JP2020139190A - 熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロールならびに熱間圧延用ロール外層材の製造方法 - Google Patents

熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロールならびに熱間圧延用ロール外層材の製造方法 Download PDF

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【課題】組織偏析が無く、優れた表面品質を有するロール特性に優れた熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロールならびに熱間圧延用ロール外層材の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】質量%で、C:1.5〜3.0%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0、Cr:5.0〜15.0%、Mo:2.0〜12.0%、V:3.0〜10.0%、Nb:0.5〜5.0%を含有し、かつMoおよびCrの含有量が所定の式を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、所定の式で表される炭化物量の変化率Sが20%以下となる炭化物量分布を有し、さらに所定の式で表される硬度差が3.0以下を満たすことを特徴とする熱間圧延用ロール外層材。【選択図】図1

Description

本発明は、熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロールに係り、とくに、鋼板の熱間圧延ミルのワークロールとして好適な熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロールならびに熱間圧延用ロール外層材の製造方法に関する。
近年、鋼板の熱間圧延技術の進歩につれてロールの使用環境は苛酷化しており、また、高強度鋼板や薄肉品など圧延負荷の大きな鋼板の生産量も増加している。このため、圧延用ワークロールに要求される品質レベルが高くなっており、偏析やポロシティ、ザク巣等の鋳造欠陥の無い、高性能な圧延用ワークロール(ハイスロール)が求められている。
このような圧延用ワークロールの外層材として、例えば、特許文献1には、C:1.5〜3.5%、Ni:5.5%以下、Cr:5.5〜12.0%、Mo:2.0〜8.0%、V:3.0〜10.0%、Nb:0.5〜7.0%を含み、かつ、NbおよびVを、Nb、VおよびCの含有量が特定の関係を満足し、さらにNbとVの比が特定の範囲内となるように含有する圧延用ロール外層材が提案されている。これにより、遠心鋳造法を適用しても外層材における硬質炭化物の偏析が抑制され、耐摩耗性と耐クラック性に優れた圧延用ロール外層材となるとしている。また、特許文献2には、C:1.5〜3.5%、Cr:5.5〜12.0%、Mo:2.0〜8.0%、V:3.0〜10.0%、Nb:0.5〜7.0%を含み、かつ、NbおよびVを、Nb、VおよびCの含有量が特定の関係を満足し、さらにNbとVの比が特定の範囲内となるように含有する圧延用ロール外層材が提案されている。これにより、遠心鋳造法を適用しても外層材における硬質炭化物の偏析が抑制され、耐摩耗性と耐クラック性が向上し、熱間圧延の生産性向上に大きく貢献するとしている。また、特許文献3には、C、Cr、Moの最適調整を行い、[%C]+0.2[%Cr]≦6.2、0.27≦[%Mo]/[%Cr]<0.7を満たす成分系とする圧延用ロール外層材が提案されている。これにより、炭化物の著しい偏析が大幅に軽減されるとしている。
ハイスロールは、多量の合金元素を含有するため、遠心鋳造過程で顕著な炭化物偏析やラミネーション偏析と呼ばれるバンド状(層状)偏析が発生しやすい。このような偏析が発生した領域では、深いヒートクラックが形成されて欠落ちやスポーリングと呼ばれる圧延トラブルが発生しやすい。特許文献4には、遠心鋳造製ロール外殻層の組織を微細かつ均一にして耐肌荒れ性、耐クラック性を向上させるために、鋳型への溶融金属(溶湯)の供給温度(鋳込み温度)を初晶生成温度T(℃)からT+90(℃)にかけての温度域に保って平均積層速度を2〜40mm/分に管理する圧延用ロールの製造方法が開示されている。
また、特許文献5には、C:1.5〜3.5%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:5〜25%、Mo:2〜12%、V:3〜10%、Nb:0.5〜5%を含み、かつ、MoとCrを、MoとCrの含有量が特定の関係を満足し、さらに半径方向の炭化物量の極大値と極小値の差が平均値の20%以下となる圧延用ロール外層材が提案されている。これにより、組織偏析が無く、且つ耐肌荒れ性と通販性に優れた圧延ロール用外層材となるとしている。
特開平04−365836号公報 特開平05−1350号公報 特開平10−183289号公報 特許第2778896号公報 特開2000−239779公報
上述したように、ラミネーション偏析が存在する圧延用ロールを使用すると、圧延中に欠落ちやスポーリングといった圧延トラブルを引き起こし、偏析発生部に存在する微小な凹凸が被圧延材の表面品質の低下を引き起こすなどの問題があり、生産性を低下させていた。また、近年では顧客から要求される被圧延材の表面品質が更に厳しくなっており、先行技術文献で製造された圧延用ロールでは被圧延材の表面品質が不十分な場合が生じ、これまで以上に表面品質の優れた圧延用ロールが求められていた。
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、これら従来技術の問題点を解決し、組織偏析が無く、優れた表面品質を有するロール特性に優れた熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロールならびに熱間圧延用ロール外層材の製造方法を提供することを目的とする。
金属材料を遠心鋳造で製造しようとすると、凝固の過程で溶湯中に晶出したデンドライトあるいは炭化物が、溶湯との比重差によって遠心分離する(溶湯より重い相は外周側、軽い相は中心側に移動する)現象が起こる。一方、ラミネーション偏析はデンドライト濃化層と炭化物濃化層が交互に重なってバンド状に偏析した形態を呈している。バンド状偏析の形成原因は、遠心鋳造での凝固過程における固相−液相界面(固液共存相)の剪断的流動にあると考えられる。大中ら(鋳造工学 第69巻(1997)第3号 第240〜246頁)は、横型遠心鋳造でのバンド状偏析の発生には重力(1G)が影響していると報告している。この考え方によれば、重力が鋳型回転方向に作用する横型あるいは斜め型遠心鋳造を行う限り、ラミネーション偏析を回避することは困難である。
なお、従来の遠心鋳造法では、溶湯に振動や剪断力がなるべくかからないようにし、静かに凝固させた方がよいという基本思想から、外力がなるべく作用しないように、鋳型回転数を極力一定に制御し、かつ鋳造振動を抑えて鋳込むという操業がなされている。しかしながら、この方法ではラミネーション偏析の回避は不可能であった。また、特許文献4に開示された方法では、鋳込み速度が著しく小さいため、凝固が不安定となって外層表面に2枚皮欠陥やスパッタ状欠陥が生じやすい。また、鋳込み速度が非常に小さいことに加え、鋳込み温度もT〜T+90℃と低く管理範囲も狭いことから、溶湯の流動性を確保することは困難であり、かつ管理範囲を逸脱しやすく安定した操業を行うことも難しい。
本発明者らは、従来の基本思想ではラミネーション偏析を解消できないことに鑑み、
重力の影響でラミネーション偏析が生成するのなら、従来とは逆に溶湯に積極的に回転方向の加速度を付与すれば、そこで生まれた剪断力によってラミネーション偏析を生成させることができるのではないかと考えた。この逆転の発想に基づき、ラミネーション偏析の抑制法を鋭意検討した結果、鋳型回転速度を連続的あるいは断続的に変更して鋳型回転方向に加速度を付与することにより、無数のラミネーション偏析を生成させることも原理的に可能であり、しかるに無数のラミネーション偏析が生成すれば、マクロ的には均一な組織が得られるという知見を得た。さらに、本発明者らの詳細な検討により、遠心鋳造鋳型に鋳込む際の外層材溶湯の供給速度(kg/s)を特定の範囲内に調整することで、所定の硬度差が得られ、ラミネーション偏析が著しく軽減し表面品質に優れた熱間圧延用ロール外層材を得られるという、従来にない知見を得た。
本発明は上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は次のとおりである。
[1]質量%で、C:1.5〜3.0%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:5.0〜15.0%、Mo:2.0〜12.0%、V:3.0〜10.0%、Nb:0.5〜5.0%を含有し、かつMoおよびCrの含有量が下記式(1)を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
下記式(2)で表される炭化物量の変化率Sが20%以下となる炭化物量分布を有し、さらに下記(3)式で表される硬度差が3.0以下を満たすことを特徴とする熱間圧延用ロール外層材。
0.35≦[%Mo]/[%Cr]≦0.70 (1)
ここで、[%Mo]、[%Cr]は、各元素の含有量(質量%)である。
S=(Xmax−Xmin)×100/Xave (2)
ここで、
max:ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布における最大値(面積%)
min:ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布における最小値(面積%)
ave:ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布における平均値(面積%)
である。
ΔHS=HSXmax−HSXmin (3)
ここで、
HSXmax:ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布における最大値の位置におけるショア硬さ
HSXmin:ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布における最小値の位置におけるショア硬さ
である。
[2]前記熱間圧延用ロール外層材において、質量%で、Co:5.0%以下、Ni:3.0%以下、W:5.0%以下のいずれか1種または2種以上を含有する[1]に記載の熱間圧延用ロール外層材。
[3]外層、中間層、内層の3層構造または外層、内層の2層構造を有する熱間圧延用複合ロールであって、前記外層が[1]または[2]に記載の熱間圧延用ロール外層材からなることを特徴とする熱間圧延用複合ロール。
[4][1]または[2]に記載の組成を有する溶湯を、注湯し遠心鋳造する際に、ロール外層材の外表面における遠心力が1.0G/s以上で変化するように、遠心鋳造鋳型の回転数を2回以上変動させるとともに、前記溶湯の供給速度を80〜200kg/sとすることを特徴とする熱間圧延用ロール外層材の製造方法。
本発明によれば、組織偏析が無く、優れた表面品質を有する熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロールが得られる。
図1は、本発明における、炭化物量の分布を説明する図である。 図2は、鋳型の回転数の変動を説明する図であり、図2(a)は外層材溶湯に作用する遠心力および剪断力を模式的に説明する外層材溶湯の軸方向断面図であり、図2(b)は鋳型の回転数の波形図である。 図3は、鋳型の回転数変更パターンの例を示す波形図である。 図4は、遠心鋳造における鋳型の回転方向と溶湯の供給方向を示す図である。 図5は、スリーブロールからの炭化物量測定用試験片の採取位置を示す模式図であり、図5(a)はスリーブロールを軸方向から見た正面図であり、図5(b)は採取した試験片の模式図である。 図6は、実施例における炭化物量の分布を示す図であり、図6(a)は表1のNo.1の炭化物量の分布を示す図であり、図6(b)は表1のNo.5の炭化物量の分布を示す図である。 図7は、スリーブロールから採取した炭化物量測定用試験片における、硬度を測定する位置を示す模式図である。 図8は、スリーブロールからの試験片採取位置を示す模式図であり、図8(a)はスリーブロールを軸方向から見た正面図であり、図8(b)は図8(a)のA方向から見たスリーブロールの上面図であり、図8(c)は図8(a)のB方向から見たスリーブロールの右側面図である。 図9は、摩耗試験で使用した試験機の構成および摩耗試験用試験片(摩耗試験片)の形状を模式的に示す図である。 図10は、熱間転動疲労試験で使用した試験機の構成、熱間転動疲労試験用試験片(熱延疲労試験片)、および熱間転動疲労試験用試験片(熱延疲労試験片)の外周面に導入されたノッチの形状、寸法を模式的に示す図である。 図11は、本発明に係る圧延試験用ロールの模式図である。
本発明の熱間圧延用ロール外層材は、遠心鋳造法により製造され、そのままリングロール、スリーブロールとすることもできるが、熱間仕上げ圧延用として好適な、熱間圧延用複合ロールの外層材として適用される。また、本発明の熱間圧延用複合ロールは、外層と、該外層と溶着一体化した内層とからなる。なお、外層と内層との間に中間層を配してもよい。すなわち、外層と溶着一体化した内層に代えて、外層と溶着一体化した中間層および該中間層と溶着一体化した内層としてもよい。本発明では、内層、中間層の組成はとくに限定されないが、内層は球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)、中間層は、C:1.5〜3.0質量%の高炭素材とすることが好ましい。
まず、本発明の熱間圧延用複合ロールの外層(外層材)の組成限定理由について説明する。なお、以下、質量%は、とくに断らない限り、単に%と記す。
C:1.5〜3.0%
Cは、固溶して基地(マルテンサイト及び/又はベイナイト)の硬さを増加させるとともに、炭化物形成元素と結合し硬質炭化物を形成し、その結果、ロール外層材の耐摩耗性を向上させる作用を有する。C含有量が1.5%未満では、炭化物量が不足するため、耐摩耗性が低下する。一方、3.0%を超える含有は、炭化物の粗大化や共晶炭化物量を過度に増加させ、ロール外層材を硬質、脆化させて、疲労亀裂の発生・成長を促進し、耐疲労性を低下させる。このため、Cは1.5〜3.0%に限定する。なお、好ましくは、1.7〜2.7%である。
Si:0.1〜2.0%
Siは、脱酸剤として作用するとともに、溶湯の鋳造性を向上させる元素である。また、Siは基地中に固溶して、基地を強化する作用がある。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となり、さらには、基地組織を脆化させる場合もある。このため、Siは0.1〜2.0%に限定する。なお、好ましくは、0.2〜1.5%である。
Mn:0.1〜2.0%
Mnは、SをMnSとして固定し、Sを無害化する作用を有するとともに、一部は基地組織に固溶し、焼入れ性を向上させる効果を有する元素である。また、Mnは基地中に固溶して、基地を強化(固溶強化)する作用がある。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり、さらには材質を脆化する場合もある。このため、Mnは0.1〜2.0%に限定する。なお、好ましくは、0.2〜1.6%である。
Cr:5.0〜15.0%
Crは、Cと結合して主に共晶炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させるとともに、圧延時に鋼板との摩擦力を低減し、ロールの表面損傷を軽減させ、圧延を安定化させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、5.0%以上の含有を必要とする。一方、15.0%を超える含有は、粗大な共晶炭化物が増加するため、耐疲労性を低下させる。このため、Crは5.0〜15.0%に限定する。なお、好ましくは、5.5〜13.0%である。
Mo:2.0〜12.0%
Moは、Cと結合して硬質な炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させる元素である。また、Moは、V、NbとCが結合した硬質なMC型炭化物中に固溶して、炭化物を強化するとともに、共晶炭化物中にも固溶し、それら炭化物の破壊抵抗を増加させる。このような作用を介してMoは、ロール外層材の耐摩耗性、耐疲労性を向上させる。このような効果を得るためには、2.0%以上の含有を必要とする。一方、12.0%を超える含有は、Mo主体の硬脆な炭化物が生成し、耐熱間転動疲労性を低下させ、耐疲労性を低下させる。このため、Moは2.0〜12.0%に限定する。なお、好ましくは、3.0〜9.0%である。
V:3.0〜10.0%
Vは、ロールとしての耐摩耗性と耐疲労性とを兼備させる元素である。Vは、極めて硬質な炭化物(MC型炭化物)を形成し、耐摩耗性を向上させるとともに、共晶炭化物を分断、分散晶出させることに有効に作用し、耐熱間転動疲労性を向上させ、ロール外層材としての耐疲労性を顕著に向上させる元素である。このような効果は、3.0%以上の含有で顕著となる。一方、10.0%を超える含有は、MC型炭化物を粗大化させるため、圧延用ロールの諸特性を不安定にする。また、共晶融液量が減少し、粗大なザク巣が形成される。このため、Vは3.0〜10.0%に限定する。なお、好ましくは、4.0〜9.0%である。
Nb:0.5〜5.0%
Nbは、MC型炭化物に固溶してMC型炭化物を強化し、MC型炭化物の破壊抵抗を増加させる作用を介し、耐摩耗性、とくに耐疲労性を向上させる。NbとMoとがともに、炭化物中に固溶されることにより、耐摩耗性とさらには耐疲労性の向上が顕著となる。また、Nbは、共晶炭化物の分断を促進させ、共晶炭化物の破壊を抑制する作用を有し、ロール外層材の耐疲労性を向上させる元素である。また、NbはMC型炭化物の遠心鋳造時の偏析を抑制する作用を併せ有する。このような効果は、0.5%以上の含有で顕著となる。一方、含有量が5.0%を超えると、溶湯中でのMC型炭化物の成長が促進され、耐熱間転動疲労性を悪化させる。また、共晶融液量が減少し、粗大なザク巣が形成される。このため、Nbは0.5〜5.0%に限定する。なお、好ましくは、0.8〜2.5%である。
さらに本発明では、MoおよびCrの含有量が下記(1)式を満足する必要がある。
0.35≦[%Mo]/[%Cr]≦0.70 (1)
ここで、[%Mo]、[%Cr]は、各元素の含有量(質量%)である。
上記の範囲のMoおよびCrを含有し、かつ、[%Mo]/[%Cr]の値が0.35以上とすると、MC型炭化物中にMoが固溶して固溶強化され、耐摩耗性が向上する。一方、[%Mo]/[%Cr]の値が0.70を超えると、固溶強化に寄与しないMoの量が増大し、脆弱な共晶炭化物が形成されるため、耐肌荒れ性、耐摩耗性が劣化する。より好ましくは、0.40≦[%Mo]/[%Cr]≦0.65である。
本発明では、さらに、Co:5.0%以下、Ni:3.0%以下、W:5.0%以下のいずれか1種または2種以上を含有することが好ましい。
Co:5.0%以下
Coは、基地中に固溶し、耐疲労性を向上させる作用を有する元素である。5.0%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、Coを含有する場合、5.0%以下の範囲に限定する。なお、好ましくは、3.5%以下である。また、このような効果を得るためには、0.2%以上含有することが好ましく、さらに好ましくは0.3%以上である。
Ni:3.0%以下
Niは、基地中に固溶し、熱処理中のオーステナイトの変態温度を低下させ、基地の焼入れ性を向上させる元素である。3.0%を超えて含有すると、オーステナイトの変態温度が低くなりすぎて、熱処理後にオーステナイトが残留しやすくなる。オーステナイトが残留すると、熱間圧延中にクラックが発生するなど、耐熱間転動疲労性を低下させる。そのため、Niを含有する場合、3.0%以下の範囲に限定する。なお、熱処理中の冷却速度が遅くても、マルテンサイトおよび/またはベイナイト組織が得られるという、操業のし易さから、0.2%以上含有することが好ましく、さらに好ましくは0.3%以上である。
W:5.0%以下
Wは、基地中に固溶し、基地を強化して耐疲労性を向上させる作用を有する元素であり、且つMCまたはMC系の炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させる。5.0%を超えて含有すると、効果が飽和するだけでなく、粗大なMCまたはMC系の炭化物が形成され、耐熱間転動疲労性を低下させる。このため、Wを含有する場合、5.0%以下の範囲に限定する。なお、このような効果を得るため、0.2%以上含有することが好ましく、さらに好ましくは、0.5%以上である。
残部はFeおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、AlやS、P、Cu、Ca、Sb、Ti、Zr、B等が挙げられる。これらは、原料や溶解中に耐火物等から混入する。これらの不可避的不純物は、Al:0.3%以下、S:0.05%以下、P:0.05%以下、Cu:0.20%以下、Ca:0.01%以下、Sb:0.01%以下、Ti:0.05%以下、Zr:0.05%以下、B:0.008%以下であることが好ましく、これらの不可避的不純物の合計量が0.5%以下であれば耐摩耗性や耐熱疲労性に悪影響を及ぼさないため、合計量は0.5%以下であれば良い。なお、より好ましくは、0.4%以下である。
次に、本発明は、上記成分に加え、ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域で最大値と最小値の差が平均値の20%以下となる炭化物量分布を有することを特徴とする。
上述したように、遠心鋳造法で製造した熱間圧延用ロール外層材には、ラミネーション偏析等の組織偏析が存在し、その偏析模様が鋼板表面に転写して鋼板の表面品質が低下する。また、このような組織偏析はロールの耐肌荒れ性や耐クラック性などのロール特性を劣化させる。本発明者らの知見によれば、偏析模様や肌荒れは、ロール半径方向の炭化物量の変化が大きいものほど生じやすい。すなわち、ロール半径方向の炭化物量の変化が大きいと、ロール軸方向においても摩耗量の差が生じ易く、ロール外表面に小さな凹凸ができ、この凹凸が偏析模様や肌荒れとなって目視できるようになる。
ロール半径方向の炭化物量の変化は、図1に示すように、半径方向の炭化物量分布を測定し、この分布内で最大の炭化物量Xmaxと最小の炭化物量Xminの差(ΔX=Xmax−Xmin)と分布全体の平均炭化物量Xaveの比(=ΔX/Xave×100(%))で評価することができる。このΔX/Xave×100(%)を「炭化物量の変化率S」と定義する。本発明者らは、この差と偏析模様、肌荒れ発生状況との関係を調査した。その結果、この炭化物量の変化率Sが20%を超えると大きな偏析模様や肌荒れを生じるが、20%以下であれば偏析模様や肌荒れは生じないこと、および、かかる分布条件がロール半径方向に外表面から30mmまでの領域で満足されると、圧延用ロールとして十分に使用できることがわかった。したがって、本発明では、下記(2)式で表される、ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域で炭化物量の変化率Sが20%以下となる炭化物量分布を有することとする。
S=(Xmax−Xmin)×100/Xave (2)
ここで、
max:ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布における最大値(面積%)
min:ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布における最小値(面積%)
ave:ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布における平均値(面積%)
である。
炭化物量の測定方法は特に限定されないが、本発明では、外層材の横断面(ロール軸に直交する断面)をナイタール液で腐食して現出させた金属組織の100倍観察像から画像解析装置により炭化物の面積率(%)を測定し、これを炭化物量とした。また、半径方向の分布を求める際、測定位置は外表面から半径方向に1mmピッチの位置とし、同位置で円周方向の任意の4点で測定した値を平均した値を同位置での炭化物量データとし、測定位置と炭化物量データの関係を図1のようにグラフ化して最大値と最小値を求めた。また、分布の平均値は炭化物量データ全体を平均して求めた。なお、半径方向測定ピッチは1mmに限定されず、適宜選択することができるが、測定ピッチが大きすぎると、最大値または最小値を正確に評価することができないため、0.5〜3mmとすることが好ましい。
なお、本発明の熱間圧延用ロール外層材における所望の炭化物量の分布は、後述するように、外層材溶湯の鋳込み中に鋳型(遠心鋳造鋳型)の回転数を変動させるにより得られる。
また、近年では被圧延材の表面品質の要求レベルが一段と厳しくなっている。熱間圧延用ロールに要求される表面品質レベルも更に高く、上記の炭化物量分布の適正化だけでは十分ではなく、本発明者らの鋭意検討の結果、さらに炭化物量分布の最大値と最小値の位置における外層材の硬度差をショア硬さで3.0以下とすることで、圧延中の熱間圧延用ロール外層材表面の凹凸が著しく低減し、表面品質に格段に優れた熱間圧延用ロール外層材になることを見出した。すなわち、本発明では下記式(3)で表される硬度差が3.0以下を満たすこととする。
ΔHS=HSXmax−HSXmin (3)
ここで、
HSXmax:ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布における最大値の位置におけるショア硬さ
HSXmin:ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布における最大値の位置におけるショア硬さ
である。
なお、本発明の熱間圧延用ロール外層材における所望の硬度差は、後述するように、外層材溶湯を鋳型に供給する速度を制御することにより得られる。
つぎに、本発明の熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロールの製造方法について説明する。
熱間圧延用ロール外層材を鋳造する場合、まず、内面にジルコン等を主材とした耐火物が1〜5mm厚で被覆された、回転する鋳型に、上記した熱間圧延用ロール外層材組成の溶湯(単に外層材溶湯と称する。)を、所定の肉厚となるように注湯し、遠心鋳造する。
本発明では、外層材溶湯の鋳込み中に、鋳型(遠心鋳造鋳型)の回転数を変動させることにより、所望の炭化物量が得られる。一定の鋳型回転速度で遠心鋳造する従来の横型あるいは斜め型遠心鋳造法では、重力(1G)の影響で固液共存領域に剪断力が作用してラミネーション偏析等の粗大な組織偏析が不可避的に生成する。これに対し、本発明では、図2(a)に示すように、鋳込み中に軸心Oを中心として回転する鋳型1の回転数nを強制的に変動させるようにした。具体的には、図2(b)に示すように、鋳込み材(ロール外層材)の外表面に負荷される遠心力(重力倍数で表す。以下同じ)が1.0G/s以上で変化するように、鋳型の回転数nを増加または減少させる工程を2回以上行う。これにより、鋳込み材に負荷される遠心力Gnを変動させるとともに、鋳込み材に剪断力Gvを連続的あるいは断続的に付与する(Gv≠0)ことができる。したがって、任意に固液共存相の剪断作用と未凝固領域の撹拌作用を付与することができ、それゆえに組織偏析の分散と偏析成分の撹拌均一化を有効に促進できるのである。
鋳型の回転数の変動パターンは特に限定されるものではなく、例えば、振幅、周期とも一定として連続的に変動させるパターン(図3(a))、振幅、周期のいずれか一方または両方を変化させながら連続的に変動させるパターン(図3(b))、断続的に変動させるパターン(図3(c))など、剪断力Gvを付与できるものであればいかなるパターンであってもよい。なお、遠心力の変化する速度が1.0G/sに満たないと、重力によるラミネーション偏析形成作用に打ち勝つことが難しい。また、変動回数が2回未満では、組織偏析の分散や偏析成分の撹拌均一化の効果が得られないため、下限値を2回と限定した。組織偏析の分散や偏析成分の撹拌均一化の効果を得る観点から、変動回数は5回以上が好ましく、上限は100回が好ましい。
また、本発明では、外層材溶湯を鋳型に供給する速度(=溶湯供給速度)を80〜200kg/sとすることにより、所望の硬度差が得られる。図4に示すように、遠心鋳造では、回転している鋳型1に溶融供給管2から外層材溶湯3を注ぎ、遠心力をかけた状態で凝固させる。
遠心鋳造では、外層材溶湯3は鋳型1の長手方向と同一の方向に供給されるため、鋳型1に供給された時の外層材溶湯3は、鋳型1の回転とは異なる方向の速度を有している。そのため、溶湯供給速度Vが大きすぎると、鋳型1の回転方向とは異なる方向の流動の影響が強くなることで、局所的に凝固の乱れが生じる(例えば、MC炭化物が局所的に多い領域が形成されるなど)。その結果、生成する炭化物の割合が局所的に変化し、大きな硬度差が生じてしまう。外層材溶湯3の供給速度が80〜200kg/sであれば、このような現象は発生せず、半径方向に均一な凝固が進行する結果、炭化物量分布の最大値と最小値の硬度差がショア硬さで3.0以下が得られる。外層材溶湯の供給速度が80kg/sよりも小さくなると、外層材溶湯が鋳型に注入される前に外層材溶湯の温度が低下して固相が生成し、不均一な凝固が生じることで上記の硬度差を満たすことができない。凝固を均一にする観点から、好ましい外層材溶湯の供給速度は90〜180kg/sである。なお、外層材溶湯の供給速度は、外層材溶湯の全重量W(kg)を鋳型内に外層材溶湯の注入を開始した時刻と外層材溶湯が鋳型内に全て注入された時刻の差t(s)で除した値(=W/t)である。
中間層を形成する場合には、外層材の凝固途中あるいは完全に凝固したのち、鋳型を回転させながら、中間層組成の溶湯を注湯し、遠心鋳造することが好ましい。外層あるいは中間層が完全に凝固したのち、鋳型の回転を停止し鋳型を立ててから、内層材を静置鋳造して、複合ロールとすることが好ましい。これにより、ロール外層材の内面側が再溶解され外層と内層、あるいは外層と中間層、中間層と内層とが溶着一体化した複合ロールとなる。
なお、静置鋳造される内層は、鋳造性と機械的性質に優れた球状黒鉛鋳鉄、いも虫状黒鉛鋳鉄(CV鋳鉄)などを用いることが好ましい。遠心鋳造製ロールは、外層と内層が一体溶着されているため、外層材の成分が1〜8%程度内層に混入する。外層材に含まれるCr、V等の炭化物形成元素が内層へ混入すると、内層を脆弱化する。このため、外層成分の内層への混入率は6%未満に抑えることが好ましい。
また、中間層を形成する場合は、中間層材として、黒鉛鋼、高炭素鋼、亜共晶鋳鉄等を用いることが好ましい。中間層と外層とは同じように一体溶着されており、外層成分が中間層へ10〜95%の範囲で混入する。内層への外層成分の混入量を抑える観点から、外層成分の中間層への混入量はできるだけ低減しておくことが肝要となる。
以上より、外層、中間層、内層の3層構造または外層、内層の2層構造を有する熱間圧延用複合ロールを得ることができる。
本発明の熱間圧延用複合ロールは、鋳造後、熱処理を施されることが好ましい。熱処理は、950〜1100℃に加熱し空冷あるいは衝風空冷する工程と、さらに450〜570℃に加熱保持した後、冷却する工程を2回以上行うことが好ましい。冷却は、平均冷却速度で5〜100℃/hが好ましい。
なお、本発明の熱間圧延用複合ロールの好ましい硬さは、78〜90HS(ショア硬さ)、より好ましい硬さは80〜88HSである。78HSよりも硬さが低いと、耐摩耗性が劣化し、逆に硬さが90HSを超えると、熱間圧延中に熱間圧延用ロール表面に形成されたクラックを研削により除去し難くなる。このような硬さを安定して確保できるように、鋳造後の熱処理温度、熱処理時間を調整することが好ましい。熱処理時間は、熱処理温度によって異なるが、950〜1100℃の焼入れでは30分〜50時間、450〜570℃の焼戻しでは、一回当たりの焼戻し時間を5〜50時間とすることが好ましい。
表1に示す材料を溶解してなる溶湯を、表1の鋳造条件で横型遠心鋳造機の鋳型に供給し、外径250mm、内径170mm、厚み70mmのスリーブロール(圧延ロール用外層材に相当)を鋳造した。鋳込み温度は全ての条件で1500℃とした。鋳込み中、本発明例では鋳型回転数nを変動させた。以下の2種類の変動パターンを使用し、周期Τ(s)の周期関数n=α+βcos(2π×t/Τ)[rpm](tは鋳込み開始からの時間(s))を採用した。
<変動パターン1>
α=1000rpm
β=40rpm
nの変動範囲:1040〜960rpm
Τ=10s
nの平均増減速度:80/(10/2)=16rpm/s
<変動パターン2>
α=900rpm
β=20rpm
nの変動範囲:920〜880rpm
Τ=8s
nの平均増減速度:40/(8/2)=10rpm/s
このとき、スリーブロール外表面の遠心力の増減速度について、変動パターン1では、n=1040rpm、960rpmのときの遠心力がそれぞれ151G、129Gであることから平均約4.4G/s(=(151−129)/(10/2))である。また、変動パターン2では、n=920rpm、880rpmのときの遠心力がそれぞれ113G、108Gであることから平均約1.3G/s(=(113−108)/(8/2))である。
一方、比較例では従来通りnは一定(900rpm)、もしくは、α=950rpm、β=10rpm(すなわちnの変動範囲は960〜940rpm)、Τ=20s(すなわちnの平均増減速度は20/(20/2)=2rpm/s)、平均約0.5G/s(=(129−124)/(20/2))の周期関数とした。
鋳造後、1000℃から焼入れ、500℃で焼戻しを施した後、スリーブロールの円周方向における任意の4箇所から30×20×40mmの炭化物量測定用試験片(30mmはスリーブロールの円周方向、20mmはスリーブロールの厚み方向、40mmはスリーブロールの半径方向である。図5参照。)を合計4個採取した。炭化物量測定用試験片の30×40mmの面を研磨後にナイタールでエッチングして現出させた金属組織を観察し、同断面半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布を前述の要領(半径方向に1mmピッチ、且つ、4個の試験片の平均値)で測定して図6に示すグラフに整理し(図6(a)は表1のNo.1の炭化物量の分布を示す図であり、図6(b)は表1のNo.5の炭化物量の分布を示す図である。)、これら分布の変化率を求めた。その結果を表2に示す。なお、表2には、炭化物量分布内の最大値Xmaxおよび最小値Xmin、最大値と最小値の差、炭化物量分布全体の平均値(全平均)、炭化物量の変化率を示している。
また、上記炭化物量測定用試験片を4個用いて、JIS Z 2244 の規定に準拠して、ビッカース硬さ計(試験力:50kgf(490N))でビッカース硬さHV50を測定し、JIS換算表でショア硬さHSに換算した。測定位置は、炭化物量分布内の最大値および最小値を示した位置とした。各測定位置で炭化物量測定用試験片4個について任意の合計10点を測定し(図7参照)、測定したショア硬さの最高値およびショア硬さの最低値を削除した平均値をそれぞれ算出し、硬度差を求めた。
また、表1に示す組成を有する外径250mm、内径170mm、厚み70mmのスリーブロールを製造し、1000℃から焼入れ、500℃で焼戻しを施して得られた素材から試験片を作製し、摩耗試験および熱延疲労試験を行った。
摩耗試験方法は次の通りとした。得られたスリーブロールの外表面から10mm内部の位置から摩耗試験片(外径60mm、肉厚10mm、面取り有)を採取した(図8参照)。
摩耗試験は、図9に示すように、試験片と相手材との2円盤すべり転動方式で行った。試験片4を冷却水5で水冷しながら700rpmで回転させ、回転する試験片4に、高周波誘導加熱コイル6で800℃に加熱した相手片(材質:S45C、外径:190mm、幅:15mm、C1面取り)7を荷重980Nで接触させながら、すべり率:9%で転動させた。摩耗試験は300分間実施し、50分毎に相手片を新品に交換して、試験を実施した。従来例を基準とし、基準値に対する各試験片の摩耗量の比を、摩耗比(=(各試験片の摩耗量)/(基準片の摩耗量))で評価し、摩耗比が0.97以上の場合を従来例と同等以上の耐摩耗性を有しているとし、0.97よりも小さい場合を耐摩耗性に劣る、と判定した。
また、得られたスリーブロールの外表面から10mm内部の位置から熱延疲労試験片(外径60mm、肉厚10mm)を採取して、熱延疲労試験を実施した(図8参照)。なお、疲労試験片には、図10に示すようなノッチ(深さt:1.2mm、周方向長さL:0.8mm)を外周面の2箇所に、0.2mmφのワイヤーを用いた放電加工(ワイヤーカット)で導入した。また、疲労試験片の転動面の端部には1.2Cの面取りを施した。熱延疲労試験は、図10に示すように、ノッチを有する試験片(熱延疲労試験片)と加熱された相手材との2円盤の転がりすべり方式で行った。すなわち、試験片(熱延疲労試験片)8を冷却水5で水冷しながら700rpmで回転させ、回転する試験片8に、高周波誘導加熱コイル6により800℃に加熱した相手片(材質:S45C、外径:190mm、幅:15mm)7を荷重980Nで押し当てながら、すべり率:9%で転動させた。熱延疲労試験片8に導入した2つのノッチ9が折損するまで転動させ、各ノッチが折損するまでの転動回転数をそれぞれ求め、その平均値を熱延疲労寿命とした。そして、熱延疲労寿命が350千回を超える場合を熱延疲労寿命が著しく優れる(耐疲労性に優れる)と評価した。
また、表1の組成を有する外径250mm、内径170mm、厚み70mmのスリーブロールを素材とし、1000℃から焼入れ、500℃で焼戻しを施した後、外表面から半径方向に10mm研削して研削後の表面を外表面とするロール用外層材(外径230mm×幅40mm)を採取し、図11に示すように、炭素鋼鍛鋼製の軸材に焼嵌めして圧延試験用ロールを作製した。この複合ロールを、4Hiの熱間圧延機に設置し、常温における引張強度590MPaの鋼板(板幅20mm、板厚1.5mm×長さ20m)を被圧延材として、950℃に加熱した被圧延材に板厚減少率20%の熱間圧延を施した。この熱間圧延作業を各ロールについて5回行い、5回圧延後のロールの表面粗さ(算術平均粗さRa)をレーザ変位計で測定した。測定位置は、ロール表面の任意の位置を基準として、基準から90°間隔に周方向の4箇所とした。4箇所の算術平均粗さRaを測定し、その平均値を算出して偏析の有無を評価した。表面粗さが2.0μmよりも大きい場合を偏析有り、1.0〜2.0μmの場合を軽微な偏析有り、1.0μmよりも小さい場合を偏析無し、と判定した。
ここで、総合評価は、偏析が認められたものを「×」、耐摩耗性および耐疲労性に優れ、且つ軽微な偏析が有るものを「○」、偏析が無いものを「◎」とし、「◎」のみを合格とした。
本発明例は耐摩耗性および耐疲労性を有し、且つ、偏析の無い遠心鋳造製圧延ロール用外層材であることが分かる。
したがって、本発明によれば、耐摩耗性および耐疲労性に優れ、且つ、偏析の無い熱間圧延用ロール外層材および熱間圧延用複合ロールを製造することが可能となる。その結果、被圧延材の表面品質の著しい向上およびロール寿命の向上を達成できるという効果もある。
1 鋳型
2 溶湯供給管
3 外層材溶湯
4 試験片(摩耗試験片)
5 冷却水
6 高周波誘導加熱コイル
7 相手片
8 試験片(熱延疲労試験片)
9 ノッチ

Claims (4)

  1. 質量%で、C:1.5〜3.0%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:5.0〜15.0%、Mo:2.0〜12.0%、V:3.0〜10.0%、Nb:0.5〜5.0%を含有し、かつMoおよびCrの含有量が下記式(1)を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
    下記式(2)で表される炭化物量の変化率Sが20%以下となる炭化物量分布を有し、さらに下記(3)式で表される硬度差が3.0以下を満たすことを特徴とする熱間圧延用ロール外層材。
    0.35≦[%Mo]/[%Cr]≦0.70 (1)
    ここで、[%Mo]、[%Cr]は、各元素の含有量(質量%)である。
    S=(Xmax−Xmin)×100/Xave (2)
    ここで、
    max:ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布における最大値(面積%)
    min:ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布における最小値(面積%)
    ave:ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布における平均値(面積%)
    である。
    ΔHS=HSXmax−HSXmin (3)
    ここで、
    HSXmax:ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布における最大値の位置におけるショア硬さ
    HSXmin:ロール半径方向に外表面から30mmまでの領域の炭化物量分布における最小値の位置におけるショア硬さ
    である。
  2. 前記熱間圧延用ロール外層材において、質量%で、Co:5.0%以下、Ni:3.0%以下、W:5.0%以下のいずれか1種または2種以上を含有する請求項1に記載の熱間圧延用ロール外層材。
  3. 外層、中間層、内層の3層構造または外層、内層の2層構造を有する熱間圧延用複合ロールであって、前記外層が請求項1または2に記載の熱間圧延用ロール外層材からなることを特徴とする熱間圧延用複合ロール。
  4. 請求項1または2に記載の組成を有する溶湯を、注湯し遠心鋳造する際に、ロール外層材の外表面における遠心力が1.0G/s以上で変化するように、遠心鋳造鋳型の回転数を2回以上変動させるとともに、前記溶湯の供給速度を80〜200kg/sとすることを特徴とする熱間圧延用ロール外層材の製造方法。
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