側の等温線を用いて、BET比表面積はBET多点法又はBET1点法により、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出される。
本実施形態における粘度(ηb)及びTI値は、それぞれ以下の方法により求められる値である。まず、E型粘度計を用いて温度25℃、ずり速度2s−1の条件で2分以上測定した後の安定した粘度(ηa)を取得する。ずり速度を20s−1に変更した他は上記と同様の条件で測定した粘度(ηb)を取得する。上記で得た粘度の値を用いて、TI値は、TI値=ηa/ηbの式により、算出される。ずり速度を2s−1から20s−1へ上昇させる際は、1段階で上昇させてもよいし、上記の範囲で多段的にずり速度を上昇させ、適宜そのずり速度における粘度を取得しながら上昇させてもよい。
本実施形態における粘度比ηU/ηL及び密度比ρU/ρLは、それぞれ以下の方法により求められる値である。ここで、本発明において、ηU、ηL、ρU、及びρLはそれぞれ、容器中で撹拌後7日間静置した状態における正極スラリーの全体積を高さ方向で3分割した際の、最上層液の粘度、最下層液の粘度、最上層液の密度、最下層液の密度を指す。
測定スラリー試料の準備として、まず、容器にスラリー試料を充填する。この際、測定に使用する容器としては、スラリーを均一に撹拌できて、安定に静置でき、スラリーの全体積を概ね混ざり合わずに3分割できる容器であれば、その容積や形状は特に限定されない。例えば、容器の容積としては50mL以上100L以下であることが好ましく、容器の形状としては略筒状であることが好ましく、円筒状であることがより好ましい。また、上記容器に充填するスラリー量は、その容器の全容積を基準にして50体積%以上90体積%以下であることが好ましい。
次いで、容器に充填されたスラリー試料を、撹拌機を用いて25℃環境下でスラリー中の構成材料が均一に分散されるように撹拌する。この際、スラリー中の構成材料が沈殿なく均一に撹拌できれば撹拌方法は特に限定されないが、例えば、撹拌機としてシンキー社製の製品名「あわとり練太郎」を用いて、回転数1000rpmで2分間撹拌する。撹拌後、スラリー試料を25℃環境下で7日間静置する。静置後、スラリー試料の全体積を高さ方向で3分割し、最上層液、中間層液及び最下層液に分取する。この際、分割した各層の液が概ね混ざり合わずに分取できれば、分割方法は特に限定されない。
得られた最上層液及び最下層液に対して、E型粘度計を用いて温度25℃、ずり速度を20s−1の条件で2分以上測定した後の安定した粘度を、それぞれηU及びηLとする。
ρt=(B3−B1)/(B2−B1)×(ρs−ρair)+ρair 式(1)
{ここで、ρs;温度t℃での標準物質の密度[g/mL]、ρair;測定環境での空気の密度[g/mL]とする。}
得られた最上層液及び最下層液を試料液体として上述の密度測定方法を用いて、それぞれρU及びρLを求められる。
本実施形態における分散度は、JIS K5600に規定された粒ゲージによる分散度評価試験により求められる値である。すなわち、粒のサイズに応じた所望の深さの溝を有する粒ゲージに対して、溝の深い方の先端に十分な量の試料を流し込み、溝から僅かに溢れさせる。スクレーパーの長辺がゲージの幅方向と平行になり、粒ゲージの溝の深い先端に刃先が接触するように置き、スクレーパーをゲージの表面になるように保持しながら、溝の長辺方向に対して直角に、ゲージの表面を均等な速度で、溝の深さ0まで1〜2秒間掛けて引き、引き終わってから3秒以内に20°以上30°以下の角度で光を当てて観察し、粒ゲージの溝に粒が現れる深さを読み取る。
本実施形態におけるスラリー中の溶媒を除く全固形成分の重量比WTの測定方法は特に限定されないが、例えば下記の方法で測定することができる。まず、スラリー試料を用意し、試料の全質量W1[g]を測定する。次いで、上記スラリー試料を乾燥し、溶媒を揮発させて固形成分のみを得て、溶媒を除く全固形成分の質量W2[g]を測定する。乾燥方法及び条件は特に限定されないが、大気乾燥及び真空乾燥等を組み合わせて多段的に乾燥し、乾燥温度は60〜200℃の範囲として、残存溶媒量が1質量%以下になる条件が好ましく、0.5質量%以下になる条件がより好ましい。残存溶媒量については、溶媒が有機溶剤系媒体の場合はGC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析)、溶媒が水系媒体の場合はカールフィッシャー法等を用いて定量することができる。以上の方法により、下記式(2)を用いて、スラリー中の溶媒を除く全固形成分の重量比WTを算出できる。
WT=W2/W1×100 式(2)
正極スラリー中に含まれるアルカリ金属炭酸塩の同定方法は特に限定されないが、例えば正極集電体上に塗膜形成した正極前駆体の状態において、下記の走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析(SEM−EDX)、顕微ラマン分光、及びX線光電子分光(XPS)により同定することができる。アルカリ金属炭酸塩の同定には、以下に記載する複数の解析手法を組み合わせて同定することが好ましい。
アルカリ金属炭酸塩及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極前駆体表面のSEM−EDX画像による酸素マッピングにより判別できる。SEM−EDX画像の測定例として、加速電圧を10kV、エミッション電流を1μA、測定画素数を256×256ピクセル、積算回数を50回として測定できる。試料の帯電を防止するために、真空蒸着、スパッタリング等の方法により金、白金、オスミウム等を表面処理することもできる。SEM−EDX画像の測定条件としては、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化した明部を面積50%以上含む粒子をアルカリ金属炭酸塩とする。
アルカリ金属炭酸塩及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極前駆体表面の炭酸イオンのラマンイメージングにより判別できる。測定条件の例として、励起光を532nm、励起光強度を1%、対物レンズの長作動を50倍、回折格子を1800gr/mm、マッピング方式を点走査(スリット65mm、ビニング5pix)、1mmステップ、1点当たりの露光時間を3秒、積算回数を1回、ノイズフィルター有りの条件にて測定することができる。測定したラマンスペクトルについて、1071〜1104cm−1の範囲で直線のベースラインを設定し、ベースラインより正の値を炭酸イオンのピークとして面積を算出し、頻度を積算するが、この時にノイズ成分をガウス型関数で近似した炭酸イオンピーク面積に対する頻度を上記炭酸イオンの頻度分布から差し引く。
正極前駆体の電子状態をXPSにより解析することにより、正極前駆体中に含まれる化合物の結合状態を判別することができる。
Li1sの結合エネルギー50〜54eVのピークをLiO2またはLi−C結合、
55〜60eVのピークをLiF、Li2CO3、
LixPOyFz(式中、x、y、zは1〜6の整数である)、
C1sの結合エネルギー285eVのピークをC−C結合、
286eVのピークをC−O結合、
288eVのピークをCOO、
290〜292eVのピークをCO3 2−、C−F結合、
O1sの結合エネルギー527〜530eVのピークをO2−(Li2O)、
531〜532eVのピークをCO、CO3、OH、POx(式中、xは1〜4の整数である)、SiOx(式中、xは1〜4の整数である)、
533eVのピークをC−O、SiOx(式中、xは1〜4の整数である)、
F1sの結合エネルギー685eVのピークをLiF、
687eVのピークをC−F結合、LixPOyFz(式中、x、y、zは1〜6の整数である)、PF6 −、
さらにP2pの結合エネルギーについて、
133eVのピークをPOx(式中、xは1〜4の整数である)、
134〜136eVのピークをPFx(式中、xは1〜6の整数である)、
Si2pの結合エネルギー99eVのピークをSi、シリサイド、
101〜107eVのピークをSixOy(式中、x、yは任意の整数である)
として帰属することができる。
正極前駆体の蒸留水洗浄液をイオンクロマトグラフィーで解析することにより、水中に溶出したアニオン種を同定することができる。使用するカラムとしては、イオン交換型、イオン排除型、逆相イオン対型を使用することができる。検出器としては、電気伝導度検出器、紫外可視吸光光度検出器、電気化学検出器等を使用することができ、検出器の前にサプレッサーを設置するサプレッサー方式、またはサプレッサーを配置せずに電気伝導度の低い溶液を溶離液に用いるノンサプレッサー方式を用いることができる。質量分析計や荷電化粒子検出器を検出器と組み合わせて測定することもできる。
正極スラリー中に含まれるアルカリ金属炭酸塩の定量方法を以下に記載する。本実施形態において、スラリー中のアルカリ金属炭酸塩の重量比WAは、溶媒を除く全固形成分の全質量を基準とする。スラリーの固形成分からのWAの算出方法としては、以下の水浸漬法又は燃焼法が用いられ、固形成分に含有されるアルカリ金属炭酸塩以外の材料の特性に応じて水浸漬法及び/又は燃焼法が選択でき、組み合わせて用いてもよい。例えば、結着剤及び/又は分散安定剤などが非水溶性であれば水浸漬法を用い、水溶性であれば燃焼法を用いることが好ましい。
正極スラリーの固形成分を蒸留水に浸漬し、浸漬前後の重量変化からアルカリ金属炭酸塩を定量することができる。すなわち、上述のWTの測定方法と同様に、スラリー試料を乾燥し、溶媒を揮発させて固形成分のみを得て、溶媒を除く全固形成分の質量W2[g]を測定する。続いて、25℃環境下、正極スラリー固形成分の重量の100倍(100W2[g])の蒸留水に固形成分を3日間以上十分に浸漬させ、アルカリ金属炭酸塩を水中に溶出させる。この時、蒸留水が揮発しないよう容器に蓋をする等の対策を施すことが好ましい。3日間以上浸漬させた後、蒸留水から固形成分を取り出し、真空乾燥する。真空乾燥の条件としては、例えば、温度:100〜200℃、圧力:0〜10kPa、時間:5〜20時間の範囲で固形成分中の残存水分量が1質量%以下になる条件が好ましい。水分の残存量については、カールフィッシャー法により定量することができる。真空乾燥後の固形成分の重量をW3[g]とし、正極スラリー固形成分中に含まれるアルカリ金属炭酸塩の重量比WA[質量%]は、下記式(3)にて算出できる。
WA=(W2−W3)/W2×100 式(3)
正極スラリーの固形成分を燃焼させ、燃焼前後の重量変化からアルカリ金属炭酸塩を定量することができる。すなわち、上述のWTの測定方法と同様に、スラリー試料を乾燥し、溶媒を揮発させて固形成分のみを得る。続いて、この固形成分を白金から成る試料パンに入れ、TG測定装置にて、下記の条件にてTG曲線を得る。
・ガス:大気雰囲気下、又は圧縮空気
・昇温速度:0.5℃/min以下
・温度範囲:25℃〜500℃以上アルカリ金属炭酸塩の融点マイナス50℃の温度以下
得られるTG曲線の25℃の質量をW2[g](溶媒を除く全固形成分の質量)とし、500℃以上の温度にて質量減少速度がW2×0.01[g/min]以下となった最初の温度における質量をW4[g]とする。
正極活物質に含まれる活性炭、結着剤、分散安定剤などのアルカリ金属炭酸塩以外の成分は酸素含有雰囲気(例えば、大気雰囲気)下では500℃以下の温度で加熱することですべて酸化・燃焼する。他方、アルカリ金属炭酸塩は酸素含有雰囲気下でもアルカリ金属炭酸塩の融点マイナス50℃の温度までは質量減少することがない。そのため、正極スラリー固形成分中に含まれるアルカリ金属炭酸塩の重量比WA[質量%]は、下記式(4)にて算出できる。
WA=W4/W2×100 式(4)
正極スラリーの固形成分について、濃硝酸、濃塩酸、王水等の強酸を用いて酸分解し、得られた溶液を2%〜3%の酸濃度になるように純水で希釈する。酸分解については、適宜加熱、加圧し分解することもできる。得られた希釈液をICP−MSにより解析するがこの際に内部標準として既知量の元素を加えておくことが好ましい。測定対象のアルカリ金属元素が測定上限濃度以上になる場合には、上記希釈液を酸濃度を維持したまま更に希釈することが好ましい。得られた測定結果に対し、化学分析用の標準液を用いて予め作成した検量線を基に、各元素を定量することができる。
正極スラリー中におけるアルカリ金属炭酸塩及び正極活物質の平均粒子径X1及びY1の測定方法については特に限定されないが、例えば正極集電体上に塗膜形成した正極前駆体の状態において、正極前駆体断面の走査型電子顕微鏡(SEM)による画像、及び走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)による画像から算出することができる。正極断面の形成方法は、例えば、正極前駆体上部からArビームを照射し、試料直上に設置した遮蔽板の端部に沿って平滑な断面を作製するBIB(Broad Ion Beam)加工を用いることができる。また、正極前駆体断面のラマンイメージングを測定することで炭酸イオンの分布を求めることもできる。
アルカリ金属炭酸塩及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極前駆体断面のSEM−EDX画像による酸素マッピングにより判別できる。SEM−EDX画像の測定方法条件は、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化した明部を面積50%以上含む粒子をアルカリ金属炭酸塩と判別できる。
X1及びY1は、上記正極前駆体断面SEMと同視野にて測定した断面SEM−EDXから得られた画像を、画像解析することで求めることができる。上記正極前駆体断面のSEM画像にて判別されたアルカリ金属炭酸塩の粒子X、及びそれ以外の粒子を正極活物質の粒子Yとし、断面SEM画像中に観察されるX、Yそれぞれの粒子全てについて、断面積Sを求め、下記式(5)にて算出される粒子径dを求める。
d=2×(S/π)1/2 式(5)
{式中、円周率をπとする。}
X0(Y0)=Σ[4/3π×(d/2)]3×d]/Σ[4/3π×(d/2)]3] 式(6)
正極スラリーに含まれる結着剤の同定方法は特に限定されない。フッ素含有物の同定方法として、例えば、FT−IR(フーリエ変換型赤外分光法)測定が挙げられる。得られたIRスペクトルのC−F吸収等を観ることで、フッ素含有物の同定が可能である。その他の解析手法として、19F−固体NMR、19F−溶液NMR等を用いることにより、結着剤を同定することもできる。また、ゴム系高分子の同定方法として、例えば、Py−GC/MS(熱分解ガスクロマトグラフ質量分析)測定が挙げられる。結着剤の同定には、複数の解析手法を組み合わせて同定することが好ましい。
正極スラリーに含まれる結着剤の定量方法は特に限定されず、例えば、TG(熱重量測定)で測定可能である。TGを使用する場合の結着剤の定量方法を例示する。正極スラリーを大気乾燥及び/又は真空乾燥することで、溶媒を揮発させ固形分のみを得る。得た固形分を白金パンに掻き取り、大気雰囲気下で2〜10℃/分で昇温して重量低下量から正極スラリー固形分に含まれる結着剤の定量が可能である。例えばPVdFの場合、大気雰囲気中400〜500℃以下までの領域で分解する重量低下量で判断できる。
結着剤の定量には、複数の解析手法を組み合わせて定量することが好ましい。
正極スラリーに含まれる結着剤の重量平均分子量の測定方法は特に限定されないが、例えば、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定可能である。GPCを使用する場合の結着剤の重量平均分子量の測定方法を例示する。
[活性炭1の調製]
破砕したヤシ殻炭化物を、小型炭化炉において窒素中、500℃において3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、1kg/hの水蒸気を予熱炉で加温した状態で上記賦活炉内へ導入し、900℃まで8時間掛けて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りした。115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭1を得た。
破砕したヤシ殻炭化物を、小型炭化炉において窒素中、550℃において3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、1kg/hの水蒸気を予熱炉で加温した状態で上記賦活炉内へ導入し、800℃まで6時間掛けて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りした。115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭2を得た。
フェノール樹脂を、窒素雰囲気下、焼成炉中600℃において2時間炭化処理した後、ボールミルにて粉砕し、分級を行って平均粒子径3.5μmの炭化物を得た。この炭化物とKOHとを、質量比1:4で混合し、窒素雰囲下、焼成炉中800℃において1時間加熱して賦活化を行い、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を、濃度2mol/Lに調整した希塩酸中で1時間撹拌洗浄した後、蒸留水でpH5〜6の間で安定するまで煮沸洗浄し、乾燥を行うことにより、活性炭3を得た。
フェノール樹脂を、窒素雰囲気下、焼成炉中600℃において2時間炭化処理した後、ボールミルにて粉砕し、分級を行って平均粒子径7.0μmの炭化物を得た。この炭化物とKOHとを、質量比1:5で混合し、窒素雰囲下、焼成炉中800℃において1時間加熱して賦活化を行い、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を、濃度2mol/Lに調整した希塩酸中で1時間撹拌洗浄した後、蒸留水でpH5〜6の間で安定するまで煮沸洗浄し、乾燥を行うことにより、活性炭4を得た。
フェノール樹脂を、窒素雰囲気下、焼成炉中600℃において2時間炭化処理した後、ボールミルにて粉砕し、分級を行って平均粒子径17.5μmの炭化物を得た。この炭化物とKOHとを、質量比1:4.5で混合し、窒素雰囲下、焼成炉中800℃において1時間加熱して賦活化を行い、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を、濃度2mol/Lに調整した希塩酸中で1時間撹拌洗浄した後、蒸留水でpH5〜6の間で安定するまで煮沸洗浄し、乾燥を行うことにより、活性炭5を得た。
上記で得た活性炭1〜5のいずれか1つを正極活物質として用いて、下記方法で正極スラリー(組成a)を製造した。
活性炭3又は4のいずれか1つを64.4質量部、炭酸リチウムを21.1質量部、ケッチェンブラックを3.5質量部、PVPを1.7質量部、及びPVdF1を9.3質量部とした以外は、正極スラリー(組成a)と同様の方法で、正極スラリー(組成b)を得た。
活性炭3又は5のいずれか1つを71.7質量部、炭酸リチウムを12.2質量部、ケッチェンブラックを3.9質量部、PVPを1.9質量部、及びPVdF1を10.3質量部とした以外は、正極スラリー(組成a)と同様の方法で、正極スラリー(組成c)を得た。
活性炭1を75.4質量部、炭酸リチウムを7.6質量部、ケッチェンブラックを4.0質量部、PVPを2.0質量部、及びPVdF1を11.0質量部とした以外は、正極スラリー(組成a)と同様の方法で、正極スラリー(組成d)を得た。
活性炭2又は3のいずれか1つを43.1質量部、炭酸リチウムを47.2質量部、ケッチェンブラックを2.3質量部、PVPを1.2質量部、及びPVdF1を6.2質量部とした以外は、正極スラリー(組成a)と同様の方法で、正極スラリー(組成e)を得た。
活性炭5を78.5質量部、炭酸リチウムを3.9質量部、ケッチェンブラックを4.2質量部、PVPを2.1質量部、及びPVdF1を11.3質量部とした以外は、正極スラリー(組成a)と同様の方法で、正極スラリー(組成f)を得た。
活性炭2を30.8質量部、炭酸リチウムを62.3質量部、ケッチェンブラックを1.7質量部、PVPを0.8質量部、及びPVdF1を4.4質量部とした以外は、正極スラリー(組成a)と同様の方法で、正極スラリー(組成g)を得た。
上記で得た活性炭1を正極活物質として用いて、下記方法で正極スラリー(組成h)を製造した。
活性炭5を73.8質量部、炭酸リチウムを14.6質量部、ケッチェンブラックを4.8質量部、CMCを3.6質量部、及びアクリル系重合体1を3.2質量部とした以外は、正極スラリー(組成h)と同様の方法で、正極スラリー(組成i)を得た。
活性炭5を82.6質量部、炭酸リチウムを4.4質量部、ケッチェンブラックを5.4質量部、CMCを4.0質量部、及びアクリル系重合体1を3.6質量部とした以外は、正極スラリー(組成h)と同様の方法で、正極スラリー(組成j)を得た。
活性炭1を39.7質量部、炭酸リチウムを53.2質量部、ケッチェンブラックを2.7質量部、CMCを2.2質量部、及びアクリル系重合体1を2.2質量部とした以外は、正極スラリー(組成h)と同様の方法で、正極スラリー(組成k)を得た。
<正極スラリーの製造>
活性炭1及びPVdF1を用い、上記の組成aにて、正極スラリー1を得た。
上記正極スラリー1の一部を容器(容積150mL、円筒状)に100mL分取し、撹拌機としてシンキー社製の製品名「あわとり練太郎」を用いて、回転数1000rpmで2分間撹拌した。撹拌後、スラリー試料を25℃環境下で7日間静置した。静置後、スラリー試料の全体積を高さ方向で3分割し、最上層液1、中間層液1及び最下層液1に分取した。得られた最上層液1及び最下層液1に対して、E型粘度計を用いて温度25℃、ずり速度20s−1の条件で測定し、3分後の粘度から、ηU及びηLを求めた。また、得られた上層液1及び最下層液1に対して、上述の比重瓶による測定方法により、温度25℃、標準物質として純水を用いて、空の比重瓶の質量B1[g]及び純水を入れた比重瓶の質量B2[g]を測定した。さらに試料液体を比重瓶に入れ、減圧脱泡後、試料液体を入れた比重瓶の質量B3[g]を測定し、以上のB1、B2及びB3から上記式(1)に従いρU及びρLを求めた。以上のηU、ηL、ρU及びρLからηU/ηL及びρU/ρLを算出した。得られた結果を表1に示す。
上記正極スラリー1の一部を金属容器に秤量し、スラリー試料1の全質量W1[g]を測定した。次いで、この金属容器を熱風乾燥機に入れ、120℃で液面光沢がなくなるまでスラリー試料1を乾燥し、さらに180℃、15時間の条件で真空乾燥を実施することで、スラリー固形成分試料1を得て、溶媒を除く全固形成分の質量W2[g]を測定した。以上のW1及びW2から上記式(2)に従いWTを算出した。得られた結果を表1に示す。
(水浸漬法)
上記スラリー固形成分試料1を、100×W2[g]の質量の蒸留水に含浸させ、25℃環境下3日間経過するまで維持することで、スラリー固形成分試料1中の炭酸リチウムを蒸留水中に溶出させた。スラリー固形成分試料1を取り出し、150℃、3kPaの条件にて12時間真空乾燥した。この時の重量W3[g]を測定した。以上のW2及びW3から上記式(3)に従いWAを算出したところ、31.3質量%だった。水浸漬法により得られた結果を表1に示す。
上記スラリー固形成分試料1を用いて、下記の条件でTG測定を実施し、TG曲線を得た。
・装置:日立ハイテクサイエンス社製TG/DTA6200
・ガス:圧縮空気(100mL/min)
・昇温速度:0.5℃/min
・温度範囲:25℃〜550℃(炭酸リチウムの融点:723℃)
得られたTG曲線より上述した方法により、W2及びW4を取得した。以上のW2及びW4から上記式(4)に従いWAを算出したところ、30.9質量%だった。
上記正極スラリー1の一部をフィルターでろ過し、得られたろ液に、さらに溶離液としてDMF(5mmol/L LiBr)を加えて、ポリマー濃度が1mg/mlになるように調整し、50℃で7時間加熱後に一晩静置し、続いて0.2μmフィルターでろ過し、ろ液を試料とした。
(GPC測定条件)
・測定装置:東ソー製 HLC−8220GPC(データ処理:GPC−8020)
・カラム:Shodex KF−606M,KF−601
・検出器:RI
・試料:50μl
・オーブン温度:40℃
・較正曲線:PMMA
上記測定で得られたデータから重量平均分子量を算出したところ、101万だった。
上記正極スラリー1を、東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて、厚み15μmのアルミニウム箔の片面及び両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度100℃で乾燥後、ロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施して、両面正極前駆体1及び片面正極前駆体1を得た。得られた両面及び片面正極前駆体1の正極活物質層の厚みを小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、両面及び片面正極前駆体1の任意の10か所で測定した厚みの平均値から、アルミニウム箔の厚みを引いて求めた。その結果、両面及び片面正極前駆体1の正極活物質層の厚みは、片面あたり60μmであった。
上記両面正極前駆体1から1cm×1cmの小片を切り出し、日本電子製のSM−09020CPを用い、アルゴンガスを使用し、加速電圧4kV、ビーム径500μmの条件にて正極前駆体試料の面方向に垂直な断面を作製した。10Paの真空中にて金をスパッタリングにより断面にコーティングした。続いて以下に示す条件にて、大気暴露下で正極断面のSEM−EDXを測定した。
(SEM−EDX測定条件)
・測定装置:日立ハイテクノロジー製、電界放出型走査型電子顕微鏡 FE−SEM S−4700
・加速電圧:10kV
・エミッション電流:1μA
・測定倍率:2000倍
・電子線入射角度:90°
・X線取出角度:30°
・デッドタイム:15%
・マッピング元素:C,O,F
・測定画素数:256×256ピクセル
・測定時間:60sec.
・積算回数:50回
・明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整した。
(SEM−EDXの解析)
上記測定した正極断面のSEM−EDXから得られた画像を、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて上述した方法で画像解析することでX1及びY1を算出した。その結果を表1に示す。
BET比表面積が3.1m2/g、平均粒子径が4.8μmの市販の人造黒鉛150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)15gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置した。窒素雰囲気下、1000℃まで8時間掛けて昇温し、同温度で4時間保持することにより、両者を熱反応させ、複合炭素材料1を得た。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合炭素材料1を炉から取り出した。
複合炭素材料1を負極活物質として用いて、以下のように負極1を製造した。
複合炭素材料1を80質量部、アセチレンブラックを8質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を12質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、その混合物をPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速15m/sの条件で分散して塗工液を得た。得られた塗工液の粘度(ηb)及びTI値を東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。その結果、粘度(ηb)は2,798mPa・s、TI値は2.7であった。上記塗工液を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて、厚み10μmの電解銅箔の両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度85℃で乾燥して、両面負極1を得た。得られた負極1を、ロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスした。上記で得られた負極1の負極活物質層の厚みを小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、負極1の任意の10か所で測定した厚みの平均値から、銅箔の厚みを引いて求めた。その結果、負極1の負極活物質層の厚みは、片面あたり30μmであった。
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC):メチルエチルカーボネート(EMC)=33:67(体積比)の混合溶媒を用い、得られる非水系電解液に対してLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度比が75:25(モル比)であり、かつLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度の和が1.2mol/Lとなるようにそれぞれの電解質塩を混合溶媒中に溶解して非水系電解液を得た。
[蓄電素子の組立、乾燥]
得られた両面正極前駆体1、両面負極1、及び片面正極前駆体1を10cm×10cm(100cm2)にカットした。最上面と最下面は片面正極前駆体1を用い、更に両面負極1を21枚と両面正極前駆体1を20枚とを用い、負極と正極前駆体との間に、厚み15μmの微多孔膜セパレータを挟んで積層した。負極と正極前駆体とに、それぞれ負極端子と正極端子を超音波溶接にて接続して電極積層体とした。この電極積層体を、温度80℃、圧力50Paで、乾燥時間60hrの条件で真空乾燥した。乾燥した電極積層体を露点−45℃のドライ環境下にて、アルミラミネート包材から構成される外装体内に収納し、電極端子部およびボトム部の外装体3方を、温度180℃、シール時間20sec、シール圧1.0MPaの条件でヒートシールした。
アルミラミネート包材の中に収納された電極積層体に、温度25℃、露点−40℃以下のドライエアー環境下にて、上記非水系電解液約80gを大気圧下で注入して、プレドープ処理前の非水系ハイブリッドキャパシタを形成した。続いて、減圧チャンバーの中に上記非水系ハイブリッドキャパシタを入れ、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、5分間静置した。常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す操作を4回繰り返した後、蓄電素子を15分間静置した。常圧から−91kPaまで減圧した後、大気圧に戻した。同様に減圧し、大気圧に戻す操作を合計7回繰り返した(常圧から、それぞれ−95、−96、−97、−81、−97、−97、及び−97kPaまで減圧した)。以上の手順により、非水系電解液を電極積層体に含浸させた。
得られた非水系ハイブリッドキャパシタに対して、東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT−3100U)を用いて、25℃環境下、電流値0.5Aで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を2時間継続する手法により初期充電を行い、負極にプレドープを行った。
プレドープ後の非水系ハイブリッドキャパシタを25℃環境下、0.5Aで電圧3.0Vに到達するまで定電流放電を行った後、3.0V定電流放電を1時間行うことにより電圧を3.0Vに調整した。続いて、非水系ハイブリッドキャパシタを60℃の恒温槽に12時間保管した。
温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下で、エージング後の非水系ハイブリッドキャパシタのアルミラミネート包材の一部を開封した。続いて、減圧チャンバーの中に上記非水系ハイブリッドキャパシタを入れ、KNF社製のダイヤフラムポンプ(N816.3KT.45.18)を用いて大気圧から−80kPaまで3分間掛けて減圧した後、3分間掛けて大気圧に戻す操作を合計3回繰り返した。減圧シール機に非水系ハイブリッドキャパシタを入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
[静電容量、Ra・Fの測定]
得られた非水系ハイブリッドキャパシタについて、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、上述した方法により、静電容量Fと25℃における内部抵抗Raを算出し、Ra・Fとエネルギー密度E/Vとを得た。得られた結果を表1に示す。
上記工程で得られた非水系ハイブリッドキャパシタについて、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、100Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で10分間行った。その後、非水系ハイブリッドキャパシタを60℃環境下に保存し、2週間毎に60℃環境下から取り出し、同様の充電工程にてセル電圧を4.0Vに充電した後、再びセルを60℃環境下で保存した。この工程を3か月間繰り返し実施し、保存試験開始前のセル体積Va、保存試験3か月後のセルの体積Vbをアルキメデス法によって測定し、Vb−Vaによりガス発生量を求めた。得られた結果を表1に示す。
上記高温保存試験後の非水系ハイブリッドキャパシタに対して、上記のRa・Fの算出と同様にして高温保存試験後の常温内部抵抗Rbを算出した。このRb(Ω)を、上記Ra・Fの算出で求めた高温保存試験前の内部抵抗Ra(Ω)で除してRb/Raを算出した。得られた結果を表1に示す。
正極スラリーの正極活物質、アルカリ金属炭酸塩の種類、配合比及びその平均粒子径、組成、仕込み固形分重量比を、それぞれ表1に示すとおりとした他は実施例1と同様にして実施例2〜21と比較例1〜3の正極スラリー及び非水系ハイブリッドキャパシタをそれぞれ作製し、各種の評価を行った。得られた評価結果を表1に示す。
正極スラリーの結着剤をPVdF2にした他は実施例1と同様にして実施例22の正極スラリー及び非水系ハイブリッドキャパシタをそれぞれ作製し、各種の評価を行った。得られた評価結果を表1に示す。また、正極スラリーに含まれる結着剤の重量平均分子量は170万だった。
<正極スラリーの製造>
活性炭1及びアクリル系重合体1を用い、上記の組成hにて、正極スラリー2を得た。
(燃焼法)
上記正極スラリー2の一部を金属容器に秤量し、この金属容器を熱風乾燥機に入れ、120℃で液面光沢がなくなるまでスラリー試料1を乾燥し、さらに180℃、15時間の条件で真空乾燥を実施することで得られたスラリー固形成分試料2を用いて、下記の条件でTG測定を実施し、TG曲線を得た。
・装置:日立ハイテクサイエンス社製TG/DTA6200
・ガス:圧縮空気(100mL/min)
・昇温速度:0.5℃/min
・温度範囲:25℃〜550℃(炭酸リチウムの融点:723℃)
得られたTG曲線より上述した方法により、W2及びW4を取得した。以上のW2及びW4から上記式(4)に従いWAを算出した。燃焼法により得られた結果を表1に示す。
上記正極スラリー2を用い、塗工時の乾燥温度を80℃にした他は、他は実施例1と同様にして実施例23の正極前駆体及び非水系ハイブリッドキャパシタをそれぞれ作製し、各種の評価を行った。得られた評価結果を表1に示す。
正極スラリーの正極活物質、アルカリ金属炭酸塩の平均粒子径、結着剤、組成、仕込み固形分重量比を、それぞれ表1に示すとおりとした他は実施例23と同様にして実施例24〜27と比較例4〜5の正極スラリー及び非水系ハイブリッドキャパシタをそれぞれ作製し、各種の評価を行った。得られた評価結果を表1に示す。
<正極スラリー(組成l)及び正極前駆体の製造>
活性炭2を87.5質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVdF1を8.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を表1に示す仕込み固形分重量比になるように適量混合し、その混合物をPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速17m/sの条件で分散して組成lの正極スラリー3を得た。上記正極スラリー3を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚み15μmのアルミニウム箔の片面又は両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度100℃で乾燥して正極前駆体3を得た。得られた正極前駆体3を、ロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスした。得られた正極スラリー3及び正極前駆体3について、実施例1と同様にして評価を行った。その結果を表1に示す。
得られた正極前駆体3と、負極活物質単位質量当たり211mAh/gに相当する金属リチウム箔を負極1の負極活物質層表面に貼り付けた負極とを用いた他は実施例1と同様にして非水系ハイブリッドキャパシタの組立及び注液、含浸、封止を実施した。
<正極スラリー(組成m)及び正極前駆体の製造>
活性炭5を88.4質量部、ケッチェンブラックを4.8質量部、CMCを3.6質量部(固形分換算値、濃度2質量%の水溶液として添加)を混合し、その混合物をPRIMIX社製の混練機ハイビスミックスを用いて60rpmの条件で混練した。その後、アクリル系重合体1を3.2質量部(固形分換算値、濃度40質量%の水分散液として添加)、並びに酢酸及び水を表1に示す仕込み固形分重量比になるように適量加え、20rpmの条件で混練して組成mの正極スラリー4を得た。上記正極スラリー4を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚み15μmのアルミニウム箔の片面又は両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度80℃で乾燥して正極前駆体4を得た。得られた正極前駆体4を、ロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスした。得られた正極スラリー4及び正極前駆体4について、実施例23と同様にして評価を行った。その結果を表1に示す。
得られた正極前駆体4と、負極活物質単位質量当たり211mAh/gに相当する金属リチウム箔を負極1の負極活物質層表面に貼り付けた負極とを用いた他は実施例23と同様にして非水系ハイブリッドキャパシタの組立及び注液、含浸、封止を実施した。
Claims (15)
- 活性炭を含む正極活物質と、前記正極活物質以外のアルカリ金属炭酸塩と、結着剤と、溶媒とを含有するスラリーであって、
前記スラリーの全質量を基準として、前記溶媒を除く全固形成分の質量比をWT質量%とするとき、10≦WT≦50であり、
前記スラリーの前記全固形成分の全質量を基準として、前記アルカリ金属炭酸塩の質量比をWA質量%とするとき、5≦WA≦50であり、かつ
容器中で撹拌後7日間静置した状態における前記スラリーの全体積を高さ方向で3分割した際の、最上層液及び最下層液の粘度をそれぞれηU(mPa・s)及びηL(mPa・s)とするとき、0.50≦ηU/ηL≦1.00であるスラリー。 - 前記容器中で撹拌後7日間静置した状態における前記スラリーの全体積を高さ方向で3分割した際の、最上層液及び最下層液の密度をそれぞれρU(g/mL)及びρL(g/mL)とするとき、0.60≦ρU/ρL≦1.00である、請求項1に記載のスラリー。
- 前記アルカリ金属炭酸塩の平均粒子径をX1とするとき、0.1μm≦X1≦10μmであり、前記正極活物質の平均粒子径をY1とするとき、2μm≦Y1≦20μmである、請求項1又は2に記載のスラリー。
- 前記アルカリ金属炭酸塩の平均粒子径X1及び前記正極活物質の平均粒子径Y1において、X1<Y1である、請求項3に記載のスラリー。
- 前記アルカリ金属炭酸塩が、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、及び炭酸セシウムから成る群から選ばれる1種以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスラリー。
- 前記アルカリ金属炭酸塩において、炭酸リチウムが10質量%以上含まれる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスラリー。
- 前記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のスラリー。
- 前記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量V1(cc/g)が0.8<V1≦2.5を満たし、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量V2(cc/g)が0.8<V2≦3.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のスラリー。
- 前記結着剤はフッ素含有物を含み、前記結着剤の重量平均分子量が500,000以上1,800,000以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のスラリー。
- 前記フッ素含有物はポリフッ化ビニリデンを含む、請求項9に記載のスラリー。
- 前記結着剤はゴム系高分子を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のスラリー。
- 前記結着剤はアクリル系重合体を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のスラリー。
- 前記溶媒において、N−メチルピロリドンが50質量%以上含まれる、請求項1〜12のいずれか一項に記載のスラリー。
- 前記溶媒において、水が50質量%以上含まれる、請求項1〜12のいずれか一項に記載のスラリー。
- 非水系ハイブリッドキャパシタの正極の製造用である、請求項1〜14のいずれか一項に記載のスラリー。
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