JP2020140771A - 電線の製造方法およびケーブルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱可塑性フッ素樹脂組成物を用いた電線およびケーブルにおいて、機械特性および耐熱性に優れた電線およびケーブルを提供する。【解決手段】電線の製造方法は、(S21)導体の周囲を被覆するように、熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出す工程、(S22)前記(S21)押出工程によって押し出された前記熱可塑性フッ素樹脂組成物を引き落として、前記導体の周囲に絶縁層を形成する工程、を含む。前記熱可塑性フッ素樹脂組成物は、フッ素ゴムと、フッ素樹脂と、相溶化剤とを含み、前記フッ素樹脂は、融点が300℃以上310℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンを含み、前記熱可塑性フッ素樹脂組成物中において前記フッ素ゴムが動的架橋により架橋されている。前記(S21)押出工程は、前記パーフルオロアルコキシアルカンの融点以上かつ前記融点+10℃未満の温度で行われる。【選択図】図3
Description
本発明は、電線の製造方法およびケーブルの製造方法に関するものである。
電線は、導体と、前記導体の周囲に設けられる被覆材としての絶縁層とを有している。また、ケーブルは、前記電線と、前記電線の周囲に設けられる被覆材としてのシース(外被層)とを備えている。前記シースは、前記絶縁層の周囲に設けられる。
前記電線の絶縁層や前記ケーブルのシースのような被覆材は、ゴムや樹脂を主原料とした電気絶縁性材料からなる。電気絶縁性材料の一例としては、熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Elastomer:TPE)がある。特に、耐熱性や耐薬品性に優れた熱可塑性エラストマーとして、例えば、熱可塑性フッ素樹脂組成物が挙げられる。
熱可塑性フッ素樹脂組成物の一つであるフッ素ゴムは、優れた耐熱性および耐薬品性などの特性を有するため、工業分野、自動車分野および半導体分野などで多くの用途に用いられている。また、熱可塑性フッ素樹脂組成物の他の一つであるフッ素樹脂は、優れた摺動性、耐熱性および耐薬品性などの特性を有するため、工業分野、自動車分野および半導体分野などで多くの用途に用いられている。
フッ素ゴムの耐熱性をさらに向上させるため、またはフッ素樹脂に柔軟性を付与するために、フッ素ゴムとフッ素樹脂とのポリマーアロイが研究されている。しかし、フッ素ゴムとフッ素樹脂との親和性が低いため、フッ素ゴムとフッ素樹脂とを単に溶融混練するのみでは分散不良が発生し、層間剥離や強度低下などの問題が生じる。
そのため、例えば、特許文献1には、フッ素ゴムおよびフッ素樹脂に加え、相溶化剤として特定の相溶化剤をさらに加えることで、熱可塑性フッ素樹脂組成物を得る技術が開示されている。
しかし、本発明者の検討によれば、前記した熱可塑性フッ素樹脂組成物を構成するフッ素樹脂としてパーフルオロ(ペルフルオロ)アルコキシアルカン(Perfluoroalkoxy Alkane:PFA)を採用したところ、前記電線の絶縁層や前記ケーブルのシースのような被覆材として用いるには十分な機械特性および耐熱性が得られない場合があることを確認した。
具体的には、パーフルオロアルコキシアルカンを含む熱可塑性フッ素樹脂組成物からなる被覆材において、引張破断強さが10MPaに満たず、伸びも300%に満たない場合があることがわかった。そして、パーフルオロアルコキシアルカンを含む熱可塑性フッ素樹脂組成物からなる被覆材において、連続使用温度が200℃程度にまで低下する場合があることがわかった。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、熱可塑性フッ素樹脂組成物を用いた電線およびケーブルにおいて、機械特性および耐熱性に優れた電線およびケーブルを提供することを目的とする。
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
[1]電線の製造方法は、(a)導体の周囲を被覆するように、熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出す工程、(b)前記(a)工程によって押し出された前記熱可塑性フッ素樹脂組成物を引き落として、前記導体の周囲に絶縁層を形成する工程、を含む。前記熱可塑性フッ素樹脂組成物は、フッ素ゴムと、フッ素樹脂と、相溶化剤とを含み、前記フッ素樹脂は、融点が300℃以上310℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンを含み、前記熱可塑性フッ素樹脂組成物中において前記フッ素ゴムが動的架橋により架橋されている。前記(a)工程は、前記パーフルオロアルコキシアルカンの融点以上かつ前記融点+10℃未満の温度で行われる。
[2][1]記載の電線の製造方法において、前記フッ素樹脂は、さらに融点が300℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンを含む。
[3][1]記載の電線の製造方法において、前記(b)工程では、前記導体と前記熱可塑性フッ素樹脂組成物との間が減圧されている。
[4][1]記載の電線の製造方法において、前記(a)工程の前に、(c)前記熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成する工程、を含む。前記(c)工程は、(c1)前記フッ素ゴムと、前記相溶化剤と、架橋促進剤とを含む混合物を混練し、脱フッ化水素反応により前記フッ素ゴム中に二重結合を形成させる工程、(c2)前記(c1)工程によって生成された第1生成物と、前記フッ素樹脂とを混練する工程、(c3)前記(c2)工程によって生成された第2生成物と、ポリオール架橋剤とを混練し、前記第2生成物中の前記フッ素ゴムを動的架橋させる工程、を含む。
[5][4]記載の電線の製造方法において、前記(c1)工程では、前記脱フッ化水素反応により、前記相溶化剤中にも二重結合を形成させ、前記(c3)工程では、前記第2生成物中の前記相溶化剤をも動的架橋させる。
[6][4]記載の電線の製造方法において、前記混合物は、さらに受酸剤を含む。
[7]ケーブルの製造方法は、(a)電線を含むコアの周囲を被覆するように、熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出す工程、(b)前記(a)工程によって押し出された前記熱可塑性フッ素樹脂組成物を引き落として、前記コアの周囲にシースを形成する工程、を含む。前記熱可塑性フッ素樹脂組成物は、フッ素ゴムと、フッ素樹脂と、相溶化剤とを含み、前記フッ素樹脂は、融点が300℃以上310℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンを含み、前記熱可塑性フッ素樹脂組成物中において前記フッ素ゴムが動的架橋により架橋されている。前記(a)工程は、前記パーフルオロアルコキシアルカンの融点以上かつ前記融点+10℃未満の温度で行われる。
[8][7]記載のケーブルの製造方法において、前記フッ素樹脂は、さらに融点が300℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンを含む。
[9][7]記載のケーブルの製造方法において、前記(b)工程では、前記コアと前記熱可塑性フッ素樹脂組成物との間が減圧されている。
[10][7]記載のケーブルの製造方法において、前記(a)工程の前に、(c)前記熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成する工程、を含む。前記(c)工程は、(c1)前記フッ素ゴムと、前記相溶化剤と、架橋促進剤とを含む混合物を混練し、脱フッ化水素反応により前記フッ素ゴム中に二重結合を形成させる工程、(c2)前記(c1)工程によって生成された第1生成物と、前記フッ素樹脂とを混練する工程、(c3)前記(c2)工程によって生成された第2生成物と、ポリオール架橋剤とを混練し、前記第2生成物中の前記フッ素ゴムを動的架橋させる工程、を含む。
[11][10]記載のケーブルの製造方法において、前記(c1)工程では、前記脱フッ化水素反応により、前記相溶化剤中にも二重結合を形成させ、前記(c3)工程では、前記第2生成物中の前記相溶化剤をも動的架橋させる。
[12][10]記載のケーブルの製造方法において、前記混合物は、さらに受酸剤を含む。
本発明によれば、熱可塑性フッ素樹脂組成物を用いた電線およびケーブルにおいて、機械特性および耐熱性に優れた電線およびケーブルを提供することができる。
(検討事項)
まず、実施の形態を説明する前に、本発明者が検討した事項について説明する。
まず、実施の形態を説明する前に、本発明者が検討した事項について説明する。
詳細は後述するが、フッ素樹脂の1つであるパーフルオロアルコキシアルカンは、他のフッ素樹脂と同様に高融点であり、かつ、溶融加工が可能なフッ素樹脂である。そのため、(A)フッ素ゴム、(B)フッ素樹脂および(C)相溶化剤からなる熱可塑性フッ素樹脂組成物において、(B)フッ素樹脂にパーフルオロアルコキシアルカンを採用すると、引張特性等の機械特性および耐熱性に優れた熱可塑性フッ素樹脂組成物になるものと期待される。
そこで、本発明者は、電線の絶縁層またはケーブルの外皮層(シース)をこのような熱可塑性フッ素樹脂組成物により構成することを検討した。特に、電線またはケーブルにおいて、例えば連続使用可能温度が250℃以上といった耐熱性が要求される一方、(A)フッ素ゴムが熱分解する温度が310℃〜320℃程度であることを考慮して、本発明者は、(B)フッ素樹脂に融点が300℃以上310℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンを採用することを検討した。
一般的な電線の製造方法は、導体の周囲を被覆するように、熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出し、絶縁層を形成する工程を有している。また、一般的なケーブルの製造方法は、電線の周囲を被覆するように、熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出し、シースを形成する工程を有している。これらの被覆方法は、充実押出と呼ばれる。
まず、電線およびケーブルを製造する製造装置について説明する。図6は、電線およびケーブルを製造する押出被覆装置を示す模式図、図8は、押出被覆装置における検討例のダイスを示す拡大断面図である。図6に示す押出被覆装置21の詳細については後述する。充実押出を行う場合は、例えば図6に示す押出被覆装置21に、図8に示すダイス33を取り付ける。図8に示すように、ダイス33には、ニップル32が取り付けられている。なお、ダイス33の出口面30側の吐出口の孔径をDdとする。充実押出では、ニップル32の先端開口部よりダイス33の吐出口が前方に位置し、ダイス33の吐出口が電線100の外径(仕上がり径)Dwと略同一に設定されている。
次に、電線の製造工程を説明する。例えば、図6に示す押出被覆装置21にて、熱可塑性フッ素樹脂組成物のペレットをホッパー22に投入し、シリンダー28、ヘッド25およびダイス33の加熱と、熱可塑性フッ素樹脂組成物のせん断によって生じた熱とによって、熱可塑性フッ素樹脂組成物を溶融(可塑化、軟化)させる。その後、図8に示すように、溶融した熱可塑性フッ素樹脂組成物6は、ニップル32とダイス33との間に設けられた流路を通り、ダイス33の出口面30へと向かう。一方、導体1は、ニップル32の中心に設けられた孔部34を通り、前記流路を通ってきた熱可塑性フッ素樹脂組成物と合流する。こうして、溶融した熱可塑性フッ素樹脂組成物6は、導体1の周囲を被覆するように押し出される。その後、押し出された熱可塑性フッ素樹脂組成物6は、ダイス33の出口面30から押出被覆装置21の外方に排出されると冷却され固化して、絶縁層200となる。こうすることで、電線100が作製される。
ここで、熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出す際の温度(具体的には、例えば押出被覆装置のシリンダーやダイスの設定温度)を、熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成する際の温度と同じ320℃程度で行うことを検討した(以下、検討例1とする)。熱可塑性フッ素樹脂組成物の生成時の温度は、各原料の混練が十分に行われるように、原料の中で最も融点の高いフッ素樹脂(パーフルオロアルコキシアルカン)を基準にして、フッ素樹脂の融点よりも20℃程度高い温度が適している。そこで、検討例1では、(B)フッ素樹脂に融点が300℃程度のパーフルオロアルコキシアルカンを採用しているため、熱可塑性フッ素樹脂組成物の押し出し時の温度を320℃程度とした。
ここで、本発明者が検討例1について確認した課題について説明する。検討例1において、熱可塑性フッ素樹脂組成物の押し出し時の温度を320℃程度としたところ、熱可塑性フッ素樹脂組成物が発泡し、被覆材の外観が荒れたり、ツブが生じたりする場合があることを確認した。この原因としては、(A)フッ素ゴムの熱分解によって発生したフッ化水素が受酸剤(安定剤)である酸化マグネシウムと反応し、生じた水が蒸発したためであると考えられる。
そのため、検討例1の課題を解決するために、熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出す際の温度(具体的には、例えば押出機の設定温度)を、(B)フッ素樹脂の融点と同じ300℃程度で行うことを検討した(以下、検討例2とする)。こうすることで、(A)フッ素ゴムの熱分解を抑制し、発泡するという問題を解消することができる。
一方で、検討例2において、熱可塑性フッ素樹脂組成物の押し出し時の温度を300℃程度としたところ、前述したように、前記電線の絶縁層や前記ケーブルのシースのような被覆材として用いるには十分な機械特性および耐熱性が得られない場合があった。この被覆材を構成する熱可塑性フッ素樹脂組成物を解析したところ、(A)フッ素ゴムが連続相(海相、マトリックス)で、(B)フッ素樹脂が分散相(島相、ドメイン)である相構造(いわゆる島海構造)を有していることがわかった(後述の比較例1および比較例2参照)。この原因としては、熱可塑性フッ素樹脂組成物に含まれる(B)フッ素樹脂の融点付近で押し出すため、(B)フッ素樹脂の粘度が高すぎて流動しにくく島相となりやすいものと考えられる。
本発明者の検討によれば、前記電線の絶縁層や前記ケーブルのシースのような被覆材として用いるのに十分な引張特性および耐熱性を得るためには、前記被覆材を構成する熱可塑性フッ素樹脂組成物において、(A)フッ素ゴムが分散相(島相)であり、(B)フッ素樹脂が連続相(海相)である、いわゆる海島構造という相構造が形成されることが必要である。なぜならば、弾性体である(A)フッ素ゴムが分散相(島相)として組成物中に存在することにより、常温において組成物全体に弾性が得られるためである。また、熱可塑性の(B)フッ素樹脂が連続相(海相)として組成物中に存在することにより、高温において連続相(海相)が流動し塑性変形が可能となるためである。
以上より、パーフルオロアルコキシアルカンを含む熱可塑性フッ素樹脂組成物を用いた電線およびケーブルの製造方法において、その工程を工夫することにより、機械特性および耐熱性に優れた電線およびケーブルを製造することが望まれる。
(実施の形態)
以下、本発明の一実施の形態の電線(絶縁電線)およびケーブルの構成および製造方法について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る電線およびケーブルの製造工程を示すフロー、図2は、図1に示すフローにおいて、熱可塑性フッ素樹脂組成物の生成工程を示すフロー、図3は、図1に示すフローにおいて、電線およびケーブルの被覆工程を示すフローである。図4は、本発明の一実施の形態に係る電線を示す横断面図、図5は、本発明の一実施の形態に係るケーブルを示す横断面図である。図6は、本発明の一実施の形態の電線またはケーブルを製造する押出被覆装置を示す模式図、図7は、図6に示す押出被覆装置において、本実施の形態のダイスを示す拡大断面図である。
以下、本発明の一実施の形態の電線(絶縁電線)およびケーブルの構成および製造方法について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る電線およびケーブルの製造工程を示すフロー、図2は、図1に示すフローにおいて、熱可塑性フッ素樹脂組成物の生成工程を示すフロー、図3は、図1に示すフローにおいて、電線およびケーブルの被覆工程を示すフローである。図4は、本発明の一実施の形態に係る電線を示す横断面図、図5は、本発明の一実施の形態に係るケーブルを示す横断面図である。図6は、本発明の一実施の形態の電線またはケーブルを製造する押出被覆装置を示す模式図、図7は、図6に示す押出被覆装置において、本実施の形態のダイスを示す拡大断面図である。
<電線の構成>
図4に示すように、本実施の形態に係る電線10は、導体1と、導体1の周囲に被覆される絶縁層2とを有している。絶縁層2は、熱可塑性フッ素樹脂組成物からなり、好ましくは後述する本実施の形態の熱可塑性フッ素樹脂組成物からなる。
図4に示すように、本実施の形態に係る電線10は、導体1と、導体1の周囲に被覆される絶縁層2とを有している。絶縁層2は、熱可塑性フッ素樹脂組成物からなり、好ましくは後述する本実施の形態の熱可塑性フッ素樹脂組成物からなる。
導体1としては、通常用いられる金属線、例えば銅線、銅合金線のほか、アルミニウム線、金線、銀線などを用いることができる。また、導体1として、金属線の周囲に錫やニッケルなどの金属めっきを施したものを用いてもよい。さらに、導体1として、金属線を撚り合わせた撚り導体を用いることもできる。
本実施の形態の電線は、あらゆる用途およびサイズに適用可能であり、盤内配線用、車両用、自動車用、機器内配線用、電力用の各電線に使用することができる。
<電線の製造方法>
まず、本実施の形態の電線を製造する装置について説明する。
まず、本実施の形態の電線を製造する装置について説明する。
図6に示すように、本実施の形態に係る押出被覆装置21は、例えばスクリュー口径20mmの単軸押出機(L/D=25、ブラベンダー社製)である。押出被覆装置21は、樹脂組成物のペレットを投入するホッパー22と、樹脂組成物を加熱するシリンダー28と、シリンダー28内で樹脂組成物を押し出すスクリュー23と、樹脂組成物の流れを規制し、背圧を高めて混練状態を向上させるブレーカプレート24とを有している。さらに、押出被覆装置21は、導体1の周囲に樹脂組成物を被覆するヘッド25と、シリンダー28とヘッド25とを接続するネック26と、絶縁層2の厚さ(電線10の径)を決めるダイス27とを有している。シリンダー28は、例えば3つのシリンダーに分かれている。
また、図7に示すように、本実施の形態に係る押出被覆装置21のダイス27には、ニップル29が取り付けられている。なお、ダイス27の出口面30側の孔径をDdと、ニップル29の出口面30側の外径をDgとする。本実施の形態に係るダイス27では、ニップル29の先端開口部よりダイス27の吐出口が前方に位置し、ダイス27の吐出口が電線100の外径(仕上がり径)Dwと略同一に設定されている。ニップル29の先端開口部とダイス27の吐出口とが出口面30において略面一に設定され、ダイス27の吐出口が電線10またはケーブル11の外径(仕上がり径)Dwより大きく設定されている。
次に、本実施の形態の電線の製造工程について説明する。図1に示すように、本実施の形態の電線10の製造工程は、(S1)熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成する工程(樹脂組成物生成工程)と、(S2)熱可塑性フッ素樹脂組成物を被覆する工程(被覆工程)とを有している。
そして、図2に示すように、前記(S1)樹脂組成物生成工程は、(S11)二重結合形成工程と、(S12)フッ素樹脂混練工程と、(S13)動的架橋工程とを有している。前記(S1)樹脂組成物生成工程の詳細は、後述の熱可塑性フッ素樹脂組成物の製造方法の項目において説明する。
また、図3に示すように、前記(S2)被覆工程は、(S21)導体の周囲を被覆するように、熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出す工程(押出工程)と、(S22)前記(S21)押出工程によって押し出された前記熱可塑性フッ素樹脂組成物を引き落として、前記導体の周囲に絶縁層を形成する工程とを有している。
具体的には、図6に示す押出被覆装置21にて、熱可塑性フッ素樹脂組成物のペレットをホッパー22に投入する。その後、熱可塑性フッ素樹脂組成物は、スクリュー23の回転運動によって前方に進められながら、シリンダー28、ヘッド25およびダイス27の加熱と、熱可塑性フッ素樹脂組成物のせん断によって生じた熱とによって溶融(可塑化、軟化)する。その後、図7に示すように、溶融した熱可塑性フッ素樹脂組成物6は、ニップル29とダイス27との間に設けられた流路を通り、ダイス27の出口面30へと向かう。一方、導体1は、ニップル29の中心に設けられた孔部31を通り、ダイス27の出口面30へと向かう。こうして、溶融した熱可塑性フッ素樹脂組成物6は、ダイス27の出口面30において、導体1の周囲を被覆するように押し出される。
なお、前記熱可塑性フッ素樹脂組成物は、融点が300℃以上310℃未満であるパーフルオロアルコキシアルカンを含んでおり、前記(S21)押出工程は、前記パーフルオロアルコキシアルカンの融点以上かつ前記融点+10℃未満の温度で行われる。すなわち、前記熱可塑性フッ素樹脂組成物の融点をT0とし、前記(S21)押出工程の処理温度をTとすると、T0≦T<T0+10℃という関係を満たしている。なお、前述したように、熱可塑性フッ素樹脂組成物のせん断によっても熱が生じることから、前記(S21)押出工程の処理温度Tが上記条件を満たすように、押出被覆装置21のシリンダー28、ヘッド25およびダイス27の設定温度は、前記(S21)押出工程の処理温度Tよりも5〜10℃程度低くすることが好適である。
続いて、導体1が軸方向に沿ってダイス27の出口面30から押出被覆装置21の外方に向かって引っ張られることによって、押し出された熱可塑性フッ素樹脂組成物6は導体1の表面に引き落とされる(すなわち、押し出された厚さよりも薄くなる)。その後、引き落とされた熱可塑性フッ素樹脂組成物6は冷却され固化し、絶縁層2となる。こうすることで、本実施の形態の電線10が作製される。
なお、孔部31内は減圧されていることが好ましい。すなわち、前記(S22)引落工程において、導体1と溶融した熱可塑性フッ素樹脂組成物6との間が減圧されていることが好ましい。これにより、溶融した熱可塑性フッ素樹脂組成物6の引き落としを効果的に行うことができる。そして、導体1と溶融した熱可塑性フッ素樹脂組成物6とを密着させ、電線10において導体1と絶縁層2との間に隙間ができるという事態を防止できる。
なお、本実施の形態の電線の製造方法において、(S2)被覆工程は、(S21)押出工程と、(S22)引落工程とを含むものとして説明したが、これは便宜的なものである。特に、ダイスの吐出口から出た樹脂組成物が冷却されて流動性が低くなると引き落としが困難になるため、(S21)押出工程と(S22)引落工程とは、連続した1つの工程として行われることが好ましい。
ただし、図6に示すように、(S2)被覆工程では、溶融している樹脂組成物(約300℃)をダイスの吐出口から導体(または電線)の周囲を被覆するように押し出す工程と、その後、絶縁層を構成する樹脂組成物の断面積が、ダイスから押し出された際の樹脂組成物の断面積よりも熱収縮する分以上に小さくなるように引き落とす(延伸する)工程とがそれぞれ行われていればよい。
また、本実施の形態の電線の製造工程は、(S1)熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成する工程(樹脂組成物生成工程)と、(S2)熱可塑性フッ素樹脂組成物を被覆する工程(被覆工程)とを有している場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、(S1)熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成する工程(樹脂組成物生成工程)は、次の条件を満たす熱可塑性フッ素樹脂組成物を準備する工程(樹脂組成物準備工程)であってもよい。前記条件を満たす熱可塑性フッ素樹脂組成物とは、(A)フッ素ゴムと、(B)フッ素樹脂と、(C)相溶化剤とを含み、前記(B)フッ素樹脂は、パーフルオロアルコキシアルカンを含み、前記熱可塑性フッ素樹脂組成物中において前記フッ素ゴムが動的架橋により架橋されていることである。そして、前記パーフルオロアルコキシアルカンの融点は、300℃以上310℃未満である。なお、この熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成する工程は、後述の前記(S1)樹脂組成物生成工程に限定されるものではない。
<ケーブルの構成>
図5に示すように、本実施の形態に係るケーブル11は、例えば、前述の電線10を2本撚り合わせた二芯撚り線と、前記二芯撚り線の周囲に設けられた介在3と、介在3の周囲に設けられたシース4とを備えている。シース4は、前述の熱可塑性フッ素樹脂組成物からなる。介在3は、例えばスフ糸、クラフト紙、紙テープ、ジュートなどからなる。
図5に示すように、本実施の形態に係るケーブル11は、例えば、前述の電線10を2本撚り合わせた二芯撚り線と、前記二芯撚り線の周囲に設けられた介在3と、介在3の周囲に設けられたシース4とを備えている。シース4は、前述の熱可塑性フッ素樹脂組成物からなる。介在3は、例えばスフ糸、クラフト紙、紙テープ、ジュートなどからなる。
本実施の形態のケーブル11は、芯線として電線10を2本撚り合わせた二芯撚り線を有する場合を例に説明したが、芯線は単芯(1本)でもよいし、二芯以外の多芯撚り線であってもよい。また、芯線とシース4との間に介在3がある場合を例に説明したが、介在3はなくてもよい。また、電線10とシース4との間に、他の絶縁層(シース)が形成された、多層シース構造を採用することもできる。
また、本実施の形態のケーブル11は、前述の電線10を使用した場合を例に説明したが、これに限定されず、汎用の材料を用いた電線を使用することもできる。
<ケーブルの製造工程>
本実施の形態のケーブルを製造する装置は、ダイス27の形状および吐出口の孔径Ddやニップル29の形状および吐出口の外径Dgなどが異なる以外は、図6に示す電線を製造する押出被覆装置21とほぼ同じであるため、その説明を省略する。
本実施の形態のケーブルを製造する装置は、ダイス27の形状および吐出口の孔径Ddやニップル29の形状および吐出口の外径Dgなどが異なる以外は、図6に示す電線を製造する押出被覆装置21とほぼ同じであるため、その説明を省略する。
次に、本実施の形態のケーブルの製造工程について説明する。基本的には図1に示す電線10の製造工程と同様である。ただし、図3に示すように、前記(S2)被覆工程は、(S21)電線を含むコアの周囲を被覆するように、熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出す工程(押出工程)と、(S22)前記(S21)押出工程によって押し出された前記熱可塑性フッ素樹脂組成物を引き落として、前記コアの周囲にシースを形成する工程とを有している。
前記(S21)押出工程において、図7に示すように、溶融した熱可塑性フッ素樹脂組成物6は、ダイス27の出口面30において、コア5の周囲を被覆するように押し出される。
なお、前述の通り、前記熱可塑性フッ素樹脂組成物は、融点が300℃以上310℃未満であるパーフルオロアルコキシアルカンを含んでおり、前記(S21)押出工程は、前記パーフルオロアルコキシアルカンの融点以上かつ前記融点+10℃未満の温度で行われる。
続いて、コア5が軸方向に沿ってダイス27の出口面30から押出被覆装置21の外方に向かって引っ張られることによって、押し出された熱可塑性フッ素樹脂組成物6はコア5の表面に引き落とされる(すなわち、押し出された厚さよりも薄くなる)。その後、引き落とされた熱可塑性フッ素樹脂組成物6は冷却され固化し、シース4となる。こうすることで、本実施の形態のケーブル11が作製される。
なお、前述したように、孔部31内は減圧されていることが好ましい。これにより、コア5と溶融した熱可塑性フッ素樹脂組成物6とを密着させることができ、ケーブル11においてコア5とシース4との間に隙間ができるという事態を防止できる。
本実施の形態のケーブルの製造工程は、(S1)熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成する工程(樹脂組成物生成工程)と、(S2)熱可塑性フッ素樹脂組成物を被覆する工程(被覆工程)とを有している場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、上記電線の製造工程と同様に、(S1)熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成する工程(樹脂組成物生成工程)は、上記条件を満たす熱可塑性フッ素樹脂組成物を準備する工程(樹脂組成物準備工程)であってもよい。
<熱可塑性フッ素樹脂組成物の構成>
以下、本発明の一実施の形態の熱可塑性フッ素樹脂組成物の具体的な構成例について説明する。
以下、本発明の一実施の形態の熱可塑性フッ素樹脂組成物の具体的な構成例について説明する。
本実施の形態に係る熱可塑性フッ素樹脂組成物は、(A)フッ素ゴムと、(B)フッ素樹脂と、(C)相溶化剤とを含んでいる。そして、前記熱可塑性フッ素樹脂組成物内において、前記(A)フッ素ゴムが動的架橋により架橋されている。前記(B)フッ素樹脂は、パーフルオロアルコキシアルカンである。前記(C)相溶化剤は、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン三元共重合体である。前記三元共重合体において、テトラフルオロエチレン単位:ヘキサフルオロプロピレン単位:フッ化ビニリデン単位のモル比が、30〜70:15〜40:10〜50である。その結果、前記(C)相溶化剤の比重は約1.90以上である。前記(A)フッ素ゴムと前記(B)フッ素樹脂との質量比(%)は、20〜60:80〜40である。そして、前記(C)相溶化剤の配合量は、前記(A)フッ素ゴムおよび前記(B)フッ素樹脂の合計100重量部に対して1〜30重量部である。
(B)フッ素樹脂は単一のフッ素樹脂でもよいが、後述の実施例に示すように、2種類以上のフッ素樹脂を混合してもよい。
なお、前記(A)フッ素ゴムと前記(B)フッ素樹脂との質量比において、前記(B)フッ素樹脂の質量比が40質量比(%)よりも小さいと、生成された熱可塑性フッ素樹脂組成物において、架橋された前記(A)フッ素ゴムおよび前記(B)フッ素樹脂が共に連続相(海相)になるか、架橋された前記(A)フッ素ゴムが連続相(海相)になり前記(B)フッ素樹脂が分散相(島相)になる。その結果、生成された熱可塑性フッ素樹脂組成物は、外観(押し出し外観)が悪化するとともに、この熱可塑性フッ素樹脂組成物の引張強さおよび伸びが大きく低下する。また、この熱可塑性フッ素樹脂組成物の連続使用温度が、200℃程度にまで低下する。ここで、連続使用温度とは、例えば一定の温度の下で4万時間、大気中で暴露された場合に、伸びの絶対値が50%に低下する温度をいう。
また、前記(A)フッ素ゴムと前記(B)フッ素樹脂との質量比において、前記(B)フッ素樹脂の質量比が80質量比(%)よりも大きいと、すなわち、前記(A)フッ素ゴムの質量比が20質量比(%)より小さいと、生成された熱可塑性フッ素樹脂組成物の柔軟性(可撓性)が著しく低下する。
以上より、引張特性、耐熱性および柔軟性等を総合して考えると、前記(A)フッ素ゴムと前記(B)フッ素樹脂との質量比(%)は、20〜60:80〜40とすることが好ましく、30〜50:70〜50とすることがより好ましい。
また、前記(C)相溶化剤の配合量が、前記(A)フッ素ゴムおよび前記(B)フッ素樹脂の合計100重量部に対して1重量部より少ないと、架橋された前記(A)フッ素ゴムの分散径が大きくなり、生成された熱可塑性フッ素樹脂組成物の押し出し外観が悪化する。また、本実施の形態の前記(C)相溶化剤は、脱フッ化水素により、二重結合を形成する(すなわち架橋可能な)フッ化ビニリデン単位のモル比が少ないテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン三元共重合体である。そのため、前記(C)相溶化剤の配合量が、前記(A)フッ素ゴムおよび前記(B)フッ素樹脂の合計100重量部に対して30重量部より多いと、熱可塑性フッ素樹脂組成物の中で見かけの架橋密度が低下し、押し出し時に架橋された前記(A)フッ素ゴム同士が凝集しやすく、ツブが発生するという問題が発生する。そのため、前記(C)相溶化剤の配合量は、前記(A)フッ素ゴムおよび前記(B)フッ素樹脂の合計100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、2〜20重量部がより好ましい。
また、本実施の形態において、生成された熱可塑性フッ素樹脂組成物において、分散相(島相)を構成する架橋された前記(A)フッ素ゴムの平均粒径は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。架橋された前記(A)フッ素ゴムの平均粒径を10μm以下とすることによって、熱可塑性フッ素樹脂組成物の引落し性、引張特性、耐熱性等をより優れたものとすることができる。
なお、本実施の形態の熱可塑性フッ素樹脂組成物は、以上で説明したように、(A)フッ素ゴムと、(B)フッ素樹脂と、(C)相溶化剤とを含み、前記(B)フッ素樹脂は、パーフルオロアルコキシアルカンを含み、前記熱可塑性フッ素樹脂組成物中において前記フッ素ゴムが動的架橋により架橋されている。そして、前記パーフルオロアルコキシアルカンの融点は、300℃以上310℃未満である。本実施の形態の熱可塑性フッ素樹脂組成物は、これらの要件を満たしていればよい。
<フッ素ゴム>
本実施の形態の(A)フッ素ゴムは、フッ化ビニリデン系フッ素ゴム(FKM)である。より具体的には、前記(A)フッ素ゴムは、ヘキサフルオロプロピレン(Hexafluoropropylene:HFP)/フッ化ビニリデン(Vinylidene Fluoride:VdF)二元共重合体(デュポン社製のバイトンA、ダイキン社製のダイエルG−701等)が好ましい。または、前記フッ素ゴムは、テトラフルオロエチレン(Tetrafluoroethylene:THF)/ヘキサフルオロプロピレン(Hexafluoropropylene:HFP)/フッ化ビニリデン(Vinylidene Fluoride:VdF)三元共重合体(デュポン社製バイトン(登録商標)B、ダイキン社製のダイエル(登録商標)G−551等)でもよい。(A)フッ素ゴムとして分類される前記三元共重合体は、テトラフルオロエチレン単位:ヘキサフルオロプロピレン単位:フッ化ビニリデン単位のモル比(%)が、0.1〜30:15〜60:40〜80(比重1.85〜1.88)のものであり、このうち、フッ素ゴムとしての性質を有するフッ化ビニリデン単位のモル比が50%以上のものが好ましい。
本実施の形態の(A)フッ素ゴムは、フッ化ビニリデン系フッ素ゴム(FKM)である。より具体的には、前記(A)フッ素ゴムは、ヘキサフルオロプロピレン(Hexafluoropropylene:HFP)/フッ化ビニリデン(Vinylidene Fluoride:VdF)二元共重合体(デュポン社製のバイトンA、ダイキン社製のダイエルG−701等)が好ましい。または、前記フッ素ゴムは、テトラフルオロエチレン(Tetrafluoroethylene:THF)/ヘキサフルオロプロピレン(Hexafluoropropylene:HFP)/フッ化ビニリデン(Vinylidene Fluoride:VdF)三元共重合体(デュポン社製バイトン(登録商標)B、ダイキン社製のダイエル(登録商標)G−551等)でもよい。(A)フッ素ゴムとして分類される前記三元共重合体は、テトラフルオロエチレン単位:ヘキサフルオロプロピレン単位:フッ化ビニリデン単位のモル比(%)が、0.1〜30:15〜60:40〜80(比重1.85〜1.88)のものであり、このうち、フッ素ゴムとしての性質を有するフッ化ビニリデン単位のモル比が50%以上のものが好ましい。
<フッ素樹脂>
本実施の形態の(B)フッ素樹脂は、パーフルオロアルコキシアルカン(化学式1)を含んでいる。
本実施の形態の(B)フッ素樹脂は、パーフルオロアルコキシアルカン(化学式1)を含んでいる。
パーフルオロアルコキシアルカンとは、パーフルオロアルキルビニルエーテルとテトラフルオロエチレンとの共重合体である。ここで、パーフルオロ(ペルフルオロ)アルキル基とは、アルキル基の水素(H)が全てフッ素(F)に置換されたものをいう。
特に、本実施の形態の(B)フッ素樹脂は、融点が300℃以上310℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンを含んでいる。融点が300℃以上310℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンの具体例としては、アルキル基(化学式1中のR)がパーフルオロエチル基であるパーフルオロアルコキシアルカン(融点:300〜310℃)があり、トリフルオロ(トリフルオロエトキシ)エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体が好ましい。
本実施の形態の(B)フッ素樹脂は、融点が300℃以上310℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンのみを含む単一のフッ素樹脂でもよいが、融点が300℃以上310℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンと、融点が300℃未満の別のフッ素樹脂とを併用することが好ましい。こうすることで、熱可塑性フッ素樹脂組成物の押し出し時の粘度が高くなりすぎないため、(A)フッ素ゴムが分散相で、(B)フッ素樹脂が連続層である相構造(いわゆる海島構造)を採りやすくなる。
本実施の形態の(B)フッ素樹脂において、融点が300℃以上310℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンと併用する、融点が300℃未満のフッ素樹脂は特に限定されるものではないが、相溶性の観点から、次に示す融点が300℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンが好ましい。
融点が300℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンとしては、例えば、アルキル基(化学式1中のR)がパーフルオロメチル基とパーフルオロプロピル基との両方を含むパーフルオロアルコキシアルカン(融点:280〜290℃)を用いることができる。具体的には、(B)フッ素樹脂は、トリフルオロ(トリフルオロメトキシ)エチレンおよび1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロ−3−[(トリフルオロエテニル)オキシ]プロパンと、テトラフルオロエチレンとの共重合体を用いることができる。
また、融点が300℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンとしては、他に例えば、アルキル基(化学式1中のR)がパーフルオロメチル基であるパーフルオロアルコキシアルカン(融点:265〜275℃)、具体的には、トリフルオロ(トリフルオロメトキシ)エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体を用いることができる。
<相溶化剤>
本実施の形態の(C)相溶化剤は、テトラフルオロエチレン(Tetrafluoroethylene:THF)/ヘキサフルオロプロピレン(Hexafluoropropylene:HFP)/フッ化ビニリデン(Vinylidene Fluoride:VdF)三元共重合体である。この三元共重合体において、テトラフルオロエチレン単位:ヘキサフルオロプロピレン単位:フッ化ビニリデン単位のモル比(%)が、30〜70:15〜40:10〜50(住友3M社製THVフルオロプラスチック(登録商標)等)のもの(比重が約1.90以上)が好ましい。
本実施の形態の(C)相溶化剤は、テトラフルオロエチレン(Tetrafluoroethylene:THF)/ヘキサフルオロプロピレン(Hexafluoropropylene:HFP)/フッ化ビニリデン(Vinylidene Fluoride:VdF)三元共重合体である。この三元共重合体において、テトラフルオロエチレン単位:ヘキサフルオロプロピレン単位:フッ化ビニリデン単位のモル比(%)が、30〜70:15〜40:10〜50(住友3M社製THVフルオロプラスチック(登録商標)等)のもの(比重が約1.90以上)が好ましい。
前記三元共重合体は、モノマー単位としてテトラフロロエチレンを含有する点で(B)フッ素樹脂と共通している。また、前記三元共重合体は、モノマー単位としてフッ化ビニリデンを含有するため、極性が(A)フッ素ゴムに近い。そのため、前記三元共重合体において、テトラフルオロエチレン単位のモル比が30%以上、かつ、フッ化ビニリデン単位のモル比が50%以下になると、この三元共重合体はフッ素ゴムとフッ素樹脂との中間的な性質を有する。この三元共重合体がフッ素樹脂としての性質を有することにより、(A)フッ素ゴムおよび(B)フッ素樹脂の(C)相溶化剤として作用する。そして、この三元共重合体は、結晶を持つため(C)相溶化剤として用いることにより、後述の架橋フッ素ゴムマスターバッチのように、熱可塑性フッ素樹脂組成物のペレット化が可能になる。
<架橋剤>
本実施の形態の架橋剤は、(D)ポリオール架橋剤を用いる。ポリオール架橋の詳細については後述する。(D)ポリオール架橋剤としては、例えば、ビスフェノールAF、ビスフェノールA、p,p′−ビフェノール、4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、ヒドロキノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、および、それらのアルカリ金属塩等が挙げられる。本実施の形態においては、耐熱性の観点から、芳香族系のポリオール、特にビスフェノールAFを使用するのが好ましい。
本実施の形態の架橋剤は、(D)ポリオール架橋剤を用いる。ポリオール架橋の詳細については後述する。(D)ポリオール架橋剤としては、例えば、ビスフェノールAF、ビスフェノールA、p,p′−ビフェノール、4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、ヒドロキノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、および、それらのアルカリ金属塩等が挙げられる。本実施の形態においては、耐熱性の観点から、芳香族系のポリオール、特にビスフェノールAFを使用するのが好ましい。
なお、ポリオール架橋反応においては、架橋剤だけでなく、以下に説明する架橋促進剤を併用することが好ましい。後述するように、ポリオール架橋反応を効率よく進行させるためには、ポリオール架橋反応の前に(A)フッ素ゴム中に二重結合を形成することが必要であり、そのためには、(A)フッ素ゴムの脱フッ化水素反応を架橋促進剤によって触媒する必要があるためである。
さらに、架橋促進剤に加えて、架橋促進助剤を併用することがより好ましい。脱フッ化水素反応ではフッ化水素が発生するため、このフッ化水素を架橋促進助剤としての受酸剤により中和する必要があるためである。
架橋剤および架橋促進(助)剤の量に特に制限はないが、意図する架橋の度合いおよび架橋促進(助)剤の種類等に応じて任意に決定することができる。ただし、架橋剤および架橋促進(助)剤の量が少なすぎる場合、架橋密度が低下し、前記(B)フッ素樹脂が連続相(海相)を形成しにくくなるとともに、押し出す際に、架橋された前記(A)フッ素ゴムからなる分散相(島相)同士が凝集し、ツブを発生するという問題が生じる。一方、架橋剤および架橋促進(助)剤が多すぎる場合、前記(A)フッ素ゴムの架橋密度が上昇することに伴い、生成された熱可塑性フッ素樹脂組成物の粘度が高すぎて、押し出し時の引落し性が低下するという問題が生じる。そのため、前記(A)フッ素ゴム100重量部に対し、架橋剤、架橋促進剤および架橋促進助剤をそれぞれ1〜10重量部添加することが好ましい。
<架橋促進剤>
本実施の形態の架橋促進剤は、前述したように、(A)フッ素ゴムの脱フッ化水素反応を触媒する脱フッ化水素触媒であり、例えば、オニウム塩(アンモニウム塩またはフォスフォニウム塩)やアミン等が好ましい。具体的には、架橋促進剤として、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(Benzyl triphenyl phosphonium chloride:BTPPC)等の有機ホスホニウム塩、テトラブチルアンモニウム=クロリド等の第4級アンモニウム塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン等を用いることがより好ましい。
本実施の形態の架橋促進剤は、前述したように、(A)フッ素ゴムの脱フッ化水素反応を触媒する脱フッ化水素触媒であり、例えば、オニウム塩(アンモニウム塩またはフォスフォニウム塩)やアミン等が好ましい。具体的には、架橋促進剤として、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(Benzyl triphenyl phosphonium chloride:BTPPC)等の有機ホスホニウム塩、テトラブチルアンモニウム=クロリド等の第4級アンモニウム塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン等を用いることがより好ましい。
<架橋促進助剤>
本実施の形態の架橋促進助剤は、前述したように、脱フッ化水素反応中に発生するフッ化水素を中和する受酸剤であり、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化鉛(PbO)等の金属酸化物が好ましい。また、これらの受酸剤を複数併用してもよい。ポリオール架橋反応後の熱可塑性フッ素樹脂組成物の圧縮永久ひずみ率が良好であることから、受酸剤としては高活性の酸化マグネシウムを用いることがより好ましい。また、水酸化カルシウムは、脱フッ化水素反応における脱フッ化水素触媒にオニウム塩を用いた場合に、その共触媒としても作用することから、受酸剤としては水酸化カルシウムを用いることも好ましい。
本実施の形態の架橋促進助剤は、前述したように、脱フッ化水素反応中に発生するフッ化水素を中和する受酸剤であり、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化鉛(PbO)等の金属酸化物が好ましい。また、これらの受酸剤を複数併用してもよい。ポリオール架橋反応後の熱可塑性フッ素樹脂組成物の圧縮永久ひずみ率が良好であることから、受酸剤としては高活性の酸化マグネシウムを用いることがより好ましい。また、水酸化カルシウムは、脱フッ化水素反応における脱フッ化水素触媒にオニウム塩を用いた場合に、その共触媒としても作用することから、受酸剤としては水酸化カルシウムを用いることも好ましい。
なお、酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウムを架橋促進助剤として用いる場合には、前記(A)フッ素ゴム100重量部に対し、1〜10重量部、特に2〜8重量部の酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウムを使用することが好ましい。
<動的架橋>
前述のように、動的架橋とは、各原料を混練しながら架橋反応を行う架橋法のことである。具体的には、本実施の形態において、(A)フッ素ゴム、(B)フッ素樹脂、および、(C)相溶化剤の混合物を混練しながら、架橋反応を進行させる。これにより、生成物である熱可塑性フッ素樹脂組成物中において、(A)フッ素ゴムが架橋される。
前述のように、動的架橋とは、各原料を混練しながら架橋反応を行う架橋法のことである。具体的には、本実施の形態において、(A)フッ素ゴム、(B)フッ素樹脂、および、(C)相溶化剤の混合物を混練しながら、架橋反応を進行させる。これにより、生成物である熱可塑性フッ素樹脂組成物中において、(A)フッ素ゴムが架橋される。
熱可塑性フッ素樹脂組成物中において、(A)フッ素ゴムが架橋されていると、(A)フッ素ゴムの分散径が小さくなり、(A)フッ素ゴムの比率が高い場合であっても(B)フッ素樹脂が連続相を形成しやすくなる。そのため、このような熱可塑性フッ素樹脂組成物は、押し出す際に(A)フッ素ゴムの凝集によるツブが発生しにくくなり、良好な引張特性および耐熱性を有する。
本実施の形態では、動的架橋方法として、ポリオール架橋反応を用いている。ポリオール架橋反応は、(i)オニウム塩(アンモニウム塩やフォスフォニウム塩等)を触媒として、フッ素ゴム分子鎖からフッ化水素を脱離させる(脱フッ化水素反応)ことにより、二重結合を形成し、(ii)フッ素ゴム分子鎖に形成された2以上の二重結合に、ビスフェノール化合物を付加させることにより、フッ素ゴム分子鎖内を、またはフッ素ゴム分子鎖間を架橋する反応である。この際、オニウム塩と共触媒である水酸化カルシウムを加えることにより、水酸化カルシウムが脱フッ化水素反応の触媒として作用する。
なお、動的架橋方法には、ポリオール架橋反応以外の方法も考えられる。しかし、一般的に使用される架橋剤のうち、ポリアミン架橋剤および過酸化物架橋剤は、(B)フッ素樹脂の融点よりも低い温度で行う必要があるため、(A)フッ素ゴム、(B)フッ素樹脂、および、(C)相溶化剤の混合物を混練することができず、本発明には適用できない。また、電子線を用いた電子線架橋は、そもそも混練下では使用できないため、本発明には適用できない。
また、本発明者の検討によれば、ポリオール架橋反応によって、(A)フッ素ゴムを架橋させるだけでなく、(C)相溶化剤も架橋させることができる。すなわち、本実施の形態の熱可塑性フッ素樹脂組成物においては、前記(C)相溶化剤も部分的に架橋されていてもよい。これにより、熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出す際のツブ発生を抑止することができるとともに、熱可塑性フッ素樹脂組成物の引張特性および耐熱性をさらに良好なものとすることができる。
<熱可塑性フッ素樹脂組成物の製造方法>
本実施の形態の熱可塑性フッ素樹脂組成物の製造工程は、図1に示すように、電線の製造工程中およびケーブルの製造工程中の(S1)樹脂組成物生成工程に相当する。そして、図2に示すように、前記(S1)樹脂組成物生成工程は、(S11)(A)フッ素ゴムと、(C)相溶化剤と、(E)架橋促進剤と、(F)架橋促進助剤(受酸剤)とを含む混合物を混練し、脱フッ化水素反応により(A)フッ素ゴム中に二重結合を形成する工程(二重結合形成工程)を含んでいる。そして、前記(S1)樹脂組成物生成工程は、(S12)前記(S11)二重結合形成工程の生成物(第1生成物)と、(B)フッ素樹脂とを混練する工程(フッ素樹脂混練工程)を含んでいる。そして、前記(S1)樹脂組成物生成工程は、(S13)前記(S12)フッ素樹脂混練工程の生成物(第2生成物)と、(D)ポリオール架橋剤とを混練し、前記(S12)フッ素樹脂混練工程の生成物中の(A)フッ素ゴムを動的架橋させる工程(動的架橋工程)を含んでいる。
本実施の形態の熱可塑性フッ素樹脂組成物の製造工程は、図1に示すように、電線の製造工程中およびケーブルの製造工程中の(S1)樹脂組成物生成工程に相当する。そして、図2に示すように、前記(S1)樹脂組成物生成工程は、(S11)(A)フッ素ゴムと、(C)相溶化剤と、(E)架橋促進剤と、(F)架橋促進助剤(受酸剤)とを含む混合物を混練し、脱フッ化水素反応により(A)フッ素ゴム中に二重結合を形成する工程(二重結合形成工程)を含んでいる。そして、前記(S1)樹脂組成物生成工程は、(S12)前記(S11)二重結合形成工程の生成物(第1生成物)と、(B)フッ素樹脂とを混練する工程(フッ素樹脂混練工程)を含んでいる。そして、前記(S1)樹脂組成物生成工程は、(S13)前記(S12)フッ素樹脂混練工程の生成物(第2生成物)と、(D)ポリオール架橋剤とを混練し、前記(S12)フッ素樹脂混練工程の生成物中の(A)フッ素ゴムを動的架橋させる工程(動的架橋工程)を含んでいる。
また、前記(S11)二重結合形成工程では、脱フッ化水素反応により(C)相溶化剤中にも二重結合が形成され、前記(S13)動的架橋工程では、前記(S12)フッ素樹脂混練工程の生成物中の(C)相溶化剤をも動的架橋される。
前記(S11)二重結合形成工程の温度は、脱フッ化水素反応が進行する温度以上であって、(A)フッ素ゴムが熱分解する温度よりも低い。前記(S12)フッ素樹脂混練工程の温度は、(B)フッ素樹脂の融点よりも10〜30℃高い。その結果、前記(S12)フッ素樹脂混練工程の温度は、前記(S11)二重結合形成工程の温度よりも高い。
前記(S11)二重結合形成工程では、(A)フッ素ゴムおよび(C)相溶化剤の脱フッ化水素反応が、(E)架橋促進剤によって促進されて進行し、(A)フッ素ゴム中および(C)相溶化剤中に二重結合が形成される。なお、前記(S11)二重結合形成工程では、脱フッ化水素反応によって発生するフッ化水素が(F)架橋促進助剤(受酸剤)によって中和され除去されるため、(F)架橋促進助剤も脱フッ化水素反応を促進させる。そのため、前記(S11)二重結合形成工程において、(F)架橋促進助剤(受酸剤)を添加することは必須ではないが、(F)架橋促進助剤(受酸剤)を添加することが好ましい。
前記(S12)フッ素樹脂混練工程では、二重結合が形成された(A)フッ素ゴムおよび(C)相溶化剤と、(B)フッ素樹脂とが混練され、(B)フッ素樹脂中に、二重結合が形成された(A)フッ素ゴムおよび(C)相溶化剤が分散された状態になる。また、前記(S12)フッ素樹脂混練工程の温度は前記(S11)二重結合形成工程の温度よりも高いため、前記(S11)二重結合形成工程において反応しなかった(E)架橋促進剤が存在する場合には、前記(S12)フッ素樹脂混練工程において、完全に消費される。
前記(S13)動的架橋工程では、二重結合が形成された(A)フッ素ゴムおよび(C)相溶化剤の架橋反応が、(D)ポリオール架橋剤によって進行する。
以上の前記(S11)二重結合形成工程〜前記(S13)動的架橋工程により、架橋された前記(A)フッ素ゴムが分散相(島相)で、前記(B)フッ素樹脂が連続相(海相)となる熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成することができる。
本実施の形態の熱可塑性フッ素樹脂組成物を製造するための混練装置は、例えば、バンバリーミキサーや加圧ニーダーなどのバッチ式混練機、二軸押出機などの連続式混練機等の公知の混練装置を採用することができる。
本実施の形態の熱可塑性フッ素樹脂組成物の製造方法の具体例として、融点が301℃の(B)フッ素樹脂を用いる場合を例に説明する。まず、(S11)二重結合形成工程では、加圧ニーダーにより、200〜240℃の温度で、(A)フッ素ゴム(未架橋フッ素ゴム)、(C)相溶化剤、(E)架橋促進剤、(F)架橋促進助剤(受酸剤)、着色剤等を3〜5分混練し、ペレット(以下、フッ素ゴムマスターバッチと称する)を生成する。
次に、(S12)フッ素樹脂混練工程では、二軸押出機により、310〜330℃の温度で、前記(S11)二重結合形成工程で生成されたフッ素ゴムマスターバッチと、(B)フッ素樹脂とを、混練物がほぼ均一となるまで3〜5分混練する。
次に、(S13)動的架橋工程では、前記(S12)フッ素樹脂混練工程で生成された混練物(生成物)と、(D)ポリオール架橋剤とを3〜5分混練する。以上より、目的の熱可塑性フッ素樹脂組成物を得ることができる。
なお、例えば、押し出し方向に沿って互いに離間する第1投入口および第2投入口が存在する二軸押出機などの連続式混練機の場合、前記第1投入口からフッ素ゴムマスターバッチと(B)フッ素樹脂とを投入し、前記第2投入口から(D)ポリオール架橋剤を投入することにより、前記(S12)フッ素樹脂混練工程と前記(S13)動的架橋工程とを一つの混練装置で連続して行うことができる。
また、熱可塑性フッ素樹脂組成物の製造工程は、上記した工程を含むことが好ましいが、本実施の形態の熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成できる工程であれば、上記した工程に限定されるものではない。
<本実施の形態の電線およびケーブルの製造方法の特徴と効果>
本発明の一実施の形態に係る電線の製造方法の特徴の一つは、(S21)導体の周囲を被覆するように、熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出す工程(押出工程)と、(S22)前記(S21)押出工程によって押し出された前記熱可塑性フッ素樹脂組成物を引き落として、前記導体の周囲に絶縁層を形成する工程(引落工程)とを含むことである。
本発明の一実施の形態に係る電線の製造方法の特徴の一つは、(S21)導体の周囲を被覆するように、熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出す工程(押出工程)と、(S22)前記(S21)押出工程によって押し出された前記熱可塑性フッ素樹脂組成物を引き落として、前記導体の周囲に絶縁層を形成する工程(引落工程)とを含むことである。
また、本発明の一実施の形態に係るケーブルの製造方法の特徴の一つは、(S21)電線を含むコアの周囲を被覆するように、熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出す工程(押出工程)と、(S22)前記(S21)押出工程によって押し出された前記熱可塑性フッ素樹脂組成物を引き落として、前記コアの周囲にシースを形成する工程(引落工程)とを含むことである。
そして、これらの製造方法において、前記熱可塑性フッ素樹脂組成物は、フッ素ゴムと、フッ素樹脂と、相溶化剤とを含み、前記フッ素樹脂は、融点が300℃以上310℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンを含み、前記熱可塑性フッ素樹脂組成物中において前記フッ素ゴムが動的架橋により架橋されている。前記(S21)押出工程は、前記パーフルオロアルコキシアルカンの融点以上かつ前記融点+10℃未満の温度で行われる。
本実施の形態では、このような工程を採用したことにより、パーフルオロアルコキシアルカンを含む熱可塑性フッ素樹脂組成物を用いた電線およびケーブルの製造方法において、機械特性および耐熱性に優れた電線およびケーブルを製造することができる。以下、その理由について具体的に説明する。
前述したように、融点が300℃程度のパーフルオロアルコキシアルカンを含む熱可塑性フッ素樹脂組成物を用いた電線およびケーブルを製造する場合において、320℃で熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出すと、発泡により被覆材の外観が荒れたり、ツブが生じたりする場合があった(前述の検討例1)。また、300℃で熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出すと、(A)フッ素ゴムが連続相で、(B)フッ素樹脂が分散相である相構造(いわゆる島海構造)を採り、十分な機械特性および耐熱性が得られない場合があった(前述の検討例2)。
そこで、本実施の形態の電線およびケーブルの製造方法では、前記(S21)押出工程を前記パーフルオロアルコキシアルカンの融点以上かつ前記融点+10℃未満の温度で行い、かつ、前記(S21)押出工程に加え、(S22)引落工程を有している。このように、本実施の形態では、前記(S21)押出工程の温度を300℃程度にすることによって、検討例1の問題であった発泡を抑制し、被覆材の外観が荒れたり、ツブが生じたりするのを防止することができる。
また、今般、本発明者は、300℃程度で押し出されて、いわゆる島海構造を採っていた前記熱可塑性フッ素樹脂組成物が、引き落とされる(延伸される)ことによって相構造が反転し、(A)フッ素ゴムが分散相で、(B)フッ素樹脂が連続層である相構造(いわゆる海島構造)となることを見出した。すなわち、本実施の形態では、前記(S21)押出工程の後に(S22)引落工程を有することで、検討例2の相構造の問題を解消し、機械特性および耐熱性に優れた電線およびケーブルを製造することができる。
また、本実施の形態の電線およびケーブルに用いる熱可塑性フッ素樹脂組成物は、前記(S11)二重結合形成工程〜前記(S13)動的架橋工程により、生成することが好ましい。以下、その理由について説明する。
本実施の形態では、前記(S11)二重結合工程において、(B)フッ素樹脂および(D)ポリオール架橋剤が存在しない状態で、(A)フッ素ゴム中および(C)相溶化剤中に二重結合を形成している。そして、前記(S12)フッ素樹脂混練工程において、(D)ポリオール架橋剤が存在しない状態で、二重結合が形成された(A)フッ素ゴムおよび(C)相溶化剤と(B)フッ素樹脂とを十分に混練している。そして、前記(S13)動的架橋工程において、(A)フッ素ゴム、(B)フッ素樹脂、および、(C)相溶化剤の混練が十分なされてから、架橋反応を進行させている。
前述したように、動的架橋方法の一つであるポリオール架橋反応は、(i)二重結合形成工程および(ii)架橋工程の2つの工程を含んでいる。本実施の形態では、ポリオール架橋反応を、前記(i)工程に相当する前記(S11)二重結合形成工程と、前記(ii)工程に相当する前記(S13)動的架橋工程とに分けている。そして、前記(S11)二重結合形成工程では、(B)フッ素樹脂および(D)ポリオール架橋剤を加えていない。こうすることで、前記(S1)工程の反応温度を、(B)フッ素樹脂の融点に合わせて高温にする必要がない。そのため、本実施の形態では、前記(S11)二重結合形成工程の温度を脱フッ化水素反応が十分に進行する180〜220℃程度に抑えることができるため、脱フッ化水素反応が爆発的に起こってフッ素ゴムが熱分解するという事態を防止することができる。
また、本実施の形態において、脱フッ化水素反応は、前記(S11)二重結合形成工程で完了する。そのため、前記(S13)動的架橋工程において、ポリオール架橋反応を行う温度を(B)フッ素樹脂の融点に合わせて320℃程度としても、(A)フッ素ゴムの熱分解はほとんど起こらない。以上より、本実施の形態では、融点が300℃以上のフッ素樹脂を用いた場合でも、フッ素ゴムの熱分解を抑制することができる。
また、本実施の形態では、前記(S11)二重結合形成工程と前記(S13)動的架橋工程との間に、前記(S12)フッ素樹脂混練工程を設け、前記(S12)フッ素樹脂混練工程において、(D)ポリオール架橋剤が存在しない状態で、二重結合が形成された(A)フッ素ゴムおよび(C)相溶化剤と(B)フッ素樹脂とを十分に混練している。こうすることで、(A)フッ素ゴム、(B)フッ素樹脂、および、(C)相溶化剤の混合物の混練がある程度なされてから、架橋反応を進行させることができる。
以上より、本実施の形態の電線およびケーブルに用いる熱可塑性フッ素樹脂組成物を、前記(S11)二重結合形成工程〜前記(S13)動的架橋工程により生成することによって、機械特性および耐熱性に優れた熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成することができる。
(実施例)
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1および実施例2の概要]
以下、実施例1および実施例2について説明する。実施例1および実施例2は、上記した本実施の形態の製造方法によって製造された電線であって、図4に示す電線10に対応する。
以下、実施例1および実施例2について説明する。実施例1および実施例2は、上記した本実施の形態の製造方法によって製造された電線であって、図4に示す電線10に対応する。
<実施例1および実施例2の構成>
図4に示す導体1として、断面積が2mm2のニッケルメッキ撚り導体を用いた。また、実施例1および実施例2の絶縁層2を構成する熱可塑性フッ素樹脂組成物を構成する原材料は次の通りである。
図4に示す導体1として、断面積が2mm2のニッケルメッキ撚り導体を用いた。また、実施例1および実施例2の絶縁層2を構成する熱可塑性フッ素樹脂組成物を構成する原材料は次の通りである。
(A)フッ素ゴム:DS246(ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン二元共重合体、中国製、比重1.86、ムーニ粘度75)
(B)フッ素樹脂:
(B1)F1540(トリフルオロ(トリフルオロメトキシ)エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体、ソルベイ社製、MFR(メルトマスフローレート)8〜18g/10min、融点270℃)
(B2)M640(トリフルオロ(トリフルオロメトキシ)エチレンおよび1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロ−3−[(トリフルオロエテニル)オキシ]プロパンと、テトラフルオロエチレンとの共重合体、ソルベイ社製、MFR10〜17g/10min、融点285℃)
(B3)AP−201(トリフルオロ(トリフルオロエトキシ)エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体、ダイキン工業社製、MFR20〜30g/10min、融点301℃)
(C)相溶化剤:
(C1)THV−500GZ(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン三元共重合体、3M社製、MFR10g/10min、融点165℃)
(C2)THV−221GZ(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン三元共重合体、3M社製、MFR20g/10min、融点120℃)
(D)ポリオール架橋剤:キュラティブ30マスターバッチ(ジヒドロキシ芳香族化合物(ポリオール架橋剤)50%およびフッ素ゴム50%の混合物、デュポン社製)
(E)架橋促進剤:キュラティブ20マスターバッチ(ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(架橋促進剤)33%およびフッ素ゴム67%の混合物、デュポン社製)
(F)架橋促進助剤(受酸剤):酸化マグネシウム(MgO)
ここで、表1には実施例で使用する(B)フッ素樹脂である(B1)F1540、(B2)M640および(B3)AP−201の物性値の詳細をまとめた。
(B)フッ素樹脂:
(B1)F1540(トリフルオロ(トリフルオロメトキシ)エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体、ソルベイ社製、MFR(メルトマスフローレート)8〜18g/10min、融点270℃)
(B2)M640(トリフルオロ(トリフルオロメトキシ)エチレンおよび1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロ−3−[(トリフルオロエテニル)オキシ]プロパンと、テトラフルオロエチレンとの共重合体、ソルベイ社製、MFR10〜17g/10min、融点285℃)
(B3)AP−201(トリフルオロ(トリフルオロエトキシ)エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体、ダイキン工業社製、MFR20〜30g/10min、融点301℃)
(C)相溶化剤:
(C1)THV−500GZ(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン三元共重合体、3M社製、MFR10g/10min、融点165℃)
(C2)THV−221GZ(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン三元共重合体、3M社製、MFR20g/10min、融点120℃)
(D)ポリオール架橋剤:キュラティブ30マスターバッチ(ジヒドロキシ芳香族化合物(ポリオール架橋剤)50%およびフッ素ゴム50%の混合物、デュポン社製)
(E)架橋促進剤:キュラティブ20マスターバッチ(ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(架橋促進剤)33%およびフッ素ゴム67%の混合物、デュポン社製)
(F)架橋促進助剤(受酸剤):酸化マグネシウム(MgO)
ここで、表1には実施例で使用する(B)フッ素樹脂である(B1)F1540、(B2)M640および(B3)AP−201の物性値の詳細をまとめた。
表2にはフッ素ゴムマスターバッチ1(MB1)およびフッ素ゴムマスターバッチ2(MB2)の詳細をまとめた。
表2に示すように、フッ素ゴムマスターバッチ1およびフッ素ゴムマスターバッチ2は、(A)フッ素ゴム、(C)相溶化剤、(E)架橋促進剤および(F)架橋促進助剤を混練し、(A)フッ素ゴム中および(C)相溶化剤中に二重結合を形成させた後にペレット化したものである。なお、フッ素ゴムマスターバッチ2は、(C)相溶化剤を2種類とし、かつ、合計で(C)相溶化剤をフッ素ゴムマスターバッチ1の4倍配合し、その分、(A)フッ素ゴムを減らしており、これらの点が、フッ素ゴムマスターバッチ1との相違点である。
また、実施例1および実施例2では、表2に示すフッ素ゴムマスターバッチ1およびフッ素ゴムマスターバッチ2のペレットを作製し、その後、フッ素樹脂等をドライブレンドすることにより熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成している。表3には、各原材料の配合率を示している。実施例1および実施例2では、合計体積が50mL程度となるような量にて使用した。なお、表3中、フッ素ゴムを「FKM」と、フッ素樹脂を「PFA」と、それぞれ表している。
表2および表3に示すように、実施例1および実施例2において、(B)フッ素樹脂、(E)架橋促進剤および(F)架橋促進助剤の配合量は同じである。また、表3に示すように、実施例1および実施例2において、(D)ポリオール架橋剤の量は同じである。一方、実施例1には、フッ素ゴムマスターバッチ1を用いており、実施例2には、フッ素ゴムマスターバッチ2を用いた。その結果、実施例1は、実施例2よりも全成分に対する(A)フッ素ゴムの比率が高い。実施例1は、実施例2よりも全成分に対する(A)フッ素ゴムの比率が高い。一方、実施例2は、実施例1よりも全成分に対する(C)相溶化剤の比率が高い。
<実施例1および実施例2の製造方法>
実施例1および実施例2のサンプルは、以下の方法で作製した。各条件は一例である。
実施例1および実施例2のサンプルは、以下の方法で作製した。各条件は一例である。
(a)マスターバッチ作製工程(本実施の形態の二重結合形成工程(S11)に相当)
(A)フッ素ゴム、(C)相溶化剤、(E)架橋促進剤および(F)架橋促進助剤(受酸剤)を、160℃に設定した3Lの加圧ニーダーに投入し、ローター回転数35rpmで混練した。ここで、自己発熱によりコンパウンド温度が200℃に上昇するため、コンパウンド温度が200℃に到達した時点で、コンパウンド温度が200℃で保持されるようにローター回転数を調整し、その後10分間混練した。ここで、コンパウンド中の(A)フッ素ゴムおよび(C)相溶化剤中に二重結合が形成されるに従って、コンパウンドの色相が褐色を帯びるため、コンパウンドの色相に基づいて、二重結合形成反応の進行を確認した。
(A)フッ素ゴム、(C)相溶化剤、(E)架橋促進剤および(F)架橋促進助剤(受酸剤)を、160℃に設定した3Lの加圧ニーダーに投入し、ローター回転数35rpmで混練した。ここで、自己発熱によりコンパウンド温度が200℃に上昇するため、コンパウンド温度が200℃に到達した時点で、コンパウンド温度が200℃で保持されるようにローター回転数を調整し、その後10分間混練した。ここで、コンパウンド中の(A)フッ素ゴムおよび(C)相溶化剤中に二重結合が形成されるに従って、コンパウンドの色相が褐色を帯びるため、コンパウンドの色相に基づいて、二重結合形成反応の進行を確認した。
その後、加圧ニーダーから生成物を取り出し、140℃に設定した8インチロールにかけ、厚さ2〜3mmのシートを作製した。これを空冷した後に、ペレタイザーにより、作製したシートを2〜3mm角に切断し、フッ素ゴムマスターバッチ1のペレットを作製した。
(b)ドライブレンド工程(本実施の形態のフッ素樹脂混練工程(S12)に相当)
フッ素ゴムマスターバッチ1のペレットと(B)フッ素樹脂とを表3に示す比率でドライブレンドし、ハステロイ製の異方向20mm二軸押出機を用いて、溶融混練し、ストランド状に押し出し、水冷した。
フッ素ゴムマスターバッチ1のペレットと(B)フッ素樹脂とを表3に示す比率でドライブレンドし、ハステロイ製の異方向20mm二軸押出機を用いて、溶融混練し、ストランド状に押し出し、水冷した。
なお、二軸押出機において、スクリュー直径Dとスクリュー長さLとの比率L/Dを25と、スクリューの回転数を120rpmとした。また、実施例1および実施例2については、4つのシリンダーの温度を、ホッパー側から260℃、300℃、320℃、320℃とした。このように生成された押し出しストランドは、ペレタイザーでカットし、80℃で24時間乾燥させ、未架橋のフッ素樹脂組成物のペレットを作製した。
(c)架橋工程(本実施の形態の動的架橋工程(S13)に相当)
(b)工程で作製した未架橋フッ素樹脂組成物のペレットと、(D)ポリオール架橋剤とを、表3に示す比率でドライブレンドし、ハステロイ製の異方向20mm二軸押出機を用いて、溶融混練し、ストランド状に押し出し、水冷した。なお、二軸押出機のスクリューおよびシリンダーの温度等の条件は、前記(2)ドライブレンド工程と同じである。
(b)工程で作製した未架橋フッ素樹脂組成物のペレットと、(D)ポリオール架橋剤とを、表3に示す比率でドライブレンドし、ハステロイ製の異方向20mm二軸押出機を用いて、溶融混練し、ストランド状に押し出し、水冷した。なお、二軸押出機のスクリューおよびシリンダーの温度等の条件は、前記(2)ドライブレンド工程と同じである。
このように生成された押し出しストランドは、ペレタイザーでカットし、230℃で2時間加熱乾燥させ、架橋されたフッ素樹脂組成物(熱可塑性フッ素樹脂組成物)のペレットを作製した。
(d)被覆工程(本実施の形態の被覆工程(S2)に相当)
20mm単軸の押出機(ブラベンダー社製、図6の押出被覆装置21)のダイス(図6および図7のダイス27)に、ニッケルメッキ撚り導体(19/0.287mm、導体径1.5mmφ、図6および図7の導体1)を挿通させた。その後、(c)工程で作製した、架橋されたフッ素樹脂組成物(熱可塑性フッ素樹脂組成物)のペレットを、押出機のホッパー(図6のホッパー22)から投入した。その後、溶融した熱可塑性フッ素樹脂組成物(図7の熱可塑性フッ素樹脂組成物6)をチューブ状に押し出し、かつ、真空に引きながら引落し、前記ニッケルメッキ撚り導体の周囲に厚さ0.5mmの絶縁層(図7の絶縁層2)を形成することにより、外径2.5mmφの電線(図4、図6および図7の電線10)を作製した。
20mm単軸の押出機(ブラベンダー社製、図6の押出被覆装置21)のダイス(図6および図7のダイス27)に、ニッケルメッキ撚り導体(19/0.287mm、導体径1.5mmφ、図6および図7の導体1)を挿通させた。その後、(c)工程で作製した、架橋されたフッ素樹脂組成物(熱可塑性フッ素樹脂組成物)のペレットを、押出機のホッパー(図6のホッパー22)から投入した。その後、溶融した熱可塑性フッ素樹脂組成物(図7の熱可塑性フッ素樹脂組成物6)をチューブ状に押し出し、かつ、真空に引きながら引落し、前記ニッケルメッキ撚り導体の周囲に厚さ0.5mmの絶縁層(図7の絶縁層2)を形成することにより、外径2.5mmφの電線(図4、図6および図7の電線10)を作製した。
なお、スクリュー直径Dとスクリュー長さLとの比率L/Dを25とした。また、3つのシリンダーの温度は、ホッパー側から230℃、280℃、300℃とし、ヘッドの温度は312℃とし、ダイスの温度は315℃とした。実施例1および実施例2において使用している(B)フッ素樹脂のうち、最も融点の高いものは、(B3)AP−201(融点301℃)である。そのため、(S21)押出工程を含む(d)被覆工程の処理温度Tは、301℃≦T<311℃という関係を満たせばよい。そして、前述したように、熱可塑性フッ素樹脂組成物のせん断によっても熱が生じることから、(d)被覆工程の処理温度Tが上記条件を満たすように、シリンダー28、ヘッド25およびダイス27の設定温度は、(d)被覆工程の処理温度Tよりも5〜10℃程度低くすることが好適である。そのため、ヘッド25、ダイス27およびこれらに近いシリンダー28の設定温度は、300℃としている。
また、スクリューの回転数を10rpmとした。ダイス(図6および図7のダイス27)は、7mmφ(図7の吐出口の孔径Dd)×ランド(図7のランドLd)5mmとした。また、ニップル(図7のニップル29)は、3.5mmφ(図7の吐出口の外径Dg)×ランド(図7のランドLg)10mmとした。
[比較例1および比較例2の概要]
以下、比較例1および比較例2について説明する。比較例1および比較例2は、上記した検討例2の製造方法によって製造された電線であって、図8に示す電線100に対応する。
以下、比較例1および比較例2について説明する。比較例1および比較例2は、上記した検討例2の製造方法によって製造された電線であって、図8に示す電線100に対応する。
<比較例1および比較例2の構成>
比較例1の構成は、実施例1と同様であり、比較例2の構成は、実施例2と同様であるため、繰り返しの説明を省略する。
比較例1の構成は、実施例1と同様であり、比較例2の構成は、実施例2と同様であるため、繰り返しの説明を省略する。
<比較例1および比較例2の製造方法>
比較例1および比較例2のサンプルは、以下の方法で作製した。比較例1および比較例2の(a)マスターバッチ作製工程、(b)ドライブレンド工程および(c)架橋工程は、実施例1および実施例2と同様である。一方、比較例1および比較例2は、(d)被覆工程において、熱可塑性フッ素樹脂組成物を引き落とさない点が、実施例1および実施例2との相違点である。
比較例1および比較例2のサンプルは、以下の方法で作製した。比較例1および比較例2の(a)マスターバッチ作製工程、(b)ドライブレンド工程および(c)架橋工程は、実施例1および実施例2と同様である。一方、比較例1および比較例2は、(d)被覆工程において、熱可塑性フッ素樹脂組成物を引き落とさない点が、実施例1および実施例2との相違点である。
(d)被覆工程
20mm単軸の押出機のダイス(図6および図8のダイス33)に、ニッケルメッキ撚り導体を挿通させた。その後、上記(c)工程で作製した、架橋されたフッ素樹脂組成物(熱可塑性フッ素樹脂組成物)のペレットを、押出機のホッパーから投入した。その後、溶融した熱可塑性フッ素樹脂組成物(図8の熱可塑性フッ素樹脂組成物6)をチューブ状に押し出し、引き落とすことなく、前記ニッケルメッキ撚り導体の周囲に厚さ0.5mmの絶縁層(図8の絶縁層200)を形成することにより、外径2.5mmφの電線(図8の電線100)を作製した。
20mm単軸の押出機のダイス(図6および図8のダイス33)に、ニッケルメッキ撚り導体を挿通させた。その後、上記(c)工程で作製した、架橋されたフッ素樹脂組成物(熱可塑性フッ素樹脂組成物)のペレットを、押出機のホッパーから投入した。その後、溶融した熱可塑性フッ素樹脂組成物(図8の熱可塑性フッ素樹脂組成物6)をチューブ状に押し出し、引き落とすことなく、前記ニッケルメッキ撚り導体の周囲に厚さ0.5mmの絶縁層(図8の絶縁層200)を形成することにより、外径2.5mmφの電線(図8の電線100)を作製した。
なお、比較例1および比較例2において、スクリュー直径Dとスクリュー長さLとの比率L/D、3つのシリンダー、ヘッドおよびダイスの温度は、実施例1および実施例2と同じである。一方、比較例1および比較例2において、スクリューの回転数を5rmpとした。また、ダイス(図6および図8のダイス33)は、2.5mmφ(図8の吐出口の孔径Dd)×ランド(図8のランドLd)3mmとした。また、ニップル(図8のニップル32)は、内径1.8mmとした。
[実施例および比較例の評価方法]
(1)外観
電線サンプルの外観を目視等により評価した。具体的には、表面状態について、十分に平滑であるものを「○」(合格)、著しい表面荒れが発生しているものを「×」(不良)とした。
(1)外観
電線サンプルの外観を目視等により評価した。具体的には、表面状態について、十分に平滑であるものを「○」(合格)、著しい表面荒れが発生しているものを「×」(不良)とした。
(2)相構造(初期)
相構造を次のように評価した。電線から導体を引き抜いたチューブ状サンプル(絶縁層のみ)を、カミソリによって厚さ1mm程度の輪切り状にしたキャピロ押し出しストランドサンプルを、走査電子顕微鏡(Scanning electron microscope:SEM)により、加速電圧15kV、真空度30Pa、拡大倍率1000倍の条件で観察した。表3においては、相構造をフッ素樹脂−フッ素ゴムの順に記載した。例えば(A)フッ素ゴムが分散相(島相)で、(B)フッ素樹脂が連続層(海相)である相構造を“海-島”と記載した。
相構造を次のように評価した。電線から導体を引き抜いたチューブ状サンプル(絶縁層のみ)を、カミソリによって厚さ1mm程度の輪切り状にしたキャピロ押し出しストランドサンプルを、走査電子顕微鏡(Scanning electron microscope:SEM)により、加速電圧15kV、真空度30Pa、拡大倍率1000倍の条件で観察した。表3においては、相構造をフッ素樹脂−フッ素ゴムの順に記載した。例えば(A)フッ素ゴムが分散相(島相)で、(B)フッ素樹脂が連続層(海相)である相構造を“海-島”と記載した。
(3)引張特性(初期)
機械特性を次のように評価した。電線から導体を引き抜いたチューブ状サンプル(絶縁層のみ)に対して、市販の引張試験機を用いて引張速度200mm/minで引っ張り、引張強さ(最大応力)(表3中、TSで表す)、全伸び(破断伸び)(表3中、TEで表す)および100%モジュラス(表3中、100%Mで表す)を測定した。ここで、引張強さとは、試験中に加わった最大の力に対応する応力である。全伸びとは、破断後の永久伸びを元の長さに対して百分率で表した値である。100%モジュラスとは、試験片が100%伸長した時点での応力である。引張強さ(TS)が10MPa以上であれば“合格”、10MPaに満たない場合は“不良”と考えることができる。また、全伸び(TE)が300%以上であれば“合格”、300%に満たない場合は“不良”と考えることができる。
機械特性を次のように評価した。電線から導体を引き抜いたチューブ状サンプル(絶縁層のみ)に対して、市販の引張試験機を用いて引張速度200mm/minで引っ張り、引張強さ(最大応力)(表3中、TSで表す)、全伸び(破断伸び)(表3中、TEで表す)および100%モジュラス(表3中、100%Mで表す)を測定した。ここで、引張強さとは、試験中に加わった最大の力に対応する応力である。全伸びとは、破断後の永久伸びを元の長さに対して百分率で表した値である。100%モジュラスとは、試験片が100%伸長した時点での応力である。引張強さ(TS)が10MPa以上であれば“合格”、10MPaに満たない場合は“不良”と考えることができる。また、全伸び(TE)が300%以上であれば“合格”、300%に満たない場合は“不良”と考えることができる。
(4)引張特性(加熱後):耐熱性
耐熱性を次のように評価した。電線から導体を引き抜いたチューブ状サンプル(絶縁層のみ)を、280℃にて30日加熱した後に、市販の引張試験機を用いて引張速度200mm/minで引っ張り、引張強さ(TS)および全伸び(TE)を測定した。この加熱後の全伸び(TE)が300以上であれば耐熱性が“合格”、300%に満たない場合は“不良”と考えることができる。
耐熱性を次のように評価した。電線から導体を引き抜いたチューブ状サンプル(絶縁層のみ)を、280℃にて30日加熱した後に、市販の引張試験機を用いて引張速度200mm/minで引っ張り、引張強さ(TS)および全伸び(TE)を測定した。この加熱後の全伸び(TE)が300以上であれば耐熱性が“合格”、300%に満たない場合は“不良”と考えることができる。
[実施例および比較例の評価結果]
以上の測定結果を表3および図9にまとめた。図9は、実施例1、実施例2、比較例1および比較例2のチューブ状サンプル(絶縁層のみ)の横断面の走査電子顕微鏡像である。図9中、aは実施例1、bは実施例2、cは比較例1、dは比較例2に、それぞれ対応している。
以上の測定結果を表3および図9にまとめた。図9は、実施例1、実施例2、比較例1および比較例2のチューブ状サンプル(絶縁層のみ)の横断面の走査電子顕微鏡像である。図9中、aは実施例1、bは実施例2、cは比較例1、dは比較例2に、それぞれ対応している。
表3に示すように、実施例1および実施例2において、(1)外観、(2)相構造(初期)、(3)引張特性(初期)および(4)引張特性(加熱後)はいずれも良好であった。
また、図9に示すように、実施例1および実施例2(領域a〜b)において、チューブ状サンプルの(2)相構造は、海島構造、すなわち、(B)フッ素樹脂が連続相であり、架橋された(A)フッ素ゴムが分散相であった。また、実施例1および実施例2(図9中領域a〜b)において、架橋された(A)フッ素ゴムの分散径も約10μmと小さくなっている。
一方、表3に示すように、比較例1および比較例2において、(1)外観は荒れが見られ、(2)相構造(初期)、(3)引張特性(初期)および(4)引張特性(加熱後)はいずれも不良であった。
また、図9に示すように、比較例1および比較例2(領域c〜d)において、チューブ状サンプルの(2)相構造は、島海構造、すなわち、(B)フッ素樹脂が分散相であり、架橋された(A)フッ素ゴムが連続相であった。
[実施例のまとめ]
実施例1および実施例2の(1)外観が良好であったことから、本実施の形態の電線の製造方法において、前記(S21)押出工程の温度を300℃程度にすることによって、発泡を抑制し、被覆材の外観が荒れたり、ツブが生じたりするのを防止できることが確認できた。
実施例1および実施例2の(1)外観が良好であったことから、本実施の形態の電線の製造方法において、前記(S21)押出工程の温度を300℃程度にすることによって、発泡を抑制し、被覆材の外観が荒れたり、ツブが生じたりするのを防止できることが確認できた。
また、比較例1および比較例2に示すように、(S21)押出工程の温度を300℃程度にして、かつ、引き落とさない場合には、絶縁層を構成する熱可塑性フッ素樹脂組成物が、(A)フッ素ゴムが連続層で、(B)フッ素樹脂が分散層である相構造(いわゆる島海構造)を採ることを確認した。そして、このような相構造を有する熱可塑性フッ素樹脂組成物においては、引張強さが10MPaに満たず、全伸びも300%に満たない場合があることを確認した。そして、パーフルオロアルコキシアルカンを含む熱可塑性フッ素樹脂組成物からなる絶縁層であっても、280℃にて30日加熱すると伸びが著しく低下することを確認した。
それに対して、実施例1および実施例2では、(A)フッ素ゴムが連続層で、(B)フッ素樹脂が分散層である相構造(いわゆる島海構造)を有する熱可塑性フッ素樹脂組成物が、引き落とされる(延伸される)ことによって相構造が反転し、(A)フッ素ゴムが分散相で、(B)フッ素樹脂が連続層である相構造(いわゆる海島構造)となることを確認した。そして、このような相構造を有する熱可塑性フッ素樹脂組成物においては、引張強さが10MPaを超え、かつ、全伸びも300%を超えることを確認した。さらに、280℃にて30日加熱した場合であっても、10MPaを超える引張強さ、および、300%を超える全伸びを維持できることを確認した。
また、実施例1および実施例2に示すように、本実施の形態によれば、(C)相溶化剤の種類、(A)フッ素ゴムおよび(C)相溶化剤の配合比率にかかわらず、機械特性および耐熱性に優れた電線を製造できることを確認した。特に、実施例1および実施例2に示すように、(A)フッ素ゴムおよび(C)相溶化剤と、(B)フッ素樹脂とが等量で配合されている場合であっても、架橋された(A)フッ素ゴムが分散相(島相)で、(B)フッ素樹脂が連続相(海相)となる熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成することができる。
本発明は前記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
1 導体
2,200 絶縁層
3 介在
4 シース
5 コア
6 フッ素樹脂組成物
10,100 電線
11 ケーブル
21 押出被覆装置
22 ホッパー
23 スクリュー
24 ブレーカプレート
25 ヘッド
26 ネック
27,33 ダイス
28 シリンダー
29 ニップル
2,200 絶縁層
3 介在
4 シース
5 コア
6 フッ素樹脂組成物
10,100 電線
11 ケーブル
21 押出被覆装置
22 ホッパー
23 スクリュー
24 ブレーカプレート
25 ヘッド
26 ネック
27,33 ダイス
28 シリンダー
29 ニップル
Claims (12)
- (a)導体の周囲を被覆するように、熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出す工程、
(b)前記(a)工程によって押し出された前記熱可塑性フッ素樹脂組成物を引き落として、前記導体の周囲に絶縁層を形成する工程、
を含み、
前記熱可塑性フッ素樹脂組成物は、フッ素ゴムと、フッ素樹脂と、相溶化剤とを含み、
前記フッ素樹脂は、少なくとも融点が300℃以上310℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンを含み、
前記熱可塑性フッ素樹脂組成物中において前記フッ素ゴムが動的架橋により架橋されており、
前記(a)工程は、前記パーフルオロアルコキシアルカンの融点以上かつ前記融点+10℃未満の温度で行われる、電線の製造方法。 - 請求項1記載の電線の製造方法において、
前記フッ素樹脂は、さらに融点が300℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンを含む、電線の製造方法。 - 請求項1記載の電線の製造方法において、
前記(b)工程では、前記導体と前記熱可塑性フッ素樹脂組成物との間が減圧されている、電線の製造方法。 - 請求項1記載の電線の製造方法において、
前記(a)工程の前に、
(c)前記熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成する工程、
を含み、
前記(c)工程は、
(c1)前記フッ素ゴムと、前記相溶化剤と、架橋促進剤とを含む混合物を混練し、脱フッ化水素反応により前記フッ素ゴム中に二重結合を形成させる工程、
(c2)前記(c1)工程によって生成された第1生成物と、前記フッ素樹脂とを混練する工程、
(c3)前記(c2)工程によって生成された第2生成物と、ポリオール架橋剤とを混練し、前記第2生成物中の前記フッ素ゴムを動的架橋させる工程、
を含む、電線の製造方法。 - 請求項4記載の電線の製造方法において、
前記(c1)工程では、前記脱フッ化水素反応により、前記相溶化剤中にも二重結合を形成させ、前記(c3)工程では、前記第2生成物中の前記相溶化剤をも動的架橋させる、電線の製造方法。 - 請求項4記載の電線の製造方法において、
前記混合物は、さらに受酸剤を含む、電線の製造方法。 - (a)電線を含むコアの周囲を被覆するように、熱可塑性フッ素樹脂組成物を押し出す工程、
(b)前記(a)工程によって押し出された前記熱可塑性フッ素樹脂組成物を引き落として、前記コアの周囲にシースを形成する工程、
を含み、
前記熱可塑性フッ素樹脂組成物は、フッ素ゴムと、フッ素樹脂と、相溶化剤とを含み、
前記フッ素樹脂は、融点が300℃以上310℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンを含み、
前記熱可塑性フッ素樹脂組成物中において前記フッ素ゴムが動的架橋により架橋されており、
前記(a)工程は、前記パーフルオロアルコキシアルカンの融点以上かつ前記融点+10℃未満の温度で行われる、ケーブルの製造方法。 - 請求項7記載のケーブルの製造方法において、
前記フッ素樹脂は、さらに融点が300℃未満のパーフルオロアルコキシアルカンを含む、ケーブルの製造方法。 - 請求項7記載のケーブルの製造方法において、
前記(b)工程では、前記コアと前記熱可塑性フッ素樹脂組成物との間が減圧されている、ケーブルの製造方法。 - 請求項7記載のケーブルの製造方法において、
前記(a)工程の前に、
(c)前記熱可塑性フッ素樹脂組成物を生成する工程、
を含み、
前記(c)工程は、
(c1)前記フッ素ゴムと、前記相溶化剤と、架橋促進剤とを含む混合物を混練し、脱フッ化水素反応により前記フッ素ゴム中に二重結合を形成させる工程、
(c2)前記(c1)工程によって生成された第1生成物と、前記フッ素樹脂とを混練する工程、
(c3)前記(c2)工程によって生成された第2生成物と、ポリオール架橋剤とを混練し、前記第2生成物中の前記フッ素ゴムを動的架橋させる工程、
を含む、ケーブルの製造方法。 - 請求項10記載のケーブルの製造方法において、
前記(c1)工程では、前記脱フッ化水素反応により、前記相溶化剤中にも二重結合を形成させ、前記(c3)工程では、前記第2生成物中の前記相溶化剤をも動的架橋させる、ケーブルの製造方法。 - 請求項10記載のケーブルの製造方法において、
前記混合物は、さらに受酸剤を含む、ケーブルの製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN117567824A (zh) * | 2023-11-13 | 2024-02-20 | 芜湖佳宏新材料股份有限公司 | 一种钙掺杂氟树脂电缆及其制备方法 |
-
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